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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-19
(45)【発行日】2025-05-27
(54)【発明の名称】ダイレクトドライブモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/173 20060101AFI20250520BHJP
   F16C 35/07 20060101ALI20250520BHJP
   F16C 19/16 20060101ALI20250520BHJP
【FI】
H02K5/173 A
F16C35/07
F16C19/16
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022568168
(86)(22)【出願日】2021-11-24
(86)【国際出願番号】 JP2021042967
(87)【国際公開番号】W WO2022124073
(87)【国際公開日】2022-06-16
【審査請求日】2024-06-25
(31)【優先権主張番号】P 2020202703
(32)【優先日】2020-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 正幸
(72)【発明者】
【氏名】福山 健一
(72)【発明者】
【氏名】田口 俊文
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-299299(JP,A)
【文献】特開2002-125345(JP,A)
【文献】特開2002-343015(JP,A)
【文献】特開2000-217298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/173
F16C 35/07
F16C 19/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の固定軸と、
内輪が前記固定軸の外周面に嵌合する軸受部と、
前記軸受部の外輪が内周面に嵌合する筒状の出力軸と、
前記内輪に対し、前記出力軸の軸と平行な軸方向のうち第1方向に配置される第1規制部材と、
前記外輪に対し、前記第1方向に配置される第2規制部材と、
前記出力軸にトルクを付与するモータ部と、
を備え、
前記固定軸は、
前記内輪が嵌合する筒状の第1本体部と、
前記第1本体部から前記第1方向と反対の第2方向に延出し、かつ前記内輪の前記第2方向の端面に当接する筒状の第1当接部と、
前記第1当接部から前記第2方向に延出し、前記第2方向の端面が土台と当接する土台当接部と、
前記土台当接部の前記第2方向の端面に設けられ、前記土台当接部と前記土台とを締結するための第1締結具が螺合する第1雌ねじ穴と、
を有し、
前記出力軸は、
前記外輪が嵌合する筒状の第2本体部と、
前記第2本体部から前記第2方向に位置し、前記外輪の前記第2方向の端面に当接する筒状の第2当接部と、
前記第2本体部の外周部から前記第1方向に延出し、前記第1方向の端面が前記第2規制部材よりも前記第1方向に突出する筒状の取付部と、
前記取付部の前記第1方向の端面に設けられ、前記取付部と対象物とを締結するための第2締結具が螺合する第2雌ねじ穴と、
を有し、
前記第1規制部材は、前記第1本体部の前記第1方向の端面に締結され、かつ前記内輪の前記第1方向の端面に当接し、
前記第2規制部材は、前記第2本体部の前記第1方向の端面に締結され、かつ前記外輪の前記第1方向の端面に当接する
ダイレクトドライブモータ。
【請求項2】
前記モータ部は、
前記出力軸の外周面に嵌合するロータと、
前記ロータの外周側を囲むステータと、
を有し、
前記土台当接部の外周側には、前記土台当接部から径方向外側に延びて前記ステータを支持するステータ支持部が締結される
請求項1に記載のダイレクトドライブモータ。
【請求項3】
前記出力軸の内形及び外形は、前記軸を中心とする円形状を成している
請求項1又は請求項2に記載のダイレクトドライブモータ。
【請求項4】
前記固定軸の内形及び外形は、前記軸を中心とする円形状を成している
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のダイレクトドライブモータ。
【請求項5】
前記第1雌ねじ穴は、前記内輪の転動面よりも径方向内側に配置され、
前記第2雌ねじ穴は、前記外輪の転動面よりも径方向外側に配置される
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のダイレクトドライブモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ダイレクトドライブモータに関する。
