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特許7684105コンクリート舗装、プレキャスト体、これらの製造方法および非接触型給電走行路
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  • 特許-コンクリート舗装、プレキャスト体、これらの製造方法および非接触型給電走行路 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-19
(45)【発行日】2025-05-27
(54)【発明の名称】コンクリート舗装、プレキャスト体、これらの製造方法および非接触型給電走行路
(51)【国際特許分類】
   E01C 9/00 20060101AFI20250520BHJP
   E01C 7/10 20060101ALI20250520BHJP
   E01C 7/32 20060101ALI20250520BHJP
   B60L 53/12 20190101ALI20250520BHJP
   B60M 7/00 20060101ALI20250520BHJP
【FI】
E01C9/00
E01C7/10
E01C7/32
B60L53/12
B60M7/00 X
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021095276
(22)【出願日】2021-06-07
(65)【公開番号】P2022008145
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2024-05-22
(31)【優先権主張番号】P 2020109058
(32)【優先日】2020-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100114258
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125391
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100208605
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 龍一
(72)【発明者】
【氏名】立岩 華英
(72)【発明者】
【氏名】岡田 明也
(72)【発明者】
【氏名】岸良 竜
(72)【発明者】
【氏名】梅津 基宏
(72)【発明者】
【氏名】江里口 玲
(72)【発明者】
【氏名】梶尾 聡
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-181546(JP,A)
【文献】特開2017-163798(JP,A)
【文献】特開2017-179928(JP,A)
【文献】特開2019-065512(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0342348(US,A1)
【文献】再公表特許第2014/147857(JP,A1)
【文献】特開2021-105284(JP,A)
【文献】特表2018-538683(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 9/00
E01C 7/10
E01C 7/32
B60L 53/12
B60M 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面上の充電対象に対して非接触で給電する施設に用いられるコンクリート舗装であって、
骨材と、
前記骨材同士を結合するセメント硬化体と、
前記骨材および前記セメント硬化体の間隙に存在するポリマーと、を備え、
前記ポリマーは、スチレンブタジエン共重合体、ポリアクリル酸エステル共重合体、あるいはエチレン酢酸ビニル共重合体の何れかであり、
コンクリートの単位セメント量Cに対する前記ポリマーの単位配合量Pの質量割合P/Cが5%以上25%以下であり、
コンクリートの配合空気量が全体の2.0vol%以上8.0vol%以下の領域を占め、
前記骨材として、誘電正接が0.1未満であり、比誘電率が2.0以上である骨材を含有し、
誘電正接が0.1未満であることを特徴とするコンクリート舗装。
【請求項2】
路面上の充電対象に対して非接触で給電する施設に用いられるコンクリート舗装であって、
骨材と、
前記骨材同士を結合するセメント硬化体と、
前記骨材および前記セメント硬化体の間隙に存在する速硬性混和材と、を備え、
前記速硬性混和材は、カルシウムアルミネート類を主成分とする物質であり、
コンクリートの単位セメント量と前記速硬性混和材の単位配合量の合量Bに対する前記速硬性混和材の単位配合量Fの質量割合F/Bが10%以上50%以下であり、
コンクリートの配合空気量が全体の2.0vol%以上8.0vol%以下の領域を占め、
前記骨材として、誘電正接が0.1未満であり、比誘電率が2.0以上である骨材を含有し、
誘電正接が0.1未満であることを特徴とするコンクリート舗装。
【請求項3】
