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  • 特許-湿式磁粉探傷試験用蛍光磁粉の製造方法 図1
  • 特許-湿式磁粉探傷試験用蛍光磁粉の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-20
(45)【発行日】2025-05-28
(54)【発明の名称】湿式磁粉探傷試験用蛍光磁粉の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/84 20060101AFI20250521BHJP
【FI】
G01N27/84
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021018953
(22)【出願日】2021-02-09
(65)【公開番号】P2022121947
(43)【公開日】2022-08-22
【審査請求日】2024-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】390002808
【氏名又は名称】マークテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100173406
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 真貴子
(74)【代理人】
【識別番号】100067301
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 順一
(72)【発明者】
【氏名】一本 哲男
(72)【発明者】
【氏名】加藤 祐太
(72)【発明者】
【氏名】西澤 慎一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大輔
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-244020(JP,A)
【文献】特開2018-173290(JP,A)
【文献】特開昭60-211358(JP,A)
【文献】特開2002-039999(JP,A)
【文献】特開2004-101193(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112300780(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/91
G01N 27/72 - G01N 27/9093
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メジアン径が2μm以上、かつ、7μm以下の磁性粉末を20重量%以上、かつ、40重量%以下と、ガラス転移温度が10℃以下の水溶性樹脂含有エマルジョンの樹脂分を5重量%以上、かつ、12重量%以下と、蛍光顔料を5重量%以上、かつ、25重量%以下と水とを含有する混合物を造粒し、前記造粒した粒子を80℃以上、かつ、180℃以下で加熱処理して製造する湿式磁粉探傷試験用蛍光磁粉の製造方法。
【請求項2】
前記混合物を噴霧して造粒する請求項1記載の湿式磁粉探傷試験用蛍光磁粉の製造方法。
【請求項3】
前記混合物における前記磁性粉末と前記蛍光顔料と前記水溶性樹脂からなる固形成分が65重量%以下である請求項1又は2記載の湿式磁粉探傷試験用蛍光磁粉の製造方法。
【請求項4】
前記混合物から造粒した粒子が、磁性粉末粒子表面に蛍光顔料が付着した複合粒子である請求項1乃至3いずれか記載の湿式磁粉探傷試験用蛍光磁粉の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿式磁粉探傷試験用蛍光磁粉の製造方法に関する。詳しくは、本発明により製造される蛍光磁粉は、磁性粉末粒子表面に水溶性樹脂を介して蛍光顔料が強固に付着した蛍光磁粉であるから、蛍光磁粉液中や探傷試験中に蛍光顔料が剥離したり、脱落したりし難いので剥離や脱落した蛍光顔料によるバックグラウンド現象が生じ難く、また、磁性粉末粒子表面に残存する蛍光顔料の割合が多いから、高輝度の欠陥指示模様が得られるため、微細な開口欠陥部や開口していない表面直下の欠陥を高い検出感度で検出することができる蛍光磁粉液を作製できる湿式磁粉探傷試験用蛍光磁粉の製造方法である。