(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-19
(45)【発行日】2025-05-27
(54)【発明の名称】電気機器のレール取付け構造
(51)【国際特許分類】
H05K 7/12 20060101AFI20250520BHJP
H05K 5/02 20060101ALI20250520BHJP
H01H 73/06 20060101ALI20250520BHJP
H01H 45/04 20060101ALI20250520BHJP
H01H 50/04 20060101ALI20250520BHJP
H02B 1/052 20060101ALI20250520BHJP
【FI】
H05K7/12 S
H05K7/12 A
H05K5/02 E
H01H73/06 A
H01H45/04 A
H01H50/04 B
H02B1/052
(21)【出願番号】P 2023545389
(86)(22)【出願日】2022-08-05
(86)【国際出願番号】 JP2022030144
(87)【国際公開番号】W WO2023032594
(87)【国際公開日】2023-03-09
【審査請求日】2023-08-01
(31)【優先権主張番号】P 2021141120
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508296738
【氏名又は名称】富士電機機器制御株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 充哉
(72)【発明者】
【氏名】高谷 幸悦
(72)【発明者】
【氏名】菊地 翔太
(72)【発明者】
【氏名】関谷 優志
【審査官】五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-258452(JP,A)
【文献】実開昭54-179457(JP,U)
【文献】実開平1-76076(JP,U)
【文献】実開昭61-62504(JP,U)
【文献】特開2011-44285(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/12
H05K 5/02
H01H 73/06
H01H 45/04
H01H 50/04
H02B 1/052
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器を、レールに跨って取り付ける電気機器のレール取付け構造であって、
前記レールの長手方向と同一の左右方向及び前記レールの幅方向と同一の前後方向に延びる前記電気機器の筐体の底面の前方側に設けられ、前記電気機器を前記レールに取付けた際に前記レールの幅方向の一方の第1レール部に係合する第1係合部と、
前記筐体の底面の後方側であって前記第1係合部と対峙するように設けられ、前記電気機器を前記レールに取付けた際に前記レールの幅方向の他方の第2レール部に係合する第2係合部と、
前記筐体の底面の前記第1係合部に対し前側に配置されたばね部材と、
前記筐体の底面に形成されたスライダ収容凹部の底面上を前後方向に摺動可能に配置されて前記ばね部材の付勢力により後方向に付勢されるスライダとを備え、
前記第1係合部は、前記第1レール部が嵌まり込む隙間を設けながら前記筐体の底面から延びるフック形状に形成され、
前記スライダは、その後面が前記第1係合部が形成する前記隙間の前後方向の途中から前方側の所定範囲で前後方向に移動可能となっており、
前記電気機器を前記レールに取り付けた際に前記第1レール部は前記第1係合部が形成する前記隙間に受け入れられるとともに、前記電気機器を
前記第1レール部側から前記第2レール部側に押圧した際に前記第1レール部は前記第1係合部の前記筐体の底面に対する付け根部分に当接するまで移動可能となっており、
前記第2係合部は、前記第2レール部が嵌まり込む隙間を設けながら前記筐体の底面から延びるフック形状に形成され、
前記電気機器を前記レールに取り付けた際に前記第2レール部は前記第2係合部が形成する前記隙間に受け入れられるとともに、前記第2係合部が形成する前記隙間の深さは、前記電気機器を前記第1係合部側から前記第2レール部側に押圧した際に前記第1レール部が前記第1係合部の前記筐体の底面に対する付け根部分に当接するまでの移動途中で、前記第2係合部の前記第2レール部に対する係合状態が解かれる大きさに設定され、
前記スライダは、前記電気機器を前記レールに取付けた際にその後面が前記レールの前記第1レール部に当接して前記ばね部材の付勢力を前記レールの前記第1レール部に作用させ、前記第2係合部が前記レールの前記第2レール部を押圧した状態にすることを特徴とする電気機器のレール取付け構造。
【請求項2】
前記ばね部材は、前記レールの長手方向と同一の長手方向に延びるように形成されるとともに、前記筐体の底面の前記第1係合部に対し前側に設けられた一対の板ばね支持部に長手方向両端部が支持された板ばねであり、
前記スライダは、前記ばね部材を構成する板ばねの長手方向両端部の間に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の電気機器のレール取付け構造。
【請求項3】
前記スライダ収容凹部の底面に、前記スライダの後方向への移動を規制するストッパが形成されていることを特徴とする請求項2に記載の電気機器のレール取付け構造。
【請求項4】
前記スライダに、前記電気機器を前記レールに取付けた際の、前記電気機器の前記レールの長手方向における位置ずれを防止する位置ずれ防止部を設けたことを特徴とする請求項2又は3に記載の電気機器のレール取付け構造。
【請求項5】
前記ばね部材は、前記スライダ収容凹部の底面に形成されたばね部材収容凹部に配置された圧縮ばねであり、
前記スライダは、前記スライダ収容凹部の底面であって前記ばね部材収容凹部の前縁から立設された壁部及び前記ばね部材収容凹部に配置された圧縮ばねを収納する収納凹部を備え、
前記ばね部材を構成する圧縮ばねは、前記壁部に対して前端が当接し、前記スライダの収納凹部の後壁部に対して後端が当接するように前記ばね部材収容凹部に配置されることを特徴とする請求項1に記載の電気機器のレール取付け構造。
【請求項6】
前記ばね部材を構成する圧縮ばねが左右方向に並列に複数配置されていることを特徴とする請求項5に記載の電気機器のレール取付け構造。
【請求項7】
前記ばね部材を構成する圧縮ばねの自由長がコイル平均径の4倍以下であることを特徴とする請求項5又は6に記載の電気機器のレール取付け構造。
【請求項8】
前記スライダに、前記電気機器を前記レールに取付けた際の、前記電気機器の前記レールの長手方向における位置ずれを防止する位置ずれ防止部を設けたことを特徴とする請求項5に記載の電気機器のレール取付け構造。
【請求項9】
電気機器を、レールに跨って取り付ける電気機器のレール取付け構造であって、
前記レールの長手方向と同一の左右方向及び前記レールの幅方向と同一の前後方向に延びる前記電気機器の筐体の底面の前方側に設けられ、前記電気機器を前記レールに取付けた際に前記レールの幅方向の一方の第1レール部に係合する第1係合部と、
前記筐体の底面の後方側であって前記第1係合部と対峙するように設けられ、前記電気機器を前記レールに取付けた際に前記レールの幅方向の他方の第2レール部に係合する第2係合部と、
前記筐体の底面の前記第1係合部に対し前側に設けられた板ばね支持部と、
前記レールの長手方向と同一の長手方向に延びる長手方向延出部と、該長手方向延出部の長手方向両端部から前記レールの幅方向に互いの間隔が広がるように斜めに延びる一対の傾斜部と、該一対の傾斜部の各々の先端に設けられた一対の押圧部とを備え、前記板ばね支持部に前記一対の傾斜部が変位可能なように支持された板ばねとを備え、
前記第1係合部は、前記第1レール部が嵌まり込む隙間を設けながら前記筐体の底面から延びるフック形状に形成され、
前記板ばねは、前記一対の押圧部の各々が前記第1係合部が形成する前記隙間の前後方向の途中から前方側の所定範囲で前後方向に移動可能となっており、
前記電気機器を前記レールに取り付けた際に前記第1レール部は前記第1係合部が形成する前記隙間に受け入れられるとともに、前記電気機器を
前記第1レール部側から前記第2レール部側に押圧した際に前記第1レール部は前記第1係合部の前記筐体の底面に対する付け根部分に当接するまで移動可能となっており、
前記第2係合部は、前記第2レール部が嵌まり込む隙間を設けながら前記筐体の底面から延びるフック形状に形成され、
前記電気機器を前記レールに取り付けた際に前記第2レール部は前記第2係合部が形成する前記隙間に受け入れられるとともに、前記第2係合部が形成する前記隙間の深さは、前記電気機器を前記第1レール部側から前記第2レール部側に押圧した際に前記第1レール部が前記第1係合部の前記筐体の底面に対する付け根部分に当接するまでの移動途中で、前記第2係合部の前記第2レール部に対する係合状態が解かれる大きさに設定され、
