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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-20
(45)【発行日】2025-05-28
(54)【発明の名称】充電制御装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/04 20060101AFI20250521BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20250521BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20250521BHJP
【FI】
H02J7/04 L
H01M10/44 Q
H01M10/48 P
H01M10/48 301
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021104168
(22)【出願日】2021-06-23
(65)【公開番号】P2023003161
(43)【公開日】2023-01-11
【審査請求日】2024-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】曹 俊敏
(72)【発明者】
【氏名】大川内 亮平
(72)【発明者】
【氏名】加藤 弘崇
(72)【発明者】
【氏名】小鮒 慎吾
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-532936(JP,A)
【文献】特開平07-298512(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0270980(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/42-10/48
H02J7/00-7/12
H02J7/34-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電可能な蓄電池(30)と、
前記蓄電池へと電力を供給する充電器(31)と、を備えるシステム(10)に適用され、前記充電器から前記蓄電池への充電の実施及び停止を制御する充電制御装置(51)であって、
前記蓄電池の温度情報を取得する温度情報取得部と、
前記温度情報に基づいて算出される前記蓄電池の温度が高いほど、前記蓄電池のSOC上限値を低く算出する算出部と、
前記蓄電池のSOC情報を取得するSOC情報取得部と、
前記SOC情報に基づいて算出されるSOCが前記SOC上限値に達したか否かを判定するSOC判定部と、
前記SOCが前記SOC上限値に達したと判定された場合、前記蓄電池の温度が、前記SOCが前記SOC上限値に達したと判定された時点での前記蓄電池の温度よりも低い停止解除温度を下回るまでの間、前記充電器から前記蓄電池への充電を停止する停止部と、を備える充電制御装置。
【請求項2】
前記算出部は、
前記蓄電池の温度が温度閾値未満の場合、前記SOC上限値を所定値として算出し、
前記蓄電池の温度が前記温度閾値以上の場合、前記SOC上限値として、前記所定値よりも低い値であり、前記蓄電池の温度が高いほど低い値を算出する、請求項1に記載の充電制御装置。
【請求項3】
前記停止部により前記蓄電池への充電が停止された後において、前記蓄電池の温度が前記停止解除温度を下回ったことを条件として、前記蓄電池への充電を再開する充電再開部を備える請求項に記載の充電制御装置。
【請求項4】
前記充電再開部は、前記停止部により前記蓄電池に対する充電が停止された後、前記蓄電池の温度が前記停止解除温度を下回る時点よりも前において、ユーザの充電要求があると判定した場合、前記蓄電池への充電を再開する請求項に記載の充電制御装置。
【請求項5】
前記充電器から前記蓄電池への電力供給ができなくなる停電状態が解消したことを判定する第1判定部と、
前記第1判定部により前記停電状態が解消したと判定された場合、前記停止部による充電の停止中であるか否かを判定する第2判定部と、を備え、
前記充電再開部は、
前記第2判定部により充電の停止中ではないと判定された場合、前記蓄電池への充電を再開し、
前記第2判定部により充電の停止中であると判定された場合、前記蓄電池への充電を再開しない請求項3又は4に記載の充電制御装置。
【請求項6】
