(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-19
(45)【発行日】2025-05-27
(54)【発明の名称】車両用データ生成サーバ、データ生成装置、プログラム、システム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/09 20060101AFI20250520BHJP
B60W 30/14 20060101ALI20250520BHJP
B60W 50/14 20200101ALI20250520BHJP
B60W 30/18 20120101ALI20250520BHJP
【FI】
G08G1/09 D
B60W30/14
B60W50/14
B60W30/18
(21)【出願番号】P 2023546880
(86)(22)【出願日】2022-08-25
(86)【国際出願番号】 JP2022032096
(87)【国際公開番号】W WO2023037893
(87)【国際公開日】2023-03-16
【審査請求日】2023-10-05
(31)【優先権主張番号】P 2021146928
(32)【優先日】2021-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】北原 元貴
【審査官】西畑 智道
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-242936(JP,A)
【文献】特開2019-079398(JP,A)
【文献】特開平11-175897(JP,A)
【文献】特開2021-002275(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112785860(CN,A)
【文献】特開2006-048624(JP,A)
【文献】特開2019-152958(JP,A)
【文献】特開2008-242987(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
B60W 30/14
B60W 50/14
B60W 30/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号機に対する車両制御用のデータを生成する車両用データ生成サーバであって、
複数の車両から、前記車両が走行しているレーンを示す情報と、前記車両にて観測されている前記信号機の点灯色の組み合わせと、当該点灯色の組み合わせに対する前記車両の挙動と、を示すデータセットを信号機応答報告として取得する報告取得部(G1)と、
前記報告取得部が取得した前記信号機応答報告に基づいて、信号機ごとに、レーンごとの通行可能な点灯色の組み合わせを示す通行可能パターンデータを、信号機応答方針データとして生成する信号機応答方針生成部(G21)と、
前記信号機応答方針生成部が生成した信号機応答方針データを外部装置に送信する送信処理部(G3)と、を備え、
前記通行可能パターンデータは、点灯色の組み合わせごとに通行可能なレー
ンを示すデータセットであって、かつ、各点灯部の形状を示すデータは含まないデータセットである、車両用データ生成サーバ。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用データ生成サーバであって、
前記信号機応答方針生成部は、前記信号機応答方針データとして、前記通行可能パターンデータを生成するものであって、前記通行可能パターンデータは、点灯色ごとの数の組み合わせにより、通行可能なレーンを示すデータセットである、車両用データ生成サーバ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両用データ生成サーバであって、
前記通行可能パターンデータは、赤色に点灯する灯火部である赤灯とともに、緑色の矢印を表示する灯火部である緑矢灯が点灯している場合に通行可能なレーンを示すものであって、前記通行可能パターンデータは、赤色の点灯部に対する緑色の点灯部の相対位置によって、通行可能なレーンを示すデータセットである、車両用データ生成サーバ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の車両用データ生成サーバであって、
前記信号機応答報告は、前記信号機における点灯部の位置及び点灯色にかかる情報を含み、前記通行可能パターンデータは、前記信号機における点灯部ごとの位置及び色の組み合わせによって通行可能なレーンを示すデータセットである、車両用データ生成サーバ。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の車両用データ生成サーバであって、
前記信号機応答方針生成部は、矢印を表示する灯火装置である矢灯器を具備した前記信号機である矢灯器付き信号機に対しては前記通行可能パターンデータを生成する一方、前記矢灯器を備えない前記信号機である標準信号機に対しては、前記通行可能パターンデータを生成しないように構成されている車両用データ生成サーバ。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の車両用データ生成サーバであって、
前記信号機応答方針生成部は、前記通行可能パターンデータの代わりに、レーンごとの停止すべき点灯色の組み合わせを示す停止パターンデータを生成するように構成されている車両用データ生成サーバ。
【請求項7】
自車両又は他車両の挙動を示す情報を取得する挙動取得部と、
カメラから信号機の点灯状態を示す情報を取得する点灯状態取得部と、
前記点灯状態取得部が取得した前記信号機の点灯状態と、前記挙動取得部により取得される前記点灯状態に対する自車両又は他車両の挙動を示すデータセットである信号機応答報告を生成する報告生成部と、を有し、
前記報告生成部は、前記信号機応答報告として、前記信号機における点灯部の形状を示すデータは含まないデータセットを生成するように構成されているデータ生成装置。
【請求項8】
前記報告生成部は、前記信号機応答報告として、前記点灯部の形状が不明であったことを示す情報を含むデータセットを生成可能に構成されている、請求項7に記載のデータ生成装置。
【請求項9】
前記点灯部の形状を示すデータは、前記点灯部が丸型であるか、矢印型であるかを示すデータである、請求項7に記載のデータ生成装置。
【請求項10】
前記点灯部の形状を示すデータは、矢灯器における矢印の方向を示すデータである、請求項7に記載のデータ生成装置。
【請求項11】
前記報告生成部は、
前記信号機応答報告がデータの有用性を担保するための所定条件を充足するデータセットであるかを判定し、
前記所定条件を充足しない前記信号機応答報告は破棄するように構成されている、請求項7に記載のデータ生成装置。
【請求項12】
前記所定条件は、信号機までの残り距離が所定値未満であるときに生成されていることを含む、請求項11に記載のデータ生成装置。
【請求項13】
前記信号機応答報告は、前記信号機までの残り距離を示す信号機情報を含む、請求項7から12のいずれか1項に記載のデータ生成装置。
【請求項14】
コンピュータに、
車両の挙動を示す情報を取得することと、
カメラから出力される信号機の点灯状態を示すデータを取得することと、
前記信号機の点灯状態と、当該点灯状態に対する車両の挙動を示すデータセットであって、前記信号機における点灯部の形状を示すデータは含まないデータセットを生成することと、を実行させるための命令を含むプログラム。
【請求項15】
カメラを用いて信号機の点灯状態を示す情報を取得する点灯状態取得部と、
前記信号機の点灯状態と、前記点灯状態に対する車両の挙動を示すデータセットであって、点灯部の形状を示すデータは含まないデータセットを生成するデータ生成部と、
前記データ生成部が生成した前記データセットに基づいて、信号機ごとに、レーンごとの通行可能な点灯色の組み合わせを示すデータセットであって、かつ、各点灯部の形状を示すデータは含まないデータセットである通行可能パターンデータを、信号機応答方針データとして生成する信号機応答方針生成部と、
前記信号機応答方針生成部が生成した前記信号機応答方針データと、レーン情報と、前記点灯状態取得部が取得している点灯状態と、に基づいて、前記信号機の点灯状態は車両が通行可能な点灯状態に該当するか否かを判定する通行可否判定部と、
前記通行可否判定部の判定結果に応じた車両制御を実施する応答部と、を有するシステム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
この出願は、2021年9月9日に日本に出願された特許出願第2021-146928号を基礎としており、基礎の出願の内容を、全体的に、参照により援用している。
【技術分野】
【0002】
本開示は、矢灯器付き信号機に対する車両制御を支援するためのデータを生成する技術に関する。
【背景技術】
【0003】
特許文献1には、車載装置が、信号機を構成する灯火部ごとの位置情報と、その点灯色と、点灯形状とを示す灯火パターン情報と、車載カメラによる信号機の点灯状態の検出結果とを組み合わせることで、信号機の点灯状態を認識する構成が開示されている。点灯形状とは、丸、矢印、数字などを示す。点灯形状が矢印型である灯火部に関しては、矢印の向きについての情報をも含みうる。緑色で点灯する矢印型の灯火部である緑矢灯は、一部の方向への通行を限定的/例外的に許可するサインとして、赤色で点灯する丸形の灯火部である赤丸灯と並列的に点灯されることが多い。本開示では緑矢灯付きの信号機を矢灯器付き信号機とも称する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
車両前方に位置する矢灯器付き信号機の赤灯が点灯している場合であっても付随する緑矢灯が点灯している場合、当該車両の走行レーンによっては停車せずに通過できることがある。しかしながら、車載カメラの撮影画像に含まれる信号機の灯火部は小さいため、点灯色は判別できても、その点灯形状を正確に判別することは難しい。すなわち、点灯形状が矢印かどうか、及び、その矢印の方向を画像認識で判別することは難しい。また、その難易度は、信号機から車両が離れているほど高くなりうる。加えて、降雨時や霧発生時などの悪環境時には晴天時に比べて緑色に点灯している灯火部の形状を認識精度が劣化しうる。
【0006】
そのような事情から、矢灯器付き信号機に対する車両制御を支援するためのデータとして、点灯部の形状が不明であっても、交差点前で停止すべきか否かを車両が判断可能なデータを生成する仕組みが求められている。
【0007】
なお、仮に特許文献1に開示の灯火パターン情報を車両が利用可能であれば、画像認識にて特定された点灯部の配置パターンから緑矢灯付き信号機に対しても、停車すべきかどうかを判断可能となりうる。しかしながら特許文献1に開示の灯火パターン情報は、信号機のどこが、どのような形状で、何色に光るかといった詳細な情報を含む。このような灯火パターンデータでは、データサイズが大きくなりうる。また、データ管理も煩雑となりうる。通信負荷低減の観点から車両で使用されるデータとしては、より簡素なデータであることが好ましい。そもそも特許文献1では、詳細な灯火パターン情報をどのようにして作成するかについては何ら言及されていない。
【0008】
本開示は、上記着眼点に基づいて成されたものであり、その目的の1つは、信号機の点灯状態に基づき交差点手前で停車すべきか否かの判断に有用なデータを生成するための技術を提供することにある。
【0009】
ここに開示される車両用データ生成サーバは、信号機に対する車両制御用のデータを生成する車両用データ生成サーバであって、複数の車両から、車両が走行しているレーンを示す情報と、車両にて観測されている信号機の点灯色の組み合わせと、当該点灯色の組み合わせに対する車両の挙動と、を示すデータセットを信号機応答報告として取得する報告取得部(G1)と、報告取得部が取得した信号機応答報告に基づいて、信号機ごとに、レーンごとの通行可能な点灯色の組み合わせを示す通行可能パターンデータを、信号機応答方針データとして生成する信号機応答方針生成部(G21)と、信号機応答方針生成部が生成した信号機応答方針データを外部装置に送信する送信処理部(G3)と、を備え、通行可能パターンデータは、点灯色の組み合わせごとに通行可能なレーンを示すデータセットであって、かつ、各点灯部の形状を示すデータは含まないデータセットである。
【0010】
上記サーバは、信号機応答方針データとして、レーンごとの通行可能な/停止すべき点灯色の組み合わせを示すデータセットを生成及び送信する。車両は、自車レーンの番号と、信号機の点灯色の認識結果と、信号機応答方針データとを照合することで、現在、自車両が交差点を通行できるかどうかを判断可能となる。その際、矢印の向きなど、点灯部の形状などを認識する必要がないため、相対的に遠方から通行の可否を判定可能となる。また、相対的に分解能が小さいカメラ或いは画像認識装置であっても、点灯色の組み合わせさえ特定できれば、通行可否を判定可能となる。なお、上記信号機応答方針データは、色の組み合わせによってレーンごとの通行可否を示すものであって、必ずしも点灯部の形状情報や筐体における配置箇所情報を含んでいる必要はない。つまり、信号機に関するデータとして、特許文献1に開示の灯火パターン情報よりもデータサイズを抑制可能となるといった利点を有する。
【0011】
本開示のデータ生成装置は、自車両又は他車両の挙動を示す情報を取得する挙動取得部と、カメラから信号機の点灯状態を示す情報を取得する点灯状態取得部と、点灯状態取得部が取得した信号機の点灯状態と、挙動取得部により取得される点灯状態に対する自車両または他車両の挙動を示すデータセットである信号機応答報告を生成する報告生成部と、を有し、報告生成部は、信号機応答報告として、信号機における点灯部の形状を示すデータは含まないデータセットを生成するように構成されているデータ生成装置。
【0012】
上記データ生成装置は、上記の車両用データ生成サーバが信号機応答方針データを生成するための材料としてのデータセットを生成するものである。上記データ生成装置によれば、車両用データ生成サーバが効率的に信号機応答方針データを生成可能となる。
【0013】
本開示のプログラムは、コンピュータに、車両の挙動を示す情報を取得することと、カメラから出力される信号機の点灯状態を示すデータを取得することと、信号機の点灯状態と、当該点灯状態に対する車両の挙動を示すデータセットであって、信号機における点灯部の形状を示すデータは含まないデータセットを生成することと、を実行させるための命令を含む。
本開示のシステムは、カメラを用いて信号機の点灯状態を示す情報を取得する点灯状態取得部と、信号機の点灯状態と、点灯状態に対する車両の挙動を示すデータセットであって、点灯部の形状を示すデータは含まないデータセットを生成するデータ生成部と、データ生成部が生成したデータセットに基づいて、信号機ごとに、レーンごとの通行可能な点灯色の組み合わせを示すデータセットであって、かつ、各点灯部の形状を示すデータは含まないデータセットである通行可能パターンデータを、信号機応答方針データとして生成する信号機応答方針生成部と、信号機応答方針生成部が生成した信号機応答方針データと、レーン情報と、点灯状態取得部が取得している点灯状態と、に基づいて、信号機の点灯状態は車両が通行可能な点灯状態に該当するか否かを判定する通行可否判定部と、通行可否判定部の判定結果に応じた車両制御を実施する応答部と、を有する。
なお、特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】地図連携システムの全体像を説明するための図である。
【
図2】車両制御システムの構成を示すブロック図である。
【
図7】信号機応答報告処理を説明するためのフローチャートである。
【
