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特許7683682路側中継装置、交通管理システム、及びログ収集方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-19
(45)【発行日】2025-05-27
(54)【発明の名称】路側中継装置、交通管理システム、及びログ収集方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20250520BHJP
   G08G 1/13 20060101ALI20250520BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20250520BHJP
【FI】
G08G1/09 F
G08G1/13
G08G1/00 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023510525
(86)(22)【出願日】2022-01-21
(86)【国際出願番号】 JP2022002269
(87)【国際公開番号】W WO2022209200
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2025-01-10
(31)【優先権主張番号】P 2021056626
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石丸 弘之
(72)【発明者】
【氏名】藤田 肇
(72)【発明者】
【氏名】岡山 藤治
【審査官】小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-167202(JP,A)
【文献】国際公開第2016/136616(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管理装置との通信用の第1通信部と、
情報源装置との通信用の第2通信部と、
車両との通信用の第3通信部と、
前記第2通信部の受信フレームから車両向けの提供情報を抽出し、抽出した前記提供情報を含む送信フレームを前記第3通信部に出力する通信制御部と、を備え、
前記通信制御部は、
前記第3通信部の受信フレームに含まれる車両情報に基づいて、前記提供情報の利用可能性に繋がる条件の成否を判定し、前記条件が成立する場合に、前記提供情報のログ収集を実行する路側中継装置。
【請求項2】
前記条件には、下記の第1条件及び第2条件のうちの少なくとも1つが含まれる請求項1に記載の路側中継装置。
第1条件:車両が車両向けの提供情報のサービス対象エリア内に存在すること
第2条件:車両向けの提供情報の利用可能性に繋がる第1条件とは異なる条件
【請求項3】
前記車両情報には、前記車両の走行位置が含まれ、
前記通信制御部は、
前記走行位置が前記サービス対象エリア内であるか否かにより、前記第1条件の成否を判定する請求項2に記載の路側中継装置。
【請求項4】
前記車両情報には、前記車両の車種が含まれ、
前記第2条件には、
前記車種がインフラ側のサービス対象車種と一致することが含まれる請求項2又は請求項3に記載の路側中継装置。
【請求項5】
前記車両情報には、前記車両が利用中のサービス種別が含まれ、
前記第2条件には、
前記サービス種別がインフラ側のサービス種別と一致することが含まれる請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の路側中継装置。
【請求項6】
前記車両情報には、サービス利用の許可又は拒否を表すサービス設定状態が含まれ、
前記第2条件には、
前記サービス設定状態が許可であることが含まれる請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の路側中継装置。
【請求項7】
前記車両情報には、前記車両の進行方位が含まれ、
前記第2条件には、
前記進行方位がインフラ側のサービス対象方位と一致することが含まれる請求項2から請求項6のいずれか1項に記載の路側中継装置。
【請求項8】
前記車両情報には、前記車両の予定経路が含まれ、
前記第2条件には、
前記予定経路がインフラ側のサービス対象経路と一致することが含まれる請求項2から請求項7のいずれか1項に記載の路側中継装置。
【請求項9】
前記管理装置の管理対象には、前記情報源装置の動作状態が含まれ、
前記通信制御部は、
前記第2通信部の受信フレームから前記情報源装置の状態情報を抽出し、抽出した前記状態情報を含む送信フレームを前記第1通信部に出力する中継処理が可能であり、
前記状態情報の中継処理については、前記条件の成否に関係なく実行する請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の路側中継装置。
【請求項10】
管理装置と、
前記管理装置と通信する路側中継装置と、
前記路側中継装置を介して前記管理装置と通信する情報源装置と、を備える交通管理システムであって、
前記路側中継装置は、
前記情報源装置から受信した車両向けの提供情報を車両に無線送信する中継処理と、
前記車両から受信した車両情報に基づいて行われる前記提供情報の利用可能性に繋がる条件の成否判定と、
前記条件が成立した場合に実行が許容される前記提供情報のログ収集と、を実行する交通管理システム。
【請求項11】
管理装置と、
前記管理装置と通信する路側中継装置と、
前記路側中継装置を介して前記管理装置と通信する情報源装置と、を備える交通管理システムにおいて実行されるログ収集方法であって、
前記路側中継装置が、前記情報源装置から受信した車両向けの提供情報を車両に無線送信するステップと、
前記路側中継装置が、前記車両から受信した車両情報に基づいて、前記提供情報の利用可能性に繋がる条件の成否を判定するステップと、
前記路側中継装置が、前記条件が成立した場合に、前記提供情報のログ収集を実行するステップと、を含むログ収集方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、路側中継装置、交通管理システム、及びログ収集方法に関する。
本出願は、2021年3月30日出願の日本出願第2021-056626号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、交通管制システムに属する中央装置及び交通信号制御機と有線接続された路側無線機が、交通信号制御機から交差点の流入路の信号情報を受信し、受信した信号情報を、路車間通信により車両に提供する無線通信システムが記載されている。
