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特許7683521移動体制御装置、移動体、及び制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-19
(45)【発行日】2025-05-27
(54)【発明の名称】移動体制御装置、移動体、及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/04 20060101AFI20250520BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20250520BHJP
   B60W 50/12 20120101ALN20250520BHJP
【FI】
B60W50/04
G08G1/09 F
B60W50/12
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022055483
(22)【出願日】2022-03-30
(65)【公開番号】P2023147776
(43)【公開日】2023-10-13
【審査請求日】2024-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100113549
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 守
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 真司
(74)【代理人】
【識別番号】100169199
【弁理士】
【氏名又は名称】石本 貴幸
(72)【発明者】
【氏名】徐 ▲シン▼
(72)【発明者】
【氏名】劉 知凡
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-31203(JP,A)
【文献】特開2006-231964(JP,A)
【文献】特開2010-231415(JP,A)
【文献】特開2020-77233(JP,A)
【文献】特開2021-89765(JP,A)
【文献】国際公開第2022/172578(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体(10)の現在の運転状態を解析する解析部(20)と、
アプリケーション(18)からの制御指示が前記現在の運転状態において安全であるか否かを判定する判定部(24)と、
を備え、
前記判定部によって安全であると判定された場合に前記制御指示を制御対象へ出力し、前記判定部によって安全でないと判定された場合に前記制御指示を制御対象へ出力せず、
前記判定部は、前記制御指示が出力される前記制御対象と前記現在の運転状態とに基づく危険度によって安全性を判定する
移動体制御装置(12)。
【請求項2】
前記アプリケーションは、サードパーティによって製造される、請求項1に記載の移動体制御装置。
【請求項3】
前記危険度は、前記移動体の前記運転状態に応じて前記制御対象毎に設定された設定値に基づいて算出される、請求項1又は請求項2に記載の移動体制御装置。
【請求項4】
前記運転状態は、前記移動体の制御状態及び前記移動体の運転環境であり、
前記設定値は、前記運転状態毎に設定され、
前記判定部は、前記制御指示が出力される前記制御対象と前記移動体の前記現在の運転状態とに対応する前記設定値の総和が、所定値以上となった場合に安全でないと判定する、
請求項に記載の移動体制御装置。
【請求項5】
前記解析部は、予め分類されている運転状態に基づいて前記現在の運転状態を解析する、請求項1から請求項の何れか1項に記載の移動体制御装置。
【請求項6】
前記解析部は、同じ制御が連続して行われているか否によって、前記現在の運転状態を解析する、請求項1から請求項の何れか1項に記載の移動体制御装置。
【請求項7】
請求項1から請求項の何れか1項に記載の移動体制御装置を備える移動体。
【請求項8】
移動体が備えるコンピュータを、
前記移動体の現在の運転状態を解析する解析部と、
アプリケーションからの制御指示が前記現在の運転状態において安全であるか否かを判定する判定部と、
して機能させるための制御プログラムであって、
前記判定部によって安全であると判定された場合に前記制御指示を制御対象へ出力し、前記判定部によって安全でないと判定された場合に前記制御指示を制御対象へ出力せず、
前記判定部は、前記制御指示が出力される前記制御対象と前記現在の運転状態とに基づく危険度によって安全性を判定する
制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体制御装置、移動体、及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の製造社とは異なる第三者、所謂サードパーティが製造したアプリケーションを車両システムに接続可能とする車両が増えている。このようなサードパーティによるアプリケーションは、例えば、apple社のcarplayやGoogle社のautomotive androidである。
