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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-20
(45)【発行日】2025-05-28
(54)【発明の名称】量子回路用の微細加工エアブリッジ
(51)【国際特許分類】
   H10N 60/01 20230101AFI20250521BHJP
   H10N 60/10 20230101ALI20250521BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20250521BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20250521BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20250521BHJP
   H01L 23/532 20060101ALI20250521BHJP
【FI】
H10N60/01 W
H10N60/10 K ZAA
H01L21/302 105Z
H01L21/60 321E
H01L21/90 N
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2022539434
(86)(22)【出願日】2020-12-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-09
(86)【国際出願番号】 EP2020085931
(87)【国際公開番号】W WO2021144092
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】16/741,595
(32)【優先日】2020-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【住所又は居所原語表記】New Orchard Road, Armonk, New York 10504, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【弁理士】
【氏名又は名称】太佐 種一
(74)【代理人】
【識別番号】100120710
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】アディガ、ヴィヴェカンナンダ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、ホンウェン
(72)【発明者】
【氏名】パパリア、ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ラース、デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】パテル、ジョティカ
【審査官】小山 満
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0322693(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0311422(US,A1)
【文献】特開平06-140641(JP,A)
【文献】特開平05-063098(JP,A)
【文献】LANKWARDEN Y.J.Y. ,Development of NbTiN-Al Direct Antenna Coupled Kinetic Inductance Detectors,Journal of Low Temperature Physics,米国,2012年05月,Vol.167, No.3-4,p.367-372
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 60/01
H10N 60/10
H01L 21/3065
H01L 21/60
H01L 21/768
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子力学的デバイス内のブリッジ構造を製造するための方法であって、
互いに電気的に絶縁された第1の部分、第2の部分、および第3の部分に分割された第1の超伝導材料の層を上に成膜した基板を含んでいる下部構造を提供することと、
犠牲層を、前記第1の超伝導材料の前記第1の部分および前記第2の部分を含む前記下部構造の上に成膜することと、
前記第1の超伝導材料の前記第1の部分および前記第2の部分を、第2の超伝導材料のストリップと電気的に接続することであって、前記第2の超伝導材料が前記第1の超伝導材料と異なっている、前記接続することと、
前記第1の部分と前記第2の部分との間の前記第3の部分の上に前記第2の超伝導材料の前記ストリップを含むブリッジ構造を形成するように、前記下部構造の上に成膜された前記犠牲層の一部を除去することであって、前記ブリッジ構造が、前記第1の部分を前記第2の部分に電気的に接続するが、前記第3の部分を前記第1の部分に電気的に接続せず、前記第3の部分を前記第2の部分に電気的に接続しない、前記除去することとを含み、
前記基板の上に成膜された前記犠牲層の前記一部を除去することが、前記ストリップと前記第1の超伝導材料の前記第3の部分との間にすき間を形成し、前記第1の超伝導材料の前記第3の部分の上に前記ブリッジ構造を定めるように、前記ストリップの下の前記犠牲層の一部をエッチングすることと、
前記第3の部分の上に成膜された前記ストリップの下の前記犠牲層をエッチングすることと、前記第1、第2、および第3の部分を分離する第1の溝および第2の溝内に成膜された前記犠牲層をエッチングすることと、前記ストリップの両端で前記犠牲層をエッチングしないこととを含む、
方法。
【請求項2】