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、湿式磁粉探傷試験方法は、JIS-Z-2320に規格化されており、この試験方法は、磁化されている検査物、例えば、シャフトなどの鋼製部品、磁性体やビレットなどの鋼材、磁性体等に市販の湿式磁粉探傷試験用磁粉(四三酸化鉄粒子や純鉄粒子などの導磁性粒子に酢酸セルローズ系合成樹脂やビニルブチラール系合成樹脂などの合成樹脂バインダーを用いてルモゲンイエローS0790(BASF社製)やフェスタA(Swada社製)などの蛍光顔料を付着させてなる平均粒子径3~30μm(体積基準分布表示、以下、同じ)で真比重2~5g/cmの粉末(以下「磁粉」という)を水に分散させて調製した磁粉液を適用して、検査物の開口欠陥部(検査物の表面又は表面近傍に存在する微細なワレやピンホール)に磁粉液に分散している磁粉を集合させて欠陥指示模様を形成させ、この欠陥指示模様によって開口欠陥部を探傷する試験方法(以下、この試験方法を「湿式磁粉探傷試験」という)である。
【0003】
磁粉の製造方法には、当業者間において「粉砕法」と呼ばれているものと「噴霧法」と呼ばれるものがある。
【0004】
粉砕法とは、有機溶媒可溶性合成樹脂をバインダーとし、これを揮発性有機溶剤に溶解した溶液中に蛍光顔料を分散させて置き、これに磁性粉末を混合して練合せてペースト状物とし、当該ペースト状物を乾燥して塊状物とした後、ボールミルなどの粉砕機を用いて微粒子状にまで粉砕し、篩などによって分級して所望の粒径の蛍光磁粉を得る方法である。
【0005】
噴霧法とは、磁性粉末と蛍光顔料と水分散性若しくは水溶性合成樹脂からなるバインダーとを水に加えてペースト状物とし、当該ペースト状物をスプレーノズル又は遠心ディスクを用いて空気中に噴霧又は飛散させて乾燥造粒することによって、磁性粉末と蛍光顔料とが合成樹脂を介して付着した所望の粒径を備える球形の蛍光磁粉を得る方法である。
【0006】
蛍光磁粉は水等の分散液に分散させて蛍光磁粉液を作製するが、蛍光磁粉液中や探傷試験中に磁性粉末粒子表面から蛍光顔料が剥離したり、脱落したりすると、剥離や脱落した蛍光顔料が欠陥部以外の被検査物表面に付着して蛍光を発するので、欠陥指示模様が見え難くなるという、いわゆるバックグラウンド現象がおこり、欠陥部の検出感度が低下するという問題がある。
【0007】
また、蛍光顔料が剥離・脱落すると磁性粉末粒子表面を被覆する蛍光顔料が減少するので欠陥指示模様の輝度が低下し、欠陥部の検出感度が低下するという問題がある。
【0008】
そこで、磁性粉末粒子表面に蛍光顔料が強固に付着して、蛍光磁粉液中や探傷試験中において蛍光顔料が剥離・脱落し難いためバックグラウンド現象が生じ難く、また、磁性粉末粒子表面を被覆する蛍光顔料が高い割合で残存し、高輝度の欠陥指示模様が得られる検出感度が高い蛍光磁粉液を作製できる蛍光磁粉の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2004-101193
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1には、導磁性粒子と蛍光着色剤と結合剤を溶剤に溶解又は分散させてペースト状とした後、乾燥させ、この乾燥物を粉砕した蛍光磁粉と導磁性粒子と蛍光着色剤と合成樹脂エマルジョンを水に分散させたペースト状物を噴霧乾燥して製造した蛍光磁粉が記載されている。
【0011】
しかし、特許文献1記載の製造方法で製造した蛍光磁粉で蛍光磁粉液を作製すれば、蛍光磁粉液中において磁性粉末粒子表面の蛍光顔料が剥離・脱落し易く、また、探傷試験中においても、磁性粉末粒子表面の蛍光顔料が剥離したり、脱落したりし易いので欠陥指示模様の輝度が低くなり、また、バックグラウンド現象が生じ易いため、検出感度が低いという問題がある。
【0012】
