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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-19
(45)【発行日】2025-05-27
(54)【発明の名称】防護柵
(51)【国際特許分類】
   E01F 7/04 20060101AFI20250520BHJP
【FI】
E01F7/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024227533
(22)【出願日】2024-12-24
【審査請求日】2024-12-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】398054845
【氏名又は名称】株式会社プロテックエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】西田 陽一
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-241852(JP,A)
【文献】実開平02-047360(JP,U)
【文献】特許第4518436(JP,B1)
【文献】国際公開第2014/136526(WO,A1)
【文献】実開昭56-077344(JP,U)
【文献】特開昭60-088768(JP,A)
【文献】特開平11-241497(JP,A)
【文献】登録実用新案第3044078(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔を隔てて立設した支柱構造体と、隣り合う支柱構造体の間に形成し、落石、崩落土砂、雪崩等の崩落物を捕捉する阻止面とを少なくとも具備した防護柵において、
前記支柱構造体は間隔を隔てて縦向きに配置した複数の外柱と、
前記複数の外柱に跨って多段的に配置しつつ、該複数の外柱の間を荷重伝達可能に連結する複数の拘束板と、
縦向きに配置し、上下に隣り合う拘束板の間を荷重伝達可能に連結する複数のブレス材とを具備し、
前記拘束板の設置間隔に合わせて高さ方向に沿って複数のラーメン構造の耐荷区間を形成し、
前記外柱は複数の耐荷区間に亘る長さを有する応力部材であり、
応力部材である前記外柱、拘束板およびブレス材の設置数を選択して支柱構造体の強度を変更可能に構成し
前記阻止面は鋼製または繊維製のロープ材または鋼製または繊維製のネット材の少なくとも一方を含み、
前記支柱構造体の外柱と前記阻止面との交差部を荷重伝達可能に取り付けたことを特徴とする、
防護
【請求項2】
前記拘束板の板面に前記外柱を貫通可能な3つ以上の柱孔と、前記拘束板の板面に前記ブレス材の上下端を嵌合可能な複数の嵌合スリットとを形成し、設計強度に応じて前記外柱またはブレス材の少なくとも一つの応力部材の組み付け数を選択可能に構成したことを特徴とする、請求項1に記載の防護
【請求項3】
高さ方向に沿って形成したすべての耐荷区間において、応力部材である前記外柱またはブレス材の少なくとも一つの応力部材の設置数を同数の組み合わせとして構成したことを特徴とする、請求項2に記載の防護
【請求項4】
高さ方向に沿って形成した複数の耐荷区間において、応力部材である前記外柱またはブレス材の少なくとも一つの応力部材の設置数を異なる組み合わせとして構成したことを特徴とする、請求項2に記載の防護
【請求項5】
前記外柱が単管パイプであることを特徴とする、請求項1に記載の防護
【請求項6】
前記外柱に対して前記拘束板を移動不能に位置決めする拘束板の位置決め手段を追加して具備することを特徴とする、請求項1に記載の防護
【請求項7】
前記ブレス材が一対の屈曲フレームと、該屈曲フレームの屈曲部を連結す連結ピンとを具備することを特徴とする、請求項1に記載の防護
