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特許7683670弾性部材およびコンクリートパネルの並設方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-19
(45)【発行日】2025-05-27
(54)【発明の名称】弾性部材およびコンクリートパネルの並設方法
(51)【国際特許分類】
   B28B 11/02 20060101AFI20250520BHJP
   B28B 11/24 20060101ALI20250520BHJP
【FI】
B28B11/02
B28B11/24
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023187438
(22)【出願日】2023-11-01
(65)【公開番号】P2025075921
(43)【公開日】2025-05-15
【審査請求日】2023-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】岸本 和樹
(72)【発明者】
【氏名】中西 光治
【審査官】大西 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-210724(JP,A)
【文献】中国実用新案第213320801(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 11/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オートクレーブ養生されるコンクリートパネルの一主面に位置し厚さ方向に凹み上記一主面に沿って伸びるリップ溝形鋼に係脱自在であり、弾性体で構成される弾性部材であって、
板状の本体と、
上記本体の一主面から突出する第1凸部と、
上記第1凸部の突出する第1方向における先端部から上記本体の一主面に沿う第2方向に突出し、上記本体の一主面と対向する対向面を有する第2凸部と、を備え
上記弾性部材が上記リップ溝形鋼に係止された状態において、上記本体が上記リップ溝形鋼を覆う弾性部材。
【請求項2】
上記第2凸部の先端は、上記第2方向における上記本体の一主面の一端より上記第1凸部に近い請求項1に記載の弾性部材。
【請求項3】
上記第1凸部および上記第2凸部は、上記第1方向および上記第2方向に交差する第3方向において、上記本体の一主面における一端から他端まで延びる請求項1に記載の弾性部材。
【請求項4】
請求項1に記載された弾性部材を上記コンクリートパネルに係合するとともに、オートクレーブ養生用に上記コンクリートパネルを並設する並設装置を用いた並設方法であって、
上記リップ溝形鋼の位置する一主面を上方に向けて上記コンクリートパネルを配置するパネル配置工程と、
パーツフィーダにおいて上記本体の一主面を下方に向けた状態で供給される上記弾性部材に対して、上記第2凸部の突出する向きを測距センサからの出力に基づいて特定する特定工程と、
ロボットアームが上記弾性部材を保持する保持工程と、
上記特定工程において特定された上記第2凸部の突出する向きに基づいて、上記ロボットアームを動作させて、上記第2凸部が上記第1凸部から突出する向きを同じにして、上記リップ溝形鋼における開口に上記第2凸部を進入する状態に上記弾性部材を複数の位置に配置して、上記弾性部材をリップ溝形鋼に係止する弾性部材配置工程と、
上記第2凸部が上記第1凸部から下向きに延びるように、上記コンクリートパネルを起立させて、複数の上記コンクリートパネルを並設する並設工程と、を含む並設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オートクレーブ養生されるコンクリートパネルに供される弾性部材およびコンクリートパネルの並設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、養生ラックに立て掛けて積載される複数のコンクリート被成形材の間に設置することで、コンクリート被成形材同士の接触を防止する破損防止具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-210724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の破損防止具は鋼製フレームを備えているので、外壁材の裏面に鋼製フレームが当接すると、外壁材の裏面が破損するおそれがある。また、外壁材を起立させた状態で、複数の破損防止具をリップに引っ掛ける作業には複数人を要するため、作業効率に劣る。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、コンクリートパネルのリップ溝形鋼に装着が容易な弾性部材およびコンクリートパネルの並設方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明は、オートクレーブ養生されるコンクリートパネルの一主面に位置し厚さ方向に凹み上記一主面に沿って伸びるリップ溝形鋼に係脱自在であり、弾性体で構成される弾性部材に関する。弾性部材は、板状の本体と、上記本体の一主面から突出する第1凸部と、上記第1凸部の突出する第1方向における先端部から上記本体の一主面に沿う第2方向に突出し、上記本体の一主面と対向する対向面を有する第2凸部と、を備える。
【0007】
リップ溝形鋼が上向きに開口した状態のコンクリートパネルにおいて、リップ溝形鋼の開口に第1凸部および第2凸部が進入するように弾性部材が配置される。そして、コンクリートパネルが起立されると、弾性部材がリップ溝形鋼に係止された状態となり、弾性部材の本体がリップ溝形鋼を覆う。したがって、複数のコンクリートパネルが相互に立てかけられた状態で並べられると、一方のコンクリートパネルのリップ溝形鋼と、他方のコンクリートパネルの表面との間に弾性部材の本体が位置するので、リップ溝形鋼がコンクリートパネルの表面に接触しない。
