(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-19
(45)【発行日】2025-05-27
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H10D 84/80 20250101AFI20250520BHJP
H10D 30/66 20250101ALI20250520BHJP
H10D 12/00 20250101ALI20250520BHJP
【FI】
H10D84/80 202A
H10D30/66 201A
H10D30/66 101F
H10D30/66 103S
H10D12/00 101A
(21)【出願番号】P 2021082801
(22)【出願日】2021-05-14
【審査請求日】2023-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高石 淳平
(72)【発明者】
【氏名】増元 祐介
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-136819(JP,A)
【文献】特開2019-201159(JP,A)
【文献】特開平04-280475(JP,A)
【文献】国際公開第2020/130141(WO,A1)
【文献】特開2003-188382(JP,A)
【文献】特開2000-101076(JP,A)
【文献】特開2012-238715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10D 84/80
H10D 30/66
H10D 12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置であって、
基板(11)、前記基板の表面側に形成された表面電極(19)、前記基板の裏面側に形成された裏面電極(20)、および前記基板の表面側に形成された複数のゲート電極(17)を有し、前記複数のゲート電極への電圧の印加によって、前記表面電極と前記裏面電極との間の通電と遮断とが制御される半導体素子(4)と、
前記複数のゲート電極に印加する電圧を出力する駆動回路(26)と前記複数のゲート電極とを接続する接続回路(27)を有する制御回路(24)と、
前記半導体素子の表面側に載置され、前記表面電極に電気的に接続された電気接続部材(6)と、を備え、
前記複数のゲート電極は、第1ゲート電極(17a)および第2ゲート電極(17b)を含んでおり、
前記半導体素子のセル領域(7)のうち、前記第1ゲート電極に電圧が印加されることによって前記表面電極と前記裏面電極との間に電流が流れる領域を第1セル領域(7a)とし、前記第2ゲート電極に電圧が印加されることによって前記表面電極と前記裏面電極との間に電流が流れる領域を第2セル領域(7b)として、
前記半導体素子および前記制御回路は、前記第1セル領域および前記第2セル領域に流れる電流を遮断する際に、前記第1セル領域と前記第2セル領域との間で電流遮断の時間差が生じる構成とされており、
前記第1ゲート電極および前記第2ゲート電極は、それぞれストライプ状に形成されており、
複数の前記第1ゲート電極のかたまりと、1つまたは複数の前記第2ゲート電極のかたまりとが交互に並んでいる半導体装置。
【請求項2】
前記半導体素子のうち前記電気接続部材の下部に位置する部分の外側において、前記第1ゲート電極の数は、前記第2ゲート電極の数以上とされている請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記電気接続部材は、前記基板の表面側の一部を覆うように載置されており、
前記第1セル領域は、前記半導体素子のうち前記電気接続部材の下部に位置する部分の外側を含むように形成されており、
前記第2セル領域は、前記半導体素子のうち前記電気接続部材の下部に位置する部分を含むように形成されている請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記半導体素子のうち前記電気接続部材の下部に位置する部分には、前記第1セル領域および前記第2セル領域のうち前記第2セル領域のみが形成されており、
前記半導体素子のうち前記電気接続部材の下部に位置する部分の外側には、前記第1セル領域および前記第2セル領域が形成されている請求項
3に記載の半導体装置。
【請求項5】
半導体装置であって、
基板(11)、前記基板の表面側に形成された表面電極(19)、前記基板の裏面側に形成された裏面電極(20)、および前記基板の表面側に形成された複数のゲート電極(17)を有し、前記複数のゲート電極への電圧の印加によって、前記表面電極と前記裏面電極との間の通電と遮断とが制御される半導体素子(4)と、
前記複数のゲート電極に印加する電圧を出力する駆動回路(26)と前記複数のゲート電極とを接続する接続回路(27)を有する制御回路(24)と、
前記半導体素子の表面側に載置され、前記表面電極に電気的に接続された電気接続部材(6)と、を備え、
前記複数のゲート電極は、第1ゲート電極(17a)および第2ゲート電極(17b)を含んでおり、
前記半導体素子のセル領域(7)のうち、前記第1ゲート電極に電圧が印加されることによって前記表面電極と前記裏面電極との間に電流が流れる領域を第1セル領域(7a)とし、前記第2ゲート電極に電圧が印加されることによって前記表面電極と前記裏面電極との間に電流が流れる領域を第2セル領域(7b)として、
前記半導体素子および前記制御回路は、前記第1セル領域および前記第2セル領域に流れる電流を遮断する際に、前記第1セル領域と前記第2セル領域との間で電流遮断の時間差が生じる構成とされており、
前記電気接続部材は、前記基板の表面側の一部を覆うように載置されており、
前記第1セル領域は、前記半導体素子のうち前記電気接続部材の下部に位置する部分の外側を含むように形成されており、
前記第2セル領域は、前記半導体素子のうち前記電気接続部材の下部に位置する部分を含むように形成されて
おり、
前記半導体素子のうち前記電気接続部材の下部に位置する部分には、前記第1セル領域および前記第2セル領域のうち前記第2セル領域のみが形成されており、
前記半導体素子のうち前記電気接続部材の下部に位置する部分の外側には、前記第1セル領域および前記第2セル領域が形成されている半導体装置。
【請求項6】
前記駆動回路と前記第1ゲート電極とは、短絡されており、
前記駆動回路と前記第2ゲート電極とは、抵抗体(28)を介して接続されている請求項1ないし
5のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項7】
前記駆動回路と前記第1ゲート電極とは、第1抵抗体(29)を介して接続されており、
前記駆動回路と前記第2ゲート電極とは、前記第1抵抗体よりも抵抗値の大きい第2抵抗体(30)を介して接続されている請求項1ないし
5のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項8】
前記駆動回路と前記第1ゲート電極とは、第1抵抗体(29)を介して接続されており、