前記下部構造を提供することが、表面を有する前記基板を提供することと、前記第1の超伝導材料の前記層を前記基板の前記表面の上に成膜することとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記下部構造を提供することが、前記第1の超伝導材料の前記層をエッチングして、第1の溝および第2の溝を形成することであって、前記第1の超伝導材料の前記層の前記第1の部分、前記第2の部分、および前記第3の部分が、前記エッチングされた第1の溝および前記エッチングされた第2の溝によって互いに間隔を空けられるように、前記第1の超伝導材料の前記層の前記第1の部分、前記第2の部分、および前記第3の部分を定めるために、前記第1の超伝導材料の前記層をエッチングして、第1の溝および第2の溝を形成することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記基板がシリコンまたはサファイアを含む、請求項1ないし3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記第1の超伝導材料がニオブまたはアルミニウムを含む、請求項1ないし4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記犠牲層がチタン(Ti)、窒化チタン(TiN)、またはタンタル(Ta)、あるいはこれらの任意の組み合わせを含む、請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記下部構造の上に前記犠牲層を成膜することが、超伝導犠牲材料を前記下部構造の上にスパッタリングすることを含む、請求項1ないし6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記第1の超伝導材料の前記第1の部分および前記第2の部分を前記第2の超伝導材料の前記ストリップと電気的に接続することが、圧縮応力を受けた超伝導材料をスパッタリングして、前記第2の超伝導材料の前記ストリップを形成することを含む、請求項1ないし7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記第1の超伝導材料の前記第1の部分および前記第2の部分を前記第2の超伝導材料の前記ストリップと電気的に接続することが、前記ストリップの第1のベース・パッドを前記第1の部分に取り付けることと、前記ストリップの第2のベース・パッドを前記第2の部分に取り付けることとを含む、請求項1ないし8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記第1の超伝導材料の前記第1の部分および前記第2の部分を前記第2の超伝導材料の前記ストリップと電気的に接続することが、前記第1の超伝導材料の前記第1の部分および前記第2の部分を多孔質の第2の超伝導材料のストリップと電気的に接続することを含む、請求項1ないし9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記ストリップの下の前記犠牲層の前記一部をエッチングすることが、酸エッチングを使用して前記犠牲層の前記一部をエッチングすることを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記下部構造を提供することが、
表面を有する前記基板を提供することと、
犠牲材料の層を前記基板の前記表面の上に成膜することと、
犠牲材料の前記層を選択的にエッチングし、前記犠牲材料の第1および第2の間隔を空けられた部分を形成することと、
前記犠牲材料の前記第1および第2の部分を除いて前記基板を選択的にエッチングすることと、
前記第1の超伝導材料の層を前記エッチングされた基板および前記犠牲材料の前記第1および第2の部分の上に成膜することと、
前記第1の超伝導材料の前記成膜された層および犠牲材料の前記第1および第2の部分を除去し、基板材料によって互いに電気的に絶縁された前記第1の部分、前記第2の部分、および前記第3の部分に分割された前記第1の超伝導材料の層を得ることとを含む、請求項1ないし11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記下部構造の上に前記犠牲層を成膜することが、超伝導犠牲材料を前記第1の超伝導材料の前記層の上にスパッタリングすることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記基板の上に成膜された前記犠牲層の前記一部を除去することが、前記ストリップと前記第1の超伝導材料の前記第3の部分との間にすき間を形成し、前記第1の超伝導材料の前記第3の部分の上に前記ブリッジ構造を定めるように、前記ストリップの下の前記犠牲層の一部をエッチングすることと、前記超伝導材料の前記第1、第2、および第3の部分を分離する前記基板材料をエッチングすることとを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
量子力学的デバイスであって、
基板と、
前記基板の上に成膜された第1の超伝導材料の層であって、互いに電気的に絶縁された第1の部分、第2の部分、および第3の部分に分割されている、前記層と、
前記第1の部分と前記第2の部分との間に位置している前記第3の部分の上で前記第1の部分および前記第2の部分に接続されたブリッジ構造であって、前記ブリッジ構造が、前記第1の超伝導材料の前記第1の部分および前記第2の部分を電気的に接続するように構成された第2の超伝導材料のストリップを備えた、前記ブリッジ構造とを備え、
前記ストリップの前記第2の超伝導材料が前記第1の超伝導材料と異なっており、かつ、少なくとも、前記第1の超伝導材料の前記層の前記第3の部分を横切る部分において多孔質である、量子力学的デバイス。
【請求項16】
前記第1の超伝導材料の前記第1の部分および前記第2の部分が同じグランド電位に接続される、請求項15に記載の量子力学的デバイス。
【請求項17】
前記第1の超伝導材料の前記第3の部分が、キュービットとの間で電磁信号を搬送するように構成された信号線である、請求項15または16に記載の量子力学的デバイス。
【請求項18】
前記ブリッジ構造が、平面状のマイクロ波回路のスプリアス・モードを実質的に取り除くように構成される、請求項15ないし17のいずれかに記載の量子力学的デバイス。
【請求項19】
前記第1の超伝導材料の前記層が、前記第1の部分、前記第2の部分、および前記第3の部分と電気的に絶縁されている第4の部分および第5の部分をさらに含み、前記第4の部分および前記第5の部分が、第1のキュービットとの間で第1の電磁信号を搬送するように構成された第1および第2の信号線であり、前記第3の部分が、第2のキュービットとの間で第2の電磁信号を搬送するように構成された第3の信号線である、請求項15ないし18のいずれかに記載の量子力学的デバイス。
【請求項20】
前記第1の超伝導材料の前記層の複数の位置で前記第1の超伝導材料の前記層の前記第1の部分および前記第2の部分を電気的に接続するために、規則的に間隔を空けられた複数のブリッジ構造をさらに含む、請求項15ないし19のいずれかに記載の量子力学的デバイス。
【請求項21】
