(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-20
(45)【発行日】2025-05-28
(54)【発明の名称】海況情報推定装置
(51)【国際特許分類】
G01P 5/00 20060101AFI20250521BHJP
【FI】
G01P5/00 Z
(21)【出願番号】P 2025062343
(22)【出願日】2025-04-04
(62)【分割の表示】P 2023172638の分割
【原出願日】2023-10-04
【審査請求日】2025-04-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】318013477
【氏名又は名称】株式会社ブルーオーシャン研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110003236
【氏名又は名称】弁理士法人杉浦特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100123973
【氏名又は名称】杉浦 拓真
(74)【代理人】
【識別番号】100082762
【氏名又は名称】杉浦 正知
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 喜代志
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-035672(JP,A)
【文献】特開2007-327853(JP,A)
【文献】特開2003-302221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P 5/00- 5/26
B63B 22/00-22/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部に係留され、海水面に追従して変動し、アンテナ及びGNSS受信機を有し、前記GNSS受信機により位置情報を得るようになされた海象ブイを使用する海況情報推定装置であって、
前記海象ブイの設置点P0の前記位置情報と前記海象ブイの位置Ptの前記位置情報から方位を算出し、
前記方位の時系列の2階差分値を算出し、
前記2階差分値の極値を算出し、
隣り合う前記極値の積を算出し、
前記極値の積と実測流速の近似曲線から流速を推定する
海況情報推定装置。
【請求項2】
前記実測流速は、前記海象ブイの設置点において別途測定されたものである請求項1に記載の海況情報推定装置。
【請求項3】
前記海象ブイの位置の座標は、ノイズ除去の処理がなされたものである請求項1又は2に記載の海況情報測定装置。
【請求項4】
推定された流速に対して補正を行う請求項1又は2に記載の海況情報測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海況情報、特に、潮流の流速を推定する海況情報推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の潮流の流速を測定する装置として、ブイ外部に専用センサー例えば超音波流速計を配置する構成が知られている。この構成では、ケーブルをブイ内部に引き込むため、漏水・ケーブル断線・付着生物によるセンサー劣化・電池交換などメンテナンスの手間やコストが掛かった。
【0003】
本願出願人は、GPS(Global Positioning System)衛星からの電波を受信する受信機をブイに搭載して、ブイの三次元位置を測定することによって、波高を測定する波高測定装置を提案している(特許文献1参照)。この波高測定装置は、GPSアンテナ、GPS受信機、データ記録装置、データ処理装置及び送信機を備えており、ブイが浮遊する現地の波高を測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、GPSデータを使用して流速を測定することについては開示されていない。流速の情報は、定置網漁業者等の漁業関係者にとって重要な情報であり、また、桟橋への船の接岸の安全性の確保からも必要な情報であり、さらに、防災の面からも必要とされる情報である。
【0006】
したがって、本発明の目的は、GNSS(Global Navigation Satellite System/全地球航法衛星システム)受信機によって得られた位置情報を使用して潮流の流速を測定することができる海況情報推定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、固定部に係留され、海水面に追従して変動し、アンテナ及びGNSS受信機を有し、GNSS受信機により位置情報を得るようになされた海象ブイを使用する海況情報推定装置であって、
海象ブイの設置点P0の位置情報と前記海象ブイの位置Ptの位置情報から方位を算出し、
方位の時系列の2階差分値を算出し、
2階差分値の極値を算出し、
隣り合う極値の積を算出し、
極値の積と実測流速の近似曲線から流速を推定する
海況情報推定装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、GNSS受信機によって受信された位置情報を使用するのみで、流速を推定することができる。なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本明細書中に記載されたいずれかの効果であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態における係留式流速流向計測装置の構成を示す略線図である。
【
図2】
