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特許7683736双方向光増幅器、双方向光増幅装置及び双方向光増幅方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-19
(45)【発行日】2025-05-27
(54)【発明の名称】双方向光増幅器、双方向光増幅装置及び双方向光増幅方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/297 20130101AFI20250520BHJP
【FI】
H04B10/297
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023565758
(86)(22)【出願日】2021-12-08
(86)【国際出願番号】 JP2021045036
(87)【国際公開番号】W WO2023105658
(87)【国際公開日】2023-06-15
【審査請求日】2024-06-03
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人情報通信研究機構「革新的情報通信技術研究開発委託研究/Beyond 5G超大容量無線通信を支える空間多重光ネットワーク・ノード技術の研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100178216
【弁理士】
【氏名又は名称】浜野 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】細川 晃平
(72)【発明者】
【氏名】松本 恵一
(72)【発明者】
【氏名】ル タヤンディエ ドゥ ガボリ エマニュエル
【審査官】鴨川 学
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-112436(JP,A)
【文献】特開2000-209151(JP,A)
【文献】特開平08-304860(JP,A)
【文献】特開2021-163814(JP,A)
【文献】特開2001-203644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/297
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の入出力ポートと、第2の入出力ポートと、
前記第1の入出力ポートと前記第2の入出力ポートとを接続する第1の光路を伝搬する第1の方向の光を増幅する第1の光増幅手段と、
前記第1の入出力ポートと前記第2の入出力ポートとを接続する光路であり、かつ、前記第1の光路とは異なる光路である第2の光路を伝搬する第2の方向の光を増幅し、さらに前記第1の光増幅手段と並列に配置された第2の光増幅手段と、
前記第1の光路と前記第2の光路との少なくとも一方を構成する光路構成手段と、
前記第1の光増幅手段又は前記第2の光増幅手段のいずれかに励起光を供給する励起光供給手段と、
前記第1の方向の光のパワー及び前記第2の方向の光のパワーを監視する光監視手段と、
を備え、
前記励起光供給手段は、前記第1の方向の光のパワー及び前記第2の方向の光のパワーのうち、最初にパワーが閾値以上となった方向の光のみが増幅されるように、前記第1の光増幅手段及び前記第2の光増幅手段のいずれか一方のみに前記励起光を供給する、
双方向光増幅器
【請求項2】
前記光路構成手段は、
前記第1の入出力ポートに入力された前記第1の方向の光を前記第1の光増幅手段へ出力するとともに、前記第2の光増幅手段から出力された前記第2の方向の光を前記第1の入出力ポートへ出力する第1の光サーキュレータと、
前記第2の入出力ポートに入力された前記第2の方向の光を前記第2の光増幅手段へ出力するとともに、前記第1の光増幅手段から出力された前記第1の方向の光を前記第2の入出力ポートへ出力する第2の光サーキュレータと、
を備える請求項1に記載された双方向光増幅器。
【請求項3】
前記光路構成手段は、
前記第1の入出力ポートに入力された前記第1の方向の光を前記第1の光増幅手段へ出力し、又は、前記第2の光増幅手段から出力された前記第2の方向の光を前記第1の入出力ポートへ出力する第1の光スイッチと、
前記第2の入出力ポートに入力された前記第2の方向の光を前記第2の光増幅手段へ出力し、又は、前記第1の光増幅手段から出力された前記第1の方向の光を前記第2の入出力ポートへ出力する第2の光スイッチと、
を備える請求項1に記載された双方向光増幅器。
【請求項4】
前記励起光供給手段は、単一の励起光源で生成された前記励起光を前記第1の光増幅手段及び前記第2の光増幅手段のいずれか一方へ供給する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載された双方向光増幅器。
【請求項5】
前記第1の光増幅手段及び前記第2の光増幅手段は、前記励起光が供給されない場合に、それぞれ、入力される前記第1の方向の光のパワー及び入力される前記第2の方向の光のパワーを低減する光減衰手段をそれぞれ備える、請求項1乃至4のいずれか1項に記載された双方向光増幅器。
【請求項6】
第1のFIFOと、
第2のFIFOと、
第1のコア及び第2のコアを備えるマルチコアEDFを備え、
前記第1の光増幅手段及び前記第2の光増幅手段は、それぞれ、前記マルチコアEDFの前記第1のコア及び前記第2のコアを光増幅媒体とし、
前記マルチコアEDFの一端及び他端は、それぞれ、前記第1のFIFO及び第2のFIFOを介して、前記光路構成手段と接続される、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載された双方向光増幅器。
【請求項7】
前記励起光供給手段は、前記マルチコアEDFのクラッドに前記励起光を供給する、請求項に記載された双方向光増幅器。
【請求項8】
2N本のコアを備えるマルチコアEDFと、
N組の請求項6又は7に記載された光増幅器を備え、
Nは2以上の整数であり、
前記第1のFIFO及び前記第2のFIFOは、前記2N本のコアを備えるマルチコアEDFが、前記N組の光増幅器のそれぞれの前記第1及び第2の光増幅手段として機能するように配置された、
双方向光増幅装置。
【請求項9】
第1の光増幅手段と第2の光増幅手段とを並列に配置し、
第1の入出力ポートと第2の入出力ポートとを接続する第1の光路を伝搬する第1の方向の光を、前記第1の光増幅手段によって増幅し、
前記第1の入出力ポートと前記第2の入出力ポートとを接続する光路であり、かつ、前記第1の光路とは異なる光路である第2の光路を伝搬する第2の方向の光を、前記第2の光増幅手段によって増幅し、
前記第1の光路と前記第2の光路との少なくとも一方を構成し、
前記第1の光増幅手段又は前記第2の光増幅手段のいずれかに励起光を供給し、