【0008】
(2) 上記第2凸部の先端は、上記第2方向における上記本体の一主面の一端より上記第1凸部に近くてもよい。
【0009】
リップ溝形鋼の開口に第1凸部および第2凸部を進入させることが容易である。
【0010】
(3) 上記第1凸部および上記第2凸部は、上記第1方向および上記第2方向に交差する第3方向において、上記本体の一主面における一端から他端まで延びてもよい。
【0011】
リップ溝形鋼に係合する弾性部材の姿勢が安定する。
【0012】
(4) 本発明は、上記弾性部材を上記コンクリートパネルに係合するとともに、オートクレーブ養生用に上記コンクリートパネルを並設する並設装置を用いた並設方法に関する。並設方法は、上記リップ溝形鋼の位置する一主面を上方に向けて上記コンクリートパネルを配置するパネル配置工程と、パーツフィーダにおいて上記本体の一主面を下方に向けた状態で供給される上記弾性部材に対して、上記第2凸部の突出する向きを測距センサからの出力に基づいて特定する特定工程と、ロボットアームが上記弾性部材を保持する保持工程と、上記特定工程において特定された上記第2凸部の突出する向きに基づいて、上記ロボットアームを動作させて、上記第2凸部が上記第1凸部から突出する向きを同じにして、上記リップ溝形鋼における開口に上記第2凸部を進入する状態に上記弾性部材を複数の位置に配置する弾性部材配置工程と、上記第2凸部が上記第1凸部から下向きに延びるように、上記コンクリートパネルを起立させて、複数の上記コンクリートパネルを並設する並設工程と、を含む。
【0013】
パーツフィーダにより供給された弾性部材の第2凸部を同じ向きとして、コンクリートパネルのリップ溝形鋼に複数の弾性部材を配置できる。これにより、コンクリートパネルのリップ溝形鋼に弾性部材を係合させて、複数枚のコンクリートパネルをオートクレーブ養生のために並設する作業が自動化できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、コンクリートパネルのリップ溝形鋼に弾性部材が容易に装着できる。また、オートクレーブ養生のために複数のコンクリートパネルを並設する作業を自動化できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、オートクレーブ養生前のコンクリートパネル100の斜視図である。
図2図2は、弾性部材1を係合したコンクリートパネル100の斜視図である。
図3図3は、弾性部材1を示す斜視図である。
図4図4は、弾性部材1の平面図である。
図5図5は、弾性部材1の側面図である。
図6図6は、オートクレーブ養生前に並設されたコンクリートパネル100の斜視図である。
図7図7は、図6のVII-VII線断面図である。
図8図8は、コンクリートパネル100の並設装置200を示す概略図である。
図9図9は、コンクリートパネル100を保持した保持アーム210を示す概略平面図である。
図10図10は、パーツフィーダ220の全体構成を示す平面図である。
図11図11は、パーツフィーダ220の全体構成を示す側面図である。
図12図12は、第2搬送路227と、第3搬送路228と、弾性部材1との位置関係を示す平面図である。
図13図13は、第2搬送路227と、第3搬送路228と、弾性部材1との他の位置関係を示す平面図である。
図14図14は、第3搬送路228に落下した弾性部材1を示す斜視図である。
図15図15は、第2搬送路227と、第3搬送路228と、弾性部材1とのさらに他の位置関係を示す平面図である。
図16図16は、取り出し位置500に位置する弾性部材1の平面図を示し、図16(a)は、第2凸部13が前方に延びる弾性部材1の側面図、図16(b)は、第2凸部13が後方に延びる弾性部材1の側面図を示す。
図17図17は、弾性部材1を保持する装着アーム230を示す概略平面図である。
図18図18は、並設装置200の動作の流れを示すフローチャートである。
図19図19は、弾性部材1の回転態様を示す平面図である。
図20図20は、コンクリートパネル100に弾性部材1を装着する装着アーム230概略斜視図である。
図21図21は、養生ラック400にコンクリートパネル100を並設する保持アーム210を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明が具現化された一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
【0017】
以下、弾性部材1およびコンクリートパネル100に関する方向として、上下方向7、前後方向8、および左右方向9が示される。前後方向8および左右方向9は、共に、上下方向7に直交する横方向であって、相互に直交している。上下方向7は、寝かせて設置されているコンクリートパネル100の主面の向く方向であり、いわゆるコンクリートパネル100の厚み方向である。上下方向7は、弾性部材1の主面の向く方向であり、いわゆる弾性部材1の本体11の厚み方向である。左右方向9は、寝かせて設置されているコンクリートパネル100の長手方向である。左右方向9は、弾性部材1の第1凸部12が主面に沿って延びる方向である。前後方向8は、寝かせて設置されているコンクリートパネル100の短手方向である。前後方向8は、弾性部材1の第2凸部13が第1凸部12から突出する方向である。
【0018】
[コンクリートパネル100]
図1および図2に示されるように、コンクリートパネル100は、平面視における外形が長方形の板体である。コンクリートパネル100は、プレキャストコンクリートであり、工場において型枠によりコンクリートがパネル形状に成型され、型枠から脱型された後にオートクレーブ養生されることにより製造される。