【0003】
上記アプリケーションは、車両データを利用して、エンターテインメントや故障診断など様々なサービスを提供する。そのサービスには、例えば、荷物の配送先としてユーザの車両を登録することで、配達員が車両のトランクを開けて荷物を入れるサービス(in-car delivery)等のように、アプリケーションが車両を制御する場合もある。アプリケーションによる制御対象は、トランクの開閉の他に、例えば、窓や扉の開閉、ライトやハザードのオン・オフである。このようなサードパーティが製造したアプリケーションから車両の制御指示が出力されたとしても、車両の安全性は確保されなければならない。
【0004】
ここで、特許文献1には、処理サーバからアプリケーションプログラムのインストール要求を受け付けた場合に、車両側通信部において受信される通信フレームが不正であるか否かを定義したルールを処理サーバへ通知する車両制御装置が記載されている。
【0005】
特許文献2には、運転者の心身状態が不良であるとの疑いがある状態が時間判定値よりも継続し、走行状態が危険走行状態であると判定した場合、アクセル開度及びブレーキ踏力を示す出力信号を切り替えて加速を抑制する、加速抑制装置が記載されている。
【0006】
特許文献3には、車両の発進時には車両アクセル信号による踏込量と、車両の走行中にはアクセルペダルの踏力と、予め定めた閾値を比較してアクセルペダルを踏み間違えているか判定し、踏み間違えているときに車両の加速抑止等の制御を行う、制御装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2021-48495号公報
【文献】特開2021-49926号公報
【文献】特開2021-30882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の車両制御装置は、車両に対するサイバー攻撃による不正制御への対策である。一方、サードパーティが製造したアプリケーションからの制御指示は正規な制御指示であり、不正な制御指示ではないため、特許文献1に記載の車両制御装置では対応できない。
【0009】
また、特許文献2,3は、アクセルペダルとブレーキペダルの踏み間違えによる車両の急加速を防止するものであり、車両の安全性を確保することを目的としているが、サードパーティが製造したアプリケーションからの車両制御指示の安全性を判断するものではない。
【0010】
上記のように、サードパーティが製造したアプリケーションからの車両制御指示は車両の運転状態にかかわらず車両へ出力される可能性がある。また、上述の従来技術は、当該アプリケーションからの車両制御指示の安全性を判断できない。
【0011】
本発明は上記背景に鑑み、アプリケーションによる移動体の制御を可能としても移動体の安全性を確保できる、移動体制御装置、移動体、及び制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記課題を解決するために以下の技術的手段を採用する。特許請求の範囲及びこの項に記載した括弧内の符号は、ひとつの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0013】
本発明の一態様の移動体制御装置(12)は、移動体(10)の現在の運転状態を解析する解析部(20)と、アプリケーション(18)からの制御指示が前記現在の運転状態において安全であるか否かを判定する判定部(24)と、を備え、前記判定部によって安全であると判定された場合に前記制御指示を制御対象へ出力し、前記判定部によって安全でないと判定された場合に前記制御指示を制御対象へ出力しない。
【0014】
本構成によれば、アプリケーションからの制御指示が移動体の現在の運転状態に対して安全でないと判定した場合には、制御指示に基づいた移動体の制御を行なわない。従って、本構成は、サードパーティが製造したアプリケーションによる移動体の制御を可能としても安全性を確保できる。
【0015】
本発明の一態様の移動体は、上記記載の移動体制御装置を備える。
【0016】
本発明の一態様の制御プログラムは、移動体が備えるコンピュータを、前記移動体の現在の運転状態を解析する解析部と、アプリケーションからの制御指示が前記現在の運転状態において安全であるか否かを判定する判定部と、して機能させるための制御プログラムであって、前記判定部によって安全であると判定された場合に前記制御指示を制御対象へ出力し、前記判定部によって安全でないと判定された場合に前記制御指示を制御対象へ出力しない。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、アプリケーションによる移動体の制御を可能としても移動体の安全性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態のアプリ指示出力制御装置の機能ブロック図である。