前記第1の方向の光のパワー及び前記第2の方向の光のパワーのうち、最初にパワーが閾値以上となった方向の光のみが増幅されるように、前記第1の光増幅手段及び前記第2の光増幅手段のいずれか一方のみに前記励起光を供給する、
双方向光増幅方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、双方向光増幅器及び双方向光増幅方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ増幅器に代表される一般的な光増幅器は、単一の方向の光のみを増幅できる。このため、光ファイバの1本のコアを双方向に伝送される光を増幅するために、複数の光増幅器を組み合わせた双方向光増幅器が提案されている。例えば、特許文献1-3には、光サーキュレータを用いた双方向光増幅器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2017/183455号
【文献】特表2013-513984号公報
【文献】特開2003-338793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1-3に記載された光増幅器は、いずれも、2台の光増幅器を同時に動作させることで、双方向の光信号を増幅する機能を備える。しかしながら、特許文献1-3に記載された光増幅器では常に2台の光増幅器が動作している。すなわち、光信号の伝送方向を時間的に切り替えて双方向伝送を行う場合であっても、光信号が伝送されない方向の光増幅器は動作している。このため、特許文献1-3に記載された双方向光増幅器には、光信号の伝送方向を時間的に切り替えて双方向伝送を行う場合に、消費電力が大きいという課題がある。
(発明の目的)
本発明は、光信号の伝送方向を時間的に切り替えて双方向伝送を行う場合に、消費電力が小さく、かつ双方向の光の増幅が可能な双方向光増幅器を実現するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の双方向光増幅器は、
第1の入出力ポートと、第2の入出力ポートと、
前記第1の入出力ポートと前記第2の入出力ポートとを接続する第1の光路を伝搬する第1の方向の光を増幅する第1の光増幅手段と、
前記第1の入出力ポートと前記第2の入出力ポートとを接続する光路であり、かつ、前記第1の光路とは異なる光路である第2の光路を伝搬する第2の方向の光を増幅し、さらに前記第1の光増幅手段と並列に配置された第2の光増幅手段と、
前記第1の光路と前記第2の光路との少なくとも一方を構成する光路構成手段と、
前記第1の光増幅手段又は前記第2の光増幅手段のいずれかに励起光を供給する励起光供給手段と、
を備える。
【0006】
本発明の双方向光増幅方法は、
第1の光増幅手段と第2の光増幅手段とを並列に配置し、
第1の入出力ポートと第2の入出力ポートとを接続する第1の光路を伝搬する第1の方向の光を、前記第1の光増幅手段によって増幅し、
前記第1の入出力ポートと前記第2の入出力ポートとを接続する光路であり、かつ、前記第1の光路とは異なる光路である第2の光路を伝搬する第2の方向の光を、前記第2の光増幅手段によって増幅し、
前記第1の光路と前記第2の光路との少なくとも一方を構成し、
前記第1の光増幅手段又は前記第2の光増幅手段のいずれかに励起光を供給する、
双方向光増幅方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、光信号の伝送方向を時間的に切り替えて双方向伝送を行う場合に、消費電力が小さく、かつ双方向の光の増幅が可能な双方向光増幅器を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態の双方向光増幅器の構成例を示すブロック図である。
図2】第1の実施形態の双方向光増幅器の第1の変形例を示すブロック図である。
図3】第1の実施形態の双方向光増幅器の第2の変形例を示すブロック図である。
図4】第2の実施形態の双方向光増幅器の構成例を示すブロック図である。
図5】第2の実施形態の双方向光増幅器の変形例を示すブロック図である。
図6】第3の実施形態の双方向光増幅器の構成例を示すブロック図である。
図7】第4の実施形態の双方向光増幅器の構成例を示すブロック図である。
図8】第5の実施形態の双方向光増幅器の構成例を示すブロック図である。
図9】第6の実施形態の双方向光増幅装置の構成例を示すブロック図である。
図10】第6の実施形態の双方向光増幅装置の変形例を示すブロック図である。
図11】第7の実施形態の双方向光増幅装置の構成例を示すブロック図である。
図12】第7の実施形態の双方向光増幅装置が備える双方向光増幅器の構成例を示すブロック図である。
図13】第8の実施形態の双方向光増幅装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態について以下に説明する。各図面内の矢印は実施形態における信号の方向を説明するために例として付したものであり、方向の限定を意味しない。各図面において既出の要素には同一の名称及び参照符号を付すとともに、各実施形態において重複する説明は省略する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態の双方向光増幅器100の構成例を示すブロック図である。双方向光増幅器100は、入出力ポート101及び102、光路構成部111及び112、光増幅器121及び122、並びに、励起光供給部131を備える。
【0011】
入出力ポート101及び102は、双方向光増幅器100を通過する光の、外部の光ファイバとの入出力インタフェースである。入出力ポート101及び102は、例えば、光コネクタ又は融着(スプライシング)による、シングルコアファイバ(Single Core Fiber、接SCF)との接続点である。以下の各実施形態では、入出力ポート101から入出力ポート102に向かう方向を第1の方向、入出力ポート102から入出力ポート101に向かう方向を第2の方向と記載する。例えば、入出力ポート101に入力され、入出力ポート102から出力される光は「第1の方向の光」であり、第1の方向の光と逆方向に進む光は「第2の方向の光」である。
【0012】
光路構成部111及び112は、第1の光路と第2の光路との少なくとも一方を構成する。すなわち、光路構成部111及び112は、入出力ポート101と102との間を、光増幅器121を介する第1の光路、及び光増幅器122を介する第2の光路の少なくとも一方によって接続する。
【0013】
光増幅器121及び122は光ファイバ増幅器である。光増幅器121は第1の方向の光を増幅し、光増幅器122は第2の方向の光を増幅する。光増幅器121及び光増幅器122は、入出力ポート101と102との間で並列に配置される。すなわち、光増幅器121は、第1の光路を伝搬する第1の方向の光を増幅する。ここで、第1の光路は、入出力ポート101と入出力ポート102とを接続する。光増幅器122は、光増幅器121と並列に配置されるとともに、第1の光路とは異なる光路である第2の光路を伝搬する第2の方向の光を増幅する。
