(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-19
(45)【発行日】2025-05-27
(54)【発明の名称】紙容器及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 5/24 20060101AFI20250520BHJP
【FI】
B65D5/24 J
(21)【出願番号】P 2021086911
(22)【出願日】2021-05-24
【審査請求日】2024-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】谷口 正幸
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公告第01436205(GB,A)
【文献】特開2010-260621(JP,A)
【文献】特開2019-031644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定形状に断裁された板紙に、必要な打ち抜きを施し、板紙の打ち抜かれた部分以外の表面に接着剤を塗布して乾燥した後、
接着剤面に、板紙の寸法より大きな寸法の合成樹脂フィルムを載置して、
全体を平面プレス機で圧締して、板紙と合成樹脂フィルムとを接着し、
板紙層と内面合成樹脂フィルム層を有する積層体を作成した後、
所定のブランクシート形状に打ち抜くことを特徴とするトレー型紙容器の製造方法であって、
前記ブランクシートは、正八角形を縦方向と横方向に引き伸ばした形状の底面板を有し、底面板の引き伸ばされていない4辺には、それぞれ山折罫線を介して長方形状のコーナー板が連設されており、
底面板の他の辺には、それぞれ山折罫線を介して逆台形形状の側面板が連設され、各側面板には谷折罫線を介して縁片が連設されており、
各コーナー板と側面板および各コーナー板と縁片との間には、板紙層が打ち抜かれて内面合成樹脂フィルム層のみが存在する部分があり、
成形に当たっては、各側面板の先端部と縁片が、各コーナー板の内側に折り込まれて、それぞれの先端同士が重ならないように成形されて、
縁片は、側面板の上端に連続して、底面に平行に紙容器の開口部の周囲を囲む、水平で段差がなく、平坦なフランジ部を形成しており、
前記板紙層と内面合成樹脂フィルム層とは、厚さが1μm以上10μm以下の接着層を介して積層されていることを特徴とするトレー型紙容器の製造方法。
【請求項2】
所定形状に断裁された板紙に、必要な打ち抜きを施した後、
予め全面に接着剤を塗布した、板紙の寸法より大きな寸法の合成樹脂フィルムを載置して、
全体を平面プレス機で圧締して、板紙と合成樹脂フィルムとを接着し、
しかる後に所定のブランクシート形状に打ち抜くことを特徴とするトレー型紙容器の製造方法であって、
前記ブランクシートは、正八角形を縦方向と横方向に引き伸ばした形状の底面板を有し、底面板の引き伸ばされていない4辺には、それぞれ山折罫線を介して長方形状のコーナー板が連設されており、
底面板の他の辺には、それぞれ山折罫線を介して逆台形形状の側面板が連設され、各側面板には谷折罫線を介して縁片が連設されており、
各コーナー板と側面板および各コーナー板と縁片との間には、板紙層が打ち抜かれて内面合成樹脂フィルム層と接着層のみが存在する部分があり、
成形に当たっては、各側面板の先端部と縁片が、各コーナー板の内側に折り込まれて、それぞれの先端同士が重ならないように成形されて、
縁片は、側面板の上端に連続して、底面に平行に紙容器の開口部の周囲を囲む、水平で段差がなく、平坦なフランジ部を形成しており、
前記板紙層と内面合成樹脂フィルム層とは、厚さが1μm以上10μm以下の接着層を介して積層されていることを特徴とするトレー型紙容器の製造方法。
【請求項3】
板紙層と内面合成樹脂フィルム層を有する積層体を所定の形状に打ち抜いたブランクシートを成形してなるトレー型紙容器であって、