図8】信号機応答報告が備える項目の一例を示す図である。
【
図9】地図生成サーバの構成を示すブロック図である。
【
図10】信号機応答方針データの生成手順の一例を示すフローチャートである。
【
図12】
図11に示す道路向けの信号機の一例を示す図である。
【
図13】通行可能パターンデータの一例を示す図である。
【
図14】通行可能パターンデータの他の例を示す図である。
【
図15】停止パターンデータの一例を示す図である。
【
図16】停止パターンデータの他の例を示す図である。
【
図17】通行可能パターンデータの一例を示す図である。
【
図18】複数の緑矢灯を備える信号機の点灯パターンの一例を示す図である。
【
図19】
図18に示す信号機の点灯パターンに対応する通行可能パターンデータを示す図である。
【
図20】複数の緑矢灯を備える信号機の点灯パターンの一例を示す図である。
【
図21】
図20に示す信号機の点灯パターンに対応する通行可能パターンデータを示す図である。
【
図22】信号機通過支援処理に対応するフローチャートである。
【
図23】信号機からの距離と緑矢灯に対する画像認識結果との関係を示す図である。
【
図24】横向き信号機の点灯箇所を示すエリア番号の設定例を示す図である。
【
図25】縦向き信号機の点灯箇所を示すエリア番号の設定例を示す図である。
【
図26】信号機応答報告が備える項目の他の例を示す図である。
【
図27】点灯箇所の位置情報を用いてなる通行可能パターンデータの構成例を示す図である。
【
図28】赤色点灯部に対する緑色点灯部の相対位置にてレーンごとの通行可能パターンを示す場合の通行可能パターンデータを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本開示にかかる車両制御システム1の実施形態について説明する。なお、以下では、左側通行が法制化されている地域を例に挙げて説明を行う。本開示は、車両制御システム1が使用される地域の法規や慣習に適合するように適宜変更して実施することができる。例えば右側通行が法制化されている地域では、交差点での左折/右折に係る説明における左右を入れ替えて実施することができる。
【0016】
また、以降における信号機9が備える緑色の灯火は通行を許可する点灯状態を示し、黄色及び赤色灯火は停車を指示する点灯状態を示すものとする。点灯色としての緑色との表現は、日本においては青色と解することができる。また、本開示における点灯色としての黄色との表現は、イギリスなど一部の地域においては琥珀(アンバー)色と解することができる。
【0017】
信号機9には、矢印を表示する灯火装置である矢灯器(矢灯火)を備える、矢灯器付き信号機9Aを含めることができる。本開示では主に矢灯器付き信号機9Aとして、緑色の矢印を表示する緑矢灯が付加されている信号機9を想定した実施例について述べる。緑矢灯は、緑色の矢印で示す方向への通行を限定的に許可する灯火装置である。緑矢灯が付与された信号機9は、日本において矢印式信号機とも称される。また、緑矢灯は青矢灯とも称されうる。緑矢灯は、緑色の矢印を表示する灯火装置に相当する。なお、矢灯器としては、緑矢灯の他に、黄色の矢印を表示する黄矢灯や、赤色の矢印を表示する赤矢灯なども存在する。本開示は黄矢灯や赤矢灯を具備する信号機9にも適宜適用可能である。
【0018】
<全体構成の概要>
図1は、本開示に係る車両制御システム1を含む地図連携システムSysの概略的な構成の一例を示す図である。
図1に示すように、地図連携システムSysは、車両Maに構築されている車両制御システム1と、地図生成サーバ3と、地図配信サーバ4とを備える。
図1では車両制御システム1を搭載した車両Maを1台しか図示していないが、車両制御システム1を搭載した車両Maは複数存在しうる。すなわち、地図連携システムSysを構成する車両は複数存在しうる。
図1に示すMGSはMap Generation Serverの略である。また、MDSは、Map Distribution/Delivery Serverの略である。
【0019】
車両制御システム1は、道路上を走行可能な多様な車両Maに搭載可能である。車両Maは、四輪自動車のほか、二輪自動車、三輪自動車等であってもよい。原動機付き自転車も二輪自動車に含めることができる。車両Maは、個人によって所有されるオーナーカーであってもよいし、カーシェアリングサービスや車両貸し出しサービス(いわゆるレンタカー)に供される車両であってもよい。また、車両Maは、サービスカーであってもよい。サービスカーには、タクシーや路線バス、乗り合いバスなどが含まれる。タクシーやバスは、運転手が搭乗していない、ロボットタクシーなどであってもよい。
【0020】
車両制御システム1は、走行時に観測した信号機の点灯状態や、種々の地物の位置情報を地図生成サーバ3に送信する。地図生成サーバ3は、複数の車両から提供される情報に基づき、車両制御システム1で使用される地図データを生成し、その一部又は全部を地図配信サーバ4に提供する。車両制御システム1は、地図配信サーバ4と無線通信を実施することにより、地図配信サーバ4から必要な地図データをダウンロードして、運転支援や、自動運転、ナビゲーションに使用する。
【0021】
<地図データの構成>
ここではまず、車両制御システム1が使用する地図データ、換言すれば、地図配信サーバ4が配信する地図データの一例について説明する。なお、地図配信サーバ4が取り扱う地図データは、地図生成サーバ3にて生成された地図データと基本的には同一である。ただし、地図配信サーバ4は、地図生成サーバ3から提供された地図データをもとに、用途に応じた配信データを生成し、車両に配信してもよい。地図生成サーバ3が生成する地図データと車両に配信される地図データは完全同一でなくとも良い。本実施形態では地図データ(信号機データ)を生成するサーバと、車両に地図データを配信するサーバとが別々に設けられているが、実施形態はこれに限定されない。地図生成サーバ3と地図配信サーバ4は、1つの地図サーバとして統合されていても良い。
【0022】
地図データは、道路構造データ、及び、地物データを含む。道路構造データは、道路の接続関係を示す、いわゆるネットワークデータであって、例えばノードデータとリンクデータとを含む。ノードデータは、交差点や、車線数が増減する地点、道路が分岐/合流する地点であるノードについてのデータである。リンクデータは、ノード間を接続する道路区間である道路リンクについてのデータである。リンクデータは、道路リンクが備える車線情報や曲率、勾配などのデータを備える。道路リンクは道路セグメントと呼ぶこともできる。道路構造に係るデータは、レーン単位で記述されていてもよい。道路構造データは、レーンレベルでの接続関係を示すレーンネットワークデータを含んでいても良い。各道路リンク及び各レーンリンクは固有の識別子であるリンクIDが付与されている。
【0023】
地物データは、道路端データ、路面標示データ、立体物データに区分されうる。道路端データは、道路端の位置を示す。路面標示データは、路面標示の設置位置及びその種別を示すデータである。路面標示とは、道路の交通に関する規制または指示のための路面に描かれたペイントを指す。路面標示は、1つの側面において、路面ペイントと呼ぶことができる。例えば、レーンの境界を示す車線区画線や、横断歩道、停止線、導流帯、安全地帯、規制矢印などが路面標示に含まれる。路面に付与された線、記号、及び文字が路面標示に相当する。また、路面標示には、ペイントだけなく、路面自体の色の違いや、道路鋲、石などによって形成された線、記号、文字を含めることができる。
【0024】
立体物データは、道路沿いに設置された所定の立体構造物の位置及び種別を表す。道路沿いに設置される立体構造物とは、例えば、交通標識、商業看板、ポール、ガードレール、縁石、電柱、信号機などである。交通標識とは、例えば規制標識や、案内標識、警戒標識、指示標識などとして作用する記号、文字列、及び図柄の少なくとも1つが付与された看板を指す。地図データには、立体物データとして、交通標識及び信号機9に係るデータが収録されている。
【0025】
地図データが備える信号機データは、筐体の中心座標、配列タイプ、サイズ情報、緑矢灯情報、通行可能パターンデータを含む。配列タイプは、3色の灯火部が縦に並んでいるか、横に並んでいるかを示す。配列タイプは縦型の信号機か横型の信号機か、あるいは、設置姿勢を示す情報に相当する。サイズ情報は、横方向及び縦方向の長さを示す。矢灯情報は、緑矢灯の有無や、個数、方向を示す。緑矢灯情報は、例えば緑矢灯を含むか否か、あるいは、設けられている緑矢灯の個数を示す。また、緑矢灯が付与されている信号機9においては、緑矢灯情報は、緑矢灯の方向も含まれる。通行可能パターンデータは、レーンごとの通行可能な点灯色の組み合わせを示すデータである。通行可能パターンデータについては別途後述する。
【0026】
種々の地物に関するデータは、ネットワークデータと紐付けられている。例えば信号機など、特定のレーン上に設けられている地物、又は、特定のレーンのための地物については、所属(対応)するリンクデータまたはノードデータと紐付けられている。道路沿いに設置される上記地物の一部又は全部、及び、一時停止線などの所定の路面標示は、後述するランドマークとして使用される。つまり、地図データは、ランドマークの設置位置や種別についてのデータを含む。
【0027】
上記地図データは、複数のパッチに区分されて管理(生成/更新/配信)される。各パッチはそれぞれ異なる区域の地図データに相当する。例えば地図データは地図収録領域を矩形状に分割したマップタイルの単位で格納されている。マップタイルはパッチの下位概念に相当する。各マップタイルには固有の識別子であるタイルIDが付与されている。パッチごと、あるいは、マップタイルごとの地図データは、地図収録地域全体の一部、換言すれば局所的な地図データである。マップタイルは部分地図データに相当する。地図配信サーバ4は、車両制御システム1からの要求に基づき、車両制御システム1の位置に応じた部分地図データを配信する。
【0028】
個々のパッチの収録範囲は、矩形状でなくともよい。パッチの収録範囲は、六角形や円形などであってもよい。各パッチは、隣接するパッチと部分的に重なるように設定されていてもよい。つまり、各パッチは境界付近で他のパッチとオーバーラップするように設定されていてもよい。加えて、地図データの分割態様は、データサイズによって規定されていてもよい。換言すれば、地図収録地域は、データサイズによって規定される範囲で分割されて管理されてもよい。その場合、各パッチは、データ量が所定値未満となるように設定されている。そのような態様によれば、1回の配信におけるデータサイズを一定値以下とすることができる。
【0029】
上述した地図データは、例えば複数の車両からアップロードされるプローブデータを統合処理することによって随時更新される。なお、本実施形態の地図連携システムSysが取り扱う地図データは、複数の車両で観測されたプローブデータを統合することで生成及び更新されるプローブデータ地図(以降、PD地図)である。他の態様として地図連携システムSysが取り扱う地図データは、定点測量結果や、高精度なGPS測量の結果、LiDAR等を搭載した専用のプローブカーが測定したデータを元に生成された高精度地図(以降、HD地図)であってもよい。LiDARはLight Detection and Ranging、又は、Laser Imaging Detection and Rangingの略である。LiDARには、距離画像を生成するToF(Time-Of-Flight)カメラが含まれうる。地図連携システムSysが取り扱う地図データは、信号機9やランドマーク等の地物データを含むことを条件として、ナビゲーション用の地図データであるナビ地図データであっても良い。
【0030】
<車両制御システム1の構成について>
車両制御システム1は、
図2に示すように、前方カメラ11、車両状態センサ12、ロケータ13、V2X車載器14、HMIシステム15、走行アクチュエータ16、及び運転支援ECU20を備える。なお、部材名称中のECUは、Electronic Control Unitの略であり、電子制御装置を意味する。また、HMIは、Human Machine Interfaceの略である。V2XはVehicle to X(Everything)の略で、車を様々なものとつなぐ通信技術を指す。なお、V2Xの「V」は自車両としての自動車を指し、「X」は、歩行者や、他車両、道路設備、ネットワーク、サーバなど、自車両以外の多様な存在を指しうる。
【0031】
なお、本開示における自車両とは、車両制御システム1から見て、当該車両制御システム1が搭載されている車両Maを指す。本開示では車両Maの運転席に着座している乗員(つまり運転席乗員)をユーザとも記載する。運転席乗員の概念には、車両Maを遠隔操作する権限を有する存在であるオペレータも含まれる。なお、以下の説明における前後、左右、上下の各方向は、自車両を基準として規定される。具体的に、前後方向は、自車両の長手方向に相当する。左右方向は、自車両の幅方向に相当する。上下方向は、車両高さ方向に相当する。
【0032】
車両制御システム1を構成する上記の種々の装置またはセンサは、ノードとして、車両内に構築された通信ネットワークである車両内ネットワークNwに接続されている。車両内ネットワークNwに接続されたノード同士は相互に通信可能である。なお、特定の装置同士は、車両内ネットワークNwを介することなく直接的に通信可能に構成されていてもよい。車両内ネットワークNwの規格としては、例えばController Area Network(CANは登録商標)や、イーサネット(登録商標)など、多様な規格を採用可能である。
【0033】
前方カメラ11は、車両前方を所定の画角で撮像するカメラである。前方カメラ11は、例えばフロントガラスの車室内側の上端部や、フロントグリル、ルーフトップ等に配置されている。前方カメラ11は、
図3に示すように、カメラ本体部111と、カメラECU112と、を備える。カメラ本体部111は少なくともイメージセンサとレンズとを含むモジュールである。カメラ本体部111は、例えば30fpsや60fpsなどといった、所定のフレームレートで撮像画像データを生成する。カメラECU112は、カメラ本体部111が生成した画像フレームに対して認識処理を施す事により、所定の検出対象物を検出するECUである。カメラECU112は、CPU(Central Processing Unit)や、GPU(Graphics Processing Unit)などを含む画像処理チップを用いて実現されている。
【0034】
カメラECU112は、色、輝度、色や輝度に関するコントラスト等を含む画像情報に基づいて所定の対象物を検出する。カメラECU112は、機能ブロックとして識別器E1を含む。識別器E1は、カメラ本体部111で生成された画像の特徴量ベクトルに基づき、物体の種別を識別する構成である。識別器E1には、例えばディープラーニングを適用したCNN(Convolutional Neural Network)やDNN(Deep Neural Network)などを利用可能である。
【0035】
カメラECU112の検出対象物は適宜設計されている。例えばカメラECU112は、道路端や、所定の路面標示、交通標識を検出する。検出対象に設定されている路面標示とは、車線区画線や、一時停止線、交差点での進行方向を示す矢印ペイントなどである。カメラECU112は、車線区画線及び道路端を示す検出点の回帰曲線に基づいて、道路の曲率や幅員等などを認識しうる。
【0036】
また、カメラECU112は、歩行者や、他車両などの移動体も検出しうる。他車両には自転車(いわゆるサイクリスト)や、原動機付き自転車、オートバイも含まれる。カメラECU112は、自車両の左側及び右側に存在する区画線の認識結果に基づいて自車両が走行しているレーンである自車レーンを特定するとともに、自車レーン上において自車両の前方に存在する他車両を先行車両して認識する。そして、先行車両との距離や相対速度を特定する。
