(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-19
(45)【発行日】2025-05-27
(54)【発明の名称】液体吐出装置、プログラム及び液体吐出ヘッド
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20250520BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20250520BHJP
【FI】
B41J2/14 611
B41J2/01 301
(21)【出願番号】P 2023515882
(86)(22)【出願日】2021-04-19
(86)【国際出願番号】 JP2021015822
(87)【国際公開番号】W WO2022224295
(87)【国際公開日】2022-10-27
【審査請求日】2024-03-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】庄司 凌
【審査官】加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】特許第6361797(JP,B2)
【文献】特開2008-044351(JP,A)
【文献】特開2002-370357(JP,A)
【文献】国際公開第2014/208552(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0205957(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動基板と、前記駆動基板にケーブルを介して接続される液体吐出ヘッドと、を備える液体吐出装置であって、
前記ケーブルを介して受信された信号をシリアル信号からパラレル信号に変換する変換手段と、
所定の駆動手段を駆動させる制御信号を生成する生成手段と、
前記変換手段における前記信号の変換遅延時間を計測する計測手段と、
前記計測手段により計測された変換遅延時間に基づいて、前記生成手段から前記制御信号が出力されるタイミングを調整する調整手段と、
を備える液体吐出装置。
【請求項2】
前記駆動基板は、前記生成手段を備え、
前記生成手段は、前記駆動手段を駆動させる駆動信号を生成し、
前記液体吐出ヘッドは、前記変換手段を備え、
前記駆動手段は、前記ケーブルを介して受信された前記駆動信号と前記変換手段によりパラレル変換された前記制御信号の入力により液体を複数のノズルから吐出させるアクチュエーターを駆動させる請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記調整手段は、前記変換遅延時間に基づいて、前記生成手段から前記制御信号及び前記駆動信号が出力されるタイミングを各々調整する請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
複数の液体吐出ヘッドを有し、
前記調整手段は、前記制御信号が出力されるタイミングを調整する調整時間を、前記複数の液体吐出ヘッドの前記変換遅延時間のうち最大の変換遅延時間に基づいて決定する請求項2又は3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
複数の液体吐出ヘッドを有し、
前記調整手段は、前記制御信号が出力されるタイミングを調整する調整時間を、液体吐出ヘッドごとに決定する請求項2又は3に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記調整手段は、複数の前記制御信号のうち、前記駆動信号の電位が一定である期間において前記駆動手段に入力される制御信号が出力されるタイミングを調整する請求項2から5のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記変換手段を制御する変換制御手段を備え、
前記変換制御手段は、前記変換遅延時間が所定値を超えた場合に、前記変換遅延時間が前記所定値に収まるまで前記変換手段における前記信号の通信の再接続を繰り返す請求項1から6のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記計測手段は、前記制御信号とともに前記駆動基板から前記液体吐出ヘッドに受信されて前記変換手段において変換された基準信号に基づいて、前記変換遅延時間を計測する請求項2から7のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記液体吐出ヘッドは、所定の計測を行うセンサーを備え、
前記駆動手段は、前記センサーの読取信号に応じて制御され、
前記駆動基板は、前記変換手段を備え、
前記計測手段は、前記変換手段における前記読取信号の変換遅延時間を計測し、
前記調整手段は、前記読取信号の変換遅延時間に基づいて、前記生成手段から前記制御信号を出力するタイミングを調整する請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
駆動基板と、前記駆動基板にケーブルを介して接続される液体吐出ヘッドと、を備える液体吐出装置であって、
前記ケーブルを介して受信された信号をシリアル信号からパラレル信号に変換する変換手段と、
所定の駆動手段を駆動させる制御信号を生成する生成手段と、
を備える液体吐出装置のコンピューターを、
前記変換手段における前記信号の変換遅延時間を計測する計測手段、
前記計測手段により計測された変換遅延時間に基づいて、前記生成手段から前記制御信号が出力されるタイミングを調整する調整手段、
として機能させるプログラム。
【請求項11】
駆動基板にケーブルを介して接続され、複数のノズルから各々液体を吐出させるための信号に基づいてノズルから液体を吐出させる液体吐出ヘッドであって、
前記ケーブルを介して受信された前記信号をシリアル信号からパラレル信号に変換する変換手段と、
前記変換手段によりパラレル変換された前記信号の入力により液体を吐出させるアクチュエーターを駆動させる駆動手段と、
