(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-19
(45)【発行日】2025-05-27
(54)【発明の名称】自動運行装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20250520BHJP
G08G 1/0969 20060101ALI20250520BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20250520BHJP
G01C 21/34 20060101ALI20250520BHJP
B60W 30/10 20060101ALI20250520BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20250520BHJP
B60W 40/08 20120101ALI20250520BHJP
【FI】
G08G1/16 F
G08G1/0969
G08G1/09 V
G01C21/34
B60W30/10
B60W60/00
B60W40/08
(21)【出願番号】P 2022009648
(22)【出願日】2022-01-25
【審査請求日】2024-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】久米 拓弥
(72)【発明者】
【氏名】和泉 一輝
【審査官】宮本 礼子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-038356(JP,A)
【文献】特開2018-189528(JP,A)
【文献】特開2017-041070(JP,A)
【文献】特開平11-212640(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
G08G 1/00-99/00
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転席に着座している人物である運転席乗員の睡眠を許容する自動化レベルでの自動運転を実施する自動運行装置であって、
前記運転席乗員が承認済みの経路である承認済み経路に沿って前記自動運転を実施する車両制御部(F5)と、
外部装置から受信する交通情報又は気象情報に基づき、前記承認済み経路上に存在する所定の遅延要因を検出する遅延要因検出部(F21)と、
前記運転席乗員の状態をセンシングする乗員状態センサ(16)からの入力信号に基づき、前記運転席乗員が眠っているか否かを取得する乗員状態取得部(F3)と、を備え、
前記車両制御部は、
前記遅延要因が検出された場合、地図データを用いて
、代替経路として、到着予定時刻の遅延時間を抑制可能であって、かつ、前記自動運転を継続可能な時間が必要時間以上となる経路を探索し、
前記運転席乗員が眠っている状況において前記代替経路を取得できた場合には、前記運転席乗員の承認を得ることなく、走行予定経路を前記代替経路に変更
し、
前記代替経路を取得できなかった場合には、車線変更を自動的に実施する条件を緩和するように構成されている自動運行装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の自動運行装置であって、
前記遅延要因検出部は、前記遅延要因として、車線規制による渋滞である車線規制渋滞を他の事象とは区別して検出し、
前記車両制御部は、前記代替経路として、前記遅延時間を抑制可能であって、かつ、前記自動運転を継続可能な時間が必要時間以上となる経路を探索し、
前記代替経路を取得できず、かつ、検出された前記遅延要因が前記車線規制渋滞である場合には、渋滞区間の手前まで、前記車線規制によって消失する車線を走行するように構成されている自動運行装置。
【請求項3】
運転席に着座している人物である運転席乗員の睡眠を許容する自動化レベルでの自動運転を実施する自動運行装置であって、
前記運転席乗員が承認済みの経路である承認済み経路に沿って前記自動運転を実施する車両制御部(F5)と、
外部装置から受信する交通情報又は気象情報に基づき、前記承認済み経路上に存在する所定の遅延要因を検出する遅延要因検出部(F21)と、
前記運転席乗員の状態をセンシングする乗員状態センサ(16)からの入力信号に基づき、前記運転席乗員が眠っているか否かを取得する乗員状態取得部(F3)と、を備え、
前記遅延要因検出部は、前記遅延要因として、車線規制による渋滞である車線規制渋滞を他の事象とは区別して検出し、
前記車両制御部は、
前記遅延要因が検出された場合、地図データを用いて
、代替経路として、遅延時間を抑制可能であって、かつ、前記自動運転を継続可能な時間が必要時間以上となる経路を探索し、
前記運転席乗員が眠っている状況において前記代替経路を取得できた場合には、前記運転席乗員の承認を得ることなく、走行予定経路を前記代替経路に変更
し、
前記代替経路を取得できず、かつ、検出された前記遅延要因が前記車線規制渋滞である場合には、渋滞区間の手前まで、前記車線規制によって消失する車線を走行するように構成されている自動運行装置。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれか1項に記載の自動運行装置であって、
前記乗員状態取得部は、前記乗員状態センサからの信号に基づき、同乗者が起きているか否かも判定し、
前記車両制御部は、前記運転席乗員が眠っている場合であっても、前記同乗者が起きている場合には、前記遅延要因に関する情報を、前記同乗者が視認可能な位置に配置されているディスプレイに表示するように構成されている自動運行装置。
【請求項5】
運転席に着座している人物である運転席乗員の睡眠を許容する自動化レベルでの自動運転を実施する自動運行装置であって、
前記運転席乗員が承認済みの経路である承認済み経路に沿って前記自動運転を実施する車両制御部(F5)と、
外部装置から受信する交通情報又は気象情報に基づき、前記承認済み経路上に存在する所定の遅延要因を検出する遅延要因検出部(F21)と、
前記運転席乗員の状態をセンシングする乗員状態センサ(16)からの入力信号に基づき、前記運転席乗員が眠っているか否かを取得する乗員状態取得部(F3)と、を備え、
前記乗員状態取得部は、前記乗員状態センサからの信号に基づき、同乗者が起きているか否かも判定し、
前記車両制御部は、
前記遅延要因が検出された場合、地図データを用いて遅延時間を抑制可能な代替経路を探索し、
前記運転席乗員が眠っている状況において前記代替経路を取得できた場合には、前記運転席乗員の承認を得ることなく、走行予定経路を前記代替経路に変更
し、
前記運転席乗員が眠っている場合であっても、前記同乗者が起きている場合には、前記遅延要因に関する情報を、前記同乗者が視認可能な位置に配置されているディスプレイに表示するように構成されている自動運行装置。
【請求項6】
請求項
4又は5に記載の自動運行装置であって、
前記車両制御部は、前記運転席乗員が眠っており、かつ、前記同乗者が起きている状況において、前記遅延要因が検出された場合には、前記同乗者に前記遅延要因に対する応答方針を問い合わせる処理を実施する自動運行装置。
【請求項7】
請求項1から
6のいずれか1項に記載の自動運行装置であって、
前記乗員状態取得部は、前記運転席乗員が眠っている時間である睡眠継続時間を取得し、
前記車両制御部は、
入力装置からの信号又は予め登録されているデータに基づいて、前記運転席乗員が希望する睡眠時間である最小睡眠時間を取得し、
前記代替経路を取得できなかった場合、前記睡眠継続時間が前記最小睡眠時間に達するまでは前記遅延要因に関する通知は実施しないように構成されている自動運行装置。
【請求項8】
運転席に着座している人物である運転席乗員の睡眠を許容する自動化レベルでの自動運転を実施する自動運行装置であって、
前記運転席乗員が承認済みの経路である承認済み経路に沿って前記自動運転を実施する車両制御部(F5)と、
外部装置から受信する交通情報又は気象情報に基づき、前記承認済み経路上に存在する所定の遅延要因を検出する遅延要因検出部(F21)と、
前記運転席乗員の状態をセンシングする乗員状態センサ(16)からの入力信号に基づき、前記運転席乗員が眠っているか否かを取得する乗員状態取得部(F3)と、を備え、
前記乗員状態取得部は、前記運転席乗員が眠っている時間である睡眠継続時間を取得し、
前記車両制御部は、
前記遅延要因が検出された場合、地図データを用いて遅延時間を抑制可能な代替経路を探索し、
前記運転席乗員が眠っている状況において前記代替経路を取得できた場合には、前記運転席乗員の承認を得ることなく、走行予定経路を前記代替経路に変更
し、
入力装置からの信号又は予め登録されているデータに基づいて、前記運転席乗員が希望する睡眠時間である最小睡眠時間を取得し、
前記代替経路を取得できなかった場合、前記睡眠継続時間が前記最小睡眠時間に達するまでは前記遅延要因に関する通知は実施しないように構成されている自動運行装置。
【請求項9】
請求項1から
8のいずれか1項に記載の自動運行装置であって、
前記車両制御部は、
目的地に到着する予定時刻を定期的に算出することと、
前記運転席乗員が眠る前に算出されていた到着予定時刻である睡眠前予定時刻と、前記運転席乗員が眠っている間において算出された前記予定時刻とを比較することで、前記睡眠前予定時刻よりも所定時間以上早く到着可能であるか否かを判定することと、
前記睡眠前予定時刻よりも所定時間以上早く到着可能であると判定した場合には、前記自動運転の目標速度を所定量落とすように構成されている自動運行装置。
【請求項10】
運転席に着座している人物である運転席乗員の睡眠を許容する自動化レベルでの自動運転を実施する自動運行装置であって、
前記運転席乗員が承認済みの経路である承認済み経路に沿って前記自動運転を実施する車両制御部(F5)と、
外部装置から受信する交通情報又は気象情報に基づき、前記承認済み経路上に存在する所定の遅延要因を検出する遅延要因検出部(F21)と、
前記運転席乗員の状態をセンシングする乗員状態センサ(16)からの入力信号に基づき、前記運転席乗員が眠っているか否かを取得する乗員状態取得部(F3)と、を備え、
前記車両制御部は、
前記遅延要因が検出された場合、地図データを用いて遅延時間を抑制可能な代替経路を探索し、
前記運転席乗員が眠っている状況において前記代替経路を取得できた場合には、前記運転席乗員の承認を得ることなく、走行予定経路を前記代替経路に変更
し、
目的地に到着する予定時刻を定期的に算出し、
前記運転席乗員が眠る前に算出されていた到着予定時刻である睡眠前予定時刻と、前記運転席乗員が眠っている間において算出された前記予定時刻とを比較することで、前記睡眠前予定時刻よりも所定時間以上早く到着可能であるか否かを判定し、
前記睡眠前予定時刻よりも所定時間以上早く到着可能であると判定した場合には、前記自動運転の目標速度を所定量落とすように構成されている自動運行装置。
【請求項11】
請求項1から1
0のいずれか1項に記載の自動運行装置であって、
前記車両制御部は、
目的地に到着した時点において、前記運転席乗員が眠っており、かつ、前記運転席乗員が眠る前に算出されていた到着予定時刻である睡眠前予定時刻に現在時刻が達していない場合、前記睡眠前予定時刻になるまでは前記目的地に到着したことの通知を保留とする自動運行装置。
【請求項12】
運転席に着座している人物である運転席乗員の睡眠を許容する自動化レベルでの自動運転を実施する自動運行装置であって、
前記運転席乗員が承認済みの経路である承認済み経路に沿って前記自動運転を実施する車両制御部(F5)と、
外部装置から受信する交通情報又は気象情報に基づき、前記承認済み経路上に存在する所定の遅延要因を検出する遅延要因検出部(F21)と、
前記運転席乗員の状態をセンシングする乗員状態センサ(16)からの入力信号に基づき、前記運転席乗員が眠っているか否かを取得する乗員状態取得部(F3)と、を備え、
前記車両制御部は、
前記遅延要因が検出された場合、地図データを用いて遅延時間を抑制可能な代替経路を探索し、
前記運転席乗員が眠っている状況において前記代替経路を取得できた場合には、前記運転席乗員の承認を得ることなく、走行予定経路を前記代替経路に変更
し、
目的地に到着した時点において、前記運転席乗員が眠っており、かつ、前記運転席乗員が眠る前に算出されていた到着予定時刻である睡眠前予定時刻に現在時刻が達していない場合、前記睡眠前予定時刻になるまでは前記目的地に到着したことの通知を保留とするように構成されている自動運行装置。
【請求項13】
請求項1
1又は12に記載の自動運行装置であって、
目的地に到着済みであって、前記運転席乗員の覚醒待ちのために停車している間は、周辺監視センサを停止させた節電モードで動作する自動運行装置。
【請求項14】
請求項1から5のいずれか1項に記載の自動運行装置であって、
前記遅延要因検出部は、前記遅延要因として、車線規制と通行止めとを区別して検出し、
前記車両制御部は、前記車線規制が検出されている場合と、前記通行止めが検出されている場合とで、異なる制御方針を適用するように構成されている自動運行装置。
【請求項15】
運転席に着座している人物である運転席乗員の睡眠を許容する自動化レベルでの自動運転を実施する自動運行装置であって、
前記運転席乗員が承認済みの経路である承認済み経路に沿って前記自動運転を実施する車両制御部(F5)と、
外部装置から受信する交通情報又は気象情報に基づき、前記承認済み経路上に存在する所定の遅延要因を検出する遅延要因検出部(F21)と、
前記運転席乗員の状態をセンシングする乗員状態センサ(16)からの入力信号に基づき、前記運転席乗員が眠っているか否かを取得する乗員状態取得部(F3)と、を備え、
前記遅延要因検出部は、前記遅延要因として、車線規制と通行止めとを区別して検出し、
前記車両制御部は、
前記遅延要因が検出された場合、地図データを用いて遅延時間を抑制可能