【0019】
図1に示されるように、コンクリートパネル100の表面102(コンクリートパネル100の他の一主面の一例)は、外壁において外向きとなる面であり、意匠のための凹凸模様などが施されている。表面102の模様は、型枠によって成型される。コンクリートパネル100には、リップ溝形鋼110aが埋め込まれている。リップ溝形鋼110aの一部は、裏面101(コンクリートパネル100の一主面の一例)に露出している。
【0020】
リップ溝形鋼110aは、所謂C型の鋼材であり、コンクリートパネル100の長手方向である左右方向9に沿って延びている。本実施形態では、2本のリップ溝形鋼110a,110bが前後方向8に間隔を空けてコンクリートパネル100に位置している。リップ溝形鋼110a,110bは、型枠内に配置されて型枠にコンクリートが流し込まれることにより、コンクリートパネル100に埋設される。リップ溝形鋼110a,110bは、コンクリートパネル100を住宅の外壁として配置するときに、金具などで固定するために用いられる。
【0021】
リップ溝形鋼110a,110bは、左右方向9に延びる溝をそれぞれ有する。本実施形態では、前後方向8の後方に位置するリップ溝形鋼110aの溝が溝103aと示され、前方に位置するリップ溝形鋼110bの溝が溝103bと示される。溝103a,103bは、コンクリートパネル100の裏面101が下方へ凹む。
【0022】
溝103aは、裏面101において上向きに開口する。溝103aの開口は、リップ溝形鋼110aの一対のリップ111a,112aにより区画される。リップ111a,112aは、左右方向9に細長な平板形状である。リップ111a,112aは、コンクリートパネル100の裏面101より上方へ若干突出する。
【0023】
溝103bは、裏面101において上向きに開口する。溝103bの開口は、リップ溝形鋼110bの一対のリップ111b,112bにより区画される。リップ111b,112bは、左右方向9に細長な平板形状である。リップ111b,112bは、コンクリートパネル100の裏面101より上方へ若干突出する。
【0024】
[弾性部材1]
図2から図5に示されるように、弾性部材1は、シリコンゴム製である。弾性部材1は、本体11と、第1凸部12と、第2凸部13と、を備える。弾性部材1の全体がシリコンゴム製であるので、万一、弾性部材1がコンクリートパネル100へ接触したとしても、接触の影響を軽減することができる。
【0025】
本体11は、平面視における外形が長方形である。本体11の上面202(本体11の一主面の一例)は、平面である。本体11の下面201(本体11の他の一主面の一例)も平面である。本体11において長方形の短辺に相当する前後方向8における長さD1は、一対のリップ111a,112a間の隙間114の長さL1(図7参照)よりも大きい(D1>L1)。また、本体11の上下方向7における長さD1は、図1における一対のリップ111aの後端から112bの前端までの長さL2(図7参照)よりも大きい(D1>L2)。
【0026】
第1凸部12は、本体11の下面201から下方に向けて突出する。第1凸部12は、左右方向9において、本体11の左端から右端まで延びる。第1凸部12の前後方向8における長さD2は、一対のリップ111a,112b間の隙間114の長さL1よりも短い(D2<L1)。これにより、第1凸部12は、上方から一対のリップ111a,112a間の隙間114を通り、リップ溝形鋼110aの内部に挿入可能な前後方向8における寸法を有する。下面201における第1凸部12の位置は、前後方向8において、本体11の下面201の一端(前端)よりも他端側(後端側)である。これにより、第1凸部12と本体11の下面201の一端(前端)との間には、本体11の下面201の一部(後述する対向面31に対向する面)が位置する。
【0027】
第1凸部12の面のうち前方を向く面は、本体11の下面201のうち、前端側に位置する面と、後述する第2凸部13の対向面31とを接続する接続面41である。接続面41における上下方向7の長さD3は、例えば、一対のリップ111a,112aの前後方向8における長さL3より大きい(D3>=L3)。本実施形態において、接続面41は、後方に向けて湾曲する。また、接続面41と、本体11の下面201との隅部は、曲面状に面取りされている。接続面41と、対向面31との隅部は、曲面状に面取りされている。これにより、隅部への応力集中を抑制できるので、弾性部材1の強度が担保される。
【0028】
第2凸部13は、第1凸部12の先端部(下端部)から、下面201に沿って前方に向けて延びる。第2凸部13は、第1凸部12と同様に、本体11の左端から右端まで延びる。第2凸部13の前端は、本体11の前端よりも後方に位置する。第2凸部13の上方を向く面は、本体11の下面201と対向する対向面31である。第2凸部13の前後方向8における長さD4は、一対のリップ111a,112a間の隙間114の長さL1よりも短い(D4<L1)。第1凸部12の上下方向7における長さD2と、第2凸部13の上下方向7における長さD4との和は、一対のリップ111a,112a間の隙間114の長さL1よりも短い(D2+D4<L1)。第1凸部12および第2凸部13は、上方から一対のリップ111a,112aの隙間114を通り、リップ溝形鋼110aの内部に挿入可能な寸法を有する。上下方向7において、第1凸部12の接続面41から本体11の後端までの長さD5は、リップ111a,112a間の隙間114の長さL1よりも大きい(D5>L1)。これにより、本体11の下面201における後端部をリップ111aの上面113aに当接させることができる。
【0029】
