(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-19
(45)【発行日】2025-05-27
(54)【発明の名称】クロスメンバ構造
(51)【国際特許分類】
B60R 19/18 20060101AFI20250520BHJP
B60R 19/04 20060101ALI20250520BHJP
【FI】
B60R19/18 P
B60R19/04 M
(21)【出願番号】P 2024504064
(86)(22)【出願日】2022-03-02
(86)【国際出願番号】 JP2022008761
(87)【国際公開番号】W WO2023166582
(87)【国際公開日】2023-09-07
【審査請求日】2024-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100183689
【氏名又は名称】諏訪 華子
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋本 康雄
【審査官】近藤 利充
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06412836(US,B1)
【文献】特開2018-202897(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0361793(US,A1)
【文献】特開2010-173596(JP,A)
【文献】米国特許第05080411(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/18
B60R 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向に延在する一対のサイドメンバの前端に取り付けられるクロスメンバの構造であって、
前側に位置する二つの角が鋭角に形成されるとともに後側に位置する二つの角が鈍角に形成された略台形型の閉断面構造を持つファーストクロスメンバを備え
、
前記ファーストクロスメンバが、前側に配置され断面略L字型を有する第一板部材と、前記第一板部材の後側に接合され断面略コの字型を有する第二板部材とを有する
ことを特徴とする、クロスメンバ構造
。
【請求項2】
前記第一板部材の上面と前記第二板部材の上面とが重ね合わされて接合されるとともに、前記第二板部材の下面が前記第一板部材の前面に突き当てられて接合される
ことを特徴とする、請求項
1記載のクロスメンバ構造。
【請求項3】
前記第一板部材の上面と前記第二板部材の上面との重ね合わせ位置が、前記ファーストクロスメンバにおける車両前後方向の中央よりも前方に位置する
ことを特徴とする、請求項
2記載のクロスメンバ構造。
【請求項4】
前記第一板部材の前面の下端が、前記第二板部材との突き当て位置よりも下方に突出している
ことを特徴とする、請求項
2または
3記載のクロスメンバ構造。
【請求項5】
前記第一板部材の前面の下端が、正面視で凹凸形状になるように形成される
ことを特徴とする、請求項
1~
4のいずれか1項に記載のクロスメンバ構造。
【請求項6】
前記第一板部材が、前記第二板部材よりも車幅方向の外側に突出した形状に形成される
ことを特徴とする、請求項
1~
5のいずれか1項に記載のクロスメンバ構造。
【請求項7】
前記第二板部材が、前記第一板部材よりも厚い板厚を有する
ことを特徴とする、請求項
1~
6のいずれか1項に記載のクロスメンバ構造。
【請求項8】
前記第一板部材の前面が、上下方向中央部を車両後方へ凹ませた形状に形成された凹部を有する
ことを特徴とする、請求項
1~
7のいずれか1項に記載のクロスメンバ構造。
【請求項9】
前記第二板部材の後面と前記
第二板部材の下面とのなす角部分に取り付けられ、前記下面及び前記後面に対して垂直な一対の壁部が形成されたブラケットを備える
ことを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載のクロスメンバ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、車両のサイドメンバの前端に取り付けられるクロスメンバの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のサイドメンバの前端にクロスメンバを設けた車体構造が知られている。この種のクロスメンバは、例えばファーストクロスメンバと呼ばれ、あるいはフロントエンドクロスメンバやバンパービームとも呼ばれる。ファーストクロスメンバは、衝突時の荷重をサイドメンバに伝達する機能を持つとともに、フレームの剛性を高める機能を持つ。また、ファーストクロスメンバの前面側にエネルギー吸収部材や緩衝材を取り付けることで、緩衝性能を向上させることが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたファーストクロスメンバの断面形状は、縦長の矩形閉断面形状となっている。一方、ファーストクロスメンバの後方に接続されるサイドメンバの上下方向寸法は、ファーストクロスメンバの上下方向寸法よりも小さい場合が多い。そのため、衝突時におけるファーストクロスメンバからサイドメンバへの荷重伝達性を向上させにくいという課題がある。特に、衝突荷重の受圧面積を拡大すべく、ファーストクロスメンバの上下方向寸法を伸ばすほど、ファーストクロスメンバとサイドメンバとの間の段差が大きくなり、荷重伝達性が低下しうる。