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は落石、崩落土砂、雪崩等の崩落物を防護ネット等の阻止面で捕捉する防護柵技術に関し、特に現場状況に応じて強度を簡易に調整できる防護に関する。
【背景技術】
【0002】
間隔を隔てて立設した複数の支柱と、隣り合う支柱の間に掛け渡した防護ネットを具備した防護柵は周知であり、受撃性能に応じて各種の防護柵が提案されている。
この種の防護柵にあっては、防護ネットで崩落物を捕捉した際の衝撃力(運動エネルギー)を最終的に支柱で支持する構造であるため、想定される崩落物の衝撃力に応じて支柱の強度を設定している。
【0003】
一般的な支柱としては、中空構造の鋼管単独、または鋼管に様々な補強構造を組み合わせた支柱構造体が用いられている。
鋼管製の支柱の強度を高める補強手段としては、例えば、鋼管内にモルタル等を充填した支柱構造体(特許文献1)、中空構造の鋼管内に補強用のH型鋼を内挿した支柱構造体(特許文献2)、またはモルタル充填鋼管内に複数の棒鋼材を配筋して補強した支柱構造体(特許文献3)等が知られていて、エネルギー吸収性能に応じて支柱構造体の使い分けがされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-47617号公報
【文献】特開2022-76584号公報
【文献】特開2012-177261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の支柱構造体はつぎのような解決すべき課題を内包している。
<1>特許文献1~3に開示された従来の支柱構造体は、高剛性を有しているものの、製作に多くの手数がかかり製作コストが高くつく。
<2>従来の支柱構造体は、鋼管内にH型鋼や棒鋼等の補強材を収容したり、鋼管の全長に亘ってモルタルを充填したりするため、支柱構造体が重量物となる。
そのため、人力のみで支柱構造体の取り扱いを行うことができず、支柱構造体の現場搬入作業や現場での立設作業に重機類を必要とする。
<3>防護柵は場所によって崩落物の衝撃力が異なるにもかかわらず、すべての支柱構造体の強度を予想される崩落物の最大衝撃力に合わせて、製作している。
そのため、支柱構造体の設計が不経済である。
<4>従来の支柱構造体の強度を調整するには、鋼管や補強材の断面寸法を変更したり、鋼管の管厚を変更したりする必要があり、寸法と厚さの異なる多種類の鋼材の管理と使い分けが煩雑となる。
そのため、現場の設置場所に応じて支柱構造体の設計強度を簡単に調整することができない。
【0006】
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡易な構造により強度を調整可能な、防護を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、間隔を隔てて立設した支柱構造体と、隣り合う支柱構造体の間に形成し、落石、崩落土砂、雪崩等の崩落物を捕捉する阻止面とを少なくとも具備した防護柵において、前記支柱構造体は間隔を隔てて縦向きに配置した複数の外柱と、前記複数の外柱に跨って多段的に配置しつつ、該複数の外柱の間を荷重伝達可能に連結する複数の拘束板と、縦向きに配置し、上下に隣り合う拘束板の間を荷重伝達可能に連結する複数のブレス材とを具備し、前記拘束板の設置間隔に合わせて高さ方向に沿って複数のラーメン構造の耐荷区間を形成し、前記外柱は複数の耐荷区間に亘る長さを有する応力部材であり、応力部材である前記外柱、拘束板およびブレス材の設置数を選択して支柱構造体の強度を変更可能に構成し、前記阻止面は鋼製または繊維製のロープ材または鋼製または繊維製のネット材の少なくとも一方を含み、前記支柱構造体の外柱と前記阻止面との交差部を荷重伝達可能に取り付けたものである。
本発明の他の形態において、前記拘束板の板面に前記外柱を貫通可能な3つ以上の柱孔と、前記拘束板の板面に前記ブレス材の上下端を嵌合可能な複数の嵌合スリットとを形成し、設計強度に応じて前記外柱またはブレス材の少なくとも一つの応力部材の組み付け数を選択可能に構成する。
