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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-19
(45)【発行日】2025-05-27
(54)【発明の名称】表面保護シート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 85/48 20060101AFI20250520BHJP
   D21H 11/18 20060101ALI20250520BHJP
   D21H 27/00 20060101ALI20250520BHJP
【FI】
B65D85/48
D21H11/18
D21H27/00 Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018236263
(22)【出願日】2018-12-18
(65)【公開番号】P2019119527
(43)【公開日】2019-07-22
【審査請求日】2021-12-02
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】P 2017252164
(32)【優先日】2017-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507369811
【氏名又は名称】特種東海製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】暮沼 侑士
【合議体】
【審判長】岩谷 一臣
【審判官】長谷川 一郎
【審判官】稲葉 大紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-75422(JP,A)
【文献】特開2017-218718(JP,A)
【文献】特開2011-74535(JP,A)
【文献】特開2017-210286(JP,A)
【文献】特開2016-94680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/48
D21H 11/18
D21H 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材パルプを原料とする紙基材を備えており、
前記紙基材の少なくとも一部の表面にセルロースナノファイバーを備え、
JAPAN TAPPI No.1に準拠して測定される表面強度が8以上であるガラス板用合紙。
【請求項2】
前記セルロースナノファイバーの繊維径が3~100nmである、請求項1に記載のガラス板用合紙。
【請求項3】
前記セルロースナノファイバーの繊維長が100nm~100μmである、請求項1又は2に記載のガラス板用合紙。
【請求項4】
前記ガラス板用合紙が表面層を備えており、
前記表面層が前記セルロースナノファイバーを含む、請求項1乃至のいずれかに記載のガラス板用合紙。
【請求項5】
前記表面層の厚みが3~100nmである、請求項に記載のガラス板用合紙。
【請求項6】
前記表面層中に前記セルロースナノファイバーが前記表面層の質量を基準として30~100質量%の割合で存在する、請求項又はに記載のガラス板用合紙。
【請求項7】
前記木材パルプ100質量部に対して前記セルロースナノファイバーが0.04~4質量部の割合で存在する、請求項1乃至のいずれかに記載のガラス板用合紙。
【請求項8】
坪量が20~100g/mである、請求項1乃至のいずれかに記載のガラス板用合紙。
【請求項9】
厚みが15~200μmである、請求項1乃至のいずれかに記載のガラス板用合紙。
【請求項10】
ディスプレイ用のガラス板に使用される請求項1乃至のいずれかに記載のガラス板用合紙。
【請求項11】
前記ディスプレイがTFT液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイである請求項10記載のガラス板用合紙。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれかに記載のガラス板用合紙及びガラス板からなる積層体。
【請求項13】
請求項1乃至11のいずれかに記載のガラス板用合紙を複数のガラス板の間に配置する工程を含む、ガラス板の保護方法。
【請求項14】
木材パルプからなる紙基材の少なくとも一方の表面に少なくともセルロースナノファイバーを含む組成物を塗布する工程を含む、JAPAN TAPPI No.1に準拠して測定される表面強度が8以上であるガラス板用合紙の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス、金属等の表面保護に用いられる表面保護シートに関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス製品、金属製品、鏡面光沢を有する製品等を製造、保管、運搬する過程において、当該製品の表面に傷等の物理的な損傷が生じ、或いは、当該製品の表面が汚染されることを回避乃至低減するために、各種の表面保護シートを使用して当該製品の表面を保護することが行われている。
【0003】
例えば、ガラス板の場合、ガラス板を、複数枚積層して保管する保管過程、トラック等で運搬する流通過程等において、ガラス板同士が衝撃を受けて接触して擦れ傷が発生し、また、ガラス表面が外界からの異物によって汚染されるのを防止する目的でガラス板の間に合紙と称される紙を挟み込むことが行われている。
【0004】
しかし、外界からの異物だけでなく、合紙に含まれる異物によっても、当該合紙と接触するガラス板の表面が汚染されることがある。そこで、ガラス板の表面を汚染しない合紙として、例えば、特許文献1には、合紙中に含まれる粘着性物質を特定の物質によって非粘着化したガラス合紙が提案されている。さらに、合紙に含まれる異物以外にも、合紙中に製紙薬品として含まれる硫酸アルミニウムに由来するアルミニウムイオンなどの多価イオンもアニオン物質を吸着し粗大化することでガラス板の汚染につながる。
【0005】
また、特許文献2では、合紙に含まれる異物によるガラス板表面の汚染を低減させる手段として、合紙表面に水溶性高分子を塗布したガラス合紙が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-131965号公報
【文献】特開平09-170198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、合紙等の表面保護シートからガラス板等の保護対象物の表面への異物又は有害イオンの転移を回避乃至低減することのできる表面保護シートを提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
鋭意検討の結果、本発明者は、木材パルプを原料とする紙基材を備える表面保護シートにおいて、当該紙基材の表面にセルロースナノファイバーを存在させることによって、当該表面保護シートの表面からガラス板等の保護対象物への異物又は有害イオンの転移を抑制できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
本発明の第1の態様は、
木材パルプを原料とする紙基材を備えており、
前記紙基材の少なくとも一部の表面にセルロースナノファイバーを備える表面保護シートである。
【0010】
前記セルロースナノファイバーの繊維径は3~100nmであることが好ましい。
【0011】
前記セルロースナノファイバーの繊維長は100nm~100μmであることが好ましい。
【0012】
本発明の表面保護シートの表面強度は8以上であることが好ましい。