前記板ばねの前記一対の押圧部が、前記電気機器を前記レールに取付けた際に前記レールの前記第1レール部に当接して前記板ばねの付勢力を前記レールの前記第1レール部に作用させ、前記第2係合部が前記レールの前記第2レール部を押圧した状態にするものであることを特徴とする電気機器のレール取付け構造。
【請求項10】
前記板ばね支持部は、前記筐体の底面に形成され、前記板ばねを収容して前記板ばねの上方向及び後方向への移動と上方向への回転移動を規制する板ばね収容凹部と、該板ばね収容凹部の底面の前端に形成され、前記板ばねの前方向への移動を規制する前方向移動規制部と、該前方向移動規制部に連接されるとともに左右方向に延びる前壁部と、該前壁部から前記板ばね収容凹部側に張り出すように延び、前記板ばねの下方向への移動及び下方向への回転移動を規制する下方向移動規制部とを備えていることを特徴とする請求項9に記載の電気機器のレール取付け構造。
【請求項11】
前記板ばねの前記長手方向延出部には切欠きが形成され、前記板ばね収容凹部の底面には、前記切欠きに入り込んで前記板ばねの左右方向の移動を規制する左右方向移動規制部が設けられていることを特徴とする請求項10に記載の電気機器のレール取付け構造。
【請求項12】
前記板ばねの前記長手方向延出部は、複数の湾曲部を連続して接続してなることを特徴とする請求項10又は11に記載の電気機器のレール取付け構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線用回路遮断器、電磁接触器などの電気機器を、配電盤などの盤内に敷設したレールに取付けるための電気機器のレール取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電磁接触器のレール取付け構造として、例えば、特許文献1に示す電磁接触器が知られている。
特許文献1に示す電磁接触器は、電磁接触器フレームの裏面に形成された引掛け部とスライダを、ケースに設けられたレールに跨って取付けて固定するものである。
【0003】
特許文献1に示す電磁接触器において、電磁接触器をレールに取付けるに際しては、先ず、電磁接触器のフレームを傾け、当該フレームの裏面に形成された引掛け部をレールの一方側のレール部に係合させる。次いで、電磁接触器のフレームの引掛け部と反対側を押し下げてスライダの引掛け孔の縁をケースに設けられた支柱の先端斜面に当接させる。そして、更に電磁接触器を押し下げてスライダを引掛け部と反対側に摺動させ、支柱の先端をスライダの引掛け孔を貫通させて、支柱の鉤状部を引掛け孔の上面に突出させる。すると、スライダがばねの作用により引掛け部側に摺動し、スライダの先端凹部が他方側のレール部に係合すると同時に支柱の鉤状部がスライダの引掛け孔に係合する。これにより、電磁接触器はレールに取付けられる。
【0004】
一方、レールに取付けられた電磁接触器を取外すには、先ず、指先で支柱の鉤状部を押して支柱を傾け、鉤状部とスライダの引掛け孔との間にドライバ工具等の工具を差し込み、これを操作して鉤状部と引掛け孔との係合を外す。これにより、スライダを引掛け部と反対側に引き戻すことができ、電磁接触器をレールから取り外すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この従来の特許文献1に示す電磁接触器にあっては、以下の問題点があった。
即ち、特許文献1に示す電磁接触器において、電磁接触器をレールから取り外すに際しては、支柱の鉤状部とスライダの引掛け孔との係合を外すためのドライバ工具等の工具が必要となるという不都合があった。
従って、本発明はこの従来の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、レールから電気機器を取外す際に工具不要とすることができる、電気機器のレール取付け構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために、本発明の一態様に係る電気機器のレール取付け構造は、 電気機器を、レールに跨って取り付ける電気機器のレール取付け構造であって、前記レールの長手方向と同一の左右方向及び前記レールの幅方向と同一の前後方向に延びる前記電気機器の筐体の底面の前方側に設けられ、前記電気機器を前記レールに取付けた際に前記レールの幅方向の一方の第1レール部2aに係合する第1係合部と、前記筐体の底面の後方側であって前記第1係合部と対峙するように設けられ、前記電気機器を前記レールに取付けた際に前記レールの幅方向の他方の第2レール部2bに係合する第2係合部と、前記筐体の底面の前記第1係合部に対し前側に配置されたばね部材と、前記筐体の底面に形成されたスライダ収容凹部の底面上を前後方向に摺動可能に配置されて前記ばね部材の付勢力により後方向に付勢されるスライダとを備え、該スライダは、前記電気機器を前記レールに取付けた際に前記レールの前記第1レール部に当接して前記ばね部材の付勢力を前記レールの前記第1レール部に作用させ、前記第2係合部が前記レールの前記第2レール部を押圧した状態にすることを要旨とする。
【0008】
また、本発明の別の態様に係る電気機器のレール取付け構造は、電気機器を、レールに跨って取り付ける電気機器のレール取付け構造であって、前記レールの長手方向と同一の左右方向及び前記レールの幅方向と同一の前後方向に延びる前記電気機器の筐体の底面の前方側に設けられ、前記電気機器を前記レールに取付けた際に前記レールの幅方向の一方の第1レール部に係合する第1係合部と、前記筐体の底面の後方側であって前記第1係合部と対峙するように設けられ、前記電気機器を前記レールに取付けた際に前記レールの幅方向の他方の第2レール部に係合する第2係合部と、前記筐体の底面の前記第1係合部に対し前側に設けられた板ばね支持部と、前記レールの長手方向と同一の長手方向に延びる長手方向延出部と、該長手方向延出部の長手方向両端部から前記レールの幅方向に互いの間隔が広がるように斜めに延びる一対の傾斜部と、該一対の傾斜部の各々の先端に設けられた一対の押圧部とを備え、前記板ばね支持部に前記一対の傾斜部が変位可能なように支持された板ばねとを備え、該板ばねの前記一対の押圧部が、前記電気機器を前記レールに取付けた際に前記レールの前記第1レール部に当接して前記板ばねの付勢力を前記レールの前記第1レール部に作用させ、前記第2係合部が前記レールの前記第2レール部を押圧した状態にするものであることを要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る電気機器のレール取付け構造によれば、レールから電気機器を取外す際に工具不要とすることができる、電気機器のレール取付け構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る電気機器としての電磁接触器のレール取付け構造を示す斜視図である。
【
図2】
図1における電磁接触器を底面側から見た斜視図である。
【
図3】
図2に示す電磁接触器において、ばね部材を構成する板ばね及びスライダを分解して示す斜視図である。
【
図4】ばね部材を構成する板ばね及びスライダを電磁接触器の筐体の底面に組み付ける方法を説明するための断面図で、板ばね及びスライダを電磁接触器の筐体の底面に組み付ける前の状態を示している。
【
図5】ばね部材を構成する板ばね及びスライダを電磁接触器の筐体の底面に組み付ける方法を説明するための断面図で、板ばね及びスライダを電磁接触器の筐体の底面に組み付けた後の状態を示している。
【
図7】レールに電磁接触器を取付ける動作の初期を示す模式図である。
【
図8】レールに電磁接触器を取付ける動作の中期を示す模式図である。
【
図9】レールへの電磁接触器の取付けが完了した状態を示す模式図である。
【
図10】レールへの電磁接触器の取付けが完了した状態を底面側から見た図である。
【
図13】レールから電磁接触器を取外す動作の初期を示す模式図である。
【
図14】レールから電磁接触器を取外す動作の中期を示す模式図である。
【
図15】第1参考例に係る電磁接触器のレール取付け構造を示す斜視図である。
【
図16】
図15に示す第1参考例に係る電磁接触器のレール取付け構造において、レールへの電磁接触器の取付けが完了した状態の部分断面図である。
【
図17】本発明の第2実施形態に係る電気機器としての電磁接触器のレール取付け構造を示す斜視図である。
【
図18】
図17における電磁接触器を底面側から見た斜視図である。
【
図20】板ばねを電磁接触器の筐体の底面に組み付ける方法を説明するための断面図で、板ばねを電磁接触器の筐体の底面に組み付ける初期の状態を示している。
【
図21】板ばねを電磁接触器の筐体の底面に組み付ける方法を説明するための
図19における21-21線に沿う断面図で、板ばねの、電磁接触器の筐体の底面への組み付けが完了した状態を示している。
【
図22】板ばねを電磁接触器の筐体の底面に組み付ける方法を説明するための