前記変換手段において変換された信号と同期した信号を前記駆動基板に出力する信号出力手段と、
を備える液体吐出ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液体吐出装置、プログラム及び液体吐出ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ノズルからインク(液体)を吐出させて媒体上に画像や構造などを形成する液体吐出装置がある。このような液体吐出装置では、各ノズルに連通するインク流路においてインクに圧力変化を付与することで適切な量のインクを所望の速度で吐出させている。
【0003】
インクへの圧力付与の方法の一つとして、圧電素子などのアクチュエーターに所定の駆動波形電圧を印加することでインク流路中の圧力室の壁面を変形させる技術がある。アクチュエーターは、印加された電圧に対して高速かつ高精度に変形するので、吐出タイミングや吐出量の制御を精密に行うことができる。
【0004】
近年、液体吐出装置の高速化や高精度化の要求に従って、ノズル及びこれに対応するアクチュエーターの数が増加傾向にある。これに伴い、インクを吐出するノズルに対応するアクチュエーターを選択する駆動ICの数も増える。したがって、駆動ICの制御信号数、液体吐出ヘッドのコネクタのピン数、及びケーブル本数が増えるので、プリンターの配線の引き回しが難しくなる。また、信号のクロストークによるノイズ誤動作などの問題もある。
これに対して、制御信号をシリアル変換して送信する事で、液体吐出ヘッドのコネクタのピン数を減らす対策が考えられる。
特許文献1に記載の発明では、コントロールユニットにおいて制御信号をシリアル信号形式に変換し、変換した制御信号をヘッドユニットに送信する。そして、ヘッドユニットにおいてシリアル信号形式の制御信号をパラレル信号形式に変換する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、制御信号の一部は、アクチュエーターを駆動する駆動信号の電位が一定に保たれる定常電位期間において、駆動ICに入力する必要があるが、制御信号をシリアル/パラレル変換することに伴って遅延時間が発生し、制御信号を駆動信号の定常電位期間において駆動ICに入力できない可能性がある。
これに対して、特許文献1に記載の発明では、制御信号の遅延時間が変化しても駆動信号の定常電位期間に制御信号をヘッドユニットへ入力できるように、駆動信号の定常電位期間を長く取る構成である。また、駆動信号のパルス幅が大きく定常電位期間が短いヘッドが製造された場合等で、ヘッド毎に駆動信号を変えたい場合、安定動作のために前述の駆動信号の定常電位時間をさらに長くする必要があった。
しかし、駆動信号の定常電位期間をより長く取ると、その分最大駆動周波数が小さくなるという問題がある。
上記した問題は、アクチュエーターの駆動にかかる信号のみならず、駆動基板と液体吐出ヘッドとの間でシリアル/パラレル変換することに伴って遅延時間が生じる信号に共通した問題である。
【0007】
この発明の目的は、駆動基板と液体吐出ヘッドとの間で送信されるシリアル信号をパラレル信号に変換する際に遅延時間が生じても最大駆動周波数を小さくすることなく動作できる液体吐出装置、プログラム及び液体吐出ヘッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明の液体吐出装置は、
駆動基板と、前記駆動基板にケーブルを介して接続される液体吐出ヘッドと、を備える液体吐出装置であって、
前記ケーブルを介して受信された信号をシリアル信号からパラレル信号に変換する変換手段と、
所定の駆動手段を駆動させる制御信号を生成する生成手段と、
前記変換手段における前記信号の変換遅延時間を計測する計測手段と、
前記計測手段により計測された変換遅延時間に基づいて、前記生成手段から前記制御信号が出力されるタイミングを調整する調整手段と、
を備える。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の液体吐出装置において、
前記駆動基板は、前記生成手段を備え、
前記生成手段は、前記駆動手段を駆動させる駆動信号を生成し、
前記液体吐出ヘッドは、前記変換手段を備え、
前記駆動手段は、前記ケーブルを介して受信された前記駆動信号と前記変換手段によりパラレル変換された前記制御信号の入力により液体を複数のノズルから吐出させるアクチュエーターを駆動させる。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の液体吐出装置において、
前記調整手段は、前記変換遅延時間に基づいて、前記生成手段から前記制御信号及び前記駆動信号が出力されるタイミングを各々調整する。
【0011】
また、請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の液体吐出装置において、
複数の液体吐出ヘッドを有し、
前記調整手段は、前記制御信号が出力されるタイミングを調整する調整時間を、前記複数の液体吐出ヘッドの前記変換遅延時間のうち最大の変換遅延時間に基づいて決定する。
【0012】
また、請求項5に記載の発明は、請求項2又は3に記載の液体吐出装置において、
複数の液体吐出ヘッドを有し、
前記調整手段は、前記制御信号が出力されるタイミングを調整する調整時間を、液体吐出ヘッドごとに決定する。
【0013】
また、請求項6に記載の発明は、請求項2から5のいずれか一項に記載の液体吐出装置において、
前記調整手段は、複数の前記制御信号のうち、前記駆動信号の電位が一定である期間において前記駆動手段に入力される制御信号が出力されるタイミングを調整する。
【0014】
また、請求項7に記載の発明は、請求項1から6のいずれか一項に記載の液体吐出装置において、
前記変換手段を制御する変換制御手段を備え、
前記変換制御手段は、前記変換遅延時間が所定値を超えた場合に、前記変換遅延時間が前記所定値に収まるまで前記変換手段における前記信号の通信の再接続を繰り返す。
【0015】