【0005】
本件の目的の一つは、上記のような課題に照らして創案されたものであり、簡素な構成で荷重伝達性を改善できるようにしたクロスメンバ構造を提供することである。なお、この目的に限らず、後述する「発明を実施するための形態」に示す各構成から導き出される作用効果であって、従来の技術では得られない作用効果を奏することも、本件の他の目的として位置付けられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示のクロスメンバ構造は、以下に開示する態様または適用例として実現でき、上記の課題の少なくとも一部を解決する。
開示のクロスメンバ構造は、車両前後方向に延在する一対のサイドメンバの前端に取り付けられるクロスメンバの構造であって、前側に位置する二つの角が鋭角に形成されるとともに後側に位置する二つの角が鈍角に形成された略台形型の閉断面構造を持つファーストクロスメンバを備える。
【発明の効果】
【0007】
開示のクロスメンバ構造によれば、簡素な構成で荷重伝達性を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】クロスメンバ構造が適用されたファーストクロスメンバの断面図である。
【
図3】(A)はファーストクロスメンバの上面図、(B)はその正面図、(C)はその左側面図、(D)はその後面図である。
【
図4】ファーストクロスメンバに取り付けられるブラケットの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
開示のクロスメンバ構造が適用された実施例を以下に説明する。
【実施例】
【0010】
[1.構成]
図1は、実施例としてのクロスメンバ構造が適用されたファーストクロスメンバ4の断面図であり、
図2は、ファーストクロスメンバ4の斜視図である。
図3(A)はファーストクロスメンバの上面図、
図3(B)はその正面図、
図3(C)はその左側面図、
図3(D)はその後面図である。
図4は、ファーストクロスメンバ4に取り付けられるブラケット7の斜視図である。
図5は、ファーストクロスメンバ4の側面図である。
【0011】
ファーストクロスメンバ4は、車両のフレーム1の前端部に設けられ、サイドメンバ2の前端に取り付けられる。ここでいうフレーム1には、ファーストクロスメンバ4のほか、サイドメンバ2や図示しないサスペンションクロスメンバ,フロアクロスメンバ等が含まれる。サイドメンバ2は、車両前後方向に延在し、車幅方向に間隔を空けて左右に一対設けられる。左右のサイドメンバ2間を車幅方向に繋ぐクロスメンバのうち、最も車両前方に位置するクロスメンバがファーストクロスメンバ4である。
【0012】
各々のサイドメンバ2の前端には、締結具8の挿通孔を有するエンドプレート3が固定される。エンドプレート3は、サイドメンバ2の前端を閉塞するように固定される板状部材であり、サイドメンバ2の断面の輪郭よりもやや大きな矩形状に形成される。ファーストクロスメンバ4は、エンドプレート3及び締結具8を介してサイドメンバ2に締結固定される。ファーストクロスメンバ4の前面側には、図示しないエネルギー吸収部材や緩衝材(例えば発泡PP材)が装着されうる。
【0013】
ファーストクロスメンバ4は、略台形型の閉断面構造を持つ。台形型の向きは、
図1に示すように、ファーストクロスメンバ4を車幅方向に分割するように切断したときの断面において、上底(平行な二辺のうち短い方)が車両後方に配置され、下底(平行な二辺のうち長い方)が車両前方に配置される向きとなっている。
図1に示す例では、上底及び下底の各々が略鉛直(法線の向きが略水平)になっている。
【0014】
ファーストクロスメンバ4は、第一板部材5と第二板部材6とが組み合わされて形成される。第一板部材5は、ファーストクロスメンバ4のうち前側に配置される部材である。
図1に示すように、第一板部材5は略L字型の断面を有する。一方、第二板部材6は、ファーストクロスメンバ4のうち後側に配置される部材であり、第一板部材5の後側に接合される。
図1に示すように、第二板部材6は略コの字型の断面を有する。第一板部材5及び第二板部材6の各々は、例えば鋼板にプレス加工(曲げ加工)を施すことによって製造される。好ましくは、第二板部材6が第一板部材5よりも厚い板厚を有する鋼板によって形成される。
【0015】
第一板部材5には、前面11と第一上面12とが設けられる。前面11は、法線(
