(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-20
(45)【発行日】2025-05-28
(54)【発明の名称】合わせガラス用中間膜、合わせガラス、及び画像表示システム
(51)【国際特許分類】
C03C 27/12 20060101AFI20250521BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20250521BHJP
B32B 17/10 20060101ALI20250521BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20250521BHJP
G02B 5/02 20060101ALI20250521BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20250521BHJP
G03B 21/62 20140101ALI20250521BHJP
【FI】
C03C27/12 N
B32B7/023
B32B17/10
B32B27/18 Z
G02B5/02 B
G03B21/00 F
G03B21/62
(21)【出願番号】P 2020570079
(86)(22)【出願日】2020-11-26
(86)【国際出願番号】 JP2020044127
(87)【国際公開番号】W WO2021107061
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2023-07-28
(32)【優先日】2020-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】P 2019215867
(32)【優先日】2019-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【氏名又は名称】田口 昌浩
(72)【発明者】
【氏名】増山 義和
(72)【発明者】
【氏名】太田 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】中山 和彦
(72)【発明者】
【氏名】戸村 和宏
【審査官】三村 潤一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/111825(WO,A1)
【文献】特開2019-200392(JP,A)
【文献】国際公開第2016/068087(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/143566(WO,A1)
【文献】特開2010-024061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/12
B32B 1/00 - 43/00
G02B 5/02
G03B 21/00 - 21/64
H04N 5/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2層以上の樹脂層を有し、
前記樹脂層が、樹脂及び光拡散粒子を含み、かつ厚みが150μm以下である第1の樹脂層を含み、
JIS R3202(2011)に準拠した2枚のクリアガラスで挟持した合わせガラスにおける、JIS R3106(2019)に準拠した全光線透過率が70%未満であり、
前記第1の樹脂層における光拡散粒子の濃度をC(質量%)とし、前記第1の樹脂層の厚みをT(μm)とすると、以下の式(2)の関係を満たす、合わせガラス用中間膜。
1000≦C×T≦3200 (2)
【請求項2】
画像表示スクリーンに用いられる合わせガラス用中間膜であって、
2層以上の樹脂層を有し、
前記樹脂層が、樹脂及び光拡散粒子を含む第1の樹脂層を含み、
JIS R3202(2011)に準拠した2枚のクリアガラスで挟持した合わせガラスにおける、JIS R3106(2019)に準拠した全光線透過率が70%未満であり、
前記第1の樹脂層における光拡散粒子の濃度をC(質量%)とし、前記第1の樹脂層の厚みをT(μm)とすると、以下の式(2)の関係を満た
し、
前記第1の樹脂層の厚みが150μm以下である、合わせガラス用中間膜。
1000≦C×T≦3200 (2)
【請求項3】
前記第1の樹脂層における光拡散粒子の濃度が5質量%以上である請求項1
又は2に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項4】
前記光拡散粒子が、炭酸カルシウムを含む、請求項1~
3のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項5】
第1の樹脂層以外の樹脂層を有し、
前記第1の樹脂層以外の樹脂層が、光源装置からの光が入射される一方の面側に、配置される請求項1~
4のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項6】
それぞれが樹脂を含有する第2及び第3の樹脂層を備え、
前記第1の樹脂層が、前記第2及び第3の樹脂層の間に配置される請求項1~
5のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項7】
背面投射型の画像表示スクリーンに用いられる請求項1~
6のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項8】
JIS R3202(2011)に準拠した2枚のクリアガラスで挟持した合わせガラスにおけるヘイズが35%以上である請求項1~
7のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項9】
一対のガラス部材と、合わせガラス用中間膜とを備え、前記合わせガラス用中間膜が前記一対のガラス部材の間に配置され、
前記合わせガラス用中間膜が2層以上の樹脂層を有し、
前記樹脂層が、樹脂及び光拡散粒子を含み、かつ厚みが150μm以下である第1の樹脂層を含み、
JIS R3106(2019)に準拠した全光線透過率が70%未満であり、
前記第1の樹脂層における光拡散粒子の濃度をC(質量%)とし、前記第1の樹脂層の厚みをT(μm)とすると、以下の式(2)の関係を満たす、合わせガラス。
1000≦C×T≦3200 (2)
【請求項10】
画像表示スクリーンに用いられる合わせガラスであって、
一対のガラス部材と、合わせガラス用中間膜とを備え、前記合わせガラス用中間膜が前記一対のガラス部材の間に配置され、
前記合わせガラス用中間膜が2層以上の樹脂層を有し、
前記樹脂層が、樹脂及び光拡散粒子を含
み、かつ厚みが150μm以下である第1の樹脂層を含み、
JIS R3106(2019)に準拠した全光線透過率が70%未満であり、
前記第1の樹脂層における光拡散粒子の濃度をC(質量%)とし、前記第1の樹脂層の厚みをT(μm)とすると、以下の式(2)の関係を満たす、合わせガラス。
1000≦C×T≦3200 (2)
【請求項11】
請求項
9又は
10に記載の合わせガラスと、前記合わせガラスの一方の面に、光を照射する光源装置とを備える画像表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、画面表示スクリーンに好適に使用される、合わせガラス用中間膜及び合わせガラス、さらには、合わせガラスを備える画像表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
合わせガラスは、外部衝撃を受けて破損してもガラスの破片が飛散することが少なく安全であるため、自動車、鉄道車両、航空機、船舶等の各種乗り物の窓ガラス、建築物等の窓ガラスに広く使用されている。合わせガラスは、一般的に一対のガラス間に、熱可塑性樹脂などで構成される合わせガラス用中間膜を介在させ、一体化させたものが広く知られている。
合わせガラス用中間膜としては、プライバシー保護性を高めるために、光を透過させるが、背後にある人又は物体を視認できないようにするために、炭酸カルシウムやシリカを配合して乳白色とすることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、プロジェクターより投影された画像を透明スクリーンに映し出す技術が実用化されている。透明スクリーンとしては、光拡散性微粒子を含有する光拡散層などを備える透明フィルムを使用することが一般的である(例えば、特許文献2、3参照)。
近年、自動車等の車両用窓ガラス、パーテンション、ショーウィンドウなどの建築物等の窓ガラスに広告などを投影表示するニーズが高まってきており、合わせガラスを透明スクリーンとして使用することが試みられている。例えば、特許文献4~6には、ガラス板などの2枚の透明基材と、透明基材の間に中間膜が配置され、中間膜に光拡散性微粒子を含有させた合わせガラスなどの積層体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開2016/082800号
【文献】国際公開2016/104055号
【文献】国際公開2018/012433号
【文献】国際公開2016/143566号
【文献】特開2007-57906号公報
【文献】国際公開2019/111825号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の合わせガラス用中間膜を有する合わせガラスは、上記のように中間膜に光拡散性微粒子を配合しても、画像を表示した際のコントラストを十分に高くできないという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、合わせガラスを画像表示スクリーンに使用しても、高コントラストで画像表示を実現できる合わせガラス用中間膜、及び合わせガラスを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討の結果、以下の構成により上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1]2層以上の樹脂層を有し、
前記樹脂層が、樹脂及び光拡散粒子を含み、かつ厚みが150μm以下である第1の樹脂層を含み、
JIS R3202(2011)に準拠した2枚のクリアガラスで挟持した合わせガラスにおける、JIS R3106(2019)に準拠した全光線透過率が70%未満である、合わせガラス用中間膜。
[2]画像表示スクリーンに用いられる合わせガラス用中間膜であって、
2層以上の樹脂層を有し、
前記樹脂層が、樹脂及び光拡散粒子を含む第1の樹脂層を含み、
JIS R3202(2011)に準拠した2枚のクリアガラスで挟持した合わせガラスにおける、JIS R3106(2019)に準拠した全光線透過率が70%未満である、合わせガラス用中間膜。
[3]前記第1の樹脂層の厚みが150μm以下である、上記[2]に記載の合わせガラス用中間膜。
[4]前記第1の樹脂層における光拡散粒子の濃度をC(質量%)とし、前記第1の樹脂層の厚みをT(μm)とすると、以下の式(1)の関係を満たす上記[1]~[3]のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
500≦C×T≦3600 (1)
[5]前記第1の樹脂層における光拡散粒子の濃度が5質量%以上である上記[1]~[4]のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
[6]前記光拡散粒子が、炭酸カルシウムを含む、上記[1]~[5]のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
[7]第1の樹脂層以外の樹脂層を有し、
前記第1の樹脂層以外の樹脂層が、光源装置からの光が入射される一方の面側に、配置される上記[1]~[6]のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
[8]それぞれが樹脂を含有する第2及び第3の樹脂層を備え、
前記第1の樹脂層が、前記第2及び第3の樹脂層の間に配置される上記[1]~[7]のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
[9]背面投射型の画像表示スクリーンに用いられる上記[1]~[8]のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
[10]一対のガラス部材と、合わせガラス用中間膜とを備え、前記合わせガラス用中間膜が前記一対のガラス部材の間に配置され、
前記合わせガラス用中間膜が2層以上の樹脂層を有し、
前記樹脂層が、樹脂及び光拡散粒子を含み、かつ厚みが150μm以下である第1の樹脂層を含み、
JIS R3106(2019)に準拠した全光線透過率が70%未満である、合わせガラス。
[11]画像表示スクリーンに用いられる合わせガラスであって、
一対のガラス部材と、合わせガラス用中間膜とを備え、前記合わせガラス用中間膜が前記一対のガラス部材の間に配置され、
前記合わせガラス用中間膜が2層以上の樹脂層を有し、
前記樹脂層が、樹脂及び光拡散粒子を含む第1の樹脂層を含み、
JIS R3106(2019)に準拠した全光線透過率が70%未満である、合わせガラス。
[12]上記[10]又は[11]に記載の合わせガラスと、前記合わせガラスの一方の面に、光を照射する光源装置とを備える画像表示システム。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高コントラストで画像表示を実現する合わせガラス用中間膜、及び合わせガラスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の合わせガラス用中間膜、及び合わせガラスの一実施形態を示す模式的な断面図である。
【
図2】本発明の合わせガラス用中間膜、及び合わせガラスの一実施形態を示す模式的な断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る画像表示システムを示す模式図である。
【
図4】別の側面における第1の実施形態に係る画像表示システムを示す模式図である。
【
図5】別の側面における第1の実施形態に係る画像表示システムが適用される自動車の外観を示す斜視図である。
【
図6】別の側面における第2の実施形態に係る画像表示システムを示す模式図であり、自動車の荷台部分を示す。
【
図7】別の側面における第2の実施形態に係る画像表示システムが適用される自動車の外観を示す斜視図である。
【
図8】別の側面における第3の実施形態に係る画像表示システムを示す模式図であり、ピックアップトラックのキャブの内部を示す。
【
図9】別の側面における第3の実施形態に係る画像表示システムが適用される自動車の外観を示す背面図である。
【
図10】別の側面における第4の実施形態に係る画像表示システムを示す模式図である。
【
図11】別の側面における第4の実施形態に係る画像表示システムが適用される自動車の外観を示す正面図である。
【
図12】別の側面における第5の実施形態に係る画像表示システムを示す模式図である。
【
図13】別の側面における第5の実施形態に係る画像表示システムが適用される自動車の外観を示す模式図であり、他の自動車の車内から自動車の背面を観察した図である。
【
図14】別の側面における第6の実施形態に係る画像表示システムを示す模式図である。
【
図15】別の側面における第6の実施形態に係る画像表示システムが適用される自動車の外観を示す側面図である。
【
図16】別の側面における第6の実施形態に係る画像表示システムにおいて使用されるメッセージ、アイコンの具体例を示す模式図である。
【
図17】別の側面における第6の実施形態に係る画像表示システムが適用される表示用ガラスの外観を示す図である。
【
図18】別の側面における第7の実施形態に係る画像表示システムを示す模式図である。
【
図19】別の側面における第7の実施形態に係る画像表示システムが適用される自動車の一例の外観を正面から見た斜視図である。
【
図20】別の側面における第7の実施形態に係る画像表示システムが適用される、自動車の一例の外観を側面から見た斜視図である。
【