本体11の下面201と、第1凸部12と、第2凸部の13とによって囲まれる空間を、本実施形態において係合凹部14と称する。係合凹部14は、左右方向9および前方に開口する。
【0030】
[弾性部材1の使用方法]
弾性部材1は、図6および図7に示されるように、養生ラック400内に立てられたコンクリートパネル100のリップ111a,112aに、係合凹部14が係合した係合状態で用いられる。係合状態において、弾性部材1の下面201は、リップ111a,112aの上面113a,114aに当接する。弾性部材1は、リップ111a,112aの上面113a,114aと、リップ112aの下面115aとに当接することで、3つの面によって支持される。これにより、弾性部材1が係合状態に維持される。複数の弾性部材1は、左右方向9に沿って、一方のリップ溝形鋼110aのリップ112aおよび他方のリップ溝形鋼110bのリップ112bそれぞれに装着される。例えば、図2では、リップ溝形鋼110a,110bにそれぞれ3個の弾性部材1が装着されている。なお、図6および図7では、最も後方に並設されるコンクリートパネル100には弾性部材1が装着されない例が示されている。
【0031】
コンクリートパネル100に装着された弾性部材1の上面202は、装着されたコンクリートパネル100の後方に並設される他のコンクリートパネル100の表面102に当接可能である。これにより、前後方向8で隣接するコンクリートパネル100の一方が揺動または反った場合であっても、並設されるコンクリートパネル100同士の接触や、リップ溝形鋼110a,110bとコンクリートパネル100との接触が抑制される。
【0032】
[コンクリートパネル100の並設装置200]
次に、コンクリートパネル100の並設装置200について図8から図12を参照して説明する。
コンクリートパネル100の並設装置200は、オートクレーブ養生前のコンクリートパネル100に弾性部材1を装着するとともに、弾性部材1が装着されたコンクリートパネル100をオートクレーブ養生用に養生ラック400内に並設する装置である。並設装置200は、図8に示されるように、保持アーム210(ロボットアームの一例)と、パーツフィーダ220と、装着アーム230(ロボットアームの一例)と、制御装置240と、を備える。
【0033】
図9に示されるように、保持アーム210は、例えば、図示しないサーボモータを用いた軸制御により、上下方向7、前後方向8、および左右方向9に先端を移動および回転可能なロボットアームである。保持アーム210の先端には、コンクリートパネル100を保持するための保持装置211が位置している。保持装置211は、リップ112aおよびリップ111bに係合することで、コンクリートパネル100を保持または解除する複数の爪部212が位置している。爪部212は、保持装置211の内部に位置する図示しないサーボモータの動作に応じて、リップ112aおよびリップ111bに係脱することによって、コンクリートパネル100を保持および解除する。爪部212は、例えば、リップ溝形鋼110a,110bのそれぞれの隙間114(開口)からリップ溝形鋼110a,110bの内部に進入する。爪部212は、サーボモータの回転に応じてリップ112aおよびリップ111bを互いに挟み込むように移動することで、コンクリートパネル100に係脱する。保持アーム210および保持装置211(サーボモータ)は、後述する制御装置240から出力される制御信号に基づいて動作する。
【0034】
図10に示されるように、パーツフィーダ220は、コンクリートパネル100に係脱する弾性部材1を供給する装置である。パーツフィーダ220は、例えば、振動フィーダである。パーツフィーダ220は、ホッパ219と、搬送装置222と、を備える。
【0035】
ホッパ219は、弾性部材1を搬送装置222に投入するための装置である。図10および図11に示されるように、ホッパ219は、例えば、ベルト式のコンベヤであり、左右方向9に延びる。ホッパ219の左端は、右端よりも上方に位置する。ホッパ219の左端は、搬送装置222の上方に位置する。ホッパ219は、床面F上に位置する。
【0036】
搬送装置222は、ホッパ219から投入された弾性部材1の向きおよび姿勢を整えつつ搬送する装置である。搬送装置222は、ボウル223と、アタッチメント224と、加振機225と、を備える。
【0037】
ボウル223は、ホッパ219の左端における直下に位置する。ボウル223は、ホッパ219から投入される弾性部材1の受け皿である。ボウル223は、平面視における外形が円形であり、下方に向けてすり鉢状に凹む、いわゆる段付ボウルである。ボウル223には、内周に沿って螺旋状に延びる長板状の第1搬送路226(レール)が位置する。第1搬送路226は、弾性部材1をボウル223の径方向外側且つ上方に向けて搬送する搬送路である。第1搬送路226の幅方向の一端は、ボウル223の内周面に接続されている。第1搬送路226の上面は、搬送される弾性部材1を支持する支持面である。
【0038】
アタッチメント224は、ボウル223の外周に沿って位置する。アタッチメント224は、ボウル223に支持される。アタッチメント224は、第1搬送路226から搬送される弾性部材1をさらに搬送する搬送機構である。アタッチメント224は、第1搬送路226の上端(弾性部材1を搬送する方向(以下、搬送方向ともいう)における先端)に接続されている。アタッチメント224は、第2搬送路227と、第3搬送路228と、棒体229と、を備える。
【0039】
第2搬送路227は、第1搬送路226の搬送方向における先端に接続されている。第2搬送路227は、板状であり、ボウル223の外周に沿って、円弧状に構成されている。第2搬送路227の上面は、上方且つ外周側(径方向外側)に向けて傾斜する傾斜面218(図12参照)である。第2搬送路227の径方向外側の上面と、径方向内側の上面との間には段差が位置しており、両者を接続する面である段差面217が構成されている。段差面217は、第2搬送路227の搬送方向に沿って延びている。なお、第2搬送路227の搬送方向における先端は、第3搬送路228の上方に位置している。