前記骨材が、Al、MgおよびSiのいずれか一つまたは複数の元素を含む酸化物のセラミックス体であって、前記酸化物よりも融点が低い焼結助剤を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコンクリート舗装。
【請求項4】
請求項1から請求項のいずれかに記載のコンクリート舗装により路面が形成されることを特徴とする非接触型給電走行路。
【請求項5】
路面上の充電対象に対して非接触で給電する施設に用いられるプレキャスト体であって、
骨材と、
前記骨材同士を結合するセメント硬化体と、
前記骨材および前記セメント硬化体の間隙に存在するポリマーと、を備え、
前記ポリマーは、スチレンブタジエン共重合体、ポリアクリル酸エステル共重合体、あるいはエチレン酢酸ビニル共重合体の何れかであり、
コンクリートの単位セメント量Cに対する前記ポリマーの単位配合量Pの質量割合P/Cが5%以上25%以下であり、
コンクリートの配合空気量が全体の2.0vol%以上8.0vol%以下の領域を占め、
前記骨材として、誘電正接が0.1未満であり、比誘電率が2.0以上である骨材を含有し、
誘電正接が0.1未満であることを特徴とするプレキャスト体。
【請求項6】
路面上の充電対象に対して非接触で給電する施設に用いられるプレキャスト体であって、
骨材と、
前記骨材同士を結合するセメント硬化体と、
前記骨材および前記セメント硬化体の間隙に存在する速硬性混和材と、を備え、
前記速硬性混和材は、カルシウムアルミネート類を主成分とする物質であり、
コンクリートの単位セメント量と前記速硬性混和材の単位配合量の合量Bに対する前記速硬性混和材の単位配合量Fの質量割合F/Bが10%以上50%以下であり、
コンクリートの配合空気量が全体の2.0vol%以上8.0vol%以下の領域を占め、
前記骨材として、誘電正接が0.1未満であり、比誘電率が2.0以上である骨材を含有し、
誘電正接が0.1未満であることを特徴とするプレキャスト体。
【請求項7】
請求項または請求項記載のプレキャスト体により路面が形成されることを特徴とする非接触型給電走行路。
【請求項8】
路面上の充電対象に対して非接触で給電する施設に用いられるコンクリート舗装の製造方法であって、
骨材、セメント、水およびポリマーを単位セメント量Cに対する単位ポリマー配合量Pの質量割合P/Cを5%以上25%以下になるように計量し練混ぜてコンクリートを生成する工程と、
前記生成されたコンクリートを用いて路面を形成する工程と、を含み、
前記ポリマーは、スチレンブタジエン共重合体、ポリアクリル酸エステル共重合体、あるいはエチレン酢酸ビニル共重合体の何れかであり、
コンクリートの単位セメント量Cに対する前記ポリマーの単位配合量Pの質量割合P/Cが5%以上25%以下であり、
コンクリートの配合空気量が全体の2.0vol%以上8.0vol%以下の領域を占め、
前記骨材として、誘電正接が0.1未満であり、比誘電率が2.0以上である骨材を含有することを特徴とするコンクリート舗装の製造方法。
【請求項9】
路面上の充電対象に対して非接触で給電する施設に用いられるコンクリート舗装の製造方法であって、
骨材、セメント、水および速硬性混和材を単位セメント量と前記速硬性混和材の単位配合量の合量Bに対する前記速硬性混和材の単位配合量Fの質量割合F/Bを10%以上50%以下になるように計量し練混ぜてコンクリートを生成する工程と、
前記生成されたコンクリートを用いて路面を形成する工程と、を含み、
前記速硬性混和材は、カルシウムアルミネート類を主成分とする物質であり、
コンクリートの単位セメント量と前記速硬性混和材の単位配合量の合量Bに対する前記速硬性混和材の単位配合量Fの質量割合F/Bが10%以上50%以下であり、
コンクリートの配合空気量が全体の2.0vol%以上8.0vol%以下の領域を占め、
前記骨材として、誘電正接が0.1未満であり、比誘電率が2.0以上である骨材を含有することを特徴とするコンクリート舗装の製造方法。
【請求項10】
路面上の充電対象に対して非接触で給電する施設に用いられるプレキャスト体の製造方法であって、
骨材、セメント、水およびポリマーを単位セメント量Cに対する単位ポリマー配合量Pの質量割合P/Cを5%以上25%以下になるように計量し練混ぜてコンクリートを生成する工程と、
型枠を形成した後、前記型枠内に前記生成されたコンクリートを打設し、蒸気養生することでプレキャスト体を生成する工程と、を含み、
前記ポリマーは、スチレンブタジエン共重合体、ポリアクリル酸エステル共重合体、あるいはエチレン酢酸ビニル共重合体の何れかであり、
コンクリートの単位セメント量Cに対する前記ポリマーの単位配合量Pの質量割合P/Cが5%以上25%以下であり、
コンクリートの配合空気量が全体の2.0vol%以上8.0vol%以下の領域を占め、
前記骨材として、誘電正接が0.1未満であり、比誘電率が2.0以上である骨材を含有することを特徴とするプレキャスト体の製造方法。
【請求項11】
路面上の充電対象に対して非接触で給電する施設に用いられるプレキャスト体の製造方法であって、