図21】別の側面における第8の実施形態に係る画像表示システムを示す模式図である。
【
図22】別の側面における第8の実施形態に係る画像表示システムが適用される自動車の車内を示す模式図である。
【
図23】別の側面に係る画像表示システムに使用される合わせガラスの一例を示す模式的な断面図である。
【
図24】別の側面に係る画像表示システムに使用される合わせガラスの他の一例を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について実施形態を参照にしつつ詳細に説明する。
<合わせガラス用中間膜>
本発明の合わせガラス用中間膜(以下、単に「中間膜」ともいう)は、2層以上の樹脂層を有し、かつ樹脂及び光拡散粒子を含有する第1の樹脂層を備える。
中間膜は、多層とし、かつそのうちの第1の樹脂層に光拡散粒子を含有させることで、画像表示スクリーンに使用した場合に、高いコントラストの画像表示を実現でき、画像を鮮明に表示できる。その原理は定かではないが、第1の樹脂層以外の樹脂層で適切に光伝播しつつ、光拡散粒子による光散乱が限られた領域(第1の樹脂層)で集中的に起こることで、高コントラストで画像表示ができると推定される。また、中間膜は、第1の樹脂層以外の樹脂層を有することで、第1の樹脂層以外の樹脂層を介して、合わせガラスを構成するガラス部材に接着されるので、中間膜のガラス部材に対する接着性を高めやすくなる。
【0011】
(全光線透過率)
本発明の中間膜と基準ガラスを用いて作製した合わせガラスの全光線透過率(TvD)は70%未満である。全光線透過率が70%以上となると、中間膜における光散乱が十分に生じずに高いコントラストで画像表示することが難しくなる。また、全光線透過率を70%未満とすることで、中間膜を介して反対側に配置され、画像表示に使用する光源装置などの物体を視認しにくくなり、さらにはプライバシー保護性なども高めることもできる。本発明の中間膜と基準ガラスより作製した合わせガラスの全光線透過率(TvD)は、より高いコントラストで画像表示をする観点、及び背面側の物体を視認しにくくし、更にプライバシー保護性も高める観点から、68%以下が好ましく、66%以下がより好ましい。また、上記全光線透過率(TvD)は、特に限定されないが、例えば10%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは35%以上、さらに好ましくは50%以上である。全光線透過率(TvD)をこれら下限値以上とすることで、得られる合わせガラスの輝度が向上し、高いコントラストで画像表示しやすくなる。
【0012】
なお、本発明において、全光線透過率(TvD)は、JIS R3106(2019)に準拠して測定した値である。具体的には、本発明では、中間膜をJIS R3202(2011)に準拠した2枚のクリアガラス(すなわち、基準ガラス)で挟み込んで合わせガラスを作製し、その合わせガラスに対して、全光線透過率(TvD)を測定しで得られた値を、中間膜と基準ガラスを用いて作製した合わせガラスの全光線透過率(TvD)とする。なお、基準ガラスとしては、厚みが2.5mmのクリアガラスを使用する。クリアガラスは可視光透過率90.4%のものを使用するとよい。
ここで、上記全光線透過率は、一般的に可視光線透過率とは異なる指標である。可視光線透過率とは、反射光及び散乱光を考慮せず、平行光線で測定する。一方で、全光線透過率は、反射光及び散乱光を考慮する指標であり、後述する測定方法で示すとおり、反射光及び散乱光の両方を測定する。
なお、上記全光線透過率(TvD)及び後述する合わせガラスの全光線透過率(TvD)は、後述するように第1の樹脂層が中間膜の一部の領域に設けられる場合、後述する範囲内の厚みを有する第1の樹脂層が設けられる領域の全光線透過率(TvD)である。また、後述するように第1の樹脂層の厚みが漸次変化する領域が設けられることなどに起因して、位置ごとに全光線透過率が異なることがある。そのような場合には、少なくとも一部の領域の全光線透過率が上記範囲内になるとよいが、好ましくは全光線透過率が最も低い領域が上記数値範囲になるとよい。また、例えば、第1の樹脂層の厚みが一定となる領域を有する場合、その領域において、全光線透過率が上記範囲内になることが好ましい。
【0013】
本発明の中間膜と基準ガラスを用いて作製した合わせガラスのヘイズは、35%以上であることが好ましい。より好ましくは45%以上、さらに好ましくは55%以上、特に好ましくは65%以上である。本発明の中間膜において、基準ガラスを用いて作製した合わせガラスのヘイズが上記範囲内であることで、画像表示スクリーンに使用した場合に、高いコントラストで画像表示しやすくなる。
【0014】
なお、上記ヘイズ及び後述する合わせガラスのヘイズは、後述するように第1の樹脂層が中間膜の一部の領域に設けられる場合、後述する範囲内の厚みを有する第1の樹脂層が設けられる領域のヘイズである。また、後述するように第1の樹脂層の厚みが漸次変化する領域が設けられることなどに起因して、位置ごとにヘイズが異なることがある。そのような場合には、少なくとも一部の領域のヘイズが上記範囲内になるとよいが、好ましくはヘイズが最も低い領域が上記数値範囲になるとよい。また、例えば、第1の樹脂層の厚みが一定となる領域を有する場合、その領域において、ヘイズが上記範囲内になることが好ましい。
なお、ヘイズはJIS K6714に準拠して測定できる。
【0015】
[第1の樹脂層]
本発明の一実施形態において、光拡散粒子を含有する第1の樹脂層の厚みは、150μm以下である。第1の樹脂層の厚みを150μm以下とすると、中間膜に入射した光が厚み方向に沿って多重散乱しにくくなり、画像表示スクリーンに使用した場合に、高いコントラストで画像表示しやすくなる。第1の樹脂層の厚みは、高コントラストの画像表示を実現しやすくする観点から、好ましくは120μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは90μm以下である。
また、第1の樹脂層の厚みは、中間膜において一定量以上の光散乱を生じさせやすくする観点から、20μm以上が好ましく、40μm以上がより好ましく、70μm以上がさらに好ましい。
なお、第1の樹脂層の厚みは、中間膜において一定であってもよいが、後述するように変化することもある。厚みが変化する場合には、上記第1の樹脂層の厚みは、合わせガラス用中間膜の一部の領域が上記範囲内になっていればよい。
【0016】
また、第1の樹脂層の厚みが変化し、かつ合わせガラスが画像表示スクリーンに使用される場合には、上記第1の樹脂層の厚みとは、画像表示領域における厚みを意味するとよい。すなわち、画像表示領域には第1の樹脂層が存在し、かつその第1の樹脂層の厚みは150μm以下となるが、好適な範囲は上記の通りである。なお、画像表示領域とは、光源装置からの光が照射され、合わせガラスにおいて画像が表示される領域である。そして、第1の樹脂層を有し、かつその厚みが150μm以下となる該画像表示領域は、全光線透過率が上記範囲内になるとよく、ヘイズの好適な範囲も上記の通りである。
ただし、一定以上の領域で画像のコントラストを高くするために、例えば中間膜の全領域のうち15%以上100%以下、好ましくは30%以上100%以下、より好ましくは50%以上100%以下の領域で第1の樹脂層が存在し、かつ第1の樹脂層の厚みが上記範囲内となるとよい。
また、第1の樹脂層の厚みが一定となる領域を有する場合、コントラストを安定させる観点から、第1の樹脂層が存在し、厚みが上記範囲内となり、かつその厚みで一定となる領域を有するとよい。そして、第1の樹脂層が存在し、厚みが上記範囲内となり、かつその厚みで一定となる領域は、画像表示領域となるとよい。
なお、上記中間膜の第1の樹脂層の厚みの測定方法は以下の通りである。
すなわち、鋭利なレザー刃で、上記第1の樹脂層とそれ以外の樹脂層の断面が露出するように、上記中間膜を切断する。その後、上記中間膜の露出した断面をデジタルマイクロスコープ(OLYMPUS社製「DSX500」)で観察して、マイクロゲージにより上記中間膜及び各層の厚みを測定した。
【0017】
(光拡散粒子)
本発明で使用する光拡散粒子は、中間膜に入射された光を散乱できる化合物であれば特に制限されないが、具体的には、炭酸カルシウム、シリカ、酸化チタン、ガラスフレーク、マイカ、アルミナ、アルミニウムなどの無機物が挙げられる。これら化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。光拡散粒子の形状は、いかなる形状でもよく、球状、破砕状、不定形状、多角形状、平板状のいずれでもよい。
これらの中では、光散乱性などの観点から、炭酸カルシウム、シリカ、または酸化チタンが好ましく、炭酸カルシウムがより好ましい。
【0018】
光拡散粒子のメジアン径は例えば0.1μm以上50μm以下、好ましくは0.5μm以上50μm以下である。メジアン径をこれら範囲内とすることで、中間膜に入射した光を異方散乱しやくなり、それにより、表示される画像が高コントラストとなりやすい。そのような観点から、光拡散粒子のメジアン径は、1μm以上がより好ましく、1.5μm以上がさらに好ましく、炭酸カルシウムである場合には3μm以上がよりさらに好ましい。また、30μm以下がより好ましく、15μm以下がさらに好ましい。
なお、メジアン径は、中位径であり、頻度(すなわち、個数)の累積が50%になる粒子径(=D50)を意味する。メジアン径は、具体的には、光散乱測定装置を用いて、Arレーザーを光源として動的光散乱法により測定できる。光散乱測定装置としては、例えば、大塚電子社製の「DLS-6000AL」が挙げられる。
【0019】
第1の樹脂層における光拡散粒子の濃度は、5質量%以上であることが好ましい。光拡散粒子の濃度を5質量%以上とすることで、十分な光散乱性が得られて、中間膜を画像表示スクリーンに使用した場合に表示される画像のコントラストを高めやすくなる。また、中間膜を介して背面側に配置される光源装置などの物体が視認しにくくなり、さらにはプライバシー保護性なども高めやすくなる。これら観点から、第1の樹脂層における光拡散粒子の濃度は、7質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましく、12質量%以上が特に好ましく、15質量%以上が最も好ましい。
また、第1の樹脂層における光拡散粒子の濃度は、例えば75質量%以下であり、50質量%以下が好ましく、34質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましく、24質量%以下がよりさらに好ましい。含有量をこれら上限値以下とすることで、第1の樹脂層において画像表示に使用する光源装置などからの光を必要以上に遮光することが防止され、表示される画像を高輝度かつ高コントラストにしやすくなる。また、光拡散粒子によって必要以上に遮光することが防止され、窓ガラスなどに適切に使用できる。
【0020】
なお、第1の樹脂層における光拡散粒子の濃度は、例えば、以下の方法で測定することができる。まず、中間膜を適当な大きさにカットした後、第1の樹脂層以外の樹脂層を剥がし、第1の樹脂層のみとした試料1gを得る。得られた試料1gに硝酸水溶液(濃度70質量%)18mLを添加し、マイクロ波試料前処理装置(マイルストーンゼネラル社製「ETHOS One」)を用いて、200℃で30分保持し、加熱分解させた後、25℃条件下で比抵抗18.2MΩcmの超純水を用いて定容し試験液を得る。次に、高周波誘導結合プラズマ発光分析装置(島津製作所社製「ICPE-9000」)により、試験液中の光拡散粒子を構成する金属元素又は珪素の定量分析を行う。例えば、光拡散粒子が炭酸カルシウムの場合には、含まれるカルシウムが全て炭酸カルシウムと仮定して、炭酸カルシウムの含有量を算出した。
【0021】
第1の樹脂層における光拡散粒子の濃度をC(質量%)、第1の樹脂層の厚みをT(μm)とすると、以下の式(1)の関係を満たすことが好ましい。
500≦C×T≦3600 (1)
以上の関係式を満たすことで、中間膜を画像表示スクリーンに使用した場合に表示される画像のコントラストをより確実に高めることができる。また、中間膜を介して背面側に配置される光源装置などの物体が視認しにくくなり、プライバシー保護性なども高めやすくなる。さらには、一定の光が透過しやすくなり、窓ガラスに好適に適用できる。本発明の中間膜は、上記した観点から、以下の式(2)の関係を満たすことがより好ましく、以下の式(3)の関係を満たすことがさらに好ましく、以下の式(4)の関係を満たすことが特に好ましく、以下の式(5)の関係を満たすことが最も好ましい。
1000≦C×T≦3200 (2)
1450≦C×T≦3200 (3)
1500≦C×T≦3200 (4)
1550≦C×T≦2500 (5)
【0022】
なお、第1の樹脂層は、第1の樹脂層が中間膜の一部の領域に設けられる場合や、厚みが変化する場合、合わせガラス用中間膜の一部の領域が、上記式(1)~(5)の少なくともいずれかを満たせばよいが、好ましくは中間膜の全領域のうち15%以上100%以下、より好ましくは30%以上100%以下、さらに好ましくは50%以上100%以下の領域で式(1)~(5)の少なくともいずれか(好ましくは上記式(1)、より好ましくは式(2)、さらに好ましくは式(3)、特に好ましくは式(4)、最も好ましくは式(5))を満たせばよい。また、第1の樹脂層の厚みが一定となる領域を有する場合、コントラストを安定させる観点から、式(1)~(5)の少なくともいずれかを満たす領域は、第1の樹脂層の厚みが一定となる領域であるとよい。
さらに、第1の樹脂層の厚みが変化し、かつ画像表示スクリーンに使用される場合においては、画像表示領域において、好ましくは上記式(1)、より好ましくは式(2)、さらに好ましくは式(3)、特に好ましくは式(4)、最も好ましくは式(5)を満たせばよい。
【0023】
また、中間膜全体における光拡散粒子の濃度は、0.5質量%以上が好ましい。中間膜全体における光拡散粒子の濃度を上記下限値以上とすることで、上記した画像のコントラストをより一層高めやすくなる。また、中間膜を介して背面側に配置される光源装置などの物体が視認しにくくなり、プライバシー保護性なども高めやすくなる。これら観点から、中間膜全体における光拡散粒子の濃度は、1質量%以上がより好ましく、1.5質量%以上がさらに好ましい。
また、中間膜全体における光拡散粒子の濃度は、7質量%以下が好ましい。中間膜全体における光拡散粒子の濃度を上記上限値以下とすると、光源装置からの光が中間膜で必要以上に遮光することが防止され、表示される画像を高輝度かつ高コントラストにしやすくなる。また、中間膜を窓ガラスなどに適切に使用できる。これら観点から、中間膜全体における光拡散粒子の濃度は、5質量%以下がより好ましく、4質量%以下がさらに好ましい。
【0024】
第1の樹脂層は、上記のとおり樹脂を含有し、第1の樹脂層においては光拡散粒子が樹脂中に分散される。第1の樹脂層に使用する樹脂としては、熱可塑性樹脂が好ましい。第1の樹脂層において熱可塑性樹脂を使用することで、第1の樹脂層を他の樹脂層、ガラス部材などに接着させやくなる。なお、以下の説明においては、第1の樹脂層に使用する熱可塑性樹脂を熱可塑性樹脂(1)として説明することがある。
【0025】
第1の樹脂層に使用する熱可塑性樹脂(1)としては、特に限定されないが、例えば、ポリビニルアセタール樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、及び熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。これら樹脂を使用することで、第1の樹脂層の他の樹脂層、ガラス部材などに対する接着性を確保しやすくなる。上記の中では、熱可塑性樹脂(1)としては、ポリビニルアセタール樹脂が好ましい。ポリビニルアセタール樹脂を使用することでガラス部材に対する接着性、特にガラス部材が無機ガラスである場合の接着性を良好しやすい。また、耐貫通性、遮音性などの合わせガラスに必要とされる特性が得られやすくなる。
第1の樹脂層において熱可塑性樹脂(1)として使用される熱可塑性樹脂は、1種単独でもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、第1の樹脂層に使用する熱可塑性樹脂の詳細は後述する。