前記駆動回路と前記第2ゲート電極とは、前記第1抵抗体と抵抗値が等しい第2抵抗体(30)を介して接続されており、
前記第2ゲート電極と前記裏面電極とは、双方向のツェナーダイオード(31)を介して接続されており、
前記第2ゲート電極の側から見た前記ツェナーダイオードのブレークダウン電圧は、前記半導体素子の通常動作時に前記第2ゲート電極に印加される電圧よりも大きい請求項1ないし
5のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項9】
前記駆動回路と前記第1ゲート電極とは、第1抵抗体(29)を介して接続されており、
前記駆動回路と前記第2ゲート電極とは、前記第1抵抗体と抵抗値が等しい第2抵抗体(30)を介して接続されており、
前記第1ゲート電極と前記裏面電極とは、双方向の第1ツェナーダイオード(32)を介して接続されており、
前記第2ゲート電極と前記裏面電極とは、双方向の第2ツェナーダイオード(33)を介して接続されており、
前記第1ゲート電極の側から見た前記第1ツェナーダイオードのブレークダウン電圧は、前記半導体素子の通常動作時に前記第1ゲート電極に印加される電圧よりも大きく、
前記第2ゲート電極の側から見た前記第2ツェナーダイオードのブレークダウン電圧は、前記半導体素子の通常動作時に前記第2ゲート電極に印加される電圧よりも大きく、
前記裏面電極の側から見た前記第2ツェナーダイオードのブレークダウン電圧は、前記裏面電極の側から見た前記第1ツェナーダイオードのブレークダウン電圧よりも小さい請求項1ないし
5のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項10】
前記駆動回路と前記第1ゲート電極とは、第1抵抗体(29)を介して接続されており、
前記駆動回路と前記第2ゲート電極とは、前記第1抵抗体と抵抗値が等しい第2抵抗体(30)を介して接続されており、
前記第2ゲート電極と前記表面電極とは、第3抵抗体(34)とコンデンサ(35)とが直列に接続された回路を介して接続されている請求項1ないし
5のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項11】
前記駆動回路と前記第1ゲート電極とは、第1抵抗体(29)を介して接続されており、
前記駆動回路と前記第2ゲート電極とは、前記第1抵抗体と抵抗値が等しい第2抵抗体(30)を介して接続されており、
前記第1ゲート電極と前記表面電極とは、第4抵抗体(36)と第1コンデンサ(37)とが直列に接続された回路を介して接続されており、
前記第2ゲート電極と前記表面電極とは、第5抵抗体(38)と前記第1コンデンサよりも静電容量が大きい第2コンデンサ(39)とが直列に接続された回路を介して接続されている請求項1ないし
5のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項12】
前記第1ゲート電極は、第1駆動回路(26a)に接続されており、
前記第2ゲート電極は、第2駆動回路(26b)に接続されており、
前記第1駆動回路の駆動能力は、前記第2駆動回路の駆動能力よりも高い請求項1ないし
5のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項13】
前記駆動回路と前記第1ゲート電極および前記第2ゲート電極とは、短絡されており、
前記第1セル領域の閾値電圧は、前記第2セル領域の閾値電圧よりも大きい請求項1ないし
5のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項14】
前記駆動回路と前記第1ゲート電極とは、第1抵抗体(29)を介して接続されており、
前記駆動回路と前記第2ゲート電極とは、前記第1抵抗体と抵抗値が等しい第2抵抗体(30)を介して接続されており、
前記第1セル領域の閾値電圧は、前記第2セル領域の閾値電圧よりも大きい請求項1ないし
5のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項15】
前記駆動回路と前記第1ゲート電極とは、第1抵抗体(29)を介して接続されており、
前記駆動回路と前記第2ゲート電極とは、前記第1抵抗体と抵抗値が等しい第2抵抗体(30)を介して接続されており、
前記第1ゲート電極と前記裏面電極とは、双方向の第1ツェナーダイオード(32)を介して接続されており、
前記第2ゲート電極と前記裏面電極とは、双方向の第2ツェナーダイオード(33)を介して接続されており、
前記第1ゲート電極の側から見た前記第1ツェナーダイオードのブレークダウン電圧は、前記半導体素子の通常動作時に前記第1ゲート電極に印加される電圧よりも大きく、
前記第2ゲート電極の側から見た前記第2ツェナーダイオードのブレークダウン電圧は、前記半導体素子の通常動作時に前記第2ゲート電極に印加される電圧よりも大きく、
前記裏面電極の側から見た前記第1ツェナーダイオードおよび前記第2ツェナーダイオードのブレークダウン電圧は互いに等しく、
前記第1セル領域の閾値電圧は、前記第2セル領域の閾値電圧よりも大きい請求項1ないし
5のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項16】
半導体装置であって、
基板(11)、前記基板の表面側に形成された表面電極(19)、前記基板の裏面側に形成された裏面電極(20)、および前記基板の表面側に形成された複数のゲート電極(17)を有し、前記複数のゲート電極への電圧の印加によって、前記表面電極と前記裏面電極との間の通電と遮断とが制御される半導体素子(4)と、
前記複数のゲート電極に印加する電圧を出力する駆動回路(26)と前記複数のゲート電極とを接続する接続回路(27)を有する制御回路(24)と、
前記半導体素子の表面側に載置され、前記表面電極に電気的に接続された電気接続部材(6)と、を備え、
前記複数のゲート電極は、第1ゲート電極(17a)および第2ゲート電極(17b)を含んでおり、
前記半導体素子のセル領域(7)のうち、前記第1ゲート電極に電圧が印加されることによって前記表面電極と前記裏面電極との間に電流が流れる領域を第1セル領域(7a)とし、前記第2ゲート電極に電圧が印加されることによって前記表面電極と前記裏面電極との間に電流が流れる領域を第2セル領域(7b)として、
前記半導体素子および前記制御回路は、前記第1セル領域および前記第2セル領域に流れる電流を遮断する際に、前記第1セル領域と前記第2セル領域との間で電流遮断の時間差が生じる構成とされて
おり、
前記駆動回路と前記第1ゲート電極とは、第1抵抗体(29)を介して接続されており、
前記駆動回路と前記第2ゲート電極とは、前記第1抵抗体と抵抗値が等しい第2抵抗体(30)を介して接続されており、
前記第1ゲート電極と前記裏面電極とは、双方向の第1ツェナーダイオード(32)を介して接続されており、
前記第2ゲート電極と前記裏面電極とは、双方向の第2ツェナーダイオード(33)を介して接続されており、