図19における22-22線に沿う断面図で、板ばねの、電磁接触器の筐体の底面への組み付けが完了した状態を示している。
【
図23】板ばねを示し、(a)は斜視図、(b)は平面図である。
【
図24】板ばねの変形例を示し、(a)は斜視図、(b)は平面図である。
【
図25】本発明の第3実施形態に係る電気機器としての電磁接触器のレール取付け構造を示す斜視図である。
【
図26】
図25における電磁接触器を底面側から見た斜視図である。
【
図27】
図26に示す電磁接触器において、ばね部材を構成する圧縮ばね及びスライダを取り除いた状態の斜視図である。
【
図28】スライダを示し、(a)はスライダを後方側斜め下方から見た斜視図、(b)スライダの底面図、(c)はスライダの平面図である。
【
図29】ばね部材を構成する圧縮ばねの側面図である。
【
図30】レールへの電磁接触器の取付けが完了した状態を底面側から見た図である。
【
図33】第2参考例に係る電気機器としての電磁接触器のレール取付け構造を底面側から見た図である。
【
図35】
図33に示される第2参考例に係る電磁接触器のレール取付け構造に用いられる圧縮ばねの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下に示す複数の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
また、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものと異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0012】
(第1実施形態)
図1には、本発明の第1実施形態に係る電気機器としての電磁接触器のレール取付け構造が示されている。
図1において、レール取付け構造は、電気機器としての電磁接触器1を、レール2に跨って取り付けるものである。
【0013】
以降、第1実施形態において、電磁接触器1を説明する際に用いられる「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」の方向を示す用語は、
図1、
図2、
図3、及び
図10における矢印で記載した方向に基づいて定められる。また、第1参考例において、電磁接触器101を説明する際に用いられる「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」の方向を示す用語は、
図15における矢印で記載した方向に基づいて定められる。更に、第2実施形態において、電磁接触器1を説明する際に用いられる「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」の方向を示す用語は、
図17乃至
図22における矢印で記載した方向に基づいて定められる。また、第3実施形態において、電磁接触器1を説明する際に用いられる「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」の方向を示す用語は、
図25乃至
図27及び
図30乃至
図32における矢印で記載した方向に基づいて定められる。更に、第2参考例において、電磁接触器201を説明する際に用いられる「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」の方向を示す用語は、
図33及び
図34における矢印で記載した方向に基づいて定められる。
【0014】
第1実施形態において、レール2は、
図1及び
図10に示すように、長手方向に細長く延び、幅方向において電磁接触器1が係合する第1レール部2a及び第2レール部2bを互いに対向するように備えている。レール2は、
図7乃至
図9に示すように、配電盤などの盤8に第1レール部2aを上側に、第2レール部2bを下側にして取り付けられている。
第1実施形態における電磁接触器1は、
図1に示すように、絶縁性を有する合成樹脂で形成された筐体としての下ケース3及び上ケース4を備えている。上ケース4には、接点を有する端子部5a~5dが配置されている。上ケース4には、消弧カバー6と、端子部5a~5dを覆う端子カバー7とが装着されている。
【0015】
電磁接触器1の下ケース3は、
図2及び
図10に示すように、レール2の長手方向と同一の左右方向及びレール2の幅方向と同一の前後方向に延びる略長方形状の底面3aを有する。そして、下ケース3の底面3aには、
図2及び
図10に示すように、第1係合部11a,11b及び第2係合部12a,12bが設けられている。
第1係合部11a,11bは、下ケース3の底面3aの前方側に設けられ、
図10に示すように、電磁接触器1をレール2に取付けた際にレール2の幅方向の一方の第1レール部2aに係合する。第1係合部11a,11bは、下ケース3の底面3aにおいて左右方向に所定間隔離れて配置されている。第1係合部11a,11bのそれぞれは、
図11及び
図12に示すように、第1レール部2aが嵌り込む隙間を設けながら底面3aの下方に向けてフック形状に形成されている。
【0016】
また、第2係合部12a,12bは、下ケース3の底面3aの後方側であって第1係合部11a,11bと対峙するように設けられ、
図10に示すように、電磁接触器1をレール2に取付けた際にレール2の幅方向の他方の第2レール部2bに係合する。第2係合部12a,12bは、下ケース3の底面3aにおいて左右方向に所定間隔離れて配置されている。第2係合部12a,12bのそれぞれは、第2レール部2bが嵌り込む隙間を設けながら底面3aの下方に向けてフック形状に形成されている。
また、下ケース3の底面3aには、
図2乃至
図5に示すように、ばね部材としての板ばね20及びスライダ30が設けられている。
【0017】
板ばね20は、下ケース3の底面3aの第1係合部11a,11bに対し前側に配置され、レール2の長手方向と同一の長手方向に延びる長方形状に形成されている。板ばね20は、ばね性を有する金属板材を打ち抜き加工することによって形成される。板ばね20は、下ケース3の底面3aの第1係合部11a,11bに対し前側であって第1係合部11a,11bよりも内側に設けられた一対の板ばね支持部13に長手方向両端部が支持される。各板ばね支持部13は、下ケース3の底面3aから下方に延びるように形成された前側支持壁13a及び後側支持壁13bを備えている。前側支持壁13a及び後側支持壁13bはそれぞれ前後方向に延びる平板状に形成され、前側支持壁13aと後側支持壁13bとの間には、板ばね20の長手方向端部が前後方向にクリアランスを持った状態で支持される間隙13cが形成されている。
【0018】
また、スライダ30は、
図3乃至
図5及び
図10に示すように、板ばね20の長手方向中央部に、下ケース3の底面3aに形成されたスライダ収容凹部14の底面上を前後方向に摺動可能に配置されて板ばね20の付勢力により後方向に付勢される。そして、スライダ30は、
図10乃至
図12に示すように、電磁接触器1をレール2に取付けた際にレール2の第1レール部2aに当接して板ばね20の付勢力をレール2の第1レール部2aに作用させ、第2係合部12a,12bがレール2の第2レール部2bを押圧した状態にする。
【0019】
このスライダ30は、
図3乃至
図6に示すように、後端面31aを有する略直方体形状のスライダ本体31と、スライダ本体31の底面から形成された板ばね挿入用凹部32と、スライダ本体31に設けられた片持ち梁状の弾性係止片33とを備え、絶縁性の合成樹脂を成形することによって一体に形成されている。スライダ本体31の後端面31aは、電磁接触器1をレール2に取付けた際にレール2の第1レール部2aに当接して板ばね20の付勢力をレール2の第1レール部2aに作用させる。また、板ばね挿入用凹部32には、板ばね20の長手方向略中央部が前後方向にクリアランスを持った状態で挿入されて、スライダ30が板ばね20の長手方向両端部の間に取付けられる。
スライダ収容凹部14の底面には、スライダ30に設けられた弾性係止片33が係止されてスライダ30の後方向への移動を規制するストッパ15が突出形成されている。
【0020】
また、下ケース3の底面3aには、
図2、
図3及び
図10に示すように、スライダ30の前後方向の移動を案内する一対のスライダ前側案内部16a及び一対のスライダ後側案内部16bが設けられている。スライダ前側案内部16aとスライダ後側案内部16bとは前後に所定間隔を空けて配置され、スライダ前側案内部16aとスライダ後側案内部16bとの間に板ばね20が挿通可能となっている。
【0021】
また、スライダ30の後端面31aの左右両端部には、
図4、
図6及び
図12に示すように、電磁接触器1をレール2に取付けた際の、電磁接触器1のレール2の長手方向における位置ずれを防止する一対の位置ずれ防止部34が設けられている。各位置ずれ防止部34は、スライダ30の後端面31aから突出形成され、各位置ずれ防止部34の板厚t1は、スライダ収容凹部14の深さよりも若干大きく形成されて下ケース3の底面3aよりも若干突出するようになっている。このため、電磁接触器1をレール2に取付けた際には、