【背景技術】
【0002】
ダイレクトドライブモータは、減速機構を介することなく、ダイレクトに生成した動力を対象物に伝達する電動機である。なお、対象物は、ワークを載置するためのテーブルや、ワークを把持するアームなどが挙げられる。下記特許文献1のダイレクトドライブモータは、締結具により土台に締結される環状のベースと、ベースの内周面に嵌合する固定軸と、固定軸の外周側に嵌合する軸受と、軸受の外周側に嵌合する接続部材と、接続部材に嵌合する出力軸と、出力軸にトルクを与えるモータ部と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-233100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のダイレクトドライブモータにおいて、固定軸は、ベースを介して土台に固定される。また、出力軸は、接続部材を介して固定軸に支持される。このような構造によれば、固定軸や及び出力軸を支持する剛性が低くなってしまうことがある。そして、出力軸の回転時、出力軸が径方向に振動する、いわゆる振れが発生し易くなる。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであり、出力軸の振れを抑制することができるダイレクトドライブモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本開示の一態様に係るダイレクトドライブモータは、筒状の固定軸と、内輪が前記固定軸の外周面に嵌合する軸受部と、前記軸受部の外輪が内周面に嵌合する筒状の出力軸と、前記内輪に対し、前記出力軸の軸と平行な軸方向のうち第1方向に配置される第1規制部材と、前記外輪に対し、前記第1方向に配置される第2規制部材と、前記出力軸にトルクを付与するモータ部と、を備える。前記固定軸は、前記内輪が嵌合する筒状の第1本体部と、前記第1本体部から前記第1方向と反対の第2方向に延出し、かつ前記内輪の前記第2方向の端面に当接する筒状の第1当接部と、前記第1当接部から前記第2方向に延出し、前記第2方向の端面が土台と当接する土台当接部と、前記土台当接部の前記第2方向の端面に設けられ、前記土台当接部と前記土台とを締結するための第1締結具が螺合する第1雌ねじ穴と、を有する。前記出力軸は、前記外輪が嵌合する筒状の第2本体部と、前記第2本体部から前記第2方向に位置し、前記外輪の前記第2方向の端面に当接する筒状の第2当接部と、前記第2本体部の外周部から前記第1方向に延出し、前記第1方向の端面が前記第2規制部材よりも前記第1方向に突出する筒状の取付部と、前記取付部の前記第1方向の端面に設けられ、前記取付部と対象物とを締結するための第2締結具が螺合する第2雌ねじ穴と、を有する。前記第1規制部材は、前記第1本体部の前記第1方向の端面に締結され、かつ前記内輪の前記第1方向の端面に当接する。前記第2規制部材は、前記第2本体部の前記第1方向の端面に締結され、かつ前記外輪の前記第1方向の端面に当接する。
【0007】
本開示のダイレクトドライブモータによれば、土台と固定軸との間に介在する部品、固定軸と軸受部との間に介在する部品、及び軸受部と出力軸との間に介在する部品がない。言い換えると、固定軸は、第1雌ねじ穴に螺合する第1締結具に締結される。よって、固定軸は、土台に直接支持される。軸受部は、内輪が固定軸の第1本体部に嵌合する。よって、軸受部は、固定軸に直接支持される。出力軸は、第2本体部が軸受部の外輪に嵌合する。よって、出力軸は軸受部に直接支持される。以上から、出力軸を支持する剛性は高い。このため、出力軸の回転時、出力軸の振れが抑制される。また、固定軸と出力軸との間に介在する部品点数が多くなると、組み付け公差の影響により、固定軸に対し出力軸が偏心する可能性、言い換えると、ワークを精度良く搬送できない可能性がある。しかし、本開示のダイレクトドライブモータによれば、固定軸と出力軸との間に介在する部品は軸受部のみである。よって、組み付け公差の影響が少なく、固定軸に対する出力軸の同芯度が高い。よって、ワークを精度良く搬送することができる。さらに、軸受部は、固定軸の第1当接部に当接し、軸方向に位置決めされる。出力軸は、第2当接部が軸受部に当接し、軸方向に位置決めされる。よって、固定軸に対する出力軸の軸方向の位置決めに関しても、固定軸と出力軸との間に介在する部品は軸受部のみである。よって、組み付け公差の影響が少なく、出力軸に固定される対象物の位置(高さ)を所望の位置(高さ)とすることができる。このような理由から、ワークを精度良く搬送することができる。そのほか、第1規制部材及び第2規制部材が内輪又は外輪に当接している。よって、出力軸が軸方向に移動し対象物の位置が変化する、ということが抑制されている。