前記ブランクシートは、正八角形を縦方向と横方向に引き伸ばした形状の底面板を有し、底面板の引き伸ばされていない4辺には、それぞれ山折罫線を介して長方形状のコーナー板が連設されており、
底面板の他の辺には、それぞれ山折罫線を介して逆台形形状の側面板が連設され、各側面板には谷折罫線を介して縁片が連設されており、
各コーナー板と側面板および各コーナー板と縁片との間には、板紙層が打ち抜かれて内面合成樹脂フィルム層が存在する部分があり、
成形に当たっては、各側面板の先端部と縁片が、各コーナー板の内側に折り込まれて、それぞれの先端同士が重ならないように成形されて、
縁片は、側面板の上端に連続して、底面に平行に紙容器の開口部の周囲を囲む、水平で段差がなく、平坦なフランジ部を形成しており、
前記板紙層と内面合成樹脂フィルム層とは、厚さが1μm以上10μm以下の接着層を介して積層されて
おり、
前記板紙層は前記接着層の一方の面に接しており、前記接着層の他方の面は内面合成樹脂フィルム層に接していることを特徴とするトレー型紙容器。
【請求項4】
板紙層と内面合成樹脂フィルム層を有する積層体を所定の形状に打ち抜いたブランクシートを成形してなるトレー型紙容器であって、
前記ブランクシートは、正八角形を縦方向と横方向に引き伸ばした形状の底面板を有し、底面板の引き伸ばされていない4辺には、それぞれ山折罫線を介して長方形状のコーナー板が連設されており、
底面板の他の辺には、それぞれ山折罫線を介して逆台形形状の側面板が連設され、各側面板には谷折罫線を介して縁片が連設されており、
各コーナー板と側面板および各コーナー板と縁片との間には、板紙層が打ち抜かれて内面合成樹脂フィルム層が存在する部分があり、
成形に当たっては、各側面板の先端部と縁片が、各コーナー板の内側に折り込まれて、それぞれの先端同士が重ならないように成形されて、
縁片は、側面板の上端に連続して、底面に平行に紙容器の開口部の周囲を囲む、水平で段差がなく、平坦なフランジ部を形成しており、
前記板紙層と内面合成樹脂フィルム層とは、厚さが1μm以上10μm以下の接着層を介して積層されており、
前記接着層を形成する接着剤は、内面合成樹脂フィルム層と同組成の水性ディスパージョン
の乾燥物であることを特徴とす
るトレー型紙容器。
【請求項5】
前記接着層の厚さは、2μm以上6μm以下であることを特徴とする請求項3
又は4に記載のトレー型紙容器。
【請求項6】
前記ブランクシートの各コーナーに、前記板紙層が打ち抜かれて前記内面合成樹脂フィルム層が存在する前記部分が2つあり、当該2つの部分は前記コーナー板を介して離隔していることを特徴とする請求項3~5のいずれか一項に記載のトレー型紙容器。
【請求項7】
前記板紙層が打ち抜かれて前記内面合成樹脂フィルム層が存在する前記部分には、前記内面合成樹脂フィルム層のみが存在することを特徴する請求項3~6のいずれか一項に記載のトレー型紙容器。
【請求項8】
前記内面合成樹脂フィルム層がポリエチレン樹脂フィルムであり、
前記接着層を形成する接着剤がポリエチレン樹脂ディスパーションの乾燥物であることを特徴とする請求項3~7のいずれか一項に記載のトレー型紙容器。
【請求項9】
前記内面合成樹脂フィルム層がポリプロピレン樹脂フィルムであり、
前記接着層を形成する接着剤がポリプロピレン樹脂ディスパーションの乾燥物であることを特徴とする請求項3~7のいずれか一項に記載のトレー型紙容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレー形状の紙容器に関し、特に蓋材のシール性に優れ、小ロットの生産にも適したトレー状紙容器並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内面に防水処理を施したトレー状ないしは箱型の紙容器が広く用いられている。簡単なものでは、厚紙の内面に樹脂フィルムを貼り合わせる等の防水処理を施した積層体を、単に箱型に組み立てただけのものが、汁気の少ない弁当やつまみ類を収納するための容器として用いられている。これらの容器では、さしたる耐水性は必要とされず、水平状態での使用が前提となっているため、蓋についても単なる被せ蓋が用いられている例も見受けられる。