【0026】
本発明の第1の樹脂層は、さらに可塑剤を含有することが好ましい。なお、第1の樹脂層に含有される可塑剤は、可塑剤(1)ということがある。第1の樹脂層は、可塑剤(1)を含有することにより柔軟となり、その結果、合わせガラスの柔軟性を向上させ、耐貫通性や遮音性を向上させやすくなる。また、光拡散粒子及び可塑剤を含むことにより、画像表示スクリーンに中間膜を使用した際、表示される画像のコントラストをより一層高めることができる。これは、可塑剤を含むことで、第1の樹脂層と光拡散粒子との屈折率差が大きくなることに起因する。また、光拡散粒子を可塑剤に分散させてから熱可塑性樹脂に配合することにより、光拡散粒子が均一に分散され、映像を投影した際の画像のムラを抑制することがせることができる。
さらには、合わせガラスを構成するガラス部材、又は中間膜を構成する他の樹脂層などに対する接着性を高めることが可能になる。また、可塑剤(1)は、熱可塑性樹脂(1)としてポリビニルアセタール樹脂(1)を使用する場合に含有させると特に効果的である。可塑剤(1)の詳細については後述する。
【0027】
第1の樹脂層において、熱可塑性樹脂(1)100質量部に対する可塑剤(1)の含有量(以下、含有量(1)と記載することがある)は、例えば20質量部以上であり、好ましくは30質量部以上であり、より好ましくは40質量部以上である。含有量(1)を上記下限以上とすると、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になる。また、含有量(1)は、遮音性の観点からより高くすることが好ましく、そのような観点から、含有量(1)は、55質量部以上であることがさらに好ましく、60質量部以上であることがよりさらに好ましい。さらに、スクリーンに表示される画像のコントラストを高める観点からも上記下限以上が好ましい。
また、可塑剤(1)の含有量(1)は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは90質量部以下、更に好ましくは85質量部以下、特に好ましくは80質量部以下である。含有量(1)を上記上限以下とすると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。
【0028】
また、第1の樹脂層では、熱可塑性樹脂及び可塑剤の合計含有量が例えば25質量%以上であるが、熱可塑性樹脂、又は熱可塑性樹脂及び可塑剤が主成分となることが好ましい。具体的には、熱可塑性樹脂及び可塑剤の合計量が、第1の樹脂層全量基準で、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは65質量%以上100質量%未満である。
【0029】
[層構成]
本発明の中間膜は、2層以上の積層構造を有し、
図1に示すように、上記した第1の樹脂層11に加えて、第2の樹脂層12を有する中間膜10であるとよい。第2の樹脂層12は、第1の樹脂層11の一方の面に設けられる。中間膜10では、第2の樹脂層12の第1の樹脂層11側とは反対側の面、及び第1の樹脂層11の第2の樹脂層12側とは反対側の面が、合わせガラス20を構成するためのガラス部材21、22に接着される接着面となるとよい。
【0030】
中間膜は、
図2に示すように、第1の樹脂層11、第2の樹脂層12に加えて、第3の樹脂層13を有する中間膜15であることが好ましい。第3の樹脂層13は、第1の樹脂層11の第2の樹脂層12が設けられる一方の面とは反対側の面(他方の面)に設けられる。すなわち、第1の樹脂層11が、第2の樹脂層12及び第3の樹脂層13の間に配置されることが好ましい。このように、第1の樹脂層11の両面に他の樹脂層12、13が設けられることで、第1の樹脂層11に多量の光拡散粒子を含有させても、中間膜のガラス部材21、22に対する接着性が良好になる。また、光拡散粒子を大量に配合した樹脂層が最外層に配置されないことで、中間膜成形時に光拡散粒子によって、押出機などの成形装置が汚染されることを防止できる。
中間膜15は、第2の樹脂層12の第1の樹脂層11側とは反対側の面、及び第3の樹脂層13の第1の樹脂層11側とは反対側の面が、合わせガラス25を構成するためのガラス部材21、22に接着される接着面となるとよい。
【0031】
ただし、中間膜は、上記した第1~第3の樹脂層以外に層を有してもよく、例えば、第2の樹脂層12と第1の樹脂層11との間、及び、第1の樹脂層11と第3の樹脂層13との間にはそれぞれ、バリア層、接着層、樹脂層などの他の層が配置されてもよい。ただし、第2の樹脂層12と第1の樹脂層11、及び、第1の樹脂層11と第3の樹脂層13はそれぞれ、直接積層されていることが好ましい。
また、各中間膜10、15において、第2の樹脂層12、又は第2及び第3の樹脂層12、13は、上記した通りにガラス部材21、22に接着される接着面を構成することが好ましいが、これら樹脂層12、13は、接着層などの他の層を介してガラス部材21、22に接着してもよい。また、
図1に示す中間膜10において、第1の樹脂層11は、上記した通りにガラス部材22に接着される接着面となるとよいが、接着層などの他の層を介してガラス部材22に接着されてもよい。
【0032】
中間膜は、画像表示スクリーンに使用される場合、一方の面からプロジェクターなどの光源装置からの光が入射される。その際、第1の樹脂層よりも、光源装置からの光が入射される一方の面側に、第1の樹脂層以外の樹脂層(第2の樹脂層、又は第3の樹脂層)が設けられることが好ましい。このような構成によれば、光源装置からの出射光が、第1の樹脂層以外の樹脂層を介して第1の樹脂層に入射されることになり、それにより、より高いコントラストで画像表示しやすくなる。
したがって、
図1に示す中間膜10では、第2の樹脂層12側(すなわち、ガラス部材21側)から光源装置からの出射光が入射されることが好ましい。また、画像表示スクリーンは後述するとおり、好ましくは背面投射型であるため、第2の樹脂層12側から光源装置からの光が入射され、その光源装置からの光によって形成された画像が、第1の樹脂層11側(すなわち、ガラス部材22側)から観察されることが好ましい。
一方で、
図2に示す中間膜15では、第2及び第3の樹脂層12、13の一方の樹脂層側から光源装置からの光が入射され、他方の樹脂層側から観察されることが好ましい。
【0033】
なお、光拡散粒子を含有する第1の樹脂層は、合わせガラス用中間膜の全面にわたって形成されていてもよいが、一部の領域に形成されていてもよい。例えば、
図2のように、中間膜15が、第1~第3の樹脂層11、12、13を有する場合、合わせガラス用中間膜の一部の領域に第1の樹脂層11が設けられ、その他の領域に第1の樹脂層11が設けられなくてもよい。すなわち、中間膜15は、
図2に示す構成において、第2及び第3の樹脂層12、13の2層からなる部分と、第1~第3の樹脂層11、12、13の3層からなる部分が設けられるとよい。このように、第1の樹脂層11が合わせガラス用中間膜の一部の領域に設けられる場合、画像表示のための光は、第1の樹脂層11が設けられた領域に照射されるとよい。
また、中間膜では、第1の樹脂層の厚みが一定の領域、及び厚みが漸次変化する領域(例えば、上記した厚みが一定の領域から厚みが漸次減少する領域)の一方を有するとよく、上記の一方のみを有してもよいが、厚みが一定の領域と厚みが漸次変化する領域の両方を有してもよい。また、画像のコントラストを安定させるためには、厚みが一定の領域を少なくとも有することが好ましい。
【0034】
[第2及び第3の樹脂層]
第2の樹脂層は、樹脂を含有する層であり、第2の樹脂層に使用する樹脂としては、熱可塑性樹脂が好ましい。したがって、中間膜が第1及び第2の樹脂層を有する場合には、第1及び第2の樹脂層を構成する樹脂は、いずれも熱可塑性樹脂であることが好ましい。第2の樹脂層に熱可塑性樹脂を使用することで、第2の樹脂層を他の樹脂層やガラス部材などに接着させやくなる。なお、以下の説明においては、第2の樹脂層に使用される熱可塑性樹脂は、熱可塑性樹脂(2)ということがある。
【0035】
第3の樹脂層は、樹脂を含有する層であり、第3の樹脂層に使用する樹脂としては、熱可塑性樹脂が好ましい。したがって、中間膜が第1、第2、及び第3の樹脂層を有する場合には、第1、第2及び第3の樹脂層を構成する樹脂は、いずれも熱可塑性樹脂であることが好ましい。第3の樹脂層に熱可塑性樹脂を使用することで、第3の樹脂層を他の樹脂層やガラス部材などに接着させやくなる。なお、以下の説明においては、第3の樹脂層に使用される熱可塑性樹脂は、熱可塑性樹脂(3)ということがある。
【0036】
第2及び第3の樹脂層に使用する熱可塑性樹脂(2)、(3)としては、特に限定されないが、それぞれ、例えば、熱可塑性樹脂(1)として使用できる樹脂として列挙したものから適宜選択して使用できる。また、上記した中では、ポリビニルアセタール樹脂が好ましい。ポリビニルアセタール樹脂を使用することでガラス部材に対する接着性、特にガラス部材が無機ガラスである場合の接着性を良好しやすい。また、耐貫通性、遮音性などの合わせガラスに必要とされる特性が得られやすくなる。
熱可塑性樹脂(2)、(3)それぞれに使用される熱可塑性樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
熱可塑性樹脂(2)は、熱可塑性樹脂(1)と同種の樹脂であることが好ましい。したがって、熱可塑性樹脂(1)がポリビニルアセタール樹脂である場合、熱可塑性樹脂(2)もポリビニルアセタール樹脂であることが好ましい。また、熱可塑性樹脂(3)は、熱可塑性樹脂(1)及び熱可塑性樹脂(2)と同種の樹脂であることが好ましい。したがって、熱可塑性樹脂(1)がポリビニルアセタール樹脂である場合、熱可塑性樹脂(2)、(3)がいずれもポリビニルアセタール樹脂であることが好ましい。なお、第2及び第3の樹脂層それぞれに使用する熱可塑性樹脂(2)、(3)の詳細は後述する。
【0037】
中間膜において第2の樹脂層は、可塑剤を含むことが好ましい。また、第3の樹脂層は可塑剤を含むことが好ましい。すなわち、中間膜においては、第1及び第2の樹脂層の両方が可塑剤を含むことが好ましく、第1、第2及び第3の樹脂層のいずれもが可塑剤を含むことがさらに好ましい。なお、第2及び第3の樹脂層それぞれに含有される可塑剤は、可塑剤(2)、可塑剤(3)ということがある。
第2の樹脂層、又は第2及び第3の樹脂層は、可塑剤を含有することにより柔軟となり、その結果、合わせガラスの柔軟性を向上させ耐貫通性も向上する。さらには、ガラス板などのガラス部材又は中間膜の他の樹脂層に対する高い接着性を発揮することも可能になる。また、第2及び第3の樹脂層それぞれにおいても、熱可塑性樹脂としてポリビニルアセタール樹脂(2)、(3)それぞれを使用する場合に、可塑剤を含有させると特に効果的である。可塑剤(2)、(3)それぞれは、可塑剤(1)と同一の種類であってもよいし、異なる種類であってもよい。また、可塑剤(2)、(3)同士が、同一の種類であってもよいし、異なる種類であってもよい。また、可塑剤(2)及び可塑剤(3)として使用される可塑剤はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0038】
第2の樹脂層における熱可塑性樹脂(2)100質量部に対する可塑剤(2)の含有量(以下、含有量(2)と記載することがある)、及び第3の樹脂層における熱可塑性樹脂(3)100質量部に対する上記可塑剤(3)の含有量(以下、含有量(3)と記載することがある)はそれぞれ、好ましくは10質量部以上である。上記含有量(2)及び上記含有量(3)を上記下限以上とすると、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になる。また、これら観点から含有量(2)及び含有量(3)は、それぞれより好ましくは15質量部以上、更に好ましくは20質量部以上、特に好ましくは24質量部以上である。
また、含有量(2)及び含有量(3)それぞれは、好ましくは60質量部以下、より好ましくは50質量部以下、さらに好ましくは40質量部以下である。含有量(2)及び上記含有量(3)それぞれを上記上限以下とすると、中間膜の曲げ剛性などの機械特性が良好となる。
【0039】
合わせガラスの遮音性を高めるためには、第1の樹脂層における可塑剤の含有量(1)は、含有量(2)よりも多くすることが好ましく、また、上記含有量(3)よりも多いことが好ましく、さらに上記含有量(2)及び(3)の両方よりも多いことがさらに好ましい。
また、合わせガラスの遮音性をより一層高める観点からは、上記含有量(2)と上記含有量(1)との差の絶対値、及び上記含有量(3)と上記含有量(1)との差の絶対値はそれぞれ、好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上、更に好ましくは25質量部以上である。上記含有量(2)と上記含有量(1)との差の絶対値、及び上記含有量(3)と上記含有量(1)との差の絶対値はそれぞれ、好ましくは80質量部以下、より好ましくは70質量部以下、更に好ましくは60質量部以下である。
【0040】
また、第2及び第3の樹脂層それぞれでは、熱可塑性樹脂、又は熱可塑性樹脂及び可塑剤が主成分となるものであり、熱可塑性樹脂及び可塑剤の合計量が、第2の樹脂層又は第3の樹脂層全量基準で、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上100質量%以下である。
【0041】
第2の樹脂層は、上記した光拡散粒子を含有してもよいし、含有しなくてもよい。また、第3の樹脂層は、上記した光拡散粒子を含有してもよいし、含有しなくてもよい。ただし、中間膜全体における光拡散粒子の濃度が、上記範囲内となるように設計されるとよい。したがって、第2の樹脂層は、上記した光拡散粒子を含有していてもその含有量が少量であり、あるいは、光拡散粒子を含有しないことが好ましく、光拡散粒子を含有しないことがより好ましい。同様に、第3の樹脂層も、上記した光拡散粒子を含有していてもその含有量が少量であり、あるいは、光拡散粒子を含有しないことが好ましく、光拡散粒子を含有しないことがより好ましい。
第2の樹脂層、又は第2及び第3の樹脂層に光拡散粒子を含有させず、又は含有させても少量とすることで、第2の樹脂層、又は第2及び第3の樹脂層において、光散乱がほとんど生じないようになる。それにより、中間膜を画像表示スクリーンに使用した際、表示される画像のコントラストを高めることができる。
【0042】
第2の樹脂層における光拡散粒子の具体的な濃度は、特に限定されないが、例えば1質量%以下、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、さらに好ましくは0質量%である。
また、第3の樹脂層における光拡散粒子の具体的な濃度は、特に限定されないが、例えば1質量%以下、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、さらに好ましくは0質量%である。
【0043】
第2の樹脂層には、着色剤を含有していてもよいし、実質的に含有していなくてもよい。同様に、第3の樹脂層には、着色剤を含有していてもよいし、実質的に含有していなくてもよい。
【0044】
同様に、第1の樹脂層にも着色剤を含有していてもよいし、実質的に含有していなくてもよい。第1の樹脂層に着色剤を含有させ、かつ上記のとおりに第1の樹脂層を部分的に設けると、第1の樹脂層が設けられた領域において遮光しつつも、画像表示が可能になる。また、第1の樹脂層が設けられない領域は、全光線透過率が高くなり、高い視認性が確保できる。そのため、自動車のフロントガラスなどにも適用できる。
なお、各樹脂層に着色剤を実質的に含有しないとは、各層に意図的に着色剤を含有させないことを意味し、各樹脂層における着色剤の濃度は、例えば、0.005質量%未満、好ましくは0.001質量%未満、より好ましくは0質量%である。
【0045】
着色剤とは、青色、黄色、赤色、緑色、紫色、黒色、白色などのいかなる色の色素も含み、色素は、顔料、染料のいずれも含む。
