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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-19
(45)【発行日】2025-05-27
(54)【発明の名称】排ガス浄化用触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/63 20060101AFI20250520BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20250520BHJP
   B01J 35/57 20240101ALI20250520BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20250520BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20250520BHJP
【FI】
B01J23/63 A ZAB
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
B01J35/57 L
F01N3/10 A
F01N3/28 301Q
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2025507868
(86)(22)【出願日】2024-09-11
(86)【国際出願番号】 JP2024032523
【審査請求日】2025-02-12
(31)【優先権主張番号】P 2023147768
(32)【優先日】2023-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006183
【氏名又は名称】三井金属鉱業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(72)【発明者】
【氏名】諌山 彰大
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 将平
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 徳也
(72)【発明者】
【氏名】岩倉 大典
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特表2022-527152(JP,A)
【文献】特開2012-152702(JP,A)
【文献】特開2019-136695(JP,A)
【文献】特開2018-199094(JP,A)
【文献】特開2010-069380(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
B01D 53/34/53/73
53/74-53/85
53/92,53/96
F01N 3/00, 3/02
3/04- 3/38
9/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の上流側に設けられた第1触媒層と、
前記基材の下流側に設けられた第2触媒層と、
を備える、排ガス浄化用触媒であって、
前記第1触媒層が、Pdを含む下層と、Rhを含む上層とを備え、
前記第2触媒層が、Ptを含む下層と、Rhを含む上層とを備え、
前記第1触媒層中のLaのLa換算の含有率が、前記第1触媒層の質量を基準として、5質量%以上であり、
前記第2触媒層中のLaのLa換算の含有率が、前記第2触媒層の質量を基準として、3質量%以下である、排ガス浄化用触媒。
【請求項2】
前記第2触媒層の下層中のPt以外の貴金属元素の金属換算の含有率が、前記第2触媒層の下層の質量を基準として、1質量%以下であり、
前記第2触媒層中の下層中のLaのLa換算の含有率が、前記第2触媒層中の下層の質量を基準として、2質量%以下である、請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項3】
前記第1触媒層の上層中のLaのLa換算の含有率が、前記第1触媒層の上層の質量を基準として、5質量%以上であり、
前記第2触媒層の上層中のLaのLa換算の含有率が、前記第2触媒層の上層の質量を基準として、4質量%以下である、請求項1又は2に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項4】
排ガスが流通する排気通路と、
前記排気通路内の上流側に設けられた第1排ガス浄化用触媒と、
前記排気通路内の下流側に設けられた第2排ガス浄化用触媒と、
を備える、排ガス浄化システムであって、
前記第1排ガス浄化用触媒が、第1基材と、前記第1基材に設けられた第1触媒層とを備え、
前記第2排ガス浄化用触媒が、第2基材と、前記第2基材に設けられた第2触媒層とを備え、
前記第1触媒層が、Pdを含む下層と、Rhを含む上層とを備え、
前記第2触媒層が、Ptを含む下層と、Rhを含む上層とを備え、
前記第1触媒層中のLaのLa換算の含有率が、前記第1触媒層の質量を基準として、5質量%以上であり、
前記第2触媒層中のLaのLa換算の含有率が、前記第2触媒層の質量を基準として、3質量%以下である、排ガス浄化システム。
【請求項5】
前記第2触媒層の下層中のPt以外の貴金属元素の金属換算の含有率が、前記第2触媒層の下層の質量を基準として、1質量%以下であり、
前記第2触媒層中の下層中のLaのLa換算の含有率が、前記第2触媒層中の下層の質量を基準として、2質量%以下である、請求項4に記載の排ガス浄化システム。
【請求項6】
前記第1触媒層の上層中のLaのLa換算の含有率が、前記第1触媒層の上層の質量を基準として、5質量%以上であり、
前記第2触媒層の上層中のLaのLa換算の含有率が、前記第2触媒層の上層の質量を基準として、4質量%以下である、請求項4又は5に記載の排ガス浄化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、バイク等の内燃機関から排出される排ガス中には、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)等の有害成分が含まれている。これらの有害成分を浄化して無害化する目的で、Pt、Pd、Rh等の貴金属元素を含む排ガス浄化用触媒が使用されている。Pt及びPdは主としてHC及びCOの酸化浄化に関与し、Rhは主としてNOxの還元浄化に関与する。
【0003】
排ガス浄化用触媒の触媒層の成分としてLaが使用されている(例えば、特許文献1及び2)。
【0004】
近年の排ガス浄化性能への要求の高まりから、排ガス浄化触媒の排ガス浄化性能の向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-167631号公報
【文献】特開2011-183317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
Laは、耐熱性を向上させる作用を有する。したがって、Laの含有率を増加させることにより、耐熱性を向上させることができる。
【0007】
Rhの排ガス浄化性能(特に、NOx浄化性能)はRhの酸化により低下するため、Rhは還元性雰囲気下で使用されることが好ましい。しかしながら、Laは、貴金属元素の酸化を促進する効果を有する。したがって、Rh及びLaを併用した排ガス浄化用触媒において、Laの含有率を増加させると、LaによりRhが酸化され、Rhの排ガス浄化性能(特に、NOx浄化性能)が低下することが懸念される。
【0008】
本発明は、Rh及びLaを併用した排ガス浄化用触媒であって、Laの作用を効果的に発揮させつつ、LaによるRhの排ガス浄化性能(特に、NOx浄化性能)の低下を防止することができる排ガス浄化用触媒を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、Rh及びLaを併用した排ガス浄化システムであって、Laの作用を効果的に発揮させつつ、LaによるRhの排ガス浄化性能(特に、NOx浄化性能)の低下を防止することができる排ガス浄化システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の発明を提供する。
[1]基材と、
前記基材の上流側に設けられた第1触媒層と、
前記基材の下流側に設けられた第2触媒層と、
を備える、排ガス浄化用触媒であって、
前記第1触媒層が、Pdを含む下層と、Rhを含む上層とを備え、
前記第2触媒層が、Ptを含む下層と、Rhを含む上層とを備え、
前記第1触媒層中のLaのLa換算の含有率が、前記第1触媒層の質量を基準として、5質量%以上であり、
前記第2触媒層中のLaのLa換算の含有率が、前記第2触媒層の質量を基準として、3質量%以下である、排ガス浄化用触媒。
[2]前記第2触媒層の下層中のPt以外の貴金属元素の金属換算の含有率が、前記第2触媒層の下層の質量を基準として、1質量%以下であり、
前記第2触媒層中の下層中のLaのLa換算の含有率が、前記第2触媒層中の下層の質量を基準として、2質量%以下である、[1]に記載の排ガス浄化用触媒。
[3]前記第1触媒層の上層中のLaのLa換算の含有率が、前記第1触媒層の上層の質量を基準として、5質量%以上であり、
前記第2触媒層の上層中のLaのLa換算の含有率が、前記第2触媒層の上層の質量を基準として、4質量%以下である、[1]又は[2]に記載の排ガス浄化用触媒。
[4]排ガスが流通する排気通路と、
前記排気通路内の上流側に設けられた第1排ガス浄化用触媒と、
前記排気通路内の下流側に設けられた第2排ガス浄化用触媒と、
を備える、排ガス浄化システムであって、
前記第1排ガス浄化用触媒が、第1基材と、前記第1基材に設けられた第1触媒層とを備え、
前記第2排ガス浄化用触媒が、第2基材と、前記第2基材に設けられた第2触媒層とを備え、
前記第1触媒層が、Pdを含む下層と、Rhを含む上層とを備え、
前記第2触媒層が、Ptを含む下層と、Rhを含む上層とを備え、
前記第1触媒層中のLaのLa換算の含有率が、前記第1触媒層の質量を基準として、5質量%以上であり、
前記第2触媒層中のLaのLa換算の含有率が、前記第2触媒層の質量を基準として、3質量%以下である、排ガス浄化システム。
[5]前記第2触媒層の下層中のPt以外の貴金属元素の金属換算の含有率が、前記第2触媒層の下層の質量を基準として、1質量%以下であり、
前記第2触媒層中の下層中のLaのLa換算の含有率が、前記第2触媒層中の下層の質量を基準として、2質量%以下である、[4]に記載の排ガス浄化システム。
[6]前記第1触媒層の上層中のLaのLa換算の含有率が、前記第1触媒層の上層の質量を基準として、5質量%以上であり、
前記第2触媒層の上層中のLaのLa換算の含有率が、前記第2触媒層の上層の質量を基準として、4質量%以下である、[4]又は[5]に記載の排ガス浄化システム。
【発明の効果】
【0011】
本発明の排ガス浄化用触媒及び排ガス浄化システムによれば、Laの作用を効果的に発揮させつつ、LaによるRhの排ガス浄化性能(特に、NOx浄化性能)の低下を防止することができる。したがって、本発明の排ガス浄化用触媒及び排ガス浄化システムによれば、排ガス浄化性能の向上を効果的に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る排ガス浄化用触媒が内燃機関の排気通路に配置されている状態を示す一部端面図である
図2図2は、図1のA-A線端面図である。
図3図3は、図1のB-B線端面図である。
図4図4は、図2中の符号R1で示す領域の拡大図である。
図5図5は、図3中の符号R2で示す領域の拡大図である。
図6図6は、図1のC-C線端面図である。
図7図7は、本発明の一実施形態に係る排ガス浄化システムの平面図である。
図8図8は、図7のD-D線端面図である。
図9図9は、図7のE-E線端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
≪用語の説明≫
以下、本明細書で使用される用語について説明する。以下の説明は、別段規定される場合を除き、本明細書の全体に適用される。なお、触媒層に関する以下の説明は、全ての触媒層(例えば、後述する第1触媒層20、第2触媒層30、下層21、上層22、下層31、上層32等)に適用される。
【0014】
<金属元素>
「金属元素」には、Si、B等の半金属元素も包含される。
【0015】
<希土類元素>
「希土類元素」には、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuが包含される。
【0016】
<貴金属元素>
「貴金属元素」には、Pt、Pd、Rh、Ru、Os、Ir、Au及びAgが包含される。
【0017】
<酸化物>
金属元素の「酸化物」の意義は、次の通りである。Ce、Pr及びTbを除く希土類元素の酸化物はセスキ酸化物(M,MはCe、Pr及びTb以外の希土類元素を表す)を、Ceの酸化物はCeOを、Prの酸化物はPr11を、Tbの酸化物はTbを、Alの酸化物はAlを、Zrの酸化物はZrOを、Siの酸化物はSiOを、Bの酸化物はBを、Crの酸化物はCrを、Mgの酸化物はMgOを、Caの酸化物はCaOを、Srの酸化物はSrOを、Baの酸化物はBaOを、Feの酸化物はFeを、Mnの酸化物はMnを、Niの酸化物はNiOを、Tiの酸化物はTiOを、Znの酸化物はZnOを、Snの酸化物はSnOを意味する。
【0018】
<触媒層の質量>
「触媒層の質量」は、当該触媒層に含まれる全ての金属元素を、貴金属元素と、貴金属元素以外の金属元素とに分類し、貴金属元素については金属換算の質量を、貴金属元素以外の金属元素については酸化物換算の質量を求め、これらを合計したものを意味する。すなわち、「触媒層の質量」は、当該触媒層に含まれる貴金属元素の金属換算の質量と、当該触媒層に含まれる貴金属元素以外の金属元素の酸化物換算の質量とを合計することにより求められた計算質量を意味する。
【0019】
<触媒層中の貴金属元素の金属換算の含有率及び触媒層中の貴金属元素以外の金属元素の酸化物換算の含有率>
「触媒層中の貴金属元素の金属換算の含有率」(質量%)は、式:(当該触媒層中の当該貴金属元素の金属換算の質量)/(当該触媒層の質量)×100から求められる。「貴金属元素の金属換算の質量」は、貴金属元素が当該貴金属元素で構成される金属として存在すると仮定して求められる当該金属の質量を意味する。例えば、Pdの金属換算の質量、Ptの金属換算の質量及びRhの金属換算の質量は、それぞれ、金属Pdの質量、金属Ptの質量及び金属Rhの質量を意味する。「触媒層の質量」の意義は、上記の通りである。
【0020】
「触媒層中の金属元素の酸化物換算の含有率」(質量%)は、式:(当該触媒層中の当該金属元素の酸化物換算の質量)/(当該触媒層の質量)×100から求められる。「貴金属元素以外の金属元素の酸化物換算の質量」は、貴金属元素以外の金属元素が当該金属元素の酸化物として存在すると仮定して求められる当該酸化物の質量を意味する。金属元素の「酸化物」の意義及び「触媒層の質量」の意義は、上記の通りである。
【0021】
例えば、「触媒層中のLaのLa換算の含有率」(質量%)は、式:(当該触媒層中のLaのLa換算の質量)/(当該触媒層の質量)×100から求められる。「LaのLa換算の質量」は、LaがLaとして存在すると仮定して求められるLaの質量を意味する。
【0022】
触媒層の形成に使用される原料の情報(例えば、組成、量等)が判明している場合、触媒層中の貴金属元素の金属換算の含有率(質量%)及び触媒層中の貴金属元素以外の金属元素の酸化物換算の含有率(質量%)は、原料の情報から求めることができる。
【0023】
触媒層の形成に使用される原料の情報が判明していない場合、触媒層中の貴金属元素の金属換算の含有率(質量%)及び触媒層中の貴金属元素以外の金属元素の酸化物換算の含有率(質量%)は、走査型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分析法(SEM-EDX)等の常法により求めることができる。具体的には、下記の通りである。
【0024】
SEM-EDX等の常法を使用して触媒層の元素分析を行い、触媒層の構成元素の種類を特定するとともに、特定された各金属元素のモル%を求める。SEMの10視野の各々に関して、各金属元素のモル%を求め、10視野における各金属元素のモル%の平均値を、触媒層中の各金属元素のモル%とする。
【0025】
触媒層中の各貴金属元素に関して、下記式からV値を算出する。
V値=(触媒層中の各貴金属元素のモル%)×(各貴金属元素のモル質量)
【0026】
触媒層中の貴金属元素以外の各金属元素に関して、下記式からW値を算出する。
W値=(触媒層中の貴金属元素以外の各金属元素のモル%)×(各金属元素の酸化物のモル質量)
【0027】
触媒層中の各貴金属元素の金属換算の含有率(質量%)は、下記式から算出される。