本発明の他の形態において、高さ方向に沿って形成したすべての耐荷区間において、応力部材である前記外柱またはブレス材の少なくとも一つの応力部材の設置数を同数の組み合わせとして構成してもよいし、高さ方向に沿って形成した複数の耐荷区間において、応力部材である前記外柱またはブレス材の少なくとも一つの応力部材の設置数を異なる組み合わせとして構成してもよい。
本発明の他の形態において、前記外柱に対して前記拘束板を移動不能に位置決めする拘束板の位置決め手段を追加して具備して構成してもよい。
本発明の他の形態において、前記ブレス材が一対の屈曲フレームと、該屈曲フレームの屈曲部を連結する連結連結ピンとを具備して構成してもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明は少なくともつぎのひとつの効果を奏する。
<1>支柱構造体を構成する外柱またはブレス材の少なくとも一つの応力部材の設置数を適宜選択するだけの簡単な作業で以て、現場で求められる強度(曲げ耐力、軸力、せん断力)に合わせた支柱構造体を個別に製作することができる。
<2>外柱またはブレス材の少なくとも一つの応力部材の設置数を選択することで、支柱構造体の強度を全体的に変更できるだけでなく、特定の高さの耐荷区間を部分的に補強することも可能である。
そのため、支柱構造体の強度を簡易に変更することが可能である。
<3>支柱構造体を組立てる際、支柱構造体を応力部材の設置数を適宜選択することで、現場に合わせて支柱構造体の全長も個別に調整することができる。
<4>支柱構造体の全体がラーメン構造を呈するため、軽量でありながら高耐力を発揮する。
特に、外柱の全長が長くとも、外柱の途中箇所を複数の拘束板が拘束して補強するので座屈に対して高い耐力を発揮できる。
<5>支柱構造体の強度を高める手段として、径や素材厚の異なる外柱を使い分けする方法が考えられる。
外柱を大径化すると、外柱が重たくなって取扱性が悪くなるだけでなく、拘束板の柱孔の径も変更しなければならず、支柱構造体を構成する応力部材の種類が多くなると、応力部材の管理と使い分けが煩雑となる。
本発明では、支柱構造体の製作に同一規格の応力部材を使用するので、面倒な応力部材の管理と使い分けが不要である。
<6>支柱構造体を構成するすべての応力部材が軽量であるため、大型の運搬車両等を用いることなく、作業員の人力のみで各資材を小分けして現場へ搬入できると共に、作業員の人力のみで支柱構造体を組み立てできる。
<7>支柱構造体が組立式であるため、支柱構造体の応力部材(外柱、拘束板またはブレス材)が変形した際は、必要最小限の応力部材を交換することで、支柱構造体を簡単に補修することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】支柱構造体と阻止面を具備した防護柵の斜視図
図2】防護柵の横断面
図3】防護柵の平面図
図4図1におけるIV-IVの断面図
図5】支柱構造体の組立て方法の説明図
図6】上下の拘束板の間にブレス材を組み付ける支柱構造体の組立て方法の説明図
図7】支柱構造体を補強した他の実施例の説明図
図8図1におけるVIII-VIIIの断面図
図9】拘束板の平面形状を円盤形に形成した支柱構造体の変形例の説明図
図10図9に示した支柱構造体の水平断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以降に図面を参照しながら本発明について詳しく説明する。
【0011】
1.防護柵の概要
図1~3を参照して説明する。
本発明で例示した防護柵は所定の間隔を隔てて立設した組立式の支柱構造体10と、隣り合う支柱構造体10の間に取り付けた阻止面50とを少なくとも具備する。
以降に本例の防護柵について詳しく説明する。
【0012】