顔料としては、ビグメントブルーなどの銅フタロシアニン顔料、コバルトフタロシアニン顔料などのフタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ぺリレン顔料、ジケトピロロピロール系顔料、キナクリドン系顔料、ペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、スレン系顔料、酸化チタン系顔料、ピグメントブラック7などのカーボンブラック、グラフェン、カーボンナノチューブなどの炭素系材料等が挙げられる。
また、染料としては、アゾ染料、シアニン染料、トリフェニルメタン染料、フタロシアニン染料、アントラキノン染料、ナフトキノン染料、キノンイミン染料、メチン染料、アゾメチン染料、スクワリリウム染料、アクリジン染料、スチリル染料、クマリン染料、キノリン染料、ニトロ染料等が挙げられる。染料は分散染料でもよい。
【0046】
第1、第2及び第3の樹脂層は、必要に応じて、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、蛍光増白剤、結晶核剤、分散剤、カルボン酸金属塩、遮熱材料等の光拡散粒子、可塑剤、着色剤以外の添加剤を適宜含有してもよい。
【0047】
(中間膜の厚み)
中間膜の厚み(すなわち、中間膜全体の厚み)は、特に限定されないが、好ましくは100μm以上3.0mm以下である。中間膜の厚みを100μm以上とすることで、中間膜の接着性、及び合わせガラスの耐貫通性などを良好にできる。また、3.0mm以下とすることで、中間膜の厚みが必要以上に大きくなることを防止し、透明性も確保しやすくなる。中間膜の厚みはより好ましくは200μm以上であり、さらに好ましくは400μm以上である。また、より好ましくは2.0mm以下、さらに好ましくは1.5mm以下である。
【0048】
(第2及び第3の樹脂層の厚み)
第2の樹脂層、又は第2及び第3の樹脂層それぞれの厚みは、特に限定されないが、50μm以上1.3mm以下であることが好ましい。50μm以上とすることで、画像表示のコントラストを高めやすくなり、さらに中間膜の接着性、及び合わせガラスの耐貫通性などを良好にできる。また、1.3mm以下とすることで、中間膜の厚みが必要以上に大きくなることを防止し、透明性も確保しやすくなる。これら観点から、第2の樹脂層、又は第2及び第3の樹脂層それぞれの厚みは、100μm以上がより好ましく、150μm以上がさらに好ましく、また、1mm以下がより好ましく、500μm以下がさらに好ましい。なお、第2及び第3の樹脂層の厚みは、中間膜の全体にわたって一定となっていてもよいし、変化してもよいが、変化する場合には、いずれの厚みも上記範囲内となるとよい。
【0049】
第2の樹脂層、又は第2及び第3の樹脂層の厚みはそれぞれ、第1の樹脂層の厚みより大きいことが好ましい。これら樹脂層を厚くすることで、画像表示のコントラストを高めやすくなり、また、中間膜のガラス部材に対する接着性も向上しやすい。これら観点から、第1の樹脂層の厚みに対する、第2の樹脂層、又は第2及び第3の樹脂層の厚みの比はそれぞれ、1.2以上が好ましく、1.4以上がより好ましく、2以上がさらに好ましく、また、10以下が好ましく、8以下がより好ましく、5以下がさらに好ましい。
なお、第1、第2及び第3の樹脂層の厚みは、変化することがあるが、そのような場合には、上記厚み比は、いずれかの領域で上記範囲内となるとよいが、第1の樹脂層の厚みが上記範囲内(すなわち、150μm以下、好ましくは20μm以上120μm以下、より好ましくは40μm以上100μm以下、さらに好ましくは70μm以上90μm以下)となる領域において上記範囲内となるほうがよい。そして、その領域が画像表示領域となるとよい。
【0050】
(ポリビニルアセタール樹脂)
以下、第1、第2、及び第3の樹脂層に使用されるポリビニルアセタール樹脂の詳細について説明する。なお、以下の説明においては、第1、第2、及び第3の樹脂層に使用されるポリビニルアセタール樹脂の共通の構成については、単に「ポリビニルアセタール樹脂」として説明する。第1、第2、及び第3の樹脂層それぞれに使用されるポリビニルアセタール樹脂の個別の構成については、「ポリビニルアセタール樹脂(1)」、「ポリビニルアセタール樹脂(2)」及び「ポリビニルアセタール樹脂(3)」として説明する。
【0051】
ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコール(PVA)をアルデヒドでアセタール化して得られる。すなわち、ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコール(PVA)のアセタール化物であることが好ましい。ポリビニルアルコール(PVA)は、例えば、ポリ酢酸ビニルなどのポリビニルエステルをけん化することにより得られる。ポリビニルアルコールのけん化度は、一般に70~99.9モル%である。ポリビニルアセタール樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、以下の説明において、ポリビニルアセタール樹脂(1)、(2)及び(3)それぞれを得るためのPVAを、PVA(1),(2)、及び(3)それぞれとして説明することがある。
【0052】
PVAの平均重合度は、好ましくは200以上、より好ましくは500以上、さらに好ましくは1000以上、よりさらに好ましくは1500以上である。平均重合度を上記下限以上とすると、合わせガラスの耐貫通性が高くなる。また、PVAの平均重合度は、好ましくは5000以下、より好ましくは4000以下、更に好ましくは3500以下、よりさらに好ましくは2500以下である。上記平均重合度を上記上限以下とすると、中間膜の成形が容易になる。
また、可塑剤の含有量を多くする場合には、PVAの平均重合度を高くすることが好ましい。したがって、第1の樹脂層においては、例えば可塑剤の含有量(1)を55質量部以上とする場合などにおいて、PVA(1)の平均重合度を2000以上とすることも好適である。
また、PVA(1)の平均重合度は、PVA(2)又はPVA(2)及び(3)の平均重合度低くしてもよいし、同じとしてもよいし、高くしてもよいが、PVA(1)の平均重合度を、PVA(2)又はPVA(2)及び(3)の平均重合度以上とすることが好ましい。このように、PVA(1)の平均重合度を高くすると、第1の樹脂層においては、例えば可塑剤の含有量を多くしても各種性能が維持しやすくなる。
なお、ポリビニルアルコールの平均重合度は、JIS K6726「ポリビニルアルコール試験方法」に準拠した方法により求められる。
【0053】
アセタール化に使用するアルデヒドは特に限定されないが、炭素数が1~10のアルデヒドが好適に用いられ、より好ましくは炭素数が3~5のアルデヒド、さらに好ましくは炭素数が4又は5のアルデヒド、特に好ましくは炭素数4のアルデヒドである。
上記炭素数が1~10のアルデヒドは特に限定されず、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n-バレルアルデヒド、2-エチルブチルアルデヒド、n-ヘキシルアルデヒド、n-オクチルアルデヒド、n-ノニルアルデヒド、n-デシルアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。なかでも、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n-ヘキシルアルデヒド又はn-バレルアルデヒドが好ましく、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド又はn-バレルアルデヒドがより好ましく、n-ブチルアルデヒド又はn-バレルアルデヒドが更に好ましく、n-ブチルアルデヒドが最も好ましい。上記アルデヒドは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0054】
ポリビニルアセタール樹脂に含まれているアセタール基の炭素数は特に限定されないが、1~10であることが好ましく、より好ましくは3~5、さらに好ましくは4又は5、特に好ましくは4である。アセタール基としては、具体的にはブチラール基が特に好ましく、したがって、ポリビニルアセタール樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。すなわち、本発明においては、第1の樹脂層における熱可塑性樹脂(1)が、ポリビニルブチラール樹脂であることが好ましく、第1及び第2の樹脂層における熱可塑性樹脂(1)、(2)のいずれもが、ポリビニルブチラール樹脂であることがより好ましく、第1、第2及び第3の樹脂層における熱可塑性樹脂(1)、(2)、(3)の全てが、ポリビニルブチラール樹脂であることがさらに好ましい。
【0055】
上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率(水酸基量)は、好ましくは17モル%以上、より好ましくは20モル%以上であり、また、例えば38モル%以下、好ましくは34モル%以下である。上記水酸基の含有率を上記下限以上とすると、中間膜の接着力がより一層高くなる。また、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)が可塑剤を吸収して、合わせガラスの遮音性を高くする観点から、より好ましくは30モル%以下、さらに好ましくは27モル%以下である。また、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率を20モル%以上とすると反応効率が高く生産性に優れる。
【0056】
ポリビニルアセタール樹脂(2)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の水酸基の各含有率はそれぞれ、例えば20モル%以上、好ましくは25モル%以上、より好ましくは28モル%以上である。上記水酸基の含有率を下限以上とすると、遮音性を維持しつつ、曲げ剛性をより高くすることができる。また、ポリビニルアセタール樹脂(2)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の水酸基の各含有率は、好ましくは38モル%以下、より好ましくは36モル%以下、更に好ましくは34モル%以下である。上記水酸基の含有率を上記上限以下とすると、ポリビニルアセタール樹脂の合成時、ポリビニルアセタール樹脂が析出し易くなる。
【0057】
遮音性をより一層高める観点からは、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率は、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)の水酸基の含有率よりも低いことが好ましい。遮音性をより一層高める観点からは、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率は、上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の水酸基の含有率よりも低いことが好ましい。ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率とポリビニルアセタール樹脂(2)、(3)の水酸基の含有率の差の絶対値はそれぞれ、好ましくは1モル%以上である。これにより、遮音性を一層高めることができる。このような観点から上記水酸基の各含有率の差は、より好ましくは5モル%以上である。上記水酸基の各含有率の差の絶対値は、好ましくは20モル%以下である。
ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率は、水酸基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。上記水酸基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠して測定できる。
【0058】
ポリビニルアセタール樹脂(1)のアセタール化度は、好ましくは47モル%以上、より好ましくは55モル%以上であり、さらに好ましくは60モル%以上であり、また、好ましくは85モル%以下、より好ましくは80モル%以下、更に好ましくは75モル%以下である。上記アセタール化度を上記下限以上とすると、ポリビニルアセタール樹脂(1)と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセタール化度を上記上限以下とすると、樹脂中の残留アルデヒド量を軽減できる。なお、アセタール化度とは、アセタール基がブチラール基であり、ポリビニルアセタール樹脂(1)がポリビニルブチラール樹脂の場合には、ブチラール化度を意味する。
【0059】
ポリビニルアセタール樹脂(2)及びポリビニルアセタール樹脂(3)の各アセタール化度(ポリビニルブチラール樹脂の場合にはブチラール化度)は、好ましくは55モル%以上、より好ましくは60モル%以上であり、さらに好ましくは63モル%以上であり、また、好ましくは85モル%以下、より好ましくは80モル%以下、更に好ましくは75モル%以下である。上記アセタール化度を上記下限以上とすると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセタール化度を上記上限以下とすると、樹脂中の残留アルデヒド量を軽減できる。
上記アセタール化度は、主鎖の全エチレン基量から、水酸基が結合しているエチレン基量と、アセチル基が結合しているエチレン基量とを差し引いた値を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。アセタール化度(ブチラール化度)は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により測定された結果から算出するとよい。
【0060】
ポリビニルアセタール樹脂(1)のアセチル化度(アセチル基量)は、好ましくは0.01モル%以上、より好ましくは0.1モル%以上である。また、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなり、可塑剤を大量に配合しやすくする観点から、上記アセチル化度は、さらに好ましくは7モル%以上、特に好ましくは9モル%以上である。また、ポリビニルアセタール樹脂(1)のアセチル化度は、好ましくは30モル%以下、より好ましくは25モル%以下、更に好ましくは24モル%以下、特に好ましくは20モル%以下である。上記アセチル化度を上記上限以下にすると、中間膜及び合わせガラスの耐湿性が高くなる。
【0061】
ポリビニルアセタール樹脂(2)及びポリビニルアセタール樹脂(3)の各アセチル化度は、好ましくは10モル%以下、より好ましくは2モル%以下である。上記アセチル化度が上記上限以下であると、中間膜及び合わせガラスの耐湿性が高くなる。また、特に限定されないが、好ましくは0.01モル%以上であり、より好ましくは0.1モル%以上である。
上記アセチル化度は、アセチル基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。上記アセチル基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠して測定できる。
【0062】
(エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂)
エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂としては、非架橋型のエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂であってもよいし、また、高温架橋型のエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂であってもよい。また、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体けん化物、エチレン-酢酸ビニルの加水分解物などのようなエチレン-酢酸ビニル変性体樹脂も用いることができる。
