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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-19
(45)【発行日】2025-05-27
(54)【発明の名称】直流送電制御装置、直流送電制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 1/00 20060101AFI20250520BHJP
   H02J 3/36 20060101ALI20250520BHJP
   G05B 9/02 20060101ALI20250520BHJP
【FI】
H02J1/00 301D
H02J3/36
G05B9/02 L
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022146112
(22)【出願日】2022-09-14
(65)【公開番号】P2024041353
(43)【公開日】2024-03-27
【審査請求日】2024-07-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 貴裕
【審査官】早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-257770(JP,A)
【文献】特開平06-022448(JP,A)
【文献】特開2003-244963(JP,A)
【文献】国際公開第2016/207976(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J1/00-1/16
H02J3/00-5/00
H02J13/00
G05B9/00-9/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流送電システムが有する複数の制御系列にそれぞれ設けられ、操作指令装置から入力される制御指令に応じて前記直流送電システムの制御を行う直流送電制御装置であって、
自制御系列に異常が発生したことを表す異常信号を前記操作指令装置へ出力する出力ロック部と、
前記異常信号に応じて前記操作指令装置から送信される系列ロック信号を受けて、前記自制御系列を系列ロック状態に移行させる系列ロック処理部と、
前記操作指令装置から送信される系列間照合信号を受けて、前記自制御系列が前記異常から復旧したか否かの判断を実施し、前記判断の結果に基づいて前記自制御系列を前記直流送電システムの制御に復帰させるための系列復帰信号を前記操作指令装置へ出力する復旧処理部と、
前記系列復帰信号に応じて前記操作指令装置から送信される系列ロック解除信号を受けて、前記系列ロック状態を解除する系列ロック解除部と、を備え、
前記復旧処理部は、
前記自制御系列がデブロック中か否かを判定するデブロック判定部と、
前記デブロック判定部の判定結果を用いて、前記自制御系列の制御状態と他制御系列の制御状態との照合を実施し、前記照合の結果に基づいて前記自制御系列が系列復帰条件を満たすか否かを判定する系列間照合部と、
前記系列間照合部により前記系列復帰条件を満たすと判定された場合に前記系列復帰信号を出力する系列復帰信号出力部と、を有し、
前記系列間照合部は、前記自制御系列の制御状態と前記他制御系列の制御状態との合わせ込みを行うための系列間合わせ込み信号を出力し、
前記デブロック判定部は、前記系列間合わせ込み信号を用いて前記自制御系列がデブロック中か否かを判定する、直流送電制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の直流送電制御装置であって、
前記系列間照合部は、
前記自制御系列において前記直流送電制御装置の動作が正常であり、かつ、前記操作指令装置から前記系列ロック信号および前記系列間照合信号が入力されているという第1の条件と、
前記自制御系列がデブロック中ではないという第2の条件と、
前記他制御系列がデブロック中であるという第3の条件と、を満たす場合に、前記系列間合わせ込み信号を出力する、直流送電制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の直流送電制御装置であって、
前記系列間照合部は、前記第1の条件が満たされると所定のパルス信号を1回出力するワンショット回路を有し、前記ワンショット回路から出力される前記パルス信号を用いて前記系列間合わせ込み信号を出力する、直流送電制御装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の直流送電制御装置であって、
前記デブロック判定部は、直流電力と交流電力とを相互に変換する変換器がBPP状態であることを示すBPP完了信号が入力されるか、または前記系列間照合部から前記系列間合わせ込み信号が出力された場合に、前記自制御系列がデブロック中であると判定する、直流送電制御装置。
【請求項5】
直流送電システムが有する複数の制御系列にそれぞれ設けられ、操作指令装置から入力される制御指令に応じて前記直流送電システムの制御を行う直流送電制御装置を用いた直流送電制御方法であって、
前記直流送電制御装置により、
自制御系列に異常が発生したことを表す異常信号を前記操作指令装置へ出力し、
前記異常信号に応じて前記操作指令装置から送信される系列ロック信号を受けて、前記自制御系列を系列ロック状態に移行させ、
前記操作指令装置から送信される系列間照合信号を受けて、前記自制御系列が前記異常から復旧したか否かの判断を実施し、
前記判断の結果に基づいて前記自制御系列を前記直流送電システムの制御に復帰させるための系列復帰信号を前記操作指令装置へ出力し、
前記系列復帰信号に応じて前記操作指令装置から送信される系列ロック解除信号を受けて、前記系列ロック状態を解除し、
前記判断では、
所定の条件を満たす場合に、前記自制御系列の制御状態と他制御系列の制御状態との合わせ込みを行うための系列間合わせ込み信号を出力し、
