(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-19
(45)【発行日】2025-05-27
(54)【発明の名称】情報提示方法及び情報提示装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20250520BHJP
B60K 35/23 20240101ALI20250520BHJP
B60W 50/14 20200101ALI20250520BHJP
B60W 30/14 20060101ALI20250520BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60K35/23
B60W50/14
B60W30/14
(21)【出願番号】P 2021170166
(22)【出願日】2021-10-18
【審査請求日】2024-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100114177
【氏名又は名称】小林 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】近藤 崇之
(72)【発明者】
【氏名】高田 裕史
【審査官】西畑 智道
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-143520(JP,A)
【文献】特開2016-182891(JP,A)
【文献】特開2021-051489(JP,A)
【文献】特開2006-112962(JP,A)
【文献】特開2008-129718(JP,A)
【文献】特開2020-190984(JP,A)
【文献】特開2019-051734(JP,A)
【文献】特開2019-184356(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0105040(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
B60K 35/23
B60W 50/14
B60W 30/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両のフロントガラスに前記自車両の前方を走行する仮想物体を投影表示し、
前記自車両の少なくとも車速を制御する走行支援装置から、前記自車両が減速又は加速するか否かを示す車速情報を受信し、
前記車速情報に基づいて前記自車両が減速又は加速すると判定した場合に、前記仮想物体がそれぞれ前記自車両に接近又は前記自車両から離脱していると乗員に見えるように前記仮想物体を表示する、
ことを特徴とする情報提示方法。
【請求項2】
前記車速情報として、前記自車両が減速又は加速を開始する第1タイミングと、前記自車両の車速が目標車速に達して減速又は加速が完了する地点である目標地点の情報を受信し、
前記第1タイミングよりも手前の第2タイミングを設定し、
前記自車両が減速又は加速すると判定した場合に、前記第2タイミングから前記第1タイミングまでの間は、前記仮想物体がそれぞれ前記自車両に接近又は前記自車両から離脱していると見えるように前記仮想物体を表示し、
前記第1タイミングから前記自車両が前記目標地点に到達するまでの間は、前記自車両が前記目標地点に到達するまでに前記仮想物体と前記自車両との間の間隔が所定の目標間隔になり前記仮想物体の速度が前記目標車速になると見えるように前記仮想物体を表示する、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報提示方法。
【請求項3】
前記フロントガラスに前記仮想物体の表示を開始する時点の前記仮想物体と前記自車両との間の間隔、又は前記所定の目標間隔の少なくとも一方は、利用者により設定可能であることを特徴とする請求項2に記載の情報提示方法。
【請求項4】
前記第2タイミングから前記第1タイミングまでの間隔を、前記走行支援装置が実施する自動運転レベルに応じて設定することを特徴とする請求項2又は3に記載の情報提示方法。
【請求項5】
前記仮想物体は仮想車両であることを特徴とする請求項2~4のいずれか一項に記載の情報提示方法。
【請求項6】
前記自車両が減速すると判定した場合に、前記第2タイミングから前記第1タイミングまでの間は、前記仮想車両と前記自車両との間の衝突余裕時間が一定のまま前記仮想車両が前記自車両に接近していると見えるように前記仮想車両を表示する、
ことを特徴とする請求項5に記載の情報提示方法。
【請求項7】
前記第1タイミングから前記自車両が前記目標地点に到達するまでの間に、前記仮想車両と前記自車両との間の車間時間が、前記目標間隔である目標車間時間よりも長い状態から一時的に短くなると見えるように前記仮想車両を表示する、ことを特徴とする請求項5又は6に記載の情報提示方法。
【請求項8】
前記自車両が減速すると判定した場合に、前記第2タイミングから前記第1タイミングまでの間に、ブレーキランプが点灯した前記仮想車両を表示することを特徴とする請求項5~7のいずれか一項に記載の情報提示方法。
【請求項9】
前記走行支援装置により制御される前記自車両の車両挙動に応じて、ブレーキランプ又は方向指示器が点灯した前記仮想車両を表示することを特徴とする請求項5~8のいずれか一項に記載の情報提示方法。
【請求項10】
前記自車両の前方に実際に先行車両がいるか否かを判定し、
前記先行車両がいない場合に前記仮想物体を表示し、前記先行車両がいる場合に前記仮想物体を表示しない、
ことを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の情報提示方法。
【請求項11】
自車両のフロントガラスに前記自車両の前方を走行する仮想物体を投影表示する表示装置と、
前記自車両の少なくとも車速を制御する走行支援装置から、前記自車両が減速又は加速するか否かを示す車速情報を受信し、前記車速情報に基づいて前記自車両が減速又は加速すると判定した場合に、前記仮想物体がそれぞれ前記自車両に接近又は前記自車両から離脱していると乗員に見えるように前記表示装置による前記仮想物体の表示を制御するコントローラと、
を備えることを特徴とする情報提示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報提示方法及び情報提示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自車両の走行を支援する走行支援制御を行う車両が各種提案されている。例えば特許文献1には、自車両の加速、操舵、制動を自動で行う自動運転システムが記載されている。特許文献1では、自動運転中の自車両が予定走行コースから外れて車線変更する場合に、自車両のアイコンの動画をディスプレイ装置に表示することによって自車両の車線変更を乗員に知らせている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