図2】実施形態の運転状態解析処理の流れを示すフローチャートである。
図3】実施形態の制御可否判定処理の流れを示すフローチャートである。
図4】実施形態の危険度マトリクスを示す図である。
図5】実施形態のサードパーティアプリによる制御の具体例を示す模式図である。
図6】実施形態のサードパーティアプリによる制御の具体例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施する場合の一例を示すものであって、本発明を以下に説明する具体的構成に限定するものではない。本発明の実施にあたっては、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてよい。
【0020】
本実施形態では、移動体の一例を車両として説明するが、これに限られない。移動体は、例えば、自動二輪車、作業現場で運用される重機、及び航空機等でもよい。
【0021】
図1は、本実施形態の車両10が備える制御装置の一つであるアプリ指示出力制御装置12の機能ブロック図である。
【0022】
アプリ指示出力制御装置12は、車両10に搭載された電子制御ユニット(ECU:Electronics Control Unit)のうちの一つである。アプリ指示出力制御装置12は、車両センサ14、CAN(Controller Area Network)16、サードパーティアプリケーション(以下「サードパーティアプリ」という。)18との間で各種データの送受信を行う。
【0023】
車両センサ14は、車両10に搭載される複数種類のセンサを含む構成である。車両センサ14には、車両10の走行状態を検出する車速センサ及び慣性センサ、ドライバの状態や運転操作を検出する車内カメラ、ペダルセンサ、及びステアセンサが含まれる。また、車両センサ14には、運転支援又は自動運転に用いられる車外カメラ、ミリ波レーダ、及びライダが含まれる。
【0024】
CAN16は、車両10に搭載されている他のECU等とアプリ指示出力制御装置12との間で通信を行う。
【0025】
本実施形態のサードパーティアプリ18は、一例として、車両10の製造者とは異なる者であるサードパーティが製造したアプリケーションソフトウェアである。サードパーティアプリ18は、車両10に対する制御指示であるアプリ指示をアプリ指示出力制御装置12へ出力する。なお、以下の説明では、サードパーティアプリ18からの制御指示をアプリ指示という。
【0026】
アプリ指示は、例えば、エアコンのオン・オフ、座席位置の調整、ワイパーのオン・オフ、ドアの開閉、窓の開閉、トランクの開閉、エンターテイメント機能のオン・オフ、エージェント対話機能のオン・オフ、ライトのオン・オフ、ハザードランプのオン・オフ等である。
【0027】
アプリ指示は、例えば、車両10にインストールされたサードパーティアプリ18を車両10に備えられているタッチパネルディスプレイ等を介してユーザが操作することで出力されてもよいし、ユーザが所有するスマートフォン等の携帯端末装置を介して車両10と通信を行うことで、サードパーティアプリ18から出力されてもよい。
【0028】
なお、本実施形態のサードパーティアプリ18は、車両10の制御に関係しない単独で動作する機能を有してもよい。この機能は、例えば、音楽や動画等の再生機能、ナビゲーション機能等である。これらの機能は、サードパーティアプリ18をユーザが操作することで実行される。
【0029】
アプリ指示出力制御装置12は、サードパーティアプリ18が出力するアプリ指示の安全性を判定する機能を有する。本実施形態のアプリ指示出力制御装置12は、運転状態解析部20、運転状態管理部22、及び安全性判定部24を備える。
【0030】
運転状態解析部20は、車両10の現在の運転状態を解析する。運転状態解析部20で解析する車両10の運転状態とは、所定の一連の運転行動のシーンであり、車両10の制御状態を示す。
【0031】
車両10の制御状態は、一例として、運転方式と走行状態とがある。運転方式は、例えば、左折、右折、加速、進路変更、バック、直進等である。走行状態は、例えば、時速20km以上かつ80km未満の走行である通常走行、時速80km以上の走行である高速走行、時速20km未満の走行である徐行、アイドリング、停車等である。なお、車両10の制御状態は、車両センサ14の出力値や、CAN16を介して取得されるECUの出力値等に基づいて判定される。以下の説明では、車両センサ14の出力値やECUの出力値を総称して車両データという。
【0032】
また、車両10の現在の運転状態には、車両10の運転環境も含まれる。車両10の運転環境は、一例として、天候及び場所等である。天候は、例えば、晴れ、雨、雪、強風等である。場所は、高速道路、坂道、車速制限等である。なお、車両10の運転環境は、車両センサ14や車両10と通信する外部のサーバ等から出力されるデータに基づいて判定される。
