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特許7684301生分解性シースを用いた腔内エンドプロステーシスを製造するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-19
(45)【発行日】2025-05-27
(54)【発明の名称】生分解性シースを用いた腔内エンドプロステーシスを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 31/06 20060101AFI20250520BHJP
   A61L 31/14 20060101ALI20250520BHJP
   A61L 31/02 20060101ALI20250520BHJP
   A61F 2/07 20130101ALI20250520BHJP
【FI】
A61L31/06
A61L31/14 500
A61L31/02
A61F2/07
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022533244
(86)(22)【出願日】2020-11-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-06
(86)【国際出願番号】 EP2020082351
(87)【国際公開番号】W WO2021110407
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2023-11-16
(31)【優先権主張番号】102019132938.8
(32)【優先日】2019-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】514185002
【氏名又は名称】コルトロニック ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コーゼ、シュテファニー
(72)【発明者】
【氏名】レバーン、カースティン
(72)【発明者】
【氏名】グラボウ、ニールス
(72)【発明者】
【氏名】バイアー、ダリボール
(72)【発明者】
【氏名】グロスマン、スヴェン
(72)【発明者】
【氏名】シュミッツ、クラウス - ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ミューラー、ハインツ
(72)【発明者】
【氏名】モンマ、カルステン
【審査官】高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-509258(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2010-1198464(KR,A)
【文献】特開2011-078790(JP,A)
【文献】特開平11-267193(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 31/00-31/18
A61F 2/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腔内エンドプロステーシス(1)を製造するための方法であって、前記エンドプロステーシス(1)は、支持構造体(2)と、前記支持構造体(2)に配置されたシース(3)とを含み、
該方法は、以下を含む:
前記支持構造体(2)を与えること、
前記支持構造体(2)上にポリマー繊維(30)から前記シース(3)を形成すること、ただし電界紡糸によってノズル(101)からポリマー溶液(10)が分配され、前記ポリマー溶液(10)は少なくとも1種の生分解性ポリマーを含み、以下を特徴とする方法:
該少なくとも1種の生分解性ポリマーはポリ-L-ラクチドであり、前記ポリマー溶液(10)は添加剤として、1,3-ジオキサン-2-オンをさらに含み、前記ポリマー溶液(10)に溶解した物質のうちの1,3-ジオキサン-2-オンの割合は、ポリマー溶液(10)に溶解した物質の総質量に基づいて、5重量%~25重量%の範囲の割合である。
【請求項2】
溶解した物質の残りの部分が、ポリ-L-ラクチドにより形成されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
腔内エンドプロステーシス(1)がステントであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ポリマー溶液(10)に溶解した物質が全体で1重量%~10重量%の濃度を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ポリマー溶液(10)が溶媒を含み、溶媒が、クロロホルム(CHCl)、トリフルオロエタノール(TFE)、クロロホルム及びトリフルオロエタノールを含む混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
クロロホルム及びトリフルオロエタノールが1:4の混合比で存在することを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
支持構造体(2)が永久的な支持構造体であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
支持構造体(2)が、以下の材料のうちの1種からなるか、又は以下の材料:Co-Cr系合金、Ni系合金、耐食性ステンレス鋼、Ni-Ti合金、Ti系合金、Nb系合金、Ta系合金のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
支持構造体(2)が生分解性金属支持構造体であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