【0014】
励起光供給部131は、例えば波長980nm帯レーザダイオードを含む励起光源を備える。励起光供給部131は、光増幅器121及び光増幅器122のいずれか一方に励起光を供給する。励起光供給部131は、光増幅器121に励起光を供給する第1の励起光源及び光増幅器122に励起光を供給する第2の励起光源を備え、動作させる光増幅器に接続された励起光源のみを動作させてもよい。あるいは、励起光供給部131は、1台の励起光源と、当該励起光源が出力する励起光の出力先を光増幅器121又は光増幅器122の一方に切り替える1×2光スイッチとを備え、動作させる光増幅器にのみ励起光が供給されるように光スイッチを制御してもよい。
【0015】
励起光供給部131は、第1の光又は第2の光が双方向光増幅器100において増幅される必要がある場合に、入力された光が増幅されるように、光増幅器121又は122に励起光を供給する。励起光供給部131は、あらかじめ規定された期間は光増幅器121に励起光を供給し、当該期間以外は光増幅器122に励起光を供給してもよい。ここで、当該期間は、第1の光が双方向光増幅器100に入力される期間である。あるいは、励起光供給部131は、励起光を供給する光増幅器を所定の時刻毎に切り替えてもよい。この場合、当該時刻は、双方向光増幅器100に入力される光が、第1の光と第2の光との間で切り替わる時刻である。当該期間、又は、励起光を供給する光増幅器を切り替える時刻は、励起光供給部がデータとして保持していてもよい。さらに、励起光供給部131は、励起光供給部131が外部から取得した情報によって当該期間又は時刻を設定してもよい。なお、励起光源が生成した励起光を光ファイバ増幅器に供給するための一般的な構成はよく知られているため、詳細な説明は省略する。
【0016】
以上で説明した双方向光増幅器100は、光信号の伝送方向を時間的に切り替えて双方向伝送を行う場合に、消費電力が小さく、かつ双方向の光の増幅が可能という効果を奏する。その理由は、励起光供給部131は、光増幅器121及び光増幅器122のいずれか一方に励起光を供給するため、増幅機能が必要とされない光増幅器に供給される励起光の電力を削減できるからである。
【0017】
(双方向光増幅器100の他の表現)
第1の実施形態の双方向光増幅器100は、以下のようにも記載できる。すなわち、双方向光増幅器(100)は、第1の入出力ポート(101)と、第2の入出力ポート(102)と、第1の光増幅手段(121)と、第2の光増幅手段(122)と、光路構成手段(111、112)と、励起光供給手段(131)と、を備える。ここで、括弧内には図1の参照符号を記載した。
【0018】
第1の光増幅手段は、第1の光路を伝搬する第1の方向の光を増幅する。第1の光路は、第1の入出力ポートと第2の入出力ポートとを接続する光路である。第2の光増幅手段は、第2の光路を伝搬する第2の方向の光を増幅し、さらに第1の光増幅手段と並列に配置される。第2の光路は、第1の入出力ポートと第2の入出力ポートとを接続する光路であり、かつ第1の光路とは異なる光路である。光路構成手段は、第1の光路と第2の光路との少なくとも一方を構成する。励起光供給手段は、第1の光増幅手段又は第2の光増幅手段のいずれかに励起光を供給する。
【0019】
このような構成を備える双方向光増幅器は、第1の光増幅手段又は第2の光増幅手段のいずれかに励起光が供給される。このため、第1の実施形態の双方向光増幅器100は、光信号の伝送方向を時間的に切り替えて双方向伝送を行う場合に、消費電力が小さく、かつ双方向の光の増幅が可能な双方向光増幅器を実現できる。
【0020】
(第1の実施形態の第1の変形例)
図2は、双方向光増幅器100Aの構成例を示すブロック図である。双方向光増幅器100Aは、双方向光増幅器100の第1の変形例である。
【0021】
双方向光増幅器100Aは、双方向光増幅器100と比較して、光減衰部141及び142を備える点で相違する。光減衰部141は、光増幅器121に入力される第1の方向の光のパワーを低減させる。光減衰部142は、光増幅器122に入力される第2の方向の光のパワーを低減させる。励起光供給部131は、光増幅器121に励起光が供給される場合には光減衰部141の減衰量を減少させ、光増幅器121に励起光が供給されない場合には光減衰部141の減衰量を増加させる。また、励起光供給部131は、光増幅器122に励起光が供給される場合には光減衰部142の減衰量を減少させ、光増幅器122に励起光が供給されない場合には光減衰部142の減衰量を増加させる。このような制御により、光増幅器121の入力側での反射光が光路構成部111を介して光増幅器122の出力側に入射することによる、光増幅器122への悪影響を低減できる。また、光増幅器122の入力側での反射光が光路構成部112を介して光増幅器121の出力側に入射することによる、光増幅器121への悪影響も低減できる。
【0022】
光減衰部141及び142として、可変光アッテネータ又は光シャッタを用いることができる。可変光アッテネータは、励起光供給部131からの指示により、光増幅器121及び122に入力される光の減衰量を増加または減少させる。光シャッタは、励起光供給部131からの指示により、光増幅器121又は122の入力側の光路を接続または遮断する。可変光アッテネータ及び光シャッタは、光減衰手段の一形態である。可変光アッテネータが減衰量を増加させること、あるいは光シャッタが光路を遮断することで、これらの光増幅器で発生する反射光のパワーを低減できる。
【0023】
(第1の実施形態の第2の変形例)
図3は、双方向光増幅器100Bの構成例を示すブロック図である。双方向光増幅器100Bは、双方向光増幅器100の第2の変形例である。
【0024】
双方向光増幅器100Bは、双方向光増幅器100と比較して、光監視部151及び152を備える点で相違する。光監視部151は第1の方向の光を監視し、第1の方向の光の状態を示す情報を励起光供給部131に出力する。光監視部152は第2の方向の光を監視し、第2の方向の光の状態を示す情報を励起光供給部131に出力する。励起光供給部131は光監視部151及び152からこれらの情報を取得する。そして、励起光供給部131は、取得した情報に基づいて、光増幅器121及び光増幅器122のいずれに励起光を供給するかを決定する。光監視部151及び152は、光監視手段の一形態である。光監視手段は、第1の方向の光及び第2の方向の光が所定の状態であるかどうかを示す情報を励起光供給手段に出力する。
【0025】
例えば、光監視部151は、第1の方向の光が存在するかどうかを示す情報を励起光供給部131に出力する。光監視部152は、第2の方向の光が存在するかどうかを示す情報を励起光供給部131に出力する。励起光供給部131は、光監視部151及び152からこれらの情報を取得する。そして、励起光供給部131は、第1の方向の光のみが存在する場合には光増幅器121のみに励起光を供給し、第2の方向の光のみが存在する場合には光増幅器122のみに励起光を供給する。