【0003】
トレー状の紙容器を密封容器として用いようとした場合、容器本体の密封性のみならず、蓋材との密封性をも考慮する必要がある。このためには、紙容器の上縁に水平なフランジ部を設けて、このフランジ部に蓋材を密着シールする方法が採用される。
【0004】
特許文献1に記載されたトレー容器用ブランクは、方形の底面板の四辺に側面板を立ち上げ、各側面板の先端に縁片を延設して、4つの縁片がフランジ部を形成するようにしたものである。フランジ部が形成されたトレー状の紙容器は、蓋材をシールすることにより、密閉容器として使用することが可能となる。
【0005】
この発明では、従来側面板同士の交点と縁片の交差する部分に微細な孔があいて液汁が漏れ出すことがあるという問題があったものを、フランジ部先端の舌片の端縁に小突起を設けることによって解消したものである。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたトレー容器用ブランクを組み立てた容器においては、構造上フランジ部に積層体の段差が生じることが避けられなかった。フランジ部の上面に段差があると、蓋材をシールした場合に段差部分にピンホールが発生する危険性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
我々は、この問題を解決するために、フランジ部において、積層体が重なることがなく、従ってフランジ部に段差が生じない新たなトレー状紙容器を開発した。(特願2020-059941)
【0009】
この紙容器は、紙製のブランクスからなる紙製トレーであって、紙製のブランクスは、台紙とその表裏両面またはトレーの内側となる面に形成された熱可塑性樹脂層とからなり、紙製トレーは、底面、側面板、および縁片によって構成され、側面板は、底面を囲んで立ち上がり、トレーを形成しており、縁片は、側面板の上端に連続して、かつ底面に平行にトレーの周囲を囲んでフランジを形成しており、前記ブランクスを構成する、前記台紙は、トレーの角部において、側面板と、隣接する側面板との間は、側面板を立ち上げた際に重ならないよう切除してあり、また縁片と、隣接する縁片との間も、縁片全体を形成した際に重ならないよう切除してあり、前記熱可塑性樹脂層は、台紙を切除した部分を含んで、台紙の表裏両面またはトレーの内側となる面から積層してあり、底面を囲んで立ち上がる側面板は、台紙を切除した部分の熱可塑性樹脂層によって、側面板と、隣接する側面板との間をシールされ接続され、同様に、縁片と、隣接する縁片との間も、台紙を切除した部分の熱可塑性樹脂層によって、シールされ、接続されて、トレーが形成されていることを特徴とする、紙トレーである。
【0010】
この紙トレーは、隣接する縁片同士が重ならないように、前もって切除し、然る後に熱可塑性樹脂層を形成することによって段差のない平坦なフランジを得ることができたものであるが、このような紙トレーを能率良くまた安価に製造する手段として、その実施例に記載したように、カップ原紙に窓抜き部を設けた後、表裏面に熱可塑性樹脂を押し出して積層するという方法を採用したのである。
【0011】
しかしながら、この方法によると、窓抜き工程、押出ラミネート工程、ブランク打ち抜き工程の3工程をいずれも巻取りで行う必要がある。このため、大ロットの生産であれば、安価に、また能率良く生産が可能であるが、小ロットの生産には全く不向きであった。
【0012】
本発明の解決しようとする課題は、小ロット生産にも対応することができるトレー型紙容器の製造方法、並びにそれに適した層構成を有するトレー型紙容器を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、所定形状に断裁された板紙に、必要な打ち抜きを施し、板紙の打ち抜かれた部分以外の表面に接着剤を塗布して乾燥した後、
