(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-19
(45)【発行日】2025-05-27
(54)【発明の名称】光ファイバ用樹脂供給装置および光ファイバの製造方法
(51)【国際特許分類】
C03C 25/12 20060101AFI20250520BHJP
C03C 25/104 20180101ALI20250520BHJP
G02B 6/44 20060101ALI20250520BHJP
【FI】
C03C25/12
C03C25/104
G02B6/44 301B
(21)【出願番号】P 2021101426
(22)【出願日】2021-06-18
【審査請求日】2024-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 誠幸
【審査官】山本 佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-209370(JP,A)
【文献】特開2018-048050(JP,A)
【文献】特開2004-206117(JP,A)
【文献】特開平07-081981(JP,A)
【文献】特開平01-122939(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0196595(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 25/00 - 25/70
G02B 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ用の樹脂被覆ダイスへ樹脂供給配管を経て樹脂を供給する第1タンクと、前記第1タンクへ樹脂補給配管を経て樹脂を補給する第2タンクとを備えて、前記樹脂被覆ダイスへ樹脂を供給する光ファイバ用樹脂供給装置であって、
前記樹脂供給配管は、
配管分岐部と、
前記配管分岐部から前記第2タンクに樹脂を戻す循環用樹脂配管と、
前記配管分岐部と前記樹脂被覆ダイスとの間に設けられた第1バルブと、
前記循環用樹脂配管に設けられた第2バルブと、を有する、
光ファイバ用樹脂供給装置。
【請求項2】
前記第1バルブ及び前記第2バルブは、ピンチバルブである、
請求項1に記載の光ファイバ用樹脂供給装置。
【請求項3】
前記樹脂被覆ダイスの周囲に一定温度の流体を流して前記樹脂被覆ダイスの温度を一定に保つ温調部と、
前記第1タンクと前記配管分岐部の間の前記樹脂供給配管の少なくとも一部の外周を加熱する加熱部と、
前記加熱部と前記配管分岐部の間の前記樹脂供給配管内の樹脂温度を測定する温度測定部と、
前記温度測定部によって測定される樹脂温度が目標温度になるように前記加熱部を制御する制御部と、
をさらに有する、請求項1または請求項2に記載の光ファイバ用樹脂供給装置。
【請求項4】
前記循環用樹脂配管において、流量調整用ピンチバルブと、
をさらに有する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光ファイバ用樹脂供給装置。
【請求項5】
前記循環用樹脂配管において、流量測定器と、
をさらに有する、請求項4に記載の光ファイバ用樹脂供給装置。
【請求項6】
光ファイバ用樹脂供給装置から供給された光ファイバ用樹脂をガラスファイバに被覆し、被覆した前記光ファイバ用樹脂を硬化することにより、光ファイバを製造する光ファイバの製造方法であって、
前記光ファイバ用樹脂供給装置は、
光ファイバ用の樹脂被覆ダイスへ樹脂供給配管を経て樹脂を供給する第1タンクと、前記第1タンクへ樹脂補給配管を経て樹脂を補給する第2タンクと、を備えており、
前記樹脂供給配管は、
配管分岐部と、前記配管分岐部から前記第2タンクに樹脂を戻す循環用樹脂配管と、前記配管分岐部と前記樹脂被覆ダイスとの間に設けられた第1バルブと、前記循環用樹脂配管に設けられた第2バルブと、を有し、
光ファイバを製造する場合には、前記第1バルブを開け、前記第2バルブを閉めて、前記樹脂供給配管内の樹脂温度が目標温度になるように制御し、
光ファイバを製造しない場合は、前記第1バルブを閉め、前記第2バルブ開けて、前記樹脂供給配管内の樹脂温度が目標温度になるように制御する、