骨材、セメント、水および速硬性混和材を単位セメント量と前記速硬性混和材の単位配合量の合量Bに対する前記速硬性混和材の単位配合量Fの質量割合F/Bを10%以上50%以下になるように計量し練混ぜてコンクリートを生成する工程と、
型枠を形成した後、前記型枠内に前記生成されたコンクリートを打設することでプレキャスト体を生成する工程と、を含み、
前記速硬性混和材は、カルシウムアルミネート類を主成分とする物質であり、
コンクリートの単位セメント量と前記速硬性混和材の単位配合量の合量Bに対する前記速硬性混和材の単位配合量Fの質量割合F/Bが10%以上50%以下であり、
コンクリートの配合空気量が全体の2.0vol%以上8.0vol%以下の領域を占め、
前記骨材として、誘電正接が0.1未満であり、比誘電率が2.0以上である骨材を含有することを特徴とするプレキャスト体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面上の充電対象に対して非接触で給電する施設に用いられるコンクリート舗装、プレキャスト体、これらの製造方法および非接触型給電走行路に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤレス給電の方式の一つである電界結合方式は、給電側と受電側にそれぞれ電極を設置し、電極を近接したときに発生する電界を利用して電力を伝送する方法である。電界結合方式により、電気自動車などの被充電対象に対して、路面を介して非接触で給電を行う場合、給電側の電極は路面の舗装の内部に埋設される。このような路面を介した非接触の給電の施設について、給電効率を向上させるための構造が研究されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、アスファルト材料またはセメント系材料に、比誘電率または誘電正接またはその両方が一般骨材よりも低い物質を混入させた素材からなる部材が提案されている。また、特許文献2では、舗装材料として、セメントアスファルト乳剤モルタル、密粒度アスファルト混合物、ポリマー入りセメントコンクリートが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-163798号公報
【文献】特許第5374657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電界結合方式により、高い給電効率を得るためには、交流電圧を印加した際に発生する電界中の静電誘導の作用を最大限に引き出すことが重要となる。したがって、舗装体の比誘電率は高い方が好ましい。また、伝送電力のエネルギー損失を低減するため、舗装体の誘電正接は低い方が好ましい。
【0006】
特許文献1記載の部材には、一般骨材よりも比誘電率が低い物質を混入させた舗装体が用いられており、舗装体の比誘電率が低くなる。また、特許文献2では、セメントアスファルト乳剤モルタル、密粒度アスファルト混合物またはポリマー入りセメントからなるコンクリート舗装材料が提案されているものの、その根拠や詳細な説明が述べられていない。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、高い比誘電率と低い誘電正接を有し、非接触の給電に用いた場合、高い給電効率を得ることができるコンクリート舗装、プレキャスト体、これらの製造方法および非接触型給電走行路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記の目的を達成するため、本発明のコンクリート舗装は、路面上の充電対象に対して非接触で給電する施設に用いられるコンクリート舗装であって、骨材と、前記骨材同士を結合するセメント硬化体と、前記骨材および前記セメント硬化体の間隙に存在するポリマーと、を備え、誘電正接が0.1未満であることを特徴としている。
【0009】
ポリマーは骨材よりも比誘電率が高く、誘電正接が低い。したがって、上記のようにコンクリート舗装にポリマーが含まれることで、その比誘電率が上昇し、誘電正接が低下する。その結果、このコンクリート舗装を介して非接触の給電を行った場合、高い給電効率を得ることができる。また、ポリマーは撥水性を有しており、路面に用いられた場合、その内部への水分の浸入を防ぐことができる。その結果、水分侵入による給電時のエネルギー損失を抑制するとともに、給電側電極間の絶縁不良や路面上への漏電を防ぐことができる。
【0010】
(2)また、本発明のコンクリート舗装は、コンクリートの単位セメント量Cに対する前記ポリマーの単位配合量Pの質量割合P/Cが5%以上25%以下であることを特徴としている。
【0011】
このようにP/Cが5%以上であるため、誘電正接を低下させ、比誘電率を高め、防水性能を高めることができる。一方、P/Cが25%以下であるため、頻繁に車両が通っても十分な強度で支えることができる。
【0012】
(3)また、本発明のコンクリート舗装は、前記ポリマーが、スチレンブタジエン共重合体であることを特徴としている。これにより、電極への耐食性が向上する。
【0013】
