IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電気株式会社の特許一覧

特許7683704受信装置、通信装置、および通信システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-19
(45)【発行日】2025-05-27
(54)【発明の名称】受信装置、通信装置、および通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/11 20130101AFI20250520BHJP
   H04B 10/67 20130101ALI20250520BHJP
【FI】
H04B10/11
H04B10/67
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023543600
(86)(22)【出願日】2021-08-27
(86)【国際出願番号】 JP2021031472
(87)【国際公開番号】W WO2023026460
(87)【国際公開日】2023-03-02
【審査請求日】2024-01-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100178216
【弁理士】
【氏名又は名称】浜野 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】高田 紘也
(72)【発明者】
【氏名】水本 尚志
(72)【発明者】
【氏名】奥村 藤男
【審査官】後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-095741(JP,A)
【文献】米国特許第06577426(US,B1)
【文献】特開平07-321741(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/11
H04B 10/67
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間を伝搬する光信号を集光するボールレンズと、
前記ボールレンズによって集光される前記光信号を受光する複数の受光素子によって構成され、複数の前記受光素子によって受光された前記光信号に由来する信号を出力する受光素子アレイと、
前記受光素子アレイから出力される前記信号をデコードする受信回路と、を備え
前記受光素子アレイは、
前記ボールレンズの集光領域に、前記ボールレンズの周囲を取り囲むように環状に配置された複数の前記受光素子によって構成される受信装置。
【請求項2】
前記ボールレンズと前記受光素子アレイの間に配置され、前記ボールレンズによって集光された前記光信号を、前記受光素子アレイを構成するいずれかの前記受光素子の受光部に向けて導光する光学素子を備える請求項に記載の受信装置。
【請求項3】
前記光学素子は、
前記ボールレンズの周方向に沿って、平面側を外側に向けて円弧状に曲げられたシリンドリカルレンズであり、前記ボールレンズによって集光された前記光信号を、前記受光素子アレイの配列方向と直交する方向に向けて集光し、前記受光素子アレイを構成するいずれかの前記受光素子の受光部に導光する請求項に記載の受信装置。
【請求項4】
前記光学素子は、
前記ボールレンズの周方向に沿って円弧状に曲げられた回折光学素子を含み、前記ボールレンズによって集光された前記光信号を、前記受光素子アレイの配列方向と直交する方向に向けて回折し、前記受光素子アレイを構成するいずれかの前記受光素子の受光部に導光する請求項に記載の受信装置。
【請求項5】
前記光学素子は、
前記ボールレンズの周方向に沿って円弧状に曲げられた拡散板を含み、前記ボールレンズによって集光された前記光信号を拡散し、前記受光素子アレイを構成するいずれかの前記受光素子の受光部に導光する請求項に記載の受信装置。
【請求項6】
複数の前記受光素子の不感領域に配置され、前記ボールレンズから出射された前記光信号を、前記受光素子の受光部に向けて反射する反射構造を備える請求項1乃至のいずれか一項に記載の受信装置。
【請求項7】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の受信装置と、
光信号を送信する送信装置と、
前記受信装置によって受信された他の通信装置からの光信号に基づく信号を受信し、受信した前記信号に応じた処理を実行し、実行した前記処理に応じた光信号を前記送信装置に送信させる制御装置と、を備える通信装置。
【請求項8】
請求項に記載の通信装置を複数備え、
複数の前記通信装置が、
互いに光信号を送受信し合うように配置された通信システム。
【請求項9】
前記受信装置は、
空間を伝搬する前記光信号を集光するボールレンズと、
前記ボールレンズによって集光される前記光信号を受光する複数の受光素子によって構成され、複数の前記受光素子によって受光された前記光信号に由来する信号を出力する受光素子アレイと、前記受光素子アレイから出力される前記信号をデコードする受信回路と、を有する複数の受光ユニットと、を備え、
複数の前記受光ユニットは、
前記ボールレンズに受光面を向けて、前記ボールレンズの集光領域に、前記光信号の到来方向に合わせて配置される請求項に記載の通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空間を伝搬する光信号を受信する受信装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
光空間通信においては、光ファイバなどの媒体を用いずに、空間を伝播する光信号(以下、空間光信号とも呼ぶ)を送受信し合う。空間を広がって伝搬する空間光信号を受信するためには、できる限り大口径のレンズを用いることが好ましい。光空間通信においては、高速通信を行うために、静電容量の小さな受光素子が採用される。そのような受光素子は、受光部の面積が小さい。レンズの焦点距離には限界があるため、多様な方向から到来する空間光信号を、大口径のレンズを用いて、面積の小さい受光部に導光することは難しい。
【0003】
特許文献1には、球形レンズを用いた撮像装置について開示されている。特許文献1の装置は、球形レンズと撮像手段を有する。撮像手段は、球形レンズによる曲面像面に沿って湾曲した受光面を有する。球形レンズは、撮像手段の受光面に物体像を形成する。
【0004】
特許文献2には、光信号を電気信号に変換する光受信装置について開示されている。特許文献2の装置は、球レンズ等の集光レンズと、複数の受光面を有する受光素子とによって構成される。受光素子の有する複数の受光面の各々は、集光レンズによって形成される光スポットの大きさに対応して、中心部から周辺部に向けて面積が大きくなるように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭63-096616号公報
【文献】特開昭63-151232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の装置によれば、球形レンズを用いることによって、周辺光量の低下を抑制しつつ、高画角化を実現できる。特許文献1の装置では、受光面が湾曲したCCD(Charge Coupled Device)等の撮像素子を用いる。そのため、特許文献1の装置には、受光面が湾曲した特殊な撮像素子を採用する必要があった。
【0007】
特許文献2の装置によれば、球レンズ等の広角レンズと、平面上に分割された受光素子とを組み合わせることによって、画角の改善された受光系を実現できる。特許文献2の装置では、光信号の入射角に合わせて受光面の面積を変更する。そのため、特許文献2の装置には、多様な方向から到来する空間光信号を受光する場合、空間光信号の到来方向に応じて、受光強度に差が生じるという問題点があった。
【0008】
本開示の目的は、簡易な構成でありながら、多様な方向から到来する光信号を均等に受信できる受信装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様の受信装置は、空間を伝搬する光信号を集光するボールレンズと、ボールレンズによって集光される光信号を受光する複数の受光素子によって構成され、複数の受光素子によって受光された光信号に由来する信号を出力する受光素子アレイと、受光素子アレイから出力される信号をデコードする受信回路と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、簡易な構成でありながら、多様な方向から到来する光信号を均等に受信できる受信装置等を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施形態に係る受信装置の構成の一例を示す概念図である。
図2】第1の実施形態に係る受信装置のボールレンズによる集光の一例について説明するための概念図である。
図3】第1の実施形態に係る受信装置のボールレンズと受光素子アレイの位置関係の一例を示す概念図である。
図4】第1の実施形態に係る受信装置のボールレンズによって集光された光信号が、受光素子に受光される様子を示す概念図である。
図5】第1の実施形態に係る受信装置による空間光信号の受信の一例を示す概念図である。
図6】第1の実施形態に係る受信装置による空間光信号の受信の別の一例を示す概念図である。
図7】第1の実施形態に係る受信装置の受信回路の構成の一例を示すブロック図である。
図8】第1の実施形態の変形例に係る受光器について説明するための概念図である。
図9】第1の実施形態の別の変形例に係る受光器について説明するための概念図である。
図10】第2の実施形態に係る受信装置の構成の一例を示す概念図である。
図11】第2の実施形態に係る受信装置の構成の一例を示す概念図である。
図12】第2の実施形態に係る受信装置のボールレンズによって受光可能な空間光信号の受光範囲について説明するための概念図である。
図13】第2の実施形態に係る受信装置のボールレンズと受光素子アレイの位置関係の一例を示す概念図である。
図14】第3の実施形態に係る受信装置の構成の一例を示す概念図である。
図15】第3の実施形態に係る受信装置の光学素子と受光素子アレイの位置関係の一例を示す概念図である。
図16】第3の実施形態に係る受信装置の光学素子によって導光された光信号が、受光素子に受光される様子を示す概念図である。
図17】第3の実施形態の変形例に係る受信装置の光学素子と受光素子アレイの位置関係の一例を示す概念図である。
図18】第4の実施形態に係る受信装置の構成の一例を示す概念図である。
図19】第4の実施形態に係る受信装置の光学素子と受光素子アレイの位置関係の一例を示す概念図である。
図20】第4の実施形態に係る受信装置の光学素子によって導光された光信号が、受光素子に受光される様子を示す概念図である。
図21】第4の実施形態の変形例に係る受信装置の光学素子と受光素子アレイの位置関係の一例を示す概念図である。
図22】第5の実施形態に係る受信装置の構成の一例を示す概念図である。
図23】第5の実施形態に係る受信装置の光学素子と受光素子アレイの位置関係の一例を示す概念図である。
図24】第5の実施形態に係る受信装置の光学素子によって導光された光信号が、受光素子に受光される様子を示す概念図である。
図25】第5の実施形態の変形例に係る受信装置の光学素子と受光素子アレイの位置関係の一例を示す概念図である。
図26】第6の実施形態に係る受信装置の構成の一例を示す概念図である。
図27】第6の実施形態に係る受信装置の受光素子アレイの構成の一例を示す概念図である。
図28】第6の実施形態に係る受信装置による空間光信号の受信の一例を示す概念図である。
図29】第6の実施形態に係る受信装置による空間光信号の受信の別の一例を示す概念図である。
図30】第7の実施形態に係る通信装置の構成の一例を示すブロック図である。
図31】第7の実施形態に係る通信装置の送信装置の構成の一例を示す概念図である。
図32】第7の実施形態に係る通信装置によって構成される通信システムの一例を示す概念図である。
図33】第7の実施形態に係る通信装置によって構成される通信システムに含まれる受光器の構成の一例を示す概念図である。
図34】第7の実施形態に係る通信装置によって構成される通信システムに含まれる受光器の構成の別の一例を示す概念図である。
図35】第7の実施形態に係る通信装置によって構成される通信システムに含まれる受光器による空間光信号の受信の一例を示す概念図である。
図36】第7の実施形態に係る通信装置によって構成される通信システムに含まれる受光器による空間光信号の受信の別の一例を示す概念図である。
図37】第7の実施形態の適用例1について説明するための概念図である。
図38】第7の実施形態の適用例1における空間光信号の送受信について説明するための概念図である。
図39】第7の実施形態の適用例2について説明するための概念図である。
図40】第8の実施形態に係る受信装置の構成の一例を示す概念図である。
図41】各実施形態に係る制御や処理を実現するハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がされているが、発明の範囲を以下に限定するものではない。なお、以下の実施形態の説明に用いる全図においては、特に理由がない限り、同様箇所には同一符号を付す。また、以下の実施形態において、同様の構成・動作に関しては繰り返しの説明を省略する場合がある。
【0013】
以下の実施形態の説明に用いる全図において、図面中の矢印の向きは、一例を示すものであり、光や信号の向きを限定するものではない。また、図面中の光の軌跡を示す線は、概念的なものであり、実際の光の進行方向や状態を正確に表すものではない。例えば、図面においては、空気と物質との界面における屈折や反射、拡散などによる光の進行方向や状態の変化を省略したり、光束を一本の線で表現したりすることもある。
【0014】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係る受信装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の受信装置は、光ファイバなどの媒体を用いずに、空間を伝播する光信号(以下、空間光信号とも呼ぶ)を送受信し合う光空間通信に用いられる。本実施形態の受信装置は、空間を伝搬する光を受光する用途であれば、光空間通信以外の用途に用いられてもよい。本実施形態においては、特に断りがない限り、空間光信号は、十分に離れた位置から到来するために平行光とみなす。
【0015】
(構成)