支持構造体(2)が、以下の材料のうちの1種を含むか、又は以下の材料のうちの1種から形成されることを特徴とする、請求項9に記載の方法:Mg合金;Mg-Al-Zn合金;Mg-Al-Mn合金;Mg-Al-Zn-Mn合金;Mg-RE合金(REは希土類グループから選択される);Mg-Y-RE合金(REは希土類グループから選択される);Mg-RE-Zn合金(REは希土類グループから選択される);Mg-Al-Y合金;Mg-Al-RE合金(REは希土類グループから選択される);Mg-Zn-Zr合金、Mg-Ca-Zn合金;Al含有量が0.01重量%~12重量%、及びCa含有量が0.01重量%~5重量%のMg-Al合金;Mg-Y-RE合金(REはYとは異なる他の希土類を表し、Y含有量は0.1重量%~5重量%、Nd含有量は0.01重量%~5重量%、Gd含有量は0.01重量%~3重量%、Dy含有量は0.01重量%~3重量%であり、前記合金は、場合により0.1重量%~1重量%のZr及び他の希土類を含む)。
【請求項11】
支持構造体(2)が生分解性ポリマー支持構造体であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
支持構造体(2)が、以下の材料のうちの1種を含むか、又は以下の材料から形成されることを特徴とする、請求項11に記載の方法:ポリ-L-ラクチド;ポリ-D,L-ラクチド;ポリ-L-ラクチド-co-D,L-ラクチド;ポリグリコリド;ポリ酸無水物;ポリヒドロキシブチラート;ポリヒドロキシバレラート;ポリ-ε-カプロラクトン;ポリジオキサノン;ポリ(ラクチド-co-グリコリド);ポリ(ラクチド-co-カプロラクトン);ポリ(エチレングリコール-co-カプロラクトン);ポリ(グリコリド-co-カプロラクトン);ポリ(ヒドロキシブチラート-co-バレラート);ポリトリメチレンカーボナート系ポリマー;ポリプロピレンスクシナート;ポリホスファゼン;5重量%~85重量%のラクチド含有量を有するポリ-D,L-ラクチド-co-グリコリドのうちの1種。
【請求項13】
ポリマー溶液(10)が、ノズル(101)から支持構造体(2)上に、電界紡糸中に繊維形態で、0.5mL/h~0.9mL/hの範囲の前記ポリマー溶液(10)の体積流量で分配され、前記ノズル(101)が、70mm~110mmの範囲で前記支持構造体(2)からの距離(A)を有し、1kV~20kVの電圧が、前記ノズル(2)と前記支持構造体(2)が配置されるコレクタ(200)との間に印加されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
電界紡糸の後、シース(3)が所定の温度で所定の時間にわたってテンパリングされることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
電界紡糸の後、シース(3)が所定の温度で所定の時間にわたってテンパリングされ、前記時間が10時間~15時間の範囲であり、前記温度が70℃~90℃の範囲である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
以下を含む腔内エンドプロステーシス(1)
- 支持構造体(2)、及び
- 前記支持構造体(2)上の、電界紡糸ポリマー繊維(30)からのシース(3)、
ただし、前記ポリマー繊維(30)は少なくとも1種の生分解性ポリマーを含み、
該少なくとも1種の生分解性ポリマーはポリ-L-ラクチドであり、前記ポリマー繊維(30)は添加剤として、1,3-ジオキサン-2-オンをさらに含み、前記ポリマー繊維(30)中の物質のうちの1,3-ジオキサン-2-オンの割合は、前記物質の総質量に基づいて、5重量%~25重量%の範囲の割合であることを特徴とする
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、とくにステントの形態の腔内エンドプロステーシスを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
過去20年にわたって、介入性の血管(冠血管及び末梢血管)手術の数は着実に増加している。同時に、一方ではますます複雑でアクセス困難な病変が処置されており、他方では高齢患者及び血管物質の乏しい患者(例えば、硬化して脆弱な血管)の数が増加している。このことは、使用されるカテーテル及びガイドワイヤによって、手術中に血管を損傷する患者の数が増加することに繋がっている。
【0003】
処置された血管の穿孔又は破裂が起こり得る。穿孔又は破裂は、一般に、とくに冠動脈においては非常に重篤な生命を脅かす合併症であり、直ちに処置されなければならない。
【0004】
そのような処置のために、例えば冠動脈領域において、様々ないわゆるステントグラフトが利用可能である。現在利用可能な冠動脈インプラントは、金属(通常、Co-Cr合金)製の永久的なメインボディと、血管壁の損傷を封止する、好ましくはPTFE又はポリウレタン製の永久的なポリマーシースとからなる。このシースは、その下又は上に配置されたステントに取り付けられた単純なポリマーチューブ又はファブリックであり得る。
【0005】
これらのインプラントの1つの欠点は、それらは血管壁が十分に治癒して(約2~3日間)、血液が穿孔又は破裂した領域を通って漏れ出るのを防ぐ(止血)までしか必要ではなく、その後、もはや機能を果たさないことである。
【0006】
しかしながら、永久的なポリマーシース(ポリマーチューブ又は紡糸カバー)は、とくに、血管の内側の内皮化を非常にゆっくりかつ不完全にしか可能にせず、それによって血栓症のリスク又は血管閉塞のリスクを全体的に大きく増加させるので、その後大きな問題を引き起こす。
【0007】