図2は、GNSS受信機により測位された3次元位置情報のXY平面上の位置を説明する模式図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態による海況情報のシステム構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、海象ブイの位置変化から流向及び流速を推定する処理の流れを示す略線図である。
【
図5】
図5は、超音波流速計によって測定された流速を示すグラフと、海象ブイの移動方向から測定された流向を示すグラフである。
【
図6】
図6は、流向を2階差分した値のグラフと平均流速のグラフを示す。
【
図7】
図7は、隣り合う極値の積(横軸)と流速(縦軸)の散布図を示す。
【
図8】
図8は、近似曲線を使用して流向から推定された流速と実測された流速を重ねて示すグラフである。
【
図9】
図9は、海象ブイの軌跡の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、海象ブイの移動距離と実測流速の関係を示すグラフである。
【
図11】
図11は、実測流速と方位の2階差分の値の関係を示すグラフである。
【
図12】
図12は、規格化した移動距離と実測流速との関係を示すグラフである。
【
図13】
図13は、近似曲線から推定された流速と実測流速を比較して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明の好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において、特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの実施の形態に限定されないものとする。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態における係留式流速流向計測装置の構成を示す。参照符号1は、流速流向計測ブイ(以下、海象ブイと適宜称する)を示す。海象ブイ1は、海面SF上に浮かぶ構造とされており、風の影響を受けにくいドーム状の機器収納部と、その周囲に設けられたリング状の浮輪と、浮輪に取り付けられ太陽電池を有する。
【0012】
より具体的には、海象ブイ1は、海面すれすれに浮かぶ小型(80cm程度)かつ円盤状で海面上の動きに追随しやすい等方性を有する形状となっている。これにより、従来のスパーブイ等の筒状のブイよりもブイ本体に対する風や流れの影響が極めて少なく、海面の変動とほぼ同期した挙動を示す。
【0013】
この特有のブイ構造と機械学習を組み合わせることで、ブイの動揺特性を海面変動、言い換えれば3次元位置情報の変動パターンだけから推定することが可能となる。すなわち、機械学習による推定モデル生成の際に、波浪特有の海面変動特性を学習させて、3次元の位置情報の変動パターンだけから波高や流向を推定することが可能となる。さらに、本発明の一実施形態は、海象ブイ1の3次元位置情報を処理することによって流速も推定するようにしたものである。以下の説明では、流向流速の推定の説明を主として行うが、波高については、本願出願人の提案に係る方法(例えば冒頭に述べた特許文献1に記載されている方法)によって測定できる。
【0014】
海象ブイ1がロープを介して係留装置と接続されている。係留装置は、1点係留方式の構成を有する。海底に設置されたアンカーとしての土のう11に対してロープ12a,12b,12cを介して浮体としての小型軽量のブイ13が接続されている。ロープ同士は、捩れを生じないように、より戻しを介して接続される。ロープ12b及び12cの接続用のより戻しに対してより戻しとロープ14a、より戻し15及びロープ14bを通じて海象ブイ1が接続されている。また、錘としてのチェーンW1、錘W2がブイ13に対して接続されている。
【0015】
ロープ12a~12cの合計の長さは、設置場所の水深よりも長いものとされている。さらに、海上風を受けにくい円盤型の海象ブイ1がロープ14a及び14bを介して係留装置と接続され、ロープ14aに錘W3が接続されている。ロープが複数のより戻しでもって接続されているので、海象ブイ1の挙動は、海面変動と同期したものとなり、流向流速を正確に計測することができる。
【0016】
海象ブイ1は、アンテナと、衛星からの電波をアンテナによって受信するGNSS(Global Navigation Satellite System/全地球航法衛星システム)受信機を有する。なお、GNSSは、GPS、GLONASS、Galileo 、準天頂衛星(QZSS)等の衛星測位システムの総称のことである。例えば最近では、準天頂衛星システム(みちびき)の運用が開始されることによって、GPSを補い、より高精度の測位が可能となりつつある。
【0017】
GNSS受信機は、また、予め位置が分かっている電子基準点で衛星からの電波を受信することにより求められた誤差補正情報もアンテナが受信する。誤差補正情報は、5Hz~10Hzの頻度で受信される。その結果、測位の精度が高精度なものとなる。GNSS受信機によって、海象ブイ1(アンテナ)の3次元位置情報が得られる。3次元位置情報は、(X:経度、Y:緯度、Z:標高)で表される。
【0018】
図2は、GNSS受信機により測位された3次元位置情報のXY平面上の位置を説明する模式図である。中心点(基準点)P0が係留装置のブイ13の位置に対応し、その座標は既知の値(X0,Y0)である。例えば、無流時(潮止まり)時のブイ13の位置が中心点とされる。Ptは、測位された海象ブイ1の位置に対応し、その座標は(Xt,Yt)と表される。中心点P0に対して北の方角、東の方角、南の方角、西の方角がそれぞれ0°、90°、180°、270°とされる。