触媒層中の各貴金属元素の金属換算の含有率(質量%)=(各貴金属元素に関するV値)/{(全ての貴金属元素に関するV値の合計)+(貴金属元素以外の全ての金属元素に関するW値の合計)}×100
【0028】
触媒層中の貴金属元素以外の各金属元素の酸化物換算の含有率(質量%)は、下記式から算出される。
触媒層中の貴金属元素以外の各金属元素の酸化物換算の含有率(質量%)=(貴金属元素以外の各金属元素に関するW値)/{(全ての貴金属元素に関するV値の合計)+(貴金属元素以外の全ての金属元素に関するW値の合計)}×100
【0029】
<Al系酸化物>
Al系酸化物は、Alを含む酸化物であって、酸化物を構成する金属元素のうち、質量基準で最も含有率が大きい金属元素がAlである酸化物を意味する。但し、Ce-Zr系複合酸化物に該当するものは、Al系酸化物に該当しないものとする。Ce-Zr系複合酸化物については後述する。Al系酸化物は、バインダとして使用されるアルミナとは区別される。本明細書において、バインダとして使用されるアルミナを「アルミナバインダ」という場合がある。
【0030】
Al系酸化物は、例えば、粒子状である。Al系酸化物は、触媒活性成分の担体として使用される。触媒活性成分の担持性を向上させる観点から、Al系酸化物は、多孔質であることが好ましい。
【0031】
Al系酸化物は、一般的に、その他の無機酸化物(例えば、Ce系酸化物、Ce-Zr系複合酸化物等)よりも、耐熱性が高い。したがって、触媒層がAl系酸化物を含むことにより、触媒層の耐熱性が向上し、触媒層の排ガス浄化性能が向上する。
【0032】
Al系酸化物は、Al以外の1種又は2種以上の金属元素(以下「追加元素M1」という。)を含んでいてもよい。追加元素M1は、例えば、希土類元素(例えば、Ce、Y、Pr、La、Nd、Sm、Eu、Gd等)、アルカリ土類金属元素(例えば、Mg、Ca、Sr、Ba等)、B、Si、Zr、Cr等から選択することができる。
【0033】
Al系酸化物において、追加元素M1は、固溶体相(例えば、Alと、追加元素M1の酸化物との固溶体相)を形成していてもよいし、結晶相又は非晶質相である単独相(例えば、追加元素M1の酸化物相)を形成していてもよいし、固溶体相及び単独相の両方を形成していてもよいが、追加元素M1の少なくとも一部は、固溶体相を形成していることが好ましい。
【0034】
固溶体相を含むAl系酸化物を調製する方法としては、例えば、共沈法、固相法等が挙げられる。
【0035】
Al系酸化物としては、例えば、アルミナ(Al及びOで構成される酸化物)、アルミナの表面を追加元素M1又はその酸化物で修飾して得られる酸化物、アルミナ中に追加元素M1又はその酸化物を固溶して得られる酸化物等が挙げられる。追加元素M1を含むAl系酸化物としては、例えば、アルミナ-シリカ、アルミナ-ジルコニア、アルミナ-クロミア、アルミナ-セリア、アルミナ-ランタナ等が挙げられる。
【0036】
Al系酸化物の耐熱性を向上させる観点から、Al系酸化物中のAlのAl換算の含有率は、Al系酸化物の質量を基準として、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、より一層好ましくは90質量%以上である。上限は100質量%である。
【0037】
Al系酸化物の耐熱性を向上させる観点から、Al系酸化物は、Laを含むことが好ましい。
【0038】
Laを含むAl系酸化物において、Laの少なくとも一部は、固溶体相(例えば、AlとLaとの固溶体相)を形成していることが好ましい。詳細なメカニズムは定かではないが、Laの少なくとも一部が固溶体相を形成していることにより、結晶ひずみが大きくなり、Al系酸化物の耐熱性が向上すると考えられる。
【0039】
Al系酸化物の耐熱性を向上させる観点から、Al系酸化物において固溶体相を形成しているLaのLa換算の含有率は、Al系酸化物の質量を基準として、好ましくは0.1質量%以上20質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上15質量%以下、より一層好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
【0040】
Al系酸化物中の各金属元素の酸化物換算の含有率は、式:(Al系酸化物中の各金属元素の酸化物換算の質量)/(Al系酸化物の質量)×100から算出される。Al系酸化物の質量は、Al系酸化物中の金属元素がそれぞれ酸化物として存在すると仮定して求められる金属元素の酸化物の合計質量を意味する。金属元素の「酸化物」の意義は上記の通りである。
【0041】
Al系酸化物の組成が判明している場合、Al系酸化物中の各元素の酸化物換算の含有率は、Al系酸化物の組成から求めることができる。
【0042】
Al系酸化物の組成が判明していない場合、Al系酸化物中の各金属元素の酸化物換算の含有率は、Al系酸化物を含む試料をエネルギー分散型X線分光法(EDX)で分析し、得られた元素マッピングと、指定した粒子のEDX元素分析とから求めることができる。具体的には、元素マッピングにより定性的にAl系酸化物粒子及びその他の粒子を識別(色分け)し、指定した粒子に対して組成分析(元素分析)することにより、指定した粒子中の各金属元素の酸化物換算の含有率を求めることができる。
【0043】
Laを含むAl系酸化物においてLaの少なくとも一部が固溶体相を形成しているか否かは、以下のように判別することができる。
まず、対象のAl系酸化物に対してEDX元素分析を行い、対象のAl系酸化物中にLaが存在することを確認する。次いで、XRD(X線回折測定装置)を使用して対象のAl系酸化物のXRD回折パターンを測定する。次いで、得られたXRD回折パターンと、ICSD(International Crystal Structure Database)に収録されている、対象のAl系酸化物の結晶構造(例えば、γアルミナ、θアルミナ、δアルミナ、αアルミナ等)の基準データとの照合を行う。この際、基準データの最大ピーク位置に注目し、対象のAl系酸化物のXRD回折パターンにおいて、該最大ピーク位置に対して低角度側にピークシフトがあれば、対象のAl系酸化物においてLaの少なくとも一部が固溶体相を形成していると判別することができる。対象のAl系酸化物においてLaの全部が固溶体相を形成している場合、Laに由来するピークはXRD回折パターンに出現しない。したがって、対象のAl系酸化物においてLaの全部が固溶体相を形成しているか否かを判別する際、Laに由来するピークがXRD回折パターンに出現するか否かを確認することが好ましい。
【0044】
EDX元素分析によるLaの存在量と、前記ピークシフトの程度とに基づいて、対象のAl系酸化物において固溶体相を形成しているLaのLa換算の含有率を算出することができる。また、対象のAl系酸化物に対してXPS(X線光電子分光法)測定を行い、LaAlOに帰属されるピークを解析することにより、半定量値を求めることも可能である。このように、対象のAl系酸化物において固溶体相を形成しているLaのLa換算の含有率は、XRD、EDX、XPS等の分析結果を総合的に考慮して求めることができる。
【0045】
<Ce系酸化物>
Ce系酸化物は、Ceを含む酸化物であって、酸化物を構成する金属元素のうち、質量基準で最も含有率が大きい金属元素がCeである酸化物を意味する。但し、Ce-Zr系複合酸化物に該当するものは、Ce系酸化物に該当しないものとする。Ce-Zr系複合酸化物については後述する。Ce系酸化物は、バインダとして使用されるセリアとは区別される。本明細書において、バインダとして使用されるセリアを「セリアバインダ」という場合がある。
【0046】
Ce系酸化物は、例えば、粒子状である。Ce系酸化物は、触媒活性成分の担体として使用される。触媒活性成分の担持性を向上させる観点から、Ce系酸化物は、多孔質であることが好ましい。
【0047】
Ce系酸化物は、酸素貯蔵能を有し、排ガス中の酸素濃度の変動を緩和して触媒活性成分の作動ウインドウを拡大する。したがって、触媒層がCe系酸化物を含むことにより、触媒層の排ガス浄化性能が向上する。
【0048】
Ce系酸化物は、Ce以外の1種又は2種以上の金属元素(以下「追加元素M2」という。)を含んでいてもよい。追加元素M2は、例えば、Ce以外の希土類元素、アルカリ土類金属元素(例えば、Mg、Ca、Sr、Ba等)、Fe、Mn、Ni、Zr、Al等から選択することができる。
【0049】
Ce系酸化物において、追加元素M2は、固溶体相(例えば、CeOと、追加元素M2の酸化物との固溶体相)を形成していてもよいし、結晶相又は非晶質相である単独相(例えば、追加元素M2の酸化物相)を形成していてもよいし、固溶体相及び単独相の両方を形成していてもよいが、追加元素M2の少なくとも一部は、固溶体相を形成していることが好ましい。
【0050】
固溶体相を含むCe系酸化物を調製する方法としては、例えば、共沈法、固相法等が挙げられる。
【0051】
Ce系酸化物としては、例えば、セリア(Ce及びOで構成される酸化物)、セリアの表面を追加元素M2又はその酸化物で修飾して得られる酸化物、セリア中に追加元素M2又はその酸化物を固溶して得られる酸化物等が挙げられる。
【0052】
<Ce-Zr系複合酸化物>
Ce-Zr系複合酸化物は、Ce及びZrを含む複合酸化物であって、複合酸化物中のCeのCeO換算の含有率が、複合酸化物の質量を基準として、5質量%以上95質量%以下であり、且つ、複合酸化物中のZrのZrO換算の含有率が、複合酸化物の質量を基準として、5質量%以上95質量%以下である酸化物を意味する。
【0053】
Ce-Zr系複合酸化物は、例えば、粒子状である。Ce-Zr系複合酸化物は、触媒活性成分の担体として使用される。触媒活性成分の担持性を向上させる観点から、Ce-Zr系複合酸化物は、多孔質であることが好ましい。
【0054】
Ce-Zr系複合酸化物は、酸素貯蔵能を有し、排ガス中の酸素濃度の変動を緩和して触媒活性成分の作動ウインドウを拡大する。したがって、触媒層がCe-Zr系複合酸化物を含むことにより、触媒層の排ガス浄化能が向上する。
【0055】
Ce-Zr系複合酸化物は、Ce及びZr以外の1種又は2種以上の金属元素(以下「追加元素M3」という。)を含んでいてもよい。追加元素M3は、例えば、Ce以外の希土類元素、アルカリ土類金属元素(例えば、Mg、Ca、Sr、Ba等)、Fe、Mn、Ni、Al等から選択することができる。
【0056】
Ce-Zr系複合酸化物において、Ceは、固溶体相(例えば、CeOとZrOとの固溶体相等)を形成していてもよいし、結晶相又は非晶質相である単独相(例えば、CeO単独相)を形成していてもよいし、固溶体相及び単独相の両方を形成していてもよいが、Ceの少なくとも一部は、固溶体相を形成していることが好ましい。
【0057】
Ce-Zr系複合酸化物において、Zrは、固溶体相(例えば、CeOとZrOとの固溶体相等)を形成していてもよいし、結晶相又は非晶質相である単独相(例えば、ZrO単独相)を形成していてもよいし、固溶体相及び単独相の両方を形成していてもよいが、Zrの少なくとも一部は、固溶体相を形成していることが好ましい。
【0058】
Ce-Zr系複合酸化物が追加元素M3を含む場合、追加元素M3は、固溶体相(例えば、CeOと追加元素M3の酸化物との固溶体相、ZrOと追加元素M3の酸化物との固溶体相、CeOとZrOと追加元素M3の酸化物との固溶体相等)を形成していてもよいし、結晶相又は非晶質相である単独相(例えば、追加元素M3の酸化物単独相)を形成していてもよいし、固溶体相及び単独相の両方を形成していてもよいが、追加元素M3の少なくとも一部は、固溶体相を形成していることが好ましい。
【0059】
固溶体相を含むCe-Zr系複合酸化物を調製する方法としては、例えば、共沈法、固相法等が挙げられる。
【0060】
Ce-Zr系複合酸化物としては、例えば、CeO-ZrO固溶体、CeO-ZrO固溶体の表面を追加元素M3又はその酸化物で修飾して得られる酸化物、CeO-ZrO固溶体中に追加元素M3又はその酸化物を固溶して得られる酸化物等が挙げられる。
【0061】
Ce-Zr系複合酸化物の酸素貯蔵能を向上させる観点から、Ce-Zr系複合酸化物中のCeのCeO換算の含有率は、Ce-Zr系複合酸化物の質量を基準として、好ましくは5質量%以上80質量%以下、より好ましくは10質量%以上60質量%以下、より一層好ましくは10質量%以上50質量%以下である。
【0062】
Ce-Zr系複合酸化物の耐熱性を向上させる観点から、Ce-Zr系複合酸化物中のZrのZrO換算の含有率は、Ce-Zr系複合酸化物の質量を基準として、好ましくは10質量%以上95質量%以下、より好ましくは30質量%以上90質量%以下、より一層好ましくは40質量%以上90質量%以下である。
【0063】
Ce-Zr系複合酸化物の酸素貯蔵能及び耐熱性を向上させる観点から、Ce-Zr系複合酸化物におけるCeのCeO換算の含有率及びZrのZrO換算の含有率の合計は、Ce-Zr系複合酸化物の質量を基準として、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、より一層好ましくは90質量%以上である。上限は100質量%である。
【0064】
Ce-Zr系複合酸化物の耐熱性及び酸素貯蔵能を向上させる観点から、Ce-Zr系複合酸化物は、Laを含むことが好ましい。
【0065】
Laを含むCe-Zr系複合酸化物において、Laの少なくとも一部は、固溶体相(例えば、CeOとLaとの固溶体相、ZrOとLaとの固溶体相、CeOとZrOとLaとの固溶体相等)を形成していることが好ましい。詳細なメカニズムは定かではないが、Laの少なくとも一部が固溶体相を形成していることにより、結晶ひずみが大きくなり、Ce-Zr系複合酸化物の耐熱性及び酸素貯蔵能が向上すると考えられる。
【0066】
Ce-Zr系複合酸化物の耐熱性及び酸素貯蔵能を向上させる観点から、Ce-Zr系複合酸化物において固溶体相を形成しているLaのLa換算の含有率は、Ce-Zr系複合酸化物の質量を基準として、好ましくは0.1質量%以上20質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上15質量%以下、より一層好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
【0067】
Ce-Zr系複合酸化物中の各金属元素の酸化物換算の含有率は、式:(Ce-Zr系複合酸化物中の各金属元素の酸化物換算の質量)/(Ce-Zr系複合酸化物の質量)×100から算出される。Ce-Zr系複合酸化物の質量は、Ce-Zr系複合酸化物中の金属元素がそれぞれ酸化物として存在すると仮定して求められる金属元素の酸化物の合計質量を意味する。金属元素の「酸化物」の意義は上記の通りである。
【0068】
Ce-Zr系複合酸化物中の各金属元素の酸化物換算の含有率は、Al系酸化物中の各金属元素の酸化物換算の含有率と同様にして求めることができる。
【0069】
Laを含むCe-Zr系複合酸化物においてLaの少なくとも一部が固溶体相を形成しているか否かは、Laを含むAl系酸化物においてLaの少なくとも一部が固溶体相を形成しているか否かと同様にして判別することができる。対象のCe-Zr系複合酸化物のXRD回折パターンと、対象のCe-Zr系複合酸化物の結晶構造の基準データとの照合を行う際、対象のCe-Zr系複合酸化物の結晶構造の基準データとして、ICSDに収録されている、蛍石型のCeO-ZrO、パイロクロア型のCeO-ZrO等のデータを使用することができる。Ce-Zr系複合酸化物において固溶体相を形成しているLaのLa換算の含有率は、Al系酸化物において固溶体相を形成しているLaのLa換算の含有率と同様にして求めることができる。
【0070】
≪排ガス浄化用触媒≫
以下、図1~6に基づいて、本発明の一実施形態に係る排ガス浄化用触媒1(以下「触媒1」という。)について説明する。
【0071】
図1に示すように、触媒1は、内燃機関の排気管P内の排気通路に配置されている。内燃機関は、例えば、ガソリンエンジン等である。内燃機関から排出された排ガスは、排気管Pの一端から他端に向けて排気管P内の排気通路を流通し、排気管P内に設けられた触媒1で浄化される。図面において、排ガス流通方向は、符号Xで示されている。本明細書において、排ガス流通方向Xの上流側を「排ガス流入側」又は「上流側」、排ガス流通方向Xの下流側を「排ガス流出側」又は「下流側」という場合がある。
【0072】
排気管P内の排気通路には、触媒1の上流側又は下流側に、その他の排ガス浄化用触媒が配置されていてもよい。
【0073】
図2~6に示すように、触媒1は、基材10と、基材10の上流側に設けられた第1触媒層20と、基材10の下流側に設けられた第2触媒層30とを備える。
【0074】