充電器(31)から充電可能な蓄電池(30)への充電の実施及び停止を制御するコンピュータ(51a)を備える充電制御装置(51)に適用されるプログラムであって、
前記コンピュータを、
前記蓄電池の温度情報を取得する温度情報取得部と、
前記温度情報に基づいて算出される前記蓄電池の温度が高いほど、前記蓄電池のSOC上限値を低く算出する算出部と、
前記蓄電池のSOC情報を取得するSOC情報取得部と、
前記SOC情報に基づいて算出されるSOCが前記SOC上限値に達したか否かを判定するSOC判定部と、
前記SOCが前記SOC上限値に達したと判定された場合、前記蓄電池の温度が、前記SOCが前記SOC上限値に達したと判定された時点での前記蓄電池の温度よりも低い停止解除温度を下回るまでの間、前記充電器から前記蓄電池への充電を停止する停止部と、して機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電制御装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
充電制御装置として、特許文献1には、充電可能な蓄電池を備えるシステムに適用され、蓄電池に対する充電の実施及び停止を制御するものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-95985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓄電池の温度が高い状態において、蓄電池が充電されることがある。この場合、蓄電池が劣化する可能性がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、蓄電池の劣化を抑制することができる充電制御装置及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、充電可能な蓄電池と、前記蓄電池へと電力を供給する充電器と、を備えるシステムに適用され、前記充電器から前記蓄電池への充電の実施及び停止を制御する充電制御装置であって、前記蓄電池の温度情報を取得する温度情報取得部と、前記温度情報に基づいて算出される前記蓄電池の温度が高いほど、前記蓄電池のSOC上限値を低く算出する算出部と、前記蓄電池のSOC情報を取得するSOC情報取得部と、前記SOC情報に基づいて算出されるSOCが前記SOC上限値に達したか否かを判定するSOC判定部と、前記SOCが前記SOC上限値に達したと判定された場合、前記SOCが前記SOC上限値に達したと判定された時点での前記蓄電池の温度よりも低い停止解除温度を下回るまでの間、前記充電器から前記蓄電池への充電を停止する停止部と、を備える。
【0007】
本発明では、SOC情報に基づいて算出されるSOCがSOC上限値に達した場合、蓄電池の充電が停止される。蓄電池の充電停止の判定に用いられるSOC上限値は、温度が高いほど低く算出される。これにより、蓄電池の充電を停止すべき高温状態において、蓄電池の充電停止が早期に実施される。蓄電池の充電が停止された後において、蓄電池の温度が停止解除温度を下回るまでの間、蓄電池の充電停止状態が継続される。停止解除温度は、算出されたSOCがSOC上限値に達したと判定された時点での蓄電池の温度よりも低く設定される。そのため、蓄電池の温度が十分に低減されるまで、蓄電池の充電停止状態が継続される。その結果、蓄電池の温度が高い状態において、蓄電池が充電されることを抑制でき、蓄電池の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】充電制御システムの構成図。
図2】コントローラが実施する処理の手順を示すフローチャート。
図3】上限値の算出方法の一例を示す図。
図4】監視ユニットが実施する処理の手順を示すフローチャート。
図5】コントローラが実施する処理の手順を示すフローチャート。
図6】充電制御の一例を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る充電制御装置を具体化した実施形態について、図面を参照しつつ説明する。充電制御装置は、充放電可能な蓄電池を搭載する電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド自動車(PHEV)に適用される。
【0010】
図1に示すように、充電制御システム10は、車両20及び電源装置40を備えている。車両20は、蓄電池30及び充電器31を備えており、車両20の外部には、電源装置40が設けられている。