前記第1ゲート電極の側から見た前記第1ツェナーダイオードのブレークダウン電圧は、前記半導体素子の通常動作時に前記第1ゲート電極に印加される電圧よりも大きく、
前記第2ゲート電極の側から見た前記第2ツェナーダイオードのブレークダウン電圧は、前記半導体素子の通常動作時に前記第2ゲート電極に印加される電圧よりも大きく、
前記裏面電極の側から見た前記第2ツェナーダイオードのブレークダウン電圧は、前記裏面電極の側から見た前記第1ツェナーダイオードのブレークダウン電圧よりも小さい半導体装置。
【請求項17】
半導体装置であって、
基板(11)、前記基板の表面側に形成された表面電極(19)、前記基板の裏面側に形成された裏面電極(20)、および前記基板の表面側に形成された複数のゲート電極(17)を有し、前記複数のゲート電極への電圧の印加によって、前記表面電極と前記裏面電極との間の通電と遮断とが制御される半導体素子(4)と、
前記複数のゲート電極に印加する電圧を出力する駆動回路(26)と前記複数のゲート電極とを接続する接続回路(27)を有する制御回路(24)と、
前記半導体素子の表面側に載置され、前記表面電極に電気的に接続された電気接続部材(6)と、を備え、
前記複数のゲート電極は、第1ゲート電極(17a)および第2ゲート電極(17b)を含んでおり、
前記半導体素子のセル領域(7)のうち、前記第1ゲート電極に電圧が印加されることによって前記表面電極と前記裏面電極との間に電流が流れる領域を第1セル領域(7a)とし、前記第2ゲート電極に電圧が印加されることによって前記表面電極と前記裏面電極との間に電流が流れる領域を第2セル領域(7b)として、
前記半導体素子および前記制御回路は、前記第1セル領域および前記第2セル領域に流れる電流を遮断する際に、前記第1セル領域と前記第2セル領域との間で電流遮断の時間差が生じる構成とされて
おり、
前記第1ゲート電極は、第1駆動回路(26a)に接続されており、
前記第2ゲート電極は、第2駆動回路(26b)に接続されており、
前記第1駆動回路の駆動能力は、前記第2駆動回路の駆動能力よりも高い半導体装置。
【請求項18】
半導体装置であって、
基板(11)、前記基板の表面側に形成された表面電極(19)、前記基板の裏面側に形成された裏面電極(20)、および前記基板の表面側に形成された複数のゲート電極(17)を有し、前記複数のゲート電極への電圧の印加によって、前記表面電極と前記裏面電極との間の通電と遮断とが制御される半導体素子(4)と、
前記複数のゲート電極に印加する電圧を出力する駆動回路(26)と前記複数のゲート電極とを接続する接続回路(27)を有する制御回路(24)と、
前記半導体素子の表面側に載置され、前記表面電極に電気的に接続された電気接続部材(6)と、を備え、
前記複数のゲート電極は、第1ゲート電極(17a)および第2ゲート電極(17b)を含んでおり、
前記半導体素子のセル領域(7)のうち、前記第1ゲート電極に電圧が印加されることによって前記表面電極と前記裏面電極との間に電流が流れる領域を第1セル領域(7a)とし、前記第2ゲート電極に電圧が印加されることによって前記表面電極と前記裏面電極との間に電流が流れる領域を第2セル領域(7b)として、
前記半導体素子および前記制御回路は、前記第1セル領域および前記第2セル領域に流れる電流を遮断する際に、前記第1セル領域と前記第2セル領域との間で電流遮断の時間差が生じる構成とされて
おり、
前記駆動回路と前記第1ゲート電極および前記第2ゲート電極とは、短絡されており、
前記第1セル領域の閾値電圧は、前記第2セル領域の閾値電圧よりも大きい半導体装置。
【請求項19】
半導体装置であって、
基板(11)、前記基板の表面側に形成された表面電極(19)、前記基板の裏面側に形成された裏面電極(20)、および前記基板の表面側に形成された複数のゲート電極(17)を有し、前記複数のゲート電極への電圧の印加によって、前記表面電極と前記裏面電極との間の通電と遮断とが制御される半導体素子(4)と、
前記複数のゲート電極に印加する電圧を出力する駆動回路(26)と前記複数のゲート電極とを接続する接続回路(27)を有する制御回路(24)と、
前記半導体素子の表面側に載置され、前記表面電極に電気的に接続された電気接続部材(6)と、を備え、
前記複数のゲート電極は、第1ゲート電極(17a)および第2ゲート電極(17b)を含んでおり、
前記半導体素子のセル領域(7)のうち、前記第1ゲート電極に電圧が印加されることによって前記表面電極と前記裏面電極との間に電流が流れる領域を第1セル領域(7a)とし、前記第2ゲート電極に電圧が印加されることによって前記表面電極と前記裏面電極との間に電流が流れる領域を第2セル領域(7b)として、
前記半導体素子および前記制御回路は、前記第1セル領域および前記第2セル領域に流れる電流を遮断する際に、前記第1セル領域と前記第2セル領域との間で電流遮断の時間差が生じる構成とされて
おり、
前記駆動回路と前記第1ゲート電極とは、第1抵抗体(29)を介して接続されており、
前記駆動回路と前記第2ゲート電極とは、前記第1抵抗体と抵抗値が等しい第2抵抗体(30)を介して接続されており、
前記第1セル領域の閾値電圧は、前記第2セル領域の閾値電圧よりも大きい半導体装置。
【請求項20】
半導体装置であって、
基板(11)、前記基板の表面側に形成された表面電極(19)、前記基板の裏面側に形成された裏面電極(20)、および前記基板の表面側に形成された複数のゲート電極(17)を有し、前記複数のゲート電極への電圧の印加によって、前記表面電極と前記裏面電極との間の通電と遮断とが制御される半導体素子(4)と、
前記複数のゲート電極に印加する電圧を出力する駆動回路(26)と前記複数のゲート電極とを接続する接続回路(27)を有する制御回路(24)と、
前記半導体素子の表面側に載置され、前記表面電極に電気的に接続された電気接続部材(6)と、を備え、
前記複数のゲート電極は、第1ゲート電極(17a)および第2ゲート電極(17b)を含んでおり、
前記半導体素子のセル領域(7)のうち、前記第1ゲート電極に電圧が印加されることによって前記表面電極と前記裏面電極との間に電流が流れる領域を第1セル領域(7a)とし、前記第2ゲート電極に電圧が印加されることによって前記表面電極と前記裏面電極との間に電流が流れる領域を第2セル領域(7b)として、
前記半導体素子および前記制御回路は、前記第1セル領域および前記第2セル領域に流れる電流を遮断する際に、前記第1セル領域と前記第2セル領域との間で電流遮断の時間差が生じる構成とされて
おり、
前記駆動回路と前記第1ゲート電極とは、第1抵抗体(29)を介して接続されており、
前記駆動回路と前記第2ゲート電極とは、前記第1抵抗体と抵抗値が等しい第2抵抗体(30)を介して接続されており、
前記第1ゲート電極と前記裏面電極とは、双方向の第1ツェナーダイオード(32)を介して接続されており、
前記第2ゲート電極と前記裏面電極とは、双方向の第2ツェナーダイオード(33)を介して接続されており、
前記第1ゲート電極の側から見た前記第1ツェナーダイオードのブレークダウン電圧は、前記半導体素子の通常動作時に前記第1ゲート電極に印加される電圧よりも大きく、