であって、所定の条件を充足する代替経路を探索し、
前記運転席乗員が眠っている状況において前記代替経路を取得できた場合には、前記運転席乗員の承認を得ることなく、走行予定経路を前記代替経路に変更
し、
前記運転席乗員の睡眠中に前記遅延要因が検出された場合において前記代替経路を取得できなかった場合には、走行予定経路の自動変更は実施せず、
前記通行止めが検出されている場合には、前記車線規制が検出されている場合よりも、前記条件を緩和するように構成されている自動運行装置。
【請求項16】
請求項15に記載の自動運転装置であって、
前記条件である採用条件は、前記遅延時間の短縮量が閾値以上であることを含み、
前記車両制御部は、
前記通行止めが検出されている場合には、前記車線規制が検出されている場合よりも、前記閾値を小さい値に設定するように構成されている請求項15に記載の自動運行装置。
【請求項17】
請求項1
から16のいずれか1項に記載の自動運行装置であって、
前記車両制御部は、前記代替経路として、前記遅延時間を抑制可能であって、かつ、前記自動運転を継続可能な時間が必要時間以上となる経路を探索するように構成されている自動運行装置。
【請求項18】
請求項
17に記載の自動運行装置であって、
前記遅延要因検出部は、前記遅延要因として、渋滞区間を検出し、
前記車両制御部は、前記代替経路として、前記渋滞区間の少なくとも一部を迂回する経路であって、前記自動運転を継続可能な時間が前記必要時間以上であり、かつ、前記遅延時間を抑制可能な経路を探索するように構成されている自動運行装置。
【請求項19】
請求項
17又は18に記載の自動運行装置であって、
前記遅延要因検出部は、前記遅延要因として、天候に由来して最高速度が一時的に抑制されている区間である速度制限強化区間を検出し、
前記車両制御部は、前記代替経路として、前記速度制限強化区間の少なくとも一部を迂回する経路であって、前記自動運転を継続可能な時間が前記必要時間以上となる経路を探索するように構成されている自動運行装置。
【請求項20】
請求項1から
19のいずれか1項に記載の自動運行装置であって、
前記遅延要因検出部は、前記遅延要因として複数種類の事象を検出し、
前記車両制御部は、検出された前記遅延要因の種類に応じて、異なる制御を実施するように構成されている自動運行装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、運転席に着座している人物である運転席乗員(いわゆるドライバ)の睡眠が許容される自動運転を実施可能な自動運行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、運転席乗員が眠っている間も、車載システムによる車両の自律的な走行制御(いわゆる自動運転)を継続する制御装置が開示されている。また、特許文献2-4には、目的地までの走行経路として、自動運転で走行可能な区間がなるべく多くなる経路、又は、自動運転を所定時間以上継続可能な経路を優先的に選択するための方法が開示されている。
【0003】
なお、運転操作の自動化レベルとしては、例えば米国自動車技術会(SAE International、SAEは登録商標)が定義しているレベル0~5が知られている。レベル0は、システムが介入せずに運転席の乗員(いわゆるドライバ)が全ての運転タスクを実施するレベルである。レベル0は、いわゆる手動運転に相当する。レベル1は、操舵と加減速との何れかをシステムが支援するレベルである。レベル2は、システムが操舵と加減速との両方を支援するレベルである。自動化レベル1~2では、安全運転のための周辺監視義務が運転席乗員に生じる。レベル3は、高速道路等の特定の場所ではシステムが全ての運転タスクを実施可能であり、緊急時に運転席乗員が運転操作を行うレベルである。レベル4は、対応不可能な道路、極限環境等の特定状況下を除き、システムが全ての運転タスクを実施可能なレベルである。レベル5は、全ての環境下でシステムが全ての運転タスクを実施するレベルである。
【0004】
自動化レベル3以上がいわゆる自動運転に相当する。レベル3では例えば睡眠など、運転席乗員がすぐに運転操作に復帰できない状態に移行することは禁止される。レベル4やレベル5が、運転席乗員の睡眠が許容される自動化レベルに相当する。本開示では、レベル4以上の自動運転をレベル4自動運転とも称する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2021-6802号公報
【文献】特開2018-189528号公報
【文献】特開2017-78605号公報
【文献】特開2020-51860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、レベル4自動運転の実行中でかつ運転席乗員が眠っている状況下で渋滞が発生した場合は想定されていない。レベル4自動運転では、原則、運転席乗員が睡眠中も、運転席乗員が指定/承認したルートに従って自律的な走行を続ける。自動運転システムの構成としては、運転席乗員が眠っている状況下で渋滞が発生した場合も、渋滞を迂回しようとはせずに、設定済みのルートに従って黙々と走行を継続する構成が考えられる。
【0007】
そのような場合、運転席乗員は、眠りから覚めるまで到着予定時刻に遅れが生じていることに気づくことができず、自動運転機能に対する利便性が損なわれうる。なお、上記懸念に対する想定構成としては、渋滞の発生を検知した際、運転席乗員が寝ている場合には、運転席乗員を起こした上でリルート等を提案する構成が考えられる。しかしながら、当該構成では、睡眠したい運転席乗員に煩わしさを与える可能性がある。
【0008】
本開示は、上記の検討又は着眼点に基づいて成されたものであり、その目的の1つは、渋滞等の遅延要因によって自動運転に対する乗員の利便性又は快適性が損なわれる恐れを低減可能な自動運行装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ここに開示される第1の自動運行装置は、運転席に着座している人物である運転席乗員の睡眠を許容する自動化レベルでの自動運転を実施する自動運行装置であって、運転席乗員が承認済みの経路である承認済み経路に沿って自動運転を実施する車両制御部(F5)と、外部装置から受信する交通情報又は気象情報に基づき、承認済み経路上に存在する所定の遅延要因を検出する遅延要因検出部(F21)と、運転席乗員の状態をセンシングする乗員状態センサ(16)からの入力信号に基づき、運転席乗員が眠っているか否かを取得する乗員状態取得部(F3)と、を備え、車両制御部は、遅延要因が検出された場合、地図データを用いて、代替経路として、到着予定時刻の遅延時間を抑制可能であって、かつ、自動運転を継続可能な時間が必要時間以上となる経路を探索し、運転席乗員が眠っている状況において代替経路を取得できた場合には、運転席乗員の承認を得ることなく、走行予定経路を代替経路に変更し、代替経路を取得できなかった場合には、車線変更を自動的に実施する条件を緩和するように構成されている。
本開示の第2の自動運行装置は、運転席に着座している人物である運転席乗員の睡眠を許容する自動化レベルでの自動運転を実施する自動運行装置であって、運転席乗員が承認済みの経路である承認済み経路に沿って自動運転を実施する車両制御部(F5)と、外部装置から受信する交通情報又は気象情報に基づき、承認済み経路上に存在する所定の遅延要因を検出する遅延要因検出部(F21)と、運転席乗員の状態をセンシングする乗員状態センサ(16)からの入力信号に基づき、運転席乗員が眠っているか否かを取得する乗員状態取得部(F3)と、を備え、遅延要因検出部は、遅延要因として、車線規制による渋滞である車線規制渋滞を他の事象とは区別して検出し、車両制御部は、遅延要因が検出された場合、地図データを用いて、代替経路として、遅延時間を抑制可能であって、かつ、自動運転を継続可能な時間が必要時間以上となる経路を探索し、運転席乗員が眠っている状況において代替経路を取得できた場合には、運転席乗員の承認を得ることなく、走行予定経路を代替経路に変更し、代替経路を取得できず、かつ、検出された遅延要因が車線規制渋滞である場合には、渋滞区間の手前まで、車線規制によって消失する車線を走行するように構成されている。
本開示の第3の自動運行装置は、運転席に着座している人物である運転席乗員の睡眠を許容する自動化レベルでの自動運転を実施する自動運行装置であって、運転席乗員が承認済みの経路である承認済み経路に沿って自動運転を実施する車両制御部(F5)と、外部装置から受信する交通情報又は気象情報に基づき、承認済み経路上に存在する所定の遅延要因を検出する遅延要因検出部(F21)と、運転席乗員の状態をセンシングする乗員状態センサ(16)からの入力信号に基づき、運転席乗員が眠っているか否かを取得する乗員状態取得部(F3)と、を備え、乗員状態取得部は、乗員状態センサからの信号に基づき、同乗者が起きているか否かも判定し、車両制御部は、遅延要因が検出された場合、地図データを用いて遅延時間を抑制可能な代替経路を探索し、運転席乗員が眠っている状況において代替経路を取得できた場合には、運転席乗員の承認を得ることなく、走行予定経路を代替経路に変更し、運転席乗員が眠っている場合であっても、同乗者が起きている場合には、遅延要因に関する情報を、同乗者が視認可能な位置に配置されているディスプレイに表示するように構成されている。
本開示の第4の自動運行装置は、運転席に着座している人物である運転席乗員の睡眠を許容する自動化レベルでの自動運転を実施する自動運行装置であって、運転席乗員が承認済みの経路である承認済み経路に沿って自動運転を実施する車両制御部(F5)と、外部装置から受信する交通情報又は気象情報に基づき、承認済み経路上に存在する所定の遅延要因を検出する遅延要因検出部(F21)と、運転席乗員の状態をセンシングする乗員状態センサ(16)からの入力信号に基づき、運転席乗員が眠っているか否かを取得する乗員状態取得部(F3)と、を備え、乗員状態取得部は、運転席乗員が眠っている時間である睡眠継続時間を取得し、車両制御部は、遅延要因が検出された場合、地図データを用いて遅延時間を抑制可能な代替経路を探索し、運転席乗員が眠っている状況において代替経路を取得できた場合には、運転席乗員の承認を得ることなく、走行予定経路を代替経路に変更し、入力装置からの信号又は予め登録されているデータに基づいて、運転席乗員が希望する睡眠時間である最小睡眠時間を取得し、代替経路を取得できなかった場合、睡眠継続時間が最小睡眠時間に達するまでは遅延要因に関する通知は実施しないように構成されている。
本開示の第5の自動運行装置は、運転席に着座している人物である運転席乗員の睡眠を許容する自動化レベルでの自動運転を実施する自動運行装置であって、運転席乗員が承認済みの経路である承認済み経路に沿って自動運転を実施する車両制御部(F5)と、外部装置から受信する交通情報又は気象情報に基づき、承認済み経路上に存在する所定の遅延要因を検出する遅延要因検出部(F21)と、運転席乗員の状態をセンシングする乗員状態センサ(16)からの入力信号に基づき、運転席乗員が眠っているか否かを取得する乗員状態取得部(F3)と、を備え、車両制御部は、遅延要因が検出された場合、地図データを用いて遅延時間を抑制可能な代替経路を探索し、運転席乗員が眠っている状況において代替経路を取得できた場合には、運転席乗員の承認を得ることなく、走行予定経路を代替経路に変更し、目的地に到着する予定時刻を定期的に算出し、運転席乗員が眠る前に算出されていた到着予定時刻である睡眠前予定時刻と、運転席乗員が眠っている間において算出された予定時刻とを比較することで、睡眠前予定時刻よりも所定時間以上早く到着可能であるか否かを判定し、睡眠前予定時刻よりも所定時間以上早く到着可能であると判定した場合には、自動運転の目標速度を所定量落とすように構成されている。
本開示の第6の自動運行装置は、運転席に着座している人物である運転席乗員の睡眠を許容する自動化レベルでの自動運転を実施する自動運行装置であって、運転席乗員が承認済みの経路である承認済み経路に沿って自動運転を実施する車両制御部(F5)と、外部装置から受信する交通情報又は気象情報に基づき、承認済み経路上に存在する所定の遅延要因を検出する遅延要因検出部(F21)と、運転席乗員の状態をセンシングする乗員状態センサ(16)からの入力信号に基づき、運転席乗員が眠っているか否かを取得する乗員状態取得部(F3)と、を備え、車両制御部は、遅延要因が検出された場合、地図データを用いて遅延時間を抑制可能な代替経路を探索し、運転席乗員が眠っている状況において代替経路を取得できた場合には、運転席乗員の承認を得ることなく、走行予定経路を代替経路に変更し、目的地に到着した時点において、運転席乗員が眠っており、かつ、運転席乗員が眠る前に算出されていた到着予定時刻である睡眠前予定時刻に現在時刻が達していない場合、睡眠前予定時刻になるまでは目的地に到着したことの通知を保留とするように構成されている。
本開示の第7の自動運行装置は、運転席に着座している人物である運転席乗員の睡眠を許容する自動化レベルでの自動運転を実施する自動運行装置であって、運転席乗員が承認済みの経路である承認済み経路に沿って自動運転を実施する車両制御部(F5)と、外部装置から受信する交通情報又は気象情報に基づき、承認済み経路上に存在する所定の遅延要因を検出する遅延要因検出部(F21)と、運転席乗員の状態をセンシングする乗員状態センサ(16)からの入力信号に基づき、運転席乗員が眠っているか否かを取得する乗員状態取得部(F3)と、を備え、遅延要因検出部は、遅延要因として、車線規制と通行止めとを区別して検出し、車両制御部は、遅延要因が検出された場合、地図データを用いて遅延時間を抑制可能な代替経路を探索し、運転席乗員が眠っている状況において代替経路を取得できた場合には、運転席乗員の承認を得ることなく、走行予定経路を代替経路に変更し、運転席乗員の睡眠中に遅延要因が検出された場合において代替経路を取得できなかった場合には、走行予定経路の自動変更は実施せず、車両制御部は、通行止めが検出されている場合には、車線規制が検出されている場合よりも、代替経路を採用する条件を緩和するように構成されている。