【0063】
エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂は、JIS K 6730「エチレン・酢酸ビニル樹脂試験方法」に準拠して測定される酢酸ビニル含量が好ましく10~50質量%、より好ましくは20~40質量%である。酢酸ビニル含量をこれら下限値以上とすることで、ガラス板などに対する接着性が良好となり、さらに、合わせガラスの耐貫通性が良好になりやすくなる。また、酢酸ビニル含量をこれら上限値以下とすることで、中間膜の破断強度が高くなり、合わせガラスの耐衝撃性が良好になる。
【0064】
(アイオノマー樹脂)
アイオノマー樹脂としては、特に限定はなく、様々なアイオノマー樹脂を用いることができる。具体的には、エチレン系アイオノマー、スチレン系アイオノマー、パーフルオロカーボン系アイオノマー、テレケリックアイオノマー、ポリウレタンアイオノマー等が挙げられる。これらの中では、合わせガラスの機械強度、耐久性、透明性などが良好になる点、ガラス板が無機ガラスである場合ガラス板との接着性に優れる点から、エチレン系アイオノマーが好ましい。
【0065】
エチレン系アイオノマーとしては、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーが透明性と強靭性に優れるため好適に用いられる。エチレン・不飽和カルボン酸共重合体は、少なくともエチレン由来の構成単位および不飽和カルボン酸由来の構成単位を有する共重合体であり、他のモノマー由来の構成単位を有していてもよい。
不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等が挙げられ、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。また、他のモノマーとしては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、1-ブテン等が挙げられる。
エチレン・不飽和カルボン酸共重合体としては、該共重合体が有する全構成単位を100モル%とすると、エチレン由来の構成単位を75~99モル%有することが好ましく、不飽和カルボン酸由来の構成単位を1~25モル%有することが好ましい。
エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーは、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体が有するカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和または架橋することにより得られるアイオノマー樹脂であるが、該カルボキシル基の中和度は、通常は1~90%であり、好ましくは5~85%である。
【0066】
アイオノマー樹脂におけるイオン源としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム、亜鉛等の多価金属が挙げられ、ナトリウム、亜鉛が好ましい。
【0067】
アイオノマー樹脂の製造方法としては特に限定はなく、従来公知の製造方法によって、製造することが可能である。例えばアイオノマー樹脂として、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーを用いる場合には、例えば、エチレンと不飽和カルボン酸とを、高温、高圧下でラジカル共重合を行い、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体を製造する。そして、そのエチレン・不飽和カルボン酸共重合体と、上記のイオン源を含む金属化合物とを反応させることにより、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーを製造することができる。
【0068】
(ポリウレタン樹脂)
ポリウレタン樹脂としては、イソシアネート化合物と、ジオール化合物とを反応して得られるポリウレタン、イソシアネート化合物と、ジオール化合物、さらに、ポリアミンなどの鎖長延長剤を反応させることにより得られるポリウレタンなどが挙げられる。また、ポリウレタン樹脂は、硫黄原子を含有するものでもよい。その場合には、上記ジオールの一部又は全部を、ポリチオール及び含硫黄ポリオールから選択されるものとするとよい。ポリウレタン樹脂は、有機ガラスとの接着性を良好にすることができる。そのため、ガラス板が有機ガラスである場合に好適に使用される。
【0069】
(熱可塑性エラストマー)
熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系熱可塑性エラストマー、脂肪族ポリオレフィンが挙げられる。スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。スチレン系熱可塑性エラストマーは、一般的に、ハードセグメントとなるスチレンモノマー重合体ブロックと、ソフトセグメントとなる共役ジエン化合物重合体ブロック又はその水添ブロックとを有する。スチレン系熱可塑性エラストマーの具体例としては、スチレン-イソプレンジブロック共重合体、スチレン-ブタジエンジブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体、スチレン-ブタジエン/イソプレン-スチレントリブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレントリブロック共重合体、並びにその水素添加体が挙げられる。
上記脂肪族ポリオレフィンは、飽和脂肪族ポリオレフィンであってもよく、不飽和脂肪族ポリオレフィンであってもよい。上記脂肪族ポリオレフィンは、鎖状オレフィンをモノマーとするポリオレフィンであってもよく、環状オレフィンをモノマーとするポリオレフィンであってもよい。中間膜の保存安定性、及び、遮音性を効果的に高める観点からは、上記脂肪族ポリオレフィンは、飽和脂肪族ポリオレフィンであることが好ましい。
上記脂肪族ポリオレフィンの材料としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、trans-2-ブテン、cis-2-ブテン、1-ペンテン、trans-2-ペンテン、cis-2-ペンテン、1-ヘキセン、trans-2-ヘキセン、cis-2-ヘキセン、trans-3-ヘキセン、cis-3-ヘキセン、1-ヘプテン、trans-2-ヘプテン、cis-2-ヘプテン、trans-3-ヘプテン、cis-3-ヘプテン、1-オクテン、trans-2-オクテン、cis-2-オクテン、trans-3-オクテン、cis-3-オクテン、trans-4-オクテン、cis-4-オクテン、1-ノネン、trans-2-ノネン、cis-2-ノネン、trans-3-ノネン、cis-3-ノネン、trans-4-ノネン、cis-4-ノネン、1-デセン、trans-2-デセン、cis-2-デセン、trans-3-デセン、cis-3-デセン、trans-4-デセン、cis-4-デセン、trans-5-デセン、cis-5-デセン、4-メチル-1-ペンテン、及びビニルシクロヘキサン等が挙げられる。
【0070】
(可塑剤)
以下、第1、第2、及び第3の樹脂層それぞれに使用される可塑剤の詳細について説明する。なお、以下の説明においては、第1、第2、及び第3の樹脂層に使用される可塑剤(1)、(2)、及び(3)についてまとめて説明する。
第1、第2、及び第3の樹脂層に使用される可塑剤としては、例えば、一塩基性有機酸エステル及び多塩基性有機酸エステル等の有機エステル可塑剤、並びに有機リン酸可塑剤及び有機亜リン酸可塑剤などのリン酸可塑剤等が挙げられる。なかでも、有機エステル可塑剤が好ましい。上記可塑剤は液状可塑剤であることが好ましい。なお、液状可塑剤とは、常温(23℃)、常圧(1気圧)で液状となる可塑剤である。
【0071】
一塩基性有機酸エステルとしては、グリコールと、一塩基性有機酸とのエステルが挙げられる。グリコールとしては、各アルキレン単位が炭素数2~4、好ましくは炭素数2又は3であり、アルキレン単位の繰り返し数が2~10、好ましくは2~4であるポリアルキレングリコールが挙げられる。また、グリコールとしては、炭素数2~4、好ましくは炭素数2又は3であり、繰り返し単位が1であるモノアルキレングリコールでもよい。
グリコールとしては、具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ブチレングリコールなどが挙げられる。
一塩基性有機酸としては、炭素数3~10の有機酸が挙げられ、具体的には、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2-エチル酪酸、2-エチルペンタン酸、ヘプチル酸、n-オクチル酸、2-エチルヘキシル酸、n-ノニル酸及びデシル酸などが挙げられる。
【0072】
好ましい一塩基性有機酸エステルとしては、以下の式(1)で表される化合物が挙げられる。
【化1】
上記式(1)中、R1及びR2はそれぞれ炭素数2~10の有機基を表し、R3はエチレン基、イソプロピレン基又はn-プロピレン基を表し、pは3~10の整数を表す。上記式(1)中のR1及びR2はそれぞれ、好ましくは炭素数5~10、より好ましくは炭素数6~10である。R1及びR2の有機基は、炭化水素基が好ましく、より好ましくはアルキル基である。
【0073】
また、具体的なグリコールエステルとしては、エチレングリコールジ-2-エチルブチレート、1,2-プロピレングリコールジ-2-エチルブチレート、1,3-プロピレングリコールジ-2-エチルブチレート、1,4-ブチレングリコールジ-2-エチルブチレート、1,2-ブチレングリコールジ-2-エチルブチレート、ジエチレングリコールジ-2-エチルブチレート、ジエチレングリコールジカプリエート、ジエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート、ジプロピレングリコールジ-2-エチルブチレート、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールジ-2-エチルペンタノエート、トリエチレングリコールジ-n-ヘプタノエート、トリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート、トリエチレングリコールジ-2-エチルプロパノエート、テトラエチレングリコールジ-n-ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコールジ-2-エチルブチレートなどが挙げられる。
【0074】
また、多塩基性有機酸エステルとしては、例えば、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等の炭素数4~12の二塩基性有機酸と、炭素数4~10のアルコールとのエステル化合物が挙げられる。炭素数4~10のアルコールは、直鎖でもよいし、分岐構造を有していてもよいし、環状構造を有してもよい。
具体的には、セバシン酸ジブチル、アゼライン酸ジオクチル、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ヘキシルシクロヘキシル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ヘプチルノニル、ジ-(2-ブトキシエチル)アジペート、ジブチルカルビトールアジペート、混合型アジピン酸エステルなどが挙げられる。また、油変性セバシン酸アルキドなどでもよい。混合型アジピン酸エステルとしては、炭素数4~9のアルキルアルコール及び炭素数4~9の環状アルコールから選択される2種以上のアルコールから作製されたアジピン酸エステルが挙げられる。
有機リン酸可塑剤としては、トリブトキシエチルホスフェート、イソデシルフェニルホスフェート及びトリイソプロピルホスフェート等のリン酸エステルなどが挙げられる。
可塑剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0075】
可塑剤は、上記したなかでも、ジ-(2-ブトキシエチル)アジペート(DBEA)、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)、トリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート(3GH)及びトリエチレングリコールジ-2-エチルプロパノエートから選択されることが好ましく、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)、トリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート(3GH)及びトリエチレングリコールジ-2-エチルプロパノエートから選択されることがより好ましく、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート及びトリエチレングリコールジ-2-エチルブチレートから選択されることが更に好ましく、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエートが特に好ましい。
【0076】
[中間膜の製造方法]
中間膜は、各層を形成するための樹脂組成物を得て、樹脂組成物から中間膜を構成する各層(第1の樹脂層、第2の樹脂層、第3の樹脂層など)を成形した後、各層を積層して一体化させることで製造できる。また、共押出などにより中間膜を構成する各層を成形しつつ各層を積層して一体化することで製造してもよい。
各層を形成するための樹脂組成物は、公知の方法で熱可塑性樹脂などの樹脂、必要に応じて配合される、光拡散粒子、可塑剤、その他の添加剤などの樹脂組成物を構成する成分を混練装置などにより混合して得るとよい。例えば、共押出機などの押出機を用いて、中間膜を構成する各層を成形する場合には、押出機にて樹脂組成物を構成する成分を混合するとよい。
【0077】
<合わせガラス>
本発明は、さらに合わせガラスを提供するものである。本発明の合わせガラスは、一対のガラス部材と、一対のガラス部材の間に配置される中間膜とを備える。一対のガラス部材それぞれは、中間膜を介して接着されればよい。本発明の合わせガラスは、JIS R3106(2019)に準拠した全光線透過率(TvD)が70%未満である。
本発明の合わせガラスは、上記した本発明の中間膜と同様に、全光線透過率を70%未満とすることで、中間膜を介して反対側に配置され、画像表示に使用する光源装置などの物体を視認しにくくなり、さらにはプライバシー保護性なども高めることもできる。合わせガラスの全光線透過率は、上記の合わせガラスと同様に、68%以下が好ましく、66%以下がより好ましく、また、特に限定されないが、例えば10%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは35%以上、さらに好ましくは50%以上である。
なお、合わせガラスの全光線透過率(TvD)は、合わせガラスに対して、JIS R3106(2019)に準拠して測定して得られた全光線透過率の値である。
また、合わせガラスにおける中間膜の構成は、上記で説明したとおりであるので、その説明は省略する。
【0078】
また、本発明の合わせガラスのヘイズは、35%以上であることが好ましい。より好ましくは45%以上、さらに好ましくは55%以上、特に好ましくは65%以上である。合わせガラスのヘイズが上記範囲内であることで、画像表示スクリーンに使用した場合に、高いコントラストで画像表示しやすくなる。
【0079】
図1、2に示すように、合わせガラス20、25において、各ガラス部材21、22は、中間膜10の両表面それぞれに積層されている。例えば、
図1に示すように、第1の樹脂層11と第2の樹脂層12を有する中間膜10では、第2の樹脂層12の表面に一方のガラス部材21が、第1の樹脂層11の表面に他方のガラス部材22が積層されるとよい。さらに、
図2に示すように、第1~第3の樹脂層11、12、13を有する中間膜15では、第2の樹脂層12の表面に一方のガラス部材21が積層され、第3の樹脂層13の表面に他方のガラス部材22が積層されるとよい。