図4及び6に示すように、第1触媒層20は、基材10上に設けられた下層21と、下層21上に設けられた上層22とを備える。下層21はPdを含み、上層22はRhを含む。第1触媒層20の全体が下層21及び上層22で構成されていてもよいが、第1触媒層20の全体が下層21及び上層22で構成されていることは必須ではない。第1触媒層20の一部が下層21又は上層22の一方で構成されていてもよい。したがって、下層21及び上層22で構成されている部分に加えて、下層21又は上層22の一方で構成されている部分も、第1触媒層20の一部である。
【0075】
図5及び6に示すように、第2触媒層30は、基材10上に設けられた下層31と、下層31上に設けられた上層32とを備える。下層31はPtを含み、上層32はRhを含む。第2触媒層30の全体が下層31及び上層32で構成されていてもよいが、第2触媒層30の全体が下層31及び上層32で構成されていることは必須ではない。第2触媒層30の一部が下層31又は上層32の一方で構成されていてもよい。したがって、下層31及び上層32で構成されている部分に加えて、下層31又は上層32の一方で構成されている部分も、第2触媒層30の一部である。
【0076】
本明細書において、下層は、上層よりも隔壁部12側に位置する層を意味する。
【0077】
触媒1は、第1触媒層20中のLaのLa換算の含有率が、第1触媒層20の質量を基準として、5質量%以上であり、第2触媒層30中のLaのLa換算の含有率が、第2触媒層30の質量を基準として、3質量%以下であることを特徴とする。
【0078】
触媒1では、第1触媒層20が基材10の上流側に、第2触媒層30が基材10の下流側に設けられているため、排ガスは、第1触媒層20と接触した後、第2触媒層30と接触する。このため、第1触媒層20と接触する排ガスの温度は、第2触媒層30と接触する排ガスの温度よりも高い。したがって、第1触媒層20には、第2触媒層30よりも高い耐熱性が求められる。
【0079】
Laは、耐熱性を向上させる作用を有する。したがって、第1触媒層20中のLaのLa換算の含有率を増加させることにより、第1触媒層20の耐熱性を向上させることができる。
【0080】
Rhの排ガス浄化性能(特に、NOx浄化性能)はRhの酸化により低下するため、Rhは還元性雰囲気下で使用されることが好ましい。一方、Laは、貴金属元素の酸化を促進する作用を有する。したがって、第1触媒層20中のLaのLa換算の含有率を増加させると、第1触媒層20中のLaにより第1触媒層20中のRhが酸化され、第1触媒層20中のRhの排ガス浄化性能(特に、NOx浄化性能)が低下することが懸念される。しかしながら、第1触媒層20は基材10の上流側に設けられているため、第1触媒層20と接触する排ガス中の還元性成分(例えば、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)等)の量は、内燃機関の運転条件の変動により変動し、一時的に増加する。このため、第1触媒層20中のLaにより第1触媒層20中のRhが酸化されても、酸化されたRhは、一時的に増加した還元性成分により還元される。したがって、第1触媒層20中のLaのLa換算の含有率を増加させても、第1触媒層20中のLaによる第1触媒層20中のRhの排ガス浄化性能(特に、NOx浄化性能)の低下を防止することができる。
【0081】
排ガスは、第1触媒層20と接触した後に第2触媒層30と接触するため、第2触媒層30と接触する排ガス中の還元性成分の量は、変動しにくく、一時的に増加しにくい。したがって、第2触媒層30中のLaにより第2触媒層30中のRhが酸化されると、酸化されたRhは還元されにくい。一方、排ガスは、第1触媒層20と接触した後に第2触媒層30と接触するため、第2触媒層30と接触する排ガスの温度は、第1触媒層20と接触する排ガスの温度よりも低い。したがって、第2触媒層30の耐熱性は、第1触媒層20の耐熱性より低くてもよい。
【0082】
以上のように、第1触媒層20では、第1触媒層20中のLaによる第1触媒層20中のRhの排ガス浄化性能(特に、NOx浄化性能)の低下を防止する観点から、第1触媒層20中のLaのLa換算の含有率を減少させることよりも、第1触媒層20の耐熱性を向上させる観点から、第1触媒層20中のLaのLa換算の含有率を増加させることが求められ、第2触媒層30では、第2触媒層30の耐熱性を向上させる観点から、第2触媒層30中のLaのLa換算の含有率を増加させることよりも、第2触媒層30中のLaによる第2触媒層30中のRhの排ガス浄化性能(特に、NOx浄化性能)の低下を防止する観点から、第2触媒層30中のLaのLa換算の含有率を減少させることが求められる。したがって、触媒1は、第1触媒層20中のLaのLa換算の含有率が、第1触媒層20の質量を基準として、5質量%以上であり、第2触媒層30中のLaのLa換算の含有率が、第2触媒層30の質量を基準として、3質量%以下であることを特徴とする。触媒1によれば、Laの作用を効果的に発揮させつつ、LaによるRhの排ガス浄化性能(特に、NOx浄化性能)の低下を防止することができ、これにより、排ガス浄化性能の向上を実現することができる。
【0083】
Laは、耐熱性を向上させる作用に加えて、リン成分をトラップして貴金属元素のリン被毒を防止する作用を有する。また、Ce-Zr系複合酸化物がLaを含む場合、Ce-Zr系複合酸化物中のLaはCe-Zr系複合酸化物の酸素貯蔵能を向上させる作用を有する。Laのこれらの作用も、触媒1の排ガス浄化性能の向上に寄与する。
【0084】
<基材>
以下、基材10について説明する。
【0085】
基材10を構成する材料は、公知の材料から適宜選択することができる。基材10を構成する材料としては、例えば、セラミックス材料、金属材料等が挙げられるが、セラミックス材料が好ましい。セラミックス材料としては、例えば、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化タンタル、炭化タングステン等の炭化物セラミックス、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化チタン等の窒化物セラミックス、アルミナ、ジルコニア、コージェライト、ムライト、ジルコン、チタン酸アルミニウム、チタン酸マグネシウム等の酸化物セラミックス等が挙げられる。金属材料としては、例えば、ステンレス鋼等の合金等が挙げられる。
【0086】
図1に示すように、触媒1は、基材10の軸方向が排ガス流通方向Xと一致又は略一致するように、内燃機関の排気経路に配置される。
【0087】
図2~6に示すように、基材10は、筒状部11と、筒状部11内に設けられた隔壁部12と、隔壁部12によって仕切られたセル13とを有する。基材10は、ハニカム構造体であることが好ましい。
【0088】
図2及び3に示すように、筒状部11は、基材10の外形を規定し、筒状部11の軸方向は、基材10の軸方向と一致する。図2及び3に示すように、筒状部11の形状は、円筒状であるが、楕円筒状、多角筒状等のその他の形状であってもよい。
【0089】
図2及び3に示すように、隔壁部12は、筒状部11内に設けられている。図2~6に示すように、隣接するセル13の間には隔壁部12が存在し、隣接するセル13は隔壁部12によって仕切られている。隔壁部12は、排ガスが通過可能な多孔質構造を有していてもよい。隔壁部12の厚みは、例えば20μm以上1500μm以下である。
【0090】
図6に示すように、セル13は、排ガス流通方向Xに延在しており、排ガス流入側の端部及び排ガス流出側の端部を有する。
【0091】
図6に示すように、セル13の排ガス流入側の端部及び排ガス流出側の端部はともに開口している。したがって、セル13の排ガス流入側の端部(開口部)から流入した排ガスは、セル13の排ガス流出側の端部(開口部)から流出する。このような様式は、フロースルー型と呼ばれる。
【0092】
図2~5に示すように、セル13の排ガス流入側の端部(開口部)の平面視形状は、四角形であるが、六角形、八角形等のその他の形状であってもよい。セル13の排ガス流出側の端部(開口部)の平面視形状も同様である。
【0093】
基材10の1平方インチ当たりのセル密度は、例えば100セル以上1000セル以下である。基材10の1平方インチ当たりのセル密度は、基材10を排ガス流通方向Xと垂直な平面で切断して得られた断面における1平方インチ当たりのセル13の合計個数を意味する。
【0094】
基材10の体積は、例えば0.1L以上20L以下である。基材10の体積は、基材10の見かけの体積を意味する。例えば、基材10が円柱状である場合、基材10の外径を2rとし、基材10の長さをLとすると、基材10の体積は、式:基材10の体積=π×r×Lで表される。本明細書において、「長さ」は、基材10の軸方向の寸法を意味する。
【0095】
<第1触媒層>
以下、第1触媒層20について説明する。
【0096】
図4及び6に示すように、第1触媒層20は、隔壁部12のセル13側表面のうち、上流側の領域に設けられている。「隔壁部12のセル13側表面」は、排ガス流通方向Xに延在する、隔壁部12の外表面を意味する。「上流側の領域」は、隔壁部12の排ガス流出側の端部に至らないように、隔壁部12の排ガス流入側の端部から排ガス流通方向Xに沿って延在する領域を意味する。第1触媒層20は、隔壁部12のセル13側表面に直接設けられていてもよいし、他の層を介して設けられていてもよいが、通常、隔壁部12のセル13側表面に直接設けられている。
【0097】
図6に示すように、第1触媒層20は、隔壁部12の排ガス流出側の端部に至らないように、隔壁部12の排ガス流入側の端部から排ガス流通方向Xに沿って延在している。
【0098】
排ガス浄化性能とコストとをバランスよく実現する観点から、基材10のうち第1触媒層20が形成されている部分の単位体積あたりの第1触媒層20の質量(焼成後の質量)は、好ましくは70g/L以上380g/L以下、より好ましくは120g/L以上300g/L以下、より一層好ましくは150g/L以上250g/L以下である。
【0099】
基材10のうち第1触媒層20が形成されている部分の単位体積当たりの第1触媒層20の質量は、式:(第1触媒層20の質量)/((基材10の体積)×(第1触媒層20の平均長さL20/基材10の長さL10))から算出される。
【0100】
第1触媒層20の平均長さL20の測定方法の一例は、以下の通りである。
【0101】
触媒1から、基材10の軸方向に延在し、基材10の長さL10と同一の長さを有するサンプルを切り出す。サンプルは、例えば、直径25.4mmの円柱状である。なお、サンプルの直径の値は必要に応じて変更することができる。サンプルを基材10の軸方向と垂直な平面によって5mm間隔で切断し、サンプルの排ガス流入側の端部側から順に、第1切断片、第2切断片、・・・、第n切断片を得る。切断片の長さは5mmである。切断片の組成を、蛍光X線分析装置(XRF)(例えば、エネルギー分散型X線分析装置(EDX)、波長分散型X線分析装置(WDX)等)、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-AES)、走査型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分析法(SEM-EDX)等を使用して分析し、切断片の組成に基づいて、切断片が第1触媒層20の一部を含むか否かを確認する。
【0102】
第1触媒層20の一部を含むことが明らかである切断片に関しては、必ずしも組成分析を行う必要はない。例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)、電子線マイクロアナライザー(EPMA)等を使用して切断面を観察し、切断片が第1触媒層20の一部を含むか否かを確認することができる。切断面の観察を行う際、切断面の元素マッピングを行ってもよい。
【0103】
切断片が第1触媒層20の一部を含むか否かを確認した後、下記式に基づいて、サンプルに含まれる第1触媒層20の長さを算出する。
サンプルに含まれる第1触媒層20の長さ=5mm×(第1触媒層20の一部を含む切断片の数)
【0104】
例えば、第1切断片~第k切断片は第1触媒層20の一部を含むが、第(k+1)~第n切断片は第1触媒層20の一部を含まない場合、サンプルに含まれる第1触媒層20の長さは、(5×k)mmである。
【0105】
サンプルに含まれる第1触媒層20の長さのより詳細な測定方法の一例は、以下の通りである。
第k切断片(すなわち、第1触媒層20の一部を含む切断片のうち、サンプルの最も排ガス流出側から得られた切断片)を基材10の軸方向で切断して、SEM、EPMA等を使用して切断面に存在する第1触媒層20の一部を観察することにより、第k切断片における第1触媒層20の一部の長さを測定する。そして、下記式に基づいて、サンプルに含まれる第1触媒層20の長さを算出する。
サンプルに含まれる第1触媒層20の長さ=(5mm×(k-1))+(第k切断片に含まれる第1触媒層20の一部の長さ)
【0106】
触媒1から任意に切り出された8~16個のサンプルに関して、各サンプルに含まれる第1触媒層20の長さを測定し、それらの平均値を第1触媒層20の平均長さL20とする。
【0107】
第1触媒層20の平均長さL20が大きいほど、第1触媒層20と排ガスとの接触時間が長くなる。したがって、第1触媒層20の平均長さL20以外の条件が同一である場合、第1触媒層20の平均長さL20が大きいほど、第1触媒層20と排ガスとの反応性が向上し、第2触媒層30に到達する還元性の排ガスが少なくなる。これにより、第2触媒層30中のRhの還元が起きにくい環境となるため、Rhの酸化を促すLaが少ない第2触媒層30において、Rhの還元作用をより効果的に発揮させることができ、排ガス浄化性能(特に、NOx浄化性能)の低下を防止することができる。
【0108】
基材10の長さL10に対する第1触媒層20の平均長さL20の百分率(L20/L10×100)は、好ましくは30%以上、より好ましくは40%以上、より一層好ましくは50%以上である。上限は、排ガス浄化性能とコストとのバランス等を考慮して適宜調整することができる。上限は、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下、より一層好ましくは70%以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0109】
基材10の長さL10に対する第1触媒層20の下層21の平均長さL21の百分率(L21/L10×100)及び基材10の長さL10に対する第1触媒層20の上層22の平均長さL22の百分率(L22/L10×100)は、基材10の長さL10に対する第1触媒層20の平均長さL20の百分率(L20/L10×100)と同様である。基材10の長さL10に対する第1触媒層20の下層21の平均長さL21と、基材10の長さL10に対する第1触媒層20の上層22の平均長さL22とは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0110】
第1触媒層20は、Laを含む。これにより、第1触媒層20の耐熱性が向上する。また、第1触媒層20中の貴金属元素のリン被毒が防止される。また、LaによるPdの酸化を通じて、第1触媒層20中のPdの排ガス浄化性能が向上する。また、第1触媒層20中のCe-Zr系複合酸化物がLaを含む場合、第1触媒層20中のCe-Zr系複合酸化物の耐熱性及び酸素貯蔵能が向上する。
【0111】
下層21及び上層22のうち、少なくとも一方は、Laを含む。一実施形態において、下層21及び上層22のうち、一方はLaを含み、他方はLaを含まない。別の実施形態において、下層21及び上層22の両方がLaを含む。Laの作用を効果的に発揮させる観点から、下層21及び上層22の両方がLaを含むことが好ましい。
【0112】
第1触媒層20は、1種又は2種以上のLa源を含む。La源は、Laを含む酸化物である。La源は、例えば、Laを含むAl系酸化物、Laを含むCe系酸化物、Laを含むCe-Zr系複合酸化物等から選択することができる。
【0113】
第1触媒層20の耐熱性及び/又は酸素貯蔵能を向上させる観点から、La源は、Laを含むAl系酸化物及びLaを含むCe-Zr系複合酸化物から選択することが好ましい。一実施形態において、第1触媒層20は、La源として、Laを含むAl系酸化物及びLaを含むCe-Zr系複合酸化物を含む。Laを含むAl系酸化物は第1触媒層20の耐熱性の向上に寄与し、Laを含むCe-Zr系複合酸化物は第1触媒層20の耐熱性及び酸素貯蔵能の向上に寄与する。
【0114】
Laの作用を効果的に発揮させる観点から、第1触媒層20中のLaのLa換算の含有率は、第1触媒層20の質量を基準として、好ましくは5.5質量%以上、より好ましくは6質量%以上である。上限は、排ガス浄化性能とコストとのバランス、他の成分の含有率等を考慮して適宜調整することができる。上限は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、より一層好ましくは10質量%以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0115】