【0008】
一態様に係るダイレクトドライブモータの望ましい態様として、前記モータ部は、前記出力軸の外周面に嵌合するロータと、前記ロータの外周側を囲むステータと、を有する。前記土台当接部の外周側には、前記土台当接部から径方向外側に延びて前記ステータを支持するステータ支持部が締結される。
【0009】
ステータは、ロータとの間に生じる磁気的吸引力および磁気的反発力により、振動することがある。また、ステータを固定軸が支持すると、ステータの振動が固定軸に伝達し、出力軸に振れが発生する可能性がある。本開示のダイレクトドライブモータにおいては、ステータは、固定軸に締結されるステータ支持部に支持される。よって、ステータが振動すると、ステータ支持部に吸収され、固定軸に振動が伝達し難い。このため、ステータの振動により出力軸に振れが発生する、ということが回避される。
【0010】
一態様に係るダイレクトドライブモータの望ましい態様として、前記第2本体部の内形及び外形は、前記軸を中心とする円形状を成している。
【0011】
従来、出力軸の外周面に他の部品を固定するため、出力軸の外周面をフライス加工等することがある。このような加工を行うと、回転軸に内部応力が発生し、回転軸の内周面が歪む。そして、回転軸の内周面が非円形となると、嵌合による外輪への締め付け力は、外輪の周方向に均一とならず、出力軸に振れが発生する原因となる。一方、本開示の出力軸において、第2本体部の内形及び外形が円形状を成している。よって、嵌合による外輪への締め付け力は、外輪の周方向に均一に作用する。このため、出力軸の回転時、出力軸の振れが抑制される。
【0012】
一態様に係るダイレクトドライブモータの望ましい態様として、前記第1本体部の内形及び外形は、前記軸を中心とする円形状を成している。
【0013】
第1本体部の嵌合による内輪への締め付け力は、内輪の周方向に均一に作用している。このため、固定軸に対する軸受部の振れが抑制される。そして、軸受部に支持される出力軸の振れも抑制される。
【0014】
一態様に係るダイレクトドライブモータの望ましい態様として、前記第1雌ねじ穴は、前記内輪の転動面よりも径方向内側に配置される。前記第2雌ねじ穴は、前記外輪の転動面よりも径方向外側に配置される。
【0015】
第1締結具を第1雌ねじ穴に螺合させると、第1雌ねじ穴の穴径が大きくなるように固定軸が変形する。仮に第1雌ねじ穴が内輪の転動面と軸方向に重なると、内輪の転動面が歪み、転動体が円滑に回転しない。しかし、本開示の第1雌ねじ穴は、内輪の転動面よりも径方向内側に配置されて離隔している。よって、内輪の転動面は変形し難い。同様に、第2雌ねじ穴は、外輪の転動面から離隔している。よって、外輪の転動面は変形し難い。以上から、転動体は、転動面を円滑に転動し、出力軸は円滑に回転する。
【発明の効果】
【0016】
本開示のダイレクトドライブモータによれば、出力軸の回転時、出力軸の振れが抑制され、ワークを安定して搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、実施形態1のダイレクトドライブモータの全体構成の一例を概略的に示す断面図である。
図2図2は、図1のダイレクトドライブモータの一部を拡大した断面図である。
図3図3は、実施形態1のダイレクトドライブモータを第2方向から視た底面図である。
図4図4は、実施形態1のダイレクトドライブモータを第1方向から視た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明を実施するための形態につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の説明で記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0019】
図1は、実施形態1のダイレクトドライブモータの全体構成の一例を概略的に示す断面図である。図2は、図1のダイレクトドライブモータの一部を拡大した断面図である。図3は、実施形態1のダイレクトドライブモータを第2方向から視た底面図である。図4は、実施形態1のダイレクトドライブモータを第1方向から視た平面図である。
【0020】
図1に示すように、実施形態1のダイレクトドライブモータ100は、ワーク(不図示)を搬送する動力を生成する電動機である。実施形態1のダイレクトドライブモータ100は、出力軸3の軸AXの一方側に土台110が配置される。ダイレクトドライブモータ100は、土台110に固定される。また、ダイレクトドライブモータ100は、出力軸3の軸AXの他方側にテーブル120が配置される。テーブル120は、ダイレクトドライブモータ100に取り付けられる。そして。ダイレクトドライブモータ100は、軸AXを中心にテーブル120を回転させ、テーブル120に載置されたワーク(不図示)を搬送する。
