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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-19
(45)【発行日】2025-05-27
(54)【発明の名称】画像処理装置および画像処理方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/12 20230101AFI20250520BHJP
   H04N 23/60 20230101ALI20250520BHJP
   H04N 25/10 20230101ALI20250520BHJP
【FI】
H04N23/12
H04N23/60 500
H04N25/10
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021567279
(86)(22)【出願日】2020-12-14
(86)【国際出願番号】 JP2020046561
(87)【国際公開番号】W WO2021131859
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-11-15
(31)【優先権主張番号】62/954,056
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514315159
【氏名又は名称】株式会社ソシオネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】萩原 創一
(72)【発明者】
【氏名】梅津 有司
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 順三
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-060412(JP,A)
【文献】特開2019-122045(JP,A)
【文献】特開2006-211478(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/12
H04N 23/60
H04N 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤系色および少なくも1つの補色のセグメントを含む色フィルタを通して複数の画素で光を受信する撮像素子により生成される元画像データの補正処理を実施する画像処理装置であって、
前記元画像データを原色系色空間で表される原色系画像データに変換する変換処理と、
前記原色系画像データにおいて前記複数の画素に対応する複数の画素データの統計値を取得する統計取得処理と、
前記統計値を使用して補正パラメータを算出するパラメータ算出処理と、
前記補正パラメータに基づいて前記元画像データを補正して、補正画像データを生成する補正処理と、
を実施する画像処理装置。
【請求項2】
前記補正処理において、前記補正パラメータを、前記元画像データの色空間で表される補正パラメータに変換後、変換された補正パラメータを使用して前記元画像データを補正する
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
複数種の補正処理を順次実施し、2番目以降に実施される補正処理は、1つ前の画像処理により生成された前記補正画像データを前記元画像データとして入力する
請求項1または請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
最後の補正処理で生成した補正画像データを原色系色空間で表される原色系画像データに変換し、
変換した原色系画像データを表示用データとして出力し、
最後の補正処理で生成した補正画像データを画像処理用データとして出力する
請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記複数種の補正処理の1つは、ノイズ除去処理であり、
前記変換処理において、前記元画像データを輝度情報と色差情報とで表される原色系画像データに変換し、
前記統計取得処理において、前記原色系画像データの前記色差情報に対してノイズ除去を実施することで、色ノイズが除去された原色系画像データを生成し、
前記パラメータ算出処理において、色ノイズが除去された原色系画像データを前記元画像データの色空間に変換して、前記元画像データとの差分を取得することで、前記元画像データの色空間での色ノイズを取得し、
前記補正処理において、前記元画像データから前記元画像データの色空間での色ノイズを減算する
請求項3または請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記複数種の補正処理の1つは、ホワイトバランス補正処理であり、
前記統計取得処理において、前記変換処理で得られた原色系画像データの色の統計値を算出し、
前記パラメータ算出処理において、前記統計値を使用して第1の色補正パラメータを取得し、
前記補正処理において、前記第1の色補正パラメータを使用して前記元画像データのホワイトバランスを補正する
請求項3ないし請求項5のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記複数種の補正処理の1つは、色補正処理であり、
前記統計取得処理において、前記変換処理で得られた原色系画像データを使用して、前記複数の画素の画素値の前記原色系色空間中での位置を求め、
前記パラメータ算出処理において、前記複数の画素の画素値の前記原色系色空間中での位置に基づいて第2の色補正パラメータを取得し、
前記補正処理において、前記第2の色補正パラメータを使用して前記元画像データの色を補正する
請求項3ないし請求項6のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記複数種の補正処理の1つは、トーンマッピング処理であり、
前記変換処理において、前記元画像データを輝度情報と色差情報とで表される原色系画像データに変換し、
前記統計取得処理において、前記原色系画像データの前記複数の画素の色の濃さを検出し、
前記パラメータ算出処理において、検出した各画素の色の濃さに基づいて、トーンコントロール強度を算出し、
前記補正処理において、前記元画像データのトーンコントロールを実施し、トーンコントロール強度に基づいて、前記元画像データとトーンコントロールの実施後の元画像データとをブレンドするブレンド処理を実施する
請求項3ないし請求項7のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記複数種の補正処理の1つは、エッジ強調処理であり、
前記変換処理において、前記元画像データを輝度情報と色差情報とで表される原色系画像データに変換し、
前記統計取得処理において、前記原色系画像データにおける前記複数の画素の画素値からエッジ成分を検出し、
前記パラメータ算出処理において、前記原色系画像データの前記エッジ成分を前記元画像データの色空間に変換することで、前記元画像データのエッジ成分を取得し、
前記補正処理において、前記元画像データに前記元画像データの色空間でのエッジ成分を加算する