【0026】
このような構成を備える双方向光増幅器100Bは、伝送される光が存在する光増幅器にのみ励起光が供給される。このため、第1の方向の光及び第2の方向の光が伝送される時刻が不明である場合でも、双方向光増幅器100Bは、みずから第1の方向の光及び第2の方向の光の存在を検出できる。そして、双方向光増幅器100Bは、伝送される光が増幅されるように光増幅器121及び光増幅器122への励起光の供給を制御できるという効果をさらに奏する。
【0027】
光監視部151及び152は、光カプラ及び光電変換素子を備えてもよい。例えば、光監視部151が備える光カプラは、光増幅器121に入力される第1の方向の光を分岐し、光電変換素子に入力する。光監視部151は、光電変換素子の出力に応じて第1の方向の光のパワーが所定の閾値以上であるかどうかを監視し、監視結果を励起光供給部131へ出力する。同様に、光監視部152は、第2の方向の光のパワーを監視し、監視結果を励起光供給部131へ出力する。そして、励起光供給部131は、最初にパワーが閾値以上となった方向の光のみが増幅されるように、励起光を光増幅器121又は光増幅器122のいずれかに供給する。また、励起光供給部131は、励起光が供給されている方向の光のパワーが所定の閾値未満となった場合に、励起光の供給を停止してもよい。
【0028】
第1の方向の光及び第2の方向の光のそれぞれのパワーが同時に所定の閾値を超えた場合において、励起光供給部131の動作は、これらの光が伝送されるシステムの要求に従って定められてもよい。例えば、励起光供給部131は、第1の方向の光及び第2の方向の光のうち、最初に所定の情報が検出された光を増幅する光増幅器のみに励起光を供給してもよい。あるいは、第1の方向の光及び第2の方向の光のそれぞれの光パワーが、同一時刻に所定の閾値以上の状態にある場合には、励起光供給部131は、光増幅器121及び122のいずれにも励起光を供給しなくてもよい。第1の方向の光及び第2の方向の光のそれぞれのパワーが同時に所定の閾値未満である場合には、励起光供給部131は、光増幅器121及び122のいずれにも励起光を供給しない。
【0029】
なお、光監視部151及び152は、光のパワー以外の情報に基づいて、第1の方向の光又は第2の方向の光の有無を判断してもよい。例えば、第1の方向の光に所定のプリアンブルが含まれていた場合には、光監視部151は第1の光が伝送されていると判断してもよい。プリアンブルは、例えば、特定のパターンによる第1の方向の光のパワーの変化である。ここで、特定のパターンは、第1の方向の光の送信時又は伝送中に付加される。光監視部152も、同様に第2の方向の光のプリアンブルを監視してもよい。
【0030】
また、以上で説明した双方向光増幅器100、100A及び100Bの構成は、互いに排他的ではない。例えば、光減衰部141及び142、光監視部151及び152の双方を備える双方向光増幅器の構成も許容される。ここで、光減衰部141は、光増幅器121の入力側と光監視部151との間に配置され、光減衰部142は、光増幅器122の入力側と光監視部152との間に配置されてもよい。このような構成により、光監視部151及び152は、光減衰部141及び142の動作状態にかかわらず、第1の方向の光及び第2の方向の光を監視できる。
【0031】
(第2の実施形態)
図4は、本発明の第2の実施形態の双方向光増幅器200の構成例を示すブロック図である。双方向光増幅器200は、図1で説明した双方向光増幅器100の光路構成部111及び112を、それぞれ、光サーキュレータ113及び114を用いて構成したものである。光サーキュレータ113及び114は、ポート1からポート3を備え、ポート1からポート2の方向、ポート2からポート3の方向、及び、ポート3からポート1の方向のみを低損失で接続する。光サーキュレータ113及び114を用いることで、光増幅器121を経由する第1の光路と、光増幅器122を経由する第2の光路とが入出力ポート101と入出力ポート102との間に構成される。
【0032】
(第2の実施形態の変形例)
図5は、双方向光増幅器200Aの構成例を示すブロック図である。双方向光増幅器200Aは、図4で説明した双方向光増幅器100Aの光サーキュレータ113及び光サーキュレータ114を、それぞれ、光スイッチ115及び光スイッチ116と置き換えたものである。光スイッチ115及び116は1×2光スイッチであり、ポート1とポート2との間、又は、ポート1とポート3との間のみを低損失で接続する。励起光供給部131は、第1の光路又は第2の光路が構成されるように、光スイッチ115及び116を制御する。すなわち、光スイッチ115及び116を用いることによっても、光増幅器121を経由する第1の光路、及び光増幅器122を経由する第2の光路のいずれかが、入出力ポート101と入出力ポート102との間に構成される。
【0033】
これらの構成を備える双方向光増幅器200及び200Aは、双方向光増幅器100と同様に、光信号の伝送方向を時間的に切り替えて双方向伝送を行う場合に、消費電力が小さく、かつ双方向の光の増幅が可能である。なお、さらに、双方向光増幅器200及び200Aは、図2で説明した光減衰部141、142を備えてもよく、図3で説明した光監視部151、152を備えてもよい。
【0034】
(第3の実施形態)
以降の実施形態では、図1の双方向光増幅器100が備える光路構成部111及び112として、図4で説明した光サーキュレータ113及び114が用いられた場合を例に説明する。ただし、以下の実施形態の説明は、光路構成部111及び112の具体的な構成の限定を意図しない。
【0035】
図6は、本発明の第3の実施形態の双方向光増幅器300の構成例を示すブロック図である。双方向光増幅器300は、図1の双方向光増幅器100と比較して、励起光源161及び162、光合波器163及び164、FIFO171及び172、並びに、2コアEDF170を備える。また、双方向光増幅器300は、光フィルタ165及び166を備えてもよい。光フィルタ165及び166は、それぞれ、2コアEDF170から第1の方向及び第2の方向に出力されるASE(Amplified Spontaneous Emission、増幅された自然放出光)を阻止する光フィルタである。
【0036】
FIFO(Fan-In/Fan-Out、ファンイン/ファンアウト)は、単一のコアを持つ光ファイバ(Single Core Fiber、SCF)とマルチコアファイバ(Multi Core Fiber、MCF)とのインタフェースである。FIFOは、複数のSCFのコアと、1本あるいは複数のMCFの各コアとを、コア毎に接続する。図6においては、FIFO171は、光合波器163と接続されたSCFのコアと、2コアEDF170の2本のコアの一方の一端とを接続する。また、FIFO171は、光フィルタ166と接続されたSCFのコアと、2コアEDF170の2本のコアの他方の一端とを接続する。FIFO172は、光合波器164と接続されたSCFのコアと、2コアEDF170の2本のコアの一方の他端とを接続する。また、FIFO172は、光フィルタ165と接続されたSCFのコアと、2コアEDF170の2本のコアの他方の他端とを接続する。