【0011】
以上の自動運行装置によれば、運転席乗員は寝ている場合、起こされることなく(つまり自動的に)遅延時間を抑制可能となるため、自動運転の利便性/快適性が向上しうる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】自動運転システムの構成を示すブロック図である。
【
図4】代替経路探索処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5】代替経路候補から代替経路を選択する際のプロセッサの作動を説明するための図である。
【
図6】遅延要因応答処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】遅延要因応答処理の変形例を説明するための図である。
【
図8】遅延要因応答処理の変形例を説明するための図である。
【
図9】遅延要因応答処理の変形例を説明するための図である。
【
図10】早期到着が見込まれる場合のプロセッサの作動を説明するための図である。
【
図11】自動運転システムの他の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面を参照しながら、本開示の実施形態の一例を説明する。本開示は、以下の自動運転システムSysが適用される地域の法規及び慣習に適合するように適宜変更して実施可能である。
【0014】
<前置き>
図1は、本開示に係る自動運転システムSysの概略的な構成の一例を示す図である。自動運転システムSysは、乗用車のみならず、トラックやトレーラなど、道路上を走行可能な車両に搭載可能である。自動運転システムSysは、四輪自動車のほか、二輪自動車、三輪自動車等に適用されても良い。自動運転システムSysが適用される車両は、個人によって所有されるオーナーカーであってもよいし、シェアカーや、レンタカーであってもよい。シェアカーは、カーシェアリングサービスに供される車両であり、レンタカーは車両貸し出しサービスに供される車両である。以降では自動運転システムSysが搭載されている車両を自車両とも記載する。
【0015】
自車両は例えば電動車である。電動車の概念には、電気自動車のみならず、プラグインハイブリッド車や、ハイブリッド車、燃料電池車を含めることができる。もちろん、自車両は、エンジン車であってもよい。電気自動車は、モータのみを駆動源として備える車両を指す。ハイブリッド車はエンジンとモータを備える車両を指す。エンジン車は、駆動源としてエンジンのみを備える車両であって、ガソリンや軽油などの燃料によって走行する車両に相当する。
【0016】
本開示におけるドライバとは、実際に運転操作を実施している人物に限らず、自動運転終了時に自動運転システムSysから運転操作の権限を受け取るべき人物を指しうる。つまり本開示におけるドライバとは、実際に運転しているか否かに関わらず、運転席に着座している人物、つまり運転席乗員を指す。本開示におけるドライバとの記載は運転席乗員と置き換えることができる。自車両は、車両外部に存在するオペレータによって遠隔操作される遠隔操作車両であってもよい。自動運転システムSysから運転操作を引き継ぐ人物は、車両外部に存在するオペレータであってもよい。ここでのオペレータとは、車両の外部から遠隔操作によって車両を制御する権限を有する人物を指す。オペレータもまた、ドライバ/運転席乗員の概念に含めることができる。
【0017】
自動運転システムSysは、自車両を所定の経路に沿って自律的に走行させる、いわゆる自動運転機能を提供する。運転操作の自動化の度合い(以下、自動化レベル)としては、例えば米国自動車技術会(SAE International)が定義しているように、複数のレベルが存在し得る。自動化レベルは、例えば以下のレベル0~5の6段階に区分される。
【0018】
レベル0は、システムが介入せずにドライバが全ての運転タスクを実施するレベルである。運転タスクには、例えば操舵及び加減速が含まれる。また、運転タスクには、例えば車両前方など、車両の周辺を監視することも含まれる。レベル0は、いわゆる完全手動運転レベルに相当する。レベル1は、操舵と加減速との何れかをシステムがサポートするレベルである。レベル2は、操舵操作と加減速操作のうちの複数をシステムがサポートするレベルを指す。レベル1~2は、いわゆる運転支援レベルに相当する。
【0019】
レベル3は、運行設計領域(ODD:Operational Design Domain)内においてシステムが全ての運転タスクを実行する一方、緊急時にはシステムからドライバに操作権限が移譲されるレベルを指す。ODDは、例えば走行位置が自動車専用道路内であること等の、自動運転を実行可能な条件規定するものである。レベル3は、いわゆる条件付き自動運転に相当する。
【0020】
レベル4は、対応不可能な所定の道路、極限環境等の特定状況下を除き、システムが全ての運転タスクを実施するレベルである。レベル4は、ODD内にてシステムが全ての運転タスクを実施するレベルに相当する。レベル4は、いわゆる高度自動運転に相当する。レベル5は、あらゆる環境下でシステムが全ての運転タスクを実施可能なレベルである。レベル5は、いわゆる完全自動運転に相当する。
【0021】
自動化レベル3~5が自動運転に相当する。本開示では自動化レベル4に相当する自動運転をレベル4自動運転と称する。また、自動化レベル3に相当する自動運転をレベル3自動運転と称する。レベル3自動運転では、ドライバは緊急時には速やかに運転操作を再開する必要があり、睡眠などは禁止される。一方、レベル4自動運転では、ドライバは睡眠が許容されうる。本開示の自動運転システムSysはレベル4自動運転を実施可能に構成されている。もちろん、本開示の自動運転システムSysは、自動化レベル5に相当する自動運転を実施可能に構成されていても良い。
【0022】
以下で述べる車両の運転席は一例として、背もたれ部が例えば乗員の睡眠又は休憩に適した角度まで倒すことが可能なリクライニングシートとして構成されている。本開示では一例として背もたれ部の角度は車両の床部を基準として表現する。本開示では運転席の背もたれ部が車両の床部/着座面に対してなす角度を背もたれ角とも記載する。背もたれ角が小さいほど背もたれ部が車両後方に倒れていることを意味する。乗員の睡眠又は休憩に適した背もたれ角とは例えば、30度などである。もちろん、運転席は、背もたれ部を0度まで傾斜可能に構成されていてもよい。本開示では、背もたれ角が45度以下となっている状態を休憩姿勢とも称する。なお、他の態様として、背もたれ角は車両高さ方向を基準として表現されてもよい。
【0023】
<自動運転システムSysの全体構成について>
自動運転システムSysは一例として
図1に示す種々の構成を備える。すなわち、自動運転システムSysは、周辺監視センサ11、車両状態センサ12、ロケータ13、地図記憶部14、無線通信機15、乗員状態センサ16、ボディECU17、及び走行アクチュエータ18を備える。また、自動運転システムSysは、車載HMI20、及び自動運転ECU30を備える。なお、ECUは、Electronic Control Unitの略であり、電子制御装置を意味する。HMIは、ヒューマンマシンインターフェース(Human Machine Interface)の略である。
【0024】
自動運転ECU30は、周辺監視センサ11などといった上記装置/センサのそれぞれと車両内ネットワークIvNを介して又は専用の信号線によって相互通信可能に接続されている。車両内ネットワークIvNは、車両内に構築されている通信ネットワークである。車両内ネットワークIvNの規格としては、Ethernet(登録商標)など、多様な規格を採用可能である。一部の装置/センサは自動運転ECU30と専用の信号線によって直接的に接続されていてもよい。装置同士の接続形態は適宜変更可能である。
【0025】
周辺監視センサ11は、自車両の周辺環境を監視する自律センサである。周辺監視センサ11は、自車両周囲の検出範囲から予め規定された移動物体及び静止物体を検出可能である。自動運転システムSysは、複数種類の周辺監視センサ11を備えうる。自動運転システムSysは例えば周辺監視センサ11として、カメラ111を備える。
【0026】
カメラ111は、例えば車両前方を所定の画角で撮像するように配置された、いわゆる前方カメラである。カメラ111は、フロントガラスの車室内側の上端部や、フロントグリル、ルーフトップ等に配置されている。カメラ111は、画像フレームに対して認識処理を施すことで所定の検出対象物を検出する。カメラ111は、例えばディープラーニングを適用した識別器を用いて検出対象として登録されている物体を検出及び識別する。なお、ディープラーニングの手法としてはCNN(Convolutional Neural Network)やDNN(Deep Neural Network)などを採用することできる。
【0027】
カメラ111は、例えば、歩行者や、他車両などの移動体を検出する。また、カメラ111は、道路端や、路面標示、道路沿いに設置される構造物といった地物も検出する。路面標示とは、レーンの境界を示す車線区画線や、横断歩道、停止線、導流帯、安全地帯、規制矢印などである。道路沿いに設置される構造物とは、道路標識、ガードレール、縁石、電柱、信号機などである。カメラ111は、その他、前方車両のハザードランプや方向指示器といった灯火装置の点灯状態も検出しうる。
【0028】
自動運転システムSysは複数のカメラ111を備えていてもよい。例えば自動運転システムSysは、カメラ111として、前方カメラの他に、車両側方を撮像する側方カメラや、車両後方を撮像する後方カメラを備えていても良い。カメラ画像を解析することで検出対象物体を検出する機能は、例えば自動運転ECU30などが備えていても良い。自動運転システムSys内における機能配置は適宜変更可能である。カメラ111は、映像信号、及び、映像信号の解析結果の少なくとも一方を、検出情報として車両内ネットワークIvNに出力する。各周辺監視センサ11の検出結果は車両内ネットワークIvNを介して自動運転ECU30に入力される。
【0029】
自動運転システムSysは、周辺監視センサ11として、カメラ111の他、ミリ波レーダやLiDAR、ソナー等を備えていてもよい。ミリ波レーダは、ミリ波又は準ミリ波といった探査波を送受信することにより、自車両に対する物体の相対位置や相対速度を検出するデバイスである。LiDARは、Light Detection and Ranging、又は、Laser Imaging Detection and Rangingの略である。LiDARは、レーザ光を照射することによって、検出方向ごとの反射点の位置を示す3次元点群データを生成するデバイスである。LiDARはレーザレーダとも称される。ソナーは探査波としての超音波を送受信することで反射物の相対位置や相対速度を検出するデバイスである。ミリ波レーダやLiDAR、ソナーに関しても、自動運転システムSysはそれぞれ複数個備えていても良い。
【0030】
車両状態センサ12は、自車両の状態に関する情報を検出するセンサ群である。車両状態センサ12には、車速センサ、操舵角センサ、加速度センサ、ヨーレートセンサ等が含まれる。車速センサは、自車の車速を検出する。操舵角センサは、操舵角を検出する。加速度センサは、自車の前後加速度、横加速度等の加速度を検出する。ヨーレートセンサは、自車の角速度を検出する。車両状態センサ12は、検出対象とする物理状態量の現在の値(つまり検出結果)を示すデータを車両内ネットワークIvNに出力する。
【0031】
車両状態センサ12として自動運転システムSysが使用するセンサの種類は適宜設計されればよく、上述した全てのセンサを備えている必要はない。また、自動運転システムSysは車両状態センサ12として背もたれ角センサなどを備えていても良い。背もたれ角センサは、運転席の背もたれ角を検出するセンサである。自動運転ECU30には、背もたれ角センサ、又は運転席に設けられたシートモータから、運転席の背もたれ角を示す信号が入力されてもよい。
【0032】
ロケータ13は、GNSS(Global Navigation Satellite System)を構成する測位衛星から送信される航法信号を用いて自車両の位置座標を算出及び出力するデバイスである。ロケータ13は、GNSS受信機及び慣性センサ等を含む。ロケータ13は、GNSS受信機で受信する測位信号、慣性センサの計測結果、及び車両内ネットワークIvNに流れる車速情報等を組み合わせ、自車両の自車位置及び進行方向等を逐次算出し、それらのデータを自動運転ECU30に向けて出力する。
【0033】
地図記憶部14は、自動運転制御に必要な道路情報を含む、いわゆるHD(High Definition)マップのデータが保存されている記憶装置である。地図記憶部14に保存されている地図データは、道路の3次元形状や、レーン区画線などの路面標示の設置位置、交通標識の設置位置等が、自動運転等に必要な精度で含んでいる。
【0034】
地図記憶部14に保存される地図データは、例えば無線通信機15が地図サーバなどから受信したデータによって更新されうる。地図サーバは車両外部に配置された、地図データを配信するサーバである。地図記憶部14は、無線通信機15が地図サーバから受信した地図データを、データの有効期限が切れるまで一時的に保持するための記憶装置であっても良い。地図記憶部14は自動運転ECU30又はロケータ13に内蔵されていても良い。地図記憶部14が保持する地図データは、合流地点や信号機、ランドマーク等の地物データを含むことを条件として、ナビゲーション用の地図データであるナビ地図データであっても良い。
【0035】
