(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-19
(45)【発行日】2025-05-27
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H10D 30/66 20250101AFI20250520BHJP
H01L 21/768 20060101ALI20250520BHJP
H01L 23/522 20060101ALI20250520BHJP
H10D 64/27 20250101ALI20250520BHJP
H10D 62/10 20250101ALI20250520BHJP
【FI】
H10D30/66 101Z
H01L21/90 B
H10D64/27 G
H10D30/66 201A
H10D30/66 101T
H10D30/66 103B
H10D30/66 103Q
H10D30/66 102G
H10D62/10 101G
H10D62/10 101V
H10D62/10 101R
(21)【出願番号】P 2021172200
(22)【出願日】2021-10-21
【審査請求日】2024-04-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金原 啓道
(72)【発明者】
【氏名】岡田 将和
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-103751(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10D 30/66
H01L 21/768
H10D 64/27
H10D 62/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のトレンチゲート構造が形成された半導体装置であって、
第1導電型のドリフト層(12)と、
前記ドリフト層上に形成された第2導電型のベース層(13)と、
前記ベース層の表層部に形成された第1導電型の不純物領域(14)と、
前記ドリフト層を挟んで前記ベース層と反対側に形成され、前記ドリフト層よりも高不純物濃度とされた第1導電型または第2導電型の高濃度層(11)と、を有する半導体基板(10)と、
前記不純物領域および前記ベース層を貫通して前記ドリフト層に達し、所定方向を長手方向として延設されたトレンチ(16)内にゲート絶縁膜(17)を介してゲート電極(18)が配置された前記複数のトレンチゲート構造と、
前記半導体基板上に形成され、前記ゲート電極と電気的に接続される接続配線(180)と、
前記ベース層および前記不純物領域と電気的に接続される第1電極(20)と、
前記高濃度層と電気的に接続される第2電極(22)と、を備え、
前記トレンチには、開口部のうちの、前記ゲート電極と前記接続配線との接続部分で覆われる接続開口部(160a)に丸め部(161)が形成されており、
前記トレンチの開口部のうちの前記接続開口部と異なる部分を未接続開口部(160b)とすると、前記未接続開口部は、曲率半径が前記接続開口部の曲率半径より小さくなる部分を有して
おり、
前記接続開口部は、前記長手方向と交差する方向であって、前記半導体基板の面方向に沿った方向に隣合う前記トレンチの間の長さをLとすると、前記丸め部の曲率半径がL/2未満とされている半導体装置。
【請求項2】
第1導電型のドリフト層(12)と、
前記ドリフト層上に形成された第2導電型のベース層(13)と、
前記ベース層の表層部に形成された第1導電型の不純物領域(14)と、
前記ドリフト層を挟んで前記ベース層と反対側に形成され、前記ドリフト層よりも高不純物濃度とされた第1導電型または第2導電型の高濃度層(11)と、を有する半導体基板(10)と、
前記不純物領域および前記ベース層を貫通して前記ドリフト層に達し、所定方向を長手方向として延設されたトレンチ(16)内にゲート絶縁膜(17)を介してゲート電極(18)が配置された複数のトレンチゲート構造と、
前記半導体基板上に形成され、前記ゲート電極と電気的に接続される接続配線(180)と、
前記ベース層および前記不純物領域と電気的に接続される第1電極(20)と、
前記高濃度層と電気的に接続される第2電極(22)と、を備え、
前記トレンチには、開口部のうちの、前記ゲート電極と前記接続配線との接続部分で覆われる接続開口部(160a)に丸め部(161)が形成されており、
前記トレンチの開口部のうちの前記接続開口部と異なる部分を未接続開口部(160b)とすると、前記未接続開口部は、曲率半径が前記接続開口部の曲率半径より小さくなる部分を有している半導体装置の製造方法であって、