加えて、通常は非常に硬いインプラントによって、正常な血管蠕動が妨げられる。主な問題又は合併症は、上記の理由のために永久的なポリマーシースによって引き起こされる。その下の永久的な支持構造体(例えばステント)により生じる問題は、はるかに小さい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
かかる事実を基にした本発明の目的は、上述の問題の1つ又は複数に関して改善された腔内エンドプロステーシスを製造するための改善された方法を特定することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、請求項1の特徴を有する方法によって達成される。本発明のさらなる態様は、本方法によって製造される腔内エンドプロステーシスに関する。
【0010】
本発明のこれらの態様の有利な実施形態は、対応する従属請求項で特定され、以下で説明される。
【0011】
請求項1に記載されるように、とくにステントの形態の腔内エンドプロステーシスを製
造するための方法が開示され、エンドプロステーシスは、支持構造体と、支持構造体に配置されたシースとを備え、方法は、
支持構造体を準備するステップと、
少なくとも1種の生分解性ポリマーを含むポリマー溶液を電界紡糸することによって、支持構造体上にシースを形成するステップと
を含む。
【0012】
好ましくは、シースは、少なくとも48時間、移植部位に広がる血圧に対して血管穿孔又は破裂を封止することができるように強く紡糸される。支持構造体(とくにステント)及びそれらの上に配置されたシースは、現在、2つの基本的なタイプ、すなわち永久的もしくは耐久性のある支持構造体又はシース及び生分解性の支持構造体又はシースに分けられる。永久的な支持構造体又はシースは、それらが無期限にヒト又は動物の体内の血管内又は移植部位に留まることができるように設計される。一方、生分解性支持構造体又はシースは、所定の期間にわたり血管又は体内で分解される。好ましくは、生分解性支持構造体は、血管の外傷を受けた組織が治癒した後にのみ分解され、支持構造体はもはや血管管腔又は体内に留まる必要はない。さらに、生分解性シースは、もはや封止効果をもたらす必要がない場合にのみ分解されることが好ましい。
【0013】
本発明による方法のある実施形態によれば、少なくとも1種の生分解性ポリマーは、ポリラクチド;ポリ-L-ラクチド;ポリ-D,L-ラクチド;ポリ-L-ラクチド-co-D,L-ラクチド;ポリグリコリド;ポリ酸無水物;ポリヒドロキシブチラート;ポリヒドロキシバレラート;ポリ-ε-カプロラクトン;ポリジオキサノン;ポリ(ラクチド-co-グリコリド);ポリ(ラクチド-co-カプロラクトン);ポリ(エチレングリコール-co-カプロラクトン);ポリ(グリコリド-co-カプロラクトン);ポリ(ヒドロキシブチラート-co-バレラート);ポリトリメチレンカーボナート系ポリマー;ポリプロピレンスクシナート;ポリホスファゼンからなる群から選択される。
【0014】
本方法の一実施形態によれば、少なくとも1種の生分解性ポリマーは、上記の群のポリマーの2種以上の異なるモノマーを含むコポリマーであってもよい。
【0015】
さらに、少なくとも1種の生分解性ポリマーは、本方法の実施形態に記載の混合物又はブレンド中に存在してもよく、混合物は、上記の群の2種以上の異なるポリマーを含む。ブレンドは、ここでは、2種以上の異なるポリマーの巨視的に均質な混合物であると理解される。
【0016】
好ましくは、少なくとも1種の生分解性ポリマーは、ポリ-L-ラクチド(例えば、Evonik製のResomer(登録商標)L210)又はポリ-D,L-ラクチドである。
【0017】
さらに、本発明による方法の好ましい実施形態によれば、ポリマーは、5重量%~85重量%のラクチド含有量、好ましくは50重量%と85重量%との間のラクチド含有量を有するポリ-D,L-ラクチド-co-グリコリドである。
【0018】
加えて、本方法のある実施形態によれば、ポリマー溶液中の少なくとも1種の生分解性ポリマーは、好ましくは以下の物質のうちの1つである:ポリヒドロキシブチラート;ヒドロキシブチラートを含むコポリマー;ポリバレラート;バレラートを含むコポリマー。
【0019】
さらに、本発明による方法のある実施形態によれば、ポリマー溶液は、少なくとも1種の添加剤を含み、少なくとも1種の添加剤は、ラクトン、クエン酸エステル、グリセロール又はそれらの誘導体、ならびにそれらの混合物の群から選択される。好ましくは、少なくとも1種の添加剤は、1,3-ジオキサン-2-オン又は1,4-ジオキサン-2-オン、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、グリセロールトリアセタート、n-ブチリルトリ-n-ヘキシルシトラート、ポリエチレングリコール、L-αホスファチジルコリンからなる群から選択される。
【0020】
一般に、添加剤(複数可)は、ポリマー繊維の機械的特性(延性)に実質的に影響を与えて、必要な破断時伸度を確実にする。ここで、添加剤1,3-ジオキサン-2-オン、クエン酸トリエチル、グリセロールトリアセタート、n-ブチリルトリ-n-ヘキシルシトラート及びポリエチレングリコールは、いずれも可塑剤として作用する。L-α-ホスファチジルコリンを使用して表面張力を低下させて、電界紡糸プロセス及びカバーの親水性を改善することができる。
【0021】
腔内エンドプロステーシスは、それらが体内の移植部位に挿入される圧縮状態をとることができる。移植部位では、腔内エンドプロステーシスは拡張され、よって移植部位に留置される。したがって、ポリマー繊維のシースは、とくに透過性に関して、シースの特性を損なうことなく圧縮及び拡張に耐えることができなければならない。上記の添加剤は、シースの繊維の機械的特性を有益な方法で改善する。ポリマー繊維のシースの機械的特性は、とくに透過性に関して、圧縮及び拡張の場合でも維持される。繊維が圧縮又は拡張中に損傷を受けにくいように、破断時伸度が増加するか、又は表面張力が低下する。
