(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-19
(45)【発行日】2025-05-27
(54)【発明の名称】双方向スイッチ回路および電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H01L 25/07 20060101AFI20250520BHJP
H01L 25/18 20230101ALI20250520BHJP
【FI】
H01L25/04 C
(21)【出願番号】P 2021151950
(22)【出願日】2021-09-17
【審査請求日】2023-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】田畑 光晴
【審査官】鹿野 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-183957(JP,A)
【文献】特開2015-097238(JP,A)
【文献】特開2011-229262(JP,A)
【文献】特開2020-150602(JP,A)
【文献】特開2011-036016(JP,A)
【文献】特開2008-166461(JP,A)
【文献】特開2011-254387(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 25/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1パターンと、
第2パターンと、
第1ゲート電極と、第1裏面電極と、前記第1裏面電極の反対側に設けられた第1上面電極と、を有し、前記第1裏面電極が前記第1パターン上に設けられ前記第1パターンと電気的に接続された第1半導体装置と、
第2ゲート電極と、第2裏面電極と、前記第2裏面電極の反対側に設けられた第2上面電極と、を有し、前記第2裏面電極が前記第2パターン上に設けられ前記第2パターンと電気的に接続された第2半導体装置と、
第1カソード電極と、前記第1カソード電極と反対側に設けられた第1アノード電極と、を有し、前記第1カソード電極が前記第1パターン上に設けられ前記第1パターンと電気的に接続された第1ダイオードと、
第2カソード電極と、前記第2カソード電極と反対側に設けられた第2アノード電極と、を有し、前記第2カソード電極が前記第2パターン上に設けられ前記第2パターンと電気的に接続された第2ダイオードと、
前記第1上面電極と前記第2アノード電極を電気的に接続する第1配線と、
前記第2上面電極と前記第1アノード電極を電気的に接続する第2配線と、
を備え、
前記第1上面電極と、前記第2上面電極と、前記第1アノード電極と、前記第2アノード電極は、互いに電気的に接続され、
前記第1上面電極と前記第2上面電極、前記第1アノード電極と前記第2アノード電極、前記第1上面電極と前記第1アノード電極、または前記第2上面電極と前記第2アノード電極が、接続部によって電気的に接続され、
前記接続部は前記第1配線および前記第2配線と別個に設けられ
、
前記接続部は、駆動パターンを有し、
前記駆動パターンを介して、外部から前記第1上面電極と前記第2上面電極に電圧が供給されることを特徴とする双方向スイッチ回路。
【請求項2】
前記第1上面電極と前記第2上面電極とが前記接続部によって電気的に接続されることを特徴とする請求項1に記載の双方向スイッチ回路。
【請求項3】
前記第1アノード電極と前記第2アノード電極とが前記接続部によって電気的に接続されることを特徴とする請求項1に記載の双方向スイッチ回路。
【請求項4】
前記第1上面電極と前記第1アノード電極とが前記接続部によって電気的に接続されることを特徴とする請求項1に記載の双方向スイッチ回路。
【請求項5】
前記第2上面電極と前記第2アノード電極とが前記接続部によって電気的に接続されることを特徴とする請求項1に記載の双方向スイッチ回路
。
【請求項6】
前記第1半導体装置と前記第1ダイオードは1つのチップに形成されることを特徴とする請求項1から
5の何れか1項に記載の双方向スイッチ回路。
【請求項7】
前記第1半導体装置および前記第2半導体装置はIGBTであることを特徴とする請求項1から
6の何れか1項に記載の双方向スイッチ回路。
【請求項8】
前記第1半導体装置および前記第2半導体装置はMOSFETであることを特徴とする請求項1から
6の何れか1項に記載の双方向スイッチ回路。
【請求項9】
第1パターンと、
第2パターンと、
第1ゲート電極と、第1裏面電極と、前記第1裏面電極の反対側に設けられた第1上面電極と、を有し、前記第1裏面電極が前記第1パターン上に設けられ前記第1パターンと電気的に接続された第1半導体装置と、