前記系列間合わせ込み信号を用いて、前記自制御系列がデブロック中か否かを判定するデブロック判定を実施し、
前記デブロック判定の結果を用いて、前記自制御系列の制御状態と前記他制御系列の制御状態との照合を実施し、
前記照合の結果に基づいて、前記系列復帰信号を出力するための系列復帰条件を前記自制御系列が満たすか否かを判定する、直流送電制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流送電の制御を行う装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高電圧の直流電流を用いて電力送電を行う高圧直流送電(HVDC:High Voltage Direct Current)が注目されている。こうした高圧直流送電では、従来の交流送電と比べて、送電損失が少なく、また送電設備の建設費が安価となることから、特に長距離送電に関して経済的に有利である。さらに、高圧直流送電を用いることで周波数の異なる系統間の連系が容易となるため、商用電源の周波数が異なる地域間での電力融通にも適している。この点は、例えば日本のように、同一国内でも地域ごとに商用電源の周波数が異なる場合において特に適している。
【0003】
直流送電を行う直流送電システムでは、電力を交流から直流に、または直流から交流に相互に変換する変換器が必要である。変換器は、一般的に制御装置からの制御信号に応じて動作し、事故や故障などの異常発生により制御装置からの制御信号出力が停止すると、変換器が動作できなくなって直流送電システムが停止する。こうした予定外のシステム停止は、電力系統に対して多大な影響を及ぼすことになるため、必ず回避しなければならない。そこで、直流送電システムでは通常、制御装置が冗長構成となっており、複数の制御装置が同時に変換器に対して制御信号を出力している。これにより、1つの制御装置に異常が発生しても、直流送電システム全体が停止してしまうのを防いでいる。
【0004】
冗長構成された制御装置の一つに異常が発生した後、その制御装置を復旧させて冗長運転を再開する場合には、直流送電を停止せずにこれを行うことが必要となる。
【0005】
直流送電システムの復旧に関して、例えば特許文献1の技術が知られている。特許文献1に記載された交直変換システムでは、二重化された系列のうちいずれかの系列中の装置が異常となり異常装置が修理された場合に、修理された系列の制御装置の制御角を、他の系列の正常運転中の制御装置の制御角と比較し、一致したときに、修理された系列のロックを解除できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第3403601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の交直変換システムでは、修理された系列の制御装置の制御角を他の系列の正常運転中の制御装置の制御角と一致させるために、修理された系列の制御装置を手動で操作する必要がある。したがって、ヒューマンエラーによる誤操作の危険性が排除できず、正常なシステム復旧の妨げとなる可能性がある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、直流送電システムの復旧処理を容易かつ確実に行うことを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による直流送電制御装置は、直流送電システムが有する複数の制御系列にそれぞれ設けられ、操作指令装置から入力される制御指令に応じて前記直流送電システムの制御を行うものであって、自制御系列に異常が発生したことを表す異常信号を前記操作指令装置へ出力する出力ロック部と、前記異常信号に応じて前記操作指令装置から送信される系列ロック信号を受けて、前記自制御系列を系列ロック状態に移行させる系列ロック処理部と、前記操作指令装置から送信される系列間照合信号を受けて、前記自制御系列が前記異常から復旧したか否かの判断を実施し、前記判断の結果に基づいて前記自制御系列を前記直流送電システムの制御に復帰させるための系列復帰信号を前記操作指令装置へ出力する復旧処理部と、前記系列復帰信号に応じて前記操作指令装置から送信される系列ロック解除信号を受けて、前記系列ロック状態を解除する系列ロック解除部と、を備え、前記復旧処理部は、前記自制御系列がデブロック中か否かを判定するデブロック判定部と、前記デブロック判定部の判定結果を用いて、前記自制御系列の制御状態と他制御系列の制御状態との照合を実施し、前記照合の結果に基づいて前記自制御系列が系列復帰条件を満たすか否かを判定する系列間照合部と、前記系列間照合部により前記系列復帰条件を満たすと判定された場合に前記系列復帰信号を出力する系列復帰信号出力部と、を有し、前記系列間照合部は、前記自制御系列の制御状態と前記他制御系列の制御状態との合わせ込みを行うための系列間合わせ込み信号を出力し、前記デブロック判定部は、前記系列間合わせ込み信号を用いて前記自制御系列がデブロック中か否かを判定する。