【0022】
ポリマー溶液の成分として存在する場合、ポリマー溶液中の少なくとも1種の添加剤(L-α-ホスファチジルコリンを除く)は、溶解した物質の総質量に基づいて、好ましくは5重量%~25重量%、好ましくは10重量%~20重量%、とくに好ましくは10重量%~15重量%の範囲の濃度を有する。
【0023】
少なくとも1種の添加剤がL-α-ホスファチジルコリンである場合、それは実施形態に記載のポリマー溶液中に、好ましくは1重量%以下の濃度を有する。
【0024】
本発明による方法の好ましい実施形態によれば、以下が提供される:少なくとも1種の生分解性ポリマーはポリ-L-ラクチド(CAS番号26161-42-2)であり、ポリマー溶液は添加剤として1,3-ジオキサン-2-オンをさらに含有し、ここで、1,3-ジオキサン-2-オンは、ポリマー溶液中に溶解した物質のうち、5重量%~25重量%、好ましくは10重量%~20重量%、とくに好ましくは10重量%~15重量%の範囲、好ましくは12.5重量%の割合を占め、溶解した物質の残りの割合は、好ましくはポリ-L-ラクチドによって形成される。ポリマー溶液に溶解した、又はそうでなければ存在する他の物質は、薬物及び/又は放射線不透過性物質であってもよい。
【0025】
さらに、本方法のある実施形態によれば、ポリマー溶液は溶媒を含み、溶媒は、クロロホルム(CHCl)、トリフルオロエタノール(TFE)、クロロホルム及びトリフルオロエタノール(TFE)を含む混合物からなる群から選択され、クロロホルム及びトリフルオロエタノールは、好ましくは1:4の混合比(クロロホルム:トリフルオロエタノール)で存在する。
【0026】
さらに、本方法のある実施形態に従って、以下が提供される:ポリマー溶液が1重量%~10重量%、好ましくは2重量%~8重量%、とくに好ましくは3重量%~5重量%の範囲、好ましくは4重量%の濃度のポリマーを有する(使用した溶媒(複数可)の質量に基づく)。
【0027】
すべての添加剤、薬物及び/又は放射線不透過性物質が添加され(ポリマー+添加剤(複数可)=溶解した物質の総質量100%)、百分率は溶解した物質の総質量に対して、0と20%との間であり得る。溶液中のポリマーの量は一定のままである。
【0028】
腔内エンドプロステーシスは、一実施形態に記載のステント、とくに冠動脈ステント又は末梢ステントである。
【0029】
支持構造体は、とくにステントの場合、自己拡張型支持構造体又はバルーン拡張可能型支持構造体であり得る。バルーン拡張可能型支持構造体は、とくに、例えばレーザで切断されたチューブから製造されてもよい。自己拡張型支持構造体の場合、レーザ切断によってチューブから切断されてもよく、又は例えば、適切なワイヤから形成されてもよい。
【0030】
支持構造体は、好ましくは格子状であり、支持構造体の開口部を画定する相互接続されたバーによって形成される。バー又は開口部は、例えばレーザ切断によってチューブから形成されてもよい。ワイヤ製の支持構造体は、グリッド状構造を有することもできる。
【0031】
さらに、開口部を画定する相互接続されたバーの支持構造体は、非金属材料(例えば、ポリマーから、以下も参照)から形成することができる。
【0032】
さらに、本方法のある実施形態によれば、支持構造体は永久的な支持構造体である。
【0033】
そのような永久的な支持構造体は、例えば、以下の材料のうちの1種からなり得るか、又は以下の材料:Co-Cr系合金、Ni系合金、耐食性ステンレス鋼、Ni-Ti合金(NiとTiとの原子比はほぼ等しい、例えばニチノール)、場合によりさらに5%未満の1種又は複数の元素Co、Fe、Mn、Ti系合金、Nb系合金、Ta系合金のうちの少なくとも1種を含み得る。
【0034】
さらに、本方法の別の実施形態によれば、支持構造体は生分解性金属支持構造体である。
【0035】
そのような生分解性金属支持構造体は、例えば、以下の材料のうちの1種からなり得るか、又は以下の材料:Mg合金;Mg-Al-Zn合金;Mg-Al-Mn合金;Mg-Al-Zn-Mn合金;Mg-RE合金(REは希土類グループから選択される);Mg-Y-RE合金(REは希土類グループから選択される);Mg-RE-Zn合金(REは希土類グループから選択される);Mg-Al-Y合金;Mg-Al-RE合金(REは希土類グループから選択される);Mg-Zn-Zr合金、Mg-Ca-Zn合金;Al含有量が3重量%~11重量%のMg-Al合金;Zn含有量が0.01重量%~12重量%、好ましくは0.1重量%~5重量%、及びCa含有量が0.01重量%~5重量%、好ましくは0.1重量%~1重量%のMg-Ca-Zn合金;Mg-Y-RE-合金(REは(Yではない)他の希土類を表し、Y含有量は0.1重量%~5重量%、Nd含有量は0.01重量%~5重量%、Gd含有量は0.01重量%~3重量%、Dy含有量は0.01重量%~3重量%であり、合金は、場合により0.1重量%~1重量%のZr及び他の希土類を含む)のうちの少なくとも1種を含み得る。
【0036】
本発明による方法の別の実施形態によれば、支持構造体は生分解性ポリマー支持構造体である。ここで、本発明により提供される生分解性シースを備えたバルーン拡張可能型生分解性ポリマーステントスキャフォールド又は支持構造体は、DE102016117398に記載されているステント設計を有してもよい。
【0037】