第2ゲート電極と、第2裏面電極と、前記第2裏面電極の反対側に設けられた第2上面電極と、を有し、前記第2裏面電極が前記第2パターン上に設けられ前記第2パターンと電気的に接続された第2半導体装置と、
第1カソード電極と、前記第1カソード電極と反対側に設けられた第1アノード電極と、を有し、前記第1カソード電極が前記第1パターン上に設けられ前記第1パターンと電気的に接続された第1ダイオードと、
第2カソード電極と、前記第2カソード電極と反対側に設けられた第2アノード電極と、を有し、前記第2カソード電極が前記第2パターン上に設けられ前記第2パターンと電気的に接続された第2ダイオードと、
前記第1上面電極と前記第2アノード電極を電気的に接続する第1配線と、
前記第2上面電極と前記第1アノード電極を電気的に接続する第2配線と、
を備え、
前記第1上面電極と、前記第2上面電極と、前記第1アノード電極と、前記第2アノード電極は、互いに電気的に接続され、
前記第1上面電極と前記第2上面電極、前記第1アノード電極と前記第2アノード電極、前記第1上面電極と前記第1アノード電極、または前記第2上面電極と前記第2アノード電極が、接続部によって電気的に接続され、
前記接続部は前記第1配線および前記第2配線と別個に設けられ、
前記第1上面電極と、前記第2上面電極と、前記第1アノード電極と、前記第2アノード電極とを互いに接続する部材には、金属細線が含まれることを特徴とす
る双方向スイッチ回路。
【請求項10】
前記金属細線は、銅、Al合金または銅に被覆されたAlから形成されていることを特徴とする請求項
9に記載の双方向スイッチ回路。
【請求項11】
前記第1上面電極と、前記第2上面電極と、前記第1アノード電極と、前記第2アノード電極とを互いに接続する部材には、金属板が含まれることを特徴とする請求項1から
8の何れか1項に記載の双方向スイッチ回路。
【請求項12】
前記第1半導体装置、前記第2半導体装置、前記第1ダイオードまたは前記第2ダイオードは、ワイドバンドギャップ半導体から形成されていることを特徴とする請求項1から1
1の何れか1項に記載の双方向スイッチ回路。
【請求項13】
前記ワイドバンドギャップ半導体は、炭化珪素、窒化ガリウム系材料またはダイヤモンドであることを特徴とする請求項1
2に記載の双方向スイッチ回路。
【請求項14】
請求項1から1
3の何れか1項に記載の双方向スイッチ回路を備えることを特徴とする電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、双方向スイッチ回路および電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、双方向スイッチモジュールが開示されている。この双方向スイッチモジュールは、熱拡散板となる第1金属ベース板に、双方向スイッチ回路の第1節点と接続される接合電極を有する第1半導体装置が載置される。また、同じく熱拡散板となる第2金属ベース板に、双方向スイッチ回路の第2節点と接続される接合電極を有する第2半導体装置が載置される。第1半導体装置の接合電極は、第1金属ベース板と同一電位とされている。また、第2半導体装置の接合電極は、第2金属ベース板と同一電位とされている。そして、各金属ベース板と各半導体装置の非接合電極とが、それぞれ金属細線で接続されて双方向スイッチ回路が構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の双方向スイッチ回路では、エミッタコモン型の回路結線を行うために、エミッタ電位のパターンを配置している。このため、回路の面積が大きくなるおそれがある。
【0005】
本開示は、上述の課題を解決するためになされたもので、小型化が可能な双方向スイッチ回路および電力変換装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る双方向スイッチ回路は、第1パターンと、第2パターンと、第1ゲート電極と、第1裏面電極と、前記第1裏面電極の反対側に設けられた第1上面電極と、を有し、前記第1裏面電極が前記第1パターン上に設けられ前記第1パターンと電気的に接続された第1半導体装置と、第2ゲート電極と、第2裏面電極と、前記第2裏面電極の反対側に設けられた第2上面電極と、を有し、前記第2裏面電極が前記第2パターン上に設けられ前記第2パターンと電気的に接続された第2半導体装置と、第1カソード電極と、前記第1カソード電極と反対側に設けられた第1アノード電極と、を有し、前記第1カソード電極が前記第1パターン上に設けられ前記第1パターンと電気的に接続された第1ダイオードと、第2カソード電極と、前記第2カソード電極と反対側に設けられた第2アノード電極と、を有し、前記第2カソード電極が前記第2パターン上に設けられ前記第2パターンと電気的に接続された第2ダイオードと、前記第1上面電極と前記第2アノード電極を電気的に接続する第1配線と、前記第2上面電極と前記第1アノード電極を電気的に接続する第2配線と、を備え、前記第1上面電極と、前記第2上面電極と、前記第1アノード電極と、前記第2アノード電極は、互いに電気的に接続され、前記第1上面電極と前記第2上面電極、前記第1アノード電極と前記第2アノード電極、前記第1上面電極と前記第1アノード電極、または前記第2上面電極と前記第2アノード電極が、接続部によって電気的に接続され、前記接続部は前記第1配線および前記第2配線と別個に設けられ、前記接続部は、駆動パターンを有し、前記駆動パターンを介して、外部から前記第1上面電極と前記第2上面電極に電圧が供給される。