請求項3ないし請求項8のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項10】
赤、黄およびシアンのセグメントを含む前記色フィルタを通して光を受信する前記撮像素子により生成される前記元画像データの補正処理を実施する
請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項11】
マゼンタ、黄およびシアンのセグメントを含む前記色フィルタを通して光を受信する前記撮像素子により生成される前記元画像データの補正処理を実施する
請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項12】
赤系色および少なくも1つの補色のセグメントを含む色フィルタを通して複数の画素で光を受信する撮像素子により生成される元画像データの補正処理を実施する画像処理装置の画像処理方法であって、
前記元画像データを原色系色空間で表される原色系画像データに変換する変換処理を実施し、
前記原色系画像データにおいて前記複数の画素に対応する複数の画素データの統計値を取得する統計取得処理を実施し、
前記統計値を使用して補正パラメータを算出するパラメータ算出処理を実施し、
前記補正パラメータに基づいて前記元画像データを補正して、補正画像データを生成する補正処理を実施する
画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置および画像処理方法に関する。
【0002】
本出願は、2019年12月27日出願の米国仮出願第62/954,056号に基づく優先権を主張し、前記出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0003】
デジタルカメラ等による撮像で得られる画像データは、最適な画像を得るために、画像処理装置等により様々な補正処理が実施される。例えば、画像データ中に含まれる人物の肌色に合わせて明度を向上する処理が実施される。あるいは、複数に分割された画像データのブロックから算出される画素値の統計値に基づいて、シェーディング補正係数が算出され、または、ホワイトバランス補正係数が算出される。この種の補正処理は、RGB(赤、緑、青)の色空間の画像データを使用して実施されることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2007-534179号公報
【文献】特開2015-099962号公報
【文献】特開2014-007622号公報
【文献】特開2018-195993号公報
【文献】特開2013-128255号公報
【文献】特開2011-041056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近時、自動車等の移動体にカメラ等の撮像装置を搭載し、撮像装置で撮像された画像から、移動体の周囲の物体(他の移動体、信号、標識、道路の白線および人物等)を認識する技術が知られている。この種の撮像装置は、例えば、ストップランプ、信号または禁止マークなどの赤系色の認識性の向上、ナトリウムランプ等の黄系色の認識性の向上、または、夜間などの暗い場所での受光感度の向上が要求されている。これらの要求を満たすために、撮像装置にRGBフィルタではなく、RYeCy(赤、黄、シアン)フィルタが使用される場合がある。
【0006】
しかしながら、ノイズ除去処理、ホワイトバランス補正または色補正処理などは、RGBの色空間の画像データを使用して実施されており、RYeCyの色空間の画像データの補正処理を実施する手法は提案されていない。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、赤系色および少なくも1つの補色のセグメントを含む色フィルタを通して撮像された画像データの補正処理において優れた画質の補正画像を生成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様では、画像処理装置は、赤系色および少なくも1つの補色のセグメントを含む色フィルタを通して複数の画素で光を受信する撮像素子により生成される元画像データの補正処理を実施する画像処理装置であって、前記元画像データを原色系色空間で表される原色系画像データに変換する変換処理と、前記原色系画像データにおいて前記複数の画素に対応する複数の画素データの統計値を取得する統計取得処理と、前記統計値を使用して補正パラメータを算出するパラメータ算出処理と、前記補正パラメータに基づいて前記元画像データを補正して、補正画像データを生成する補正処理と、を実施する。
【発明の効果】
【0009】
開示の技術によれば、赤系色および少なくも1つの補色のセグメントを含む色フィルタを通して撮像された画像データの補正処理を適切に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態における画像処理装置を含む画像処理システムの一例を示すイメージ図である。
図2図1の画像処理装置が搭載される半導体装置の概要を示す断面図である。
図3図1の各撮像装置に搭載されるイメージセンサの画素の配列の一例を示す説明図である。
図4図1の画像処理装置の構成の一例を示すブロック図である。
図5図4の画像処理部が実施する処理の一例を示すフロー図である。
図6図5のステップS100で実施する補正処理の1つであるノイズ除去処理の一例を示すフロー図である。
図7】RYeCy画像とRGB画像とを相互に変換する場合の演算式の例を示す説明図である。
図8図4の画像処理部が実施する処理の別の例を示すフロー図である。
図9図8のステップS10で実施する補正処理の1つであるホワイトバランス補正処理の一例を示すフロー図である。
図10図8のステップS20で実施する補正処理の1つであるデモザイク処理の一例を示すフロー図である。
図11図8のステップS40で実施する補正処理の1つである色補正処理の一例を示すフロー図である。
図12図8のステップS50で実施する補正処理の1つであるトーンマッピング処理の一例を示すフロー図である。
図13図8のステップS60で実施する補正処理の1つであるエッジ強調処理の一例を示すフロー図である。
図14】第2の実施形態における画像処理装置に搭載される画像処理部が実施する処理の一例を示すフロー図である。
図15】第3の実施形態における画像処理装置に搭載される画像処理部が実施する処理の一例を示すフロー図である。
図16図15の続きを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いて実施形態を説明する。以下では、信号等の情報が伝達される信号線には、信号名と同じ符号を使用する。図面に示す1本の信号線は、複数ビットで構成される場合がある。また、以下の説明では、画像データを単に画像と称する場合がある。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態における画像処理装置を含む画像処理システムの一例を示す。図1に示す画像処理システム10は、例えば、自動車等の移動体20に搭載される。移動体20の進行方向Dの前方、後方、左側および右側には、カメラ等の撮像装置22A、22B、22C、22Dが設置される。以下では、撮像装置22A、22B、22C、22Dを区別なく説明する場合、撮像装置22とも称される。