【0021】
なお、実施形態のダイレクトドライブモータ100は、対象物としてテーブル120が取り付けられる例を挙げているが、本開示のダイレクトドライブモータはこれに限定されない。例えば、本開示のダイレクトドライブモータは、アームを駆動する駆動源として使用されるサーボモータとして利用してもよい。そのほか、本開示のダイレクトドライブモータは、検査装置、工作機械、及び半導体製造装置等に利用してもよい。
【0022】
ダイレクトドライブモータ100は、固定軸1と、軸受部2と、出力軸3と、第1規制部材4と、第2規制部材5と、第1カバー部材6と、ステータ支持部材7と、モータ部8と、第2カバー部材9と、を備える。以下の説明において、軸AXと平行な方向を軸方向と呼ぶ。また、軸方向のうち、ダイレクトドライブモータ100から視てテーブル120が配置される方向を第1方向A1と呼ぶ。ダイレクトドライブモータ100から視て土台110が配置される方向を第2方向A2と呼ぶ。
【0023】
固定軸1は、中心が軸方向に延在する筒状の部品である。図2に示すように、固定軸1は、外周面に軸受部2の内輪25、26が嵌合する第1本体部10と、第1本体部10から第2方向A2に延出する第1当接部11と、第1当接部11から第2方向A2に延出る土台当接部12と、第1本体部10から第1方向に突出する突出部13と、を備える。つまり、固定軸1は、第1本体部10と、第1当接部11と、土台当接部12と、突出部13と、が一体に形成された部品である。なお、図2において、第1本体部10と、第1当接部11と、土台当接部12と、突出部13と、の各部位を明確化するため、補助線(二点鎖線)を引いている。
【0024】
第1本体部10は、軸AXを中心とする円筒状を成している。つまり、軸AX方向から視て、第1本体部10の外周面10a及び内周面10bは、軸AXを中心に円形状を成している(図3を参照)。第1本体部10の軸方向の長さは、軸受部2の軸方向の長さを同一である。第1本体部10の第1方向A1の端面10cには、周方向に等間隔で配置された複数の雌ねじ穴10dが設けられている。なお、第1本体部10の外周面10aから内周面10bまでの厚みは、T1となっている(図1参照)。
【0025】
第1当接部11の外径は、第1本体部10の外径よりも大径となっている。つまり、第1当接部11は、第1本体部10の外周面10aよりも径方向の外側に突出している。そして、第1当接部11の第1方向A1の端面11aは、軸受部2の内輪26の第2方向A2の端面26aに当接している。
【0026】
土台当接部12は、外径が第1当接部11の外径よりも大径となっている大径部14と、大径部14の第2方向A2の端面14aから第2方向A2に突出する突起部15と、を備える。
【0027】
大径部14の第2方向A2の端面14aには、突起部15よりも外周側に配置される複数の外周雌ねじ穴14bと、突起部15よりも内周側に位置する複数の内周雌ねじ穴14cと、が設けられている。図3に示すように、外周雌ねじ穴14b及び内周雌ねじ穴14cは、周方向に等間隔で複数設けられている。
【0028】
図3に示すように、突起部15は、軸方向から視て環状を成している。図2に示すように、突起部15の第2方向A2の端面15aは、平坦面となっている。突起部15の第2方向A2の端面15aは、土台110の第1方向A1を向く面(載置面)と当接している。
【0029】
突起部15の第2方向A2の端面15aには、第1雌ねじ穴15bが設けられている。第1雌ねじ穴15bは、周方向に等間隔で複数設けられている(図3を参照)。そして、第1雌ねじ穴15bには、土台110を貫通する第1締結具201が螺合している。これにより、突起部15(土台当接部12)が土台110に締結され、固定軸1が土台110に固定される。
【0030】
また、突起部15の第2方向A2の端面15aは、第1カバーより6及びステータ支持部材7よりも第2方向A2に位置している。つまり、第1カバーより6及びステータ支持部材7は、土台110に当接しない。
【0031】
図2に示すように、突出部13は、第1本体部10の第1方向A1の端面10cの内周側から、第1方向A1に突出している。突出部13の外周面は、軸方向から視て円形状を成している。
【0032】