【0033】
運転状態管理部22は、上記した車両10の現在の運転状態を解析するための運転状態の分類内容や、後述する危険度スコア等を登録する。ここでいう登録とは、設定内容や設定値の記憶及び更新等を含む。
【0034】
安全性判定部24は、サードパーティアプリ18からの制御指示が車両10の現在の運転状態において安全であるか否かを判定する。そして、アプリ指示出力制御装置12は、安全性判定部24によって安全であると判定された場合にアプリ指示を制御対象へ出力し、安全性判定部24によって安全でないと判定された場合にアプリ指示を制御対象へ出力しない。
【0035】
アプリ指示はCAN16を介して制御対象に直接、又は制御対象を制御するための担当ECUへ出力される。なお、出力されるアプリ指示は、適宜、コマンド変換が行われる。
【0036】
図2は、本実施形態の運転状態管理部22が実行する運転状態解析処理の流れを示すフローチャートである。運転状態解析処理は、例えば、車両10のスタートボタンがオンとされている状態において繰り返し実行される。なお、運転状態解析処理は記憶媒体に記憶されたプログラムによって実行される。このプログラムが実行されることで、プログラムに対応する方法が実行される。
【0037】
図2は、一例として、車両10の制御状態が、左折、アイドリング、又はウィンカ未点灯の何れに当てはまるかを判定するものである。車両10の他の制御状態は、図2に示される処理と同様の処理によって判定される。
【0038】
まず、ステップ100では、車両10が走行中であるか否かを判定し、肯定判定の場合はステップ102へ移行して左折判定を開始する。一方、否定判定の場合はステップ126へ移行してアイドリング判定を開始する。
【0039】
ステップ102から移行するステップ104では、操舵角が左に変化したか否かを判定し、肯定判定の場合はステップ106へ移行し、否定判定の場合はステップ108へ移行する。
【0040】
ステップ106では、操舵角が左であることを示す左折カウンタCを1つインクリメントしてステップ110へ移行する。
【0041】
ステップ108では、左折カウンタCを0とすることで、左折カウンタCをリセットしてステップ100へ移行する。
【0042】
ステップ110では、ウィンカが点灯しているか否かを判定し、肯定判定の場合はステップ112へ移行し、否定判定の場合はステップ118へ移行する。
【0043】
ステップ112では、ウィンカが未点灯であることを示すウィンカ未点灯カウンタCNWを0とすることで、ウィンカ未点灯カウンタCNWをリセットしてステップ114へ移行する。
【0044】
ステップ114では、左折カウンタCが5以上であるか否かを判定し、肯定判定の場合はステップ116へ移行し、否定判定の場合はステップ100へ移動する。
【0045】
ステップ116では、車両10の制御状態が左折状態であると確定し、ステップ100へ移行する。
【0046】
ステップ110で否定判定となった場合に移行するステップ118では、ウィンカ未点灯カウンタCNWを1つインクリメントしてステップ114及びステップ120へ移行する。
【0047】
ステップ120ではウィンカ未点灯判定を開始する。次のステップ122では、ウィンカ未点灯カウンタCNWが5以上であるか否かを判定し、肯定判定の場合はステップ124へ移行し、否定判定の場合はステップ100へ移動する。
【0048】
ステップ124では、車両10の制御状態がウィンカ未点灯状態であると確定し、ステップ100へ移行する。
【0049】
ステップ100で否定判定となった場合に移行するステップ126では、アイドリング判定を開始する。次のステップ128では、アイドリング状態であることを示すアイドリングカウンタCを1つインクリメントしてステップ130へ移行する。
【0050】
ステップ130では、アイドリングカウンタCが5以上であるか否かを判定し、肯定判定の場合はステップ132へ移行し、否定判定の場合はステップ100へ移動する。
【0051】
ステップ132では、車両10の制御状態がアイドリング状態であると確定し、ステップ100へ移行する。
【0052】
このように、本実施形態の運転状態解析処理は、予め分類されている運転状態に基づいて現在の運転状態を解析する。すなわち、図2の例では、ステップ102から118が左折判定、ステップ120からステップ124がウィンカ点灯判定、及びステップ126からステップ132がアイドリング判定とのように運転状態が予め分類されており、現在の運転状態は、このように分類されている運転状態の何れに当てはまるかを判定される。これにより、運転状態解析処理は、簡易かつ正確に現在の運転状態を判定できる。
【0053】
また、本実施形態の運転状態解析処理は、同じ制御が連続して行われているか否によって、車両10の運転状態が何れの運転状態であるかを解析する。具体的には、左折カウンタC、ウィンカ未点灯カウンタCNW、及びアイドリングカウンタCのように運転状態の判定基準となるカウンタをインクリメント又はリセットすることで、同じ制御が連続して行われているか否かを判定する。これにより、運転状態解析処理は、簡易かつリアルタイムで車両10の運転状態を解析できる。