(4)本発明のコンクリート舗装は、路面上の充電対象に対して非接触で給電する施設に用いられるコンクリート舗装であって、骨材と、前記骨材同士を結合するセメント硬化体と、前記骨材および前記セメント硬化体の間隙に存在する速硬性混和材と、を備え、誘電正接が0.1未満であることを特徴としている。
【0014】
速硬性混和材は、骨材よりも比誘電率が高く、誘電正接が低い。したがって、上記のようにコンクリート舗装に速硬性混和材が含まれることで、その比誘電率が上昇し、誘電正接が低下する。その結果、このコンクリート舗装を介して非接触の給電を行った場合、高い給電効率を得ることができる。
【0015】
(5)また、本発明のコンクリート舗装は、コンクリートの単位セメント量と前記速硬性混和材の単位配合量の合量Bに対する前記速硬性混和材の単位配合量Fの質量割合F/Bが10%以上50%以下であることを特徴としている。
【0016】
このようにF/Bが10%以上であるため、誘電正接を低下させ、比誘電率を高められる。その結果、高い給電効率を得ることができる。一方、F/Bが50%以下であるため、頻繁に車両が通っても十分な強度で支えることができる。
【0017】
(6)また、本発明のコンクリート舗装は、コンクリートの配合空気量が全体の2.0vol%以上8.0vol%以下の領域を占めることを特徴としている。空気の誘電正接は0であるため、コンクリート舗装中に2.0vol%以上の空気を含むことで、誘電正接が低下する。その結果、エネルギー損失を低減でき、高い給電効率を得ることができる。フレッシュコンクリートの段階で配合空気量は全体の4.0vol%以上がより好ましい。一方で、空気の比誘電率は1であり、コンクリート中に8.0vol%以下の空気を含むことで、コンクリート舗装の比誘電率を高く維持するとともに、高い強度を維持できる。
【0018】
(7)また、本発明のコンクリート舗装は、前記骨材として、誘電正接が0.1未満である骨材を含有することを特徴としている。これにより、コンクリート舗装によるエネルギー損失を低減でき、高い給電効率を得ることができる。
【0019】
(8)また、本発明のコンクリート舗装は、前記骨材として、比誘電率が2.0以上である骨材を含有することを特徴としている。これにより、高い給電効率を得ることができる。
【0020】
(9)また、本発明のコンクリート舗装は、前記骨材が、Al、MgおよびSiのいずれか一つまたは複数の元素を含む酸化物のセラミックス体であって、前記酸化物よりも融点が低い焼結助剤を含有することを特徴としている。
【0021】
骨材中に不純物としてNaやKなどのアルカリ金属を含むと誘電正接が増大する。焼結助剤を含有することで、骨材の焼成過程で結晶構造中の空孔にアルカリ金属イオンが捕獲され、結晶中のイオン移動を抑制することで、誘電正接を低減できる。
【0022】
(10)また、本発明の非接触型給電走行路は、上記(1)~(9)記載のコンクリート舗装により路面が形成されることを特徴としている。自動運転の自動車、モノレールの線路、工場内のフォークリフトなどの車両は、何度も同一箇所を車輪が通過する。上記のようにコンクリート舗装材料で非接触型給電走行路を構築すれば、アスファルトよりも耐摩耗性に優れ、長期的な使用が可能となる。
【0023】
(11)また、本発明のプレキャスト体は、路面上の充電対象に対して非接触で給電する施設に用いられるプレキャスト体であって、骨材と、前記骨材同士を結合するセメント硬化体と、前記骨材および前記セメント硬化体の間隙に存在するポリマーと、を備え、誘電正接が0.1未満であることを特徴としている。これにより、工場でコンクリート舗装を事前に作製し、現場で組み立てることができ、現場の作業負担を軽減できる。
【0024】
(12)また、本発明のプレキャスト体は、路面上の充電対象に対して非接触で給電する施設に用いられるプレキャスト体であって、骨材と、前記骨材同士を結合するセメント硬化体と、前記骨材および前記セメント硬化体の間隙に存在する速硬性混和材と、を備え、誘電正接が0.1未満であることを特徴としている。これにより、工場でコンクリート舗装を事前に作製し、現場で組み立てることができ、現場の作業負担を軽減できる。
【0025】
(13)また、本発明の非接触型給電走行路は、上記(11)または(12)記載のプレキャスト体により路面が形成されることを特徴としている。これにより、現場による作業負担を軽減でき、耐摩耗性に優れ、長期的な使用が可能となる。
【0026】
(14)また、本発明のコンクリート舗装の製造方法は、路面上の充電対象に対して非接触で給電する施設に用いられるコンクリート舗装の製造方法であって、骨材、セメント、水およびポリマーを単位セメント量Cに対する単位ポリマー配合量Pの質量割合P/Cを5%以上25%以下になるように計量し練混ぜてコンクリートを生成する工程と、前記生成されたコンクリートを用いて路面を形成する工程と、を含むとしている。これにより、コンクリート舗装の誘電正接を低下させ、比誘電率を高め、防水性能を高めるとともに、頻繁に車両が通っても支えることができる十分な強度を持たせることができる。
【0027】