軸受部2は、第1軸受21と、第1軸受21に対し第2方向A2に配置される第2軸受22と、を備える。第1軸受21及び第2軸受22は、背面組合せのアンギュラ玉軸受である。第1軸受は、外輪23、内輪25、及び外輪23と内輪25との間に配置された複数の転動体27を備える。第2軸受は、外輪24、内輪26、及び外輪24と内輪26との間に配置された複数の転動体28を備える。内輪25、26の転動面は、固定軸1の第1雌ねじ穴15bよりも径方向外側に位置している(図2の仮想線Lを参照)。言い換えると、固定軸1の第1雌ねじ穴15bは、内輪25、26の転動面よりも径方向内側に位置している。つまり、第1雌ねじ穴15bと内輪25、26の転動面とは、軸方向に重なっていない。
【0033】
出力軸3は、筒状の部品である。出力軸3は、外輪23、24に嵌合する筒状の第2本体部30と、第2本体部30から第2方向A2に延出する第2当接部31と、第2本体部30の外周部から第1方向A1に延出する筒状の取付部32と、を備える。つまり、出力軸3は、筒状の部品である。出力軸3は、第2本体部30と、第2当接部31と、筒状の取付部32と、が一体に形成された部品である。
【0034】
第2本体部30は、軸AXを中心に円筒状を成している。つまり、軸方向から視て、第2本体部30の外周面30aと内周面30bは、軸AXを中心に円形状を成している(図4を参照)。図2に示すように、第2本体部30の軸方向の長さは、軸受部2の軸方向の長さを同一である。第2本体部30の第1方向A1の端面30cには、周方向に等間隔で配置された複数の雌ねじ穴30dが設けられている。第2本体部30の外周面30aには、第1方向A1の端から径方向外側に突出する環状の突出部30eを備える。この突出部30eは、ロータ81の軸方向の位置決めとなっている。なお、第2本体部30の外周面30aから内周面30bまでの厚みは、T2となっている(図1参照)。
【0035】
第2当接部31の内径は、第2本体部30の内径よりも小径となっている。つまり、第2当接部31は、第2本体部30の内周面30bよりも径方向内側に突出している。第2当接部31の第1方向A1の端面31aは、外輪24の第2方向A2の端面24aに当接している。
【0036】
図4に示すように、取付部32は、軸方向から視て環状を成している。図2に示すように、取付部32の第1方向A1の端面32aは、テーブル120と当接する当接面である。取付部32は、第2規制部材5よりも第1方向A1に突出している。つまり、取付部32の第1方向A1の端面32aは、第2規制部材5よりも第1方向A1に位置している。取付部32の端面32aは、平坦面となっている。取付部32の端面32aには、第2締結具202が螺合する第2雌ねじ穴32bが設けられている。第2雌ねじ穴32bは、周方向に等間隔で複数設けられている。また、第2雌ねじ穴32bは、外輪23、24の転動面よりも径方向外側に配置されており、外輪23、24と軸方向に重なっていない。
【0037】
テーブル120の取付は、図1に示すように、取付部32の端面32aに第1方向A1からテーブル120を当接させる。テーブル120を貫通する第2締結具202を第2雌ねじ穴32bに螺合させる。これにより、テーブル120は、出力軸3に固定される。
【0038】
図2に示すように、第1規制部材4は、環状の部品である。第1規制部材4は、内輪25と第1本体部10の第1方向A1に配置される。第1規制部材4は、締結具203に締結されている。第1規制部材4は、内輪25の第1方向A1の端面25aに当接している。これにより、軸受部2は、固定軸1に対し第1方向A1に移動しないように規制される。
【0039】
また、第1規制部材4の内径は、突出部13の外径と同一である。つまり、第1規制部材4の内周面4aの全周が突出部13の外周面に当接している。これにより、第1規制部材4が径方向に移動して第1規制部材4が第2規制部材5に接触する、ということが回避される。
【0040】
図1に示すように、第2規制部材5は、締結具204に締結される被締結部50と、被締結部50から径方向の内側に延びる被覆部51と、被覆部51の内周端から第2方向A2に延びる円筒部53と、を備える。
【0041】
図2に示すように、被締結部50は、外輪23と第2本体部30の第1方向A1に配置される。被締結部50は、締結具204に締結されている。被締結部50は、外輪23の第1方向A1の端面23aに当接している。これにより、出力軸3は、軸受部2に対し第1方向A1に移動しないように規制される。
【0042】
また、被締結部50の外径は、取付部32の内径と同一である。つまり、被締結部50の外周面50aの全周が取付部32の内周面に当接している。これにより、第2規制部材5が径方向に移動して被締結部50が第1規制部材4に接触する、ということが回避される。
【0043】
図1に示すように、被覆部51は、被締結部50から径方向内側に延びている。被覆部51の径方向の内端は、第1本体部10の内周面10bよりも径方向内側に位置している。被覆部51は、被締結部50と第1規制部材4の間と、第1規制部材4と、突出部13と、の第1方向A1を覆っている。これにより、軸受部2から被締結部50と第1規制部材4の間に潤滑油が漏出したとしても、被覆部51を超えて第1方向A1の方に流出しない。
