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特許7683345車両用ドアロック制御装置及び車両用ドアロック制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-19
(45)【発行日】2025-05-27
(54)【発明の名称】車両用ドアロック制御装置及び車両用ドアロック制御方法
(51)【国際特許分類】
   E05B 81/64 20140101AFI20250520BHJP
   E05B 77/54 20140101ALI20250520BHJP
   E05F 15/73 20150101ALI20250520BHJP
   B60R 25/25 20130101ALI20250520BHJP
【FI】
E05B81/64
E05B77/54
E05F15/73
B60R25/25
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021104063
(22)【出願日】2021-06-23
(65)【公開番号】P2023003098
(43)【公開日】2023-01-11
【審査請求日】2024-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(72)【発明者】
【氏名】片瀬 渉
【審査官】桐野 将伍
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-061816(JP,A)
【文献】特開2018-059315(JP,A)
【文献】特開2020-100963(JP,A)
【文献】特開2020-133116(JP,A)
【文献】特表2021-516646(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0009080(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 49/00,77/00-85/28
E05F 15/73
B60R 25/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が停止しているか否かを判定する車速判定部と、
前記車両が停止していると判定している状態で、前記車両の周囲に存在する物体と前記車両との距離を取得し、前記距離の変化に基づいて前記車両に接近してくる接近物体を検出する接近物体検出部と、
前記車両の周囲の画像を取得し、前記接近物体の位置に対応する画素位置に基づいて、前記車両の周囲の画像のうちの少なくとも前記接近物体の画像を含む所定領域画像内における上下方向の長さの上側半分の領域から顔画像を検出し、前記所定領域画像内における上下方向の長さの上側半分の領域に顔画像が検出されたとき、前記接近物体は前記車両に接近してくる接近人物であると判定する顔検出部と、
予め記憶されている顔画像を取得し、前記接近人物の顔画像が前記予め記憶されている顔画像と一致するか否かを判定する顔認証部と、
前記車両のドアがアンロック状態であり、かつ前記接近人物の顔画像が前記予め記憶されている顔画像と一致しない場合、前記ドアのドアロックを作動させるよう制御するドアロック制御部と、を備える
車両用ドアロック制御装置。
【請求項2】
前記接近物体検出部は、前記車両の周囲に存在する物体の位置を取得し、前記物体の位置の変化に基づいて前記接近物体の方向を特定し、
前記顔検出部は、前記接近物体の方向が前記車両の周囲の所定領域に進入する方向である場合、前記接近物体の画像を含む前記所定領域画像内の顔画像を検出する
請求項1に記載の車両用ドアロック制御装置。
【請求項3】
前記ドアロック制御部は、前記車両の減速度が所定減速度以上となったと判断した場合、又は、前記車両のエアバッグが作動したと判断した場合、前記車両のドアロックを作動させることを禁止する
請求項1又は2に記載の車両用ドアロック制御装置。
【請求項4】
前記車両の窓を閉めるよう制御する窓制御部をさらに備え、
前記窓制御部は、前記接近人物の顔画像が前記予め記憶されている顔画像と一致しない場合、前記車両の窓を閉めるよう制御する
請求項1又は2に記載の車両用ドアロック制御装置。
【請求項5】
車両が停止しているか否かを判定し、
前記車両が停止していると判定している状態で、前記車両の周囲に存在する物体と前記車両との距離を取得し、前記距離の変化に基づいて前記車両に接近してくる接近物体を検出し、
前記車両の周囲の画像を取得し、前記接近物体の位置に対応する画素位置に基づいて、前記車両の周囲の画像のうちの少なくとも前記接近物体の画像を含む所定領域画像内における上下方向の長さの上側半分の領域から顔画像を検出し、