さらに、本方法の一実施形態によれば、前記ポリマー支持構造体は、以下の材料のうちの1種を含むか、又は以下の材料:生分解性ポリマー;ポリ-L-ラクチド;ポリ-D,L-ラクチド;ポリ-L-ラクチド-co-D,L-ラクチド;ポリグリコリド;ポリ酸無水物;ポリヒドロキシブチラート;ポリヒドロキシバレラート;ポリ-ε-カプロラクトン;ポリジオキサノン;ポリ(ラクチド-co-グリコリド);ポリ(ラクチド-co-カプロラクトン);ポリ(エチレングリコール-co-カプロラクトン);ポリ(グリコリド-co-カプロラクトン);ポリ(ヒドロキシブチラート-co-バレラート);ポリトリメチレンカーボナート系ポリマー;ポリプロピレンスクシナート;ポリホスファゼン;5重量%~85重量%、好ましくは50重量%~85重量%のラクチド含有量を有するポリ-D,L-ラクチド-co-グリコリドのうちの1種からなるものが提供される。
【0038】
本方法のある実施形態によれば、支持構造体が形成される材料又は支持構造体が含む材料はまた、上記の材料群のポリマーのうちの2種以上の異なるモノマーを含むコポリマーであってもよい。
【0039】
さらに、支持構造体が形成される材料又は支持構造体が含む材料は、ある実施形態によれば、上記のポリマーのコポリマー又はブレンドであってもよく、ブレンドは、上記の支持構造体材料群のうちの2種以上の異なるポリマーを含む。
【0040】
さらに、支持構造体はまた、以下の材料のうちの1種を含んでもよいか、又は以下の材料:ヒドロキシブチラートを含むコポリマー;バレラートを含むコポリマーのうちの1種から形成されてもよい。
【0041】
さらに、本方法のある実施形態によれば、電界紡糸中に、ポリマー溶液がノズルから繊維形態の支持構造体に適用されることが提供される。
【0042】
ポリマー溶液は、本方法の実施形態に従って、好ましくは0.1ml/h[ミリリットル/時]~2ml/h、好ましくは0.5ml/h~0.9ml/hの範囲、好ましくは0.7ml/hの体積流量でノズルから分配される。
【0043】
本方法のある実施形態によれば、ノズルは、好ましくは、50mm~200mm、好ましくは70mm~110mmの範囲、好ましくは90mmの支持構造体までの距離を有する。
【0044】
さらに、本方法のある実施形態によれば、好ましくは、ノズル(エミッタ)と、支持構造体が配置されるコレクタ(マンドレル)との間に、少なくとも1kV、好ましくは1kV~20kV、とくに好ましくは2kV~10kVの範囲、好ましくは4kVの電圧が印加されることが提供される。
【0045】
電界紡糸中に腔内エンドプロステーシスをマンドレル上に配置し、個々の接続されたバーからなる支持構造体の実際の端部を越えてシースを織ることが好都合である。ポリマー繊維から紡糸されたシースの長手方向の範囲は、このように支持構造体の長手方向の範囲(長さ)を超える。過度に長いポリマー繊維シースを有するエンドプロステーシスを、次いで適切なマンドレルに移し、レーザによってトリミングする。そうすることで、支持構造体の外側リングセグメントの幅の最大半分は、もはやポリマー繊維シースによってカバーされない。ポリマーシースのこのようなレーザトリミングは、個々の繊維又は繊維フラップのエンドプロステーシスからの外れを防止する。
【0046】
さらに、本方法の実施形態に従って、電界紡糸シースは、電界紡糸後の所定の時間にわたって所定の温度に曝され、その時間は、好ましくは10時間~15時間の範囲であり、その時間は、好ましくは13.5時間であり、その温度は、好ましくは70℃~90℃の範囲、好ましくは80℃であることが提供される。
【0047】
本方法の一実施形態によれば、ポリマー溶液は、電界紡糸シースが少なくとも1種の薬物を含み、少なくとも1種の薬物を放出することができるように、少なくとも1種の薬物を含有してもよい。
【0048】
本方法の一実施形態によれば、支持構造体、とくに支持構造体のコーティングは、薬物が支持構造体/コーティングから放出され得るように、薬物を含むか又は含有してもよい。
【0049】
ポリマーシース又は支持構造体に組み込まれるそのような薬物は、好ましくは7日間~4年間にわたってポリマー又は担体材料(例えば、支持構造体のコーティング)から溶出することができ、治療のための支持効果を達成するのに役立つ。そのような効果は、とりわけ、
-とくに生体再吸収性材料の分解中に起こり得る炎症プロセスの抑制、
-血管損傷の結果として起こり得る増殖プロセスの抑制、
-内皮化のための支持、及び
-抗血栓効果
であり得る。
【0050】
シース及び/又は支持構造体の少なくとも1種の薬物は、本発明のある実施形態による以下の薬物のうちの1種であり得る:抗増殖活性を有する薬物、抗炎症活性を有する薬物、抗血栓活性を有する薬物、パクリタキセル、エベロリムス、ミコフェノール酸、アンジオペプチン、エノキサパリン、ヒルジン、アセチルサリチル酸、デキサメタゾン、リファンピシン、ミノサイクリン、ブデソニド、デソニド、コルチコステロン、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、ヘパリン、ヘパリン誘導体、ウロキナーゼ、PPACK。
【0051】
さらに、本方法の一実施形態によれば、ポリマー溶液は、X線下で視覚化できる物質を含む。
【0052】
本発明のさらなる態様は、本発明による方法によって製造される、とくにステント(例えば、冠動脈ステント又は末梢ステント)の形態の腔内エンドプロステーシスに関する。
【0053】
本発明の実施形態ならびにさらなる特徴及び利点を、図面を参照して以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】本発明による方法のある実施形態の概略図を示す。
図2】本発明による方法によって製造された腔内エンドプロステーシスの走査型電子顕微鏡によって記録された画像を示し、このエンドプロステーシスは、金属合金製の支持構造体(ステント)及び生分解性電界紡糸ポリマーシースを有する。
図3】本発明による腔内エンドプロステーシスのある実施形態を示す(右:ポリマーステントの形態のエンドプロステーシスの支持構造体;中央:電界紡糸シース、左:シースで紡糸された支持構造体)。