本発明による直流送電制御方法は、直流送電システムが有する複数の制御系列にそれぞれ設けられ、操作指令装置から入力される制御指令に応じて前記直流送電システムの制御を行う直流送電制御装置を用いたものであって、前記直流送電制御装置により、自制御系列に異常が発生したことを表す異常信号を前記操作指令装置へ出力し、前記異常信号に応じて前記操作指令装置から送信される系列ロック信号を受けて、前記自制御系列を系列ロック状態に移行させ、前記操作指令装置から送信される系列間照合信号を受けて、前記自制御系列が前記異常から復旧したか否かの判断を実施し、前記判断の結果に基づいて前記自制御系列を前記直流送電システムの制御に復帰させるための系列復帰信号を前記操作指令装置へ出力し、前記系列復帰信号に応じて前記操作指令装置から送信される系列ロック解除信号を受けて、前記系列ロック状態を解除し、前記判断では、所定の条件を満たす場合に、前記自制御系列の制御状態と他制御系列の制御状態との合わせ込みを行うための系列間合わせ込み信号を出力し、前記系列間合わせ込み信号を用いて、前記自制御系列がデブロック中か否かを判定するデブロック判定を実施し、前記デブロック判定の結果を用いて、前記自制御系列の制御状態と前記他制御系列の制御状態との照合を実施し、前記照合の結果に基づいて、前記系列復帰信号を出力するための系列復帰条件を前記自制御系列が満たすか否かを判定する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、直流送電システムの復旧処理を容易かつ確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る直流送電システムの構成図である。
図2】直流送電制御装置のハードウェア構成例を示す図である。
図3】比較例に係る直流送電制御装置における系列ロック機能および復旧機能に関する機能ブロック図である。
図4】比較例に係るデブロック判定部の詳細を示す図である。
図5】比較例に係る系列間照合部の詳細を示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係る直流送電制御装置における系列ロック機能および復旧機能に関する機能ブロック図である。
図7】本発明の一実施形態に係るデブロック判定部の詳細を示す図である。
図8】本発明の一実施形態に係る系列間照合部の詳細を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る直流送電システムの構成図である。図1に示す直流送電システム100は、操作指令装置1、制御部2および電力変換部3を有する。制御部2は、通信装置10Aおよび直流送電制御装置20Aを含む第1制御系列2Aと、通信装置10Bおよび直流送電制御装置20Bを含む第2制御系列2Bとを有する。
【0014】
操作指令装置1は、直流送電制御装置20A,20Bに対する制御指令を、第1制御系列2Aおよび第2制御系列2Bへそれぞれ出力する。操作指令装置1は、例えばユーザの操作に応じて、直流送電制御装置20A,20Bに対して指示すべき制御内容を決定し、その制御内容に応じた制御指令を出力することができる。
【0015】
操作指令装置1から直流送電制御装置20A,20Bに対して出力された制御指令は、第1制御系列2A、第2制御系列2Bにおいて、通信装置10A,10Bにそれぞれ入力される。通信装置10A,10Bは、入力された制御指令を自制御系列の直流送電制御装置20A,20Bに対してそれぞれ出力することで、操作指令装置1と直流送電制御装置20A,20Bとの間で制御指令の中継を行う。
【0016】
直流送電制御装置20Aは、操作指令装置1から通信装置10Aを介して入力された制御指令に基づき、電力変換部3に対するパルス信号を生成して出力する。同様に、直流送電制御装置20Bは、操作指令装置1から通信装置10Bを介して入力された制御指令に基づき、電力変換部3に対するパルス信号を生成して出力する。ここで、直流送電制御装置20Aと直流送電制御装置20Bの間では、互いの内部状態を一致させておき、同じタイミングで電力変換部3に同一のパルス信号をそれぞれ出力する必要がある。そのため、直流送電制御装置20Aと直流送電制御装置20Bは、系列間信号を互いに送受信しあうことで、自身の運転制御角や運転状態を相手方に通知する。
【0017】
通信装置10A,10Bは、直流送電システム100が行う直流送電の相手先システムが有する通信装置(不図示)から送信される状態信号を受信し、自制御系列の直流送電制御装置20A,20Bにそれぞれ送信する。相手先システムの通信装置から送信される状態信号とは、相手先システムが有する制御装置(不図示)の制御状態を表す信号である。また、直流送電制御装置20A,20Bは、自身の制御状態に応じた状態信号を通信装置10A,10Bへそれぞれ出力する。通信装置10A,10Bは、直流送電制御装置20A,20Bからの状態信号を中継し、相手先システムが有する通信装置へそれぞれ送信する。これにより、直流送電システム100と相手先システムの間で、互いの制御状態に応じた状態信号が送受信される。
【0018】
電力変換部3は、変換器制御装置31A,31B,31Cと、変換器32A,32B,32Cとを有する。変換器制御装置31A~31Cは、直流送電制御装置20A,20Bからのパルス信号に基づく点弧パルスを生成し、変換器32A~32Cへそれぞれ出力する。変換器32A~32Cは、上アーム用のスイッチング素子および下アーム用のスイッチング素子をそれぞれ有し、変換器制御装置31A~31Cからの点弧パルスに応じてこれらのスイッチング素子を交互にオンオフすることで、直流電力と交流電力を相互に変換する。変換器32A~32Cのスイッチング素子は、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などを用いて構成される。
【0019】
以上説明したように、直流送電システム100では、第1制御系列2Aと第2制御系列2Bにそれぞれ設けられた直流送電制御装置20A,20Bから出力されるパルス信号に応じて電力変換部3の動作が制御されることで、直流送電システム100による直流送電の制御が行われる。
【0020】
なお、本実施形態では、電力変換部3が変換器32A~32Cおよび変換器制御装置31A~31Cを有し、これら3つの変換器と変換器制御装置の組み合わせにより、電力変換部3において直流電力と交流電力の相互変換を行う例を説明したが、電力変換部3の構成はこれに限定されない。例えば、2つ以下または4つ以上の変換器や変換器制御装置を用いて電力変換部3を構成してもよいし、変換器と変換器制御装置を一対一に対応付けなくてもよい。また、制御部2が3つ以上の制御系列を有していてもよい。制御部2が冗長化された複数の制御系列を有し、これら複数の制御系列を用いて電力変換部3の動作を制御することで直流電力と交流電力の相互変換を行うことができれば、任意の構成による制御部2や電力変換部3を用いて、直流送電システム100を実現できる。
