(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-20
(45)【発行日】2025-05-28
(54)【発明の名称】コア基板および印刷配線板
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20250521BHJP
【FI】
H05K3/46 N
H05K3/46 G
(21)【出願番号】P 2021174258
(22)【出願日】2021-10-26
【審査請求日】2024-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】福島 公治
【審査官】荒木 崇志
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-239185(JP,A)
【文献】特開2017-228727(JP,A)
【文献】特開2018-107172(JP,A)
【文献】特開2004-095597(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に開口する孔部を有した、平板状の基材と、
前記孔部の内壁面に位置するスルーホール導体を含み、前記内壁面から前記基材の表面にかけて延在する一体構造を有する表面導体層と、
前記基材の前記孔部の内部に位置する絶縁部材と、
該絶縁部材および前記表面導体層を被覆する導体層と、
を備え、
前記絶縁部材の端面は、前記孔部の内部において、前記基材の前記表面よりも前記基材の内部側に位置しており、
前記導体層は、前記孔部の内部のうち前記絶縁部材の前記端面を底面とする凹部を埋めている
蓋部と、前記表面導体層のうち前記基材の前記表面に位置する部分を被覆する表層導体部と、を有し、
前記基材の前記表面に垂直な方向から見て、前記表面導体層の端部と、前記導体層の前記表層導体部の端部とが揃っている、
コア基板。
【請求項2】
前記絶縁部材の前記端面のうち前記孔部の内壁面に当接する部分が、前記基材の前記表面よりも前記基材の内部側に位置している、請求項1に記載のコア基板。
【請求項3】
前記絶縁部材の前記端面は、前記基材の前記表面と平行である、請求項1または請求項2に記載のコア基板。
【請求項4】
前記基材の前記表面に垂直な厚み方向についての前記
蓋部の厚みは、前記厚み方向についての前記
表層導体部の厚みよりも厚い、
請求項1~請求項3のいずれか1つに記載のコア基板。
【請求項5】
前記基材は、第1面と、該第1面とは反対側の第2面とを有し、
前記孔部は、前記基材の前記第1面と前記第2面との間を貫通する貫通孔であり、
前記絶縁部材の前記第1面側の第1の前記端面は、前記第1面よりも前記基材の内部側に位置しており、
前記絶縁部材の前記第2面側の第2の前記端面は、前記第2面よりも前記基材の内部側に位置しており、
第1の前記導体層および第2の前記導体層を備え、
前記第1の導体層は、前記孔部の内部のうち前記絶縁部材の前記第1の端面を底面とする第1の前記凹部を埋めており、
前記第2の導体層は、前記孔部の内部のうち前記絶縁部材の前記第2の端面を底面とする第2の前記凹部を埋めている、
請求項1~請求項4のいずれか1つに記載のコア基板。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか1つに記載の前記コア基板と、
前記コア基板に積層された少なくとも1つのビルドアップ層と、
を備え、
前記少なくとも1つのビルドアップ層は、前記コア基板のうち、前記導体層により埋められている前記凹部が設けられている側に積層されている、
印刷配線板。
【請求項7】
前記ビルドアップ層は、前記導体層に電気的に接続されたビア導体を有し、
前記ビア導体のうち前記導体層に当接している部分が、前記基材の前記表面に垂直な方向から見て前記凹部と重なる範囲内にある、請求項6に記載の印刷配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コア基板および印刷配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コア基板の少なくとも一方の面にビルドアップ層が積層された印刷配線板が開示されている(例えば、特許文献1)。印刷配線板に用いられるコア基板には、このコア基板を貫通するスルーホール導体が設けられている。スルーホール導体は、コア基板を貫通する貫通孔の内壁面に形成された筒状の導電体であり、コア基板の表面と裏面との間を電気的に接続する。スルーホール導体の内部の円柱状の空間には絶縁部材が充填されている。絶縁部材は、その両端面がコア基板の表裏面と同一面となるように(面一となるように)、スルーホール導体内に充填されている。コア基板の表裏面には、絶縁部材の端面を覆う範囲にめっき膜(以下、「蓋めっき膜」と記す)が形成されている。
【0003】
ビルドアップ層には、厚み方向の電気的な導通を行うためのビア導体が設けられている。このビア導体がコア基板の表裏面の蓋めっき膜に接続されることで、ビルドアップ層のビア導体と、コア基板のスルーホール導体とが電気的に接続される。ビア導体は、コア基板に積層されたビルドアップ層にレーザによってビア下穴を開け、めっき処理によりビア下穴に導電体を埋める方法で形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、平面視でスルーホール導体と重なる位置にビア導体を形成する場合には、ビア下穴の形成のためのレーザによって、コア基板上の蓋めっき膜に孔が開いてしまう場合がある。蓋めっき膜に孔が開くと、ビア導体との電気的な接続強度が不十分となったり、ビア導体を形成するためのめっき処理において、スルーホール導体内の絶縁部材が処理液にさらされて、所望の形状のビア導体が形成されなくなったりする。このように、上記の従来技術には、コア基板に対する電気的な接続の信頼性が低下しやすいという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、