【0013】
なお、移動体20に設置される撮像装置22の数および設置位置は、図1に限定されない。例えば、撮像装置22は、移動体20の前方のみに設置されてもよく、前方と後方のみに設置されてもよい。あるいは、撮像装置22は、移動体20の天井に接地されてもよい。また、画像処理システム10が搭載される移動体20は、自動車に限定されず、例えば、工場内で稼働する搬送ロボットまたはドローンでもよい。
【0014】
画像処理システム10は、画像処理装置12と、画像処理装置12に接続された表示装置14および情報処理装置16とを有する。なお、図1では、説明を分かりやすくするために、上方から俯瞰した移動体20のイメージ図に画像処理システム10を重ねて記載している。しかしながら、実際には、画像処理装置12および情報処理装置16は、移動体20に搭載される制御基板等に実装され、表示装置14は、移動体20内の人物から見える位置に設置される。なお、画像処理装置12は、情報処理装置16の一部として制御基板等に実装されてもよい。
【0015】
画像処理装置12は、信号線または無線を介して各撮像装置22に接続され、各撮像装置22により撮像された移動体20の周囲の画像を示す画像データを取得する。画像処理装置12は、各撮像装置22から取得した画像データの画像処理(補正処理)を実施し、画像処理の結果を表示装置14および情報処理装置16の少なくとも一方に出力する。
【0016】
表示装置14は、例えば、移動体20に設置されるサイドミラーモニタやバックミラーモニタまたはカーナビゲーション装置である。なお、表示装置14は、ダッシュボード等に設けられたディスプレイ、または、投影板またはフロントガラス等に画像を投影するヘッドアップディスプレイ(Head Up Display)等でもよい。また、画像処理システム10は、表示装置14を含まなくてもよい。
【0017】
情報処理装置16は、画像処理装置12を介して受信する画像データに基づいて認識処理等を実施するプロセッサ等のコンピュータを含む。例えば、移動体20に搭載される情報処理装置16は、画像データの認識処理を実施することで、他の移動体、信号、標識、道路の白線および人物等を検出し、検出結果に基づいて移動体20の周囲の状況を判断する。なお、情報処理装置16は、移動体20の移動・停止・右折および左折等を制御する自動運転制御装置を含んでもよい。
【0018】
図2は、図1の画像処理装置12が搭載される半導体装置の概要を示す。例えば、画像処理装置12は、図2に示す半導体装置30の半導体チップ32内に含まれる。半導体チップ32内には、画像処理装置12の機能を実現するトランジスタおよび配線等が設けられるが、図示は省略する。
【0019】
半導体チップ32は、複数のバンプBP1を介して配線基板34に設けられた複数の配線36にそれぞれ接続される。複数の配線36は、配線基板34の裏面に設けられる外部接続端子であるバンプBP2に接続される。そして、バンプBP2が制御基板等に接続されることで、半導体装置30は、制御基板等に実装される。
【0020】
なお、図1の情報処理装置16は、半導体装置30と同様の構成とされてもよく、半導体装置30と同様の半導体装置を有してもよい。また、1つの半導体装置に、画像処理装置12と情報処理装置16とが含まれてもよい。
【0021】
図3は、図1の各撮像装置22に搭載されるイメージセンサIMGSの画素PXの配列の一例を示す。特に限定されないが、例えば、イメージセンサIMGSは、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサであり、撮像素子の一例である。
【0022】
画素PXは、マトリックス状に配列され、各画素PXは、受光素子と、受光素子上に設けられた色フィルタとを有する。各画素PXに付したR、Ye、Cyは、色フィルタの各セグメントの色を示し、Rが赤(Red)、Yeが黄(Yellow)、Cyがシアン(Cyan)を意味する。すなわち、各撮像装置22は、RYeCyの色フィルタを通して複数の画素で光を受信し、画像データを生成する。Rは原色系であり、YeおよびCyは補色系である。
【0023】
図3に示す例では、縦2つ、横2つの合計4つの画素を単位とする画素群が、縦方向および横方向に繰り返し配置される。例えば、画素群は、左上に配置された画素Rと、右上に配置された画素Yeと、左下に配置された画素Yeと、右下に配置された画素Cyとを有する。各画素R、Ye、Cyは、受けた光の強度に応じて、対応する色の光の強度を示す信号を出力する。
【0024】
そして、図1に示した各撮像装置22は、画素R、Ye、Cy毎に出力される光の強度を示す信号に基づいて、移動体20の周囲の景色を示す画像データを生成し、生成した画像データを画像処理した後、画像処理装置12に出力する。図3に示すイメージセンサIMGSを含む撮像装置22は、R、Ye、Cyの色情報を持つ画像データを出力する。
【0025】
なお、イメージセンサIMGSの各画素群の色フィルタはRYeYeCyに限られない。例えば、画素Rの代わりに、マゼンタの画素Mが配置されてもよく、他の赤系色の画素が配置されてもよい。換言すれば、色フィルタの赤のセグメントの代わりに、マゼンタまたは他の赤系色のセグメントが配置されてもよい。また、画素群内の画素の配列および画素群の配置パターンの配置も、図3に限定されず、適宜変更されてもよい。
【0026】
図4は、図1の画像処理装置12の構成の一例を示す。画像処理装置12は、例えば、バスBUSを介して互いに接続されたインターフェース部121、CPU122、主記憶装置123、補助記憶装置124および画像処理部125等を有する。
【0027】
インターフェース部121は、各撮像装置22または撮像装置22の少なくともいずれかから出力される画像データを受信する。また、インターフェース部121は、画像処理部125により生成された補正画像データを受信して、受信した画像データを表示装置14および情報処理装置16の少なくともいずれかに出力する。
【0028】
CPU122は、例えば、画像処理プログラムを実行することで、画像処理装置12の全体の動作を制御する。例えば、主記憶装置123は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の半導体メモリである。例えば、主記憶装置123には、補助記憶装置124から転送された画像処理プログラムと、画像処理部125が画像処理中に使用するワークデータとが記憶される。
【0029】
例えば、補助記憶装置124は、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)等である。補助記憶装置124には、一例として、撮像装置22から受信した画像データと、画像処理部125が画像処理に使用するパラメータと、画像処理プログラムとが記憶される。
【0030】