図2の例では、例えば北に対する角度θがその時刻における潮向として測定される。なお、潮向の表し方としては、(0°~360°)に限らず、(180°~180°)を使用してもよい。
【0019】
さらに、海象ブイ1には、GNSS受信機に加えて3次元位置情報を伝送するための無線通信部、電源部を有する。無線通信部は、アンテナを有し、インターネット上のウエブサイト又は地上のセンターと無線通信を行なう。例えば携帯電話網を利用した通信がなされる。衛星電話網を利用して通信を行なってもよい。電源部は、例えば二次電池と太陽発電装置によって構成されている。
【0020】
図3は、本発明の一実施形態による海況情報のシステム構成を示し、
図4は、海象ブイ1の位置変化から流向及び流速を推定する処理の流れを示す。上述したように、係留装置に対してロープ14a、より戻し15及びロープ14bを介して海象ブイ1が接続されている。
図3及び
図4においては、係留装置のより戻し、錘についての図示が省略されている。
【0021】
海象ブイ1で得られた3次元位置情報が例えば携帯通信又は衛星通信を介してクラウドサーバー2の位置情報受信サーバー21に送信される。例えば0.1秒間隔で3次元位置情報が伝送される。位置情報受信サーバー21は、衛星測位データの復号を行い、復号した3次元位置情報及び時刻情報がデータベースサーバー22に対して登録される。
【0022】
データベースサーバー22には、(年月日、時刻、経度、緯度、標高)の情報が登録される。データベースサーバー22に対して前処理サーバー23が接続され、データベースサーバー22及び前処理サーバー23に対して解析サーバー24が接続されている。
【0023】
前処理サーバー23は、データベースサーバー22から所定時間例えば5分~20分間の連続データの切り出し処理、衛星固有のノイズカット、位置情報の平滑化、3次元位置情報の平均値(Xt,Yt,Zt)の算出処理を行う。
【0024】
前処理サーバー23によって前処理されたデータが解析サーバー24に与えられる。解析サーバー24は、次の処理を行うことによって流速を推定するための近似曲線を生成し、近似曲線によって流速を推定する。
【0025】
・係留装置の海象ブイ1の設置点P0の座標(X0,Y0)と海象ブイ1の位置Ptの座標(Xt,Yt,Zt)及び時刻情報Tから方位と移動距離を算出する。
・時系列方位(流向)の平滑化によりノイズをカットする。
・平滑化した方位の時間差分値を算出する。
・2階差分値を算出し、2階差分値の極値を抽出する。
・隣り合う極値の積と別途作成した実測流速の近似曲線から流速を推定する。
【0026】
2階差分値は定間隔(例えば10分毎)の離散的な数値の時系列として出力(計算)される。この離散値をグラフ化すると
図6のグラフとなる。このグラフの山・谷を極値と呼ぶが、前後の数値関係から算出したピーク値に過ぎない。その意味では、節点(ノード)と称してもよい。
【0027】
最小二乗法により多項式近似の係数A・B・C・Dを求める
Y=A x (Xの3乗)+ B x (Xの2乗) + C x X + D
【0028】
解析サーバー24によって求められた流速推定値は、AI(人工知能:artificial intelligence)補正サーバー25によってその精度が高いものとされる。すなわち、鉛直方向(Z)の潮位変化を加えた流速推定学習モデル(ニューラルネットワークを活用した流速推定及び補正)によって流速の推定精度がより高いものとされる。
【0029】
AI補正サーバー25によって補正された推定流速が解析データベース26に供給される。解析データベース26には、(年月日・時刻・流向・流速)の海況データが蓄積される。
【0030】
解析データベース26に対してコンテンツサーバー27が接続され、コンテンツサーバー27にWebサーバー28が接続され、外部から解析データベース26のデータに対してアクセス可能とされている。外部からは、スマートフォン31、パーソナルコンピュータ32、ケーブルテレビ33等によって解析データベース26のデータに対してアクセス可能とされている。
【0031】
上述した解析サーバー24の処理によって流速を推定できることを本願発明者は以下のように確かめた。
図5、
図6、
図7及び
図8を参照して流速の推定について説明する。なお、流速の推定のための近似曲線を生成するために、係留装置の例えばロープ12a~12cの何れかに対して超音波流速計が取り付けられ、流速が測定される。近似曲線が生成された後では、超音波流速計が取り外されてもよい。すなわち、お手本となる超音波流速計の計測値(教師用データ)は、近似式を作るときに利用される。従って、実際には検証以外でブイに超音波流速計が取り付けられることはない。
【0032】
図5は、超音波流速計によって測定された流速[cm/sec]を示すグラフ40と、海象ブイ1の移動方向から測定された流向[0°~360°]を示すグラフ41である。横軸は、日付及び時刻であり、例えば10分間隔の値がプロットされる。縦軸は、流速及び流向を表している。
【0033】
図6は、流向を2階差分した値のグラフ42と平均流速のグラフ43を示す。但し、
図5及び
図6の横軸は、対応していない。
図6において、白のドットは、2階差分した値から抽出された極値を表している。
【0034】
図7は、隣り合う極値の積(横軸)と平均流速(縦軸)の散布図を示す。この散布図から近似曲線44を生成することができる。生成された近似曲線44は、記憶装置例えば解析サーバー24の記憶装置に記憶される。近似曲線44を保持することによって、極値の積から流速を推定することができる。極値に相当しない他の時刻における流速は、直前まで求めた複数の極値から外挿して求めることができる。