前記第2ゲート電極の側から見た前記第2ツェナーダイオードのブレークダウン電圧は、前記半導体素子の通常動作時に前記第2ゲート電極に印加される電圧よりも大きく、
前記裏面電極の側から見た前記第1ツェナーダイオードおよび前記第2ツェナーダイオードのブレークダウン電圧は互いに等しく、
前記第1セル領域の閾値電圧は、前記第2セル領域の閾値電圧よりも大きい半導体装置。
【請求項21】
前記半導体素子および前記制御回路は、前記第1セル領域および前記第2セル領域に流れる電流を遮断する際に、前記第1セル領域において前記第2セル領域よりも先に電流が遮断される構成とされている請求項1
ないし20のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項22】
前記接続回路は、前記半導体素子のうちセルが配置されていない領域に形成されている請求項1ないし
21のいずれか1つに記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板の表面電極に電気接続部材が接続された半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この電気接続部材は、半導体素子の表面電極を外部の回路に接続するとともに、放熱によって半導体素子の温度上昇を低減する役割を担っている。
【0003】
このような電気接続部材を備える半導体装置では、半導体素子のうち、電気接続部材に接続された部分と、その外側の部分との間に熱抵抗差が生じる。そして、この熱抵抗差が電流正帰還を助長することで耐量が低下し、素子破壊が起こるおそれがある。これについて、電気接続部材の外側のセルを間引くことで、熱集中を緩和する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このようにセルを間引くと、通常動作時のオン抵抗が上がり、電力損失が大きくなる。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、オン抵抗の増加を抑制しつつ耐量を向上させることが可能な半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、半導体装置であって、基板(11)、基板の表面側に形成された表面電極(19)、基板の裏面側に形成された裏面電極(20)、および基板の表面側に形成された複数のゲート電極(17)を有し、複数のゲート電極への電圧の印加によって、表面電極と裏面電極との間の通電と遮断とが制御される半導体素子(4)と、複数のゲート電極に印加する電圧を出力する駆動回路(26)と複数のゲート電極とを接続する接続回路(27)を有する制御回路(24)と、半導体素子の表面側に載置され、表面電極に電気的に接続された電気接続部材(6)と、を備え、複数のゲート電極は、第1ゲート電極(17a)および第2ゲート電極(17b)を含んでおり、半導体素子のセル領域(7)のうち、第1ゲート電極に電圧が印加されることによって表面電極と裏面電極との間に電流が流れる領域を第1セル領域(7a)とし、第2ゲート電極に電圧が印加されることによって表面電極と裏面電極との間に電流が流れる領域を第2セル領域(7b)として、半導体素子および制御回路は、第1セル領域および第2セル領域に流れる電流を遮断する際に、第1セル領域と第2セル領域との間で電流遮断の時間差が生じる構成とされており、第1ゲート電極および第2ゲート電極は、それぞれストライプ状に形成されており、複数の第1ゲート電極のかたまりと、1つまたは複数の第2ゲート電極のかたまりとが交互に並んでいる。
【0008】
これによれば、通常動作時には第1、第2セル領域の両方を動作させ、電流の遮断時には一方のセル領域で先に電流を遮断して擬似的にセルの数を減らすことができる。したがって、通常動作時のオン抵抗の増加を抑制しつつ、遮断時の電流正帰還による温度上昇を低減し、半導体素子の耐量を向上させることができる。
【0009】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態にかかる半導体装置の側面図である。
【
図2】第1実施形態にかかる半導体装置の上面図である。
【
図4】第1実施形態にかかる半導体装置を用いた負荷駆動回路の回路図である。
【
図6】ゲート電圧とドレイン電流との関係を示す図である。
【
図7】第2実施形態にかかる半導体装置の上面図である。
【
図8】第3実施形態にかかる半導体装置の上面図である。
【
図9】第4実施形態にかかる半導体装置の上面図である。
【
図10】第5実施形態における半導体素子および制御回路の回路図である。
【
図11】第5実施形態における半導体素子および制御回路の回路図である。
【
図12】第6実施形態における半導体素子および制御回路の回路図である。
【
図13】第6実施形態における半導体素子および制御回路の回路図である。
【
図14】第7実施形態における半導体素子の断面図である。
【
図15】第7実施形態における半導体素子および制御回路の回路図である。
【
図16】第8実施形態における半導体素子および制御回路の回路図である。
【
図17】他の実施形態にかかる半導体装置の上面図である。
【
図18】他の実施形態にかかる半導体装置の上面図である。
【
図19】他の実施形態にかかる半導体装置の側面図である。
【
図20】他の実施形態にかかる半導体装置の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0012】
(第1実施形態)
第1実施形態について説明する。
図1に示す本実施形態の半導体装置1は、例えば車両ECU等の電気負荷に電力を供給する負荷駆動回路で用いられるものである。ECUはElectronic Control Unitの略である。半導体装置1は、リードフレーム2と、はんだ3と、半導体素子4と、はんだ5と、電気接続部材6とを備えている。
【0013】
リードフレーム2は、半導体素子4を支持する板状の部材であり、銅等の導電性材料で構成されている。リードフレーム2の表面には、はんだ3によって半導体素子4の裏面が接合されている。
【0014】
半導体素子4は、MOSFET、IGBT等の、電圧印加により通電・遮断状態を制御するスイッチング素子である。MOSFETはMetal Oxide Semiconductor Field Effect Transistorの略である。IGBTはInsulated Gate Bipolar Transistorの略である。
【0015】
本実施形態では、半導体素子4が、表面側にソース電極およびゲート電極が形成され、裏面にドレイン電極が形成されたトレンチゲート型のDMOS素子である場合について説明する。DMOSはDouble-Diffused MOSFETの略である。半導体素子4の表面には、はんだ5によって電気接続部材6の裏面が接合されている。
【0016】
電気接続部材6は、半導体素子4のソース電極をリードフレーム2の図示しないリード部に接続するものであり、銅等の導電性材料で構成されている。また、電気接続部材6は、半導体素子4の熱を放散させ、半導体素子4の温度上昇を抑制するための役割も備えている。本実施形態の電気接続部材6は、放熱板、ヒートスプレッダ、クリップ等と呼ばれるものであり、矩形板状の端部が半導体素子4の表面側に載置されている。