表面に開口する孔部を有した、平板状の基材と、
前記孔部の内壁面に位置するスルーホール導体を含み、前記内壁面から前記基材の表面にかけて延在する一体構造を有する表面導体層と、
前記基材の前記孔部の内部に位置する絶縁部材と、
該絶縁部材および前記表面導体層を被覆する導体層と、
を備え、
前記絶縁部材の端面は、前記孔部の内部において、前記基材の前記表面よりも前記基材の内部側に位置しており、
前記導体層は、前記孔部の内部のうち前記絶縁部材の前記端面を底面とする凹部を埋めている蓋部と、前記表面導体層のうち前記基材の前記表面に位置する部分を被覆する表層導体部と、を有し、
前記基材の前記表面に垂直な方向から見て、前記表面導体層の端部と、前記導体層の前記表層導体部の端部とが揃っている、
コア基板である。
【0007】
本開示の一態様は、
上記のコア基板と、前記コア基板に積層された少なくとも1つのビルドアップ層と、
を備え、
前記少なくとも1つのビルドアップ層は、前記コア基板のうち前記導体層により埋められている前記凹部が設けられている側に積層されている印刷配線板である。
【発明の効果】
【0008】
本開示の内容によれば、コア基板に対する電気的な接続の信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3A】コア基板の製造方法を説明する断面図である。
【
図3B】コア基板の製造方法を説明する断面図である。
【
図3C】コア基板の製造方法を説明する断面図である。
【
図3D】コア基板の製造方法を説明する断面図である。
【
図3E】コア基板の製造方法を説明する断面図である。
【
図3F】コア基板の製造方法を説明する断面図である。
【
図5A】印刷配線板の製造方法を説明する断面図である。
【
図5B】印刷配線板の製造方法を説明する断面図である。
【
図5C】印刷配線板の製造方法を説明する断面図である。
【
図6A】比較例に係るコア基板の拡大断面図である。
【
図6B】比較例に係るコア基板の拡大断面図である。
【
図7】変形例1に係るコア基板の拡大断面図である。
【
図8】変形例2に係るコア基板の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下で参照する各図は、説明の便宜上、実施形態を説明する上で必要な主要部材のみを簡略化して示したものである。したがって、本開示のコア基板1および印刷配線板3は、参照する各図に示されていない任意の構成部材を備え得る。また、各図中の部材の寸法は、実際の構成部材の寸法および寸法比率などを忠実に表したものではない。
【0011】
〔コア基板の構成〕
図1を参照して、本実施形態に係るコア基板1の構成を説明する。
以下では、コア基板1の厚さ方向をZ方向とするXYZ直交座標系によりコア基板1および印刷配線板3(
図4参照)の各部の向きを説明する。また、コア基板1および印刷配線板3を構成する各層の+Z方向を向く面を「上面」とも記し、-Z方向を向く面を「下面」とも記す。また、Z方向を「厚み方向」とも記す。また、コア基板1または印刷配線板3をZ方向から見ることを「平面視」と記す。
【0012】
コア基板1は、平板状の基材10と、基材10が有する貫通孔101(孔部)の内部に位置する絶縁部材20と、第1の導体層30aと、第2の導体層30bと、を備える。以下では、第1の導体層30aおよび第2の導体層30bのうち任意の一方を指す場合には「導体層30」と記す。
【0013】
基材10は、絶縁層111~113と、内部導体層121と、表面導体層122、123と、を備える。
【0014】
絶縁層111~113は、Z方向に積層されている。詳しくは、絶縁層111の上面に絶縁層112が積層されており、絶縁層111の下面に絶縁層113が積層されている。基材10が有する絶縁層の数は3層に限らず、2層以下または4層以上であってもよい。絶縁層111~113には、これらの絶縁層111~113を貫通する貫通孔110が設けられている。貫通孔110の形状は、例えば平面視で円形の円筒形状であってもよい。
【0015】
絶縁層111~113の材質としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂、ポリフェニレンオキシド(PPO)樹脂、シアネートエステル樹脂などの有機樹脂などが挙げられる。これらの有機樹脂は2種以上を混合して用いてもよい。ただし、絶縁層111~113の材質はこれらに限定されず、絶縁性を有する他の材質であってもよい。また、絶縁層111~113には、ガラスクロスなどの補強材が配合されていてもよい。また、絶縁層111~113には、水酸化アルミニウム、シリカまたは硫酸バリウムなどの無機充填剤(無機粒子)が配合されてもよい。
【0016】
内部導体層121は、絶縁層111の上面および下面に形成されており、配線パターンをなしている。内部導体層121の材質は、例えば銅であってもよい。
【0017】