走行支援制御によって自車両が減速又は加速する場合、乗員が減速又は加速の理由に気づかないことがある。このため、自車両の減速又は加速に違和感を覚える虞がある。
本発明は、自車両の少なくとも車速を制御する走行支援制御によって自車両を減速又は加速する場合に、自車両の減速又は加速に対する乗員の違和感を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の情報提示方法では、自車両のフロントガラスに自車両の前方を走行する仮想物体を投影表示し、自車両の少なくとも車速を制御する走行支援装置から、自車両が減速又は加速するか否かを示す車速情報を受信し、車速情報に基づいて自車両が減速又は加速すると判定した場合に、仮想物体がそれぞれ自車両に接近又は自車両から離脱していると乗員に見えるように仮想物体を表示する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、自車両の少なくとも車速を制御する走行支援制御によって自車両を減速又は加速する場合に、自車両の減速又は加速に対する乗員の違和感を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態の情報提示装置を搭載する車両の一例の概略構成図である。
【
図3】実施形態の表示コントローラの機能構成の一例のブロック図である。
【
図4】仮想先行車両の表示方法の一例の説明図である。
【
図5】自車両と仮想先行車両の車速の一例を模式的に示すタイムチャートである。
【
図6】実施形態の情報提示方法の一例のフローチャートである。
【
図7】第1実施形態の仮想先行車両加減速制御の一例のフローチャートである。
【
図8】第2実施形態の仮想先行車両加減速制御の一例のフローチャートである。
【
図10】第3実施形態の仮想先行車両加減速制御の一例のフローチャートである。
【
図11】第4実施形態の仮想先行車両加減速制御の一例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面は模式的なものであって、現実のものとは異なる場合がある。また、以下に示す本発明の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の構造、配置等を下記のものに特定するものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0009】
(第1実施形態)
(構成)
図1は、実施形態の情報提示装置を搭載する車両の概略構成の一例を示す図である。自車両1は、自車両1の走行を支援する走行支援装置10と、自車両1の乗員(例えば運転者)に各種情報を提示する情報提示装置20を備える。
走行支援装置10は、自車両1の周囲の走行環境を検出し、検出した走行環境に基づいて自車両1の走行を自動的に制御する。
【0010】
走行支援装置10による自車両1の走行支援は、自車両1の加速度及び減速度の少なくともいずれか一方を自動制御する速度制御(すなわち、少なくとも車速を自動制御する速度制御)を含む。
例えば、走行支援装置10による走行支援は、乗員が関与せずに自車両1の加速度、減速度及び操舵角を自動で運転する自律運転制御を含んでもよい。以下の説明では、走行支援装置10による走行支援が自律運転制御である場合の例について述べる。
しかしながら、本発明は、自律運転制御に限定して適用されるものではなく、自車両1の車速を自動制御する走行支援に広く適用可能である。例えば、走行支援装置10による走行支援は、先行車両との車間距離を所定距離に保つように自車両を走行させる追従制御や、定速走行制御であってもよい。
【0011】
走行支援装置10は、測位装置11と、地図データベース12と、物体センサ13と、車両センサ14と、走行支援コントローラ15と、アクチュエータ16を備える。なお、図面において、地図データベースを「地
図DB」と表記する。
測位装置11は、自車両1の現在位置を測定する。測位装置11は、例えば全地球型測位システム(GNSS)受信機を備えてよい。GNSS受信機は、例えば地球測位システム(GPS)受信機等であり、複数の航法衛星から電波を受信して自車両1の現在位置を測定する。測位装置11は、慣性航法装置であってもよい。
地図データベース12は、道路地図データを記憶している。例えば地図データベース12は、自動運転用の地図情報として好適な高精度地図データ(以下、単に「高精度地図」という)を記憶してよい。ナビゲーション用の地図データ(以下、単に「ナビ地図」という)を地図データベース12に記憶してもよい。高精度地図は、ナビ地図よりも高精度の地図データである。
【0012】
物体センサ13は、自車両1の周囲の走行環境についての様々な情報(周囲環境情報)を取得する。例えば物体センサ13は、自車両1の周囲の物体を検出する。物体センサ13は、自車両1の周囲に存在する物体、自車両1と物体との相対位置、自車両1と物体との距離、物体が存在する方向等の自車両1の周囲環境を検出する。物体センサ13は、検出した周囲環境の情報である周囲環境情報を走行支援コントローラ15に出力する。
例えば物体センサ13は、カメラ、LiDAR(Light Detection and Ranging)、レーダ、ミリ波レーダ、レーザレンジファインダ、ソナー等を含んでよい。
【0013】
車両センサ14は、自車両1から得られる様々な情報(車両情報)を検出する。車両センサ14には、例えば、自車両1の走行速度(車速)を検出する車速センサ、自車両1が備える各タイヤの回転速度を検出する車輪速センサ、自車両1の3軸方向の加速度(減速度を含む)を検出する3軸加速度センサ(Gセンサ)、ステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角センサ、操向輪の転舵角を検出する転舵角センサ、自車両1に生じる角速度を検出するジャイロセンサ、ヨーレイトを検出するヨーレイトセンサ、自車両1のアクセルペダルの操作を検出するアクセルセンサと、運転者によるブレーキペダルの操作を検出するブレーキセンサが含まれる。車両センサ14は車両情報を走行支援コントローラ15に出力する。
【0014】
走行支援コントローラ15は、自車両1の走行支援制御を行う電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)である。走行支援コントローラ15は、プロセッサと、記憶装置等の周辺部品とを含む。プロセッサは、例えばCPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro-Processing Unit)であってよい。
記憶装置は、半導体記憶装置や、磁気記憶装置、光学記憶装置等を備えてよい。記憶装置は、レジスタ、キャッシュメモリ、主記憶装置として使用されるROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等のメモリを含んでよい。
以下に説明する走行支援コントローラ15の機能は、例えばプロセッサが、記憶装置に格納されたコンピュータプログラムを実行することにより実現される。