画像処理部125は、インターフェース部121を介して、各撮像装置22から出力される画像データを取得する。画像処理部125は、取得した画像データに対して変換処理または補正処理等の画像処理を実施し、補正画像データを生成する。
【0031】
例えば、画像処理部125は、図3に示したイメージセンサIMGSを有する撮像装置22から受信したRYeCyの色空間で表された画像データを、RGB(Red、Green、Blue)の色空間に変換する。そして、画像処理部125は、RGBの色空間に変換された画像データを使用して補正処理用の補正パラメータを算出し、算出した補正パラメータを使用して、RYeCyの色空間で表された画像データの補正処理を実施し、補正画像データを生成する。さらに、画像処理部125は、RYeCyの色空間で表された補正画像データをRGBの色空間に変換し、RGBの補正画像データを生成する。RGBの色空間は、原色系色空間の一例であり、RGBの画像データは、原色系画像データの一例である。
【0032】
画像処理装置12は、RGBの色空間に変換された補正画像データを、インターフェース部121を介して表示装置14に出力する。また、画像処理装置12は、RYeCyの色空間で表された補正画像データを、インターフェース部121を介して情報処理装置16に出力する。これにより、情報処理装置16は、RYeCy以外の色空間から変換された補正画像データではなく、RYeCyの色空間の補正画像データを使用して物体認識等の処理を実施することができる。
【0033】
この場合、例えば、画素Rが受信する信号機の赤色等および自動車のブレーキランプ等の赤い光の強度を、他の画素から算出した場合に比べて高くすることができる。また、画素Yeが受信するナトリウムランプ等の黄色い光に照らされた物体の黄色い反射光等の強度を、他の画素から算出した場合に比べて高くすることができる。この結果、信号機の赤色灯やナトリウムランプ等で照らされた物体の認識精度を高くすることができる。
【0034】
図5は、図4の画像処理部125が実施する補正処理の一例を示す。すなわち、図5は、画像処理装置12による画像処理方法の一例を示す。例えば、図5に示す処理は、画像処理部125のハードウェアにより実施される。画像処理部125は、FPGA(Field-Programmable Gate Array)またはASIC(Application Specific Integrated Circuit)等により設計されてもよい。
【0035】
この実施形態では、画像処理部125は、撮像装置22から出力されるRYeCyの色空間で表された画像データを受信し、ステップS100により少なくとも1種類の補正処理を実施する。この際、画像処理部125は、RYeCyの色空間で表された画像データをRGBの色空間に変換し、RGBの色空間で表された画像データを使用して、RYeCyの色空間で表された画像データの補正に使用する補正パラメータを算出する。
【0036】
RYeCy系の色フィルタを介して取得した画像データは、RGB系の色フィルタを介して取得した画像データに比べて、輝度が高いが、色の識別精度が低い。これは、Yeの画素が検出する波長領域と、R、Cyの画素が検出する波長領域との重複部分が、RGBの各画素が検出する波長領域の重複部分より大きいためである。
【0037】
この実施形態では、RYeCy画像の補正処理に使用する補正パラメータを、RYeCy画像に比べて色の識別精度が高いRGB画像を使用して算出する。RGB画像に比べて高輝度のRYeCy画像の補正処理を、RGBの色空間を使用して実施することで、RYeCy画像を直接補正する場合にも比べて、RYeCy補正画像の画質を向上することができる。
【0038】
ステップS100で実施される補正処理の例は、図6から図13で説明される。以下では、RYeCyの色空間で表された画像データは、RYeCy画像とも称され、RGBの色空間で表された画像データは、RGB画像とも称される。
【0039】
まず、ステップS101において、画像処理部125は、例えば、撮像装置22から出力されるRYeCy画像を取得する。次に、ステップS102において、画像処理部125は、RYeCy画像をRGBの色空間で表されたRGB画像に変換する。
【0040】
次に、ステップS103において、画像処理部125は、RGB画像の全範囲または所定の一部の範囲について、R、G、Bの各画素の強度を表す信号値等の統計値(統計量)を算出する。ステップS103の処理は、統計取得処理の一例である。次に、ステップS104において、画像処理部125は、算出した統計値に基づいて、ステップS101で取得したRYeCy画像の補正に使用する補正パラメータを算出する。ステップS104の処理は、パラメータ算出処理の一例である。画像処理部125が算出する補正パラメータは、ステップS100で実施する補正処理の内容により異なる。
【0041】
次に、ステップS105において、画像処理部125は、ステップS104で算出した補正パラメータを使用して、ステップS101で取得したRYeCy画像の補正処理を実施し、RYeCyの色空間で表された補正画像データ(RYeCy補正画像)を生成する。ステップS105の処理は、補正画像データを生成する補正処理の一例である。
【0042】
なお、画像処理部125は、RYeCy画像からRGB画像に変換するときの処理と逆の処理を、補正パラメータに対して実施することで、RGB画像を使用して算出した補正パラメータを、RYeCy画像用の補正パラメータに変換することができる。補正パラメータの変換は、ステップS104で実施されてもよい。
【0043】
次に、ステップS110において、画像処理部125は、ステップS105により補正した補正画像データ(RYeCy補正画像)を画像処理用データとして、例えば、図1の情報処理装置16に出力する。また、ステップS110の処理と並行して、画像処理部125は、ステップS120において、RYeCy補正画像をRGBの色空間で表されたRGB補正画像に変換する。次に、ステップS130において、画像処理部125は、RGB補正画像を表示用データとして、例えば、図1の表示装置14に出力する。
【0044】
このように、画像処理部125から外部(例えば、表示装置14)に出力するRGB画像は、ステップS102で変換したRGB画像でなく、RYeCy補正画像から変換されたRGB補正画像である。したがって、例えば、ステップS100で使用中の色情報が欠落したRGB画像が画像処理部125から出力されることを抑止することができる。また、ステップS102によるRGB画像への変換処理を簡易な行列演算式を使用して実施する場合においても、画像処理部125は、RGB補正画像を正常なRGB画像として出力することができる。
【0045】
ステップS110、S130の後、ステップS140において、画像処理部125は、補正処理を継続すると判断した場合、処理をステップS101に戻し、少なくとも1種類の補正処理を実施する。一方、ステップS70において、画像処理部125は、補正処理の終了を判断した場合、図5に示す補正処理を終了する。例えば、画像処理部125は、撮像装置22から次のRYeCy画像データを受信した場合、補正処理を継続するためにステップS101に処理を戻し、撮像装置22からRYeCy画像データを受信しない場合、補正処理を終了する。