表面導体層122は、絶縁層112の上面および絶縁層113の下面に形成されている。表面導体層123は、平面視で表面導体層122と重なるように表面導体層122に積層されている部分と、貫通孔110の内壁面に形成された部分とを有する。表面導体層122、123の材質は、例えば銅であってもよい。表面導体層122を第1表面導体層122といい、表面導体層123を第2表面導体層123という場合がある。
【0018】
表面導体層123(第2表面導体層123)のうち表面導体層122(第1表面導体層122)に積層されている部分と、表面導体層122とは、絶縁層112、113の表面において配線パターンをなしている。基材10の上面のうち、配線パターンをなしている表面導体層123の表面が、基材10の第1面S1に相当する。また、基材10の下面のうち、配線パターンをなしている表面導体層123の表面が、基材10の第2面S2に相当する。第1面S1および第2面S2は、X-Y平面に平行である。
【0019】
表面導体層123のうち貫通孔110の内壁面に形成された部分は、絶縁層112の上面に形成された配線と、絶縁層113の下面に形成された配線とを電気的に接続するスルーホール導体123hとして機能する。本実施形態では、絶縁層111~113に設けられた貫通孔110は円柱形状であるため、スルーホール導体123hは、貫通孔110の内壁面に沿う円筒形状を有する。よって、スルーホール導体123hの内壁面は、貫通孔110より内径が小さい貫通孔101をなす。したがって、貫通孔101も円柱形状を有する。貫通孔101は、第1面S1と第2面S2との間を貫通している。スルーホール導体123hの厚さは、配線パターンをなしている表面導体層122および表面導体層123の厚さの合計よりも薄い。
【0020】
絶縁部材20は、貫通孔101の内部、すなわちスルーホール導体123hの内部の一部を埋めている。絶縁部材20の材質は、例えばエポキシ樹脂などの有機樹脂であってもよい。絶縁部材20の+Z方向側の第1の端面21aは、貫通孔101の開口が設けられている基材10の表面(すなわち、第1面S1)よりも基材10の内部側(ここでは、-Z方向側)に位置している。また、絶縁部材20の-Z方向側の第2の端面21bは、貫通孔101の開口が設けられている基材10の表面(すなわち、第2面S2)よりも基材10の内部側(ここでは、+Z方向側)に位置している。
【0021】
これにより、貫通孔101の内部のうち+Z方向側の開口の近傍には、第1の端面21aを底面とする凹部102a(第1の凹部)が形成されている。凹部102aの縁は、第1面S1における貫通孔101の開口である。また、貫通孔101の内部のうち-Z方向側の開口の近傍には、第2の端面21bを底面とする凹部102b(第2の凹部)が形成されている。凹部102bの縁は、第2面S2における貫通孔101の開口である。第1の端面21aは、第1面S1に平行であり、第2の端面21bは、第2面S2に平行である。ここで、第1の端面21a(第2の端面21b)が第1面S1(第2面S2)に平行であるとは、第1の端面21a(第2の端面21b)が、第1面S1(第2面S2)に沿う方向に平坦であることをいう。また、平坦とは、第1の端面21a(第2の端面21b)の面内で、Z方向についての第1面S1(第2面S2)からの距離の差(ばらつき)が3μm以下であることをいう。以下では、第1の端面21aおよび第2の端面21bのうち任意の一方を指す場合には、「端面21」と記す。また、凹部102a、102bのうち任意の一方を指す場合には、「凹部102」と記す。
【0022】
第1の導体層30aは、基材10の上面の一部を覆っている。詳しくは、第1の導体層30aは、凹部102aを埋める第1部分としての蓋部31aと、基材10の表面(第1面S1)に位置する第2部分としての表層導体部32aと、を有する。このうち表層導体部32aは、表面導体層123のうち表面導体層122上に位置する部分に積層されて、表面導体層122、表面導体層123とともに配線パターンをなしている。このように、第1の導体層30aは、貫通孔101の内部のうち絶縁部材20の第1の端面21aを底面とする凹部102aを埋めている。
第2の導体層30bは、基材10の下面の一部を覆っている。詳しくは、第2の導体層30bは、凹部102bを埋める第1部分としての蓋部31bと、基材10の表面(第2面S2)に位置する第2部分としての表層導体部32bと、を有する。このうち表層導体部32bは、表面導体層123のうち表面導体層122上に位置する部分に積層されて、表面導体層122、表面導体層123とともに配線パターンをなしている。このように、第2の導体層30bは、貫通孔101の内部のうち絶縁部材20の第2の端面21bを底面とする凹部102bを埋めている。
第1の導体層30aおよび第2の導体層30bの材質は、例えば銅であってもよい。
以下では、蓋部31a、31bのうち任意の一方を指す場合には、「蓋部31」と記し、表層導体部32a、32bのうち任意の一方を指す場合には、「表層導体部32」と記す。
【0023】
ここで、
図2を参照して、第1の導体層30aおよび絶縁部材20の構成について詳しく説明する。
図2では、第1の導体層30aの構造について例示しているが、第2の導体層30bの構造も同様である。
【0024】
図2に示すように、第1の導体層30aのうち蓋部31aのZ方向についての厚みT1は、表層導体部32aのZ方向についての厚みT2よりも厚い。厚みT1は、例えば10~50μm程度であってもよい。厚みT2は、例えば数μm~10μm程度であってもよい。また、蓋部31aの表面と、表層導体部32aの表面とは、面一である(同一面内に位置している)。