図1は、本実施形態の受信装置1の構成の一例を示す概念図である。受信装置1は、ボールレンズ11、受光素子アレイ13、および受信回路15を備える。ボールレンズ11と受光素子アレイ13は、受光器10を構成する。図1は、受光器10を上方向から見た平面図である。ボールレンズ11と受光素子アレイ13は、支持体(図示しない)によって、互いの位置関係が固定される。本実施形態においては、ボールレンズ11と受光素子アレイ13を固定する支持体を省略する。
【0016】
ボールレンズ11は、球形のレンズである。ボールレンズ11は、外部から到来した空間光信号を集光する光学素子である。ボールレンズ11は、どの角度から見ても球形である。ボールレンズ11は、入射される空間光信号を集光する。ボールレンズ11によって集光された空間光信号に由来する光(光信号とも呼ぶ)は、集光領域に向けて集光される。ボールレンズ11は、球形であるため、任意の方向から到来する空間光信号を集光する。すなわち、ボールレンズ11は、任意の方向から到来する空間光信号に対して、同様の集光性能を示す。
【0017】
図2は、ボールレンズ11によって集光される光の軌跡の一例を示す概念図である。図2の例では、平行光を出射する光源110からボールレンズ11に向けて照射された光が、ボールレンズ11によって屈折される様子を示す。ボールレンズ11に入射した光は、ボールレンズ11の内部に進入する際に屈折される。また、ボールレンズ11の内部を進行する光は、ボールレンズ11の外部に出射する際に、再度屈折される。ボールレンズ11によって屈折される光の大部分は、集光領域において集光される。その一方で、ボールレンズ11の周辺から入射した光は、ボールレンズ11から出射される際に、集光領域から外れた方向に向けて出射される。
【0018】
例えば、ボールレンズ11は、ガラスや結晶、樹脂などの材料で構成できる。可視領域の空間光信号を受光する場合、ボールレンズ11には、可視領域の光を透過/屈折するガラスや結晶、樹脂などの材料を適用できる。例えば、ボールレンズ11には、クラウンガラスやフリントガラスなどの光学ガラスを適用できる。例えば、ボールレンズ11には、BK(Boron Kron)などのクラウンガラスを適用できる。例えば、ボールレンズ11には、LaSF(Lanthanum Schwerflint)などのフリントガラスを適用できる。例えば、ボールレンズ11には、石英ガラスを適用できる。例えば、ボールレンズ11には、サファイア等の結晶を適用できる。例えば、ボールレンズ11には、アクリル等の透明樹脂を適用できる。空間光信号が近赤外領域の光(以下、近赤外線とも呼ぶ)である場合、ボールレンズ11には、近赤外線を透過する材料が用いられる。例えば、1.5マイクロメートル(μm)程度の近赤外領域の空間光信号を受光する場合、ボールレンズ11には、ガラスや結晶、樹脂などに加えて、シリコンなどの材料を適用できる。空間光信号が赤外領域の光(以下、赤外線とも呼ぶ)である場合、ボールレンズ11には、赤外線を透過する材料が用いられる。例えば、空間光信号が赤外線である場合、ボールレンズ11には、シリコンやゲルマニウム、カルコゲナイド系の材料を適用できる。空間光信号の波長領域の光を透過/屈折できれば、ボールレンズ11の材質には限定を加えない。ボールレンズ11の材質は、求められる屈折率や用途に応じて、適宜選択されればよい。
【0019】
図3は、ボールレンズ11と受光素子アレイ13によって構成される受光器10の斜視図である。図3は、入射面側の斜め上方の視座から、受光器10を見下ろした斜視図である。図4は、ボールレンズ11と受光素子アレイ13によって構成される受光器10の一部分の断面図である。図4には、円弧状の基板130に受光素子131が配置される例を示す。図4には、ボールレンズ11によって集光される光の軌跡を示す。ボールレンズ11によって、受光素子アレイ13が配置された集光領域に集光される光信号は、受光素子アレイ13を構成するいずれかの受光素子131によって受光される。なお、受光素子131の受光部132から外れた光信号は、受光素子131によって受光されない。
【0020】
受光素子アレイ13は、ボールレンズ11の周方向に沿って、円弧状に並べられた複数の受光素子131を含む。受光素子アレイ13を構成する受光素子131の数には限定を加えない。受光素子アレイ13は、ボールレンズ11の後段に配置される。複数の受光素子131は、受光対象の空間光信号に由来する光信号を受光する受光部132を含む。複数の受光素子131の各々は、受光部132がボールレンズ11の出射面と対面するように配置される。複数の受光素子131の各々は、ボールレンズ11の集光領域に受光部132が位置するように配置される。ボールレンズ11によって集光された光信号は、集光領域に位置する受光素子131の受光部132で受光される。複数の受光素子131の各々の受光面には、受光部132が位置しない領域(不感領域とも呼ぶ)が含まれる。
【0021】
図5は、受信装置1が、一方向から到来した空間光信号を受信する一例を示す概念図である。図6は、受信装置1が、二方向から到来した空間光信号を受信する一例を示す概念図である。ボールレンズ11が球体であるため、受信装置1は、受光素子アレイ13によって受光可能な範囲であれば、任意の方向から到来する空間光信号を均等に受信できる。例えば、受光素子アレイ13の円弧によって形成される平面が水平面に対して平行に設定される場合、受信装置1は、同じくらいの高さから水平方向に到来する空間光信号を受光しやすい。例えば、受光素子アレイ13の円弧によって形成される平面が水平面に対して垂直に設定される場合、受信装置1は、任意の高さから到来する空間光信号を同様に受光しやすい。
【0022】
受光素子131は、受光対象の空間光信号の波長領域の光を受光する。例えば、受光素子131は、可視領域の光に感度を有する。例えば、受光素子131は、赤外領域の光に感度を有する。受光素子131は、例えば1.5μm(マイクロメートル)帯の波長の光に感度を有する。なお、受光素子131が感度を有する光の波長帯は、1.5μm帯に限定されない。受光素子131が受光する光の波長帯は、送信装置(図示しない)から送信される空間光信号の波長に合わせて、任意に設定できる。受光素子131が受光する光の波長帯は、例えば0.8μm帯や、1.55μm帯、2.2μm帯に設定されてもよい。また、受光素子131が受光する光の波長帯は、例えば0.8~1μm帯であってもよい。波長帯が短い方が、大気中の水分による吸収が小さいので、降雨時における光空間通信には有利である。また、受光素子131は、強烈な太陽光で飽和してしまうと、空間光信号に由来する光信号を読み取ることができない。そのため、受光素子131よりも前段に、空間光信号の波長帯の光を選択的に通過させる色フィルタが設置されてもよい。
【0023】
例えば、受光素子131は、フォトダイオードやフォトトランジスタなどの素子によって実現できる。例えば、受光素子131は、アバランシェフォトダイオードによって実現される。アバランシェフォトダイオードによって実現された受光素子131は、高速通信に対応できる。なお、受光素子131は、光信号を電気信号に変換できさえすれば、フォトダイオードやフォトトランジスタ、アバランシェフォトダイオード以外の素子によって実現されてもよい。通信速度を向上させるために、受光素子131の受光部132は、できるだけ小さい方が好ましい。例えば、受光素子131の受光部132は、一辺が5mm(ミリメートル)程度の正方形の受光面を有する。例えば、受光素子131の受光部132は、直径0.1~0.3mm程度の円形の受光面を有する。受光素子131の受光部132の大きさや形状は、空間光信号の波長帯や通信速度などに応じて選定されればよい。
【0024】
受光素子131は、受光された光信号を電気信号に変換する。受光素子131は、変換後の電気信号を、受信回路15に出力する。図1には、受光素子アレイ13と受信回路15の間に一本の線(経路)しか図示していないが、受光素子アレイ13と受信回路15は複数の経路で接続されてもよい。例えば、受光素子アレイ13を構成する受光素子131の各々が、受信回路15と個別に接続されてもよい。例えば、受光素子アレイ13を構成する受光素子131のいくつかをまとめたグループごとに、受信回路15と接続されるように構成されてもよい。
【0025】
受信回路15は、複数の受光素子131の各々から出力された信号を取得する。受信回路15は、複数の受光素子131の各々からの信号を増幅する。受信回路15は、増幅された信号をデコードし、通信対象からの信号を解析する。例えば、受信回路15は、複数の受光素子131ごとの信号をまとめて解析するように構成される。複数の受光素子131ごとの信号をまとめて解析する場合は、単一の通信対象と通信するシングルチャンネルの受信装置1を実現できる。例えば、受信回路15は、複数の受光素子131ごとに、個別に信号を解析するように構成される。複数の受光素子131ごとに個別に信号を解析する場合、複数の通信対象と同時に通信するマルチチャンネルの受信装置1を実現できる。受信回路15によってデコードされた信号は、任意の用途に使用される。受信回路15によってデコードされた信号の使用については、特に限定を加えない。
【0026】
〔受信回路〕
次に、受信装置1が備える受信回路15の詳細構成の一例について図面を参照しながら説明する。図7は、受信回路15の構成の一例を示すブロック図である。図7の例では、受光素子アレイ13を構成する受光素子131の数をM個とする(Mは自然数)。なお、図7は、受信回路15の構成の一例であって、受信回路15の構成を限定するものではない。
【0027】
受信回路15は、複数の第1処理回路151-1~M、制御回路152、セレクタ153、および複数の第2処理回路155-1~Nを有する(M、Nは自然数)。第1処理回路151は、複数の受光素子131-1~Mのいずれか一つに対応付けられる。第1処理回路151は、複数の受光素子131-1~Mに含まれる複数の受光素子131をまとめたグループごとに構成されてもよい。
【0028】
例えば、第1処理回路151は、ハイパスフィルタ(図示しない)を含む。ハイパスフィルタは、受光素子131からの信号を取得する。ハイパスフィルタは、取得した信号のうち、空間光信号の波長帯に相当する高周波成分の信号を選択的に通過させる。ハイパスフィルタは、太陽光などの環境光に由来する信号をカットする。例えば、ハイパスフィルタの代わりに、空間光信号の波長帯の信号を選択的に通過させるバンドパスフィルタを構成してもよい。受光素子131は、強烈な太陽光で飽和してしまうと、光信号は読み取り不能となる。そのため、受光素子131の受光部の前段に、空間光信号の波長帯の光を選択的に通過させる色フィルタを設置してもよい。
【0029】
例えば、第1処理回路151は、増幅器(図示しない)を含む。増幅器は、ハイパスフィルタから出力された信号を取得する。増幅器は、取得された信号を増幅する。増幅器による信号の増幅率には、特に限定を加えない。
【0030】
例えば、第1処理回路151は、出力モニタ(図示しない)を含む。出力モニタは、増幅器の出力値をモニタする。出力モニタは、増幅器によって増幅された信号のうち、所定の出力値を超える信号をセレクタ153に出力する。セレクタ153に出力された信号のうち受信対象の信号は、制御回路152の制御に応じて、複数の第2処理回路155-1~Nのいずれかに割り当てられる。受信対象の信号は、通信対象の通信装置(図示しない)からの空間光信号である。空間光信号の受光に用いられない受光素子131からの信号は、第2処理回路155に出力されない。
【0031】
例えば、第1処理回路151は、出力モニタ(図示しない)として積分器(図示しない)を含んでもよい。積分器は、ハイパスフィルタから出力された信号を取得する。積分器は、取得された信号を積分する。積分器は、積分された信号を制御回路152に出力する。積分器は、受光素子131が受光する空間光信号の強度を測定するために配置される。ビーム径が絞られていない状態で受光される空間光信号は、ビーム径が絞られている場合と比べて強度が微弱であるため、増幅器のみで増幅された信号の電圧測定は困難である。積分器を用いれば、例えば、数ミリ秒~数十ミリ秒の期間の信号を積分することによって、電圧測定できるレベルまで信号の電圧を大きくすることができる。
【0032】
制御回路152は、複数の第1処理回路151-1~Mの各々から出力された信号を取得する。言い換えると、制御回路152は、複数の受光素子131-1~Mの各々が受光した光信号に由来する信号を取得する。例えば、制御回路152は、互いに隣接し合う複数の受光素子131からの信号の読み取り値を比較する。制御回路152は、比較結果に応じて、信号強度が最大の受光素子131を選択する。制御回路152は、選択された受光素子131に由来する信号を、複数の第2処理回路155-1~Nのいずれかに割り当てるように、セレクタ153を制御する。
【0033】
通信対象の位置が予め特定されている場合は、空間光信号の到来方向を推定する処理を行わず、受光素子131-1~Mから出力された信号を、予め設定されたいずれかの第2処理回路155に出力すればよい。一方、通信対象の位置が予め特定されていない場合は、受光素子131-1~Mから出力された信号の出力先の第2処理回路155を選択すればよい。例えば、制御回路152が受光素子131を選択することによって、空間光信号の到来方向を推定できる。すなわち、制御回路152が受光素子131を選択することは、空間光信号の送信元の通信装置を特定することに相当する。また、制御回路152によって選択された受光素子131からの信号を複数の第2処理回路のいずれかに割り当てることは、特定された通信対象と、その通信対象からの空間光信号を受光する受光素子131とを対応付けることに相当する。すなわち、制御回路152は、複数の受光素子131-1~Mによって受光された光信号に基づいて、その光信号(空間光信号)の送信元の通信装置を特定できる。
【0034】
セレクタ153には、複数の第1処理回路151-1~Mの各々に含まれる増幅器によって増幅された信号が入力される。セレクタ153は、制御回路152の制御に応じて、入力された信号のうち受信対象の信号を、複数の第2処理回路155-1~Nのうちいずれかに出力する。受信対象ではない信号は、セレクタ153から出力されない。
【0035】
複数の第2処理回路155-1~Nには、制御回路152によって割り当てられた、複数の受光素子131-1~Nのいずれかからの信号が入力される。複数の第2処理回路155-1~Nの各々は、入力された信号をデコードする。複数の第2処理回路155-1~Nの各々は、デコードされた信号に何らかの信号処理を加えるように構成してもよいし、外部の信号処理装置等(図示しない)に出力するように構成したりしてもよい。