【0017】
半導体素子4の詳細な構成について説明する。
図2に示すように、半導体素子4は、四角形状のセル領域7を囲むように外周領域8が配置された構造とされている。セル領域7には、
図3に示すトレンチゲート型のDMOSが多数形成されており、外周領域8には、後述するゲート電極17に接続されたゲートパッド9が形成されている。
【0018】
はんだ5および電気接続部材6は、セル領域7の一部の領域を覆うように配置されており、主にこの領域、すなわち、半導体素子4のうち電気接続部材6の下部に位置する部分において放熱が行われる。この放熱が行われる領域を放熱領域10とする。本実施形態では、放熱領域10はセル領域7の内周部における矩形状の領域とされている。
【0019】
図3に示すように、半導体素子4は、基板11と、n型エピタキシャル層12と、p型高不純物層13と、n
+型ソース領域14と、トレンチ15と、ゲート絶縁膜16と、ゲート電極17と、層間絶縁膜18と、ソース電極19と、ドレイン電極20とを備えている。
【0020】
基板11は、例えばシリコンで構成されている。基板11の表面にはn型エピタキシャル層12が形成されている。半導体素子4では、n型エピタキシャル層12の上にDMOS等を構成する各部が形成されている。
【0021】
n型エピタキシャル層12の表層部には、p型高不純物層13が形成されている。p型高不純物層13は、n型エピタキシャル層12の表面から所定深さまでp型不純物をイオン注入することで形成される。p型高不純物層13は、p型ボディ層として機能するとともにMOSFETのチャネルを形成するp型チャネル層としても機能する。
【0022】
p型高不純物層13の表層部の一部には、n+型ソース領域14が形成されている。n+型ソース領域14は、p型高不純物層13の表面から所定深さまでn型不純物をイオン注入することで形成される。n+型ソース領域14は複数形成されており、複数のn+型ソース領域14は、基板11の表面と平行な一方向を長手方向として、ストライプ状に形成されている。
【0023】
半導体素子4のうちn+型ソース領域14が形成された部分には、トレンチ15が形成されている。トレンチ15は、n+型ソース領域14およびp型高不純物層13を貫通してn型エピタキシャル層12に達するように形成されている。トレンチ15は、n+型ソース領域14に対応して複数形成されており、複数のトレンチ15は、n+型ソース領域14と同方向を長手方向として、ストライプ状に形成されている。
【0024】
トレンチ15の内壁面には、酸化膜等によってゲート絶縁膜16が形成されている。基板11の表面側には、ゲート絶縁膜16の表面においてトレンチ15を埋め込むように、ゲート電極17が形成されている。ゲート電極17は、図示しないゲート配線層によってゲートパッド9に接続されている。
【0025】
後述するように、半導体素子4の表面、裏面にはソース電極19、ドレイン電極20が形成されている。そして、ゲートパッド9および図示しないゲート配線層を介してゲート電極17にゲート電圧が印加されると、p型高不純物層13のうちトレンチ15の側面に接する部分にチャネルが形成され、ソース電極19とドレイン電極20との間にドレイン電流が流れる。
【0026】
ゲート電極17はn+型ソース領域14、トレンチ15に対応して複数形成されており、複数のゲート電極17は第1ゲート電極17aと第2ゲート電極17bとを含んでいる。セル領域7のうち、第1ゲート電極17aに電圧を印加することによってソース電極19とドレイン電極20との間に電流が流れる領域を第1セル領域7aとする。また、セル領域7のうち、第2ゲート電極17bに電圧を印加することによってソース電極19とドレイン電極20との間に電流が流れる領域を第2セル領域7bとする。
【0027】
図2に示すように、第1ゲート電極17aおよび第2ゲート電極17bは、交互に並ぶようにストライプ状に形成されている。そして、第1セル領域7aおよび第2セル領域7bは、第1ゲート電極17aおよび第2ゲート電極17bの延設方向に沿って、交互に並ぶようにストライプ状に形成されている。
【0028】
外周領域8には複数のゲートパッド9が形成されている。第1ゲート電極17aと第2ゲート電極17bは別々のゲートパッド9に接続されており、第1ゲート電極17aと第2ゲート電極17bとを互いに異なる経路で後述する駆動回路26に接続することが可能とされている。
【0029】
ゲート電極17上には、層間絶縁膜18が形成されている。層間絶縁膜18には、ゲート電極17を覆い、p型高不純物層13およびn+型ソース領域14の表面を露出させるように、コンタクトホールが設けられている。ソース電極19は、層間絶縁膜18を覆い、層間絶縁膜18のコンタクトホールを介してp型高不純物層13およびn+型ソース領域14と接するように、基板11の表面側に形成されている。ソース電極19は、表面電極に相当する。
【0030】
ソース電極19は、セル領域7全体に形成されており、外縁部が図示しない保護膜によって覆われている。外縁部よりも内側の領域は保護膜から露出しており、この領域が外部接続用のソースパッドとされる。半導体素子4は、このソースパッドにおいて、はんだ5を介して電気接続部材6に電気的に接続されている。そして、ソース電極19からはんだ5を介して電気接続部材6に熱が移動することで、半導体素子4の温度上昇が抑制される。
【0031】
基板11の裏面側、すなわちn型エピタキシャル層12とは反対側の面には、ドレイン電極20が形成されている。ドレイン電極20は、裏面電極に相当する。このような構造により、セル領域7におけるMOSFETが構成されており、ゲート電極17への電圧の印加によって、ソース電極19とドレイン電極20との間の通電と遮断とが制御される。
【0032】
半導体装置1を用いた負荷駆動回路について説明する。
図4に示す負荷駆動回路は、電源から電気負荷に供給される電流のオンとオフを半導体素子4によって切り替えるように構成されている。負荷駆動回路は、半導体素子4と、電源21と、配線22と、負荷23と、制御回路24とで構成されている。
【0033】
電源21は、配線22によって半導体素子4のドレイン電極20に接続されている。半導体素子4のソース電極19には、負荷23が接続されている。
図4に示すダイオード25は、半導体素子4のn型エピタキシャル層12とp型高不純物層13とで構成された寄生ダイオードである。半導体素子4のゲート電極17は、制御回路24に接続されている。
【0034】
制御回路24は、複数のゲート電極17に電圧を印加するものであり、駆動回路26と、接続回路27とで構成されている。駆動回路26は、複数のゲート電極17に印加する電圧を出力するものである。駆動回路26は、接続回路27を介して複数のゲート電極17に接続されている。半導体装置1は、制御回路24のうち接続回路27を備えている。駆動回路26については、半導体装置1に備えられていてもよいし、半導体装置1の外部に設けられていてもよい。
