(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-20
(45)【発行日】2025-05-28
(54)【発明の名称】大型扉
(51)【国際特許分類】
E05F 15/63 20150101AFI20250521BHJP
E06B 5/12 20060101ALI20250521BHJP
E05D 7/083 20060101ALI20250521BHJP
【FI】
E05F15/63
E06B5/12
E05D7/083
(21)【出願番号】P 2021063740
(22)【出願日】2021-04-02
【審査請求日】2024-03-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100166958
【氏名又は名称】堀 喜代造
(72)【発明者】
【氏名】河西 勉
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-100079(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0081332(US,A1)
【文献】特開平06-307155(JP,A)
【文献】実開平07-006498(JP,U)
【文献】特開2018-178680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/00-15/79
E06B 5/00- 5/20
E05D 7/083
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートで形成された壁体の開口部に設けられる扉枠と、
前記開口部を開閉可能に設けられる扉本体と、
前記扉本体を開閉する駆動部と、
を備え、
前記駆動部は、前記扉本体の回動軸に対して偏心して設けられる駆動軸を中心として水平方向に回動するアーム部材を有し、
前記アーム部材と前記扉本体とが相対回転可能に連結され、
前記駆動部が前記アーム部材を回動させることにより、前記扉本体が前記アーム部材に対して相対回転するとともに前記開口部に対して回動し、
前記壁体の外面における前記扉枠の周囲には支持プレートが設けられ、
前記扉本体は、前記支持プレートに設けられたヒンジを介して前記壁体に連結され
、
前記開口部の内周面には、前記扉枠が固定される受圧プレートが設けられ、
前記支持プレート及び前記受圧プレートは、鋼板で構成され、コンクリートを打設して前記壁体を形成する際に前記壁体に埋設されることで、前記壁体に対して一体化して組付けられる、
大型扉。
【請求項2】
前記支持プレートは、複数設けられ、
一の支持プレートは、他の支持プレートと、前記アーム部材を挟んで上下方向に反対側に位置する、
請求項1に記載の大型扉。
【請求項3】
前記支持プレートには、プレート面に対して直交する方向に延出するアンカー部が設けられ
、
前記アンカー部が前記壁体に埋設される、
請求項1又は請求項2に記載の大型扉。
【請求項4】
前記扉本体には、水平方向に長孔が形成された係合部が設けられ、
前記アーム部材の先端部は、前記係合部の前記長孔と係合され、
前記駆動部が前記アーム部材を回動することにより、前記扉本体が前記アーム部材に対して相対回転するとともに前記開口部に対して回動する、
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の大型扉。
【請求項5】
前記係合部は、前記扉本体の上下方向における中央部に形成される、
請求項4に記載の大型扉。
【請求項6】
前記ヒンジは、前記支持プレートに固定される固定ヒンジと、前記扉本体に固定される可動ヒンジと、が相対回転可能に組み合わされて構成される、
請求項1から請求項5の何れか1項に記載の大型扉。
【請求項7】
前記扉本体が100mm以上の厚みで構成される、
請求項1から請求項6の何れか1項に記載の大型扉。
【請求項8】
前記扉本体が高さ寸法2500mm以上かつ幅寸法2500mm以上で構成される、
請求項1から請求項7の何れか1項に記載の大型扉。
【請求項9】
前記扉本体が鋼鉄材料で構成される、