特許文献2には、交通管制センターに設置された中央装置と、1又は複数の回線集約装置(中継装置)と、1又は複数の端末装置(交通信号制御機、光ビーコン、車両感知器及び交通情報板)とを含む交通管制システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-136375号公報
【文献】特開2020-087144号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示の一態様に係る装置は、管理装置との通信用の第1通信部と、情報源装置との通信用の第2通信部と、車両との通信用の第3通信部と、前記第2通信部の受信フレームから車両向けの提供情報を抽出し、抽出した前記提供情報を含む送信フレームを前記第3通信部に出力する通信制御部と、を備え、前記通信制御部は前記第3通信部の受信フレームに含まれる車両情報に基づいて、前記提供情報の利用可能性に繋がる条件の成否を判定し、前記条件が成立する場合に、前記提供情報のログ収集を実行する。
【0005】
本開示の一態様に係るシステムは、管理装置と、前記管理装置と通信する路側中継装置と、前記路側中継装置を介して前記管理装置と通信する情報源装置と、を備える交通管理システムであって、前記路側中継装置は、前記情報源装置から受信した車両向けの提供情報を車両に無線送信する中継処理と、前記車両から受信した車両情報に基づいて行われる前記提供情報の利用可能性に繋がる条件の成否判定と、前記条件が成立した場合に実行が許容される前記提供情報のログ収集と、を実行する。
【0006】
本開示の一態様に係る方法は、管理装置と、前記管理装置と通信する路側中継装置と、前記路側中継装置を介して前記管理装置と通信する情報源装置と、を備える交通管理システムにおいて実行されるログ収集方法であって、前記路側中継装置が、前記情報源装置から受信した車両向けの提供情報を車両に無線送信するステップと、前記路側中継装置が、前記車両から受信した車両情報に基づいて、前記提供情報の利用可能性に繋がる条件の成否を判定するステップと、前記路側中継装置が、前記条件が成立した場合に、前記提供情報のログ収集を実行するステップと、を含む。
【0007】
本開示は、上記のような特徴的な構成を備えるシステム及び装置として実現できるだけでなく、かかる特徴的な構成をコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現することができる。また、本開示は、システム及び装置の一部又は全部を実現する半導体集積回路として実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、交通管制システムの全体構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、路側中継装置の内部構成の一例を示すブロック図である。
図3図3は、限定的ログ収集の一例を示すフローチャートである。
図4図4は、路側中継装置の通信の状態変化を示す説明図である。
図5図5は、対象車両の存否判定に使用する車両情報の一例を示す表である。
図6図6は、対象車両の存否判定に用いる条件の種類と内容を纏めた表である。
図7図7は、エリア条件(第1条件)に基づく判定例を示す説明図である。
図8図8は、車種条件(第2条件)に基づく判定例を示す説明図である。
図9図9は、サービス種別(第2条件)に基づく判定例を示す説明図である。
図10図10は、状態条件(第2条件)に基づく判定例を示す説明図である。
図11図11は、方位条件(第2条件)に基づく判定例を示す説明図である。
図12図12は、経路条件(第2条件)に基づく判定例を示す説明図である。
図13図13は、交通管理システムの変形例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<本開示が解決しようとする課題>
車両向けに提供される信号情報をログ収集して中央装置で管理すれば、交通事故の原因がインフラ側であるか車両側であるかを判断できるようになる。従って、路側無線機は、車両向けの提供情報である信号情報を中央装置にも送信することが好ましい。
しかし、信号情報は低遅延が要求される動的情報の一種であり、かかる動的情報を愚直に中央装置1に送信する方法では、広帯域の回線を採用する必要があるとともに、データ容量が膨大な記憶装置が必要であり、回線費用及び設備費用が高額になる。
【0010】
本開示は、通信及び設備コストを抑制しつつ、車両向けの提供情報をログ収集できるようにすることを目的とする。
【0011】
<本開示の効果>
本開示によれば、通信及び設備コストを抑制しつつ、車両向けの提供情報をログ収集することができる。
【0012】
<本開示の実施形態の概要>
以下、本開示の実施形態の概要を列記して説明する。
(1) 本実施形態に係る装置は、管理装置との通信用の第1通信部と、情報源装置との通信用の第2通信部と、車両との通信用の第3通信部と、前記第2通信部の受信フレームから車両向けの提供情報を抽出し、抽出した前記提供情報を含む送信フレームを前記第3通信部に出力する通信制御部と、を備え、前記通信制御部は、前記第3通信部の受信フレームに含まれる車両情報に基づいて、前記提供情報の利用可能性に繋がる条件の成否を判定し、前記条件が成立する場合に、前記提供情報のログ収集を実行する
路側中継装置。
【0013】
本実施形態の路側中継装置によれば、通信制御部が、車両向けの提供情報の利用可能性に繋がる条件が成立する場合に当該提供情報のログ収集を実行するので、車両が利用する可能性がない提供情報については収集対象から除外される。
従って、本実施形態の路側中継装置によれば、通信及び設備コストを抑制しつつ、車両向けの提供情報をログ収集することができる。
【0014】
(2) 本実施形態の路側中継装置において、前記条件には、下記の第1条件及び第2条件のうちの少なくとも1つが含まれることが好ましい。
第1条件:車両が車両向けの提供情報のサービス対象エリア内に存在すること
第2条件:車両向けの提供情報の利用可能性に繋がる第1条件とは異なる条件
【0015】
上記の第1条件が含まれる理由は、サービス対象エリア外の車両は、提供情報を受信しても適切に利用できないので、エリア内に車両が存在することは、提供情報の利用可能性に繋がる条件の1つと言えるからである。
上記の第2条件が含まれる理由は、第1条件を満たす場合でも、車両が提供情報によるサービスを拒否しているなど、提供情報の利用可能性がないことが明らかな場合もあるので、第1条件とは異なる観点の第2条件を考慮することが有効だからである。
【0016】