光ファイバの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光ファイバ用樹脂供給装置および光ファイバの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光ファイバ用の樹脂被覆ダイスへ樹脂供給配管を経て樹脂を供給する第1タンクと、前記第1タンクへ樹脂補給配管を経て樹脂を補給する第2タンクとを備えて、前記樹脂被覆ダイスへ樹脂を供給する光ファイバ用樹脂供給装置であって、前記樹脂供給配管における前記樹脂被覆ダイスへの接続箇所から前記第2タンクに樹脂を戻す循環用樹脂配管を設けた、光ファイバ用樹脂供給装置が開示されている。特許文献1に記載の光ファイバ用樹脂供給装置は、接続先を変更可能な配管を用いて、光ファイバの製造時には当該配管を樹脂被覆ダイスへと接続し、光ファイバの製造の停止時には当該配管が循環用樹脂配管の一部となるように接続先を変更するものである。
【0003】
特許文献2には、樹脂塗布部に配管を介して樹脂を供給し、ガラスファイバまたは被覆ファイバを前記樹脂塗布部に通して前記ガラスファイバまたは前記被覆ファイバの外周に前記樹脂を塗布する樹脂塗布工程を含む光ファイバの製造方法であって、前記樹脂塗布工程において、前記樹脂塗布部の周囲に一定温度の流体を流して前記樹脂塗布部の温度を一定にしておき、前記配管内の樹脂温度が目標温度になるように、前記配管の少なくとも一部の外周に設けられた加熱部を制御する、光ファイバの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-209370号公報
【文献】特開2018-48050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された光ファイバ用樹脂供給装置や、特許文献2に記載されたような光ファイバの製造方法では、少なくとも光ファイバの製造を停止した状態から光ファイバの製造が可能な状態にするまでの間において、配管中の樹脂の流れが停止してしまい、配管中の樹脂の温度を一定に保つことが困難である。そのため、ガラスファイバの被覆を開始する際において、樹脂被覆ダイス40に提供される樹脂の温度は適切なものとはなっておらず、歩留まりの低下や生産効率の低下を招いていた。
【0006】
本開示の目的は、光ファイバの製造時、光ファイバの製造停止時、及び光ファイバの製造停止から製造開始までの間においても、配管中の樹脂の温度を一定に保ち易く、歩留まりや生産効率を向上させることが可能な、光ファイバ用樹脂供給装置および光ファイバの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る光ファイバ用樹脂供給装置は、
光ファイバ用の樹脂被覆ダイスへ樹脂供給配管を経て樹脂を供給する第1タンクと、前記第1タンクへ樹脂補給配管を経て樹脂を補給する第2タンクとを備えて、前記樹脂被覆ダイスへ樹脂を供給する光ファイバ用樹脂供給装置であって、
前記樹脂供給配管は、
配管分岐部と、
前記配管分岐部から前記第2タンクに樹脂を戻す循環用樹脂配管と、
前記配管分岐部と前記樹脂被覆ダイスとの間に設けられた第1バルブと、
前記循環用樹脂配管に設けられた第2バルブと、を有する。
【0008】
本開示の一態様に係る光ファイバの製造方法は、
光ファイバ用樹脂供給装置から供給された光ファイバ用樹脂をガラスファイバに被覆し、被覆した前記光ファイバ用樹脂を硬化することにより、光ファイバを製造する光ファイバの製造方法であって、
前記光ファイバ用樹脂供給装置は、
光ファイバ用の樹脂被覆ダイスへ樹脂供給配管を経て樹脂を供給する第1タンクと、前記第1タンクへ樹脂補給配管を経て樹脂を補給する第2タンクと、を備えており、
前記樹脂供給配管は、
配管分岐部と、前記配管分岐部から前記第2タンクに樹脂を戻す循環用樹脂配管と、前記配管分岐部と前記樹脂被覆ダイスとの間に設けられた第1バルブと、前記循環用樹脂配管に設けられた第2バルブと、を有し、
光ファイバを製造する場合には、前記第1バルブを開け、前記第2バルブを閉めて、前記樹脂供給配管内の樹脂温度が目標温度になるように制御し、
光ファイバを製造しない場合は、前記第1バルブを閉め、前記第2バルブ開けて、前記樹脂供給配管内の樹脂温度が目標温度になるように制御する。
【発明の効果】
【0009】