【0044】
円筒部52の外周面52aは、固定軸1の内周面1aと対向している。円筒部52の外周面52aと固定軸1の内周面1aとは、径方向に離隔している。よって、円筒部52と固定軸1との間には、センサ等を収容できる環状の空間Sが設けられている。
【0045】
第1カバー部材6は、突起部15の内周側に配置され、環状の空間Sの第2方向A2を閉塞する部品である。詳細には、第1カバー部材6は、軸AXを中心に環状を成し、かつ軸方向の厚みが薄い平板状の部品である。第1カバー部材6の外周部は、大径部14の端面14aに重ねられている。第1カバー部材6の外周部は、外周雌ねじ穴14bに螺合する締結具205に締結される。これにより、第1カバー部材6は、固定軸1に支持されている。
【0046】
ステータ支持部材7は、突起部15の外周側に配置される部品である。ステータ支持部材7は、リング状のリング部70と、リング部70の外周部から第1方向A1に突出する円筒状のステータ取付部71と、を有する。リング部70の内周部は、大径部14の端面14aに重ねられている。リング部70の内周部は、内周雌ねじ穴14cに螺合する締結具206に締結される。これにより、ステータ支持部材7は、固定軸1に支持されている。ステータ取付部71は、第1方向A1の端面に雌ねじ穴72が周方向に複数設けられている。なお、ステータ取付部71の外周面から内周面までの厚みはT3となっている(図1参照)。また、リング部70の軸方向の厚みはT4となっている(図1参照)。
【0047】
モータ部8は、ステータ80と、ロータ81とを有する。ロータ81は、出力軸3の第2本体部30の外周面に嵌め込まれた環状のコアと、コア内に埋設されて周方向に等間隔で配置された複数の永久磁石(不図示)と、を備える。ステータ80は、円筒状のホルダ82と、ホルダ82の内周面に沿って周方向に等間隔で配置された複数のコア83と、各コア83に支持されるボビン84と、ボビン84に素線が多重に巻回されてなるコイル85と、を備える。
【0048】
ホルダ82は、ステータ取付部71の第1方向A1に配置される。ホルダ82には、軸方向に貫通する穴部82aが複数設けられている。そして、締結具207の軸部が、ホルダ82の穴部82aを貫通し、ステータ取付部71の雌ねじ穴72に螺合している(図1において軸AXよりも左側の図を参照)。これにより、ステータ80は、ステータ支持部材7に支持される。なお、ステータ取付部71の雌ねじ穴72及びホルダ82の複数の穴部82aは、一部が第2カバー部材9を締結する締結具208用のものとなっている(図1において軸AXよりも右側の図を参照)。
【0049】
第2カバー部材9は、環状の部品である。第2カバー部材9を軸AXから径方向に外側に切った断面形状は、ステータ80の第1方向A1と、ステータ80の外周側と、を覆う略L字状を成している。第2カバー部材9は、締結具208に締結され、ステータ支持部材7に支持されている。また、第2カバー部材9とホルダ82との間には、スペーサ90が介在している。
【0050】
次に実施形態1のダイレクトドライブモータ100の効果について説明する。実施形態1のダイレクトドライブモータ100において、土台110と固定軸1との間に介在する部品、固定軸1と軸受部2との間に介在する部品、及び軸受部2と出力軸3との間に介在する部品が存在しない。つまり、第1締結具201により、固定軸1の突起部15(土台当接部12)と土台110とが締結される。固定軸1の突起部15(土台当接部12)は、土台110に当接している。よって、固定軸1は、土台110に直接支持される。また、軸受部2は、内輪25、26が固定軸1の第1本体部10に嵌合している。よって、軸受部2は、固定軸1に直接支持される。また、出力軸3は、第2本体部30が軸受部2の外輪23、24が嵌合している。よって、出力軸3は、軸受部2に直接支持される。以上から、出力軸3を支持する剛性が高い。よって、出力軸3の回転時、出力軸3の振れが抑制される。さらに、テーブル120は、第2締結具202により出力軸3に締結される。よって、出力軸3は、テーブル120を直接支持する。以上から、テーブル120を支持する剛性が高い。よって、ダイレクトドライブモータ100の駆動時、テーブル120の振れが抑制される。
【0051】
また、ステータ80は、ロータ81との間に生じる磁気的吸引力および磁気的反発力により振動する可能性がある。仮に、固定軸1がステータ80を直接支持すると、ステータ80の振動が固定軸1に伝達し、出力軸3に振れが発生する可能性がある。しかしながら、実施形態1のステータ80は、ステータ支持部材7を介して間接的に固定軸1に支持される。よって、ステータ80の振動は、ステータ支持部材7に吸収され、固定軸1に伝達し難い。以上から、ステータ80の振動により出力軸3に振れが発生する、ということが抑制される。