(3) 本実施形態の路側中継装置において、前記車両情報に、前記車両の走行位置が含まれる場合には、前記通信制御部は、前記走行位置が前記サービス対象エリア内であるか否かにより、前記第1条件の成否を判定すればよい。
その理由は、車両情報に含まれる走行位置は、車両の現在位置をほぼ正確に表すので、第1条件の成否判定に利用しても差し支えないと考えられるからである。
【0017】
(4) 本実施形態の路側中継装置において、前記車両情報に、前記車両の車種が含まれる場合には、前記第2条件に、前記車種がインフラ側のサービス対象車種と一致することを含めることが好ましい。
その理由は、車両情報に含まれる車種がインフラ側のサービス対象車種と一致する場合には、車両が車両向けの提供情報を利用する可能性が高いからである。
【0018】
(5) 本実施形態の路側中継装置において、前記車両情報に、前記車両が利用中のサービス種別が含まれる場合には、前記第2条件に、前記サービス種別がインフラ側のサービス種別と一致することを含めることが好ましい。
その理由は、車両情報に含まれるサービス種別がインフラ側のサービス種別と一致する場合には、車両が車両向けの提供情報を利用する可能性が高いからである。
【0019】
(6) 本実施形態の路側中継装置において、前記車両情報に、サービス利用の許可又は拒否を表すサービス設定状態が含まれる場合には、前記第2条件に、前記サービス設定状態が許可であることを含めることが好ましい。
その理由は、車両情報に含まれるサービス設定状態が許可である場合には、車両が車両向けの提供情報を利用する可能性が高いからである。
【0020】
(7) 本実施形態の路側中継装置において、前記車両情報に、前記車両の進行方位が含まれる場合には、前記第2条件に、前記進行方位がインフラ側のサービス対象方位と一致することを含めることが好ましい。
その理由は、車両情報に含まれる進行方位がインフラ側のサービス対象方位と一致する場合には、車両が車両向けの提供情報を利用する可能性が高いからである。
【0021】
(8) 本実施形態の路側中継装置において、前記車両情報に、前記車両の予定経路が含まれる場合には、前記第2条件に、前記予定経路がインフラ側のサービス対象経路と一致することを含めることが好ましい。
その理由は、車両情報に含まれる予定経路がインフラ側のサービス対象経路と一致する場合には、車両が車両向けの提供情報を利用する可能性が高いからである。
【0022】
(9) 本実施形態の路側中継装置において、前記管理装置の管理対象に前記情報源装置の動作状態が含まれる場合には、前記通信制御部は、前記第2通信部の受信フレームから前記情報源装置の状態情報を抽出し、抽出した前記状態情報を含む送信フレームを前記第1通信部に出力する中継処理が可能であり、前記状態情報の中継処理については、前記第1及び第2条件の成否に関係なく実行することが好ましい。
その理由は、情報源装置の動作状態が管理装置の管理対象である場合には、当該情報源装置の状態情報を管理装置に対して優先的に送信すべきだからである。
【0023】
(10) 本実施形態に係るシステムは、上述の(1)~(9)の路側中継装置を含む交通管理システムである。従って、本実施形態の交通管理システムは、上述の(1)~(9)の路側中継装置と同様の作用効果を奏する。
【0024】
(11) 本実施形態に係る方法は、上述の(1)~(9)の路側中継装置が実行するログ収集方法である。従って、本実施形態のログ収集方法は、上述の(1)~(9)の路側中継装置と同様の作用効果を奏する。
【0025】
<本開示の実施形態の詳細>
以下、図面を参照して、本開示の実施形態の詳細を説明する。なお、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0026】
〔システムの全体構成〕
図1は、交通管制システム10の全体構成の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、本実施形態の交通管制システム10は、中央装置1と、中央装置1と通信する路側の通信ノードである複数の通信装置2,3とを備える。
【0027】
本実施形態の中央装置1は、後述の車両向けの提供情報S2の「管理装置」としても機能する。この意味で、交通管制システム10は、車両向けの提供情報S2を管理するための「交通管理システム11」であるとも言える。
複数の通信装置2,3には、1又は複数の路側中継装置2と、路側中継装置2に接続される1又は複数の情報源装置3とが含まれる。
【0028】
路側中継装置2に接続される情報源装置3には、交通信号制御機3A及び路側センサ3Bのうちの少なくとも1つが含まれる。路側中継装置2には、超音波式車両感知器及び交通情報板などの、図示の情報源装置3以外の交通管制用のデバイスを接続してもよい。
中央装置(管理装置)1は、交通管制センターなどに設置される。路側中継装置2は、中央装置1から比較的遠方の交差点又は道路などに設置される。情報源装置3は、路側中継装置2から比較的近い交差点又は道路などに設置される。
【0029】
本実施形態では、1つの通信装置2,3に着目する場合において、自装置から見て中央装置1側(図1の左側)で行う通信を「上位側通信」といい、上位側通信に採用される通信路及び伝送方式をそれぞれ「上位側通信路」及び「上位側伝送方式」という。
同様に、1つの通信装置2,3に着目する場合において、自装置から見て中央装置1とは反対側(図1の右側)で行う通信を「下位側通信」といい、下位側通信に採用される通信路及び伝送方式をそれぞれ「下位側通信路」及び「下位側伝送方式」という。
【0030】
路側中継装置2の上位側伝送方式は、例えば「UD形伝送方式」である。UD形伝送方式は、社団法人新交通管理システム協会(UTMS協会)が定める「UD形インターフェース規格」に準じる、IP(Internet Protocol)通信が可能な伝送方式である。
路側中継装置2の下位側伝送方式は、例えば「U形伝送方式」である。U形伝送方式は、UTMS協会が定める「U形インターフェース規格」に準じる、IP通信が不能なシリアル通信の伝送方式である。
【0031】
路側中継装置2の下位側伝送方式は、U形伝送方式に限らず、UTMS協会が定める他の伝送方式(例えばM形伝送方式又はS9形伝送方式)であってもよい。
路側中継装置2の下位側伝送方式は、上位側伝送方式と同じ方式(例えばUD形伝送方式)であってもよい。なお、1つの路側中継装置2に2つ以上の情報源装置3が接続される場合には、下位側伝送方式は、少なくとも2種類の伝送方式が混在していてもよい。
【0032】
中央装置1は、例えばサーバ装置よりなり、所定の下位側伝送方式に基づく通信が可能な通信装置(図示せず)を有する。路側中継装置2は、中央装置1と情報源装置3との通信の中継機能を有する通信装置である。