請求項1から請求項8の何れか1項に記載の大型扉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、発電所等の大規模施設に用いられる大型扉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原子力発電所等の大規模施設において、建造物の開口部には地震や津波等の大きな外力に耐えうる大型扉が設置されている。このような大型扉を設置するための構造体を建物の表面側外周に設け、この構造体と扉本体とをヒンジで連結する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術は、大型扉のヒンジを設置するための構造体を設ける構成であるため、大型扉の構成が大掛かりとなるため製造コストが嵩張る要因となっていた。そこで、本開示は、上記に関する課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1観点に係る大型扉は、コンクリートで形成された壁体の開口部に設けられる扉枠と、前記開口部を開閉可能に設けられる扉本体と、前記扉本体を開閉する駆動部と、を備え、前記駆動部は、前記扉本体の回動軸に対して偏心して設けられる駆動軸を中心として水平方向に回動するアーム部材を有し、前記アーム部材と前記扉本体とが相対回転可能に連結され、前記駆動部が前記アーム部材を回動させることにより、前記扉本体が前記アーム部材に対して相対回転するとともに前記開口部に対して回動し、前記壁体の外面における前記扉枠の周囲には支持プレートが設けられ、前記扉本体は、前記支持プレートに設けられたヒンジを介して前記壁体に連結され、前記開口部の内周面には、前記扉枠が固定される受圧プレートが設けられ、前記支持プレート及び前記受圧プレートは、鋼板で構成され、コンクリートを打設して前記壁体を形成する際に前記壁体に埋設されることで、前記壁体に対して一体化して組付けられる。
【0006】
上記第1観点に係る大型扉によれば、駆動軸をヒンジの回動軸に対して偏心させるとともにアーム部材と扉本体とを相対回転可能に連結することにより、アーム部材を回動させて扉本体を回動させることができるため、駆動部の大きさに関わらずヒンジをコンパクト化することが可能となる。また、ヒンジ等を設置するための構造体が不要となるため、大型扉の構成をコンパクトにして製造コストを抑制できる。
【0007】
本発明の第2観点に係る大型扉は、第1観点に係る大型扉であって、前記支持プレートは、複数設けられ、一の支持プレートは、他の支持プレートと、前記アーム部材を挟んで上下方向に反対側に位置する。
【0008】
上記第2観点に係る大型扉によれば、それぞれの支持プレートにヒンジを設けることにより、扉本体を安定的に支持できる。
【0009】
本発明の第3観点に係る大型扉は、第1観点又は第2観点に係る大型扉であって、前記支持プレートには、プレート面に対して直交する方向に延出するアンカー部が設けられ、前記アンカー部が前記壁体に埋設される。
【0010】
上記第3観点に係る大型扉によれば、壁体における支持プレートの組付強度を高くすることができる。
【0011】
本発明の第4観点に係る大型扉は、第1観点から第3観点の何れか一に係る大型扉であって、前記扉本体には、水平方向に長孔が形成された係合部が設けられ、前記アーム部材の先端部は、前記係合部の前記長孔と係合され、前記駆動部が前記アーム部材を回動することにより、前記扉本体が前記アーム部材に対して相対回転するとともに前記開口部に対して回動する。
【0012】
上記第4観点に係る大型扉によれば、係合部の長孔に沿ってアーム部材の先端部が変位することにより扉本体がアーム部材に対して相対回転するため、扉本体を円滑に開閉することができる。
【0013】
本発明の第5観点に係る大型扉は、第4観点に係る大型扉であって、前記係合部は、前記扉本体の上下方向における中央部に形成される。
【0014】
上記第5観点に係る大型扉によれば、扉本体の開閉時に係合部に生じる内部応力を小さくことができる。
【0015】
本発明の第6観点に係る大型扉は、第1観点から第5観点の何れか一に係る大型扉であって、前記ヒンジは、前記支持プレートに固定される固定ヒンジと、前記扉本体に固定される可動ヒンジと、が相対回転可能に組み合わされて構成される。
【0016】
上記第6観点に係る大型扉によれば、ヒンジの構成を簡素化することができる。
【0017】