図12に示すように、レール2の第1レール部2aが第1係合部11a,11bとスライダ30の位置ずれ防止部34との間に入り込み、これにより、電磁接触器1のレール2の長手方向における位置ずれが防止される。
【0022】
レール2の第1レール部2aの厚みが変更された際には、厚みt1の異なる位置ずれ防止部34を有するスライダ30に変更することで、レール2の第1レール部2aの厚みの変更に対応することができる。位置ずれ防止部34をスライダ30に設けずに下ケース3の底面3a側に向けたとすると、レール2の第1レール部2aの厚みが変更された際に、下ケース3自体を変更しなければならず、その対応が困難となる。
【0023】
次に、下ケース3の底面3aに板ばね20及びスライダ30を組み付ける方法について、
図3乃至
図5を参照して説明する。
下ケース3の底面3aに板ばね20及びスライダ30を組み付ける際に、先ず、
図3及び
図4に示すように、電磁接触器1の下ケース3の底面3a側が上側となるようにしておく。
そして、板ばね20の長手方向両端部を、一対の板ばね支持部13の前側支持壁13aと後側支持壁13bとの間に形成された間隙13cに上方から落とし込む。これにより、板ばね20の長手方向両端部が一対の板ばね支持部13に前後方向にクリアランスを持った状態で支持される。
【0024】
次いで、スライダ30の板ばね挿入用凹部32に一対の板ばね支持部13に支持された板ばね20の長手方向中央部が前後方向にクリアランスを持った状態で挿入されるように、スライダ30の板ばね挿入用凹部32を上方から板ばねの長手方向中央部に落とし込み、スライダ30を板ばね20の長手方向両端部の間に取付ける。その際に、スライダ30が一対のスライダ前側案内部16aの間及び一対のスライダ後側案内部16bの間に配置されるようにする。
最後に、
図5に示すように、スライダ30の後端面31aを、板ばね20の付勢力に抗して前方向に押圧し、スライダ30に設けられた弾性係止片33がスライダ収容凹部14の底面に形成されたストッパ15を乗り越えてストッパ15に係止させる。これにより、スライダ30の後方向への移動が規制されて下ケース3の底面3aに取付けられることになる。
【0025】
このように、第1実施形態に係る電磁接触器のレール取付け構造によれば、板ばね20の長手方向両端部を一対の板ばね支持部13に支持する工程と、スライダ30を板ばね20の長手方向両端部の間に取付ける工程と、スライダ30の弾性係止片33をストッパ15に係止させる工程とによって組み立てを行うことができるので、レール取付け構造の組み立てを容易に行うことができる。
【0026】
次に、電磁接触器1をレール2に跨って取り付ける方法について
図7乃至
図9を参照して説明する。
先ず、
図7に示すように、電磁接触器1の第1係合部11a,11bをレール2の第1レール部2aに引っ掛け、電磁接触器1に下方に荷重を加えることで、第1レール部2aに当接したスライダ30を介して長手方向両端部を支持された板ばね20を上方に弾性変形させる。この際に、スライダ30は、板ばね20の長手方向中央部に取付けられているから、板ばね20を長手方向でバランスよく弾性変形することができる。そして、電磁接触器1の第2係合部12a,12bを、レール2の第2レール部2bの下面に押し付ける。
【0027】
次いで、電磁接触器1に対して下方へ荷重を加えるのを解除する。これにより、
図8に示すように、板ばね20の付勢力がスライダ30を介して第1レール部2aに作用し、電磁接触器1が相対的に上方へ移動する。この際に、スライダ30は、一対のスライダ前側案内部16a及び一対のスライダ後側案内部16bによってスライダ30の移動が案内されるので、電磁接触器1はスムーズに相対的に上方へ移動する。
そして、
図9に示すように、電磁接触器1の第2係合部12a,12bがレール2の第2レール部2bを押圧した状態にし、電磁接触器1がレール2に跨って取り付けられる。
【0028】
ここで、電磁接触器1をレール2に取付けた際には、
図12に示すように、レール2の第1レール部2aが第1係合部11a,11bとスライダ30の位置ずれ防止部34との間に入り込み、これにより、電磁接触器1のレール2の長手方向における位置ずれが防止される。また、レール2の第2レール部2bは、第2係合部12a,12bと下ケース3の底面3aとの間に入り込む。
一方、レール2から電磁接触器1を取外す際には、先ず、
図13に示すように、電磁接触器1を下方側(第2レール部2b側)に押圧して第1レール部2aに当接したスライダ30を介して板ばね20を弾性変形させ、第2係合部12a,12bの第2レール部2bに対する係合状態を解除する。
【0029】
次いで、
図14に示すように、電磁接触器1の第2係合部12a,12bを
図14の矢印で示す方向に押し上げて第2係合部12a,12bを第2レール部2bから外す。
更に、図示はしないが、第1係合部11a,11bの第1レール部2aに対する係合状態を解除し、第1係合部11a,11bを第1レール部2aから外す。これにより、電磁接触器1がレール2から取り外される。
このように、第1実施形態に係る電磁接触器のレール取付け構造によれば、電磁接触器1を第2レール部2b側に押圧して第1レール部2aに当接したスライダ30を介してばね部材としての板ばね20を弾性変形させ、第2係合部12a,12の第2レール部2bに対する係合状態を解除する工程と、第1係合部11a,11bの第1レール部2aに対する係合状態を解除する工程とによってレール2から電磁接触器1を取外すことができるので、レール2から電磁接触器1を工具を用いることなく取外すことができる。
【0030】
これに対して、第1参考例に係る電磁接触器のレール取付け構造を
図15及び
図16を参照して説明する。
図15及び
図16において、
図1乃至15に示す部材と同一の符号を付し、その説明は省略することがある。
図15に示す第1参考例に係る電磁接触器のレール取付け構造は、基本構造は
図1に示す第1実施形態に係る電磁接触器のレール取付け構造と同様であるが、第1実施形態に係る電磁接触器のレール取付け構造においては板ばね20及びスライダ30を用いているのに対し、参考例に係る電磁接触器のレール取付け構造ではコイルばね113を用いている点で相違している。
【0031】
即ち、
図15に示す電磁接触器101の下ケース3の底面3aには、第1係合部111及び第2係合部(図示せず))が設けられている。
第1係合部111は、下ケース3の底面3aの前方側に設けられ、電磁接触器101をレール2に取付けた際にレール2の幅方向の一方の第1レール部2aに係合する。また、第2係合部は、下ケース3の底面3aの後方側であって第1係合部111と対峙するように設けられ電磁接触器101をレール2に取付けた際にレール2の幅方向の他方の第2レール部2bに係合する。
【0032】
また、下ケース3の底面3aには、コイルばね113が設けられている。
コイルばね113は、円筒状に巻回されたばね性を有する金属製の部材である。コイルばね113は、下ケース3の底面3aの第1係合部111に対し前側に設けられたコイルばね支持部112に支持される。
コイルばね支持部112は、下ケース3から延びる前壁112aと、前壁112aの右端から後方に延びる右側壁112bと、前壁112aの左端から後方に延びる左側壁112c、右側壁112bと左側壁112cとを連結する前述の第1係合部111とを備えている。そして、コイルばね支持部112の前壁112a、右側壁112b、左側壁112c、及び第1係合部111で囲まれる空間には、下ケース3の底面3aから延びる一対のコイルばね支持筒部112dが設けられている。各コイルばね支持筒部112dは、下ケース3の底面3aからほぼ1/4筒形状に形成されている。
【0033】
コイルばね113は、コイルばね支持部112の一対のコイルばね支持筒部112dで囲まれる空間に収容され、電磁接触器101をレール2に取付けた際にレール2の第1レール部2aにその端面113aが当接してその付勢力をレール2の第1レール部2aに作用させ、第2係合部がレール2の第2レール部2bを押圧した状態にする。
この第1参考例に係る電磁接触器のレール取付け構造によれば、レール2から電磁接触器101を工具を用いることなく取外すことができる。
しかしながら、コイルばね113をコイルばね支持部112の一対のコイルばね支持筒部112dで囲まれる空間に収容するのは、コイルばね113の一対のコイルばね支持筒部112dで囲まれる空間への収容時に相当な外力あるいは複雑な軌道の組み込みが必要となり、その組立が困難である。
【0034】
また、各コイルばね支持筒部112dの1/4筒形状を製造する際に、金型の構造が複雑となり、また、各コイルばね支持筒部112dの形状も不安定となる可能性がある。