【0036】
制御回路152によって選択された受光素子131に由来する信号をセレクタ153で選択することにより、1つの通信対象に対して1つの第2処理回路155が割り当てられる。すなわち、制御回路152は、複数の受光素子131-1~Mが受光する、複数の通信対象からの空間光信号に由来する信号を、複数の第2処理回路155-1~Nのいずれかに割り当てる。これにより、受信装置1は、複数の通信対象からの空間光信号に由来する信号を、個別のチャネルで同時に読み取ることが可能になる。例えば、複数の通信対象と同時に通信するために、複数の通信対象からの空間光信号を単一のチャネルにおいて時分割で読み取ってもよい。本実施形態の手法では、複数の通信対象からの空間光信号を、複数のチャネルにおいて同時に読み取るので、単一のチャネルを用いる場合と比べて伝送速度が速い。
【0037】
例えば、粗い精度の1次スキャンで空間光信号の到来方向を特定し、特定された方向に関して細かい精度の2次スキャンを行って、通信対象の正確な位置を特定するように構成してもよい。通信対象との間で通信可能な状況になれば、通信対象との信号のやりとりによって、その通信対象の正確な位置を確定できる。なお、通信対象の位置が予め特定されている場合は、その通信対象の位置を特定する処理を省略できる。
【0038】
〔変形例1〕
次に、本実施形態に係る変形例(変形例1)について図面を参照しながら説明する。図8は、本変形例の受光器10-1の構成の一例を示す概念図である。図8は、受光器10-1を上方向から見た平面図である。本変形例の受光器10-1は、ボールレンズ11と、複数の受光素子アレイ13(13A、13B、13C)とによって構成される。図8には、受光素子アレイ13が3個の例を示すが、受光素子アレイ13の数には特に限定を加えない。
【0039】
本変形例の受光器10-1は、空間光信号の到来方向が限られている場合に好適である。空間光信号の到来方向が限られている場合、空間光信号が受光されない領域ができる。本変形例では、空間光信号の到来範囲に合わせて、受光素子アレイ13を配置する。なお、複数の受光素子アレイ13用いずに、同一の基板上において、空間光信号の到来範囲に合わせて、複数の受光素子131を配置してもよい。
【0040】
受光素子アレイ13Aは、空間光信号Aの到来範囲に対応付けて配置される。受光素子アレイ13Aは、空間光信号Aの到来範囲から到来する空間光信号を受信する。受光素子アレイ13Bは、空間光信号Bの到来範囲に対応付けて配置される。受光素子アレイ13Bは、空間光信号Bの到来範囲から到来する空間光信号を受信する。受光素子アレイ13Cは、空間光信号Cの到来範囲に対応付けて配置される。受光素子アレイ13Cは、空間光信号Cの到来範囲から到来する空間光信号を受信する。
【0041】
通信対象の方向が特定されている場合、空間光信号が到来しない部分の受光素子131を省略した方が、回路規模を小さくできる。また、受光素子131の数が減れば、装置のコストダウンを実現できる。すなわち、本変形例によれば、回路規模の縮小と、コストダウンとが実現される。
【0042】
〔変形例2〕
次に、本実施形態に係る別の変形例(変形例2)について図面を参照しながら説明する。図9は、本変形例の受光器10-2の構成の一例を示す概念図である。図9は、入射面側の斜め上方の視座から、受光器10-2を見た斜視図である。本変形例の受光器10-2は、ボールレンズ11と受光素子アレイ13-2によって構成される。受光素子アレイ13-2は、複数の受光素子アレイ13を短辺方向に重ねた構造を有する。複数の受光素子アレイ13の各々は、ボールレンズ11の集光領域に配置される。すなわち、受光素子アレイ13-2は、ボールレンズ11の集光領域に合わせて形成された受光素子アレイ13-2の曲面上に、二次元アレイ状に配置された受光素子131を含む。図9には、3個の受光素子アレイ13を重ねて受光素子アレイ13-2を構成する例を示すが、受光素子アレイ13-2を構成する受光素子アレイ13の数には特に限定を加えない。
【0043】
本変形例の受光器10-2は、空間光信号の到来方向が受光素子アレイ13-2の短辺方向に多少ずれても、ボールレンズ11に到来する空間光信号を同様に受光できる。言い換えると、本変形例によれば、受光素子アレイ13-2の円弧を含む平面に対して、空間光信号の到来方向が垂直方向に変動しても、受光素子アレイ13-2に含まれる複数の受光素子アレイ13によって、その空間光信号に由来する信号光を受光できる。
【0044】
空間光信号の到来方向が同一面内に限定されない場合、ボールレンズ11に対して三次元的に到来する空間光信号を受光できないと、所望の通信対象と通信できない可能性がある。本変形例では、複数の受光素子131が二次元アレイ状に配置された受光素子アレイ13-2を用いることによって、受光素子アレイ13と比べて、空間光信号の受光範囲を拡大できる。
【0045】
以上のように、本実施形態の受信装置は、ボールレンズ、受光素子アレイ、および受信回路を備える。ボールレンズは、空間を伝搬する光信号を集光する。受光素子アレイは、ボールレンズの集光領域に、ボールレンズの周方向に沿って円弧状に配列された複数の受光素子によって構成される。受光素子アレイは、複数の受光素子によって受光された光信号に由来する信号を出力する。受信回路は、受光素子アレイから出力される信号をデコードする。
【0046】
本実施形態の受信装置は、ボールレンズによって集光される光信号を、ボールレンズの集光領域に円弧状に配置された複数の受信素子によって受信する。ボールレンズは、任意の方向から到来する光信号を、周囲の集光領域に集光する。そのため、本実施形態によれば、簡易な構成でありながら、多様な方向から到来する光信号を均等に受信できる。
【0047】
本実施形態の一態様の受信装置は、空間光信号の到来方向に合わせて配置された少なくとも一つの受光素子アレイを備える。本態様では、光信号が集光される位置に受光素子アレイを配置し、光信号が集光されない位置に受光素子アレイを配置しない。そのため、本態様によれば、不要な受光素子を省略できる。
【0048】
本実施形態の一態様において、受光素子アレイは、ボールレンズの集光領域に、ボールレンズの周方向に沿って二次元アレイ状に配列された複数の受光素子によって構成される。本態様によれば、複数の受光素子の配列方向に対して垂直な方向に対して、空間光信号の受光角を拡大できる。
【0049】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る受信装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の受信装置は、ボールレンズの周囲が囲まれるように、環状に形成された受信素子アレイを配置する点において、第1の実施形態の受信装置とは異なる。
【0050】
(構成)
図10は、本実施形態の受信装置2の構成の一例を示す概念図である。受信装置2は、ボールレンズ21、受光素子アレイ23、および受信回路25を備える。ボールレンズ21と受光素子アレイ23は、受光器20を構成する。図10は、受光器20を上方向から見た平面図である。図11は、受光素子アレイ23の形成する円を含む面に対して垂直な方向の視座から見た、受信装置2の側面図である。受光素子アレイ23は、ボールレンズ21を配置する部分が刳り貫かれた基板200に配置される。基板200が受光器20に含まれてもよい。ボールレンズ21と受光素子アレイ23は、支持体(図示しない)によって、互いの位置関係が固定される。本実施形態においては、ボールレンズ21と受光素子アレイ23を固定する支持体を省略する。ボールレンズ21と受光素子アレイ23は、基板200によって固定されてもよい。
【0051】
ボールレンズ21は、第1の実施形態のボールレンズ11と同様の構成である。ボールレンズ21は、外部から到来した空間光信号を、ボールレンズ21の集光領域に集光する。
【0052】
図12は、ボールレンズ21によって受光可能な空間光信号の受光範囲について説明するための概念図である。図12は、受光器20を上方向から見た平面図である。ボールレンズ21に向けて到来する空間光信号は、受光素子アレイ23と基板200によって一部の光が遮られるものの、その大部分は、ボールレンズ21によって集光されて、受光素子アレイ23に受光される。図12のように、本実施形態の受信装置2は、受光素子アレイ23によって形成される円を含む面に平行な面内において、360度の方向から到来する空間光信号を受光できる。
【0053】
図13は、ボールレンズ21と受光素子アレイ23によって構成される受光器20の斜視図である。図13は、入射面側の斜め上方の視座から、受光器20を見た斜視図である。受光素子アレイ23は、ボールレンズ21の周方向に沿って、環状に並べられた複数の受光素子231を含む。受光素子アレイ23を構成する複数の受光素子231の各々は、第1の実施形態の受光素子131と同様の構成である。受光素子アレイ23を構成する受光素子231の数には限定を加えない。受光素子アレイ23は、ボールレンズ21の後段に配置される。複数の受光素子231は、受光対象の空間光信号に由来する光信号を受光する受光部(図示しない)を含む。複数の受光素子231の各々は、受光部がボールレンズ21の出射面と対面するように配置される。複数の受光素子231の各々は、ボールレンズ21の集光領域に受光部が位置するように配置される。ボールレンズ21によって集光された光信号は、集光領域に位置する受光素子231の受光部で受光される。
【0054】
受光素子アレイ23を構成する複数の受光素子231の各々は、受光された光信号を電気信号に変換する。受光素子アレイ23を構成する複数の受光素子231の各々は、変換後の電気信号を、受信回路25に出力する。図10には、受光素子アレイ23と受信回路25の間に一本の線(経路)しか図示していないが、受光素子アレイ23と受信回路25は複数の経路で接続されてもよい。例えば、受光素子アレイ23を構成する受光素子231の各々が、受信回路25と個別に接続されてもよい。例えば、受光素子アレイ23を構成する受光素子231のいくつかをまとめたグループごとに、受信回路25と接続されるように構成されてもよい。
【0055】
受信回路25は、第1の実施形態の受信回路15と同様の構成である。受信回路25は、受光素子アレイ23を構成する複数の受光素子231の各々から出力された信号を取得する。受信回路25は、複数の受光素子231の各々からの信号を増幅する。受信回路25は、増幅された信号をデコードし、通信対象からの信号を解析する。受信回路25によってデコードされた信号は、任意の用途に使用される。受信回路25によってデコードされた信号の使用については、特に限定を加えない。
【0056】
以上のように、本実施形態の受信装置は、ボールレンズ、受光素子アレイ、および受信回路を備える。ボールレンズは、空間を伝搬する光信号を集光する。受光素子アレイは、複数の受光素子によって構成される。複数の受光素子は、ボールレンズの集光領域に、ボールレンズの周囲を取り囲むように環状に配置される。受光素子アレイは、複数の受光素子によって受光された光信号に由来する信号を出力する。受信回路は、受光素子アレイから出力される信号をデコードする。
【0057】
本実施形態の受信装置は、ボールレンズの集光領域に環状に配置された複数の受信素子によって、ボールレンズによって集光される光信号を受信する。ボールレンズは、複数の受光素子が形成する環を含む平面に略平行な任意の方向から到来する光信号を、集光領域に集光する。複数の受信素子は、ボールレンズの集光領域に環状に配置されるため、受光素子アレイが形成する環の面に沿って任意の方向から到来する空間光信号を受信できる。すなわち、本実施形態によれば、360度の方向から到来する空間光信号を受信できる。
【0058】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る受信装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の受信装置は、ボールレンズによって集光された信号光を、その信号光が屈折された方向に対して略垂直な方向に屈折するシリンドリカルレンズを含む点において、第1の実施形態の受信装置とは異なる。本実施形態の受信装置は、第2の実施形態の構成と組み合わせてもよい。
【0059】
(構成)
図14は、本実施形態の受信装置3の構成の一例を示す概念図である。受信装置3は、ボールレンズ31、受光素子アレイ33、受信回路35、および光学素子37を備える。ボールレンズ31、受光素子アレイ33、および光学素子37は、受光器30を構成する。図14は、受光器30を上方向から見た平面図である。
【0060】
ボールレンズ31は、第1の実施形態のボールレンズ11と同様の構成である。ボールレンズ31は、外部から到来した空間光信号を、ボールレンズ31の集光領域に集光する。
【0061】
図15は、受光素子アレイ33と光学素子37の位置関係の一例を示す斜視図である。図15は、光学素子37の入射面側の斜め上方の視座から見た斜視図である。受光素子アレイ33と光学素子37は、ボールレンズ31の中心に向けて、円弧状に曲げられた形状を有する。
【0062】
光学素子37は、円弧状に曲げられたシリンドリカルレンズである。光学素子37は、シリンドリカルレンズの曲面(第1面)を内側に向け、平面(第2面)を外側に向けて、円弧状に曲げられた形状を有する。光学素子37は、ボールレンズ31の周囲に形成される集光領域に合わせた曲率で形成される。光学素子37は、ボールレンズ31と受光素子アレイ33の間に配置される。光学素子37の第1面は、ボールレンズ31の出射面に向けられる。光学素子37の第2面は、受光素子アレイ33の受光面に向けられる。光学素子37は、ボールレンズ31によって集光された光信号を、受光素子アレイ33を構成する受光素子331に向けて集光する。
【0063】
図16は、ボールレンズ31、受光素子アレイ33、および光学素子37によって構成される受光器30の一部分の断面図である。図16には、円弧状の基板330に受光素子331が配置される例を示す。図16には、ボールレンズ31によって集光される光の軌跡を示す。ボールレンズ31によって、ボールレンズ31の集光領域に集光される光信号は、光学素子37によって集光される。光学素子37によって集光された光信号は、光学素子37の集光領域に配置された受光素子アレイ33を構成するいずれかの受光素子331によって受光される。
【0064】