前記所定領域画像内における上下方向の長さの上側半分の領域に顔画像が検出されたとき、前記接近物体は前記車両に接近してくる接近人物であると判定し、
予め記憶されている顔画像を取得し、前記接近人物の顔画像が前記予め記憶されている顔画像と一致するか否かを判定し、
前記車両のドアがアンロック状態であり、かつ前記接近人物の顔画像が前記予め記憶されている顔画像と一致しない場合、前記ドアのドアロックを作動させるよう制御する
車両用ドアロック制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアロック制御装置及び車両用ドアロック制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両に接近する物体を検知した場合に、車両のドアをロックする車両の自動ドアロック装置が知られている(特許文献1)。特許文献1に開示された装置は、停車時に車両の後方から接近する物体を検知した場合、車両のドアを車内から開放することができないようにするチャイルドプルーフ機構を作動させる。これにより、車両の乗員が車両の後方から接近する他車両に気づかずにドアを開放することを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-098743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された車両の自動ドアロック装置は、車両に接近する物体を検知した場合でも、車外からドアを開放することができる。そのため、特許文献1に開示された装置は、停車時に車両の乗員に危害を加える恐れがある他者によってドアを開放されてしまう可能性がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて成されたものであり、その目的は、車両の乗員に危害を加える恐れがある他者によってドアが解放されることを防止し、乗員の安全を守ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車両が停止しているか否かを判定する車速判定部と、前記車両が停止していると判定している状態で、前記車両の周囲に存在する物体と前記車両との距離を取得し、前記距離の変化に基づいて前記車両に接近してくる接近物体を検出する接近物体検出部と、前記車両の周囲の画像を取得し、前記車両の周囲の画像のうちの少なくとも前記接近物体の画像を含む所定領域画像内の顔画像を検出し、前記所定領域画像内に顔画像が検出されたとき、前記接近物体は前記車両に接近してくる接近人物であると判定する顔検出部と、予め記憶されている顔画像を取得し、前記接近人物の顔画像が前記予め記憶されている顔画像と一致するか否かを判定する顔認証部と、前記車両のドアがアンロック状態であり、かつ前記接近人物の顔画像が前記予め記憶されている顔画像と一致しない場合、前記ドアのドアロックを作動させるよう制御するドアロック制御部と、を備える車両用ドアロック制御装置を提供する。
【0007】
本発明は、車両が停止しているか否かを判定し、前記車両が停止していると判定している状態で、前記車両の周囲に存在する物体と前記車両との距離を取得し、前記距離の変化に基づいて前記車両に接近してくる接近物体を検出し、前記車両の周囲の画像を取得し、前記車両の周囲の画像のうちの少なくとも前記接近物体の画像を含む所定領域画像内の顔画像を検出し、前記所定領域画像内に顔画像が検出されたとき、前記接近物体は前記車両に接近してくる接近人物であると判定し、予め記憶されている顔画像を取得し、前記接近人物の顔画像が前記予め記憶されている顔画像と一致するか否かを判定し、前記車両のドアがアンロック状態であり、かつ前記接近人物の顔画像が前記予め記憶されている顔画像と一致しない場合、前記ドアのドアロックを作動させるよう制御する車両用ドアロック制御方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車両の乗員に危害を加える恐れがある他者によってドアが解放されることを防止し、乗員の安全を守ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1実施形態に係る車両用ドアロック制御装置3の構成を示すブロック図である。
図2図2は、車両に接近してくる人物の方向が所定領域2に進入する方向であるかを判断する処理を示す模式図である。
図3図3は、第1実施形態に係る車両用ドアロック制御装置3の動作を示すフローチャートである。
図4図4は、第2実施形態に係る車両用ドアロック制御装置3の構成を示すブロック図である。