【0046】
図6は、図5のステップS100で実施する補正処理の1つであるノイズ除去処理の一例を示す。すなわち、図6は、画像処理装置12による画像処理方法の一例を示す。図6のステップS30は、図5のステップS100に対応する。また、図6のステップS31、S32、S33は、図5のステップS101、S102、S103にそれぞれ対応する。図6のステップS341、S342は、図5のステップS104に対応する。図6のステップS351、S352は、図5のステップS105に対応する。
【0047】
ステップS31において、画像処理部125は、例えば、撮像装置22から出力されるRYeCy画像を取得する。次に、ステップS32において、画像処理部125は、RYeCy画像をRGBの色空間(YCbCr座標系)で表されたRGB画像に変換する。YCbCr座標系では、各画素の画像データは、輝度情報Yと色差情報Cb、Crとにより表される。なお、画像処理部125は、RYeCy画像をLabの色空間に変換してもよい。
【0048】
また、RGB画像への変換は、規格にしたがった行列演算により実施されるが、簡易な行列演算式により実施されてもよい。簡易な行列演算式により変換された偽RGB画像は、色再現性が低い一方で、RGB成分のノイズを小さくすることができる。ステップS32で生成されるRGB画像は、ノイズを除去するために使用され、表示装置14への表示には使用されないため、色再現性が低くても問題ない。
【0049】
さらに、簡易な行列演算式を使用することで、画像処理部125の負荷を小さくすることができる。これにより、補正処理に掛かる処理時間を短縮することができ、画像処理部125の消費電力を削減することができる。簡易な行列演算式については、図7で説明される。
【0050】
次に、ステップS33において、画像処理部125は、ステップS32で変換されたYCbCr座標系の画像の色差情報Cb、Crに対してノイズの除去処理(NR)を実施する。換言すれば、画像処理部125は、ノイズが除去された色差情報Cb、Crを統計値(統計量)として取得する。輝度情報Yを含まず、視覚特性により近い色差情報Cb、Crのノイズを除去することで、色ノイズを効果的に除去することができる。
【0051】
次に、ステップS341において、画像処理部125は、色差情報Cb、Crのノイズが除去されたRGB空間の画像データに対してRYeCy空間への逆変換を実施することで、実際の色空間に変換する。これにより、色成分が正確に再現されたRYeCy画像を生成することができる。また、ノイズの除去時に特定の色を消しすぎるなどの不具合の発生を抑止することができる。
【0052】
次に、ステップS342において、画像処理部125は、ステップS341による逆変換で得られた、色ノイズが除去されたRYeCy画像と、ステップS31で取得したRYeCy画像の差分を取得する。これにより、画像処理部125は、差分として、色ノイズの成分を取得することができる。差分である色ノイズの成分は、補正パラメータの一例である。
【0053】
画像処理部125は、ステップS32、S33、S341、S342の処理と並行して、ステップS351を実施する。ステップS351において、画像処理部125は、RYeCy画像を使用して、輝度成分のノイズを除去する。ステップS351は、RYeCy画像に対して実施されるため、RGB画像に対してノイズ除去の処理を実施する場合に比べて、ノイズ除去性能を高くすることができる。なお、ステップS351は、ステップS352の後に実施されてもよい。また、輝度成分のノイズが少ない場合、ステップS351は、省略されてもよい。
【0054】
次に、ステップS352において、画像処理部125は、ステップS351で輝度成分のノイズが除去されたRYeCy画像から、ステップS342で取得した色ノイズの成分を減算する。そして、画像処理部125は、減算により、ノイズが除去されたRYeCy画像であるRYeCy補正画像を生成し、図6に示す処理を終了する。この後、画像処理部125は、図5に示したステップS110、S120を実施する。
【0055】
図7は、RYeCy画像とRGB画像とを相互に色変換する場合の演算式の例を示す。図7では、RYeCy画像をRGB画像に変換する2つの演算式(1)、(3)と、RGB画像をRYeCy画像に変換する2つの演算式(2)、(4)とが示される。
【0056】
例えば、演算式(1)、(3)は、図5に示したステップS102、S120、図6に示したステップS32、または、後述するRYeCy画像をRGB画像に変換する処理で使用される。また、演算式(2)、(4)は、図6に示したステップS34、または、後述するRGB画像をRYeCy画像に変換する処理で使用される。
【0057】
演算式(1)は、RYeCy画像をRGB画像に変換する一般式を示している。例えば、RYeCy画像からRGB画像への変換では、ホワイトバランスWB(White Balance)と色補正CC(Color Correction)とが適用される。ホワイトバランスWBおよび色補正CCで使用する値は、例えば、AWB(Auto White Balance)処理によって出力される画像の色が適切になるように動的に算出して求められる。
【0058】
演算式(2)は、RGB画像をRYeCy画像に変換する式を示す。演算式(2)は、ITU-R(International Telecommunication Union Radiocommunication Sector)の規格BT.601で定められた式である。なお、RGB画像からRYeCy画像への変換に使用する式に含まれる値は、図7の演算式(2)に示す値以外のものでもよい。
【0059】
演算式(1)、(2)を使用した色変換方法では、演算式(3)、(4)を使用した場合に比べて正確な演算を行うため、精度よく色変換を行うことができる。
【0060】
簡易式では、演算式(1)、(2)を使用した場合と比べて処理量が減少するため、演算コストは減少する。演算式(4)を展開すると、"Y=0.25R-0.25R+0.75Ye-0.25Ye+0.5Cy=0.5Ye+0.5Cy"となる。このため、Yは、単純なYe、Cyの平均値となり、ノイズの少ないY成分が出力される。
【0061】
図8は、図4の画像処理部125が実施する処理の別の例を示す。すなわち、図8は、画像処理装置12による画像処理方法の一例を示す。図5と同様の処理については、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。図8のステップS110、S120、S130、S140は、それぞれ図5のステップS110、S120、S130、S140と同様の処理である。図8のステップS10、S20、S30、S40、S50、S60は、図5のステップS100に対応する処理である。すなわち、この実施形態では、複数種の補正処理が順次実施される。
【0062】
ステップS10では、ホワイトバランス補正処理が実施され、ステップS20では、デモザイク処理が実施される。ステップS30では、ノイズ除去処理が実施され、ステップS40では、色補正処理が実施される。ステップS50では、トーンマッピング処理が実施され、ステップS60では、エッジ強調処理が実施される。