【0035】
半導体素子4および制御回路24は、第1セル領域7aおよび第2セル領域7bに流れる電流を遮断する際に、第1セル領域7aと第2セル領域7bとの間で電流遮断の時間差が生じる構成とされている。
【0036】
具体的には、半導体素子4および制御回路24は、第1セル領域7aおよび第2セル領域7bに流れる電流を遮断する際に、第1セル領域7aにおいて第2セル領域7bよりも先にドレイン電流が遮断される構成とされている。そして、第1セル領域7aは、半導体素子4のうち電気接続部材6の下部に位置する部分の外側を含むように形成されており、第2セル領域7bは、半導体素子4のうち電気接続部材6の下部に位置する部分を含むように形成されている。
【0037】
図2に示すように、本実施形態では、半導体素子4のうち電気接続部材6の下部に位置する部分、すなわち放熱領域10と、放熱領域10の外側とにおいて、第1セル領域7aと第2セル領域7bの両方が形成されている。
【0038】
本実施形態では、接続回路27は第1セル領域7aと第2セル領域7bとの間に導通抵抗の差が生じるように構成されており、これにより電流遮断の時間差が生じるようになっている。具体的には、第1ゲート電極17aと第2ゲート電極17bは、接続回路27によって、異なる経路で駆動回路26に接続されている。そして、接続回路27のうち第1ゲート電極17aと駆動回路26とを接続する部分と、第2ゲート電極17bと駆動回路26とを接続する部分とで、抵抗値の差が設けられている。
【0039】
例えば、
図4に示すように、接続回路27は、第1ゲート電極17aと駆動回路26とを短絡する回路と、第2ゲート電極17bと駆動回路26とを抵抗体28を介して接続する回路とで構成されている。
【0040】
あるいは、
図5に示すように、第1ゲート電極17aと駆動回路26とは抵抗体29を介して接続されており、第2ゲート電極17bと駆動回路26とは抵抗体30を介して接続されている。そして、抵抗体29、抵抗体30の抵抗値をそれぞれR1、R2として、R1<R2とされている。抵抗体29、抵抗体30は、それぞれ第1抵抗体、第2抵抗体に相当する。
【0041】
このように、第2ゲート電極17bのゲート抵抗値を第1ゲート電極17aよりも大きくすることで、駆動回路26から複数のゲート電極17に印加する電圧をオフにしたときに、第1セル領域7aのドレイン電流が第2セル領域7bよりも先に遮断される。すなわち、半導体素子4上のセルが擬似的に間引かれた状態になる。
【0042】
図6は、第1セル領域7aのみを動作させた場合と、第1セル領域7aおよび第2セル領域7bの両方を動作させた場合のゲート電圧とドレイン電流との関係を示す。
図6において、実線、破線は、それぞれ第1セル領域7aのみを動作させた場合の室温時、高温時のゲート電圧とドレイン電流との関係を示す。一点鎖線、二点鎖線は、それぞれ第1セル領域7aおよび第2セル領域7bの両方を動作させた場合の室温時、高温時のゲート電圧とドレイン電流との関係を示す。
【0043】
図6の矢印で示すように、第1セル領域7aのみを動作させた場合、すなわちセルを擬似的に間引いた場合には、遮断時の動作領域において、第1セル領域7a、第2セル領域7bの両方を動作させた場合に比べて、室温時と高温時のドレイン電流の差が小さくなる。このように、セルを間引くことで、室温時と高温時のドレイン電流の差が小さくなり、電流正帰還による温度上昇を低減することができる。
【0044】
半導体素子4と負荷23との間で地絡が発生すると、駆動回路26は半導体素子4へ制御信号を送り、ゲート電極17の電圧を下げることで、負荷23へ供給される電流を遮断する。このとき、半導体素子4において、放熱領域10の内側と外側との間に熱抵抗差があるため、この熱抵抗差が電流正帰還を助長することで耐量が低下し、素子破壊が起こるおそれがある。これについて、放熱領域10の外側におけるセルの数を減らすことで、熱集中を緩和し、電流正帰還による温度上昇を低減する方法がある。しかしながら、このようにセルを間引くと、通常動作時のオン抵抗が上がり、電力損失が大きくなる。
【0045】
これに対して、本実施形態では、通常動作時には第1セル領域7aと第2セル領域7bの両方を動作させている。そして、ドレイン電流の遮断時には一方のセル領域が先に遮断されるようにして、擬似的にセルの数を減らしている。したがって、通常動作時のオン抵抗の増加を抑制しつつ、遮断時の電流正帰還による温度上昇を低減し、半導体素子4の耐量を向上させることができる。
【0046】
また、上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0047】
(1)半導体素子4および制御回路24は、第1セル領域7aおよび第2セル領域7bに流れる電流を遮断する際に、第1、第2セル領域7a、7b間の導通抵抗の差によって、第1セル領域7aにおいて第2セル領域7bよりも先に電流が遮断される構成とされている。
【0048】
そして、電気接続部材6は、基板11の表面側の一部を覆うように載置されており、第1セル領域7aは、半導体素子4のうち電気接続部材6の下部に位置する部分の外側を含むように形成されている。また、第2セル領域7bは、半導体素子4のうち電気接続部材6の下部に位置する部分を含むように形成されている。
【0049】
このように、先にドレイン電流が遮断される第1セル領域7aを放熱領域10の外側に配置することで、電流正帰還による温度上昇をさらに低減することができる。
【0050】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して第1セル領域7a、第2セル領域7bの配置を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0051】
本実施形態では、半導体素子4のうち電気接続部材6の下部に位置する部分には、第1セル領域7aおよび第2セル領域7bのうち第2セル領域7bのみが形成されている。半導体素子4のうち電気接続部材6の下部に位置する部分の外側には、第1セル領域7aおよび第2セル領域7bの両方が形成されている。
【0052】
具体的には、
図7に示すように、放熱領域10では第2セル領域7bがストライプ状に形成されており、放熱領域10の外側では第1セル領域7aと第2セル領域7bとが交互にストライプ状に形成されている。
【0053】
本実施形態は、第1実施形態と同様の構成および作動からは第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0054】
また、上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0055】
(1)半導体素子4のうち電気接続部材6の下部に位置する部分には、第1セル領域7aおよび第2セル領域7bのうち第2セル領域7bのみが形成されている。また、半導体素子4のうち電気接続部材6の下部に位置する部分の外側には、第1セル領域7aおよび第2セル領域7bが形成されている。これにより、放熱領域10の外部でのみ遮断時にセルの数が擬似的に減るため、電流正帰還による温度上昇を効率的に低減することができる。