【0011】
電源装置40は、外部電源を電力供給源として車両20の蓄電池30に電力を供給する。外部電源は、例えば100Vの単相交流の商用電源や200Vの三相交流の商用電源等である。
【0012】
蓄電池30は、単電池としての電池セルの直列接続体から構成される組電池であり、端子電圧が例えば数百Vとなるものである。電池セルとしては、例えば、リチウムイオン電池等の2次電池を用いることができる。蓄電池30には、充電器31から供給される電力が蓄えられる。また、蓄電池30には、図示しないモータジェネレータで発電された電力が蓄えられる。蓄電池30に蓄えられた電力は、モータジェネレータや、車両20の車室用空調装置等の駆動に用いられる。
【0013】
充電器31は、電源装置40の電力を変換して蓄電池30に供給することにより、蓄電池30の充電を行う。例えば、充電器31には、電源装置40から供給された交流電圧を直流電圧に変換するAC/DC回路と、変換された直流電圧を蓄電池30の充電可能な電圧に変圧するDC/DC回路が含まれている。
【0014】
電源装置40からは、充電ケーブル41が引き出されている。充電ケーブル41の先端側には、接続プラグ42が設けられている。
【0015】
車両20は、充電インレット32を備えている。充電インレット32は、電源装置40から充電器31に給電するための電力インターフェースである。充電インレット32には、接続プラグ42が接続される。これにより、充電器31は、充電インレット32、接続プラグ42及び充電ケーブル41を介して電源装置40に接続される。
【0016】
車両20は、監視ユニット50及びコントローラ51を備えている。監視ユニット50は、蓄電池30を構成する各電池セルの電流、端子電圧、内部抵抗、SOC、SOH及び温度等を監視する。
【0017】
コントローラ51は、マイコン51aを主体として構成されており、マイコン51aはCPUを備えている。コントローラ51が提供する機能は、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェアおよびそれを実行するコンピュータ、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、コントローラ51がハードウェアである電子回路によって提供される場合、それは多数の論理回路を含むデジタル回路、又はアナログ回路によって提供することができる。例えば、コントローラ51は、自身が備える記憶部としての非遷移的実体的記録媒体(non-transitory tangible storage medium)に格納されたプログラムを実行する。プログラムには、例えば、後述する図3図5等に示す処理のプログラムが含まれる。プログラムが実行されることにより、プログラムに対応する方法が実行される。記憶部は、例えば不揮発性メモリである。なお、記憶部に記憶されたプログラムは、例えば、インターネット等のネットワークを介して更新可能である。
【0018】
コントローラ51は、充電器31を制御することにより、充電器31から蓄電池30への充電の実施及び停止を切り替える。例えば、コントローラ51は、充電器31から蓄電池30への充電を実施する場合、充電器31が備えるAC/DC回路やDC/DC回路を駆動させる。一方、コントローラ51は、充電器31から蓄電池30への充電を停止する場合、AC/DC回路やDC/DC回路の駆動を停止させる。以下で説明するように、コントローラ51は、パイロット信号CPLTに基づいて充電器31を制御したり、ユーザの充電予約情報に基づいて充電器31を制御したりする。
【0019】
充電ケーブル41には、図示しないは発振器が設けられている。コントローラ51は、発振器によって生成されたパイロット信号CPLTに基づいて、充電器31を制御する。生成されたパイロット信号CPLTは、充電ケーブル41から接続プラグ42及び充電インレット32を介して、コントローラ51に入力される。
【0020】
詳しくは、コントローラ51は、パイロット信号CPLTに基づいて、接続プラグ42が充電インレット32に接続されているか否かを判定したり、電源装置40から充電器31への電力供給ができなくなる停電状態が発生しているか否かを判定したりする。コントローラ51は、接続プラグ42が充電インレット32に接続されていないと判定した場合や、停電が発生したと判定した場合、充電器31から蓄電池30への充電を停止させる。一方、コントローラ51は、接続プラグ42が充電インレット32に接続されていると判定した場合や、停電状態が解消したと判定した場合、充電器31から蓄電池30への充電を実施させる。