2.支柱構造体
図1~3を参照して説明する。
支柱構造体10は、間隔を隔てて縦向きに配置した複数の外柱20と、複数の外柱20に跨って多段的に配置し、複数の外柱20の間を荷重伝達可能に連結する複数の拘束板30と、縦向きに配置し、上下に隣り合う拘束板30,30の間を荷重伝達可能に連結する複数のブレス材40とを具備した、組立式の支柱である。
【0013】
発明の理解をし易くするため、便宜的に支柱構造体10を拘束板30の設置間隔に合わせて複数に区分けし、支柱構造体10を高さ方向に等間隔で区分けした1区間を耐荷区間11と定義して説明する。
各耐荷区間11はラーメン構造を呈する。
【0014】
支柱構造体10はその平面形状が多角形を呈している。
支柱構造体10の側面から見た横幅と高さは、適宜選択が可能である。
実用上、支柱構造体10の側面から見た横幅は、例えば30~60cmであり、高さは2~6mである。
【0015】
本発明が、支柱構造体10を複数の応力部材(外柱20,拘束板30,ブレス材40)で組立式に構成したのは、これらの応力部材の取扱性を改善するためと、これらの応力部材の設置数を適宜選択することで、支柱構造体10の強度を個別的に調整(変更)し得るようにするためである。
以降に支柱構造体10の構成部材について詳しく説明する。
【0016】
<1>外柱
外柱20は支柱構造体10に作用する曲げ力および軸力に対抗するための棒状または管筒状を呈する強度部材であり、縦向きで使用する。
外柱20は一本ものの強度部材でもよいが、長手方向に沿って複数に分割した組立式でもよい。
実用的に外柱20には公知の単管パイプを使用できる。
【0017】
<1.1>外柱の全長
外柱20の全長は、支柱構造体10の全長に合わせて適宜選択する。
本例では、すべての外柱20の全長が同一である形態について説明する。
【0018】
<1.2>外柱の配置間隔
複数の外柱20は等間隔に配置し、互いに並列の関係にある。
【0019】
<1.3>外柱の組合せ本数
支柱構造体10は複数の外柱20を具備する。
外柱20は、支柱構造体10の強度調整部材の一つであり、外柱20の設置本数は支柱構造体10の設計強度に応じて適宜選択が可能である。
【0020】
本例では、4本の外柱20を1ユニットとして使用する形態について説明するが、外柱20は5本または6本の組み合わせでもよく、要は3本以上の外柱20を1ユニットとして使用できればよい。
【0021】
<2>拘束板
図2,4,5を参照して説明する。
拘束板30は支柱構造体10の強度調整部材の一つであり、支柱構造体10の設計高さに応じて拘束板30の設置数を適宜選択する。
【0022】
拘束板30は複数の外柱20が拡径方向に変形して座屈しないように複数の外柱20を拘束する機能と、複数の外柱20の相互間で荷重を伝達する機能を併有した応力部材である。
【0023】
拘束板30の周縁部には、所定の間隔を隔てて複数の柱孔31と、複数の嵌合スリット32が開設されている。
【0024】
<2.1>柱孔
柱孔31は外柱20を挿通するための孔であり、拘束板30の周縁部の板面に等間隔に形成してある。
柱孔31の形成数は、外柱20の設置数に応じて適宜選択が可能である。
【0025】
<2.2>嵌合スリット
嵌合スリット32は、ブレス材40の上下端部に形成した鉤部42を嵌め込むための開口である。
ブレス材40の端部の鉤部42を嵌合スリット32に嵌め込むことで、拘束板30とブレス材40との間を連結して固定することができる。
【0026】
<2.2.1>嵌合スリットの形成位置
拘束板30の周縁部であって、隣り合う一対の柱孔31,31の間の板面に嵌合スリット32が開設してある。
嵌合スリット32は、ブレス材40の端部の鉤部42の嵌合位置に合わせて形成してあればよい。
【0027】
<2.2.2>嵌合スリットの開口寸法
嵌合スリット32の開口寸法は、ブレス材40の鉤部42を収容可能な形状と寸法に形成してある。