(15)また、本発明のコ ンクリート舗装の製造方法は、路面上の充電対象に対して非接触で給電する施設に用いられるコンクリート舗装の製造方法であって、骨材、セメント、水および速硬性混和材を単位セメント量と前記速硬性混和材の単位配合量の合量Bに対する前記速硬性混和材の単位配合量Fの質量割合F/Bを10%以上50%以下になるように計量し練混ぜてコンクリートを生成する工程と、前記生成されたコンクリートを用いて路面を形成する工程と、を含むとしている。これにより、コンクリート舗装の誘電正接を低下させ、比誘電率を高められる。その結果、高い給電効率が得られるとともに、頻繁に車両が通っても支えることができる十分な強度を持たせることができる。
【0028】
(16)また、本発明のプレキャスト体の製造方法は、路面上の充電対象に対して非接触で給電する施設に用いられるプレキャスト体の製造方法であって、骨材、セメント、水およびポリマーを単位セメント量Cに対する単位ポリマー配合量Pの質量割合P/Cを5%以上25%以下になるように計量し練混ぜてコンクリートを生成する工程と、型枠を形成した後、前記型枠内に前記生成されたコンクリートを打設し、蒸気養生することでプレキャスト体を生成する工程と、を含むことを特徴としている。これにより、給電効率、防水性能および強度の高いプレキャスト体を準備でき、舗装現場での作業効率を向上できる。
【0029】
(17)また、本発明のプレキャスト体の製造方法は、路面上の充電対象に対して非接触で給電する施設に用いられるプレキャスト体の製造方法であって、骨材、セメント、水および速硬性混和材を単位セメント量と前記速硬性混和材の単位配合量の合量Bに対する前記速硬性混和材の単位配合量Fの質量割合F/Bを10%以上50%以下になるように計量し練混ぜてコンクリートを生成する工程と、型枠を形成した後、前記型枠内に前記生成されたコンクリートを打設することでプレキャスト体を生成する工程と、を含むことを特徴としている。これにより、給電効率および強度の高いプレキャスト体を準備でき、舗装現場での作業効率を向上できる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、コンクリート舗装またはプレキャスト体が高い比誘電率と低い誘電正接を有し、非接触の給電に用いた場合、高い給電効率を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】(a)、(b)それぞれ本発明の給電施設を示す概略図およびその等価回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に本発明の実施形態を説明する。説明される実施形態は好適な一例であって、本発明はこれらに限定されない。
【0033】
[給電施設]
図1(a)、(b)は、それぞれ給電施設を示す概略図およびその等価回路を示す図である。図1(a)に示すように、給電施設100は、給電装置110およびコンクリート舗装120で構成されている。
【0034】
給電装置110は、コンクリート舗装120より下の土壌800に埋設されており、高周波電源111および給電側電極112を備えている。高周波電源111は、例えば所定の周波数である13.56MHzで給電側電極112へ交流電圧を印加する。給電側電極112は、コンクリート舗装120の裏側に設けられ、コンクリート舗装120を介して交流電圧の印加により充電対象へ静電誘導を起こす。このようにして、充電対象に対して、非接触(ワイヤレス)での給電が可能になる。
【0035】
充電対象は、例えば、充電可能に構成された電動の車両が挙げられる。車両の種類としては、乗用自動車に特に有効であるが、これに限らず、フォークリフト、建設車両、モノレールの車両であってもよい。また、車両に限らず充電を要する機器であってもよい。
【0036】
図1(a)に示す例では、充電対象として模式的に電気自動車900が示されている。電気自動車900は、前輪タイヤ910、ホイール920、シャフト930、車載回路940およびモータ950を備えている。充電時には、給電側電極112の真上に前輪タイヤ910が配置されるように、電気自動車900が運転、停止される。そして、給電側の電圧印加に対しホイール920が受電側電極として機能し、シャフト930を電流が流れ、車載回路940が充電される。そして、新たに充電された電力によりモータ950が駆動される。
【0037】
図1(b)に示すように、図1(a)に示す非接触給電システムの例を等価回路で表すと、コンクリート舗装120を誘電体としたRLC直列回路となる。この等価回路からも分かるように、高周波電源111のエネルギーを車載回路940に高い効率で与えられるか否かは、コンクリート舗装120の構成材料に依存する。
【0038】
コンクリート舗装120は、後述のコンクリート舗装材料により構成され、非接触型給電走行路の路面を形成する。その結果、コンクリート舗装120は、高い比誘電率と低い誘電正接を有し、非接触の給電に用いた場合、高い給電効率を得ることができる。非接触型給電走行路は、例えば、自動車の道路、駐車場、モノレール等の線路、移動体が走行する工場内の床として用いられる。自動運転の自動車、モノレールの車両、工場内のフォークリフト等は、複数台の車両が長期間にわたって給電施設100を利用するため、何度も同一箇所を車輪が通過する。コンクリート舗装材料は、アスファルトよりも耐摩耗性に優れ、非接触型給電走行路に用いたときには長期的な使用が可能となる。