本発明の第7観点に係る大型扉は、第1観点から第6観点の何れか一に係る大型扉であって、前記扉本体が100mm以上の厚みで構成される。
【0018】
上記第7観点に係る大型扉によれば、閉塞時の扉本体の強度を高めることができる。
【0019】
本発明の第8観点に係る大型扉は、第1観点から第7観点の何れか一に係る大型扉であって、前記扉本体が高さ寸法2500mm以上かつ幅寸法2500mm以上で構成される。
【0020】
上記第8観点に係る大型扉によれば、閉塞時の扉本体の強度を高めることができる。
【0021】
本発明の第9観点に係る大型扉は、第1観点から第8観点の何れか一に係る大型扉であって、前記扉本体が鋼鉄材料で構成される。
【0022】
上記第9観点に係る大型扉によれば、扉本体の剛性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では
図1から
図6を用いて、本発明に係る大型扉の一実施形態である扉1について説明する。
図1中に示す矢印は扉1の方向を示している。
図1及び
図2に示す如く、扉1は原子力発電所等の大規模施設において、建造物におけるコンクリート製の壁体10の開口部10aを開閉可能とする大型扉である。扉1において、扉本体2等の各部材は耐食性の高いステンレス鋼(熱間圧延ステンレス鋼板又は冷間圧延ステンレス鋼板)等の鋼鉄材料で形成されている。
【0025】
本実施形態に係る扉1を構成する扉本体2は、100mm以上の厚みで構成されている。また、扉本体2は、高さ寸法が2500mm以上、かつ、幅寸法が2500mm以上で構成されている。このように、扉1は、重量が数十tとなるように扉本体2を構成することにより、地震や津波等の大きな外力に耐えうるように設計されている。
【0026】
図1、
図3、及び
図5に示す如く、本実施形態に係る扉1は扉本体2、可動ヒンジ3、及び、固定ヒンジ4、駆動部5等を備える。本実施形態において扉本体2と可動ヒンジ3とは一体的に構成されている。扉1は開口部10aを開く際には建造物の外側に開くように構成されている。本実施形態において、開口部10aを閉塞した状態(
図1及び
図2の状態)における扉本体2の開く側を扉1の前方とする。また、扉本体2の側方のうち可動ヒンジ3が形成されている、正面視における左側方を「吊元側」と記載し、吊元側と反対の右側方を「戸先側」と記載する。
【0027】
図3に示す如く、扉本体2は壁体10の開口部10aを片開きで開閉可能に設けられる。扉本体2の開閉駆動等の制御は、使用者が図示しない操作盤を操作して入力した操作指示に基づいて行われる。本実施形態において、開口部10aの周縁部のうち、扉1の吊元側を吊元側周縁部10bと記載する。また、開口部10aの周縁部のうち、扉1の下側には、車両等が開口部10aを円滑に通過できるようにスロープSが配置されている。
【0028】
図4及び
図6に示す如く、開口部10aの内周面には、鋼板等を組み合わせて形成された受圧プレート16が組付けられる。受圧プレート16には、ステンレス鋼等で形成された矩形の扉枠である枠部材11が固定される。枠部材11は四本の角筒部材が組み合わされて構成される。本実施形態においては、扉本体2と枠部材11とが密着することにより扉1が閉塞状態とされる。
【0029】
上記の如く、本実施形態に係る扉1においては、扉1を閉塞した際に扉本体2が当接する枠部材11と壁体10との間に受圧プレート16を介挿している。これにより、閉塞状態で津波荷重が扉本体2に加わった場合でも、受圧プレート16で津波荷重を負担することができるため、壁体10が受ける影響を抑制することが可能となる。
【0030】
扉本体2は表面側及び裏面側にそれぞれ設けた鋼板を、複数の連結部材を介して接合することにより形成されている。扉本体2の前部には、矩形の板体である閉塞部21が設けられる。閉塞部21の外形形状(上下方向端部及び左右方向端部の形状)は、枠部材11の内周形状よりも大きく形成される。閉塞部21の内部にはコンクリート等の充填材が充填される。閉塞部21の前面において、上下方向略中央部における左側(吊元側)には、後述する駆動部5のアーム部材52と係合する係合部23が形成されている。係合部23には、水平方向に長孔23aが形成されている。
【0031】