無線通信機15は、自車両が他の装置と無線通信を実施するための装置である。無線通信機15は、セルラー通信を実施可能に構成されている。セルラー通信とは、例えばLTE(Long Term Evolution)や4G、5Gなどの規格に準拠した無線通信である。自車両は、無線通信機15の搭載により、インターネットに接続可能なコネクテッドカーとなる。例えば自動運転ECU30は、無線通信機15との協働により、地図配信サーバから現在位置に応じた地図データをダウンロードして利用可能となる。なお、無線通信機15は、広域無線通信規格に準拠した方式によって、無線基地局を介さずに、他の装置との直接的に無線通信を実施可能に構成されていても良い。つまり、無線通信機15は、セルラーV2X(PC5/Uu)を実施するように構成されていても良い。
【0036】
また、無線通信機15は、狭域通信を実施可能に構成されている。本開示における狭域通信とは、通信可能距離が数百m以内に限定される無線通信を指す。狭域通信の規格としては、例えばIEEE802.11p規格に対応するDSRC(Dedicated Short Range Communications)や、Wi-Fi(登録商標)などを採用可能である。狭域通信方式は、前述のセルラーV2Xであってもよい。無線通信機15はセルラー通信と狭域通信の何れか一方のみを実施可能に構成されていてもよい。
【0037】
無線通信機15は、地図サーバや、交通情報センタ、路側機、他車両といった外部装置から、交通情報として渋滞情報、事故情報、及び交通規制情報を取得する。渋滞情報は、渋滞区間の位置、及び渋滞長の少なくとも何れか一方を含む。例えば渋滞長は、その長さを示すパラメータであって、例えば1kmといった距離の概念で表現される。渋滞長は、渋滞区間に進入してから退出(離脱)するまでに要する時間である通過所要時間で表現されても良い。渋滞長は、渋滞区間の開始位置及び終了位置によって間接的に表現されても良い。渋滞情報は、渋滞の原因や、渋滞区間での平均速度などを含みうる。
【0038】
なお、ここでの渋滞とは、例えば、走行速度が所定の渋滞判定値以下となっている状態、又は、停止発進を繰り返す車列が1km以上かつ15分以上継続した状態とすることができる。渋滞判定値は、例えば40km/hである。もちろん渋滞判定値は20km/hや60km/hであっても良い。渋滞判定値は、道路ごとに設定されている最高速度(制限速度)に応じて動的に決定されても良い。渋滞判定値は、最高速度の4分の1などに設定されても良い。渋滞判定値は、自動車専用道路か、一般道かで異なる値が適用されても良い。自動車専用道路用の渋滞判定値は20km/hとする一方、一般道路用の渋滞判定値は10km/hであっても良い。ここでの自動車専用道路とは、歩行者や自転車の進入が禁止されている道路であって、例えば高速道路などの有料道路などを指す。
【0039】
事故情報は、交通事故が生じた地点の位置情報を含む。交通規制情報は、工事/事故によって車線規制が施されている区間の位置、及び、規制されているレーン番号を含む。また、交通規制情報は、強風などの気象理由や路面状態によって、最高速度が抑制されている区間の位置情報を含みうる。交通規制情報は、道路区間ごとの現在の最高速度を示す情報であってもよい。事故情報や交通規制情報の一部又は全部は、渋滞情報と統合された態様で配信されても良い。
【0040】
また、無線通信機15は、外部装置から、気象情報を取得する。気象情報は、直近所定時間以内の地点ごとの降水量、風速、気温などを含む。気象情報は、直近所定時間以内における雨雲の動きを示すデータであってもよい。無線通信機15が取得した種々の情報は、自動運転ECU30へと転送される。
【0041】
乗員状態センサ16は、少なくともドライバを含む、乗員の状態を検出するセンサである。自動運転システムSysは複数種類の乗員状態センサ16を備えうる。例えば自動運転システムSysは、乗員状態センサ16として乗員見守りカメラを備える。乗員見守りカメラは、少なくともドライバの顔部を撮像可能な位置および姿勢で、車室内に配置されている。例えば乗員見守りカメラは、ドライバの顔を撮影可能なように、例えば運転席のヘッドレスト部に光軸を向けた姿勢にて、ステアリングコラムカバーの上面や、インストゥルメントパネルの上面、フロントガラスの上端部等に配置されている。
【0042】
乗員見守りカメラは、撮影映像に含まれるドライバの顔画像に基づいてドライバの状態を逐次検出する。例えば乗員見守りカメラは、ドライバの状態として、ドライバの顔の向きや視線方向、瞼の開き度合い(いわゆる開眼度)等を逐次検出する。乗員状態センサ16としての乗員見守りカメラは、撮影画像から特定したドライバの状態を示す情報をドライバ状態データとして車両内ネットワークIvNへ逐次出力する。
【0043】
なお、乗員見守りカメラは可視光カメラであってもよいし赤外線カメラであってもよい。乗員見守りカメラは、仰向きで寝ているドライバの顔部を撮像可能なように、オーバーヘッドコンソールや、天井の中央部などに設けられていても良い。乗員見守りカメラは、助手席や後部座席に着座している人物の顔部を撮像可能な任意の位置に配置されうる。乗員見守りカメラは、ドライバの状態に加えて、助手席乗員の有無、及び、助手席乗員の状態も検出可能に構成されていてもよい。乗員見守りカメラは座席毎に設けられていてもよい。なお、カメラの映像信号に基づきドライバ等の状態を検出する機能は、カメラの外部、例えば自動運転ECU30が備えていても良い。
【0044】
自動運転システムSysは、乗員状態センサ16として、乗員見守りカメラの代わりに/並列的に、乗員見守りカメラ以外の生体センサを備えていても良い。例えば自動運転システムSysは乗員状態センサ16として、心拍センサや、脈波センサ、体温センサなどを備えていても良い。心拍センサ等は、運転席の背もたれ部やヘッドレストに内蔵されていても良いし、ステアリングに設けられていても良い。乗員状態センサ16は、ドライバの例えば手首等に装着されて使用されるウェアラブルデバイスであっていてもよい。ウェアラブルデバイスは、リストバンド型、腕時計型、指輪型、イヤホン型など、多様な形状のものを採用可能である。乗員状態センサ16としてのウェアラブルデバイスは、例えば無線通信機15を介して自動運転ECU30と相互通信可能に構成されている。ウェアラブルデバイスと自動運転ECU30との接続態様は無線接続であってもよいし、有線接続であっても良い。
【0045】
ボディECU17は、車両に搭載されたボディ系の車載機器を統合的に制御するECUである。ボディ系の車載機器には、シートモータなどが含まれる。シートモータは、運転席としての座席の前後位置や高さ、背もたれ角を変更するモータである。ボディECU17は、シートモータからの入力信号をもとに、現在の背もたれ角を示す信号を自動運転ECU30に向けて出力してもよい。
【0046】
車載HMI20は、乗員と自動運転システムSysとが情報をやり取りするためのインターフェース群である。車載HMI20は、ドライバへ向けて情報を通知するためのデバイスである報知デバイスとして、ディスプレイ21、及びスピーカ22を備える。また、車載HMI20は、乗員からの操作を受け付ける入力インターフェースとしての入力装置23を含む。
【0047】
自動運転システムSysは、ディスプレイ21として、ヘッドアップディスプレイ(HUD:Head-Up Display)、メータディスプレイ、及びセンターディスプレイのうちの1つ又は複数を備える。HUDは、フロントガラスの所定領域に画像光を投影することにより、ドライバによって知覚されうる虚像を映し出す装置である。メータディスプレイはインストゥルメントパネルにおいて運転席の正面に位置する領域に配置されたディスプレイである。センターディスプレイはインストゥルメントパネルの車幅方向中央部に設けられたディスプレイである。メータディスプレイ及びセンターディスプレイは、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイを用いて実現されうる。ディスプレイ21は自動運転ECU30から入力される制御信号及び映像信号に基づき、入力信号に応じた画像を表示する。
【0048】
スピーカ22は、自動運転ECU30から入力される信号に対応する音を出力する装置である。音との表現には、通知音のほか、音声や音楽などが含まれる。なお、自動運転システムSysは、報知デバイスとして、バイブレータやアンビエントライトなどを備えても良い。バイブレータは、ドライバに振動刺激を印加するためのデバイスであって、運転席の背もたれ部やシートベルトに設けられている。なお、バイブレータは、シートベルト自体を振動させることでドライバに振動刺激を印加させるデバイスであっても良い。アンビエントライトは、複数のLED(light emitting diode)によって実現される、発光色や発光強度を調停可能な照明装置であって、インストゥルメントパネル及びステアリングホイール等に設けられている。
【0049】
入力装置23は、自動運転システムSysに対するドライバの指示操作を受け付けるための装置である。入力装置23としては、ステアリングホイールのスポーク部に設けられたステアリングスイッチや、ステアリングコラム部に設けられた操作レバー、センターディスプレイに積層されたタッチパネルなどを採用可能である。自動運転システムSysは、複数種類のデバイスを入力装置23として備えていても良い。入力装置23は、ドライバの操作に対応する電気信号を操作信号として車両内ネットワークIvNに出力する。操作信号は、ドライバの操作内容、換言すれば指示内容を表す。自動運転システムSysは、入力装置23を介してレベル4自動運転の開始及び終了にかかる指示を受け付ける。自動運転の開始/終了指示は音声入力によって実施可能に構成されていても良い。マイクなどの音声入力にかかるデバイスも入力装置23に含めることができる。なお、車載HMI20と自動運転ECU30との間には、例えばHCU(HMI Control Unit)が介在していても良い。HCUは、ドライバへの情報通知を統合的に制御する装置である。
【0050】
自動運転ECU30は、周辺監視センサ11の検出結果などをもとに走行アクチュエータ18を制御することにより、運転操作の一部又は全部をドライバの代わりに実行するECUである。自動運転ECU30は自動運行装置とも称される。走行アクチュエータ18には例えば制動装置としてのブレーキアクチュエータや、電子スロットル、操舵アクチュエータなどが含まれる。操舵アクチュエータには、EPS(Electric Power Steering)モータが含まれる。なお、自動運転ECU30と走行アクチュエータ18との間には、操舵制御を行う操舵ECUや、加減速制御を行うパワーユニット制御ECU等、他のECUが介在していてもよい。
【0051】
自動運転ECU30は、プロセッサ31、メモリ32、ストレージ33、通信インターフェース34、及びこれらを接続するバス等を備えたコンピュータを主体として構成されている。メモリ32は書き換え可能な揮発性の記憶媒体であって例えばRAM(Random Access Memory)である。ストレージ33は、例えばフラッシュメモリなどの書き換え可能な不揮発性である。ストレージ33には、プロセッサ31によって実行されるプログラムである車両制御プログラムが格納されている。プロセッサ31が車両制御プログラムを実行することは、車両制御方法が実行されることに相当する。運転支援にかかる処理を実行するプロセッサは、自動運転にかかる処理を実行するプロセッサとは別に設けられていても良い。自動運転ECU30は複数のプロセッサ31を備えうる。
【0052】
自動運転ECU30は、自動化レベルが異なる複数の動作モードを備える。ここでは一例として自動運転ECU30は、完全手動モード、運転支援モード、及び自動運転モードを切替可能に構成されている。各動作モードは、ドライバが担当する運転タスクの範囲、換言すればシステムが介入する運転タスクの範囲が異なる。ここでのシステムとは、自動運転システムSys、実態的には自動運転ECU30を指す。動作モードは運転モードと言い換えることもできる。
【0053】
完全手動モードは、ドライバがすべての運転タスクを実行する動作モードである。完全手動モードは自動化レベル0に相当する。運転支援モードは、システムが加減速及び操舵操作の少なくとも何れか一方をシステムが実行する動作モードである。運転支援モードの操舵操作の実行主体はドライバであって、少なくともドライバは車両前方などの周辺を監視する必要があるモードである。完全手動モード及び運転支援モードは、ドライバが少なくとも一部の運転タスクを実行する運転モードである。そのため本開示では、完全手動モード及び運転支援モードを区別しない場合には乗員関与モードとも記載する。乗員関与モードは、自動運転モードの対義語としての手動運転モードと呼ぶこともできる。
【0054】
自動運転モードは、システムがすべての運転タスクを実行する動作モードである。ここでは一例として自動運転モードは、自動化レベル4に相当する制御を実行する動作モードとする。なお、自動運転モードは、レベル5の自動運転を実施するものであっても良い。自動運転モードは、ドライバの睡眠が許容される動作モードに相当する。自動運転モードは睡眠許可モードと呼ぶことができる。手動運転モードから自動運転モードへは、入力装置23から入力される操作信号に基づいて切り替えられうる。なお、自動運転ECU30は自動運転モードと運転支援モードの中間的な動作モードとして、レベル3自動運転を実施するレベル3モードを備えていてもよい。レベル3モードは睡眠禁止モードと呼ぶこともできる。
【0055】
自動運転モードにおいては、自動運転ECU30は、ドライバによって設定された目的地まで、道路に沿って自車両が走行するように、車両の操舵、加速、減速(換言すれば制動)等を自動で実施する。なお、自動運転モードは、ドライバ操作の他、システム限界や、ODDの退出等に起因して終了される。自動運転ECU30は、目的地へ向かう走行予定経路上の途中に設定される権限移譲予定地点まで自動運転を実施する装置であっても良い。権限移譲予定地点はODDの退出予定地点に相当する。