【0052】
従来、出力軸3の外周面に他の部品を固定するため、フライス加工等により出力軸3の外周面を切削して断面がD形状となるように加工する場合がある。このような加工を行うと、出力軸3に内部応力が発生し、出力軸3の内周面が歪む。出力軸3の内周面が非円形となると、出力軸3の嵌合の締め付け力は、周方向で均一とならず、振れの原因となる。一方、実施形態1の第2本体部30の外周面30aと内周面30bは、軸方向から視て円形状となっている。つまり、第2本体部30の外周面30aは、フライス加工等の加工がされておらず、第2本体部30の内周面30bの締め付け力は、周方向に均一に作用する。よって、出力軸3の回転時、出力軸3の振れが抑制される。
【0053】
また、実施形態1の第1本体部10の外周面10aと内周面10bは、軸方向から視て円形状となっている。よって、第1本体部10においてもフライス加工等の加工がされておらず、内部応力が作用していない。第1本体部10の外周面10aの締め付け力は、周方向に均一に作用する。よって、固定軸1に対する軸受部2の振れが抑制され、ひいては、軸受部2に支持される出力軸3の振れが抑制される。
【0054】
また、固定軸1と出力軸3との間に介在する部品は、軸受部2のみとなっている。仮に、固定軸1と出力軸3との間に介在する部品点数が多くなると、組み付け公差の影響により、固定軸1に対し出力軸3が偏心することがある。つまり、実施形態1のダイレクトドライブモータ100によれば、組み付け公差の影響が少なく、固定軸1に対する出力軸3の同芯度が高い。このため、ワークを精度良く搬送することができる。
【0055】
また、軸受部2は、固定軸1の第1当接部11の端面11aに当接し、軸方向に位置決めされる。出力軸3は、第2当接部31の端面31aが軸受部2に当接し、軸方向に位置決めされる。よって、固定軸1に対する出力軸3の軸方向の位置決めに関し、固定軸1と出力軸3との間に介在する部品が軸受部2のみである。よって、組み付け公差の影響が少ない。このため、出力軸3の取付部32の端面32aは、所望の位置(高さ)となり、ワークを精度良く搬送することができる。また、土台110と固定軸1との間に介在する部品、出力軸3とテーブル120との間に、他の部品が介在しない。このような理由からも、組み付け公差の影響が少なく、ワークを精度良く搬送することができる。
【0056】
また、雌ねじ穴に締結具を螺合させると、雌ねじ穴の穴径が大きくなるように変形する。仮に第1雌ねじ穴15bが内輪25、26の転動面と軸方向に重なると、第1雌ねじ穴15bと内輪25、26とが比較的近くなる。よって、第1締結具201が第1雌ねじ穴15bに螺合することにより内輪25、26の転動面が歪み、転動体27、28が円滑に回転しない可能性がある。しかしながら、実施形態1の固定軸1の第1雌ねじ穴15bは、内輪25、26の転動面よりも径方向内側に配置され、離隔している。よって、内輪25、26の転動面は変形していない。同様に、第2雌ねじ穴32bは、外輪23、24の転動面よりも径方向外側に配置され、内輪25、26の転動面と離隔している。よって、内輪25、26の転動面は変形していない。以上から、転動体27、28は円滑に転動し、出力軸3が円滑に回転する。
【0057】
第1本体部10の径方向の厚みT1と、第2本体部20の径方向の厚みT2と、リング部70の軸方向の厚みT3と、ステータ取付部71の径方向の厚みT4は、厚みが大きい順に、T1>T2>T4>T3となっている。また、第1本体部10の径方向の厚みT1は、軸受部2の径方向の長さ(厚み)よりも大きい。このため、第1本体部10の剛性が向上する。よって、出力軸3を支持する剛性が高く、出力軸3の振れが抑制される。また、第1本体部10を有する固定軸1に第1締結具201等が螺合するものの、固定軸1の変形が抑制される。同様に、第2本体部20の径方向の厚みT2は、軸受部2の径方向の長さ(厚み)よりも大きい。よって、第2本体部30を有する出力軸3に締結具204等が螺合するものの、出力軸3の変形が抑制される。また、第2本体部30は、リング部70の厚みT3とステータ取付部71の厚みT4のそれぞれよりも大きい。よって、ダイレクトドライブモータ100の駆動時、ステータ80とロータ81との間で磁気的吸引力および磁気的反発力が作用するものの、第2本体部20の方は変形し難く、出力軸3が円滑に回転する。なお、本開示は、T2≧T4であってもよい。これによっても、ステータ80とロータ81との間で作用する磁気的な力により、リング部70が撓み、第2本体部20の変形が回避される。