上記開示の構成によれば、光ファイバの製造時、光ファイバの製造停止時、及び光ファイバの製造停止から製造開始までの間においても、配管中の樹脂の温度を一定に保ち易く、歩留まりや生産効率を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の一実施形態に係る光ファイバ用樹脂供給装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示の一態様に係る光ファイバ用樹脂供給装置は、
光ファイバ用の樹脂被覆ダイスへ樹脂供給配管を経て樹脂を供給する第1タンクと、前記第1タンクへ樹脂補給配管を経て樹脂を補給する第2タンクとを備えて、前記樹脂被覆ダイスへ樹脂を供給する光ファイバ用樹脂供給装置であって、
前記樹脂供給配管は、
配管分岐部と、
前記配管分岐部から前記第2タンクに樹脂を戻す循環用樹脂配管と、
前記配管分岐部と前記樹脂被覆ダイスとの間に設けられた第1バルブと、
前記循環用樹脂配管に設けられた第2バルブと、を有する。
この構成によれば、光ファイバの製造時、光ファイバの製造停止時、及び光ファイバの製造停止から製造開始までの間においても、配管中の樹脂の流れを維持できるため、配管中の樹脂の温度を一定に保ち易くなり、樹脂温度を光ファイバの製造に適した範囲に維持し、歩留まりや生産効率を向上させることが可能である。
【0012】
前記光ファイバ用樹脂供給装置において、
前記第1バルブ及び前記第2バルブは、ピンチバルブであることが好ましい。
ピンチバルブは、樹脂が流れるチューブをチューブの外部から押し挟むことによってチューブ内部を遮断するものであり、チューブ内部に部材を設けてチューブの開閉を行うものではない。よって、この構成によれば、例えば、チューブ内部に樹脂が付着して固化する可能性が低いため、固化した樹脂の一部が樹脂被覆ダイスに流れて光ファイバの被覆に混入したり、バルブを設置した箇所を通過する樹脂流量が時間経過に伴い減少していくという事態を生じにくくすることが可能である。また、メンテナンスを容易にし、メンテナンス頻度も少なくすることができる。
【0013】
前記光ファイバ用樹脂供給装置は、
前記樹脂被覆ダイスの周囲に一定温度の流体を流して前記樹脂被覆ダイスの温度を一定に保つ温調部と、
前記第1タンクと前記配管分岐部の間の前記樹脂供給配管の少なくとも一部の外周を加熱する加熱部と、
前記加熱部と前記配管分岐部の間の前記樹脂供給配管内の樹脂温度を測定する温度測定部と、
前記温度測定部によって測定される樹脂温度が目標温度になるように前記加熱部を制御する制御部と、
をさらに有することが好ましい。
この構成によれば、樹脂供給配管内の樹脂温度を測定するため、より高精度の温度制御ができる。また、光ファイバを製造していない場合でも樹脂の流れを維持できることと合わせて、さらに精度よく樹脂温度を光ファイバの製造に適した範囲に維持できる。
【0014】
前記光ファイバ用樹脂供給装置は、
前記循環用樹脂配管において、流量調整用ピンチバルブと、
をさらに有することが好ましい。
この構成によれば、第2タンクに戻る樹脂の流量を、例えば、光ファイバの製造時における樹脂供給配管20の流量と同様に調整することができるため、光ファイバの製造停止時において樹脂温度を一定に維持することが容易になる。
【0015】
前記光ファイバ用樹脂供給装置は、
前記循環用樹脂配管において、流量測定器と、
をさらに有することが好ましい。
この構成によれば、第2タンクに戻る樹脂の流量を測定することにより、例えば、第2タンクに戻る樹脂の流量制御をより高精度で行うことが可能になる。
【0016】
本開示の一態様に係る光ファイバの製造方法は、
光ファイバ用樹脂供給装置から供給された光ファイバ用樹脂をガラスファイバに被覆し、被覆した前記光ファイバ用樹脂を硬化することにより、光ファイバを製造する光ファイバの製造方法であって、
前記光ファイバ用樹脂供給装置は、
光ファイバ用の樹脂被覆ダイスへ樹脂供給配管を経て樹脂を供給する第1タンクと、前記第1タンクへ樹脂補給配管を経て樹脂を補給する第2タンクと、を備えており、
前記樹脂供給配管は、
配管分岐部と、前記配管分岐部から前記第2タンクに樹脂を戻す循環用樹脂配管と、前記配管分岐部と前記樹脂被覆ダイスとの間に設けられた第1バルブと、前記循環用樹脂配管に設けられた第2バルブと、を有し、
光ファイバを製造する場合には、前記第1バルブを開け、前記第2バルブを閉めて、前記樹脂供給配管内の樹脂温度が目標温度になるように制御し、