前記複数のブリッジ構造が、前記第1の超伝導材料の前記層の前記第1の部分および前記第2の部分を同じグランド電位に接続するように構成される、請求項20に記載の量子力学的デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここで特許請求する本発明の実施形態は、量子回路に関連しており、より詳細には、量子力学的デバイス内のブリッジ構造およびブリッジ構造を有する量子力学的デバイスを製造する方法に関連している。
【背景技術】
【0002】
量子計算は、量子ビット(quantum bit)(本明細書では、全体を通じてキュービット(qubit)と呼ばれる)の信頼できる制御に基づく。量子アルゴリズムを実現するために必要とされる基本的動作は、一連の単一キュービット動作、および2つの分離した量子ビット間の相関関係を確立する2キュービット動作である。量子計算のエラーしきい値に達すること、および信頼できる量子シミュレーションに達することの両方のために、忠実度の高い2キュービット動作の実現が望ましいことがある。
【0003】
(1つまたは複数の超伝導キュービットを有する)超伝導量子プロセッサは、絶縁基板(例えば、Siまたは高抵抗Si、Alなど)上に超伝導金属(例えば、Al、Nbなど)を含む。超伝導量子プロセッサは、通常、さまざまな格子対称性(例えば、正方形、六角形など)で結合器によってリンクされた平面状の2次元格子構造または個別のキュービットの回路、およびフリップ・チップ上に位置する読み出し構造である。結合器は、キュービット間を結合するコンデンサ、共振器、コイル、または任意のマイクロ波部品で作られることができる。
【0004】
コプレーナ導波路(CPW:coplanar waveguide)に基づく超伝導マイクロ波回路は、寄生スロットライン・モード(parasitic slot-line mode)の影響を受けやすい。これらのモードは、キュービットなどの回路の素子に結合することができ、したがって、信号損失およびデコヒーレンスを引き起こす可能性がある。これらのスプリアス・モードを取り除くために、通常は、コプレーナ導波路(CPW)によって遮断されたグランド・プレーン間で交差接続が行われる。従来、エアブリッジとして知られている独立(free standing)の交差がその目的に使用されている。しかし、これらのエアブリッジの製造には、あまり望ましくない量子力学的デバイスまたは回路につながる問題が残っている。
【発明の概要】
【0005】
本発明の態様は、量子力学的デバイス内のブリッジ構造を製造するための方法を提供する。この方法は、互いに電気的に絶縁された第1の部分、第2の部分、および第3の部分に分割された第1の超伝導材料の層を上に成膜した基板を含んでいる下部構造を提供することを含む。この方法は、犠牲層を下部構造の上に成膜することと、第1の超伝導材料の第1の部分および第2の部分を、第2の超伝導材料のストリップと電気的に接続することとをさらに含み、第2の超伝導材料は第1の超伝導材料と異なっている。この方法は、第1の部分と第2の部分との間の第3の部分の上に第2の超伝導材料のストリップを含むブリッジ構造を形成するように、下部構造の上に成膜された犠牲層の一部を除去することも含み、ブリッジ構造は、第1の部分を第2の部分に電気的に接続するが、第3の部分を第1の部分に電気的に接続せず、第3の部分を第2の部分に電気的に接続しない。
【0006】
実施形態では、下部構造を提供することは、表面を有する基板を提供することと、第1の超伝導材料の層を基板の表面の上に成膜することとを含む。実施形態では、下部構造を提供することは、第1の超伝導材料の層の第1の部分、第2の部分、および第3の部分が、エッチングされた第1の溝およびエッチングされた第2の溝によって互いに間隔を空けられるように、第1の超伝導材料の層の第1の部分、第2の部分、および第3の部分を定めるために、第1の超伝導材料の層をエッチングして、第1の溝および第2の溝を形成することをさらに含む。
【0007】
実施形態では、基板はシリコンまたはサファイアを含む。実施形態では、第1の超伝導材料はニオブまたはアルミニウムを含む。実施形態では、犠牲層はチタン(Ti)、窒化チタン(TiN)、またはタンタル(Ta)、あるいはこれらの任意の組み合わせを含む。
【0008】
実施形態では、下部構造の上に犠牲層を成膜することは、超伝導犠牲材料を下部構造の上にスパッタリングすることを含む。実施形態では、第1の超伝導材料の第1の部分および第2の部分を第2の超伝導材料のストリップと電気的に接続することは、圧縮応力を受けた超伝導材料をスパッタリングして、第2の超伝導材料のストリップを形成することを含む。実施形態では、第1の超伝導材料の第1の部分および第2の部分を第2の超伝導材料のストリップと電気的に接続することは、ストリップの第1のベース・パッドを第1の部分に取り付けることと、ストリップの第2のベース・パッドを第2の部分に取り付けることとを含む。実施形態では、第1の超伝導材料の第1の部分および第2の部分を第2の超伝導材料のストリップと電気的に接続することは、第1の超伝導材料の第1の部分および第2の部分を多孔質の第2の超伝導材料のストリップと電気的に接続することを含む。
【0009】
実施形態では、基板の上に成膜された犠牲層の一部を除去することは、ストリップと第1の超伝導材料の第3の部分との間にすき間を形成し、第1の超伝導材料の第3の部分の上にブリッジ構造を定めるように、ストリップの下の犠牲層の一部をエッチングすることを含む。実施形態では、ストリップの下の犠牲層の一部をエッチングすることは、酸エッチングを使用して犠牲層の一部をエッチングすることを含む。実施形態では、ストリップの下の犠牲層の一部をエッチングすることは、第3の部分の上に成膜されたストリップの下の犠牲層をエッチングすることと、第1、第2、および第3の部分を分離する第1の溝および第2の溝内に成膜された犠牲層をエッチングすることと、ストリップの両端で犠牲層をエッチングしないこととを含む。
【0010】
実施形態では、下部構造を提供することは、表面を有する基板を提供することと、犠牲材料の層を基板の表面の上に成膜することと、犠牲材料の層を選択的にエッチングして、犠牲材料の第1および第2の間隔を空けられた部分を形成することと、犠牲材料の第1および第2の部分を除いて基板を選択的にエッチングすることと、第1の超伝導材料の層をエッチングされた基板および犠牲材料の第1および第2の部分の上に成膜することと、第1の超伝導材料の成膜された層および犠牲材料の第1および第2の部分を除去し、基板材料によって互いに電気的に絶縁された第1の部分、第2の部分、および第3の部分に分割された第1の超伝導材料の層を得ることとを含む。