また、請求項8に記載の発明は、請求項2から7のいずれか一項に記載の液体吐出装置において、
前記計測手段は、前記制御信号とともに前記駆動基板から前記液体吐出ヘッドに受信されて前記変換手段において変換された基準信号に基づいて、前記変換遅延時間を計測する。
【0016】
また、請求項9に記載の発明は、請求項1に記載の液体吐出装置において、
前記液体吐出ヘッドは、所定の計測を行うセンサーを備え、
前記駆動手段は、前記センサーの読取信号に応じて制御され、
前記駆動基板は、前記変換手段を備え、
前記計測手段は、前記変換手段における前記読取信号の変換遅延時間を計測し、
前記調整手段は、前記読取信号の変換遅延時間に基づいて、前記生成手段から前記制御信号を出力するタイミングを調整する。
【0017】
また、請求項10に記載の発明のプログラムは、
駆動基板と、前記駆動基板にケーブルを介して接続される液体吐出ヘッドと、を備える液体吐出装置であって、
前記ケーブルを介して受信された信号をシリアル信号からパラレル信号に変換する変換手段と、
所定の駆動手段を駆動させる制御信号を生成する生成手段と、
を備える液体吐出装置のコンピューターを、
前記変換手段における前記信号の変換遅延時間を計測する計測手段、
前記計測手段により計測された変換遅延時間に基づいて、前記生成手段から前記制御信号が出力されるタイミングを調整する調整手段、
として機能させる。
【0018】
また、請求項11に記載の発明の液体吐出ヘッドは、
駆動基板にケーブルを介して接続され、複数のノズルから各々液体を吐出させるための信号に基づいてノズルから液体を吐出させる液体吐出ヘッドであって、
前記ケーブルを介して受信された前記信号をシリアル信号からパラレル信号に変換する変換手段と、
前記変換手段によりパラレル変換された前記信号の入力により液体を吐出させるアクチュエーターを駆動させる駆動手段と、
前記変換手段において変換された信号と同期した信号を前記駆動基板に出力する信号出力手段と、
を備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明に従うと、駆動基板と液体吐出ヘッドとの間で送信されるシリアル信号をパラレル信号に変換する際に遅延時間が生じても最大駆動周波数を小さくすることなく動作できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態の液体吐出装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図2A】本発明の実施形態の制御信号の遅延を示す図である。
【
図2B】本発明の実施形態の遅延を調整した制御信号を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態の変形例1に係る液体吐出装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明の実施形態の変形例2に係る液体吐出装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図5】本発明の実施形態の変形例3に係る液体吐出装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図6】本発明の実施形態の変形例4に係る液体吐出装置の機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1は、液体吐出装置1の機能構成を示すブロック図である。
液体吐出装置1は、駆動基板2と、液体吐出ヘッドとしてのインクジェットヘッド3とを備える。ここでは、インクジェットヘッド3として1つのみが示されているが、液体吐出装置1が複数のインク色を吐出させるカラープリンターである場合には、インクジェットヘッド3は、当該複数のインク色(例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色)にそれぞれ対応して設けられる。また、同色のインク吐出に係るインクジェットヘッド3を複数設けて更にノズル数を増やしても良い。駆動基板2とインクジェットヘッド3との間は、ケーブル41、42で接続されている。ケーブル41、42として、例えば、同軸ケーブルやSTP(Shielded Twisted Pair)が使用される。
【0023】
駆動基板2は、信号生成部21と、入出力インターフェイス22(I/F)と、シリアライザー23と、駆動信号生成回路24と、ユニット制御部25、メモリー(図示なし)などを備える。
【0024】
信号生成部21は、入出力インターフェイス22が受け取った外部装置からの画像記録に係る命令、設定や記録対象の画像データに基づいて、演算処理を行い、液体吐出装置1における画像記録動作に係る各種制御処理を行う。
具体的には、信号生成部21は、インクジェットヘッド3の複数のノズルから各々インクを吐出させるためのデジタル形式の制御信号及び駆動データ信号を生成する。
信号生成部21は、生成した制御信号及び駆動データ信号をパラレル信号方式で出力する。
制御信号には、後述する画素データと、画素データの転送や駆動信号の供給などの動作可否や動作タイミングの制御を行うための信号が含まれる。
信号生成部21として、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)が使用される。
【0025】
入出力インターフェイス22は、外部装置から画像記録に係る命令、設定や記録対象の画像データを受け取り、また、信号生成部21から外部装置に対して画像記録動作に係るステータスや異常発生情報などを出力するためのインターフェイスである。入出力インターフェイス22としては、ネットワークカード(LANカード)などが用いられる。
【0026】
シリアライザー23は、信号生成部21から出力されたパラレル信号方式の各種制御信号をシリアル変換する。
シリアル変換された制御信号は、駆動基板2とインクジェットヘッド3を接続するケーブル41を介して、インクジェットヘッド3内のデシリアライザー31に出力される。
【0027】