【0021】
次に、直流送電制御装置20A,20Bのハードウェア構成について、図2を参照して以下に説明する。ここで、直流送電制御装置20Aと直流送電制御装置20Bとは、冗長化された第1制御系列2Aと第2制御系列2Bにおいてそれぞれ用いられるものであり、共通のハードウェア構成および機能を有する。そのため以下では、直流送電制御装置20Aと直流送電制御装置20Bを共に「直流送電制御装置20」と表し、この直流送電制御装置20について説明を行うことがある。
【0022】
図2は、直流送電制御装置20のハードウェア構成例を示す図である。
【0023】
直流送電制御装置20は、PC(Personal Computer)やサーバなどの一般的な情報処理装置を用いて実現することができる。直流送電制御装置20は、図2に示されるように、プロセッサ101と、メモリ102と、外部記憶装置103と、通信インタフェース(通信IF)104と、入出力装置105と、それらの各部を接続する通信バス106と、を備える。
【0024】
プロセッサ101は、直流送電制御装置20の各部を制御する。プロセッサ101は、例えばCPU(Central Processing Unit)などを用いて構成され、メモリ102に記憶されているプログラムを実行することで、直流送電制御装置20の各機能を実現することができる。なお、プロセッサ101の代わりに、ロジック回路の組み合わせやFPGA(Field Programmable Gate Array)などを用いて、直流送電制御装置20が有する機能の一部または全部を実現してもよい。
【0025】
メモリ102は、例えば、RAM(Random Access Memory)などの半導体記憶装置であり、外部記憶装置103からロードされてプロセッサ101で実行されるプログラムや、必要なワークデータを一時的に記憶する。
【0026】
外部記憶装置103は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などの大容量の非一時的な磁気記憶装置や半導体記憶装置であり、プロセッサ101で実行されるプログラムや、プロセッサ101の処理に利用されるデータを記憶する。上述の通り、これらのプログラムやデータの一部またはすべては、予め外部記憶装置103に格納されていてもよいし、必要に応じて外部の非一時的な記憶媒体を備えた装置からネットワーク経由で、または可搬型の非一時的記憶媒体経由で導入されてもよい。
【0027】
通信IF104は、プロセッサ101の制御に応じて動作し、直流送電制御装置20と他の装置との間で、各種信号や情報を送受信するためのインタフェース処理を行う。
【0028】
入出力装置105は、直流送電システム100の管理を行うユーザからの入力を受け付けるとともに、ユーザへ提示する情報を出力するための装置であり、例えばマウス、キーボード、ディスプレイなどを用いて構成される。
【0029】
続いて、本実施形態の直流送電制御装置20が有する系列ロック機能および復旧機能について説明する。
【0030】
系列ロック機能とは、第1制御系列2Aまたは第2制御系列2Bの一方の制御系列において、例えば通信装置10A,10Bや直流送電制御装置20A,20Bの故障等を原因とする異常が生じた場合に、当該制御系列による電力変換部3の動作制御を禁止する機能のことである。いずれかの制御系列において系列ロック機能が有効化されると、当該制御系列の直流送電制御装置20(第1制御系列2Aの直流送電制御装置20A、または第2制御系列2Bの直流送電制御装置20B)は、パルス信号の出力を停止して当該制御系列による電力変換部3の動作制御を禁止する。このとき、系列ロック機能が有効化されていない方の健全な制御系列を用いて、電力変換部3の動作制御が継続される。なお、系列ロック機能が有効化されているときには、直流送電制御装置20A,20B間における系列間信号の送受信が停止される。
【0031】
復旧機能とは、第1制御系列2Aまたは第2制御系列2Bの一方の制御系列において発生した異常が解消されて正常に戻った場合に、当該制御系列の系列ロック状態を解除して第1制御系列2Aおよび第2制御系列2Bによる直流送電システム100の冗長制御系を復旧させる機能のことである。いずれかの制御系列において系列ロック機能が有効化された後、復旧機能により所定の復旧手順を行うことで、当該制御系列からのパルス信号の出力や、直流送電制御装置20A,20B間における系列間信号の送受信を再開し、第1制御系列2Aと第2制御系列2Bの両方を用いた電力変換部3の動作制御に戻ることができる。
【0032】
ここで、本実施形態の直流送電制御装置20における系列ロック機能および復旧機能の詳細を説明する前に、本実施形態の比較例として、従来の直流送電制御装置における系列ロック機能および復旧機能について、図3図5を参照して以下に説明する。なお以下では、図1の直流送電システム100における直流送電制御装置20A,20Bを、比較例による直流送電制御装置20Cにそれぞれ置き換えて、この直流送電制御装置20Cにおける系列ロック機能および復旧機能を説明する。
【0033】
図3は、比較例に係る直流送電制御装置20Cにおける系列ロック機能および復旧機能に関する機能ブロック図である。直流送電制御装置20Cは、出力ロック部21、系列ロック処理部22、復旧処理部23Cおよび系列ロック解除部24の各機能を有する。これらの機能は、例えば図2と同様のハードウェア構成を有する直流送電制御装置20Cにおいて、プロセッサ101が所定のプログラムを実行することにより実現される。
【0034】
出力ロック部21は、自制御系列(第1制御系列2Aまたは第2制御系列2B)において装置異常や電源断など何らかの異常が発生すると、その異常を検知し、異常が発生したことを表す異常信号を出力する。出力ロック部21から出力された異常信号は、直流送電制御装置20Cから操作指令装置1へ送信されるとともに、復旧処理部23Cに入力される。