図1に示す断面においてファーストクロスメンバ4の外側に向かって延びる法線)が車両前方を向いた平面状の部位である。第一上面12は、前面11の上端辺に繋がっている面であって、法線が鉛直上方よりもやや車両後方に傾いた平面状の部位であり、車両後方に向かう下り勾配を形成する部位である。
図1に示す断面において、前面11と第一上面12とのなす角Aは、鋭角(90度未満の角度)に形成される。
【0016】
第一上面12の車両前後方向の寸法Fは、ファーストクロスメンバ4の車両前後方向の寸法Eよりも短くなるように設定される。好ましくは、寸法Fが寸法Eの半分よりも短く設定される(すなわち、F<E/2)。このように、寸法Fを比較的短く設定しておくことで、例えばファーストクロスメンバ4の前面11から車両後方への外力が作用した場合に、第一上面12の座屈が抑制されうる。
【0017】
また、第二板部材6が第一板部材5よりも厚い板厚を有する場合には、前面11から車両後方への外力に対してファーストクロスメンバ4が段階的に変形するようになる。すなわち、外力を受けて最初に第一板部材5が車両前後方向に圧縮されるように変形し、その後に第二板部材6が車両前後方向に圧縮されつつ、その外力をサイドメンバ2側へと伝達する。これにより、前面11に入力された外力がサイドメンバ2に伝達されやすくなり、荷重伝達性が向上する。
【0018】
第二板部材6には、第二上面17と後面18と下面19とが設けられる。第二上面17は、第一上面12と同様に、法線が鉛直上方よりもやや車両後方に傾いた平面状の部位であり、車両後方に向かう下り勾配を形成する部位である。第二上面17は、第一上面12に対して平行に配置される。
図1に示すように、第一上面12及び第二上面17は、重ね合わされて接合される。接合方法としては、例えば重ね溶接やスポット溶接が挙げられる。また、後面18は、第二上面17の後端辺に繋がっている面であって、法線が車両後方を向いた平面状の部位である。
図1に示す断面において、第二上面17と後面18とのなす角Cは、鈍角(90度を超える角度)に形成される。角Aと角Cとの和はおよそ180度である。
【0019】
下面19は、後面18の下端辺に繋がっている面であって、法線が鉛直下方よりもやや車両後方に傾いた平面状の部位であり、車両前方に向かう下り勾配を形成する部位である。
図1に示す断面において、後面18と下面19とのなす角Dは、鈍角(90度を超える角度)に形成される。
図1に示すように、下面19は、前面11の裏側に突き当てられて接合される。接合方法としては、例えば突き合わせ溶接や隅肉溶接が挙げられる。下面19と前面11とのなす角B(閉断面の内側の角度)は、鋭角(90度未満の角度)に形成される。角Bと角Dとの和はおよそ180度である。
【0020】
前面11に対する下面19の当接箇所は、前面11の下端15よりも上方に設定される。言い換えれば、前面11の下端15は、下面19との突き当て位置よりも下方に突出している。また、
図3(D)に示すように、第一板部材5の車幅方向の寸法Jは、第二板部材6の車幅方向の寸法Kよりも大きく設定される。第一板部材5は、第二板部材6よりも車幅方向の外側(左右それぞれの外側)に突出した形状に形成される。これにより、衝突時における前面11の受圧面積が増大し、車両の緩衝性能が向上しうる。
【0021】
図3(B)に示すように、前面11の下端15は、正面視で凹凸形状になるように形成される。これにより、前面11の受圧面積がさらに増大し、車両の緩衝性能がさらに改善されうる。また、本実施例では、
図3(A),(B)に示すように、下端15の凹凸形状に対応させて、第一上面12の後端16が上面視で凹凸形状になるように形成される。これにより、第一板部材5の製造過程において一枚の鋼板から複数の第一板部材5を切り出す際に、隣接する第一板部材5同士の凹凸形状を対応させて配置することで鋼板の無駄が減少し、歩留まりが改善されうる。
【0022】
前面11の車幅方向中央付近には、
図3(B)に示すように、前面開口部13が設けられる。これに対応して後面18の車幅方向中央付近には、
図3(D)に示すように、後面開口部20が設けられる。また、前面11は、上下方向中央部を車両後方へ凹ませた形状に形成された凹部14を有する。凹部14の深さは不問である。
図1に示す例では、凹部14の深さに相当する寸法Gが寸法Fよりも小さく設定されている。また、凹部14は、前面開口部13を除き、前面11の左端部から右端部までの略全幅にわたって形成される。これにより、前面11の剛性が高くなり、外力が作用したときに屈曲しにくくなる。また、前面11の前方側に矩形断面の緩衝材(発泡PP材等)を装着した場合には、衝突時に緩衝材を凹部14の内側へ入り込ませることで変形代が確保されるため、車両の緩衝性能が向上しうる。
【0023】
図5に示すように、ファーストクロスメンバ4の下部には、車両にスキッドプレート26を取り付けるためのブラケット7が固定される。ブラケット7は、車幅方向に間隔を空けて左右に一対設けられる。ブラケット7の車幅方向位置は、上面視でサイドメンバ2を避けた位置に設定される。