駆動信号生成回路24は、信号生成部21から出力されたデジタル形式の駆動データ信号をアナログ形式に変換後、増幅し、駆動信号を生成する。
生成された駆動信号は、ケーブル42を介して、インクジェットヘッド3内の駆動IC32に出力され、インクジェットヘッド3内のアクチュエーター33を駆動するために用いられる。
よって、信号生成部21及び駆動信号生成回路24は、生成手段として機能する。
【0028】
ユニット制御部25は、液体吐出装置1の全体動作の統括制御を行う。
【0029】
メモリー(図示なし)は、外部装置から取得された記録対象の画像データや、当該画像データから生成された各ノズルからのインク吐出状態を定める画素データを記憶する。画素データは、メモリー(図示なし)から出力された後、信号生成部21に入力され、他の制御信号と共に信号生成部21からパラレル信号方式で出力される。そして、画素データは、他の制御信号ともにシリアライザー23によりシリアル変換される。
【0030】
インクジェットヘッド3はデシリアライザー31と、駆動IC32と、アクチュエーター33、ノズル列34などを有する。
【0031】
デシリアライザー31は、シリアライザー23から出力されたシリアル信号方式の制御信号をパラレル信号方式に変換する。ここで、デシリアライザー31は、変換手段として機能する。
パラレル変換された制御信号は、駆動IC32に出力される。制御信号のうちのパラレル変換された画素データは、インクジェットヘッド3の駆動IC32に出力されて、インクを吐出するノズルを選択するのに用いられる。
【0032】
駆動IC32は、駆動信号生成回路24から出力された駆動信号、デシリアライザー31から出力された制御信号を入力する。
駆動IC32は、制御信号に基づいて、アクチュエーター33を適切なタイミング、振幅及び期間で変形させるための駆動信号を、選択されたノズルに対応するアクチュエーター33に出力する。
よって、駆動IC32は、駆動手段として機能する。
【0033】
アクチュエーター33は、各ノズルに連通してインクを供給するチャネル(インク流路)ごとにインクを吐出させたり、インクを吐出させずに液面(メニスカス)を振動させたりするための圧力変化をインクに付与する。アクチュエーター33としては、ここでは、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)といった圧電素子が用いられ、この圧電素子が、一次元配列されたチャネルの隔壁として各チャネル間に配置される。アクチュエーターの両側面(すなわち、チャネルの内側面)に設けられた電極膜を介してアクチュエーターに所定の電圧が印加されることで、当該アクチュエーターが屈曲変形し、内部のインクに圧力を付与する。なお、一次元配列されたチャネルの両端には、当該両端のチャネルに対して屈曲変形の影響を与えるためのダミーチャネルが設けられ、インクが供給、吐出されずに変形動作がなされる。アクチュエーターの変形には、ここでは、せん断モード(シアモード)が用いられるが、ベンドモードなど他のモードでの変形が利用されても良い。
【0034】
ノズル列34は、適宜パターンで配列された2以上の所定数のノズルを有する。
【0035】
アクチュエーター33及びノズル列34は、それぞれ一つのブロックとして構成されているが、複数のブロックに分けて構成されてもよい。
【0036】
図2Aは、制御信号をシリアライザー23及びデシリアライザー31で変換した場合に生じる遅延を示す図である。
図2Aの(A)は、インクジェットヘッド3が吐出を行う記録媒体を載置する搬送ベルト(図示なし)の搬送位置検出信号であるエンコーダー信号である。当該エンコーダー信号は、外部装置から入出力インターフェイス22を介して信号生成部21に入力される。信号生成部21は、エンコーダー信号に基づいて、各種信号を出力するタイミングを制御する。
図2Aの画素データ(B1)、
図2AのLAT信号(C1)、
図2AのGSCLK信号(D1)は、エンコーダー信号に基づいて、信号生成部21から出力されるタイミングを設定する設定時間(t
0)が設けられて出力される制御信号の一部である。これらは、シリアライザー23及びデシリアライザー31によるシリアル/パラレル変換(Ser/Des変換)前の信号である。LAT信号は、画素データの更新信号であり、GSCLK信号は、階調を制御するために用いられる信号である。LAT信号及びGSCLK信号は、後述する駆動信号(
図2Aの(E))の電位が一定に保たれる定常電位期間において、駆動ICに入力しなければならないというタイミング制約がある。
図2Aの画素データ(B2)、
図2AのLAT信号(C2)、
図2AのGSCLK信号(D2)は、シリアル/パラレル変換後に、駆動IC32に入力される信号である。ここで、シリアル/パラレル変換によって、変換遅延時間(t
d)が生じる。
図2Aの駆動信号(E)は、駆動IC32に入力される駆動信号の例である。駆動信号は、エンコーダー信号に基づいて、駆動信号生成回路24から出力されるタイミングを設定する設定時間(t
0a)が設けられて出力される。
制御信号をシリアル/パラレル変換させて遅延が生じた場合、
図2Aに示すように、LAT信号(C2)、GSCLK信号(D2)は、駆動信号(E)の定常電位期間外において駆動IC32に入力されることとなり、タイミング制約を満たせないタイミング違反となるケースがある。
【0037】
駆動信号の定常電位期間において、LAT信号及びGSCLK信号を駆動IC32に入力するために、信号生成部21から出力するタイミングを調整した例を
図2Bに示す。
図2Bのエンコーダー信号(A)は
図2Aのエンコーダー信号と同様の信号であり、
図2Bの駆動信号(E)は
図2Aの駆動信号と同様の波形である。
図2Bの画素データ(B3)、
図2BのLAT信号(C3)、
図2BのGSCLK信号(D3)は、設定時間(t
0)から変換遅延時間(t
d)を引いて算出された調整時間(t
1)が設けられて出力される。これらは、シリアライザー23及びデシリアライザー31によるシリアル/パラレル変換前の信号である。
図2Bの画素データ(B4)、
図2BのLAT信号(C4)、