【0037】
さらに、前方カメラ11は、信号機9を検出可能に構成されている。前方カメラ11は、信号機9を認識している場合、少なくとも点灯部の色(つまり点灯色)を認識する。本開示における点灯部とは、信号機9が備える複数の灯火部のうち、光を発している部分、つまり点灯している灯火部を指す。灯火部は、光を発することが可能な装置そのもの、つまり灯火装置を指す。
【0038】
前方カメラ11による信号機9に対する認識結果には、自車両に対する信号機の相対位置情報と、点灯状態を示す点灯状態情報と、が含まれる。点灯状態情報は、主として点灯色の組み合わせを示す。点灯色の組み合わせには、赤と緑といった複数色を含む場合に限らず、赤だけ、緑だけといった点灯色が1つだけであるバリエーションも含まれる。また、赤灯と、直進用の緑矢灯と、左折用の緑矢灯が同時に点灯している場合には、赤1つと緑2つといったように、点灯状態情報は色ごとの数を示す情報を含みうる。
【0039】
カメラECU112は、信号機9の点灯部の形状を特定できた場合には、その認識形状情報を出力しうる。点灯部の形状としては、丸と矢印が想定される。なお、点灯部の形状が矢印と判定された場合にはその矢印が向いている方向をも取得する。信号機9の点灯状態を示す情報には、点灯部の色とその形状とをセットで含みうる。カメラECU112は、点灯部の形状を特定できなかった場合には、点灯部の形状を示すデータフィールドには、不明であることを示す所定値が挿入されうる。その他、カメラECU112は、信号機の筐体の中心座標や、配列タイプ、サイズ情報、緑矢灯情報などを認識し、その認識結果を運転支援ECU20に出力してもよい。
【0040】
カメラECU112は、複数の信号機9を検出している場合、フラグ等を用いて、自車向けの信号機9と、その他の信号機9とを区別して出力する。自車両向けの信号機9とは、自車レーン向けの信号機9、換言すれば自車両が従うべき信号機9である。対向車向けの信号機9や、交差車両向けの信号機9は、自車両向けの信号機9に該当しない。なお、交差車両は、自車両が走行している道路に接続する他の道路を走行する車両を指す。例えば、交差点において横から来る車両が交差車両に相当する。レーン毎に信号機9が設けられている地域においては、自車レーン上の信号機9が自車両向けの信号機9に相当し、隣接レーン用の信号機9は自車両向けの信号機9に該当しない。1つの信号機9が複数のレーン向けの信号機9として配備されている地域においては、自車走行路の延長線上に存在し、且つ、筐体が自車両に向いている信号機9のうち、最寄りの信号機が、自車両向けの信号機9に該当しうる。
【0041】
カメラECU112は、複数の信号機9を検出している場合、自車両の正面方向に存在する信号機9、あるいは、自車レーンの上方に存在する信号機9を自車両向けの信号機9として優先的に採用する。また、カメラECU112は、複数の信号機9を検出している場合、自車両正面にあり、かつ筐体が自車両の方向に向いている信号機9を優先的に自車向けの信号機9として採用する。自車向けの信号機9を複数検出している場合には、最も近い信号機9を、制御に使用すべき自車向けの信号機9として採用する。なお、自車レーン向けの信号機9であるか否かの判定は、カメラECU112ではなく、運転支援ECU20が実施しても良い。
【0042】
前方カメラ11が検出対象とする地物の一部または全部は、運転支援ECU20においてランドマークとして利用される。ランドマークとは、地図上における自車両の位置を特定するための目印として利用可能な地物を指す。ランドマークとしては、例えば規制標識や案内標識などの交通標識に相当する看板、信号機9、ポール、案内板、一時停止線、区画線などの少なくとも何れか1つを採用可能である。本開示では、区画線や道路端など、道路に沿って連続的に延設される線状のランドマークを連続型ランドマークと称する。連続型ランドマークに対し、交通標識や一時停止線、消火栓、マンホールなど、道路に沿って離散的に配置されているランドマークを離散型ランドマークと称する。離散型ランドマークは点在している地物に相当する。
【0043】
カメラECU112は、検出した物体毎の相対位置や種別、移動速度、検出物の構成などを示す信号を出力する。カメラECU112の出力信号は、車両内ネットワークNwを介して運転支援ECU20に入力される。前方カメラ11の検出結果は、認識結果あるいは識別結果と読み替えることもできる。
【0044】
なお、画像データに基づく物体認識処理など、カメラECU112の機能は運転支援ECU20などの別のECUが備えていても良い。その場合、前方カメラ11は、観測データとしての画像データを運転支援ECU20に提供すればよい。車両制御システム1の機能配置は適宜変更可能である。
【0045】
車両状態センサ12は、自車両の走行制御に関わる状態量を検出するセンサ群である。車両状態センサ12には、車速センサ、操舵センサ、加速度センサ、ヨーレートセンサ、アクセルセンサ、ブレーキセンサ等が含まれる。車速センサは、自車の車速を検出する。操舵センサは、自車の操舵角を検出する。加速度センサは、自車の前後加速度、横加速度等の加速度を検出する。ヨーレートセンサは、自車の角速度を検出する。アクセルセンサはアクセルペダルの踏込量/踏込力を検出するセンサである。ブレーキセンサはブレーキペダルの踏込量/踏込力を検出するセンサである。なお、車両状態センサ12として車両制御システム1が使用するセンサの種類は適宜設計されればよく、上述した全てのセンサを備えている必要はない。車両状態センサ12にはドライバの操作を検出するセンサも含まれる。また、車両状態センサ12には、例えば、降雨を検出するレインセンサや、外の明るさを検出する照度センサを含めることができる。
【0046】
ロケータ13は、複数の情報を組み合わせる複合測位により、自車両の位置情報を生成する装置である。ロケータ13は、例えば、GNSS受信機を用いて構成されている。GNSS受信機は、GNSS(Global Navigation Satellite System)を構成する測位衛星から送信される航法信号を受信することで、当該GNSS受信機の現在位置を逐次検出するデバイスである。例えばGNSS受信機は4機以上の測位衛星からの航法信号を受信できている場合には、100ミリ秒ごとに測位結果を出力する。GNSSとしては、GPS、Galileo、IRNSS、QZSS、BeiDou等を採用可能である。
【0047】
ロケータ13は、GNSS受信機の測位結果と、慣性センサの出力とを組み合わせることにより、自車両の位置を逐次測位する。例えば、ロケータ13は、トンネル内などGNSS受信機がGNSS信号を受信できない場合には、種々の車両状態センサ12から入力される車速やヨーレート、加速度情報を用いてデッドレコニング(Dead Reckoning :すなわち自律航法)を行う。測位結果としての位置情報は車両内ネットワークNwに出力され、運転支援ECU20等で利用される。ロケータ13の機能の一部は運転支援ECU20が備えていても良い。
【0048】
V2X車載器14は、自車両が他の装置と無線通信を実施するための装置である。V2X車載器14は、通信モジュールとしてセルラー通信部と狭域通信部を備える。セルラー通信部は、所定の広域無線通信規格に準拠した無線通信を実施するための通信モジュールである。ここでの広域無線通信規格としては例えばLTE(Long Term Evolution)や4G、5Gなど多様なものを採用可能である。セルラー通信部としての通信モジュールは、TCU(Telematics Control Unit)又はDCM(Data Communication Module)とも呼ばれうる。
【0049】
なお、セルラー通信部は、無線基地局を介した通信のほか、広域無線通信規格に準拠した方式によって、他の装置との直接的に無線通信を実施可能に構成されていても良い。セルラー通信部は、セルラーV2X(PC5/Uu)を実施するように構成されていても良い。自車両は、V2X車載器14の搭載により、インターネットに接続可能なコネクテッドカーとなる。例えば運転支援ECU20は、V2X車載器14との協働により、地図配信サーバ4から現在位置に応じた地図データをダウンロードして利用可能となる。
【0050】
V2X車載器14が備える狭域通信部は、通信距離が数百m以内となる無線通信である狭域通信を実施する通信モジュールである。狭域通信は、IEEE802.11p規格に対応するDSRC(Dedicated Short Range Communications)であってもよいし、Wi-Fi(登録商標)であってもよい。狭域通信は、前述のセルラーV2Xであってもよい。セルラー通信部と狭域通信部の何れか一方は省略可能である。なお、V2X車載器14がセルラー通信機能を備えない場合、運転支援ECU20は狭域通信機能により、路側機や他車両から地図データ等を取得してもよい。
【0051】
HMIシステム15は、ユーザ操作を受け付ける入力インターフェース機能と、ユーザへ向けて情報を提示する出力インターフェース機能とを提供するシステムである。HMIシステム15は、ディスプレイ151と、スピーカ152と、HCU(HMI Control Unit)153を備える。なお、ユーザへの情報提示の手段としては、ディスプレイ151及びスピーカ152の他、バイブレータや、照明装置等を採用可能である。
【0052】
ディスプレイ151は、HCU153から入力された信号に対応する画像を表示するデバイスである。ディスプレイ151は、例えば、インストゥルメントパネルの車幅方向中央部の最上部に設けられた、いわゆるセンターディスプレイである。ディスプレイ151は、フルカラー表示が可能なものである。ディスプレイ151は、例えば液晶ディスプレイや、OLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイ等を用いて実現されている。なお、ディスプレイ151は、運転席の正面に設けられたメータディスプレイであってもよい。また、ディスプレイ151は、フロントガラスの運転席前方の一部分に虚像を映し出すヘッドアップディスプレイであってもよい。スピーカ152はHCU153からの入力信号に対応する音を出力する装置である。音との表現には、通知音のほか、音声や音楽などが含まれる。
【0053】
HCU153は、ユーザへの情報提示を統合的に制御する構成である。HCU153は、例えばCPUやGPUなどのプロセッサと、RAM(Random Access Memory)と、フラッシュメモリ等を用いて実現されている。HCU153は、運転支援ECU20から提供される情報や、図示しない入力装置からの信号に基づき、ディスプレイ151の表示画面を制御する。入力装置とはディスプレイ151に積層されたタッチパネルやステアリングスイッチ、音声入力装置などを指す。HCU153は、運転支援ECU20からの要求に基づき、信号機9の認識状態を示すアイコン画像をディスプレイ151に表示する。
【0054】
走行アクチュエータ16は、走行用のアクチュエータ類である。走行アクチュエータ16には例えば制動装置としてのブレーキアクチュエータや、電子スロットル、操舵アクチュエータなどが含まれる。操舵アクチュエータには、EPS(Electric Power Steering)モータも含まれる。走行アクチュエータ16は運転支援ECU20によって制御される。なお、運転支援ECU20と走行アクチュエータとの間には、操舵制御を行う操舵ECU、加減速制御を行うパワーユニット制御ECU、及びブレーキECU等といった他のECUが介在していてもよい。
【0055】
運転支援ECU20は、前方カメラ11の検出結果をもとに運転席乗員の運転操作を支援するECUである。例えば運転支援ECU20は前方カメラ11の検出結果をもとに、走行アクチュエータ16を制御することにより、運転操作の一部または全部を運転席乗員の代わりに実行する。運転支援ECU20は、ユーザによる自律走行指示が入力されたことに基づいて、自車両を自律的に走行させる自動運転装置であってもよい。
【0056】
運転支援ECU20は、プロセッサ21、RAM22、ストレージ23、通信インターフェース24、及びこれらを接続するバス等を備えたコンピュータを主体として構成されている。プロセッサ21は、RAM22と結合された演算処理のためのハードウェアである。プロセッサ21は、CPU等の演算コアを少なくとも一つ含む構成である。プロセッサ21は、RAM22へのアクセスにより、種々の処理を実行する。ストレージ23は、例えばフラッシュメモリやEEPROM(登録商標、Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等といった、不揮発性の記憶媒体を用いてなるメモリデバイスである。ストレージ23には、プロセッサ21によって実行されるプログラムとして、運転支援プログラムが格納されている。プロセッサ21が上記プログラムを実行することは、運転支援プログラムに対応する方法としての運転支援方法が実行されることに相当する。通信インターフェース24は、車両内ネットワークNwを介して他の装置と通信するための回路である。通信インターフェース24は、アナログ回路素子やICなどを用いて実現されればよい。
【0057】
<運転支援ECU20について>
ここでは
図4を用いて運転支援ECU20の機能及び作動について説明する。運転支援ECU20は、プロセッサ21がストレージ23に保存されている運転支援プログラムを実行することにより、
図4に示す種々の機能ブロックに対応する機能を提供する。すなわち、運転支援ECU20は機能ブロックとして、暫定位置取得部F1、地図取得部F2、カメラ出力取得部F3、車両状態取得部F4、ローカライズ部F5、環境認識部F6、制御計画部F7、制御実行部F8、及び報告処理部F9を備える。
【0058】
暫定位置取得部F1は、ロケータ13から自車両の位置座標である自車位置情報を取得する。なお、暫定位置取得部F1が、ロケータ13の機能を備えていても良い。また、暫定位置取得部F1は、後述するローカライズ部F5が算出した自車位置を起点として、ヨーレートセンサ等の出力をもとにデッドレコニングを逐次行いうる。
【0059】
地図取得部F2は、V2X車載器14を介して地図配信サーバ4と無線通信することで、自車両の現在位置に対応する地図データを取得する。例えば、地図取得部F2は自車両が所定時間以内に通過予定の道路に関する部分的な地図データを地図配信サーバ4に要求して取得する。地図配信サーバ4から取得した地図データは例えば地図保持部M1に保存される。地図データのダウンロードは、例えばマップタイルなどといった所定の配信単位で実施される。
【0060】
地図保持部M1は、例えばストレージ23またはRAM22が備える記憶領域の一部を用いて実現されている。地図保持部M1は、非遷移的な、実体を有する記憶媒体を用いて実現されている。地図データには前述の通り、交差点ごとの信号機9の設置位置及びその通行可能パターンデータが含まれている。通行可能パターンデータは信号機応答方針データに相当するため、地図取得部F2が応答方針データ受信部に相当する。
【0061】
カメラ出力取得部F3は、地物や他の移動体などに対する前方カメラ11の認識結果を取得する。具体的には、カメラ出力取得部F3は、他の移動体の位置や移動速度、種別、及びサイズ等などを取得する。また、カメラECU112が先行車を識別可能に構成されている場合、カメラ出力取得部F3は、カメラECU112から先行車情報を取得する。先行車情報は、先行車の有無、先行車との車間距離、相対速度などを含みうる。
【0062】