【0013】
本発明の表面保護シートが表面層を備えており、当該表面層が前記セルロースナノファイバーを含むことが好ましい。
【0014】
前記表面層の厚みは3~100nmであることが好ましい。
【0015】
前記表面層中に前記セルロースナノファイバーが前記表面層の質量を基準として30~100質量%の割合で存在することが好ましい。
【0016】
本発明の表面保護シートでは、前記木材パルプ100質量部に対して前記セルロースナノファイバーが0.04~4質量部の割合で存在することが好ましい。
【0017】
本発明の表面保護シートの坪量は20~100g/mであることが好ましい。
【0018】
本発明の表面保護シートの厚みは15~200μmであることが好ましい。
【0019】
本発明の表面保護シートはディスプレイ用のガラス板に使用されることが好ましい。この場合、本発明の表面保護シートはガラス合紙であることができる。
【0020】
前記ディスプレイはTFT液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイであることが好ましい。
【0021】
本発明は、本発明の第1の態様の表面保護シート、並びに、ガラス板からなる積層体にも関する。
【0022】
本発明は、本発明の第1の態様の表面保護シートを複数のガラス板の間に配置する工程を含むガラス板の保護方法にも関する。
【0023】
本発明の第2の態様は、
木材パルプからなる紙基材の少なくとも一方の表面に少なくともセルロースナノファイバーを含む組成物を塗布する工程を含む、表面保護シートの製造方法である。
【0024】
本発明の第2の態様によって製造される表面保護シートは本発明の第1の態様の表面保護シートの特徴を備えることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の表面保護シートは、当該表面保護シートが接触するガラス板等の保護対象物の表面への当該表面保護シートからの異物又は有害イオンの転移を回避乃至低減することができる。
【0026】
特に、本発明は、表面保護シートに異物や有害イオンが含まれていても当該異物又は有害イオンの保護対象物の表面への表面保護シートからの転移を回避乃至低減することができる。
【0027】
本発明の表面保護シートを、ガラス板を包装する紙、及び/又は、ガラス板の間に挟み込む紙として使用する場合は、ガラス板の表面を良好に保護することができる。したがって、本発明の表面保護シートをガラス合紙として使用することによって、ガラス板の表面の傷付き及び/又は汚染を回避乃至低減することができる。
【0028】
更に、本発明の表面保護シートは、セルロースナノファイバーの存在により、優れた表面強度を有することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明では、木材パルプを原料とする紙基材を備える表面保護シートにおいて、当該紙基材の表面にセルロースナノファイバーを存在させることによって、当該表面保護シートの表面からガラス板等の保護対象物への異物や有害イオンの転移を抑制する。
【0030】
そして、本発明では、紙基材が粘着性又は硬質の異物を含んでいても、その表面にセルロースナノファイバーが存在することによって、当該異物と保護対象物の表面との接触面積が減少するので、当該保護対象物の表面への異物の付着或いは当該表面の傷付きを防止乃至低減することができる。しかも、セルロースナノファイバーは木材パルプと同様にセルロースからなるので、紙基材との親和性に優れており、保護対象表面への転移の懸念は少ない。
【0031】
本発明の表面保護シートは、好適には、ガラス板を包装する、及び/又は、ガラス板の間に挟み込むために使用することができる。したがって、本発明の表面保護シートはガラス合紙(ガラス板用合紙)として有用である。前記ガラス板としては、液晶ディスプレイ(特にTFT液晶ディスプレイ)、プラズマディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)ディスプレイ等のフラットパネル・ディスプレイ用のガラス板が好ましい。
【0032】
フラットパネル・ディスプレイ用のガラス板は、一般の建築用窓ガラス板、車両用窓ガラス板等に比べて、高精細ディスプレイ用に使用されることから、ガラス表面は不純物が極力無いクリーンな表面を保持していること、また、高速応答性や視野角拡大のために平坦度に優れていることが求められる。
【0033】
ガラス板表面の汚染はフラットパネル・ディスプレイの不具合の原因となりうる。例えば、TFT液晶ディスプレイの製造工程では、スパッタリング、真空蒸着、フォトリソグラフィ等により、ガラス板からなる基板の表面に非常に微細な配線及び電極等の素子が作製される。その際に、ガラス板の表面が汚染されていると、そのような非常に微細な電気回路に断線及び/又は短絡が生じたり、作製された素子に欠陥が生じることが知られている。また、TFTの作製工程では、ガラス板基板の表面に汚染物質が存在すると当該表面に形成される微細な回線が断線及び/又は短絡する。例えば、TFT液晶ディスプレイの製造工程の1つであるカラーフィルターの作製工程では、ガラス板の表面にフォトリソグラフィによりレジストパターンが形成されるが、この工程でレジスト塗布時のガラス板面に汚染物質が存在すると、露光又は現像後のレジスト膜にピンホールが生じ、その結果、カラーフィルターパターンの断線等の欠陥が生じる。そして、同様な問題が有機ELディスプレイの製造でも確認されている。有機ELディスプレイはガラス板基板にITO陽極、有機発光層、陰極等の薄膜をスパッタリングや蒸着や印刷等で形成して作製されるため、ガラス板基板の表面に薄膜を阻害する物質が存在すると非発光となる問題が生じる。
【0034】
このようなガラス板の汚染原因は特定が困難であったが、その原因の一つがガラス板用合紙の表面からガラス板の表面に転移する、微細な異物であることが判明している。
【0035】
そこで、本発明の表面保護シートをガラス合紙として使用することにより、合紙の表面に存在する異物のガラス板の表面への転移に由来する、TFT液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等のフラットパネル・ディスプレイの不具合を低減させることができる。
【0036】
本発明の第1の態様は、木材パルプを原料とする紙基材を備える表面保護シートであって、当該紙基材の少なくとも一部の表面にセルロースナノファイバーが存在する、好ましくはガラス板用合紙である、表面保護シートである。
【0037】
本発明において使用可能な木材パルプは、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)、広葉樹晒サルファイトパルプ(LBSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の木材パルプを単独或いは混合したものである。この木材パルプを主体とし、必要に応じてこれに麻、竹、藁、ケナフ、楮、三椏や木綿等の非木材パルプ、カチオン化パルプ、マーセル化パルプ等の変性パルプ、レーヨン、ビニロン、ナイロン、アクリル、ポリエステル等の合成繊維や化学繊維、又はミクロフィブリル化パルプを単独で、或いは混合して併用することができる。ただし、パルプ中に樹脂分が多く含まれると、当該樹脂分がガラス板等の保護対象物の表面を汚す等の悪影響を及ぼす可能性があるので、できるだけ樹脂分の少ない化学パルプ、例えば針葉樹晒クラフトパルプを単独で使用することが好ましい。また、砕木パルプのような高収率パルプは、樹脂分が多く含まれるので好ましくない。なお、合成繊維や化学繊維を混合させると削刀性が向上し、合紙を平版にする際の作業性が向上するが、廃棄物処理の面においてリサイクル性が悪くなるので注意が必要である。