光ファイバを製造しない場合は、前記第1バルブを閉め、前記第2バルブ開けて、前記樹脂供給配管内の樹脂温度が目標温度になるように制御する。
この構成によれば、光ファイバの製造時、光ファイバの製造停止時、及び光ファイバの製造停止から製造開始までの間においても、配管中の樹脂の流れを維持できるため、配管中の樹脂の温度を一定に保ち易くなり、樹脂温度を光ファイバの製造に適した範囲に維持し、歩留まりや生産効率を向上させることが可能である。
【0017】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示に係る光ファイバ用樹脂供給装置および光ファイバの製造方法の実施の形態の例を、図面を参照しつつ説明する。
【0018】
(光ファイバ用樹脂供給装置)
まず、
図1を用いて、本実施形態に係る光ファイバ用樹脂供給装置について説明する。
図1は、本開示の一実施形態に係る光ファイバ用樹脂供給装置1(以下、「供給装置1」とも称する)を示す概略構成図である。供給装置1は、第1タンク11と、第2タンク13と、樹脂補給配管15と、樹脂供給配管20と、温調部31と、加熱部32と、温度測定部33と、制御部34と、を備えている。また、樹脂供給配管20は、配管分岐部21と、第1バルブ22と、循環用樹脂配管23と、第2バルブ24と、第3バルブ25と、流量測定器26と、を備えている。
【0019】
第2タンク13は、第1タンク11へ樹脂を補給するサブタンクである。第2タンク13の内部には、液状の樹脂が貯蔵される。第2タンク13内の樹脂は、第2タンク13の少なくとも一部の外周に備えられた第2タンクヒータ14によって加温されうる。第2タンク13内の樹脂は、例えば、高圧窒素ガス等により加圧されることにより、第2タンク13と第1タンク11とを接続する樹脂補給配管15を経て、第1タンク11へ送液される。
【0020】
第1タンク11は、樹脂被覆ダイス40へ樹脂を供給するメインタンクである。第1タンク11の内部には、第2タンク13と同一の液状の樹脂が貯蔵される。第1タンク11内の樹脂は、第1タンク11の少なくとも一部の外周に備えられた第1タンクヒータ12によって加温されうる。第1タンク11内の樹脂は、例えば、高圧窒素ガス等により加圧されることにより、第1タンク11に接続された樹脂供給配管20を経て、樹脂被覆ダイス40へ送液される。
【0021】
加熱部32は、第1タンク11と配管分岐部21の間の樹脂供給配管20の少なくとも一部の外周を加熱する。加熱部32は、例えば、樹脂供給配管20の外周に巻かれたテープヒータである。なお、樹脂補給配管15や循環用樹脂配管23においても、配管内の樹脂を加熱するためのテープヒータ等が設けられていてもよい。
【0022】
温度測定部33は、加熱部32と配管分岐部21の間の樹脂供給配管20内における樹脂温度を測定する。温度測定部33は、樹脂供給配管20内に設けられた熱電対であることが好ましい。温度測定部33によって測定された樹脂温度は、例えば、制御部34に送信される。
【0023】
制御部34は、温度測定部33によって測定される樹脂温度が目標温度になるように加熱部32を制御する。制御部34は、温度測定部33によって測定される樹脂温度が目標温度になるようにすることで、樹脂被覆ダイス40内の樹脂温度、及び/又は、循環用樹脂配管23内の樹脂温度を間接的に調整する。目標温度は、被覆に用いる樹脂の種類や、目的とする被覆径等に応じて、適宜決定されうる。なお、樹脂温度は樹脂粘度とは相関する値であり、樹脂温度が高くなるほど樹脂粘度は小さくなるので、目的とする太い場合と細い場合とでは、細い場合の方が目標温度は高くなる。
【0024】
また、上述のように樹脂温度は樹脂粘度とは相関する値であるため、温度測定部33に代えて、樹脂供給配管20内における樹脂粘度を測定する粘度測定計を設け、測定された粘度に基づいて加熱部32を制御してもよい。同様の観点から、温度測定部33に代えて又は加えて、樹脂供給配管20内における樹脂の流量を測定する流量測定計を設け、測定された流量に基づいて、加熱部32による加熱度合いや、第1バルブ22、第2バルブ24及び第3バルブ25の内の少なくとも1つの開閉度合いを制御してもよい。流量測定計としては、後述する流量測定器26と同様のものを用いることができる。
【0025】