【0035】
操作指令装置1は、OR回路141、AND回路142、RS-FF回路143およびAND回路144の各論理回路を含んで構成される制御信号出力部14を有する。
【0036】
直流送電制御装置20Cから送信された異常信号は、操作指令装置1において、制御信号出力部14内のOR回路141に入力される。OR回路141は、操作指令装置1から異常信号が入力されるか、または操作指令装置1に対するユーザの操作に応じて系列ロック指令11が入力されると、RS-FF回路143のセット端子への出力信号を“0”から“1”に変化させる。RS-FF回路143は、セット端子に入力される信号が“0”から“1”に変化すると、直流送電制御装置20Cに対して、同じ制御系列内の各装置の動作を停止させるための系列ロック信号を送信する。
【0037】
操作指令装置1から送信された系列ロック信号は、直流送電制御装置20Cにおいて系列ロック処理部22に入力される。系列ロック処理部22は、操作指令装置1から系列ロック信号が入力されると、直流送電制御装置20Cの動作を停止し、自制御系列を系列ロック状態に移行させる。系列ロック状態になった制御系列では、前述のように、直流送電制御装置20Cから電力変換部3へのパルス信号の出力が停止するとともに、他制御系列の直流送電制御装置20Cとの間で相互に行われる系列間信号の送受信が停止される。これにより、第1制御系列2Aと第2制御系列2Bのうち、異常が生じた制御系列が直流送電システム100から切り離され、正常な制御系列のみを用いて電力変換部3の動作制御が行われる。
【0038】
系列ロック状態になった制御系列において異常の原因を取り除いた後、復旧操作を開始する際に、ユーザは操作指令装置1を操作して、制御系列間の制御状態を照合するための系列間照合指令12を入力する。系列間照合指令12は、操作指令装置1において、制御信号出力部14内のAND回路144に入力される。AND回路144は、RS-FF回路143から系列ロック信号の送信中に系列間照合指令12が入力されると、直流送電制御装置20Cに対して系列間照合信号を送信する。
【0039】
操作指令装置1から送信された系列間照合信号は、直流送電制御装置20Cにおいて復旧処理部23Cに入力される。復旧処理部23Cは、デブロック判定部231C、系列間照合部232Cおよび系列復帰信号出力部233を有する。
【0040】
デブロック判定部231Cは、操作指令装置1から系列間照合信号が入力されると、これに応じて、自制御系列においてBPP完了条件が成立するか否かを確認し、その確認結果に基づいて自制御系列がデブロック中か否かを判定する。BPP完了条件とは、自制御系列の制御状態が、電力変換部3における変換器32A~32Cの上下アームが同時にオンとなる状態であるBPP状態(バイパスペア状態)に相当するか否かを確認するための条件である。なお、デブロック判定部231Cによるデブロック判定方法の詳細については後述する。
【0041】
系列間照合部232Cは、デブロック判定部231Cの判定結果を用いて、自制御系列の制御状態と他制御系列の制御状態とを照合し、その照合結果に基づいて自制御系列が系列復帰条件を満たすか否かを判定する。系列復帰条件とは、自制御系列の系列ロック状態を解除して冗長制御系への復帰を許可し、自制御系列の直流送電制御装置20Cによる電力変換部3の動作制御を再開することで、自制御系列を直流送電システム100の制御に復帰させることが可能なことを確認するための条件である。なお、系列間照合部232Cによる系列間の制御状態の照合方法の詳細については後述する。
【0042】
系列復帰信号出力部233は、系列間照合部232Cにより自制御系列が系列復帰条件を満たすと判定された場合に、自制御系列を冗長制御系に復帰させるための系列復帰信号を出力する。系列復帰信号出力部233から出力された系列復帰信号は、直流送電制御装置20Cから操作指令装置1へ送信され、操作指令装置1において、制御信号出力部14内のAND回路142に入力される。
【0043】
自制御系列の系列ロック状態を解除する場合、ユーザは操作指令装置1を操作して、系列ロック解除指令13を入力する。系列ロック解除指令13は、操作指令装置1において、制御信号出力部14内のAND回路142に入力される。AND回路142は、直流送電制御装置20Cから系列復帰信号の送信中に系列ロック解除指令13が入力されると、RS-FF回路143のリセット端子への出力信号を“0”から“1”に変化させる。RS-FF回路143は、リセット端子に入力される信号が“0”から“1”に変化すると、直流送電制御装置20Cに対して、系列ロック状態を解除するための系列ロック解除信号を送信する。
【0044】
操作指令装置1から送信された系列ロック解除信号は、直流送電制御装置20Cにおいて系列ロック解除部24に入力される。系列ロック解除部24は、操作指令装置1から系列ロック解除信号が入力されると、自制御系列の系列ロック状態を解除し、直流送電制御装置20Cの動作を再開させる。系列ロック状態が解除された制御系列では、前述の直流送電制御装置20の場合と同様に、直流送電制御装置20Cから電力変換部3へのパルス信号の出力と、他制御系列の直流送電制御装置20Cとの間で相互に行われる系列間信号の送受信とが再開される。これにより、第1制御系列2Aと第2制御系列2Bの両方による冗長制御系を用いた直流送電システム100の運用に戻ることができる。
【0045】
図4は、比較例に係るデブロック判定部231Cの詳細を示す図である。図4に示すデブロック判定部231Cは、判定条件41~45に基づいて、自制御系列がデブロック中であるか否かの判定を行う。
【0046】
判定条件41は、変換器32A~32Cが自制御系列に対してBPP完了条件を満たすことを条件とするものである。判定条件41の確認は、例えば変換器32A~32Cから直流送電制御装置20Cに対して初回起動時に出力されるBPP完了信号の有無により行われる。