【0011】
実施形態では、下部構造の上に犠牲層を成膜することは、超伝導犠牲材料を第1の超伝導材料の層の上にスパッタリングすることを含む。実施形態では、基板の上に成膜された犠牲層の一部を除去することは、ストリップと第1の超伝導材料の第3の部分との間にすき間を形成し、第1の超伝導材料の第3の部分の上にブリッジ構造を定めるように、ストリップの下の犠牲層の一部をエッチングすることと、超伝導材料の第1、第2、および第3の部分を分離する基板材料をエッチングすることとを含む。
【0012】
本発明の別の態様は、基板、および基板の上に成膜された第1の超伝導材料の層を含んでいる量子力学的デバイスを提供し、この層は、互いに電気的に絶縁された第1の部分、第2の部分、および第3の部分に分割されている。量子力学的デバイスは、第1の部分と第2の部分との間に位置している第3の部分の上で第1の部分および第2の部分に接続されたブリッジ構造をさらに含み、ブリッジ構造は、第1の超伝導材料の第1の部分および第2の部分を電気的に接続するように構成された第2の超伝導材料のストリップを有する。ストリップの第2の超伝導材料は、第1の超伝導材料と異なっている。
【0013】
実施形態では、ストリップの第2の超伝導材料は、少なくとも、第1の超伝導材料の層の第3の部分を横切る部分において多孔質である。実施形態では、第1の超伝導材料の第1の部分および第2の部分が、同じグランド電位に接続される。実施形態では、第1の超伝導材料の第3の部分は、キュービットとの間で電磁信号を搬送するように構成された信号線である。実施形態では、ブリッジ構造は、平面状のマイクロ波回路のスプリアス・モードを実質的に取り除くように構成される。実施形態では、第1の超伝導材料の層の第1の部分および第2の部分は、第1のキュービットとの間で第1の電磁信号を搬送するように構成された第1および第2の信号線であり、第3の部分は、第2のキュービットとの間で第2の電磁信号を搬送するように構成された第3の信号線である。
【0014】
実施形態では、量子力学的デバイスは、第1の超伝導材料の層の複数の位置で第1の超伝導材料の層の第1の部分および第2の部分を電気的に接続するために、規則的に間隔を空けられた複数のブリッジ構造をさらに含む。実施形態では、複数のブリッジ構造が、第1の超伝導材料の層の第1の部分および第2の部分を同じグランド電位に接続するように構成される。
【0015】
ブリッジ構造は、例えば、グランド・プレーンを接続することによって平面状のマイクロ波回路のスプリアス・モードを取り除くため、または信号線を越えるために使用されることができる。これによって、障害物に囲まれたキュービットにアクセスすることを可能にし、このようにして、超伝導2次元(2D:two-dimensional)量子回路の平面を分割することを可能にする。ブリッジ構造は、超伝導材料を含むことができ、キュービットおよび回路の他の部分を製造する第1の層の製造プロセスと比較して異なるプロセスを使用して製造される。これは、さまざまな材料を使用する柔軟性をもたらす。加えて、この方法および量子力学的デバイスは、ブリッジ構造のプレストレスおよび曲げられる性質に起因して、より良い歩留まりを実現する。さらに、信号線を異なる製造の実行によって接続する必要がなく、したがって、信号損失を減らすか、または低下させる。
【0016】
本開示に加えて、構造の関連する要素および部分の組み合わせの動作および機能の方法ならびに製造の経済性が、添付の図面を参照して以下の説明および添付の特許請求の範囲を検討したときに、さらに明らかになるであろう。それらすべてが、類似する参照番号がさまざまな図内の対応する部分を指定している本明細書の一部を形成する。しかし、それらの図面が単に例示および説明を目的としており、本発明の制限の定義として意図されていないということが、明確に理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A】本発明の実施形態に記載された、第1の超伝導材料が上に成膜された基板を含んでいる下部構造の概略側面図である。
図1B】本発明の実施形態に記載された、第1の超伝導材料が上に成膜された基板を含んでいる下部構造の概略上面図である。
図2】本発明の別の実施形態に記載された、超伝導材料が上に成膜された基板の概略上面図である。
図3】本発明の実施形態に記載された、第1の超伝導材料および犠牲レジスト層が上に成膜された基板の概略側面図である。
図4A】本発明の実施形態に記載された、第1の超伝導材料の第3の部分の上の第2の超伝導材料のストリップを上に形成した下部構造の概略上面図である。
図4B】本発明の実施形態に記載された、第1の超伝導材料の第3の部分の上で第1の超伝導材料の第4の部分および第5の部分を電気的に接続する第2の超伝導材料のストリップを上に形成した下部構造の概略上面図である。
図5】本発明の実施形態に記載された、第2の超伝導材料のストリップを含むブリッジ構造を上に形成した下部構造の概略側面図である。
図6】本発明の実施形態に記載された、ストリップおよびストリップの両端のベース・パッドを含んでいるブリッジ構造を示す走査型電子顕微鏡(SEM:scanning electron microscope)画像の図である。
図7】本発明の実施形態に記載された、電磁伝送線の長さに沿って配置された複数のブリッジ構造を示す走査型電子顕微鏡(SEM)画像の図である。
図8A】本発明の別の実施形態に記載された、犠牲層が上に成膜された基板の概略側面図である。
図8B】本発明の別の実施形態に記載された、エッチングされた犠牲層が上に成膜された基板の概略上面図である。
図8C】本発明の別の実施形態に記載された、図8Bに示された線8C-8Cで取得された、エッチングされた犠牲層が上に成膜された基板の概略断面図である。
図8D】本発明の別の実施形態に記載された、エッチングされた犠牲材料層および選択的にエッチングされた基板を含む、基板の概略断面図である。
図9A】本発明の別の実施形態に記載された、第1の超伝導材料の層が上にさらに成膜された基板の概略上面図である。
図9B】本発明の実施形態に記載された、図9Aに示された線9B-9Bで取得された、第1の超伝導材料の層が上にさらに成膜された基板の概略断面図である。
図10A】本発明の実施形態に記載された、第1の部分、第2の部分、および第3の部分に分割された第1の超伝導材料の層を上に成膜した基板の概略上面図である。