【0021】
コントローラ51は、接続プラグ42が充電インレット32に接続されている状態において、ユーザの充電予約情報に基づいて、充電器31を制御する。ユーザは、携帯電話等の携帯型通信デバイスを用いて、車両20のコントローラ51に充電予約情報を入力する。ユーザの充電予約情報には、充電希望日時、充電量及び充電時間などが含まれる。コントローラ51は、ユーザの充電要求に基づいて算出した充電開始時間が経過するまで充電器31から蓄電池30への充電を停止し、充電開始時間が経過すると充電器31から蓄電池30への充電を実施する。
【0022】
なお、ユーザの充電予約情報には、車室用空調装置の駆動開始時間が含まれてもよい。この場合、コントローラ51は、車室用空調装置の駆動開始時間が経過するまで充電器31から蓄電池30への充電を停止し、駆動開始時間が経過すると充電器31から蓄電池30への充電を実施する。
【0023】
コントローラ51は、充電器31及び監視ユニット50と通信可能とされている。詳しくは、コントローラ51は、例えばCAN等の通信ネットワークにより充電器31及び監視ユニット50と相互に通信可能となっており、各種データが互いに共有できるものとなっている。これにより、コントローラ51は、充電器31を制御したり、蓄電池30を構成する各電池セルのSOCや温度を取得したりする。また、監視ユニット50は、コントローラ51が起動されているか否かの情報を取得する。
【0024】
ところで、充電器31から蓄電池30への充電が実施され、蓄電池30のSOCが高い状態となることに起因して、蓄電池30を構成する電池セルが劣化してしまうことがある。例えば、蓄電池30のSOCが高い状態とは、蓄電池30のSOCが80%~100%の状態である。
【0025】
電池セルの劣化は、蓄電池30の温度が低い状態よりも、蓄電池30の温度が高い状態の方が生じ易い。例えば、蓄電池30の温度が低い状態とは、蓄電池30の温度が30度付近の状態であり、蓄電池30の温度が高い状態とは、蓄電池30の温度が60度付近の状態である。
【0026】
蓄電池30の温度が高い状態において、充電器31から蓄電池30への充電が実施されることがある。例えば、車両20の走行中に蓄電池30の温度が上昇し、上昇した温度が低下するよりも前において、蓄電池30が充電されることがある。この場合、蓄電池30を構成する電池セルが劣化する可能性がある。
【0027】
本実施形態では、車両20は、蓄電池30を冷却するためのアクチュエータを備えていない。例えば、アクチュエータとしては、蓄電池30を空冷するための空気の流れを制御するファン、又は蓄電池30を水冷するための冷却水を循環させるポンプが挙げられる。この場合、蓄電池30の温度が高い状態から低い状態へと移行するまでには時間を要する。そのため、蓄電池30の温度が高い状態において、充電器31から蓄電池30への充電が実施される可能性が高くなる。
【0028】
そこで、本実施形態では、蓄電池30の温度が高い状態において、充電器31から蓄電池30への充電が制限されることとした。詳しくは、蓄電池30の温度に基づいて上限値SOCmが算出され、蓄電池30のSOCが算出された上限値SOCmに達した場合、充電器31から蓄電池30への充電が停止される。
【0029】
図2に、コントローラ51が実行する充電器31の充電制御処理の手順を示す。この処理は所定周期で繰り返し実施される。
【0030】
ステップS10では、蓄電池30を構成する各電池セルのSOC及び温度を取得する。本実施形態において、コントローラ51は、取得した各SOCのうち最大値を比較値SOCrとして算出する。また、コントローラ51は、取得した各温度のうち最大値を電池温度Tb1として算出する。本実施形態において、ステップS10が「SOC情報取得部」及び「温度情報取得部」に相当する。
【0031】
ステップS11では、電池温度Tb1に基づいて、上限値SOCmを算出する。図3に、上限値SOCmの算出方法の一例を示す。コントローラ51は、電池温度Tb1が温度閾値TH未満の場合、上限値SOCmを所定値Scにする。この場合、充電器31から蓄電池30への充電が、蓄電池30のSOCが所定値Scに達するまで実施される。所定値Scは、蓄電池30のSOCが高い状態とされる値であり、例えば80%~100%である。温度閾値THは、例えば30度である。一方、コントローラ51は、電池温度Tb1が温度閾値TH以上の場合、電池温度Tb1が高いほど、上限値SOCmを低く算出する。この場合、充電器31から蓄電池30への充電が、所定値Scよりも低い上限値SOCmに達するまで実施される。そのため、充電器31から蓄電池30への充電が蓄電池30のSOCが高い状態になるよりも前に停止される。