【0047】
判定条件42は、判定条件41の代わりに、ユーザの強制指示の有無によってBPP完了条件を満たすことを条件とするものである。判定条件42の確認は、例えばユーザが直流送電制御装置20Cに対して所定の操作入力を行ったか否かにより行われる。
【0048】
判定条件43は、変換器32A~32Cが停止BPP状態であることを条件とするものである。判定条件43の確認は、例えば直流送電制御装置20Cから変換器32A~32Cに対する停止指令信号の出力の有無により行われる。
【0049】
判定条件44は、変換器32A~32Cが他制御系列に対してBPP完了条件を満たすことを条件とするものである。判定条件44の確認は、判定条件41と同様に、例えば変換器32A~32Cから直流送電制御装置20Cに対して初回起動時に出力されるBPP完了信号の有無により行われる。
【0050】
判定条件45は、判定条件44の代わりに、ユーザの強制指示の有無によってBPP完了条件を満たすことを条件とするものである。判定条件45の確認は、判定条件42と同様に、例えばユーザが直流送電制御装置20Cに対して所定の操作入力を行ったか否かにより行われる。
【0051】
デブロック判定部231Cにおいて、判定条件41,42のいずれか少なくとも一方を満たす場合、OR回路51の出力信号が“1”となる。また、判定条件44,45のいずれか少なくとも一方を満たす場合、OR回路52の出力信号が“1”となる。OR回路51の出力信号が“1”であるか、または判定条件43を満たす場合、OR回路53の出力信号が“1”となる。
【0052】
OR回路53の出力信号が“1”である場合、自端BPP完了条件が成立すると判断される。OR回路52の出力信号が“1”である場合、他端BPP完了条件が成立すると判断される。自端BPP完了条件が成立し、かつ他端BPP完了条件が成立する場合、AND回路54の出力信号が“1”となり、デブロック判定部231Cの判定結果60として「デブロック中」との判定結果が得られる。
【0053】
図4のデブロック判定部231Cにおいて、判定条件42,45を考慮しない場合、判定結果60が「デブロック中」となるためには、判定条件41,43のいずれかと、判定条件44とを満たす必要がある。しかしながら、これらの判定条件を満たすためには、変換器32A~32Cが初回起動後の運転開始前であるか、または停止状態である必要がある。したがって、前述のように異常が発生していない健全な制御系列を用いて電力変換部3の動作制御が行われている状態では、これらの判定条件が満たされないため、異常が発生した制御系列を復旧して直流送電システム100の制御に復帰させる際に、判定結果60を「デブロック中」とすることができない。そこで、比較例の直流送電制御装置20Cでは、ユーザの強制指示による判定条件42,45を用いることで、判定結果60を強制的に「デブロック中」とするようにしている。
【0054】
図5は、比較例に係る系列間照合部232Cの詳細を示す図である。図5に示す系列間照合部232Cは、判定条件61~68に基づいて、自制御系列の制御状態と他制御系列の制御状態とを照合することで、自制御系列において系列復帰条件が成立するか否かの判定を行う。
【0055】
判定条件61は、自制御系列がデブロック中であることを条件とするものである。判定条件61の確認は、デブロック判定部231Cにより得られる判定結果60を用いて行われる。
【0056】
判定条件62は、他制御系列がデブロック中であることを条件とするものである。判定条件62の確認は、例えば他制御系列の直流送電制御装置20Cから送信される系列間信号に基づいて行われる。
【0057】
判定条件63は、自制御系列の潮流方向が送電側であり、自制御系列によって電力変換部3が交流電力から直流電力への電力変換を行うように制御されていることを条件とするものである。判定条件63の確認は、例えば自制御系列の直流送電制御装置20Cの制御状態に基づいて行われる。
【0058】
判定条件64は、他制御系列の潮流方向が送電側であり、他制御系列によって電力変換部3が交流電力から直流電力への電力変換を行うように制御されていることを条件とするものである。判定条件64の確認は、例えば他制御系列の直流送電制御装置20Cから送信される系列間信号に基づいて行われる。
【0059】
判定条件65は、自制御系列と他制御系列の制御値が一致していることを条件とするものである。判定条件65の確認は、例えば自制御系列の直流送電制御装置20Cの制御状態や、他制御系列の直流送電制御装置20Cから送信される系列間信号に基づいて行われる。
【0060】
判定条件66は、自制御系列に異常が発生しており、直流送電制御装置20Cからの信号出力が停止されていることを条件とするものである。判定条件66の確認は、例えば出力ロック部21の動作状態に基づいて行われる。
【0061】
判定条件67は、自制御系列に対してロック指令が行われていることを条件とするものである。判定条件67の確認は、例えば操作指令装置1から自制御系列に対して出力される系列ロック信号に基づいて行われる。
【0062】
判定条件68は、自制御系列に対して系列間照合指令が行われていることを条件とするものである。判定条件68の確認は、例えば操作指令装置1から自制御系列に対して出力される系列間照合信号に基づいて行われる。
【0063】
系列間照合部232Cにおいて、判定条件61,62の判定結果が一致する場合、XOR回路71の出力信号が“0”となり、不一致の場合、すなわち、いずれか一方の判定条件のみを満たす場合、XOR回路71の出力信号が“1”となる。また、判定条件63,64の判定結果が一致する場合、XOR回路72の出力信号が“0”となり、不一致の場合、すなわち、いずれか一方の判定条件のみを満たす場合、XOR回路72の出力信号が“1”となる。XOR回路71,72両方の出力信号が“0”である場合、OR回路73の出力信号が“0”となり、いずれか少なくとも一方の出力信号が“1”である場合、OR回路73の出力信号が“1”となる。