【0039】
なお、路面内部に水分が浸入すると、コンクリート舗装材料の誘電正接が上昇し、エネルギー損失が大きくなる。また、給電側の電極間や路面上の人や他の機器との絶縁の確保が難しくなる。したがって、路面内部への水分の浸入が防止されることが好ましい。
【0040】
[コンクリート舗装の構成]
コンクリート舗装120は、コンクリート舗装材料として骨材と、セメント硬化体と、ポリマーおよび速硬性混和材のうち、少なくとも一方とを備えている。骨材は、砂利や砂で構成される一般骨材(鉱物粒子の集合)に限らず、セラミック粒子の集合であってもよい。セメント硬化体は、セメントが水和反応により硬化したものであり、骨材同士を結合する。ポリマーは、複数のモノマーが重合して鎖状や網状になることによってできた化合物をいい、骨材およびセメント硬化体の間隙に存在する。
【0041】
上記のように、骨材に比べ比誘電率が高く、誘電正接が低いポリマーまたは速硬性混和材が含まれることで、コンクリート舗装120全体の比誘電率が上昇し、誘電正接が低下する。その結果、コンクリート舗装120を介して非接触の給電を行った場合、高い給電効率を達成できる。また、ポリマーと速硬性混和材がともに含まれるのが好ましく、その場合には、より高い給電効率が得られる。また、ポリマーは撥水性を有しており、且つ、ポリマーがコンクリート内部の空隙を充填する効果により、連続的な空気層の形成が抑制され、路面に用いられた場合その内部への水分の浸入を防ぐことができる。その結果、水分浸入による給電時のエネルギー損失を抑制するとともに、給電側電極間の絶縁不良や路面上への漏電を防ぐことができる。なお、ポリマーは、赤外分光分析(FT-IR)で検出できる程度含まれていれば水分の浸入防止の効果が得られる。
【0042】
用いられるポリマーには、スチレンブタジエン共重合体(ラテックス)、ポリアクリル酸エステル共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル共重合体、ポリクロロピレン等が挙げられる。このうち、電極への耐食性の観点からスチレンブタジエン共重合体(ラテックス)が最も好ましい。
【0043】
ラテックスは、撥水性(防水性)を有しており、路面内部への水分の浸入を防ぐことができる。コンクリート舗装120に水分が浸入すると、誘電正接が上昇し交流電圧印加時にエネルギー損失が大きくなる。ラテックスを用いることで水分浸入による誘電正接の上昇に伴うエネルギー損失を抑制するとともに、給電側電極112間の絶縁不良や路面上への漏電を防ぐことができる。
【0044】
ポリマーの含有量は、フレッシュコンクリートの段階での単位セメント量(セメント添加量)Cに対するポリマーの単位配合量(ポリマー添加量)Pの質量割合P/Cが5%以上25%以下に制御されることが好ましい。P/Cが5%以上であるため、誘電正接を低下させ、比誘電率を高め、防水性能を高めることができる。一方、P/Cが25%以下であるため、頻繁に車両が通っても十分な強度で支えることができる。P/Cの下限はより好ましくは10%以上、上限はより好ましくは20%以下である。なお、ポリマー添加量Pの質量割合は、ポリマー含有混和液の量と水量の合計値を一定とすることが好ましい。これにより、ポリマー添加量の増大による強度の低下を抑制することができる。
【0045】
上記の範囲は、フレッシュコンクリートの段階、コンクリートの製造時のものであるが、コンクリート舗装120中のセメント硬化体中のポリマーの体積割合に換算するとおおよそ15%以上50%以下に相当する。コンクリートの配合における各種材料(水、セメント、骨材、減水剤などその他薬品)の割合は、フレッシュコンクリートの段階の重量で管理および表記するのが業界では一般的である。このような表記は、最終的なコンクリートの組成は、外部環境、セメントの水和反応の経時変化、骨材の吸水率等に大きく依存し、特定が困難であることから、しばしば行われる。
【0046】
速硬性混和材としては、例えばカルシウムアルミネート類、アルミン酸ナトリウム、仮焼明礬を含む明礬類、活性アルミナ、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム等の急硬性物質の群の中から選ばれる一種又は二種以上を主成分とするものが挙げられる。特に好ましい速硬性混和材は、カルシウムアルミネート類を主成分としたものである。速硬性混和材は、好ましくは、粉体状である。
【0047】
速硬性混和材の含有量は、フレッシュコンクリートの段階での単位セメント量Cと速硬性混和材の単位配合量(速硬性混和材添加量)Fの合量Bに対する速硬性混和材の単位配合量Fの質量割合F/Bが10%以上50%以下に制御されることが好ましい。F/Bが10%以上であるため、誘電正接を低下させ、比誘電率を高め、給電効率を高めることができる。一方、F/Bが50%以下であるため、頻繁に車両が通っても十分な強度で支えることができる。F/Bの下限はより好ましくは15%以上、上限はより好ましくは35%以下である。