また、カメラ出力取得部F3は、カメラECU112が信号機9を認識している場合、自車両向けの信号機についての情報を取得する。例えばカメラ出力取得部F3は、特に自車両向けの信号機9の位置及び点灯状態に係る認識結果をカメラECU112から取得する。その他、カメラ出力取得部F3は、前方カメラ11から、交通標識、車線区画線、道路端などといったランドマークの相対位置座標及び種別などを取得する。カメラ出力取得部F3及びカメラECU112の両方又は何れか一方が点灯状態取得部に相当する。
【0063】
車両状態取得部F4は、車両内ネットワークNwを介して車両状態センサ12などから、走行速度、進行方向、時刻情報、天候、車室外の照度、ワイパーの動作速度、シフトポジションなどを取得する。また、車両状態取得部F4は、ドライバによる運転操作状態を示す情報である操作情報を取得する。例えば、車両状態取得部F4は操作情報としてブレーキペダルの踏込状態や、アクセルペダルの踏込状態を取得する。踏込状態には、踏み込みの有無や、踏込量/踏込力が含まれる。
【0064】
ローカライズ部F5は、カメラ出力取得部F3が取得したランドマーク情報と地図情報とに基づくローカライズ処理を実行する。ローカライズ処理は、前方カメラ11で撮像された画像に基づいて特定されたランドマーク等の位置と、地図データに登録されている地物の位置座標とを照合することによって自車両の詳細位置を特定する処理を指す。ローカライズ部F5は、ローカライズの準備処理として、カメラECU112から取得したランドマークの相対位置座標を、グローバル座標系における位置座標(以降、観測座標とも記載)に変換しうる。ランドマークの観測座標は、例えば自車両の現在位置座標と、自車両に対する地物の相対位置情報とを組み合わせることで算出される。なお、自車両の現在位置座標を用いたランドマークの観測座標の算出はカメラECU112が実施しても良い。
【0065】
ローカライズ部F5は、ランドマークごとの観測座標に基づいて、地図に登録されているランドマークと前方カメラ11で観測されているランドマークとの対応付けを行う。観測されているランドマークと地図に登録されているランドマークとの対応付け(照合)は位置座標と種別情報とを用いて実施されうる。また、ランドマークの照合に際しては例えば形状,サイズ,色等の特徴量を用いて、特徴の一致度合いがより高いランドマークを採用することが好ましい。
【0066】
ローカライズ部F5は、観測されているランドマークと、地図上のランドマークとの対応付けが完了すると、観測されている離散型ランドマークとの距離情報を用いて、縦位置推定を行う。縦位置推定は、道路延設方向における自車位置を特定する処理に相当する。例えばローカライズ部F5は、観測されている離散型ランドマークに対応する地図上のランドマークの位置座標から、当該ランドマークに対する自車両の観測距離だけ進行方向逆側ずらした位置を、道路延設方向における自車位置に設定する。例えば、画像認識の結果として自車両正面に存在する方面看板までの距離が40mと特定している状況においては、地図データに登録されている当該方面看板の位置座標から40mだけ車両後方にずらした位置に自車両が存在すると判定する。このような縦位置推定を行うことにより、交差点や、カーブ入口/出口、トンネル入口/出口、渋滞の最後尾などといった、道路上の特徴点、換言すればPOIまでの詳細な残り距離が特定される。
【0067】
また、ローカライズ部F5は、横位置推定処理として、前方カメラ11で認識されている左右の道路端/区画線からの距離に基づいて、道路に対する自車両の横方向位置を特定する。例えば、画像解析の結果として、左側道路端から車両中心までの距離が1.75mと特定されている場合には、左側道路端の座標から右側に1.75mずれた位置に自車両が存在すると判定する。ローカライズ部F5は、前方カメラ11で認識されている左右の道路端からの距離、あるいは自車側方に存在する区画線の数/線種に基づいて、自車レーンの識別子である自車レーンIDを特定しうる。自車レーンIDは、例えば左端または右端の道路端から何番目のレーンを自車両が走行しているかを示す。自車レーンIDは自車レーン番号と呼ぶこともできる。自車レーンはエゴレーンと呼ぶこともできる。ローカライズ部F5が自車レーン認識部に相当する。なお、自車レーン番号の特定機能はカメラECU112など、他のECUが備えていても良い。自車レーン認識部は、他のECUで決定された自車レーン番号を取得する構成であってもよい。他のECUで決定された自車レーン番号を取得する構成もまた、自車レーンが道路端から何番目のレーンに該当するかを認識する構成に相当する。
【0068】
ローカライズ部F5は、所定の位置推定周期でローカライズ処理を逐次行う。位置推定周期のデフォルト値は200ミリ秒や400ミリ秒であってもよい。例えばローカライズ部F5は、離散型ランドマークを認識(換言すれば捕捉)できている限りは縦位置推定処理を逐次実施する。ローカライズ部F5は、離散型ランドマークを認識できていない場合であっても、区画線及び道路端の少なくとも何れか一方を認識できている限りは、横位置推定処理を逐次行う。ローカライズ処理の結果としての自車位置は、地図データと同様の座標系、例えば緯度、経度、高度で表現される。ローカライズ部F5が算出した自車位置情報は暫定位置取得部F1や環境認識部F6などに提供される。
【0069】
環境認識部F6は、主としてカメラ出力取得部F3が取得した前方カメラ11での認識結果等に基づいて、自車両の周囲の環境である周辺環境を認識する。ここでの周辺環境には、自車両の現在位置や、自車レーン、道路種別、制限速度、信号機9などの相対位置が含まれる。自車両前方に信号機9が存在する場合には、当該信号機9の点灯状態も周辺環境に含まれる。周辺環境には、他の移動体の位置や移動速度、周辺物体の形状及びサイズ等なども含めることができる。環境認識部F6は、カメラ出力取得部F3と統合されていてもよい。
【0070】
また、環境認識部F6は、地図データが含む前方信号機の通行可能パターンデータを用いて、前方信号機の点灯状態が通行可能パターンに該当するかを判定する。具体的には、環境認識部F6は、地図データが含む前方信号機の通行可能パターンデータと、自車レーン番号と、前方カメラ11で認識されている信号機の点灯状態と、に基づいて、信号機の点灯状態が通行可能なパターンに該当するかを判定する。環境認識部F6が通行可否判定部に相当する。なお、当該判定機能は、制御計画部F7が備えていても良い。機能配置は適宜変更可能である。
【0071】
環境認識部F6は、複数の周辺監視センサのそれぞれから検出結果を取得し、それらを組み合わせることにより、自車周辺に存在する物体の位置及び種別を認識してもよい。周辺監視センサとは、車外の物体を認識するセンサであり、ミリ波レーダやLiDARなどを指す。前方カメラ11など車外を撮像するカメラもまた、周辺監視センサに該当する。
【0072】
例えば環境認識部F6は、前方カメラ11での認識結果と測距センサでの検出結果を併用して周辺環境を認識しても良い。より具体的には、環境認識部F6は、前方系の測距センサの結果を用いて先行車との車間距離や相対速度等を特定しても良い。測距センサは、ミリ波レーダやLiDAR、ソナーといった、探査波を送受信することで、検出範囲にある物体を検出する周辺監視センサに相当する。前方系の測距センサとは、自車両前方を検出範囲に含む測距センサを指す。
【0073】
その他、環境認識部F6はV2X車載器14が他車両から受信した他車両情報や、路車間通信にて路側機から受信した交通情報等を用いて周辺環境を特定しても良い。路側器から取得できる交通情報には道路工事情報や、交通規制情報、渋滞情報、気象情報、制限速度などを含めることができる。環境認識部F6は、複数のデバイスから入力される外部環境を示す情報を統合することにより、走行環境を認識しうる。
【0074】
制御計画部F7は、環境認識部F6で認識された走行環境、及び、地図データを用いて、ユーザの運転操作を支援するための車両制御の計画を生成する。例えば制御計画部F7は、自車両の前方に信号機9が存在することが確認されている場合には、信号機9の点灯状態に応じた車両制御の計画を作成する。例えば信号機9から100m手前に自車両が到達した時点での信号機9の点灯状態が、停止パターンに該当する場合には、信号機9の所定距離手前で停車するように減速する走行計画を作成する。停止パターンは、交差点への進入が禁止されている点灯パターンに相当する。仮に先行車が存在しない場合、あるいは、先行車との車間距離が所定値以上である場合には、信号機9の点灯状態に対する応答としての停車位置は、地図データに示される一時停止線の位置とすることができる。
【0075】
また、制御計画部F7は、先行車が存在する状況において信号機9が停止パターンに該当する場合には、先行車の所定距離の後方で停車するように、制御計画を随時更新しても良い。信号機9の点灯状態が通行可能パターンである場合には、交差点を通過するための制御計画を策定する。通行可能パターンとは、自車両の交差点への進入及び通過を許可する点灯状態である。通行可能との表現は進入可能と言い換えることができる。また、通行不可との表現は、交差点への進入禁止或いは通行禁止と言い換えることとができる。交差点への進入及び通過を許可する点灯状態とは、丸型の緑色灯が点灯している場合のほか、自車レーンの進行方向に対応する緑矢灯が点灯している場合などである。
【0076】
信号機9の点灯状態へのシステム応答としての制御計画は、信号機9から所定距離(例えば100mや50m)手前に自車両が到達した時点での信号機9の点灯状態に基づいて生成され、点灯状態の変化等に基づいて随時更新されうる。便宜上、信号機9が設けられた道路を通過する際の走行を支援する車両制御のことを信号機通過支援と称する。信号機通過支援には、走行速度の自動調整、例えば信号機9の手前で停車するためのブレーキ制御の実行が含まれる。なお、信号機通過支援は、HMIシステム15と連携して、信号機9の存在や、信号機9の点灯状態をユーザに通知する処理であってもよい。信号機通過支援の制御計画は、信号機9の点灯状態の変化に基づいて随時更新されうる。
【0077】
その他、制御計画部F7は、認識した自車レーンの中央を走行するための操舵量の制御スケジュールを含む制御計画を作成したり、認識した先行車の挙動又は走行軌跡に沿う経路を走行計画として生成したりしてもよい。運転支援ECU20は、先行車に対して所定距離を保持して追従走行するように自車両の走行を制御する先行車追従制御を行いうる。走行計画には、算出した経路における速度調整のための加減速のスケジュール情報や、操舵角の制御スケジュール情報を含みうる。
【0078】
制御実行部F8は、制御計画部F7で決定された制御計画に対応する制御信号を、制御対象とする走行アクチュエータ16及び又はHCU153へ出力する構成である。例えば減速が予定されている場合には、ブレーキアクチュエータや、電子スロットルに対して計画された減速度を実現するための制御信号を出力する。また、信号機通過支援の実行状態を示す画像や音声を出力させるための制御信号をHCU153に出力する。制御計画部F7、制御実行部F8、及び通知処理部Faが応答部に相当する。
【0079】
報告処理部F9は、自車両向けの信号機9の点灯状態に係る認識結果と、自車両の挙動を示す自車挙動データと対応付けたデータセットを、信号機応答報告として地図生成サーバ3に送信する構成である。報告処理部F9の作動については次に説明する。
【0080】
通知処理部Faは、信号機9の認識結果、及び、当該認識結果に対応する通行可否の判定結果をドライバに通知する処理を実行する。上記通知は、ディスプレイ151への画像表示や、スピーカ152からの音声メッセージ出力によって実現されうる。通知処理部Faは、信号機9の点灯状態の認識結果に付随する画像として、停止すべきこと換言すれば進入禁止であることを示す進入禁止画像Im1、及び、通行可能であることを示す通行可能画像Im2を、選択的にディスプレイ151に表示しうる。通知処理部Faは、信号機9が設けられている交差点までの残り距離Drmが後述する制御続行判断距離Dcn未満であることを条件として、信号機9の認識結果及び通行可否の判断結果にかかる画像表示を実施する。なお、通知処理部Faによる種々の通知処理は、制御計画部F7の計画に沿って実施される。運転支援ECU20は、通知処理部Faを制御実行部F8の一部として備えていても良い。
【0081】
進入禁止画像Im1及び通行可能画像Im2はそれぞれ、信号機点灯状態の認識結果を示す認識結果画像Imsと、通行可否を示す判断結果画像Imkとを含みうる。進入禁止画像Im1は例えば
図5に示すように、停止指示マークImk1と、赤信号アイコンIms1とを含む。また、通行可能画像Im2は、
図6に示すように通行可能マークImk2と、緑信号アイコンIms2とを含む。停止指示マークImk1と通行可能マークImk2が判断結果画像Imkに相当する。赤信号アイコンIms1と緑信号アイコンIms2が認識結果画像Imsに相当する。通知処理部Faは、認識結果画像Imsとして、予め用意されている表示用画像データベースのなかから、認識されている実際の信号機9の形状/配列タイプに適合する画像を選択表示するよう構成されていても良い。例えば緑矢灯が認識されている場合には、緑矢灯を含む信号機9のアイコン画像が選択的に表示されても良い。なお、通行可能マークImk2が含む文字列は、「PASSABLE」に限らず、例えば「GO」などであってもよい。また、これらの画像に含まれるテキストは、使用地域の公用語に変換されうる。判断結果画像Imkはテキストを含まない、通行の可否を表現した図(いわゆるピクトグラム)などであっても良い。
【0082】
運転支援ECU20が交差点通過支援にかかるシステム作動状態を示す画像としてドライバに提示すべき情報は、(1)前方に信号機9があることと、(2)進むか止まるかの判断結果、の2つである。認識結果画像Imsによって提示されうる具体的な認識結果は任意の要素である。通知処理部Faは、認識されている点灯状態を反映した信号機9画像の代わりに、信号機9の形状又は配列タイプのみを模したアイコン画像を判断結果画像と並列的に表示しても良い。
【0083】
<報告処理部F9の作動フローについて>
次に
図7に示すフローチャートを用いて報告処理部F9が実行する信号機応答報告処理について説明する。
図7に示すフローチャートは例えば車両の走行用電源がオンとなっている間、所定の周期(例えば200ミリ秒毎)に実行される。走行用電源は、例えばエンジン車両においてはイグニッション電源である。電気自動車やプラグインハイブリッド車などといった、電動車においてはシステムメインリレーが走行用電源に相当する。本実施形態では一例として信号機応答報告処理はステップS101~S106を備える。なお、本開示におけるフローチャートは何れも一例であって、ステップ数や処理順序、実行条件などは適宜変更可能である。
【0084】
なお、ローカライズ部F5は、
図7に示すフローチャートとは独立して、換言すれば並列的に、運転支援ECU20はローカライズ処理を逐次実施する。具体的には、ローカライズ部F5は、ランドマークを用いてローカライズ処理を逐次実施する。ローカライズ処理を実行することにより、地図上における自車両の詳細位置が決定される。
【0085】
まずステップS101は環境認識部F6が、前方カメラ11などからの信号に基づいて走行環境を認識するステップである。ステップS101では環境認識部F6は信号機情報や、先行車情報、区画線の認識結果などを取得する。信号機情報には、信号機9の有無や、信号機9が存在する場合には信号機9までの残り距離、点灯状態などが含まれる。先行車情報には、先行車の有無や、先行車が存在する場合には、当該先行車との車間距離や相対速度、灯火装置の点灯状態などが含まれる。灯火装置の点灯状態とはウインカーやブレーキランプなどの点灯状態を指す。また、ステップS101では自車両の車速や、ヨーレートなどといった自車両の挙動や、ドライバの操作情報を取得する。