【0063】
ステップS30によるノイズ除去処理は、図6で説明したノイズ除去処理と同じである。なお、画像処理部125は、ステップS10、S20、S30、S40、S50、S60のうちの少なくとも1つの処理を実施してもよい。また、ステップS10、S20、S30、S40、S50、S60の実施順序は、入れ替えられてもよい。また、2番目以降に実施される補正処理は、1つ前の画像処理により生成されたRYeCy補正画像を元画像データとして入力する。
【0064】
図8に示すステップS100において、ステップS10に示すホワイトバランス補正処理を実施する場合、個別のRGB画像への変換処理では図7の演算式(1)、(3)に含まれるホワイトバランス補正処理は実施しなくてもよい。例えば、個別のRGB画像への変換処理は、図5のステップS102および図6のステップS32等である。
【0065】
図9は、図8のステップS10で実施する補正処理の1つであるホワイトバランス補正処理の一例を示す。また、図9のステップS11、S12、S23、S14、S15は、図5のステップS101、S102、S103、S104、S105にそれぞれ対応する。
【0066】
ホワイトバランス補正処理では、図7の演算式(1)、(3)に示したように、R、Ye、Cyに対してゲインを適用することで色の補正を実施する。補正パラメータをWr、Wy、Wcとすると、ホワイトバランス補正処理後の画像データR'、Ye'、Cy'は、"R'=WrR"、"Ye'=WyYe"、"Cy'=WcCy"によりそれぞれ算出することができる。
【0067】
例えば、補正パラメータWr、Wy、Wcは、AWB(Auto White Balance)処理によって画像の統計値に基づき算出される。例えば、画像処理部125は、画像中の無彩色と思われる領域の画素値の平均値を算出し、その平均値が正しく無彩色となるように補正パラメータWr、Wy、Wcを求める。
【0068】
ステップS11において、画像処理部125は、撮像装置22から出力されるRYeCy画像、または、前段で補正処理されたRYeCy補正画像を取得する。以下では、前段から取得する当該補正処理を実施する前のRYeCy補正画像は、RYeCy画像と称される。
【0069】
次に、ステップS12において、画像処理部125は、RYeCy画像をRGBの色空間に変換する。この際、画像処理部125は、規格にしたがってRGBの色空間に変換してもよく、簡略化した演算式によりRGBの色空間に変換してもよい。
【0070】
次に、ステップS13において、画像処理部125は、ステップS12で変換されたRGBの色空間を使用して、色の統計値(平均値)を算出する。なお、ホワイトバランス補正処理前の画像では、正確なRGB空間に変換することは難しいため、RYeCy画像を予めキャリブレーションにより求めたXYZ色空間に変換してもよい。
【0071】
次に、ステップS14において、画像処理部125は、ステップS13で求めた統計値を使用して、色の補正に使用する色補正パラメータを取得する。ステップS14で取得される色補正パラメータは、第1の色補正パラメータの一例である。次に、ステップS15において、画像処理部125は、ステップS14で取得した色補正パラメータを使用してホワイトバランス補正処理を実施し、RYeCy補正画像を生成し、図9に示す処理を終了する。
【0072】
ホワイトバランス補正処理用の色補正パラメータを、RGB空間の画像データを使用して求めることで、RYeCy補正画像を生成する場合に、表示装置14等に表示される画像が平均的に正しい色に見える色補正パラメータを求めることができる。
【0073】
図10は、図8のステップS20で実施する補正処理の1つであるデモザイク処理の一例を示す。デモザイク処理は、RYeCy画像をRGB画像に変換することなく実施可能である。このため、ステップS20では、図5のステップS101に対応するステップS21と、図5のステップS105に対応するステップS25のみが実施される。
【0074】
ステップS21において、画像処理部125は、撮像装置22から出力されるRYeCy画像、または、前段で補正処理されたRYeCy補正画像を取得する。次に、ステップS25において、画像処理部125は、ステップS21で取得したRYeCy画像に対してデモザイク処理を実施してRYeCy補正画像を生成し、図10に示す処理を終了する。
【0075】
デモザイク処理では、画像処理部125は、例えば、図3に示したように、R、Ye、Cyの画素がベイヤー状に配列される場合に、周囲にある同じ色の画素の画素データを補間して、各画素に対してR、Ye、Cyの画素データを求める処理を実施する。RYeYeCy配列の画素を含むイメージセンサIMGSのデモザイク処理は、RGGB配列の画素を含むベイヤー配列のイメージセンサIMGSのデモザイク処理を利用して実施することができる。
【0076】
図11は、図8のステップS40で実施する補正処理の1つである色補正処理の一例を示す。図11のステップS41、S42、S43、S44、S45は、図5のステップS101、S102、S103、S104、S105にそれぞれ対応する。
【0077】
まず、ステップS41において、画像処理部125は、撮像装置22から出力されるRYeCy画像、または、前段で補正処理されたRYeCy補正画像を取得する。次に、ステップS42において、画像処理部125は、RYeCy画像をRGBの色空間に変換する。
【0078】
次に、ステップS43において、画像処理部125は、ステップS42で変換されたRGBの色空間を使用して、各画素の画素値が、RGB空間中のどの位置に存在するかを求める。次に、ステップS44において、画像処理部125は、ステップS43で求めた各画素の存在位置に基づいて、適用する色補正パラメータを取得する。ステップS44で取得される色補正パラメータは、第2の色補正パラメータの一例である。
【0079】
次に、ステップS45において、画像処理部125は、ステップS44で取得した色補正パラメータを使用してRYeCy画像の色補正処理を実施し、RYeCy補正画像を生成し、図11に示す処理を終了する。RGB画像を使用して、各画素のRGB空間中での存在位置を確認することで、視覚特性に合わせた色補正パラメータを取得することができ、取得した色補正パラメータにより適切な色補正処理を実施することができる。
【0080】
なお、全ての画素のRデータ、Gデータ、Bデータに対して色補正パラメータを設定する場合、データ量が膨大になるため、データを格子状に間引き、格子点に対してのみ色補正パラメータを取得してもよい。そして、格子点以外の画素については、例えば、線形補間処理で補間することで、色補正パラメータを取得してもよい。これにより、色補正処理で扱うデータ量を削減することができ、画像処理部125の負荷を軽減することができる。
【0081】
また、格子状の間引きをR、Ye、Cyのまま行うと、RGB空間に対して曲がった空間で処理されるため、意図した補間処理ができない場合がある。しかしながら、図11に示すように、RYeCy空間をRGB空間に変換した後に、データを格子状に間引くことで、意図した補間処理を実施することができ、正しい色補正パラメータを取得することができる。なお、例えば、色補正パラメータにはRYeCyに対して適用する3行3列の行列が利用される。