【0038】
前記木材パルプの形態は特に限定されるものではなく、シート状、ブロック状又はフレーク状の任意の形態をとることができる。シート状のパルプは、例えば、ワイヤーパート、プレスパート、ドライパート、フィニッシングの4つの工程を備えるパルプマシンを使用して得ることができる。ワイヤーパートでは長網や真空フィルター等を使ってパルプ繊維を抄紙し、プレスパートではロールプレスを使って脱水する。ドライパートではシリンダードライヤーや、フラクトドライヤー等で乾燥し、最後にシート状パルプの両端を切り落としてロールに巻き取る。この様な方法は、紙パルプ技術協会が出版している「紙パルプ製造技術シリーズ」や、「紙パルプの製造 技術全書」に詳細に記載されている。なお、ブロック状のパルプは、例えば、上記シート状パルプを積層して得ることができ、また、フレーク状のパルプは、例えば、上記シート状パルプを粉砕して得ることができる。
【0039】
前記シート状パルプの厚さは、0.7~1.5mmであることが好ましく、0.9~1.3mmであることがより好ましく、1.0~1.2mmであることが更により好ましい。
【0040】
前記シート状パルプの坪量は、400~1300g/mであることが好ましく、500~1200g/mであることがより好ましく、500~1100g/mであることが更に好ましく、500~1000g/mであることが更に好ましく、700~1000g/mであることが更により好ましい。
【0041】
本発明の表面保護シートは木材パルプを原料とする紙基材を含む。本発明の表面保護シートに含まれる紙基材の数は通常1つであるが、必要に応じて複数の紙基材を含んでもよい。前記木材パルプはセルロース繊維を含むが、当該繊維はセルロースナノファイバーではない。したがって、紙基材に含まれる木材パルプ由来のセルロース繊維はセルロースナノファイバーではない。
【0042】
前記紙基材の形態としてはシート状が好ましい。シート状紙基材の厚さは10~130μmが好ましく、20~120μmがより好ましく、30~110μmが更により好ましく、40~100μmが更により好ましい。
【0043】
前記紙基材は木材パルプを原料としている。したがって、前記紙基材は再生セルロースから製造されたものではないことが好ましい。
【0044】
前記紙基材は、木材パルプ由来のセルロース繊維の他に、必要に応じ他の成分を含んでもよい。他の成分としては、例えば、澱粉、ポリアクリルアミド、ポリアミンポリアミドエピクロルヒドリン等の紙力増強剤又は定着剤、サイズ剤、填料、濾水歩留り向上剤、耐水化剤、定着剤、消泡剤、スライムコントロール剤等を挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
本発明の表面保護シートは前記紙基材の少なくとも一部の表面にセルロースナノファイバーを備える。すなわち、本発明の表面保護シートでは前記紙基材の少なくとも一部の表面にセルロースナノファイバーが存在する。
【0046】
セルロースナノファイバーはセルロース製の微細繊維であり、本発明では、例えば、幅(繊維径)が2~300nm、長さが1~500μmのものを使用することができる。
【0047】
セルロースナノファイバーの幅は2~200nmが好ましく、3~100nmがより好ましく、4~50nmが更により好ましく、4~20nmが更により好ましい。前記繊維径は平均繊維径であることが好ましい。ここでの「平均繊維径」とは、前記セルロースナノファイバーの繊維径の数平均を意味する。平均繊維径は、例えば、表面保護シートの表面の複数箇所を電子顕微鏡によって拡大観察し、各電子顕微鏡画像中から所定数の繊維を無作為に選別し、選別された当該繊維の径を測定し平均して得ることができる。選別される繊維の数は100以上であり、150以上が好ましく、200以上がより好ましく、300以上が更により好ましい。
【0048】
セルロースナノファイバーの長さ(繊維長)は10nm~300μmが好ましく、50nm~200μmがより好ましく、100nm~100μmが更により好ましく、150nmから50μmが更により好ましい。なお、ここで繊維長とは繊維を真っ直ぐに伸ばした状態とした場合の当該繊維の長さをいう。前記繊維長は平均繊維長であることが好ましい。ここでの「平均繊維長」とは、前記セルロースナノファイバーの繊維長の数平均を意味する。平均繊維長は、例えば、表面保護シートの表面の複数箇所を電子顕微鏡によって拡大観察し、各電子顕微鏡画像中から所定数の繊維を無作為に選別し、選別された当該繊維の長さを測定し平均して得ることができる。選別される繊維の数は100以上であり、150以上が好ましく、200以上がより好ましく、300以上が更により好ましい。
【0049】
セルロースナノファイバーは、例えば、特許第3036354号公報(微細フィブリル化セルロースの製造方法)、特許第2967804号公報(超微細フィブリル化セルロース及びその製造方法並びに超微細フィブリル化セルロースを用いた塗工紙の製造方法及び染色紙の製造方法)または特開2008-169497号公報(ナノファイバーの製造方法およびナノファイバー)に従って製造できる。ただし、上記3例のような湿式粉砕法に限定されるものではなく、乾式粉砕法も用いられる。また、セルロースナノファイバーは、特開2009-263652号公報(セルロースナノファイバーの製造方法)や国際公開2009/069641号公報(セルロースナノファイバーとその製造方法、セルロースナノファイバー分散液)のように、化学修飾による方法でも製造できるが、これらのTEMPO酸化法に限定されるものではない。本発明で使用されるセルロースナノファイバーの平均重合度は、600以上30000以下が好ましく、より好ましくは、600以上5000以下であり、更により好ましくは800以上5000以下である。
【0050】
セルロースナノファイバーの原料としては、例えば、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)等の化学パルプ、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の機械パルプなどの木材パルプやコウゾ、雁皮、三椏等の靭皮繊維パルプやコットンパルプ、麻、ケナフ、イネ、バガス、竹、などの非木材パルプ、バクテリアセルロースなどのバイオセルロース、粉末セルロース、微結晶セルロース、変性セルロース、再生セルロース等を用いることができる。
【0051】
本発明で使用されるセルロースナノファイバーは変性されていてもよく、変性の種類としては、TEMPO酸化による変性、カチオン変性、カチオン変性後アニオン中和、疏水化変性等が挙げられる。当該変性は、セルロースナノファイバーの原料に対し、セルロースナノファイバー製造の前後のいずれでも構わない。
【0052】
セルロースナノファイバーは紙基材の表面の50%以上に存在することが好ましく、70%以上がより好ましく、90%以上が更により好ましく、紙基材の表面の全面に存在することが特に好ましい。紙基材がシート状である場合は、紙基材の表裏面の少なくとも一方の表面の50%以上に存在することが好ましく、70%以上がより好ましく、90%以上が更により好ましく、当該表面の全面に存在することが特に好ましい。更に、紙基材がシート状である場合は、紙基材の表裏面の両方の表面の合計表面積の50%以上に存在することが好ましく、70%以上がより好ましく、90%以上が更により好ましく、表裏面の両方の全面に存在することが特に好ましい。
【0053】