接着剤面に、板紙の寸法より大きな寸法の合成樹脂フィルムを載置して、
全体を平面プレス機で圧締して、板紙と合成樹脂フィルムとを接着し、
板紙層と内面合成樹脂フィルム層を有する積層体を作成した後、
所定のブランクシート形状に打ち抜くことを特徴とするトレー型紙容器の製造方法であって、
前記ブランクシートは、正八角形を縦方向と横方向に引き伸ばした形状の底面板を有し、底面板の引き伸ばされていない4辺には、それぞれ山折罫線を介して長方形状のコーナー板が連設されており、
底面板の他の辺には、それぞれ山折罫線を介して逆台形形状の側面板が連設され、各側面板には谷折罫線を介して縁片が連設されており、
各コーナー板と側面板および各コーナー板と縁片との間には、板紙層が打ち抜かれて内面合成樹脂フィルム層のみが存在する部分があり、
成形に当たっては、各側面板の先端部と縁片が、各コーナー板の内側に折り込まれて、それぞれの先端同士が重ならないように成形されて、
縁片は、側面板の上端に連続して、底面に平行に紙容器の開口部の周囲を囲む、水平で段差がなく、平坦なフランジ部を形成しており、
前記板紙層と内面合成樹脂フィルム層とは、厚さが1μm以上10μm以下の接着層を介して積層されていることを特徴とするトレー型紙容器の製造方法である。
【0014】
本発明に係るトレー型紙容器の製造方法によれば、一般的にPP貼り機と称される平面プレス機を用いて板紙層と内面合成樹脂フィルム層とを貼り合わせることができるため、小ロット生産にも対応することができる。
【0015】
また、同様に請求項2に記載の発明は、所定形状に断裁された板紙に、必要な打ち抜きを施した後、
予め全面に接着剤を塗布した、板紙の寸法より大きな寸法の合成樹脂フィルムを載置して、
全体を平面プレス機で圧締して、板紙と合成樹脂フィルムとを接着し、
しかる後に所定のブランクシート形状に打ち抜くことを特徴とするトレー型紙容器の製造方法であって、
前記ブランクシートは、正八角形を縦方向と横方向に引き伸ばした形状の底面板を有し、底面板の引き伸ばされていない4辺には、それぞれ山折罫線を介して長方形状のコーナー板が連設されており、
底面板の他の辺には、それぞれ山折罫線を介して逆台形形状の側面板が連設され、各側面板には谷折罫線を介して縁片が連設されており、
各コーナー板と側面板および各コーナー板と縁片との間には、板紙層が打ち抜かれて内面合成樹脂フィルム層と接着層のみが存在する部分があり、
成形に当たっては、各側面板の先端部と縁片が、各コーナー板の内側に折り込まれて、それぞれの先端同士が重ならないように成形されて、
縁片は、側面板の上端に連続して、底面に平行に紙容器の開口部の周囲を囲む、水平で段差がなく、平坦なフランジ部を形成しており、
前記板紙層と内面合成樹脂フィルム層とは、厚さが1μm以上10μm以下の接着層を介して積層されていることを特徴とするトレー型紙容器の製造方法である。
【0016】
また、請求項3に記載の発明は、板紙層と内面合成樹脂フィルム層を有する積層体を所定の形状に打ち抜いたブランクシートを成形してなるトレー型紙容器であって、
前記ブランクシートは、正八角形を縦方向と横方向に引き伸ばした形状の底面板を有し、底面板の引き伸ばされていない4辺には、それぞれ山折罫線を介して長方形状のコーナー板が連設されており、
底面板の他の辺には、それぞれ山折罫線を介して逆台形形状の側面板が連設され、各側面板には谷折罫線を介して縁片が連設されており、
各コーナー板と側面板および各コーナー板と縁片との間には、板紙層が打ち抜かれて内面合成樹脂フィルム層が存在する部分があり、
成形に当たっては、各側面板の先端部と縁片が、各コーナー板の内側に折り込まれて、それぞれの先端同士が重ならないように成形されて、
縁片は、側面板の上端に連続して、底面に平行に紙容器の開口部の周囲を囲む、水平で段差がなく、平坦なフランジ部を形成しており、