図5図5は、第2実施形態に係る車両用ドアロック制御装置3の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0011】
(第1実施形態)
[車両用ドアロック制御装置3の構成]
図1を参照して、本実施形態に係る車両用ドアロック制御装置3の構成について説明する。車両用ドアロック制御装置3は、車両1の乗員に危害を加える恐れがある他者によってドアが解放されることを防止し、乗員の安全を守る装置である。
【0012】
車両用ドアロック制御装置3は、車両1に搭載される。車両用ドアロック制御装置3は、制御部10によって構成される。具体的には、制御部10は、車速判定部11、接近物体検出部12、顔検出部13、顔認証部14、ドアロック制御部15、を備えている。車両用ドアロック制御装置3は、測距部20、撮像部30、及び記憶部40のそれぞれから必要な情報を取得し、車両のドアロック機構51を作動させるよう制御する。なお、本実施形態では、車両用ドアロック制御装置3は、制御部10によって構成されるが、測距部20、撮像部30、記憶部40を備えていてもよい。
【0013】
先ず、制御部10が情報を取得する、測距部20、撮像部30、記憶部40について説明する。
【0014】
測距部20は、車両1の周囲に存在する物体を検出し、物体と車両1との距離、物体の車両1に対する位置を測定する。例えば、測距部20は、レーザレーダ、ミリ波レーダ、ライダ(LiDAR:Light Detection and Ranging)などの物体を検出する物体検出センサを用いて構成される。物体検出センサは、物体と車両1との距離、及び物体の車両1に対する位置(相対位置)を測定することができる。
【0015】
測距部20は、車両1の周囲に存在する物体を検出できる位置に設置される。詳細には、測距部20は、車両1の前方、左右側方、及び、後方にそれぞれ設置される。なお、測距部20の設置位置はこれに限定されない。例えば、測距部20は、前方、左右側方、及び、後方を検出する1つのユニットとして構成し、車両1のルーフに設置されてもよい。これにより、測距部20は車両1の周囲に存在する物体を検出することができる。測距部20は、車両1の周囲に存在する物体と車両1との距離、及び、車両1の周囲に存在する物体の車両1に対する位置(以後、単に「位置」とも呼ぶ)を所定の周期で連続的に測定し、測定結果を制御部10に送信する。なお、所定の周期は、例えば、0.5秒である。
【0016】
撮像部30は、車両1の周囲を撮像して車両1の周囲の画像を取得する。例えば、撮像部30は、CCD(Charge-Coupled Device)イメージセンサ又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等の撮像素子を備えたカメラを用いて構成され、車両1の周囲を撮像できる位置に設置される。
【0017】
撮像部30は、測距部20の設置位置と同様に車両1の前方、左右側方、及び、後方にそれぞれ設置してもよいし、360度を一度に撮像できる360度カメラを用いて構成された撮像部30を車両1のルーフに設置してもよい。撮像部30は、車両1の周囲の画像を所定の周期で連続的に取得し、取得した画像を制御部10に送信する。
【0018】
記憶部40は、HDD(Hard Disk Drive)及びSSD(Solid State Drive)を含む情報記憶装置で構成される。記憶部40は、制御部10から受信した車両1の乗員となる人物の顔画像を予め記憶する。記憶部40は車両1に搭載されていてもよいし、車両用ドアロック制御装置3内に搭載されていてもよい。
【0019】
次に、車両1が備えるドアロック機構51について説明する。
【0020】
ドアロック機構51は、車両1のドアをロック又はアンロックする機構である。ドアロック機構51をロック状態にするとドアハンドルを操作しても開扉せず、アンロック状態とするとドアハンドルで開扉可能となる。なお、ドアロック機構51は、図示しないBCM(Body Control Module)によって制御される。
【0021】
ドアロック機構51は、ドアに設けられたロックノブを車両1の乗員が手動で操作することにより、ロック又はアンロックの動作を行う。また、ドアロック機構51は、車両1の乗員による操作スイッチの操作に基づいてアクチュエータを動作させることで、ロック又はアンロックの動作を行う。ドアロック機構51は、アクチュエータを動作させることで各々のドアを一斉にロック状態又はアンロック状態とすることもできる。
【0022】