本発明の表面保護シートでは、前記木材パルプ100質量部に対して前記セルロースナノファイバーが0.01~10質量部の割合で存在することができ、0.02~8質量部が好ましく、0.04~4質量部がより好ましく、0.05~3質量部が更により好ましい。
【0054】
本発明の表面保護シートにおける前記セルロースナノファイバーの存在量は、特に限定されるものではないが、例えば、0.01~10g/mの割合で存在することができ、0.01~5g/mが好ましく、0.1~3g/mがより好ましい。
【0055】
セルロースナノファイバーは同じくセルロースから構成される紙基材との親和性が高く、紙基材の表面に強固に保持される。したがって、セルロースナノファイバーが紙基材の表面から離れて転移することが抑制される。
【0056】
また、セルロースナノファイバーは親水性であるために、疎水性の異物が表面保護シートに付着することを抑制することができる。
【0057】
本発明の一態様では、本発明の表面保護シートは表面層を備えており、当該表面層がセルロースナノファイバーを含む。前記表面層は紙基材の少なくとも一方の表面の、好ましくは表裏面の両方の、表面上に存在することが好ましく、紙基材と表面層は接触していることがより好ましい。表面層は紙基材の保護層として機能することができる。
【0058】
前記表面層の厚みは特には限定されるものではないが、例えば、2~300nmとすることができる。前記表面層の厚みは2~200nmが好ましく、3~100nmがより好ましく、4~50nmが更により好ましい。
【0059】
前記表面層中には前記セルロースナノファイバーが前記表面層の質量を基準として10~100質量%の割合で存在することができ、その存在割合は20~100質量%が好ましく、30~100質量%がより好ましく、40~100質量%が更に好ましい。前記表面層中のセルロースナノファイバーが前記表面層の質量を基準として100質量%の割合で存在する場合、前記表面層はセルロースファイバーのみからなる。
【0060】
前記表面層は、セルロースナノファイバー以外に、必要に応じ他の成分を含んでもよい。他の成分としては、例えば、澱粉、ポリアクリルアミド、ポリアミンポリアミドエピクロルヒドリン等の紙力増強剤又は定着剤、サイズ剤、填料、濾水歩留り向上剤、耐水化剤、定着剤、消泡剤、スライムコントロール剤等を挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0061】
セルロースの高い結晶性のためにセルロースナノファイバーは紙基材の表面でフィルム化して比較的硬質の表面層を形成することができる。また、セルロースナノファイバーの高い比表面積とセルロースが有する多数の水酸基のためにセルロースナノファイバーは比較的強固な表面層を形成することができる。これにより、前記表面層は保護層として好適な物性を備えることができる。
【0062】
セルロースナノファイバーの繊維径(幅)が可視光の波長よりも小さい場合は、可視光を散乱しないため、セルロースナノファイバーが構成する層は透明となることができる。これにより、本発明の表面保護シートの外観を改善することができる。
【0063】
本発明において問題となる異物は、ガラス板等の保護対象物の表面を汚染する微細な異物である。
【0064】
異物は、ポリビニルアルコールのような樹脂などの有機物であっても、硫酸アルミニウム等の無機物であってもよく、粘着性又は非粘着性のいずれであってもよく、また、硬質又は軟質のいずれであってもよい。
【0065】
異物は固体又は液体のどちらでもよい。また、異物のサイズも特には限定されるものではないが、通常は、視認できない程度の微細なものである。本発明が対象とする異物のサイズは例えば0.1μm~50μmであるが、0.1μm~40μmであることが好ましく。0.1μm~30μmであることがより好ましい。ここでの「サイズ」とは体積平均(メジアン)粒子径を意味する。体積平均粒子径は、例えば、レーザー回折散乱法によって測定することができる。
【0066】
前記異物は疎水性物質を含むものであってよい。なお、前記異物は疎水性物質のみからなる場合がある。
【0067】
前記疎水性物質は特に限定されない。疎水性物質は、不揮発性であることが好ましく、油(シリコーン油を除く。例えば、脂肪族炭化水素、植物油、動物油、合成グリセリド、脂肪族アルコール、脂肪酸、脂肪族アルコール及び/又は脂肪酸のエステル)、樹脂(シリコーンを除く)、シリコーン、ピッチ、ゴム、並びに、タルク、特に、疎水性異物を吸着したタルクからなる群から選択されることがより好ましく、特に、シリコーン及びタルク(特に、疎水性異物を吸着したタルク)からなる群から選択されることが更により好ましい。
【0068】
脂肪族炭化水素としては、例えば、直鎖状又は分枝状炭化水素、特に、鉱油(流動パラフィン等)、パラフィン、ワセリンすなわちペトロラタム、ナフタレン等;水添ポリイソブテン、イソエイコサン、ポリデセン、パールリーム等の水添ポリイソブテン及びデセン/ブテンコポリマー;並びに、これらの混合物を挙げることができる。
【0069】
他の脂肪族炭化水素の例として、直鎖状若しくは分枝状、又は、場合により環状の、C~C16低級アルカンを挙げることもできる。挙げることができる例には、ヘキサン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン及びイソパラフィン、例えば、イソヘキサデカン及びイソデカンが含まれる。
【0070】
植物油の例として、例えば、亜麻仁油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、ヒマワリ油、アンズ油、ダイズ油、アララ(arara)油、ヘーゼルナッツ油、トウモロコシ油、オリーブ油、アボカド油、サザンカ油、ヒマシ油、サフラワー油、ホホバ油、アーモンド油、ブドウ種子油、ゴマ油、ピーナッツ油、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0071】
動物油の例として、例えば、ミンク油、スクワレン、ペルヒドロスクワレン及びスクワランを挙げることができる。
【0072】
合成グリセリドの例として、例えば、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリドを挙げることができる。
【0073】
脂肪酸は、酸性形態(即ち、石けんになるのを回避するため、塩の形態でない)とするべきであり、飽和でも不飽和でもよく、6~30個の炭素原子、特に9~30個の炭素原子を含有し、任意選択で、特に1個又は複数個のヒドロキシル基(特に1~4個)で置換されている。脂肪酸が不飽和の場合、この化合物は1~3個の共役又は非共役の炭素-炭素二重結合を含むことができる。脂肪酸は、例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸及びイソステアリン酸から選択される。
【0074】
「脂肪族アルコール」という用語は、本明細書では、任意の飽和で直鎖状又は分枝状のC~C30アルコールを意味し、任意選択で、特に1個又は複数個のヒドロキシル基(特に1~4個)で置換されているものである。
【0075】
脂肪族アルコールのうち、C12~C22脂肪族アルコールが好ましく、C16~C18飽和脂肪族アルコールがより好ましい。これらのうち、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、ウンデシルアルコール、ミリスチルアルコール、及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0076】