図4】PLLA L210(ポリ-L-ラクチド)ホイル(右)と比較した、PLLAフリース(左)の形態の本発明に従って電界紡糸されたシースの破断時伸度を示す。
図5】拡張プロセス前後の生分解性電界紡糸シースを有する生分解性金属支持構造体(とくに金属ステントフレームワーク)を含む、本発明による腔内エンドプロステーシスのある実施形態を示す。
図6】本発明による方法によって製造されたエンベロープで得られた透過性を時間の関数として表現したものを示す。
図7】本発明に従って電界紡糸されたレーザ切断シースを示す。
図8】本発明に従って電界紡糸された別のレーザ切断シースを示す。
図9図9Aは、本発明に従って製造されたシースのポリマー繊維の走査型電子顕微鏡によって記録された画像を示す。 図9Bは、本発明に従って製造されたシースのポリマー繊維の走査型電子顕微鏡によって記録された別の画像を示す。 図9Cは、本発明に従って製造されたシースのポリマー繊維の走査型電子顕微鏡によって記録されたさらに別の画像を示す。 図9Dは、本発明に従って製造されたシースのポリマー繊維の走査型電子顕微鏡によって記録されたなおさらに別の画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0055】
図1は、とくにステント(ステントグラフト)の形態の腔内エンドプロステーシス1を製造するための本発明による方法の実施形態を示し、エンドプロステーシス1は、支持構造体2と、支持構造体2に配置されたシース3とを有し、方法は、支持構造体2を与えるステップと、支持構造体2の外側にポリマー繊維30からシース3を形成するステップとを含み、ポリマー溶液10は電界紡糸によってノズル101から分配され、ポリマー溶液10は少なくとも1種の生分解性ポリマーを含む。
【0056】
電界紡糸では、ポリマー溶液10は、ポリマー溶液10が貯蔵される(例えば、シリンジ状の)リザーバ100に流体的に接続されたノズル(例えば、毛細管の端部)から分配される。
【0057】
ここでは、エミッタとしても知られるノズル101とコレクタ200との間に電圧が印加され、その電圧は、例えば4kV~8kVの範囲とすることができる。支持構造体2は、コレクタ200に配置され、長手方向軸zを中心に(例えばコレクタ200によって)回転させることができ、とくに、支持構造体2の外側に繊維形態のポリマー溶液10を分布させるために長手方向軸zに沿って移動させることができる。
【0058】
電界紡糸では、ポリマー溶液は、ノズル101又は毛細管開口部(図1を参照)での前記電圧に起因していわゆるテイラー(Taylor)コーンTを形成し、その結果、ポリマー溶液10は、同様に高電圧を受けて回転する支持構造体2上に長手方向に延伸された繊維30として不規則に堆積する。溶媒の蒸発(溶媒の漏出)後、繊維30のシース3は支持構造体2上に形成され、これらは互いに結合(接着)され、時間分解硬化プロセスの結果として不織構造を形成する。
【0059】
図2は、本発明による方法によって製造された腔内エンドプロステーシス1の走査型電子顕微鏡によって記録された画像を示し、このエンドプロステーシスは、Co-Cr合金(L605)製の支持構造体(ステント)2及び生分解性電界紡糸ポリマーシース3を有する。
【0060】
図3は、生分解性ポリマーのポリ-L-ラクチド系支持構造体又はステントの形態の本発明によるさらなる例を示し、これは、本発明による方法によって、電界紡糸によりポリ-L-ラクチド製の繊維不織構造の形態のシース3でカバーされる。これにより、シース3は、支持構造体2の非拡張状態で支持構造体2に適用される。シース3の所望の層厚は、有利には薄くすることができ、10μm~100μm、好ましくは40μm~80μm、とくに好ましくは50μm~70μmの範囲にある。
【0061】
繊維不織構造の特別な形態により、ポリマー材料の破断時伸度の増加が達成され、その結果、使用可能なポリマーの範囲が有利に増加する。これに関して、図4は、ポリ-L-ラクチドホイル(右)と比較した、ポリ-L-ラクチド製の電界紡糸フリース(左)の破断時伸度を示す。
【0062】
本発明に従って製造されたエンドプロステーシスのさらなる例として、図5は、電界紡糸によって製造されたポリ-L-ラクチド製の生分解性ポリマーの繊維不織カバーを有する生分解性金属Mg系支持構造体(高純度Mg-6.25%Al合金)を示す。
【0063】
ポリマー溶液10での支持構造体2のカバーは、支持構造体2の非拡張状態で行われる。達成可能な層厚は、やはり有利には薄くすることができる(上記を参照)。
【0064】
さらに、本発明はまた、有利には、ポリマー材料内への水の高い拡散を可能にするポリマーの使用を可能にし、その結果、十分な封止効果を有しつつシースの薄い層厚を達成することができる。図6は、異なる層厚を有するポリ-L-ラクチドL210(+12.5%ジオキサノン)からなる5つの電界紡糸分解性ポリマーシースの経時的な積分透水性を示す。積分透水性は最初に減少し、5分後にすべての層厚について2ml×min-1×cm-2未満の値に収束する。これは、本発明では、ポリマー繊維シースの薄い層厚で所望の低透過性も達成できることを示す。
【0065】
図7図9Dは、本発明に従って製造された腔内エンドプロステーシス1のさらなる例を示し、支持構造体(図示せず)はCo-Cr合金製であり、ポリマー溶液10は、生分解性ポリマー又は溶解した物質ポリ-L-ラクチド(PLLA L210、CAS番号26161-42-2)ならびに12.5重量%の1,3-ジオキサン-2-オン(溶解した物質の全体に基づく)として使用され、溶媒(CHCl3:TFE、1:4)中のポリマーは4%の濃度を有する。
【0066】