ある触媒層に関し、「当該触媒層中のLaのLa換算の含有率」は、当該触媒層が1種のLa源を含む場合には、当該1種のLa源に由来するLaのLa換算の含有率を意味し、当該触媒層が2種以上のLa源を含む場合には、当該2種以上のLa源に由来するLaのLa換算の合計含有率を意味する。この定義は、全ての触媒層(例えば、第1触媒層20、第2触媒層30、下層21、上層22、下層31、上層32等)に適用される。
【0116】
第1触媒層20中のLaのLa換算の質量のうち、Laを含むAl系酸化物及びLaを含むCe-Zr系複合酸化物に由来するLaのLa換算の質量が占める割合は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、より一層好ましくは90質量%以上である。上限は100質量%である。
【0117】
ある触媒層に関し、「Laを含むAl系酸化物及びLaを含むCe-Zr系複合酸化物に由来するLaのLa換算の質量」は、当該触媒層がLaを含むAl系酸化物を含み、Laを含むCe-Zr系複合酸化物を含まない場合には、Laを含むAl系酸化物に由来するLaのLa換算の質量を意味し、当該触媒層がLaを含むCe-Zr系複合酸化物を含み、Laを含むAl系酸化物を含まない場合には、Laを含むCe-Zr系複合酸化物に由来するLaのLa換算の質量を意味し、当該触媒層がLaを含むAl系酸化物とLaを含むCe-Zr系複合酸化物とを含む場合には、Laを含むAl系酸化物に由来するLaのLa換算の質量とLaを含むCe-Zr系複合酸化物に由来するLaのLa換算の質量との合計を意味する。この定義は、全ての触媒層(例えば、第1触媒層20、第2触媒層30、下層21、上層22、下層31、上層32等)に適用される。
【0118】
<第1触媒層の下層>
以下、第1触媒層20の下層21について説明する。
【0119】
図4及び6に示すように、下層21は、隔壁部12のセル13側表面のうち、上流側の領域に設けられている。「隔壁部12のセル13側表面」及び「上流側の領域」の意義は上記の通りである。下層21は、隔壁部12のセル13側表面に直接設けられていてもよいし、他の層を介して設けられていてもよいが、通常、隔壁部12のセル13側表面に直接設けられている。
【0120】
下層21は、隔壁部12のセル13側表面からセル13側に隆起している部分(以下「隆起部分」という。)で構成されていてもよいし、隔壁部12の内部に存在する部分(以下「内在部分」という。)で構成されていてもよいし、隆起部分及び内在部分を有していてもよい。本発明には、下層21が隆起部分で構成されている実施形態、下層21が内在部分で構成されている実施形態、並びに、下層21が隆起部分及び内在部分を有する実施形態のいずれも包含される。
【0121】
図4及び6に示すように、下層21は、隆起部分を有することが好ましい。これにより、下層21と排ガスとの接触性が向上し、排ガス浄化性能が向上する。
【0122】
図6に示すように、下層21は、隔壁部12の排ガス流出側の端部に至らないように、隔壁部12の排ガス流入側の端部から排ガス流通方向Xに沿って延在している。
【0123】
排ガス浄化性能とコストとをバランスよく実現する観点から、基材10のうち下層21が形成されている部分の単位体積あたりの下層21の質量(焼成後の質量)は、好ましくは50g/L以上230g/L以下、より好ましくは70g/L以上180g/L以下、より一層好ましくは80g/L以上150g/L以下である。
【0124】
基材10のうち下層21が形成されている部分の単位体積当たりの下層21の質量は、式:(下層21の質量)/((基材10の体積)×(下層21の平均長さL21/基材10の長さL10))から算出される。
【0125】
第1触媒層20の平均長さL20に関する上記説明は、下層21の平均長さL21にも適用される。適用の際、「第1触媒層20」は「下層21」に、「平均長さL20」は「平均長さL21」に読み替えられる。
【0126】
下層21は、Pdを含む。
【0127】
下層21は、上層22により被覆されている。このため、下層21中の貴金属元素は、リン被毒を受けにくいのに対して、上層22中の貴金属元素は、リン被毒を受けやすい。一方、Pdは、リン被毒を受けやすいのに対して、Rhは、リン被毒を受けにくい。したがって、Pdは、下層21に含まれる貴金属元素として適しており、Rhは、上層22に含まれる貴金属元素として適している。
【0128】
第1触媒層20は、第2触媒層30よりも上流側に設けられているため、第1触媒層20と接触する排ガスの温度は、第2触媒層30と接触する排ガスの温度よりも高い。一方、Pdは、Ptよりも耐熱性に優れている。したがって、PtよりもPdの方が、下層21に含まれる貴金属元素として適している。
【0129】
第1触媒層20中のLaのLa換算の含有率は、第1触媒層20の質量を基準として、5質量%以上であるため、第1触媒層20中のLaにより第1触媒層20中の貴金属元素は酸化されやすい。一方、Ptは、酸化されると、排ガス浄化性能が低下するのに対して、Pdは、酸化されると、排ガス浄化性能が向上する。したがって、PtよりもPdの方が、下層21に含まれる貴金属元素として適している。
【0130】
Pdは、触媒活性成分として機能し得る形態、例えば、金属Pd、Pdを含む合金、Pdを含む化合物(例えば、Pdの酸化物)等の、Pdを含む触媒活性成分の形態で下層21に含まれる。排ガス浄化性能を向上させる観点から、Pdを含む触媒活性成分は、粒子状であることが好ましい。
【0131】
Pdの排ガス浄化性能を効果的に発揮させる観点から、下層21中のPdの金属換算の含有率は、下層21の質量を基準として、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、より一層好ましくは1質量%以上である。上限は、排ガス浄化性能とコストとのバランス等を考慮して適宜調整することができる。上限は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、より一層好ましくは10質量%以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0132】
下層21は、Pd以外の1種又は2種以上の貴金属元素を含んでいてもよい。
【0133】
Pd以外の貴金属元素は、例えば、Rh、Pt、Ru、Ir、Os等から選択することができる。Pd以外の貴金属元素は、触媒活性成分として機能し得る形態、例えば、金属、貴金属元素を含む合金、貴金属元素を含む化合物(例えば、貴金属元素の酸化物)等の、Pd以外の貴金属元素を含む触媒活性成分の形態で下層21に含まれる。排ガス浄化性能を高める観点から、Pd以外の貴金属元素を含む触媒活性成分は、粒子状であることが好ましい。
【0134】
下層21がPdとPd以外の貴金属元素とを含む場合、PdとPd以外の貴金属元素とが合金を形成し、排ガス浄化性能に関与するPdの活性点が減少するおそれがある。したがって、下層21がPdを含む場合、下層21中のPd以外の貴金属元素の金属換算の含有率は小さいことが好ましい。具体的には、下層21中のPd以外の貴金属元素の金属換算の含有率は、下層21の質量を基準として、好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下である。下限は0質量%である。「下層21中のPd以外の貴金属元素の金属換算の含有率」は、下層21がPd以外の1種の貴金属元素を含む場合には、当該1種の貴金属元素の金属換算の含有率を意味し、下層21がPd以外の2種以上の貴金属元素を含む場合には、当該2種以上の貴金属元素の金属換算の合計含有率を意味する。
【0135】
下層21は、1種又は2種以上の担体を含み、触媒活性成分の少なくとも一部は、1種又は2種以上の担体に担持されていることが好ましい。
【0136】
「触媒活性成分の少なくとも一部が担体に担持されている」とは、担体の外表面及び/又は細孔内表面に、触媒活性成分の少なくとも一部が、物理的又は化学的に吸着又は保持されている状態を意味する。この定義は、全ての触媒層(例えば、下層21、上層22、下層31、上層32等)に適用される。
【0137】
ある触媒層において触媒活性成分の少なくとも一部が担体に担持されていることは、例えば、SEM-EDX等を使用して確認することができる。具体的には、触媒層の断面をSEM-EDXで分析して得られた元素マッピングにおいて、触媒活性成分の少なくとも一部と担体とが同じ領域に存在している場合、触媒活性成分の少なくとも一部が担体に担持されていると判断することができる。
【0138】
担体は、例えば、無機酸化物から選択することができる。無機酸化物は、例えば、粒子状である。触媒活性成分の担持性を向上させる観点から、無機酸化物は、多孔質であることが好ましい。無機酸化物は、酸素貯蔵能(OSC:Oxygen Storage Capacity)を有していてもよいし、有していなくてもよい。担体として使用される無機酸化物は、バインダとして使用される無機酸化物(例えば、アルミナバインダ、ジルコニアバインダ、チタニアバインダ、シリカバインダ等の無機酸化物系バインダ)とは区別される。
【0139】
無機酸化物としては、例えば、Al系酸化物、Ce系酸化物、Ce-Zr系複合酸化物、Ce以外の希土類元素の酸化物、ジルコニア(ZrO)、シリカ(SiO)、チタニア(TiO)、ゼオライト(アルミノケイ酸塩)、MgO、ZnO、SnO等をベースとした酸化物等が挙げられる。
【0140】
下層21の耐熱性及び/又は酸素貯蔵能を向上させる観点から、担体は、Al系酸化物、Ce系酸化物及びCe-Zr系複合酸化物から選択することが好ましく、Al系酸化物及びCe-Zr系複合酸化物から選択することがより好ましい。一実施形態において、下層21は、担体として、Al系酸化物及びCe-Zr系複合酸化物を含む。
【0141】
下層21は、Laを含むことが好ましい。これにより、下層21の耐熱性が向上する。また、下層21中の貴金属元素のリン被毒が防止される。また、LaによるPdの酸化を通じて、下層21中のPdの排ガス浄化性能が向上する。また、下層21中のCe-Zr系複合酸化物がLaを含む場合、下層21中のCe-Zr系複合酸化物の耐熱性及び酸素貯蔵能が向上する。
【0142】
下層21がLaを含む場合、下層21は、1種又は2種以上のLa源を含む。La源に関する説明は、上記と同様である。
【0143】
下層21の耐熱性及び/又は酸素貯蔵能を向上させる観点から、La源は、Laを含むAl系酸化物及びLaを含むCe-Zr系複合酸化物から選択することが好ましい。一実施形態において、下層21は、La源として、Laを含むAl系酸化物及びLaを含むCe-Zr系複合酸化物を含む。Laを含むAl系酸化物は下層21の耐熱性の向上に寄与し、Laを含むCe-Zr系複合酸化物は下層21の耐熱性及び酸素貯蔵能の向上に寄与する。
【0144】
Laの作用を効果的に発揮させる観点から、下層21中のLaのLa換算の含有率は、下層21の質量を基準として、好ましくは5質量%以上、より好ましくは6質量%以上、より一層好ましくは7質量%以上である。上限は、排ガス浄化性能とコストとのバランス、他の成分の含有率等を考慮して適宜調整することができる。上限は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、より一層好ましくは10質量%以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0145】
下層21中のLaのLa換算の質量のうち、Laを含むAl系酸化物及びLaを含むCe-Zr系複合酸化物に由来するLaのLa換算の質量が占める割合は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、より一層好ましくは90質量%以上である。上限は100質量%である。
【0146】
下層21の耐熱性を向上させる観点から、下層21は、Alを含むことが好ましい。
【0147】
下層21がAlを含む場合、下層21は、1種又は2種以上のAl源を含む。Al源は、Alを含む酸化物である。Al源は、例えば、Al系酸化物、Alを含むCe系酸化物、Alを含むCe-Zr系複合酸化物、アルミナバインダ等から選択することができる。一実施形態において、下層21は、Al源として、Al系酸化物及びアルミナバインダを含む。
【0148】
下層21の耐熱性を向上させる観点から、下層21中のAlのAl換算の含有率は、下層21の質量を基準として、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、より一層好ましくは50質量%以上である。上限は、排ガス浄化性能とコストとのバランス、他の成分の含有率等を考慮して適宜調整することができる。上限は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、より一層好ましくは70質量%以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0149】
ある触媒層に関し、「当該触媒層中のAlのAl換算の含有率」は、当該触媒層が1種のAl源を含む場合には、当該1種のAl源に由来するAlのAl換算の含有率を意味し、当該触媒層が2種以上のAl源を含む場合には、当該2種以上のAl源に由来するAlのAl換算の合計含有率を意味する。この定義は、全ての触媒層(例えば、下層21、上層22、下層31、上層32等)に適用される。
【0150】
下層21の酸素貯蔵能を向上させる観点から、下層21は、Ceを含むことが好ましい。
【0151】
下層21がCeを含む場合、下層21は、1種又は2種以上のCe源を含む。Ce源は、Ceを含む酸化物である。Ce源は、例えば、Ceを含むAl系酸化物、Ce系酸化物、Ce-Zr系複合酸化物、セリアバインダ等から選択することができる。一実施形態において、下層21は、Ce源として、Ce-Zr系複合酸化物を含む。
【0152】
下層21の耐熱性及び酸素貯蔵能を向上させる観点から、下層21は、Zrを含むことが好ましい。
【0153】
下層21がZrを含む場合、下層21は、1種又は2種以上のZr源を含む。Zr源に関する説明は、上記と同様である。一実施形態において、下層21は、Zr源として、Ce-Zr系複合酸化物を含む。
【0154】
下層21の耐熱性及び酸素貯蔵能を向上させる観点から、下層21中のZrのZrO換算の含有率は、下層21の質量を基準として、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、より一層好ましくは40質量%以上である。上限は、排ガス浄化性能とコストとのバランス、他の成分の含有率等を考慮して適宜調整することができる。上限は、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、より一層好ましくは85質量%以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0155】
ある触媒層に関し、「当該触媒層中のZrのZrO換算の含有率」は、当該触媒層が1種のZr源を含む場合には、当該1種のZr源に由来するZrのZrO換算の含有率を意味し、当該触媒層が2種以上のZr源を含む場合には、当該2種以上のZr源に由来するZrのZrO換算の合計含有率を意味する。この定義は、全ての触媒層(例えば、下層21、上層22、下層31、上層32等)に適用される。
【0156】
下層21は、バインダ、安定剤等の成分を含んでいてもよい。バインダとしては、例えば、アルミナゾル、セリアゾル、ジルコニアゾル、チタニアゾル、シリカゾル等の無機酸化物系バインダが挙げられる。安定剤としては、例えば、アルカリ土類金属元素(例えば、Sr、Ba等)の炭酸塩、酸化物、硫酸塩等が挙げられる。
【0157】
<第1触媒層の上層>
以下、第1触媒層20の上層22について説明する。
【0158】
図4及び6に示すように、上層22は、下層21の上側に設けられている。
【0159】
「上層22が下層21の上側に設けられている」とは、下層21の2つの主面のうち、隔壁部12側の主面とは反対側の主面上に、上層22の一部又は全部が存在することを意味する。「下層21の主面」は、排ガス流通方向Xに延在する下層21の外表面を意味する。上層22は、下層21の主面上に、直接設けられていてもよいし、別の層を介して設けられていてもよいが、通常、下層21の主面上に直接設けられている。上層22は、下層21の主面の一部を覆うように設けられていてもよいし、下層21の主面の全体を覆うように設けられていてもよい。「上層22が下層21の上側に設けられている」には、上層22が下層21の主面上に直接設けられている実施形態、及び、上層22が下層21の主面上に別の層を介して設けられている実施形態のいずれもが包含される。
【0160】
図6に示すように、上層22は、隔壁部12の排ガス流出側の端部に至らないように、隔壁部12の排ガス流入側の端部から排ガス流通方向Xに沿って延在している。