前記板紙層と内面合成樹脂フィルム層とは、厚さが1μm以上10μm以下の接着層を介して積層されていることを特徴とするトレー型紙容器である。
【0017】
また、請求項4に記載の発明は、前記接着層の厚さが、2μm以上6μm以下であることを特徴とする請求項3に記載のトレー型紙容器である。
【0018】
また、請求項5に記載の発明は、前記接着層を形成する接着剤が、内面合成樹脂フィルム層と同組成の水性ディスパージョンであることを特徴とする請求項3または4に記載のトレー型紙容器である。
【発明の効果】
【0019】
請求項1または2に記載のトレー型紙容器の製造方法によれば、従来の3工程にも及ぶ巻取り方式による製造方法に比較して、はるかに小さいロットでの生産が可能であるため、近年増加傾向にある多品種少量生産に適した製造方法であるといえる。
【0020】
請求項1に記載の製造方法のように、板紙側に接着剤を塗布するか、請求項2に記載の製造方法のように、内面合成樹脂フィルム側に接着剤を塗布するかは、既存の製造設備に応じて選択することができるので、新たな生産設備の導入を最小限に留めることができる
。
【0021】
請求項5に記載の発明のように、接着剤として内面合成樹脂フィルム層と同組成の水性ディスパージョンを用いた場合、溶剤タイプの接着剤と異なり室内環境に悪影響を及ぼすこともなく、また内面合成樹脂フィルム層としてポリエチレン樹脂フィルムのような汎用の合成樹脂フィルムを使用することができるので、経済的にも有利である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明に係るトレー型紙容器の一例を示した斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示したトレー型紙容器のブランクシートの平面模式図である。
【
図3】
図3は、請求項1に記載の製造方法によって製造されたブランクシートの層構成を示した断面模式図であり、
図2のA-A´断面に相当する。
【
図4】
図4は、
図3のブランクシートを成型した状態を示した断面模式図であり、
図1のB断面に相当する。
【
図5】
図5は、請求項2に記載の製造方法によって製造されたブランクシートの層構成を示した断面模式図であり、
図2のA-A´断面に相当する。
【
図6】
図6は、
図5のブランクシートを成型した状態を示した断面模式図であり、
図1のB断面に相当する。
【
図7】
図7は、請求項1に記載の製造方法において、平面プレス機の熱盤が開いた状態で、接着層を形成済みの板紙の上に内面合成樹脂フィルムを載置した状態を示した断面説明図である。
【
図8】
図8は、請求項1に記載の製造方法において、
図7の状態から熱盤を圧締した状態を示した断面説明図である。
【
図9】
図9は、請求項1に記載のトレー型紙容器の製造方法において、板紙層に必要な打ち抜きを施した状態を示した平面説明図である。
【
図10】
図10は、所定寸法にカットした内面合成樹脂フィルムを示した平面説明図である。
【
図11】
図11は、
図9に示した打ち抜きを施した板紙と
図10に示した内面合成樹脂フィルムとを貼り合わせて積層体とした状態を示した平面説明図である。
【
図12】
図12は、
図11に示した積層体を打ち抜いてブランクシートとした状態を示した平面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るトレー型紙容器10並びにその製造方法について詳細に説明する。
図1は、本発明に係るトレー型紙容器10の一例を示した斜視図である。
図2は、
図1に示したトレー型紙容器10のブランクシートBLの平面模式図である。また
図3は、請求項1に記載の製造方法によって製造されたブランクシートBLの層構成を示した断面模式図であり、
図2のA-A´断面に相当する。また
図4は、
図3のブランクシートを成型した状態を示した断面模式図であり、