本発明者らは、前記諸問題点を解決することを技術的課題とし、試行錯誤的な数多くの試作・実験を重ねた結果、メジアンが2μm以上、かつ、7μm以下の磁性粉末を20重量%以上、かつ、40重量%以下と、ガラス転移温度が10℃以下の水溶性樹脂含有エマルジョンの樹脂分を5重量%以上、かつ、12重量%以下と、蛍光顔料を5重量%以上、かつ、25重量%以下と水とを含有する混合物を造粒し、前記造粒した粒子を80℃以上、かつ、180℃以下で加熱処理して製造した蛍光磁粉であれば、磁性粉末粒子表面に水溶性樹脂を介して蛍光顔料が強固に付着した蛍光磁性粉になるため、蛍光磁粉液中や探傷試験中において蛍光顔料が剥離・脱落し難いので、バックグラウンド現象が生じ難く、また、磁性粉末粒子表面に高い割合で蛍光顔料が残存し、高輝度の欠陥指示模様が得られるから、高い検出感度で開口欠陥部や開口していない表面直下の欠陥部を検出できる蛍光磁粉液になるという刮目すべき知見を得て、前記技術的課題を達成したものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記技術的課題は、次のとおり本発明によって解決できる。
【0014】
本発明は、メジアンが2μm以上、かつ、7μm以下の磁性粉末を20重量%以上、かつ、40重量%以下と、ガラス転移温度が10℃以下の水溶性樹脂含有エマルジョンの樹脂分を5重量%以上、かつ、12重量%以下と、蛍光顔料を5重量%以上、かつ、25重量%以下と水とを含有する混合物を造粒し、前記造粒した粒子を80℃以上、かつ、180℃以下で加熱処理して製造する湿式磁粉探傷試験用蛍光磁粉の製造方法である。
【0015】
また、本発明は、前記混合物を噴霧して造粒する前記湿式磁粉探傷試験用蛍光磁粉の製造方法である。
【0016】
また、本発明は、前記混合物における前記磁性粉末と前記蛍光顔料と前記水溶性樹脂からなる固形分が65重量%以下である前記湿式磁粉探傷試験用蛍光磁粉の製造方法である。
【0017】
また、本発明は、前記混合物から造粒した粒子が、磁性粉末粒子表面に蛍光顔料が付着した複合粒子である前記湿式磁粉探傷試験用蛍光磁粉の製造方法である。
【0018】
また、本発明は、前記製造方法で製造された蛍光磁粉を分散させてなる湿式磁粉探傷試験用蛍光磁粉液である。
【発明の効果】
【0019】
本発明における蛍光磁粉は、メジアンが2μm~7μmの磁性粉末を20重量%~40重量%と、ガラス転移温度が10℃以下の水溶性樹脂含有エマルジョンの樹脂分を5重量%~12重量%と、蛍光顔料を5重量%~25重量%と水とを含有する混合物を造粒して、蛍光顔料が水溶性樹脂を介して磁性粉末粒子表面に付着した複合粒子を作製した後、前記複合粒子を80℃~180℃で加熱処理して製造するから、磁性粉末粒子表面に蛍光顔料が強固に付着した蛍光磁粉になる。
【0020】
本発明の製造方法による蛍光磁粉は、蛍光磁粉液中や探傷試験中に剥離・脱落する蛍光顔料が少ないから、剥離・脱落した蛍光顔料が欠陥部以外の被検査物表面に付着して蛍光を発するいわゆるバックグラウンド現象が生じ難い蛍光磁粉液を作製することができる。
【0021】
また、剥離・脱落する蛍光顔料が少ないので磁性粉末粒子表面に高い割合で蛍光顔料が残存し、高輝度の欠陥指示模様が得られるため、微細な開口欠陥部や開口していない表面直下の欠陥部であっても、検出することができる検出感度の高い蛍光磁粉液を作製することができる。
【0022】
特に、前記混合物をスラリー状にした後、噴霧法により造粒すれば、均質な粒子径の蛍光磁粉を作製できるので、さらに高い検出感度で微細な開口欠陥部や開口していない表面直下の欠陥部を検出することができる蛍光磁粉液を作製することができる。
【0023】
また、前記混合物中の磁性粉末と蛍光顔料と水溶性樹脂との合計である固形分が65重量%以下であると、噴霧法にて造粒するのに適した混合物になる。
【0024】
本発明による蛍光磁粉を分散させた蛍光磁粉液は、バックグラウンド現象が生じ難く、また、高輝度の欠陥指示模様が得られるので、高い検出感度で微細な開口欠陥部や開口していない表面直下の欠陥部を検出できる蛍光磁粉液である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】剥離水を比較した図である。
図2】剥離輝度の測定方法を表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明における蛍光磁粉は、磁性粉末と水溶性樹脂含有エマルジョンと蛍光顔料と水とを混合したスラリー状の混合物から複合粒子を造粒した後、複合粒子を80℃~180℃で加熱処理して作製する蛍光磁粉である。
【0027】
(磁性粉末)
本発明における混合物が含有する磁性粉末は特に限定されない。
磁性粉末の例として、還元鉄粉,電解鉄粉,γ-酸化第二鉄粉、四三酸化鉄粉を挙げることができる。
【0028】
磁性粉末粒子のメジアン径は2μm~7μmが好ましく、より好ましくは3μm~5μmである。