前記ドリフト層、前記ベース層、前記不純物領域を有する前記半導体基板を用意することと、
前記半導体基板に前記トレンチを形成することと、
前記トレンチの開口部のうちの前記接続開口部となる部分を露出させつつ、前記未接続開口部となる部分を被覆するマスク(30)を配置することと、
前記マスクを配置した状態で前記接続開口部に丸め部を形成することと、を行う半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記丸め部を形成することでは、加熱処理を行うことで前記接続開口部に前記丸め部を形成する請求項
2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記丸め部を形成することでは、等方性である、ケミカルドライエッチング法またはドライエッチング法で前記接続開口部に前記丸め部を形成する請求項
2に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレンチゲート構造を有する半導体装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、MOSFET(metal oxide semiconductor field effect transistorの略)等の半導体素子が形成された半導体装置が提案されている。具体的には、この半導体装置は、ドリフト層を有する半導体基板を備え、半導体基板の一面側にベース層が形成されていると共に、ベース層の表層部にソース領域が形成されている。また、半導体基板には、ソース領域およびベース層を貫通し、半導体基板の面方向における一方向に沿って延設された複数のトレンチが形成されている。そして、トレンチにゲート絶縁膜およびゲート電極が配置されることでトレンチゲート構造が構成されている。なお、トレンチの開口部は、トレンチの側面と半導体基板の一面とが略垂直となる角部を有する形状となっている。
【0003】
半導体基板の他面側には、ドレイン領域が配置されている。そして、半導体基板の一面側には、ソース領域およびベース層と電気的に接続されるように第1電極が配置されている。半導体基板の他面側には、ドレイン領域と電気的に接続されるように第2電極が配置されている。また、半導体基板の一面側には、ゲート電極と接続される接続配線が形成されている。
【0004】
上記のような半導体装置では、ゲート電極と接続配線とが繋がる部分であって、トレンチの開口部上に位置する部分にゲート電圧の電圧集中が発生し易い。このため、このような半導体装置では、ゲート電極と接続配線とが繋がる部分であって、トレンチの開口部に配置されているゲート絶縁膜の特性が低下する懸念がある。なお、ゲート絶縁膜の特性が低下するとは、ゲート絶縁膜のリーク電流が増加したり、ゲート絶縁膜の耐圧が低下したり、ゲート絶縁膜の寿命が低下したりすることである。
【0005】
このため、例えば、特許文献1には、トレンチの開口部近傍に電圧集中が発生し難くなるように、トレンチの開口部を丸める構造が提案されている。なお、この構造では、トレンチの開口部における全領域が丸められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記のような半導体装置では、隣合うトレンチの間の長さを短くすることで電流能力を増加させることが検討されている。この場合、トレンチの開口部の全領域を丸めると、トレンチに接するように形成されるソース領域等は、半導体基板の一面から露出する領域が少なくなる。このため、第1電極とソース領域との接続性が低下して接続不良が発生する可能性がある。
【0008】
本発明は上記点に鑑み、ゲート絶縁膜の特性が低下することを抑制しつつ、第1電極の接続不良が発生することを抑制できる半導体装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための請求項1は、複数のトレンチゲート構造が形成された半導体装置であって、第1導電型のドリフト層(12)と、ドリフト層上に形成された第2導電型のベース層(13)と、ベース層の表層部に形成された第1導電型の不純物領域(14)と、ドリフト層を挟んでベース層と反対側に形成され、ドリフト層よりも高不純物濃度とされた第1導電型または第2導電型の高濃度層(11)と、を有する半導体基板(10)と、不純物領域およびベース層を貫通してドリフト層に達し、所定方向を長手方向として延設されたトレンチ(16)内にゲート絶縁膜(17)を介してゲート電極(18)が配置された複数のトレンチゲート構造と、半導体基板上に形成され、ゲート電極と電気的に接続される接続配線(180)と、ベース層および不純物領域と電気的に接続される第1電極(20)と、高濃度層と電気的に接続される第2電極(22)と、を備えている。