【0056】
ODDとしては、例えば(a)走行路が高速道路又は中央分離帯とガードレール等が整った自動車専用道路であること、(b)降雨量が所定の閾値以下であること、(c)全て/所定数以上の周辺監視センサ11が正常に動作していること等が挙げられる。走行路は、自車両が走行している道路を指す。その他、路上駐車車両が存在しないことなどもODDに含めることができる。自動運転可能/不可と判定する条件、換言すればODDを定義する詳細条件は、適宜変更可能である。
【0057】
<自動運転ECU30の構成について>
自動運転ECU30は、
図2に示すように、機能部として、情報取得部F1、環境認識部F2、乗員状態取得部F3、モード制御部F4、及び車両制御部F5を有する。各機能部は、プロセッサ31が自動運転プログラムを実行することによって実現される。もちろん、自動運転ECU30が備える機能の一部はIC等を用いて実現されていてもよい。
【0058】
情報取得部F1は、自動運転及び運転支援といった車両制御を実施するための多様な情報を取得する構成である。本開示における「取得」には、他の装置/センサから入力されたデータなどを元に内部演算によって生成/検出することも含まれる。システム内の機能配置は適宜変更であるためである。
【0059】
例えば情報取得部F1は、カメラ111を含む種々の周辺監視センサ11から検出結果(つまり、センシング情報)を取得する。センシング情報には、自車両周辺に存在する他の移動体や、地物、障害物などの位置や、移動速度、種別などが含まれる。また、情報取得部F1は、車両状態センサ12から、自車両の走行速度や加速度、ヨーレート、外部照度などを取得する。さらに、情報取得部F1は、ロケータ13から自車位置情報、及び、道路構造にかかる周辺地図情報を取得する。
【0060】
情報取得部F1は、無線通信機15との協働により、自車両が所定時間以内に通過予定の道路区間についての交通情報や気象情報を取得する。情報取得部F1は、無線通信機15との協働により、車々間通信にて前方車両から車車間通信にて送信されてきた車両情報を取得してもよい。車両情報には、ハザードランプの点灯状態や、ウィンカーの作動状態、ブレーキの作動状態、走行速度、位置情報などが含まれうる。
【0061】
情報取得部F1は、入力装置23からの信号に基づき、自動運転システムSysに対するドライバの操作なども取得する。例えば情報取得部F1は、自動運転の開始及び終了にかかる操作信号を入力装置23から取得する。
【0062】
情報取得部F1は、乗員状態センサ16から、ドライバの状態を判断するための情報(つまり判断材料)を取得する。ドライバの状態判断に利用可能な情報としては、例えば、脈拍数、心拍数、呼吸数、体動、目の開度、瞬きの実行頻度、瞬きの実施間隔のばらつき度合い、姿勢、体温、入眠からの経過時間などがある。脈拍数、心拍数、呼吸数などは、1分など、所定時間あたりの実行回数で表現されうる。
【0063】
情報取得部F1が逐次取得する種々の情報は、例えばメモリ32等の一時記憶媒体に保存され、環境認識部F2や乗員状態取得部F3などによって利用される。なお、各種情報は、種別ごとに区分されてメモリに保存されうる。また、各種情報は、例えば最新のデータが先頭となるようにソートされて保存されうる。取得から一定時間が経過したデータは破棄されうる。
【0064】
環境認識部F2は、情報取得部F1が取得した自車位置情報や周辺物体情報、交通情報、気象情報、地図データ等に基づいて、自車両の走行環境を認識する。例えば環境認識部F2は、カメラ111とミリ波レーダ112など、複数の周辺監視センサ11の検出結果を、所定の重みで統合するセンサフュージョン処理により、自車両の走行環境を認識する。
【0065】
走行環境には、車両周辺に存在する物体ごとの位置及び種別が含まれる。環境認識部F2は、走行環境として、移動体ごとの移動速度や移動方向なども取得する。環境認識部F2は、走行路の曲率、車線数、自車レーン番号、天候、路面状態、及び渋滞区間に該当するか否かなども取得する。自車レーン番号は、左又は右の道路端から何番目のレーンを走行しているかを示す。自車レーン番号の特定は、ロケータ13にて実施されてもよい。天候や路面状態は、カメラ111の認識結果と、気象情報とを組み合わせることにより特定可能である。道路構造に関してはカメラ111の認識結果の他、地図データを用いて特定されても良い。環境認識部F2は、道路構造や、天候、路面状態など、ODDに関連する車外環境情報を取得する。
【0066】
また、環境認識部F2は、自車両の走行経路上に存在する遅延要因を検出する構成として、遅延要因検出部F21を備える。遅延要因は、到着予定時刻に所定値以上の遅延を生じさせる事象を指す。遅延要因としては、
図3に例示するように、渋滞や、事故、速度制限強化などが挙げられる。渋滞は、車線規制/通行止めなどといった交通規制を伴わない通常渋滞と、車線規制に由来する車線規制渋滞と、通行止めに由来する通行止め渋滞に区分可能である。車線規制は、本来道路が備える車線の一部が封鎖されている状態を意味する。車線規制は、工事の他、事故が生じた場合や、マラソンなどの道路の一部を使用するイベントが行われる際にも実施されうる。通行止めは、道路が備えるすべての車線が封鎖されている状態を意味する。通行止めは事故が生じた場合の他、冠水、積雪、除雪等との天候に由来して実施されうる。速度制限強化は、天候等の事由により道路に設定されている最高速度が、本来の値よりも制限されていることを指す。本開示では、速度制限が強化されている区間を速度制限強化区間とも称する。
【0067】
遅延要因検出部F21は、交通情報センタ等から受信した情報をもとに遅延要因及びその種別を認識する。なお、遅延要因検出部F21は、電光掲示板の表示内容を認識することにより、渋滞等の遅延要因を検出しても良い。遅延要因は、渋滞の概念を用いずに、事故、工事、トラフィック過多、天気(豪雨、吹雪)といった渋滞/速度低下を生じさせる事象(真因)で表現されてもよい。
【0068】
なお、走行経路上に渋滞が存在する場合には、すでに自車両が渋滞に巻き込まれている場合も含まれる。環境認識部F2は、車速情報や、停車及び発進の実行頻度、周辺監視センサ11の検出結果を用いて渋滞に巻き込まれているか否かを判断してもよい。具体的に、自車両の車速が渋滞判定値以下である状態が所定時間(例えば5分)以上継続した場合に周囲は渋滞状態であると判定する。遅延要因検出部F21は、複数の前方車両から車車間通信で取得する車両情報を元に、渋滞区間や落下物、車線規制などを検出してもよい。
【0069】
乗員状態取得部F3は、情報取得部F1が取得している情報に基づいて、ドライバの状態を判定する。例えば乗員状態取得部F3は、ドライバの脈拍や目の開度、体温分布、姿勢などを複合的に用いてドライバが眠っているか否かを判定する。また、乗員状態取得部F3は、ドライバが眠っていると判定している場合、入眠からの経過時間である睡眠継続時間を計測する。睡眠継続時間は、ドライバが眠ったと判定した時点、つまり、覚醒状態から睡眠状態に移行したと判定した時点を基準として計測される。なお、ドライバが眠ったことは、目を閉じた状態が所定時間以上継続したことなど、ドライバの生体情報に基づいて特定されうる。睡眠継続時間は、ドライバがこれから寝ることをシステムに入力した時点を起算時点として計測されても良い。例えば、睡眠継続時間は、運転席を休憩姿勢に設定した時点を睡眠開始時点として計測されても良い。乗員状態取得部F3は、同乗者の有無や、同乗者が眠っているか否かも取得しうる。
【0070】
モード制御部F4は、情報取得部F1が取得した種々の情報に基づき、自動運転ECU30の動作モードを制御する。例えばモード制御部F4は乗員関与モードであって且つ走行環境がODDを充足している状態において、入力装置23から自動運転の開始指示信号が入力された場合には、自動運転モードへ移行することを決定する。そして、自動運転モードへ移行するように要求する信号を制御計画部F52に出力する。また、自動運転モード中において、環境認識部F2が認識している走行環境がODDを充足しなくなった場合、あるいは、所定時間以内に充足しなくなることが予見された場合には、乗員関与モードに移行することを決定し、その旨を制御計画部F52に通知する。
【0071】
さらに、モード制御部F4は、自動運転モード中、入力装置23から自動運転モードを終了するための操作信号や、ドライバによるオーバーライド操作が検知された場合には、自動運転モードを終了することを決定する。そして、制御計画部F52及び車両制御部F5に向けて手動運転モードに切り替えるための信号を出力する。オーバーライド操作とは、ハンドル/ペダル類といった操作部材に対する乗員の操作を指す。なお、自動運転モード終了時に遷移する動作モードは、完全手動モードであってもよいし、運転支援モードであってもよい。自動運転モード終了時に遷移先は、状況に応じて動的に決定されても良いし、ドライバによって予め登録されていても良い。
【0072】
車両制御部F5は、運転支援又は自動運転として実行する制御内容を計画し、当該計画に沿って、走行アクチュエータ18やディスプレイ21等を制御する。車両制御部F5はサブ機能部として、初期経路取得部F51、制御計画部F52、及び代替経路取得部F53を備える。
【0073】
初期経路取得部F51は、初期経路として、地図データに基づき、ドライバが設定した目的地までの走行経路を取得する構成である。ここでの初期経路とは、例えば、目的地の登録とともに設定された経路を指す。初期経路は、自動運転モードで走行する区間である自動運転区間、及び、手動運転モードで走行する手動運転区間を含みうる。初期経路は、自動運転で走行する範囲等を、ドライバが承認済みの経路に相当する。
【0074】
初期経路を取得するための処理は、目的地を取得することと、目的地までの経路候補を算出することと、経路候補を走行経路に設定するためのドライバ指示(合意)を取得することと、を含みうる。本開示の目的地は、最終的な目的地に限らず、立ち寄り地点などであっても良い。目的地や経路確定に関するドライバ指示は、入力装置23から入力される操作信号に基づき取得される。目的地までの経路算出は、自動運転ECU30自身が実施してもよいし、外部サーバが実施しても良い。経路探索の方法としては、例えば特許文献2-4に開示の方法など、多様な方法を援用可能である。初期経路取得部F51は、交通情報が示す道路区間ごとの平均走行速度などをもとに、目的地に到着する予定時刻である到着予定時刻も算出しうる。
【0075】
制御計画部F52は、自動運転モード時、環境認識部F2による走行環境の認識結果に基づき、自律的に走行させるための走行計画を生成する。走行計画は制御計画と呼ぶこともできる。走行計画には、時刻ごとの走行位置や目標速度、操舵角などが含まれる。すなわち、走行計画には、算出した経路における速度調整のための加減速のスケジュール情報や、操舵量のスケジュール情報を含みうる。制御計画部F52は、交通情報が示す道路区間ごとの平均走行速度などを用いて地点ごとの目標速度などを設定しても良い。
【0076】
制御計画部F52は、目的地に到着する予定時刻である到着予定時刻を随時更新しうる。例えば遅延要因が検出された場合には、遅延要因の影響を加味した到着予定時刻を算出する。車両制御部F5は、算出した到着予定時刻をディスプレイ21に随時表示する。
【0077】
本開示ではドライバが眠る前に算出及び表示していた到着予定時刻を、睡眠前予定時刻とも称する。睡眠前予定時刻はドライバに通知済みの予定時刻、換言すれば、ドライバが承認済みの予定時刻である。また本開示では、遅延要因が検出された時点以降において、遅延要因の影響を加味して算出された到着予定時刻を遅延予定時刻とも称する。遅延予定時刻もまた、例えば5分や15分などの所定間隔で更新されうる。制御計画部F52は、睡眠前予定時刻を基準として、遅延要因による到着予定時刻の変動幅(遅れ度合い)である到着遅延時間を逐次算出する。到着遅延時間は、睡眠前予定時刻と最新の遅延予定時刻との差分に相当する。なお、遅延要因が検出された時点においてドライバが起きている場合には、到着遅延時間は、遅延要因が検出される前に算出/表示した到着予定時刻を基準として算出されればよい。他の態様として到着遅延時間は、初期経路算出時に表示した到着予定時刻である初期予定時刻を基準として算出されても良い。
【0078】
制御計画部F52は、車両の走行に直接的に関係する制御計画の他に、ディスプレイ21などの報知デバイスを用いた乗員への通知処理に係る計画も策定する。例えば制御計画部F52は、車線変更や減速などといった、まもなく開始するアクションの予告や、遅延要因の通知(検出報告)を行うタイミングを、状況に乗じて決定する。つまり、制御計画部F52は、遅延要因の通知にかかる報知デバイスの制御計画も作成する。
【0079】
車両制御部F5は、制御計画部F52で策定された制御計画に基づく制御指令を生成し、走行アクチュエータ18やディスプレイ21等へ向けて逐次出力する。また、車両制御部F5は、制御計画部F52の計画や外部環境に基づき、方向指示器やヘッドライト、ハザードランプ等の点灯状態も、走行計画や外部環境に応じて制御する。
【0080】
代替経路取得部F53は、自動運転を実施中に、遅延要因検出部F21にて渋滞等の遅延要因が検出された場合に、地図データを用いて到着遅延時間を抑制可能な代替経路を探索する構成である。代替経路取得部F53は、
図4に例示する手順に沿って、代替経路探索処理を実行する。代替経路探索処理は、代替経路を取得するための一連の処理である。
図4に示すフローチャートは例えば到着遅延時間が、所定のリルート試行閾値以上となる遅延要因が検出された場合に実行されうる。リルート試行閾値は、例えば30分や1時間などである。リルート試行閾値は、システム設計値であってもよいし、所定の設定変更画面を介してドライバによって指定された値であってもよい。