次に、車両用ドアロック制御装置3が備える制御部10について説明する。制御部10は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)などのメモリ、及び入出力部を備える汎用のマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータには車両用ドアロック制御装置3として機能させるためのコンピュータプログラムがインストールされている。コンピュータプログラムを実行することにより、マイクロコンピュータは、車両用ドアロック制御装置3が備える複数の情報処理回路(11、12、13、14、15)として機能する。
【0023】
なお、本実施形態では、ソフトウェアによって車両用ドアロック制御装置3が備える複数の情報処理回路(11、12、13、14、15)を実現する例を示すが、各情報処理を実行するための専用のハードウェアを用意して、情報処理回路を構成することも可能である。また、複数の情報処理回路を個別のハードウェアにより構成してもよい。
【0024】
制御部10は、車両1が停止しているか否かを判定し、車両1が停止していると判定している状態で、車両1の周囲に存在する物体と車両1との距離を測距部20から取得し、距離の変化に基づいて車両1に接近してくる接近物体を検出する。制御部10は、車両1の周囲の画像を撮像部30から取得し、車両1の周囲の画像のうちの少なくとも接近物体の画像を含む所定領域画像内の顔画像を検出し、所定領域画像内に顔画像が検出されたとき、接近物体は車両1に接近してくる接近人物であると判定する。そして、制御部10は、予め記憶されている顔画像を記憶部40から取得し、接近人物の顔画像が予め記憶されている顔画像と一致するか否かを判定する。制御部10は、車両1のドアがアンロック状態であり、かつ接近人物の顔画像が予め記憶されている顔画像と一致しない場合、ドアのドアロックを作動させるようドアロック機構51を制御する。
【0025】
制御部10は、車両1に接近してくる接近人物の顔画像が予め記憶部40に記憶されている顔画像と一致するか否かを判定するための顔画像を取得する。制御部10は、例えば、制御部10に図示しない入力部として設けられたUSBポート及びSDカードスロットを介して顔画像を取得してもよいし、無線通信部を設けてスマートフォンとの無線通信により取得してもよい。制御部10は、取得した顔画像を記憶部40に送信する。これにより、記憶部40に顔画像が記憶される。記憶される顔画像は、車両1に搭乗する人物、すなわち、車両1の乗員となる人物の顔画像である。したがって、車両1に今後搭乗する予定のある人物、例えば、家族、友人などの顔画像を予め記憶させておくことにより、家族、友人などが車両1に搭乗する際にドアロックを作動させないようにすることができる。
【0026】
次に、制御部10が備える複数の情報処理回路について具体的に説明する。
【0027】
制御部10は、車速判定部11、接近物体検出部12、顔検出部13、顔認証部14、ドアロック制御部15を備える。
【0028】
車速判定部11は、車両1の速度を算出し、車両1が停止しているか否かを判定する。車速判定部11は、例えば、車両1の速度が3km/h以下となったことを検出した場合、車両が停止したと判定する。更に、車速判定部11は、車両1の速度に加え、車両1の加速度及び減速度を算出する。なお、車両1が停止したと判定する車両1の速度は、適宜設定することができる。
【0029】
車速判定部11は、車両1の各車輪に備わる車輪速センサから出力される車速パルスを取得し、単位時間当たりに出力されたパルス数、又はパルス間の時間間隔を計測することにより、車両1の各車輪の回転数を算出することができる。これにより、車速判定部11は、各車輪の回転数に基づいて車両1の速度を算出し、車両1の速度の変化から加速度及び減速度を算出することができる。
【0030】
接近物体検出部12は、車両1が停車していると車速判定部11が判定している状態で、物体と車両1との距離を測距部20から取得する。接近物体検出部12は、取得した物体と車両1との距離の変化に基づいて車両1に接近してくる接近物体を検出する。
【0031】
より詳細には、接近物体検出部12は、車両1が停止していると車速判定部11が判定している状態で、測距部20が測定する車両1の周囲に存在する物体と車両1との距離を所定の周期で連続的に取得する。これにより、接近物体検出部12は、車両1の周囲に存在する物体と車両1との距離の変化を算出することができる。これにより、接近物体検出部12は、車両1に接近してくる接近物体を検出することができる。
【0032】
接近物体検出部12は、車両1の周囲に存在する物体と車両1との距離の変化を算出する算出領域として、例えば、車両1の中心位置から半径6m以内を算出領域として設定する。なお、当該算出領域は、車両1のサイズに応じて適宜設定することができる。