路側中継装置2の上位側通信路は、専用線などの有線媒体(通信ケーブル)4である。中央装置1と路側中継装置2との間には、ルータなどの通信ノードが介在してもよい。また、路側中継装置2の上位側通信路には、LTE(Long Term Evolution)又は第5世代移動通信システム(5G)などの規格に従う無線媒体が含まれていてもよい。
【0033】
路側中継装置2の下位側通信路には、専用線又は自営線などの有線媒体(通信ケーブル)5が含まれる。従って、路側中継装置2には、有線媒体5を介して少なくとも1つの情報源装置3を接続することができる。
路側中継装置2の下位側通信路には、無線媒体6も含まれる。路側中継装置2は、無線媒体6を介して道路を走行中の車両7と無線で通信することもできる。無線媒体6は、例えば、ITS(Intelligent Transport Systems)又はLTE(Long Term Evolution)などの規格に従う所定周波数帯の無線媒体よりなる。
【0034】
交通信号制御機3Aは、交差点の信号灯器への電力供給を制御する制御装置である。中央装置1は、交通信号制御機3Aの制御情報を生成して路側中継装置2に送信する。路側中継装置2は、受信した制御情報を交通信号制御機3Aに転送する。
交通信号制御機3Aは、受信した制御情報に従って信号灯器の灯色切り替えタイミングを決定する。中央装置1が生成する制御情報は、例えば、UTMS協会が定める「U形交通信号制御機 U形通信アプリケーション規格」に規定された信号制御指令である。
【0035】
交通信号制御機3Aは、自機の動作状態(制御情報など)を示す状態情報S1を生成可能である。交通信号制御機3Aは、自機の状態情報S1を路側中継装置2に送信する。路側中継装置2は、受信した状態情報S1を中央装置1に転送する。
交通信号制御機3Aが生成する状態情報(制御情報)S1は、例えば、上記の「U形交通信号制御機 U形通信アプリケーション規格」に規定された信号制御実行情報及び信号動作状態情報などである。
【0036】
交通信号制御機3Aは、信号灯器の現時点又は将来の灯色状態を表す信号情報を生成可能である。交通信号制御機3Aは、生成した信号情報を路側中継装置2に送信する。
信号情報は、車両向けの提供情報(以下、「提供情報」と略記する場合がある。)S2の一種である。従って、路側中継装置2は、受信した信号情報を無線送信(例えばブロードキャスト)することにより、道路を走行中の車両7に信号情報を提供する。
【0037】
路側センサ3Bは、例えば、画像式車両感知器又はミリ波レーダーよりなり、道路上の移動体(車両7及び歩行者8など)の現在位置を含むセンサ情報を生成可能である。路側センサ3Bは、センサ情報を路側中継装置2に送信する。
路側センサ3Bは、自機の動作状態(故障の有無など)を示す状態情報S1を生成可能である。路側センサ3Bは、自機の状態情報S1を路側中継装置2に送信する。路側中継装置2は、受信した状態情報S1を中央装置1に転送する。
【0038】
センサ情報は、車両向けの提供情報S2の一種である。従って、路側中継装置2は、受信したセンサ情報を無線送信(例えばブロードキャスト)することにより、道路を走行中の車両7にセンサ情報を提供する。
本実施形態の提供情報S2は、動的情報である。動的情報とは、1秒以内の遅延時間が要求される動的なデータのことである。例えば、ITS先読み情報として活用される、移動体の現在位置を含むセンサ情報、及び信号情報などが動的情報に該当する。
【0039】
車両7は、無線媒体6を用いて通信する車載装置を有する。車載装置には、路側中継装置2から提供される車両向けの提供情報(信号情報及びセンサ情報など)S2を利用して、画面表示又はや音声で運転者に注意喚起を行うナビゲーション装置が含まれる。
車両7が、例えばレベル4以上の自動運転車両である場合には、車両向けの提供情報(信号情報及びセンサ情報など)S2は、自動運転の制御にも利用される。
【0040】
車両7の車載装置は、ITS又はLTE-V2X(Vehicle to X)などの無線通信システムにより、車車間通信及び路車間通信が可能である。
車両7の送信情報には、自車両の現在位置、速度及び走行状態などを表す車両情報S3が含まれる。路側中継装置2は、車両7から車両情報S3を受信すると、受信した車両情報S3を中央装置1に転送することができる。もっとも、車両情報S3については、中央装置1への転送が行われない場合もある。なお、提供情報S2をログ収集するか否かの判定に使用される車両情報S3の内容(図5)については、後述する。
【0041】
〔路側中継装置の内部構成〕
図2は、路側中継装置2の内部構成の一例を示すブロック図である。
図2に示すように、路側中継装置2は、筐体20と、筐体20に収容された複数の電子機器とを備える。複数の電子機器には、上位側通信部21、複数の下位側通信部22,23、通信制御部24、記憶部25、及び同期処理部26が含まれる。各通信部21~23、記憶部25、及び同期処理部26は、それぞれ通信制御部24に電気的に接続される。
【0042】
複数の下位側通信部22,23のうち、下位側通信部22は、有線媒体5を介して伝送信号を送受する通信インタフェース(有線通信部)である。下位側通信部23は、無線媒体6を介して伝送信号を送受する通信インタフェース(無線通信部)である。
図2では、下位側の有線通信部22が2つ例示されているが、1つの路側中継装置2に対して3つ以上の有線通信部22が搭載されていてもよい。
【0043】
上位側通信部21は、中央装置1との通信用の通信インターフェース(第1通信部)でる。上位側通信部21は、上位側伝送方式に基づく所定の信号処理(変復調及びAD/DA変換など)を実行する。
下位側通信部22は、情報源装置3(図2では交通信号制御機3Aと路側センサ3B)との通信用の通信インターフェース(第2通信部)である。下位側通信部22は、下位側伝送方式に基づく所定の信号処理(変復調及びAD/DA変換など)を実行する。
【0044】
下位側通信部23は、車両7との通信用の通信インターフェース(第3通信部)である。下位側通信部23は、下位側伝送方式に基づく所定の信号処理(変復調及びAD/DA変換など)を実行する。
【0045】
上位側通信部(第1通信部)21は、有線媒体4よりなる上位側通信路から入力される伝送信号(搬送信号)を復調して受信フレームを再生する。上位側通信部21は、再生した受信フレームを通信制御部24に出力する。
上位側通信部(第1通信部)21は、通信制御部24から入力される送信フレームを所定周波数の伝送信号に変調する。上位側通信部21は、変調した伝送信号を有線媒体4よりなる上位側通信路に出力する。