【0161】
排ガス浄化性能とコストとをバランスよく実現する観点から、基材10のうち上層22が形成されている部分の単位体積当たりの上層22の質量(焼成後の質量)は、好ましくは20g/L以上150g/L以下、より好ましくは50g/L以上120g/L以下、より一層好ましくは70g/L以上100g/L以下である。
【0162】
基材10のうち上層22が形成されている部分の単位体積当たりの上層22の質量は、式:(上層22の質量)/((基材10の体積)×(上層22の平均長さL22/基材10の長さL10))から算出される。
【0163】
第1触媒層20の平均長さL20に関する上記説明は、上層22の平均長さL22にも適用される。適用の際、「第1触媒層20」は「上層22」に、「平均長さL20」は「平均長さL22」に読み替えられる。
【0164】
上層22は、Rhを含む。
【0165】
Rhは、触媒活性成分として機能し得る形態、例えば、金属Rh、Rhを含む合金、Rhを含む化合物(例えば、Rhの酸化物)等の、Rhを含む触媒活性成分の形態で上層22に含まれる。排ガス浄化性能を向上させる観点から、Rhを含む触媒活性成分は、粒子状であることが好ましい。
【0166】
Rhの排ガス浄化性能を効果的に発揮させる観点から、上層22中のRhの金属換算の含有率は、上層22の質量を基準として、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、より一層好ましくは0.1質量%以上である。上限は、排ガス浄化性能とコストとのバランス等を考慮して適宜調整することができる。上限は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、より一層好ましくは2質量%以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0167】
上層22は、Rhに加えて、Rh以外の1種又は2種以上の貴金属元素を含んでいてもよい。
【0168】
Rh以外の貴金属元素は、例えば、Pd、Pt、Ru、Ir、Os等から選択することができる。Rh以外の貴金属元素は、触媒活性成分として機能し得る形態、例えば、金属、貴金属元素を含む合金、貴金属元素を含む化合物(例えば、貴金属元素の酸化物)等の、Rh以外の貴金属元素を含む触媒活性成分の形態で上層22に含まれる。排ガス浄化性能を高める観点から、Rh以外の貴金属元素を含む触媒活性成分は、粒子状であることが好ましい。
【0169】
上層22がRhとRh以外の貴金属元素とを含む場合、RhとRh以外の貴金属元素とが合金を形成し、排ガス浄化性能に関与するRhの活性点が減少するおそれがある。したがって、上層22中のRh以外の貴金属元素の金属換算の含有率は小さいことが好ましい。具体的には、上層22中のRh以外の貴金属元素の金属換算の含有率は、上層22の質量を基準として、好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下である。下限は0質量%である。「上層22中のRh以外の貴金属元素の金属換算の含有率」は、上層22がRh以外の1種の貴金属元素を含む場合には、当該1種の貴金属元素の金属換算の含有率を意味し、上層22がRh以外の2種以上の貴金属元素を含む場合には、当該2種以上の貴金属元素の金属換算の合計含有率を意味する。
【0170】
上層22は、1種又は2種以上の担体を含み、触媒活性成分の少なくとも一部は、1種又は2種以上の担体に担持されていることが好ましい。
【0171】
担体は、例えば、無機酸化物から選択することができる。無機酸化物に関する説明は、上記と同様である。
【0172】
上層22の耐熱性及び/又は酸素貯蔵能を向上させる観点から、担体は、Al系酸化物、Ce系酸化物及びCe-Zr系複合酸化物から選択することが好ましく、Al系酸化物及びCe-Zr系複合酸化物から選択することがより好ましい。一実施形態において、上層22は、担体として、Al系酸化物及びCe-Zr系複合酸化物を含む。
【0173】
上層22は、Laを含むことが好ましい。これにより、上層22の耐熱性が向上する。また、上層22中の貴金属元素のリン被毒が防止される。また、上層22中のCe-Zr系複合酸化物がLaを含む場合、上層22中のCe-Zr系複合酸化物の耐熱性及び酸素貯蔵能が向上する。
【0174】
上層22がLaを含む場合、上層22は、1種又は2種以上のLa源を含む。La源に関する説明は、上記と同様である。
【0175】
上層22の耐熱性及び/又は酸素貯蔵能を向上させる観点から、La源は、Laを含むAl系酸化物及びLaを含むCe-Zr系複合酸化物から選択することが好ましい。一実施形態において、上層22は、La源として、Laを含むAl系酸化物及びLaを含むCe-Zr系複合酸化物を含む。Laを含むAl系酸化物は上層22の耐熱性の向上に寄与し、Laを含むCe-Zr系複合酸化物は上層22の耐熱性及び酸素貯蔵能の向上に寄与する。
【0176】
Laの作用を効果的に発揮させる観点から、上層22中のLaのLa換算の含有率は、上層22の質量を基準として、好ましくは5質量%以上、より好ましくは6質量%以上、より一層好ましくは7質量%以上である。上限は、排ガス浄化性能とコストとのバランス、他の成分の含有率等を考慮して適宜調整することができる。上限は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、より一層好ましくは10質量%以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0177】
上層22中のLaのLa換算の質量のうち、Laを含むAl系酸化物及びLaを含むCe-Zr系複合酸化物に由来するLaのLa換算の質量が占める割合は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、より一層好ましくは90質量%以上である。上限は100質量%である。
【0178】
上層22の耐熱性を向上させる観点から、上層22は、Alを含むことが好ましい。
【0179】
上層22がAlを含む場合、上層22は、1種又は2種以上のAl源を含む。Al源に関する説明は、上記と同様である。一実施形態において、上層22は、Al源として、Al系酸化物及びアルミナバインダを含む。
【0180】
上層22の耐熱性を向上させる観点から、上層22中のAlのAl換算の含有率は、上層22の質量を基準として、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、より一層好ましくは40質量%以上である。上限は、排ガス浄化性能とコストとのバランス、他の成分の含有率等を考慮して適宜調整することができる。上限は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、より一層好ましくは70質量%以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0181】
上層22の酸素貯蔵能を向上させる観点から、上層22は、Ceを含むことが好ましい。
【0182】
上層22がCeを含む場合、上層22は、1種又は2種以上のCe源を含む。Ce源に関する説明は、上記と同様である。一実施形態において、上層22は、Ce源として、Ce-Zr系複合酸化物を含む。
【0183】
上層22の耐熱性及び酸素貯蔵能を向上させる観点から、上層22は、Zrを含むことが好ましい。
【0184】
上層22がZrを含む場合、上層22は、1種又は2種以上のZr源を含む。Zr源に関する説明は、上記と同様である。一実施形態において、上層22は、Zr源として、Ce-Zr系複合酸化物を含む。
【0185】
上層22の耐熱性及び酸素貯蔵能を向上させる観点から、上層22中のZrのZrO換算の含有率は、上層22の質量を基準として、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、より一層好ましくは20質量%以上である。上限は、排ガス浄化性能とコストとのバランス、他の成分の含有率等を考慮して適宜調整することができる。上限は、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、より一層好ましくは85質量%以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0186】
上層22は、バインダ、安定剤等の成分を含んでいてもよい。バインダ及び安定剤に関する説明は、上記と同様である。
【0187】
<第2触媒層>
以下、第2触媒層30について説明する。
【0188】
図5及び6に示すように、第2触媒層30は、隔壁部12のセル13側表面のうち、下流側の領域に設けられている。「隔壁部12のセル13側表面」の意義は、上記と同様である。「下流側の領域」は、隔壁部12の排ガス流入側の端部に至らないように、隔壁部12の排ガス流出側の端部から排ガス流通方向Xとは反対の方向に沿って延在する領域を意味する。第2触媒層30は、隔壁部12のセル13側表面に直接設けられていてもよいし、他の層を介して設けられていてもよいが、通常、隔壁部12のセル13側表面に直接設けられている。
【0189】
図6に示すように、第2触媒層30は、隔壁部12の排ガス流入側の端部に至らないように、隔壁部12の排ガス流出側の端部から排ガス流通方向Xとは反対の方向に沿って延在している。
【0190】
図6に示すように、第2触媒層30は、第1触媒層20の下流側に設けられている。「第2触媒層30が第1触媒層20の下流側に設けられている」は、隔壁部12のセル13側表面のうち、第1触媒層20が設けられている領域よりも排ガス流通方向Xの下流側の領域に、第2触媒層30の少なくとも一部が存在することを意味する。
【0191】
図6に示すように、第2触媒層30の排ガス流入側の端部は、第1触媒層20の排ガス流出側の端部と境界面Sで接している。但し、第2触媒層30の排ガス流入側の端部は、第1触媒層20の排ガス流出側の端部と重なる部分(すなわち、第1触媒層20の排ガス流出側の端部の上側に位置して第1触媒層20の排ガス流出側の端部を覆う部分)を有していてもよい。また、第1触媒層20の排ガス流出側の端部は、第2触媒層30の排ガス流入側の端部と重なる部分(すなわち、第2触媒層30の排ガス流入側の端部の上側に位置して第2触媒層30の排ガス流入側の端部を覆う部分)を有していてもよい。これらの場合も「第2触媒層30が第1触媒層20の下流側に設けられている」に包含される。
【0192】
第2触媒層30の下層31の排ガス流入側の端部は、第1触媒層20の下層21の排ガス流出側の端部と重なる部分(すなわち、第1触媒層20の下層21の排ガス流出側の端部の上側に位置して第1触媒層20の下層21の排ガス流出側の端部を覆う部分)を有していてもよい。また、第1触媒層20の下層21の排ガス流出側の端部は、第2触媒層30の下層31の排ガス流入側の端部と重なる部分(すなわち、第2触媒層30の下層31の排ガス流入側の端部の上側に位置して第2触媒層30の下層31の排ガス流入側の端部を覆う部分)を有していてもよい。これらの場合も「第2触媒層30が第1触媒層20の下流側に設けられている」に包含される。
【0193】
第2触媒層30の上層32の排ガス流入側の端部は、第1触媒層20の上層22の排ガス流出側の端部と重なる部分(すなわち、第1触媒層20の上層22の排ガス流出側の端部の上側に位置して第1触媒層20の上層22の排ガス流出側の端部を覆う部分)を有していてもよい。また、第1触媒層20の上層22の排ガス流出側の端部は、第2触媒層30の上層32の排ガス流入側の端部と重なる部分(すなわち、第2触媒層30の上層32の排ガス流入側の端部の上側に位置して第2触媒層30の上層32の排ガス流入側の端部を覆う部分)を有していてもよい。これらの場合も「第2触媒層30が第1触媒層20の下流側に設けられている」に包含される。
【0194】
排ガス浄化性能とコストとをバランスよく実現する観点から、基材10のうち第2触媒層30が形成されている部分の単位体積あたりの第2触媒層30の質量(焼成後の質量)は、好ましくは70g/L以上380g/L以下、より好ましくは150g/L以上300g/L以下、より一層好ましくは200g/L以上260g/L以下である。
【0195】
基材10のうち第2触媒層30が形成されている部分の単位体積当たりの第2触媒層30の質量は、式:(第2触媒層30の質量)/((基材10の体積)×(第2触媒層30の平均長さL30/基材10の長さL10))から算出される。
【0196】
第1触媒層20の平均長さL20の測定方法に関する上記説明は、第2触媒層30の平均長さL30の測定方法にも適用される。適用の際、「第1触媒層20」は「第2触媒層30」に、「平均長さL20」は「平均長さL30」に読み替えられる。但し、第2触媒層30の平均長さL30の測定方法では、サンプルを基材10の軸方向と垂直な平面によって5mm間隔で切断し、サンプルの排ガス流出側の端部側から順に、第1切断片、第2切断片、・・・、第n切断片を得る。
【0197】
第2触媒層30の平均長さL30は、排ガス浄化性能とコストとのバランス、第1触媒層20の平均長さL20等を考慮して適宜調整することができる。
【0198】
第2触媒層30は、Laを含んでいてもよいし、含まなくてもよい。第2触媒層30がLaを含む場合、第2触媒層30の耐熱性が向上する。また、第2触媒層30中のCe-Zr系複合酸化物がLaを含む場合、第2触媒層30中のCe-Zr系複合酸化物の耐熱性及び酸素貯蔵能が向上する。
【0199】
第2触媒層30がLaを含む一実施形態において、下層31及び上層32のうち、一方はLaを含み、他方はLaを含まない。第2触媒層30がLaを含む別の実施形態において、下層31及び上層32の両方がLaを含む。Laの作用を効果的に発揮させる観点から、下層31及び上層32の両方がLaを含むことが好ましい。
【0200】
第2触媒層30がLaを含む場合、第2触媒層30は、1種又は2種以上のLa源を含む。La源に関する説明は、上記と同様である。
【0201】
第2触媒層30の耐熱性及び/又は酸素貯蔵能を向上させる観点から、La源は、Laを含むAl系酸化物及びLaを含むCe-Zr系複合酸化物から選択することが好ましい。一実施形態において、第2触媒層30は、La源として、Laを含むAl系酸化物及びLaを含むCe-Zr系複合酸化物を含む。Laを含むAl系酸化物は第2触媒層30の耐熱性の向上に寄与し、Laを含むCe-Zr系複合酸化物は第2触媒層30の耐熱性及び酸素貯蔵能の向上に寄与する。
【0202】
第2触媒層30中のLaによる第2触媒層30中の貴金属元素(特にRh)の排ガス浄化性能の低下を防止する観点から、第2触媒層30中のLaのLa換算の含有率は、第2触媒層30の質量を基準として、好ましくは2.7質量%以下、より好ましくは2.5質量%以下である。下限は、0質量%であってもよいし、0質量%超であってもよい。第2触媒層30がLaを含む場合、Laの作用を効果的に発揮させる観点から、下限は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、より一層好ましくは0.1質量%以上である。これらの下限はそれぞれ、上述の上限のいずれと組み合わせてもよい。
【0203】
第2触媒層30中のLaのLa換算の質量のうち、Laを含むAl系酸化物及びLaを含むCe-Zr系複合酸化物に由来するLaのLa換算の質量が占める割合は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、より一層好ましくは90質量%以上である。上限は100質量%である。
【0204】
<第2触媒層の下層>
以下、第2触媒層30の下層31について説明する。
【0205】
図5及び6に示すように、下層31は、隔壁部12のセル13側表面のうち、下流側の領域に設けられている。「隔壁部12のセル13側表面」及び「下流側の領域」の意義は上記の通りである。下層31は、隔壁部12のセル13側表面に直接設けられていてもよいし、他の層を介して設けられていてもよいが、通常、隔壁部12のセル13側表面に直接設けられている。
【0206】
下層31は、隔壁部12のセル13側表面からセル13側に隆起している部分(以下「隆起部分」という。)で構成されていてもよいし、隔壁部12の内部に存在する部分(以下「内在部分」という。)で構成されていてもよいし、隆起部分及び内在部分を有していてもよい。本発明には、下層31が隆起部分で構成されている実施形態、下層31が内在部分で構成されている実施形態、並びに、下層31が隆起部分及び内在部分を有する実施形態のいずれも包含される。
【0207】
図5及び6に示すように、下層31は、隆起部分を有することが好ましい。これにより、下層31と排ガスとの接触性が向上し、排ガス浄化性能が向上する。
【0208】
図6に示すように、下層31は、隔壁部12の排ガス流入側の端部に至らないように、隔壁部12の排ガス流出側の端部から排ガス流通方向Xとは反対の方向に沿って延在している。