【0082】
図12は、図8のステップS50で実施する補正処理の1つであるトーンマッピング処理の一例を示す。図12のステップS51、S52、S53、S54は、図5のステップS101、S102、S103、S104にそれぞれ対応する。図12のステップS551、S552は、図5のステップS105に対応する。
【0083】
まず、ステップS51において、画像処理部125は、撮像装置22から出力されるRYeCy画像、または、前段で補正処理されたRYeCy補正画像を取得する。次に、ステップS52において、画像処理部125は、RYeCy画像をRGBの色空間(YCbCr座標系)で表されたRGB画像に変換する。
【0084】
次に、ステップS53において、画像処理部125は、RGB画像の各画素の色の濃さを検出する。次に、ステップS54において、画像処理部125は、検出した各画素の色の濃さに基づいて、トーンコントロール強度αを算出する。例えば、トーンコントロール処理を画像全体に対して一律に適用する場合、色が濃い領域が明るく補正しすぎて色が蛍光色に見えるなどの弊害が発生することがある。このような弊害の発生を抑制するため、ステップS53で検出したRGB画像の各画素の色の濃さに基づいて、色が濃い箇所ほど小さい値となるトーンコントロール強度αを算出する。
【0085】
画像処理部125は、ステップS52、S53、S54の処理と並行して、ステップS551を実施する。ステップS551において、画像処理部125は、トーンコントロール等の手法を用いてRYeCy画像の明るさを補正する。例えば、トーンコントロールでは、LUT(Look Up Table)を使用して入力画素値の明るさが出力画素値の明るさに補正される。図12の下側に示すグラフは、LUTに含まれる入力画素値と出力画素値との関係の例を示している。
【0086】
そして、ステップS552において、画像処理部125は、ステップS54で算出したトーンコントロール強度αに基づいて、ステップS551のトーンコントロール前後のRYeCy画像をブレンドするブレンド処理を実施し、図12に示す処理を終了する。例えば、画像処理部125は、ブレンド処理として、"α*トーンコントロール後の画像+(1-α)*トーンコントロール前の画像"の演算を実施する。符号"*"は、乗算を示す。これにより、色が濃い箇所の補正を弱めることができ、色が濃い領域が明るく補正しすぎて色が蛍光色に見えるなどの弊害を抑制することができる。
【0087】
RGB画像(YCbCr座標系)を使用して、視覚特性により近い色差情報Cb、Crから色の濃さを検出することで、RYeCy画像を使用して色の濃さを検出する場合に比べて、検出精度を向上することができる。この結果、トーンコントロール強度αの算出精度を向上することができ、RYeCy画像を使用する場合にも、適切なブレンド処理を実施することができる。
【0088】
図13は、図8のステップS60で実施する補正処理の1つであるエッジ強調処理の一例を示す。図13のステップS61、S62、S63、S64、S65は、図5のステップS101、S102、S103、S104、S105にそれぞれ対応する。
【0089】
まず、ステップS61において、画像処理部125は、撮像装置22から出力されるRYeCy画像、または、前段で補正処理されたRYeCy補正画像を取得する。次に、ステップS62において、画像処理部125は、RYeCy画像をRGBの色空間(YCbCr座標系)で表されたRGB画像に変換する。
【0090】
次に、ステップS63において、画像処理部125は、ステップS62で変換したRGB画像において、例えば、互いに隣接する所定数の画素の輝度値(画素値)からエッジ成分を抽出する。RGB画像(YCbCr座標系)を使用して、輝度情報Yからエッジ成分を抽出することで、RYeCy画像を使用してエッジ成分を抽出する場合に比べて、エッジ成分の抽出精度を向上することができる。また、RGB画像を使用して、輝度値からエッジ成分を抽出することで、視覚特性により近いエッジ強調を行うことができる。
【0091】
次に、ステップS64において、画像処理部125は、ステップS63で抽出したRGB空間のエッジ成分を、RYeCy空間に逆変換して、R、Ye、Cyのエッジ成分を取得する。次に、ステップS65において、画像処理部125は、RYeCy画像にR、Ye、Cyのエッジ成分を加算することで、エッジが強調されたRYeCy補正画像を生成し、図13に示す処理を終了する。なお、エッジ強調によるノイズの強調を抑えるために、正確な色再現性のRGB画像に変換せず、偽Y、Cb、Crをエッジ強調に利用してもよい。
【0092】
以上、この実施形態では、RYeCy画像をRYeCy画像に比べて色の識別精度が高いRGB画像に変換し、RGB画像を使用して、RYeCy画像の補正に使用する補正パラメータを算出する。RGB画像に比べて高輝度のRYeCy画像の補正処理を、RGBの色空間を使用して実施することで、RYeCy画像を直接補正する場合にも比べて、RYeCy補正画像の画質を向上することができる。すなわち、RYeCyフィルタを通して撮像されたRYeCy画像の補正処理において優れた画質のRYeCy補正画像を生成することができる。
【0093】
また、例えば、色差情報Cb、Crのノイズが除去されたRGB空間の画像データに対してRYeCy空間への逆変換を実施し、補正パラメータとすることで、色成分が正確に再現されたRYeCy画像を生成することができる。
【0094】
ノイズ除去処理では、RGB画像(YCbCr座標系)を使用して、輝度情報Yを含まず、視覚特性により近い色差情報Cb、Crのノイズを除去することで、色ノイズを効果的に除去することができる。この結果、色成分が正確に再現されたRYeCy画像を生成することができる。また、ノイズの除去時に特定の色を消しすぎるなどの不具合の発生を抑止することができる。
【0095】
ホワイトバランス補正処理では、色補正パラメータを、RGB空間の画像データを使用して求めることで、RYeCy補正画像を生成する場合に、表示装置14等に表示される画像が平均的に正しい色に見える色補正パラメータを求めることができる。
【0096】
色補正処理では、RGB画像を使用して、各画素のRGB空間中での存在位置を確認することで、視覚特性に合わせた色補正パラメータを取得することができ、取得した色補正パラメータにより適切な色補正処理を実施することができる。また、RYeCy空間をRGB空間に変換した後に、データを格子状に間引くことで、意図した補間処理を実施することができ、正しい色補正パラメータを取得することができる。
【0097】
トーンマッピング処理では、RGB画像(YCbCr座標系)を使用して、視覚特性により近い色差情報Cb、Crから色の濃さを検出することで、RYeCy画像を使用して色の濃さを検出する場合に比べて、検出精度を向上することができる。この結果、トーンコントロール強度αの算出精度を向上することができ、RYeCy画像を使用する場合にも、適切なブレンド処理を実施することができる。
【0098】