【0081】
図4に示すように代替経路探索処理は、ステップS101~S107を備えうる。ステップS101は、自車両の現在位置や、目的地、遅延区間の位置情報などといった経路探索に使用する種々の演算パラメータを読み出すステップである。本開示での遅延区間とは、遅延要因が存在する区間を指す。
【0082】
ステップS102は、ステップS101で読み出したパラメータと地図データとを用いて代替経路の候補を探索するステップである。代替経路の候補は、距離優先、時間優先、自動運転優先など、それぞれ異なる観点から複数の経路が算出されうる。現在位置と目的地に係る道路網の構成によっては、ステップS102の結果として、代替経路候補は複数算出されることがある。また、ステップS102の結果として、代替経路候補は1つも発見されないことも有る。ステップS102で算出される代替経路候補は、少なくとも現在位置から目的地に到達可能な経路であれば良い。もちろん、ステップS102で算出する経路候補は、ステップS103以降で検討される、到着時刻や自動運転の継続性などの条件を満たすものであっても良い。
【0083】
ステップS103では、代替経路の候補が少なくとも1つ発見されたか否かを判定する。代替経路の候補が少なくとも1つ発見されている場合、代替経路取得部F53は、ステップS104を実行する。一方、代替経路が1つも発見されなかった場合には(ステップS103 NO)、代替経路はないと結論づける(ステップS107)。なお、代替経路が1つも無い場合とは、例えば、現在位置から所定距離以内に分岐路が存在しない場合、或いは、最寄りの分岐点が遅延区間の通過後に存在する場合などである。
【0084】
ステップS104は、ステップS102で発見された代替経路候補のなかに、到着遅延時間を抑制可能な経路があるか否かを判定するステップである。到着遅延時間を抑制可能な経路がなかった場合には(ステップS104 NO)、代替経路はないと結論づける(ステップS107)。例えばいずれの候補も、到着予定時刻が遅延予定時刻よりも遅い場合には、代替経路はないと判断される。
【0085】
また、到着予定時刻を早められる代替経路候補があっても、その代替経路候補による到着時刻の短縮量が所定の短縮閾値未満である場合には、当該候補は不採用とする(破棄する)。本開示では、到着遅延時間を抑制(短縮)できる時間の長さを遅延時間抑制量とも記載する。代替経路候補の遅延時間抑制量は、遅延予定時刻と、当該代替経路候補での到着予想時刻との差に相当する。短縮閾値は、例えば15分や30分、45分などに設定されている。短縮閾値は、経路変更する価値があるとドライバに理解される見込みがある大きさに設定されうる。短縮閾値もまた、設計された固定値であってもよいし、ドライバが設定した値であってもよい。短縮閾値は0分であってもよい。
【0086】
このようなステップS104は、遅延時間抑制量が所定値以上である代替経路候補を探索するステップに相当する。ステップS104の判定処理の結果として、遅延時間抑制量が短縮閾値以上となる候補が少なくとも1つある場合には、当該候補を対象として、代替経路取得部F53はステップS105を実行する。
【0087】
ステップS105は、ステップS104の選別処理の結果として残っている代替経路候補の中に、自動運転モードを継続可能な時間であるAD継続可能時間が、所定の/動的に定まるAD継続必要時間以上となる経路が存在するか否かを判定するステップである。代替経路候補のAD継続可能時間は、代替経路候補上のODD退出地点に自車両が到達するまでの残り時間である。AD継続可能時間は、代替経路候補上のODD退出地点までの残り距離と、当該地点までの走行速度の予定値によって定まる。
【0088】
なお、本開示における「AD」は、自動運転を意図するものであって、例えばautonomous/ automated drivingの略である。本開示において自動運転を意図する「AD」との記載は、例えばSD(self-driving)や、AO(automatic operation)など、自動運転を意図する他の表現に変更して解釈可能である。
【0089】
ステップS105の判定に使用するAD継続必要時間は、ドライバが自動運転の継続を希望する時間を表すパラメータである。プロセッサ31は、ドライバが寝ている場合、最小睡眠時間から睡眠継続時間を減算した値をAD継続必要時間に設定する。最小睡眠時間は、ドライバが希望する睡眠時間を示すパラメータである。最小睡眠時間は、例えば30分や60分、90分などに設定されている。最小睡眠時間は、設定画面を介してドライバによって任意の値に設定されうる。仮に最小睡眠時間が60分に設定されている構成においては、睡眠継続時間が50分である場合、ステップS105で使用されるAD継続必要時間は10分に設定される。故に、ステップS105において代替経路取得部F53は、自動運転を10分以上継続可能な代替経路候補を探索する。なお、ドライバが起きている場合、プロセッサ31は、AD継続必要時間を0分や5分などの所定値に設定する。ドライバが起きている場合、プロセッサ31は、次に説明するように予め設定されている最小継続時間から、自動運転を開始してからの経過時間を減算した値をAD継続必要時間に設定しても良い。
【0090】
他の態様として、代替経路取得部F53はドライバが寝ているか否かによらず、ドライバ/設計者が設定した最小継続時間から、自動運転を開始してからの経過時間を減算した値を、AD継続必要時間として使用してもよい。最小継続時間は、いったん自動運転を開始した場合に、所定の非常事態が生じない限り自動運転が継続されるべき時間の最小値に相当するパラメータである。ここでの非常事態とは、他車両との接触や、強引な割り込み、緊急車両の接近、許容範囲を超えた豪雨などを指す。非常事態には、ODD外となりうる事象が含まれる。仮に最小継続時間が30分に設定されている構成において、自動運転を開始してからの経過時間が15分である場合、ステップS105で使用されるAD継続必要時間は30分となりうる。その他、AD継続必要時間は、例えば30分や1時間など、ドライバの状態や、自動運転を開始してからの経過時間によらずに、一定の値が適用されてもよい。
【0091】
代替経路取得部F53は、遅延時間抑制量が短縮閾値以上であって、かつ、自動運転をAD継続必要時間以上継続可能な経路がなかった場合には(ステップS105 NO)、代替経路はないと結論づける(ステップS107)。一方、代替経路取得部F53は、到着遅延時間を短縮閾値以上短縮可能であって、かつ、自動運転をAD継続必要時間以上継続可能な経路があった場合には(ステップS105 YES)、当該経路候補を代替経路として採用する(ステップS106)。なお、上記の採用条件を充足する代替経路が複数存在する場合、代替経路取得部F53は、遅延時間抑制量が最も大きい経路、又は、AD継続可能時間が最も長い経路を代替経路に採用する。遅延時間抑制量とAD継続可能時間のどちらのパラメータを優先させるかはドライバ/設計者によって選択されうる。
【0092】
図5は上述した代替経路の選択方法を概念的に示した図であって、
図5に示す実線は自動運転で走行可能な区間(自動運転区間)を示し、破線は乗員関与モードで走行する必要が有る区間(手動運転区間)を示している。図中にR0で示す経路は初期経路であり、R1で示す経路は第1代替経路候補を示している。R2は第2代替経路候補を、R3は第3代替経路候補を示している。
図5のルート上に配置した、丸型のマーク(点)は分岐点を示している。また、ひし形のマークは、ODDの退出地点、すなわち自動運転を終了する地点を示している。ODDの退出地点とは、例えば自動車専用道路から一般道におりる出口(いわゆるインターチェンジ)や、道路が備える車線の数が2つ以上から1つに減少する地点などに対応する。
【0093】
第1代替経路候補R1は、渋滞区間の途中に存在する分岐点BP1以降において、初期経路R0とは異なる道路を通行する経路である。例えば分岐点BP1は一般道路に降りる高速道路の出口である。第1代替経路候補R1は、分岐点BP1以降においては手動運転モードで走行する経路である。例えば第1代替経路候補R1は、遅延時間抑制量が5分であり、AD継続可能時間が35分となる経路候補である。
図5に示すDTRは遅延時間抑制量を、ADCTはAD継続可能時間を、それぞれ意味する。例えばDTR=5とは遅延時間抑制量が5分であることを意味する。
【0094】
第2代替経路候補R2は、分岐点BP1よりも手前側にある分岐点BP2において、初期経路R0とは異なる経路を採用する経路候補である。例えば分岐点BP2は別の高速道路へとつながるジャンクションである。第2代替経路候補R2では、分岐点BP2以降においても、ある程度は自動運転モードを維持される。例えば第2代替経路候補R2は、遅延時間抑制量が40分であり、AD継続可能時間が25分となる経路候補である。
【0095】
第3代替経路候補R3は、分岐点BP1、BP2の何れとも異なる分岐点BP3において、初期経路R0とは異なる経路を採用する経路候補である。分岐点BP3もまた、別の高速道路へとつながるジャンクションである。第3代替経路候補R3では、分岐点BP3以降においても、ある程度は自動運転モードを維持される。例えば第3代替経路候補R3は、遅延時間抑制量が30分であり、AD継続可能時間が40分となる経路候補である。
【0096】
図5に示す経路候補が得られている状態において、短縮閾値が30分、AD継続必要時間が30分に設定されている場合、代替経路取得部F53は第3代替経路候補R3を代替経路として採用する。一方、短縮閾値が30分、AD継続必要時間が20分に設定されている場合には、より遅延時間抑制量(DTR)が大きい第2代替経路候補R2を代替経路として採用しうる。
【0097】
なお、以上では遅延要因として渋滞が存在する場合を例示したが、これに限らない。代替経路取得部F53は、速度制限強化区間が検出されている場合においても、同様に代替経路を探索しうる。
【0098】
<自動運転中の遅延要因応答処理について>
ここでは自動運転ECU30が実施する、自動運転中の遅延要因応答処理について
図6に示すフローチャートを用いて説明する。
図6に示す遅延要因応答処理は、例えば自動運転中において例えば1分や5分ごとなど、所定の周期で開始される。
図6に示す遅延要因応答処理は、ステップS201~S210を備える。以下のステップの実施主体としてのプロセッサ31との記載は、適宜、情報取得部F1、環境認識部F2、乗員状態取得部F3、モード制御部F4、又は車両制御部F5と読み替える事ができる。
【0099】
まずステップS201は情報取得部F1が以降の処理で使用する種々の情報を取得するステップである。例えば情報取得部F1は、交通情報、気象情報、周辺車両の挙動、自車両の挙動、ドライバの状態情報などを取得する。周辺車両の挙動とはハザードランプやブレーキランプ、ウィンカーの点灯状態、車速などを指す。自車両の挙動とは自車両の車速、停止/発進の実施頻度などを指す。
【0100】
ステップS202は遅延要因検出部F21が、ステップS201で取得された情報に基づき、自車両の走行経路上に、渋滞などの遅延要因が存在するか否かを判定するステップである。例えば遅延要因検出部F21は、交通情報センタから配信される交通情報に基づき、走行経路上に渋滞又は速度制限強化区間が存在するか否かを判定する。走行経路上に渋滞が存在する場合には、渋滞を構成する車列に自車両が並ぶ前の状態のほか、すでに渋滞に巻き込まれている場合も含まれる。遅延要因検出部F21は、走行路が自動車専用道路である場合には、前方車両が停止していること、又は、先行車両又は自車両の車速が渋滞判定値以下となったことに基づいて、遅延要因が存在すると判定しても良い。ステップS202の判定結果はメモリ32に保存される。
【0101】
プロセッサ31はステップS202にて走行経路上に遅延要因が存在すると判定した場合、ステップS203を実行する。一方、走行経路上に遅延要因が存在しないと判定している場合には本フローを終了する。なお、本ステップで想定する走行経路とは、ドライバが承認済みの経路である。本ステップにおいて想定される走行経路とは例えば初期経路である。仮に初期経路の設定後にドライバの指示に基づき、再探索が行われて経路変更がなされた場合には、当該変更後の走行経路が本ステップの対象とする走行経路に相当する。ドライバの合意が得られている経路、実態的には、システムからの提案に対して、OKボタンの押下など、ドライバから肯定的な回答が得られている経路が承認済み経路に相当する。
【0102】
ステップS203は、乗員状態取得部F3がステップS201で取得されたドライバの状態情報に基づいて、ドライバが眠っているか否かを判定するステップである。ステップS203においてドライバが起きていると判定された場合、プロセッサ31はステップS204を実行する。一方、ドライバが眠っていると判定した場合には、プロセッサ31はステップS205以降の処理を実行する。
【0103】
ステップS204は、車両制御部F5が覚醒時用処理を行うステップである。覚醒時用処理は、ドライバが起きていることを前提とした態様で、遅延要因の存在等を通知する処理である。例えば車両制御部F5は、覚醒時用処理として、遅延要因の種別や、予測される到着遅延時間、又は、遅延予定時刻を示す画像である遅延要因通知画像をディスプレイ21に表示する。遅延要因通知画像は、遅延要因の種別等を示すテキストメッセージを含みうる。遅延要因通知画像は、遅延要因を表現したピクトグラム、すなわちアイコン画像であってもよい。
【0104】
遅延要因通知画像は、所定の通知音とともに表示されても良い。なお、覚醒時用処理において、音声メッセージの出力は、乗員に煩わしさを与える可能性を考慮して省略されてもよい。ただし、到着遅延時間が所定の許容遅延値(例えば30分)を超過している場合には、音声メッセージが出力されても良い。
【0105】