本例では、板状のブレス材40の断面形状に対応させて、嵌合スリット32が長方形状を呈している。
嵌合スリット32は、ブレス材40の単体の鉤部42のみを収容できるように細幅に形成してもよいし、複数の鉤部42をまとめて収容できるよう広幅に形成してもよい。
【0028】
<2.3>拘束板の平面形状
図4に示すように、本例では拘束板30が一枚ものの平板で構成する形態について説明する。
拘束板30の平面形状は、正方形、多角形、円形等でもよく、拘束板30の平面形状は特に制約がない。
【0029】
なお、拘束板30は平板に限定されず、一対の外柱20間を個別に連結可能な帯状を呈するリンク部材の組み合わせであってもよい。
拘束板30を複数のリンク部材で構成する場合は、リンク部材の両端部に柱孔31を形成し、リンク部材の両端部近くに嵌合スリット32を形成する。
【0030】
<2.4>拘束板の位置決め手段
図6を参照して説明する。
各拘束板30は、位置決め手段21によって外柱20の高さ方向に沿って移動不能な状態で位置決めされている。
【0031】
拘束板30の位置決め手段21としては、例えば単管クランプ、断面C字形を呈するバネクリップ材、またはピン留め構造等が適用可能である。
位置決め手段21が単管クランプまたはバネクリップ材である場合は、拘束板30の上下位置の外柱20の外周面に装着して拘束板30を位置決めする。
位置決め手段21がピン留め構造である場合は、外柱20の軸方向に沿って開設した複数のピン穴と、ピン部材とを組み合わせ、拘束板30を位置決め位置に合わせたピン穴にピン部材を差し込んで拘束板30を位置決めする。
【0032】
その他の拘束板30の位置決め手段21としては、柱孔31と外柱20の径差を小さくして、柱孔31に外柱20が圧接するように外柱20を嵌め込み、圧接部の摩擦抵抗を利用して位置決めしてもよい。
【0033】
<3>ブレス材
図2,4,5を参照して説明する。
ブレス材40は、支柱構造体10の強度調整部材の一つであり、ブレス材40の設置数は支柱構造体10の設計強度に応じて適宜選択が可能である。
ブレス材40は、上下に隣り合う拘束板30,30の間を縦方向に連結する応力部材として機能する。
【0034】
本例で例示したブレス材40について説明すると、ブレス材40は、一対の屈曲フレーム41,41と、屈曲フレーム41,41の屈曲部を連結する連結連結ピン45とを具備する。
ブレス材40を組立式に構成したのは、上下に隣り合う拘束板30,30の間へのブレス材40の組付け作業を容易にするためである。
【0035】
<3.1>屈曲フレーム
図5を参照して説明する。
一対の屈曲フレーム41,41は、構造および形状が同一である。
屈曲フレーム41は、全体が「く」字形を呈する板体からなる。
屈曲フレーム41の屈曲角度は、上下に配置する拘束板30,30の配置間隔に合わせて適宜選択する。
屈曲フレーム41の両端部には、内向きに突出した鉤部42を形成する。鉤部42は拘束板30の嵌合スリット32と嵌合可能である。
屈曲フレーム41の中央の屈曲部にはピン孔43を有している。
【0036】
<3.2>連結ピン
連結ピン45は一対の屈曲フレーム41,41を一体化するためのピンである。
重ね合わせた一対の屈曲フレーム41,41の屈曲部のピン孔43に連結ピン45を挿通することで、ブレス材40をX形に組み立てできる。
【0037】
<3.3>ブレス材の寸法
ブレス材40の高さは適宜選択が可能である。
ブレス材40は、ひとつの支柱構造体10に対して、すべて同一寸法のブレス材40を組み付けてもよいし、高さ(全長)の異なる寸法のブレス材40を組み付けてもよい。
ブレス材40の高さ(全長)を変更することで、支柱構造体10に形成される各耐荷区間11の間隔を調整することができる。
【0038】
<4>附帯設備
支柱構造体10の附帯設備として、例えば隣り合う支柱構造体10の頭部間に間隔保持材(図示省略)を配設したり、斜面山側に設けた山側アンカーと各支柱構造体10の頭部との間に控えロープ材(図示省略)を配設したりしてもよい。