扉本体2の後部(閉塞部21の後方)には、枠部材11の内周形状よりも一回り小さな外形形状の挿入部22が形成される。挿入部22の内部には内部空間が形成されている。扉本体2が開口部10aを閉塞した際には、挿入部22は枠部材11の内側に挿入される。挿入部22の外周面(上下面及び両側面)からは、テーパロッド71が進退可能に延出される。
【0032】
閉塞部21の後面における外縁部分には当接面21aが形成されている。また、枠部材11における前面には被当接面11aが形成されている。閉塞部21は枠部材11の内周形状よりも大きく形成されているため、扉本体2が開口部10aを閉塞した際には、当接面21aが被当接面11aに当接する。
【0033】
被当接面11aには、樹脂製のシール部材11bが環状に配設されている。また、当接面21aには、扉本体2が開口部10aを閉塞した際にシール部材11bに対向する位置に、シール突起17が後方に突出する環状に形成されている。扉本体2が開口部10aを閉塞した際には、シール突起17がシール部材11bに押圧されることにより、開口部10aを密閉する。
【0034】
本実施形態に係る扉1において、扉本体2の挿入部22に形成される内部空間には、扉本体2を枠部材11に対して密着させるための図示しない密閉機構が収容されている。密閉機構は、挿入部22の外周面(上下面及び両側面)から、先端にテーパ面が形成されたテーパロッド71を進退させる。挿入部22から延出されたテーパロッド71は枠部材11に挿入される。
【0035】
枠部材11の内部において、テーパロッド71が挿入される箇所には、受圧ピン72が設けられている。テーパロッド71が受圧ピン72の方向にさらに変位すると、テーパ面が受圧ピン72に当接し、テーパロッド71のテーパ面が受圧ピン72を前側(扉本体2の開放側)に押圧する。受圧ピン72は枠部材11に固定されているため、テーパロッド71は受圧ピン72からの反力を受け、後側(扉本体2の閉塞側)に変位する。これにより、扉本体2に対して閉塞側への力が発生する。このように、扉本体2と枠部材11とが密着し、シール突起17がシール部材11bに押圧されることにより、開口部10aを密閉する。
【0036】
図4に示す如く、扉本体2の一側面と、壁体10における開口部10aの吊元側周縁部10bとは、可動ヒンジ3及び固定ヒンジ4で構成されたヒンジにより連結されている。具体的には、扉本体2の前面の左側端部には、左側方に延出する可動ヒンジ3が形成されている。具体的には
図1に示す如く、扉本体2の左側端部の上側に上側可動ヒンジ3Uが形成され、下側に下側可動ヒンジ3Bが形成されている。
【0037】
一方、壁体10の外面において、開口部10aに設けられた枠部材11の周囲のうち、吊元側周縁部10bには鋼板で形成された支持プレート41が組付けられ、支持プレート41には固定ヒンジ4が固定される。具体的には
図1に示す如く、壁体10の外面のうち扉本体2の左側において、上側可動ヒンジ3Uに対応する位置に上側支持プレート41Uを介して上側固定ヒンジ4Uが固定され、下側可動ヒンジ3Bに対応する位置に下側支持プレート41Bを介して下側固定ヒンジ4Bが固定されている。
【0038】
上記の構成において、それぞれの可動ヒンジ3と固定ヒンジ4とが連結される。具体的には、それぞれの可動ヒンジ3のボス部に、対応する固定ヒンジ4における回動軸4aが挿入される。これにより、可動ヒンジ3は固定ヒンジ4に対して相対回転可能に支持される。即ち、本実施形態において扉本体2は、支持プレート41に設けられたヒンジを介して壁体10に連結されている。本実施形態において、上側固定ヒンジ4Uの回動軸4aと下側固定ヒンジ4Bの回動軸4aとは軸心が同一となるように構成される。
【0039】
上記の如く、本実施形態に係る扉1において、支持プレート41に固定される固定ヒンジ4と、扉本体2に固定される可動ヒンジ3と、が相対回転可能に組み合わせてヒンジを構成している。このように、本実施形態に係る扉1によれば、ヒンジを固定ヒンジ4と可動ヒンジ3で構成することにより、ヒンジの構成を簡素化している。
【0040】
図1から
図3に示す如く、本実施形態に係る扉1において、壁体10における開口部10aの吊元側周縁部10bには駆動部5が設けられる。駆動部5は筐体の内部に、駆動軸51を備える駆動用モータを収容する。駆動用モータは壁体10に備えられる操作盤と電気的に接続されている。使用者が操作盤を操作することにより、駆動用モータが駆動される。なお、電源喪失時には図示しない手動ハンドルを用いて、使用者の手動により駆動用モータを駆動させることも可能である。