【0056】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。本実施形態は、第2実施形態に対して第1セル領域7a、第2セル領域7bの数を変更したものであり、その他については第2実施形態と同様であるため、第2実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0057】
本実施形態では、複数の第1セル領域7aと1つの第2セル領域7bとが交互にストライプ状に形成されている。具体的には、
図8に示すように、放熱領域10の外側において、3つの第1セル領域7aのかたまりと1つの第2セル領域7bとが交互に並んでいる。
【0058】
本実施形態は、第1、第2実施形態と同様の構成および作動からは第1、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0059】
また、上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0060】
(1)複数の第1セル領域7aと1つの第2セル領域7bとが交互に並んでいる。このような構成では、半導体素子4が微細な構造である場合に、1つの第1セル領域7aと1つの第2セル領域7bとが交互に並んだ構成に比べて、半導体素子4の製造が容易になる。
【0061】
(第4実施形態)
第4実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して接続回路27の配置を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0062】
本実施形態では、接続回路27は、半導体素子4のうちセルが配置されていない領域に形成されている。具体的には、
図9に示すように、接続回路27は、外周領域8のうちセル領域7およびゲートパッド9から離れた場所に配置されている。
【0063】
本実施形態は、第1実施形態と同様の構成および作動からは第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0064】
また、上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0065】
(1)接続回路27は、半導体素子4のうちセルが配置されていない領域に形成されている。このように、半導体素子4のセルと接続回路27とを1つの基板上に形成することで、半導体装置1を用いた回路の構成が簡素化される。
【0066】
(第5実施形態)
第5実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して接続回路27の構成を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0067】
本実施形態では、ツェナーダイオードを用いて第1セル領域7aと第2セル領域7bとの間に電流遮断の時間差を生じさせている。
【0068】
例えば、
図10に示すように、接続回路27は抵抗体29、30に加えて双方向のツェナーダイオード31を備えている。R1とR2は互いに等しい値とされている。なお、R1とR2とが互いに等しいことには、これらが完全に等しいことだけでなく、略等しいことも含まれる。
【0069】
第2ゲート電極17bとドレイン電極20とは、ツェナーダイオード31を介して接続されている。第2ゲート電極17bからドレイン電極20の電位を見たときのツェナーダイオード31のブレークダウン電圧は、半導体素子4の通常動作時に第2ゲート電極17bに印加される電圧よりも大きくされている。
【0070】
このような構成では、遮断時に第1セル領域7aでゲート電圧が下がる一方、第2セル領域7bではツェナーダイオード31により電圧が与えられるため、第2セル領域7bでは第1セル領域7aよりも遮断が遅くなる。
【0071】
あるいは、
図11に示すように、接続回路27は抵抗体29、30に加えて双方向のツェナーダイオード32、33を備えている。R1とR2は互いに等しい値とされている。第1ゲート電極17aとドレイン電極20とは、ツェナーダイオード32を介して接続されており、第2ゲート電極17bとドレイン電極20とは、ツェナーダイオード33を介して接続されている。
【0072】
第1ゲート電極17aからドレイン電極20の電位を見たときのツェナーダイオード32のブレークダウン電圧は、半導体素子4の通常動作時に第1ゲート電極17aに印加される電圧よりも大きい。また、第2ゲート電極17bからドレイン電極20の電位を見たときのツェナーダイオード33のブレークダウン電圧は、半導体素子4の通常動作時に第2ゲート電極17bに印加される電圧よりも大きい。
【0073】
ツェナーダイオード33のドレイン電極20側から見たブレークダウン電圧は、ツェナーダイオード32のドレイン電極20側から見たブレークダウン電圧よりも小さい。ツェナーダイオード32、ツェナーダイオード33は、第1ツェナーダイオード、第2ツェナーダイオードに相当する。
【0074】
このような構成では、遮断時にツェナーダイオード32、33により第1セル領域7a、第2セル領域7bの両方で電圧が与えられる。しかしながら、ツェナーダイオード33のブレークダウン電圧がツェナーダイオード32よりも小さいため、第2セル領域7bでは第1セル領域7aよりも遮断が遅くなる。
【0075】
本実施形態は、第1実施形態と同様の構成および作動からは第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0076】
(第6実施形態)
第6実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して接続回路27の構成を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0077】
本実施形態では、遅延回路を用いて第1セル領域7aと第2セル領域7bとの間に電流遮断の時間差を生じさせている。
【0078】
例えば、
図12に示すように、接続回路27は抵抗体29、30に加えて抵抗体34、コンデンサ35を備えている。R1とR2は互いに等しい値とされている。第2ゲート電極17bとソース電極19とは、抵抗体34とコンデンサ35とが直列に接続された回路を介して接続されている。抵抗体34は第3抵抗体に相当する。
【0079】
このような構成では、遮断時に第1セル領域7aでゲート電圧が下がる一方、第2セル領域7bでは抵抗体34、コンデンサ35で構成された遅延回路により電圧低下が遅れるため、第2セル領域7bでは第1セル領域7aよりも遮断が遅くなる。
【0080】
あるいは、
図13に示すように、接続回路27は抵抗体29、30に加えて抵抗体36、コンデンサ37、抵抗体38、コンデンサ39を備えている。R1とR2は互いに等しい値とされている。第1ゲート電極17aとソース電極19とは、抵抗体36とコンデンサ37とが直列に接続された回路を介して接続されており、第2ゲート電極17bとソース電極19とは、抵抗体38とコンデンサ39とが直列に接続された回路を介して接続されている。