こさらに公知の防護柵が具備した附帯設備を追加して設置してもよい。
れらの附帯設備は例示であり、必須の設備ではない。
【0039】
3.阻止面
図1~3を参照して説明すると、阻止面50は可撓性を有する公知の崩落物の捕捉面である。
阻止面50は支柱構造体10の斜面山側または斜面谷側に配置し、隣り合う複数の支柱構造体10の間に跨って設置する。
【0040】
<1>阻止面の例示
本例では、阻止面50を多段的に配設した複数の鋼製または繊維製のロープ材51と、複数のロープ材51の片面に配設した鋼製または繊維製のネット材52とにより構成する形態について説明するが、阻止面50はロープ材51またはネット材52の何れか一方の部材で構成してもよい。
阻止面50の具体的な構成は、捕捉対象である崩落物の種類や崩落量等に応じて適宜選択する。
【0041】
<2>阻止面がロープ材を具備する場合
阻止面50がロープ材51を具備する場合、ロープ材51の一部に公知の緩衝金具を配備してもよいし、緩衝具を具備しない形態で取り付けてもよい。
さらに、ロープ材51と支柱構造体10との交差部を、ボルト等によりスライド不能に取り付けてもよいし、スライド可能に係留させて取り付けてもよい。
【0042】
[支柱構造体の組立て方法]
支柱構造体10の組立て方法について説明する。
【0043】
<1>資材の搬入
支柱構造体10を構成する外柱20、拘束板30およびブレス材40を現場へ搬入する。
支柱構造体10を構成するすべての応力部材が軽量であるため、大型の運搬車両等を用いることなく、作業員の人力のみで各資材を小分けして現場へ搬入できる。
【0044】
<2>支柱構造体の現場組立て
以下の要領で以て支柱構造体10を現場で組み立てる。
なお、支柱構造体10は、横向きまたは縦向きの何れの形態で組み立ててもよい。
【0045】
<2.1>拘束板の組付け工程
図5を参照して説明する。
相対向して配置した拘束板30の柱孔31に外柱20の一端を差し込みながら、複数の拘束板30の間に複数の外柱20を掛け渡して組み付ける。
【0046】
<2.2>ブレス材の組付け工程
図5,6を参照して説明する。
複数の外柱20に係留した状態で、上下に隣り合う拘束板30,30の間にブレス材40を組み付ける。
屈曲フレーム41単位で組付ける場合は、各屈曲フレーム41の端部の鉤部42を拘束板30の嵌合スリット32に嵌め込んだ後に、一対の屈曲フレーム41,41の屈曲部に連結ピン45を挿通することで、拘束板30への係止作業とブレス材40の組立て作業を同時に行うことができる。
または、予めX形に組み立てたブレス材40の完成体を上下2枚の拘束板30,30の間に組み付けるようにしてもよい。
【0047】
なお、ブレス材40をセットする際、位置決め手段21を使用して、外柱20の所定位置に拘束板30を変位不能に位置決めする。
【0048】
<2.3>工程の繰り返し
所定の設計高さに達するまで、外柱20に対する拘束板30の組付け工程と、隣り合う拘束板30,30間へのブレス材40の組付け工程とを繰り返し行って、支柱構造体10の組立て作業を完了する。
【0049】
支柱構造体10の組立てに際し、拘束板30とブレス材40の設置数を選択することで、支柱構造体10の高さを設置場所に応じた設計高さに調整することができる。
【0050】
支柱構造体10の組立てに、溶接や大型重機を用いないので、短時間のうちに支柱構造体10を製作できる。
例えば、高さ2mの柱構造体10を製作する場合は、ひとりの作業員で15~20分程度の短い作業時間で組立てることができる。
【0051】
<3>支柱構造体の強度調整
本発明に係る支柱構造体10は、現場で強度調整を簡単に行うことができる。
以降に支柱構造体10の強度調整方法について説明する。
【0052】
<3.1>外柱による強度調整