覚醒時用処理は、走行経路の変更(リルート)を提案することを含んでいても良い。リルート提案は、遅延区間の一部又は全部を避ける別の経路を採用することを提案する処理である。プロセッサ31はリルート提案に対して入力装置23から走行予定経路を変更することを容認する旨の応答信号が入力された場合、新たな経路での自動運転を継続する。なお、覚醒時用処理で提案する経路候補は、前述の代替経路と同じであっても良い。また、覚醒時用処理で提案する経路候補は、AD継続可能時間に関する条件を緩和した経路であってもよい。例えば、プロセッサ31は、AD継続可能時間に関わらず、遅延時間抑制量が最も大きい経路を提案してもよい。プロセッサ31は遅延時間抑制量を優先させた代替経路候補と、AD継続可能時間を優先させた代替経路候補をそれぞれ選択肢として提示してもよい。
【0106】
ステップS205は、代替経路取得部F53が代替経路探索処理を実行するステップである。代替経路探索処理の結果として、代替経路が発見された場合には(ステップS206 YES)、プロセッサ31はステップS208以降のシーケンスを実行する。一方、代替経路が発見されなかった場合には(ステップS206 NO)、プロセッサ31はステップS207を実行する。
【0107】
ステップS207はプロセッサ31が睡眠時通知処理を行うステップである。睡眠時通知処理は、ドライバが眠っていることを前提とした態様で、遅延要因についての情報を通知する処理である。ドライバが眠っている場合、大きな通知音/音声メッセージを出力すると、ドライバを起こすこととなり、ドライバに不快感を与える恐れがある。そのような事情から、睡眠時通知処理では、控えめな態様で遅延要因の情報を通知する。控えめな態様とは、眠っている乗員を起こさないこと、あるいは、乗員に煩わしさを与えないことを狙った通知態様を指す。控えめな態様での通知とは、画像表示が主体となる態様での通知であって、ドライバに振動を印加せず、かつ、出力音量を所定値以下とする態様を指す。出力音量を所定値以下とすることには、音を出力しないことを含む。控えめな態様での通知は、煩わしさを与えない程度の音量での通知音の出力を伴っていても良い。煩わしさを与えない程度の音量とは、例えば55dB、又は、車内の騒音レベル+3dBを指す。控えめな態様とは、目立たない態様と言い換えることもできる。
【0108】
また、プロセッサ31は、ステップS207において到着遅延時間が所定値(例えば1時間)以上である場合には、目立つ態様で遅延要因の情報を通知しても良い。目立つ態様とは、ドライバを起こすことを意図した態様であって、画像表示に加えて、所定値以上での音量での音声メッセージ/効果音の出力、又は、振動の印加を伴う。目立つ態様とは、控えめな態様での通知よりも相対的に刺激を弱めた態様を指す。乗員に与える刺激は強めることは、例えばスピーカ22からの出力音量を大きくすることや、ディスプレイ21や車内照明装置から出力させる光強度を大きくすること、バイブレータに発生させる振動を強めることで実現されうる。本実施形態の自動運転ECU30は、目立つ態様と控えめな態様の2段階で通知態様を制御可能に構成されている。もちろん、プロセッサ31は、それぞれ刺激強度が異なる3つ以上の通知態様から状況に応じたものを選択可能に構成されていてもよい。
【0109】
なお、プロセッサ31は、到着遅延時間が所定値以上であっても、睡眠継続時間が最小睡眠時間以上となるまでは目立つ態様での遅延要因の通知を保留としてもよい。当該制御設定によれば、ドライバはある程度睡眠時間を確保することができ、通知によってドライバを起こした際に煩わしさを感じさせる恐れを低減できる。
【0110】
さらに、プロセッサ31は到着遅延時間が所定の通知閾値未満であって、ドライバが睡眠中である場合には、何も通知せずに本フローを終了しても良い。通知閾値は例えば15分や30分に設定されている。その他、プロセッサ31は、同乗者が存在し、かつ、同乗者が起きていることを検出している場合には、控えめな態様で遅延要因の情報を通知してもよい。
【0111】
ステップS208は、ドライバの承認を得ることなく(つまり自動的に)、走行経路を代替経路へと変更するステップである。ドライバの承認を取得しないことは、当該経路変更時において、ドライバの承認を得るための操作/発話を要求しないことに相当する。具体的には、ステップS208は、代替経路の概要/詳細を示す画像を表示せず、かつ、代替経路に切り替えてもよいかどうかの問い合わせも実施せずに、経路変更するステップとすることができる。なお、走行経路を代替経路に切り替えた事自体は、控えめな態様で通知しても良い。もちろん、当該通知は省略されても良い。また、プロセッサ31は、同乗者が存在し、かつ、同乗者が起きていることを検出している場合、控えめな態様で、遅延要因に由来して走行経路を変更したことを通知してもよい。当該構成によれば、システムが自動的に進路/挙動を変えたことに対して、同乗者に不安を感じさせる恐れを低減できる。
【0112】
ステップS209は、ドライバが起きたかどうかを判断するステップである。例えばドライバの目の開度が所定値以上となったこと、運転席の背もたれ角が所定値以上に復元されたことなどに基づいてプロセッサ31はドライバの覚醒を検知する。ドライバの覚醒が確認できた場合(ステップS209 YES)、プロセッサ31はステップS210を実行する。ステップS209はドライバの覚醒を待機するステップと解することができる。ステップS209は所定時間で繰り返し実行されうる。
【0113】
ステップS210は、覚醒したドライバに対して、走行経路を変更したことを報告するステップである。経路変更の報告は、ディスプレイ21への画像表示や、アナウンス出力によって実施される。報告内容には、変更前の走行経路に存在していた遅延要因の種別や、到着遅延時間の長さ(つまり影響度)などが含まれることが好ましい。
【0114】
<上記構成の効果>
以上の構成では、自動運転中かつドライバが寝ている状況において遅延要因が検出された場合、適正な(合理的な)代替経路が存在する場合には、ドライバの承認を得ることなく走行経路を変更する。当該構成によれば、ドライバの睡眠を邪魔しないため、自動運転の利便性を高めることができる。換言すれば、睡眠中のドライバを起こすことによって、ドライバに煩わしさを与える恐れを低減できる。
【0115】
また、走行経路を自動変更した場合には、ドライバが覚醒次第、その旨の報告を行う。ドライバが覚醒したことが確認できたタイミングで経路変更の報告を行う事により、経路変更に対する納得感やシステムへのドライバの信頼性を高めることができる。
【0116】
さらに、本実施形態で採用する代替経路は、遅延時間短縮量が所定値以上であり、かつ、AD継続可能時間も確保される経路である。つまり、合理的な経路である。故に、ドライバの承認を得ることなく、経路変更を実施したとしても、ドライバに不快感、不信感を覚えさせる恐れを低減できる。
【0117】
また、本実施形態では適正な代替経路が存在しない場合であって、予測される到着遅延時間が所定値以上である場合には、速やかに/最小睡眠時間が達成されたタイミングで目立つ態様で遅延要因の存在を通知する。当該構成によれば、ドライバが寝ている間に到着時刻が大幅に遅れる恐れを低減できる。
【0118】
以上、本開示の実施形態を説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、以降で述べる種々の変形例も本開示の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。例えば下記の種々の補足や変形例などは、技術的な矛盾が生じない範囲において適宜組み合わせて実施することができる。なお、以上で述べた部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略することがある。また、構成の一部のみに言及している場合、他の部分については上記説明を適用することができる。
【0119】
<ドライバ睡眠中の遅延要因応答処理の他の例について>
また、プロセッサ31は遅延要因の種類(タイプ)に応じて制御方針を変更してもよい。制御方針を変更することは、自動運転を実施する上での制御設定あるいは制御条件を変更することに対応する。例えばプロセッサ31は、検出された遅延要因が渋滞である場合には、遅延要因が速度制限強化である場合に比べて、経路変更を積極的に実施するように、代替経路の採用条件を緩和してもよい。
【0120】
より具体的には、プロセッサ31は遅延要因が渋滞である場合には、遅延要因が速度制限強化である場合に比べて、短縮閾値が所定量小さい値に設定しても良い。短縮閾値やAD継続必要時間といった閾値を小さくすることが代替経路の採用条件を緩和することの一例に相当する。本開示ではドライバ睡眠中に通常渋滞が検出された場合に適用される代替経路の採用条件を通常条件と称するとともに、通常条件よりも緩和された採用条件を緩和条件と称する。緩和条件は、例えば、短縮閾値を0、又は、通常条件の半分に設定した採用条件である。緩和条件においてもAD継続必要時間は、通常条件と同じ値が適用されてもよい。当該条件設定によれば、緩和条件を適用する場合においても、ドライバが希望する睡眠時間は確保されうる。
【0121】
また、プロセッサ31は、検出された遅延要因が速度制限強化である場合には、なるべく現行経路を維持するよう、代替経路の採用条件を厳しくしても良い。例えば、プロセッサ31は、検出された遅延要因が速度制限強化である場合には、短縮閾値を通常条件としての設定値よりも所定量大きくしてもよい。
【0122】
さらに、プロセッサ31は、遅延要因が全車線を塞ぐものであるか、一部の車線のみを塞ぐものであるかによって代替経路の採用条件を変えても良い。全車線を塞ぐ事象とは、いわゆる通行止めであって、全車線を塞ぐ大規模な事故/工事である。一部の車線のみを塞ぐ事象とは、いわゆる車線規制であって、比較的小規模な事故/工事である。なお、落下物もまた、一部の車線のみを塞ぐ遅延要因に相当しうる。プロセッサ31は遅延要因が全車線を塞ぐものである場合には、一部の車線のみを塞ぐ事象である場合よりも、経路変更を積極的に実施するように、代替経路の採用条件を緩和してもよい。一方、プロセッサ31は遅延要因が一部の車線のみを塞ぐものである場合、換言すれば通行可能な車線が残っている場合には、代替経路の採用条件として通常条件を適用してもよい。当該構成によれば、通行止め相当の事象が生じている場合には代替経路が採用されやすくなり、結果として、到着遅延時間を短縮可能となりうる。また、車線規制相当の事象が生じている場合には現行経路が維持されるように作用し、ドライバにとって不本意な経路変更を実施してしまう恐れを低減できる。
【0123】
加えて、プロセッサ31は、検出された遅延要因が一部の車線のみを塞ぐものである場合、遅延区間の所定距離手前までは、残存車線よりも消失車線を優先的に走行する制御計画を作成しても良い。消失車線とは、交通規制によって通行不能に設定されている車線を指す。消失車線は規制車線とも呼ぶことができる。残存車線は、消失車線に並列する、通行可能な車線を指す。遅延区間の手前において、消失車線を走行する他車両は、順次、残存車線へと移動していくため、残存車線よりも消失車線のほうが巡航速度は大きくなる傾向がある。
【0124】
本制御方針は上記の傾向に着眼して創出されたものであって、検出された遅延要因が一部の車線のみを塞ぐものである場合には、遅延区間の所定距離手前まではあえて消失車線を走行する制御を実施することにより、到着遅延時間の短縮効果が期待できる。なお、このように走行予定の車線を変更することも、走行経路を変更することの概念に含めることができる。もちろん、他の態様にとしてプロセッサ31は、検出された遅延要因が一部の車線のみを塞ぐものである場合、残存車線を優先的に走行する制御計画を作成しても良い。当該構成によれば、遅延区間直前で車線変更の実施を回避可能となる。
【0125】
なお、通常渋滞時には、全車線が概ね等しく混雑する。プロセッサ31は、遅延要因が通常渋滞か車線規制渋滞かによって自動運転の制御方針/代替経路の採用条件を変えても良い。プロセッサ31は、遅延要因が通常渋滞である場合には走行経路を変更する一方、遅延要因が車線規制渋滞である場合には現行経路を維持しても良い。
【0126】
ところで検出された遅延要因が事故である場合、通常渋滞に比べて急速に渋滞長が長くなることがある。換言すれば、事故が発生した場合には到着遅延時間が時々刻々と増大しうる。そのような事情から、プロセッサ31は、遅延要因として走行経路上の事故が検出された場合、当該検出された時点で予測される遅延時間抑制量/到着遅延時間の大きさによらずに、代替経路に自動変更するか、リルート提案を実施しても良い。
【0127】
図7は上述した技術思想に対応するプロセッサ31の作動の一例を示すフローチャートである。
図7に示すフローチャートは、ドライバ睡眠中における遅延要因応答処理の変形例であって、例えばステップS203が肯定判定された場合の、ステップS205以降のシーケンスとして実行されうる。
図7に示すフローチャートが備える各ステップS301~S305は、図中の矢印の向きにしたがってプロセッサ31により順に実行される。
【0128】
ステップS301は、検出された遅延要因が事故/事故による渋滞であるか否かを判定するステップである。検出された遅延要因が事故/事故による渋滞である場合(ステップS301 YES)、緩和条件で代替経路の探索を行う(ステップS302)。当該構成によれば積極的に代替経路が採用されるようになる。なお、ステップS302にて代替経路が発見されなかった場合の処理は、ステップS207と同様とすることができる。
【0129】
一方、プロセッサ31は、検出された遅延要因が事故/事故による渋滞ではない場合(ステップS301 NO)、ステップS303を実施する。ステップS303は、検出されている遅延要因が速度制限強化であるか否かを判定するステップである。検出されている遅延要因が速度制限強化である場合(ステップS303 YES)、現行経路を維持することを決定するとともに、通知予約を実施する(ステップS304)。