【0032】
なお、コントローラ51は、各電池セルの温度のうち電池温度Tb1と、上限値SOCmとが予め対応付けられた対応情報(例えば、マップ情報又は数式情報)を用いて、上限値SOCmを算出すればよい。本実施形態において、ステップS11が「算出部」に相当する。
【0033】
図2の説明に戻り、ステップS12では、比較値SOCrが上限値SOCmに達したか否かを判定する。具体的には、比較値SOCrが上限値SOCm未満であると判定した場合、ステップS13に進む。一方、コントローラ51は、比較値SOCrが上限値SOCm以上であると判定した場合、ステップS16に進む。本実施形態において、ステップS12が「SOC判定部」に相当する。
【0034】
ステップS13では、充電器31から蓄電池30への充電を継続する。ステップS14では、蓄電池30が満充電状態か否かを判定する。満充電状態か否かの判定には、各電池セルの電流、電圧を用いればよい。ステップS14において、蓄電池30が満充電状態でないと判定した場合、本処理を終了する。一方、ステップS14において、蓄電池30が満充電状態であると判定した場合、ステップS15に進む。ステップS15では、充電器31から蓄電池30への充電を停止する。
【0035】
ステップS16では、第1信号Sg1の論理をLからHに切り替える。第1信号Sg1は、論理Lによって蓄電池30を構成する各電池セルの温度監視要求がないことを示し、論理Hによって温度監視要求があることを示す。そのため、監視ユニット50に対して論理Hの第1信号Sg1が通知されることにより、蓄電池30を構成する各電池セルの温度監視要求があると通知される。その後、ステップS15に進む。なお、本実施形態において、ステップS12及びステップS15の処理が「停止部」に相当する。
【0036】
コントローラ51は、第1信号Sg1の論理をLからHに切り替えた場合、スリープモードに移行する。スリープモードとは、コントローラ51で消費される電力を最小限にしつつ、コントローラ51に起動要求があった場合に速やかに起動できる状態である。
【0037】
監視ユニット50は、コントローラ51から論理Hの第1信号Sg1が通知されたと判定した場合、間欠起動モードに移行する。間欠起動モードとは、監視ユニット50で消費される電力を低減すべく、監視ユニット50が所定の時間間隔で自ら起動する状態である。例えば、監視ユニット50は、間欠起動モードにおいて、1時間毎に起動する。
【0038】
次に、間欠起動モードにおける監視ユニット50の動作について説明する。
【0039】
図4に、間欠起動モードにおいて、監視ユニット50が実施する処理の手順を示す。この処理は所定周期で繰り返し実施される。
【0040】
ステップS20では、間欠起動モードであるか否かを判定する。例えば、間欠起動モードであるか否かの判定は、コントローラ51が既に起動しているか否かを判定することにより行う。コントローラ51が既に起動している場合、自ら起動したのではないと判定し、間欠起動モードではないと判定する。一方、コントローラ51が未だ起動していない場合、自ら起動したと判定し、間欠起動モードであると判定する。
【0041】
ステップS20において否定判定した場合、ステップS21に進む。ステップS21では、起動モードに移行する。起動モードでは、常時、蓄電池30を構成する各電池セルの電流、端子電圧、SOC、SOH及び温度等を監視する。
【0042】
一方、ステップS20において肯定判定した場合、ステップS22に進む。ステップS22では、第1信号Sg1の論理がHであるか否かを判定する。第1信号Sg1の論理がHであると判定した場合、蓄電池30を構成する各電池セルの温度監視要求があると判定する。一方、第1信号Sg1の論理がLであると判定した場合、蓄電池30を構成する各電池セルの温度監視要求がないと判定する。
【0043】
ステップS22において否定判定した場合、ステップS23に進む。ステップS23では、間欠起動モードに設定し、本処理を終了する。この場合、所定時間経過後に自ら起動し、ステップS20の処理を再び行う。
【0044】