【0041】
駆動部5からは、駆動用モータによって水平方向に回動可能なアーム部材52が延出されている。アーム部材52は駆動用モータの駆動軸51を中心として回動される。本実施形態において、駆動軸51は扉本体2の回動軸である回動軸4aに対して偏心して設けられている。
【0042】
アーム部材52は、扉本体2における閉塞部21の前面に形成された係合部23に係合されている。具体的には、アーム部材52の先端部には上下に突出する挿入部53が形成されている。そして、係合部23に形成された長孔23aに、アーム部材52に設けられた挿入部53が上方及び下方に挿入されているのである。これにより、アーム部材52が回動すると、長孔23aに沿って挿入部53が相対変位し、扉本体2が回動する。即ち、アーム部材52と扉本体2とは相対回転可能に連結されている。
【0043】
上記の構成において、駆動部5がアーム部材52を回動することにより、扉本体2がアーム部材52に対して相対回転するとともに開口部10aに対して回動する。即ち、アーム部材52により扉本体2が水平方向に回動されるため、扉本体2が開口部10aを開閉可能とされるのである。
【0044】
本実施形態に係る扉1によれば上記の如く、可動ヒンジ3を扉本体2の吊元側に形成するとともに、固定ヒンジ4を開口部10aの吊元側周縁部10bに支持プレート41を介して固定している。これにより、可動ヒンジ3及び固定ヒンジ4が自重を支持するための構成をコンパクトにできる。即ち、可動ヒンジ3及び固定ヒンジ4で構成されるヒンジの重量を小さくすることにより、扉1を全体的に軽量化することが可能となる。
【0045】
また、本実施形態においては、可動ヒンジ3及び固定ヒンジ4をコンパクト化することにより、これらをステンレス鋼の鍛造品で形成することを可能としている。ステンレス鋼の鍛造品は鋳造品と比較してより耐食性が高いため、本実施形態に係る扉1においては、ヒンジを鋳造品で形成した場合と比較して耐用年数を長くすることができる。
【0046】
そして、本実施形態に係る扉1によれば、駆動部5の駆動軸51が扉本体2の回動軸4aに対して偏心して設けられる。また、係合部23の長孔23aに沿ってアーム部材52の先端部が変位することにより、扉本体2がアーム部材52に対して相対回転するように構成される。このように、アーム部材52と扉本体2とを相対回転可能とすることにより、扉本体2を開口部10aに対して電動(又は手動)により円滑に回動する構成としている。
【0047】
上記の如く、本実施形態係る扉1によれば、駆動軸51を扉本体2の回動軸4aに対して偏心させるとともにアーム部材52と扉本体2とを相対回転可能に連結し、駆動部5によりアーム部材52を回動させて扉本体2を回動させる構成としている。これにより、駆動軸51と扉本体2の回動軸4aとを同軸に設ける必要がないため、駆動部5の大きさに関わらずヒンジをコンパクト化することが可能となる。
【0048】
また、支持プレート41を介して固定ヒンジ4を壁体10に固定し、ヒンジを介して扉本体2を壁体10に連結している。このように、ヒンジ等を設置するための構造体を別途設ける必要がない。このため、扉1の構成をコンパクトにして製造コストを抑制することが可能となる。
【0049】
また、本実施形態に係る扉1において、係合部23は、扉本体2の上下方向における中央部に形成される。これにより、係合部23を扉本体2の下端部又は上端部に形成した場合と比較して、扉本体2の表面からの距離の平均値は小さくなる。即ち、扉本体2の開閉時に風圧等により係合部23に生じるモーメントを小さくできる。このため、扉本体2の開閉時に係合部23に生じる内部応力を小さくすることができる。
【0050】
上記の如く、本実施形態係る扉1によれば、支持プレート41を二枚設け、一の支持プレートである上側支持プレート41Uは、他の支持プレートである下側支持プレート41Bと、アーム部材52を挟んで上下方向に反対側に位置する。これにより、それぞれの支持プレート41(上側支持プレート41U及び下側支持プレート41B)にヒンジ(上側固定ヒンジ4U及び下側固定ヒンジ4B)を設けることにより、扉本体2を安定的に支持することが可能となる。