なお、走行支援コントローラ15を、以下に説明する各情報処理を実行するための専用のハードウエアにより形成してもよい。例えば走行支援コントローラ15は、汎用の半導体集積回路中に設定される機能的な論理回路を備えてもよい。例えば走行支援コントローラ15はフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA:Field-Programmable Gate Array)等のプログラマブル・ロジック・デバイス(PLD:Programmable Logic Device)等を有していてもよい。
【0015】
走行支援コントローラ15は、車両センサ14からの車両情報に基づいて自車両1の状態(速度、加速度、減速度、角速度、ヨーレイト等)を自車両1の走行状態として取得する。
また、走行支援コントローラ15は、測位装置11による測定結果や、車両センサ14からの検出結果を用いたオドメトリに基づいて、自車両1の絶対位置、すなわち、所定の基準点に対する自車両1の現在位置、姿勢及び速度を、自車両1の走行状態として取得する。
また、走行支援コントローラ15は、物体センサ13の検出結果に基づいて、自車両1の周囲環境を自車両1の走行状態として認識する。例えば物体センサ13の検出結果に基づいて、自車両1の周囲の物体、例えば車両(自動車や自動二輪車)、歩行者、障害物などの位置、姿勢、大きさ、速度などを検出する。
【0016】
走行支援コントローラ15は、これらの走行状態と地図データベース12の地図情報とに基づいて自車両1の自律運転制御を実行する。例えば走行支援コントローラ15は、自車両1の現在位置及び姿勢と、ナビゲーションシステム等(図示せず)によって設定された目的地までの目標経路と、自車両1の周囲環境とに基づいて、自車両1を走行させる目標走行軌道を算出する。
例えば、自車両1の周辺の経路や物体の有無を表現する経路空間マップと、走行場の危険度を数値化したリスクマップとを生成し、自車両1の運動特性、経路空間マップと、リスクマップとに基づいて、自車両1を走行させる目標走行軌道を生成する。
【0017】
目標走行軌道は、例えば自車両1を走行させる目標軌道上の地点の点列と、これら点列の各々の地点における自車両1の車速の目標値とを含む情報であってよい。以下の説明において、目標走行軌道上の自車両1の車速の目標値(すなわち車速計画)を「目標車速プロファイル」と表記する。
走行支援コントローラ15は、生成した目標走行軌道に沿って自車両1が走行するように、アクチュエータ16を駆動する。
【0018】
アクチュエータ16は、走行支援コントローラ15からの制御信号に応じて、自車両1のステアリングホイール、アクセル開度及びブレーキ装置を操作して、自車両1の車両挙動を発生させる。アクチュエータ16は、ステアリングアクチュエータと、アクセル開度アクチュエータと、ブレーキ制御アクチュエータを備える。ステアリングアクチュエータは、自車両1のステアリングの操舵方向及び操舵量を制御する。アクセル開度アクチュエータは、自車両1のアクセル開度を制御する。ブレーキ制御アクチュエータは、自車両1のブレーキ装置の制動動作を制御する。
【0019】
次に、情報提示装置20について説明する。情報提示装置20は、表示装置21と表示コントローラ22とを備える。表示装置21は、乗員の視界前方に配置した透明な光学ガラス素子を表示面として備える、いわゆるヘッドアップディスプレイ(HUD)であってよい。表示装置21は、情報提示装置20が運転者に提示する文字や図形などの視覚情報を、光学ガラス素子に投影して視覚情報の虚像を形成する。
図2は、表示装置21の一例の説明図である。例えば、表示装置21は、フロントガラス30を表示面として使用してよい。フロントガラス30に文字や図形の視覚情報の虚像が形成されることにより、運転者がフロントガラス30を透して視認する車外前方の風景、路面の状況、先行車両等に重畳して、虚像による情報を視認させることができる。
【0020】
図1を参照する。表示コントローラ22は、表示装置21に表示する視覚情報を制御する電子制御ユニットである。表示コントローラ22は、プロセッサ23と、記憶装置24等の周辺部品とを含む。プロセッサ23は、例えばCPUやMPUであってよい。
記憶装置24は、半導体記憶装置や、磁気記憶装置、光学記憶装置等を備えてよい。記憶装置は、レジスタ、キャッシュメモリ、主記憶装置として使用されるROM及びRAM等のメモリを含んでよい。
以下に説明する表示コントローラ22の機能は、例えばプロセッサ23が、記憶装置24に格納されたコンピュータプログラムを実行することにより実現される。
なお、表示コントローラ22を、以下に説明する各情報処理を実行するための専用のハードウエアにより形成してもよい。例えば表示コントローラ22は、汎用の半導体集積回路中に設定される機能的な論理回路を備えてもよい。例えば表示コントローラ22はFPGA等のPLD等を有していてもよい。
【0021】
上記のとおり、走行支援装置10によって自車両1が減速又は加速する場合に、乗員が自車両1の減速又は加速に違和感を覚える虞がある。
例えば、自車両1が走行する予定の経路上に存在するカーブ路を地図上で検出した場合に、カーブ路の手前で自車両1を減速させる場合を想定する。このとき、乗員がカーブ路の存在に気づいていないと、自車両1がなぜ減速したのかを理解できずに自車両1の減速に違和感を覚える虞がある。
【0022】
そこで、表示コントローラ22は、フロントガラス30に仮想物体を表示することによって自車両1が減速又は加速することを乗員に知覚させる。
図2を参照する。表示コントローラ22は、フロントガラス30に自車両1の前方を走行する仮想物体31の虚像が自車両1の前方の走行車線に重畳するように投影表示する。例えば仮想物体31は、
図2に示すように仮想的な先行車両(以下、「仮想先行車両」と表記する)であってよい。
【0023】
表示コントローラ22は、自車両1が減速又は加速するか否かを示す車速情報を走行支援装置10から受信する。
自車両1が減速するシーンは、例えば、カーブ路の手前、料金所の手前、制限速度が低くなる地点、交通信号機や一時停止交差点や交差点の手前、トンネルの手前、上り勾配、前方の死角に停車車両が存在する場合であってよい。
自車両1が減速するシーンは、例えば、カーブ路の出口、料金所の出口、制限速度が高くなる地点、交通信号機や一時停止交差点や交差点の通過後、トンネルの出口、下り勾配、停車車両の通過後であってよい。
【0024】
表示コントローラ22は、車速情報に基づいて自車両1が将来減速すると判定した場合に、仮想先行車両31が自車両1に接近していると乗員に見えるように、仮想先行車両31を表示位置及び表示サイズを制御する。例えば、仮想先行車両31の虚像を重畳させる走行車線上の位置を自車両1に近付けるとともに、仮想先行車両31の表示サイズを増加させてよい。