受光素子アレイ33は、第1の実施形態の受光素子アレイ13と同様の構成である。受光素子アレイ33は、光学素子37の後段に配置される。受光素子アレイ33に含まれる複数の受光素子331は、受光対象の空間光信号に由来する光信号を受光する受光部332を含む。複数の受光素子331の各々は、受光部332が光学素子37の出射面と対面するように配置される。複数の受光素子331の各々は、光学素子37の集光領域に受光部332が位置するように配置される。ボールレンズ31によって集光された光信号は、光学素子37によって集光されて、受光素子331の受光部332で受光される。
【0065】
第1の実施形態の構成では、水平面に対して平行な方向に広がりのある空間光信号を受光する場合、受光素子アレイ13によって形成される円弧が水平面に対して略平行になるように配置される。そのように配置されれば、複数の受光素子131の各々に、多様な方向から到来する空間光信号の受光を分担させることができる。しかし、そのような配置では、水平面に対して垂直な方向に広がりのある空間光信号は、受光素子アレイ13の短辺方向にずれて入射されるため、効率的に受光することは難しい。それに対し、本実施形態の構成では、受光素子アレイ33の短辺方向にずれて入射した光信号を、光学素子37によって短辺方向に沿って集光する。そのため、本実施形態の構成によれば、第1の実施形態の構成と比べて、垂直方向に拡がりのある空間光信号を受光しやすくなる。
【0066】
受光素子アレイ33を構成する複数の受光素子331の各々は、受光された光信号を電気信号に変換する。受光素子アレイ33を構成する複数の受光素子331の各々は、変換後の電気信号を、受信回路35に出力する。図14には、受光素子アレイ33と受信回路35の間に一本の線(経路)しか図示していないが、受光素子アレイ33と受信回路35は複数の経路で接続されてもよい。例えば、受光素子アレイ33を構成する複数の受光素子331の各々が、受信回路35と個別に接続されてもよい。例えば、受光素子アレイ33を構成する複数の受光素子331のいくつかをまとめたグループごとに、受信回路35と接続されるように構成されてもよい。
【0067】
受信回路35は、第1の実施形態の受信回路15と同様の構成である。受信回路35は、受光素子アレイ33を構成する複数の受光素子331の各々から出力された信号を取得する。受信回路35は、複数の受光素子331の各々からの信号を増幅する。受信回路35は、増幅された信号をデコードし、通信対象からの信号を解析する。受信回路35によってデコードされた信号は、任意の用途に使用される。受信回路35によってデコードされた信号の使用については、特に限定を加えない。
【0068】
〔変形例3〕
次に、本実施形態の変形例(変形例3)について、図面を参照しながら説明する。図17は、本変形例の受信装置3-3の構成の一例を示す概念図である。受信装置3-3は、ボールレンズ31、受光素子アレイ33、受信回路35、および光学素子37-3を備える。ボールレンズ31、受光素子アレイ33、および光学素子37-3は、受光器30-3を構成する。図17は、受光器30-3を上方向から見た平面図である。本変形例の受信装置は、複数のシリンドリカルレンズを組み合わせた光学素子37-3を含む。図17は、受光素子アレイ33と光学素子37-3の位置関係の一例を示す斜視図である。図17は、光学素子37-3の入射面側の斜め上方の視座から見た斜視図である。受光素子アレイ33と光学素子37-3は、ボールレンズ31の中心に向けて、円弧状に曲げられた形状を有する。
【0069】
光学素子37-3は、複数の部分光学素子370を組み合わせた構造を有する。複数の部分光学素子370の各々は、複数の受光素子331の各々に対応付けられる。例えば、部分光学素子370は、シリンドリカルレンズである。部分光学素子370は、シリンドリカルレンズの曲面(第1面)をボールレンズ31の側に向け、平面(第2面)を受光素子331の側に向けて、円弧状に配置される。部分光学素子370は、ボールレンズ31の周囲に形成される集光領域に合わせた曲率で配置される。部分光学素子370は、ボールレンズ31と受光素子アレイ33の間に配置される。部分光学素子370の第1面は、ボールレンズ31の出射面に向けられる。部分光学素子370の第2面は、受光素子331の受光面に向けられる。部分光学素子370は、ボールレンズ31によって集光された光信号を、対応付けられた受光素子331に向けて集光する。部分光学素子370は、受光素子アレイ33の短辺方向に沿って光信号を集光するとともに、受光素子アレイ33の長辺方向に沿って集光する。すなわち、部分光学素子370は、ボールレンズ31によって集光された光信号を、対応付けられた受光素子331に向けて集光する。
【0070】
ボールレンズ31によって、光学素子37-3が配置された集光領域に集光される光信号は、光学素子37-3を構成するいずれかの部分光学素子370によって集光される。部分光学素子370によって集光された光信号は、部分光学素子370の集光領域に配置された受光素子331によって受光される。
【0071】
本変形例の光学素子37-3を用いれば、受光素子アレイ33の短辺方向と同様に、長辺方向に関しても、受光素子331に向けて光信号を導光できる。光学素子37を用いた場合では、受光素子アレイ33に集光されながら、受光素子331から外れた不感領域に集光されていた光を受光できなかった。本変形例の光学素子37-3を用いれば、受光素子331から外れた不感領域に集光されていた光を、受光素子331に導光するように構成できる。すなわち、本変形例の光学素子37-3を用いれば、光学素子37を用いる場合と比較して、光信号の受光効率を向上できる。
【0072】
以上のように、本実施形態の受信装置は、ボールレンズ、受光素子アレイ、光学素子、および受信回路を備える。ボールレンズは、空間を伝搬する光信号を集光する。受光素子アレイは、ボールレンズによって集光される光信号を受光する複数の受光素子によって構成される。光学素子は、ボールレンズと受光素子アレイの間に配置される。光学素子は、ボールレンズによって集光された光信号を、受光素子アレイを構成するいずれかの受光素子の受光部に向けて導光する。例えば、光学素子は、ボールレンズの周方向に沿って、平面側を外側に向けて円弧状に曲げられたシリンドリカルレンズである。光学素子は、ボールレンズによって集光された光信号を、受光素子アレイの配列方向と直交する方向に向けて集光し、受光素子アレイを構成するいずれかの受光素子の受光部に導光する。受光素子アレイは、複数の受光素子によって受光された光信号に由来する信号を出力する。受信回路は、受光素子アレイから出力される信号をデコードする。
【0073】
本実施形態の受信装置は、ボールレンズの周方向に沿って、平面側を外側に向けて円弧状に曲げられたシリンドリカルレンズによって、複数の受光素子の配列方向とは垂直な方向に光信号を集光する。本実施形態によれば、複数の受光素子の配列方向に対して垂直な方向に外れる光信号を、光学素子によって受光素子の受光部の方向に向けて導光するため、光信号の受光効率を向上できる。
【0074】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態に係る受信装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の受信装置は、ボールレンズによって集光された信号光を、その信号光が屈折された方向に対して略垂直な方向に屈折する回折光学素子(DOE:Diffractive Optical Element)を含む点において、第1の実施形態の受信装置とは異なる。本実施形態の受信装置は、第2の実施形態の構成と組み合わせてもよい。
【0075】
(構成)
図18は、本実施形態の受信装置4の構成の一例を示す概念図である。受信装置4は、ボールレンズ41、受光素子アレイ43、受信回路45、および光学素子47を備える。ボールレンズ41、受光素子アレイ43、および光学素子47は、受光器40を構成する。図18は、受光器40を上方向から見た平面図である。
【0076】
ボールレンズ41は、第1の実施形態のボールレンズ11と同様の構成である。ボールレンズ41は、外部から到来した空間光信号を、ボールレンズ41の集光領域に集光する。
【0077】
図19は、受光素子アレイ43と光学素子47の位置関係の一例を示す斜視図である。図19は、光学素子47の入射面側の斜め上方の視座から見下ろした斜視図である。受光素子アレイ43と光学素子47は、ボールレンズ41の中心に向けて、円弧状に曲げられた形状を有する。
【0078】
光学素子47(回折光学素子とも呼ぶ)は、第1回折部471、第2回折部472、および透明部475を含む。第1回折部471、第2回折部472、および透明部475は、ボールレンズ41の中心に向けて、円弧状に曲げられた形状を有する。第1回折部471および第2回折部472は、透明部475を挟みこむように構成される。例えば、第1回折部471および第2回折部472は、ボールレンズ41によって集光された光信号を、集光領域に向けて回折するニアフィールド回折光学素子である。透明部475は、光信号の波長領域の光を透過する材質である。透明部475は、光信号の波長領域の光を受光素子431に向けて集光する光学部材で構成されてもよいし、開口されていてもよい。
【0079】
光学素子47は、第1面を内側に向け、第1面に対向する第2面を外側に向けて、円弧状に曲げられた形状を有する。光学素子47は、ボールレンズ41の周囲に形成される集光領域に合わせた曲率で形成される。光学素子47は、ボールレンズ41と受光素子アレイ43の間に配置される。光学素子47の第1面は、受光面である。光学素子47の第1面は、ボールレンズ41の出射面に向けられる。光学素子47の第2面は、出射面である。光学素子47の第2面は、受光素子アレイ43の受光面に向けられる。光学素子47は、ボールレンズ41によって集光された光信号を、受光素子アレイ43を構成する受光素子431に向けて回折する。
【0080】
図20は、ボールレンズ41、受光素子アレイ43、および光学素子47によって構成される受光器40の一部分の断面図である。図20には、円弧状の基板430に受光素子431が配置される例を示す。図20には、ボールレンズ41によって回折される光の軌跡を示す。ボールレンズ41によって、光学素子47が配置された集光領域に集光される光信号は、光学素子47によって回折される。第1回折部471は、光学素子47の受光面に対して斜め上方から入射する光信号を、受光素子アレイ43を構成するいずれかの受光素子431に向けて回折する。第2回折部472は、光学素子47の受光面に対して斜め下方から入射する光信号を、受光素子アレイ43を構成するいずれかの受光素子431に向けて回折する。透明部475を通過した光信号は、受光素子アレイ43を構成するいずれかの受光素子431に向けて進行する。光学素子47によって回折された光信号は、光学素子47の後段に配置された受光素子アレイ43を構成するいずれかの受光素子431によって受光される。
【0081】
例えば、受光素子アレイ43の形成する面に対して空間光信号が到来する方向が一方向に限定される場合、光学素子47は、第1回折部471および第2回折部472のうちいずれか一方のみで構成されてもよい。例えば、受光素子アレイ43の形成する面に対して上方のみから空間光信号が到来する場合、下方からは空間光信号が到来しないので、第1回折部471のみで光学素子47が構成されてもよい。例えば、受光素子アレイ43の形成する面に対して下方のみから空間光信号が到来する場合、上方からは空間光信号が到来しないので、第2回折部472のみで光学素子47が構成されてもよい。
【0082】
受光素子アレイ43は、第1の実施形態の受光素子アレイ13と同様の構成である。受光素子アレイ43は、光学素子47の後段に配置される。受光素子アレイ43に含まれる複数の受光素子431は、受光対象の空間光信号に由来する光信号を受光する受光部432を含む。複数の受光素子431の各々は、受光部432が光学素子47の出射面と対面するように配置される。複数の受光素子431の各々は、光学素子47によって回折される光信号を受光しやすい位置に受光部432が位置するように配置される。ボールレンズ41によって集光された光信号は、光学素子47によって回折されて、受光素子431の受光部432で受光される。
【0083】
第1の実施形態の構成では、水平面に対して平行な方向に広がりのある空間光信号を受光する場合、受光素子アレイ13によって形成される円弧が水平面に対して略平行になるように配置される。そのように配置されれば、複数の受光素子131の各々に、多様な方向から到来する空間光信号の受光を分担させることができる。しかし、そのような配置では、水平面に対して垂直な方向に広がりのある空間光信号は、受光素子アレイ13の短辺方向にずれて入射されるため、効率的に受光することは難しい。それに対し、本実施形態の構成では、受光素子アレイ43の短辺方向にずれて入射した光信号を、光学素子47によって短辺方向に沿って回折する。そのため、本実施形態の構成によれば、第1の実施形態の構成と比べて、垂直方向に拡がりのある空間光信号を受光しやすくなる。
【0084】
受光素子アレイ43を構成する複数の受光素子431の各々は、受光された光信号を電気信号に変換する。受光素子アレイ43を構成する複数の受光素子431の各々は、変換後の電気信号を、受信回路45に出力する。図18には、受光素子アレイ43と受信回路45の間に一本の線(経路)しか図示していないが、受光素子アレイ43と受信回路45は複数の経路で接続されてもよい。例えば、受光素子アレイ43を構成する複数の受光素子431の各々が、受信回路45と個別に接続されてもよい。例えば、受光素子アレイ43を構成する複数の受光素子431のいくつかをまとめたグループごとに、受信回路45と接続されるように構成されてもよい。
【0085】
受信回路45は、第1の実施形態の受信回路15と同様の構成である。受信回路45は、受光素子アレイ43を構成する複数の受光素子431の各々から出力された信号を取得する。受信回路45は、複数の受光素子431の各々からの信号を増幅する。受信回路45は、増幅された信号をデコードし、通信対象からの信号を解析する。受信回路45によってデコードされた信号は、任意の用途に使用される。受信回路45によってデコードされた信号の使用については、特に限定を加えない。
【0086】
〔変形例4〕