脂肪酸及び/又は脂肪族アルコールのエステルの例として、飽和又は不飽和で直鎖状又は分枝状のC~C26脂肪族の一酸又は多酸のエステル、及び飽和又は不飽和で直鎖状又は分枝状のC1~C26脂肪族の一価アルコール又は多価アルコールのエステルを特に挙げることができ、エステルの総炭素数は10以上が好ましい。
【0077】
樹脂(シリコーンを除く)は、疎水性である限り特には限定されない。樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリアクリルアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリエスエル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド等の熱可塑性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、尿素樹脂等の熱硬化性樹脂、及び、これらの混合物が挙げられる。
【0078】
シリコーンとしては、シリコーン油が挙げられる。シリコーン油は疎水性であり、その分子構造は、環状、直鎖状、分岐状のいずれであってもよい。シリコーン油の25℃における動粘度は、通常、0.65~100,000mm/sの範囲であるが、0.65~10,000mm/sの範囲でもよい。
【0079】
シリコーン油としては、例えば、直鎖状オルガノポリシロキサン、環状オルガノポリシロキサン、及び、分岐状オルガノポリシロキサンが挙げられる。
【0080】
直鎖状オルガノポリシロキサン、環状オルガノポリシロキサン、及び、分岐状オルガノポリシロキサンとしては、例えば、下記一般式(1)、(2)及び(3):

SiO-(R SiO)-SiR (1)

【化1】
(4-c)Si(OSiR (3)

(式中、
は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、或いは、置換若しくは非置換の一価炭化水素基、アルコキシ基で示される基から選択される基であり、
aは、0~1000の整数であり、
bは3~100の整数であり、
cは1~4の整数、好ましくは2~4の整数である)
で表されるオルガノポリシロキサンが挙げられる。
【0081】
置換若しくは非置換の一価炭化水素基は、典型的には、置換若しくは非置換の、炭素原子数1~30、好ましくは炭素原子数1~10、より好ましくは炭素原子数1~4の一価の飽和炭化水素基;置換若しくは非置換の、炭素原子数2~30、好ましくは炭素原子数2~10、より好ましくは炭素原子数2~6の一価の不飽和炭化水素基;炭素原子数6~30、より好ましくは炭素原子数6~12の一価の芳香族炭化水素基である。
【0082】
炭素原子数1~30の一価の飽和炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の直鎖又は分岐状のアルキル基、並びに、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等のシクロアルキル基が挙げられる。
【0083】
炭素原子数2~30の一価の不飽和炭化水素基としては、例えば、ビニル基、1-プロペニル基、アリル基、イソプロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等の直鎖又は分岐状のアルケニル基;シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等のシクロアルケニル基;シクロペンテニルエチル基、シクロヘキセニルエチル基、シクロヘキセニルプロピル基等のシクロアルケニルアルキル基;及び、エチニル基、プロパルギル基等のアルキニル基が挙げられる。
【0084】
炭素原子数6~30の一価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基等のアリール基が挙げられる。フェニル基が好ましい。なお、本明細書において芳香族炭化水素基とは、芳香族炭化水素のみからなる基以外に、芳香族炭化水素と脂肪族飽和炭化水素が複合した基をも含む。芳香族炭化水素と飽和炭化水素が複合した基の例としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基が挙げられる。
【0085】
上記の一価炭化水素基上の水素原子は、1以上の置換基によって置換されていてもよく、当該置換基は、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子)、水酸基、カルビノール基、エポキシ基、グリシジル基、アシル基、カルボキシル基、アミノ基、メタクリル基、メルカプト基、アミド基、オキシアルキレン基等を含む有機基からなる群から選択される。具体的には、3,3,3-トリフロロプロピル基、3-クロロプロピル基、3-ヒドロキシプロピル基、3-(2-ヒドロキシエトキシ)プロピル基、3-カルボキシプロピル基、10-カルボキシデシル基、3-イソシアネートプロピル基等を挙げることができる。
【0086】
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられるが、メトキシ基又はエトキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。
【0087】
より具体的には、直鎖状オルガノポリシロキサンとしては、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(2mPa・sや6mPa・s等の低粘度~100万mPa・s等高粘度のジメチルシリコーン)、オルガノハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジフェニルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、トリメチルペンタフェニルトリシロキサン、フェニル(トリメチルシロキシ)シロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルアルキルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン・メチルアルキルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチル(3,3,3-トリフルオロプロピル)シロキサン共重合体、α,ω-ジヒドロキシポリジメチルシロキサン、α,ω-ジエトキシポリジメチルシロキサン、1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチル-3-オクチルトリシロキサン、1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチル-3-ドデシルトリシロキサン、1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチル-3-ヘキサデシルトリシロキサン、トリストリメチルシロキシメチルシラン、トリストリメチルシロキシアルキルシラン、テトラキストリメチルシロキシシラン、テトラメチル-1,3-ジヒドロキシジシロキサン、オクタメチル-1,7-ジヒドロキシテトラシロキサン、ヘキサメチル-1,5-ジエトキシトリシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、高級アルコキシ変性シリコーン、高級脂肪酸変性シリコーン、ジメチコノール等が例示される。
【0088】