【0029】
メジアンが2μm未満であると、蛍光磁粉液の輝度が低くて開口欠陥部の検出感度が低下する虞があり、7μmを超えると、蛍光磁粉液が流れて磁粉模様が安定しない虞があるからである。
【0030】
混合物における磁性粉末の含有量は20重量%~40重量%が好ましく、さらに好ましくは30重量%~37重量%である。
【0031】
磁性粉末の含有量が20重量%未満であると、磁性粉末粒子表面に付着しない蛍光顔料の量が増えるので、欠陥部以外の被検査物表面に付着して蛍光を発するバックグラウンド現象が生じ易くなり、欠陥部の検出感度が低下する虞があるからである。
【0032】
また、40重量%を超えて含有すると、混合物における固形分が多くなり過ぎて、噴霧法にて造粒し難くなるためである。
【0033】
(水溶性樹脂含有エマルジョン)
本発明における混合物は、ガラス転移温度が10℃以下の水溶性樹脂を含有する水溶性樹脂含有エマルジョンを使用する。
【0034】
ガラス転移温度が10℃を超えると硬化し易くなり、噴霧後に水溶性樹脂の微粉末が析出する虞があるからである。
【0035】
ガラス転移温度が10℃以下の水溶性樹脂含有エマルジョンは特に限定されるものではない。
【0036】
本発明における水溶性樹脂含有エマルジョンとしては、アクリル酸エステルエマルジョン、スチレンアクリルエマルジョン、スチレンブタジエンエマルジョンを例示することができる。
【0037】
混合物が含有する水溶性樹脂含有エマルジョンの樹脂分は5重量%~12重量%が好ましく、より好ましくは6重量%~10重量%である。
【0038】
5重量%未満であると、複合粒子から剥離・脱落する蛍光顔料の量が増えるのでバックグラウンド現象が生じ易くなり、また、12重量%を超えて含有すると蛍光顔料と付着した水溶性樹脂の塊ができるので、いずれも検出感度が低下する虞があるからである。
【0039】
(蛍光顔料)
本発明における混合物は蛍光顔料を含有する。
【0040】
蛍光顔料は特に限定されるものではないが、ルモゲンイエローS0790(BASF社製)、フェスタA(Swada社製)を例示することができる。
【0041】
混合物における蛍光顔料の含有量は5重量%~25重量%が好ましく、より好ましくは10重量%~15重量%である。
【0042】
5重量%未満であると、欠陥指示模様の輝度が低くなるので検出感度が低下する虞があるからである。
【0043】
また、25重量%を超えて含有すると混合物における固形分が増加するので粘度が高くなり過ぎて噴霧法によって造粒し難くなるからである。
【0044】
混合物の粘度は100cP以下のスラリー状であることが好ましい。
噴霧法によって造粒し易いからである。
【0045】
混合物における磁性粉末と蛍光顔料と水溶性樹脂とからなる固形分の含有量は65重量%以下であることが好ましい。
【0046】
65重量%を超えると粘度が高くなり過ぎて噴霧法による造粒が困難になるからである。
【0047】
混合物はスプレードライヤ―を使用して、高温で空気中に霧状に噴霧して液滴から水分を飛ばして乾燥させることで造粒することができる。
【0048】
これにより、磁性粉末粒子表面に水溶性樹脂を介して蛍光顔料が付着した複合粒子を得ることができる。
【0049】
本発明における蛍光磁粉は複合粒子を加熱処理して作製する。
【0050】
加熱処理の温度は80℃~180℃であることが好ましく、さらに好ましくは、100℃~160℃である。
【0051】
加熱処理の温度が80℃未満であると、蛍光磁粉液中における蛍光顔料の剥離・脱落する量が低下せず、また、180℃を超えて加熱すると蛍光磁粉の輝度が低下して、いずれも検出感度が低下する虞があるからである。
【0052】
加熱処理は予め80℃~180℃に設定したオーブンで行うことができる。
【0053】
(蛍光磁粉液)
作製した蛍光磁粉を水や白灯油などの有機溶剤に分散させて蛍光磁粉液を作製することができる。
【0054】
蛍光磁粉液に含有させる蛍光磁粉は0.3g/L~2.0g/Lであることが好ましい。
高い検出感度で微細な開口欠陥部を検出することができるからである。
【0055】
本発明における蛍光磁粉液には、蛍光磁粉の分散性を高めるため、市販の湿式磁粉探傷試験用磁粉分散剤を添加しても良い。
【0056】
(湿式磁粉探傷試験方法)
本発明による蛍光磁粉を分散させた蛍光磁粉液を使用した湿式磁粉探傷試験の一態様を示す。