【0058】
以上、実施形態1のダイレクトドライブモータ100は、筒状の固定軸1と、内輪25、26が固定軸1の外周面に嵌合する軸受部2と、軸受部2の外輪23、24が内周面に嵌合する筒状の出力軸3と、内輪25、26に対し、出力軸3の軸AXと平行な軸方向のうち第1方向A1に配置される第1規制部材4と、外輪23、24に対し、第1方向A1に配置される第2規制部材5と、出力軸3にトルクを付与するモータ部8と、を備える。固定軸1は、内輪25、26に嵌合する筒状の第1本体部10と、第1本体部10から第1方向A1と反対の第2方向A2に延出し、内輪26の第2方向A2の端面26aに当接する筒状の第1当接部11と、第1当接部11から第2方向A2に延出し、第2方向A2の端面15aが土台110と当接する土台当接部12と、土台当接部12の第2方向A2の端面15aに設けられ、土台当接部12と土台110とを締結するための第1締結具201が螺合する第1雌ねじ穴15bと、を有する。出力軸3は、外輪23、24に嵌合する筒状の第2本体部30と、第2本体部30から第2方向A2に位置し、外輪24の第2方向A2の端面24aに当接する筒状の第2当接部31と、第2本体部30の外周部から第1方向A1に延出し、第1方向A1の端面32aが第2規制部材5よりも第1方向A1に突出する筒状の取付部32と、取付部32の第1方向A1の端面32aに設けられ、取付部32と対象物(テーブル120)とを締結するための第2締結具202が螺合する第2雌ねじ穴32bと、を有する。第1規制部材4は、第1本体部10の第1方向A1の端面10cに締結され、かつ内輪25の第1方向A1の端面25aに当接する。第2規制部材5は、第2本体部30の第1方向A1の端面30cに締結され、かつ外輪23の第1方向A1の端面23aに当接する。
【0059】
このようなダイレクトドライブモータ100によれば、出力軸3を支持する剛性が高く、出力軸3の振れを抑制できる。固定軸1と出力軸3との間に介在する部品は、軸受部2のみで、組み付け公差の影響が少ない。よって、固定軸1に対する出力軸3の同芯度が高い。さらに、出力軸3の取付部32の端面32aは、所望の位置(高さ)となる。よってワークを精度良く搬送することができる。
【0060】
また、実施形態1のダイレクトドライブモータ100のモータ部8は、出力軸3の外周面に嵌合するロータ81と、ロータ81の外周側を囲むステータ80と、を有する。土台当接部12の外周側には、土台当接部12から径方向外側に延びてステータ80を支持するステータ支持部材7が締結される。
【0061】
このようなダイレクトドライブモータ100によれば、ステータ80の振動が固定軸1に伝達し難い。よって、出力軸3の振れを抑制できる。
【0062】
また、実施形態1のダイレクトドライブモータ100において、第2本体部30の内形及び外形は、軸AXを中心とする円形状を成している。
【0063】
このようなダイレクトドライブモータ100によれば、軸受部2に対する第2本体部30の内周面30bの締め付け力は、周方向に均一に作用する。よって、出力軸3の振れを抑制できる。
【0064】
また、実施形態1のダイレクトドライブモータ100において、第1本体部10の内形及び外形は、軸AXを中心とする円形状を成している。
【0065】
このようなダイレクトドライブモータ100によれば、軸受部2に対する第1本体部10の外周面10aの締め付け力は、周方向に均一に作用する。よって、出力軸3の振れを抑制できる。
【0066】
また、実施形態1のダイレクトドライブモータ100において、第1雌ねじ穴15bは、内輪25、26の転動面よりも径方向内側に配置される。第2雌ねじ穴32bは、外輪23、24の転動面よりも径方向外側に配置される。
【0067】
このようなダイレクトドライブモータ100によれば、内輪25、26の転動面及び外輪23、24の転動面の変形が抑制される。よって、転動体27、28が円滑に回転し、出力軸3も円滑に回転する。
【0068】
以上、実施形態1のダイレクトドライブモータ100について説明したが、本開示のダイレクトドライブモータはこれに限定されない。例えば、軸受部2は、2つの軸受を備えるが、1つ又は3つ以上の軸受から構成されてもよい。
【符号の説明】
【0069】
100 ダイレクトドライブモータ
1 固定軸
2 軸受部
3 出力軸
4 第1規制部材
5 第2規制部材
6 第1カバー部材
7 ステータ支持部材
8 モータ部
9 第2カバー部材
10 第1本体部
11 第1当接部
12 土台当接部
13 突出部
14 大径部
15 突起部
15b 第1雌ねじ穴
30 第2本体部
31 第2当接部
32 取付部
32b 第2雌ねじ穴
110 土台
120 テーブル
図1
図2
図3
図4