環状オルガノポリシロキサンとしては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン(D6)、1,1-ジエチルヘキサメチルシクロテトラシロキサン、フェニルヘプタメチルシクロテトラシロキサン、1,1-ジフェニルヘキサメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラシクロヘキシルテトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(3,3,3-トリフルオロプロピル)トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7-テトラ(3-メタクリロキシプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラ(3-アクリロキシプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラ(3-カルボキシプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラ(3-ビニロキシプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラ(p-ビニルフェニル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラ[3-(p-ビニルフェニル)プロピル]テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラ(N-アクリロイル-N-メチル-3-アミノプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラ(N,N-ビス(ラウロイル)-3-アミノプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン等が例示される。
【0089】
分岐状オルガノポリシロキサンとしては、メチルトリストリメチルシロキシシラン、エチルトリストリメチルシロキシシラン、プロピルトリストリメチルシロキシシラン、テトラキストリメチルシロキシシラン、フェニルトリストリメチルシロキシシラン等が挙げられる。
【0090】
本発明におけるシリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、ジエチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ポリジメチル-ポリジフェニルシロキサンコポリマー、ポリメチル-3,3,3-トリフルオロプロピルシロキサン等が好ましい。本発明におけるシリコーンとしては、ジメチルポリシロキサンが典型的である。
【0091】
本発明におけるシリコーン油は変性シリコーン油であってもよい。変性シリコーン油としては、例えば、ポリオキシアルキレン変性シリコーン油が挙げられる。
【0092】
ポリオキシアルキレン変性シリコーン油は、分子中にケイ素-炭素結合を介してポリオキシアルキレン基が結合しているシリコーン油であり、好ましくは、常温、具体的には25℃において水溶性を示すものであって、より好ましくはノニオン系のものである。
【0093】
ポリオキシアルキレン変性シリコーン油は、具体的には、例えば直鎖状又は分岐状のシロキサンよりなるシリコーン油とポリオキシアルキレンとの共重合体であり、種々のものがあるが、特に下記式(4)で表わされるものが好ましい。

SiO-(R SiO)-(RASiO)-SiR (4)

(式中、
は、それぞれ独立して、上記と同様であり、
は、それぞれ独立して、R又はAであり、
Aは、それぞれ独立して、RGで表される基であり、Rは、置換若しくは非置換の二価炭化水素基であり、Gはエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等の炭素数2~5のアルキレンオキサイドを少なくとも1種含有してなるポリオキシアルキレン基を表し、
dは1~500の整数を表し、
eは1~50の整数を表す)。
【0094】
置換若しくは非置換の二価炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1~30の直鎖状若しくは分岐状の二価炭化水素基が挙げられ、具体的には、メチレン基、ジメチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基等の炭素原子数1~30の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基;ビニレン基、アリレン基、ブテニレン基、ヘキセニレン基、オクテニレン基等の炭素原子数2~30のアルケニレン基;フェニレン基、ジフェニレン基等の炭素原子数6~30のアリーレン基;ジメチレンフェニレン基等の炭素原子数7~30のアルキレンアリーレン基;及び、これらの基の炭素原子に結合した水素原子が少なくとも部分的にフッ素等のハロゲン原子、水酸基、又は、カルビノール基、エポキシ基、グリシジル基、アシル基、カルボキシル基、アミノ基、メタクリル基、メルカプト基、アミド基、オキシアルキレン基等を含む有機基で置換された基が挙げられる。二価炭化水素基は、炭素原子数1~30のアルキレン基であることが好ましく、炭素原子数1~6のアルキレン基であることが好ましく、炭素原子数3~5のアルキレン基がより好ましい。
【0095】
例えば、ポリオキシアルキレン変性シリコーン油の具体例としては、下記のものを挙げることができる。
【化2】
(式中、
xは20~160であり、yは1~25であり、x/yの値は50~2であり、
Aは、例えば-(CHO-(CHCHO)-(CHCHCHO)-Rであり、mは7~40、nは0~40、m+nの値は少なくとも1であり、グラフト重合されたものでもランダム重合されたものでもよく、Rは水素原子又は上記置換若しくは非置換の一価炭化水素基を表す。好適には、mは7~30、nは0~30である)
【0096】
また、変性シリコーン油としては、例えば、アミノアルキル変性シリコーン油が挙げられる。
【0097】
アミノアルキル変性シリコーン油は、分子中にケイ素-炭素結合を介してアミノアルキル基が結合しているシリコーン油であり、好ましくは、常温、具体的には25℃において10~100000csの粘度を示すものである。
【0098】
前記アミノアルキルシリコーン油としては、上記式(4)において、Gを式:-(NRCHCHNR (式中、Rはそれぞれ独立して上記のとおりであり、zは0≦z≦4の数である)で置換したものが挙げられる。
【0099】
本発明においては、異物がシリコーンの場合、表面保護シートに含まれるシリコーンの量は表面保護シートの絶乾質量に対して0.5ppm以下であることが好ましく、0.4ppm以下であることがより好ましく、0.3ppm以下が更により好ましく、0.2ppm以下が更により好ましく、0.1ppm以下であることが特に好ましい。0.5ppmを超える量のシリコーンが存在する場合、携帯端末など非常に高精細なディスプレイを必要とする場面において、例えば、ガラス板の表面に転移した微量のシリコーンが要因で発生するカラーフィルム等の断線箇所が高精彩であるが故に目立ち、品質不良と判断されてしまうおそれが高まるからである。なお、本発明において「絶乾」とは、乾燥により被乾燥対象物中に水分が実質的に存在しない状態を意味している。
【0100】