【0033】
更に、接近物体検出部12は、車両1が停車していると車速判定部11が判定している状態で、車両1の周囲に存在する物体の位置を測距部20から取得し、車両1の周囲に存在する物体の位置の変化に基づいて接近物体の方向を特定する。
【0034】
より詳細には、接近物体検出部12は、車両1が停止していると車速判定部11が判定している状態で、測距部20が測定する車両1の周囲に存在する物体の位置を所定の周期で連続的に取得する。これにより、接近物体検出部12は、車両1に接近してくる接近物体の位置の変化量を算出することができ、当該変化量に基づいて接近物体の方向を特定することができる。
【0035】
接近物体検出部12は、車両1に接近してくる接近物体の位置及び方向を顔検出部13に送信する。
【0036】
顔検出部13は、車両1の周囲の画像を撮像部30から取得する。顔検出部13は、取得した車両1の周囲の画像のうちの少なくとも接近物体の画像を含む所定領域画像内の顔画像を検出し、当該所定領域画像内に顔画像が検出されたとき、接近物体は車両1に接近してくる接近人物であると判定する。
【0037】
具体的には、顔検出部13は、接近物体の方向が車両1の周囲の所定領域2に進入する方向であるか否かを判定し、接近物体の方向が所定領域2に進入する方向である場合、当該接近物体を含む所定領域内の顔画像を検出する。なお、車両1の所定領域2については図2を参照して後述する。
【0038】
先ず、顔検出部13は、接近物体の方向が所定領域2に進入する方向であると判定した場合、撮像部30から車両1の周囲の画像を取得し、接近物体検出部12から当該接近物体の位置を取得する。これにより、顔検出部13は、車両1の周囲の画像から、接近物体の位置に基づいて接近物体の画像を含む所定領域画像を取得することができる。
【0039】
より詳細には、測距部20が出力する車両1の周囲の物体の位置座標と、撮像部30が取得する車両1の周囲の画像の画素位置は予め同期されている。そのため、顔検出部13は、測距部20によって検出された物体の位置に対応する車両1の周囲の画像の画素位置を選択することができる。これにより、顔検出部13は、撮像部30から取得した車両1の周囲の画像から接近物体に対応する画像を抽出することができる。
【0040】
所定領域画像は、例えば、接近物体の画像における上下方向の長さの上側半分の領域の画像としてもよいし、接近物体の画像よりも所定の範囲だけ大きい領域画像としてもよい。接近物体の画像よりも所定の範囲だけ大きい領域画像は、例えば、接近物体の画像から10cmだけ離れた領域までを含むよう設定された矩形又は楕円系の領域画像である。
【0041】
次に、顔検出部13は、所定領域画像内から顔画像を検出する。顔検出部13は、既知の顔検出機能を用いることにより、所定領域画像から人物の顔を検出することができる。顔検出機能は、所定領域画像内から肌色の部分を検出して当該部分を顔として検出する、又は、所定領域画像内から顔の部位に関する特徴点、例えば目、鼻、口などの代表的なモデル形状及び位置関係が類似する部分を検出して当該部分を顔として検出するアルゴリズムにより機能する。
【0042】
顔検出部13は、所定領域画像内に顔画像が検出されたとき、接近物体は車両1に接近してくる接近人物であると判定する。これにより、接近人物の顔画像が検出される。
【0043】
顔認証部14は、予め記憶されている顔画像を記憶部40から取得し、接近人物の顔画像が予め記憶されている顔画像と一致するか否かを判定する。
【0044】
顔認証部14は、既知の顔認識技術を用いることにより、接近人物の顔画像が予め記憶されている顔画像と一致するか否かを判断することができる。例えば、顔認証部14は、顔画像から顔の部位の相対位置、大きさ、目、鼻、及びあごの形などの特徴を抽出し、抽出した特徴の一致度を算出することで、接近人物の顔画像が記憶部40に予め記憶されている顔画像と一致するか否かを判断することができる。
【0045】
顔認証部14は、接近人物の顔画像が記憶部40に予め記憶されている顔画像と一致するか否かの判断結果を、ドアロック制御部15に送信する。
【0046】
ドアロック制御部15は、ドアがアンロック状態であり、かつ接近人物の顔画像が記憶部40に予め記憶されている顔画像と一致しない場合、ドアのドアロックを作動させるよう制御する。
【0047】
例えば、ドアロック制御部15は、ドアがアンロック状態であり、かつ接近人物の顔画像が記憶部40に予め記憶されている顔画像と一致しない場合、車両1に備わるBCMにドアロック機構51を作動させるよう指示するドアロック作動信号を送信する。なお、ドアロック制御部15は、BCMから送信されるドアロック状態を示す情報を取得することで、ドアがロック状態であるかアンロック状態であるかを判定することができる。