そして、トレンチには、開口部のうちの、ゲート電極と接続配線との接続部分で覆われる接続開口部(160a)に丸め部(161)が形成されており、トレンチの開口部のうちの接続開口部と異なる部分を未接続開口部(160b)とすると、未接続開口部は、曲率半径が接続開口部の曲率半径より小さくなる部分を有しており、接続開口部は、長手方向と交差する方向であって、半導体基板の面方向に沿った方向に隣合うトレンチの間の長さをLとすると、丸め部の曲率半径がL/2未満とされている。
【0010】
これによれば、トレンチには、接続開口部に丸め部が形成されている。このため、接続開口部上で電圧集中が発生することを抑制でき、ゲート絶縁膜の特性が低下することを抑制できる。
【0011】
また、未接続開口部は、曲率半径が接続開口部の曲率半径より小さくなる部分を有している。つまり、未接続開口部は、接続開口部よりも開口幅が狭くなる部分を有している。このため、隣合うトレンチの間のうちの、曲率が小さくなる未接続開口部の間に位置する部分では、第1電極とベース層や不純物領域との接続面積を確保し易くできる。したがって、第1電極の接続不良が発生することを抑制できる。
【0012】
また、請求項2は、請求項1の半導体装置に関する製造方法であり、ドリフト層、ベース層、不純物領域を有する半導体基板を用意することと、半導体基板にトレンチを形成することと、トレンチの開口部のうちの接続開口部となる部分を露出させつつ、未接続開口部となる部分を被覆するマスク(30)を配置することと、マスクを配置した状態でベース層を接続開口部に丸め部を形成することと、を行う。
【0013】
これによれば、トレンチの接続開口部に丸め部を形成するため、接続開口部で電圧集中が発生することを抑制でき、ゲート絶縁膜の特性が低下することを抑制した半導体装置を製造できる。
【0014】
また、未接続開口部は、曲率半径が接続開口部の曲率半径より小さくなる部分を有するように形成する。このため、隣合うトレンチの間のうちの、曲率が小さくなる未接続開口部の間に位置する部分では、第1電極とベース層や不純物領域との接続面積を確保し易くできる。したがって、第1電極の接続不良が発生することを抑制した半導体装置を製造できる。
【0015】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態における半導体装置の平面図である。
【
図2】
図1中のII-II線に沿った断面図である。
【
図3】
図1中のIII-III線に沿った断面図である。
【
図4】
図1中のIV-IV線に沿った断面図である。
【
図5A】
図2に示す半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図5B】
図5Aに続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図5C】
図5Bに続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図6A】
図3に示す半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図6B】
図6Aに続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図6C】
図6Bに続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図7A】
図4に示す半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図7B】
図7Aに続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図7C】
図7Bに続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図7D】
図7Cに続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図8A】第1実施形態の変形例における半導体装置の平面図である。
【
図8B】第1実施形態の変形例における半導体装置の平面図である。
【
図8C】第1実施形態の変形例における半導体装置の平面図である。
【
図8D】第1実施形態の変形例における半導体装置の平面図である。
【
図8E】第1実施形態の変形例における半導体装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0018】