【0080】
(ガラス部材)
合わせガラスで使用するガラス部材としては、ガラス板を使用すればよい。ガラス板は、無機ガラス、有機ガラスのいずれでもよいが、無機ガラスが好ましい。無機ガラスとしては、特に限定されないが、クリアガラス、クリアフロートガラス、フロート板ガラス、強化ガラス、着色ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入り板ガラス、線入り板ガラス、紫外線吸収板ガラス、赤外線反射板ガラス、赤外線吸収板ガラス、グリーンガラス等が挙げられる。
また、有機ガラスとしては、一般的に樹脂ガラスと呼ばれるものが使用され、特に限定
されないが、ポリカーボネート板、ポリメチルメタクリレート板、ポリエステル板などから構成される有機ガラスが挙げられる。
2枚のガラス部材は、互いに同種の材質から構成されてもよいし、別の材質から構成されてもよい。例えば、一方が無機ガラスで、他方が有機ガラスであってもよいが、2枚のガラス部材の両方が無機ガラスであるか、又は有機ガラスであることが好ましい。
上記ガラス部材それぞれの厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.5mm以上5mm以下、より好ましくは0.7mm以上3mm以下である。
【0081】
合わせガラスの製造方法は特に限定されない。例えば、2枚のガラス部材の間に、中間膜を挟んで、押圧ロールに通したり、又はゴムバッグに入れて減圧吸引したりして、2枚のガラス部材と中間膜との間に残留する空気を脱気する。その後、約70~110℃で予備接着して積層体を得る。次に、積層体をオートクレーブに入れたり、又はプレスしたりして、約120~150℃及び1~1.5MPaの圧力で圧着する。このようにして、合わせガラスを得ることができる。また、上記合わせガラスの製造時に、例えば複数の樹脂層を積層して一体化して、中間膜を成形しながら合わせガラスを製造してもよい。
【0082】
[合わせガラス用中間膜の用途]
本発明の一実施形態において、合わせガラス用中間膜(すなわち、合わせガラス)は、画像表示スクリーンに使用される。具体的には、プロジェクターなどを構成する光源装置からの光が合わせガラスの一方の面に照射され、その照射された光が、合わせガラス用中間膜にて散乱して、合わせガラス上にて画像として表示されるとよい。
画像表示スクリーンは、背面投射型であってもよいし、正面投射型であってもよいが、背面投射型であることが好ましい。背面投射型として使用することで、高コントラストの画像表示を実現しやすくなる。
なお、背面投射型の画像表示スクリーンは、合わせガラスの一方の面に光源装置からの光を照射し、かつ合わせガラスの他方の面から画像観察を行わせるスクリーンである。また、正面投射型の画像表示スクリーンは、合わせガラスの一方の面に光源装置からの光を照射し、かつ合わせガラスの一方の面(すなわち、光源装置からの光が照射された面)から、画像観察を行わせるスクリーンである。
【0083】
本発明は、上記のように合わせガラスを画像表示スクリーンとして使用した画像表示システムも提供する。画像表示システムは、上記した合わせガラスと、合わせガラスの一方の面に、光を照射する光源装置とを備え、光源装置からの光によって合わせガラスに画像を表示する。画像表示システムは、上記の通り、背面投射型でも、正面投射型のいずれでもよいが、背面投射型であることが好ましい。
以下、背面投射型の画像表示システムの一実施形態について、
図3を参照しつつ詳細に説明する。
【0084】
本発明の一実施形態に係る画像表示システム30は、合わせガラス31と、光源装置32とを備える。合わせガラス31は、上記した合わせガラスのいかなる構造を有するものでもよい。画像表示システム30は、光源装置32が合わせガラス31の一方の面(背面31B)に光を照射し、その照射した光により合わせガラス31の他方の面(前面31F)から画像を表示させる。前面31F側に表示された画像は、合わせガラス31の前方に居る観察者OBによって視認される。前面31Fから表示される画像は、動画などの映像でもよいが、静止画や、文字、アイコン、商標などからなるメッセージ、ロゴなどでもよく、特に限定されない。
【0085】
光源装置32は、背面投射型の画像表示システムに従来使用されている光源を用いることができ、例えば、映像などの各種画像を映し出すことが可能なプロジェクターを使用する。プロジェクターとしては、いわゆるDLP(登録商標)プロジェクターとして知られる、デジタルミラーデバイスを用いた映像表示システムなどを使用することが好ましい。
また、固定アイコン、固定メッセージなど、映し出す画像を変化させずに表示させる場合には、プロジェクターを使用する必要はなく、画像に応じた一定の光を合わせガラス31に照射する光源装置を使用してもよい。
なお、背面投射型において、合わせガラス31に照射される光は、表示画像に対して、左右反転した画像に対応した光である。左右反転した画像に対応した光を照射する方法は、特に限定されず、画像信号を調整することで左右反転させてもよいし、反転ミラーなどを使用してもよい。
【0086】
画像表示システム30において、光源装置32から発せられた光は、合わせガラス31に直接照射されてもよいが、反射ミラー、反転ミラーなどの光学部材を介して合わせガラス31に照射されてもよい。
【0087】
本発明の合わせガラス用中間膜及び合わせガラスは、様々な分野で使用でき、例えば各種の窓ガラスに使用する。より具体的には、自動車、鉄道車輌、航空機、船舶などの乗り物用窓ガラス、又は建築用窓ガラスなどに使用可能である。合わせガラス用中間膜又は合わせガラスは、各種の窓ガラスに使用することで、窓ガラスに映像、メッセージ、ロゴなどの各種画像を表示できる。また、家庭用電気機器などの各種の電気機器のディスプレイとし使用してもよい。これらの中では、窓ガラスに使用することが好ましく、自動車の窓ガラスに使用することがより好ましい。自動車の窓ガラスとしては、全光線透過率が70%未満であることから、サイドガラス、リアガラスが好ましいが、リアガラスがより好ましい。また、上記のとおり、第1の樹脂層が合わせガラス用中間膜の一部の領域に設けられる場合には、フロントガラスに使用することも好ましい。
例えば、建築用窓ガラスに使用する場合には、建築物内部に光源装置を設置し、窓ガラスの内側の表面に光源装置からの光を照射して、窓ガラスの外側の面に、各種の画像を表示するとよい。同様に、乗り物用窓ガラスに使用する場合には、乗り物内部に光源装置を設置し、窓ガラスの外側の面に各種の画像を表示するとよい。
【0088】
また、建築、乗り物用の窓ガラスの外側の面に光源装置からの光を照射して、窓ガラスの内側の面に画像を表示してもよい。具体的には、自動車のボンネット、トランクなどに光源装置を設置して、サイドガラス、リアガラスなどに外側から光を照射して、これらガラスの内側の面に画像を表示してもよい。
また、本発明の中間膜を使用した窓ガラスは、光は透過するが、窓ガラスを介して人又は物体が視認しにくくなるので、プライバシー保護性の高い窓ガラスとして使用することも可能である。
【0089】
<別の側面に係る画像表示システム>
本発明の別の側面は、例えば、自動車などの各種車両に使用される乗り物用ガラスを利用した画像表示システムに関するものであり、以下の画像表示システムを提供する。本発明の別の側面に係る画像表示システムにより、例えば、車外や車内に向けて簡易な構成により、様々なメッセージを伝達したり、様々な画像を表示させたりすることができる。
以下、第別の側面に係る画像表示システムについて詳細に説明する。
【0090】
本発明の別の側面に係る画像表示システムは、表示用ガラスと、表示用ガラスの一方の面に、光を照射する光源装置とを備え、光源装置からの光によって表示用ガラスに画像を表示する。表示用ガラスは、自動車などの各種車両の窓ガラスなどに使用される乗り物用ガラスである。
画像表示システムにおける表示用ガラスは、光拡散粒子を含有する層を有するとよい。表示用ガラスは、光源装置からの光が照射されると、光拡散粒子による光散乱が生じて、表示用ガラス上に画像が表示される。
なお、光拡散粒子を含有する層は、表示用ガラスの全領域に設けられてもよいが、表示用ガラスの一部の領域に設けられてもよい。
【0091】
画像表示システムは、表示用ガラスを画像表示スクリーンとして使用する投射システムであり、表示用ガラスを背面投射型の画像表示スクリーンとして使用するとよい。背面投射型の画像表示スクリーンは、表示用ガラスの一方の面に光源装置からの光を入射し、かつ表示用ガラスの他方の面から画像観察を行わせるスクリーンである。光源装置からの光は、表示させる画像に対応した可視光である。また、光源装置から照射される光は、単色光であってもよいが、複数の色が組み合わされた光であることが好ましい。光源装置から照射される光を複数の色を組み合わせることで、表示用ガラスにはフルカラー画像も表示可能である。
なお、表示用ガラスの光源装置からの光が入射される一方の面は、車内側の面であり、他方の面が車外側の面であり、画像は車外に向けて表示されることが好ましいが、逆であってもよい。すなわち、表示用ガラスの車内側の面に画像を表示させ、車内に向けて画像を表示させるとともに、その反対側の面に光源装置からの光を入射させてもよい。
【0092】
画像表示システムにおける表示用ガラスは、上記した光拡散粒子を有することで、乳白色を有してもよく、また、後述する着色剤を含有することで、乳白色に適宜色が付された態様であってもよい。
画像表示システムにおける表示用ガラスの全光線透過率(TvD)は例えば70%未満である。全光線透過率が70%未満であることで、表示用ガラスにおいて十分に光散乱が生じて高いコントラストで画像表示できるようになる。また、表示用ガラスを介して、車体内部などが視認しにくくなり、プライバシー保護性を高めることもできる。これら観点から、画像表示システムにおける表示用ガラスの全光線透過率(TvD)は、50%以下が好ましい。また、上記全光線透過率(TvD)は、特に限定されないが、例えば10%以上、好ましくは20%以上である。全光線透過率(TvD)をこれら下限値以上とすることで、車外に向けて高いコントラストで画像表示しやすくなる。なお、本発明において、全光線透過率(TvD)は、JIS R3106(2019)に準拠して測定した値である。
画像表示システムにおける表示用ガラスは、上記のように全光線透過率が低いため、高い透明性が必要とされない位置に設けられる。
【0093】
なお、画像表示システムにおける表示用ガラスの全光線透過率(TvD)とは、上記のとおり、光拡散粒子を含有する層が設けられる領域(光拡散領域ともいう)が部分的に設けられる場合には、光拡散領域の全光線透過率(TvD)である。その場合、光拡散粒子を含有する層(すなわち、後述する第1の樹脂層)が設けられない領域(透明領域ともいう)における全光線透過率(TvD)は、70%以上であることが好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましく、また、実用的には99%以下、好ましくは97%以下である。このように、全光線透過率(TvD)が高い領域を設けることで、表示用ガラスをフロントガラスなどとしても運転の妨げとなることが防止できる。
また、光拡散領域は、後述すように第1の樹脂層の厚みが漸次変化する領域が設けられ、位置ごとに全光線透過率が異なることがあるが、そのような場合には、一部の領域の全光線透過率が上記範囲内になるとよいが、好ましくは全光線透過率が最も低い領域が上記数値範囲になるとよい。
【0094】
画像表示システムにおける光源装置は、背面投射型の画像表示システムに従来使用されている光源を用いることができ、例えば、映像などの各種画像を映し出すことが可能なプロジェクターを使用する。プロジェクターとしては、いわゆるDLP(登録商標)プロジェクターとして知られる、デジタルミラーデバイスを用いた映像表示システムなどを使用することが好ましい。
【0095】
画像表示システムは、タッチセンサを備えてもよい。タッチセンサは、指などによる、表示用ガラスへのタッチ動作を検知するセンサである。タッチセンサが検知するタッチ動作は、表示用ガラスに指などを必ずしも接触させる必要はない。すなわち、タッチセンサは指などを表示用ガラスの所定位置に近づけたことを検知するものでもよい。タッチセンサの方式は、特に限定されず、IR型センサ、ジェスチャ検知型、ウルトラソニック型などである。
また、画像表示システムは、公知のプロセッサなどにより構成され、タッチセンサの入力に基づいて自動車、自動車に取り付けられる各種機器の動作、表示用ガラスの表示などを制御する制御部を備えてもよい。また、画像表示システムは、メモリなどにより構成され、タッチセンサの入力情報を記憶する記憶部や、アンテナなどの無線通信機器により構成され、タッチセンサの入力情報を車外に送信する送信部などを備えてもよい。
【0096】
以下、画像表示システムについて実施形態を参照しつつ、画像表示システムの適用例をより詳細に説明する。
【0097】
[第1の実施形態]
図4、5は、第1の実施形態に係る画像表示システム(以下、単に画像表示システム60ということがある)を示す。第1の実施形態において、画像表示システム60は自動車に適用され、表示用ガラスが自動車の側面部に設けられる。本実施形態における自動車は、バンタイプである。自動車の内部は、例えば、フロントシートが設けられるフロント部分と、その後方部分とからなり、後方部分は一般的には、荷物が収納される荷台部分となる。
【0098】
自動車の側面部には、フロントサイドガラス61Aが設けられたフロントサイドドア62Aが設けられており、表示用ガラス65はその後方に配置される。なお、フロントサイドドア62Aの後方には、バックサイドドアが設けられ、表示用ガラス65は、バックサイドドアに設けられてもよいが、
図5に示すようにバックサイドドアは必ずしも設けられる必要はない。表示用ガラス65は、光源装置63からの光が照射されることで、映像などの画像が表示される。画像は、車外に向けて表示されるものであり、例えば広告などが表示される。
なお、本実施形態では、
図5に示すように、自動車がバンタイプであることで、表示用ガラスは面積を十分に大きくできるので、広告表示に適している。ただし、自動車は、バンタイプに限定されずいかなるタイプの自動車でもよい。
また、本実施形態における光源装置63は、表示用ガラス65に光を照射できる位置に配置されればよいが、本実施形態においては、自動車の天井面64に設けられ、より具体的には、自動車内部の後方部分(例えば、荷台部分)の天井面に設けられる。
【0099】
[第2の実施形態]
図6、7は、第2の実施形態に係る画像表示システム(以下、単に画像表示システム70ということがある)を示す。第2の実施形態において、画像表示システム70はトラックに適用され、表示用ガラス75がトラックの背面に設けられる。
【0100】
具体的には、トラックは、運転席などを備えるキャブ71と、キャブ71の後方にある荷台72を備える。荷台72は、屋根(天面72T)を有する箱型であり、荷台72の背面72Bの少なくとも一部が表示用ガラス75によって構成される。なお、背面72Bは、例えば、
図7に示すように、両開きの2枚の扉72C,72Dからなる。そして、表示用ガラス75は、その扉72C,72Dそれぞれの一部を構成する2枚のガラス75A,75Bからなり、扉72C,72が閉じされたときに2枚のガラス75A,75Bにより1つのスクリーンとして構成されるが、この態様に限定されず、例えば表示用ガラス75は、一方の扉のみにより設けられてもよい。また、背面の扉は2枚からなる必要はなく、1枚であってもよい。
【0101】
光源装置73は、荷台72の内部に設けられ、荷台72の天面72Tなどに設けられるとよい。表示用ガラス75は、光源装置73からの光が照射されることで、映像などの画像が表示される。画像は、車外に向けて表示される。
本実施形態では、図示しない撮影装置がトラックに設けられ、撮影装置によってトラックの前方が撮影される。撮影装置によって撮影された撮影画像は、光源装置73に送られて、光源装置73は撮影画像に応じた光を照射するとよい。そして、その撮影画像が表示用ガラス75に表示されるとよい。トラックは一般的に車高が高く、後方の自動車などからの視界を妨げることがあるが、上記のように前方の視界の画像を、表示用ガラス75に表示することで、トラックによる前方の視界不良を解消することができる。