本開示に係る双方向スイッチ回路は、第1パターンと、第2パターンと、第1ゲート電極と、第1裏面電極と、前記第1裏面電極の反対側に設けられた第1上面電極と、を有し、前記第1裏面電極が前記第1パターン上に設けられ前記第1パターンと電気的に接続された第1半導体装置と、第2ゲート電極と、第2裏面電極と、前記第2裏面電極の反対側に設けられた第2上面電極と、を有し、前記第2裏面電極が前記第2パターン上に設けられ前記第2パターンと電気的に接続された第2半導体装置と、第1カソード電極と、前記第1カソード電極と反対側に設けられた第1アノード電極と、を有し、前記第1カソード電極が前記第1パターン上に設けられ前記第1パターンと電気的に接続された第1ダイオードと、第2カソード電極と、前記第2カソード電極と反対側に設けられた第2アノード電極と、を有し、前記第2カソード電極が前記第2パターン上に設けられ前記第2パターンと電気的に接続された第2ダイオードと、前記第1上面電極と前記第2アノード電極を電気的に接続する第1配線と、前記第2上面電極と前記第1アノード電極を電気的に接続する第2配線と、を備え、前記第1上面電極と、前記第2上面電極と、前記第1アノード電極と、前記第2アノード電極は、互いに電気的に接続され、前記第1上面電極と前記第2上面電極、前記第1アノード電極と前記第2アノード電極、前記第1上面電極と前記第1アノード電極、または前記第2上面電極と前記第2アノード電極が、接続部によって電気的に接続され、前記接続部は前記第1配線および前記第2配線と別個に設けられ、前記第1上面電極と、前記第2上面電極と、前記第1アノード電極と、前記第2アノード電極とを互いに接続する部材には、金属細線が含まれる。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る双方向スイッチ回路では、第1上面電極と第2アノード電極とが第1配線で電気的に接続され、第2上面電極と第1アノード電極とが第2配線で電気的に接続される。また、第1上面電極と、第2上面電極と、第1アノード電極と、第2アノード電極は、互いに電気的に接続されている。このため、エミッタ電位のパターンを追加する必要がなく、小型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る双方向スイッチ回路を説明する図である。
【
図2】実施の形態1に係る双方向スイッチ回路の平面図である。
【
図3】比較例に係る双方向スイッチ回路の平面図である。
【
図4】実施の形態1の第1の変形例に係る双方向スイッチ回路の平面図である。
【
図5】実施の形態1の第2の変形例に係る双方向スイッチ回路の平面図である。
【
図6】実施の形態1の第3の変形例に係る双方向スイッチ回路の平面図である。
【
図7】実施の形態2に係る双方向スイッチ回路の平面図である。
【
図8】実施の形態2の第1の変形例に係る双方向スイッチ回路の平面図である。
【
図9】実施の形態2の第2の変形例に係る双方向スイッチ回路の平面図である。
【
図10】実施の形態2の第3の変形例に係る双方向スイッチ回路の平面図である。
【
図11】実施の形態3に係る双方向スイッチ回路の平面図である。
【
図12】実施の形態3の第2の変形例に係る双方向スイッチ回路の平面図である。
【
図13】実施の形態3の第3の変形例に係る双方向スイッチ回路の平面図である。
【
図14】実施の形態4に係る電力変換装置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
各実施の形態に係る双方向スイッチ回路および電力変換装置について図面を参照して説明する。同じ又は対応する構成要素には同じ符号を付し、説明の繰り返しを省略する場合がある。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る双方向スイッチ回路100を説明する図である。