また、第1参考例に係る電磁接触器のレール取付け構造においては、コイルばね113の端面113aがレール2の第1レール部2aに直接当接するので、第1レール部2aとの接触安定性確保のため、コイルばね113の端面113aを研磨する必要がある。これにより、コイルばねが高価になるという問題点がある。
これに対して、第1実施形態に係る電磁接触器のレール取付け構造によれば、板ばね20の長手方向両端部を一対の板ばね支持部13に支持する工程と、スライダ30を板ばね20の長手方向両端部の間に取付ける工程と、スライダ30の弾性係止片33をストッパ15に係止させる工程とによって組み立てを行うことができるので、レール取付け構造の組み立てを容易に行うことができる。
【0035】
また、第1実施形態に係る電磁接触器のレール取付け構造においては、板ばねを支持するために筒状の部材を形成する必要がないので、金型の構造も単純となり、また、板ばねを支持する部材の形状安定性も良好なものとすることができる。
更に、第1実施形態に係る電磁接触器のレール取付け構造においては、板ばね20がレール2の第1レール部2aに直接当接することはなくスライダ30が第1レール部2aに当接するので、板ばね20を研磨する必要はなく、部品単価を抑制することができる。
【0036】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る電気機器としての電磁接触器のレール取付け構造について、
図17乃至
図24を参照して説明する。
第2実施形態に係る電磁接触器のレール取付け構造において、レール2は、
図17に示すように、長手方向に細長く延び、幅方向において電磁接触器1が係合する第1レール部2a及び第2レール部2bを互いに対向するように備えている。レール2は、
図7乃至
図9に示したものと同様に、配電盤などの盤8に第1レール部2aを上側に、第2レール部2bを下側にして取り付けられている。
【0037】
第2実施形態における電磁接触器1は、
図17に示すように、絶縁性を有する合成樹脂で形成された筐体としての下ケース3及び上ケース4を備えている。上ケース4には、接点を有する端子部(図示せず)が配置されている。上ケース4には、消弧カバー(図示せず)と、端子部を覆う端子カバー7とが装着されている。
電磁接触器1の下ケース3は、
図18及び
図19に示すように、レール2の長手方向と同一の左右方向及びレール2の幅方向と同一の前後方向に延びる略長方形状の底面3aを有する。そして、下ケース3の底面3aには、第1係合部11a,11b及び第2係合部12a,12bが設けられている。
【0038】
第1係合部11a,11bは、下ケース3の底面3aの前方側に設けられ、
図17に示すように、電磁接触器1をレール2に取付けた際にレール2の幅方向の一方の第1レール部2aに係合する。第1係合部11a,11bは、下ケース3の底面3aにおいて左右方向に所定間隔離れて配置されている。第1係合部11a,11bのそれぞれは、
図18及び
図22に示すように、第1レール部2aが嵌り込む隙間を設けながら底面3aの下方に向けてフック形状に形成されている。
【0039】
また、第2係合部12a,12bは、下ケース3の底面3aの後方側であって第1係合部11a,11bと対峙するように設けられ、電磁接触器1をレール2に取付けた際にレール2の幅方向の他方の第2レール部2bに係合する。第2係合部12a,12bは、下ケース3の底面3aにおいて左右方向に所定間隔離れて配置されている。第2係合部12a,12bのそれぞれは、第2レール部2bが嵌り込む隙間を設けながら底面3aの下方に向けてフック形状に形成されている。
【0040】
また、下ケース3の底面3aには、板ばね支持部40と、板ばね50とが設けられている。
板ばね支持部40は、下ケース3の底面3aの第1係合部11a,11bに対し前側であって第1係合部11a,11bよりも内側に設けられている。板ばね支持部40は、下ケース3の底面3aに形成され、板ばね50を収容して板ばね50の上方向及び後方向への移動と上方向への回転移動を規制する板ばね収容凹部41と、板ばね収容凹部41の底面の前端に形成され、板ばね50の前方向への移動を規制する前方向移動規制部42と、前方向移動規制部42に連接されるとともに左右方向に延びる前壁部45と、この前壁部45から板ばね収容凹部41側に張り出すように延び、板ばね50の下方向への移動及び下方向への回転移動を規制する下方向移動規制部43とを備えている。
【0041】
板ばね50は、
図17乃至
図23に示すように、レール2の長手方向(左右方向)と同一の長手方向に延びる長手方向延出部51と、長手方向延出部51の長手方向両端部からレール2の幅方向(後方向)に互いの間隔が広がるように斜めに延びる一対の傾斜部52a,52bと、一対の傾斜部52a,52bの各々の先端に設けられた一対の押圧部53a,53bとを備えている。板ばね50は、ばね性を有する金属製板材を打ち抜き及び曲げ加工することによって形成される。
そして、板ばね50は、板ばね支持部40に一対の傾斜部52a,52bが変位可能なように支持されている。
【0042】
板ばね50の板ばね支持部40による支持について具体的に説明すると、板ばね50は、
図18乃至
図22に示すように、長手方向延出部51が前側、一対の押圧部53a,53bが後側となるように、板ばね収容凹部41に収容される。板ばね50を板ばね収容凹部41に収容すると、板ばね50の長手方向延出部51が板ばね収容凹部41の底面と下方向移動規制部43との間に入り込む。これにより、板ばね50の上方向への移動および上方向への回転移動は板ばね50全体が板ばね収容凹部41の底面に当接することによって規制され、板ばね50の後方向への移動は、一対の押圧部53a,53bが板ばね収容凹部41の後端面に当接することによって規制される。また、板ばね50の前方向への移動は、板ばね50の長手方向延出部51が前方向移動規制部42に当接することよって規制される。また、板ばね50の下方向への移動及び下方向への回転移動は、板ばね50の長手方向延出部51及び一対の傾斜部52a,52bが下方向移動規制部43に当接することよって規制される。板ばね50の一対の傾斜部52a,52bは板ばね収容凹部41内で前後方向に変位可能となっている。
【0043】
そして、板ばね50の長手方向延出部51は、
図23(a),(b)に示すように、複数(本実施形態では3つ)の湾曲部51a,51b,51cを連続して接続してなる。湾曲部51aは、後方に突出するように形成されて長手方向延出部51の中央に設けられる。湾曲部51bは、前方に突出するように形成されて湾曲部51aに対し左側に設けられる。湾曲部51bc、前方に突出するように形成されて湾曲部51aに対し右側に設けられる。
このように、板ばね50の長手方向延出部51を、複数(本実施形態では3つ)の湾曲部51a,51b,51cを連続して接続することで、板ばね50のばね長が長くなり、板ばね50に過度の力が作用した際に板ばね50の塑性変形を防止することができる。
【0044】
また、板ばね50の長手方向延出部51の湾曲部51aの上下縁には、それぞれ切欠き54が形成されている。一方、下ケース3の底面3aに形成された板ばね収容凹部41の底面には、
図22に示すように、板ばね50の切欠き54に入り込んで板ばね50の左右方向の移動を規制する左右方向移動規制部44が突出形成されている。これにより、板ばね50を板ばね収容凹部41に収容した際に、板ばね50の左右方向(レール2の長手方向)の移動を規制することができる。
そして、板ばね支持部40によって支持された板ばね50の一対の押圧部53a,53bは、
図17に示すように、電磁接触器1をレール2に取付けた際にレール2の第1レール部2aに当接して板ばね50の付勢力をレール2の第1レール部2aに作用させ、第2係合部12a,12bがレール2の第2レール部2bを押圧した状態にするようになっている。
【0045】
なお、板ばね50において、長手方向延出部51は、
図24(a),(b)に示すように、長手方向に沿って直線状に形成されていてもよい。板ばね50への荷重及び発生応力が小さく、塑性変形のおそれが少ない場合には、この長手方向延出部51を長手方向に沿って直線状に形成した板ばね50を用いることで、板ばね50の製造を簡略化することができるとともに、板ばね50の品質の安定化を図ることができる。この場合、切欠き54は、長手方向延出部51の長手方向中央部の上下縁に形成される。
【0046】
次に、下ケース3の底面3aに板ばね50を組み付ける方法について、
図20及び
図21を参照して説明する。
下ケース3の底面3aに板ばね50を組み付ける際に、先ず、
図20に示すように、電磁接触器1の下ケース3の底面3a側が上側となるようにしておく。
そして、
図20に示すように、板ばね50の長手方向延出部51側を先頭にして板ばね収容凹部41の斜め上方側から長手方向延出部51を下方向移動規制部43と板ばね収容凹部41の底面との間に挿入する。
【0047】
これにより、
図21に示すように、板ばね50の長手方向延出部51が板ばね収容凹部41の底面と下方向移動規制部43との間に入り込んだ状態で、板ばね50が板ばね収容凹部41に収容され、板ばね50が板ばね支持部40に支持され、下ケース3の底面3aに板ばね50が組み付けられる。