【0048】
ポリマーの含有量と同様に、上記の範囲はフレッシュコンクリートの段階、コンクリートの製造時のものであるが、コンクリート舗装120中のセメント硬化体中の速硬性混和材の体積割合に換算するとおおよそ1.3%以上10%以下に相当する。
【0049】
フレッシュコンクリートの段階での配合空気量は、全体の2.0vol%以上8.0vol%以下の領域を占めることが好ましい。空気の誘電正接は0であるため、コンクリート中に2.0vol%以上の空気を含むことで、誘電正接が低下する。その結果、エネルギー損失を低減でき、高い給電効率を得ることができる。一方で、空気の比誘電率は1であり、コンクリート中に8.0vol%以下の空気を含むことで、コンクリート舗装120の比誘電率を高く維持するとともに、高い強度を維持できる。配合空気量の下限はより好ましくは4.0vol%以上、上限はより好ましくは6.0%以下である。なお、フレッシュコンクリートの段階での配合空気量は、AE剤またはAE減水剤と呼ばれるコンクリート用化学混和剤を用いることにより調整することができ、フレッシュコンクリート空気量測定器により測定できる。
【0050】
少なくとも一部の骨材の誘電正接は、0.1未満であることが好ましい。この場合の骨材は、一般の天然素材の骨材よりも誘電正接が低い。これにより、コンクリート舗装120を介することによるエネルギー損失を低減でき、高い給電効率を得ることができる。また、少なくとも一部の骨材の比誘電率は、2.0以上であることが好ましい。この場合の骨材は、一般骨材よりも比誘電率が高い。これにより、高い給電効率を得ることができる。なお、骨材全体について平均の骨材の誘電正接または比誘電率が所定の範囲である場合の方がさらに好ましい。また、すべての骨材の誘電正接または比誘電率が所定の範囲である場合の方がさらに好ましい。
【0051】
誘電正接が0.1未満の骨材の添加量は、コンクリート舗装としての誘電正接が0.1未満となるように、適宜調整すればよい。例えば。骨材の内、細骨材を天然の砕砂とし、粗骨材を誘電正接0.1未満のものを用いることができる。誘電正接が0.1未満の骨材の占める割合は、骨材全体のうちの50%以上が好ましい。
【0052】
骨材が、Al、MgおよびSiのいずれか一つまたは複数の元素を含む酸化物のセラミックス体であって、酸化物よりも融点が低い焼結助剤を含有してもよい。この場合、骨材中に不純物としてNaやKなどのアルカリ金属を含むと誘電正接が増大するが、焼結助剤を含有することで、骨材の焼成過程で結晶構造中の空孔にアルカリ金属イオンが捕獲され、結晶中のイオン移動を抑制することで、誘電正接を低減できる。
【0053】
このような骨材の構成材料には、例えば、アルミナ(Al23)、マグネシア(MgO)、シリカ(SiO2)、ムライト(3Al23・2SiO2)、フォルステライト(2MgO・SiO2)、ステアタイト(MgO・SiO2)、スピネル(MgO・Al23)およびコージェライト(2MgO・2Al23・5SiO2)等が挙げられる。
【0054】
焼結助剤について、アルミナを例に挙げて説明する。アルミナに焼結助剤として、SiO2とMgOを合計量で0.2wt%以上1.0wt%以下、重量比(SiO2/MgO)で2以上4以下を添加すると、焼結過程において、粒界にアルミナよりも低融点であるコージェライト相が析出する。このコージェライトの生成過程で結晶構造中の空孔にアルカリ金属イオンが捕獲され、結晶中のイオン移動を抑制することで、誘電正接を低減できる。
【0055】
[コンクリート舗装の製造方法]
上記のように構成されたコンクリート舗装120の製造方法を説明する。まず、所定量の骨材、セメント、水およびポリマーを計量しミキサで練混ぜる(各配合等の具体例は後述)。その際にセメント添加量Cに対するポリマー添加量Pの質量割合P/Cを5%以上25%以下とし、セメント添加量Cと速硬性混和材添加量Fの合量Bに対する速硬性混和材添加量Fの質量割合F/Bを10%以上50%以下とすることが好ましい。この際、P/Cを10%以上20%以下とし、F/Bを15%以上35%以下とすることがさらに好ましい。このようにして得られたコンクリートを打設し、締固め、表面を仕上げることで、コンクリート舗装120が製造される。
【0056】
このように製造された誘電正接が0.1未満のコンクリートは、非接触で給電する給電側電極と給電される車両などとの間に用いられる。コンクリート舗装の誘電正接は、供用中に0.1未満であればよいが、製造後28日以前に0.1未満となることが好ましく、製造後7日以前に0.1未満となることがより好ましい。
【0057】
なお、コンクリート舗装120は、混錬された原料を現場で打設して製造することが好ましい。これにより、現場の状況に応じて柔軟にコンクリート舗装120を形成できる。
【0058】
コンクリート舗装120は、あらかじめ工場でプレキャストコンクリート(プレキャスト体)として形成しておき、非接触型給電走行路用に敷き詰めてもよい。あらかじめ工場においてプレキャスト体と給電側電極部品を一体化させて搬送し、現場で施工してもよい。これにより、工場でコンクリート舗装を事前に作製し、現場で組み立てることができ、現場の作業時間を軽減できる。