一方、ステップS22において肯定判定した場合、ステップS24に進む。ステップS24では、各電池セルの温度を検出し、検出した各電池セルの温度のうち最大値を監視温度Tb2とする。監視温度Tb2が停止解除温度Tc以下であるか否かを判定する。例えば、停止解除温度Tcは、温度閾値TH以下の温度である。ステップS24において否定判定した場合、ステップS23に進む。一方、ステップS24において肯定判定した場合、ステップS25に進む。
【0045】
ステップS25では、第2信号Sg2の論理をLからHに切り替える。第2信号Sg2は、論理Lによって充電器31から蓄電池30への充電再開要求がないことを示し、論理Hによって充電再開要求があることを示す。そのため、第2信号Sg2の論理をLからHに切り替えることにより、コントローラ51に対して充電器31から蓄電池30への充電の再開要求があることが通知される。ステップS26では、第2信号Sg2の送信継続期間が経過したか否かを判定する。つまり、送信継続期間の間において、コントローラ51に対して、論理Hによる第2信号Sg2の通知が継続される。第2信号Sg2の送信継続期間が経過した場合、ステップS23に進む。コントローラ51は、論理Hによる第2信号Sg2の通知により起動される。
【0046】
続いて、充電器31から蓄電池30への充電を再開する際のコントローラ51の動作について説明する。
【0047】
コントローラ51は、第2信号Sg2の論理がHとされることにより起動したか否かを判定する。コントローラ51は、第2信号Sg2の論理がHとされることにより起動したと判定した場合、充電器31から蓄電池30への充電の再開要求があると判定する。この場合、コントローラ51は、充電器31から蓄電池30への充電を再開する。一方、コントローラ51は、第2信号Sg2の論理がHとされることにより起動したのではないと判定した場合、充電器31から蓄電池30への充電の再開要求がないと判定する。この場合、コントローラ51は、スリープモードに移行し、充電器31から蓄電池30への充電の停止状態を継続する。
【0048】
本実施形態では、車両20は蓄電池30を冷却するためのアクチュエータを備えていないため、蓄電池30の温度は外部への放熱により徐々に低減される。そのため、充電器31から蓄電池30への充電が停止された場合、蓄電池30への充電が再開されるまでに時間を要する可能性がある。この場合、ユーザの判断により蓄電池30への充電が要求され得る。そこで、本実施形態では、充電器31から蓄電池30への充電の再開要求がないと判定された場合でも、ユーザの充電要求がある場合において、コントローラ51が起動され、蓄電池30への充電が再開される。
【0049】
例えば、ユーザの充電要求には、既に充電インレット32に接続されている接続プラグ42が接続し直されることや、充電予約情報が入力されることが含まれる。この場合、コントローラ51は、充電器31から蓄電池30への充電を実施する。
【0050】
電源装置40から充電器31への電力供給ができなくなる停電状態が発生し得る。発生した停電状態が解消した場合、停電状態が解消したことを示すパイロット信号CPLTが生成され、コントローラ51が起動される。この場合、充電器31から蓄電池30への充電が停止された後、蓄電池30の温度が停止解除温度Tcを下回ることによる充電再開よりも前において、蓄電池30への充電が再開されてしまう。
【0051】
そこで、本実施形態では、コントローラ51は、停電状態が解消したと判定した場合、停電前に各電池セルの温度の監視要求があったことを監視ユニット50に対して通知していたか否かを判定する。本実施形態では、コントローラ51は、監視ユニット50との通信履歴において、第1信号Sg1の論理がHか否かを判定する。コントローラ51は、停電前において第1信号Sg1の論理がLであったと判定した場合、停電前において各電池セルの温度の監視要求がなかったと判定する。この場合、コントローラ51は、充電器31から蓄電池30への充電を実施する。一方、コントローラ51は、停電前において第1信号Sg1の論理がHであったと判定した場合、停電前において各電池セルの温度の監視要求があったと判定する。この場合、コントローラ51は、充電器31から蓄電池30への充電停止を継続する。
【0052】
図5に、コントローラ51が充電器31から蓄電池30への充電を再開する処理の手順を示す。この処理は所定周期で繰り返し実施される。
【0053】