このように、第2実施形態に係る電磁接触器のレール取付け構造によれば、板ばね50を板ばね収容凹部41に収容して板ばね50を板ばね支持部40に支持する工程によって組み立てを行うことができるので、レール取付け構造の組み立てを容易に行うことができる。
【0048】
また、第2実施形態に係る電磁接触器のレール取付け構造においては、板ばね50を支持するために筒状の部材を形成する必要がないので、金型の構造も単純となり、また、板ばね20を支持する部材の形状安定性も良好なものとすることができる。
更に、第2実施形態に係る電磁接触器のレール取付け構造においては、板ばね50の一対の押圧部53a,53bがレール2の第1レール部2aに直接当接するが、押圧部53a,53bの板面がレール2の第1レール部2aに当接するので、第1レール部2aに当接する板ばね50の部分を研磨する必要はなく、部品単価を抑制することができる。
【0049】
次に、電磁接触器1をレール2に跨って取り付ける方法について説明する。
先ず、第2実施形態における電磁接触器1をレール2に跨って取り付けるには、第1実施形態の電磁接触器1と同様に、
図7に示すように、電磁接触器1の第1係合部11a,11bをレール2の第1レール部2aに引っ掛け、電磁接触器1に下方に荷重を加えることで、第1レール部2aに当接した板ばね50の一対の傾斜部52a,52bを上方に弾性変形させる。この際に、板ばね50の一対の傾斜部52a,52bは、先端にある一対の押圧部53a,53bが押圧されて板ばね50の長手方向中央にある長手方向延出部51を支点として上方に弾性変形するので、長手方向でバランスよく弾性変形することができる。そして、電磁接触器1の第2係合部12a,12bを、レール2の第2レール部2bの下面に押し付ける。
【0050】
次いで、電磁接触器1に対して下方へ荷重を加えるのを解除する。これにより、
図8に示すように、板ばね50の付勢力が第1レール部2aに作用し、電磁接触器1が相対的に上方へ移動する。
そして、
図9に示すように、電磁接触器1の第2係合部12a,12bがレール2の第2レール部2bを押圧した状態にし、電磁接触器1がレール2に跨って取り付けられる。
ここで、電磁接触器1をレール2に取付けた際には、
図17に示すように、レール2の第1レール部2aが第1係合部11a,11bと下ケース3の底面3aとの間に入り込む。また、レール2の第2レール部2bは、第2係合部12a,12bと下ケース3の底面3aとの間に入り込む。
【0051】
一方、レール2から電磁接触器1を取外す際には、先ず、第1実施形態の電磁接触器1と同様に、
図13に示すように、電磁接触器1を下方側(第2レール部2b側)に押圧して第1レール部2aに当接した板ばね50の一対の傾斜部52a,52bを上方に弾性変形させ、第2係合部12a,12bの第2レール部2bに対する係合状態を解除する。
次いで、
図14に示すように、電磁接触器1の第2係合部12a,12bを
図14の矢印で示す方向に押し上げて第2係合部12a,12bを第2レール部2bから外す。
更に、図示はしないが、第1係合部11a,11bの第1レール部2aに対する係合状態を解除し、第1係合部11a,11bを第1レール部2aから外す。これにより、電磁接触器1がレール2から取り外される。
【0052】
このように、第2実施形態に係る電磁接触器のレール取付け構造によれば、電磁接触器1を第2レール部2b側に押圧して第1レール部2aに当接した板ばね50の一対の傾斜部52a,52bを弾性変形させ、第2係合部12a,12の第2レール部2bに対する係合状態を解除する工程と、第1係合部11a,11bの第1レール部2aに対する係合状態を解除する工程とによってレール2から電磁接触器1を取外すことができるので、レール2から電磁接触器1を工具を用いることなく取外すことができる。
【0053】
なお、第2実施形態に係る電磁接触器のレール取付け構造において、板ばね50を用いることなく線ばねによって電磁接触器1をレール2に取付けた際にレール2の第1レール部2aに当接して付勢力をレール2の第1レール部2aに作用させるようにすることも考えられる。しかし、線ばねの場合、外形が円形であるので、第1レール部2aとの接触部がR形状となり、線ばねと第1レール部2aとの間にすべりが生じる可能性があり、接触安定性が図れない。特に、第1レール部2aの接触面がR形状である場合には、線ばねのR形状と第1レール部2aのR形状とで特に線ばねと第1レール部2aとの間にすべりが生じやすい。
【0054】
これに対して、第2実施形態のように板ばね50を用いる場合、板ばね50は平板部材であり、板ばね50の一対の押圧部53a,53bの板面が第1レール部2aに接触するので、一対の押圧部53a,53bの板面と第1レール部2aとの間にすべりが生じる可能性が低く、接触安定性を図ることができる。
【0055】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る電気機器としての電磁接触器のレール取付け構造について、
図25乃至
図32を参照して説明する。
第3実施形態において、レール2は、
図25に示すように、長手方向に細長く延び、幅方向において電磁接触器1が係合する第1レール部2a及び第2レール部2bを互いに対向するように備えている。レール2は、
図7乃至
図9に示すのと同様に、配電盤などの盤8に第1レール部2aを上側に、第2レール部2bを下側にして取り付けられている。
【0056】
第3実施形態における電磁接触器1は、
図25に示すように、絶縁性を有する合成樹脂で形成された筐体としての下ケース3及び上ケース4を備えている。上ケース4には、接点を有する複数の端子部5が配置されている。上ケース4には、消弧カバー6とが装着されている。
電磁接触器1の下ケース3は、
図25及び
図26に示すように、レール2の長手方向と同一の左右方向及びレール2の幅方向と同一の前後方向に延びる略長方形状の底面3aを有する。そして、下ケース3の底面3aには、第1係合部11a,11b及び第2係合部12a,12bが設けられている。
【0057】
第1係合部11a,11bは、下ケース3の底面3aの前方側に設けられ、
図25に示すように、電磁接触器1をレール2に取付けた際にレール2の幅方向の一方の第1レール部2aに係合する。第1係合部11a,11bは、下ケース3の底面3aにおいて左右方向に所定間隔離れて配置されている。第1係合部11a,11bのそれぞれは、
図25及び
図26に示すように、第1レール部2aが嵌り込む隙間を設けながら底面3aの下方に向けてフック形状に形成されている。
【0058】
また、第2係合部12a,12bは、
図26に示すように、下ケース3の底面3aの後方側であって第1係合部11a,11bと対峙するように設けられ、電磁接触器1をレール2に取付けた際にレール2の幅方向の他方の第2レール部2bに係合する。第2係合部12a,12bは、下ケース3の底面3aにおいて左右方向に所定間隔離れて配置されている。第2係合部12a,12bのそれぞれは、第2レール部2bが嵌り込む隙間を設けながら底面3aの下方に向けてフック形状に形成されている。
【0059】
また、下ケース3の底面3aには、
図25、
図26及び
図30に示すように、ばね部材としての圧縮ばね70及びスライダ80が設けられている。
圧縮ばね70は、下ケース3の底面3aの第1係合部11a,11bに対し前側において左右方向に並列に2つ備えられている。
下ケース3の底面3aの第1係合部11a,11b側における左右方向略中央部には、
図26及び
図27に示すように、スライダ80が配置されるスライダ収容凹部60が形成されている。
そして、下ケース3のスライダ収容凹部60の底面には、左右方向において所定間隔を空けて2つのばね部材収容凹部61が形成され、スライダ収容凹部60の底面であって各ばね部材収容凹部61の前縁から2つの壁部62が立設されている。
そして、各圧縮ばね70は、各ばね部材収容凹部61に配置される。
【0060】
図29には各圧縮ばね70の寸法が記載されており、各圧縮ばね70の自由長Loは、コイル平均径Dの4倍以下になっている。つまり、次式が成立する。
Lo/D≦4
ここで、コイル平均径Dはコイル内径をDi、コイル外径をDeとすると、D=(Di+De)/2で表される。
各圧縮ばね70の自由長Loとコイル平均径Dとの関係における前述の式については、JIS B2701-1にて推奨されている。
【0061】
また、スライダ80は、
図25、
図26、及び
図30乃至
図32に示すように、下ケース3の底面3aに形成されたスライダ収容凹部60の底面上を前後方向に摺動可能に配置されて2つの圧縮ばね70の付勢力により後方向に付勢される。そして、スライダ80は、
図30乃至
図32に示すように、電磁接触器1をレール2に取付けた際にレール2の第1レール部2aに当接して圧縮ばね70の付勢力をレール2の第1レール部2aに作用させ、第2係合部12a,12bがレール2の第2レール部2bを押圧した状態にする。