【0040】
第3搬送路228は、第2搬送路227の下方に位置しており、円弧状に構成される。第3搬送路228の外周は、第2搬送路227の外周よりも径方向外側に位置する。第3搬送路228は、底板216と、外周壁235と、を備える。
【0041】
底板216は、板状であり、上下方向7において第2搬送路227の下方に位置する。底板216の外周は、第2搬送路227の外周よりも径方向外側に位置する。底板216の上面は、第2搬送路227と同様に、上方且つ径方向外側に向けて傾斜する傾斜面233である。底板216における径方向外側の上面と、径方向内側の上面との間には段差が位置しており、両者を接続する面である段差面234が構成されている。段差面234は、底板216において弾性部材1を搬送する向きである搬送方向に沿って延びる。底板216の搬送方向における先端は、取り出し位置500に接続されている。なお、底板216には、段差面234に対して第1凸部12または第2凸部13が当接していない弾性部材1を第3搬送路228から除去するための図示しない切欠きが位置してもよい。切欠きは、搬送方向における棒体よりも底板216の先端側において、段差面234よりも径方向内側の一定距離(例えば、弾性部材1の長手方向の長さよりも十分に長い距離)に構成される。
【0042】
外周壁235は、底板216における径方向外側の端縁から上方に起立する壁体である。外周壁235は、底板216に沿って延びる。外周壁235の高さは、上下方向7において、弾性部材1の本体11の短手方向の長さよりも大きい。外周壁235と、第2搬送路227の径方向外側の端部との間の距離は、弾性部材1の厚さ(本体11の板厚と、第1凸部12の突出高さとの合計)よりも大きい。
【0043】
棒体229は、第2搬送路227の下方に位置する。棒体229は、第2搬送路227の下方から第3搬送路228の上方に向けて突出する。棒体229は、例えば、円柱である。棒体229の突出する先端部は、第3搬送路228の上面を幅方向に横断するように円弧状に湾曲して位置する。棒体229の先端部は、例えば、第2搬送路227に沿う方向から、第2搬送路227の幅方向を横断する方向に湾曲する。第3搬送路228の上面から棒体229までの距離は、弾性部材1の短手方向における長さよりも短い。
【0044】
加振機225は、ボウル223およびアタッチメント224を振動させる装置である。加振機225は、例えば、ボウル223およびアタッチメント224の下方に位置する。加振機225は、ボウル223およびアタッチメント224を支持する。加振機225は、ボウル223およびアタッチメント224を振動させることにより、弾性部材1を移動させる。加振機225は、床面F上に位置する。
【0045】
[パーツフィーダ220の動作]
複数の弾性部材1は、ホッパ219におけるコンベヤ上に供給されることにより、コンベヤ上を左方に向けて移動する。ホッパ219の左端まで移動した複数の弾性部材1は、下方に落下することにより、ボウル223に投入される。ボウル223に投入された弾性部材1は、ボウル223の振動により、第1搬送路226に沿ってボウル223内を移動する。
【0046】
複数の弾性部材1は、第1搬送路226に沿って移動する。複数の弾性部材1のうち、一部の弾性部材1は、他の弾性部材1との接触などにより第1搬送路226から落下する。落下した弾性部材1は、再度、第1搬送路226を移動する。これにより、ボウル223に投入された弾性部材1は、第1搬送路226において搬送方向(図10における時計回り方向)に沿って整列されつつ移動する。
【0047】
第1搬送路226を通過した弾性部材1は、第2搬送路227に移動する。図12に示されるように、第2搬送路227において、弾性部材1は、第1凸部12または第2凸部13が段差面217に当接した状態で第2搬送路227を移動する。第2搬送路227を通過した弾性部材1は、第2搬送路227の搬送方向の先に位置する第3搬送路228に落下する。
【0048】
図13に示されるように、第2搬送路227において、第1凸部12または第2凸部13が段差面217に当接していない弾性部材1は、第2搬送路227の傾斜面218により、径方向外側に向けて滑る。弾性部材1は、第2搬送路227から、第3搬送路228に滑り落ちる。弾性部材1は、第2搬送路227から離れて第3搬送路228に向けて落ちる際に、上下方向7で反転しつつ落下する。落下した弾性部材1は、棒体229の位置に向けて搬送方向に移動する。
【0049】
第3搬送路228に落下した弾性部材1の一部は、第1凸部12を下方に向けるとともに、第1凸部12または第2凸部13が段差面234に当接する状態になる。一方、図14に示されるように、外周壁235の径方向内側の面に立て掛けられた状態で接触して、反転できていない弾性部材1は、搬送方向に進行することで棒体229に接触する。弾性部材1は、棒体229に接触することで強制的に反転される。図15に示されるように、強制的に反転された弾性部材1は、他の弾性部材1と同様に、第1凸部12を下方に向けるとともに、第1凸部12が段差面234に当接した状態で第3搬送路228(底板216の上面)を搬送される。なお、第3搬送路228において、第1凸部12が段差面234に沿って当接しない場合であっても、傾斜面233による傾斜とアタッチメント224の振動とにより、弾性部材1の第1凸部12は、段差面234に沿って当接するように、搬送中において姿勢制御される。
【0050】