図2は、実施の形態1に係る双方向スイッチ回路100の平面図である。双方向スイッチ回路100は、半導体装置Tr1、Tr2と、ダイオードDi1、Di2を備える。半導体装置Tr1、Tr2はIGBTである。ダイオードDi1は、アノードと半導体装置Tr1のエミッタとが同一電位になるように、半導体装置Tr1と逆並列に接続されている。同様にダイオードDi2は、アノードと半導体装置Tr2のエミッタとが同一電位になるように、半導体装置Tr2と逆並列に接続されている。
【0011】
双方向スイッチ回路100は、絶縁基板上に配置されたパターン10、20を備える。パターン10、20はコレクタパターンである。半導体装置Tr1は、ゲート電極G1と、裏面電極C1と、裏面電極C1の反対側に設けられた上面電極Es1とを有する。裏面電極C1はパターン10上に設けられ、パターン10と電気的に接続されている。裏面電極C1はコレクタ電極であり、上面電極Es1はエミッタ電極である。
【0012】
半導体装置Tr2は、ゲート電極G2と、裏面電極C2と、裏面電極C2の反対側に設けられた上面電極Es2とを有する。裏面電極C2はパターン20上に設けられ、パターン20と電気的に接続されている。裏面電極C2はコレクタ電極であり、上面電極Es2はエミッタ電極である。
【0013】
ダイオードDi1は、カソード電極Ca1と、カソード電極Ca1と反対側に設けられたアノード電極A1と、を有する。カソード電極Ca1はパターン10上に設けられ、パターン10と電気的に接続される。ダイオードDi2は、カソード電極Ca2と、カソード電極Ca2と反対側に設けられたアノード電極A2とを有する。カソード電極Ca2はパターン20上に設けられ、パターン20と電気的に接続される。
【0014】
配線41は、上面電極Es1とアノード電極A2を電気的に接続する。配線43は、上面電極Es2とアノード電極A1を電気的に接続する。また、上面電極Es1と上面電極Es2とは、接続部である配線45で互いに電気的に接続されている。配線41、43、45は例えばアルミワイヤ等の金属細線である。以上の接続により、各チップのエミッタ電極およびアノード電極が同一電位となる。
【0015】
上面電極Es1にはエミッタ駆動パターン12が配線を介して電気的に接続される。ゲート電極G1、G2には、それぞれゲートパターン14、24が配線を介して電気的に接続される。
【0016】
また、パターン10、20は、それぞれモジュールの外部と接続するための図示しない端子と電気的に接続されている。双方向スイッチ回路100では、半導体装置Tr1とダイオードDi2または半導体装置Tr2とダイオードDi1を介して、パターン10、20間に双方向から電流を流すことが可能である。
【0017】
図3は、比較例に係る双方向スイッチ回路101の平面図である。比較例に係る双方向スイッチ回路101では、複数のチップのエミッタ電極およびアノード電極を同一電位とするためにエミッタパターン30が設けられる。さらに、半導体装置Tr1、Tr2にそれぞれエミッタ駆動パターン12、22が設けられる。このため、回路の面積が大きくなるおそれがある。
【0018】
これに対し、本実施の形態に係る双方向スイッチ回路100では、配線41、43、45により、半導体装置Tr1、Tr2のエミッタ電極と、ダイオードDi1、Di2のアノード電極とを同一電位にできる。従って、エミッタパターンを省略でき、回路を小型化できる。さらに、半導体装置Tr1、Tr2のエミッタ駆動パターン12を共通化できるため、さらに回路面積を縮小できる。
【0019】
また、通常のIGBTは逆電圧に対する耐圧を有さない。これに対し本実施の形態では、IGBTとダイオードを逆並列接続することができる。逆並列接続により、ダイオードの順方向電圧VF以上の電圧がIGBTに印可されることを防止できる。従って、IGBTへの逆耐圧破壊を抑制できる。
【0020】
本実施の形態の変形例として、配線45の接続位置は、上面電極Es1と上面電極Es2とアノード電極A1とアノード電極A2とが互いに電気的に接続されれば、
図2に示される位置に限定されない。例えば、
図4-6に示されるような短絡方法も可能である。
図4は、実施の形態1の第1の変形例に係る双方向スイッチ回路100aの平面図である。このように、アノード電極A1とアノード電極A2とが配線45aによって電気的に接続されても良い。
図5は、実施の形態1の第2の変形例に係る双方向スイッチ回路100bの平面図である。このように、上面電極Es1とアノード電極A1とが配線45bによって電気的に接続されても良い。
図6は、実施の形態1の第3の変形例に係る双方向スイッチ回路100cの平面図である。このように、上面電極Es2とアノード電極A2とが配線45cによって電気的に接続されても良い。
【0021】
本実施の形態では、半導体装置Tr1、Tr2はIGBTであるものとした。これに限らず、半導体装置Tr1、Tr2はMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)等のスイッチング素子であっても良い。