【0046】
下位側通信部(第2通信部)22は、有線媒体5よりなる下位側通信路から入力される伝送信号(搬送信号)を復調して受信フレームを再生する。下位側通信部22は、再生した受信フレームを通信制御部24に出力する。
下位側通信部(第2通信部)22は、通信制御部24から入力される送信フレームを所定周波数の伝送信号に変調する。下位側通信部22は、変調した伝送信号を有線媒体5よりなる下位側通信路に出力する。
【0047】
下位側通信部(第3通信部)23は、無線媒体6よりなる下位側通信路から入力される伝送信号(搬送信号)を復調して受信フレームを再生する。下位側通信部23は、再生した受信フレームを通信制御部24に出力する。
下位側通信部(第3通信部)23は、通信制御部24から入力される送信フレームを所定周波数の伝送信号に変調する。下位側通信部23は、変調した伝送信号を無線媒体6よりなる下位側通信路に送出する。
【0048】
通信制御部24は、CPU(Central Processing Unit)及びRAM(Random Access Memory)などを含む演算処理装置よりなる。通信制御部24には、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などの集積回路が含まれていてもよい。
通信制御部24は、記憶部25に格納されたコンピュータプログラムをメインメモリ(RAM)に読み出し、当該プログラムに従って各種の情報処理を行う。
【0049】
記憶部25は、HDD(Hard Disk Drive)及びSDD(Solid State Drive)などの不揮発性メモリを含む補助記憶装置よりなる。
記憶部25には、フラッシュROM(Read Only Memory)、USB(Universal Serial Bus)メモリ、又はSDカードなどが含まれていてもよい。
【0050】
通信制御部24は、通信フレームの中継機能を有する。具体的には、通信制御部24は、通信部21~23から入力される受信フレームから抽出した情報を含む送信フレームをどの通信部21~23に出力するかを、予め設定された経路情報に従って決定する。
通信制御部24は、通信フレームのフォーマット変換機能を有する。具体的には、通信制御部24は、上位側通信部21から下位側通信部22,23に中継する下りフレームに対して、上位側伝送方式から下位側伝送方式へのフォーマット変換を実行する。
【0051】
上記とは逆に、通信制御部24は、下位側通信部22,23から上位側通信部21に中継する上りフレームに対して、下側側伝送方式から上位側伝送方式へのフォーマット変換を実行する。
もっとも、上位側伝送方式と下位側伝送方式が同じである場合(例えば双方がUD形伝送方式の場合など)には、通信制御部24は上記のフォーマット変換を行わず、MACアドレスやIPアドレスなどに基づくルーティングが行われる。
【0052】
本実施形態の路側中継装置2では、通信制御部24は、上述の各情報S1~S3についてそれぞれ次の中継処理1~3を実行する。
中継処理1:下位側通信部22からの状態情報S1→上位側通信部21に中継
具体的には、通信制御部24は、下位側通信部22から入力される受信フレームに状態情報S1が含まれる場合は、受信フレームから抽出した状態情報S1を含む送信フレームを生成し、生成した送信フレームを上位側通信部21に出力する。
【0053】
中継処理2:下位側通信部22からの提供情報S2→下位側通信部23に中継
具体的には、通信制御部24は、下位側通信部22から入力される受信フレームに提供情報S2が含まれる場合は、受信フレームから抽出した提供情報S2を含む送信フレームを生成し、生成した送信フレームを下位側通信部23に出力する。
【0054】
中継処理3:下位側通信部23からの車両情報S3→上位側通信部21に中継
具体的には、通信制御部24は、下位側通信部22から入力される受信フレームに車両情報S3が含まれる場合は、受信フレームから抽出した車両情報S3を含む送信フレームを生成し、生成した送信フレームを上位側通信部21に出力する。
【0055】
もっとも、交通管制システム10の運用形態としては、上記の中継処理を実行しない場合もある。
本実施形態では、路側中継装置2の通信制御部24は、車両向けの提供情報S2に関する「限定的ログ収集」も実行可能である。なお、この処理の詳細については後述する。
【0056】
同期処理部26は、所定の同期方式により、中央装置1などの他の通信ノードと時刻同期を図るための処理部である。通信制御部24は、同期処理部26が生成するローカル時刻に従って、通信フレームの受信時刻及び送信タイミングなどを決定する。
同期処理部26の同期方式は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機の出力に基づく同期方式や、NTP(Network Time Protocol)及びPTP(Precision Time Protocol)などの通信フレームを用いた同期方式などを採用し得る。
【0057】
〔提供情報の管理の必要性と問題点〕
現行の交通管制システム10では、中央装置1の管理対象を情報源装置3の状態情報(制御情報及び故障の有無など)S1のみとし、車両向けの提供情報S2を中央装置1の管理対象としない場合が多い。
この場合、例えば図1に示すように、路側中継装置2は、情報源装置3から受信した車両向けの提供情報(信号情報及びセンサ情報など)S2を、ブロードキャストなどで車両7に無線送信するが中央装置1には送信しない。
【0058】
しかし、提供情報S2を利用した自動運転(特にレベル4以上)が普及してくると、交通事故の原因がインフラ側であるか車両側であるかを判断するため、どのような提供情報S2がどのようなタイミングで提供されたのかが重要となる。
また、安全運転支援システムの普及が進むと、運転者が人間である場合においても、提供情報S2に事故原因があると主張する裁判が発生する可能性もある。従って、車両向けの提供情報S2についても、中央装置1の管理対象とすべきという要請がある。
【0059】
そこで、路側中継装置2が、車両向けの提供情報S2を無線送信すると同時に中央装置1にも送信し、中央装置1が、受信した車両向けの提供情報S2を記憶装置に蓄積することが考えられる。
しかし、信号情報及びセンサ情報などの提供情報S2は、時間的変化が激しい動的情報であるから、車両7がリアルタイム処理できるように比較的短い周期(例えば100ms間隔)で無線送信される。
【0060】