次に、本実施形態の変形例(変形例4)について、図面を参照しながら説明する。図21は、本変形例について説明するための概念図である。図21においては、ボールレンズ41を省略する。本変形例の受信装置は、隣接し合う二つの受光素子431の受光部432の間に回折される光信号を、それらの受光素子431のいずれかの受光部432に向けて回折する回折部を有する光学素子47-4を含む。図21は、受光素子アレイ43と光学素子47-4の位置関係の一例を示す斜視図である。図21は、光学素子47-4の入射面側の斜め上方の視座から見下ろした斜視図である。受光素子アレイ43と光学素子47-4は、ボールレンズ41の中心に向けて、円弧状に曲げられた形状を有する。
【0087】
光学素子47-4(回折光学素子とも呼ぶ)は、第1回折部471、第2回折部472、第3回折部473、第4回折部474、および透明部475を含む。第1回折部471、第2回折部472、および透明部475は、ボールレンズ41の中心に向けて、円弧状に曲げられた形状を有する。第1回折部471および第2回折部472は、透明部475を上下から挟みこむように構成される。透明部475には、複数の受光素子431の各々に対応付けて、複数の第3回折部473と複数の第4回折部474が配置される。
【0088】
光学素子47-4は、ボールレンズ41と受光素子アレイ43の間に配置される。光学素子47-4の第1面(受光面)は、ボールレンズ41の出射面に向けられる。光学素子47-4の第2面(出射面)は、受光素子アレイ43の受光面に向けられる。光学素子47-4は、ボールレンズ41によって集光された光信号を、対応付けられた受光素子431に向けて回折する。
【0089】
第1回折部471は、光学素子47-4の受光面に対して斜め上方から入射する光信号を、対応付けられた受光素子431に向けて回折する。第2回折部472は、光学素子47-4の受光面に対して斜め下方から入射する光信号を、対応付けられた受光素子431に向けて回折する。複数の第3回折部473の各々は、複数の受光素子431の各々に対応付けられる。複数の第3回折部473の各々は、光学素子47-4の受光面に対して、対応付けられた受光素子431の左方に配置される。第3回折部473は、光学素子47-4の受光面に対して斜め左方から入射する光信号を、対応付けられた受光素子431に向けて回折する。複数の第4回折部474の各々は、複数の受光素子431の各々に対応付けられる。複数の第4回折部474の各々は、光学素子47-4の受光面に対して、対応付けられた受光素子431の右方に配置される。第4回折部474は、光学素子47-4の受光面に対して斜め右方から入射する光信号を、対応付けられた受光素子431に向けて回折する。透明部475は、複数の第3回折部473および複数の第4回折部474によって区切られて、複数の受光素子431の各々に対応付けられる。透明部475を通過した光信号は、対応付けられた受光素子431に向けて進行する。光学素子47-4によって集光された光信号は、光学素子47-4の後段に配置された受光素子アレイ43を構成するいずれかの受光素子431によって受光される。
【0090】
ボールレンズ41によって、光学素子47-4が配置された集光領域に集光される光信号は、第1回折部471、第2回折部472、第3回折部473、および第4回折部474によって回折されるか、透明部475を透過する。光学素子47-4によって導光された光信号は、光学素子47-4の後段に配置された受光素子431によって受光される。
【0091】
本変形例の光学素子47-4を用いれば、受光素子アレイ43の短辺方向と同様に、長辺方向に関しても、受光素子431に向けて光信号を導光できる。光学素子47を用いた場合では、受光素子アレイ43に向けて回折されながら、受光素子431から外れた不感領域に入射した光信号を受光できなかった。本変形例の光学素子47-4を用いれば、受光素子431から外れた不感領域に集光されていた光を、受光素子431に導光するように構成できる。すなわち、本変形例の光学素子47-4を用いれば、光学素子47を用いる場合と比較して、光信号の受光効率を向上できる。
【0092】
以上のように、本実施形態の受信装置は、ボールレンズ、受光素子アレイ、光学素子、および受信回路を備える。ボールレンズは、空間を伝搬する光信号を集光する。受光素子アレイは、ボールレンズによって集光される光信号を受光する複数の受光素子によって構成される。光学素子は、ボールレンズと受光素子アレイの間に配置される。光学素子は、ボールレンズによって集光された光信号を、受光素子アレイを構成するいずれかの受光素子の受光部に向けて導光する。例えば、光学素子は、ボールレンズの周方向に沿って円弧状に曲げられた回折光学素子を含む。光学素子は、ボールレンズによって集光された光信号を、受光素子アレイの配列方向と直交する方向に向けて回折し、受光素子アレイを構成するいずれかの受光素子の受光部に導光する。受光素子アレイは、複数の受光素子によって受光された光信号に由来する信号を出力する。受信回路は、受光素子アレイから出力される信号をデコードする。
【0093】
本実施形態の受信装置は、ボールレンズの周方向に沿って、平面側を外側に向けて円弧状に曲げられた回折光学素子によって、複数の受光素子の配列方向とは垂直な方向に光信号を回折する。本実施形態によれば、複数の受光素子の配列方向に対して垂直な方向に外れる光信号を、光学素子によって受光素子の受光部の方向に向けて導光するため、光信号の受光効率を向上できる。
【0094】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態に係る受信装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の受信装置は、ボールレンズによって集光された信号光を、その信号光が屈折された方向に対して略垂直な方向に拡散する拡散板を含む点において、第1の実施形態の受信装置とは異なる。本実施形態の受信装置は、第2の実施形態の構成と組み合わせてもよい。
【0095】
(構成)
図22は、本実施形態の受信装置5の構成の一例を示す概念図である。受信装置5は、ボールレンズ51、受光素子アレイ53、受信回路55、および光学素子57を備える。ボールレンズ51、受光素子アレイ53、および光学素子57は、受光器50を構成する。図22は、受光器50を上方向から見た平面図である。
【0096】
ボールレンズ51は、第1の実施形態のボールレンズ11と同様の構成である。ボールレンズ51は、外部から到来した空間光信号を、ボールレンズ51の集光領域に集光する。
【0097】
図23は、受光素子アレイ53と光学素子57の位置関係の一例を示す斜視図である。図23は、光学素子57の入射面側の斜め上方の視座から見下ろした斜視図である。受光素子アレイ53と光学素子57は、ボールレンズ51の中心に向けて、円弧状に曲げられた形状を有する。
【0098】
光学素子57(拡散板とも呼ぶ)は、第1拡散部571、第2拡散部572、および透明部575を含む。第1拡散部571、第2拡散部572、および透明部575は、ボールレンズ51の中心に向けて、円弧状に曲げられた形状を有する。第1拡散部571および第2拡散部572は、透明部575を上下から挟みこむように構成される。例えば、第1拡散部571および第2拡散部572は、ボールレンズ51によって集光された光信号を拡散する拡散板である。透明部575は、光信号の波長領域の光を透過する材質である。透明部575は、光信号の波長領域の光を受光素子531に向けて集光する光学部材で構成されてもよいし、開口されていてもよい。
【0099】
光学素子57は、第1面を内側に向け、第1面に対向する第2面を外側に向けて、円弧状に曲げられた形状を有する。光学素子57は、ボールレンズ51の周囲に形成される集光領域に合わせた曲率で形成される。光学素子57は、ボールレンズ51と受光素子アレイ53の間に配置される。光学素子57の第1面は、受光面である。光学素子57の第1面は、ボールレンズ51の出射面に向けられる。光学素子57の第2面は、出射面である。光学素子57の第2面は、受光素子アレイ53の受光面に向けられる。光学素子57は、ボールレンズ51によって集光された光信号を、受光素子アレイ53を構成する受光素子531を含む範囲に向けて拡散する。
【0100】
図24は、ボールレンズ51、受光素子アレイ53、および光学素子57によって構成される受光器50の一部分の断面図である。図24には、円弧状の基板530に受光素子531が配置される例を示す。図24には、ボールレンズ51によって拡散される光の軌跡を示す。ボールレンズ51によって、光学素子57が配置された集光領域に集光される光信号は、光学素子57によって拡散される。第1拡散部571は、光学素子57の受光面に対して斜め上方から入射する光信号を、受光素子アレイ53を構成するいずれかの受光素子531を含む範囲に向けて拡散する。第2拡散部572は、光学素子57の受光面に対して斜め下方から入射する光信号を、受光素子アレイ53を構成するいずれかの受光素子531を含む範囲に向けて拡散する。透明部575を通過した光信号は、受光素子アレイ53を構成するいずれかの受光素子531に向けて進行する。光学素子57によって拡散された光信号は、光学素子57の後段に配置された受光素子アレイ53を構成するいずれかの受光素子531によって受光される。
【0101】
例えば、受光素子アレイ53の形成する面に対して空間光信号が到来する方向が一方向に限定される場合、光学素子57は、第1拡散部571および第2拡散部572のうちいずれか一方のみで構成されてもよい。例えば、受光素子アレイ53の形成する面に対して上方のみから空間光信号が到来する場合、下方からは空間光信号が到来しないので、第1拡散部571のみで光学素子57が構成されてもよい。例えば、受光素子アレイ53の形成する面に対して下方のみから空間光信号が到来する場合、上方からは空間光信号が到来しないので、第2拡散部572のみで光学素子57が構成されてもよい。
【0102】
受光素子アレイ53は、第1の実施形態の受光素子アレイ13と同様の構成である。受光素子アレイ53は、光学素子57の後段に配置される。受光素子アレイ53に含まれる複数の受光素子531は、受光対象の空間光信号に由来する光信号を受光する受光部532を含む。複数の受光素子531の各々は、受光部532が光学素子57の出射面と対面するように配置される。複数の受光素子531の各々は、光学素子57によって拡散される光信号を受光しやすい位置に受光部532が位置するように配置される。ボールレンズ51によって集光された光信号は、光学素子57によって拡散されて、受光素子531の受光部532で受光される。
【0103】
第1の実施形態の構成では、水平面に対して平行な方向に広がりのある空間光信号を受光する場合、受光素子アレイ13によって形成される円弧が水平面に対して略平行になるように配置される。そのように配置されれば、複数の受光素子131の各々に、多様な方向から到来する空間光信号の受光を分担させることができる。しかし、そのような配置では、水平面に対して垂直な方向に広がりのある空間光信号は、受光素子アレイ13の短辺方向にずれて入射されるため、効率的に受光することは難しい。それに対し、本実施形態の構成では、受光素子アレイ53の短辺方向にずれて入射した光信号を、光学素子57によって短辺方向に沿って拡散する。そのため、本実施形態の構成によれば、第1の実施形態の構成と比べて、垂直方向に拡がりのある空間光信号を受光しやすくなる。本実施形態の構成は、簡易な構成でありながら、第1の実施形態の構成に比べて受光効率を向上できる。
【0104】
受光素子アレイ53を構成する複数の受光素子531の各々は、受光された光信号を電気信号に変換する。受光素子アレイ53を構成する複数の受光素子531の各々は、変換後の電気信号を、受信回路55に出力する。図22には、受光素子アレイ53と受信回路55の間に一本の線(経路)しか図示していないが、受光素子アレイ53と受信回路55は複数の経路で接続されてもよい。例えば、受光素子アレイ53を構成する複数の受光素子531の各々が、受信回路55と個別に接続されてもよい。例えば、受光素子アレイ53を構成する複数の受光素子531のいくつかをまとめたグループごとに、受信回路55と接続されるように構成されてもよい。
【0105】
受信回路55は、第1の実施形態の受信回路15と同様の構成である。受信回路55は、受光素子アレイ53を構成する複数の受光素子531の各々から出力された信号を取得する。受信回路55は、複数の受光素子531の各々からの信号を増幅する。受信回路55は、増幅された信号をデコードし、通信対象からの信号を解析する。受信回路55によってデコードされた信号は、任意の用途に使用される。受信回路55によってデコードされた信号の使用については、特に限定を加えない。
【0106】
〔変形例5〕
次に、本実施形態の変形例(変形例5)について、図面を参照しながら説明する。図25は、本変形例について説明するための概念図である。図25においては、ボールレンズ51を省略する。本変形例の受信装置は、隣接し合う二つの受光素子531の受光部532の間に拡散される光信号を、それらの受光素子531のいずれかの受光部532に向けて拡散する光学素子57-5を含む。図25は、受光素子アレイ53と光学素子57-5の位置関係の一例を示す斜視図である。図25は、光学素子57-5の入射面側の斜め上方の視座から見下ろした斜視図である。受光素子アレイ53と光学素子57-5は、ボールレンズ51の中心に向けて、円弧状に曲げられた形状を有する。
【0107】
光学素子57-5(拡散板とも呼ぶ)は、拡散部573と透明部576を含む。拡散部573は、ボールレンズ51の中心に向けて、円弧状に曲げられた形状を有する。透明部576は、複数の受光素子531の各々に対応付けて、拡散部573に設置される。
【0108】
光学素子57-5は、ボールレンズ51と受光素子アレイ53の間に配置される。光学素子57-5の第1面(受光面)は、ボールレンズ51の出射面に向けられる。光学素子57-5の第2面(出射面)は、受光素子アレイ53の受光面に向けられる。光学素子57-5は、ボールレンズ51によって集光された光信号を、受光素子531を含む範囲に向けて拡散する。
【0109】
拡散部573は、光学素子57-5の受光面に対して入射する光信号を、受光素子アレイ53を含む範囲に向けて拡散する。透明部576を通過した光信号は、対応付けられた受光素子531に向けて進行する。光学素子57-5によって集光された光信号は、光学素子57-5の後段に配置された受光素子アレイ53を構成するいずれかの受光素子531によって受光される。
【0110】
ボールレンズ51によって、光学素子57-5が配置された集光領域に集光される光信号は、拡散部573によって拡散されるか、透明部575を透過する。光学素子57-5によって導光された光信号は、光学素子57-5の後段に配置された受光素子531によって受光される。