【0130】
ドライバ睡眠中に検出された遅延要因が速度制限強化である場合には現行経路を維持する構成によれば、車線変更等の実施頻度を抑制可能となる。なお、通知予約は、ドライバの睡眠継続時間が最小睡眠時間以上となったタイミングで、目立つ態様にて遅延要因の存在を通知することをスケジュールすることを意味する。速度制限が強化されているということは、雨や霧など、自動運転の継続性を不安定にする環境要素が存在することを意味する。睡眠継続時間が最小睡眠時間に達したタイミングでドライバを起こす構成によれば、システム限界によってドライバに運転権限を移譲する必要が生じた時点においてまだドライバが寝ている可能性を低減できる。その結果、仮にドライバに運転権限を移譲する必要が生じた場合にも、スムーズに運転権限の受け渡しが実施可能となりうる。なお、ステップS304は、通常条件よりも短縮閾値を所定量大きくした厳格化条件にて代替経路探索処理を実施するステップであってもよい。
【0131】
一方、検出されている遅延要因が速度制限強化ではない場合(ステップS303 NO)、プロセッサ31はステップS305を実施する。ステップS305は、検出された遅延要因が通常渋滞や車線規制渋滞である場合の処理である。ステップS305では、プロセッサ31は通常条件で代替経路探索処理を実施する。
【0132】
以上で述べたように、検出された遅延要因の種類に応じて異なる制御方針を適用する構成によれば、ドライバにとってより合理的な走行経路が採用されうる。その結果、ドライバの利便性が向上しうる。
【0133】
<代替経路を取得できなかった場合の制御方針について>
車両制御部F5としてのプロセッサ31は、代替経路を取得できなかった場合(ステップS206 NO)、睡眠時通知処理とともに/その代わりに、自動運転を実施する上での制御条件を変更してもよい。自動運転の制御条件を変えることは、制御目標とする車間距離や、自動的な車線変更を実施する条件、許容する加減速度の上限値、許容するヨーレートの上限値などの少なくとも一部を基本設定値から変更することを指す。基本設定値は、代替経路が見つかった場合や、遅延要因が存在しない場合など、いわゆる通常の自動運転を実施する際に適用される設定値を指す。基本設定値は自動運転ECU30が起動した際に適用される設定値と解することもできる。
【0134】
例えばプロセッサ31は、
図8に示すようにドライバ睡眠中において代替経路が発見されなかった場合(ステップS401 NO)、車線変更を積極的に実施するよう、車線変更の実施条件を緩和してもよい(ステップS402)。車線変更の実施条件を構成する項目としては、自車速と待機時間とが存在しうる。自車速にかかる基本設定値とは、車線変更の実施を許容する車速の下限値を指す。例えば車線変更のための自車速に対する基本設定値が80km/hである場合には、当該設定値を0km/hや10km/hなど、渋滞中においても実施可能な値に変更する。当該構成は車線変更を実施する車速の下限値を第1速度から、第1速度よりも小さい第2速度に変更することに相当する。
【0135】
また、車線変更が実施できるか否かは、移動先の車線の交通状況による。車線変更のための待機時間とは、ウィンカーの点灯開始から車線変更をキャンセルするまでの時間、すなわちタイムアウトの設定値を指す。仮に車線変更のための待機時間の基本設定値が15秒である場合には、当該設定値を60秒などに延長する。当該構成は車線変更の待機時間を第1時間から、第1時間よりも長い第2時間に変更することに相当する。以上の構成によれば、渋滞中において、比較的に流れが速い車線に移動可能となりうる。その他、プロセッサ31は、代替経路を取得できなかった場合であって、かつ、検出されている遅延要因が車線規制/車線規制渋滞である場合には、消失車線を走行する計画を作成及び実行しても良い。もちろん、プロセッサ31は、代替経路を取得できなかった場合であって、かつ、検出されている遅延要因が車線規制/車線規制渋滞である場合、残存車線を優先的に走行する制御計画を作成及び実行しても良い。なお、プロセッサ31はドライバ睡眠中において適正な代替経路を取得できた場合(ステップS401 YES)、走行経路を代替経路に自動変更する(ステップS403)。
【0136】
<同乗者の有無に応じた制御変更>
プロセッサ31はドライバだけでなく、同乗者が寝ているか起きているかに応じても渋滞に対する応答を変更しても良い。例えばプロセッサ31は、ドライバ睡眠中において遅延要因が検出され、かつ、同乗者が起きている場合には、
図9に示すように遅延要因に関する情報を通知してもよい。
図9に示すステップS501はプロセッサ31が、乗員状態センサ16からの入力信号に基づき同乗者が存在するか否かを判定するステップである。ステップS502は、ステップS501にて同乗者が存在すると判定された場合に、乗員状態センサ16からの入力信号に基づき同乗者が眠っているか否かを判定するステップである。ステップS503は同乗者が起きている場合に、遅延要因に関する情報を通知するステップである。同乗者への通知は控えめの態様で実施されうる。また、同乗者への通知は、センターディスプレイや後部座席用ディスプレイなど、通知対象とする同乗者が視認可能なディスプレイを用いて実施される。
【0137】
なお、プロセッサ31は、遅延要因の検出に呼応してドライバの承認を得ることなく(つまり自動的に)走行経路や制御方針を変更する際、覚醒している同乗者が存在する場合には、当該同乗者に向けてその旨を控えめな態様で通知する。当該構成によれば、前述の通り、システムが自動的に進路/挙動を変えたことに対して、同乗者に不安を感じさせる恐れを低減できる。
【0138】
また、プロセッサ31は、ドライバ睡眠中において遅延要因が検出され、かつ、同乗者が起きている場合には、同乗者に対して遅延要因に対する応答方針を選択するように要求しても良い。遅延要因に対する応答方針の選択肢としては、ドライバを起こす、ドライバを起こさずに代替経路に切り替える、及び、ドライバを起こさずに現行経路を維持する、などがある。現行経路を維持する場合には、車線変更の実施条件を緩和するか否かも同乗者が選択可能に構成されていても良い。このようにプロセッサ31は、ドライバ睡眠中において遅延要因が検出され、かつ、同乗者が起きている場合には、同乗者にドライバを起こすか否かの判断を任せても良い。
【0139】
<早期到着見込み時の制御方針について>
プロセッサ31は、ドライバが睡眠中において目的地への早着が見込まれる場合、ドライバが少なくとも最小睡眠時間は眠れるように、走行計画を自動的に変更しても良い。本開示の早着とは、睡眠前予定時刻よりも所定時間以上早く目的地に到着することを指す。例えばプロセッサ31は、ドライバ睡眠中、出発時に検出されていた渋滞等の遅延要因が解消することによって、30分以上の早着が見込まれる場合(
図10 ステップS601 YES)、目的地まで自動運転で走行可能かどうかを判断する(ステップS602)。ここで目的地まで自動運転で到達できない場合(ステップS602 NO)、換言すれば、目的地の手前側にODD退出地点が在る場合には、プロセッサ31は時間調整処理を実施する(ステップS603)。
【0140】
時間調整処理は、到着時刻が睡眠前予定時刻に近づくように制御計画を変更する処理を指す。時間調整処理としては、車速の抑制や、サービスエリア等への立ち寄り、経路変更などが採用可能である。車速の抑制は、目標速度を本来の値よりも所定量/所定割合、抑制して自動走行することを指す。本来の値とは、ドライバが設定した自動運転時の目標速度、又は、システムに予め設定されている目標速度、又は、道路セグメントごとに設定されている最高速度を指す。サービスエリア等への立ち寄りとは、自動運転区間の途中に存在するサービスエリア/パーキングエリアの駐車場に一時的に停車することを指す。
【0141】
時間調整処理は、ドライバが睡眠中であることを条件として実行されうる。また、ODD退出地点に到達するまでに、ドライバの睡眠継続時間が最小睡眠時間以上となることが見込まれる場合には、時間調整処理は省略されても良い。プロセッサ31は、時間調整処理として、まずは車速の抑制を採用し、車速抑制では時間調整が不十分である場合にはサービスエリア等での一時停車を採用する。なお、交通の流れを乱すことは避ける必要があるため、非渋滞時の車速には下限値が存在しうる。経路変更は、車速抑制による到着時刻の調整も、サービスエリア等での一時停車も困難である場合の選択肢として設定可能である。時間調整処理は任意の要素であって、省略されても良い。
【0142】
プロセッサ31は、目的地まで自動運転で走行である場合(ステップS602 YES)には、プロセッサ31は早期到着が予見される前から設定されている制御計画を維持し(ステップS604)、目的地に車両を向かわせる。そして、目的地に到着した時点においてまだドライバが眠っている場合には(ステップS605 YES)、覚醒待機処理を実施する(ステップS606)。
【0143】
覚醒待機処理は、目的地に備えられた駐車スペースにて停車したうえで、ドライバが起きるまで、又は、現在時刻が睡眠前予定時刻に達するまで、又は、計測されている睡眠継続時間が最小睡眠時間に達するまで、待機する処理を指す。目的地に駐車可能なスペースが発見できなかった場合、プロセッサ31は、駐車可能な路肩を含む、最寄りの駐車スペースを探索し、当該駐車スペースでドライバの覚醒を待機しても良い。駐車スペースが在るか否かの判定、及び駐車スペースの探索処理は、外部サーバと協働して実施されても良いし、周辺監視センサ11を用いて自動運転システムSys単独で実施されても良い。
【0144】
自動運転システムSysは、目的地又はその近傍の駐車スペースに停車後、節電モードに移行する。節電モードは、空調などの車内快適性に係る機能は維持しつつ、周辺監視センサ11などの機能を停止させるモードである。ドライバの覚醒待ちである間は、周辺監視センサ11を停止させることにより、待機中の消費電力を削減する効果が期待できる。なお、プロセッサ31は、計測されている睡眠継続時間が最小睡眠時間に達した場合、又は、睡眠前予定時刻に達した時点においてまだドライバが睡眠状態である場合には、目立つ態様にて時刻を通知してもよい。つまり、ドライバを起こす制御を実施しても良い。
【0145】
<システム構成の変形例>
自動運転システムSysは、
図11に示すようにディスプレイ21等の報知デバイスを統括制御するHCU24を備えていても良い。なお、
図11では
図1や
図2に示す構成の一部の図示を省略している。HCU24はプロセッサ241やメモリ242を用いて実現されている。乗員への通知制御に係る機能は、HCU24が備えていても良い。HCU24は、自動運転ECU30からの指示/要求に基づき、各種通知を実施する。
【0146】
<付言(1)>
本開示に示す種々のフローチャートは何れも一例であって、フローチャートを構成するステップの数や、処理の実行順は適宜変更可能である。また、本開示に記載の装置、システム、並びにそれらの手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサを構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。本開示に記載の装置及びその手法は、専用ハードウェア論理回路を用いて実現されてもよい。さらに、本開示に記載の装置及びその手法は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサと一つ以上のハードウェア論理回路との組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。例えばプロセッサ31が備える機能の一部又は全部はハードウェアとして実現されても良い。或る機能をハードウェアとして実現する態様には、1つ又は複数のICなどを用いて実現する態様が含まれる。プロセッサ(演算コア)としては、CPUや、MPU、GPU、DFP(Data Flow Processor)などを採用可能である。プロセッサ31が備える機能の一部又は全部は、複数種類の演算処理装置を組み合わせて実現されていてもよい。プロセッサ31が備える機能の一部又は全部は、システムオンチップ(SoC:System-on-Chip)や、FPGA、ASICなどを用いて実現されていても良い。FPGAはField-Programmable Gate Arrayの略である。ASICはApplication Specific Integrated Circuitの略である。プロセッサ241についても同様である。
【0147】
また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体(non-transitory tangible storage medium)に記憶されていてもよい。プログラムの保存媒体としては、HDD(Hard-disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等を採用可能である。コンピュータを自動運転ECU30/HCU24として機能させるためのプログラムや、当該プログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実態的記録媒体等の形態も本開示の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0148】
Sys 自動運転システム、11 周辺監視センサ、12 車両状態センサ、15 無線通信機、16 乗員状態センサ、20 車載HMI、21 ディスプレイ(報知デバイス)、22 スピーカ(報知デバイス)、23 入力装置、30 自動運転ECU、31 プロセッサ、241 プロセッサ、F1 情報取得部、F2 環境認識部、F21 遅延要因検出部、F3 乗員状態取得部、F4 モード制御部、F5 車両制御部