図10B】本発明の実施形態に記載された、基板の突起によって互いに電気的に絶縁された第1の部分、第2の部分、および第3の部分に分割された第1の超伝導材料の層を上に成膜した基板の概略断面図であり、この断面は、図10Aに示された線10B-10Bで取得された。
図11】本発明の別の実施形態に記載された、下部構造の上に形成されたブリッジ構造の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態では、量子力学的デバイス内のブリッジ構造を製造するための方法が提供されている。この方法は、第1の超伝導材料104の層を上に成膜した基板102を有する下部構造100を提供することを含む。図1Aは、本発明の実施形態に記載された、第1の超伝導材料104が上に成膜された基板102を含んでいる下部構造100の概略側面図である。図1Bは、本発明の実施形態に記載された、第1の超伝導材料104が上に成膜された基板102を含んでいる下部構造100の概略上面図である。実施形態では、基板102は、例えばシリコンまたはサファイアであることができる。実施形態では、第1の超伝導材料104は、ニオブ(Nb)、アルミニウム(Al)などを含んでよい。
【0019】
第1の超伝導材料層104は、図1Bに示されているように、互いに電気的に絶縁された第1の部分104A、第2の部分104B、および第3の部分104Cに分割される。図1Bに示されているように、第1の部分104A、第2の部分104B、および第3の部分104Cは、第1の部分104Aと第3の部分104Cとの間の第1の溝106Aおよび第2の部分104Bと第3の部分104Cとの間の第2の溝106Bの存在によって互いに電気的に絶縁され、これらの溝を通して基板102を見ることができる。
【0020】
実施形態では、図1Aに示されているように、基板102は表面102Aを有し、表面102Aの上に、第1の超伝導材料104の層が成膜される。実施形態では、下部構造100を提供することは、第1の超伝導材料104の層の第1の部分104A、第2の部分104B、および第3の部分104Cが、エッチングされた第1の溝106Aおよびエッチングされた第2の溝106Bによって互いに間隔を空けられるように、第1の超伝導材料104の層の第1の部分104A、第2の部分104B、および第3の部分104Cを定めるために、第1の超伝導材料104の層をエッチングして、第1の溝106Aおよび第2の溝106Bを形成することを含む。実施形態では、図1Bに示されているように、第3の部分104Cは、第1の部分104Aと第2の部分104Bとの間に位置する。
【0021】
実施形態では、第1の超伝導材料104の第1の部分104Aおよび第2の部分104Bが、同じグランド電位に接続される。実施形態では、第1の超伝導材料104の第3の部分104Cは、キュービット(図示されていない)との間で電磁信号を搬送するように構成された信号線である。
【0022】
図2は、本発明の別の実施形態に記載された、超伝導材料が上に成膜された基板の概略上面図である。実施形態では、この方法は、図2に示されているように、第1の超伝導材料の層204を上に成膜した基板202を有する下部構造200を提供することを含んでもよい。この実施形態では、第1の超伝導材料層204は、第1の部分204A、第2の部分204B、および第3の部分204Cを有する。実施形態では、第1の超伝導材料層204の第1の部分204Aおよび第2の部分204Bが、同じグランド電位に接続される。実施形態では、第1の超伝導材料204の第3の部分204Cは、キュービット(図示されていない)との間で電磁信号を搬送するように構成された信号線である。図2に示されているように、第1の部分204A、第2の部分204B、および第3の部分204Cは、第1の部分204Aと第3の部分204Cとの間の第1の溝206Aおよび第2の部分204Bと第3の部分204Cとの間の第2の溝206Bの存在によって互いに電気的に絶縁され、これらの溝を通して基板202を見ることができる。
【0023】
前の実施形態と同様に、下部構造200を提供することは、第1の超伝導材料の層204の第1の部分204A、第2の部分204B、および第3の部分204Cが、エッチングされた第1の溝206Aおよびエッチングされた第2の溝206Bによって互いに間隔を空けられるように、第1の超伝導材料の層204の第1の部分204A、第2の部分204B、および第3の部分204Cを定めるために、第1の超伝導材料層204の層をエッチングして、第1の溝206Aおよび第2の溝206Bを形成することを含む。
【0024】
第1の部分204A、第2の部分204B、および第3の部分204Cに加えて、第1の超伝導材料層204は、第4の部分204Dおよび第5の部分204Eをさらに含む。第4の部分204Dは、第1の部分204A、第2の部分204B、および第3の部分204Cから電気的に絶縁される。同様に、第5の部分204Eも、第1の部分204A、第2の部分204B、第3の部分204C、および第4の部分204Dから電気的に絶縁される。第4の部分204Dは、第1の超伝導材料204の層内でエッチングされた溝206Cの存在によって第1の部分204Aから電気的に絶縁される。溝206Cは、第4の部分204Dを第1の部分204Aから絶縁するために、U字形を形成する。第5の部分204Eは、第1の超伝導材料204の層内でエッチングされた溝206Dの存在によって第2の部分204Bから電気的に絶縁される。溝206Dは、第5の部分204Eを第2の部分204Bから絶縁するために、U字形を形成する。
【0025】
実施形態では、第1の部分204Aおよび第2の部分204Bが、両方ともグランド電位に電気的に接続される。実施形態では、第3の部分204Cは、第1のキュービットとの間で第1の電磁信号を搬送するように構成された第1の信号線である。実施形態では、第4の部分204Dおよび第5の部分204Eは、ブリッジ構造を使用して互いに接続された場合、第2のキュービットとの間で第2の電磁信号を搬送するように構成された第2の信号線を形成する。
【0026】
図3は、本発明の実施形態に記載された、第1の超伝導材料104、204および犠牲レジスト層402が上に成膜された基板102、202の概略側面図である。実施形態では、この方法は、下部構造100、200の上に犠牲層402を成膜することをさらに含む。実施形態では、犠牲層はチタン(Ti)、窒化チタン(TiN)、またはタンタル(Ta)、あるいはこれらの任意の組み合わせを含む。実施形態では、犠牲層402を成膜することは、超伝導犠牲材料を下部構造100、200の上にスパッタリングすることを含む。実施形態では、犠牲層402は、第1の超伝導材料層104、204の上、および溝106A、106B、206A、206B、206C、206D内の基板102、202の上に成膜される。