【0035】
図8は、近似曲線44を使用して流向から推定された流速と超音波流速計などを使用して実測された流速を重ねて示すグラフである。太線のグラフ45が近似曲線44を使用して推定された流速であり、細線のグラフ46が実測された流速である。この
図8から分かるように推定流速の実測流速に対する差が小さく、推定流速が実測値に近いことが分かる。なお、上述したデータの例は。AIサーバー25による補正がされていない例であり、補正を行うことによってより精度を高めることができる。
【0036】
上述した一実施形態によれば、近似曲線を生成することによって、海象ブイ1からの位置情報から流向及び流速を推定することができる。したがって、超音波流速計のようなセンサーによって流速を測定する場合のように、メンテナンス(電池交換、清掃等)が不要となる。また、近似曲線を作成するためには超音波流速計を必要とするが、近似曲線を作成した後では、超音波流速計が不要であり、コストの低減が可能となる。
【0037】
上述した一実施形態について説明したように、本発明においては、以下のような流速推定がなされる。
1.準天頂衛星「みちびき」の高精度(cm精度)の測位データ(緯度・経度・標高)を取得する。
【0038】
2.海面変位(主に潮位変動)をcm精度でモニタリングし、海域により大きく異なる干満の時刻や高低差を正確にリアルタイムに計測する。
【0039】
3.潮汐により時系列的に変化する係留された海象ブイ1の挙動(XYZ変位)から、流速推定に関わる2つのパラメータを抽出する。すなわち、海象ブイ1の設置点(基準点)を中心とした移動距離及び方位の時系列の2階差分を干満間の時間毎に規格化してパラメータ化する。
【0040】
時間間隔の異なる干満間の時間(上げ下げ潮の潮時)を規格化し、この規格化された潮時における海象ブイ1の設置点からの移動距離も規格化することにより、大潮・小潮にかかわらず共通のパラメータで潮位変動から実測流速を推定することが可能となった。
【0041】
4.実測流速と海面変位から求めたパラメータの相関関係から流速とパラメータ間の近似曲線を生成する。
この規格化された近似曲線を用いて、任意の海域における潮流の流速を推定する。
【0042】
上述した本発明について実証実験を行った結果について以下に説明する。実証実験においては、海象ブイ1がCLAS(Centimeter Level Augmentation Service:センチメータ級測位補強サービス)の受信機を備える。したがって、誤差数cmの精度で位置情報を取得できる。約1ヶ月間に渡る潮流観測を行い、実測流速とブイの挙動から流速推定パラメータの再計算を行った。
【0043】
図9は、観測期間中の海象ブイ1の軌跡を示したもので、Xで示す楕円の真ん中が、海象ブイ1の投入点(基準点)に当たる。移動距離や方位をこの海象ブイ1の投入点を基点として、再計算した流速推定パラメータが、
図10(実測流速と海象ブイ1の移動距離の関係を示すグラフ)及び
図11(海象ブイ1の方位の2階差分値と実測流速の関係を示すグラフ)である。
【0044】
また、CLAS測位システムの標高値から算出した水位の時系列データが求められる。このデータは、実証実験を行った海域の近傍の検潮所(函館変動検潮所)極めて良く合致している。これより海象ブイ1の標高データから、現場における正確な干満時刻を求めることができる。
【0045】
一般に不揃いな干満間の時間間隔を規格化して、任意の潮時(例えば大潮下げ、中潮下げ、小潮下げ、大潮上げ)における流速推定パラメータを再計算した結果を
図12が示す。
図12より特に規格化した移動距離と実測流速との間には明瞭な相関が見られ、
図12に示すように、近似曲線を求めることができる。この近似曲線から推定された流速と実測流速を比較したものが、
図13であり、平均2乗誤差は3cm/s程度となり、実用を十分に満たす流速推定式であることが確認された。
【0046】
以上、本発明の実施の形態について具体的に説明したが、本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。例えば、海象ブイ1を係留する場所は、海底に限らず、港の桟橋等の固定部であってもよい。また、クラウドサーバーの一部の機能例えば前処理サーバーの機能を海象ブイ1が持つようにしてもよい。上述の実施形態において挙げた構成、方法、工程、形状、材料および数値などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料および数値などを用いてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1・・・海象ブイ、2・・・クラウドサーバー、11・・・土のう、12a,12b,12c、14a、14b・・・ロープ、13・・・ブイ、21・・・位置情報受信サーバー、22・・・データベースサーバー、24・・・解析サーバー、25・・・AI補正サーバー、26・・・解析データベース
【要約】
【課題】流速測定用センサーを使用しないで、流速を推定することを可能とする。
【解決手段】固定部に係留され、海水面に追従して変動し、アンテナ及びGNSS受信機を有し、GNSS受信機により位置情報を得るようになされた海象ブイを使用する海況情報推定装置であって、海象ブイの設置点P0の位置情報と海象ブイの位置Ptの位置情報から方位を算出し、方位の時系列の2階差分値を算出し、2階差分値の極値を算出し、隣り合う極値の積を算出し、極値の積と実測流速の近似曲線から流速を推定する海況情報推定装置である。
【選択図】
図4