(第1実施形態)
第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、本実施形態の半導体装置は、例えば、自動車等の車両に搭載され、車両用の各種電子装置を駆動するための装置として適用されると好適である。また、本実施形態では、炭化珪素(以下では、SiCともいう)で構成される半導体基板10にトレンチゲート構造が形成された半導体装置について説明する。
【0019】
本実施形態の半導体装置は、
図1に示されるように、トレンチゲート構造のMOSFETが形成されるセル領域1と、このセル領域1を囲む外周領域2とを有する構成とされている。なお、外周領域2の構成については具体的に説明しないが、本実施形態では、外周領域2に、セル領域1を囲むように枠状に形成されたFLR(Field Limiting Ringの略)部2aが形成されている。また、
図1は、後述する層間絶縁膜19および上部電極20等を適宜省略した平面図である。さらに、
図1は、断面図ではないが、理解をし易くするため、後述するゲート絶縁膜17およびゲート電極18にハッチングを施してある。
【0020】
半導体装置は、
図2~
図4に示されるように、SiCで構成される半導体基板10を用いて構成されている。具体的には、半導体基板10は、SiCで構成されるn
+型の基板11を有している。基板11の表面上には、SiCで構成される、n
-型のドリフト層12およびp型のベース層13が順にエピタキシャル成長させられている。そして、ベース層13の表層部には、n
+型のソース領域14およびp
+型のコンタクト領域15が形成されている。具体的には後述するが、ソース領域14は、後述するトレンチ16の側面に接するように形成され、コンタクト領域15は、ソース領域14を挟んで後述するトレンチ16と反対側に形成されている。なお、本実施形態では、基板11が高濃度層に相当し、ソース領域14が不純物領域に相当する。
【0021】
基板11は、例えば、n型不純物濃度が1.0×1019/cm3とされ、表面が(0001)Si面とされている。ドリフト層12は、例えば、n型不純物濃度が0.5~2.0×1016/cm3とされ、厚さが5~14μmとされている。なお、本実施形態では、基板11がMOSFETにおけるドレイン層を構成する。
【0022】
ベース層13は、チャネル領域が形成される部分であり、例えば、p型不純物濃度が3.0×1017/cm3程度とされ、厚みが0.5~2μmとされている。ソース領域14は、ドリフト層12よりも高不純物濃度とされ、例えば、表層部におけるn型不純物濃度が2.5×1018~1.0×1019/cm3、厚さが0.5~2μmとされている。コンタクト領域15は、ベース層13よりも高不純物濃度とされ、p型不純物濃度が1.0×1018/cm3~1.0×1020/cm3とされている。なお、ドリフト層12、ベース層13、ソース領域14、およびコンタクト領域15の不純物濃度および膜厚は、任意であり、上記に限定されるものではない。
【0023】
そして、半導体基板10には、ベース層13およびソース領域14を貫通してドリフト層12に達するように複数のトレンチ16が形成されている。このため、ソース領域14は、各トレンチ16の側面に接するように形成された状態となっている。
【0024】
複数のトレンチ16は、半導体基板10の面方向における一方向を長手方向として延設されていると共に、長手方向と交差する方向に等間隔で並べられたストライプ状に形成されている。本実施形態では、複数のトレンチ16は、
図1中の紙面左右方向に延設され、紙面上下方向に配列されている。以下、複数のトレンチ16の配列方向を単に配列方向ともいう。なお、ソース領域14およびコンタクト領域15は、トレンチ16の長手方向において、トレンチ16よりも内側で終端するように形成されている。
【0025】
トレンチ16の内壁面には、ゲート絶縁膜17が形成されている。ゲート絶縁膜17の表面には、ドープドポリシリコンにて構成されたゲート電極18が形成されている。そして、トレンチ16は、これらゲート絶縁膜17およびゲート電極18によって埋め込まれている。本実施形態では、このようにしてトレンチゲート構造が構成されている。
【0026】
なお、ゲート絶縁膜17は、トレンチ16の内壁面以外の表面にも形成されている。具体的には、ゲート絶縁膜17は、
図2に示されるように、半導体基板10の一面10aの一部も覆うように形成されている。より詳しくは、ゲート絶縁膜17は、ソース領域14の表面の一部も覆うように形成されている。言い換えると、ゲート絶縁膜17には、ソース領域14およびコンタクト領域15を露出させるコンタクトホール17aが形成されている。但し、本実施形態では、