【0209】
排ガス浄化性能とコストとをバランスよく実現する観点から、基材10のうち下層31が形成されている部分の単位体積当たりの下層31の質量(焼成後の質量)は、好ましくは50g/L以上230g/L以下、より好ましくは100g/L以上180g/L以下、より一層好ましくは130g/L以上160g/L以下である。
【0210】
基材10のうち下層31が形成されている部分の単位体積当たりの下層31の質量は、式:(下層31の質量)/((基材10の体積)×(下層31の平均長さL31/基材10の長さL10))から算出される。
【0211】
第2触媒層30の平均長さL30に関する上記説明は、下層31の平均長さL31にも適用される。適用の際、「第2触媒層30」は「下層31」に、「平均長さL30」は「平均長さL31」に読み替えられる。
【0212】
下層31は、Ptを含む。Ptは、Rh及びPdよりも低コストであるため、コスト低減の観点から使用される。
【0213】
下層31は、上層32により被覆されているため、下層31と接触する排ガスは、上層32と接触する排ガスよりも雰囲気が安定している。より具体的には、下層31と接触する排ガスは、瞬間的に酸素の多い雰囲気や還元物質(CO/HC)が多い雰囲気にはなりにくい。Rhは雰囲気変動の大きい環境での浄化性に優れており、Ptは雰囲気の安定した環境での浄化性に優れている。したがって、Ptは、下層31に含まれる貴金属元素として適しており、Rhは、上層32に含まれる貴金属元素として適している。
【0214】
第2触媒層30は、第1触媒層20よりも下流側に設けられているため、第2触媒層30と接触する排ガスの温度は、第1触媒層20と接触する排ガスの温度よりも低い。一方、Ptは、Pdよりも耐熱性に劣っている。したがって、PdよりもPtの方が、下層31に含まれる貴金属元素として適している。
【0215】
第2触媒層30中のLaのLa換算の含有率は、第2触媒層30の質量を基準として、3質量%以下であるため、第2触媒層30中のLaにより第2触媒層30中の貴金属元素は酸化されにくい。一方、Pdは、酸化されると、排ガス浄化性能が向上するのに対して、Ptは、酸化されると、排ガス浄化性能が低下する。したがって、PdよりもPtの方が、下層31に含まれる貴金属元素として適している。
【0216】
Ptは、触媒活性成分として機能し得る形態、例えば、金属Pt、Ptを含む合金、Ptを含む化合物(例えば、Ptの酸化物)等の、Ptを含む触媒活性成分の形態で下層31に含まれる。排ガス浄化性能を向上させる観点から、Ptを含む触媒活性成分は、粒子状であることが好ましい。
【0217】
Ptの排ガス浄化性能を効果的に発揮させる観点から、下層31中のPtの金属換算の含有率は、下層31の質量を基準として、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、より一層好ましくは0.3質量%以上である。上限は、排ガス浄化性能とコストとのバランス等を考慮して適宜調整することができる。上限は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、より一層好ましくは1質量%以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0218】
下層31は、Pt以外の1種又は2種以上の貴金属元素を含んでいてもよい。
【0219】
Pt以外の貴金属元素は、例えば、Rh、Pd、Ru、Ir、Os等から選択することができる。Pt以外の貴金属元素は、触媒活性成分として機能し得る形態、例えば、金属、貴金属元素を含む合金、貴金属元素を含む化合物(例えば、貴金属元素の酸化物)等の、Pt以外の貴金属元素を含む触媒活性成分の形態で下層31に含まれる。排ガス浄化性能を高める観点から、Pt以外の貴金属元素を含む触媒活性成分は、粒子状であることが好ましい。
【0220】
下層31がPtとPt以外の貴金属元素とを含む場合、PtとPt以外の貴金属元素とが合金を形成し、排ガス浄化性能に関与するPtの活性点が減少するおそれがある。したがって、下層31がPtを含む場合、下層31中のPt以外の貴金属元素の金属換算の含有率は小さいことが好ましい。具体的には、下層31中のPt以外の貴金属元素の金属換算の含有率は、下層31の質量を基準として、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下、より一層好ましくは0.05質量%以下である。下限は0質量%である。「下層31中のPt以外の貴金属元素の金属換算の含有率」は、下層31がPt以外の1種の貴金属元素を含む場合には、当該1種の貴金属元素の金属換算の含有率を意味し、下層31がPt以外の2種以上の貴金属元素を含む場合には、当該2種以上の貴金属元素の金属換算の合計含有率を意味する。
【0221】
下層31は、1種又は2種以上の担体を含み、触媒活性成分の少なくとも一部は、1種又は2種以上の担体に担持されていることが好ましい。
【0222】
担体は、例えば、無機酸化物から選択することができる。無機酸化物に関する説明は、上記と同様である。
【0223】
下層31の耐熱性及び/又は酸素貯蔵能を向上させる観点から、担体は、Al系酸化物、Ce系酸化物及びCe-Zr系複合酸化物から選択することが好ましく、Al系酸化物及びCe-Zr系複合酸化物から選択することがより好ましい。一実施形態において、下層31は、担体として、Al系酸化物及びCe-Zr系複合酸化物を含む。
【0224】
下層31は、Laを含んでいてもよいし、含まなくてもよい。下層31がLaを含む場合、下層31の耐熱性が向上する。また、下層31中のCe-Zr系複合酸化物がLaを含む場合、下層31中のCe-Zr系複合酸化物の耐熱性及び酸素貯蔵能が向上する。
【0225】
下層31がLaを含む場合、下層31は、1種又は2種以上のLa源を含む。La源に関する説明は、上記と同様である。
【0226】
下層31の耐熱性及び/又は酸素貯蔵能を向上させる観点から、La源は、Laを含むAl系酸化物及びLaを含むCe-Zr系複合酸化物から選択することが好ましい。一実施形態において、下層31は、La源として、Laを含むAl系酸化物及びLaを含むCe-Zr系複合酸化物を含む。
【0227】
下層31中のLaによる下層31中の貴金属元素(特にPt)の排ガス浄化性能の低下を防止する観点から、下層31中のLaのLa換算の含有率は、下層31の質量を基準として、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.9質量%以下、より一層好ましくは1.8質量%以下である。下限は、0質量%であってもよいし、0質量%超であってもよい。下層31がLaを含む場合、Laの作用を効果的に発揮させる観点から、下限は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上、より一層好ましくは0.05質量%以上である。これらの下限はそれぞれ、上述の上限のいずれと組み合わせてもよい。
【0228】
下層31中のLaのLa換算の質量のうち、Laを含むAl系酸化物及びLaを含むCe-Zr系複合酸化物に由来するLaのLa換算の質量が占める割合は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、より一層好ましくは90質量%以上である。上限は100質量%である。
【0229】
下層31中のPt以外の貴金属元素の金属換算の含有率が小さい場合、下層31中のPtの金属換算の含有率が相対的に大きくなり、下層31の排ガス浄化性能に対するPtの影響が大きくなる。この場合、下層31中のLaにより下層31中のPtが酸化されて下層31中のPtの排ガス浄化性能が低下することに起因する、下層31の排ガス浄化性能の低下が顕著となる。したがって、下層31中のPt以外の貴金属元素の金属換算の含有率が小さい場合、下層31中のLaのLa換算の含有率が小さいことが好ましい。これにより、下層31の排ガス浄化性能の低下を効果的に防止することができる。具体的には、下層31の排ガス浄化性能の低下を効果的に防止する観点から、下層31中のPt以外の貴金属元素の金属換算の含有率が、下層31の質量を基準として、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下、より一層好ましくは0.05質量%以下である上記実施形態と、下層31中のLaのLa換算の含有率が、下層31の質量を基準として、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.9質量%以下、より一層好ましくは1.8質量%以下である上記実施形態とを組み合わせることが好ましい。前者及び後者の実施形態に関する説明は、上記の通りである。
【0230】
下層31の耐熱性を向上させる観点から、下層31は、Alを含むことが好ましい。
【0231】
下層31がAlを含む場合、下層31は、1種又は2種以上のAl源を含む。Al源に関する説明は、上記と同様である。一実施形態において、下層31は、Al源として、Al系酸化物及びアルミナバインダを含む。
【0232】
下層31の耐熱性を向上させる観点から、下層31中のAlのAl換算の含有率は、下層31の質量を基準として、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、より一層好ましくは40質量%以上である。上限は、排ガス浄化性能とコストとのバランス、他の成分の含有率等を考慮して適宜調整することができる。上限は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、より一層好ましくは70質量%以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0233】
下層31の酸素貯蔵能を向上させる観点から、下層31は、Ceを含むことが好ましい。
【0234】
下層31がCeを含む場合、下層31は、1種又は2種以上のCe源を含む。Ce源に関する説明は、上記と同様である。一実施形態において、下層31は、Ce源として、Ce-Zr系複合酸化物を含む。
【0235】
下層31の耐熱性及び酸素貯蔵能を向上させる観点から、下層31は、Zrを含むことが好ましい。
【0236】
下層31がZrを含む場合、下層31は、1種又は2種以上のZr源を含む。Zr源に関する説明は、上記と同様である。一実施形態において、下層31は、Zr源として、Ce-Zr系複合酸化物を含む。
【0237】
下層31の耐熱性及び酸素貯蔵能を向上させる観点から、下層31中のZrのZrO換算の含有率は、下層31の質量を基準として、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、より一層好ましくは40質量%以上である。上限は、排ガス浄化性能とコストとのバランス、他の成分の含有率等を考慮して適宜調整することができる。上限は、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、より一層好ましくは85質量%以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0238】
下層31は、バインダ、安定剤等の成分を含んでいてもよい。バインダ及び安定剤に関する説明は、上記と同様である。
【0239】
<第2触媒層の上層>
以下、第2触媒層30の上層32について説明する。
【0240】
図5及び6に示すように、上層32は、下層31の上側に設けられている。
【0241】
「上層32が下層31の上側に設けられている」とは、下層31の2つの主面のうち、隔壁部12側の主面とは反対側の主面上に、上層32の一部又は全部が存在することを意味する。「下層31の主面」は、排ガス流通方向Xに延在する下層31の外表面を意味する。上層32は、下層31の主面上に、直接設けられていてもよいし、別の層を介して設けられていてもよいが、通常、下層31の主面上に直接設けられている。上層32は、下層31の主面の一部を覆うように設けられていてもよいし、下層31の主面の全体を覆うように設けられていてもよい。「上層32が下層31の上側に設けられている」には、上層32が下層31の主面上に直接設けられている実施形態、及び、上層32が下層31の主面上に別の層を介して設けられている実施形態のいずれもが包含される。
【0242】
図6に示すように、上層32は、隔壁部12の排ガス流入側の端部に至らないように、隔壁部12の排ガス流出側の端部から排ガス流通方向Xとは反対の方向に沿って延在している。
【0243】
排ガス浄化性能とコストとをバランスよく実現する観点から、基材10のうち上層32が形成されている部分の単位体積当たりの上層32の質量(焼成後の質量)は、好ましくは20g/L以上150g/L以下、より好ましくは50g/L以上120g/L以下、より一層好ましくは70g/L以上100g/L以下である。
【0244】
基材10のうち上層32が形成されている部分の単位体積当たりの上層32の質量は、式:(上層32の質量)/((基材10の体積)×(上層32の平均長さL32/基材10の長さL10))から算出される。
【0245】
第2触媒層30の平均長さL30に関する上記説明は、上層32の平均長さL32にも適用される。適用の際、「第2触媒層30」は「上層32」に、「平均長さL30」は「平均長さL32」に読み替えられる。
【0246】
上層32は、Rhを含む。
【0247】
Rhは、触媒活性成分として機能し得る形態、例えば、金属Rh、Rhを含む合金、Rhを含む化合物(例えば、Rhの酸化物)等の、Rhを含む触媒活性成分の形態で上層32に含まれる。排ガス浄化性能を向上させる観点から、Rhを含む触媒活性成分は、粒子状であることが好ましい。
【0248】
Rhの排ガス浄化性能を効果的に発揮させる観点から、上層32中のRhの金属換算の含有率は、上層32の質量を基準として、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、より一層好ましくは0.1質量%以上である。上限は、排ガス浄化性能とコストとのバランス等を考慮して適宜調整することができる。上限は、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、より一層好ましくは0.3質量%以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0249】
上層32は、Rhに加えて、Rh以外の1種又は2種以上の貴金属元素を含んでいてもよい。
【0250】
Rh以外の貴金属元素は、例えば、Pd、Pt、Ru、Ir、Os等から選択することができる。Rh以外の貴金属元素は、触媒活性成分として機能し得る形態、例えば、金属、貴金属元素を含む合金、貴金属元素を含む化合物(例えば、貴金属元素の酸化物)等の、Rh以外の貴金属元素を含む触媒活性成分の形態で上層32に含まれる。排ガス浄化性能を高める観点から、Rh以外の貴金属元素を含む触媒活性成分は、粒子状であることが好ましい。
【0251】
上層32がRhとRh以外の貴金属元素とを含む場合、RhとRh以外の貴金属元素とが合金を形成し、排ガス浄化性能に関与するRhの活性点が減少するおそれがある。したがって、上層32中のRh以外の貴金属元素の金属換算の含有率は小さいことが好ましい。具体的には、上層32中のRh以外の貴金属元素の金属換算の含有率は、上層32の質量を基準として、好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下である。下限は0質量%である。「上層32中のRh以外の貴金属元素の金属換算の含有率」は、上層32がRh以外の1種の貴金属元素を含む場合には、当該1種の貴金属元素の金属換算の含有率を意味し、上層32がRh以外の2種以上の貴金属元素を含む場合には、当該2種以上の貴金属元素の金属換算の合計含有率を意味する。
【0252】
上層32は、1種又は2種以上の担体を含み、触媒活性成分の少なくとも一部は、1種又は2種以上の担体に担持されていることが好ましい。
【0253】
担体は、例えば、無機酸化物から選択することができる。無機酸化物に関する説明は、上記と同様である。
【0254】
上層32の耐熱性及び/又は酸素貯蔵能を向上させる観点から、担体は、Al系酸化物、Ce系酸化物及びCe-Zr系複合酸化物から選択することが好ましく、Al系酸化物及びCe-Zr系複合酸化物から選択することがより好ましい。一実施形態において、上層32は、担体として、Al系酸化物及びCe-Zr系複合酸化物を含む。
【0255】
上層32は、Laを含んでいてもよいし、含まなくてもよい。上層32がLaを含む場合、上層32の耐熱性が向上する。また、上層32中のCe-Zr系複合酸化物がLaを含む場合、上層32中のCe-Zr系複合酸化物の耐熱性及び酸素貯蔵能が向上する。
【0256】
上層32がLaを含む場合、上層32は、1種又は2種以上のLa源を含む。La源に関する説明は、上記と同様である。