【0048】
ドアロック作動信号を受信したBCMは、ドアロック機構51を制御し、ドアロックを作動させる。なお、ドアロックの作動方法はこれに限定されない。例えば、制御部10とドアロック機構51とを電気的に接続し、制御部10が直接ドアロックを作動させるよう構成してもよい。ドアロック制御部15によってドアロックが作動した場合でも、ドアロックは車両1の内部から解除することができる。
【0049】
ドアロック制御部15は、車両1の減速度が所定減速度以上となったと判断した場合、又は、車両1のエアバッグが作動したと判断した場合、ドアのドアロックを作動させるよう制御することを禁止する。
【0050】
ドアロック制御部15は、車速判定部11から車両1の減速度を取得することで、車両1の減速度が所定減速度以上となったか否かを判断することができる。所定減速度は、車両1が事故により物体に衝突した際に発生する減速度である。所定減速度は、例えばマイナス1.5Gである。
【0051】
ドアロック制御部15は、図示しないエアバッグECU(Electronic Control Unit)からエアバッグが作動したか否かを示す信号を受信することで、エアバッグが作動したか否かを判断することができる。
【0052】
次に、図2を参照して、車両1が停止している状態において、接近物体検出部12が車両1に接近してくる接近物体を検出する処理から、接近物体の方向が所定領域2に進入する方向であるか否かを判定する処理までを模式的に説明する。
【0053】
図2には、車両1の周囲に存在する物体であって、停止している車両1に接近してくる物体A及び物体Bが描かれている。物体A(t1)及び物体B(t1)は、時刻t1における物体A及びBの位置であり、物体A(t2)及び物体B(t2)は、時刻t2における物体A及び物体Bの位置である。なお、物体A及び物体Bは人物である。
【0054】
接近物体検出部12は、測距部20から、物体Aと車両1との距離、及び、物体Bと車両1との距離を所定の周期で連続的に取得する。具体的には、接近物体検出部12は、時刻t1における物体A(t1)と車両1との距離及び物体B(t1)と車両1との距離を取得し、時刻t2における物体A(t2)と車両1との距離及び物体B(t2)と車両1との距離を取得する。
【0055】
接近物体検出部12は、時刻t1から時刻t2における、物体Aと車両1との距離の変化、及び物体Bと車両1との距離の変化を算出する。接近物体検出部12は、物体Aと車両1との距離の変化、及び物体Bと車両1との距離の変化に基づいて、物体Aと車両1との距離及び物体Bと車両1との距離が短くなっているか否かを判断する。
【0056】
物体A及び物体Bは、車両1に接近してくる物体であり、物体Aと車両1との距離及び物体Bと車両1との距離が短くなっている。そのため、物体検出部12は、物体A及び物体Bを車両1に接近してくる接近物体A及び接近物体Bとして検出する。なお、測定する物体と車両1との距離は、車両1の中心位置から物体の中心位置までの直線距離である。
【0057】
接近物体検出部12は、接近物体A及び接近物体Bの位置の変化量を算出し、接近物体Aの方向Ad及び接近物体Bの方向Bdを特定する。
【0058】
接近物体検出部12は、接近物体Aの方向Ad、及び接近物体Bの方向Bdが所定領域2に進入する方向であるか否かを判断する。
【0059】
所定領域2は、車両1の周囲を囲むように設定された領域であり、車両1の右側方及び左側方の領域が広く設定される。車両1の中心位置から車両1の左右側方の所定領域2までの最大距離は、例えば2mである。
【0060】
接近物体Aの方向Adは所定領域2に進入せず、接近物体Bの方向Bdは所定領域2に進入する方向である。そのため、接近物体検出部12は、接近物体Bの方向Bdは所定領域2に進入する方向であると判断する。
【0061】
[車両用ドアロック制御方法]
次に、図3を参照して、図1に示す車両用ドアロック制御装置3の処理の一例を説明する。図3のフローチャートに示す車両用ドアロック制御装置3の動作は、車両1のアクセサリスイッチがONとなると同時に開始され、車両1のアクセサリスイッチがOFFとなった時点で処理を終了する。
【0062】
ステップS10において、車速判定部11は車両1が停止しているか否かを判定する。例えば、車速判定部11は、車両1の速度が3km/h以下となったことを検出した場合、車両1が停止したと判断する。
【0063】
ステップS10において、車速判定部11は、車両1が停止していないと判断した場合(ステップS10でNO)、処理はステップS110に進む。
【0064】