図3および
図4に示されるように、トレンチ16の長手方向における端部側では、ゲート絶縁膜17は、ベース層13、ソース領域14およびコンタクト領域15を覆うように形成されている。
【0027】
そして、本実施形態では、トレンチ16の長手方向における端部側では、半導体基板10の一面10a上までゲート電極18が引き出され、引き出された部分が接続配線180とされている。なお、本実施形態の接続配線180は、配列方向に沿って隣合うゲート電極18同士を接続するように、配列方向に沿って延設されている。
【0028】
ここで、
図3および
図4に示されるように、トレンチ16の開口部(すなわち、底部と反対側の肩部)において、ゲート電極18と接続配線180との接続部分で覆われる部分を接続開口部160aとする。言い換えると、トレンチ16の開口部のうちの接続配線160と重なる部分を接続開口部160aとする。また、
図2に示されるように、トレンチ16の開口部において、接続開口部160aと異なる部分を未接続開口部160bとする。この場合、本実施形態では、
図3および
図4に示されるように、接続開口部160aは、開口部を丸める丸め部161が形成されている。一方、
図2に示されるように、未接続開口部160bは、丸め部161が形成されておらず、トレンチ16の側面と半導体基板10の一面10aとの成す角度が略垂直とされている。
【0029】
このため、未接続開口部160bは、接続開口部160aより曲率半径が小さくされている。言い換えると、未接続開口部160bは、接続開口部160aよりも開口幅が狭くされている。そして、半導体基板10の一面10aでは、配列方向に沿って隣合うトレンチ16の間の長さにおいて、接続開口部160aの間に位置する部分の長さL1が、未接続開口部160bの間に位置する部分の長さL2より短くされている。以下では、配列方向に沿って隣合うトレンチ16を単に隣合うトレンチ16ともいう。
【0030】
また、本実施形態では、丸め部161は、隣合うトレンチ16の間の長さをLとすると、丸め部161の曲率半径がL/2未満となるように形成されている。つまり、丸め部161は、少なくとも長さL1が0とならないように形成されている。言い換えると、丸め部161は、隣合うトレンチ16の間に尖った部分が構成されないように形成されている。
【0031】
半導体基板10の一面10a上には、ソース領域14、コンタクト領域15、ゲート電極18、接続配線180等を覆うように層間絶縁膜19が形成されている。そして、
図2に示されるように、層間絶縁膜19には、コンタクトホール17aと連通してソース領域14およびコンタクト領域15を露出させるコンタクトホール19aが形成されている。また、層間絶縁膜19には、
図4に示されるように、接続配線180を露出させるコンタクトホール19bが形成されている。なお、本実施形態では、トレンチ16の長手方向における端部側では、ソース領域14およびコンタクト領域15を露出させるためのコンタクトホール19aは形成されていない。
【0032】
層間絶縁膜19上には、
図2に示されるように、コンタクトホール17a、19aを通じてソース領域14およびコンタクト領域15と電気的に接続される上部電極20が形成されている。本実施形態では、上部電極20は、例えば、Ni/Al等の複数の金属にて構成されている。そして、複数の金属のうちのn型SiC(すなわち、ソース領域14)を構成する部分と接触する部分は、n型SiCとオーミック接触可能な金属で構成されている。また、複数の金属のうちの少なくともp型SiC(すなわち、コンタクト領域15)と接触する部分は、p型SiCとオーミック接触可能な金属で構成されている。なお、本実施形態では、上部電極20が第1電極に相当する。
【0033】
また、層間絶縁膜19上には、
図4に示されるように、コンタクトホール19bを通じて接続配線180と接続されるゲート配線21が形成されている。ゲート配線21は、上部電極20と同じ材料で構成されていてもよいし、異なる材料で構成されていてもよい。
【0034】
なお、上記のように、層間絶縁膜19には、トレンチ16の長手方向における端部側にコンタクトホール19aが形成されていない。このため、トレンチ16の長手方向における端部側のソース領域14およびコンタクト領域15は、直接的には上部電極20とは接続されていない。
【0035】
基板11の裏面側には、基板11と電気的に接続された第2電極に相当する下部電極22が形成されている。本実施形態では、このような構造により、nチャネルタイプの反転型であるトレンチゲート構造のMOSFETが構成されている。