温度測定部33の位置は、例えば、樹脂被覆ダイス40内の樹脂温度を調整し易くするという観点から、樹脂被覆ダイス40に近い位置であることが好ましい。すなわち、温度測定部33の位置は、配管分岐部21に近い位置であることが好ましい。なお、配管分岐部21の位置も、上記と同様の観点から、樹脂被覆ダイス40に近い位置であることが好ましい。
【0026】
樹脂供給配管20において、配管分岐部21から樹脂被覆ダイス40へと向かう経路には、第1バルブ22が設けられている。第1バルブ22の位置は、配管分岐部21に近い位置であることが好ましい。第1バルブ22が開いている場合、加熱部32によって加熱された液状の樹脂の全部または一部が樹脂被覆ダイス40へと供給される。温調部31は、樹脂被覆ダイス40の周囲に設けられている。温調部31は、例えば、樹脂被覆ダイス40の周囲に一定温度の流体を流して、樹脂被覆ダイス40の温度を一定に保つことで、樹脂温度の変動を抑制する。
【0027】
樹脂被覆ダイス40には、樹脂供給配管20を経て供給された液状の樹脂が溜められている。光ファイバ母材が線引き等されて形成されたガラスファイバ41は、樹脂被覆ダイス40を通過することにより、ガラスファイバ41の外周に樹脂が塗布される。そして、塗布された樹脂は、必要に応じて紫外線照射装置(図示せず)から照射される紫外線によって硬化され、被覆ガラスファイバ42となる。被覆ガラスファイバ42は、製品となる光ファイバとなりうる。なお、被覆ガラスファイバ42における被覆層は、二層以上であってもよい。被覆層が二層以上である場合、樹脂被覆ダイス40を二層以上同時に塗布可能なダイスにしてもよいし、樹脂被覆ダイス40の下流側に更に樹脂被覆ダイス及び供給装置1を設けてもよい。
【0028】
樹脂供給配管20において、配管分岐部21から第2タンク13までを接続する経路は、第2タンク13に樹脂を戻すための循環用樹脂配管23となる。循環用樹脂配管23には、第2バルブ24が設けられている。第2バルブ24の位置は、配管分岐部21に近い位置であることが好ましい。第2バルブ24が開いている場合、加熱部32によって加熱された液状の樹脂の全部または一部が循環用樹脂配管23を経て、第2タンク13へと液送される。
【0029】
第1バルブ22及び第2バルブ24は、例えば、制御部34から送信される信号に基づいて、開閉が制御される。第1バルブ22及び第2バルブ24は、例えば、ピンチバルブであることが好ましい。ピンチバルブとは、可撓性のチューブを押し挟むことで当該チューブ内部の流れを遮断可能なバルブである。ピンチバルブを用いる場合、樹脂の流れる経路の少なくとも一部は、可撓性の材料によって形成されることになる。
【0030】
循環用樹脂配管23における第2バルブ24の下流には、第3バルブ25が設けられている。第3バルブ25は、例えば、制御部34から送信される信号に基づいて、開閉度合いが制御される。第3バルブ25は、樹脂の流量を調整するためのバルブであり、流量調整可能なピンチバルブであることが好ましい。流量調整可能なピンチバルブとは、例えば、可撓性のチューブの押し込み量を調整できるピンチバルブである。
【0031】
なお、第1バルブ22や第2バルブ24も、流量調整可能なピンチバルブであってもよい。第2バルブ24が流量調整可能なピンチバルブである場合、第2バルブ24によって循環用樹脂配管23内の樹脂の流量を調整することが可能であるため、第3バルブ25を設けずともよい。
【0032】
循環用樹脂配管23における第3バルブ25の下流には、流量測定器26が設けられている。流量測定器26は、センサ部が樹脂に接触することなく樹脂の流量を測定できるものが好ましく、具体的には、配管の外側に取り付けて使用可能なクランプオン型の超音波式流量計であることが好ましい。
【0033】
流量測定器26によって測定された流量は、例えば、制御部34に送信される。制御部34は、流量測定器26によって測定される樹脂の流量が所望の値になるように、第3バルブ25の開閉度合いを制御する。所望の値は、例えば、第1バルブ22を開けて第2バルブ24を閉めた状態で被覆ガラスファイバ42を製造する場合における、樹脂供給配管20を流れる樹脂の好ましい流量である。
【0034】
(光ファイバの製造方法)
引き続き、
図1を参照しながら、本実施形態に係る光ファイバの製造方法について説明する。本実施形態に係る光ファイバの製造方法は、光ファイバ用樹脂供給装置1から供給された光ファイバ用の樹脂によってガラスファイバ41に被覆し、被覆した樹脂を硬化することにより、光ファイバ(被覆ガラスファイバ42)を製造する方法である。