これらのエンドプロステーシス1では、電界紡糸プロセスはシース3あたり約10分かかる。支持構造体はそれぞれ、コレクタ200を形成する長さ約10cmのマンドレル上の中央に配置され、コレクタは約6cmの移動距離を有する。ノズル101と支持構造体2との間の距離Aは90mmであり、ポリマー溶液10は、0.7ml/h[ミリリットル/時]の体積流量でノズル101を介して分配され、電圧によって支持構造体上に加速される(例えば、ノズル/エミッタ101は8kVの電位であり得、コレクタ200は4kVの電位であり得る)。電界紡糸中、温度、空気の湿度、排気、質量及び層厚(例えば、REMによる)は、比較目的のために記録される。後処理として、各プロステーシス1を、テンパリング(例えば、80℃で13.5時間)に供する。製造されたシース3をCOレーザを使用してトリミングした。切断縁部(図7及び図8を参照)は、小さな融合部のみを示し、以下の支持フレームワークは示さない。さらに、特定のシース3の円周方向の切断に沿った二次元融合はない。
【0067】
図9A図9Dは、シース3の電界紡糸によって得られる繊維30の例示的な直径を示す。繊維30の直径の平均値は、785nm(図9A)、469nm(図9B)、441nm(図9C)及び419nm(図9D)である。
【0068】
最後に、上記のように製造されたエンドプロステーシス1の測定報告を例に挙げる。Co-Cr合金(L605)製の支持構造体2(ステント)を、紡糸する前にクリーンルーム内で秤量した(図1による)(質量mStent,uncovered=10.28μg)。次いで、ステント2をレーザを用いたIIB e.V.(試験実験室、Rostock-Warnemunde)のDiamesテストベンチで試験し、直径を得た;直径は、dStent,uncovered,mean value=1.74mmである。その後、ステント2を10分間電界紡糸し、電界紡糸プロセス後に、真空乾燥オーブン中、80℃で13.5時間テンパリングした。テンパリング後、質量を再度測定した(mStent,covered=11.63μg)。次いで、カバーされたステント2の直径を再度測定し(dStent,covered,mean value=1.88mm)、0.07mmのカバー(シース)3の層厚を得た。
【0069】
カバーされたステント2をカテーテル上に置き、それを波形にし、次いで、それを試験説明書に従って30秒間にわたってテンパリング水(37℃)中に保持し、それを30秒以内に3.0mmまで広げ、それをさらに30秒間(保持時間)水中に放置することによって広げた(拡張した)。次いで、拡張したカバーされたステントをカテーテルから取り外し、真空乾燥オーブン中、80℃で13.5時間もう一度乾燥させた。最後に、カバーされたステント2をSEMスライド上にスパッタリングし、繊維の直径を決定した(図9A図9Dを参照)。
生データ:
カバー3の質量(mCover):mStent,uncovered=10.28mg、mStent,covered=11.63mg、mCover=(11.63-10.28)mg=1.35mg
カバー3の層厚:DStent,covered-DStent,uncovered=(1.88-1.74)mm=0.14mm、層厚=(0.14mm/2)=0.07mm
【0070】
本発明による方法は、血管穿孔及び血管破裂を処置するための、電界紡糸シースを有する完全又は部分的に生分解性のインプラントの製造を可能にする。
【0071】
生分解性ポリマーの使用は、インプラントの分解を用いることで、潜在的な後期の効果を最小限に抑える。電界紡糸を使用することによって作り出される繊維不織構造の使用はまた、破断時伸度の増加によって使用可能なポリマーの範囲が増加するという利点を提供する。
【0072】
本発明はさらに、ポリマー中への水の高い拡散を可能にするポリマー材料を使用することによって、十分な封止を伴いつつ、低減された層厚のシースの使用を可能にする。場合により、ポリマーシースは、急速に膨潤可能なヒドロゲルによって支持されてもよい。
【0073】
上述のすべての開示を考慮して、本発明はまた、以下の連続して番号付けされた実施形態を提供する。
【0074】
1.とくにステントの形態の腔内エンドプロステーシス(1)を製造するための方法であって、エンドプロステーシス(1)は、支持構造体(2)と、支持構造体(2)に配置されたシース(3)とを含み、方法は、
支持構造体(2)を与えるステップと、
支持構造体(2)上にポリマー繊維(30)からシース(3)を形成するステップであって、電界紡糸によってノズル(101)からポリマー溶液(10)が分配され、ポリマー溶液(10)は少なくとも1種の生分解性ポリマーを含む、形成するステップと
を含む、方法。
【0075】
2.少なくとも1種の生分解性ポリマーが、ポリラクチド、ポリ-L-ラクチド;ポリ-D,L-ラクチド;ポリ-L-ラクチド-co-D,L-ラクチド;ポリグリコリド;ポリ酸無水物;ポリヒドロキシブチラート;ポリヒドロキシバレラート;ポリ-ε-カプロラクトン;ポリジオキサノン;ポリ(ラクチド-co-グリコリド);ポリ(ラクチド-co-カプロラクトン);ポリ(エチレングリコール-co-カプロラクトン);ポリ(グリコリド-co-カプロラクトン);ポリ(ヒドロキシブチラート-co-バレラート);ポリトリメチレンカーボナート系ポリマー;ポリプロピレンスクシナート;ポリホスファゼンからなる群から選択されることを特徴とする、実施形態1に記載の方法。
【0076】
3.ポリマーが、5重量%~85重量%のラクチド含有量、好ましくは50重量%~85重量%のラクチド含有量を有するポリ-D,L-ラクチド-co-グリコリドであることを特徴とする、実施形態1に記載の方法。
【0077】
4.ポリマー溶液(10)が少なくとも1種の添加剤を含み、少なくとも1種の添加剤が、ラクトン、クエン酸エステル、グリセロール又はそれらの誘導体及びそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、実施形態1から3のいずれか1つに記載の方法。