ステップS10において、車速判定部11は、車両1が停止していると判断した場合(ステップS10でYES)、処理はステップS20に進む。
【0065】
ステップS20において、接近物体検出部12は、車両1の周囲に存在する物体と車両1との距離を測距部20から取得し、処理はステップS30に進む。
【0066】
ステップS30において、接近物体検出部12は、車両1の周囲に存在する物体の車両1に対する位置(相対位置)を測距部20から取得し、処理はステップS40に進む。
【0067】
ステップS40において、顔検出部13は、車両1の周囲の画像を撮像部30から取得し、処理はステップS50に進む。
【0068】
ステップS50において、接近物体検出部12は、物体と車両1との距離の変化に基づいて車両1に接近してくる接近物体を検出する。また、ステップS50において、接近物体検出部12は、車両1に接近してくる接近物体の位置の変化量を算出することで、接近物体の方向を特定する。
【0069】
ステップS50において、接近物体検出部12は、車両1に接近してくる接近物体を検出した場合(ステップS50でYES)、処理はステップS60に進む。
【0070】
ステップS50において、接近物体検出部12は、車両1に接近してくる接近物体を検出しなかった場合(ステップS50でNO)、処理はステップS110に進む。
【0071】
ステップS60において、顔検出部13は、取得した車両1の周囲の画像のうちの少なくとも接近物体の画像を含む所定領域画像内から顔画像を検出する。
【0072】
より詳細には、顔検出部13は、接近物体の方向が車両1の周囲の所定領域2に進入する方向であるか否かを接近物体の位置の変化に基づいて判定し、接近物体の方向が所定領域2に進入する方向である場合、当該接近物体を含む所定領域内から顔画像を検出する。
【0073】
ステップS60において、顔検出部13は、所定領域画像内から顔画像を検出できなかった場合(ステップS60でNO)、処理はステップS110に進む。
【0074】
ステップS60において、顔検出部13は、所定領域画像内から顔画像を検出した場合(ステップS60でYES)、処理はステップS70に進む。
【0075】
ステップS70において、顔検出部13は、所定領域画像内から顔画像が検出された接近物体は車両1に接近してくる接近人物であると判定する。
【0076】
ステップS80において、顔認証部14は、予め記憶されている顔画像を記憶部40から取得し、接近人物の顔画像が予め記憶されている顔画像と一致するか否かを判定する。
【0077】
ステップS80において、顔認証部14は、接近人物の顔画像が記憶部40に予め記憶されている顔画像と一致すると判定した場合(ステップS80でNO)、処理はステップS110に進む。
【0078】
ステップS80において、顔認証部14は、接近人物の顔画像が記憶部40に予め記憶されている顔画像と一致しないと判定した場合(ステップS80でYES)、処理はステップS90に進む。
【0079】
ステップS90において、ドアロック制御部15は、ドアがアンロック状態であるか否かを判定する。
【0080】
ステップS90において、ドアロック制御部15は、ドアがロック状態であると判定した場合(ステップS90でNO)、処理はステップS110に進む。
【0081】
ステップS90において、ドアロック制御部15は、ドアがアンロック状態であると判定した場合(ステップS90でYES)、処理はステップS100に進む。
【0082】
ステップS100において、ドアロック制御部15は、ドアのドアロックを作動させるよう制御する。具体的には、ドアロック制御部15は、車両1に備わるBCMにドアロック機構51を作動させるよう指示するドアロック作動信号を送信し、ドアロックを作動させ、処理はステップS110に進む。
【0083】
ステップS110において、制御部10に備わる図示しない電源制御部は、アクセサリスイッチの状態を取得し、アクセサリスイッチの状態を判定する。電源制御部は、アクセサリスイッチの状態がONであると判定した場合(ステップS110でNO)、処理はステップS10に戻る。電源制御部は、アクセサリスイッチの状態がOFFであると判定した場合(ステップS110でYES)、シャットダウン処理を行い処理は終了する。
【0084】
[作用効果]
以上、説明したように、第1実施形態によれば以下作用効果が得られる。
【0085】
車両用ドアロック制御装置3は、車両1が停止しているか否かを判定し、車両1が停止していると判定している状態で、物体と車両1との距離の変化に基づいて車両1に接近してくる接近物体を検出する。車両用ドアロック制御装置3は、車両1の周囲の画像のうちの少なくとも接近物体の画像を含む所定領域画像内の顔画像を検出し、所定領域画像内に顔画像が検出されたとき、接近物体は車両1に接近してくる接近人物であると判定する。