図2BのGSCLK信号(D4)は、シリアル/パラレル変換後に、駆動IC32に入力される信号である。シリアル/パラレル変換によって、変換遅延時間(t
d)が生じる。
制御信号をシリアル/パラレル変換させて遅延が生じた場合でも、調整時間(t
1)を設けたため、
図2BのLAT信号(C4)、
図2BのGSCLK信号(D4)は、
図2Bに示すように、駆動信号(E)の定常電位期間において駆動IC32に入力されることとなり、適切なタイミングで駆動IC32に制御信号及び駆動信号が入力される。
【0038】
シリアライザー23及びデシリアライザー31での変換で生じる制御信号の変換遅延時間(t
d)は、シリアライザー23及びデシリアライザー31の個体差、ケーブル41の長さ、使用環境等で変化する。
そこで、適切な調整時間(t
1)を設けるために、
図1に示すようにデシリアライザー31から出力された制御信号の一部を信号Sとして、ケーブル42を介して、駆動基板2の信号生成部21に入力する。信号Sは、制御信号のうちのどれかであればよい。ここで、デシリアライザー31からケーブル42が接続されているインクジェットヘッド3上のコネクタまでの回路が信号出力手段として機能する。
信号生成部21は、入力された信号Sから変換遅延時間を計測する。そして、信号生成部21は、当該変換遅延時間に基づいて、制御信号の調整時間を決定し、当該調整時間を設けて制御信号をシリアライザー23に出力する。ここで、信号生成部21は、計測手段及び調整手段として機能する。
調整時間が設けられた制御信号は、シリアライザー23及びデシリアライザー31で変換され、駆動信号と共に駆動IC32に入力される。この場合、駆動信号の定常電位期間においてLAT信号及びGSCLK信号が駆動IC32に入力されることとなる。
【0039】
上記のように、制御信号と駆動信号間のタイミング制約を満たすように、駆動基板2からインクジェットヘッド3に送信されるシリアル信号形式の制御信号における変換遅延時間を補償することで、インクジェットヘッド3内部に、変換遅延時間を補償するためのメモリやコントローラが不要となり、簡易な構成で変換遅延時間の補償が可能である。さらにインクジェットヘッド3内部にメモリやコントローラを持たないため、消耗品であるインクジェットヘッド3の価格低下が可能である。
また、駆動信号の定常期間を長く取る必要がないので、液体吐出装置1のインクジェットヘッド搭載数に関わらず、最大駆動周波数でインクジェットヘッドを駆動することができる。
さらに数百nsec程度と波形間の定常電位の期間が短いマルチ波形の駆動信号に対して、タイミング制約のあるGSCLKなどの信号のタイミング制約を満たすことが可能である。
【0040】
制御信号の調整時間を決定するタイミングは、液体吐出装置1の電源投入時に取得する。または定期的に取得しても良い。
また、例えば、制御信号に調整時間を設けることだけでは、変換遅延時間を補償できない場合、つまり、
図2Aの変換遅延時間(t
d)の方が設定時間(t
0)よりも長い場合、信号生成部21は、制御信号に調整時間を設けることに加えて、駆動信号に別の調整時間を設けて出力してもよい。駆動信号に設ける調整時間は、制御信号と駆動信号間のタイミング違反が発生しないように設定される。駆動信号に別の調整時間を設けることにより、駆動基板2側でインクジェットヘッド3の吐出タイミングを設定できるため、インクの着弾位置のズレを補正することが可能である。
【0041】
また、調整時間を設ける制御信号は、複数ある制御信号のうちの一つまたは複数でもよい。信号生成部21において、タイミング制約が厳しい信号のみに調整時間を設けることで、駆動基板2の構成が簡易になる。
タイミング制約が厳しい信号とは、例えば、LAT信号やGSCLK信号であって、これらの信号は、駆動信号の定常電位期間において駆動IC32に入力する必要がある。したがって、これらの信号においてのみ、タイミング違反が発生する場合に調整時間を設けることで変換遅延時間を補償するとしてもよい。これにより駆動基板2の構成が簡易になる。
【0042】
また、変換遅延時間は、シリアライザー23及びデシリアライザー31における信号通信を確立するごとに変化する可能性がある。したがって、信号生成部21は、変換遅延時間が所定値を超えた場合に、変換遅延時間が所定値に収まるまでシリアライザー23及びデシリアライザー31における通信の再接続を繰り返す。ここで、信号生成部21は変換制御手段として機能する。変換遅延時間が当該所定値を超えた場合とは、例えば、制御信号に調整時間を設けることだけでは、変換遅延時間を補償できない場合、つまり、
図2Aの変換遅延時間(t
d)の方が設定時間(t
0)よりも長い場合や駆動信号とタイミング違反が発生する場合である。シリアライザー23及びデシリアライザー31における通信の再接続は、シリアライザー23及びデシリアライザー31において通信をリセットする、もしくは通信に使用するためのクロック信号の供給を停止することにより実施される。
【0043】
<変形例1>
次に、本発明の変形例1について説明する。なお、変形例1においては、上記実施形態と同様の構成に同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0044】
上記実施形態において、適切な調整時間を設けるために、制御信号の一部である信号Sを信号生成部21に入力するとしたがこれに限らない。変換遅延時間を計測するために、
図3に示すような制御信号とは別の基準信号26を用いてもよい。
基準信号26は、信号生成部21から制御信号とともにパラレル信号方式で出力され、シリアライザー23に入力される。次いで、基準信号26は、シリアライザー23において、制御信号とともにシリアル変換され、ケーブル41を介して、デシリアライザー31に入力される。次いで、基準信号26は、デシリアライザー31において、制御信号とともにパラレル変換され出力される。デシリアライザー31から出力された基準信号26は、ケーブル42を介して、信号生成部21に入力される。ここで、デシリアライザー31からケーブル42が接続されているインクジェットヘッド3上のコネクタまでの回路が信号出力手段として機能する。