図3(A),(D)等に示す例では、一対のサイドメンバ2の内側にブラケット7の位置が設定されている。
【0024】
本実施例のブラケット7は、衝突時の外力によって角Dが増大するような変形を阻止するように機能すべく、第二板部材6の後面18と下面19とのなす角部分(後面18と下面19とが繋がる山折り部分)に取り付けられる。ブラケット7は、後面18及び下面19を外側から挟むような形状に形成される。
図4に例示するブラケット7には、一対の壁部21とこれらを連結する底部23とが設けられる。壁部21は、後面18及び下面19に対して垂直に配置される平面状の部位である。この壁部21には、後面18と下面19とのなす角部分に嵌合するように凹んだ形状の嵌合部22が設けられる。
【0025】
図1に示すように、ブラケット7は、第二板部材6の後面18と下面19とが繋がる山折り部分に対して嵌合部22を嵌合させた状態で、ファーストクロスメンバ4に固定される。また、底部23は、ブラケット7がファーストクロスメンバ4に取り付けられたときに略水平に配置される平面状の部位であり、一対の壁部21の下端辺に接続される。底部23には、スキッドプレート26を取り付けるための取付孔24が穿孔される。
【0026】
[2.作用,効果]
(1)上記のファーストクロスメンバ4は、前側に位置する二つの角A,Bが鋭角に形成されるとともに後側に位置する二つの角C,Dが鈍角に形成された略台形型の閉断面構造となっている。このような構成により、ファーストクロスメンバ4を矩形閉断面にした場合と比較して、ファーストクロスメンバ4及びサイドメンバ2の接続箇所における上下方向の段差を減少させることができる。
【0027】
例えば、ファーストクロスメンバ4の後端部における上端とサイドメンバ2の前端部における上端との距離(
図1中の寸法L)を短くすることができる。同様に、ファーストクロスメンバ4の後端部における下端とサイドメンバ2の前端部における下端との距離(
図1中の寸法M)も短縮できる。これにより、ファーストクロスメンバ4からサイドメンバ2へと伝達される荷重の流れをスムーズにすることができる。したがって、簡素な構成でファーストクロスメンバ4からサイドメンバ2への荷重伝達性を改善できる。
【0028】
また、ファーストクロスメンバ4を矩形閉断面にした場合と比較して、ファーストクロスメンバ4の前面11の上下方向寸法を長くすることができる。これにより、衝突荷重の受圧面積を増大させることができ、車両の緩衝性能を向上させることができる。
さらに、ファーストクロスメンバ4の上面(第一上面12,第二上面17)を車両後方に向かう下り勾配にすることができ、冷却風の流れを阻害しにくいファーストクロスメンバ4を提供できる。すなわち、ファーストクロスメンバ4の近傍を通過する冷却風の流れを、
図5に示すように車両後方に向かって斜め下方向へと自然に誘導することができる。したがって、ファーストクロスメンバ4の後方に配置されるラジエータ25への冷却風の流れがスムーズになり、ラジエータ25の冷却性能を向上させることができる。
【0029】
(2)上記のファーストクロスメンバ4は、前側に配置され断面略L字型を有する第一板部材5と、第一板部材5の後側に接合され断面略コの字型を有する第二板部材6とを有する。これらの二つの部材5,6を組み合わせることで、略台形型の閉断面構造を容易に実現することができ、製造コストを抑えつつ荷重伝達性や緩衝性能を改善できる。
【0030】
第一板部材5は、略L字型のため、一枚の鋼板を一回だけ屈曲させることで製造することができ、製造の手間やコスト,時間等を節約することができる。一方、第二板部材6には屈曲箇所が二箇所あるものの、屈曲角度がともに鈍角であることから、一回の屈曲回数で製造することが可能である。すなわち、後面18を基準として第二上面17及び下面19を同時に直角に屈曲加工することで、スプリングバックにより角C,Dが90度よりも若干大きな角度となる。したがって、一回の屈曲加工で
図1に示すような形状の第二板部材6を得ることができ、製造の手間やコスト,時間等を節約することができる。
【0031】
(3)上記のファーストクロスメンバ4では、第一板部材5の第一上面12と第二板部材6の第二上面17とが重ね合わされて接合されるとともに、第二板部材6の下面19が第一板部材5の前面11に突き当てられて接合される。このような構成により、第一板部材5の前面11の上端部が第一上面12,第二上面17よりも上へ飛び出さないため、ラジエータ25への冷却風の流れをスムーズにすることができ、ラジエータ25の冷却性能を向上させることができる。
【0032】
また、上記の構造によれば、ファーストクロスメンバ4の前面11から車両後方への外力が作用した場合に、第二板部材6の下面19と第一板部材5の前面11との突き当て部分は、接合状態が外れにくい。つまり、第一板部材5が車両前後方向に圧縮されるように変形したとしても、不等四辺形状の閉断面構造が維持されやすくなる。したがって、衝突時におけるファーストクロスメンバ4やフレーム1の剛性低下を抑制することができる。