【0025】
また、
図2に示すように、絶縁部材20の第1の端面21aのうち貫通孔101の内壁面に当接する部分Pが、基材10の表面(第1面S1)よりも基材10の内部側(-Z方向側)に位置している。言い換えると、絶縁部材20の第1の端面21aは、その周縁の部分Pを含む全体が、基材10の表面よりも基材10の内部側(-Z方向側)に位置している。よって、第1の導体層30aの蓋部31aの厚みT1は、平面視で貫通孔101と重なる任意の位置で、表層導体部32aの厚みT2よりも厚くなっている。また、蓋部31aの厚みは、貫通孔101の内壁側から中心部まで(すなわち、平面視で貫通孔101と重なる任意の位置で)、均一である。ここで、厚みが均一とは、蓋部31aの厚みを貫通孔101内の内壁側と中心部とで測定したときに、厚みの差が3μm以下であり、内壁側から中心部へ向かう傾斜がなく、また絶縁部材20の第1の端面21aに面する蓋部31aの面(底面)に凹みがない状態のことをいう。また、蓋部31aとスルーホール導体123hとの間には界面が存在していてもよい。
【0026】
〔コア基板の製造方法〕
次に、
図3A~
図3Fを参照して、コア基板1の製造方法について説明する。
まず、
図3Aに示すように、絶縁層111~113と、絶縁層111の上面および下面に形成された内部導体層121と、絶縁層112の上面および絶縁層113の下面の全体に形成された表面導体層122と、を有する基板1aを用意する。基板1aは、表面導体層122としての銅箔を有する銅張積層板であってもよい。すなわち、基板1aは、面積の大きいいわゆる主面に銅箔を有していてもよい。絶縁層111~113は、例えば複数のプリプレグまたは樹脂フィルムを積層し、加熱後に固化させて形成されたものであってもよい。ここで、プリプレグは、ガラスクロスに樹脂を含浸させて半硬化させた部材である。樹脂フィルムは、樹脂、または樹脂と無機充填剤、有機充填剤を半硬化させた部材である。
【0027】
次に、
図3Aに示すように、基板1aにドリル加工を行って、基板1aの上面と下面との間を貫通する貫通孔110を形成する。
【0028】
次に、
図3Bに示すように、基板1aの全体に対してめっき処理を施す。例えば、まず無電解銅めっきを行い、次いで電解銅めっき(パネルめっき)を行う。これにより、上面、下面、および貫通孔110の内壁面が表面導体層123により覆われた基板1bが得られる。基板1bは、表面導体層123のうち筒状のスルーホール導体123hに囲まれた貫通孔101を有する。
【0029】
次に、
図3Cに示すように、貫通孔101の内部に絶縁部材20を充填する。例えば、貫通孔101の内部に、エポキシ樹脂をスクリーン印刷などで充填した後に、エポキシ樹脂を硬化させる。これにより、貫通孔101が絶縁部材20により埋められた基板1cが得られる。ここでは、絶縁部材20の上端および下端は、それぞれ第1面S1および第2面S2から突出していてもよい。
【0030】
次に、
図3Dに示すように、絶縁部材20のうち、基材10の第1面S1および第2面S2から突出している部分を除去し、平滑化する。例えば、絶縁部材20の端面が、表面導体層123の第1面S1および第2面S2と面一になるまで絶縁部材20を研磨する。これにより、端面が平滑化された絶縁部材20を有する基板1dが得られる。
【0031】
次に、
図3Eに示すように、絶縁部材20を、基材10の第1面S1および第2面S2から基材10の内部方向に所定位置まで除去する。例えば、プラズマによる樹脂エッチング、レーザによるアブレーション、または過マンガン酸溶液による樹脂エッチングなどにより、絶縁部材20を、第1面S1および第2面S2から10~50μmの位置まで除去する。これにより、絶縁部材20において、平坦な第1の端面21aおよび平坦な第2の端面21bが形成される。この結果、第1の端面21aを底部とする凹部102a、および第2の端面21bを底部とする凹部102bを有する基板1eが得られる。
【0032】
次に、
図3Fに示すように、基板1eの全体にめっき処理を施し、第1の導体層30aおよび第2の導体層30bを形成する。ここでは、凹部102aおよび凹部102bがそれぞれ第1の導体層30aおよび第2の導体層30bにより充填されるように、フィルドめっきを行う。このとき、絶縁部材20の第1の端面21aおよび第2の端面21bが平坦であるため、蓋部31a、31bは、表面が平坦化された正常な状態で形成される。このため、蓋部31a、31bにピンホール(孔)が発生しにくい。次に、研磨および/またはソフトエッチング等により第1の導体層30aおよび第2の導体層30bの厚みの調整、ならびに平滑化を行う。ここでは、表面導体層122、表面導体層123および表層導体部32a(または表層導体部32b)の厚みの合計が20μm程度となるように調整する。このような調整を行っても、蓋部31a(蓋部31b)は、凹部102a(凹部102b)に埋まっているため十分な厚さが確保される。これにより、表面に第1の導体層30aおよび第2の導体層30bを有する基板1fが得られる。
【0033】
次に、基板1fに対し、サブトラクディブ法のエッチングレジストを形成し、露光、現像、エッチング、エッチングレジスト剥離の工程を順に行うことで、表面導体層122、表面導体層123および表層導体部32a(表層導体部32b)をパターニングし、回路パターンを形成する。これにより、
図1に示すコア基板1が完成する。