図1のB断面に相当する。以下
これらの図を参照しながら本発明に係るトレー型紙容器の製造方法並びに、これによって製造されたトレー型紙容器について説明する。
【0024】
本発明に係るトレー型紙容器10の製造方法の一実施態様としては、請求項1に記載したように、
所定形状に断裁された板紙2に、必要な打ち抜き11を施し、板紙の打ち抜かれた部分以外の表面に接着剤3を塗布して乾燥した後、接着剤面に、板紙の寸法より大きな寸法の合成樹脂フィルムを載置して、全体を平面プレス機で圧締して、板紙と合成樹脂フィルムとを接着し、板紙層2と内面合成樹脂フィルム層4とが、厚さが1μm以上10μm以下の接着層3を介して積層されている積層体1を作成した後、所定のブランクシートBL形状に打ち抜くことを特徴とするトレー型紙容器10の製造方法である。
【0025】
図2に示したように、ブランクシートBLは、正八角形を縦方向と横方向に引き伸ばした形状の底面板5を有し、底面板5の引き伸ばされていない4辺には、それぞれ山折罫線e、f、g、hを介して長方形状のコーナー板6、6、6、6が連設されており、底面板5の他の辺には、それぞれ山折罫線a、b、c、dを介して逆台形形状の側面板7、7、7、7が連設され、各側面板7には谷折罫線i、j、k、lを介して縁片8が連設されている。各コーナー板6と側面板7、および各コーナー板6と縁片8との間には、板紙層2が打ち抜かれて内面合成樹脂フィルム層4のみが存在する部分すなわち打ち抜き部11が存在する。
【0026】
成形に当たっては、各側面板7の先端部と縁片8が、各コーナー板6の内側に折り込まれて、それぞれの先端同士が重ならないように成形されて、縁片8は、側面板7の上端に連続して、底面5に平行に紙容器10の開口部の周囲を囲む、水平で段差がなく、平坦なフランジ部9を形成していることを特徴とする。
【0027】
本発明に係るトレー型紙容器10の製造方法の他の実施態様としては、請求項2に記載したように、
予め全面に接着剤3を塗布した、板紙2の寸法より大きな寸法の合成樹脂フィルム4を載置して、全体を平面プレス機で圧締して、板紙2と合成樹脂フィルム4とが、厚さが1μm以上10μm以下の接着層3を介して積層されている積層体1を作成した後、所定のブランクシートBL形状に打ち抜くことを特徴とするトレー型紙容器10の製造方法である。
【0028】
この方法によって得られるブランクシートBLは、平面図としては、
図2に示したものと同様である。但し、各コーナー板6と側面板7、および各コーナー板6と縁片8との間の板紙層2が打ち抜かれた部分11には、内面合成樹脂フィルム層4のみならず、接着層3も存在する点が異なっている。
【0029】
通常容器の外側に当たる板紙層2には印刷表示が行われ、積層体1の表面側となる。従って板紙層2側が山となる折罫線が山折罫線であり、板紙層2側が谷となる折罫線が谷折罫線である。
図2において山折罫線は点線で表示され、谷折罫線は一点鎖線で表示されている。なお
図2は、ブランクシートBLを表面側から見た状態を示している。
【0030】
底面板5の他の辺には、それぞれ山折罫線a、b、c、dを介して逆台形形状の側面板7が連設され、各側面板には谷折罫線i、j、k、lを介して縁片8が連設されている。
【0031】
各コーナー板6と、側面板7および縁片8との間には板紙層2が打ち抜かれて内面合成樹脂フィルム層4のみの部分が存在する。成形に当たっては、各側面板7の先端部とフランジ部8が、各コーナー板6の内側に折り込まれて、それぞれの先端同士が重ならないよ
うに成形される。
【0032】
4辺の縁片8同士が重ならないようにしたことにより、成型後のフランジ部9が平坦な仕上りとなり、段差がないため、蓋材をシールする際にピンホールの発生等がなく、密封性が高まる。
【0033】
また、板紙層2に必要な打ち抜きを施した後に、全面に内面合成樹脂フィルム層4を形成して、しかる後に所定の形状に打ち抜いたブランクシートを用いているため、成型後のトレー型紙容器において内面合成樹脂フィルム層4は底面からフランジ部まで連続して存在するため、水漏れが生じる心配がない。