第2搬送路227の搬送方向先端から落下した弾性部材1は、棒体229の位置を通過して第3搬送路228を搬送された弾性部材1と第3搬送路228において合流する。合流した弾性部材1は、第3搬送路228の搬送方向の先に位置する取り出し位置500に搬送される。
【0051】
図16(a),(b)に示されるように、取り出し位置500には、予め定められた一方から水平方向における第1凸部12または第2凸部13までの距離Lを測定する測距センサ221が位置している。測距センサ221の測定結果を示す出力は、後述する制御装置240に出力される。
【0052】
図17に示されるように、装着アーム230は、例えば、図示しないサーボモータを用いた軸制御により、上下方向7、前後方向8、および左右方向9に先端を移動および回転可能なロボットアームである。装着アーム230の先端には、弾性部材1(本体11)の上面202を吸着可能な吸着装置が231位置している。吸着装置231は、弾性部材1の上面202を吸着する吸盤を用いて弾性部材1を保持する。一方、吸着装置231は、吸着を解除することで弾性部材1の保持を解除する。装着アーム230は、後述する制御装置240から出力される制御信号に基づいて動作する。
【0053】
制御装置240は、例えば、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置である。制御装置は、保持アーム210、測距センサ221、および装着アーム230に電気的に接続されている。制御装置240は、CPU241、メモリ242、および通信IF243を有する。
【0054】
メモリ242は、RAM、ROM、及びEEPROMからなる。メモリ242は、保持アーム210を動作させるプログラムと、測距センサ221の出力に基づいて弾性部材1の向きを特定するプログラムと、装着アーム230を動作させるプログラムとを格納する。また、メモリ242は、1つのコンクリートパネル100に対して装着すべき弾性部材の数および位置を予め格納する。メモリ242は、1つの養生ラック400に対して並設すべきコンクリートパネル100の数を格納する。なお、CPU241は、弾性部材1の設置動作の完了およびコンクリートパネルの並設動作の完了に応じて、1つのコンクリートパネル100に対する装着済みの弾性部材1の数と、養生ラック400に並設しているコンクリートパネル100の数をインクリメントしてメモリ242に格納する。CPUは241、通信IF243を介して測距センサ221からの出力を取得する。
【0055】
[コンクリートパネル100の並設装置200における動作]
次に、コンクリートパネル100の並設装置200における動作について図18から図21を参照して説明する。
図18に示されるように、CPU241は、保持アーム210を動作させることにより、オートクレーブ養生前のコンクリートパネル100が裏面101を上方に向けて配置するパネル配置工程を実行する(ステップS1)。保持アーム210は、図9に示されるように、表面102を下方に向けたコンクリートパネル100を支持可能な支持台300にコンクリートパネル100を配置した後、保持装置211における保持の解除により、コンクリートパネル100から外された状態になる。
【0056】
次いで、CPU241は、測距センサ221からの出力を取得するとともに、パーツフィーダ220の取り出し位置500に位置する弾性部材1の向き(第2凸部13の向き)を特定する特定工程を実行する(ステップS2)。特定処理では、測距センサ221の出力によって示される第1凸部12または第2凸部13までの距離Lに応じて、弾性部材1の向きが特定される。測距センサ221からの出力によって示される距離Lが所定の値よりも小さい場合(図16(a)参照)、測距センサ221の対面には第2凸部13が位置しており、弾性部材1の向きとして、第2凸部13が測距センサ221に向かう方向(前方)に延びていることが特定される。測距センサ221からの出力によって示される距離Lが所定の値よりも大きい場合(図16(b)参照)、測距センサ221の対面には第1凸部12が位置しており、弾性部材1の向きとして、第2凸部13が測距センサ221に向かう方向とは逆向き(後方)に延びていることが特定される。
【0057】
次いで、CPU241は、装着アーム230を制御することにより、弾性部材1の上面202を保持する保持工程を実行する(ステップS3)。保持工程では、装着アーム230の吸着装置231が取り出し位置500に位置する弾性部材1の直上に移動される。吸着装置231が吸着動作を開始することで、取り出し位置500に位置する弾性部材1が保持される。
【0058】
次いで、CPU124は、装着アーム230を制御することにより、弾性部材配置工程を実行する。まず、CPU124は、弾性部材1の向きを調整する(ステップS4)。ここで、CPU124は、特定工程において特定された第2凸部13の突出する向きに基づいて、装着アーム230を動作させる。CPU124は、特定工程において特定された第2凸部13の向く方向に基づいて、上下方向7を軸方向として弾性部材1を回転させる。装着アーム230は、リップ溝形鋼110aの開口から下方側のリップ112aに向く方向(前方)に第2凸部13の向く方向を向けるように弾性部材1を回転する。図19に示されるように、例えば、第2凸部が左方を向く場合(図16(b)参照)に、CPU124は、吸着装置231を制御することにより、上方からみて、上下方向7を軸として弾性部材1を例えば時計回りに半回転、回転する。なお、例えば、第2凸部が前方を向く場合(図16(a)参照)、CPU124は、弾性部材1を回転させない。
【0059】
次いで、図20に示されるように、CPU241は、弾性部材配置工程において、装着アーム230を制御することにより、弾性部材1をリップ溝形鋼110a,110bに配置する(ステップS5)。装着アーム230は、リップ溝形鋼110a,110bの開口に第1凸部12および第2凸部13を挿入するとともに、弾性部材1を下方に移動することで下方のリップ112a,112bに弾性部材1を係合する。装着アーム230は、リップ112a,112bへの弾性部材1の係合の後、弾性部材1の保持を解除する。