【0057】
被検査物は常法に従がって軸通電法によって磁化した後、蛍光磁粉液を適用し、暗所において紫外線灯を照射して現出する欠陥指示模様を観察し、欠陥部の数や大きさ等を測定する。
【0058】
本発明における蛍光磁粉液は幅0.02mm以上の開口欠陥部や開口していない表面直下ケトス7番の欠陥部を検出するのに好適に使用することができる。
【実施例
【0059】
本発明を実施例及び比較例を挙げてより詳しく説明するが、本発明はこれに限られるものではない。
【0060】
表に示す通りに、四三酸化鉄粉とアクリル酸エステルエマルジョンとメラミン系蛍光顔料(シンロイヒカラー5005/シンロイヒ株式会社製)と水とを混合してスラリー状の混合物を作製した。
【0061】
表中の「水溶性樹脂」の欄は混合物中におけるアクリル酸エステル樹脂のガラス転移温度(Tg)及び樹脂分の含有量(重量%)を示す。
【0062】
作製した混合物はスプレードライヤーで高温で空気中に霧状に噴霧して液滴から水分を飛ばして乾燥させて造粒した。
【0063】
得られた複合粒子は、そのまま加熱処理を行わないもの(以下「無加熱蛍光磁粉」という)と各表に記載の加熱処理を行うもの(以下「加熱蛍光磁粉」という)に分けた。
【0064】
(加熱処理)
予め加熱温度に設定したオーブンで20分間加熱した。
【0065】
(噴霧性)
スプレーガンで噴霧できたものを〇として評価し、水に分散できずに噴霧できなかったものを×として評価した。
【0066】
(検出感度)
60の角形鋼材にJISZ2320に規定されるA型試験片を貼り付けたものを軸通電法にて磁化しながら磁粉液を適用し、A型試験片の人工欠陥の検出状態を目視により観察して評価した。
【0067】
加熱蛍光磁粉の検出感度が、無加熱蛍光磁粉を分散させた蛍光磁粉液の検出感度と同等以上のものを〇として評価し、低下したものを×として評価した。
【0068】
(剥離輝度)
実施例及び比較例の各加熱蛍光磁粉又は無加熱蛍光磁粉0.5gを水1Lに分散剤(エコマグナ分散剤EC-4/マークテック株式会社製)を添加して分散させた。
【0069】
その後、図2に示す通り、磁石で蛍光磁粉を取り除いた水(以下「剥離水」という)を直径6mmの透明テフロン(登録商標)チューブに流し、テフロン(登録商標)チューブ外面に紫外線を照射し、放射光をフォトセンサで読み取った。
【0070】
本件明細書においては前記の方法によってフォトセンサで読み取った剥離水の輝度を剥離輝度という。
【0071】
実施例1の無加熱蛍光磁粉の剥離輝度は0.774であり、加熱蛍光磁粉の剥離輝度は0.174であった(図1)。
【0072】
以下の式にて剥離輝度の低下率を求めた。
(式)0.174/0.774×100=22.5%
【0073】
同様に、加熱蛍光磁粉の剥離輝度が、無加熱蛍光磁粉の剥離輝度と比べて低下率が50%以下になったものを〇として評価し、低下率が50%を超えるものを×として評価した。
【0074】
結果を表1及び表2に示す。
表中の「樹脂析出」とは噴霧後に水溶性樹脂の微粉末が発生したことを表す。
【0075】
実施例1~実施例3と比較例9の剥離水を図1に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
表1、表2及び図1の通り、本発明における加熱蛍光磁粉は水に分散させても蛍光顔料が剥離・脱落し難く、バックグラウンド現象が生じ難い蛍光磁粉液を作製できることが示された。
【0079】
また、80℃~180℃で加熱しても輝度が低下しないことが確認され、高輝度の欠陥指示模様を得られることが示された。
【0080】
したがって、本発明における蛍光磁粉を分散させた蛍光磁粉液は、検出感度の高い蛍光磁粉液になることが証明された。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明による蛍光磁粉は、磁性粉末粒子表面に蛍光顔料が強固に付着した蛍光磁粉なので、蛍光磁粉液中や探傷試験中に蛍光顔料が剥離・脱落し難いため、バックグラウンド現象が生じ難い蛍光磁粉液を作製できる。
また、蛍光顔料の剥離や脱落が少ないので、高輝度の欠陥指示模様が得られる蛍光磁粉液を作製できる。
したがって、本発明による蛍光磁粉を分散させた蛍光磁粉液は、微細な開口欠陥部や開口していない表面直下の欠陥部を高い検出感度で検出することができる。
よって、本発明の産業上の利用可能性は高い。
図1
図2