【0062】
このスライダ80は、
図28(a),(b),(c)に示すように、後端面81a、左側面81b、及び右側面81cを有する略直方体形状のスライダ本体81を備えている。そして、スライダ本体81には、
図28(a),(b),(c)及び
図31に示すように、スライダ収容凹部60の底面に立設された2つの壁部62及びばね部材収容凹部61に配置された2つの圧縮ばね70を収納する2つの収納凹部82が形成されている。各収納凹部82には、下方に開口する圧縮ばね70を挿入するための開口部83が形成されている。また、スライダ本体81の左側面81b及び右側面81cのそれぞれには、スライダ80をスライダ収容凹部60に配置した際に、下ケース3の規制突起63に当接してスライダ80の下方への移動を規制するための移動規制突起85が設けられている。
【0063】
そして、各圧縮ばね70が各ばね部材収容凹部61に配置される際には、
図31に示すように、壁部62に対して前端70aが当接し、スライダ80の収納凹部82の後壁部81dに対して後端70bが当接するように配置される。これにより、スライダ80は2つの圧縮ばね70の付勢力により常時後方向に付勢されることになる。
なお、
図28(a),(b),(c)及び
図31に示すように、スライダ本体81の各開口部83には、圧縮ばね70を収納凹部82に収納した際に圧縮ばね70の開口部73からの抜け出しを防止するための複数の抜け出し防止突起84a~84dが設けられている。
【0064】
また、スライダ80の後端面81aの左右両端部には、
図8(a),(b),(c)、
図31及び
図32に示すように、電磁接触器1をレール2に取付けた際の、電磁接触器1のレール2の長手方向における位置ずれを防止する一対の位置ずれ防止部86が設けられている。各位置ずれ防止部86は、スライダ80の後端面81aから突出形成され、各位置ずれ防止部86の板厚は、スライダ収容凹部60の深さよりも若干大きく形成されて下ケース3の底面3aよりも若干突出するようになっている。このため、電磁接触器1をレール2に取付けた際には、
図32に示すように、レール2の第1レール部2aが第1係合部11a,11bとスライダ80の位置ずれ防止部86との間に入り込み、これにより、電磁接触器1のレール2の長手方向における位置ずれが防止される。
【0065】
次に、下ケース3の底面3aに圧縮ばね70及びスライダ80を組み付ける方法について、
図25乃至
図31を参照して説明する。
下ケース3の底面3aに圧縮ばね70及びスライダ80を組み付ける際に、先ず、
図27に示すように、電磁接触器1の下ケース3の底面3a側が上側となるようにしておく。
そして、スライダ80を、各収納凹部82が壁部62を収納するようにスライダ収容凹部60上に配置する。スライダ本体81の左側面81b及び右側面81cのそれぞれには、スライダ80をスライダ収容凹部60に配置した際に、スライダ80に設けられた移動規制突起85が
図26に示すように下ケース3の規制突起63の下側に配置されてスライダ80の上方、つまりスライダ80の下方への移動が規制される。
【0066】
次いで、2つの圧縮ばね70のそれぞれをスライダ80に形成された2つの開口部83のそれぞれからスライダ80の収納凹部82内に収納し、各圧縮ばね70を各ばね部材収容凹部61に配置する。この際に、各圧縮ばね70の前端70aが壁部62に対して当接し、後端70bがスライダ80の収納凹部82の後壁部81dに対して当接する。これにより、スライダ80は2つの圧縮ばね70の付勢力により常時後方向に付勢され、この状態で圧縮ばね70及びスライダ80が下ケース3の底面3aに組み付けられる。
このように、第3実施形態に係る電磁接触器のレール取付け構造によれば、スライダ80をスライダ収容凹部60に配置する工程と、圧縮ばね70をスライダ80に形成された開口部83からスライダ80の収納凹部82内に収納し、圧縮ばね70をばね部材収容凹部61に配置する工程とによって組み立てを行うことができるので、レール取付け構造の組み立てを容易に行うことができる。
【0067】
次に、電磁接触器1をレール2に跨って取り付ける方法について説明する。この第3実施形態において、電磁接触器1をレール2に跨って取り付ける方法は、第1実施形態のところで説明した
図7乃至
図9に示す方法と同様の方法で行われる。
先ず、
図7に示すように、電磁接触器1の第1係合部11a,11bをレール2の第1レール部2aに引っ掛け、電磁接触器1に下方に荷重を加えることで、第1レール部2aに当接したスライダ80を介して2つの圧縮ばね70を上方に弾性変形させる。そして、電磁接触器1の第2係合部12a,12bを、レール2の第2レール部2bの下面に押し付ける。
【0068】
次いで、電磁接触器1に対して下方へ荷重を加えるのを解除する。これにより、
図8に示すように、2つの圧縮ばね70の付勢力がスライダ80を介して第1レール部2aに作用し、電磁接触器1が相対的に上方へ移動する。
そして、
図9に示すように、電磁接触器1の第2係合部12a,12bがレール2の第2レール部2bを押圧した状態にし、電磁接触器1がレール2に跨って取り付けられる。
ここで、電磁接触器1をレール2に取付けた際には、
図32に示すように、レール2の第1レール部2aが第1係合部11a,11bとスライダ80の位置ずれ防止部86との間に入り込み、これにより、電磁接触器1のレール2の長手方向における位置ずれが防止される。また、レール2の第2レール部2bは、第2係合部12a,12bと下ケース3の底面3aとの間に入り込む。
【0069】
一方、レール2から電磁接触器1を取外す際には、第1実施形態のところで説明した
図13及び
図14に示す方法と同様の方法で行われ、先ず、
図13に示すように、電磁接触器1を下方側(第2レール部2b側)に押圧して第1レール部2aに当接したスライダ80を介して圧縮ばね70を弾性変形させ、第2係合部12a,12bの第2レール部2bに対する係合状態を解除する。
【0070】
次いで、
図14に示すように、電磁接触器1の第2係合部12a,12bを
図14の矢印で示す方向に押し上げて第2係合部12a,12bを第2レール部2bから外す。
更に、図示はしないが、第1係合部11a,11bの第1レール部2aに対する係合状態を解除し、第1係合部11a,11bを第1レール部2aから外す。これにより、電磁接触器1がレール2から取り外される。
このように、第3実施形態に係る電磁接触器のレール取付け構造によれば、電磁接触器1を第2レール部2b側に押圧して第1レール部2aに当接したスライダ80を介して圧縮ばね70を弾性変形させ、第2係合部12a,12の第2レール部2bに対する係合状態を解除する工程と、第1係合部11a,11bの第1レール部2aに対する係合状態を解除する工程とによってレール2から電磁接触器1を取外すことができるので、レール2から電磁接触器1を工具を用いることなく取外すことができる。
【0071】
また、第3実施形態に係る電磁接触器のレール取付け構造によれば、ばね部材は、スライダ収容凹部60の底面に形成されたばね部材収容凹部61に配置された圧縮ばね70であり、スライダ80は、スライダ収容凹部60の底面であってばね部材収容凹部61の前縁から立設された壁部62及びばね部材収容凹部61に配置された圧縮ばね70を収納する収納凹部82を備え、ばね部材を構成する圧縮ばね70は、壁部62に対して前端70aが当接し、スライダ80の収納凹部82の後壁部81dに対して後端70bが当接するようにばね部材収容凹部61に配置される。これにより、ばね部材として圧縮ばね70を用いることで、第1実施形態の板ばね20と比べてスライダ80を後方向へ付勢する付勢力を大きくすることができ、電磁接触器1の第2係合部12a,12bがレール2の第2レール部2bを押圧するときの押圧力を大きくでき、電磁接触器1を安定してレール2に跨って取り付けることができる。圧縮ばねは、板ばねと比べて撓み量が大きく荷重を大きくすることができるので、管理が容易であるとともに、板ばねと比べて塑性変形しづらいという利点がある。
【0072】
また、第3実施形態に係る電磁接触器のレール取付け構造によれば、ばね部材を構成する圧縮ばね70が左右方向に並列に2つ配置されているので、スライダ80を後方向へ付勢する付勢力を更に大きく(圧縮ばね70を1つとした場合の2倍の付勢力)することができる。
また、第3実施形態に係る電磁接触器のレール取付け構造によれば、ばね部材を構成する圧縮ばね70の自由長Loがコイル平均径Dの4倍以下である。これにより、圧縮ばね70が弾性変形する際に、座屈することなく真っ直ぐに撓み、荷重の管理がしやすく安定化することになる。
【0073】
これに対して、第2参考例に係る電磁接触器のレール取付け構造を
図33乃至
図35を参照して説明する。
図33乃至
図35において、
図25乃至
図32に示す部材と同一の符号を付し、その説明は省略することがある。