【0060】
次いで、1つのコンクリートパネル100に対して、予め定められ個数分の弾性部材1が装着されたか否かが判断される(ステップS6)。予め定められた個数分の弾性部材1が装着されている場合(ステップS6_YES)、処理は、ステップS7に進む。予め定められた個数分の弾性部材1が装着されていない場合(ステップS6_NO)、処理は、ステップS2に戻る。複数の弾性部材1を配置するに当たり、CPU241は、第2凸部13が第1凸部12から突出する向きを同じにして、リップ溝形鋼110a,110bにおける開口に第2凸部13を進入する状態にして弾性部材1を複数の位置に配置する。これにより、弾性部材1は、リップ溝形鋼110a,110bのリップ112a,112bに第2凸部13を向けた状態で複数の位置に配置される。
【0061】
ステップS7において、CPU241は、保持アーム210を動作させて、コンクリートパネル100を並設する並設工程を実行する。並設工程では、保持アーム210の保持装置211によりコンクリートパネル100が再度保持される。図21に示されるように、保持アーム210は、回転および移動することで、コンクリートパネル100の裏面101を上方に向けている状態から、コンクリートパネル100の裏面101を後方に向く方向に起立させる。保持アーム210は、立てた状態のコンクリートパネル100を養生ラック400に並設する(図6参照)。
【0062】
次に、既定数のコンクリートパネル100が並設されたか否かが判断される(ステップS8)。既定数のコンクリートパネル100が養生ラック400に並設されている場合(ステップS8_YES)、本フローによる処理は終了する。一方、既定数のコンクリートパネル100が養生ラック400に並設されていない場合(ステップSS8_NO)、処理は、ステップS1に戻る。
【0063】
[実施形態に係る弾性部材1の作用効果]
リップ溝形鋼110a,110bが上向きに開口した状態のコンクリートパネル100において、リップ溝形鋼110a,110bの開口に第1凸部12および第2凸部13が進入するように弾性部材1が配置される。そして、コンクリートパネル100が起立されると、弾性部材1がリップ溝形鋼110a,110bに係止された状態となり、弾性部材1の本体11がリップ溝形鋼110a,110bを覆う。したがって、複数のコンクリートパネル100が相互に立てかけられた状態で並べられると、一方のコンクリートパネル100のリップ溝形鋼110a,110bと、他方のコンクリートパネル100の表面102との間に弾性部材1の本体11が位置するので、リップ溝形鋼110a,110bがコンクリートパネル100の表面102に接触しない。これにより、コンクリートパネル100の表面102を接触から保護することができる。一方のリップ112a,112bに係脱するだけで弾性部材1をリップ溝形鋼110a,110bに容易に装着できる。
【0064】
弾性部材1を取り付ける際、一対のリップ111a,112aによって区画されるリップ溝形鋼110aの開口に対して、第1凸部12および第2凸部13を進入させることが容易になる。
【0065】
接続面41および対向面31を広くとることができるので、リップ112aに取り付けた弾性部材1の姿勢が安定する。
【0066】
パーツフィーダ220により供給された弾性部材1の第2凸部13を同じ向きとして、コンクリートパネル100のリップ溝形鋼110a,110bに複数の弾性部材1を配置できる。これにより、コンクリートパネル100のリップ溝形鋼110a,110bに弾性部材1を係合させて、複数枚のコンクリートパネル100をオートクレーブ養生のために並設する作業が自動化できる。
【0067】
(変形例)
上記実施形態において、本体11の平面視における外形を矩形としたが、これに限定されない、本体11の平面視における外形は、一対のリップ111a,112aとの接触が維持される限り、円形、多角形等の種々の形状とすることができる。また、本体11の左右方向9の長さを延伸して、1つの弾性部材1が当接するリップ112aの領域を広げてもよい。このとき、第1凸部12および第2凸部13は、延伸された本体11に応じて延伸されてもよいし、複数の第1凸部12および第2凸部13により、複数の係合凹部14が構成されていてもよい。これにより、リップ112aの露出する面積が減るので、コンクリートパネル100とリップ溝形鋼110aとの接触がより抑制される。
【0068】
また、上記実施形態において、第1凸部12に対して第2凸部13を上下方向7の一方に突出するとしたが、上下方向7の両方に突出するようにしてもよい。これにより、第1凸部12に対して係合凹部14が上下の両方に位置するので、弾性部材1をリップ112aに係合する際の向きの汎用性が向上する。リップ112aに対する弾性部材1の係脱が容易になる。
【0069】
さらには、第2凸部13は、直方体形状の第1凸部12の先端部から前後方向8および左右方向9に向けて、外周の全体からフランジ状に突出していてもよい。また、第1凸部12を円柱形状として、第1凸部12の先端部の周面における全体から径外方向にフランジ状に突出するようにしてもよい。突出する第2凸部13における対向面31は、いずれの方向においても第1凸部12の下面201と対向していてもよい。これにより、リップ112a,112bに対する弾性部材1の装着する方向が限定されない。換言すると、前後方向8および左右方向9のいずれにおいても、係合凹部14をリップ112a,112bに対向させることができる。これにより、調整工程を省いて弾性部材1をコンクリートパネル100に装着することが可能になる。弾性部材1の装着の効率化ができ、並設の効率化ができる。