したがって、基準信号26には、制御信号と同様にシリアライザー23及びデシリアライザー31での変換で遅延が生じる。制御信号の変換遅延時間と基準信号26の変換遅延時間は同等である。
【0045】
<変形例2>
次に、本発明の変形例2について説明する。なお、変形例2においては、上記実施形態と同様の構成に同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0046】
また、本変形例では、液体吐出装置1が複数のインクジェットヘッド3を備える構成である。
図4に、複数のインクジェットヘッド3を備える液体吐出装置1の機能構成を示すブロック図を示す。
図4に示す例において、インクジェットヘッド3は2つであり、インクジェットヘッド3a及びインクジェットヘッド3bである。この場合、駆動基板2とインクジェットヘッド3aとの間は、ケーブル41a及びケーブル42aで接続されている。また、駆動基板2とインクジェットヘッド3bとの間は、ケーブル41b及びケーブル42bで接続されている。また、駆動基板2は、シリアライザー23a及びシリアライザー23bと、駆動信号生成回路24a及び駆動信号生成回路24bを備える。他の構成は、
図1に示すインクジェットヘッド3が1つの場合と同様である。
図4に示す例において、適切な調整時間を設けるために、インクジェットヘッド3aについては制御信号の一部である信号Saを信号生成部21に入力し、インクジェットヘッド3bについては制御信号の一部である信号Sbを信号生成部21に入力する。
本変形例では、複数のインクジェットヘッド3を備える液体吐出装置1として、2つのインクジェットヘッド3を備えるとしたがこれに限らない。3つ以上のインクジェットヘッド3を備える構成であってもよい。
【0047】
液体吐出装置1が複数のインクジェットヘッド3を備える場合、調整時間は、複数のインクジェットヘッド3においてそれぞれ決定してもよい。つまり、インクジェットヘッド3aについて、信号生成部21は、入力された信号Saからインクジェットヘッド3aに係る変換遅延時間を計測する。そして、信号生成部21は、当該インクジェットヘッド3aに係る変換遅延時間に基づいて、インクジェットヘッド3aに出力する制御信号の調整時間を決定する。同様に、インクジェットヘッド3bについて、信号生成部21は、入力された信号Sbからインクジェットヘッド3bに係る変換遅延時間を計測する。そして、信号生成部21は、当該インクジェットヘッド3bに係る変換遅延時間に基づいて、インクジェットヘッド3bに出力する制御信号の調整時間を決定する。
これによりインクジェットヘッド3ごとに調整時間の最適化が可能であるため、インクジェットヘッド3の搭載数に関わらず、最大駆動周波数でインクジェットヘッド3を駆動することができる。
【0048】
また、液体吐出装置1が複数のインクジェットヘッド3を備える場合、調整時間は、複数のインクジェットヘッド3における変換遅延時間をそれぞれ計測し、最大の変換遅延時間に基づいて決定してもよい。つまり、信号生成部21は、入力された
図4に示す信号Saに基づく変換遅延時間と信号Sbに基づく変換遅延時間を比較し、大きい方の変換遅延時間に基づいて調整時間を決定する。これにより駆動基板2の構成を簡易にすることができる。
【0049】
また、液体吐出装置1が複数のインクジェットヘッド3を備える場合、複数のインクジェットヘッド3のうち、計測した変換遅延時間が所定の規定値を超えたインクジェットヘッド3のみ、調整時間を設けることで変換遅延時間を補償するとしてもよい。これにより駆動基板2の構成が簡易になる。当該規定値は、制御信号と駆動信号間のタイミング違反が発生しない値であればよい。また当該規定値は、エンコーダー信号に基づいて、信号生成部21から出力されるタイミングを設定する設定時間としてもよい。
【0050】
<変形例3>
次に、本発明の変形例3について説明する。なお、変形例3においては、上記実施形態と同様の構成に同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0051】
図5は、本変形例に係る液体吐出装置1の機能構成を示すブロック図である。
本変形例では、
図5に示すように、駆動基板2は、変換手段としてのデシリアライザー27と、生成手段としてのヒーター制御信号生成回路28を備える。また、インクジェットヘッド3は、センサーとしての温度センサー35a,35bと、シリアライザー36と、駆動手段としてのヒーター37a,37bを備える。
また、本変形例では、制御信号(LAT信号、GSCLK信号等)と駆動信号間の他に、インクジェットヘッド3に備えられた温度センサー35aとヒーター37a間、及び温度センサー35bとヒーター37b間において変換遅延時間を補償する。この場合、信号生成部21は、温度センサー35aから出力される読取信号Seaに基づいてヒーター37aを制御し、温度センサー35bから出力される読取信号Sebに基づいてヒーター37bを制御する構成である。具体的には、調整手段としての信号生成部21は、読取信号Sea,Sebに基づいたそれぞれのヒーター制御データHa0,Hb0をヒーター制御信号生成回路28に出力する。そして、ヒーター制御信号生成回路28において、ヒーター制御データHa0,Hb0からヒーター制御信号Ha,Hbが生成され、ケーブル42を介して、ヒーター37a,37bに入力される。
【0052】
また、本変形例では、温度センサー35aから出力される読取信号Sea及び温度センサー35bから出力される読取信号Sebは、シリアライザー36に入力されてシリアル変換される。その後、ケーブル41を介して、デシリアライザー27に入力されてパラレル変換され、信号生成部21に入力される。したがって、読取信号Sea,Sebには、シリアライザー36及びデシリアライザー27での変換により変換遅延時間が生じる。
読取信号Sea,Sebに生じる変換遅延時間を計測するために、
図5に示すような基準信号Scを用いる。