異物は、モース硬度4以上の硬度を備えることができる。モース硬度4以上の異物としては、無機系又は有機系のいずれの物質からなる粒子であってよく、無機系粒子が好ましい。前記異物としては、例えば、モース硬度4以上の金属酸化物又は無機ケイ素酸化物が挙げられる。金属酸化物を構成する金属は、その酸化物のモース硬度が4以上であれば特に限定されるものではなく、例えば、マグネシウム等の第2族元素の元素、チタン等の第4族元素、鉄等の第8族元素が挙げられる。無機ケイ素酸化物としては、二酸化ケイ素が好ましい。前記モース硬度4以上の異物としては、例えば、酸化鉱物が挙げられる。前記モース硬度4以上の異物としては、特に、酸化鉄、銅、石英、溶融石英(石英ガラス)、酸化チタン、ガラス片、水晶片、酸化マグネシウム、砂等が挙げられる。砂は、主に、モース硬度5.5の角閃石、モース硬度6の長石及びモース硬度7の石英からなる。したがって、砂のモース硬度は4以上であり、典型的には7である。モース硬度とは、硬さの指標を10段階で表したものであり、それぞれに対応する標準物質と測定する物質とを擦り、傷がつくかどうかで標準物質に対する硬さの大小を相対的に評価した値である。標準物質は、柔らかいもの(モース硬度1)から硬いもの(モース硬度10)の順に、1:滑石、2:石膏、3:方解石、4:蛍石、5:燐灰石、6:長石、7:石英、8:トパーズ、9:コランダム、10:ダイヤモンドである。モース硬度の測定方法は、表面の平滑なモース硬度既知の板2枚を用意し、測定したい異物を2枚の板の間に挟み、両方の板をこすり合わせて板表面の傷の発生有無を調べる。
【0101】
本発明において問題となる有害イオンは、アルミニウムイオンなどの多価イオンである。有害イオンはカチオン性であってもアニオン性であってもよい。価数が高いイオンは、対イオンの物質を吸着して粗大化しやすい。ガラス板に有害イオンが転移して粗大化した場合、ディスプレイ製造工程においてガラス板表面に微細な配線や電極を設置される際に、断線及び/又は短絡し不良の原因となる。
【0102】
カチオン性の多価イオンの例として、例えば、Ca2+、Al3+、Mg2+、Ba2+、Cu2+、Fe2+、Fe3+、Zn2+が挙げられる。
【0103】
アニオン性の多価イオンの例として、例えば、SO 2-、CO 2-、PO 3-、S2-が挙げられる。
【0104】
本発明の表面保護シートの厚さは、15~200μmであることが好ましく、20~200μmであることがより好ましく、20~180μmであることが更により好ましく、30~150μmであることが更により好ましく、45~135μmであることが更により好ましい。
【0105】
本発明の表面保護シートの坪量は、20~100g/mであることが好ましく、25~75g/mであることがより好ましく、30~70g/mであることが更により好ましい。
【0106】
本発明の表面保護シートは、セルロースナノファイバーの存在により、優れた表面強度を有することができる。本発明の表面保護シートの表面強度は、8以上であることが好ましく、9以上であることがより好ましく、10以上であることが更により好ましく、11以上であることが更により好ましく、12以上であることが更により好ましい。表面強度が8未満の場合、シートを構成する木材パルプやセルロースナノファイバー等の繊維が脱落しやすくなり、その結果として当該繊維や異物がガラス板等の保護対象物の表面を汚染したり傷をつけるおそれが生じる。なお、本発明のようにセルロースナノファイバーやそれを含む表面層を備えることで、表面強度を高める効果と共に異物を捕捉する効果もある。これは、セルロースナノファイバーの結晶性、比表面積の高さ及びその分散液の粘性に起因する。
【0107】
本発明の表面保護シートは、KES法による表面の摩擦係数の平均偏差(MMD)が0.022以下であることが好ましく、0.020以下であることが好ましく、0.019以下であることがより好ましく、0.018以下であることが更により好ましく、0.017以下であることが更により好ましい。MMDは、摩擦感テスター(カトーテック株式会社製KES-SE)を使用し、直径0.5mmのピアノ線の束からなる10mm角の摩擦子を、20g/cmの張力で固定された紙の表面に50g/cmの接触圧で接触させながら、張力が付与された方向と同じ方向に0.1cm/秒の試料移動速度で2cm移動させて測定される摩擦係数の平均偏差値である。このMMDが大きいと、シート表面の摩擦係数がシート表面の位置によって大きく変動することを意味しており、ミクロ的には、シート表面の微小な凹凸が多くなることを意味している。このようにシート表面に微細な凹凸を設けることにより、表面保護シートの表面とガラス板等の保護対象物の表面との摩擦係数が小さくなり、保護対象物の表面から表面保護シートを除去する際の除去作業が容易となる。MMDが0.022を超えると、表面の微小な凹凸が増大し、表面保護シートと保護対象物の表面同士のひっかかりが増加するので好ましくない。MMDは、例えば、0.001~0.022であることが好ましく、0.002~0.020であることがより好ましく、0.004~0.019であることが更により好ましい。
【0108】
本発明の表面保護シートの製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、抄紙法をベースとして製造された紙基材の表面にセルロースナノファイバーを適用することによって製造することができる。
【0109】
本発明の第2の態様は、表面保護シートの製造方法であって、
木材パルプからなる紙基材の少なくとも一方の表面に少なくともセルロースナノファイバーを含む組成物を塗布する工程を含む。
【0110】
前記紙基材は通常の抄紙法によって製造することができる。例えば、前記紙基材は、
木材パルプのスラリーを調製するスラリー調製工程、
前記スラリーをシート状とするシート形成工程、
前記シートを脱水して湿紙を形成する湿紙調製工程、
前記湿紙を乾燥して前記紙基材を得る乾燥工程
を経て製造することができる。
【0111】
前記スラリー調製工程では、従来公知の方法で、木材パルプのスラリーを調製することができる。例えば、前記スラリー調製工程では、木材パルプを構成するセルロース繊維を水中で離解させて水性懸濁液としスラリーを調製する。
【0112】
また、本発明の性能を損なわない範囲で、上記スラリーに対して、必要に応じて接着剤、防黴剤、消泡剤、填料、湿潤紙力増強剤、乾燥紙力増強剤、サイズ剤、着色剤、定着剤、歩留まり向上剤、スライムコントロール剤等を添加することができる。なお、これら薬品添加の際には虫やごみ等が混入しないように細心の注意を要することが好ましい。
【0113】
前記スラリーをシート状とするシート形成工程では、従来公知の方法で、シート化を行うことができる。例えば、前記スラリーを平面状のワイヤ上に吐出したり(例えば、長網抄紙機)、或いは、円筒状のシリンダーに巻き付けたワイヤでスラリーからシートを掬い取る(例えば、円網抄紙機)ことによって、シートを得ることができる。
【0114】
湿紙調製工程における脱水の手法は任意であり、従来公知の方法を使用することができる。例えば、オントップフォーマやギャップフォーマのようなツインワイヤー方式の抄紙機を用いて抄紙する方法が挙げられる。また、プレスパートでの調整が考えられ、例えば、前記シートをロールでプレスすることによって脱水することができる。
【0115】
前記シート形成工程及び湿紙調製工程は別個の装置を用いて個別に行ってもよいが、同一の装置において連続的に或いは一部重複して実施してもよい。例えば、抄紙機のワイヤーパートにおいて、スラリーをワイヤー(網)に載せてシート化しつつ、脱水して湿紙を形成してもよい。
【0116】
前記乾燥工程では、ドライヤーロール等を使用する従来公知の方法で、湿紙を乾燥して前記紙基材を得ることができる。
【0117】
なお、紙基材の抄紙の途中及び/又は抄紙後にカレンダー処理、スーパーカレンダー処理、ソフトニップカレンダー処理、エンボス等の加工を行っても構わない。加工処理により、表面性や厚さを調整することができる。
【0118】