【0064】
NOT回路74は、OR回路73の出力信号を反転して出力する。その結果、判定条件61,62の判定結果が一致し、かつ、判定条件63,64の判定結果が一致する場合、NOT回路74の出力信号が“1”となり、それ以外の場合、NOT回路74の出力信号が“0”となる。
【0065】
NOT回路74の出力信号が“1”であり、かつ、判定条件65,68の判定条件をそれぞれ満たす場合、AND回路75の出力信号が“1”となる。また、判定条件66の判定条件を満たさず、かつ、判定条件67,68の判定条件をそれぞれ満たす場合、AND回路76の出力信号が“1”となる。AND回路75,76の出力信号は、タイマ77,78によりそれぞれ所定のタイマ時間だけ遅延されてAND回路79に入力される。AND回路75,76の出力信号が両方とも“1”である場合、AND回路79の出力信号が“1”となり、系列間照合部232Cの判定結果80として「系列復帰条件成立」との判定結果が得られる。その結果、系列復帰信号出力部233から系列復帰信号が出力され、操作指令装置1へ送信される。
【0066】
なお、前述のようにデブロック判定部231Cにおいて、異常が発生していない健全な制御系列による運転状態では、ユーザの強制指示が行われない限り、「デブロック中」との判定結果を得ることができない。そのため、系列間照合部232Cでは、判定条件61を満たすことができずに、「系列復帰条件成立」との判定結果を得ることができない。このように、比較例による直流送電制御装置20Cでは、異常が発生した制御系列の直流送電制御装置20Cを一旦停止してシステムから切り離してしまうと、異常を除去した後においてもユーザの強制指示なしでは冗長制御系を復旧できないため、ユーザが強制的に制御系列間の合わせ込みを行う必要があった。
【0067】
そこで本実施形態の直流送電制御装置20では、系列ロック機能および復旧機能において、ユーザの強制指示なしでも冗長制御系を自動的に復旧できるようにしている。以下では、図6図8を参照して、本実施形態の直流送電制御装置20における系列ロック機能および復旧機能を説明する。なお図6図8において、比較例で説明した図3図5と同一の部分については、共通の符号をそれぞれ付している。以下では、この図3図5と共通の符号が付された部分については、特に必要がない限り説明を省略する。
【0068】
図6は、本発明の一実施形態に係る直流送電制御装置20における系列ロック機能および復旧機能に関する機能ブロック図である。本実施形態の直流送電制御装置20は、図3で説明した比較例の直流送電制御装置20Cと比べて、復旧処理部23Cの代わりに復旧処理部23を有している以外は同様である。なお、図3に示す各機能は、例えばプロセッサ101が所定のプログラムを実行することにより実現される。
【0069】
復旧処理部23は、デブロック判定部231、系列間照合部232および系列復帰信号出力部233を有する。これらは、図3の復旧処理部23Cにおけるデブロック判定部231C、系列間照合部232Cおよび系列復帰信号出力部233とそれぞれ同様の機能を有する。ただし、デブロック判定部231によるデブロック判定方法と、系列間照合部232による系列間の制御状態の照合方法とが、比較例のものとはそれぞれ異なる。
【0070】
図7は、本発明の一実施形態に係るデブロック判定部231の詳細を示す図である。図7に示すデブロック判定部231では、図4で説明した判定条件41,43および44に加えて、さらに系列間照合部232から出力される系列間合わせ込み信号85が判定条件に設けられている。デブロック判定部231は、これらの判定条件に基づいて、自制御系列がデブロック中であるか否かの判定を行う。なお、系列間照合部232における系列間合わせ込み信号85の出力条件については後述する。一方、図4に示した比較例のデブロック判定部321Cとは異なり、ユーザの強制指示による判定条件42,45はデブロック判定部231に含まれていない。
【0071】
デブロック判定部231において、判定条件41,43のいずれか少なくとも一方を満たす場合、OR回路53の出力信号が“1”となる。OR回路53の出力信号が“1”であるか、または系列間合わせ込み信号85が入力されている場合、OR回路55の出力信号が“1”となる。また、判定条件44を満たすか、系列間合わせ込み信号85が入力されている場合、OR回路56の出力信号が“1”となる。
【0072】
OR回路55の出力信号が“1”である場合、自端BPP完了条件が成立すると判断される。OR回路56の出力信号が“1”である場合、他端BPP完了条件が成立すると判断される。自端BPP完了条件が成立し、かつ他端BPP完了条件が成立する場合、AND回路54の出力信号が“1”となり、デブロック判定部231の判定結果60として「デブロック中」との判定結果が得られる。
【0073】
本実施形態の直流送電制御装置20では、ユーザの強制指示による判定条件42,45の代わりに、系列間照合部232から出力される系列間合わせ込み信号85を判定条件に用いている。これにより、ユーザが強制的に制御系列間の合わせ込みを行わなくても、系列間照合部232から系列間合わせ込み信号85が出力されていれば、デブロック判定部231において判定結果60を「デブロック中」とするようにしている。
【0074】
図8は、本発明の一実施形態に係る系列間照合部232の詳細を示す図である。図8に示す系列間照合部232は、図5で説明した構成に加えて、さらに系列間合わせ込み信号85を出力するために、NOT回路81、タイマ82、ワンショット回路83およびAND回路84を有している。
【0075】