【0036】
以上が本実施形態における半導体装置の構成である。なお、本実施形態では、n+型、n-型が第1導電型に相当しており、p-型、p型、p+型が第2導電型に相当している。また、上記のように、本実施形態の半導体基板10は、基板11、ドリフト層12、ベース層13、ソース領域14、コンタクト領域15等を含んで構成されている。
【0037】
次に、上記半導体装置における作動および効果について説明する。このような半導体装置では、ゲート電極18に所定の閾値電圧以上のゲート電圧が印加されることにより、ベース層13のうちのトレンチ16と接する部分にn型の反転層(すなわち、チャネル領域)が形成される。そして、ソース領域14から反転層を介して電子がドリフト層12に供給されることにより、上部電極20と下部電極22との間に電流が流れる。
【0038】
この際、ゲート電極18と接続配線180とが繋がる部分であって、トレンチ16の開口部上に位置する部分にゲート電圧の電圧集中が発生し易い。このため、本実施形態では、トレンチ16の接続開口部160aに丸め部161を形成している。これにより、接続開口部160a上で電圧集中が発生することを抑制でき、ゲート絶縁膜17の特性が低下することを抑制できる。
【0039】
また、本実施形態のトレンチ16は、未接続開口部160bに丸め部161が形成されておらず、長さL2が長さL1よりも長くされている。このため、隣合うトレンチ16の未接続開口部160bの間に位置する部分では、上部電極20と、ソース領域14およびコンタクト領域15との接続面積を確保し易くなる。したがって、上部電極20と、ソース領域14およびコンタクト領域15との間で接続不良が発生することを抑制できる。
【0040】
【0041】
まず、
図5A、
図6A、
図7Aに示されるように、基板11、ドリフト層12、ベース層13、ソース領域14、コンタクト領域15等が形成された半導体基板10を用意する。そして、半導体基板10の一面10a上に図示しないマスクを配置してドライエッチング等を行い、上記形状の複数のトレンチ16を形成する。
【0042】
続いて、
図5B、
図7Bに示されるように、トレンチ16のうちの接続開口部160aとなる部分を露出させつつ、トレンチ16のうちの未接続開口部160bとなる部分を被覆するマスク30を配置する。なお、マスク30は、耐熱性のある材料で構成され、例えば、カーボン膜等で構成される。
【0043】
次に、
図6B、
図7Cに示されるように、接続開口部160aとなる部分に丸め部161が形成されるように丸め処理を行う。本実施形態では、水素雰囲気やアルゴン雰囲気で加熱処理を行う丸め処理を行うことによって接続開口部160aとなる部分に丸め部161を形成する。なお、この工程では、加熱処理を行うため、トレンチ16の側面におけるダメージも低減される。
【0044】
その後、
図5C、
図6C、
図7Dに示されるように、詳細な説明は省略するが、一般的な半導体製造プロセスを行い、ゲート絶縁膜17、ゲート電極18、接続配線180、層間絶縁膜19、上部電極20、下部電極22等を順に形成する。なお、ゲート電極18および接続配線180を形成する際には、ポリシリコンをCVD(Chemical Vapor Depositionの略)法等でトレンチ16内に形成してゲート電極18を形成する。そして、半導体基板10の一面10a上に成膜されたポリシリコンをパターニングすることにより、ゲート電極18と接続される接続配線180を形成する。
【0045】
以上説明した本実施形態によれば、トレンチ16には、接続開口部160aに丸め部161が形成されている。このため、接続開口部160a上で電圧集中が発生することを抑制でき、ゲート絶縁膜17の特性が低下することを抑制できる。
【0046】
また、トレンチ16には、未接続開口部160bに丸め部161が形成されておらず、長さL2が長さL1よりも長くされている。このため、隣合うトレンチ16の未接続開口部160bの間に位置する部分では、上部電極20と、ソース領域14およびコンタクト領域15との接続面積を確保し易くできる。したがって、上部電極20と、ソース領域14およびコンタクト領域15との間で接続不良が発生することを抑制できる。
【0047】
(1)本実施形態では、接続開口部160aの曲率半径がL/2未満とされている。このため、半導体基板10の一面10aのうちの隣合うトレンチ16の接続開口部160aの間に、尖った部分が構成されることを抑制できる。したがって、隣合うトレンチ16の接続開口部160aの間に配置されるゲート絶縁膜17の所定箇所に応力が集中することを抑制でき、ゲート絶縁膜17が破壊されることを抑制できる。