紙基材の少なくとも一方の表面に少なくともセルロースナノファイバーを含む組成物を塗布する工程では、当該組成物として既述したセルロースナノファイバーを含むものを使用することができる。
【0119】
前記組成物は、セルロースナノファイバーの水性分散液であることが好ましい。すなわち、前記組成物に占める水の割合は50重量%以上が好ましく、70重量%以上がより好ましく、90重量%以上が更により好ましい。前記組成物はセルロースナノファイバー以外に、必要に応じ他の成分を含んでもよい。他の成分としては、例えば、澱粉、ポリアクリルアミド、ポリアミンポリアミドエピクロルヒドリン等の紙力増強剤又は定着剤、サイズ剤、填料、濾水歩留り向上剤、耐水化剤、定着剤、消泡剤、スライムコントロール剤等を挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0120】
前記組成物中のセルロースナノファイバーの濃度は塗布が可能な限り特に限定されるものではないが、例えば、0.1~5重量%、0.3~3重量%、或いは、0.5~1重量%とすることができる。
【0121】
前記塗布は、ブレードコーター、エアナイフコーター、キャスト塗工等の従来公知の手法によって実施することができる。また、例えば、サイズプレス装置を用いて行うことができる。
【0122】
本発明の第2の態様の製造方法により、本発明の第1の態様の表面保護シートを効率的に製造することができる。
【0123】
本発明の表面保護シートはその表面を保護対象物のガラス、金属等の表面に当接させて使用する。本発明の表面保護シートは、積層するガラス板間に挿入して使用するガラス板用合紙の他、ガラス製品、金属製品、鏡面光沢を有する製品の表面保護用途全般に使用可能である。
【0124】
本発明の表面保護シートをガラス板用合紙として使用する場合は、本発明のガラス板用合紙はガラス板の間に配置されて使用される。例えば、前記ガラス板用合紙は複数のガラス板の間に、典型的には、1枚ずつ挿入され、全体として、積層体とされ、当該積層体が保管、運搬の対象となる。また、本発明のガラス板用合紙を用いてガラス板単体又は前記積層体を包装してもよい。したがって、本発明は上記ガラス板用合紙をガラス板間に配置(特に、挿入)する工程を含むガラス板の保護方法の側面を有する。
【0125】
本発明のガラス板の保護方法に使用されるガラス板としては特に限定されるものではないが、既述したように、プラズマディスプレイパネル、液晶ディスプレイパネル(特にTFT液晶ディスプレイパネル)、有機ELディスプレイパネル等のフラットパネル・ディスプレイ用のガラス板であることが好ましい。フラットパネル・ディスプレイ用のガラス板の表面には微細な回線、及び、微細な電極、隔壁等の素子が形成されるが、本発明のガラス板用合紙を使用することにより、ガラス板への問題となる微細な異物或いは有害イオンの転移が抑制乃至回避されるので、ガラス板の表面に微細な回線及び素子が形成されても、当該異物或いは有害イオンによって当該回線及び素子に発生する不都合を抑制乃至回避することができ、結果的に、ディスプレイの欠陥を抑制乃至回避することができる。
【0126】
本発明のガラス板用合紙は、表面の清浄性が特に求められるフラットパネル・ディスプレイ用のガラス板に好適に使用することができる。特に、ディスプレイの大型化に伴い、フラットパネル・ディスプレイ用のガラス板のサイズ及び重量は増大しているが、本発明のガラス板用合紙はそのような大型乃至大重量のガラス板の表面を良好に保護することができる。
【実施例
【0127】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明するが、本発明の範囲は実施例に限定されるものではない。
【0128】
(1)ガラスへの転写試験(輸送テスト)
アルミ製で75度の角度がつけられたL字架台上のガラス載置面に発泡ウレタンを敷き、ガラス板を垂直方向に載置するための載置面と、載置面の後端部から垂直方向に延びる背もたれ面に向けて、サイズ680mm × 880mm × 0.7mm のガラス板120枚と各ガラス板の間に表面保護シートを挿入して、背もたれ面に平行となるように立てかけ、架台に固定された帯状のベルトを後端部から背もたれ面へ全周にわたり掛け渡してガラス板を固定した。上記のようにセットされた架台は、外部からの埃や塵等の混入を防ぐため包装資材で全面を被覆した。その後、トラックでの輸送テストを実施した。輸送テスト条件は、輸送距離1000km(輸送途中に40℃ × 95%RHの環境下に5日間保管)でテストを実施した。
【0129】
(2)表面強度
表面強度は、JAPAN TAPPI No.1に準拠して測定した。
【0130】
[実施例1]
新聞と雑誌由来の古紙原料を用意し、原料を叩解して300mlc.s.fに調製した0.4%濃度のスラリーを得た。これを、長網抄紙機を使用して抄紙する際に、サイズプレスコーターにてセルロース微細繊維(株式会社スギノマシン製WMa-10002)1重量%分散液を固形分塗布量が0.5g/mになるように塗布し、坪量50g/mの表面保護シートを得た。
【0131】
[実施例2]
蒸解工程と、洗浄工程と、酸素脱リグニン反応工程と、二酸化塩素及び過酸化水素による多段晒漂白工程とからなる針葉樹晒クラフトパルプの製造装置において、蒸解工程後にノットを除去した直後のドラムウォッシャーの洗浄液に使用される消泡剤としてシリコーン系の消泡剤である「SNデフォーマー551K」(サンノプコ社製)の原液を適量連続添加した。また、プレス洗浄の工程でウォッシュプレスに添加される消泡剤として同じく「SNデフォーマー551K」を適量加えた。こうして得られた針葉樹晒クラフトパルプを原料として、長網抄紙機を使用して抄紙する際に、サイズプレスコーターにてセルロース微細繊維(株式会社スギノマシン製WMa-10002)1重量%分散液を固形分塗布量が0.5g/mになるように塗布し、坪量50g/mの表面保護シートを得た。
【0132】
[比較例1]
実施例1にてサイズプレスコーターでセルロース微細繊維を塗布しない以外は実施例1と同様にして坪量50g/mの表面保護シートを得た。
【0133】
[比較例2]
実施例2にてサイズプレスコーターでセルロース微細繊維を塗布しない以外は実施例2と同様にして坪量50g/mの表面保護シートを得た。
【0134】
[比較例3]
実施例2にてサイズプレスコーターでセルロース微細繊維を塗布する代わりにポリビニルアルコール(株式会社クラレ製クラレポバール28-98)を固形分塗布量0.5g/mになるように塗布した以外は実施例2と同様にして坪量50g/mの表面保護シートを得た。
【0135】
実施例1、実施例2、比較例1、比較例2及び比較例3で得た表面保護シートのガラス板への転写を輸送テストにて確認したところ、実施例1及び実施例2の表面保護シートを使用したガラス板を用いた液晶パネルのアレイ形成の際には、カラーフィルムの断線が認められなかった。一方、比較例1、比較例2及び比較例3の表面保護シートを使用したガラス板を用いた液晶パネルのアレイ形成の際には、カラーフィルムの断線が認められた。結果を表1に示す。更に、比較例3はポリビニルアルコールがガラス板へ転移しており、ガラス板の汚染も目視で確認された。また、各実施例および比較例の表面強度の結果は表1のとおりであった。
【0136】
【表1】
【0137】
表1から明らかなように、表面にセルロースナノファイバーを備える実施例1及び2の方が、表面にセルロースナノファイバーが存在しない比較例1及び2よりも、それぞれ、表面強度が優れている。これにより、シートを構成するセルロース繊維がシートの表面から脱落してガラス板の表面を汚染し又は傷付けるリスクを低減することができる。また、セルロースナノファイバーによる異物の捕捉効果を得ることができる。