【0037】
2コアEDF170は、1本のEDF(Erbium-Doped Fiber、エルビウム添加ファイバ)に2本のコア(第1のコア及び第2のコア)を含むMCFで構成された光増幅媒体である。励起光源161は、2コアEDF170の第1のコアを励起する励起光を生成する光源であり、励起光源162は2コアEDF170の第2のコアを励起する励起光を生成する光源である。励起光源161及び162は、それぞれ、波長980nm帯のレーザダイオードを含んでもよい。励起光源161及び162は、2コアEDFの2本のコアのいずれかに励起光が供給されるように動作する。
【0038】
光合波器163及び164は、励起光と第1の方向の光及び第2の方向の光とをそれぞれ合波する波長多重デバイスである。励起光源161又は162で生成された励起光は、それぞれ、光合波器163又は164によって、2コアEDF170の第1のコア及び第2のコアと結合される。
【0039】
図6において、第1の方向の光は、入出力ポート101、光サーキュレータ113、光合波器163、FIFO171、2コアEDF170の第1のコア、FIFO172、光フィルタ165、及び光サーキュレータ114を経由して入出力ポート102へ進む。第2の方向の光は、入出力ポート102、光サーキュレータ114、光合波器164、FIFO172、2コアEDF170の第2のコア、FIFO171、光フィルタ166、及び光サーキュレータ113を経由して入出力ポート101へ進む。
【0040】
双方向光増幅器300が備える光合波器163及び164、FIFO171及び172、並びに2コアEDF170は、先に述べた図1の双方向光増幅器100の光増幅器121及び122として機能する。また、励起光源161及び162は、双方向光増幅器100の励起光供給部131の機能を含む。励起光源161及び162による励起光の供給先の切り替えには、第1の実施形態で説明した励起光供給部131の手順が適用できる。
【0041】
このような構成を備える双方向光増幅器300において、励起光源161及び162は、2コアEDF170第1のコア及び第2のコアのいずれか一方に励起光が供給されるように励起光を生成する。このため、双方向光増幅器300は、光信号の伝送方向を時間的に切り替えて双方向伝送を行う場合に、消費電力が小さく、かつ双方向の光の増幅が可能である。また、双方向光増幅器300は、2コアEDFを用いることで、双方向光増幅器100の光増幅器121及び122のEDFを1本のEDFで構成できる。このため、双方向光増幅器300は、双方向光増幅器100と比較して、小型化が可能であるというさらなる効果を奏する。
【0042】
(第4の実施形態)
図7は、本発明の第4の実施形態の双方向光増幅器400の構成例を示すブロック図である。双方向光増幅器400は、双方向光増幅器300が備える励起光源161及び162に代えて、励起光源167及び光スイッチ168を備える点で相違する。励起光源167は単一の励起光を生成する光源であり、光スイッチ168は、励起光源167が生成した励起光を光合波器163又は光合波器164へ出力する。光スイッチ168は、2コアEDF170が第1の方向の光を増幅する場合には励起光が光合波器163へ出力されるように光路を切り替える。また、光スイッチ168は、2コアEDF170が第2の方向の光を増幅する場合には励起光が光合波器164へ出力されるように、励起光の光路を切り替える。光スイッチ168による励起光の光路の切り替えの判断の手順は、第1の実施形態で説明した手順が適用できる。
【0043】
このような構成を備える双方向光増幅器400は、双方向光増幅器300の効果に加えて、励起光源の個数を削減できるという効果を奏する。
【0044】
(第5の実施形態)
図8は、本発明の第5の実施形態の双方向光増幅器500の構成例を示すブロック図である。双方向光増幅器500は、双方向光増幅器300が備える励起光源161及び162、並びに光合波器163及び164に代えて、励起光源173及び光カプラ174を備える点で相違する。励起光源173は、単一の励起光を生成する光源である。また、光カプラ174は、励起光源167が生成した励起光を2コアEDF170のクラッド領域に注入させる。FIFO171及び172、2コアEDF170並びに光カプラ174は、図1の双方向光増幅器100の光増幅器121及び122として機能する。また、励起光源173は、双方向光増幅器100の励起光供給部131として機能する。
【0045】
双方向光増幅器500は、増幅する方向の光のための励起光のパワーのみが2コアEDF170のクラッド領域に供給されればよい。従って、第1乃至第4の実施形態で説明した双方向光増幅器と同様に、双方向光増幅器500は、光信号の伝送方向を時間的に切り替えて双方向伝送を行う場合に、消費電力が小さく、かつ双方向の光の増幅が可能である。さらに、双方向光増幅器500は、クラッド領域に励起光を注入する「クラッド励起」と呼ばれる手法を用いている。クラッド励起では比較的安価なマルチモードレーザを励起光源として使用できるため、双方向光増幅器500の低コスト化を図ることができる。
【0046】
(第6の実施形態)
以下の実施形態では、MCFを光伝送路に用いた光伝送システム(以下、「MCF伝送システム」という。)に適用可能な双方向光増幅器について説明する。MCFを用いて長距離伝送を行う場合には、近接するコア間において光信号のクロストークが発生する恐れがある。そして、MCFのコア間で発生するクロストークは、同一方向に光信号が伝搬するコア間では比較的大きい。また、互いに逆方向に光信号が伝搬するコア間のクロストークは、同一方向に光信号が伝搬するコア間のクロストークよりも小さいことが知られている。そこで、同一方向に光信号が伝搬するコア間のクロストークを低減するために、双方向伝送を行うMCF伝送システムにおいて、近接するコア間では光信号の方向を互いに逆向きとし、所定の期間又は時刻ごとにそれらの光信号の向きを逆転させてもよい。このようにして、MCF内の近接するコアの間において光信号の伝送方向を逆向きとすることで、クロストークを抑制しつつ双方向伝送を実現できる。
【0047】
このような、コア毎に時分割で双方向伝送を行うMCF伝送システムでは、ある時刻において1本のコアを伝搬する光信号の方向は1方向のみである。このため、そのコアを伝搬する光信号を増幅する光ファイバ増幅器は、同時に双方向の光信号を増幅する機能を要せず、当該時刻においてコアを伝搬する光信号の方向のみの増幅機能を備えればよい。第1乃至第5の実施形態において図1図8で例示した双方向光増幅器は、このようなMCF伝送システムに適用できる。
【0048】