【0086】
ステップS102ではローカライズ部F5が、前方カメラ11からの入力信号に基づいて、自車位置座標を特定するとともに、自車レーンIDを特定する。なお、ステップS102はステップS101と統合されていても良い。
【0087】
ステップS103では環境認識部F6が、前方カメラ11で自車両向けの信号機9が検出されているか否かを判定する。自車両向けの信号機9が検出されていない場合にはステップS103を否定判定して本フローを終了する。一方、自車両向けの信号機9が検出されている場合にはステップS104を実行する。なお、検出されている信号機9が自車両向けの信号機9であるか否かの識別には、地図データが用いられても良い。環境認識部F6は、地図データに示される信号機9の位置やサイズ、配列タイプ、補助灯火の有無などにかかる情報をもとに、前方カメラ11で検出されている信号機9が自車両向けの信号機9か否かを判定しても良い。
【0088】
ステップS104ではカメラ出力取得部F3が、自車両向けの信号機9の点灯状態に対する認識結果を取得する。例えば点灯部の色を取得する。仮に複数の灯火部が点灯している場合にはそれぞれの点灯色を取得する。また、カメラ出力取得部F3は、可能であれば点灯部の形状、例えば丸か矢印かなどを取得しうる。加えて、カメラ出力取得部F3は、可能であれば筐体に対する点灯部の位置を取得しうる。
【0089】
ステップS105では報告処理部F9が、信号機応答報告を送信するための条件である送信条件が充足しているか否かを判定する。送信条件が充足している場合には、報告処理部F9がステップS106として、信号機応答報告を送信する。信号機応答報告は、自車両向けの信号機9の点灯状態に対して、自車両/他車両が停車したか通過したか、つまりどのように応答したかを示すデータセットである。
【0090】
信号機応答報告は、信号機9において点灯部の色の組み合わせと、それに対する自車両の挙動を示すデータセットである。例えば信号機応答報告は、
図8に示すように、対象情報、報告元、点灯状態情報、自車両挙動情報、及び先行車情報を含みうる。対象情報は、どの信号機9についての報告かを地図生成サーバ3が特定するための情報である。例えば対象情報は、信号機9ごとに割り当てられる固有の識別番号である信号機IDによって表現される。対象情報は、信号機9の位置座標と、進行方向の組み合わせによって表現されても良い。報告元情報は、どのレーンを走行している車両からの報告かを地図生成サーバ3が特定可能な情報を含んでいれば良い。例えば報告元情報は、自車レーンIDで表現されうる。報告元情報は、報告元としての車両が位置していたレーンIDに加えて、道路リンクIDまたは進行方向が含まれていることが好ましい。
【0091】
点灯状態情報は、信号機9の点灯部の色の組み合わせについての情報である。点灯状態情報は、点灯部の数を含んでいても良い。点灯状態情報は、仮に点灯部の形状を認識出ている場合には、点灯部の形状情報を含みうる。報告処理部F9は、降雨などの環境要因により、点灯部の形状を取得不能であった場合には形状は不明であった旨の報告を実施しても良い。なお、信号機応答報告は、自車両向けの信号機9が緑矢灯を備え、且つ、その緑矢灯が点灯していた場合には、点灯している緑矢灯部の色及びその方向を示す情報を含みうる。信号機応答報告に含まれる自車両の挙動データとは、交差点、換言すれば、信号機の点灯状態に対する自車両の挙動を示すものである。信号機応答報告に含まれる自車両の挙動データは、例えば交差点前で停止したか、停止せずに交差点を通過できたかなどを示す。報告処理部F9は、信号機の点灯状態に対する自車両の挙動を、交差点前で所定秒以上停車したか、一時停止を伴わずに交差点を通過できたか、一時停止の後に交差点を通過したかなどに細分化して報告してもよい。なお、ここでの一時停止とは、交通状況の確認のための停止であって、例えば5秒未満の停止とすることができる。自車両挙動データは、停車時点又は交差点通過時点から過去所定時間以内における、車速、ブレーキペダルの踏込量、及びアクセルペダルの踏込量などの時系列データを含みうる。ブレーキ/アクセルペダルの踏込量の時系列データの代わりに/並列的に、加速度の時系列データが含まれていても良い。
【0092】
信号機応答報告には、先行車との車間距離や、先行車のブレーキランプの点灯状態などといった、先行車情報が含まれていても良い。また、他の態様として信号機応答報告には、筐体に対する点灯部の相対位置情報が含まれていても良い。すなわち、どこが何色に点灯しているかに関する情報が含まれていても良い。さらに、信号機応答報告には、信号機9にかかる参考情報として、配列タイプや、緑矢灯の有無などの構成情報が含まれていても良い。配列タイプは、縦型か横型かを指す。
【0093】
信号機応答報告の送信条件には、信号機9までの残り距離が所定の報告距離以下であることを採用可能である。報告距離は例えば、10mや、15m、20m、50mとすることができる。報告距離は、信号機9の点灯状態にかかる認識精度が所定値以上となることが期待される値に設定されている。送信条件は、後述する信号機応答方針データの生成に際してノイズとなりうる情報、換言すれば有用性の低い/不要な情報が送信されることを抑制可能に設定される。
【0094】
なお、報告処理部F9は、信号機9までの残り距離が報告距離以上であっても、信号機9の手前で自車両が停車した場合、あるいは、ドライバのブレーキ操作を検出したことに基づいて信号機応答報告を送信しても良い。また、報告処理部F9は、運転支援ECU20による自動的な速度調整制御を実行されている状態において、自動制御内容とは相反するドライバ操作を検出した場合にも、信号機応答報告を送信しても良い。先行車追従制御中のドライバ操作は、いわゆるオーバーライド操作とも称される。例えば信号機手前での停車に向けた自動的な減速中においてドライバによるアクセルの踏み込みを検出した場合には、信号機応答報告を送信しても良い。また、先行車追従制御を実施中においてドライバのブレーキ操作を検出したことをトリガとして、信号機応答報告を送信しても良い。報告処理部F9は、信号機/交差点までの残り距離が所定値以下である状態において、信号機9の点灯状態の変化を検知したことをトリガとして、信号機応答報告を送信しても良い。信号機応答報告を送信するイベント(トリガ)である報告イベントとしては、ドライバ操作や、先行車両の停車/発進、点灯状態の変化などを採用可能である。
【0095】
報告処理部F9は、緑矢灯が点灯していること、あるいは、複数の灯火部が点灯していることを条件として、信号機応答報告を送信するように構成されていても良い。また、報告処理部F9は、矢灯器付き信号機9Aを通過する場合にのみ、信号機応答報告を送信するように構成されていても良い。報告処理部F9は、1つの信号機9の通過にかかる一連の自車両の挙動データ等を1つのデータセットにまとめて送信しても良いし、複数個に分けて送信しても良い。また、報告処理部F9は、先行車や自車両が発進した際の信号機9の点灯状態を示すデータセットを信号機応答報告として送信しても良い。報告処理部F9は、先行車や自車両が停止した際の信号機9の点灯状態を示すデータセットを信号機応答報告として送信しても良い。
【0096】
さらに、報告処理部F9は、隣接レーン向けの信号機9の点灯状態と、隣接レーンIDと、当該隣接レーン上を走行する他車両の挙動と、を示すデータセットを地図生成サーバ3に送信しても良い。そのように自車レーンにかかる情報だけでなく、隣接レーンにかかる情報も送信する構成によれば、信号機9の点灯状態に応じた適正な車両挙動を示すデータをより効率的に地図生成サーバ3に集めることが可能となる。
【0097】
なお、報告処理部F9は、信号機9の点灯状態に応じた自車両/他車両の挙動を示すデータの他に、地図データにおける道路構造や地物情報を更新するためのプローブデータを定期的に、又は、地図生成サーバ3からの指示に基づいてアップロードする。プローブデータは、車両の位置情報や、観測されている地物の位置情報などを含みうる。なお、信号機応答報告は、プローブデータの一種と解することもできる。プローブデータと信号機応答報告は統合されていても良い。信号機の点灯状態とそれに対する車両挙動を示す情報、及び、道路幅方向における自車両の走行位置を示す情報を含むデータセットが信号機応答報告に相当しうる。例えば信号機から所定距離以内に存在する場合に送信されるプローブデータが信号機応答報告に該当しうる。
【0098】
<地図生成サーバ3の構成について>
ここでは地図生成サーバ3の構成について説明する。地図生成サーバ3は
図9に示すように、通信装置31、サーバプロセッサ32、サーバメモリ33、サーバストレージ34、報告DB35、及び地
図DB36を備える。部材名称中のDBは、データベース(Database)の略である。
【0099】
通信装置31は、インターネットなどの広域通信ネットワークを介して各車両とデータ通信するための通信モジュールである。通信装置31は、例えば光ファイバなどを用いて広域通信ネットワークを構成する通信設備と相互通信可能に構成されている。これにより、地図生成サーバ3は、広域通信ネットワークに接続している車両とデータ通信可能となる。通信装置31は車両から受信したデータをサーバプロセッサ32に出力するとともに、サーバプロセッサ32から入力されたデータを、サーバプロセッサ32に指定された車両へと送信する。なお、地図生成サーバ3の通信相手としての車両との表現は、車両制御システム1、より具体的には運転支援ECU20と読み替えることができる。
【0100】
サーバプロセッサ32は、通信装置31から入力される信号/データに基づき多様な処理を実行する構成である。サーバプロセッサ32は通信装置31、サーバメモリ33、サーバストレージ34、報告DB35、及び地
図DB36のそれぞれと相互通信可能に接続されている。サーバプロセッサ32は、各種演算処理を実行する演算コアであって、例えばCPUやGPUなどを用いて実現されている。サーバメモリ33は、RAMなどの揮発性メモリである。サーバメモリ33は、サーバプロセッサ32による演算データが一時保存される。サーバストレージ34は、書き換え可能な不揮発性のメモリである。サーバストレージ34には、所定の地図生成プログラムが格納されている。サーバプロセッサ32が当該地図生成プログラムを実行することにより、後述する種々の機能部が実現される。なお、サーバプロセッサ32が地図生成プログラムを実行することは、当該プログラムに対応する方法である地図生成方法が実行されることに対応する。
【0101】
報告DB35は、車両から送信されてきた信号機応答報告を一時的に保存するためのデータベースである。報告DB35には、プローブデータも保存されうる。報告DB35は、書き換え可能な不揮発性の記憶媒体を用いて実現されている。報告DB35は、サーバプロセッサ32によるデータの書き込み、読出、削除等が実施可能に構成されている。
【0102】
地
図DB36は、冒頭で述べた地図データが格納されているデータベースである。地
図DB36は、書き換え可能な不揮発性の記憶媒体を用いて実現されている。地
図DB36は、サーバプロセッサ32によるデータの書き込み、読出、削除等が実施可能に構成されている。
【0103】
地図生成サーバ3は機能ブロックとして、報告受信部G1、地図更新部G2、及び送信処理部G3を備える。地図更新部G2はサブ機能として信号機応答方針生成部G21を備える。なお、信号機応答方針生成部G21は地図更新部G2とは独立して設けられていても良い。また信号機応答方針生成部G21から独立した構成としての地図更新部G2は、任意の要素であって省略されても良い。地図生成サーバ3が車両用データ生成サーバに相当する。
【0104】
報告受信部G1は、車両からアップロードされてきた信号機応答報告及びプローブデータを、通信装置31を介して取得する。報告受信部G1は、通信装置31から取得した信号機応答報告等を報告DB35に保存する。報告受信部G1は、受信した信号機応答報告を、対応する信号機9ごと、又は、報告元が走行していたレーンごとに区別して保存しうる。報告DB35に保存されているデータは、地図更新部G2及び信号機応答方針生成部G21などによって参照されうる。報告受信部G1が報告取得部に相当する。地図更新部G2は、複数の車両から送信されたプローブデータに基づいて、地図データを更新する処理を実施する。例えば、同一の地物に対して、複数の車両から報告された観測座標を統合処理することにより、当該地物の位置を決定し、地図データを更新する。地図更新部G2は、例えば所定の周期で地図データの更新を行う。
【0105】
信号機応答方針生成部G21は、複数の車両から提供された信号機応答報告に基づいて、信号機9ごと及びレーンごとの通行可能パターンを生成する構成である。レーンごとの通行可能パターンを生成する処理を、信号機応答方針生成処理とも称する。信号機応答方針生成処理は、緑矢灯が付与された信号機9を対象に実行されうる。信号機応答方針生成処理の詳細は別途後述する。
【0106】
送信処理部G3は、信号機データを含む地図データを、地図配信サーバ4に送信する構成である。地図配信サーバ4への地図データの送信は、地図配信サーバ4からの要求に基づいて実施されても良いし、定期的に実施されても良い。さらに送信処理部G3は、所定の送信イベントが生じたことに基づいて、一部又は全部の地図データを地図配信サーバ4に送信しても良い。例えば送信処理部G3は、プローブデータに基づく収録内容の変更(つまり地図更新)が行われたパッチのデータを地図配信サーバ4に送信しても良い。他の態様として、送信処理部G3は、車両からの要求に基づき、地図データを配信するように構成されていても良い。地図配信サーバ4及び運転支援ECU20などが、地図生成サーバ3にとっての外部装置に相当する。
【0107】
地図配信サーバ4は、地図生成サーバ3から提供された地図データを、車両からの要求に基づき、パッチ単位で要求元としての車両に配信するサーバである。例えば車両の地図取得部F2は、現在位置、及び、所定時間以内に通行予定のエリアに関する地図データを地図配信サーバ4に要求する。地図配信サーバ4は当該車両からの要求に基づいて、対応するパッチ地図データを配信する。なお、地図配信サーバ4は、地図データが備える多様な項目のうち、車両からの要求に基づき、一部の項目のみを配信するように構成されてもよい。例えば地図配信サーバ4は、車両からの要求に基づき、交差点の通行にかかる地図データとして、信号機データだけを対応するリンク/ノードデータと対応付けて車両に配信してもよい。
【0108】
<応答パターン生成について>
信号機応答方針生成部G21が信号機応答方針生成処理について、
図10に示すフローチャートを用いて説明する。
図10に示すフローチャートは、例えば所定の生成周期で実行される。生成周期は例えば1日や1週間、1ヶ月など、任意の期間に設定されている。信号機応答方針生成処理は一例としてステップS201~S205を含む。なお、信号機応答方針生成処理が備えるステップ数や処理手順は適宜変更可能である。信号機応答方針生成処理は、信号機9ごとに実施されうる。便宜上、処理対象とする信号機9を対象信号機とも記載する。なお、信号機応答方針生成処理は、緑矢灯を含む信号機9に対してのみ実行されても良い。
【0109】
ステップS201は、報告DB35より、対象信号機についての信号機応答報告を読み出すステップである。ステップS201は、複数の車両から対象信号機についての信号機応答報告を収集するステップであってもよい。各車両から送信された信号機応答報告を受信する処理は、随時実施される。
【0110】
ステップS202は、対象信号機についての報告が規定数以上集まっているか否かを判断するステップである。ここでの規定数は、例えば10や20とすることができる。なお、ステップS202は、レーンごとに、信号機応答報告が規定数以上集まっているか否かを判定するステップとすることもできる。