反対に、自車両1が将来加速すると判定した場合に、仮想先行車両31が自車両1から離脱していると見えるように、仮想先行車両31の表示位置及び表示サイズを制御する。例えば、仮想先行車両31の虚像を重畳させる走行車線上の位置を自車両1から遠ざけるとともに、仮想先行車両31の虚像の表示サイズを減少させてよい。
【0025】
説明を簡潔にするため、仮想先行車両31が自車両1に接近していると乗員に見えるように仮想先行車両31の表示を制御することを、以下の説明において単に、仮想先行車両31が自車両1に接近する(又は接近させる)と表現することがある。同様に、仮想先行車両31が自車両1から離脱していると乗員に見えるように仮想先行車両31の表示を制御することを、単に、仮想先行車両31が自車両1から離脱する(又は離脱させる)と表現することがある。
【0026】
このように、仮想先行車両31が自車両1に接近する又は自車両1から離脱することにより、乗員は自車両1が将来にそれぞれ減速又は加速することを知覚することができる。
また、仮想先行車両31が自車両1の前方の風景に重畳するようにフロントガラス30に表示することにより、先行車両が減速又は加速するのに対応して自車両1を減速又は加速させる通常の運転と同様の感覚を乗員に想起させることができるので、自車両1を減速又は加速をより自然に知覚できる。
これにより、走行支援装置10によって制御される自車両1の挙動が分かりやすくなり走行支援制御に対する乗員の受容性を向上できる。
【0027】
以下、表示コントローラ22の機能をより詳しく説明する。実施形態の表示コントローラ22の機能構成の一例のブロック図である。表示コントローラ22は、車速情報取得部40と、タイミング設定部41と、状態判定部42と、先行車両判定部43と、画像生成部44を備える。
車速情報取得部40は、将来、自車両1が減速又は加速するか否かを示す車速情報を走行支援コントローラ15から受信する。例えば車速情報取得部40は、走行支援コントローラ15が生成した目標車速プロファイルを車速情報として受信してよい。
【0028】
将来、自車両1が減速又は加速する場合、目標車速プロファイルは、自車両1が減速又は加速を開始するタイミングの情報と、自車両1の減速又は加速が完了したときの車速の情報を含んでいる。
以下の説明において、自車両1が減速又は加速を開始するタイミングを「第1タイミングT1」と表記し、自車両1の減速又は加速が完了したときの車速を「目標車速Vt」と表記することがある。
【0029】
第1タイミングT1は、例えば自車両1が減速又は加速を開始する時刻(例えば、現在時刻から何秒後)により指定してもよく、自車両1が減速又は加速を開始する自車両1の走行地点(例えば、現在位置からの走行距離)により指定してもよい。
さらに目標車速プロファイルは、自車両1の車速が目標車速Vtに達して減速又は加速が完了する地点である目標地点Ptの情報を含む。
車速情報取得部40は、取得した車速情報を、画像生成部44とタイミング設定部41と状態判定部42とに出力する。
【0030】
タイミング設定部41は、車速情報取得部40から入力された車速情報に基づいて、仮想先行車両31が自車両1へ接近を開始するタイミング又は自車両1から離脱を開始するタイミングを設定する。具体的には、将来、自車両が減速する場合には仮想先行車両31が自車両1へ接近を開始するタイミングを設定し、自車両が加速する場合には仮想先行車両31が自車両1から離脱を開始するタイミングを設定する。
以下の説明において、仮想先行車両31が自車両1へ接近を開始するタイミング又は自車両1から離脱を開始するタイミングを「第2タイミングT2」と表記することがある。
第2タイミングT2は、例えば仮想先行車両31が接近又は離脱を開始する時刻(例えば、現在時刻から何秒後)により指定してもよく、仮想先行車両31が接近又は離脱を開始する時点の自車両1の走行位置(例えば、現在位置からの走行距離)により指定してもよい。
【0031】
タイミング設定部41は、第1タイミングT1よりも手前のタイミングを第2タイミングT2として設定する。
例えば、第1タイミングT1及び第2タイミングT2が時刻によって指定される場合には、第1タイミングT1よりも所定時間(例えば3秒~5秒)だけ早い時刻を第2タイミングT2として指定してよい。
例えば、第1タイミングT1及び第2タイミングT2が地点によって指定される場合には、第1タイミングT1よりも所定距離(例えば、自車両1の現在の走行速度で3秒~5秒の間に進む距離)だけ自車両1の現在位置に近い地点を第2タイミングT2として指定してよい。
【0032】
状態判定部42は、第2タイミングT2が到来したか否か、第1タイミングT1が到来したか否か、自車両1が目標地点Ptに到達したか否かを判定する。以下の説明において、第2タイミングT2から第1タイミングT1までの間の自車両1の状態を「第1状態」と表記する。また、第1タイミングT1から自車両1が目標地点Ptに到達するまでの間の自車両1の状態を「第2状態」と表記する。
言い換えれば状態判定部42は、第2タイミングT2が到来する前の状態(第1状態の前の状態)であるか、自車両1が第1状態であるか、第2状態であるかを判定する。状態判定部42は、判定結果を画像生成部44に出力する。
先行車両判定部43は、物体センサ13が取得した周囲環境情報に基づいて、自車両1の前方に実際に先行車両がいるか否かを判定する。先行車両判定部43は、判定結果を画像生成部44に出力する。
【0033】
画像生成部44は、仮想先行車両31の画像を生成し、生成した仮想先行車両31の虚像を表示装置21によってフロントガラス30に投影表示するよう。
仮想先行車両31の画像を生成する際に、画像生成部44は、仮想先行車両31と自車両1との間の間隔を模擬的に設定する。仮想先行車両31と自車両1との間の間隔は、例えば車間距離として指定してもよく車間時間として設定してもよい。画像生成部44は、乗員から見て、自車両1と仮想先行車両31との間の間隔が、設定された間隔に見えるように仮想先行車両31を表示位置及び表示サイズを制御する。
【0034】
また、画像生成部44は、仮想先行車両31の車速を模擬的に設定する。すなわち、仮想先行車両31と自車両1との間の相対速度を模擬的に設定する。画像生成部44は、乗員から見て、設定した車速で仮想先行車両31が走行して見えるように仮想先行車両31を表示位置及び表示サイズを制御する。
説明を簡潔にするため、画像生成部44によって模擬的に設定される仮想先行車両31と自車両1との間の間隔及び相対速度、仮想先行車両31の車速を、単に「仮想先行車両31と自車両1との間の間隔」、「仮想先行車両31と自車両1との間の相対速度」、「仮想先行車両31の車速」と表記する。
【0035】
画像生成部44は、先行車両判定部43の判定結果に基づいて、自車両1の前方に実際に先行車両がいない場合に、仮想先行車両31を表示するように表示装置21を制御し、反対に、自車両1の前方に実際に先行車両がいる場合には仮想先行車両31を表示しないように表示装置21を制御する。仮想先行車両31の表示によって実際の先行車両の視認が阻害されるのを回避するためである。