【0081】
コンデンサ39の静電容量は、コンデンサ37の静電容量よりも大きくされている。抵抗体36、抵抗体38はそれぞれ第4抵抗体、第5抵抗体に相当し、コンデンサ37、コンデンサ39はそれぞれ第1コンデンサ、第2コンデンサに相当する。
【0082】
このような構成では、遮断時に抵抗体36、コンデンサ37で構成された遅延回路と、抵抗体38、コンデンサ39で構成された遅延回路とによって、第1セル領域7a、第2セル領域7bの両方で電圧低下が遅れる。しかしながら、コンデンサ39の静電容量がコンデンサ37よりも大きいため、第2セル領域7bでは第1セル領域7aよりも遮断が遅くなる。
【0083】
本実施形態は、第1実施形態と同様の構成および作動からは第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0084】
(第7実施形態)
第7実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して半導体素子4および接続回路27の構成を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0085】
本実施形態では、第1ゲート電極17aと第2ゲート電極17bとで閾値電圧に差を持たせることで、第1セル領域7aと第2セル領域7bとの間に電流遮断の時間差を生じさせている。
【0086】
閾値電圧は、ゲート絶縁膜16の厚さによって調整することができる。すなわち、
図14に示すように、第1ゲート電極17aが形成されたトレンチ15内のゲート絶縁膜16を、第2ゲート電極17bが形成されたトレンチ15内のゲート絶縁膜16よりも厚く形成する。これにより、第1セル領域7aの閾値電圧が第2セル領域7bよりも大きくなる。
【0087】
このような構成では、第1セル領域7aと第2セル領域7bとを同じ構成の回路で駆動回路26に接続することができる。例えば、
図15に示すように、接続回路27は、第1ゲート電極17aと第2ゲート電極17bとを駆動回路26に短絡させる構成とされる。
【0088】
あるいは、接続回路27は
図5に示す構成とされ、R1=R2とされる。あるいは、接続回路27は
図11に示す構成とされ、ツェナーダイオード32、33のブレークダウン電圧をそれぞれVz1、Vz2として、R1=R2、Vz1=Vz2とされる。なお、Vz1とVz2とが互いに等しいことには、これらが完全に等しいことだけでなく、略等しいことも含まれる。
【0089】
本実施形態は、第1実施形態と同様の構成および作動からは第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0090】
(第8実施形態)
第8実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して制御回路24の構成を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0091】
本実施形態では、駆動回路26の駆動能力によって、第1セル領域7aと第2セル領域7bとの間に電流遮断の時間差を生じさせている。
図16に示すように、本実施形態では2つの駆動回路26が配置されている。2つの駆動回路26をそれぞれ第1駆動回路26a、第2駆動回路26bとする。
【0092】
第1駆動回路26aは接続回路27によって第1ゲート電極17aに短絡されており、第2駆動回路26bは接続回路27によって第2ゲート電極17bに短絡されている。第1駆動回路26aは第2駆動回路26bよりも駆動能力が高くされている。
【0093】
第1駆動回路26aの駆動能力を第2駆動回路26bよりも高くすることで、第1駆動回路26aと第2駆動回路26bとで同時にオフ信号を出力した場合には、第1セル領域7aでは第2セル領域7bよりも早くゲート電圧が低下し、ドレイン電流が遮断される。なお、第1セル領域7aで第2セル領域7bよりも早くドレイン電流が遮断されるのであれば、第2駆動回路26bにおいて第1駆動回路26aよりも先にオフ信号を出力してもよい。
【0094】
本実施形態は、第1実施形態と同様の構成および作動からは第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0095】
(他の実施形態)
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0096】
上記各実施形態では、半導体素子4がDMOS素子である場合について説明したが、半導体素子4が他の半導体素子とされていてもよい。例えば、半導体素子4がIGBT素子とされていてもよい。
【0097】
第1実施形態において、第3実施形態のように第1セル領域7aと第2セル領域7bの数を設定してもよい。第2、第3実施形態において、第4実施形態のように接続回路27を半導体素子4上に形成してもよい。第2~第4実施形態において、第5、第6実施形態のように接続回路27を構成してもよい。第2~第4実施形態において、第7実施形態のように半導体素子4を構成してもよい。第2、第3実施形態において、第8実施形態のように駆動回路26を構成してもよい。
【0098】
第3実施形態において、2つの第1セル領域7aと1つの第2セル領域7bとを交互に並べてもよい。また、4つ以上の第1セル領域7aと1つの第2セル領域7bとを交互に並べてもよい。また、1つの第1セル領域7aと複数の第2セル領域7bとを交互に並べてもよい。また、複数の第1セル領域7aと複数の第2セル領域7bとを交互に並べてもよい。
【0099】
図17、
図18に示すように、放熱領域10がセル領域7の外周部の一部を含むように電気接続部材6が配置されていてもよい。
図17に示すように、第1セル領域7aおよび第2セル領域7bのうち第2セル領域7bのみが放熱領域10の内部に形成され、第1セル領域7aのみが放熱領域10の外部に形成されていてもよい。上記各実施形態では、遮断時にセルを擬似的に間引いたが、
図17に示すように先に遮断される領域を限定することでも、通常動作時のオン抵抗の増加を抑制しつつ、遮断時の電流正帰還による温度上昇を低減することができる。また、放熱領域10がセル領域7の外周部の一部を含む場合に、
図18に示すように、第1セル領域7aおよび第2セル領域7bのうち第2セル領域7bのみが放熱領域10の内部に形成され、これらの両方が放熱領域10の外部に形成されていてもよい。
【0100】
図19に示すように、電気接続部材6をボンディングワイヤで構成してもよい。この場合に、2つの電気接続部材6をソース電極19に接続して、
図20に示すように2つの放熱領域10を形成してもよい。
【0101】
図2、
図7~
図9、
図17、
図18では、第1セル領域7a、第2セル領域7b、第1ゲート電極17a、第2ゲート電極17bが図の左右方向に延設されているが、これらが図の上下方向に延設されていてもよい。
【符号の説明】
【0102】
4 半導体素子
6 電気接続部材
7a 第1セル領域
7b 第2セル領域
17a 第1ゲート電極
17b 第2ゲート電極
24 制御回路