【0111】
対象信号機についての報告が規定数以上集まっている場合には、ステップS203に移る。なお、受信できている信号機応答報告の数が規定値未満であるレーンについては以降の処理を省略する。つまり、報告の受信数が既定値未満のレーンに対しては、通行可能パターンの決定を見送る。
【0112】
ステップS203では、収集されているレーンごとの信号機応答報告に基づいて、レーンごとの通行可能パターンを示すデータ、つまり通行可能パターンデータを生成する。
図11に示すレーン構造を備える道路に対して、
図12に示す信号機9が設けられている場合の、通行可能パターンデータの一例を
図13に示す。
図13は、
図11に示すレーン構成を有する道路に対して、
図12に示す右折用の緑矢灯AGが付与された信号機9が設けられている場合の通行可能パターンデータの一例である。
図11に示す道路は、片側3車線の道路であって、第1レーンが左折専用レーン、第2レーンが直進用レーン、第3レーンが右折専用レーンに設定されている道路を示している。
【0113】
図12のCGは緑色に点灯する丸形の灯火部である緑丸灯を示しており、CYは黄色に点灯する丸形の灯火部である黄丸灯を示している。CRは赤色に点灯する丸形の灯火部である赤丸灯を示している。
図12では一例として右向きの緑矢灯AGを示している。右向きの緑矢灯AGは、右折用の緑矢灯である。右向きの緑矢灯AGが点灯している状態は、右折可能であることを示す。
【0114】
図12に示す信号機9は、点灯パターンとして、
図12の(A)~(D)に示すように、緑丸灯のみが点灯している状態と、黄丸灯だけが点灯している状態と、赤丸灯のみが点灯している状態と、赤丸灯と緑矢灯が点灯している状態と、を巡回的に取りうる。そのような信号機9の点灯パターンに対し、信号機応答方針生成部G21は、レーンごとの車両からの報告に基づき、
図13に示す通行可能パターンデータを生成する。
【0115】
図13に示す点灯パターンの{G}は緑丸灯CGのみが点灯している状態を示し、{Y}は黄丸灯CYのみが点灯している状態を示す。点灯パターンとしての{R}は赤丸灯CRのみが点灯している状態を示す。{R、G}は、赤丸灯CRと緑矢灯AGとが点灯している状態を示す。図中に示すGは緑、Yは黄、Rは赤を意味している。
【0116】
また、
図13に示す通行可能レーンの{1,2,3}は第1、第2、第3レーンが通行可能であることを示す。{3}は第3レーンのみが通行可能であることを示す。
図13に示す{}(空集合)は、通行可能なレーンが存在しないこと、つまり、どのレーンの車両も通行できないことを示す。レーンごとの点灯状態に応じた通行可否は、点灯状態に紐づくレーンごとの車両挙動により決定される。
【0117】
なお、通行可能パターンデータの構成は
図13に示す構成に限定されない。例えば
図14に示すようにレーンごとに、通行可能な点灯状態を示すデータとして構成されていても良い。
図13と
図14は表現形式が異なるだけであって、実質的に等価である。
【0118】
信号機応答方針生成部G21は対象信号機に対する通行可能パターンデータの生成が完了すると(ステップS203)、当該データセットを地図データにおける信号機データの一部として地
図DB36に保存する(ステップS204)。地図データにおいて、信号機9ごとの通行可能パターンデータは、信号機IDなどを用いて地図データ内の信号機9と対応付けられている。また、対応する信号機9自体は、ノードデータやリンクデータなどのネットワークデータに紐付けられている。つまり、通行可能パターンデータは、ネットワークデータと紐付けられた態様で保存される。ステップS205は、送信処理部G3が生成された通行可能パターンデータを含む地図データを例えば地図配信サーバ4などの外部装置に送信するステップである。ステップS205は任意のタイミングで実行されうる。
【0119】
なお、本実施形態の信号機応答方針生成部G21は、信号機9の点灯状態に応じたレーンごとの応答方針を示すデータセットである信号機応答方針データとして、通行可能パターンデータを生成するが、これに限らない。信号機応答方針生成部G21は、信号機応答方針データとして、
図15及び
図16に示すように、停止パターンデータを生成しても良い。停止パターンデータは、レーンごとの停車すべき点灯パターンを示すデータセットである。地図配信サーバ4は、地図データの一部として通行可能パターンデータの代わりに停止パターンデータを配信しても良い。
【0120】
通行可能パターンとして定義されていない点灯色の組み合わせが停止パターンに該当する。つまり、停止パターンデータは、通行可能パターンデータの裏返しに相当する。
図15は、
図13に対応する停止パターンデータの構成を示したものあって、点灯パターンごとの停止すべきレーン番号を示している。
図16は停止パターンデータの他の表現形式を示したものであって、レーンごとの停止すべき点灯色の組み合わせを示している。停止パターンは、交差点内への進入を禁止する点灯パターンであるため、進入禁止パターンと言い換えることができる。
【0121】
本開示では、通行可能パターンデータと停止パターンデータとを区別しない場合には信号機応答方針データとも記載する。信号機応答方針データは、レーン別応答方針データと呼ぶこともできる。信号機応答方針データは、車両制御の実行を支援する車両用データ、つまり車両制御用のデータに相当する。通行可能パターンデータにかかる説明は適宜、停止パターンデータにも適用可能である。
【0122】
なお、信号機応答方針データにおいて、緑、黄、及び赤の何れか1つだけが点灯している状態である単色点灯パターンについてのデータは省略されても良い。例えば
図13に示す通行可能パターンデータは、
図17に示すように赤と緑が同時に点灯しているパターンについてのデータのみを備えるデータセットへと省略可能である。単色点灯パターンとは、点灯部が1つだけの状態に対応する。これに対し、本開示では、赤丸灯又は黄丸灯と、少なくとも1つの緑矢印が点灯しているパターンを混色点灯パターンと称する。
【0123】
信号機応答方針データは、混色点灯パターン、換言すれば緑矢灯にかかる点灯パターンだけを含むように構成されていても良い。単色点灯パターンに対しては、運転支援ECU20は点灯している色に従えばよく、地図データとして配信する必要性が低いためである。一方、混色点灯パターンにおいては、例えば車両が信号機から遠方にあって、緑矢灯の向きが不明である場合、自車両が停車すべきなのか否かが判別できない。そのような事情を踏まえると、混色点灯パターンにおけるレーンごとの通行可否を示すデータセットは、相対的に車両制御の計画/実行上、有用な情報となりうる。信号機応答方針生成部G21が、信号機応答方針データとして、混色点灯パターンに対するレーンごとの通行可否を示すデータのみを備えるデータセットを生成する構成によれば、配信データサイズを抑制可能となる。
【0124】
また、信号機応答方針生成部G21は、矢灯器付き信号機9Aに対してのみ、信号機応答方針データを生成するように構成されていても良い。矢灯器が具備されていない信号機9である標準信号機に対しては信号機応答方針データを生成しない構成によっても、配信データサイズを抑制可能となる。なお、上記システム構成によれば、運転支援ECU20は矢灯器付き信号機9Aについては信号機応答方針データを取得可能であるため、矢灯器付き信号機9Aが設けられた交差点の通行可否を判断しやすくなる。
【0125】
ところで、赤丸灯だけが点灯している場合であっても右端レーンは右折可能、或いは左端のレーンは左折可能である地域/交差点も想定される。また、「NO TURN ON RED」などの特定の標識により、地域の基本ルールとは異なるルール(以降、例外ルール)が限定的に適用される交差点もある。信号機応答方針生成部G21は、矢灯器又は標識によって例外ルールが適用される交差点に対し、信号機応答方針データとして、点灯パターンごとの通行可能な/通行不能なレーン番号を示すデータセットを生成することが好ましい。例外ルールが適用される信号機に対してのみ、信号機応答方針データを生成/配信する構成によれば、配信される地図データサイズを抑制可能となる。
【0126】
<信号機応答方針データの補足>
信号機9が備える緑矢灯の数や点灯パターンは多様である。例えば、
図18に示すように緑矢灯AGとして、左折用の緑矢灯AG1、直進用の緑矢灯AG2、右折用の緑矢灯AG3が付与された信号機9も存在しうる。仮にこのような信号機9が、混色点灯パターンとして、
図18(A)に示す第1パターンと、(B)に示す第2パターンを取りうる場合、信号機応答方針生成部G21は、レーンごとの車両からの報告に基づき、
図19に示す通行可能パターンデータを生成しうる。第1パターンは、赤丸灯CRと、左折用緑矢灯AG1と、直進用緑矢灯AG2とが同時に点灯するパターンである。第2パターンは、赤丸灯CRと、右折用緑矢灯AG3とが点灯するパターンである。
【0127】
第1パターンと第2パターンとは、緑矢灯の点灯数が相違するため、信号機9のどこが点灯しているかといった、より詳細な情報を含まなくとも、通行可能なレーンを区別可能である。よって、このような点灯パターンを取りうる信号機9に対して、筐体における点灯部の位置情報を含まない簡素なデータセットでも、車両は点灯状態に応じて適正に通行の可否を判断可能となる。なお、
図19の(A)と(B)は、表現形式が異なるだけで、同じ内容である。
図19の(A)及び(B)はともに、点灯色ごとの数の組み合わせにて通行可能なレーン番号を示している。
図19に示す信号機応答方針データは、
図23や
図15、
図16、
図17などの形式で表現可能である。
【0128】
ところで、複数の緑矢灯を備える信号機9の他の点灯パターンとしては、
図20に示すように、赤丸灯とともに、複数の緑矢灯AGを1つずつ点灯させるパターンもありうる。すなわち、赤丸灯CRと左折用緑矢灯AG1とが点灯するパターンと、赤丸灯CRと直進用緑矢灯AG2とが点灯するパターンと、赤丸灯CRと右折用緑矢灯AG3とが点灯するパターンと、が存在しうる。このようなケースにおいては、赤と緑が点灯しているといった情報だけでは、レーンごとの通行可否を切り分けることができない。点灯色ごとの数の組み合わせは同一であるものの、緑灯火の点灯位置に応じて、通行可能なレーン番号は異なるためである。点灯色ごとの数の組み合わせだけではレーンごとの通行可否を切り分けることができない場合、
図21に示すように、切り分け不能な点灯パターンに対応する通行可能なレーン番号を示すデータフィールドには、所定の特殊値(図では「X」)が挿入されてもよい。特殊値は、通行可能なレーンが不明であることを示す値(コード)である。特殊値は、自車レーンが通行可能かもしれないことを示唆する。運転支援ECU20は、前方カメラ11で認識されている点灯パターンが、特殊値に対応する点灯パターンに該当する場合、自動的な減速制御などは行わずに、ドライバに対して矢印の方向を確認した上で、運転操作するように要求してもよい。
【0129】
<通行可能パターンデータを用いた車両制御例>
ここでは
図22に示すフローチャートを用いて、通行可能パターンデータを用いた車両制御の例、換言すれば運転支援ECU20の作動例に説明する。本開示では
図22に示すフローチャートに対応する処理を、信号機通過支援処理とも称する。信号機通過支援処理は、一例としてステップS301~S314を備える。信号機通過支援処理は、走行用電源がオンになっている間、200ミリ秒など所定の周期で実行される。信号機通過支援処理は、ドライバによって、運転支援ECU20による運転支援機能が有効化されていることを条件として実行される。本実施形態では一例として運転支援ECU20による運転支援には、先行車との車間距離に応じて走行速度を自動調整する制御が含まれるものとするが、これに限らない。運転支援は、走行制御までは行わずに、走行環境に応じた運転操作の提案に留まるものであってもよい。
【0130】
図22に示す信号機通過支援処理は、例えば信号機応答報告処理や地図のダウンロードにかかる処理など、前述の種々の処理と並列的に、又は、組み合わせて実施可能である。ここでは通行可能パターンデータが車両に配信される場合について述べるが、停止パターンデータが配信される場合についても同様に実施することができる。
【0131】
まずステップS301では環境認識部F6が、ステップS101と同様に、種々のデバイスからの信号に基づいて走行環境を示す情報を取得する。ステップS302ではローカライズ部F5が、前方カメラ11からの入力信号に基づいて、自車位置座標を特定するとともに、自車レーンIDを特定する。ステップS302はステップS301と統合されていても良い。ステップS303では環境認識部F6が、ステップS103と同様に、前方カメラ11で自車両向けの信号機9が検出されているか否かを判定する。自車両向けの信号機9が検出されていない場合にはステップS303を否定判定して本フローを終了する。一方、自車両向けの信号機9が検出されている場合にはステップS304を実行する。
【0132】
ステップS304では環境認識部F6が、ステップS303で検出された信号機9に対応する交差点までの残り距離(Drm)を取得する。交差点までの残り距離は、前方カメラ11から画像認識結果として取得しても良いし、地図データに示される交差点の位置情報と自車位置情報とを照らし合わせることで特定しても良い。交差点までの残り距離は、例えば交差点の手前に設けられている停止線までの残り距離とすることができる。
【0133】
ステップS305ではカメラ出力取得部F3が、自車両向けの信号機9の点灯状態に対する認識結果として、点灯部の色の組み合わせを取得する。例えば、点灯箇所が1つだけである場合にはその色を取得する。また、点灯箇所が複数ある場合にはその色の組み合わせと、色ごとの数を取得する。仮に
図18の(A)に示すように赤丸灯、左折用の緑矢灯、及び直進用の緑矢灯が点灯している場合、環境認識部F6は、点灯色の組み合わせが赤色灯火1つと緑色灯火2つであることを取得する。本実施形態において、点灯部の形状認識は任意の要素である。矢印の方向など、点灯部の形状まで特定できると好ましいが、点灯部の形状が不明である場合には、形状は不明であるものとして後続の処理を実行可能である。
【0134】
ステップS306では環境認識部F6が、交差点までの残り距離(Drm)が所定の制御続行判断距離(Dcn)未満となっているか否かを判定する。制御続行判断距離は例えば50mや75mなどである。制御続行判断距離は、道路の規模や、制限速度、現在の車速などに応じて変更されても良い。制御続行判断距離は、車速が大きいほど長く設定されうる。例えば制御続行判断距離は、交差点に到達するまでに所定の減速度で停止可能な値に設定されている。より具体的には、現在の速度をVo、減速度をaとすると、Drmは、Vo^2/(2a)に、所定の裕度εを加えた値とすることができる。裕度εは例えば10mや、15m、20mなどに設定されうる。裕度は、ドライバが加減速に係る運転操作を引き継ぐために必要な時間が確保されるように設定されている。
【0135】
交差点までの残り距離が制御続行判断距離未満である場合、つまりDrm<Dcnの関係が成立する場合には、ステップS307以降の処理を実行する。一方、交差点までの残り距離が制御続行判断距離以上である場合、つまりDrm≧Dcnの関係が成立する場合には、本フローを終了する。この場合、所定時間後にステップS301より本フローを再実行する。
【0136】
ステップS307では、信号機9の点灯状態が単色点灯パターンに該当するか否かを判定する。ステップS307は、概略的には、認識されている信号機9の点灯部が一箇所だけであるか否かを判定する処理と解することができる。なお、赤又は黄色の丸形灯火が点灯せずに複数の緑矢灯が点灯するパターン、つまり、緑矢灯だけが複数個同時に点灯するパターンも単色点灯パターンに含めることができる。