図9は、本発明の第6の実施形態の双方向光増幅装置600の構成例を示すブロック図である。双方向光増幅装置600は、2台の双方向光増幅器601及び602、MCF611及び612、並びにFIFO613及び614を備える。双方向光増幅器601及び602は、FIFO613及び614の間に並列に配置されている。
【0049】
MCF611及び612は、いずれも、2本のコアを備えるMCFである。MCF611のそれぞれのコアを伝送される光は時分割かつ互いに逆向きで双方向伝送される。MCF612も同様に、それぞれのコアを伝送される光は時分割かつ互いに逆向きで双方向伝送される。FIFO613及び614は、2コアのMCFと2本のSCFとを接続可能なFIFOである。FIFO613は、MCF611の2本のコア(コア1及びコア2)を、それぞれ、双方向光増幅器601及び602の一端に接続する。FIFO614は、MCF612の2本のコア(コア1及びコア2)を、それぞれ、双方向光増幅器601及び602の他端のそれぞれのSCFと接続する。
【0050】
双方向光増幅器601及び602は、それぞれ、図1図8で説明した双方向光増幅器のいずれかの構成を備える。このため、双方向光増幅器601及び602の構成の説明は省略する。FIFO613のSCF側は、双方向光増幅器601及び602がそれぞれ備えるSCFの入出力ポート101と接続され、FIFO614のSCF側は、双方向光増幅器601及び602がそれぞれ備えるSCFの入出力ポート102と接続される。
【0051】
双方向光増幅装置600が備える双方向光増幅器601及び602は、図1図8の実施形態で説明した双方向光増幅器のそれぞれの効果を奏するため、双方向光増幅装置600も、これらの光増幅器の効果を享受できる。さらに、双方向光増幅装置600は、MCF伝送システムにおいて、それぞれのコアを伝搬する光を、コア間のクロストークを抑制しつつ低消費電力で増幅できる。その理由は、MCF611及びMCF612のそれぞれにおいて、2本のコアを伝送される光は時分割かつ互いに逆向きで双方向伝送されるとともに、光が伝送される際にのみ光増幅器に励起光が供給されるからである。
【0052】
(第6の実施形態の変形例)
図10は、双方向光増幅装置600Aの構成例を示すブロック図である。双方向光増幅装置600Aは、図9で説明した双方向光増幅装置600の変形例である。
【0053】
双方向光増幅装置600は、N台の双方向光増幅器601-60N、MCF611A及び612A、並びにFIFO613A及び614Aを備える。双方向光増幅器601-60Nは、FIFO613A及び614Aの間に並列に配置されている。ここで、Nは2以上の整数である。双方向光増幅装置600Aは、双方向光増幅装置600が備える双方向光増幅器601及び602の並列数を2からNに拡大したものである。
【0054】
MCF611A及び612Aは、いずれもN本のコアを持つNコアのMCFであり、FIFO613A及び614Aは、NコアのMCFとN本のSCFとを接続可能なFIFOである。FIFO613Aは、MCF611AのN本のコア(コア1-コアN)と、双方向光増幅器601-60Nの一端のそれぞれのSCFとの間をそれぞれ接続する。FIFO614Aは、MCF612AのN本のコア(コア1-コアN)と、双方向光増幅器601-60Nの他端のそれぞれのSCFとの間をそれぞれ接続する。双方向光増幅器601-60Nは、それぞれ、第1乃至第5の実施形態で説明した双方向光増幅器のいずれかの構成を備える。このような構成により、MCF611Aのコア1は、双方向光増幅器601を介して、MCF612Aのコア1と接続される。MCF611Aのコア2-コアNも、同様に、それぞれ双方向光増幅器602-60Nを介して、MCF612Aのコア2-コアNと接続される。
【0055】
このような構成を備える双方向光増幅装置600Aは、NコアMCFを用いたMCF伝送システムにおいて、それぞれのコアを伝搬する光を独立に増幅できる。そして、双方向光増幅装置600Aが備える双方向光増幅器601-60Nは、第1乃至第5の実施形態で説明した双方向光増幅器のそれぞれの効果を奏する。このため、双方向光増幅装置600Aも、双方向光増幅装置600と同様に、これらの光増幅器の効果を享受できる。
【0056】
(第7の実施形態)
図11は、本発明の第7の実施形態の双方向光増幅装置700の構成例を示すブロック図である。双方向光増幅装置700は、双方向光増幅器701、MCF711及び712、並びにFIFO713及び714を備える。双方向光増幅器701は、FIFO713及び714の間に並列に配置されている。双方向光増幅器701については後述する。
【0057】
MCF711のそれぞれのコアを伝送される光は時分割かつ互いに逆向きで双方向伝送される。MCF712も同様に、それぞれのコアを伝送される光は時分割かつ互いに逆向きで双方向伝送される。FIFO713及び714は、2コアのMCFと2本のSCFとを接続可能なFIFOである。FIFO713は、MCF711の2本のコア(コア1及びコア2)を、それぞれ、双方向光増幅器701の一端に接続する。FIFO714は、MCF712の2本のコア(コア1及びコア2)を、それぞれ、双方向光増幅器701の他端に接続する。
【0058】
図12は、双方向光増幅器701の構成例を示すブロック図である。双方向光増幅器701は、MCF711のコア1とMCF712のコア1との間を伝搬する光と、MCF711のコア2とMCF712のコア2との間を伝搬する光を増幅する。
【0059】
MCF711のコア1及びコア2は、それぞれ、FIFO713を介して、入出力ポート771及び773と接続される。MCF712のコア1及びコア2は、それぞれ、FIFO714を介して、入出力ポート772及び774と接続される。光サーキュレータ721及び723並びにFIFO731は、FIFO713からFIFO714へ進む2個の第1の方向の光(すなわち、図12において左から右へ進む光)のそれぞれを、2コアEDF761の異なるコアに導くように接続される。光カプラ743は、励起光源741が生成した励起光を、2コアEDF761のクラッド領域へ注入する。これにより、第1の方向の光が増幅される。そして、光サーキュレータ722及び724並びにFIFO732は、2コアEDF761のそれぞれのコアで増幅された2個の第1の方向の光がFIFO714へ出力されるように接続される。
【0060】
光サーキュレータ722及び724並びにFIFO734は、FIFO714からFIFO713へ進む2個の第2の方向の光のそれぞれを、2コアEDF762のそれぞれのコアに導くように接続される。光カプラ744は、励起光源742が生成した励起光を、2コアEDF762のクラッド領域へ注入する。これにより、第2の方向の光が増幅される。そして、光サーキュレータ721及び723並びにFIFO733は、2コアEDF762のそれぞれのコアで増幅された2個の第2の方向の光が、FIFO713へ出力されるように接続される。光フィルタ751-754は、2コアEDF761及び762で発生するASEを除去する波長フィルタであり、必要に応じて設けられる。