このため、動的情報よりなる提供情報S2を路側中継装置2が愚直に中央装置1に送信する方法では、広帯域の回線で中央装置1と路側中継装置2を接続する必要があるとともに、データ容量が膨大な記憶装置が必要になる。従って、回線費用及び設備費用が高額になるという問題がある。
【0061】
〔限定的ログ収集の概要〕
上記の問題点に鑑み、本実施形態では、路側中継装置2の通信制御部24が、車両情報S3に基づいて提供情報S2を利用し得る車両7の有無を判定し、当該車両7が存在する場合に限り、提供情報S2のログ収集を行う。これが「限定的ログ収集」である。
このように、実際に利用され得る提供情報S2のみを収集すれば、比較的低速の通信回線でも中央装置1に送信でき、中央装置1の記憶装置のデータ容量も低減できる。
【0062】
図3は、限定的ログ収集の一例を示すフローチャートである。
路側中継装置2の通信制御部24は、図3の処理を、運用中の提供情報S2ごとに実行する。また、通信制御部24は、図3の処理を、車両向けの提供情報S2の送信周期(例えば100ms)以下の周期で実行する。
以下において、車両向けの提供情報S2の利用可能性ありと推定される車両7を、「対象車両」といい、車両向けの提供情報S2の利用可能性なしと推定される車両7を、「対象外車両」という。
【0063】
図3に示すように、通信制御部24は、まず、情報源装置3から車両向けの提供情報S2を受信したか否かを判定する(ステップST11)。この判定は、例えば、下位側通信部22から提供情報S2を含む受信フレームが入力されたか否かにより行われる。
ステップST11の判定結果が否定的である場合は、通信制御部24は、処理を終了する。ステップST11の判定結果が肯定的である場合は、通信制御部24は、「第1条件」が成立するか否かを判定する(ステップST12)。
【0064】
第1条件は、対象車両あり(提供情報S2の利用可能性に繋がる)と言えるための条件の1つである。本実施形態では、第1条件は、車両7が提供情報S2のサービス対象エリア内に存在することとする。
「サービス対象エリア」とは、提供情報S2ごとに設定される道路上のエリアのことである。エリア外の車両7は、提供情報S2を受信しても適切に利用できないので、エリア内に車両7が存在することは、対象車両ありと言えるための条件の1つである。
【0065】
例えば、十字路交差点の4方向の流入路のうち、第1方向の流入路の信号情報を提供するサービスの場合には、サービス対象エリアは、第1方向の流入路における停止線から所定距離(例えば150m)だけ上流側の地点までの道路区間である。
右折先の横断歩道を通行する歩行者8の現在位置を含むセンサ情報を車両7に提供するサービスの場合には、サービス対象エリアは、流入路における例えば右折車線の長さに相当する道路区間である。
【0066】
左折先の横断歩道を通行する歩行者8の現在位置を含むセンサ情報を車両7に提供するサービスの場合には、サービス対象エリアは、左折車線を含む流入路における停止線から所定距離(例えば80m)だけ上流側の地点までの道路区間である。
信号なし交差点での出会い頭事故を防止するために、交差道路を走行中の他車両の現在位置を含むセンサ情報を車両7に提供するサービスの場合には、サービス対象エリアは、交差点から所定距離(例えば80m)だけ上流側の地点までの道路区間である。
【0067】
ステップST12の判定結果が否定的である場合は、通信制御部24は、処理を終了する。ステップST12の判定結果が肯定的である場合は、通信制御部24は、更に、「第2条件」が成立するか否かを判定する(ステップST13)。
このように、本実施形態では、対象車両あり(提供情報S2の利用可能性に繋がる)と言えるための条件の1つとして、第1条件とは異なる第2条件を付加する。
【0068】
その理由は、車両7がサービス対象エリア内に存在する状態(第1条件を満たす状態)であっても、例えば、車両7が提供情報S2によるサービスを拒否している場合は、提供情報S2が利用されないからである。
第1条件に付加すべき第2条件の具体例は、車両情報S3の種別に応じて複数存在するので、第2条件の詳細については後述する。
【0069】
ステップST13の判定結果が否定的である場合は、通信制御部24は、処理を終了する。ステップST13の判定結果が肯定的である場合は、通信制御部24は、提供情報S2のログ収集を実行する(ステップST14)。
提供情報S2のログ収集は、取得した提供情報S2に時刻情報を追加し、時刻情報付きの提供情報S2を種別ごとに分けて記憶部25に格納する処理である。時刻情報は、例えば、提供情報S2を含む受信フレームの受信時刻(日時)である。
【0070】
路側中継装置2の通信制御部24は、時刻情報付きの提供情報S2のデータ蓄積量が所定量以上になると、記憶部25から提供情報S2を読み出して中央装置1に送信する。
具体的には、通信制御部24は、記憶部25から読み出した提供情報S2を含む送信フレームを生成し、生成した送信フレームを上位側通信部21に入力する。かかる提供情報S2の送信処理は、上位側通信路の通信帯域が逼迫していない時間帯に実行することが好ましい。
【0071】
〔路側中継装置の通信の状態変化〕
図4は、路側中継装置2の通信の状態変化を示す説明図である。
図4に示すように、路側中継装置2は、対象車両が存在する場合(提供情報S2の利用可能性がある場合)には、提供情報S2のログ収集を実行する。
その後、路側中継装置2は、収集した時刻情報付きの提供情報S2を中央装置1に送信する。中央装置1は、路側中継装置2から受信した時刻情報付きの提供情報S2を、自装置のデータベースに蓄積する。
【0072】
路側中継装置2は、対象車両が存在しない場合(提供情報S2の利用可能性がない場合)、すなわち、対象外車両のみが存在する或いは車両なしの場合には、提供情報S2のログ収集を実行しない。
車両なしか否かの判定は、例えば、所定期間(例えば2分間)に渡って継続して車両情報S3の受信がないことにより判定することができる。
【0073】
なお、路側中継装置2は、以下の中継処理1及び2については、対象車両が存在するか否かに関係なく実行する。また、路側中継装置2は、以下の中継処理3を実行する運用の場合には、対象車両が存在するか否かに関係なく当該中継処理3を実行する。
中継処理1:情報源装置3からの状態情報S1→中央装置1に中継
中継処理2:情報源装置3からの提供情報S2→車両7に中継
中継処理3:車両7からの車両情報S3→中央装置1に中継
【0074】
〔車両情報の具体例〕
図5は、対象車両の存否判定に使用する車両情報S3の一例を示す表である。
図5に示すように、車両7が送信する車両情報S3の項目には、「走行位置」、「車種」、「サービス種別」、「サービス設定状態」、「進行方位」、及び「予定経路情報」が含まれる。
【0075】