【0054】
なお、運転状態解析処理による、各判定は例えば1秒間隔等の所定時間間隔で行われる。これにより、カウンタのインクリメント又はリセットが1秒間隔で行われ、同じ制御が連続して行われているか否かを判定できる。なお、運転制御に関わる運転状態の判定には、より短い判定間隔が必要となる場合もある。このため、観測対象の出力頻度に基づいて判定間隔は決定される。
【0055】
また、各カウンタによって、現在の運転状態がどの運転状態に該当するか否かの閾値を5としているが、これは一例であり、他の値でもよく、各運転状態に応じて閾値は異なってもよい。また、図2の処理は一例であり、カウンタをリセットする処理や他の処理が適宜含まれてもよい。
【0056】
なお、分類されている運転状態や上記閾値等は、運転状態管理部22に記憶されている。また、本実施形態のアプリ指示出力制御装置12は、車両10の制御状態を判定できれば、図2を用いて説明した運転状態解析処理とは異なる他の処理を行ってもよい。
【0057】
図3は、本実施形態のアプリ指示出力制御装置12が実行する制御可否判定処理の流れを示すフローチャートである。制御可否判定処理は、車両10のスタートボタンがオンとされている状態において繰り返し実行される。なお、制御可否判定処理は記憶媒体に記憶されたプログラムによって実行される。このプログラムが実行されることで、プログラムに対応する方法が実行される。
【0058】
まず、ステップ200では、運転状態解析部20が車両センサ14及びCAN16から車両データを取得する。
【0059】
次のステップ202では、運転状態解析部20が車両10の運転状態解析処理を行う。
【0060】
次のステップ204では、サードパーティアプリ18からアプリ指示が出力されたか否かを安全性判定部24が判定し、肯定判定の場合はステップ206へ移行し、否定判定の場合はステップ200へ戻り、車両データの取得及び運転状態の判定を繰り返す。
【0061】
ステップ206では、安全性判定部24がサードパーティアプリ18から出力されたアプリ指示が車両10の現在の運転状態に対して安全であるか否かを判定する安全性判定を行う。
【0062】
次のステップ208では安全性判定の結果に基づいてアプリ指示による制御を実施可能であるか否かを判定し、肯定判定の場合はステップ210へ移行し、否定判定の場合はステップ212へ移行する。
【0063】
ステップ210では、安全性判定部24がCAN16を介して制御対象にアプリ指示を出力し、ステップ200へ移行する。これにより、車両10は、アプリ指示に基づいた制御を行なう。
【0064】
ステップ212では、アプリ指示に基づいて制御が実施不可であることを安全性判定部24がサードパーティアプリ18を介してユーザに報知し、ステップ200へ戻る。
【0065】
ここで、ステップ206の処理である安全性判定について説明する。本実施形態の安全性判定部24は、アプリ指示が出力される制御対象と車両10の現在の運転状態とに基づく危険度によって安全性を判定する。
【0066】
本実施形態の危険度は、車両10の運転状態に応じて制御対象毎に設定された設定値(以下「危険度スコア」という。)に基づいて算出される。図4は、危険度スコアを示した危険度マトリクスである。図4に示されるように、危険度スコアは、制御対象に対して車両10の運転状態である制御状態及び運転環境毎に設定されており、一例として、0~1の間において0.1刻みで設定される。なお、図4に示される危険度スコアは、一例であり、他の制御対象や他の運転状態に応じても設定されている。
【0067】
そして、安全性判定部24は、アプリ指示が出力される制御対象と車両10の現在の運転状態とに対応する危険度スコアの総和が所定値以上となった場合に、安全でないと判定する。この所定値は、例えば1である。
【0068】
図4の例では、車両10の走行中にエアコンのオンを示すアプリ指示がサードパーティアプリ18から出力された場合には、危険度スコアの総和は0となり1未満であるため、安全性判定部24は当該アプリ指示を安全と判定する。
【0069】
一方で、車両10が停止しており、運転環境が雨及び坂道においてドアの開放を閉めるアプリ指示がサードパーティアプリ18から出力された場合には、危険度スコアの総和は1(0.5+0.3+0.2)となり1以上であるため、安全性判定部24は当該アプリ指示を安全でないと判定する。
【0070】
また、走行中におけるドアの開閉のように、危険度が高い制御対象と運転状態との組み合わせには、危険度スコアとして1が設定される。
【0071】
図5,6は、本実施形態のサードパーティアプリ18による制御の具体例を示す模式図である。
【0072】
図5は、ユーザへの配達物を車両10のトランクに配送してもらうために、トランクを開錠する場合の流れを示している。