【0061】
入出力ポート771及び773は、図1の双方向光増幅器100の入出力ポート101としての機能を備える。入出力ポート772及び774は、双方向光増幅器100の入出力ポート102としての機能を備える。FIFO731-734、2コアEDF761及び762、並びに光カプラ743及び744は、双方向光増幅器100の光増幅器121及び122としての機能を備える。また、励起光源741及び742は、双方向光増幅器100の励起光供給部131としての機能を備える。すなわち、励起光源741及び742は、2コアEDF761及び762のいずれか一方に励起光を供給する。これにより、光が入力されない方向の2コアEDFに供給される励起光の電力を削減できる。
【0062】
ここで、図12を参照すると、2コアEDF761は第1の方向の光のみを増幅し、2コアEDF762は第2の方向の光のみを増幅する。そして、励起光は、2コアEDF761及び762において、増幅される光の入力側から注入される。すなわち、2コアEDF761及び762は、いずれも、常に前方励起によって光を増幅する。これに対して、例えば図8に記載された2コアEDF170では、FIFO171からFIFO172へ向かう第1の方向の光に対しては前方励起であり、FIFO172からFIFO171へ向かう第2の方向の光に対しては後方励起である。双方向光増幅器701においては、2コアEDF761及び762は常に同一の方向の光を増幅するため、増幅される光の方向毎に、EDFの増幅特性の差が生じにくいという効果を奏する。なお、2コアEDF761及び762は後方励起で使用されてもよい。なお、一般に、2コアEDF761及び2コアEDF762の長さはMCF伝送システムの伝送路の長さと比べて充分に短いため、2コアEDF761及び2コアEDF762のそれぞれにおけるクロストークの影響は無視できる。
【0063】
双方向光増幅器701及びこれを備える双方向光増幅装置700は、2コアEDF761及び762が、同一の励起方向で光を増幅するため、光の方向毎の増幅特性の差が生じにくいという効果を奏する。加えて、双方向光増幅器500と同様に、クラッド励起により、双方向光増幅器701及び双方向光増幅装置700の低コスト化を図ることも可能である。また、双方向光増幅装置600と同様に、双方向光増幅装置700は、コア毎の光信号の伝送方向を時間的に切り替えて双方向伝送を行うMCF伝送システムにおいて、それぞれのコアを伝搬する光を、クロストークを抑制しつつ低消費電力で増幅できる。その理由は、MCF711及びMCF712のそれぞれにおいて、2本のコアを伝送される光は時分割かつ互いに逆向きで双方向伝送されるとともに、光が伝送される際にのみ光増幅器に励起光が供給されるからである。
【0064】
(第8の実施形態)
図13は、本発明の第8の実施形態の双方向光増幅装置800の構成例を示すブロック図である。双方向光増幅装置800は、図6で説明した双方向光増幅器300がN個並列に配置された機能を備える。Nは2以上の整数である。すなわち、FIFO831はNコアMCF811のコア1-コアNを、それぞれ、N個の光サーキュレータ841-84NのN本のSCFと接続する。また、FIFO834は、NコアMCF812のコア1-コアNを、それぞれ、N個の光サーキュレータ851-85NのN本のSCFと接続する。
【0065】
2NコアEDF820は、2N本のコアを持つマルチコアファイバのEDFである。2NコアEDF820は、双方向光増幅器300の2コアEDF170をN本並列にしたものと同様の機能を備える。FIFO832は、SCFによって光サーキュレータ841-84Nと接続された2N本のコアを、2NコアEDF820のそれぞれのコアの一端と接続する。また、FIFO833は、SCFによって光サーキュレータ851-85Nと接続された2N本のコアを、2NコアEDF820のそれぞれのコアの他端と接続する。
【0066】
すなわち、NコアMCF811のコア1は、光サーキュレータ841、2NコアEDFの第1のコア、光サーキュレータ851を介して、NコアMCF812のコア1と接続される。NコアMCF811のコア2-コアNも、同様に、それぞれ光サーキュレータ842-84N、2NコアEDFの第2-第Nのコア、光サーキュレータ852-85Nを介して、NコアMCF812のコア2-コアNと接続される。
【0067】
光サーキュレータ及びマルチコアEDFを用いた双方向光増幅器の基本的な構成及び動作は、双方向光増幅器300と同様であるので、双方向光増幅装置800の細部の説明は省略する。また、2NコアEDF820を励起するために、第1の方向について、双方向光増幅器300の励起光源161及び光合波器163と同様の構成が、光サーキュレータ841-84NとFIFO832との間にN組備えられる。また、第2の方向について、励起光源162及び光合波器164と同様の構成が、光サーキュレータ851-85NとFIFO833との間にN組備えられる。ただし、図13ではこれらの励起光源及び光合波器の記載は省略されている。
【0068】
このように構成された双方向光増幅装置800は、双方向光増幅器300がN台並列に配置された構成を備える。このため、双方向光増幅装置800は、双方向光増幅器300の効果を享受できる。そして、双方向光増幅装置800は、NコアMCF811及び812に接続し、NコアMCFを用いたMCF伝送システムによって伝送される光を増幅できる。また、2NコアEDF820を用いることで、2コアEDFをN個並列に配置した構成と比較して、EDFを小型化することができる。
【0069】
なお、本発明の実施形態は以下の付記のようにも記載されうるが、これらには限定されない。
【0070】
(付記1)
第1の入出力ポートと、第2の入出力ポートと、
前記第1の入出力ポートと前記第2の入出力ポートとを接続する第1の光路を伝搬する第1の方向の光を増幅する第1の光増幅手段と、
前記第1の入出力ポートと前記第2の入出力ポートとを接続する光路であり、かつ、前記第1の光路とは異なる光路である第2の光路を伝搬する第2の方向の光を増幅し、さらに前記第1の光増幅手段と並列に配置された第2の光増幅手段と、
前記第1の光路と前記第2の光路との少なくとも一方を構成する光路構成手段と、
前記第1の光増幅手段又は前記第2の光増幅手段のいずれかに励起光を供給する励起光供給手段と、
を備える双方向光増幅器。
【0071】
(付記2)
前記光路構成手段は、
前記第1の入出力ポートに入力された前記第1の方向の光を前記第1の光増幅手段へ出力するとともに、前記第2の光増幅手段から出力された前記第2の方向の光を前記第1の入出力ポートへ出力する第1の光サーキュレータと、
前記第2の入出力ポートに入力された前記第2の方向の光を前記第2の光増幅手段へ出力するとともに、前記第1の光増幅手段から出力された前記第1の方向の光を前記第2の入出力ポートへ出力する第2の光サーキュレータと、