「走行位置」は、車両7の現在位置を表す位置情報(緯度、経度、高度など)である。車両7の位置情報は、車両7の車載装置に含まれるGNSS受信機などから取得される。
「車種」は、車両7を大きさ及び用途で識別する識別情報である。車種の内容には、例えば、二輪車、普通車、大型車、自家用車、貨物車両、タクシー、路線バス、救急車、及びパトカーなどが含まれる。
【0076】
「サービス種別」は、インフラ側から提供されるサービスのうち、車両7が実際に利用するサービスを表す識別情報である。サービス種別の内容には、例えば、信号機の現在点灯状態の情報提供サービス、信号機の将来点灯状態の情報提供サービス、横断歩道歩行者の情報提供サービスなどが含まれる。
「サービス設定状態」は、車両7の利用者により設定される、サービス利用の許否状態を表す識別情報である。「サービス設定状態=ON」はサービス許可を表し、「サービス設定状態=OFF」はサービス拒否を表す。
【0077】
「進行方位」は、走行中の車両7の進行方位を表す角度情報である。進行方位は、例えば真北を0度とした右回りの角度で表される。進行方位は、車両7の車載装置に含まれるGNSS受信機又はジャイロセンサなどから取得される。
「予定経路」は、車両7が走行する予定の経路情報である。予定経路情報は、例えば、道路に対応するリンクデータと交差点に対応するノードデータとから構成される。
【0078】
〔対象車両の存否判定の条件〕
図6は、対象車両の存否判定に用いる条件の種類と内容を纏めた表である。
図6に示すように、条件の種類には、第1条件である「エリア条件」と、第2条件である「車種条件」、「サービス種別条件」、「状態条件」、「方位条件」、及び「経路条件」が含まれる。
【0079】
エリア条件(第1条件)は、車両情報S3の走行位置がサービス対象エリア内に存在することである。従って、路側中継装置2は、走行位置がサービス対象エリア内に存在しない場合は、当該サービス対象エリアを採用する提供情報S2のログ収集を実行しない。
図7は、エリア条件(第1条件)に基づく判定例を示す説明図である。図7中の「無線アンテナ」は、路側中継装置2のアンテナ位置を示し、「無線エリア」は、路側中継装置2の電波受信エリアを示す。この点は、図8から図12も同様である。
【0080】
図7に示すように、北向き(図7の上向き)の流入路にサービス対象エリアが設定された交差点J1を想定する。
この場合、エリア条件(第1条件)に基づく判定により、車両情報S3の走行位置がサービス対象エリア内である場合は、当該エリアを採用する提供情報S2のログ収集が実行され得る。逆に、車両情報S3の走行位置がサービス対象エリア外である場合は、当該エリアを採用する提供情報S2のログ収集は実行されない。
【0081】
車種条件(第2条件)は、車両情報S3の車種がインフラ側のサービス対象車種と一致することである。従って、路側中継装置2は、特定車種(例えば路線バス)に限定したサービスが提供される交差点において、特定車種の車両7が存在しない場合は、当該サービスに関する提供情報S2のログ収集を実行しない。
【0082】
図8は、車種条件(第2条件)に基づく判定例を示す説明図である。
図8に示すように、自家用車向けサービスを提供する交差点J2を想定する。この場合、車種条件(第2条件)に基づく判定により、車両情報S3の車種が自家用車である場合は、自家用車向けサービスの提供情報S2のログ収集が実行され得る。逆に、車両情報S3の車種が路線バスである場合は、自家用車向けサービスの提供情報S2のログ収集は実行されない。
【0083】
サービス種別条件(第2条件)は、車両情報S3のサービス種別がインフラ側のサービス種別と一致することである。従って、路側中継装置2は、特定サービス(例えば信号情報の提供サービス)が提供される交差点において、特定サービスを利用する車両7が存在しない場合は、当該サービスの提供情報S2のログ収集を実行しない。
【0084】
図9は、サービス種別(第2条件)に基づく判定例を示す説明図である。
図9に示すように、車両7が利用するサービス種別が信号情報サービスである場合を想定する。この場合、サービス種別(第2条件)に基づく判定により、提供中のサービス種別が信号情報サービスである交差点J3の場合は、信号情報サービスの提供情報S2のログ収集が実行され得る。逆に、提供中のサービス種別が歩行者情報サービスである交差点J4の場合は、歩行者情報サービスの提供情報S2のログ収集は実行されない。
【0085】
状態条件(第2条件)は、車両情報S3のサービス設定状態がON(サービス許可)であることである。従って、路側中継装置2は、サービス設定状態がONに設定中の車両7が存在しない場合は、当該サービスに関する提供情報S2のログ収集を実行しない。
【0086】
図10は、状態条件(第2条件)に基づく判定例を示す説明図である。
図10に示すように、信号情報サービスを提供する交差点J5を想定する。この場合、状態条件(第2条件)に基づく判定により、車両情報S3のサービス設定状態がON(サービス許可)である場合は、信号情報サービスの提供情報S2のログ収集が実行され得る。逆に、車両情報S3のサービス設定状態がOFF(サービス許否)である場合は、信号情報サービスの提供情報S2のログ収集は実行されない。
【0087】
方位条件(第2条件)は、車両情報S3の進行方位がインフラ側のサービス対象方位と一致することである。従って、路側中継装置2は、サービスごとに規定されるサービス対象方位に向かって走行する車両7が存在しない場合は、当該サービス対象方位を採用する提供情報S2のログ収集を実行しない。
【0088】
図11は、方位条件(第2条件)に基づく判定例を示す説明図である。
図11に示すように、サービス対象方位が流入路の北向き(図7の上向き)に設定された交差点J6を想定する。この場合、方位条件(第2条件)に基づく判定により、車両情報S3の進行方位がサービス対象方位と一致する場合は、当該対象方位を採用する提供情報S2のログ収集が実行され得る。逆に、車両情報S3の進行方位がサービス対象方位と一致しない場合は、当該対象方位を採用する提供情報S2のログ収集は実行されない。
【0089】
経路条件(第2条件)は、車両情報S3の予定経路がインフラ側のサービス対象経路と一致することである。従って、路側中継装置2は、サービスごとに規定されるサービス対象経路を走行する車両7が存在しない場合は、当該サービス対象経路を採用する提供情報S2のログ収集を実行しない。
【0090】
図12は、経路条件(第2条件)に基づく判定例を示す説明図である。