支柱構造体10を構成する外柱20の設置数を選択することで、支柱構造体10の強度を調整できる。
外柱20の設置本数に比例して支柱構造体10の強度が大きくなる。
【0053】
支柱構造体10を増強する他の手段として、外柱20を大径化する方法が考えられるが、外柱20を大径化すると、外柱20が重たくなって取扱い性が悪くなるだけでなく、拘束板30の柱孔31も変更しなければならない。
そのため、大径化した応力部材(外柱、拘束板)と大径化しない応力部材(外柱、拘束板)との資材管理と使い分けが煩雑となる。
本発明ではこのような課題を解決するために、外柱20の設置数を選択することで、支柱構造体10の強度を調整し得るようにした。
【0054】
<3.2>ブレス材による強度調整
支柱構造体10を構成するブレス材40の設置数を選択することでも、支柱構造体10の強度を調整できる。
例えば、ブレス材40は単体で組み付けてもよいし、重合させた状態で複数組のブレス材40を組み付けてもよい。
ブレス材40の設置数に比例して支柱構造体10の強度が大きくなる。
【0055】
また、支柱構造体10は、すべての耐荷区間11において、ブレス材40の設置数を同一にすることで、全長に亘って強度を同一に設定してもよいし、ブレス材40の設置数を選択することで、任意の高さの耐荷区間11を部分的に補強することも可能である。
【0056】
既述したように本発明では、支柱構造体10を組立てる際、支柱構造体10を応力部材の設置数を適宜選択するだけの簡単な作業で以て、現場に合わせて支柱構造体10の全長と強度(曲げ耐力、軸力、せん断力)を個別に調整することができる。
【0057】
<4>支柱構造体の立設
既述した工程で製作した支柱構造体10を防護柵の設置現場に所定の間隔を隔てて立設する。
支柱構造体10の立設例を以下に説明する。
【0058】
<4.1>鋼材基礎による支柱構造体の支持方式
図2を参照して説明する。
支柱構造体10の設置位置に櫓構造の鋼材基礎60を構築し、鋼材基礎60の真上に支柱構造体10を立設してもよい。
鋼材基礎60は、地中に打ち込んだ複数の支持杭61と、支持杭61の頭部間に掛け渡した複数ので構成する。
支持杭61や桁材62には、市販の単管、形鋼、コラム材等を使用するとよい。
【0059】
<4.2>支柱構造体の直接建込み方式
図示を省略するが、支柱構造体10の下部をコンクリート基礎や地山に直接建て込んで立設してもよい。
【0060】
<5>間隔保持材の設置
必要に応じて、隣り合う支柱構造体10の頭部間に、鋼製の間隔保持材を横架する。
間隔保持材としては、単管パイプや鋼管等を適用できる。
公知のボルト連結手段により、間隔保持材の両端部と支柱構造体10の頭部間の間を固定する。
【0061】
<6>山側控えロープの設置
必要に応じて、支柱構造体10の斜面山側に山側アンカーを構築し、支柱構造体10の頭部と山側アンカーとの間に山側控えロープを設置する。
【0062】
[支柱構造体の耐荷作用]
つぎに図2,3を参照しながら、防護柵に受撃した際における支柱構造体10の耐荷作用について説明する。
【0063】
<1>支柱構造体の曲げ耐力
阻止面50を通じて支柱構造体10に曲げ力が作用すると、支柱構造体10を構成する外柱20、拘束板30およびブレス材40が協働して曲げ力に対抗する。
特に、支柱構造体10の各耐荷区間11がラーメン構造を呈するため、回転や曲げに対して抵抗する。
特に、外柱20の全長が長くとも、外柱20の途中箇所を複数の拘束板30が拘束して補強するので、外柱20に座屈が生じ難い。
さらに、支柱構造体10の外周箇所に設けた複数のブレス材40が、外柱20と協働して曲げ力や引張力に対抗するため、外柱20の荷重負担を軽減できる。
外力が支柱構造体10の設計強度を超えると、外柱20とブレス材40に塑性変形が生じ、外柱20とブレス材40の変形時に曲げ力が吸収される。
【0064】
<2>支柱構造体の補修作業
支柱構造体10は組立式である。