【0027】
実施形態では、この方法は、第1の超伝導材料104、204の第1の部分104A、204Aおよび第2の部分104B、204Bを第2の超伝導材料404のストリップ502と電気的に接続することを含み、第2の超伝導材料404は第1の超伝導材料104、204と異なっている。図4Aは、本発明の実施形態に記載された、第3の部分104C、204Cの上の第2の超伝導材料404のストリップ502を上に形成した下部構造100、200の概略上面図である。
【0028】
実施形態では、図3に示されているように、第2の超伝導材料404が犠牲層402の上に成膜される。第2の超伝導材料404は、第1の超伝導材料104、204と異なっている。実施形態では、図4Aに示されているように、下部構造100、200の上に第2の超伝導材料404を成膜することは、圧縮応力を受けた超伝導材料404をスパッタリングして、第2の超伝導材料404のストリップ502を形成することを含む。実施形態では、図4Aに示されているように、ストリップ502は、第3の部分104C、204Cを横切るか、または交差する。ストリップ502は、実質的に直角に第3の部分104C、204Cと交差して示されているが、当然のことながら、任意のその他の角度で第3の部分104C、204Cと交差するようにストリップ502を作ることができる。実施形態では、第1の超伝導材料104、204の第1の部分104A、204Aおよび第2の部分104B、204Bを第2の超伝導材料404のストリップ502と電気的に接続することは、ストリップ502の端部にある第1のベース・パッド502Aを第1の部分104A、204Aに取り付けることと、ストリップ502の端部にある第2のベース・パッド502Bを第2の部分104B、204Bに取り付けることとを含む。
【0029】
図4Bは、本発明の実施形態に記載された、第3の部分204Cの上で第4の部分204Dおよび第5の部分204Eを電気的に接続する第2の超伝導材料404のストリップ503を上に形成した下部構造100、200の概略上面図である。実施形態では、この方法は、第1の超伝導材料204の第4の部分204Dおよび第5の部分204Eを第2の超伝導材料404のストリップ503と電気的に接続することを含むこともでき、第2の超伝導材料404は第1の超伝導材料204と異なっている。実施形態では、第1の超伝導材料204の第4の部分204Dおよび第5の部分204Eを第2の超伝導材料404のストリップ503と電気的に接続することは、例えば電磁信号をキュービットとの間で送信するための線を形成するように、ストリップ503の端部にある第1のベース・パッド503Aを第4の部分204Dに取り付けることと、ストリップ503の端部にある第2のベース・パッド503Bを第5の部分204Eに取り付けることとを含む。この場合、ストリップ503は、図4Bに示されているように、第1の部分204A、第2の部分204B、および第3の部分204Cを横切る。実施形態では、第2の超伝導材料404のストリップ503は、多孔質の第2の超伝導材料404のストリップを含む。
【0030】
実施形態では、この方法は、第1の部分104A、204Aと第2の部分104B、204Bとの間の第3の部分104C、204Cの上に第2の超伝導材料404のストリップ502、503を含むブリッジ構造602を形成するように、下部構造100、200の上に成膜された犠牲層402の一部を除去することを含む。図5は、本発明の実施形態に記載された、ストリップ502、503を含むブリッジ構造602を上に形成した下部構造100、200の概略側面図である。実施形態では、第1の超伝導材料104、204のブリッジ構造602と第3の部分104C、204Cとの間に空間またはすき間「G」を形成するように、ブリッジ構造602のストリップ502、503の近くおよび下の犠牲層402の一部が除去される。実施形態では、すき間「G」は、例えば約2μm~4μmの範囲内であることができる。実施形態では、ブリッジ構造602は、第1の超伝導材料104、204の第3の部分104C、204Cの上を通過する。ブリッジ構造602は、第1の部分104A、204Aを第2の部分104B、204Bに電気的に接続するが、第3の部分104C、204Cを第1の部分104A、204Aに電気的に接続せず、第3の部分104C、204Cを第2の部分104B、204Bに電気的に接続しない。
【0031】
実施形態では、下部構造100、200の上に成膜された犠牲層402の一部を除去することは、ストリップ502と第1の超伝導材料104、204の第3の部分104C、204Cとの間にすき間「G」を形成し、第1の超伝導材料104、204の第3の部分104C、204Cの上にブリッジ構造602を定めるように、ストリップ502の下の犠牲層402の一部をエッチングすることを含む。実施形態では、ストリップ502の下の犠牲層402の一部をエッチングすることは、第3の部分104C、204Cの上に成膜されたストリップ502、503の下の犠牲層402をエッチングすることと、第1の部分104A、204A、第2の部分104B、204B、および第3の部分104C、204Cを分離している第1の溝106A、206Aおよび第2の溝106B、206B内に成膜された犠牲層をエッチングすることと、ベース・パッド502A、503Aおよび502B、503Bの下を含むストリップ502、503の両端で犠牲層402をエッチングしないことを含む。実施形態では、ストリップ502、503の下の犠牲層402の一部をエッチングすることは、酸エッチングを使用して犠牲層402の一部をエッチングすることを含む。
【0032】
図6は、本発明の実施形態に記載された、ストリップ502ならびにベース・パッド502Aおよび502Bを含んでいるブリッジ構造602を示す走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。ブリッジ構造602のストリップ502は、多孔質である超伝導材料404から作られる。ストリップ502の多孔性は、ブリッジ構造602を形成するために、流体化学エッチング液が犠牲層402に達することができるようにすることによって、ストリップ502の下の犠牲層402の化学エッチングを可能にする。
【0033】