なお、サブトラクティブ法に代えてMSAPやセミアディティブ法を用いることも可能である。この場合には、
図3Fに示す工程において基板全面にめっき処理を施す方法に代えて、パターンめっきを行えばよい。このようにパターンめっきを行う場合でも、凹部102aおよび凹部102bを埋めるフィルドめっきが可能である。
【0034】
〔印刷配線板の構成〕
次に、
図4を参照して、本実施形態に係る印刷配線板3の構成を説明する。
印刷配線板3は、上述のコア基板1と、コア基板1の上面に積層された第1ビルドアップ層2aと、コア基板1の下面に積層された第2ビルドアップ層2bと、を備えている。すなわち、印刷配線板3は、第2ビルドアップ層2b、コア基板1および第1ビルドアップ層2aがこの順に積層された構成の多層基板である。以下では、第1ビルドアップ層2aおよび第2ビルドアップ層2bのうち任意の一方を指す場合には、「ビルドアップ層2」と記す。
【0035】
第1ビルドアップ層2aは、コア基板1の上面に積層された絶縁層41aと、絶縁層41aの上面に形成された表面導体層42a、43aとを有する。
第2ビルドアップ層2bは、コア基板1の下面に積層された絶縁層41bと、絶縁層41bの下面に形成された表面導体層42b、43bとを有する。
【0036】
絶縁層41a、41bは、絶縁性を有する樹脂と、該樹脂内に埋め込まれたガラスクロス等の補強材とを有する。絶縁層41a、41bを構成する樹脂の材質としては、例えば、エポキシ樹脂、ビスマレイミド-トリアジン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂、フェノール樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、ケイ素樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリフェニレンオキシド(PPO)樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は2種以上を混合してもよい。また、絶縁層41a、41bには、水酸化アルミニウム、シリカまたは硫酸バリウムなどの無機充填剤、もしくはフェノール樹脂またはメタクリル樹脂などの有機充填材が配合されてもよい。
【0037】
表面導体層42a、43aは、絶縁層41aの上面にこの順に積層され、配線パターンをなしている。表面導体層42b、43bは、絶縁層41bの下面にこの順に積層され、配線パターンをなしている。表面導体層42a、42bは、例えば、絶縁層41a、41bの表面に設けられた銅箔であってもよい。表面導体層43a、43bは、表面導体層42a、42bの表面にそれぞれ積層されためっき膜であってもよい。めっき膜の材質は、例えば銅であってもよい。
【0038】
第1ビルドアップ層2aには、厚み方向に絶縁層41aを貫通するビア導体431a、432aが設けられている。ビア導体431a、432aは、表面導体層43aの一部からなる。ビア導体431a、432aは、コア基板1の第1の導体層30aに電気的に接続されている。ビア導体431aは、第1の導体層30aに当接している部分(底面)が、平面視で凹部102aと重なる範囲内(言い換えると、平面視で蓋部31aと重なる範囲内)にある。
【0039】
第2ビルドアップ層2bには、厚み方向に絶縁層41bを貫通するビア導体431b、432bが設けられている。ビア導体431b、432bは、表面導体層43bの一部からなる。ビア導体431b、432bは、コア基板1の第2の導体層30bに電気的に接続されている。ビア導体431bは、第2の導体層30bに当接している部分(底面)が、平面視で凹部102bと重なる範囲内(言い換えると、平面視で蓋部31bと重なる範囲内)にある。
【0040】
〔印刷配線板の製造方法〕
次に、
図5A~
図5Cを参照して、印刷配線板3の製造方法について説明する。
まず、
図5Aに示すように、コア基板1の上面に絶縁層41aおよび表面導体層42aを積層し、コア基板1の下面に絶縁層41bおよび表面導体層42bを積層する。例えば、絶縁層41aとなるプリプレグまたは樹脂フィルムと、表面導体層42aとなる銅箔とをコア基板1の上面に積層し、もしくは絶縁層41aとなるプリプレグまたは樹脂フィルムと、表面導体層42aとなる銅箔とを有するビルドアップ用シートをコア基板1の上面に積層して、加熱、加圧する。これにより、プリプレグまたは樹脂フィルムが一旦溶融した後に硬化し、絶縁層41aとなってコア基板1の上面に固着する。このとき、プリプレグまたは樹脂フィルムに含まれる樹脂(絶縁体)が、コア基板1の上面に形成された配線パターンの隙間にも充填される。同様の方法で、下面側の絶縁層41bおよび表面導体層42bも形成することができる。
【0041】
次に、
図5Bに示すように、表面導体層42aの上面側から、ビア導体431a、432aの形成位置に、表面導体層42aおよび絶縁層41aを貫通するビア下穴44aを形成する。例えば、表面導体層42aのうちビア導体431a、432aの形成範囲に相当する部分をパターニングして除去した後に、表面導体層42aの上面側からレーザを照射することにより絶縁層41aにビア下穴44aを形成する。レーザの照射は、該表面導体層42aをマスクとしてもよい。これにより、ビア下穴44aの底部に第1の導体層30aが露出する。同様の方法で、表面導体層42bの下面側から、ビア導体431b、432bの形成位置に、表面導体層42bおよび絶縁層41bを貫通するビア下穴44bを形成する。これにより、ビア下穴44bの底部に第2の導体層30bが露出する。