【0111】
本変形例の光学素子57-5を用いれば、隣接し合う受光素子531の間の不感領域に拡散される光信号に関しても、受光素子531に向けて光信号を導光できる。光学素子57を用いた場合では、受光素子アレイ53の範囲に拡散されながら、受光素子531から外れた不感領域に入射した光信号を受光できなかった。本変形例の光学素子57-5を用いれば、受光素子531から外れた不感領域に集光されていた光の一部を、受光素子531に導光するように構成できる。すなわち、本変形例の光学素子57-5を用いれば、光学素子57を用いる場合と比較して、光信号の受光効率を向上できる。
【0112】
以上のように、本実施形態の受信装置は、ボールレンズ、受光素子アレイ、光学素子、および受信回路を備える。ボールレンズは、空間を伝搬する光信号を集光する。受光素子アレイは、ボールレンズによって集光される光信号を受光する複数の受光素子によって構成される。光学素子は、ボールレンズと受光素子アレイの間に配置される。光学素子は、ボールレンズによって集光された光信号を、受光素子アレイを構成するいずれかの受光素子の受光部に向けて導光する。例えば、光学素子は、ボールレンズの周方向に沿って円弧状に曲げられた拡散板を含む。光学素子は、ボールレンズによって集光された光信号を拡散し、受光素子アレイを構成するいずれかの受光素子の受光部に導光する。受光素子アレイは、複数の受光素子によって受光された光信号に由来する信号を出力する。受信回路は、受光素子アレイから出力される信号をデコードする。
【0113】
本実施形態の受信装置は、ボールレンズの周方向に沿って円弧状に曲げられた拡散板によって、光信号を拡散する。本実施形態によれば、複数の受光素子の配列方向に対して垂直な方向に外れる光信号を、光学素子によって受光素子の受光部の方向に向けて導光するため、光信号の受光効率を向上できる。
【0114】
第3~第5の実施形態の光学素子は、任意に組み合わせられてもよい。例えば、第4~第5の実施形態の光学素子の透明部に、第1の実施形態の光学素子が配置されてもよい。例えば、受光素子アレイの形成する面に対して、上方から到来する空間光信号には第4の実施形態の光学素子を用い、下方から到来する空間光信号には第5の実施形態の光学素子を用いるように組み合わせてもよい。例えば、第3~第5の実施形態の光学素子を、任意の順番で短軸方向に積み上げるようにして、光学素子を構成してもよい。
【0115】
(第6の実施形態)
次に、第6の実施形態に係る受信装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の受信装置は、受光素子の受光部から外れた位置に集光される光信号を、受光部に向けて反射する反射構造を含む点において、第1の実施形態の受信装置とは異なる。本実施形態の受信装置は、第2~第5の実施形態の構成と組み合わせてもよい。
【0116】
(構成)
図26は、本実施形態の受信装置6の構成の一例を示す概念図である。受信装置6は、ボールレンズ61、受光素子アレイ63、および受信回路65を備える。ボールレンズ61と受光素子アレイ63は、受光器60を構成する。図26は、受光器60を上方向から見た平面図である。
【0117】
ボールレンズ61は、第1の実施形態のボールレンズ11と同様の構成である。ボールレンズ61は、外部から到来した空間光信号を、ボールレンズ61の集光領域に集光する。
【0118】
受光素子アレイ63は、ボールレンズ61の周方向に沿って、円弧状に並べられた複数の受光素子631を含む。受光素子アレイ63を構成する複数の受光素子631の各々は、第1の実施形態の受光素子131と同様の構成である。受光素子アレイ63を構成する受光素子の数には限定を加えない。受光素子アレイ63は、反射構造636を含む。反射構造636は、複数の受光素子631の各々に対応付けられて設置される。
【0119】
反射構造636は、受光素子631の受光面の不感領域に配置される。不感領域は、受光素子631の受光面のうち、受光部632が露出していない部分である。図27は、反射構造636の設置例を示す概念図である。図27は、受光素子アレイ63の入射面側の斜め上方の視座から見下ろした斜視図である。図27の例では、隣接する二つの受光素子631の受光部632の間の不感領域に、共通の反射構造636が設置される。また、受光素子アレイ63の両端部の受光素子631には、専用の反射構造636が設置される。複数の反射構造636は、同一の形状であってもよいし、異なる形状であってもよい。反射構造636は、受光素子631の上下の不感領域に設置されてもよい。
【0120】
例えば、反射構造636は、プラスチックやガラス、シリコン、金属などを基材とする。例えば、反射構造636の反射面は、めっきや蒸着、研磨などによって形成される。例えば、反射構造636は、ガラスにアルミニウムを蒸着することによって形成できる。例えば、反射構造636は、アルミニウムなどの金属の枠に接着させて、受光素子631の受光部632の周辺の不感領域に固着させてもよい。なお、反射構造636の材質や、反射面の性状については、入射した光信号を受光部632に反射できさえすれば、特に限定を加えない。
【0121】
受光素子アレイ63は、ボールレンズ61の後段に配置される。複数の受光素子631は、受光対象の空間光信号に由来する光信号を受光する受光部632を含む。複数の受光素子631の各々は、受光部632がボールレンズ61の出射面と対面するように配置される。複数の受光素子631の各々は、ボールレンズ61の集光領域に受光部632が位置するように配置される。ボールレンズ61によって集光された光信号は、集光領域に位置する受光素子631の受光部632で受光される。ボールレンズ61によって集光された光信号のうち、受光素子631の受光部632に入射した成分は、そのまま受光部632で受光される。ボールレンズ61によって集光された光信号のうち、受光素子631の不感領域に入射した成分は、反射構造636の反射面で反射されて受光部632に導光されて、受光部632で受光される。
【0122】
図28は、受光器60に入射する空間光信号の軌跡の一例について説明するための概念図である。図28には、ボールレンズ61によって集光される光の軌跡を示す。図28の例では、ボールレンズ61によって、受光素子アレイ63が配置された集光領域に集光される光信号は、単一の受光素子631の受光部632に入射する。図28の例の場合、受光素子アレイ63が配置された集光領域に集光された光信号は、単一の受光素子631によって受光される。
【0123】
図29は、受光器60に入射する空間光信号の軌跡の別の一例について説明するための概念図である。図29には、ボールレンズ61によって集光される光の軌跡を示す。図29の例では、ボールレンズ61によって、受光素子アレイ63が配置された集光領域に集光される光信号は、隣接し合う二つの受光素子631の受光部632に入射する。ボールレンズ61によって集光された光信号のうち、受光素子631の受光部632に入射した成分は、そのまま受光部632で受光される。ボールレンズ61によって集光された光信号のうち、受光素子631の不感領域に入射した成分は、反射構造636の反射面で反射されて受光部632に導光されて、受光部632で受光される。図29の例の場合、受光素子アレイ63が配置された集光領域に集光された光信号は、隣接し合う二つの受光素子631によって受光される。
【0124】
受光素子アレイ63を構成する複数の受光素子の各々は、受光された光信号を電気信号に変換する。受光素子アレイ63を構成する複数の受光素子の各々は、変換後の電気信号を、受信回路65に出力する。図26には、受光素子アレイ63と受信回路65の間に一本の線(経路)しか図示していないが、受光素子アレイ63と受信回路65は複数の経路で接続されてもよい。例えば、受光素子アレイ63を構成する受光素子631の各々が、受信回路65と個別に接続されてもよい。例えば、受光素子アレイ63を構成する受光素子631のいくつかをまとめたグループごとに、受信回路65と接続されるように構成されてもよい。
【0125】
第1の実施形態の構成では、受光素子131の受光面の不感領域に集光された光信号は、受光されなかった。それに対し、本実施形態の構成では、受光素子631の受光面の不感領域に集光された光信号を、反射構造636の反射面で反射させて、受光部632に導光する。そのため、本実施形態の構成によれば、第1の実施形態の構成と比べて、空間光信号の受光強度が増大する。
【0126】
受信回路65は、第1の実施形態の受信回路15と同様の構成である。受信回路65は、受光素子アレイ63を構成する複数の受光素子631の各々から出力された信号を取得する。受信回路65は、複数の受光素子631の各々からの信号を増幅する。受信回路65は、増幅された信号をデコードし、通信対象からの信号を解析する。受信回路65によってデコードされた信号は、任意の用途に使用される。受信回路65によってデコードされた信号の使用については、特に限定を加えない。
【0127】
以上のように、本実施形態の受信装置は、ボールレンズ、受光素子アレイ、反射構造、および受信回路を備える。ボールレンズは、空間を伝搬する光信号を集光する。受光素子アレイは、ボールレンズによって集光される光信号を受光する複数の受光素子によって構成される。光学素子は、ボールレンズと受光素子アレイの間に配置される。反射構造は、複数の受光素子の不感領域に配置される。反射構造は、ボールレンズから出射された光信号を、受光素子の受光部に向けて反射する。受光素子アレイは、複数の受光素子によって受光された光信号に由来する信号を出力する。受信回路は、受光素子アレイから出力される信号をデコードする。
【0128】
本実施形態の受信装置は、受光素子の不感領域に外れる光信号を、反射構造で受光部に向けて反射する。本実施形態によれば、受光素子の不感領域に外れる光信号を、反射構造によって受光素子の受光部の方向に向けて反射するため、光信号の受光効率を向上できる。
【0129】
(第7の実施形態)
次に、第7の実施形態に係る通信装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の通信装置は、第1~第6の実施形態のいずれかの受信装置と、受光された空間光信号に応じた空間光信号を送信する送信装置とを備える。以下においては、位相変調型の空間光変調器を含む送信装置を備える通信装置の例について説明する。なお、本実施形態の通信装置は、位相変調型の空間光変調器ではない送光機能を含む送信装置を備えてもよい。
【0130】
(構成)
図30は、本実施形態の通信装置700の構成の一例を示す概念図である。通信装置700は、受信装置710、制御装置750、および送信装置770を備える。受信装置710および送信装置770は、外部の通信対象と空間光信号を送受信し合う。そのため、通信装置700には、空間光信号を送受信するための開口や窓が形成される。
【0131】
受信装置710は、第1~第6の実施形態のいずれかの受信装置である。受信装置710は、第1~第6の実施形態を組み合わせた構成の受信装置であってもよい。受信装置710は、通信対象(図示しない)から送信された空間光信号を受光する。受信装置710は、受光した空間光信号を電気信号に変換する。受信装置710は、変換後の電気信号を制御装置750に出力する。
【0132】
制御装置750は、受信装置710から出力された信号を取得する。制御装置750は、取得した信号に応じた処理を実行する。制御装置750が実行する処理については、特に限定を加えない。制御装置750は、実行した処理に応じた光信号を送信するための制御信号を、送信装置770に出力する。
【0133】
送信装置770は、制御装置750から制御信号を取得する。送信装置770は、制御信号に応じた空間光信号を投射する。送信装置770から投射された空間光信号は、通信対象(図示しない)によって受光される。例えば、送信装置770は、位相変調型の空間光変調器を備える。また、送信装置770は、位相変調型の空間光変調器ではない送光機能を含んでいてもよい。
【0134】
〔送信装置〕
図31は、送信装置770の構成の一例を示す概念図である。送信装置770は、光源771、空間光変調器773、曲面ミラー775、および制御部777を有する。光源771、空間光変調器773、および曲面ミラー775は、送信部を構成する。図31は、送信装置770の内部構成を横方向から見た側面図である。図31は、概念的なものであり、各構成要素間の位置関係や、光の進行方向などを正確に表したものではない。
【0135】
光源771は、制御部777の制御に応じて、所定の波長帯のレーザ光を出射する。光源771から出射されるレーザ光の波長は、特に限定されず、用途に応じて選定されればよい。例えば、光源771は、可視や赤外の波長帯のレーザ光を出射する。例えば、800~900ナノメートル(nm)の近赤外線であれば、レーザクラスを上げられるので、他の波長帯よりも1桁くらい感度を向上できる。例えば、1.55マイクロメートル(μm)の波長帯の赤外線ならば、高出力のレーザ光源を用いることができる。1.55μmの波長帯の赤外線のレーザ光源としては、アルミニウムガリウムヒ素リン(AlGaAsP)系レーザ光源や、インジウムガリウムヒ素(InGaAs)系レーザ光源などを用いることができる。レーザ光の波長が長い方が、回折角を大きくでき、高いエネルギーに設定できる。光源771は、空間光変調器773の変調部7730の大きさに合わせて、レーザ光を拡大するレンズを含む。光源771は、レンズによって拡大される光702を出射する。光源771から出射された光702は、空間光変調器773の変調部7730に向けて進行する。
【0136】
空間光変調器773は、光702が照射される変調部7730を有する。空間光変調器773の変調部7730には、光源771から出射された光702が照射される。空間光変調器773の変調部7730には、制御部777の制御に応じて、投射光705によって表示される画像に応じたパターン(位相画像とも呼ぶ)が設定される。空間光変調器773の変調部7730に入射した光702は、空間光変調器773の変調部7730に設定されたパターンに応じて変調される。空間光変調器773の変調部7730で変調された変調光703は、曲面ミラー775の反射面7750に向けて進行する。
【0137】