図7は、本発明の実施形態に記載された、電磁伝送線の長さに沿って配置された複数のブリッジ構造602を示す走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。各ブリッジ構造602は、第1の超伝導材料104、204の第3の部分104C、204Cの上を通過しながら、(例えば、グランド電位に接続された)第1の超伝導材料104、204の第1の部分104A、204Aを第2の部分104B、204Bに電気的に接続する。第3の部分104C、204Cは、例えばキュービットとの間で電磁信号を搬送するための伝送線の一部を形成する。実施形態では、スプリアス・モードを減らすか、または実質的に取り除くために、複数のブリッジ構造602の間隔を規則的に空けることができ、そうしないとスプリアス・モードが生じることがある。
【0034】
図8Aは、本発明の別の実施形態に記載された、犠牲層804が上に成膜された基板802の概略側面図である。図8Bは、本発明の別の実施形態に記載された、エッチングされた犠牲層804が上に成膜された基板802の概略上面図である。図8Cは、本発明の別の実施形態に記載された、図8Bに示された線8C-8Cで取得された、エッチングされた犠牲層804が上に成膜された基板802の概略断面図である。
【0035】
ブリッジ構造を製造する前述した方法と同様に、以下の方法は、図8Aに示されているように、犠牲材料層804の層を上に成膜した基板802を提供することも含む。実施形態では、基板802は、例えばシリコンまたはサファイアであることができる。実施形態では、犠牲材料層804は、例えば酸化物であることができる。しかし、その他の材料を使用することもできる。基板802は表面802Aを有する。この方法は、図8Aに示されているように、犠牲材料804の層を基板802の表面802Aの上に成膜することを含む。実施形態では、犠牲材料層804を基板802の上に成膜することは、超伝導犠牲材料804を基板802の表面802Aの上にスパッタリングすることを含む。この方法は、図8Bの上面図および図8Cの断面図に示されているように、犠牲材料804の層を選択的にエッチングし、犠牲材料804の第1および第2の間隔を空けられた部分804Aおよび804Bを形成することを含む。
【0036】
この方法は、犠牲材料804の第1の部分804Aおよび第2の部分804Bを除いて、基板802を選択的にエッチングすることをさらに含む。図8Dは、本発明の別の実施形態に記載された、エッチングされた犠牲材料層804および選択的にエッチングされた基板802を含む、基板802の概略断面図である。図8Dに示されているように、基板802をエッチングした後に、第1および第2の部分804Aおよび804Bが、基板802の2つの各突起812Aおよび812Bの上に位置している。
【0037】
この方法は、図9Aおよび図9Bに示されているように、第1の超伝導材料806の層を、エッチングされた基板802の上、ならびに犠牲材料804の第1および第2の部分804Aおよび804Bの上に成膜することをさらに含む。実施形態では、第1の超伝導材料は、例えばニオブ(Nb)であることができる。しかし、その他の超伝導材料を使用することもできる。図9Aは、本発明の別の実施形態に記載された、第1の超伝導材料806の層が上にさらに成膜された基板802の概略上面図である。図9Bは、図9Aに示された線9B-9Bで取得された、第1の超伝導材料806の層が上にさらに成膜された基板802の概略断面図である。図9Bに示されているように、実施形態では、第1の超伝導材料806の層内の2つの突起806Aおよび806Bが、基板802の各突起812Aおよび812Bの上に形成され、突起812Aおよび812Bの上に、犠牲材料804の第1および第2の部分804Aおよび804Bが成膜される。
【0038】
この方法は、第1の超伝導材料806の成膜された層、ならびに犠牲材料804の第1の部分804Aおよび第2の部分804Bを除去し、図10Aおよび10Bに示されているように、基板材料802によって互いに電気的に絶縁された第1の部分1002A、第2の部分1002B、および第3の部分1002Cに分割された第1の超伝導材料806の層を取得することも含む。図10Aは、本発明の実施形態に記載された、第1の部分1002A、第2の部分1002B、および第3の部分1002Cに分割された第1の超伝導材料806の層を上に成膜した基板802の概略上面図である。図10Aに示されているように、第1の超伝導材料806の成膜された層ならびに犠牲材料804の第1の部分804Aおよび第2の部分804Bが、図9Bに示された線10B-10Bまで除去され、第1の部分1002A、第2の部分1002B、および第3の部分1002Cに分割された第1の超伝導材料806の層を取得する。実施形態では、第1の超伝導材料806の成膜された層が、例えば、超伝導材料806が平坦化されるダマシン・プロセスとも呼ばれる化学的または機械的研磨を使用することによって除去される。この除去の後に、例えば、ウェットまたはドライ・エッチング・プロセスを使用して犠牲材料804の第1の部分804Aおよび第2の部分804Bを除去することが続く。
【0039】
第1の部分1002A、第2の部分1002B、および第3の部分1002Cは、図10Bに示されているように、基板802の突起812Aおよび812Bによって互いに電気的に絶縁される。図10Bは、本発明の実施形態に記載された、基板802の突起812Aおよび812Bによって互いに電気的に絶縁された第1の部分1002A、第2の部分1002B、および第3の部分1002Cに分割された第1の超伝導材料806の層を上に成膜した基板802の概略断面図であり、この断面は、図10Aに示された線10B-10Bで取得された。図10Bに示されている得られた下部構造1000は、第1の部分1002A、第2の部分1002B、および第3の部分1002Cに分割された第1の超伝導材料806の層を上に成膜した基板802を含んでいる。
【0040】
上記のステップに続いて、ブリッジ構造を得るために、図1A~5を参照して上で説明されたステップと同様のステップが実行される。図11は、本発明の別の実施形態に記載された、下部構造1000の上に形成されたブリッジ構造1100の概略断面図である。ブリッジ構造1100を得るために、この方法は、超伝導犠牲層1102を下部構造1000の上に成膜することをさらに含む。実施形態では、犠牲超伝導層は、例えばチタン(Ti)、窒化チタン(TiN)、またはタンタル(Ta)、あるいはこれらの任意の組み合わせから作られることができる。実施形態では、犠牲層1102を成膜することは、超伝導犠牲材料を下部構造1000の上にスパッタリングすることを含む。実施形態では、超伝導犠牲層1102は、第1の超伝導材料層806の上、および基板802の突起821Aおよび812Bの上に成膜される。