ステップS31では、第2信号Sg2の論理がHとされることにより起動したか否かを判定する。ステップS31において肯定判定した場合、ステップS32に進む。ステップS32では、第1信号Sg1の論理をHからLに切り替える。これにより、蓄電池30を構成する各電池セルの温度の監視要求を取り下げる。この場合、監視ユニット50により、蓄電池30を構成する各電池セルの電流、端子電圧、内部抵抗、SOC、SOH及び温度等が常時監視される。
【0054】
ステップS33では、蓄電池30への充電再開の準備が完了したか否かを判定する。例えば、電源装置40から充電器31への電力供給ができなくなる停電状態が発生している場合、蓄電池30への充電を再開することができないため、停電状態が解消するまで待機する。停電状態が解消した場合、蓄電池30への充電再開の準備が完了したと判定する。ステップS34では、蓄電池30への充電を再開する。
【0055】
一方、ステップS31において否定判定した場合、ステップS35に進む。ステップS35では、ユーザの充電要求を受信したことにより起動したか否かを判定する。ステップS35において肯定判定した場合、ステップS32に進む。この場合、ステップS33を経て、ステップS34において蓄電池30への充電を再開する。なお、本実施形態において、ステップS31からステップS35までの処理が「充電再開部」に相当する。
【0056】
一方、ステップS35において否定判定した場合、ステップS36に進む。ステップS36では、停電状態が解消したことにより起動したか否かを判定する。ステップS36において否定判定した場合、ステップS37に進む。ステップS37では、スリープモードに移行する。一方、ステップS36において肯定判定した場合、ステップS38に進む。なお、本実施形態において、ステップS36の処理が「第1判定部」に相当する。
【0057】
ステップS38では、監視ユニット50との通信履歴において、第1信号Sg1の論理がHか否かを判定する。ステップS38において否定判定した場合、ステップS33に進む。この場合、ステップS33を経て、ステップS34において蓄電池30への充電を再開する。一方、ステップS38において肯定判定した場合、ステップS37に進む。この場合、蓄電池30への充電停止を継続する。なお、本実施形態において、ステップS38の処理が「第2判定部」に相当する。
【0058】
図6に、充電制御の一例を示す。図6は、蓄電池30への充電が停止された後、電池セルの温度が停止解除温度Tcを下回ることにより充電が再開される場合を示す。図6において、(a)は各電池セルの温度のうち最大値の推移を示し、(b)は比較値SOCrと、上限値SOCmとの推移を示し、(c)は蓄電池30の充電状態を示し、(d)は第1信号Sg1の推移を示し、(e)は第2信号Sg2の推移を示し、(f)は監視ユニット50の状態を示す。
【0059】
時刻t1において、比較値SOCrが、ステップS11の処理により算出された上限値SOCmに到達する。これにより、ステップS12の処理において肯定判定がなされる。そのため、ステップS16の処理において第1信号Sg1の論理がLからHに切り替えられるとともに、ステップS15の処理において蓄電池30の充電が停止される。時刻t1以降では、監視ユニット50は間欠起動モードに設定される。
【0060】
時刻t2において、監視ユニット50が自ら起動し、各電池セルの温度監視を行う。時刻t2では、各電池セルの温度のうち最大値が停止解除温度Tcを下回り、ステップS24の処理において肯定判定がなされる。これにより、ステップS25の処理において第2信号Sg2の論理がLからHに切り替えられる。
【0061】
時刻t3において、ステップS32の処理において第1信号Sg1がHからLに切り替えられる。時刻t3では、ステップS11の処理において上限値SOCmが算出される。この場合、時刻t3での電池温度Tb1は、時刻t1での各電池セルの温度よりも低減されているため、時刻t3での上限値SOCmは、時刻t1での上限値SOCmよりも高くなる。そのため、ステップS34の処理において蓄電池30への充電が再開されても、ステップS12の処理において再び肯定判定がなされることはない。
【0062】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0063】