【0022】
また、配線41、43、45として用いられる金属細線は、例えば銅、Al合金または銅に被覆されたAlから形成される。これにより、金属細線に流れる電流による発熱を低減できる。従って、配線1本あたりの電流密度を向上でき、配線数を低減できる。また、配線数を減らさない場合には、金属細線の温度の低減および装置の長寿命化が期待できる。なお、上面電極Es1と、上面電極Es2と、アノード電極A1と、アノード電極A2とを互いに接続する部材の一部に、このような金属細線が採用されても良い。
【0023】
上面電極Es1と、上面電極Es2と、アノード電極A1と、アノード電極A2とを互いに接続する部材には、金属板が含まれても良い。金属板は、例えばリードフレーム材またはリボン材である。これにより、接続部材の温度の低減および装置の長寿命化が期待できる。また、配線を簡素化できる。
【0024】
半導体装置Tr1、Tr2、ダイオードDi1、Di2の少なくとも1つは、ワイドバンドギャップ半導体から形成されていても良い。ワイドバンドギャップ半導体は、例えば炭化珪素、窒化ガリウム系材料またはダイヤモンドである。これにより、双方向スイッチ回路100における損失を低減できる。
【0025】
これらの変形は、以下の実施の形態に係る双方向スイッチ回路および電力変換装置について適宜応用することができる。なお、以下の実施の形態に係る双方向スイッチ回路および電力変換装置については実施の形態1との共通点が多いので、実施の形態1との相違点を中心に説明する。
【0026】
実施の形態2.
図7は、実施の形態2に係る双方向スイッチ回路200の平面図である。本実施の形態の双方向スイッチ回路200は、上面電極Es1、Es2がエミッタ駆動パターン212を介して接続される点が、双方向スイッチ回路100と異なる。他の構成は、双方向スイッチ回路100の構成と同じである。本実施の形態において、上面電極Es1と上面電極Es2とを接続する接続部は、配線245、エミッタ駆動パターン212および配線246を有する。このような接続により、各チップのエミッタ電極およびアノード電極が同一電位となる。
【0027】
エミッタ駆動パターン212は、半導体装置Tr1、Tr2に信号を入力するために双方向スイッチ回路200の外部と接続される図示しないエミッタ駆動端子と電気的に接続される。つまり、エミッタ駆動パターン212は、半導体装置Tr1、Tr2に入力信号を送る入力信号回路と電気的に接続されている。これは、実施の形態1のエミッタ駆動パターン12についても同様である。つまり、エミッタ駆動パターン12、212を介して、外部から上面電極Es1と上面電極Es2に電圧が供給される。
【0028】
これに対し、
図3に示される比較例に係るエミッタパターン30は、いかなる外部端子とも電気的に接続されておらず、エミッタ駆動パターン12、212とは異なる。
【0029】
図3に示される比較例では、半導体装置Tr1、Tr2にそれぞれエミッタ駆動パターン12、22が設けられた。これに対し本実施の形態では、半導体装置Tr1、Tr2がエミッタ駆動パターン212を共用している。さらに、エミッタ駆動パターン212を介して、上面電極Es1、Es2を接続する。これにより、双方向スイッチ回路200の小型化および部品削減が可能となる。
【0030】
さらに本実施の形態では、半導体装置Tr1、Tr2のエミッタ駆動パターン212を共用することで、回路設計の自由度を向上できる。また、エミッタ駆動パターン212に対して半導体装置Tr1、Tr2を対称に配線することで、半導体装置Tr1、Tr2のスイッチング動作時の損失の差異を減らすことができる。
【0031】
本実施の形態の変形例として、エミッタ駆動パターン212の接続位置は、上面電極Es1と上面電極Es2とアノード電極A1とアノード電極A2とが互いに電気的に接続されれば、
図7に示される位置に限定されない。例えば、
図8-10に示されるような接続方法も可能である。
【0032】
図8は、実施の形態2の第1の変形例に係る双方向スイッチ回路200aの平面図である。双方向スイッチ回路200aにおいて、アノード電極A1とアノード電極A2とが、配線245a、エミッタ駆動パターン212、配線246aを介して、電気的に接続される。
図9は、実施の形態2の第2の変形例に係る双方向スイッチ回路200bの平面図である。双方向スイッチ回路200bにおいて、上面電極Es1とアノード電極A1とが、配線245b、エミッタ駆動パターン212、配線246bを介して、電気的に接続される。
図10は、実施の形態2の第3の変形例に係る双方向スイッチ回路200cの平面図である。双方向スイッチ回路200cにおいて、上面電極Es2とアノード電極A2とが、配線245c、エミッタ駆動パターン212、配線246cを介して、電気的に接続される。
【0033】
実施の形態3.