【0102】
ただし、表示用ガラス75に表示される画像は、前方の視界の画像に限定されず、広告などでもよい。本実施形態では、
図7に示すように、自動車がトラックであることで、表示用ガラス75は面積を十分に大きくできるので、広告表示にも適している。
また、本実施形態では、表示用ガラス75は、荷台72の背面72Bに設けられる態様を示すが、荷台72の側面に設けられてもよい。側面の表示用ガラス75に表示される画像は、例えば広告などであるとよい。
【0103】
[第3の実施形態]
図8、9は、第3の実施形態に係る画像表示システム(以下、単に画像表示システム80ということがある)を示す。第3の実施形態において、画像表示システム80はピックアップトラックに適用され、表示用ガラスがピックアップトラックの背面に設けられる。
ピックアップトラックは、キャブ81と、キャブ81の後方にある荷台82を備え、荷台82が屋根を有していない。本実施形態では、キャブ81のリアガラス85が表示用ガラスとして使用される。また、光源装置83は、車内(すなわち、キャブ81の内部)に設けられ、キャブ81の天井84に設けられるとよい。より具体的には、キャブ81の背面の近傍や、キャブ81内部の後列シートの上方などに設けられるとよい。
表示用ガラス(リアガラス85)は、光源装置83からの光が照射されることで、映像などの画像が表示される。画像は、車外に向けて表示されるものであり、各種映像が表示され、エンターテインメント性の高い自動車を提供できる。また、リアガラス85には、広告などが表示されてもよい。
【0104】
[第4の実施形態]
図10,11は、第4の実施形態に係る画像表示システム(以下、単に画像表示システム90ということがある)を示す。第4の実施形態において、画像表示システム90は自動車に適用され、フロントガラス91が画像表示システム90の表示用ガラスとして使用される。
【0105】
光源93は自動車の車内に配置され、表示用ガラスを構成するフロントガラス91に対して光を照射する。光源93は、
図10に示すとおり、例えば、自動車の天井94、ダッシュボード95の内部、又はこれらの両方などに設けられる。光源93は、天井94に設けられる場合には、マップランプ部分などのランプ部分に設けられるとよい。すなわち、室内を照明するためのランプを被覆するランプカバー98の内側などに設けられるとよい。
なお、光源93は、後述する画像表示領域に光を照射できるものであればよく、例えば、天井94に設けられる光源93は、フロントガラス91の上端部分91Aに対して光を照射するとよく、ダッシュボード95の内部に設けられる光源93は、フロントガラス91の下端部分91Bに対して光を照射するとよい。
【0106】
本実施形態では、フロントガラス91は、光源93からの光が入射されることで画像を表示する。なお、画像が表示される領域(画像表示領域)は、運転手の視野の妨げとならない領域であるとよく、具体的には、
図11に実線で示す通り、フロントガラス91の上端部分91A、フロントガラス91の下端部分91B、又はその両方である。なお、上端部分91A、下端部分91Bそれぞれは、フロントガラス91の全高さに対して、例えば5~35%の高さを有する領域であるとよい。
【0107】
なお、フロントガラス91(表示用ガラス)は、画像表示領域を光拡散領域とし、上端部分91Aと下端部分91Bの間の中央部分を、少なくとも上記した透明領域とするとよい。このような構成にすることで、フロントガラス91に設けた光拡散領域が運転の妨げとなることを防止できる。
【0108】
フロントガラス91に表示される画像としては、車外に向けたメッセージ97が挙げられる。車外に向けたメッセージ97としては、周囲の自動車、歩行者、軽車輌などに向けのメッセージが挙げられる。なお、軽車輌とは、自転車、バイクなどである。具体的には、
図11に示すように、“Please Go Ahead”などのように、自動車の運転状況や今後の動きを他の自動車、歩行者、軽車輌などに伝えるメッセージなどを表示するとよい。なお、メッセージ37は、文字で構成される必要はなく、図柄で構成されてもよいし、文字と図柄により構成されてもよい。
【0109】
メッセージ97は、例えば、自動車内に設けられたメモリにメッセージ候補を予め1又は複数記憶しておき、運転手などの乗員のスイッチ操作などによりメッセージ候補の少なくとも1つが呼び出されて、表示用ガラスに表示されるとよい。
また、自動車内にマイクが設けられ、マイクより入力された音声に基づき、メッセージを発光ガラスに表示してもよい。ここで、入力された音声をそのまま発光ガラスに表示してもよいし、入力された音声に基づき、複数のメッセージ候補から1つ又はそれ以上のメッセージを選択して、発光ガラスに表示してもよい。
【0110】
[第5の実施形態]
図12,13は、第5の実施形態に係る画像表示システム(以下、単に画像表示システム100ということがある)を示す。第5の実施形態において、画像表示システム100は自動車に適用され、リアガラス101が画像表示システム100の表示用ガラスとして使用される。
【0111】
光源103は自動車の車内に配置され、表示用ガラスを構成するリアガラス101に対して光を照射する。光源103は、
図12に示すとおり、例えば、自動車の天井104などに設けられ、具体的には、リアガラス101の近傍に設けられる。本実施形態では、リアガラス101は、光源103から光が入射されることで、その光に対応した画像がリアガラス101に表示される。
【0112】
リアガラス101に表示される画像としては、車外に向けたメッセージ107が挙げられる。車外に向けたメッセージ107としては、周囲の自動車、歩行者、軽車輌などに向けのメッセージが挙げられる。具体的には、自動車の運転状況や今後の動き、緊急情報などを他の自動車、歩行者、軽車輌などに伝えるメッセージなどを表示するとよい。
メッセージ107としては、
図13に示すように、図柄などにより構成されてもよいが、第4の実施形態でも示したように文字から構成されてもよいし、図柄と文字の組み合わせでもよい。図柄としては、
図13に示すとおり、左折、Uターン、停止を意味する図柄を表示してもよいし、顔文字などでもよい。
メッセージ107は、第4の実施形態と同様に、例えば、スイッチ操作や音声入力に基づいて表示されるとよい。
【0113】
[第6の実施形態]
図14~17は、第6の実施形態に係る画像表示システム(以下、単に画像表示システム110ということがある)を示す。第6の実施形態において、画像表示システム110は自動車に適用され、サイドガラス111が画像表示システム110の表示用ガラスとして使用される。サイドガラス111は、一般的にサイドドア112の上部に設けられる。
また、サイドガラス111としては、典型的には、フロントサイドドア112Aに設けられるフロントサイドガラス111A、リアサイドドア112Bに設けられるリアサイドガラス111Bなどがある。サイドガラス111においては、
図15に示す通り、リアサイドガラス111Bが表示用ガラスとなるとよい。画像表示システムにおける表示用ガラスは、上記の通り全光線透過率が低いが、リアサイドガラス111Bに設けられることで、運転手の視界を妨げることがない。
【0114】
光源113は自動車の車内に配置され、表示用ガラスを構成するサイドガラス111に対して光を照射する。光源113は、
図14に示すとおり、例えば、自動車のサイドドア112、又は天井114などに設けられる。なお、
図14においては、光源113は、サイドドア112及び天井114の両方に設けられる態様が示されるが、通常はサイドドア112及び天井114のいずれか一方に設けられる。光源113は、天井114に設けられる場合には、例えば、ランプ部分などに設けられるとよい。すなわち、室内を照明するためのランプを被覆するランプカバーなどの内側に設けられるとよい。ランプ部分としては、リアサイドガラス111Bに対して、光を照射しやすい観点から、ルーフランプと呼ばれるフロントシートの後方部分(例えば、後列シート)の上方に設けられるランプであるとよい。
また、光源113は、サイドドア112に設けられる場合には、サイドドアトリム112Cの内部などに設けられるとよく、具体的には、リアサイドガラス111Bに光を照射するためにリアサイドドア112Bに設けられるとよい。
【0115】
図15に示すとおり、サイドドア12に表示される画像は、車外に向けて表示させるための画像であり、
図15~17に示すとおり、例えば、1文字以上の文字、1つ以上の図柄、またはこれらの組み合わせで構成される。なお、文字又は図柄は、記号、アイコン、図形、図画などであってもよい。
サイドドア112に表示される画像は、より具体的には、メッセージ、入力操作キー、文字入力位置ガイドなどが挙げられる。
【0116】
本実施形態におけるメッセージは、主に自動車に乗り込む前、又は自動車から降車した運転手などの乗員に向けたメッセージである。メッセージとしては、文章、図柄、文章と図柄の組み合わせなどが挙げられる。具体的には、乗員に向けた挨拶文、自動車の状態を示すメッセージ、警告メッセージ、エンターテイメント情報などが挙げられる。各表示用ガラスには、メッセージが1以上表示されるとよい。
メッセージの具体例としては、
図15、16に示すとおり、“Welcome Open”、“Hi Dylan”、“Good Morning” 、”Have a nice evening”などの挨拶文120A、ドアの開閉状態を示すメッセージ120B、充電率などのバッテリーの状態を示すメッセージ120C、燃料残量を示すメッセージ120D、タイヤ圧の状態を示すメッセージ120Eなどの各種の自動車の状態を示すメッセージ、メンテナンス、充電、タイヤの交換が必要であることを示す警告メッセージ120F、自動車のメーカー名などを示す商標120G、QRコード(登録商標)120H、バーコード(図示しない)などのコード文字などが挙げられる。コード文字は、周辺の店情報などのエンターテイメント情報を示してもよい。また、コード文字以外でエンターテイメント情報を示してもよい。
【0117】
入力操作キーとしては、
図17に示すように、キーボタン121が挙げられる。入力操作キーは、図示しないが、テンキーや、キーボードなどであってもよい。また、文字入力位置ガイドとしては、指の動きによりサインなどの文字を入力するためのブランクの位置を示すためのブランクボックス122などが挙げられるが、文字入力位置ガイドは矢印やアンダーラインなどであってもよいし、文字などによるメッセージによって示されてもよい。
【0118】
操作キーや文字入力位置ガイドは、タッチセンサと組み合わせて使用されるとよい。すなわち、操作キーをタッチする動作がタッチセンサにより検知され、そのタッチセンサによる入力情報により、自動車の動作が制御されたり、入力情報を自動車内部の記憶部に記憶されたり、入力情報が車外に送信などされたりするとよい。また入力情報により、表示用ガラスの表示が変更されたり、自動車に設けられる各種機器の動作が制御されたりしてもよい。
より具体的には、操作キーにより入力されパスワードや暗証番号などにより、自動車のロックが解除されたりするとよい。また、文字入力位置ガイドに位置が示されるブランクにパスワードや署名が記入されることで自動車のロックが解除されたりするとよい。また、特定の操作キーに対して、タッチ動作を行うと、表示用ガラスに表示される画像が切り替えられてもよい。
なお、タッチセンサは、操作キーや文字入力位置ガイドと組み合わせて使用する必要はなく、例えば、サイドガラスに対してタッチ動作が行われることで画像表示が開始されてもよい。ただし、サイドガラスへの画像表示の開始は、タッチ動作に限定されず、自動車のキーを近づけたりすることなどで開始されてもよい。
【0119】
また、操作キーや文字入力位置ガイドは、
図17に示すようにメッセージ123とともに、同一のサイドガラス111(例えば、リアサイドガラス)に表示されてもよい。このような構成により、操作キーの操作、又は文字入力位置ガイドに示されるブランクに入力されるべき情報が、メッセージ123によって表示され、ユーザビリティを向上させることができる。
例えば、
図17の表示態様では、契約内容に同意できる場合にはブランクに署名すべきとことを示したメッセージ123がブランクボックス122とともに表示されるので、乗員はそのメッセージ123に従って署名を行えばよい。なお、
図17に示す表示態様は、例えばレンタカーやカーシェアリング用の自動車などに適用されるとよい。
【0120】
[第7の実施形態]
図18~20は、第7の実施形態に係る画像表示システム(以下、単に画像表示システム130ということがある)を示す。第7の実施形態において、画像表示システム130は、自動運転車に適用され、自動運転車の外周面の一部に表示用ガラス135が設けられる。表示用ガラス135は、自動運転車の前面に設けられるフロントガラスでもよいし、自動運転車の背面に設けられるリアガラスでもよいし、自動運転車の側面に設けられるサイドガラスでもよい。なお、
図19では、フロントガラスが表示用ガラス135となる態様が示され、
図20ではサイドガラスが表示用ガラス135となる態様が示される。
また、自動運転車は、例えばラストワンマイルトラックなどの運送トラックとして使用されるが、他の用途に使用される自動運転車であってもよい。
【0121】
図18に示すように、光源133は自動運転車の車内に配置され、表示用ガラス135に対して光を照射する。光源133は、
図18に示すとおり、例えば、自動運転車の天井134などに設けられるとよい。本実施形態でも、表示用ガラス135は、光源133から光が入射されることで、その光に対応した画像が表示される。
表示用ガラス135に表示されるが画像は、車外に向けたメッセージ、映像、広告などであるとよい。メッセージとしては、運転中にはその運転状況などを表示するとよい。また、目的地に到着後には荷物のシリアル番号などのシリアル番号などを表示するとよい。
また、画像は、第6の実施形態(
図17参照)で示したように、入力操作キー、文字入力位置ガイドなどでもよく、第6の実施形態で説明したように、入力操作キー、又は文字入力位置ガイドとメッセージなどの組わせてでもよい。入力操作キー、文字入力位置ガイドを表示させる場合には、画像表示システム130は、第6の実施形態で詳細に説明したとおりタッチセンサをさらに備えるとよい。
【0122】
例えば、自動運転車が運送トラックとして使用され、かつ入力操作キー、文字入力位置ガイドが画像として表示される場合には、入力操作キーにより暗証番号、パスワードが入力されたり、文字入力位置ガイドに従って署名、暗証番号、パスワードが入力されたりすることで、自動運転車のキーが解除されるとよい。そして、例えば自動運転車の扉が開き、荷物が受け取り可能となってもよい。このような構成により、荷物の受取人によって自動運転車のキーが解除されると、受け渡し人がいなくても、荷物の配達が可能となる。また、荷物の受取人が文字入力位置ガイドなどに従って署名すると、画像表示システム130は、その署名情報を記憶部などに保存したり、送信部により外部に送信したりすることも可能となる。
さらに、本実施形態では、自動運転車の窓ガラスを構成する表示用ガラスは、全光線透過率が低いので、積み荷が外部から見えにくくなり、プライバシー性を確保できる。
【0123】
[第8の実施形態]
図21,22は、第8の実施形態に係る画像表示システム(以下、単に画像表示システム140ということがある)を示す。第8の実施形態において、画像表示システム140は自動車に適用され、表示用ガラス145は、自動車の運転席の前方にインスツルメントパネルとして、運転席に対向して配置されるとよい。そして、光源装置143は、表示用ガラス145のさらに前方側に配置される。また、表示用ガラス145の前方には、各種パーツを内部に収納する収納部146が設けられ、光源装置143も収納部146の内部に収納される。
【0124】
以上の構成により、表示ガラス145の運転席に対向する面(すなわち、車内側の面)とは反対側の面に、光源装置143からの光が入射され、その入射光に基づき、表示用ガラス145の運転席に対向する面に画像が表示される。