【0051】
本実施形態に係る扉1において、支持プレート41にはプレート面に対して直交する方向(後方)に延出する支持アンカー部41aが設けられている。そして、支持プレート41は、コンクリートを打設して壁体10を形成する際に、支持アンカー部41aが壁体10に埋設される。
【0052】
より具体的には、まず支持プレート41を自立させた状態で、支持プレート41をサポート材などで固定する。次に、支持プレート41及びサポート材に合わせて型枠を形成する。そして、コンクリートを型枠の中に流し込み、壁体10を構成する。そして、所定期間が経過後、コンクリートの強度が確保できたら壁体10から型枠を外す。これにより、壁体10に対して支持プレート41が一体化して組付けられる。本実施形態に係る扉1によれば、上記の如く構成することにより、壁体10における支持プレート41の組付強度を高くすることができる。
【0053】
なお、開口部10aに組付けられる受圧プレート16についても、支持プレート41と同様にプレート面に対して直交する方向に延出する受圧アンカー部16aが設けられている。そして、受圧プレート16も支持プレート41と同じ手順で壁体10に組付けられる。
【0054】
[変形例]
上記実施形態は、以下の変形例に示すように適宜変形が可能である。なお、各変形例は、矛盾が生じない範囲で他の変形例と組み合わせて適用されてもよい。
【0055】
本実施形態に係る扉1は、建造物における壁体10の開口部10aを開閉するものとして構成したが、
図7に示す如く壁体10Aの一部に壁体10Aと別部材で枠体10Bを設け、この枠体10Bに扉本体2を組付ける構成とすることも可能である。即ち、開口部が形成された壁体10Aに対して、枠体10B、扉本体2、可動ヒンジ3、固定ヒンジ4、駆動部5、支持プレート41、及び、受圧プレート16等を後付けで組付ける構成とすることも可能である。
【0056】
また、ヒンジを支持する支持プレートの枚数及び配置箇所は本実施形態に限定されるものではなく、三枚以上の支持プレートにヒンジを設ける構成とすることも可能である。また、ヒンジに対するアーム部材の配置を本実施形態と異なる構成とすることも可能である。
【0057】
また、壁体を打設した後に支持プレートを組付ける構成とすることも可能である。その場合、アンカーボルトを用いて支持プレートを壁体に組付ける等、各種の手法を採用することが可能である。
【0058】
また、アーム部材及び係合部の配置箇所を変更して、扉本体2の下部又は上部に設けることも可能である。また、アーム部材及び係合部の個数を二箇所以上に変更することも可能である。
【0059】
また、駆動部で扉本体を回動する構成として、リンク機構でアーム部材と扉本体とを接続する構成等、回動機構を他の構成とすることも可能である。また、アーム部材と係合部との係合方法として、アーム部材に形成する長孔を形成し、この長孔に係合部を係合させることも可能である。この際、アーム部材の強度を確保する観点より、長孔を溝形状として係合部がアーム部材を貫通しない構成とすることが好ましい。なお、駆動部の能力や大きさは主に扉が開閉時に受ける最大風圧(風荷重)に応じて決められてもよい。また、ヒンジの形状や大きさは、主に扉重量と地震加速度(水平・鉛直)に応じて決められてもよい。
【0060】
また、扉本体の厚み、高さ寸法、幅寸法、及び材質等を本実施形態と異なるものとすることも可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 扉 2 扉本体
3 可動ヒンジ 3B 下側可動ヒンジ
3U 上側可動ヒンジ 4 固定ヒンジ
4a 回動軸 4B 下側固定ヒンジ
4U 上側固定ヒンジ 5 駆動部
10 壁体 10A 壁体
10B 枠体 10a 開口部
10b 吊元側周縁部 11 枠部材(扉枠)
11a 被当接面 11b シール部材
16 受圧プレート 16a 受圧アンカー部
17 シール突起
21 閉塞部 21a 当接面
22 挿入部 23 係合部
23a 長孔 41 支持プレート
41B 下側支持プレート
41U 上側支持プレート
41a 支持アンカー部 51 駆動用モータ
51a 駆動軸 52 アーム部材
53 挿入部 71 テーパロッド
72 受圧ピン S スロープ