基準信号Scは、信号生成部21から出力され、ケーブル42を介して、シリアライザー36に入力される。次いで、基準信号Scは、シリアライザー36において、読取信号Sea,Sebとともにシリアル変換されて出力される。シリアライザー36から出力された基準信号Scは、ケーブル41を介して、デシリアライザー27に入力される。次いで、基準信号Scは、デシリアライザー27において、パラレル変換され、信号生成部21に入力される。
したがって、基準信号Scには、読取信号Sea,Sebと同様にシリアライザー36及びデシリアライザー27での変換で遅延が生じる。読取信号Sea,Sebの変換遅延時間と基準信号Scの変換遅延時間は同等である。
計測手段としての信号生成部21は、入力された基準信号Scから読取信号Sea,Sebの変換遅延時間を計測する。そして、信号生成部21は、当該読取信号Sea,Sebの変換遅延時間に基づいて、ヒーター制御データHa0,Hb0をヒーター制御信号生成回路28に出力するタイミングを調整する。
上記において、温度センサー35aとヒーター37a間、及び温度センサー35bとヒーター37b間において変換遅延時間を補償したがこれに限らない。インクジェットヘッド3に備えられた所定のセンサー(例えば、光センサーや加速度センサー)と液体吐出装置1のモーター間等において変換遅延時間を補償してもよい。
【0053】
<変形例4>
次に、本発明の変形例4について説明する。なお、変形例4においては、上記実施形態と同様の構成に同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0054】
本変形例の構成では、
図6に示すように、駆動基板2に駆動信号生成回路24がなく、インクジェットヘッド3が駆動信号生成回路38を備える。
本変形例において、信号生成部21は、入出力インターフェイス22が受け取った外部装置からの画像記録に係る命令、設定や記録対象の画像データに基づいて、デジタル形式の制御信号、及び駆動信号を生成するための駆動データ29を生成する。
次に、制御信号及び駆動データ29は、信号生成部21からパラレル信号方式で出力され、シリアライザー23に入力される。次いで、シリアライザー23において、制御信号及び駆動データ29は、シリアル変換され、ケーブル41を介して、デシリアライザー31に入力される。次いで、制御信号及び駆動データ29は、デシリアライザー31において、パラレル変換され出力される。デシリアライザー31から出力された制御信号は、駆動IC32に入力される。また、デシリアライザー31から出力された制御信号の一部を信号Sとして、ケーブル41を介して、駆動基板2の信号生成部21に入力する。また、デシリアライザー31から出力された駆動データ29は、駆動信号生成回路38に入力される。
駆動信号生成回路38は、デシリアライザー31から出力された駆動データ29をデジタル信号のまま、もしくはアナログ信号に変換後、増幅し、駆動信号を生成する。生成された駆動信号は、インクジェットヘッド3内の駆動IC32に出力され、インクジェットヘッド3内のアクチュエーター33を駆動するために用いられる。
【0055】
本変形例においては、制御信号に加えて駆動データ29もシリアル/パラレル変換されるため、駆動データ29にもシリアル/パラレル変換に伴う変換遅延時間が生じる。そのため駆動データ29に対しても、制御信号と同様に調整時間を設ける。つまり、信号生成部21は、入力された信号Sから変換遅延時間を計測する。そして、信号生成部21は、制御信号及び駆動データ29のそれぞれの設定時間から当該変換遅延時間を差し引くことでそれぞれの調整時間を決定し、当該それぞれの調整時間を設けて制御信号及び駆動データ29をシリアライザー23に出力する。これにより遅延時間が通信の度に変化したとしてもインクの着弾位置のズレを補正することができる。
また変換遅延時間が所定値を超えた場合に、変換遅延時間が所定値に収まるまでシリアライザー23及びデシリアライザー31における通信の再接続を繰り返す。ここで、信号生成部21は変換制御手段として機能する。当該所定値は、例えば100nsecとすれば、高速印字時においても吐出位置のズレを1%以内に抑えることができる。もしくは変換遅延時間が当該所定値を超えた場合とは、制御信号に調整時間を設けることだけでは、変換遅延時間を補償できない場合、つまり、
図2Aの変換遅延時間(t
d)の方が設定時間(t
0)よりも長い場合である。
【0056】
以上のように、本実施形態の液体吐出装置1は、駆動基板2と、駆動基板2にケーブル41、42を介して接続される液体吐出ヘッド(インクジェットヘッド3)と、を備える液体吐出装置1であって、ケーブル41、42を介して受信された信号をシリアル信号からパラレル信号に変換する変換手段(デシリアライザー31、デシリアライザー27)と、所定の駆動手段(駆動IC32、ヒーター37a,37b)を駆動させる制御信号を生成する生成手段(信号生成部21、駆動信号生成回路24)と、変換手段における信号の変換遅延時間を計測する計測手段(信号生成部21)と、計測手段により計測された変換遅延時間に基づいて、生成手段から制御信号が出力されるタイミングを調整する調整手段(信号生成部21)と、を備える。
これにより、駆動基板と液体吐出ヘッドとの間で送信されるシリアル信号をパラレル信号に変換する際に遅延時間が生じても最大駆動周波数を小さくすることなく動作できる液体吐出装置、プログラム及び液体吐出ヘッドを提供することができる。
【0057】
また、本実施形態の液体吐出装置1において、駆動基板2は、生成手段を備え、生成手段は、駆動手段(駆動IC32)を駆動させる駆動信号を生成し、液体吐出ヘッドは、変換手段を備え、駆動手段は、ケーブル41、42を介して受信された駆動信号と変換手段によりパラレル変換された制御信号の入力により液体を複数のノズルから吐出させるアクチュエーター33を駆動させる。
これにより、駆動基板からインクジェットヘッドに送信されるシリアル信号形式の制御信号における遅延時間が生じても最大駆動周波数を小さくすることなく液体を吐出する液体吐出装置、プログラム及び液体吐出ヘッドを提供することができる。
【0058】