【0070】
また、上記実施形態において、第1凸部12および第2凸部13が本体11の右端から左端まで延びる例を説明したがこれに限定されない。第1凸部12および第2凸部13は、左右方向9に沿って複数が位置してもよい。
【0071】
また、上記実施形態において、第1凸部12および第2凸部13を別体として説明したがこれに限定されない。第1凸部12および第2凸部13は、一体であってもよい。第1凸部12および第2凸部13は、一体として、本体11の下面201から前方および下方に向けて、湾曲して突出する形状であってもよい。また、第1凸部12および第2凸部13は、一体として、本体11の下面201から前方かつ下方に向けて斜めに突出する形状であってもよい。
【0072】
また、上記実施形態において、1つのコンクリートパネル100に装着される弾性部材1の数および位置については特に限定されないが、反りの大きくなると予想される個所や隣接するコンクリートパネル100の上面との距離が近い個所等に装着されるのが好ましい。
【0073】
また、上記実施形態において、第1凸部12の上下方向7における長さD2と、第2凸部13の上下方向7における長さD4との和が、一対のリップ111a,112a間の隙間114の長さL1よりも短いとしたが、これに限定されない。長さD2と長さD4との和が長さL1より長くてもよい。この場合、長さD2は、長さL1よりも小さければよい。これにより、弾性部材1は、リップ溝形鋼110a,110bの左右方向9における両端の開口から挿入およびスライドされて、リップ112a,112bの所定の位置に係止されてもよい。これにより、リップ溝形鋼110a,110bに対する弾性部材1の脱落をより効果的に抑制できる。
【0074】
また、上記実施形態の調整工程における弾性部材1の回転方向および回転量はあくまで一例である。第2凸部13の突出する方向が、リップ溝形鋼110a,110bの開口からリップ112a,112bに向くのであれば、いずれの回転方向または回転量であってもよい。また、パーツフィーダ220の配置によって決定される、取り出し位置500における第2凸部13の向く向きによって、回転方向および回転量が適宜決定されてよい。
【0075】
また、上記実施形態において、弾性部材1は、リップ112a,112bに係合されるとしたがこれに限定されない。弾性部材1は、前後方向8においてリップ111a,111bに係合されてもよい。すなわち、弾性部材1は、前後方向8において一方側のリップに係合されていればよい。弾性部材1がリップ111a,111bに係合される場合、コンクリートパネル100は、並設時において、後方側を下方に向くように回転されて、養生ラック400に並設される。
【0076】
[付記1]
オートクレーブ養生されるコンクリートパネルの一主面に位置し厚さ方向に凹み上記一主面に沿って伸びるリップ溝形鋼に係脱自在であり、弾性体で構成される弾性部材であって、
板状の本体と、
上記本体の一主面から突出する第1凸部と、
上記第1凸部の突出する第1方向における先端部から上記本体の一主面に沿う第2方向に突出し、上記本体の一主面と対向する対向面を有する第2凸部と、
を備える弾性部材。
【0077】
[付記2]
上記第2凸部の突出する長さは、上記第2方向における上記第1凸部から上記本体の一主面における一端までの距離よりも小さい付記1に記載の弾性部材。
【0078】
[付記3]
上記第1凸部および上記第2凸部は、上記第1方向および上記第2方向に交差する第3方向において、上記本体の一主面における一端から他端まで延びる付記1および付記2に記載の弾性部材。
【0079】
[付記4]
付記1から3に記載された弾性部材を上記コンクリートパネルに係合するとともに、オートクレーブ養生用に上記コンクリートパネルを並設する並設装置を用いた並設方法であって、
第1ロボットアームを動作させて、上記リップ溝形鋼の位置する一主面を上方に向けて上記コンクリートパネルを配置するパネル配置工程と、
パーツフィーダにおいて上記本体の一主面を下方に向けた状態で供給される上記弾性部材に対して、上記第2凸部の突出する向きを測距センサからの出力に基づいて特定する特定工程と、
第2ロボットアームが上記弾性部材の上面を保持する保持工程と、
上記特定工程において特定された上記第2凸部の突出する向きに基づいて、上記第2ロボットアームを動作させて、上記リップ溝形鋼における開口から一対のリップの一方に向く方向に上記第2凸部の突出する方向を向ける向き調整工程と、
上記第2ロボットアームを移動させて、一方の上記リップに上記弾性部材を係合する係合工程と、
上記第1ロボットアームを動作させて、上記弾性部材を係合した一方の上記リップが他方の上記リップに対して下方に位置するように、上記コンクリートパネルの向きを変更させる変更工程と、
上記第1ロボットアームを動作させて、上記変更工程において向きを変更した上記コンクリートパネルを並設する並設工程と、
を備える並設方法。
【符号の説明】
【0080】
1・・・弾性部材
11・・・本体
12・・・第1凸部
13・・・第2凸部
14・・・係合凹部
31・・・対向面
41・・・接続面
100・・・コンクリートパネル
101・・・裏面(コンクリートパネル100の一主面)
102・・・表面
110a,110b・・・リップ溝形鋼
111a,112a,111b,112b・・・リップ
200・・・並設装置
201・・・下面(本体の一主面)
220・・・パーツフィーダ
221・・・測距センサ
230・・・装着アーム(ロボットアーム)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
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