【0257】
上層32の耐熱性及び/又は酸素貯蔵能を向上させる観点から、La源は、Laを含むAl系酸化物及びLaを含むCe-Zr系酸化物から選択することが好ましい。一実施形態において、上層32は、La源として、Laを含むAl系酸化物及びLaを含むCe-Zr系複合酸化物を含む。
【0258】
上層32中のLaによる上層32中の貴金属元素(特にRh)の排ガス浄化性能の低下を防止する観点から、上層32中のLaのLa換算の含有率は、上層32の質量を基準として、好ましくは4質量%以下、より好ましくは3.5質量%以下、より一層好ましくは3質量%以下である。下限は、0質量%であってもよいし、0質量%超であってもよい。上層32がLaを含む場合、Laの作用を効果的に発揮させる観点から、下限は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上、より一層好ましくは0.05質量%以上である。これらの下限はそれぞれ、上述の上限のいずれと組み合わせてもよい。
【0259】
上層32中のLaのLa換算の質量のうち、Laを含むAl系酸化物及びLaを含むCe-Zr系酸化物に由来するLaのLa換算の質量が占める割合は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、より一層好ましくは90質量%以上である。上限は100質量%である。
【0260】
上層32の耐熱性を向上させる観点から、上層32は、Alを含むことが好ましい。
【0261】
上層32がAlを含む場合、上層32は、1種又は2種以上のAl源を含む。Al源に関する説明は、上記と同様である。一実施形態において、上層32は、Al源として、Al系酸化物及びアルミナバインダを含む。
【0262】
上層32の耐熱性を向上させる観点から、上層32中のAlのAl換算の含有率は、上層32の質量を基準として、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上、より一層好ましくは25質量%以上である。上限は、排ガス浄化性能とコストとのバランス、他の成分の含有率等を考慮して適宜調整することができる。上限は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、より一層好ましくは70質量%以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0263】
上層32の酸素貯蔵能を向上させる観点から、上層32は、Ceを含むことが好ましい。
【0264】
上層32がCeを含む場合、上層32は、1種又は2種以上のCe源を含む。Ce源に関する説明は、上記と同様である。一実施形態において、上層32は、Ce源として、Ce-Zr系複合酸化物を含む。
【0265】
上層32の耐熱性及び酸素貯蔵能を向上させる観点から、上層32は、Zrを含むことが好ましい。
【0266】
上層32がZrを含む場合、上層32は、1種又は2種以上のZr源を含む。Zr源に関する説明は、上記と同様である。一実施形態において、上層32は、Zr源として、Ce-Zr系複合酸化物を含む。
【0267】
上層32の耐熱性及び酸素貯蔵能を向上させる観点から、上層32中のZrのZrO換算の含有率は、上層32の質量を基準として、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、より一層好ましくは20質量%以上である。上限は、排ガス浄化性能とコストとのバランス、他の成分の含有率等を考慮して適宜調整することができる。上限は、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、より一層好ましくは85質量%以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0268】
上層32は、バインダ、安定剤等の成分を含んでいてもよい。バインダ及び安定剤に関する説明は、上記と同様である。
【0269】
<触媒の製造>
触媒1は、基材10上に下層21を形成した後、下層21上に上層22を形成するとともに、基材10上に下層31を形成した後、下層31上に上層32を形成することにより製造することができる。基材10上に下層21及び上層22を形成した後、基材10上に下層31及び上層32を形成してもよいし、基材10上に下層31及び上層32を形成した後、基材10上に下層21及び上層22を形成してもよい。
【0270】
下層21は、貴金属元素の供給源(例えば、Pd等の貴金属元素の塩)、場合によりLaの供給源(例えば、Laを含むAl系酸化物、Laを含むCe系酸化物、Laを含むCe-Zr系複合酸化物等)及び場合によりその他の成分(例えば、Laの供給源以外の無機酸化物、アルミナバインダ等のバインダ、溶媒等)を混合して第1スラリーを調製し、第1スラリーを基材10上に塗布し、乾燥し、焼成することにより形成することができる。
【0271】
上層22は、貴金属元素の供給源(例えば、Rh等の貴金属元素の塩)、場合によりLaの供給源(例えば、Laを含むAl系酸化物、Alを含むCe系酸化物、Alを含むCe-Zr系複合酸化物等)及び場合によりその他の成分(例えば、Laの供給源以外の無機酸化物、アルミナバインダ等のバインダ、溶媒等)を混合して第2スラリーを調製し、第2スラリーを下層21上に塗布し、乾燥し、焼成することにより形成することができる。
【0272】
下層31は、貴金属元素の供給源(例えば、Pt等の貴金属元素の塩)、場合によりLaの供給源(例えば、Laを含むAl系酸化物、Laを含むCe系酸化物、Laを含むCe-Zr系複合酸化物等)及び場合によりその他の成分(例えば、Laの供給源以外の無機酸化物、アルミナバインダ等のバインダ、溶媒等)を混合して第3スラリーを調製し、第3スラリーを基材10上に塗布し、乾燥し、焼成することにより形成することができる。
【0273】
上層32は、貴金属元素の供給源(例えば、Rh等の貴金属元素の塩)、場合によりLaの供給源(例えば、Laを含むAl系酸化物、Alを含むCe系酸化物、Alを含むCe-Zr系複合酸化物等)及び場合によりその他の成分(例えば、Laの供給源以外の無機酸化物、アルミナバインダ等のバインダ、溶媒等)を混合して第4スラリーを調製し、第4スラリーを下層31上に塗布し、乾燥し、焼成することにより形成することができる。
【0274】
貴金属元素の塩としては、例えば、硝酸塩、アンミン錯体塩、酢酸塩、塩化物等が挙げられる。バインダとしては、例えば、アルミナゾル、ジルコニアゾル、チタニアゾル、シリカゾル、セリアゾル等が挙げられる。溶媒としては、例えば、水、有機溶媒等が挙げられる。
【0275】
乾燥温度は、例えば70℃以上150℃以下であり、乾燥時間は、例えば5分以上1時間以下である。焼成温度は、例えば200℃以上700℃以下であり、焼成時間は、例えば0.5時間以上5時間以下である。焼成は、例えば、大気雰囲気下で行うことができる。
【0276】
≪排ガス浄化システム≫
以下、図7~9に基づいて、排ガス浄化システム100について説明する。
【0277】
図7に示すように、排ガス浄化システム100は、排気管Pと、排気管Pの排気通路内の上流側に設けられた第1排ガス浄化用触媒1B(以下「触媒1B」という。)と、排気管Pの排気通路内の下流側に設けられた第2排ガス浄化用触媒1C(以下「触媒1C」という。)とを備える。
【0278】
排気管Pの一端部P1は内燃機関(例えば、ガソリンエンジン等)に接続されており、内燃機関から排出された排ガスは、排気管Pの一端部P1から他端部P2に向けて排気管P内を流通する。すなわち、排気管Pは、排ガスが流通する排気通路を形成する。図面において、排ガス流通方向は、符号Xで示されている。排気管P内を流通する排ガスは、排気管Pの排気通路内の上流側に設けられた触媒1Bで処理され、触媒1Bを通過した排ガスは、排気管Pの排気通路内の下流側に設けられた触媒1Cで処理される。
【0279】
以下、図8に基づいて、触媒1Bについて説明する。触媒1Bにおいて、触媒1と同一の部材は、触媒1と同一の符号で示されている。以下で別段規定される場合を除き、触媒1に関する上記説明は、触媒1Bにも適用される。
【0280】
図8に示すように、触媒1Bは、第1基材10Bと、第1基材10B上に設けられた第1触媒層20Bとを備える。
【0281】
図8に示すように、第1触媒層20Bは、第1基材10B上に設けられた下層21Bと、下層21B上に設けられた上層22Bとを備える。下層21BはPdを含み、上層22BはRhを含む。
【0282】
基材10に関する上記説明は、第1基材10Bにも適用される。適用の際、「基材10」は、「第1基材10B」に読み替えられる。
【0283】
第1触媒層20に関する上記説明は、以下で別段規定される場合を除き、第1触媒層20Bにも適用される。適用の際、「第1触媒層20」は、「第1触媒層20B」に読み替えられる。
【0284】
第1触媒層20の下層21及び上層22に関する上記説明は、以下で別段規定される場合を除き、第1触媒層20Bの下層21B及び上層22Bにも適用される。適用の際、「下層21」は「下層21B」に、「上層22」は「上層22B」に読み替えられる。
【0285】
図8に示すように、第1触媒層20B、下層21B及び上層22Bは、隔壁部12の排ガス流入側の端部から隔壁部12の排ガス流出側の端部まで排ガス流通方向Xに沿って延在している。第1触媒層20B、下層21B及び上層22Bは、隔壁部12の排ガス流出側の端部に至らないように、隔壁部12の排ガス流入側の端部から排ガス流通方向Xに沿って延在していてもよいし、隔壁部12の排ガス流入側の端部に至らないように、隔壁部12の排ガス流出側の端部から排ガス流通方向Xとは反対の方向に沿って延在していてもよい。
【0286】
以下、図9に基づいて、触媒1Cについて説明する。触媒1Cにおいて、触媒1と同一の部材は、触媒1と同一の符号で示されている。以下で別段規定される場合を除き、触媒1に関する上記説明は、触媒1Cにも適用される。
【0287】
図9に示すように、触媒1Cは、第2基材10Cと、第2基材10C上に設けられた第2触媒層30Cとを備える。
【0288】
図9に示すように、第2触媒層30Cは、第2基材10C上に設けられた下層31Cと、下層31C上に設けられた上層32Cとを備える。下層31CはPtを含み、上層32CはRhを含む。
【0289】
基材10に関する上記説明は、第2基材10Cにも適用される。適用の際、「基材10」は、「第2基材10C」に読み替えられる。
【0290】
第2触媒層30に関する上記説明は、以下で別段規定される場合を除き、第2触媒層30Cにも適用される。適用の際、「第2触媒層30」は、「第2触媒層30C」に読み替えられる。
【0291】
第2触媒層30の下層31及び上層32に関する上記説明は、以下で別段規定される場合を除き、第2触媒層30Cの下層31C及び上層32Cにも適用される。適用の際、「下層31」は「下層31C」に、「上層32」は「上層32C」に読み替えられる。
【0292】
図9に示すように、第2触媒層30C、下層31C及び上層32Cは、隔壁部12の排ガス流入側の端部から隔壁部12の排ガス流出側の端部まで排ガス流通方向Xに沿って延在している。第2触媒層30C、下層31C及び上層32Cは、隔壁部12の排ガス流出側の端部に至らないように、隔壁部12の排ガス流入側の端部から排ガス流通方向Xに沿って延在していてもよいし、隔壁部12の排ガス流入側の端部に至らないように、隔壁部12の排ガス流出側の端部から排ガス流通方向Xとは反対の方向に沿って延在していてもよい。
【0293】
触媒1に関して説明した理由と同様の理由から、第1触媒層20Bでは、第1触媒層20B中のLaによる第1触媒層20B中のRhの排ガス浄化性能(特に、NOx浄化性能)の低下を防止する観点から、第1触媒層20B中のLaのLa換算の含有率を減少させることよりも、第1触媒層20Bの耐熱性を向上させる観点から、第1触媒層20B中のLaのLa換算の含有率を増加させることが求められ、第2触媒層30Cでは、第2触媒層30Cの耐熱性を向上させる観点から、第2触媒層30C中のLaのLa換算の含有率を増加させることよりも、第2触媒層30C中のLaによる第2触媒層30C中のRhの排ガス浄化性能(特に、NOx浄化性能)の低下を防止する観点から、第2触媒層30C中のLaのLa換算の含有率を減少させることが求められる。したがって、排ガス浄化システム100は、第1触媒層20B中のLaのLa換算の含有率が、第1触媒層20Bの質量を基準として、5質量%以上であり、第2触媒層30C中のLaのLa換算の含有率が、第2触媒層30Cの質量を基準として、3質量%以下であることを特徴とする。排ガス浄化システム100によれば、Laの作用を効果的に発揮させつつ、LaによるRhの排ガス浄化性能(特に、NOx浄化性能)の低下を防止することができ、これにより、排ガス浄化性能の向上を実現することができる。
【0294】
Laは、耐熱性を向上させる作用に加えて、リン成分をトラップして貴金属元素のリン被毒を防止する作用を有する。また、Ce-Zr系複合酸化物がLaを含む場合、Ce-Zr系複合酸化物中のLaはCe-Zr系複合酸化物の酸素貯蔵能を向上させる作用を有する。Laのこれらの作用も、排ガス浄化システム100の排ガス浄化性能の向上に寄与する。
【0295】
第1触媒層20Bの平均長さL20Bが大きいほど、第1触媒層20Bと排ガスとの接触時間が長くなる。したがって、第1触媒層20Bの平均長さL20B以外の条件が同一である場合、第1触媒層20Bの平均長さL20Bが大きいほど、第1触媒層20Bと排ガスとの反応性が向上し、第2触媒層30Cに到達する還元性の排ガスが少なくなる。これにより、第2触媒層30C中のRhの還元が起きにくい環境となるため、Rhの酸化を促すLaが少ない第2触媒層30Cにおいて、Rhの還元作用をより効果的に発揮させることができ、排ガス浄化性能(特に、NOx浄化性能)の低下を防止することができる。
【0296】
第1基材10Bの長さL10Bと第2基材10Cの長さL10cとの合計長さに対する第1触媒層20Bの平均長さL20Bの百分率(L20B/(L10B+L10c)×100)は、好ましくは30%以上、より好ましくは40%以上、より一層好ましくは50%以上である。上限は、排ガス浄化性能とコストとのバランス等を考慮して適宜調整することができる。上限は、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下、より一層好ましくは70%以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0297】
触媒1では、1つの基材上に第1触媒層20及び第2触媒層30が設けられているため、第1触媒層20の平均長さL20には制限があり、第1触媒層20の平均長さL20を大きくすることが困難となる場合がある。これに対して、排ガス浄化システム100では、2つの基材上にそれぞれ第1触媒層20B及び第2触媒層30Cが設けられているため、このような制限がなく、有利である。
【実施例
【0298】
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明について説明する。
【0299】
以下の実施例及び比較例において、OSC材料においてLaの全部が固溶体相を形成していることは、Laに由来するピークがOSC材料のXRD回折パターンに出現しないこと、並びに、OSC材料のXRD回折パターンと、ICSDに収録されている、OSC材料の結晶構造(蛍石型のCeO-ZrO)の基準データとの照合を行い、OSC材料のXRD回折パターンにおいて、基準データの最大ピーク位置に対して低角度側にピークシフトがあることに基づいて、確認した。また、OSC材料のEDX元素分析を行い、OSC材料において固溶体相を形成しているLaのLa換算の含有率を算出した。
【0300】
以下の実施例及び比較例において、La修飾アルミナにおいてLaの全部が固溶体相を形成していることは、Laに由来するピークがLa修飾アルミナのXRD回折パターンに出現しないこと、並びに、La修飾アルミナのXRD回折パターンと、ICSDに収録されている、La修飾アルミナの結晶構造(θアルミナ)の基準データとの照合を行い、La修飾アルミナのXRD回折パターンにおいて、基準データの最大ピーク位置に対して低角度側にピークシフトがあることに基づいて、確認した。また、La修飾アルミナのEDX元素分析を行い、La修飾アルミナにおいて固溶体相を形成しているLaのLa換算の含有率を算出した。
【0301】
〔実施例1〕
(1)第1排ガス浄化用触媒の製造
以下のようにして、フロースルー型基材に形成された下層と、下層上に形成された上層とを備える第1排ガス浄化用触媒を製造した。
【0302】
(1-1)下層形成用スラリーの調製
下記組成のOSC材料を用意した。
CeのCeO換算の含有率:40.0質量%
ZrのZrO換算の含有率:51.0質量%
LaのLa換算の含有率:9.0質量%(Laの全部が固溶体相を形成している)
【0303】