比較値SOCrが上限値SOCmに達した場合、蓄電池30への充電が停止される。蓄電池30への充電停止の判定に用いられる上限値SOCmは、電池温度Tb1が高いほど低く算出される。これにより、蓄電池30への充電を停止すべき高温状態において、蓄電池30への充電停止が早期に実施される。蓄電池30への充電が停止された後において、監視温度Tb2が停止解除温度Tcを下回るまでの間、蓄電池30の充電停止状態が継続される。停止解除温度Tcは、比較値SOCrが上限値SOCmに達したと判定された時点での蓄電池30の温度よりも低く設定される。そのため、蓄電池30の温度が十分に低減されるまで、蓄電池30の充電停止状態が継続される。その結果、蓄電池30の温度が高い状態において、蓄電池30が充電されることを抑制でき、蓄電池30を構成する電池セルの劣化を抑制することができる。
【0064】
監視温度Tb2が停止解除温度Tcを下回ったことを条件として、蓄電池30への充電が再開される。この場合、蓄電池30の温度が十分に低減されているため、蓄電池30への充電が再開されても、蓄電池30を構成する電池セルの劣化が促進される可能性は低い。そのため、各電池セルの劣化を抑制しつつ、蓄電池30の充電を再開することができる。
【0065】
ユーザの充電要求があった場合、監視温度Tb2の温度が停止解除温度Tcを下回る時点よりも前であったとしても、蓄電池30への充電が再開される。これにより、ユーザの充電要求を優先して、蓄電池30を充電することができる。
【0066】
停電状態が解消されたことによりコントローラ51が起動されたと判定された場合、監視ユニット50とコントローラ51との間の通信履歴において、第1信号Sg1の論理がHか否かが判定される。第1信号Sg1の論理がLであると判定された場合、蓄電池30への充電が再開される。一方、第1信号Sg1の論理がHであると判定された場合、蓄電池30への充電が再開されない。そのため、蓄電池30への充電の停止状態において、監視温度Tb2が停止解除温度Tcを下回っていないにもかかわらず、蓄電池30への充電が再開されてしまう事態の発生を抑制することができる。
【0067】
<その他の実施形態>
上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0068】
・ステップS10の処理において、SOC情報として、蓄電池30を構成する各電池セルのSOCに代えて、例えば、各電池セルの電流、端子電圧及び内部抵抗を取得してもよい。この場合、取得したSOC情報に基づいて、各電池セルのSOCのうち最大値である比較値SOCrを算出してもよい。
【0069】
例えば、SOCの算出には、開放端電圧(OCV)に基づく推定法や、電流積算による算出法を用いればよい。開放端電圧に基づく推定法では、各電池セルの開放端電圧を取得し、取得した開放端電圧とSOCとの対応関係を表すマップを用いて、SOCを推定する。電流積算による算出法では、各電池セルに流れる充放電電流を取得し、取得した充放電電流を計算処理することによりSOCを算出する。これらの方法によりSOCを算出する場合には、各電池セルの劣化度合いを推定するパラメータとして内部抵抗を考慮してもよい。
【0070】
・ステップS10の処理において、蓄電池30を構成する各電池セルの温度に代えて、他の温度情報を取得してもよい。この場合、取得した温度情報に基づいて、蓄電池30を構成する各電池セルの温度を推定してもよい。温度の推定には、種々の温度推定手段を採用することが可能である。
【0071】
・ステップS10の処理において、電池温度Tb1として、各電池セルの温度のうち最大値が取得されることに代えて、各電池セルの温度の平均値が取得されてもよい。
【0072】
・ステップS10の処理において、比較値SOCrとして、各電池セルのSOCのうち最大値が取得されることに代えて、各電池セルのSOCの平均値が取得されてもよい。
【0073】
・ステップS24の処理において、監視温度Tb2として、検出された各電池セルの温度のうち最大値を用いることに代えて、検出された各電池セルの温度の平均値を用いてもよい。
【0074】
・蓄電池30は組電池を構成していなくてもよい。
【0075】
・車両20は、蓄電池30を冷却するためのアクチュエータを備えていてもよい。
【0076】
・充電制御システム10は、車両に限らず、例えば、航空機又は船舶に適用されてもよい。また、充電制御システム10の適用先は、車両、航空機又は船舶等の移動体に限らない。
【0077】
・本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0078】
30…蓄電池、31…充電器、51…コントローラ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6