また、本実施形態の液体吐出装置1において、調整手段は、変換遅延時間に基づいて、生成手段から制御信号及び駆動信号が出力されるタイミングを各々調整する。
これにより、駆動基板2側でインクジェットヘッド3の吐出タイミングを設定できるため、インクの着弾位置のズレを補正することが可能である。
【0059】
また、本実施形態の液体吐出装置1は、複数の液体吐出ヘッドを有し、調整手段は、制御信号が出力されるタイミングを調整する調整時間を、複数の液体吐出ヘッドの変換遅延時間のうち最大の変換遅延時間に基づいて決定する。
これにより、駆動基板2の構成を簡易にすることができる。
【0060】
また、本実施形態の液体吐出装置1は、複数の液体吐出ヘッドを有し、調整手段は、制御信号が出力されるタイミングを調整する調整時間を、液体吐出ヘッドごとに決定する。
これにより、インクジェットヘッド3ごとに調整時間の最適化が可能であるため、インクジェットヘッド3の搭載数に関わらず、最大駆動周波数でインクジェットヘッド3を駆動することができる。
【0061】
また、本実施形態の液体吐出装置1において、調整手段は、複数の制御信号のうち、駆動信号の電位が一定である期間において駆動手段(駆動IC32)に入力される制御信号が出力されるタイミングを調整する。
これにより、全ての制御信号が出力されるタイミングを調整する場合より駆動基板2の構成が簡易になる。
【0062】
また、本実施形態の液体吐出装置1は、変換手段を制御する変換制御手段を備え、変換制御手段は、変換遅延時間が所定値を超えた場合に、変換遅延時間が所定値に収まるまで前記変換手段における前記信号の通信の再接続を繰り返す。
これにより、変換遅延時間が所定値を超えた場合でも変換遅延時間を補償することができる。
【0063】
また、本実施形態の液体吐出装置1において、計測手段は、制御信号とともに駆動基板2から液体吐出ヘッドに受信されて変換手段において変換された基準信号26に基づいて、変換遅延時間を計測する。
これにより、インクジェットヘッド3内部に、変換遅延時間を補償するためのメモリやコントローラが不要となり、基準信号26に基づいた簡易な構成での変換遅延時間の補償が可能である。
【0064】
また、本実施形態の液体吐出装置1において、液体吐出ヘッドは、所定の計測を行うセンサー(温度センサー35a,35b)を備え、駆動手段(ヒーター37a,37b)は、センサーの読取信号に応じて制御され、駆動基板2は、変換手段(デシリアライザー27)を備え、計測手段は、変換手段における読取信号の変換遅延時間を計測し、調整手段は、読取信号の変換遅延時間に基づいて、生成手段から制御信号(ヒーター制御信号Ha,Hb)を出力するタイミングを調整する。
これにより、インクジェットヘッド3の複数のノズルから各々インクを吐出させるための制御信号以外の信号についても、変換遅延時間を補償することができる。
【0065】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施の形態及び変形例では、信号生成部21が変換遅延時間に基づいて、調整時間を決定するとしたがこれに限らない。入出力インターフェイス22を介して接続されているコンピューター等の外部装置が調整時間を決定してもよい。この場合、変換遅延時間に係る情報は信号生成部21及び入出力インターフェイス22を介して、外部装置に出力され、調整時間の決定に用いられる。よって、この場合、外部装置も液体吐出装置1に含まれる。
【0066】
また、上記実施の形態及び変形例では、信号生成部21が演算処理を行い、液体吐出装置1における画像記録動作に係る各種制御処理を行い、また変換遅延時間に基づいて、調整時間を決定するとしたがこれに限らない。信号生成部21としてのFPGAとともにCPU(Central Processing Unit)を有し、FPGA及びCPUが演算処理を行い、液体吐出装置1における画像記録動作に係る各種制御処理を行い、また変換遅延時間に基づいて、調整時間を決定するとしてもよい。
また、CPUがプログラムを実行することにより調整手段として機能するように構成してもよい。
【0067】
また、上記実施の形態及び変形例では、デシリアライザー31から出力された信号S及び基準信号26は、ケーブル42を介して、信号生成部21に入力されるとしたがこれに限らない。デシリアライザー31から出力された信号S及び基準信号26は、ケーブル41を介して、信号生成部21に入力されるとしてもよい。
【0068】
また、信号S及び基準信号26は、ノイズの影響を抑えるため差動信号による伝送としても良い。また、ケーブル41、42は、UTP(Unshielded Twisted Pair)ケーブル、FPC(Flexible Printed Circuits)のいずれでも構わない。
【0069】
その他、上記実施の形態で示した構成、回路配置や動作手順などの具体的な細部は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0070】
この発明は、液体吐出装置、液体吐出装置を制御するプログラム及び液体吐出装置において駆動されるインクジェットヘッドに利用することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 液体吐出装置
2 駆動基板
21 信号生成部(生成手段、計測手段、調整手段)
22 入出力インターフェイス
23,23a,23b シリアライザー
24,24a,24b 駆動信号生成回路(生成手段)
25 ユニット制御部
26 基準信号
27 デシリアライザー(変換手段)
28 ヒーター制御信号生成回路(生成手段)
29 駆動データ
3 インクジェットヘッド(液体吐出ヘッド)
31,31a,31b デシリアライザー(変換手段)
32,32a,32b 駆動IC(駆動手段)
33,33a,33b アクチュエーター
34,34a,34b ノズル列
35a,35b 温度センサー(センサー)
36 シリアライザー
37a,37b ヒーター(駆動手段)
38 駆動信号生成回路
41,42,41a,42a,41b,42b ケーブル