例えば、空間光変調器773は、強誘電性液晶やホモジーニアス液晶、垂直配向液晶などを用いた空間光変調器によって実現される。例えば、空間光変調器773は、LCOS(Liquid Crystal on Silicon)によって実現できる。また、空間光変調器773は、MEMS(Micro Electro Mechanical System)によって実現されてもよい。位相変調型の空間光変調器773では、投射光705を投射する箇所を順次切り替えるように動作させることによって、エネルギーを像の部分に集中することができる。そのため、位相変調型の空間光変調器773を用いる場合、光源771の出力が同じであれば、その他の方式と比べて画像を明るく表示させることができる。
【0138】
空間光変調器773の変調部7730は、複数の領域に分割される(タイリングとも呼ぶ)。例えば、変調部7730は、所望のアスペクト比の四角形の領域(タイルとも呼ぶ)に分割される。変調部7730に設定された複数のタイルの各々には、位相画像が割り当てられる。複数のタイルの各々は、複数の画素によって構成される。複数のタイルの各々には、投射される画像に対応する位相画像が設定される。複数のタイルの各々に設定される位相画像は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0139】
変調部7730に割り当てられた複数のタイルの各々には、位相画像がタイリングされる。例えば、複数のタイルの各々には、予め生成された位相画像が設定される。複数のタイルに位相画像が設定された状態で、変調部7730に光702が照射されると、各タイルの位相画像に対応する画像を形成する変調光703が出射される。変調部7730に設定されるタイルが多いほど、鮮明な画像を表示させることができるが、各タイルの画素数が低下すると解像度が低下する。そのため、変調部7730に設定されるタイルの大きさや数は、用途に応じて設定される。
【0140】
曲面ミラー775は、曲面状の反射面7750を有する反射鏡である。曲面ミラー775の反射面7750は、投射光705の投射角に応じた曲率を有する。曲面ミラー775の反射面7750は、曲面であればよい。図31の例の場合、曲面ミラー775の反射面7750は、円柱の側面の形状を有する。例えば、曲面ミラー775の反射面7750は、球面でもよい。例えば、曲面ミラー775の反射面7750は、自由曲面であってもよい。例えば、曲面ミラー775の反射面7750は、単一の曲面ではなく、複数の曲面を組み合わせた形状であってもよい。例えば、曲面ミラー775の反射面7750は、曲面と平面を組み合わせた形状であってもよい。
【0141】
曲面ミラー775は、空間光変調器773の変調部7730に反射面7750を向けて、変調光703の光路上に配置される。曲面ミラー775の反射面7750には、空間光変調器773の変調部7730で変調された変調光703が照射される。曲面ミラー775の反射面7750で反射された光(投射光705)は、反射面7750の曲率に応じた拡大率で拡大されて、投射される。図31の例の場合、投射光705は、曲面ミラー775の反射面7750における変調光703の照射範囲の曲率に応じて、水平方向(図31の紙面に対して垂直な方向)に沿って拡大される。
【0142】
例えば、空間光変調器773と曲面ミラー775の間に、遮蔽器(図示しない)が配置されてもよい。言い換えると、空間光変調器773の変調部7730によって変調された変調光703の光路上に、遮蔽器が配置されてもよい。遮蔽器は、変調光703に含まれる不要な光成分を遮蔽し、投射光705の表示領域の外縁を規定する枠体である。例えば、遮蔽器は、所望の画像を形成する光を通過させる部分にスリット状の開口が形成されたアパーチャである。遮蔽器は、所望の画像を形成する光を通過させ、不要な光成分を遮蔽する。例えば、遮蔽器は、変調光703に含まれる0次光やゴースト像を遮蔽する。遮蔽器の詳細については、説明を省略する。
【0143】
制御部777は、光源771および空間光変調器773を制御する。例えば、制御部777は、プロセッサとメモリを含むマイクロコンピュータによって実現される。制御部777は、空間光変調器773の変調部7730に設定されたタイリングのアスペクト比に合わせて、投射される画像に対応する位相画像を変調部7730に設定する。例えば、制御部777は、画像表示や通信、測距など、用途に応じた画像に対応する位相画像を変調部7730に設定する。投射される画像の位相画像は、記憶部(図示しない)に予め記憶させておけばよい。投射される画像の形状や大きさには、特に限定を加えない。
【0144】
制御部777は、空間光変調器773の変調部7730に照射される光702の位相と、変調部7730で反射される変調光703の位相との差分を決定づけるパラメータが変化するように空間光変調器773を駆動する。空間光変調器773の変調部7730に照射される光702の位相と、変調部7730で反射される変調光703の位相との差分を決定づけるパラメータは、例えば、屈折率や光路長などの光学的特性に関するパラメータである。例えば、制御部777は、空間光変調器773の変調部7730に印可する電圧を変化させることによって、変調部7730の屈折率を調節する。位相変調型の空間光変調器773の変調部7730に照射された光702の位相分布は、変調部7730の光学的特性に応じて変調される。なお、制御部777による空間光変調器773の駆動方法は、空間光変調器773の変調方式に応じて決定される。
【0145】
制御部777は、表示される画像に対応する位相画像が変調部7730に設定された状態で、光源771を駆動させる。その結果、空間光変調器773の変調部7730に位相画像が設定されたタイミングに合わせて、光源771から出射された光702が空間光変調器773の変調部7730に照射される。空間光変調器773の変調部7730に照射された光702は、空間光変調器773の変調部7730において変調される。空間光変調器773の変調部7730において変調された変調光703は、曲面ミラー775の反射面7750に向けて出射される。
【0146】
例えば、送信装置770に含まれる曲面ミラー775の反射面7750の曲率と、空間光変調器773と曲面ミラー775の距離とを調整し、投射光705の投射角を180度に設定する。そのように構成された送信装置770を二つ用いれば、投射光705の投射角を360度に設定できる。また、送信装置770の内部で変調光703の一部を平面鏡等で折り返し、投射光705を2方向に投射するように構成すれば、投射光705の投射角を360度に設定できる。例えば、360度の向きに投射光を投射するように構成された送信装置770と、第2の実施形態の受信装置2とを組み合わせた構成とする。このような構成とすれば、360度の向きに空間光信号を送信し、360度の方向から到来する空間光信号を受光する通信装置を実現できる。
【0147】
〔通信システム〕
次に、本実施形態の通信装置を用いた通信システムについて図面を参照しながら説明する。図32は、通信装置700を用いた通信システムの構成の一例を示す概念図である。通信装置700は、通信装置700と同様の構成を有する。図32は、水平面に対して平行な平面上にメッシュ状に配置された複数の通信装置700の間で、空間光信号を送受信し合う例である。図32の構成の場合、通信ネットワークを形成する長方形の角に配置される通信装置700と、その長方形の辺に配置される通信装置700とがある。
【0148】
図33は、通信ネットワークを形成する長方形の角に配置される通信装置700の受光器70-1の構成の一例を示す概念図である。受光器70-1は、複数の受光ユニット74を含む。受光ユニット74は、各実施形態の受光素子アレイと受信回路を組み合わせた構成である。複数の受光ユニット74は、ボールレンズ71が配置される部分が刳り貫かれた基板740の一方の面上に配置される。複数の受光ユニット74は、受光面をボールレンズ71に向けて配置される。例えば、複数の受光ユニット74の各々は、ネジ止め等の手法で基板740に固定される。受光ユニット74は、基板740から取り外すことができ、基板740のユニット配置領域745の範囲内の任意の位置に固定できる。
【0149】
通信ネットワークを形成する長方形の角に配置される通信装置700は、複数の通信装置700が形成する平面上において、90度の方向から到来する空間光信号を受信する。そのため、受光器70-1の受光ユニット74は、通信対象の通信装置700に受光面が向くように、90度の範囲内に集中して配置される。複数の受光ユニット74は、空間光信号の到来方向に合わせて配置されればよい。
【0150】
図34は、通信ネットワークを形成する長方形の辺上に配置される通信装置700の受光器70-2の構成の一例を示す概念図である。受光器70-2は、複数の受光ユニット74を含む。受光ユニット74は、各実施形態の受光素子アレイと受信回路を組み合わせた構成である。複数の受光ユニット74は、ボールレンズ71が配置される部分が刳り貫かれた基板740の一方の面上に配置される。複数の受光ユニット74は、受光面をボールレンズ71に向けて配置される。例えば、複数の受光ユニット74の各々は、ネジ止め等の手法で基板740に固定される。そのように構成すれば、通信ネットワークを形成する長方形の辺と角に配置される通信装置700を、同じスペックで実現できる。
【0151】
通信ネットワークを形成する長方形の辺上に配置される通信装置700は、複数の通信装置700が形成する平面上において、180度の方向から到来する空間光信号を受信する。そのため、受光器70-2の受光ユニット74は、通信対象の通信装置700に受光面が向くように、180度の範囲内に分散して配置される。複数の受光ユニット74は、空間光信号の到来方向に合わせて配置されればよい。
【0152】
図35および図36は、通信装置700の受光器70-2に空間光信号が入射する様子を示す概念図である。図35は、受光器70-2に対して上方の視座から、受光器70-2を見下ろした図である。図36は、空間光信号の到来方向の反対側の視座から、受光器70-2を見た図である。通信装置700を構成する複数の受光ユニット74は、分散して配置される。空間光信号は、受光ユニット74の幅よりも大きな照射範囲で到来する。そのため、図35の下側に配置された受光ユニット74は、対向して配置された受光ユニット74によって空間光信号の到来が妨げられるものの、ボールレンズ71によって集光された空間光信号を受光できる。
【0153】
〔適用例1〕
次に、本実施形態の通信装置の適用例1について図面を参照しながら説明する。図37は、本適用例について説明するための概念図である。本適用例では、電柱や街灯などの柱の上部に、複数の通信装置700-1が配置された通信ネットワークを構成する。通信装置700-1は、通信装置700と同様の構成を有する。
【0154】
図38は、通信装置700-1の構成の一例を示す概念図である。通信装置700-1は、受光器7101、送信器7701、および制御装置(図示しない)を備える。図38では、受光回路や制御装置は省略する。通信装置700-1は、円筒状の外形を有する。受光器7101は、ボールレンズ71、受光ユニット74-1、基板740-1、板状部材780、およびカラーフィルタ790-1を含む。ボールレンズ71は、上下に配置された一対の板状部材780によって挟持される。ボールレンズ71の上下は、空間光信号の送受光に用いられないため、板状部材780で挟持されやすいように、平面状に形成されてもよい。受光ユニット74-1は、受信対象の空間光信号を受信できるように、ボールレンズ71の集光領域に合わせて、環状に配置される。受光ユニット74-1は、基板740-1に形成される。受光ユニット74-1は、導線78によって、制御装置(図示しない)や送信器7701に接続される。円筒状の受光器7101の側面には、カラーフィルタ790-1が配置される。カラーフィルタ790-1は、不要な光を除去し、通信に用いられる空間光信号を選択的に透過する。円筒状の受光器7101の上下面には、一対の板状部材780が配置される。一対の板状部材は、ボールレンズ71の上下を挟持する。ボールレンズ71の出射側には、環状に形成された受光ユニット74-1が配置される。カラーフィルタ790-1を介してボールレンズ71に入射した空間光信号は、ボールレンズ71によって、受光ユニット74-1に集光される。制御装置(図示しない)は、受光ユニット74-1によって受光された光信号に応じて、送信器7701から空間光信号を送信させる。送信器7701は、図31の構成によって実現できる。送信器7701には、360度の方向に向けて空間光信号を投光可能に形成された、スリットが形成される。
【0155】
電柱や街灯などの柱の上部には障害物が少ない。そのため、電柱や街灯などの柱の上部は、通信装置700-1を設置するのに適している。また、柱の上部の同じ高さに通信装置700-1を設置すれば、空間光信号の到来方向が水平方向に限定されるので、受光器7101を構成する受光ユニット74-1の受光面積を小さくし、装置を簡略化できる。通信をやり取りする通信装置700-1のペアは、少なくとも一方の通信装置700-1が、他方の通信装置700-1から送信された空間光信号を受光するように配置される。通信装置700-1のペアは、空間光信号を互いに送受信するように配置されてもよい。複数の通信装置700-1で空間光信号の通信ネットワークが構成される場合、中間に位置する通信装置700-1は、他の通信装置700-1から送信された空間光信号を、別の通信装置700-1に中継するように配置されればよい。
【0156】
本適用例によれば、異なる柱に設置された複数の通信装置700-1の間で、空間光信号を用いた通信が可能になる。例えば、異なる柱に設置された通信装置700-1の間における通信に応じて、自動車や家屋などに設置された無線装置や基地局と通信装置700-1との間で、無線通信による通信を行うように構成してもよい。例えば、柱に設置された通信ケーブル等を介して、通信装置700-1がインターネットに接続されるように構成してもよい。
【0157】
〔適用例2〕
次に、本実施形態の通信装置の適用例2について図面を参照しながら説明する。図39は、本適用例について説明するための概念図である。本適用例の通信装置は、上空を飛翔するドローン730との間で、空間光信号を送受信する。図39には、上空を飛翔するドローン730から、地上に設置された通信装置(受光器7102)に向けて空間光信号を送信する。以下において、ドローン730は、空間光信号を送受光できるものとする。ドローン730は、上空の任意の位置を飛翔できる。そのため、受光器7102は、上空の全ての方向から到来する空間光信号を受信できるように構成される。図39の例では、送信装置(送信器)や受信回路、制御装置等の構成は省略する。
【0158】