【0059】
また、プレキャストコンクリートとする際は、上記コンクリート舗装と同様の方法で製造したコンクリートを、型枠に打設後、又は型枠に打設し脱型後に蒸気養生する工程を含むことが好ましい。蒸気養生を行うことで、より緻密な硬化体が形成され内部への水分の浸入を防ぐとともに、配合された水が確実に水和物を形成して減少することで、誘電正接を確実に減少させることができる。なお、蒸気養生は公知の方法で行えばよく、例えば温度50~80℃下で、2~12時間行えばよい。また、材料に速硬性混和材が含まれる場合には、蒸気養生する工程が省略されてもよい。
【0060】
[実験]
上記のようなコンクリート舗装について実験を行なった。各種のコンクリート舗装材料で、路面を模擬した500×500×50mmの試験体を作製した。材齢は28日間とした。表1は、実験に用いた材料とその配合の一例を示す表である。表1に示す例を基準に骨材やポリマーは、それぞれ他の種類に置き換えた。ポリマーの添加量は、表2に示すように、ポリマー含有混和液Lの量と水Wの量の合計値を一定とした(記号は表1と同様)。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
骨材には、一般骨材、ステアタイト、アルミナ、ムライト、フォルステライトおよび特殊骨材の6種類を用いた。一般骨材は、珪石(SiO2)を主成分とし、副成分としてAl23、MgOを含む砂利である。特殊骨材は、アルミナに焼結助剤としてSiO2を0.4wt%、MgOを0.2wt%添加し、1600℃で熱処理して作製した。骨材の誘電特性は、インピーダンスアナライザを用いて測定した。表3は、実験に用いた骨材の比誘電率および誘電正接を示す表である。
【0064】
【表3】
【0065】
ポリマーには、スチレンブタジエン共重合体(SBR)、ポリアクリル酸エステル共重合体(PAE)およびエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)を用いた。ポリマーは、セメントに対し、重量比で5~25%添加した。これは体積比で14~45%に相当する。
【0066】
速硬性混和材には、Facet(登録商標、太平洋マテリアル社製)を用いた。速硬性混和材は、セメントと速硬性混和材の合計重量に対し、重量比で15~35%添加した。これは、体積比で16~37%に相当する。また、フレッシュコンクリートの段階での配合空気量は、フレッシュコンクリート空気量測定器を用いてJIS A 1115に従って測定し、2.0~8.0vol%となるように調整した。
【0067】
比較例として、ポリマーを含有しない一般コンクリート、一般アスファルトについても同様に試験体を作製した。各試験体の誘電特性をインピーダンスアナライザにて測定した。表4は、試験体の製造条件および測定結果を示す表である。
【0068】
【表4】
【0069】
得られた結果から、電磁界解析ソフトを用いて、給電効率シミュレーションを行った。また、試験体の裏面の中心に250×200×1mmの銅電極を50mm間隔で2つ貼り付け、電極に交流電圧を印加しながら、試験体の表面へ水を散布した。その時の電極間の抵抗値をテスターにて測定し、絶縁不良の有無を確認した。絶縁試験で得られた抵抗が10MΩ以上の場合〇、1~10MΩ未満の場合△、1MΩ未満の場合×で表した。また、各種の試験体の圧縮強度を測定した。表5は、シミュレーション結果および試験結果を示す表である。
【0070】
【表5】
【0071】
実施例は、いずれも給電効率が80%以上であった。また、絶縁不良が認められなかった。実施例の圧縮強度は、35MPa以上であり、コンクリート舗装として要求される値を満足した。なお、コンクリート舗装には、曲げ強度4.5MPa以上、圧縮強度35MPa以上が要求される。
【0072】
ポリマー添加量と配合空気量とがほぼ等しい実施例3と実施例12を比較すると、速硬性混和材が添加されている実施例12の方が、実施例3よりも誘電正接がより低くなり、高い給電効率が得られた。また、圧縮強度についても、実施例12の方が高かった。このような対比によれば、ポリマーだけでなく速硬性混和材をさらに添加することで、誘電正接をさらに低下させる。そして、速硬性混和材をさらに添加したコンクリート舗装を介して非接触の給電を行った場合、高い給電効率を得ることができる。
【0073】
P/Cを25%とした実施例5の圧縮強度は38MPa、配合空気量を8.0vol%とした実施例13の圧縮強度は36MPaであった。この圧縮強度は、コンクリート舗装に要求される規格下限値に近い。したがって、コンクリート舗装の配合空気量が8.0vol%を超える、またはフレッシュコンクリートの段階でのP/Cが25%を超えることは好ましくない。なお、表に示すように、比較例では、給電効率は非常に低く、絶縁不良が発生していることが分かった。
【符号の説明】
【0074】
100 給電施設
110 給電装置
111 高周波電源
112 給電側電極
120 コンクリート舗装
800 土壌
900 電気自動車
910 前輪タイヤ
920 ホイール
930 シャフト
940 車載回路
950 モータ
図1