【0048】
(第1実施形態の変形例)
上記第1実施形態の変形例について説明する。上記第1実施形態において、接続配線180が形成される位置は適宜変更可能である。言い換えると、上記第1実施形態において、接続開口部160aとなる部分と未接続開口部160bとなる部分との位置関係は、適宜変更可能である。
【0049】
例えば、
図8Aに示されるように、接続配線180は、トレンチ16の開口部のうちの長手方向における両端部および途中部が接続開口部160aとなるように形成されていてもよい。また、
図8Bに示されるように、接続配線180は、トレンチ16の開口部のうちの長手方向における両端部に接続開口部160aが構成されるように形成されておらず、途中部のみに接続開口部160aが構成されるように形成されていてもよい。この場合、
図8Cに示されるように、接続配線180は、トレンチ16の開口部における途中部の複数個所に接続開口部160aが構成されるように、複数本形成されていてもよい。さらに、
図8Dに示されるように、接続配線180は、隣合うゲート電極18同士を接続するように形成されておらず、配列方向において分断されていてもよい。そして、
図8Eに示されるように、接続配線180は、トレンチ16の開口部のうちの長手方向における両端部の一端部のみが接続開口部160aとなるように形成されていてもよい。
【0050】
(他の実施形態)
本開示は、実施形態に準拠して記述されたが、本開示は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0051】
例えば、上記第1実施形態では、第1導電型をn型、第2導電型をp型としたnチャネルタイプであるトレンチゲート構造のMOSFETが形成された半導体装置を説明した。しかしながら、半導体装置は、例えば、nチャネルタイプに対して各構成要素の導電型を反転させたpチャネルタイプであるトレンチゲート構造のMOSFETが形成されて構成されていてもよい。さらに、半導体装置は、MOSFET以外に、同様の構造のIGBTが形成された構成とされていてもよい。IGBTの場合、上記第1実施形態におけるn+型の基板11をP+型のコレクタ層に変更する以外は、上記第1実施形態で説明した縦型MOSFETと同様である。さらに、半導体装置は、MOSFETに加え、ダイオード等の他の半導体素子も形成されて構成されていてもよい。
【0052】
また、上記第1実施形態では、半導体基板10がSiCで構成される半導体装置を例に挙げて説明したが、半導体基板10は、シリコン基板や化合物基板等で構成されていてもよい。また、半導体基板10をシリコン基板等で構成する場合には、半導体基板10を用意した後、ドレイン領域となる部分をイオン注入等によって形成してもよい。
【0053】
さらに、上記第1実施形態では、接続開口部160aに丸め部161が形成され、未接続開口部160bに丸め部161が形成されていない例について説明した。しかしながら、例えば、未接続開口部160bのうちの接続開口部160a側の部分に丸め部161が形成されていてもよい。すなわち、未接続開口部160bは、曲率半径が、接続開口部160aの曲率半径よりも小さくなる部分を有するように形成されていればよい。これによれば、未接続開口部160bにおける曲率半径が小さくなる部分では、丸め部161が形成されていないため、上部電極20の接続不良が発生することを抑制できる。
【0054】
また、上記第1実施形態では、トレンチ16の長手方向における端部側では上部電極20がソース領域14等と接続されない例を説明した。しかしながら、上部電極20は、トレンチ16の長手方向における端部側においても、ソース領域14等と接続されるように配置されていてもよい。
【0055】
さらに、上記第1実施形態において、丸め部161を形成する丸め処理は、トレンチ16を形成してマスク30を配置した後、等方性である、CDE(すなわち、ケミカルドライエッチング)法やドライエッチング法等で行うようにしてもよい。このような方法で丸め処理を行った場合には、特に半導体基板10がシリコン基板である場合、加熱処理を行う場合と比較して、ソース領域14やコンタクト領域15を構成する不純物が不要に拡散することを抑制できる。
【符号の説明】
【0056】
11 基板(高濃度層)
12 ドリフト層
13 ベース層
14 ソース領域(不純物領域)
16 トレンチ
17 ゲート絶縁膜
18 ゲート電極
20 上部電極(第1電極)
22 下部電極(第2電極)
160a 接続開口部
160b 未接続開口部
161 丸め部
180 接続配線