【0042】
ここで、一部のビア下穴44aは、平面視で蓋部31aと重なる位置に形成される。この蓋部31aは、凹部102aを埋めるように表層導体部32aよりも厚く形成されているため、蓋部31aには、ビア下穴44aの形成のためのレーザにより孔が開きにくくなっている。
同様に、一部のビア下穴44bは、平面視で蓋部31bと重なる位置に形成される。この蓋部31bは、凹部102bを埋めるように表層導体部32bよりも厚く形成されているため、蓋部31bには、ビア下穴44bの形成のためのレーザにより孔が開きにくくなっている。
【0043】
次に、
図5Cに示すように、基板全体に対してめっき処理(フィルドめっき)を行い、基板の上面の全面に表面導体層43aを形成し、基板の下面の全面に表面導体層43bを形成する。このとき、表面導体層43aがビア下穴44aを埋めてビア導体431a、432aが形成され、表面導体層43bがビア下穴44bを埋めてビア導体431b、432bが形成される。
【0044】
次に、サブトラクディブ法のエッチングレジストを形成し、露光、現像、エッチング、エッチングレジスト剥離の工程を順に行うことで、上面の表面導体層42a、43a、および下面の表面導体層42b、43bをパターニングし、回路パターンを形成する。これにより、
図4に示す印刷配線板3が完成する。
【0045】
〔比較例に対する効果〕
次に、
図6Aおよび
図6Bに示す比較例の構成を参照しつつ、本実施形態の構成の効果について説明する。
図6Aに示す比較例に係るコア基板1rは、絶縁部材20の端面21が基材10の表面(第1面S1)と面一となっている。このため、導体層30のうち絶縁部材20の端面21に積層されている部分の厚さが、上記実施形態に係る蓋部31よりも薄く、強度の弱い薄弱部301となっている。
【0046】
図6Bに示す比較例に係るコア基板1rは、絶縁部材20の端面21が曲面をなしている。詳しくは、絶縁部材20の端面21のうち周縁の部分QのZ方向の位置が第1面S1(基材10の表面)の位置に一致しており、端面21の中央付近が-Z方向に窪んでいる。このような端面21の形状は、例えば、絶縁部材20の材料を硬化させる際の収縮により生じる。このような絶縁部材20の上に導体層30を形成すると、導体層30は、絶縁部材20上において、-Z方向に突出する凸部302を有するとともに、凸部302の周囲において、凸部302よりも厚みが薄い薄弱部301を有する。
【0047】
これらの比較例に係るコア基板1rにビルドアップ層2を積層し、絶縁部材20と重なる位置にビア下穴を形成する場合、レーザ照射によって導体層30の薄弱部301に孔が開きやすい。このため、薄弱部301の孔を介してレーザが絶縁部材20を掘り下げてしまったり、薄弱部301の孔にめっき前処理液が残存して導体層30が不必要にエッチングされたりする問題が生じ、ビア導体となるめっき膜が正常に形成されなくなる。
これに対し、本実施形態に係るコア基板1では、
図2に示したように、絶縁部材20の端面21が基材10の表面よりも基材10の内部側に位置しており、かつ平坦であり、厚さが均一な蓋部31が凹部102を埋めているため、レーザにより蓋部31に孔が開きにくい。よって、比較例における上記の問題が生じにくく、ビア導体431a、431bとなるめっき膜を正常に形成することができる。よって、ビア導体431aと蓋部31aとの電気的な接続信頼性、およびビア導体431bと蓋部31bとの電気的な接続信頼性を高めることができる。
【0048】
また、
図6Bの比較例に係るコア基板1では、絶縁部材20の端面21が曲面であるため、その上に積層される導体層30の上面の平坦化が不十分となりやすい。導体層30の上面の平坦化が不十分であると、ビア下穴の加工のためのレーザが導体層30の上面で乱反射してビア下穴44a、44bの形状がいびつになる結果、めっき液の流動性が悪化してめっき液内に気泡が発生し、めっき内に気泡が残るめっきボイドが発生する。
これに対し、本実施形態の蓋部31は、上述のとおり表面が平坦であるため、このようなめっきボイドが発生する不具合も生じにくい。
【0049】
また、
図6Bの比較例に係るコア基板1では、絶縁部材20の端面21の平坦性が低いため、その上に積層される導体層30が正常に形成されず、ピンホール(孔)が生じやすい。導体層30にピンホールが生じると、ピンホールを介してレーザにより絶縁部材20を掘り下げられたり、ピンホールにめっき前処理液が残存して導体層30が不必要にエッチングされたりする不具合が生じる。この結果、ビア導体となるめっき膜を正常に形成することができなくなる。
これに対し、本実施形態に係るコア基板1では、絶縁部材20の端面21が平坦であるため、その上に導体層30を正常に形成することができ、ピンホールも生じにくい。よって、ピンホールに起因する上記の不具合が生じにくい。
【0050】
図6Aおよび
図6Bに示す比較例に係るコア基板1rにおいて、薄弱部301が生じないように導体層30を厚く形成すると、表面導体層122、表面導体層123および導体層30の3層の合計の厚みが厚くなってしまう。よって、サブトラクティブ法を用いてこれらの3層を配線パターンに加工する際に、エッチング特性の影響から配線パターンの裾引きが大きくなる(すなわち、Z方向について、絶縁層112に近いほどパターンの太さが太くなる)。よって、配線パターンの太さのばらつきが大きくなり、微細な回路を形成できなくなる。