【0036】
例えば画像生成部44は、自車両1の前方に実際に先行車両が存在しない場合には、自車両1が減速又は加速するか否かに関わらず仮想先行車両31を表示するように表示装置21を制御してもよい。
これに代えて画像生成部44は、将来、自車両1が減速又は加速すると判定し、且つ自車両1の前方に実際に先行車両が存在しない場合に、仮想先行車両31を表示するように表示装置21を制御してもよい。この場合、例えば画像生成部44は、第2タイミングT2が到来するよりも前の所定タイミングで仮想先行車両31の表示を開始するように表示装置21を制御してもよい。
画像生成部44は、車速情報取得部40から入力された車速情報に基づいて、将来、自車両1が減速又は加速するか否かを判定してもよい。
【0037】
画像生成部44は、状態判定部42の判定結果に基づいて、仮想先行車両31と自車両1との間の間隔と仮想先行車両31の車速とが変化するように、仮想先行車両31の表示を制御する。
図4は、画像生成部44による仮想先行車両31の一例の表示方法の説明図である。
図5は、
図4に示す表示方法の一例における自車両1と仮想先行車両31の車速の一例を示すタイムチャートである。
図4は、自車両1を減速させる例を示す。減速前の自車両は車速V1で走行している。走行支援装置10は、第1タイミングT1において自車両1の減速を開始し、カーブ路の手前の目標地点Ptにおいて自車両1の車速が目標車速Vtとなるように自車両1を減速する。
【0038】
時刻t1において画像生成部44は、仮想先行車両31の表示を開始する。時刻t1は、第2タイミングT2より手前に設定された所定のタイミングが到来する時刻である。仮想先行車両31の表示を開始するタイミングは、時刻(例えば、現在時刻から何秒後)により指定してもよく、自車両1の走行地点(例えば、現在位置からの走行距離)により指定してもよい。
【0039】
仮想先行車両31の表示を開始する時点(すなわち、仮想先行車両31の出現時点)における仮想先行車両31と自車両1との間の間隔は、固定の設定値であってもよく、自車両1の利用者(例えば、乗員、運転者)が任意に設定可能であってもよい。
仮想先行車両31の表示を開始する時点における仮想先行車両31の車速は、例えば自車両1の車速と同じ速度に設定してよい。
第2タイミングT2が到来する前の状態では、画像生成部44は、仮想先行車両31と自車両1との間の間隔を一定に維持する(すなわち仮想先行車両31の車速を自車両1の現在の車速に設定する)。
【0040】
時刻t2において第2タイミングT2が到来すると自車両1の状態が第1状態になる。自車両1が第1状態にある間、画像生成部44は、仮想先行車両31を減速させることにより仮想先行車両31を自車両1に接近させる(すなわち、仮想先行車両31と自車両1との間の間隔を徐々に減少させる)。
以下の説明において、第1状態において画像生成部44が仮想先行車両31を表示する制御を「第1表示制御」と表示する。
第1表示制御において画像生成部44は、第2タイミングT2が到来した時点で仮想先行車両31の減速を開始する。第2タイミングT2が到来してから第1タイミングT1が到来するまで時刻t3では、画像生成部44は、仮想先行車両31を減速させることにより仮想先行車両31を自車両1に接近させる。
【0041】
時刻t4において第1タイミングT1が到来すると、自車両1の状態が第2状態になる。走行支援装置10は、第1タイミングT1が到来した時点で自車両1の減速を開始する。自車両1が第2状態にある間、走行支援装置10は、自車両1が目標地点Ptに到達した時刻t6において自車両1の車速が目標車速Vtとなるように自車両1を減速する。例えば走行支援装置10は、所定の減速度で自車両1を減速させてもよい。
【0042】
画像生成部44は、自車両1が第2状態にある間(すなわち、第1タイミングT1から自車両1が目標地点Ptに到達するまでの間)は、自車両1が目標地点Ptに到達するまでに仮想先行車両31と自車両1との間の間隔が所定の目標間隔Itになり仮想先行車両31の車速が目標車速Vtになるように仮想先行車両31の車速を設定する。
以下の説明において、第2状態において画像生成部44が仮想先行車両31を表示する制御を「第2表示制御」と表示する。なお、所定の目標間隔Itは、固定の設定値であってもよく、自車両1の利用者が任意に設定可能であってもよい。
【0043】
第2表示制御において画像生成部44は、第2状態の期間中の仮想先行車両31の車速を、第1タイミングT1における仮想先行車両31と自車両1との間の間隔及び相対速度と、第2状態の期間の長さと、自車両1が目標地点Ptに到達したときに達成すべき目標間隔Itとに基づいて算出してよい。
図5に示す例では、自車両1の減速が開始する時刻t4(第1タイミングT1)から自車両1が目標地点Ptに到達する時刻t6までの間に時刻t5を設定する。時刻t4から時刻t5までの間は、時刻t5において仮想先行車両31の車速が目標車速Vtとなるように一定の減速度で仮想先行車両31を減速させる。その後は、時刻t6まで(自車両1が目標地点Ptに到達するまで)仮想先行車両31の車速を目標車速Vtに維持する。
【0044】
この場合、画像生成部44は、第1タイミングT1における仮想先行車両31と自車両1との間の間隔及び相対速度と、第2状態の期間の長さと、に基づいて、自車両1が目標地点Ptに到達したときに仮想先行車両31と自車両1との間の間隔が目標間隔Itとなるように時刻t5を算出する。
【0045】
なお、
図5に示すように第1状態及び第2状態の期間中の仮想先行車両31の車速が常に自車両1より高くならない場合には、第2状態の終了時点(自車両1が目標地点Ptに到達したとき)の仮想先行車両31と自車両1との間の車間距離が、仮想先行車両31の出現時点(時刻t1)よりも短くなる。このため、目標間隔Itによっては自車両1が目標地点Ptに到達した時点で目標間隔Itを達成できなくなることがある。
【0046】
このため、画像生成部44は、第2状態の期間中に仮想先行車両31の減速度を自車両1の減速度よりも小さくして、または仮想先行車両31を加速させてもよい。これにより、仮想先行車両31の車速が自車両1の車速よりも高い状態を発生させて、仮想先行車両31と自車両1との間の間隔を伸ばしてもよい。
これによって、自車両1が目標地点Ptに到達したときの目標間隔Itと、仮想先行車両31の出現時点(すなわち、仮想先行車両31の表示を開始する時点)の間隔と、を同じ値に設定してもよい。
【0047】
なお、上述の説明では自車両1を減速させる例について説明したが、画像生成部44は、自車両1を加速させる場合も上記と同様に仮想先行車両31の表示を制御してよい。
例えば、車速V1で走行していた自車両1の加速を第1タイミングT1において開始し、目標地点Ptにおいて自車両1の車速が目標車速Vtとなるように自車両1を加速する場合を想定する。
画像生成部44は、第2タイミングT2より手前の所定タイミングにおいて仮想先行車両31の表示を開始する。第2タイミングT2が到来するまでは、画像生成部44は、仮想先行車両31と自車両1との間の間隔を一定に維持する。