【0078】
5.少なくとも1種の添加剤が、1,3-ジオキサン-2-オン、1,4-ジオキサン-2-オン、クエン酸トリエチル、グリセロールトリアセタート、n-ブチリルトリ-n-ヘキシルシトラート、ポリエチレングリコール、L-αホスファチジルコリンからなる群から選択されることを特徴とする、実施形態4に記載の方法。
【0079】
6.少なくとも1種の生分解性ポリマーがポリ-L-ラクチドであり、ポリマー溶液(10)が添加剤として1,3-ジオキサン-2-オンをさらに含み、ポリマー溶液(10)に溶解した物質のうちの1,3-ジオキサン-2-オンの割合が、溶解した物質の総質量に基づいて、5重量%~25重量%、好ましくは10重量%~20重量%、とくに好ましくは10重量%~15重量%の範囲であり、溶解した物質の残りの割合が、好ましくはポリ-L-ラクチドによって形成されることを特徴とする、実施形態1から5のいずれか1つに記載の方法。
【0080】
7.ポリマー溶液(10)に溶解した物質が全体で1重量%~10重量%、好ましくは2重量%~8重量%、とくに好ましくは3重量%~5重量%の範囲、好ましくは4重量%の濃度を有することを特徴とする、実施形態6に記載の方法。
【0081】
8.ポリマー溶液(10)が溶媒を含み、溶媒が、クロロホルム(CHCl)、トリフルオロエタノール(TFE)、クロロホルム及びトリフルオロエタノールを含む混合物からなる群から選択され、クロロホルム及びトリフルオロエタノールが、好ましくは1:4の混合比で存在することを特徴とする、実施形態1から7のいずれか1つに記載の方法。
【0082】
9.支持構造体(2)が永久的な支持構造体であることを特徴とする、実施形態1から8のいずれか1つに記載の方法。
【0083】
10.支持構造体(2)が、以下の材料のうちの1種からなるか、又は以下の材料:Co-Cr系合金、Ni系合金、耐食性ステンレス鋼、Ni-Ti合金、Ti系合金、Nb系合金、Ta系合金のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする、実施形態1から9のいずれか1つに記載の方法。
【0084】
11.支持構造体(2)が生分解性金属支持構造体であることを特徴とする、実施形態1から8のいずれか1つに記載の方法。
【0085】
12.支持構造体(2)が、以下の材料のうちの1種を含むか、又は以下の材料:Mg合金;Mg-Al-Zn合金;Mg-Al-Mn合金;Mg-Al-Zn-Mn合金;Mg-RE合金(REは希土類グループから選択される);Mg-Y-RE合金(REは希土類グループから選択される);Mg-RE-Zn合金(REは希土類グループから選択される);Mg-Al-Y合金;Mg-Al-RE合金(REは希土類グループから選択される);Mg-Zn-Zr合金、Mg-Ca-Zn合金;Al含有量が0.01重量%~12重量%、好ましくは0.1重量%~5重量%、及びCa含有量が0.01重量%~5重量%、好ましくは0.1重量%~1重量%のMg-Al合金;Mg-Y-RE合金(REはYとは異なる他の希土類を表し、Y含有量は0.1重量%~5重量%、Nd含有量は0.01重量%~5重量%、Gd含有量は0.01重量%~3重量%、Dy含有量は0.01重量%~3重量%であり、合金は、場合により0.1重量%~1重量%のZr及び他の希土類を含む)のうちの1種から形成されることを特徴とする、実施形態10に記載の方法。
【0086】
13.支持構造体(2)が生分解性ポリマー支持構造体であることを特徴とする、実施形態1から8のいずれか1つに記載の方法。
【0087】
14.支持構造体(2)が、以下の材料のうちの1種を含むか、又は以下の材料:生分解性ポリマー;ポリ-L-ラクチド;ポリ-D,L-ラクチド;ポリ-L-ラクチド-co-D,L-ラクチド;ポリグリコリド;ポリ酸無水物;ポリヒドロキシブチラート;ポリヒドロキシバレラート;ポリ-ε-カプロラクトン;ポリジオキサノン;ポリ(ラクチド-co-グリコリド);ポリ(ラクチド-co-カプロラクトン);ポリ(エチレングリコール-co-カプロラクトン);ポリ(グリコリド-co-カプロラクトン);ポリ(ヒドロキシブチラート-co-バレラート);ポリトリメチレンカーボナート系ポリマー;ポリプロピレンスクシナート;ポリホスファゼン;5重量%~85重量%、好ましくは50重量%~85重量%のラクチド含有量を有するポリ-D,L-ラクチド-co-グリコリドのうちの1種から形成されることを特徴とする、実施形態13に記載の方法。
【0088】
15.ポリマー溶液(10)が、ノズル(101)から支持構造体(2)上に、電界紡糸中に繊維形態で、好ましくは0.5mL/h~0.9mL/hの範囲、好ましくは0.7mL/hのポリマー溶液(10)の体積流量で分配され、ノズル(101)が、好ましくは70mm~110mmの範囲、好ましくは90mmで支持構造体(2)からの距離(A)を有し、少なくとも1kV、好ましくは1kV~20kV、とくに好ましくは2kV~10kV、好ましくは4kVの電圧が、好ましくはノズル(2)と支持構造体(2)が配置されるコレクタ(200)との間に印加されることを特徴とする、実施形態1から14のいずれか1つに記載の方法。
【0089】
16.電界紡糸の後、シース(3)が所定の温度で所定の時間にわたってテンパリングされ、時間が好ましくは10時間~15時間の範囲であり、時間が好ましくは13.5時間であり、温度が好ましくは70℃~90℃の範囲であり、温度が好ましくは80℃であることを特徴とする、実施形態1から15のいずれか1つに記載の方法。
【0090】
17.実施形態1から16のいずれか1つに記載の方法によって製造される腔内エンドプロステーシス(1)。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9