これに対し、本実施形態に係るコア基板1では、
図2に示すように蓋部31が凹部102に形成されることで蓋部31の厚さが確保されるため、表層導体部32を厚く形成する必要がない。よって、配線の形成容易性を維持しつつ、蓋部31の厚さを確保して、スルーホール導体123hに対する電気的な接続信頼性を高めることができる。
【0051】
〔変形例1〕
次に、
図7を参照して、上記実施形態の変形例1について説明する。
図7に示すように、表面導体層123のうち貫通孔101の開口部に相当する部分は、貫通孔101の中心軸方向に突出した突出部123pとなっていてもよい。すなわち、貫通孔101の開口部における幅D1(平面視で円形の場合には、直径)は、貫通孔101のうち蓋部31aの底面における幅D2(平面視で円形の場合には、直径)よりも小さくなっていてもよい。
【0052】
〔変形例2〕
次に、上記実施形態の変形例2について説明する。変形例2は、変形例1と組み合わせてもよい。変形例2は、内部導体層121、表面導体層122、表面導体層123、貫通孔101、導体層30、およびビルドアップ層等の構成のバリエーションに関する。
【0053】
コア基板1の基材10は、内部導体層121を有していなくてもよい。また、基材10は、表面導体層122を有していなくてもよい。また、基材10は、表面導体層122および表面導体層123の双方を有していなくてもよい。基材10が表面導体層123を有しない場合には、貫通孔101の内壁面は、スルーホール導体123hに代えて、絶縁層11により構成される。
【0054】
また、絶縁部材20の第1の端面21aおよび第2の端面21bがいずれも基材10の表面よりも内部側に位置している構成、すなわち貫通孔101の両端に凹部102が形成されている構成において、Z方向についての凹部102の深さ(すなわち、蓋部31の高さ。以下同じ)が、第1面S1側と第2面S2側とで異なっていてもよい。例えば、コア基板1の各面に積層されたビルドアップ層2の1層の厚みが異なる場合に、ビルドアップ層2の1層の厚みが厚い方の凹部102の深さを、ビルドアップ層の1層の厚みが薄い方の凹部102の深さよりも深くしてもよい。
【0055】
また、平面視で蓋部31と重なる位置にビルドアップ層2のビア導体が形成されない場合(すなわち、蓋部31の上にビア導体が形成されない場合)には、蓋部31上にビア導体がない方の絶縁部材20の端面21は、基材10の表面と面一であってもよい。
【0056】
また、基材10の両面間で、凹部102の深さが異なっていてもよい。また、基材10の片面に複数の凹部102および蓋部31が設けられている構成において、片面内における複数の凹部102のうち一部の凹部102の深さが他の凹部102の深さと異なっていてもよい。ここで、深さが異なるとは、凹部102の深さ(蓋部31の高さ)の差が100nm以上あることをいう。
【0057】
また、絶縁部材20の両端の端面21のうち一方のみが、基材10の表面よりも基材10の内部側に位置していてもよい。言い換えると、貫通孔101の両端のうち一方側にのみ、絶縁部材20の端面21を底面とする凹部102が形成されていてもよい。この場合には、該一方側の凹部102のみが、導体層30の蓋部31により埋められていてもよい。すなわち、第1の導体層30aおよび第2の導体層30bのうち一方を省略してもよい。
【0058】
また、絶縁部材20が位置する基材10の孔部は、第1面S1と第2面S2との間を貫通する貫通孔101でなくてもよく、第1面S1側または第2面S2側から基材10の内部まで開けられた穴であってもよい。この場合には、該穴の内部に絶縁部材20が充填され、絶縁部材20の1つの端面21が、該穴の開口が設けられている基材10の表面よりも基材10の内部側に位置し、該端面21を底面とする凹部に蓋部31が埋められる。
【0059】
また、上記実施形態では、第1ビルドアップ層2aおよび第2ビルドアップ層2bは、いずれも1層であったが、これに代えて、ビルドアップ層2が複数重ねられていてもよい。また、ビルドアップ層2は、コア基板1の一方の面のみに積層されていてもよい。ビルドアップ層2は、コア基板1のうち第1の導体層30aにより埋められている凹部102aが設けられている側、または第2の導体層30bにより埋められている凹部102bが設けられている側に積層されていてもよい。
【0060】
図8に、変形例2に係る印刷配線板3の一例を示す。
図8に示す印刷配線板3は、コア基板1の上面側にのみビルドアップ層2が積層されている。また、コア基板1は、1層の絶縁層11からなり、内部導体層121、表面導体層122および表面導体層123を有しない。この構成では、絶縁層11の上面が第1面S1に相当し、絶縁層11の下面が第2面S2に相当する。また、絶縁部材20の第1面S1側の端面21のみが、第1面S1よりも基材10の内部側に位置しており、該端面21を底面とする凹部102に蓋部31が埋められている。
【0061】
〔効果〕
以上のように、本実施形態に係るコア基板1は、表面に開口する孔部としての貫通孔101を有した、平板状の基材10と、基材10の貫通孔101の内部に位置する絶縁部材20と、導体層30と、を備える。絶縁部材20の端面21は、貫通孔101の内部において、基材10の表面よりも基材10の内部側に位置している。導体層30は、貫通孔101の内部のうち絶縁部材20の端面21を底面とする凹部102を埋めている。このような構成によれば、導体層30のうち凹部102を埋める部分は、他の部分(表層導体部32)よりも厚い蓋部31となる。よって、ビルドアップ層2を積層した後に行うレーザ加工時に蓋部31に孔が開きにくい。よって、ビルドアップ層2のビア導体と、コア基板1の導体層30との電気的な接続の信頼性を高めることができる。