そのため、受撃後に防護柵を修復する際は、変形した支柱構造体10の構成資材(構外柱20、拘束板30またはブレス材40)のみを新しい資財に交換することで、支柱構造体10を簡単に補修することができる。
【0065】
[他の実施例]
以降に他の実施例について説明するが、その説明に際し、前記した実施例と同一の部位は同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0066】
<1>支柱構造体の他の補強構造
先の実施例では、支柱構造体10を構成する応力部材である外柱20およびブレス材40の設置数をすべての耐荷区間11で同一に配置した形態について説明したが、特定の耐荷区間11における応力部材の設置数を増やして部分的に補強するようにしてもよい。
【0067】
<2>部分補強の例示
図7,8に例示した補強構造について説明すると、支柱構造体10の下半部において、外柱20およびブレス材40の設置数を増やして増強した形態を示している。
【0068】
応力部材は外柱20またはブレス材40の何れか一方の設置数を増やしてもよい。
外柱20の本数は、支柱構造体10の高さ方向(積層方向)に沿って段階的に外柱20の設置本数を変更してもよい。
【0069】
支柱構造体10の頂部から底部へ向けて段階的に応力部材の設置数を増やすことで、支柱構造体10の頂部側から底部側へ向けて強度を漸増できる。
要は、支柱構造体10に作用する曲げ力が大きな区間を部分的に補強し得るように、他の区間と比べて応力部材の設置数を増やして配置する。
【0070】
<3>本例の効果
本例にあっては、先の実施例ら効果に加えて、同種の応力部材の設置数を選択するだけで、支柱構造体10の高さ方向(積層方向)に沿って強度を任意に調整(変更)することができる。
【0071】
[変形例]
図9,10を参照しながら、先の実施例の変形例について説明する。
【0072】
<1>支柱構造体の変形例
本例は、拘束板30の平面形状を円盤形に形成した支柱構造体10の変形例について説明する。
拘束板30の円周方向に沿って複数の柱孔31と、複数の嵌合スリット32を形成することは既述した実施例と同様である。
【0073】
本例では拘束板30の周面のうち時計表記で表すと、12時、3時、6時、9時の位置に向心方向に沿って複数の補強用の柱孔31a、31aを形成してもよい。
また拘束板30に対して、複数の柱孔31を同心円状に複数の円環列を形成するようにしてもよい。
<2>本例の効果
本例にあっては、先の実施例ら効果に加えて、補強用の柱孔31a、31aに外柱20を追加配備することで支柱構造体10の曲げ耐力を増強できるので、受撃時に支柱構造体10に斜面傾斜方向や、斜面傾斜方向と直交する方向へ向けて作用する外力に対して効果的に対抗することができる。
【符号の説明】
【0074】
10・・・・支柱構造体
20・・・・外柱
21・・・・位置決め手段
30・・・・拘束板
31・・・・柱孔
32・・・・嵌合スリット
40・・・・ブレス材
41・・・・屈曲フレーム
42・・・・鉤部
43・・・・ピン孔
50・・・・阻止面
51・・・・ロープ材
52・・・・ネット材
60・・・・鋼材基礎
61・・・・支持杭
62・・・・桁材
【要約】
【課題】簡易な構造により強度を調整可能な、防護柵用支柱構造体を提案すること。
【解決手段】間隔を隔てて縦向きに配置した複数の外柱20と、複数の外柱20に跨って多段的に配置しつつ、該複数の外柱20の間を荷重伝達可能に連結する複数の拘束板30と、縦向きに配置し、上下に隣り合う拘束板30の間を荷重伝達可能に連結する複数のブレス材40とを具備し、拘束板30の設置間隔に合わせて高さ方向に沿って複数のラーメン構造の耐荷区間を形成し、応力部材である前記外柱20、拘束板30およびブレス材40を組立て可能に構成した。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10