系列間照合部232において、判定条件61の判定結果は、NOT回路81により反転されてAND回路84に入力される。また、AND回路76の出力信号は、タイマ82により所定のタイマ時間だけ遅延されてワンショット回路83に入力される。ワンショット回路83は、AND回路76の出力信号が“1”になると、所定のパルス信号を1回だけAND回路84に出力する。
【0076】
ワンショット回路83からパルス信号が出力されているときに、判定条件61を満たさず、かつ判定条件62を満たす場合、AND回路84の出力信号が“1”となる。その結果、系列復帰信号出力部233から系列間合わせ込み信号85が出力され、デブロック判定部231に入力される。この系列間合わせ込み信号85を用いて、デブロック判定部231の判定結果60を「デブロック中」とすることができる。したがって、ユーザが強制的に制御系列間の合わせ込みを行わなくても、冗長制御系を自動的に復旧することが可能となる。
【0077】
以上説明した本発明の一実施形態によれば、以下の作用効果が得られる。
【0078】
(1)直流送電制御装置20は、直流送電システム100が有する第1制御系列2Aおよび第2制御系列2Bにそれぞれ設けられ、操作指令装置1から入力される制御指令に応じて直流送電システム100の制御を行う。直流送電制御装置20は、自制御系列に異常が発生したことを表す異常信号を操作指令装置1へ出力する出力ロック部21と、異常信号に応じて操作指令装置1から送信される系列ロック信号を受けて、自制御系列を系列ロック状態に移行させる系列ロック処理部22と、操作指令装置1から送信される系列間照合信号を受けて、自制御系列が異常から復旧したか否かの判断を実施し、その判断の結果に基づいて自制御系列を直流送電システム100の制御に復帰させるための系列復帰信号を操作指令装置1へ出力する復旧処理部23と、系列復帰信号に応じて操作指令装置1から送信される系列ロック解除信号を受けて、系列ロック状態を解除する系列ロック解除部24とを備える。復旧処理部23は、自制御系列がデブロック中か否かを判定するデブロック判定部231と、デブロック判定部231の判定結果を用いて、自制御系列の制御状態と他制御系列の制御状態との照合を実施し、その照合の結果に基づいて自制御系列が系列復帰条件を満たすか否かを判定する系列間照合部232と、系列間照合部232により系列復帰条件を満たすと判定された場合に系列復帰信号を出力する系列復帰信号出力部233とを有する。系列間照合部232は、自制御系列の制御状態と他制御系列の制御状態との合わせ込みを行うための系列間合わせ込み信号85を出力し、デブロック判定部231は、系列間合わせ込み信号85を用いて自制御系列がデブロック中か否かを判定する。このようにしたので、直流送電システム100の復旧処理を容易かつ確実に行うことができる。
【0079】
(2)系列間照合部232は、自制御系列において直流送電制御装置20の動作が正常であり、かつ、操作指令装置1から系列ロック信号および系列間照合信号が入力されているという第1の条件(判定条件66:NG、判定条件67,68:OK)と、自制御系列がデブロック中ではないという第2の条件(判定条件61:NG)と、他制御系列がデブロック中であるという第3の条件(判定条件62:OK)と、を満たす場合に、系列間合わせ込み信号85を出力する。このようにしたので、自制御系列と他制御系列の制御状態が不一致の状況で系列間照合を行う場合に、系列間合わせ込み信号85を確実に出力することができる。
【0080】
(3)系列間照合部232は、第1の条件が満たされると所定のパルス信号を1回出力するワンショット回路83を有し、ワンショット回路83から出力されるパルス信号を用いて系列間合わせ込み信号85を出力する。このようにしたので、必要なタイミングでのみ系列間照合部232から系列間合わせ込み信号85を出力して、デブロック判定部231における誤判定の発生を避けることができる。
【0081】
(4)デブロック判定部231は、直流電力と交流電力とを相互に変換する変換器32A~32CがBPP状態であることを示すBPP完了信号が入力されるか(判定条件41,44:OK)、または系列間照合部232から系列間合わせ込み信号85が出力された場合に、自制御系列がデブロック中であると判定する(判定結果60:「デブロック中」)。このようにしたので、直流送電システム100において、健全な制御系列による運転状態の継続中に、ユーザが強制的に制御系列間の合わせ込みを行わなくても、自制御系列がデブロック中であるとの判定結果を得ることができる。その結果、自制御系列を直流送電システム100の制御に復帰させ、冗長制御系の復旧を図ることが可能となる。
【0082】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。たとえば、上記の実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、説明した全ての構成を備えるものに必ずしも限定されるものではない。また上記実施形態の構成の一部について、他の構成の追加や削除、置換をすることが可能である。
【0083】
また上記の各構成、機能部、処理部、処理手段等は、それらの一部または全部を、たとえば、集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリやハードディスク、SSD等の記録装置、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【符号の説明】
【0084】
1:操作指令装置、2:制御部、2A:第1制御系列、2B:第2制御系列、3:電力変換部、10A,10B:通信装置、20,20A,20B:直流送電制御装置、21:出力ロック部、22:系列ロック処理部、23:復旧処理部、24:系列ロック解除部、31A,31B,31C:変換器制御装置、32A,32B,32C:変換器、100:直流送電システム、231:デブロック判定部、232:系列間照合部、233:系列復帰信号出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8