図12に示すように、サービス対象経路が交差点J7を北向き(図12の上向き)に直進する経路に設定された交差点J7を想定する。この場合、経路条件(第2条件)に基づく判定により、車両情報S3の予定経路(直進)がサービス対象経路(直進)と一致する場合は、当該対象経路を採用する提供情報S2のログ収集が実行され得る。逆に、車両情報S3の予定経路(右折)がサービス対象経路(直進)と一致しない場合は、当該対象経路を採用する提供情報S2のログ収集は実行されない。
【0091】
以上から明らかな通り、路側中継装置2の通信制御部24が実行する「限定的ログ収集」の内容を要約すると次のようになる。
路側中継装置2の通信制御部24は、「第1条件」(エリア条件)及び「第2条件」(車種条件、サービス種別条件、状態条件、方位条件、及び経路条件のうちの少なくとも1つ)が充足するか否かを、車両向けの提供情報S2の種別ごとに判定し、判定結果が肯定的である場合に限り当該種別の提供情報S2のログ収集を実行する。
【0092】
もっとも、路側中継装置2の通信制御部24が実行する限定的ログ収集は、第1条件と第2条件をAND条件とする処理に限定されず、いずれか1つの条件が成立する場合に行われる処理であってもよい。
すなわち、路側中継装置2の通信制御部24は、第1条件のみが成立する場合、或いは、第2条件のみが成立する場合に、ログ収集を実行することにしてもよい。
【0093】
〔交通管理システムの変形例〕
図13は、交通管理システム11の変形例を示すブロック図である。
図13の変形例では、交通管理システム11は、中央装置1を含む交通管制システム10とは別系統の通信ネットワークよりなる。すなわち、交通管理システム11は、中央装置1とは異なるサーバ装置である管理装置12と、路側中継装置2と、情報源装置3とを備える。従って、路側中継装置2は、交通管理システム11に属するが、交通管制システム10には属していない。
【0094】
路側中継装置2に接続される情報源装置3には、交通信号制御機3A及び路側センサ3Bのうちの少なくとも1つが含まれる。
交通管制システム10には、交通管制センターなどに設置される中央装置1と、中央装置1と専用ネットワーク13を介して通信する交通信号制御機3Aが含まれる。図13の例では、路側センサ3Bは専用ネットワーク13に接続されていないが、路側センサ3Bを当該ネットワーク13に接続してもよい。
【0095】
管理装置12は、オンプレミスサーバ又はクラウドサーバなどのサーバ装置であり、所定の下位側伝送方式に基づく通信が可能な通信装置(図示せず)を有する。路側中継装置2は、管理装置12と情報源装置3との通信の中継機能を有する通信装置である。
管理装置12と路側中継装置2は、インターネットを含む公衆ネットワーク14を介して接続される。なお、路側中継装置2の上位側通信路には、LTE又は5Gなどの規格に従う無線媒体が含まれていてもよい。
【0096】
路側中継装置2の下位側通信路には、専用線又は自営線などの有線媒体(通信ケーブル)5が含まれる。従って、路側中継装置2には、有線媒体5を介して少なくとも1つの情報源装置3を接続することができる。なお、路側中継装置2は、無線媒体6を介して情報源装置3と通信することにしてもよい。
路側中継装置2の下位側通信路には、無線媒体6も含まれる。路側中継装置2は、無線媒体6を介して道路を走行中の車両7と無線で通信することもできる。無線媒体6は、例えば、ITS又はLTEなどの規格に従う所定周波数帯の無線媒体よりなる。
【0097】
交通信号制御機3Aは、自機の状態情報S1については、交通管制システム10の中央装置1に送信するが、信号情報については、交通管理システム11の路側中継装置2に送信する。
信号情報は、車両向けの提供情報S2の一種である。従って、路側中継装置2は、受信した信号情報を無線送信(例えばブロードキャスト)して、道路を走行中の車両7に信号情報を提供する。
【0098】
路側センサ3Bは、センサ情報を路側中継装置2に送信する。センサ情報は、車両向けの提供情報S2の一種である。従って、路側中継装置2は、受信したセンサ情報を無線送信(例えばブロードキャスト)して、道路を走行中の車両7にセンサ情報を提供する。
車両7の車載装置は、ITS又はLTE-V2Xなどの無線通信システムにより、車車間通信及び路車間通信が可能である。車両7の送信情報には、自車両の現在位置、速度及び走行状態など表す車両情報S3が含まれる。
【0099】
車両情報S3は、例えば図5に示す情報を含み、提供情報S2をログ収集すべきか否かの判定に使用される。具体的には、図13に示す路側中継装置2も、上述の「限定的ログ収集」を実行可能な通信制御部24(図2参照)を有する。
すなわち、通信制御部24は、車両情報S3に基づいて提供情報S2を利用し得る車両7の有無を判定し、当該車両7が存在する場合に限り、提供情報S2のログ収集を行う。収集された提供情報S2は、管理装置12に送信されてデータベースに蓄積される。
【0100】
〔その他の変形例〕
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は、上述の実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
例えば、上述の実施形態において、路側中継装置2の下位側通信部(無線通信部)23として外付けタイプの無線通信機を採用し、当該無線通信機を通信ケーブルにより下位側接続部22に接続する装置構成としてもよい。
【0101】
上述の実施形態では、路側中継装置2の構成要素である上位側通信部(第1通信部)21、下位側通信部(第2通信部)22、及び下位側通信部(第3通信部)23が、3つの通信インターフェース(デバイス)よりなる場合を例示したが、これらの通信部21~23は、例えばOSI参照モデルのレイヤ3以下が共通する、1つ又は2つのデバイスに集約された通信部であってもよい。
【符号の説明】
【0102】
1 中央装置(管理装置)
2 路側中継装置(通信装置)
3 情報源装置(通信装置)
3A 交通信号制御機(情報源装置)
3B 路側センサ(情報源装置)
4 有線媒体(通信ケーブル)
5 有線媒体(通信ケーブル)
6 無線媒体
7 車両
8 歩行者
10 交通管制システム(交通管理システム)
11 交通管理システム
12 管理装置
13 専用ネットワーク
14 公衆ネットワーク
20 筐体
21 上位側通信部(有線通信部、第1通信部)
22 下位側通信部(有線通信部、第2通信部)
23 下位側通信部(無線通信部、第3通信部)
24 通信制御部
25 記憶部
26 同期処理部
S1 状態情報
S2 車両向けの提供情報
S3 車両情報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13