【0034】
図3は、請求項1に記載の製造方法によって製造されたブランクシートBLの層構成を示した断面模式図であり、
図2のA-A´断面に相当する。接着層3は、板紙層2の上に塗布されるため、打ち抜き部11の内面合成樹脂フィルム層4には接着層が存在しない。
図4は、
図3のブランクシートを成型した状態を示した断面模式図であり、
図1のB断面に相当する。
【0035】
図5は、請求項2に記載の製造方法によって製造されたブランクシートBLの層構成を示した断面模式図であり、
図2のA-A´断面に相当する。また
図6は、
図5のブランクシートを成型した状態を示した断面模式図であり、
図1のB断面に相当する。
【0036】
図4、
図6いずれの場合であっても、成型に当たっては、加熱と加圧とが加えられるため内面合成樹脂フィルム層4同士は熱融着して一体化する。
【0037】
板紙層2と内面合成樹脂フィルム層4とを接着する接着剤については、接着層3の厚さとして、1μm以上10μm以下であることが必要である。1μm未満の厚さでは、接着剤の量が不十分で、接着力が不足する場合がある。10μmを超える厚さでは、接着剤の量が多過ぎて不経済であるばかりでなく、乾燥不良等による弊害が生じる可能性がある。より望ましい接着層3の厚さとしては、2μm以上6μm以下である。
【0038】
接着剤としては、内面合成樹脂フィルムの材質に応じて適宜選択することができるが、内面合成樹脂フィルムと同組成の水性ディスパージョンを用いることにより、望ましい結果が得られる。例えば、内面合成樹脂フィルムとしてポリエチレン樹脂フィルムを使用する場合であれば、接着剤としてはポリエチレン樹脂ディスパージョンが最適であり、内面合成樹脂フィルムとしてポリプロピレン樹脂フィルムを使用する場合であれば、接着剤としてはポリプロピレン樹脂ディスパージョンが最適である。
【0039】
図7は、請求項1に記載の製造方法において、平面プレス機20の熱盤21が開いた状態で、接着層3を形成済みの板紙2の上に内面合成樹脂フィルム4を載置した状態を示した断面説明図である。また
図8は、請求項1に記載の製造方法において、
図7の状態から熱盤21を圧締した状態を示した断面説明図である。
【0040】
図7、8では1セットのみ圧締されているが、複数枚のセットを離形フィルム等を介して堆積し、圧締して接着する場合もある。また図ではクッションや離形フィルム等は省略されている。
【0041】
図9~12は、本発明に係るトレー型紙容器の製造方法を工程に従って説明したものである。
図9は、請求項1に記載のトレー型紙容器の製造方法において、板紙層2に必要な打ち抜き11を施した状態を示した平面説明図である。
図10は、所定寸法にカットした内面合成樹脂フィルム4を示した平面説明図である。
図11は、
図9に示した打ち抜きを
施した板紙と
図10に示した内面合成樹脂フィルムとを貼り合わせて積層体1とした状態を示した平面説明図である。
図12は、
図11に示した積層体1を打ち抜いてブランクシートBLとした状態を示した平面説明図である。
【0042】
本発明に係るトレー型紙容器の製造方法によれば、ブランクシートBLの製造に当たって、すべての工程を枚葉方式で完結することが可能であるため、小さいロットでも生産が可能であり、多品種少量生産に適した方法であると言える。以下実施例に基づいて本発明に係るトレー型紙容器について具体的に説明する。
【0043】
<実施例1>
板紙(三菱製紙社製 パールカード、坪量260g/m
2)に打ち抜きを施した後、接着剤としてポリプロピレン樹脂ディスパージョン(第一塗料社製、バロン)を乾燥後の厚さが1.0μmとなるように塗布した後、接着剤面に、内面合成樹脂フィルムとしてポリプロピレン樹脂フィルム(厚さ40μm)を載置して、平面プレス機で熱圧着温度が140~150℃となるように圧締して接着させた。得られた積層体を所定のブランク形状に打ち抜いた後、