受光器7102は、ボールレンズ71、受光ユニット74-2、およびカラーフィルタ790-2を含む。受光ユニット74-2は、ドローン730から送信された空間光信号を受信できるように、ボールレンズ71の集光領域に合わせて、上空に受光面を向けて、環状に配置される。ボールレンズ71の上方(入射面側)は、球面状のカラーフィルタ790-2によって被覆される。カラーフィルタ790-2は、不要な光を除去し、通信に用いられる空間光信号を選択的に透過する。ボールレンズ71の下方(出射側)には、球面に沿って形成された受光ユニット74-2が配置される。カラーフィルタ790-2を介してボールレンズ71に入射した空間光信号は、ボールレンズ71によって、受光ユニット74-2に集光される。例えば、制御装置(図示しない)は、受光ユニット74-2によって受光された光信号に応じて、送信装置(図示しない)から、ドローン730に向けて空間光信号を送信させてもよい。
【0159】
本適用例によれば、上空の任意の位置を飛翔するドローン730と地上に設置された通信装置との間で、空間光信号を用いた通信が可能になる。例えば、通信装置をインターネットに接続すれば、ドローン730によって取得された情報をリアルタイムで活用するシステムを構成できる。
【0160】
以上のように、本実施形態の通信装置は、第1~第6の実施形態のいずれかの受信装置、送信装置、および制御装置を備える。送信装置は、制御装置の制御に応じて、空間光信号を送信する。制御装置は、受信装置によって受信された他の通信装置からの光信号に基づく信号を受信する。制御装置は、受信した信号に応じた処理を実行する。制御装置は、実行した処理に応じた光信号を送信装置に送信させる。本実施形態によれば、光信号を送受信する通信装置を実現できる。
【0161】
本実施形態の一態様の通信システムは、互いに光信号を送受信し合うように配置された複数の通信装置を備える。本態様によれば、光信号を送受信する通信ネットワークを実現できる。
【0162】
本実施形態の一態様の受信装置は、ボールレンズと複数の受光ユニットを備える。ボールレンズは、空間を伝搬する光信号を集光する。複数の受光ユニットは、受光素子アレイと受信回路を有する。受光素子アレイは、ボールレンズによって集光される光信号を受光する複数の受光素子によって構成される。受光素子アレイは、複数の前記受光素子によって受光された前記光信号に由来する信号を出力する。受信回路は、受光素子アレイから出力される信号をデコードする。複数の受光ユニットは、ボールレンズに受光面を向けて、ボールレンズの集光領域に配置される。例えば、複数の受光ユニットは、光信号の到来方向に合わせて配置される。本態様の受信装置は、単一のボールレンズに、複数の受光ユニットが対応付けられた構成を有する。本態様によれば、光信号の到来方向に応じて受光ユニットの受光部の向きを変えることによって、フレキシブルに通信装置を配置できる通信システムを構築できる。
【0163】
(第8の実施形態)
次に、第8の実施形態に係る受信装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の受信装置は、第1~第7の実施形態の受信装置を簡略化した構成である。図40は、本実施形態の受信装置80の構成の一例を示す概念図である。受信装置80は、ボールレンズ81、受光素子アレイ83、および受信回路85を備える。
【0164】
ボールレンズ81は、空間を伝搬する光信号を集光する。受光素子アレイ83は、ボールレンズ81によって集光される光信号を受光する複数の受光素子(図示しない)によって構成される。受光素子アレイ83は、複数の受光素子によって受光された前記光信号に由来する信号を出力する。受信回路85は、受光素子アレイから出力される信号をデコードする。
【0165】
本実施形態の受信装置は、ボールレンズによって集光される光信号を、複数の受信素子によって受信する。ボールレンズは、任意の方向から到来する空間光信号を、周囲の集光領域に均等に集光する。そのため、本実施形態によれば、簡易な構成でありながら、多様な方向から到来する光信号を均等に受信できる。
【0166】
(ハードウェア)
ここで、本開示の各実施形態に係る制御や処理を実行するハードウェア構成について、図41の情報処理装置90を一例として挙げて説明する。なお、図41の情報処理装置90は、各実施形態の制御や処理を実行するための構成例であって、本開示の範囲を限定するものではない。
【0167】
図41のように、情報処理装置90は、プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、入出力インターフェース95、および通信インターフェース96を備える。図41においては、インターフェースをI/F(Interface)と略記する。プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、入出力インターフェース95、および通信インターフェース96は、バス98を介して、互いにデータ通信可能に接続される。また、プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、および入出力インターフェース95は、通信インターフェース96を介して、インターネットやイントラネットなどのネットワークに接続される。
【0168】
プロセッサ91は、補助記憶装置93等に格納されたプログラムを、主記憶装置92に展開する。プロセッサ91は、主記憶装置92に展開されたプログラムを実行する。本実施形態においては、情報処理装置90にインストールされたソフトウェアプログラムを用いる構成とすればよい。プロセッサ91は、各実施形態に係る制御や処理を実行する。
【0169】
主記憶装置92は、プログラムが展開される領域を有する。主記憶装置92には、プロセッサ91によって、補助記憶装置93等に格納されたプログラムが展開される。主記憶装置92は、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリによって実現される。また、主記憶装置92として、MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)などの不揮発性メモリが構成/追加されてもよい。
【0170】
補助記憶装置93は、プログラムなどの種々のデータを記憶する。補助記憶装置93は、ハードディスクやフラッシュメモリなどのローカルディスクによって実現される。なお、種々のデータを主記憶装置92に記憶させる構成とし、補助記憶装置93を省略することも可能である。
【0171】
入出力インターフェース95は、規格や仕様に基づいて、情報処理装置90と周辺機器とを接続するためのインターフェースである。通信インターフェース96は、規格や仕様に基づいて、インターネットやイントラネットなどのネットワークを通じて、外部のシステムや装置に接続するためのインターフェースである。入出力インターフェース95および通信インターフェース96は、外部機器と接続するインターフェースとして共通化してもよい。
【0172】
情報処理装置90には、必要に応じて、キーボードやマウス、タッチパネルなどの入力機器が接続されてもよい。それらの入力機器は、情報や設定の入力に使用される。なお、タッチパネルを入力機器として用いる場合は、表示機器の表示画面が入力機器のインターフェースを兼ねる構成としてもよい。プロセッサ91と入力機器との間のデータ通信は、入出力インターフェース95に仲介させればよい。
【0173】
また、情報処理装置90には、情報を表示するための表示機器を備え付けてもよい。表示機器を備え付ける場合、情報処理装置90には、表示機器の表示を制御するための表示制御装置(図示しない)が備えられていることが好ましい。表示機器は、入出力インターフェース95を介して情報処理装置90に接続すればよい。
【0174】
また、情報処理装置90には、ドライブ装置が備え付けられてもよい。ドライブ装置は、プロセッサ91と記録媒体(プログラム記録媒体)との間で、記録媒体からのデータやプログラムの読み込み、情報処理装置90の処理結果の記録媒体への書き込みなどを仲介する。ドライブ装置は、入出力インターフェース95を介して情報処理装置90に接続すればよい。
【0175】
以上が、本発明の各実施形態に係る制御や処理を可能とするためのハードウェア構成の一例である。なお、図41のハードウェア構成は、各実施形態に係る制御や処理を実行するためのハードウェア構成の一例であって、本発明の範囲を限定するものではない。また、各実施形態に係る制御や処理をコンピュータに実行させるプログラムも本発明の範囲に含まれる。さらに、各実施形態に係るプログラムを記録したプログラム記録媒体も本発明の範囲に含まれる。記録媒体は、例えば、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)などの光学記録媒体で実現できる。記録媒体は、USB(Universal Serial Bus)メモリやSD(Secure Digital)カードなどの半導体記録媒体によって実現されてもよい。また、記録媒体は、フレキシブルディスクなどの磁気記録媒体、その他の記録媒体によって実現されてもよい。プロセッサが実行するプログラムが記録媒体に記録されている場合、その記録媒体はプログラム記録媒体に相当する。
【0176】
各実施形態の構成要素は、任意に組み合わせてもよい。また、各実施形態の構成要素は、ソフトウェアによって実現されてもよいし、回路によって実現されてもよい。
【0177】
以上、実施形態を参照して本発明を説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0178】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
空間を伝搬する光信号を集光するボールレンズと、
前記ボールレンズによって集光される前記光信号を受光する複数の受光素子によって構成され、複数の前記受光素子によって受光された前記光信号に由来する信号を出力する受光素子アレイと、
前記受光素子アレイから出力される前記信号をデコードする受信回路と、を備える受信装置。
(付記2)
前記受光素子アレイは、
前記ボールレンズの集光領域に、前記ボールレンズの周方向に沿って円弧状に配列された複数の前記受光素子によって構成される付記1に記載の受信装置。
(付記3)
前記光信号の到来方向に合わせて配置された少なくとも一つの前記受光素子アレイを備える付記1または2に記載の受信装置。
(付記4)
前記受光素子アレイは、
前記ボールレンズの集光領域に、前記ボールレンズの周方向に沿って二次元アレイ状に配列された複数の前記受光素子によって構成される付記1乃至3のいずれか一つに記載の受信装置。
(付記5)
前記受光素子アレイは、
前記ボールレンズの集光領域に、前記ボールレンズの周囲を取り囲むように環状に配置された複数の前記受光素子によって構成される付記1乃至4のいずれか一つに記載の受信装置。
(付記6)
前記ボールレンズと前記受光素子アレイの間に配置され、前記ボールレンズによって集光された前記光信号を、前記受光素子アレイを構成するいずれかの前記受光素子の受光部に向けて導光する光学素子を備える付記1乃至5のいずれか一つに記載の受信装置。
(付記7)
前記光学素子は、
前記ボールレンズの周方向に沿って、平面側を外側に向けて円弧状に曲げられたシリンドリカルレンズであり、前記ボールレンズによって集光された前記光信号を、前記受光素子アレイの配列方向と直交する方向に向けて集光し、前記受光素子アレイを構成するいずれかの前記受光素子の受光部に導光する付記6に記載の受信装置。
(付記8)
前記光学素子は、
前記ボールレンズの周方向に沿って円弧状に曲げられた回折光学素子を含み、前記ボールレンズによって集光された前記光信号を、前記受光素子アレイの配列方向と直交する方向に向けて回折し、前記受光素子アレイを構成するいずれかの前記受光素子の受光部に導光する付記6に記載の受信装置。
(付記9)
前記光学素子は、
前記ボールレンズの周方向に沿って円弧状に曲げられた拡散板を含み、前記ボールレンズによって集光された前記光信号を拡散し、前記受光素子アレイを構成するいずれかの前記受光素子の受光部に導光する付記6に記載の受信装置。
(付記10)
複数の前記受光素子の不感領域に配置され、前記ボールレンズから出射された前記光信号を、前記受光素子の受光部に向けて反射する反射構造を備える付記1乃至9のいずれか一つに記載の受信装置。
(付記11)
付記1乃至10のいずれか一つに記載の受信装置と、
光信号を送信する送信装置と、
前記受信装置によって受信された他の通信装置からの光信号に基づく信号を受信し、受信した前記信号に応じた処理を実行し、実行した前記処理に応じた光信号を前記送信装置に送信させる制御装置と、を備える通信装置。
(付記12)
付記11に記載の通信装置を複数備え、
複数の前記通信装置が、
互いに光信号を送受信し合うように配置された通信システム。
(付記13)
前記受信装置は、
空間を伝搬する前記光信号を集光するボールレンズと、
前記ボールレンズによって集光される前記光信号を受光する複数の受光素子によって構成され、複数の前記受光素子によって受光された前記光信号に由来する信号を出力する受光素子アレイと、前記受光素子アレイから出力される前記信号をデコードする受信回路と、を有する複数の受光ユニットと、を備え、
複数の前記受光ユニットは、
前記ボールレンズに受光面を向けて、前記ボールレンズの集光領域に配置される付記12に記載の通信システム。
(付記14)
複数の前記受光ユニットは、
前記光信号の到来方向に合わせて配置される付記13に記載の通信システム。
【符号の説明】
【0179】
1、2、3、4、5、6 受信装置
10、20、30、40、50、60、70 受光器
11、21、31、41、51、61、71 ボールレンズ
13、23、33、43、53、63 受光素子アレイ
15、25、35、45、55、65 受信回路
37、47、57 光学素子
74 受光ユニット
110 光源
130、330、430、530 基板
131、231、331、431、531、631 受光素子
132、332、432、532、632 受光部
151 第1処理回路
152 制御回路
153 セレクタ
155 第2処理回路
200 基板
471 第1回折部
472 第2回折部
473 第3回折部
474 第4回折部
475 透明部
571 第1拡散部
572 第2拡散部
575、576 透明部
636 反射構造
700 通信装置
710 受信装置
740 基板
750 制御装置
770 送信装置
771 光源
773 空間光変調器
7730 変調部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41