【0048】
その後に第2タイミングT2が到来し自車両1が第1状態になると、画像生成部44は第1表示制御を実行する。第1表示制御では、第2タイミングT2が到来した時点で仮想先行車両31の加速を開始する。自車両1が第1状態にある間、仮想先行車両31を加速させて、仮想先行車両31を自車両1から離脱させる(すなわち、仮想先行車両31と自車両1との間の間隔を徐々に増加させる)。
第1タイミングT1が到来すると、自車両1の状態が第2状態になる。走行支援装置10は、第1タイミングT1が到来した時点で自車両1の加速を開始する。
【0049】
自車両1が第2状態にある間、走行支援装置10は、自車両1が目標地点Ptに到達した時点で自車両1の車速が目標車速Vtとなるように自車両1を加速する。例えば走行支援装置10は、所定の加速度で自車両1を加速させてもよい。
自車両1が第2状態にある間、画像生成部44は第2表示制御を実行する。第2表示制御では、自車両1が目標地点Ptに到達するまでに仮想先行車両31と自車両1との間の間隔が所定の目標間隔Itになり仮想先行車両31の車速が目標車速Vtになるように仮想先行車両31の車速を設定する。
【0050】
(動作)
図6は、実施形態の情報提示方法の一例のフローチャートである。
ステップS1において情報提示装置20の表示コントローラ22は、自車両1の前方に実際に先行車両がいるか否かを判定する。先行車両がいない場合(ステップS1:Y)に処理はステップS2へ進む。先行車両がいる場合(ステップS1:N)に処理はステップS7へ進む。ステップS7において表示コントローラ22は、仮想先行車両31の表示を停止する。その後に処理は終了する。
【0051】
ステップS2において走行支援装置10の走行支援コントローラ15は、自車両1の走行状態の情報を取得する。
ステップS3において走行支援コントローラ15は、自車両1の走行状態に基づいて、自車両1を走行させる目標走行軌道を生成する。走行支援コントローラ15は、目標走行軌道に含まれる目標車速プロファイルを表示コントローラ22に出力する。
【0052】
ステップS4において表示装置21は、仮想先行車両31をフロントガラス30に投影表示する。
ステップS5において表示コントローラ22は、将来、自車両1が減速又は加速するか否かを目標車速プロファイルに基づいて判定する。自車両1が減速又は加速する場合(ステップS5:Y)に処理はステップS6へ進む。自車両1が減速も加速もしない場合(ステップS5:N)に処理はステップS1へ戻る。
ステップS6において表示コントローラ22は、仮想先行車両加減速制御を実行する。仮想先行車両加減速制御の詳細は後述する。仮想先行車両加減速制御の後に処理はステップS1へ戻る。
【0053】
図7は、第1実施形態の仮想先行車両加減速制御の一例のフローチャートである
ステップS10において情報提示装置20の車速情報取得部40は、走行支援コントローラ15が生成した目標車速プロファイルを車速情報として取得する。目標車速プロファイルは、第1タイミングT1の情報と目標地点Ptの情報と目標車速Vtの情報を含む。
ステップS11においてタイミング設定部41は、第1タイミングT1よりも手前のタイミングを第2タイミングT2として設定する。
【0054】
ステップS12において状態判定部42は、第2タイミングT2が到来したか否かを判定する。第2タイミングT2がまだ到来しない場合(ステップS12:N)に処理はステップS12へ戻る。第2タイミングT2が到来した場合(ステップS12:Y)に処理はステップSへ13進む。
ステップS13において画像生成部44は、第1表示制御を実行する。
【0055】
ステップS14において状態判定部42は、第1タイミングT1が到来したか否かを判定する。第1タイミングT1がまだ到来しない場合(ステップS14:N)に処理はステップS13へ戻る。第1タイミングT1が到来した場合(ステップS14:Y)に処理はステップS15へ進む。
ステップS15において画像生成部44は、第2表示制御を実行する。
ステップS16において状態判定部42は、自車両1が目標地点Ptに到達したか否かを判定する。自車両1がまだ目標地点Ptに到達しない場合(ステップS16:N)に処理はステップS15へ戻る。自車両1がまだ目標地点Ptに到達した場合(ステップS16:Y)に仮想先行車両加減速制御処理が終了する。
【0056】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の情報提示装置20を説明する。第2実施形態の情報提示装置20は、第2タイミングT2を動的に変化させる。すなわち第2タイミングT2から第1タイミングT1までの間の間隔を動的に変化させる。
例えば、第2実施形態のタイミング設定部41は、走行支援装置10が実施する自動運転レベルに応じて第2タイミングT2と第1タイミングT1との間の間隔を設定する。
【0057】
走行支援装置10が実施する自動運転レベルは、例えばアメリカ国家交通安全協会(NHTSA:National Highway Traffic Safety Administration)によって制定された自動運転レベルであってよい。
走行支援装置10の走行支援コントローラ15は、例えば、自車両1の周囲環境や走行状況、各種センサの健全性等に応じて走行支援装置10が実施する自動運転レベルを変更してよい。
【0058】
例えば情報提示装置20のタイミング設定部41は、自動運転レベルが低い場合(自動化の程度が低い)に比べて自動運転レベルが高い場合(自動化の程度が高い)に、第2タイミングT2と第1タイミングT1との間の間隔をより長く設定してよい。例えばタイミング設定部41は、自動運転レベルが高いほど、第2タイミングT2と第1タイミングT1との間の間隔をより長く設定してよい。
自動運転レベルが低いほど、乗員(例えば運転者)は自車両1の前方に注意しているため、仮想先行車両31の車速の変化に気づき易い。このため、第2タイミングT2と第1タイミングT1との間の間隔が短くても、仮想先行車両31の自車両1との車間の変化に基づいて、将来、自車両1が減速又は加速することに気づくことができる。
【0059】
なお、自動運転レベルが比較的高い場合に第2タイミングT2と第1タイミングT1との間の間隔が長くなると、自車両1が減速する場合に仮想先行車両31が自車両1に接近する時間が長くなる。仮想先行車両31が自車両1に過度に接近すると乗員が違和感を覚える虞がある。
このため、画像生成部44は、第2タイミングT2と第1タイミングT1との間(すなわち第1状態の期間中)において、仮想先行車両31と自車両1との間の衝突余裕時間(TTC:Time To Collision)が一定のまま、仮想先行車両31が自車両1に接近していると見えるように仮想先行車両31を表示してよい。
例えば仮想先行車両31と自車両1との間の間隔が短くなるほど、仮想先行車両31に対する自車両の相対速度を低下させることによって、衝突余裕時間が一定のまま仮想先行車両31を自車両1に接近させることができる。