【0033】
(4)上記のファーストクロスメンバ4では、
図1に示すように、第一上面12の車両前後方向の寸法Fが寸法Eの半分よりも短く設定されうる。このような設定により、第一上面12の座屈を防止することができ、ファーストクロスメンバ4の形状安定性を向上させることができる。
【0034】
(5)上記のファーストクロスメンバ4では、
図1に示すように、第一板部材5の前面11の下端15が、第二板部材6との突き当て位置よりも下方に突出している。このような構成により、衝突時における前面11の受圧面積を増大させることができ、車両の緩衝性能を向上させることができる。
【0035】
(6)上記のファーストクロスメンバ4では、第一板部材5の前面11の下端15が、正面視で凹凸形状になるように形成される。このような構成により、衝突時における前面11の受圧面積を増大させることができ、車両の緩衝性能を向上させることができる。なお、
図3(A),(B)に示すように、下端15の凹凸形状に対応させて、第一上面12の後端16が上面視で凹凸形状になるように形成してもよい。このような構成により、一枚の鋼板から複数の第一板部材5を切り出す際に、鋼板を無駄なく使用できるようになり、歩留まりを改善できる。
【0036】
(7)上記のファーストクロスメンバ4では、
図3(D)に示すように、第一板部材5が、第二板部材6よりも車幅方向の外側に突出した形状に形成される。このような構成により、衝突時における前面11の受圧面積を増大させることができ、車両の緩衝性能を向上させることができる。
【0037】
(8)上記の第二板部材6は、第一板部材5よりも厚い板厚の鋼板で製造されうる。この場合、例えば衝突時にファーストクロスメンバ4に対して車両後方への外力が作用すると、最初に第一板部材5が車両前後方向に圧縮されるように変形する。その後、第二板部材6が車両前後方向に圧縮されつつ、その外力をサイドメンバ2側へと伝達する。このように、ファーストクロスメンバ4を段階的に変形させることで、衝撃を緩和しながら外力を適切にサイドメンバ2へと伝達することができ、衝突保護性能や荷重伝達性を向上させることができる。また、第二板部材6が厚板であることから、サイドメンバ2への応力伝達効率を改善できる。
【0038】
(9)上記の第一板部材5の前面11には、
図1に示すように、前面11の上下方向中央部を車両後方へ凹ませてなる凹部14が設けられる。このような構成により、前面11の剛性を高めることができ、ファーストクロスメンバ4の形状安定性を向上させることができる。また、前面11の前方側に矩形断面の緩衝材(発泡PP材等)が装着された場合には、衝突時に緩衝材を凹部14の内側へ入り込ませることで変形代を確保できる。したがって、車両の緩衝性能を向上させることができる。
【0039】
(10)上記のファーストクロスメンバ4は、
図4に示すように、一対の壁部21が形成されたブラケット7を備える。このブラケット7は、第二板部材6の下面19と後面18とのなす角部分に取り付けられる。また、壁部21は、第二板部材6の下面19及び後面18に対して垂直に配置される。このような構成により、衝突時の外力によって角Dが増大するような変形を阻止することができ、ファーストクロスメンバ4の形状安定性を向上させることができる。
【0040】
[3.その他]
上記の実施例はあくまでも例示に過ぎず、本実施例で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施例の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。また、本実施例の各構成は、必要に応じて取捨選択でき、あるいは、適宜組み合わせることができる。
【0041】
上記の実施例では、第一板部材5と第二板部材6とを有するファーストクロスメンバ4を例示したが、一枚の鋼板を複数回折り曲げることで一本のファーストクロスメンバ4を形成してもよい。少なくとも、前側に位置する二つの角が鋭角に形成されるとともに後側に位置する二つの角が鈍角に形成された略台形型の閉断面構造にすることで、上述の実施形態と同様の効果を奏するものとなる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本件は、車両に取り付けられるクロスメンバの製造産業に利用可能である。また、クロスメンバを含むフレームを備えた車両の製造産業にも利用可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 フレーム
2 サイドメンバ
3 エンドプレート
4 ファーストクロスメンバ
5 第一板部材
6 第二板部材
7 ブラケット
8 締結具
11 前面
12 第一上面(上面)
13 前面開口部
14 凹部
15 下端
16 後端
17 第二上面(上面)
18 後面
19 下面
20 後面開口部
21 壁部
22 嵌合部
23 底部
24 取付孔
25 ラジエータ
26 スキッドプレート