調合容器に、硝酸パラジウム水溶液、OSC材料、La修飾アルミナ(LaのLa換算の含有率:8.0質量%(Laの全部が固溶体相を形成している))、アルミナゾル及び水を加え、混合及び撹拌し、下層形成用スラリーを調製した。下層形成用スラリー中の各成分量は、焼成後の下層の質量を基準(100質量%)として、Pdが金属換算で5.0質量%、OSC材料が40.0質量%、La修飾アルミナが50.0質量%、アルミナゾルの固形分が5.0質量%となるように調整した。
【0304】
(1-2)下層の形成
フロースルー型基材として、厚みが50~70μmの隔壁で区画された軸方向に延びるセルを、軸方向と直交する面において600セル/インチの密度で有し、軸方向の長さが100mmであり、体積が1.0Lであるフロースルー型基材を用意した。
【0305】
下層形成用スラリーにフロースルー型基材を浸漬し、下層形成用スラリーが塗布されたフロースルー型基材を150℃で0.5時間乾燥させた後、500℃で1時間焼成して、下層を形成した。フロースルー型基材のうち下層が形成されている部分の単位体積当たりの下層の質量は、100g/Lであった。下層の長さは100mmであった。
【0306】
(1-3)上層形成用スラリーの調製
下記組成のOSC材料を用意した。
CeのCeO換算の含有率:10.0質量%
ZrのZrO換算の含有率:81.0質量%
LaのLa換算の含有率:9.0質量%(Laの全部が固溶体相を形成している)
【0307】
調合容器に、硝酸ロジウム水溶液、OSC材料、La修飾アルミナ(LaのLa換算の含有率:8.0質量%(Laの全部が固溶体相を形成している))、アルミナゾル及び水を加え、混合及び撹拌し、上層形成用スラリーを調製した。上層形成用スラリー中の各成分量は、焼成後の上層の質量を基準(100質量%)として、Rhが金属換算で1.0質量%、OSC材料が40.0質量%、La修飾アルミナが50.0質量%、アルミナゾルの固形分が9.0質量%となるように調整した。
【0308】
(1-4)上層の形成
上層形成用スラリーに、下層が形成されたフロースルー型基材を浸漬し、上層形成用スラリーが塗布されたフロースルー型基材を150℃で0.5時間乾燥させた後、500℃で1時間焼成して、下層上に上層を形成した。フロースルー型基材のうち上層が形成されている部分の単位体積当たりの上層の質量は、80g/Lであった。上層の長さは100mmであった。
【0309】
以上のようにして、フロースルー型基材に形成された下層と、下層上に形成された上層とを備える第1排ガス浄化用触媒を製造した。
【0310】
(2)第2排ガス浄化用触媒の製造
以下のようにして、フロースルー型基材に形成された下層と、下層上に形成された上層とを備える第2排ガス浄化用触媒を製造した。
【0311】
(2-1)下層形成用スラリーの調製
下記組成のOSC材料を用意した。
CeのCeO換算の含有率:40.0質量%
ZrのZrO換算の含有率:58.0質量%
LaのLa換算の含有率:2.0質量%(Laの全部が固溶体相を形成している)
【0312】
調合容器に、硝酸白金水溶液、OSC材料、La修飾アルミナ(LaのLa換算の含有率:2.0質量%(Laの全部が固溶体相を形成している))、アルミナゾル及び水を加え、混合及び撹拌し、下層形成用スラリーを調製した。下層形成用スラリー中の各成分量は、焼成後の下層の質量を基準(100質量%)として、Ptが金属換算で1.0質量%、OSC材料が60.0質量%、La修飾アルミナが30.0質量%、アルミナゾルの固形分が9.0質量%となるように調整した。
【0313】
(2-2)下層の形成
フロースルー型基材として、厚みが50~70μmの隔壁で区画された軸方向に延びるセルを、軸方向と直交する面において600セル/インチの密度で有し、軸方向の長さが100mmであり、体積が1.0Lであるフロースルー型基材を用意した。
【0314】
下層形成用スラリーにフロースルー型基材を浸漬し、下層形成用スラリーが塗布されたフロースルー型基材を150℃で0.5時間乾燥させた後、500℃で1時間焼成して、下層を形成した。フロースルー型基材のうち下層が形成されている部分の単位体積当たりの下層の質量は、140g/Lであった。下層の長さは100mmであった。
【0315】
(2-3)上層形成用スラリーの調製
下記組成のOSC材料を用意した。
CeのCeO換算の含有率:10.0質量%
ZrのZrO換算の含有率:86.0質量%
LaのLa換算の含有率:4.0質量%(Laの全部が固溶体相を形成している)
【0316】
調合容器に、硝酸ロジウム水溶液、OSC材料、La修飾アルミナ(LaのLa換算の含有率:2.0質量%(Laの全部が固溶体相を形成している))、アルミナゾル及び水を加え、混合及び撹拌し、上層形成用スラリーを調製した。上層形成用スラリー中の各成分量は、焼成後の上層の質量を基準(100質量%)として、Rhが金属換算で0.2質量%、OSC材料が60.0質量%、La修飾アルミナが30.0質量%、アルミナゾルの固形分が9.8質量%となるように調整した。
【0317】
(2-4)上層の形成
上層形成用スラリーに、下層が形成されたフロースルー型基材を浸漬し、上層形成用スラリーが塗布されたフロースルー型基材を150℃で0.5時間乾燥させた後、500℃で1時間焼成して、下層上に上層を形成した。フロースルー型基材のうち上層が形成されている部分の単位体積当たりの上層の質量は、80g/Lであった。上層の長さは100mmであった。
【0318】
以上のようにして、フロースルー型基材に形成された下層と、下層上に形成された上層とを備える第2排ガス浄化用触媒を製造した。
【0319】
(3)排ガス浄化性能の評価
製造した第1及び第2排ガス浄化用触媒をそれぞれエンジンの排気通路の上流側及び下流側に設置し、10~20万キロ走行を想定した劣化処理として、以下の耐久条件にて耐久処理を実施した。
<耐久条件>
・耐久用エンジン:乗用NA 2L ガソリンエンジン
・使用ガソリン:市販レギュラーガソリン
・処理温度:900℃
・処理時間:100時間
【0320】
耐久処理後の第1及び第2排ガス浄化用触媒をそれぞれ車両(1.5L直噴ターボエンジン搭載乗用車)の排気通路の上流側及び下流側に設置し、該車両を国際調和排ガス試験モード(WLTC)の運転条件に従って運転した。運転開始から589秒までの低温運転時、運転開始589秒から1022秒までの中速運転時、運転開始1022秒から1477秒までの高速運転時、運転開始1477秒から1800秒までの超高速運転時において、第1及び第2排ガス浄化用触媒を通過した排ガス中の非メタン炭化水素(NMHC)及び窒素酸化物(NOx)の排出量を測定し、単位走行距離当たりのNMHC及びNOxの合計排出量を求めた。なお、ガソリンとして、認証試験用燃料を使用し、排ガス測定装置として、堀場製作所社製の排ガス測定装置を使用した。
【0321】
〔実施例2〕
第1排ガス浄化用触媒の製造において、下層用形成スラリー中のLa修飾アルミナのLa修飾量を2.0質量%に変更した点を除き、実施例1と同様にして、第1及び第2排ガス浄化用触媒を製造し、排ガス浄化性能を評価した。
【0322】
〔実施例3〕
下記組成のOSC材料を用意した。
CeのCeO換算の含有率:10.0質量%
ZrのZrO換算の含有率:88.0質量%
LaのLa換算の含有率:2.0質量%(Laの全部が固溶体相を形成している)
【0323】
調合容器に、硝酸ロジウム水溶液、OSC材料、La修飾アルミナ(LaのLa換算の含有率:2.0質量%(Laの全部が固溶体相を形成している))、アルミナゾル及び水を加え、混合及び撹拌し、上層形成用スラリーを調製した。上層形成用スラリー中の各成分量は、焼成後の上層の質量を基準(100質量%)として、Rhが金属換算で1.0質量%、OSC材料が40.0質量%、La修飾アルミナが50.0質量%、アルミナゾルの固形分が9.0質量%となるように調整した。
【0324】
第1排ガス浄化用触媒の製造において、上記で調製した上層用形成スラリーを使用した点を除き、実施例1と同様にして、第1及び第2排ガス浄化用触媒を製造し、排ガス浄化性能を評価した。
【0325】
〔比較例1〕
(A)下層形成用スラリーの調製
下記組成のOSC材料を用意した。
CeのCeO換算の含有率:40.0質量%
ZrのZrO換算の含有率:51.0質量%
LaのLa換算の含有率:9.0質量%(Laの全部が固溶体相を形成している)
【0326】
調合容器に、硝酸白金水溶液、OSC材料、La修飾アルミナ(LaのLa換算の含有率:8.0質量%(Laの全部が固溶体相を形成している))、アルミナゾル及び水を加え、混合及び撹拌し、下層形成用スラリーを調製した。下層形成用スラリー中の各成分量は、焼成後の下層の質量を基準(100質量%)として、Ptが金属換算で1.0質量%、OSC材料が60.0質量%、La修飾アルミナが30.0質量%、アルミナゾルの固形分が9.0質量%となるように調整した。
【0327】
(B)上層形成用スラリーの調製
下記組成のOSC材料を用意した。
CeのCeO換算の含有率:10.0質量%
ZrのZrO換算の含有率:86.0質量%
LaのLa換算の含有率:4.0質量%(Laの全部が固溶体相を形成している)
【0328】
調合容器に、硝酸ロジウム水溶液、OSC材料、La修飾アルミナ(LaのLa換算の含有率:8.0質量%(Laの全部が固溶体相を形成している))、アルミナゾル及び水を加え、混合及び撹拌し、上層形成用スラリーを調製した。上層形成用スラリー中の各成分量は、焼成後の上層の質量を基準(100質量%)として、Rhが金属換算で0.2質量%、OSC材料が60.0質量%、La修飾アルミナが30.0質量%、アルミナゾルの固形分が9.8質量%となるように調整した。
【0329】
第2排ガス浄化用触媒の製造において、上記(A)で調製された下層形成用スラリー及び上記(B)で調製された上層形成用スラリーを使用した点を除き、実施例1と同様にして、第1及び第2排ガス浄化用触媒を製造し、排ガス浄化性能を評価した。
【0330】
〔比較例2〕
(C)下層形成用スラリーの調製
下記組成のOSC材料を用意した。
CeのCeO換算の含有率:40.0質量%
ZrのZrO換算の含有率:58.0質量%
LaのLa換算の含有率:2.0質量%(Laの全部が固溶体相を形成している)
【0331】
調合容器に、硝酸パラジウム水溶液、OSC材料、La修飾アルミナ(LaのLa換算の含有率:2.0質量%(Laの全部が固溶体相を形成している))、アルミナゾル及び水を加え、混合及び撹拌し、下層形成用スラリーを調製した。下層形成用スラリー中の各成分量は、焼成後の下層の質量を基準(100質量%)として、Pdが金属換算で5.0質量%、OSC材料が40.0質量%、La修飾アルミナが50.0質量%、アルミナゾルの固形分が5.0質量%となるように調整した。
【0332】
(D)上層形成用スラリーの調製
下記組成のOSC材料を用意した。
CeのCeO換算の含有率:10.0質量%
ZrのZrO換算の含有率:88.0質量%
LaのLa換算の含有率:2.0質量%(Laの全部が固溶体相を形成している)
【0333】
調合容器に、硝酸ロジウム水溶液、OSC材料、La修飾アルミナ(LaのLa換算の含有率:2.0質量%(Laの全部が固溶体相を形成している))、アルミナゾル及び水を加え、混合及び撹拌し、上層形成用スラリーを調製した。上層形成用スラリー中の各成分量は、焼成後の上層の質量を基準(100質量%)として、Rhが金属換算で1.0質量%、OSC材料が40.0質量%、La修飾アルミナが50.0質量%、アルミナゾルの固形分が9.0質量%となるように調整した。
【0334】
(E)下層形成用スラリーの調製
下記組成のOSC材料を用意した。
CeのCeO換算の含有率:40.0質量%
ZrのZrO換算の含有率:58.0質量%
LaのLa換算の含有率:2.0質量%(Laの全部が固溶体相を形成している)
【0335】
調合容器に、硝酸白金水溶液、OSC材料、La修飾アルミナ(LaのLa換算の含有率:2.0質量%(Laの全部が固溶体相を形成している))、アルミナゾル及び水を加え、混合及び撹拌し、下層形成用スラリーを調製した。下層形成用スラリー中の各成分量は、焼成後の下層の質量を基準(100質量%)として、Ptが金属換算で1.0質量%、OSC材料が60.0質量%、La修飾アルミナが30.0質量%、アルミナゾルの固形分が9.0質量%となるように調整した。
【0336】
(F)上層形成用スラリーの調製
下記組成のOSC材料を用意した。
CeのCeO換算の含有率:10.0質量%
ZrのZrO換算の含有率:88.0質量%
LaのLa換算の含有率:2.0質量%(Laの全部が固溶体相を形成している)
【0337】
調合容器に、硝酸ロジウム水溶液、OSC材料、La修飾アルミナ(LaのLa換算の含有率:2.0質量%(Laの全部が固溶体相を形成している))、アルミナゾル及び水を加え、混合及び撹拌し、上層形成用スラリーを調製した。上層形成用スラリー中の各成分量は、焼成後の上層の質量を基準(100質量%)として、Rhが金属換算で0.2質量%、OSC材料が60.0質量%、La修飾アルミナが30.0質量%、アルミナゾルの固形分が9.8質量%となるように調整した。
【0338】
第1排ガス浄化用触媒の製造において、上記(C)で調製された下層形成用スラリー及び上記(D)で調製された上層形成用スラリーを使用した点、並びに、第2排ガス浄化用触媒の製造において、上記(E)で調製された下層形成用スラリー及び上記(F)で調製された上層形成用スラリーを使用した点を除き、実施例1と同様にして、第1及び第2排ガス浄化用触媒を製造し、排ガス浄化性能を評価した。
【0339】
〔比較例3〕
第1排ガス浄化用触媒の製造において、比較例2の(C)で調製された下層形成用スラリー及び比較例2の(D)で調製された上層形成用スラリーを使用した点、並びに、第2排ガス浄化用触媒の製造において、比較例1の(A)で調製された下層形成用スラリー及び比較例1の(B)で調製された上層形成用スラリーを使用した点を除き、実施例1と同様にして、第1及び第2排ガス浄化用触媒を製造し、排ガス浄化性能を評価した。
【0340】
結果を表1及び2に示す。なお、表2において、NMHC及びNOxの合計排出量は、比較例3の値を1としたときの相対値として表されている。
【0341】
【表1】
【0342】
【表2】
【0343】
実施例1~3及び比較例1~3の第1排ガス浄化用触媒は、第1基材と、第1基材に設けられた第1触媒層(下層及び上層)とを備え、第1触媒層は、Rhを含む。実施例1~3及び比較例1~3の第2排ガス浄化用触媒は、第2基材と、第2基材に設けられた第2触媒層(下層及び上層)とを備え、第2触媒層は、Rhを含む。
【0344】
実施例1~3の第1及び第2排ガス浄化用触媒は、以下の条件を満たす。
・第1触媒層中のLaのLa換算の含有率が、第1触媒層の質量を基準として、5質量%以上である。
・第2触媒層中のLaのLa換算の含有率が、第2触媒層の質量を基準として、3質量%以下である。
【0345】
比較例1~3の第1及び第2排ガス浄化用触媒は、上記条件のうち1つ以上を満たさない。
【0346】
表2に示すように、上記条件を満たす第1排ガス浄化用触媒を排気通路の上流側に設置し、上記条件を満たす第2排ガス浄化用触媒を排気通路の下流側に設置する場合(実施例1~3)、上記条件のうち1つ以上を満たさない第1排ガス浄化用触媒を排気通路の上流側に設置し、上記条件のうち1つ以上を満たさない第2排ガス浄化用触媒を排気通路の下流側に設置する場合(比較例1~3)よりも、排ガス浄化性能が高かった。
【符号の説明】
【0347】
P・・・内燃機関の排気管
1,1B,1C・・・排ガス浄化用触媒
10,10B,10C・・・基材
11・・・筒状部
12・・・隔壁部
13・・・セル
20,20B・・・第1触媒層
21,21B・・・第1触媒層の下層
22,22B・・・第1触媒層の上層
30,30C・・・第2触媒層
31,31C・・・第2触媒層の下層
32,32C・・・第2触媒層の上層
100・・・排ガス浄化システム
【要約】
本発明は、Rh及びLaを併用した排ガス浄化用触媒であって、Laの作用を効果的に発揮させつつ、LaによるRhの排ガス浄化性能(特に、NOx浄化性能)の低下を防止することができる排ガス浄化用触媒を提供することを目的し、この目的を達成するために、基材(10)と、基材(10)の上流側に設けられた第1触媒層(20)と、基材(10)の下流側に設けられた第2触媒層(30)とを備える、排ガス浄化用触媒(1)であって、第1触媒層(20)が、Pdを含む下層(21)と、Rhを含む上層(22)とを備え、第2触媒層(30)が、Ptを含む下層(31)と、Rhを含む上層(32)とを備え、第1触媒層(20)中のLaのLa換算の含有率が、第1触媒層(20)の質量を基準として、5質量%以上であり、第2触媒層(30)中のLaのLa換算の含有率が、第2触媒層(30)の質量を基準として、3質量%以下である、排ガス浄化用触媒(1)を提供する。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9