を備える付記1に記載された双方向光増幅器。
【0072】
(付記3)
前記光路構成手段は、
前記第1の入出力ポートに入力された前記第1の方向の光を前記第1の光増幅手段へ出力し、又は、前記第2の光増幅手段から出力された前記第2の方向の光を前記第1の入出力ポートへ出力する第1の光スイッチと、
前記第2の入出力ポートに入力された前記第2の方向の光を前記第2の光増幅手段へ出力し、又は、前記第1の光増幅手段から出力された前記第1の方向の光を前記第2の入出力ポートへ出力する第2の光スイッチと、
を備える付記1に記載された双方向光増幅器。
【0073】
(付記4)
前記励起光供給手段は、単一の励起光源で生成された前記励起光を前記第1の光増幅手段及び前記第2の光増幅手段のいずれか一方へ供給する、付記1乃至3のいずれか1項に記載された双方向光増幅器。
【0074】
(付記5)
前記第1の光増幅手段及び前記第2の光増幅手段は、前記励起光が供給されない場合に、それぞれ、入力される前記第1の方向の光のパワー及び入力される前記第2の方向の光のパワーを低減する光減衰手段をそれぞれ備える、付記1乃至4のいずれか1項に記載された双方向光増幅器。
【0075】
(付記6)
前記第1の方向の光及び前記第2の方向の光が所定の状態であるかどうかを示す情報を前記励起光供給手段に出力する光監視手段を備え、
前記励起光供給手段は、
前記第1の方向の光のみが前記所定の状態である場合には前記第1の光増幅手段のみに前記励起光を供給し、
前記第2の方向の光のみが前記所定の状態である場合には前記第2の光増幅手段のみに前記励起光を供給する、
付記1乃至5のいずれか1項に記載された双方向光増幅器。
【0076】
(付記7)
第1のFIFOと、
第2のFIFOと、
第1のコア及び第2のコアを備えるマルチコアEDFを備え、
前記第1の光増幅手段及び前記第2の光増幅手段は、それぞれ、前記マルチコアEDFの前記第1のコア及び前記第2のコアを光増幅媒体とし、
前記マルチコアEDFの一端及び他端は、それぞれ、前記第1のFIFO及び第2のFIFOを介して、前記光路構成手段と接続される、
付記1乃至6のいずれか1項に記載された双方向光増幅器。
【0077】
(付記8)
前記励起光供給手段は、前記マルチコアEDFのクラッドに前記励起光を供給する、付記7に記載された双方向光増幅器。
【0078】
(付記9)
2N本のコアを備えるマルチコアEDFと、
N組の付記7又は8に記載された光増幅器を備え、
Nは2以上の整数であり、
前記第1のFIFO及び前記第2のFIFOは、前記2N本のコアを備えるマルチコアEDFが、前記N組の光増幅器のそれぞれの前記第1及び第2の光増幅手段として機能するように配置された、
双方向光増幅装置。
【0079】
(付記10)
第3のFIFOと、第4のFIFOと、
N台の、付記1乃至8のいずれか1項に記載された双方向光増幅器と、を備え、
Nは2以上の整数であり、
前記N台の双方向光増幅器が、前記第3のFIFOの一端と前記第4のFIFOの一端との間に並列に配置され、
前記第3のFIFOの他端及び前記第4のFIFOの他端は、それぞれ、第1のマルチコアファイバ及び第2のマルチコアファイバと接続された、
双方向光増幅装置。
【0080】
(付記11)
前記第1の光増幅手段は第3のFIFO、第4のFIFO及び第1の2コアEDFを備え、
前記第2の光増幅手段は第5のFIFO、第6のFIFO及び第2の2コアEDFを備え、
前記第1の2コアEDFの一端及び他端は、それぞれ、前記第3のFIFO及び第4のFIFOと接続され、
前記第2の2コアEDFの一端及び他端は、それぞれ、前記第5のFIFO及び第6のFIFOと接続され、
前記第3及び第4のFIFOは前記第1の光路を構成するように配置され、
前記第5及び第6のFIFOは前記第2の光路を構成するように配置された、
付記1乃至6のいずれか1項に記載された双方向光増幅器。
【0081】
(付記12)
第1の光増幅手段と第2の光増幅手段とを並列に配置し、
第1の入出力ポートと第2の入出力ポートとを接続する第1の光路を伝搬する第1の方向の光を、前記第1の光増幅手段によって増幅し、
前記第1の入出力ポートと前記第2の入出力ポートとを接続する光路であり、かつ、前記第1の光路とは異なる光路である第2の光路を伝搬する第2の方向の光を、前記第2の光増幅手段によって増幅し、
前記第1の光路と前記第2の光路との少なくとも一方を構成し、
前記第1の光増幅手段又は前記第2の光増幅手段のいずれかに励起光を供給する、
双方向光増幅方法。
【0082】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記の実施形態に限定されない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0083】
例えば、励起光供給部131の機能はプログラム化されてもよい。そして、各実施形態の双方向光増幅器は、プログラムをコンピュータによって実行することで、励起光供給部131が備える機能の一部または全部を実現してもよい。コンピュータは、例えば、論理デバイスや中央処理装置、デジタル信号処理装置である。また、プログラムは、コンピュータ読取可能な、固定された非一時的な記録媒体に記録されてもよい。記録媒体は、例えば、フレキシブルディスク、固定磁気ディスク、不揮発性半導体メモリである。プログラムは、ネットワークを介して配信されてもよい。
【0084】
また、それぞれの実施形態に記載された構成は、必ずしも互いに排他的なものではない。本発明の作用及び効果は、上述の実施形態の全部又は一部を組み合わせた構成によって実現されてもよい。
【符号の説明】
【0085】
100、100A、100B 双方向光増幅器
101、102 入出力ポート
111、112 光路構成部
113、114 光サーキュレータ
115、116、168 光スイッチ
121、122 光増幅器
131 励起光供給部
141、142 光減衰部
151、152 光監視部
161、162、167 励起光源
163、164 光合波器
165、166 光フィルタ
171、172 FIFO
173 励起光源
174 光カプラ
200、200A、300、400、500 双方向光増幅器
600、600A 双方向光増幅装置
601-60N 双方向光増幅器
611、611A、612、612A MCF
613、614、613A、614A FIFO
700 双方向光増幅装置
701 双方向光増幅器
711、712 MCF
721-724 光サーキュレータ
731-734 FIFO
741、742 励起光源
743、744 光カプラ
751-754 光フィルタ
761、762 2コアEDF
771-774 入出力ポート
800 双方向光増幅装置
811、812 NコアMCF
831-834 FIFO
841-84N、851-85N 光サーキュレータ
図1
図2
図3
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図13