【0062】
また、絶縁部材20の端面21のうち貫通孔101の内壁面に当接する部分Pが、基材10の表面よりも基材10の内部側に位置している。これにより、絶縁部材20の端面21は、その周縁の部分Pを含む全体が、基材10の表面よりも基材10の内部側に位置している。よって、凹部102を埋める蓋部31の全体の厚みT1を、周囲の表層導体部32aの厚みT2よりも厚くすることができる。よって、ビルドアップ層2にレーザ加工を行う場合に、レーザが照射される範囲の全体に亘って蓋部31に孔の開きにくいコア基板1が得られる。
【0063】
また、絶縁部材20の端面21は、基材10の表面と平行である。これにより、蓋部31の厚みを均一にすることができ、より確実に、蓋部31に孔の開く不具合の発生を低減できる。また、絶縁部材20の端面21が平坦となるため、この端面21に積層される蓋部31の上面の平坦性を向上できる。蓋部31の上面の平坦性が向上すると、ビルドアップ層2におけるビア下穴の加工のためのレーザが蓋部31の上面で乱反射することに起因する問題(例えば、ビア下穴の形状がいびつになり、めっき液の流動性が悪化してめっき液内に気泡が生じ、めっきボイドが発生する問題)を生じにくくすることができる。また、絶縁部材20の端面21が平坦であると、端面21に積層される蓋部31の異常が生じにくく、例えば蓋部31にピンホールが生じにくくなる。よって、蓋部31のピンホールに起因する問題(例えば、ピンホールを介してレーザにより絶縁部材20が掘り下げられたり、ピンホールにめっき前処理液が残存して導体層30が不必要にエッチングされたりする問題)を生じにくくすることができる。
【0064】
また、導体層30は、凹部102を埋める第1部分としての蓋部31と、基材10の表面に位置する第2部分としての表層導体部32と、を有し、Z方向についての蓋部31aの厚みT1は、Z方向についての表層導体部32の厚みT2よりも厚い。これにより、蓋部31の厚さを確保しつつ、表層導体部32を薄くすることができる。表層導体部32を薄くすることにより、表層導体部32の微細加工が可能となり、幅の狭い微細配線を得やすくなる。
【0065】
また、基材10は、第1面S1と、該第1面S1とは反対側の第2面S2とを有する。貫通孔101は、基材10の第1面S1と第2面S2との間を貫通する。絶縁部材20の第1面S1側の第1の端面21aは、第1面S1よりも基材10の内部側に位置しており、絶縁部材20の第2面S2側の第2の端面21bは、第2面S2よりも基材10の内部側に位置している。コア基板1は、第1の導体層30aおよび第2の導体層30bを備える。第1の導体層30aは、貫通孔101の内部のうち絶縁部材20の第1の端面21aを底面とする凹部102aを埋めており、第2の導体層30bは、貫通孔101の内部のうち絶縁部材20の第2の端面21bを底面とする凹部102bを埋めている。これにより、コア基板1の両面にビルドアップ層2を積層した構成において、各ビルドアップ層2に対するレーザ加工時に蓋部31に孔が開く不具合を生じにくくすることができる。よって、コア基板1の両面における電気的な接続の信頼性を高めることができる。
【0066】
また、本実施形態に係る印刷配線板3は、上記のコア基板1と、コア基板1に積層された少なくとも1つのビルドアップ層2と、を備える。少なくとも1つのビルドアップ層2は、コア基板1のうち導体層30により埋められている凹部102が設けられている側に積層されている。これにより、コア基板1とビルドアップ層2との電気的な接続信頼性を高めることができる。よって、高信頼性の印刷配線板3を得ることが可能になる。
【0067】
また、ビルドアップ層2は、導体層30に電気的に接続されたビア導体431a、431bを有し、ビア導体431a、431bのうち導体層30に当接している部分が、基材10の表面に垂直な方向から見て凹部102と重なる範囲内にある。これにより、ビア導体431a、431bと蓋部31aとの電気的な接続の信頼性を高めることができる。よって、高信頼性の印刷配線板3を得ることが可能になる。
【0068】
〔その他〕
上記実施の形態で示した構成、構造、位置関係および形状などの具体的な細部は、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態で示した構成、構造、位置関係および形状を適宜組み合わせ可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 コア基板
2 ビルドアップ層
3 印刷配線板
10 基材
11 絶縁層
20 絶縁部材
21 端面
21a 第1の端面
21b 第2の端面
30 導体層
30a 第1の導体層
30b 第2の導体層
301 薄弱部
302 凸部
31、31a、31b 蓋部
32、32a、32b 表層導体部
41a、41b 絶縁層
42a、42b、43a、43b 表面導体層
431a、431b、432a、432b ビア導体
44a、44b ビア下穴
101 貫通孔(孔部)
102 凹部
102a 凹部(第1の凹部)
102b 凹部(第2の凹部)
110 貫通孔
111~113 絶縁層
121 内部導体層
122、123 表面導体層
123h スルーホール導体
123p 突出部
S1 第1面(基材の表面)
S2 第2面(基材の表面)