【0137】
信号機9の点灯状態が混色ではない場合にはステップS308に移り、制御計画部F7が点灯色に応じた制御を計画し、制御実行部F8がその計画に応じた制御を実行する。例えば、点灯色が赤である場合には、運転支援ECU20は停止に向けた減速制御を開始する。また点灯色が緑である場合には、先行車追従制御を継続する。なお、先行車追従制御がドライバ操作によりオフに設定されている場合には通行可能画像Im2の表示などの情報提示のみを実施しうる。ただし、右左折を計画している場合には、一時停止線で停車するための減速制御を開始する。
【0138】
点灯色が黄色である場合には、原則的には交差点の手前で停車するための減速制御を実行する。ただし、点灯色が黄色であることを認識した時点で、すでに交差点内に存在する場合には交差点を通過するための走行制御を実施する。また、点灯色が黄色であることを認識した時点で残り距離が制動距離未満となっている場合など、合理的な減速度で交差点の手前で停止不能と判断された場合にも交差点を通過するための走行制御を実施する。なお、本フローは所定の間隔で繰り返し実行されるため、信号機点灯状態の認識結果、及び、認識結果に応じた制御計画も随時動的に更新されうる。
【0139】
通知処理部Faは上記の判断結果と連動してディスプレイ151に、判断結果画像Imkなどを表示する。なお、システムが正常に動作している場合には、音を用いた通知を行うとドライバに煩わしさを与えうる。故に、特定のエラー状態に該当しない限りは、通知音など、音を用いた通知は行わないことが好ましい。もちろん、通知音や音声メッセージの出力条件は、所定の設定画面を介してドライバが設定変更可能に構成されていても良い。
【0140】
認識されている信号機9の点灯状態が混色点灯パターンに該当する場合、環境認識部F6は、ステップS309として認識されている点灯色の組み合わせと、自車レーンの通行可能パターンとを照らし合わせる。照合の結果、認識されている点灯色の組み合わせが、自車レーンの通行可能パターンと一致する場合、環境認識部F6は、交差点をこのまま通行可能と判定し、その旨を示す信号である通行可能信号を制御計画部F7に出力する。通行可能信号は、交差点を通行可能(進入可能)であることを示すメッセージ信号であっても良い。制御計画部F7は、環境認識部F6から通行可能信号が入力されていることに基づいて、交差点の通行にかかる計画を作成する。そして、制御実行部F8は、制御計画部F7が作成する計画のもと、予定経路に応じた制御支援を継続する(ステップS313)。
【0141】
例えば環境認識部F6で交差点を通行可能と判定されており、且つ、交差点での直進が予定されている場合には、制御実行部F8は、先行車追従制御を継続する。通知処理部Faは、交差点をこのまま通行可能と判定されており、且つ、交差点での直進が予定されている場合には、ステップS313としての車両制御と連動して、通行可能画像Im2をディスプレイ151に表示する。その際、特段の音声メッセージや通知音は出力しない。
【0142】
一方、環境認識部F6で信号機点灯状態が自車通行可能なパターンであると判定されている場合であっても、交差点での右左折を計画している場合には、制御計画部F7は、先行車追従制御を一時的に休止し、一時停止線で停車するための減速制御を開始する。これに合わせて、通知処理部Faは、右折先/左折先の交通状況の確認を促す音声報知を実施する。つまり、運転支援ECU20は、右左折にかかる運転支援を実施する。なお、先行車追従制御を休止することにより、先行車につられて加速/発進/交差点内への進入が自動的に実行される恐れを低減できる。
【0143】
また、認識されている点灯色の組み合わせが、自車レーンの通行可能パターンとして定義されていない場合には、環境認識部F6は、交差点への進入不可と判定し、所定の通行不可信号を制御計画部F7に出力する。通行不可信号は、交差点に進入禁止であることを示すメッセージであっても良い。制御計画部F7は、環境認識部F6から通行不可信号が入力されていることに基づいて停車に向けた減速制御にかかる計画を作成する。そして、制御実行部F8が停車に向けた減速制御を開始する(ステップS312)。
【0144】
通行不可信号が出力されている場合、制御計画部F7は所定のタイミングで先行車追従制御を一時的に休止しうる。先行車追従制御は、停止に向けた自動的な減速を開始したタイミングで休止されても良いし、時間差が設けられていても良い。先行車追従制御は、自車両が完全に停止するか、信号機との距離が所定値以下となるか、一時停止線に到達するまでは継続されても良い。通知処理部Faは、ステップS312としての車両制御と連動して、進入禁止画像Im1をディスプレイ151に表示する。この場合もシステム自体は正常に動作しているため、特段の音声メッセージや通知音は出力しない。なお、制御実行部F8は、自動的な減速制御を開始する代わりに、減速操作の実行をドライバに促す通知処理を実行してもよい。
【0145】
一方、認識されている点灯色の組み合わせが、通行可能パターンデータに定義されている、何れのレーンの通行可能パターンにも該当しない場合(ステップS310 NO)、環境認識部F6は、前方交差点の通行可否を判定不能と判定する。この場合、環境認識部F6判定不能信号を制御計画部F7に出力する。判定不能信号は、現在交差点に自車両が進入可能か否かを判定不能であることを示すメッセージであっても良い。
【0146】
制御計画部F7は、環境認識部F6から判定不能信号が入力されていることに基づいて、前方交差点の通過に係る運転支援を中断する(ステップS311)。例えば先行車追従制御や停止に向けた減速など、走行速度を自動調整する制御を終了する。この場合、通知処理部Faは、速度制御に係る支援を終了することを示す音声メッセージをスピーカ152から出力するとともに、同様の内容のテキストメッセージをディスプレイ151に表示する。速度制御に係る支援を終了することを示すメッセージとは、例えば「信号機の点灯状態を正常に認識できなかったため、制御を中断します」などである。なお、音声メッセージの代わりに/並列的に警告音を出力しても良い。当該通知が制御中止通知処理に相当する。
【0147】
以上では車両が走行中の場合について述べるが、交差点の手前で車両が停車している場合にも本開示は適用されうる。信号機9が赤色灯火から緑色灯火に代わった場合には、通知音とともに通行可能マークImk2などを表示しうる。また、認識されている点灯状態が単色点灯パターンに該当する場合も、環境認識部F6はその点灯色に応じて、通行可能信号又は通行不可信号を出力する。
【0148】
以上では、自車レーンを特定できていることを前提として運転支援ECU20の作動を説明したが、運転支援ECU20に起こりうるエラーとしては、自車レーンIDの特定失敗なども考えられる。環境認識部F6は、自車レーンIDを不明な状態が所定時間継続した場合にも、判定不能信号を出力しうる。判定不能信号は原因を示す情報を含んでいても良い。
【0149】
自車レーンIDが不明であることに由来する判定不能信号が出力された場合、通知処理部Faが操作要求処理を実施した上で、制御計画部F7が速度調整や車線維持に係る自動的な制御を終了する。操作要求処理は、信号機9の点灯状態に応じた運転操作を行うことを依頼するメッセージを音声及び画像にて出力する処理である。通知処理部Faは、自車レーンIDの特定失敗に由来して制御終了する場合、操作要求処理として「走行レーンが不明確であるため、制御を中断します」といった音声メッセージをスピーカ152から出力する。同様のテキストメッセージがディスプレイ151に表示されてもよい。通知処理部Faはシステムにエラーが生じた場合にのみ音を用いた通知を行うことによりドライバに煩わしさを与える恐れを低減しつつ、必要な情報をドライバに伝達可能となる。
【0150】
また、運転支援ECU20に起こりうるエラーとしては、地図データの取得失敗なども考えられる。環境認識部F6は、自車両の前方の地図データを取得できていない場合にも判定不能信号を出力しうる。制御計画部F7は、地図データの未取得に由来する判定不能信号が入力された場合にも、ドライバに権限移譲し、速度調整や車線維持に係る自動的な制御を終了する。
【0151】
さらに、
図21を用いて説明したように、緑矢灯の点灯を含むパターンにおいて、点灯色の組み合わせだけではレーンごとの通行可否を切り分け不能な類型に該当する場合にも、環境認識部F6は、通行の可否を判定不能と判定し、判定不能信号を出力しうる。この場合もまた、通知処理部Faが操作要求処理を実行するとともに、制御計画部F7が速度調整(換言すれば加減速)にかかる自動制御を中止する。なお、加減速にかかる自動制御を中止することは、速度の自動調整を中止すること、換言すれば、先行車追従制御を中止することに対応する。
【0152】
ところで、本実施形態では交差点までの残り距離Drmが制御続行判断距離Dcn未満である状態において判定不能信号が出力されたことに基づき操作要求処理が実行される。制御続行判断距離Dcnは、不急制動距離Dstpよりも長く設定されている。本開示における不急制動距離Dstpとは、ドライバに不快感を与えない範囲の所定加速度である基本減速度αで減速した場合の停止に必要な距離である。基本減速度αは1.0m/s^2や1.25m/s^2、1.5m/s^2などに設定されうる。適用される減速度をαとすると前述の通り、Dstp=Vo^2/(2α)で定まる。減速開始が必要なタイミングに対応する地点である減速開始地点は、交差点から不急制動距離Dstp以上手前の地点である。上記構成は、減速開始が必要なタイミングの所定時間前に、信号機9の認識エラーに伴う制御終了及び運転操作の引き継ぎ要求を行う構成に相当する。当該構成によればドライバは時間的に余裕を持って信号機の点灯状態の認知、判断、操作が可能となる。
【0153】
<上記構成による効果>
信号機9が備える個々の灯火部は先行車両などの物体に比べて小さいため、
図23に示すように車両が信号機9に対してある程度認接近してからでないと、カメラECU112は点灯している緑矢灯の矢印の方向までは判断できない。特に降雨時などの悪環境時は、形状が雨滴等でぼやけるため、矢印の向きを認識することが難しくなる。緑矢灯の向き/形状を認識可能な距離を仮に形状認識可能距離Daとすると、環境によっては、形状認識可能距離Daは不急制動距離Dstpよりも大きくなりうる。つまり、ブレーキをかけ始めるべき地点を過ぎてからでないと、緑矢灯の方向が特定できないことがある。
【0154】
信号機の認識結果を利用する交差点の通行支援を行う第1の比較構成としては、緑矢灯の方向を認識してからブレーキをかけ始める構成が考えられる。しかし、第1比較構成では、減速の開始が遅くなりうるため、交差点の手前で停止するためには相対的に大きい減速度が適用されうる。第1比較構成では上記の作用により、ドライバに不快感を与えることがありうる。
【0155】
また、他の比較構成である第2比較構成としては、緑矢灯の点灯を無視し、赤色灯火を認識した場合には停車に向けた制動を開始する構成が考えられる。しかし、第2比較構成では、本来は緑矢灯によって減速が不要である場合にも減速が行われうる。自車両が交差点での直進を予定しており、かつ、信号機が赤色灯火とともに直進用の緑矢灯が点灯している場合にも、第2比較構成では交差点前停止に向けた減速制御が行われうる。
【0156】
一方、
図23に示すように点灯部の形状までは特定困難であっても、緑色の灯火装置が点灯していることは相対的に遠くから認識できる。仮に緑矢灯が点灯していることを認識可能な距離を、点灯認識可能距離Dbとすると、点灯認識可能距離Dbは形状認識可能距離Daよりも大きい。
図23におけるPbは、緑矢灯が提供する緑色灯火が点灯していることを画像認識可能となる地点を示している。
図23におけるPaは、緑矢灯の向きを画像認識可能となる地点を示している。
【0157】
本開示は、上述の通り、緑矢灯であるか否か及び矢印の方向は識別できなくとも、緑色の灯火部が点灯していることは相対的に遠くから認識できることに着眼して創出されたものである。上記地図連携システムSysを構成するサーバは、レーンごとに通行可能な/停車すべき点灯色の組み合わせを示すデータセットを信号機応答方針データとして車両に配信する。当該構成によれば、運転支援ECU20は、点灯色の組み合わせだけで通行の可否が切り分け可能な信号機9については、点灯部の形状を識別できなくとも通行の可否を判断可能となる。つまり、点灯色の組み合わせからレーン毎に停車すべきか否かが一意に定まる交差点/信号機9に関しては、運転支援ECU20は、矢印の向きを認識可能となる前から(つまり早めに)停車すべきか否かを判断可能となる。よって、緩やかに減速することが可能となるとともに、不要な減速を行う恐れを低減できる。本開示は
図12や
図18に示すように、点灯している緑矢灯の数に応じてレーンごとの通行可否が一意に定まる信号機9/交差点に対して好適である。
【0158】
また、地図生成サーバ3は、複数の車両のそれぞれで観測された点灯色の組み合わせから上記信号機応答方針データを生成する。車両が報告する観測データにおいて、点灯部の形状は任意の要素であって、必須ではない。また、点灯色の認識程度であれば、市販されている車両でも観測可能であることが期待できる。故に、上記構成によれば、高性能なセンサを搭載した(つまり特別な)プローブカーを用いずに、市販されている一般向けの車両からの報告をもとに、信号機応答方針データを生成可能となる。つまり、本開示の構成によれば、信号機に係る制御支援用のデータを、特許文献1に開示の灯火パターン情報よりも低コストに生成及び更新可能となりうる。
【0159】
なお、一般的に、雨天などのカメラにとっての悪環境時には、信号機9の点灯部の形状は識別困難となりうる。本開示の構成によれば、そのような悪環境時にも通行の可否を判断可能となるため、点灯状態の誤認識/認識失敗に起因して、不必要に減速したり、支援中断したりする恐れを低減できる。換言すれば、運転支援の継続能力を向上可能となる。サーバにおいても、点灯部の形状をデータベース化することは任意の要素であるため、処理負荷を軽減できる。また、本開示によれば配信データのサイズの抑制効果も期待できる。
【0160】
さらに、上記の運転支援ECU20は、システム正常動作時にもシステムの認識/判断結果を画像にてドライバに通知する。当該構成によればドライバがシステムの作動状態(認識状態)を理解できるため、安心感を高めることができる。また、信号機9の点灯パターンに応じた通行可否を判断できなかった場合にも、少なくとも信号機9があることはドライバに通知し、ドライバに運転操作を委ねる。当該通知のタイミングは、交差点までの残り距離Drmがまだ不急制動距離Dstpよりも長い状態で行われるため、ドライバは時間的に余裕を持って点灯状態の判断及び運転操作を実施可能となる。
【0161】
また、点灯状態に応じたレーンごとの通行可否は、信号機9の側方に付加された標識によっても異なりうる。例えば、アメリカにおいては赤灯が点灯している場合、原則的に右端の右折レーンは通行可能(右折可能)であるが、特定の標識により赤色点灯時の右折が禁止されている交差点もある。特許文献1に開示の構成では、そのような例外パターンに対応できない。つまり、特許文献1に開示の構成では、信号機9の点灯状態を認識できても、実際に交差点を通行できるか否かまでは判定できない。これに対し、本開示の構成において生成される信号機応答方針データは、信号機9の点灯状態に応じた実際の車両の挙動を統計処理したものであるため、補助標識による例外ルールを反映した内容となる。故に、補助標識等によって例外ルールが適用されている交差点に対しても、点灯状態に応じた通行可否を精度良く判別可能となる。
【0162】