図33に示す第2参考例に係る電磁接触器のレール取付け構造は、下ケース3に電磁接触器1をレール2に取付けた際にレール2の第2レール部2bに係合する第2係合部12a,12bを設けているが、下ケース3に電磁接触器1をレール2に取付けた際にレール2の第1レール部2aに係合する第1係合部を設けておらず、スライダ280に電磁接触器1をレール2に取付けた際にレール2の第1レール部2aに係合する係合部284を設けている点で第3実施形態に係る電磁接触器のレール取付け構造と相違している。この構造の相違のため、
図35に示すように、ばね部材を構成する圧縮ばね270の自由長Loがコイル平均径DにDの4倍よりも大きくなっている点で第3実施形態に係る電磁接触器のレール取付け構造と相違している。
【0074】
また、第2参考例に係る電磁接触器のレール取付け構造においては、スライダ280に工具用孔285を設けている点で第3実施形態に係る電磁接触器のレール取付け構造と相違している。
即ち、第2参考例に係る電磁接触器のレール取付け構造において、レール2は、
図33に示すように、長手方向に細長く延び、幅方向において電磁接触器1が係合する第1レール部2a及び第2レール部2bを互いに対向するように備えている。
第2参考例における電磁接触器1の下ケース3の底面3aには、電磁接触器1をレール2に取付けた際にレール2の第1レール部2aに係合する第1係合部が設けられておらず、第2係合部12a,12bが設けられている。
【0075】
また、第2係合部12a,12bは、
図33及び
図34に示すように、電磁接触器1をレール2に取付けた際にレール2の第2レール部2bに係合する。
また、下ケース3の底面3aには、
図33及び
図34に示すように、圧縮ばね270及びスライダ280が設けられている。
下ケース3の底面3aの第2係合部12a,12bと幅方向反対側における左右方向略中央部には、スライダ280が配置されるスライダ収容部260が形成されている。
そして、下ケース3のスライダ収容部260の底面には、ばね部材収容凹部261が形成され、スライダ収容部260の底面であって各ばね部材収容凹部261の前縁から壁部262が立設されている。
そして、圧縮ばね270は、ばね部材収容凹部261に配置される。
【0076】
図35には圧縮ばね270の寸法が記載されており、圧縮ばね270の自由長Loは、コイル平均径Dの4倍よりも長い。以下になっている。つまり、次式が成立する。
Lo/D>4
ここで、コイル平均径Dはコイル内径をDi、コイル外径をDeとすると、D=(Di+De)/2で表される。
このように、圧縮ばね270の自由長Loを長くした理由は、電磁接触器1をレール2に取付けた際に、スライダ280に設けられた後述する係合部284がレール2の第1レール部2aに係合し、レール2に対する保持力を得ようとしている。このため、スライダ280に作用する圧縮ばね270の付勢力を大きくするためである。
【0077】
また、スライダ280は、下ケース3の底面3aに形成されたスライダ収容部260の底面上を前後方向に摺動可能に配置されて圧縮ばね270の付勢力により後方向に付勢される。そして、スライダ280は、
図34に示すように、電磁接触器1をレール2に取付けた際にレール2の第1レール部2aに係合部284が係合して圧縮ばね270の付勢力をレール2の第1レール部2aに作用させ、第2係合部12a,12bがレール2の第2レール部2bを押圧した状態にする。
【0078】
このスライダ80は、
図28(a),(b),(c)に示すように、略直方体形状のスライダ本体281を備えている。そして、スライダ本体81には、スライダ収容部260の底面に立設された壁部262及びばね部材収容凹部261に配置された圧縮ばね270を収納する収納凹部282が形成されている。収納凹部282には、下方に開口する圧縮ばね270を挿入するための開口部283が形成されている。また、スライダ本体281には、電磁接触器1をレール2から取り外す際に、工具(図示せず)が挿入されてスライダ280を移動させるための工具用孔285が形成されている。
そして、圧縮ばね270がばね部材収容凹部261に配置される際には、
図34に示すように、壁部262に対して前端270aが当接し、スライダ280の収納凹部282の後壁部に対して後端270bが当接するように配置される。これにより、スライダ280は圧縮ばね270の付勢力により常時後方向に付勢されることになる。
【0079】
この第2参考例に係る電磁接触器のレール取付け構造においては、電磁接触器1をレール2から取り外す際に、工具を工具用孔285に挿入してスライダ280を前方向に移動させて係合部284の第1レール部2aに対する係合状態を解除する必要があり、電磁接触器1のレール2からの取り外し作業が面倒となる。
また、この第2参考例に係る電磁接触器のレール取付け構造においては、前述したように、圧縮ばね270の自由長Loは、コイル平均径Dの4倍よりも長い。このため、圧縮ばね270が弾性変形する際に、座屈して真っ直ぐ撓まず、荷重の管理がしにくい上、安定化しない。
【0080】
これに対して、第3実施形態に係る電磁接触器のレール取付け構造によれば、電磁接触器1を第2レール部2b側に押圧して第1レール部2aに当接したスライダ80を介して圧縮ばね70を弾性変形させ、第2係合部12a,12bの第2レール部2bに対する係合状態を解除する工程と、第1係合部11a,11bの第1レール部2aに対する係合状態を解除する工程とによってレール2から電磁接触器1を取外すことができるので、レール2から電磁接触器1を工具を用いることなく取外すことができる。
また、第3実施形態に係る電磁接触器のレール取付け構造によれば、ばね部材を構成する圧縮ばね70の自由長Loがコイル平均径Dの4倍以下である。これにより、圧縮ばね70が弾性変形する際に、座屈することなく真っ直ぐに撓み、荷重の管理がしやすく安定化することになる。
【0081】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されずに種々の変更、改良を行うことができる。
例えば、第1実施形態及び第2実施形態において、電磁接触器1をレール2に取付けるようにしているが、電磁接触器1以外の遮断器などの他の電気機器をレール2に取付けるようにしてもよい。
また、第1実施形態において、スライダ30は、板ばね20の長手方向中央部に取付けられる必要は必ずしもなく、板ばね20の長手方向両端部の間に取付けられればよい。
【0082】
また、第1実施形態において、スライダ収容凹部14の底面に、スライダ30の後方向への移動を規制するストッパ15が形成されている必要は必ずしもない。
更に、第1実施形態において、スライダ30に、電磁接触器1をレール2に取付けた際の、電磁接触器1のレール2の長手方向における位置ずれを防止する位置ずれ防止部34を設ける必要は必ずしもない。この場合、位置ずれ防止部を下ケース3の底面3aに設ければよい。第3実施形態において、スライダ80に設けられる位置ずれ防止部86についても同様である。
【0083】
また、第2実施形態において、板ばね支持部40は、板ばね50の一対の傾斜部52a,52bが変位可能なように板ばね50を支持できればよく、板ばね収容凹部41と、前方向移動規制部42と、前壁部45と、下方向移動規制部43とを備えた構成に限られない。
また、第2実施形態において、板ばね50の長手方向延出部51に切欠き54を形成し、板ばね収容凹部41の底面に、左右方向移動規制部44を設ける必要は必ずしもない。
また、第3実施形態において、圧縮ばね270が左右方向に並列に2つ配置されているが、1つ配置されてもよいし、3つ以上配置されてもよい。
【符号の説明】
【0084】
1 電磁接触器(電気機器)
2 レール
2a 第1レール部
2b 第2レール部
3 下ケース(筐体)
3a 底面
4 上ケース(筐体)
5a~5d 端子部
6 消弧カバー
7 端子カバー
8 盤
11a,11b 第1係合部
12a,12b 第2係合部
13 板ばね支持部
13a 前側支持壁
13b 後側支持壁
13c 間隙
14 スライダ収容凹部
15 ストッパ
16a スライダ前側案内部
16b スライダ後側案内部
20 板ばね(ばね部材)
30 スライダ
31 スライダ本体
31a 後端面
32 板ばね挿入用凹部
33 弾性係止片
34 位置ずれ防止部
40 板ばね支持部
41 板ばね収容凹部
42 前方向移動規制部
43 下方向移動規制部
44 左右方向移動規制部
45 前壁部
50 板ばね
51 長手方向延出部
51a,51b,51c 湾曲部
52a,52b 傾斜部
53a,53b 押圧部
54 切欠き
60 スライダ収容凹部
61 ばね部材収容凹部
62 壁部
63 規制突起
70 圧縮ばね(ばね部材)
70a 前端
70b 後端
80 スライダ
81 スライダ本体
81a 後端面
81b 左側面
81c 右側面
82 収納凹部
83 開口部
84a~84d 抜け出し防止突起
85 移動規制突起
86 位置ずれ防止部