図1に示したような形状のトレー型紙容器に成型した。
【0044】
成型時の成型適性、成型後の臭気、電子レンジでの耐熱性について評価した。
【0045】
<実施例2>
接着剤を板紙面ではなく、PPフィルム面に塗布した以外は、実施例1と同様にしてブランクシートを作成し、同様にトレー型紙容器に成型した。実施例1と同様に評価した。
【0046】
<実施例3>
接着剤としてポリエチレン樹脂ディスパージョン(ユニチカ社製、アローベースPE)を用い、内面合成樹脂フィルムとしてポリエチレン樹脂フィルムを用い、熱圧着温度を90~100℃とした以外は、実施例1と同様にして積層体を作成し、同様にトレー型紙容器に成型し、同様に評価した。
【0047】
<実施例4>
接着剤としてポリエチレン樹脂ディスパージョン(ユニチカ社製、アローベースPE)を用い、内面合成樹脂フィルムとしてポリエチレン樹脂フィルムを用い、熱圧着温度を90~100℃とした以外は、実施例2と同様にして積層体を作成し、同様にトレー型紙容器に成型し、同様に評価した。
【0048】
<比較例1>
接着剤としてマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂接着剤(溶剤系)(ユニチカ社製、アローベースPP DB5010)を用い、熱圧着温度を60~70℃とした以外は、実施例2と同様にして積層体を作成し、同様にトレー型紙容器に成型し、同様に評価した。
【0049】
<比較例2>
接着剤としてウレタン樹脂系接着剤(溶剤系)(三井化学社製、タケラックA969V)を用い、熱圧着温度を60~70℃とした以外は、実施例2と同様にして積層体を作成し、同様にトレー型紙容器に成型し、同様に評価した。
【0050】
<比較例3>
接着剤としてウレタン樹脂系接着剤(溶剤系)(三井化学社製、タケラックA969V)を用い、熱圧着温度を60~70℃とした以外は、実施例4と同様にして積層体を作成し、同様にトレー型紙容器に成型し、同様に評価した。
【0051】
<比較例4>
内面合成樹脂フィルムとしてポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(厚さ20μm)を用い、接着剤としてウレタン樹脂系接着剤(溶剤系)(三井化学社製、タケラックA969V)を用い、熱圧着温度を60~70℃とした以外は、実施例4と同様にして積層体を作成し、同様にトレー型紙容器に成型し、同様に評価した。
【0052】
<比較例5>
内面合成樹脂フィルムとしてポリブチレンテレフタレート樹脂フィルム(厚さ20μm)を用い、接着剤としてウレタン樹脂系接着剤(溶剤系)(三井化学社製、タケラックA969V)を用い、熱圧着温度を60~70℃とした以外は、実施例4と同様にして積層体を作成し、同様にトレー型紙容器に成型し、同様に評価した。
【0053】
<比較例6>
内面合成樹脂フィルムとしてポリメチルペンテン樹脂フィルム(厚さ20μm)を用い、接着剤としてウレタン樹脂系接着剤(溶剤系)(三井化学社製、タケラックA969V)を用い、熱圧着温度を60~70℃とした以外は、実施例4と同様にして積層体を作成し、同様にトレー型紙容器に成型し、同様に評価した。
【0054】
以上の結果を表1にまとめた。
【0055】
【0056】
表1の結果から、本発明に係るトレー型紙容器の製造方法によって製造されたトレー型紙容器は、従来の連続巻取り方式によって製造されたトレー型紙容器と何ら遜色のない性能を有するものであることが分かった。
【符号の説明】
【0057】
1・・・積層体
2・・・板紙層
3・・・接着層
4・・・内面合成樹脂フィルム層
BL・・・ブランクシート
5・・・底面板
6・・・コーナー板
7・・・側面板
8・・・縁片
9・・・フランジ部
10・・・トレー型紙容器
11・・・打ち抜き部
a~l・・・折罫線
20・・・平面プレス機
21・・・熱盤