【0041】
実施形態では、この方法は、第1の超伝導材料806の第1の部分1002Aおよび第2の部分1002Bを第2の超伝導材料1106のストリップ1104と電気的に接続することを含み、第2の超伝導材料1106は第1の超伝導材料806と異なっている。
【0042】
実施形態では、第2の超伝導材料1106が超伝導犠牲層1102の上に成膜される。実施形態では、図11に示されているように、下部構造1000の上に第2の超伝導材料1106を成膜することは、圧縮応力を受けた超伝導材料をスパッタリングして、第2の超伝導材料1106のストリップ1104を形成することを含む。実施形態では、図11に示されているように、ストリップ1104は、第3の部分1002Cを横切る。実施形態では、第1の超伝導材料806の第1の部分1002Aおよび第2の部分1002Bを第2の超伝導材料1106のストリップ1104と電気的に接続することは、ストリップ1104の第1のベース・パッド1104Aを第1の部分1002Aに取り付けることと、ストリップ1104の第2のベース・パッド1104Bを第2の部分1002Bに取り付けることとを含む。
【0043】
実施形態では、この方法は、第1の部分1002Aと第2の部分1002Bとの間の第3の部分1002Cの上に第2の超伝導材料1106のストリップ1104を含むブリッジ構造1100を形成するように、下部構造1000の上に成膜された超伝導犠牲層1102の一部を除去することを含む。実施形態では、第1の超伝導材料806のブリッジ構造1104と第3の部分1002Cとの間に空間またはすき間「G」を形成するように、ブリッジ構造1100のストリップ1104の近くおよび下の超伝導犠牲層1102の一部が除去される。実施形態では、すき間「G」は、例えば約2μm~4μmの範囲内であることができる。実施形態では、ブリッジ構造1100は、第1の超伝導材料806の第3の部分1002Cの上を通過する。ブリッジ構造1100は、第1の部分1002Aを第2の部分1102Bに電気的に接続するが、第3の部分1002Cを第1の部分1002Aに電気的に接続せず、第3の部分1002Cを第2の部分1002Bに電気的に接続しない。
【0044】
実施形態では、図11に示されているように、下部構造1000の上に成膜された超伝導犠牲層1102の一部を除去することは、ストリップ1104と第1の超伝導材料806の第3の部分1002Cとの間にすき間「G」を形成し、第1の超伝導材料806の第3の部分1002Cの上にブリッジ構造1100を定めるように、ストリップ1104の下の超伝導犠牲層1102の一部をエッチングすることを含む。実施形態では、ストリップ1104の下の超伝導犠牲層1102の一部をエッチングすることは、第3の部分1002Cの上に成膜されたストリップ1104の下の犠牲層1102をエッチングするが、ベース・パッド1104Aおよび1104Bの下を含むストリップ1104の両端で犠牲層1102をエッチングしないことを含む。実施形態では、ストリップ1104の下の超伝導犠牲層1102の一部をエッチングすることは、例えば、酸エッチングを使用して犠牲層1102の一部をエッチングすることを含む。
【0045】
上記の段落から理解されることができるように、量子力学的デバイスが提供されている。図5および11、ならびに図6および7のSEM画像には、量子力学的デバイスの構成要素が概略的に示されている。実施形態では、量子力学的デバイスは基板102、202、802を含む。量子力学的デバイスは、基板102、202、802の上に成膜された第1の超伝導材料104、204、806の層も含む。第1の超伝導材料104、204、806の層は、互いに電気的に絶縁された第1の部分104A、204A、1002A、第2の部分104B、204B、1002B、および第3の部分104C、204C、1002Cに分割される。量子力学的デバイスは、第1の部分104A、204A、1002Aと第2の部分104B、204B、1002Bとの間に位置する第3の部分104C、204C、1002Cの上の、第1の部分104A、204A、1002Aおよび第2の部分104B、204B、1002Bに接続されたブリッジ構造602、1100も含む。ブリッジ構造602、1100は、第1の超伝導材料104、204、806の第1の部分104A、204A、1002Aおよび第2の部分104B、204B、1002Bを電気的に接続するように構成された第2の超伝導材料404、1106のストリップ502、1104を含む。ストリップ502、1104の第2の超伝導材料404、1106は、第1の超伝導材料104、204、806と異なっている。
【0046】
実施形態では、ストリップ502、1104の第2の超伝導材料404、1106は、少なくとも、第1の超伝導材料104、204、806の層の第3の部分104C、204C、1002Cを横切る部分において多孔質である。実施形態では、ブリッジ構造602、1100は、平面状のマイクロ波回路のスプリアス・モードを実質的に取り除くように構成される。
【0047】
実施形態では、例えば図7に示されているように、量子力学的デバイスは、第1の超伝導材料104、204、806の層の複数の位置で第1の超伝導材料104、204、806の層の第1の部分104A、204A、1002Aおよび第2の部分104B、204B、1002Bを電気的に接続するために、規則的に間隔を空けられた複数のブリッジ構造602、1100を含む。実施形態では、複数のブリッジ構造602、1100が、第1の超伝導材料104、204、806の層の第1の部分104A、204A、1002Aおよび第2の部分104B、204B、1002Bを同じグランド電位に接続するように構成される。
【0048】
本発明のさまざまな実施形態の説明は、例示の目的で提示されているが、網羅的であるよう意図されておらず、開示された実施形態に制限されるよう意図されてもいない。説明された実施形態の範囲および思想から逸脱しない多くの変更および変形が、当業者にとって明らかであろう。本明細書で使用された用語は、実施形態の原理、実際の適用、または市場で見られる技術を超える技術的改良を最も適切に説明するため、または他の当業者が本明細書で開示された実施形態を理解できるようにするために選択されている。
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図10A
図10B
図11