表示用ガラス145に表示される画像は、運転手に自動車の状態を示す各種計器類の画像を含むとよく、具体的には、速度表示器、燃料残量表示器、エンジン回転数表示器、走行距離表示器などが挙げられる。また、自動車のオーディオ類若しくはカーナビゲーションシステム類のディスプレイ、又はこれらを操作するためのキーボタンなどが表示されてもよい。また、方向指示器、デフロスター、デフォガー、ワイパーなどのオンオフ、窓ガラスの開閉、ドアの開閉などを操作するためのキーボタンなどが表示されてもよい。
【0125】
画像表示システム140は、第6の実施形態と同様に、タッチセンサを備えてもよく、タッチセンサの入力に基づいて、制御部により、自動車の動作や、自動車に取り付けられる各種機器(オーディオ類、カーナビゲーションシステム類など)の動作を制御してもよい。本実施形態では、タッチセンサが設けられることで、インスツルメントパネルのユーザビリティがより向上する。
【0126】
以上説明した第1~第8の実施形態は、画像の表示態様の一例を示したに過ぎず、各車両の表示用ガラスにいかなる画像を表示させてもよい。また、タッチセンサは、第6及び第8の実施形態において自動車のサイドガラス又はインスツルメントパネルに適用される例を示したが、自動車のリアガラスなどの他の窓ガラスに適用されてもよい。また、自動車や自動運転車以外の乗り物に画像表示システムを適用してもよく、例えば、自動車や自動運転車以外の車両の窓ガラスを表示用ガラスとしてもよい。
【0127】
[画像表示システムにおける表示用ガラスの構成]
次に、別の側面に係る画像表示システムに使用される表示用ガラスの構成について詳細に説明する。画像表示システムにおける表示用ガラスは、光拡散粒子を含有する層を有するとよいが、好ましくは合わせガラスである。合わせガラスは、2枚のガラス部材と、2枚のガラス部材の間に配置される合わせガラス用中間膜とを備え、合わせガラス用中間膜が2枚のガラス部材を接着させる。
合わせガラス用中間膜は、単層構造を有していてもよいし、複数構造を有してもよいが、いずれの場合も少なくとも1層が光拡散粒子を含有する層(第1の樹脂層)を有するとよい。
【0128】
好ましい合わせガラスの構成を
図23、24に示す。
図23に示すように、合わせガラス150は、第1のガラス部材151Aと、第2のガラス部材151Bと、これらガラス部材151A、151Bの間に配置される合わせガラス用中間膜153を備える。合わせガラス用中間膜153は、第1のガラス部材151A側から第2の樹脂層155、光拡散粒子を含有する第1の樹脂層154、第3の樹脂層156をこの順に備え、第2及び第3の樹脂層155、156がそれぞれ第1及び第2のガラス部材151A、151Bに接着するとよい。
また、合わせガラス150は、上記第1~第3の樹脂層154~156に加えて、第4の樹脂層157を備えてもよい。この場合、合わせガラス用中間膜153は、第1のガラス部材151A側から第4の樹脂層157、第2の樹脂層155、光拡散粒子を含有する第1の樹脂層154、第3の樹脂層156をこの順に備え、第4及び第3の樹脂層157、156がそれぞれ第1及び第2のガラス部材151A、151Bに接着するとよい。
【0129】
さらに、合わせガラス用中間膜は、図示しないが2層構造であってもよく、例えば、
図23に示す構成において、第3の樹脂層156が省略されてもよく、この場合、第2及び第1の樹脂層155、154がそれぞれ第1及び第2のガラス部材151A、151Bそれぞれに接着するとよい。
なお、合わせガラス150は、第2のガラス部材151B側の表面から光源装置からの光が入射され、かつ第1のガラス部材151Aの表面に画像表示されるとよい。
【0130】
光拡散粒子は、合わせガラス(表示用ガラス)に入射された光を散乱できる化合物であれば特に制限されないが、具体的には、炭酸カルシウム、シリカ、酸化チタン、ガラスフレーク、マイカ、アルミナ、アルミニウムなどの無機物が挙げられる。これら化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中では、光散乱性などの観点から、炭酸カルシウム、シリカ、または酸化チタンが好ましく、炭酸カルシウムがより好ましい。
光拡散粒子を含有する層(すなわち、第1の樹脂層)における光拡散粒子の濃度は、特に限定されないが、例えば、6~50質量%である。
【0131】
また、
図23に示す合わせガラス150では、樹脂層154~156のいずれかが、着色剤を含有するとよく、好ましくは、第1の樹脂層154又は第2の樹脂層155が着色剤を含有する。同様に、上記した2層構造の場合も、好ましくは、第1の樹脂層154又は第2の樹脂層155が着色剤を含有する。
さらに、
図24に示す合わせガラス150では、樹脂層154~157のいずれかが、着色剤を含有するとよいが、好ましくは、第4の樹脂層157が着色剤を含有する。
このように、光拡散粒子を含有する第1の樹脂層、あるいは、その第1の樹脂層よりも観察側に配置される樹脂層に着色剤を含有させると、表示される画像がより高コントラストとなり、また、効率的に画像が表示できるようになる。
各樹脂層における着色剤の濃度は、例えば0.005~0.4質量%である。
各樹脂層において、光拡散粒子及び着色剤は、樹脂層を構成する樹脂成分に分散して配合されるとよい。
【0132】
ただし、着色剤は、合わせガラス用中間膜を構成する樹脂層に含有させる必要はなく、例えば、ガラス部材のいずれかの表面に着色層を有してもよいし、ガラス部材として着色剤を含むガラスを用いてもよい。着色層は、好ましくは第1のガラス部材151Aの表面に設ける。このような態様により、着色層は、第1の樹脂層よりも観察側に配置されることとなり、表示される画像がより高コントラストとなり、また、効率的に画像が表示できるようになる。
なお、着色層は、第1のガラス部材151Aの中間膜側の面(
図23、24では、下面)に設けられてもよいし、ガラス部材151Aの中間膜側の面とは反対側の面(
図23、24では、上面)に設けられてもよい。
着色層は、ガラス部材の表面に形成される被膜であり、着色剤を含有する限りいかなる態様でもよいが、該被膜は必要に応じて、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などのバインダー成分を含んでもよく、さらに適宜添加剤が含有されてもよい。
【0133】
着色剤としては、顔料、染料などの色素が使用され、中でも炭素系材料を含むことが好ましい。炭素系材料を含むことで、効果的に迷光を吸収して、画像表示のコントラストをより一層高めやすくなる。炭素系材料としては、カーボンブラックが好ましい。
また、着色剤としては、カーボンブラックなどの炭素系材料と、炭素系材料以外のその他の色素を組み合わせて使用してもよい。このような着色剤の組み合わせにより、画像表示のコントラストを高めつつ、合わせガラスを所望の色に着色でき、デザイン性を高めることができる。
【0134】
各樹脂層に使用される樹脂としては、熱可塑性樹脂を使用するとよい。また、熱可塑性樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、及び熱可塑性エラストマーなどが挙げられ、これらの中でもポリビニルアセタール樹脂が好ましい。
合わせガラス用中間膜を構成する各樹脂層は、可塑剤を含有してもよい。また、各樹脂層はそれぞれ、更に必要に応じて、耐湿性向上剤、接着力調整剤、赤外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、蛍光増白剤、結晶核剤、分散剤等の添加剤を含有してもよい。
【0135】
合わせガラス用中間膜の厚は、特に限定されないが、好ましくは0.2~3.0mmである。
また、合わせガラス用中間膜が多層構造を有する場合、第1の樹脂層の厚みは、好ましくは20~250μm、好ましくは150μm以下である。また、第2及び第3の樹脂層それぞれの厚みは、特に限定されないが、好ましくは50μm~1.5mmである。また、第4の樹脂層の厚みは、特に限定されないが、好ましくは50μm~1.5mmである。
【0136】
また、合わせガラスで使用するガラス部材(第1及び第2のガラス部材151A,151B)としては、ガラス板を使用すればよい。ガラス板は、無機ガラス、有機ガラスのいずれでもよいが、無機ガラスが好ましい。無機ガラスとしては、特に限定されないが、クリアガラス、クリアフロートガラス、フロート板ガラス、強化ガラス、着色ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入り板ガラス、線入り板ガラス、紫外線吸収板ガラス、赤外線反射板ガラス、赤外線吸収板ガラス、グリーンガラス等が挙げられる。
また、有機ガラスとしては、一般的に樹脂ガラスと呼ばれるものが使用され、特に限定されないが、ポリカーボネート板、ポリメチルメタクリレート板、ポリエステル板などから構成される有機ガラスが挙げられる。
上記ガラス部材それぞれの厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.5~5mm、より好ましくは0.7~3mmである。
【0137】
なお、上述したように、光拡散粒子を含有する第1の樹脂層は、合わせガラス用中間膜の全面にわたって形成されていてもよいが、一部の領域に形成されていてもよい。例えば、
図23、24のように、中間膜が、第1~第3の樹脂層を有する場合、合わせガラス用中間膜の一部の領域に第1の樹脂層が設けられ、その他の領域に第1の樹脂層が設けられなくてもよい。すなわち、中間膜は、
図23に示す構成において、第2及び第3の樹脂層155、156の2層からなる部分と、第1~第3の樹脂層154~156の3層からなる部分が設けられるとよい。また、中間膜は、
図24に示す構成において、第2~第4の樹脂層155~157の3層からなる部分と、第1~第4の樹脂層154~157の4層からなる部分が設けられるとよい。
なお、中間膜では、第1の樹脂層の厚みが一定の領域、及び厚みが漸次変化する領域(例えば、上記した厚みが一定の領域から厚みが漸次減少する領域)の一方を有するとよく、上記の一方のみを有してもよいが、厚みが一定の領域と厚みが漸次変化する領域の両方を有してもよい。また、画像のコントラストを安定させるためには、厚みが一定の領域を少なくとも有することが好ましい。
【0138】
以上の画像表示システムによれば、車外や車内に向けて簡易な構成により、様々なメッセージを伝達したり、様々な画像を表示させたりすることができる。また、タッチセンサと組み合わせることでユーザビリティを向上させることができる。
【実施例】
【0139】
本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0140】
なお、各種物性の測定及び評価は、以下のように行った。
[全光線透過率(TvD)]
全光線透過率(TvD)は、JIS R3106(2019)に準拠して測定した。具体的には、分光光度計(日立ハイテクサイエンス社製「U-4100」)を用いて、透過した光線をすべて積分球に受光するよう積分球の開口部に、合わせガラスを平行にかつ密着させ、分光透過率を測定した。得られた上記分光透過率から全光線透過率を算出した。
【0141】
[投影性]
各実施例、比較例で得られた合わせガラスの一方の面に、DLPプロジェクター(セイコーエプソン社製、商品名「EB-1780W」)より光を照射して、合わせガラスに画像を映し出した。映し出された画像を、合わせガラスの他方の面側から観察して、以下の評価基準により評価した。
0:画像を判別できない。
1:おおよそ何が映っているかの判別は可能である。
2:映っている画像を確実に判別可能であるが、ややぼやけて見える。
3:周辺が暗い場合に非常に鮮明に画像が表示される。
4:非常に鮮明に画像が表示される。
【0142】
各実施例、比較例で使用した成分は、以下のとおりである。
(ポリビニルアセタール樹脂)
PVB1:平均重合度1700のポリビニルアルコールをn-ブチルアルデヒドでアセタール化して得られたポリビニルブチラール樹脂。水酸基量、アセチル化度、及びブチラール化度は表1に記載のとおりである。
PVB2:平均重合度2300のポリビニルアルコールをn-ブチルアルデヒドでアセタール化して得られたポリビニルブチラール樹脂。水酸基量、アセチル化度、及びブチラール化度は表1に記載のとおりである。
(可塑剤)
3GO:トリエチレングリコール-ジ-2-エチルヘキサノエート
(光拡散粒子)
炭酸カルシウム(1)(丸尾カルシウム社製「スーパー#1500」、メジアン径4μm)
炭酸カルシウム(2)(丸尾カルシウム社製「スーパー#2000」、メジアン径2μm)
シリカ(東ソーシリカ社製「Nipsil E170」、平均粒子径3μm)
酸化チタン(石原産業社製「CR-50」、平均粒子径0.25μm)
【0143】
[実施例1]
(中間膜の作製)
共押出機において、ポリビニルアセタール樹脂としてのPVB1を100質量部と、可塑剤としての3GOを40質量部と、光拡散粒子としての炭酸カルシウムとを混練して、第1の樹脂層用の樹脂組成物を得た。ここで、炭酸カルシウムは、第1の樹脂層全量に対する含有量が10.7質量%となるように加えた。また、共押出機において、ポリビニルアセタール樹脂としてのPVB1を100質量部と、可塑剤としての3GOを40質量部とを混練し、第2及び第3の樹脂層用の樹脂組成物を得た。
上記共押出機において、得られた第1~第3層用の樹脂組成物を共押出することにより、厚み325μmの第2の樹脂層、厚み150μmの第1の樹脂層、及び厚み325μmの第3の樹脂層からなる3層構造の中間膜を得た。
【0144】
(合わせガラスの作製)
JIS R3202(2011)に準拠した、2枚のクリアガラス(縦10cm×横10cm×厚み2.5mm、可視光透過率90.4%、セントラル硝子社製)を用意し、作製した中間膜を2枚のクリアガラスで挟み込み、積層体を得た。この積層体をゴムバッグ内に入れ、2.6kPaの真空度で20分間脱気した後、脱気したままオーブン内に移し、更に90℃で30分間保持して真空プレスし、積層体を仮圧着した。オートクレーブ中で135℃及び圧力1.2MPaの条件で、仮圧着された積層体を20分間圧着し、ガラス板/第2の樹脂層/第1の樹脂層/第3の樹脂層/ガラス板からなる合わせガラスを得た。
【0145】
[実施例2~12、比較例2]
各樹脂組成物に使用するポリビニルアセタール樹脂の種類、可塑剤の配合量、光拡散粒子の配合量、各樹脂層の厚みを表1に記載する通りに変更した以外は、実施例1と同様に実施した。
【0146】
[比較例1]
押出機において、ポリビニルアセタール樹脂としてのPVB1を100質量部と、可塑剤としての3GOを40質量部と、光拡散粒子としての炭酸カルシウム(1)とを混練して、第1の樹脂層用の樹脂組成物を得た。ここで、炭酸カルシウムは、第1の樹脂層全量に対する含有量が3.0質量%となるように加えた。上記押出機において、得られた第1の樹脂層用の樹脂組成物を押出することにより、厚み800μmの第1の樹脂層単層からなる中間膜を得た。その後、実施例1と同様の方法により合わせガラスを作製して、ガラス板/第1の樹脂層/ガラス板からなる合わせガラスを得た。
【0147】
【表1】
※可塑剤の含有量は、各樹脂層におけるポリビニルアセタール樹脂100質量部に対する含有量(質量部)である。
※光拡散粒子の含有量は、第1の樹脂層、及び中間膜全体それぞれにおける光拡散粒子の濃度(質量%)である。
【0148】
以上のように、各実施例では、多層でかつ特定の構成を有する合わせガラス用中間膜を使用することで投影性が良好となり、画像表示スクリーンとして使用すると、高コントラストで画像を表示できた。それに対して、各比較例では、合わせガラス用中間膜が単層となったり、全光線透過率が高くなったりしたことで、画像表示スクリーンとして使用すると、高コントラストで画像を表示できなかった。
【符号の説明】
【0149】
10、15 合わせガラス用中間膜
11 第1の樹脂層
12 第2の樹脂層
13 第3の樹脂層
20、25、31 合わせガラス
21、22 ガラス部材
30 画像表示システム
32 光源装置
OB 観察者