エッジ強調処理では、RGB画像(YCbCr座標系)を使用して、輝度情報Yからエッジ成分を抽出することで、RYeCy画像を使用してエッジ成分を抽出する場合に比べて、エッジ成分の抽出精度を向上することができる。また、RGB画像を使用して、輝度値からエッジ成分を抽出することで、視覚特性により近いエッジ強調を行うことができる。
【0099】
(第2の実施形態)
図14は、第2の実施形態における画像処理装置に搭載される画像処理部が実施する処理の一例を示す。この実施形態の画像処理装置および画像処理部は、例えば、図4に示す画像処理装置12および画像処理部125と同様である。また、この実施形態の画像処理装置12を含む画像処理システムは、例えば、図1に示す画像処理システム10と同様に、画像処理装置12、表示装置14および情報処理装置16を有し、自動車等の移動体20に搭載される。
【0100】
図14に示す処理は、図4の画像処理部125により実施される。図5と同様の処理については、詳細な説明は省略する。ステップS201、S210、S220、S230、S240の処理は、それぞれ図5のステップS101、S110、S120、S130、S140の処理と同様である。
【0101】
この実施形態においても、図5と同様に、画像処理部125は、撮像装置22から出力されるRYeCyの色空間で表された画像データを受信し、ステップS200により少なくとも1種類の補正処理を実施する。但し、画像処理部125は、ステップS201の後、ステップS203において、RYeCyの色空間で表された画像データを使用して統計値を取得する。また、画像処理部125は、ステップS203の後、ステップS204において、RYeCy画像の全範囲または所定の一部の範囲について、R、Ye、Cyの各画素の強度を表す信号値等の統計値(統計量)を算出する。すなわち、画像処理部125は、RGBの色空間で表される画像データを生成することなく、補正パラメータを算出する。
【0102】
そして、画像処理部125は、ステップS204の後、ステップS204で算出した補正パラメータを使用して、ステップS201で取得したRYeCy画像の補正処理を実施し、RYeCyの色空間で表された補正画像データ(RYeCy補正画像)を生成する。この後、図5と同様に、画像処理部125は、ステップS210、S220、S230、S240の処理を実施する。
【0103】
以上、この実施形態では、画像処理部125は、補正パラメータを算出するためのRGB画像への変換を実施しないため、図5に比べて画像処理部125の処理負荷を低減することができる。
【0104】
(第3の実施形態)
図15および図16は、第3の実施形態における画像処理装置に搭載される画像処理部が実施する処理の一例を示す。この実施形態の画像処理装置および画像処理部は、例えば、図4に示す画像処理装置12および画像処理部125と同様である。また、この実施形態の画像処理装置12を含む画像処理システムは、例えば、図1に示す画像処理システム10と同様に、画像処理装置12、表示装置14および情報処理装置16を有し、自動車等の移動体20に搭載される。
【0105】
図15および図16に示す処理は、図4の画像処理部125により実施される。図8と同様の処理については、詳細な説明は省略する。ステップS10、S20、S30、S40、S50、S60の処理は、それぞれ図8のステップS10、S20、S30、S40、S50、S60の処理と同様である。また、ステップS110、S120、S130、S140の処理は、それぞれ図8のステップS110、S120、S130、S140の処理と同様である。
【0106】
この実施形態では、画像処理部125は、ステップS10、S20、S30、S40、S50、S60の各々の処理の前に、各処理を実施するか否かを判定し、実施を判定した処理のみを実施する。例えば、画像処理部125は、各処理を実施するか否かを、各処理に対応して画像処理装置12内に設けられるレジスタの値またはフラグの値等により判定する。
【0107】
図15のステップS8において、画像処理部125は、ホワイトバランス処理の実施を決定した場合のみ、ステップS10のホワイトバランス処理を実施する。ステップS10のホワイトバランス処理は、図9のホワイトバランス処理と同様である。ステップS18において、画像処理部125は、デモザイク処理の実施を決定した場合のみ、ステップS20のデモザイク処理を実施する。ステップS20のデモザイク処理は、図10のデモザイク処理と同様である。
【0108】
ステップS28において、画像処理部125は、ノイズ除去処理の実施を決定した場合のみ、ステップS30のノイズ除去処理を実施する。ステップS30のノイズ除去処理は、図6のノイズ除去処理と同様である。ステップS38において、画像処理部125は、色補正処理の実施を決定した場合のみ、ステップS40の色補正処理を実施する。ステップS40の色補正処理は、図11の色補正処理と同様である。
【0109】
図16のステップS48において、画像処理部125は、トーンマッピング処理の実施を決定した場合のみ、ステップS50のトーンマッピング処理を実施する。ステップS50のトーンマッピング処理は、図12のトーンマッピング処理と同様である。ステップS58において、画像処理部125は、エッジ強調処理の実施を決定した場合のみ、ステップS60のエッジ強調処理を実施する。ステップS60のエッジ強調処理は、図13のエッジ強調処理と同様である。
【0110】
以上、この実施形態においても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、この実施形態では、レジスタ値またはフラグ値等に基づいて、任意の組み合わせの処理を自在に実施することができる。したがって、実施する処理の種類にかかわりなく、画像処理部125のハードウェアを共通にすることができる。例えば、画像処理部125をASIC(Application Specific Integrated Circuit)で設計する場合にも、1つのASICにより任意の組み合わせの処理を自在に実施することができる。画像処理部125を共通化できるため、画像処理部125が搭載される画像処理部125のコストを削減することができ、画像処理システム10のコストを削減することができる。
【0111】
以上、各実施形態に基づき本発明の説明を行ってきたが、上記実施形態に示した要件に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の主旨をそこなわない範囲で変更することができ、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0112】
10 画像処理システム
12 画像処理装置
14 表示装置
16 情報処理装置
20 移動体
22、22A、22B、22C、22D 撮像装置
30 半導体装置
32 半導体チップ
34 配線基板
36 配線
121 インターフェース部
122 CPU
123 主記憶装置
124 補助記憶装置
125 画像処理部
BP1、BP2 バンプ
BUS バス
IMGS イメージセンサ
PX 画素
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16