【0086】
これにより、車両用ドアロック制御装置3は、車両1が停止時に車両1に接近してくる接近物体を検出することができ、接近物体の中から車両1に接近してくる接近人物を特定することができる。
【0087】
車両用ドアロック制御装置3は、接近人物の顔画像が予め記憶されている顔画像と一致するか否かを判定し、車両1のドアがアンロック状態であり、かつ接近人物の顔画像が予め記憶されている顔画像と一致しない場合、ドアのドアロックを作動させるよう制御する。
【0088】
これにより、車両用ドアロック制御装置3は、車両1に接近してくる接近人物が車両1に搭乗する人物であるか否かを判定することができ、接近人物が車両1に搭乗する人物でない他者であり、ドアがアンロック状態である場合、車両1のドアをドアロックすることができる。すなわち、車両1の乗員に危害を加える恐れがある他者によって、車両1のドアが解放されることを防止することができ、乗員の安全を守ることができる。
【0089】
車両用ドアロック制御装置3は、車両1の周囲に存在する物体の位置を測定し、車両1の周囲に存在する物体の位置の変化に基づいて接近物体の方向を特定する。車両用ドアロック制御装置3は、接近物体の方向が車両1の周囲の所定領域2に進入する方向である場合、接近物体の画像を含む所定領域画像内の顔画像を検出する。
【0090】
これにより、車両用ドアロック制御装置3は、車両1のドアに接近してくる接近物体をより精度良く検出することができる。更に、車両用ドアロック制御装置3は、車両1の周囲の所定領域2に進入しない物体の顔画像を検出する処理を削減することができ、制御部10に掛かる処理負荷を低減することができる。
【0091】
車両用ドアロック制御装置3は、車両1の減速度が所定減速度以上となったと判断した場合、又は、車両1のエアバッグが作動したと判断した場合、車両1のドアロックを作動させることを禁止する。これにより、車両用ドアロック制御装置3は、車両1に事故が発生した際に車外の人物が車両1の乗員を速やかに救助することができる。
【0092】
(第2実施形態)
[車両用ドアロック制御装置3の構成]
図4を参照して、第2実施形態に係る車両用ドアロック制御装置3の構成を説明する。第1実施形態との相違点は、車両1の窓を閉めるよう制御する窓制御部16を更に備える点である。よって、当該相違点についてのみ説明し、その他共通する構成については説明を省略する。
【0093】
窓制御部16は、接近人物の顔画像が記憶部40に予め記憶されている顔画像と一致しない場合、車両1の窓を閉めるよう車両1に備わる窓開閉機構52を作動させる。なお、窓開閉機構52は、BCMによって制御される。
【0094】
具体的には、窓制御部16は、車両1に備わるBCMに窓開閉機構を作動させるよう指示する窓閉め指示信号を送信する。窓閉め指示信号を受信したBCMは、窓開閉機構52を作動させ、窓を閉めるよう制御する。なお、窓開閉機構52の制御方法はこれに限定されない。例えば、制御部10と窓開閉機構52を電気的に接続し、制御部10が直接窓開閉機構52を作動させるよう構成してもよい。
【0095】
[車両用ドアロック制御方法]
次に、図5を参照して、図4に示す車両用ドアロック制御装置3の処理の一例を説明する。第1実施形態との相違点は、ステップS105を更に備える点である。よって当該相違点についてのみ説明し、その他共通する構成については説明を省略する。
【0096】
ステップS105において、窓制御部16は、窓を閉めるよう車両1に備わる窓開閉機構52を作動させる。具体的には、BCMに窓を閉めるよう指示する窓閉め指示信号を送信し、窓を閉めるよう窓開閉機構52を作動させる。
【0097】
[作用効果]
以上、説明したように、第2実施形態によれば以下作用効果が得られる。
【0098】
車両用ドアロック制御装置3は、接近人物の顔画像が予め記憶されている顔画像と一致しない場合、車両1の窓を閉めるよう制御する。これにより、車両用ドアロック制御装置3は、接近人物が車両1に搭乗する人物でない他者によって、窓から危害を加えられることを防止することができ、乗員の安全を守ることができる。
【0099】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0100】
1 車両
2 所定領域
3 車両用ドアロック制御装置
10 制御部
11 車速判定部
12 接近物体検出部
13 顔検出部
14 顔認証部
15 ドアロック制御部
16 窓制御部
20 測距部
30 撮像部
40 記憶部
51 ドアロック機構
52 窓開閉機構
図1
図2
図3
図4
図5