【0073】
まず、ユーザのスマートフォンが配送業者からの配達通知を受信すると、サードパーティアプリ18はアプリ指示としてトランク開錠を出力する。アプリ指示出力制御装置12は、運転状態解析を行った結果、車両10が停止中であるためトランクの開錠制御が実施可能であるとして、アプリ指令をCAN16を介して担当ECUに出力する。担当ECUは、トランクの開錠が完了すると、アプリ指示出力制御装置12は、サードパーティアプリ18に実施完了を示す情報を出力する。そして、サードパーティアプリ18はユーザのスマートフォンにトランクの開錠完了を通知する。
【0074】
図6は、ユーザが定期的な換気のためにサンルーフの開放を設定している場合の流れを示している。
【0075】
まず、ユーザが定期的な換気のために所定タイミングでサンルーフを開放することを設定する。サードパーティアプリ18は設定されたタイミングでサンルーフ開のアプリ指示を出力する。アプリ指示出力制御装置12は、運転状態解析を行った結果、車両10が走行中であり、天気が雨であるとしてサンルーフの開放制御が実施できないと判定し、実施不可であることをサードパーティアプリ18に通知する。これを受けて、サードパーティアプリ18はサンルーフの開放が実施不可であることをユーザに報知する。
【0076】
以上説明したように本実施形態のアプリ指示出力制御装置12は、サードパーティアプリ18からの制御指示であるアプリ指示が車両10の現在の運転状態に対して安全でないと判定した場合には、アプリ指示に基づいた車両10の制御を行なわない。従って、本実施形態のアプリ指示出力制御装置12は、サードパーティアプリ18による車両10の制御を可能としても安全性を確保できる。
【0077】
以上、本発明を、上記実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更又は改良を加えることができ、該変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0078】
上記実施形態の車両10等の移動体にインストールされるアプリケーションは、サードパーティによって製造されたものとして説明したが、これに限らず、アプリケーションは車両10等の移動体の製造者によって製造されてもよい。
【0079】
上記実施形態のアプリ指示出力制御装置12によって提供されていた各機能は、ソフトウェア及びそれを実行するハードウェア、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの複合的な組合せによっても提供可能である。こうした機能がハードウェアとしての電子回路によって提供される場合、各機能は、多数の論理回路を含むデジタル回路、又はアナログ回路によっても提供可能である。
【0080】
上記実施形態のECU等の各プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)及びGPU(Graphics Processing Unit)等の演算コアを少なくとも一つ含む構成であってよい。さらに、プロセッサは、FPGA(Field-Programmable Gate Array)及び他の専用機能を備えたIPコア等をさらに含む構成であってよい。
【0081】
上記実施形態の記憶部として採用され、本開示のデータ保存方法に関連した各プログラムを記憶する記憶媒体の形態は、適宜変更されてよい。例えば、記憶媒体は、回路基板上に設けられた構成に限定されず、メモリカード等の形態で提供され、スロット部に挿入されて、コンピュータのバスに電気的に接続される構成であってよい。さらに、記憶媒体は、コンピュータへのプログラムのコピー基となる光学ディスク及びのハードディスクドライブ等であってもよい。
【0082】
本実施形態の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサを構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本実施形態に記載の装置及びその手法は、専用ハードウェア論理回路により、実現されてもよい。もしくは、本実施形態に記載の装置及びその手法は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサと一つ以上のハードウェア論理回路との組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0083】
また、上記実施形態で説明した処理の流れも一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよい。
【符号の説明】
【0084】
10・・・車両、12・・・アプリ指示出力制御装置、
18・・・サードパーティアプリ、20・・・運転状態解析部、24・・・安全性判定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6