【0035】
本実施形態に係る製造方法において、光ファイバを製造する場合は供給装置1が後述の第1モードとなり、光ファイバを製造しない場合は供給装置1が後述の第2モードとなる。光ファイバを製造しない場合とは、例えば、樹脂被覆ダイス40へのガラスファイバ41の供給が停止している場合等である。本実施形態に係る光ファイバの製造方法では、上記の第1モードと第2モードとが交互に繰り返される。
【0036】
第1モードでは、第1タンク11から液送された樹脂は、加熱部32によって加熱される。加熱部32による加熱度合いは、温度測定部33によって測定された樹脂温度が目標温度になるように、制御部34によって制御される。なお、上述のように、温度測定部33に代えて又は加えて、粘度測定計や流量測定計を用いた場合、測定された樹脂粘度や樹脂流量が目標値になるように加熱部32を制御してもよい。
【0037】
また、第1モードでは、樹脂被覆ダイス40へ樹脂が供給される。第1モードでは、例えば、第1バルブ22を開け、第2バルブ24を閉めるように制御する。このように制御した場合、加熱部32によって加熱された樹脂は、第2バルブ24の下流側には進まずに、樹脂被覆ダイス40へと供給され、ガラスファイバ41の被覆に用いられる。
【0038】
なお、第1モードにおいても、樹脂被覆ダイス40へ供給される樹脂の流量等を制御することを目的として、第2バルブ24を開けてもよい。第2バルブ24を開ける場合、第2バルブ24の開閉度合いを制御して、第2バルブ24の下流側に流れる樹脂の流量が第1バルブ22の下流側へと流れる樹脂の流量よりも少なくなるようにすることが好ましい。第1モードにおける第2バルブ24の開閉度合いの制御は、例えば、ガラスファイバ41又は被覆ガラスファイバ42のライン速度等に基づいて行われることが好ましい。
【0039】
第2モードにおいても、第1モードと同様に、第1タンク11から液送された樹脂は、加熱部32によって加熱される。加熱部32による加熱度合いは、温度測定部33によって測定された樹脂温度が目標温度になるように、制御部34によって制御される。なお、上述のように、温度測定部33に代えて又は加えて、粘度測定計や流量測定計を用いた場合、測定された樹脂粘度や樹脂流量が目標値になるように加熱部32を制御してもよい。
【0040】
一方で、第2モードでは、樹脂被覆ダイス40への樹脂の供給が停止される。すなわち、第2モードでは、第1バルブ22を閉めて、第2バルブ24を開けるように制御する。よって、加熱部32によって加熱された樹脂は、第1バルブ22の下流側には進まずに、循環用樹脂配管23を経て第2タンク13へ戻ることになる。
【0041】
また、第2モードでは、流量測定器26によって測定された樹脂の流量に基づいて、第3バルブ25の開閉度合いが制御されることが好ましい。すなわち、第2モードでは、循環用樹脂配管23内の樹脂の流量が制御されることが好ましい。
【0042】
本実施形態に係る光ファイバの製造方法では、光ファイバを製造しない第2モードにおいても、樹脂供給配管20に樹脂が流れ続ける。また、樹脂供給配管20に流れ続ける樹脂は、樹脂被覆ダイス40に提供されるのに適した温度等であるように制御されている。よって、光ファイバを製造するために第1モードに切り替えた直後においても、樹脂供給配管20を流れる樹脂の温度等は、樹脂被覆ダイス40に提供されるのに適した温度等となる。
【0043】
以上、本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。また、上記説明した構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等に変更することができる。
【符号の説明】
【0044】
1:光ファイバ用樹脂供給装置(供給装置)
11:第1タンク
12:第1タンクヒータ
13:第2タンク
14:第2タンクヒータ
15:樹脂補給配管
20:樹脂供給配管
21:配管分岐部
22:第1バルブ
23:循環用樹脂配管
24:第2バルブ
25:第3バルブ
26:流量測定器
31:温調部
32:加熱部
33:温度測定部
34:制御部
40:樹脂被覆ダイス
41:ガラスファイバ
42:被覆ガラスファイバ