以上、本開示の実施形態を説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、以降で述べる種々の補足事項や変形例も本開示の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。例えば下記の種々の補足や変形例などは、技術的な矛盾が生じない範囲において適宜組み合わせて実施することができる。なお、以上で述べた部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略することがある。また、構成の一部のみに言及している場合、他の部分については上記説明を適用することができる。
【0163】
<補足(1)>
運転支援ECU20による通行可能パターンデータ/停止パターンデータを用いた制御は、緑矢灯の向きを特定できていない間のみ適用されても良い。緑矢灯の向き/形状ができた場合には、通行可能パターンデータ/停止パターンデータによる通行可否判定を破棄し、実際の緑矢灯の向きに応じた制御計画を作成及び実行してもよい。つまり、通行可能パターンデータ/停止パターンデータを用いた制御は、緑矢灯の向きを特定可能となるまでの暫定的な制御方針として採用されても良い。
【0164】
<補足(2)>
以上では運転支援ECU20が、信号機応答報告として、道路幅方向における走行位置を示す情報として、自車レーンIDを含むデータセットを送信する構成を開示したが、信号機応答報告の構成はこれに限定されない。信号機応答報告としてアップロードするデータには、必ずしもレーン番号を含んでいなくともよい。信号機応答報告は、報告元の車両の道路幅方向における走行位置を示す情報が含まれていればよい。自車両(報告元)が走行しているレーンを示す情報が、道路幅方向における走行位置を示す情報に相当する。
【0165】
道路幅方向における走行位置を示す情報としては、例えば周辺地物との相対位置を示す情報、より具体的には、方面看板や、路面標示として路面に付与されている規制矢印や導流帯としてのペイント、道路端などといった、所定の地物との相対位置情報を採用可能である。信号機応答報告には、自車レーンIDの代わりに/並列的に、走行レーンを特定可能な周辺地物の情報が含まれてもよい。それに伴い、運転支援ECU20は、信号機応答報告の送信に際して必ずしも自車レーンIDを特定できていなくともよい。ステップS102は任意の要素である。
【0166】
信号機応答報告が自車レーンIDを含まない/自車レーンIDが不明な場合、地図生成サーバ3は、信号機応答報告が含む周辺地物の相対位置情報から報告元が走行していたレーン番号を特定しても良い。つまり、走行レーン番号を特定する機能は地図生成サーバ3が備えていても良い。地図生成サーバ3は、ステップS201の準備処理として、信号機応答方向に含まれうる周辺地物の相対位置情報に基づき、報告元の走行レーン番号を特定する処理を実施しても良い。地図サーバ3が周辺地物の相対位置情報に基づき報告元の走行レーンを特定する構成によれば、運転支援ECU20にて自車レーンIDを特定困難な状況にも対応可能となる。なお、運転支援ECU20にて自車レーンIDを特定困難な状況とは、例えば、周辺車両によって前方カメラ11の視界が遮られ、道路端及び隣接車線の外側区画線にかかる認識結果が不足している状況などである。
【0167】
<補足(3)>
上述した実施形態では自車レーンIDが、前方カメラ11が生成した画像を解析することによって特定される態様について述べたが、自車レーンIDの特定手段はこれに限定されない。自車レーンIDは、車両後方を撮影するように搭載された車載カメラであるリアカメラの画像や、車両側方を撮影するように搭載された車載カメラであるサイドカメラの画像を解析することによって特定されてもよい。また、自車レーンIDは、LiDARやミリ波レーダなどの検出結果に基づいて特定されても良い。
【0168】
さらに、自車レーンIDは、GNSS測位結果に基づいて特定されても良い。GNSS測位誤差が10cm未満となることが期待できる条件を充足している場合、プロセッサ21は、ロケータ13から出力されるGNSS測位結果をもとに自車レーンIDを特定しても良い。GNSS測位誤差が10cm未満となることが期待できる条件を充足している場合とは、例えば、車載GNSS受信機が準天頂衛星からの信号を受信できている場合などである。また、先行車に設定している車両から、車々間通信により走行レーンIDを受信した場合には、当該走行レーンIDを自車レーンIDとして採用しても良い。
【0169】
その他、自車レーンIDは、レーンごとに通信エリアを形成するように配置されている電波/光ビーコンからの情報を元に特定されても良い。電波/光ビーコンは、道路上方に配置された路側機に相当する。また、自車レーンIDは、路面に埋め込まれた磁気マーカーからの信号を元に特定されてもよい。磁気マーカーは、路面に埋め込まれた通信機(無線タグ)である。磁気マーカーは自発的に又は車両からの問い合わせをもとに、絶対位置座標あるいはレーン番号を送信する。例えば磁気マーカーとしては、無給電タイプの無線IDタグを採用可能である。このように道路幅方向における自車両の走行位置を示す情報は、周辺監視センサや通信装置といった多様な車載装置から入力される情報に基づき特定可能である。
【0170】
<補足(4)>
以上では運転支援ECU20は、信号機通過支援処理として、交差点までの残り距離が所定値未満である場合に、認識されている点灯状態と通行可能パターンデータとの照合を行う構成を述べたが、これに限らない。運転支援ECU20は、交差点までの残り距離に関わらず、前方カメラ11で自車両向けの信号機が認識されている場合には、認識されている点灯状態と通行可能パターンデータとの照合を定期的に実施してもよい。ただし、前方交差点に到達するまでの残り距離又は残り時間が所定の閾値以上である場合には、環境認識部F6が判定不能信号を出力していても、制御の中止等は実施しない。交差点への接近に伴って信号機9の点灯状態が、通行可否を判定可能なパターンに切り替わる可能性があるためである。例えば交差点までの残り距離Drmが制御続行判断距離Dcn未満となる前に、信号機の点灯状態が判定不能な混色点灯パターンから単色点灯パターンに遷移することも起こりうる。制御計画部F7は、前方交差点に到達するまでの残り距離又は残り時間が閾値未満である状況において環境認識部F6が判定不能信号を出力している場合にのみ、速度調整に係る制御を中止するとともに、制御中止の通知を実施することが好ましい。
【0171】
<補足(5)>
以上では信号機の黄灯が点灯している場合は、赤灯が点灯している場合と略同様に応答する制御例を述べたが、これに限らない。日本においては信号機の点灯状態が黄色から緑色に遷移することはないが、他の地域としては、赤色から緑色に遷移する前にいったん黄色を経由する地域もありうる。つまり、信号機の点灯色が黄色から緑色に遷移する地域もありうる。信号機の点灯色が黄色から緑色に遷移しうる地域においては、黄灯点灯認識時における減速は、不要な減速となりうる。そのような事情から、運転支援ECU20は、黄灯のみが点灯している場合には、緑灯が点灯している場合と同様のシステム応答を実施してもよい。具体的には運転支援ECU20は、黄灯のみが点灯していることを認識している場合、停止に向けた減速などは保留とし、先行車追従制御や、設定されている目標速度での走行を維持する制御を継続してもよい。
【0172】
黄灯のみが点灯している場合の応答方針は、車両が使用されている地域に応じて動的に変更されても良い。例えば運転支援ECU20は、ディーラショップなどでプリセットされているカントリーコードや、GNSSが特定する位置座標などに基づいて、走行地域に応じた信号機応答方針を適用するように構成されていても良い。
【0173】
<変形例>
運転支援ECU20は、信号機応答報告として、筐体における点灯箇所の位置情報を含むデータセットをアップロードしても良い。当該構成によれば、信号機応答方針生成部G21は、点灯色の組み合わせだけでなく、点灯箇所の位置情報を含む、レーンごとの通行可能パターンを定義可能となる。その結果、点灯色の数の組み合わせだけではレーンごとの通行可否を切り分けることができなかった信号機に対しても、レーンごとの通行可能/停車パターンを設定可能となる。
【0174】
信号機における点灯箇所の位置は、筐体の左上又は右上の角部などといった、筐体の所定位置を原点とするXY座標で表現されても良い。また、
図24に示すように、灯火部が配置されうる領域に対応するように筐体を複数のエリアに区分し、エリアごとの番号によって点灯箇所の位置を表現しても良い。
図24では一例として、筐体を2行3列、6つのエリアに区分して点灯箇所を表現する場合を例示している。エリアL11~L13は、相対的に上側の行(1行目)に相当するエリア群である。エリアL21~23は、相対的に下側(2行目)に相当するエリア群である。エリア番号は例えば左上から右下に向かって順に割り当てられうる。エリア番号の割当規則は適宜設計されれば良い。信号機9が
図25に示すように縦型2列のタイプである場合も同様に、行番号と列番号によって点灯箇所の位置を表現可能である。
【0175】
上記構成における運転支援ECU20は、
図26に示すように、点灯部の色に加えて、筐体内における点灯箇所の位置情報を含む信号機応答報告を送信する。信号機応答方針生成部G21は、当該信号機応答報告に基づいて、例えば
図27に示すように、点灯箇所とその色の組み合わせによって点灯パターンごとの通行可能なレーン、換言すれば、レーンごとの通行可能パターンを示すデータセットを生成する。なお、レーンごとの停止パターンを示すデータセットも同様に生成可能である。当該データセットを生成及び配信する構成によれば、例えば
図20に示すような点灯パターンを備える信号機9/交差点に対しても、運転支援ECU20は相対的に遠方から(早期に)、交差点を通行可能であるか否かを判断可能となる。
【0176】
なお、上記では筐体の角部等を基準として定まるエリア番号/位置座標を用いて点灯箇所を表現する態様を述べたが、点灯箇所の表現形式はこれに限らない。緑矢灯は赤灯と並列的に点灯される事が多い。そのような事情を踏まえると、点灯している緑矢灯の位置情報は、赤色灯火を基準として表現されても良い。例えば
図20の点灯パターンを想定すると、レーンごとの通行可能パターンは、
図28に示すように表現可能である。実環境においては、夜間など、筐体が認識困難/不能なシーンもありえる。筐体を基準として点灯箇所を定義する構成では、夜間など筐体が不明瞭である場合には点灯箇所を特定不能となり、通行可否も判定不能となりうる。これに対し、赤灯を基準として緑矢灯の位置を表現する構成によれば、例えば夜間など、筐体自体が検出しにくい環境において好適である。筐体が背景と同化するなどして、筐体を認識できないシーンにおいても赤灯は認識可能である可能性が高いためである。
【0177】
なお、
図28では説明の都合上、テキストにて赤灯を基準とする点灯箇所を示しているが、プログラム的には相対位置を示す所定のコード(番号)で表現可能である。
図28は
図11に示すレーン構成を有する道路に対し、
図20に示す点灯パターンを有する信号機9が設けられている場合に対する通行可能パターンを示している。
【0178】
<付言(1)>
本開示には以下の技術思想も含まれる。
【0179】
[技術思想(1)]
複数の車両から提供される信号機応答報告に基づいて、信号機ごとに、レーンごとの通行可能な点灯色の組み合わせを示す通行可能パターンデータを生成する信号機応答方針生成部と、
信号機応答方針生成部が生成した信号機応答方針データを外部装置に送信する送信処理部と、を備える車両用データ生成サーバ。
【0180】
[技術思想(2)]
上記技術思想(1)に記載の車両用データ生成サーバであって、
信号機応答方針生成部は、信号機ごとの通行可能パターンデータを、複数のノード及びリンクを用いて道路の接続関係を示す地図データの一部として生成し、
送信処理部は、信号機ごとの通行可能パターンデータを、対応する信号機が設置されているノードまたはリンクのデータと対応付けて外部装置に送信するように構成されている車両用データ生成サーバ。
【0181】
[技術思想(3)]
上記技術思想(1)又は(2)に記載の車両用データ生成サーバであって、
送信処理部は、車両からの要求に基づき、車両の位置に応じた範囲に存在する信号機ごとの通行可能パターンデータを車両に向けて送信するように構成されている車両用データ生成サーバ。
【0182】
[技術思想(4)]
上記技術思想(1)から(3)の何れか1つに記載の車両用データ生成サーバであって、
送信処理部は、
信号機に係るデータとして、矢印を表示する灯火装置である矢灯器を具備した信号機である矢灯器付き信号機か否かを示すデータを外部装置に送信するものであって、
矢灯器付き信号機に関してのみ、通行可能パターンデータを付加したデータセットを送信するように構成されている車両用データ生成サーバ。
【0183】
[技術思想(5)]
車載装置からの入力に基づき、道路幅方向における自車レーンの位置を示す情報を取得する取得部と、
上記の車載装置と同一の又は異なる装置からの入力に基づき、自車レーンに対応する信号機の点灯状態を示すデータを取得する点灯状態取得部と、
交差点の手前で自車両が停止したこと、又は、交差点を通過したことに基づいて、自車レーンを示す情報と、点灯状態取得部が取得している車両向けの信号機の点灯色の組み合わせと、自車両の挙動とを示すデータセットを信号機応答報告として所定のサーバに送信する報告処理部と、を備える車両制御装置。
【0184】
<付言(2)>
本開示に記載の装置、システム、並びにそれらの手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサを構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、本開示に記載の装置及びその手法は、専用ハードウェア論理回路を用いて実現されてもよい。さらに、本開示に記載の装置及びその手法は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサと一つ以上のハードウェア論理回路との組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。例えば運転支援ECU20/地図生成サーバ3が備える機能の一部又は全部はハードウェアとして実現されても良い。或る機能をハードウェアとして実現する態様には、1つ又は複数のICなどを用いて実現する態様が含まれる。プロセッサ(演算コア)としては、CPUや、MPU、GPU、DFP(Data Flow Processor)などを採用可能である。また、運転支援ECU20/地図生成サーバ3が備える機能の一部又は全部は、複数種類の演算処理装置を組み合わせて実現されていてもよい。運転支援ECU20/地図生成サーバ3が備える機能の一部又は全部は、システムオンチップ(SoC:System-on-Chip)や、FPGA、ASICなどを用いて実現されていても良い。FPGAはField-Programmable Gate Arrayの略である。ASICはApplication Specific Integrated Circuitの略である。
【0185】
また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体(non- transitory tangible storage medium)に記憶されていてもよい。プログラムの保存媒体としては、HDD(Hard-disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等を採用可能である。コンピュータを運転支援ECU20/地図生成サーバ3として機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実態的記録媒体等の形態も本開示の範囲に含まれる。