このとき、画像生成部44は衝突余裕時間を所定値以下かつ一定に維持してもよい。乗員は先行車両との間の接近度合いを衝突余裕時間によって感じるため、衝突余裕時間を所定値以下に保つことにより仮想先行車両31が自車両1に接近していることを乗員に気づき易くすることができる。これにより、自車両1が将来減速することを乗員に気づき易くすることができる。
【0060】
図8は、第2実施形態の仮想先行車両加減速制御の一例のフローチャートである。ステップS20の処理は、
図7のステップS10の処理と同様である。
ステップS21において情報提示装置20は、走行支援装置10の走行支援コントローラ15から自動運転レベルの情報を取得する。
ステップS22において情報提示装置20のタイミング設定部41は、第2タイミングT2を設定する。このときタイミング設定部41は、自動運転レベルに応じて第2タイミングT2と第1タイミングT1との間の間隔を設定する。
ステップS23~S27の処理は
図7のステップS12~S16の処理と同様である。
【0061】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態の情報提示装置20を説明する。第3実施形態の情報提示装置20は、自車両1が目標地点Ptに到達して自車両1が安定した走行に入ったこと(すなわち自車両1の減速又は加速が完了したこと)が乗員に気づき易くなるように、仮想先行車両31の速度を制御する。
具体的には、自車両1が目標地点Ptに到達する直前に、それまで目標間隔It以上であった仮想先行車両31と自車両1との間の車間時間を一時的に目標間隔It未満にしてから、目標地点Ptに到達するまでに目標間隔Itにする。
このように、仮想先行車両31と自車両1との間の車間時間が一時的に目標間隔It未満になってから目標間隔Itになるように変化することにより、乗員は自車両1の車速調整が完了したことに気づき易くなる。
【0062】
例えば、第3実施形態のタイミング設定部41は、第1タイミングT1から自車両1が目標地点Ptに到達するまでの間に第3タイミングT3を設定する。第3タイミングT3は、目標間隔It以上であった仮想先行車両31と自車両1との間の車間時間を、目標間隔It未満にするタイミングである。
例えばタイミング設定部41は、自車両1が目標地点Ptに到達する直前の時刻や地点を第3タイミングT3として設定してよい。例えば、自車両1が目標地点Ptに到達する時刻よりも所定時間前の時刻を第3タイミングT3として設定してよい。または目標地点Ptよりも所定距離手前の地点を第3タイミングT3として設定してよい。
【0063】
図9は、第3タイミングT3の一例の説明図である。
図9の例では、カーブ路の出口において自車両1が加速する場合を示している。
上述のとおり自車両1が加速する場合には、第2タイミングT2から第1タイミングT1の間(すなわち第1状態)において仮想先行車両31が自車両1から離脱する。このため、第1タイミングT1が到来した時点では、仮想先行車両31と自車両1との間の車間時間が目標間隔Itよりも長くなっている。
このため画像生成部44は、第1タイミングT1において第2状態になると(すなわち第2表示制御を開始すると)、仮想先行車両31と自車両1との間の車間時間と目標間隔Itとの差が小さくなるように仮想先行車両31の車速を制御する。そして目標間隔It以上であった仮想先行車両31と自車両1との間の車間時間が、第3タイミングT3において目標間隔It未満になるように、仮想先行車両31の車速を制御する。
【0064】
以下の説明において、第2状態が始まる第1タイミングT1から第3タイミングT3までの自車両1の状態を「第3状態」と表記する。また、第3タイミングT3から自車両1が目標地点Ptに到達するまでの間の自車両1の状態を「第4状態」と表記する。
図9に示すとおり第3状態と第4状態とは第2状態の一部である。
第4状態において画像生成部44は、仮想先行車両31の車速を増大させて仮想先行車両31と自車両1との間の車間時間を伸ばすことにより、自車両1が目標地点Ptに到達するまでに自車両1と仮想先行車両31との間の相対速度の差と車間時間と目標間隔Itとの差をゼロにする。
【0065】
なお、上述の説明では、自車両1を加速させる例について説明したが、自車両1を減速させる場合についても、目標間隔It以上であった仮想先行車両31と自車両1との間の車間時間を、第3タイミングT3において目標間隔It未満にしてもよい。
自車両1を減速させる場合には、第2タイミングT2から第1タイミングT1の間において仮想先行車両31が自車両1に接近する。このため、第1タイミングT1が到来した時点では、仮想先行車両31と自車両1との間の車間時間が目標間隔Itよりも短くなっている。
【0066】
このため、画像生成部44は、第1タイミングT1において第3状態になると、第3タイミングT3が到来するよりも前に仮想先行車両31と自車両1との間の車間時間が、目標間隔Itよりも長くなるように仮想先行車両31の車速を制御してよい。
その後、目標間隔Itよりも長くなった仮想先行車両31と自車両1との間の車間時間を、第3タイミングT3において目標間隔It未満にする。
第4状態では、減速している自車両1と仮想先行車両31との間の相対速度の差を減少させて、自車両1が目標地点Ptに到達するまでに自車両1と仮想先行車両31との間の相対速度の差と車間時間と目標間隔Itとの差をゼロにする。
【0067】
なお、将来、自車両が加速するか減速するかに応じて、自車両1が目標地点Ptに到達する前に一時的に目標間隔It未満にするか否かを切り替えてもよい。
言い換えれば、自車両が加速するか減速するかに応じて、第2タイミングT2から自車両1が目標地点Ptに到達するまで自車両1の状態を、第1状態、第3状態及び第4状態の3つに分けるか、第1状態及び第2状態の2つに分けるかを切り替えてもよい。
【0068】
例えば、自車両が加速する場合には、目標間隔It以上であった仮想先行車両31と自車両1との間の車間時間が、第3タイミングT3において目標間隔It未満になるように仮想先行車両31の車速を制御してよい。
一方で、自車両が減速する場合には、第1タイミングの後、第3タイミングT3が到来するよりも前に仮想先行車両31と自車両1との間の車間時間を目標間隔Itよりも長くすることなく、自車両1が目標地点Ptに到達するまでに自車両1と仮想先行車両31との間の相対速度の差と車間時間と目標間隔Itとの差がゼロになるように、仮想先行車両31の車速を制御してよい。
【0069】
図10は、第3実施形態の仮想先行車両加減速制御の一例のフローチャートである。ステップS30、S31の処理は、
図7のステップS10、S11の処理と同様である。
ステップS32においてタイミング設定部41は、第1タイミングT1から自車両1が目標地点Ptに到達するまでの間に第3タイミングT3を設定する。
ステップS33~S35の処理は、
図7のステップS12~S14と同様である。