図11は、実施の形態3に係る双方向スイッチ回路300の平面図である。本実施の形態では、半導体装置Tr1とダイオードDi1が1つのチップTr3に形成され、半導体装置Tr2とダイオードDi2が1つのチップTr4に形成される点が実施の形態2と異なる。他の構成は実施の形態2の構成と同様である。半導体装置Tr1とダイオードDi1はRC(Reverse-Conducting)-IGBTを構成する。半導体装置Tr2とダイオードDi2はRC-IGBTを構成する。
【0034】
パターン10上には、RC-IGBTであるチップTr3のコレクタ電極およびカソード電極が設けられる。パターン20上には、RC-IGBTであるチップTr4のコレクタ電極およびカソード電極が設けられる。チップTr3のエミッタ電極とチップTr4のアノード電極は、配線341で電気的に接続される。チップTr4のエミッタ電極とチップTr3のアノード電極は、配線341で電気的に接続される。さらに、チップTr3のエミッタ電極とチップTr4のエミッタ電極は、配線345、エミッタ駆動パターン312、配線346を介して電気的に接続される。
【0035】
本実施の形態では、スイッチング素子とダイオードを1つのチップとして構成することで、回路面積および部品数をさらに削減できる。
【0036】
本実施の形態の第1の変形例として、チップTr3のアノード電極とチップTr4のアノード電極とが、配線345、エミッタ駆動パターン312、配線346を介して電気的に接続されても良い。
図12は、実施の形態3の第2の変形例に係る双方向スイッチ回路300aの平面図である。双方向スイッチ回路300aのように、チップTr3のエミッタ電極とチップTr3のアノード電極とが、配線345a、エミッタ駆動パターン312を介して電気的に接続されても良い。
図13は、実施の形態3の第3の変形例に係る双方向スイッチ回路300bの平面図である。双方向スイッチ回路300bのように、チップTr4のエミッタ電極とチップTr4のアノード電極とが、配線345b、エミッタ駆動パターン312を介して電気的に接続されても良い。
【0037】
また、双方向スイッチ回路300において、チップTr3のエミッタ電極と、チップTr4のエミッタ電極とが、エミッタ駆動パターン312を介さずに、直接、配線345で接続されても良い。また、本実施の形態ではRC-IGBTチップの例を示したが、スイッチング素子とダイオードとが1つのMOSFETチップに形成されても良い。この場合、ダイオードDi1、Di2はMOSFETのボディダイオードとして形成される。
【0038】
実施の形態4.
図14は、実施の形態4に係る電力変換装置800を説明する図である。電力変換装置800は、実施の形態1から3で説明した双方向スイッチ回路とインバータ回路50を備える。
図14では、電力変換装置800が双方向スイッチ回路100を備える例が示されている。電力変換装置800は、例えば3レベルインバータ回路である。電力変換装置800はコンバータ回路であっても良い。双方向スイッチ回路100を用いることで、電力変換装置800およびその応用システムの小型化が可能となる。
【0039】
なお、各実施の形態で説明した技術的特徴は適宜に組み合わせて用いても良い。
【符号の説明】
【0040】
10 パターン、12 エミッタ駆動パターン、14 ゲートパターン、20 パターン、30 エミッタパターン、41、43、45、45a、45b、45c 配線、50 インバータ回路、100、100a、100b、100c、101、200、200a、200b、200c 双方向スイッチ回路、212 エミッタ駆動パターン、245、245a、245b、245c、246、246a、246b、246c 配線、300、300a、300b 双方向スイッチ回路、312 エミッタ駆動パターン、341、
345、345a、345b、346 配線、800 電力変換装置、A1、A2 アノード電極、C1、C2 裏面電極、Ca1、Ca2 カソード電極、Di1、Di2 ダイオード、Es1、Es2 上面電極、G1、G2 ゲート電極、Tr1、Tr2 半導体装置、Tr3、Tr4 チップ