ステップS36において画像生成部44は、第2表示制御を実行する。このとき画像生成部44は、第3タイミングT3よりも前に目標間隔It以上であった仮想先行車両31と自車両1との間の車間時間が、第3タイミングT3において目標間隔It未満になるように、仮想先行車両31の車速を制御する。その後に自車両1が目標地点Ptに到達するまでに自車両1と仮想先行車両31との間の相対速度の差と車間時間と目標間隔Itとの差をゼロにする。
ステップS37において状態判定部42は、自車両1が目標地点Ptに到達したか否かを判定する。自車両1がまだ目標地点Ptに到達しない場合(ステップS37:N)に処理はステップS36に戻る。自車両1がまだ目標地点Ptに到達した場合(ステップS37:Y)に仮想先行車両加減速制御処理が終了する。
【0070】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態の情報提示装置20を説明する。第4実施形態の情報提示装置20は、仮想先行車両31のブレーキランプや方向指示器が点灯して見えるように、仮想先行車両31の表示を制御する。
例えば第2実施形態の情報提示装置20の画像生成部44は、第2タイミングT2から第1タイミングT1までの第1状態において仮想先行車両31が減速するときに仮想先行車両31のブレーキランプを点灯させてもよい。
【0071】
画像生成部44は、仮想先行車両31の挙動(横方向の進路変更や減速度)に関わらず自車両1の車両挙動に応じて仮想先行車両31のブレーキランプや方向指示器を点灯させてもよい。例えば、交差点における自車両1の右左折の予定に応じて仮想先行車両31の方向指示器を点灯させてもよく、仮想先行車両31が減速していなくても自車両1の減速に応じて仮想先行車両31のブレーキランプを点灯させてもよい。
【0072】
図11は、第4実施形態の仮想先行車両加減速制御の一例のフローチャートである。ステップS40~S43の処理は、
図7のステップS10~S13の処理と同様である。
ステップS44において画像生成部44は、第1状態において仮想先行車両31が減速するときに仮想先行車両31のブレーキランプや方向指示器が点灯して見えるように、仮想先行車両31の表示を制御する。
ステップS45~S47の処理は、
図7のステップS14~S16と同様である。
【0073】
(実施形態の効果)
(1)表示装置21は、自車両1のフロントガラス30に自車両1の前方を走行する仮想物体を投影表示する。表示コントローラ22は、自車両1の少なくとも車速を制御する走行支援装置10から、自車両1が減速又は加速するか否かを示す車速情報を受信し、車速情報に基づいて自車両1が減速又は加速すると判定した場合に、仮想物体がそれぞれ自車両1に接近又は自車両1から離脱していると乗員に見えるように、表示装置21による仮想物体の表示を制御する。
これにより、将来の自車両1の減速又は加速を乗員に知覚させることができる。
【0074】
(2)表示コントローラ22は、車速情報として、自車両1が減速又は加速を開始する第1タイミングと、自車両1の車速が目標車速に達して減速又は加速が完了する地点である目標地点の情報を受信してよい。表示コントローラ22は、第1タイミングよりも手前の第2タイミングを設定し、自車両1が減速又は加速すると判定した場合に、第2タイミングから第1タイミングまでの間は、仮想物体がそれぞれ自車両1に接近又は自車両1から離脱していると見えるように仮想物体の表示を制御し、第1タイミングから自車両1が目標地点に到達するまでの間は、自車両1が目標地点に到達するまでに仮想物体と自車両1との間の間隔が所定の目標間隔になり仮想物体の速度が目標車速になると見えるように仮想物体の表示を制御してよい。
これにより、第2タイミングから第1タイミングまでの間に、仮想物体の表示によって、自車両の将来の加速又は減速を乗員に予測させることができる。また、第1タイミングから自車両1が目標地点に到達するまでの間に自車両1が車速調整していることを、仮想物体の表示によって乗員に知覚させることができる。
【0075】
(3)フロントガラス30に仮想物体の表示を開始する時点の仮想物体と自車両1との間の間隔、又は所定の目標間隔の少なくとも一方は、利用者により設定可能にしてよい。
これにより、乗員の好みに応じて仮想物体を表示させることができる。
(4)第2タイミングから第1タイミングまでの間隔を、走行支援装置10が実施する自動運転レベルに応じて設定してもよい。
自車両1の前方の仮想物体の挙動変化を乗員が知覚するまでの時間は、自動運転レベルによって異なるので、仮想物体が自車両1に接近又は自車両1から離脱する提示時間を変えることにより、仮想物体の挙動変化を乗員に気づき易くすることができる。
(5)仮想物体は仮想車両であってもよい。
これにより、通常の運転と比べて違和感の少ない情報提供ができる。
【0076】
(6)表示コントローラ22は、自車両1が減速すると判定した場合に、第2タイミングから第1タイミングまでの間は、仮想車両と自車両1との間の衝突余裕時間が一定のまま仮想車両が自車両1に接近していると見えるように仮想車両の表示を制御してよい。
これにより、自車両1の乗員が先行車両の減速に気づく接近度合いや先行車両の減速に気づく時間を確保できる。
(7)表示コントローラ22は、第1タイミングから自車両1が目標地点に到達するまでの間に、仮想車両と自車両1との間の車間時間が、目標間隔である目標車間時間よりも長い状態から一時的に短くなると見えるように仮想車両の表示を制御してよい。
これにより、自車両1が目標地点Ptに到達して自車両1が安定した走行に入ったこと(すなわち減速又は加速が完了したこと)を乗員に気づき易くすることができる。
【0077】
(8)表示コントローラ22は、自車両1が減速すると判定した場合に、第2タイミングから第1タイミングまでの間に、ブレーキランプが点灯して見えるように仮想車両の表示を制御してもよい。
これにより、自車両1が減速することを乗員に気づき易くすることができる。
(9)表示コントローラ22は、走行支援装置により制御される自車両1の車両挙動に応じて、ブレーキランプ又は方向指示器が点灯して見えるように仮想車両の表示を制御してもよい。
これにより、自車両1の挙動を乗員に気づき易くすることができる。
(10)表示コントローラ22は、自車両1の前方に実際に先行車両がいるか否かを判定し、先行車両がいない場合に仮想物体を表示し、先行車両がいる場合に仮想物体を表示しないように、仮想車両の表示を制御してもよい。
これにより、仮想車両の表示によって実際の先行車両の視認が阻害されるのを回避できる。
【符号の説明】
【0078】
1…自車両、10…走行支援装置、11…測位装置、12…地図データベース、13…物体センサ、14…車両センサ、15…走行支援コントローラ、16…アクチュエータ、20…情報提示装置、21…表示装置、22…表示コントローラ、23…プロセッサ、24…記憶装置、30…フロントガラス、31…仮想先行車両、40…車速情報取得部、41…タイミング設定部、42…状態判定部、43…先行車両判定部、44…画像生成部