(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-20
(45)【発行日】2025-05-28
(54)【発明の名称】出産組織由来の生成物並びにその調製及び使用
(51)【国際特許分類】
A61K 35/51 20150101AFI20250521BHJP
A61K 35/50 20150101ALI20250521BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20250521BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20250521BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20250521BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20250521BHJP
A61K 38/19 20060101ALI20250521BHJP
A61K 38/18 20060101ALI20250521BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20250521BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20250521BHJP
A61K 31/728 20060101ALI20250521BHJP
C12N 5/071 20100101ALI20250521BHJP
【FI】
A61K35/51
A61K35/50
A61K45/00
A61P19/02
A61P21/00
A61P29/00
A61K38/19
A61K38/18
A61K38/20
A61K38/17 100
A61K31/728
C12N5/071
(21)【出願番号】P 2021561714
(86)(22)【出願日】2020-04-16
(86)【国際出願番号】 US2020028604
(87)【国際公開番号】W WO2020214868
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2023-04-13
(32)【優先日】2019-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512247773
【氏名又は名称】ライフネット ヘルス
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100200540
【氏名又は名称】安藤 祐子
(74)【代理人】
【識別番号】100223424
【氏名又は名称】和田 雄二
(72)【発明者】
【氏名】チン, シャオフェイ
(72)【発明者】
【氏名】メン, ファンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】チェン, ジンソン
【審査官】藤澤 雅樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-529670(JP,A)
【文献】特表2017-507114(JP,A)
【文献】米国特許第09132156(US,B1)
【文献】特表2009-510091(JP,A)
【文献】特表2018-522824(JP,A)
【文献】特表2017-525671(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105536064(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0361026(US,A1)
【文献】Tissue Engineering Part A,Vol.23, No.1-2,2017年,pp.12-19
【文献】Bennett Medicine,2019年,Vol.98, No.10,pp.1-4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00
A61K 35/00
A61P 19/00
A61P 29/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量の第1の出産組織の溶出物と第2の出産組織の粒子とを含む、必要とする患者の身体部分の病的状態を処置するための注射用組成物
であって、前記第1の出産組織が脱細胞化されていない臍帯を含み、前記第2の出産組織が脱細胞化された胎盤膜を含む、組成物。
【請求項2】
薬学的に許容できる担体をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記第1の出産組織の溶出物が、微粒子化された第1の出産組織の溶出物である、請求項1
又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記第1の出産組織の溶出物が、脱細胞化された胎盤膜粒子の溶出物
をさらに含む、請求項1~
3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
0.5Hzで0.1~500Pa・sの剪断粘度を有する、請求項1~
4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
5mg/ml未満の可溶化コラーゲン及び/又は5mg/ml未満の可溶化ラミニンをさらに含む、請求項1~
5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
HGF、IL-IRA、PTX-3、IL-8、G-CSF、MCP1、TIMP-1、TIMP-2、TIMP-3、TIMP-4、α2-マクログロブリン、bFGF、PIGF、EGF、TGF-ベータ1、TGF-ベータ2、TGF-ベータ3、PDGF-BB、VEGF-α、アンジオゲニン、PRG-4及びHAからなる群から選択される1つ又は複数の生物活性因子をさらに含む、請求項1~
6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
0.2ng/mLより高い濃度のPRG-4、4μg/mLより高い濃度のα2-マクログロブリン、少なくとも0.5ng/mLの濃度のTGF-ベータ3、又はそれらの任意の組合せをさらに含む、請求項1~
7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記第1の出産組織に由来しないヒアルロン酸(HA)をさらに含む、請求項1~
8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記身体部分が関節又は組織であり、前記関節が、膝関節、肩関節、股関節、肘関節、手首関節、手指関節、足指関節及び足首関節からなる群から選択され、前記組織が腱、靭帯、滑液包、筋膜、軟骨、筋肉、結合組織、真皮、滑膜、及び腱靭帯付着部からなる群から選択される、請求項1~
9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記病的状態が、変形性関節症、関節リウマチ、滑液包炎、筋膜炎、腱炎、腱障害、滑膜炎、上顆炎、腱断裂、靭帯断裂、神経損傷、軟骨欠損、滑膜炎、筋膜炎痛、関節形成術、及び筋肉痛からなる群から選択される、請求項1~
10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
有効量が前記身体部分に投与される、請求項1~
11のいずれか一項に記載の組成物であって、前記身体部分が関節又は組織であり、前記関節が膝関節、肩関節、股関節、肘関節、手首関節、手指関節、足指関節及び足首関節からなる群から選択される、組成物。
【請求項13】
可溶性部分及び固体部分を含む組成物であって、前記可溶性部分が第1の出産組織の溶出物を含み、前記固体部分が第2の出産組織の粒子を含み、前記可溶性部分及び前記固体部分がそれぞれ、HGF、IL-IRA、PTX-3、IL-8、G-CSF、MCP1、TIMP-1、TIMP-2、TIMP-3、TIMP-4、α2-マクログロブリン、bFGF、PIGF、EGF、TGF-ベータ1、TGF-ベータ2、TGF-ベータ3、PDGF-BB、VEGF-α、アンジオゲニン、PRG-4、HA、細胞外小胞及びエクソソームからなる群から選択される、1つ又は複数の生物活性因子を含
み、
前記第1の出産組織が脱細胞化されていない臍帯を含み、前記第2の出産組織が脱細胞化された胎盤膜を含む、組成物。
【請求項14】
前記1つ又は複数の生物活性因子を、必要とする患者の身体部分に提供するための、請求項
13に記載の組成物であって、前記組成物の有効量が前記身体部分に投与され、任意で、前記投与後1分以内に前記1つ又は複数の生物活性因子の5~50%が前記身体部分に放出される、組成物。
【請求項15】
必要とする患者の身体部分の病的状態を処置するための注射用組成物を調製するための方法であって、
(a)
脱細胞化されていない臍帯を含む処理された出産組織を微粒子化して第1の粒子を作製するステップと;
(b)出産組織の前記第1の粒子を液体と混合して混合物を形成するステップであり、前記第1の出産組織粒子の重量と前記液体の容積との比が1:1~1:100の範囲である、ステップと;
(c)前記混合物を-5℃~15℃の温度で1~240時間インキュベートするステップと;
(d)前記混合物から上清を回収するステップであり、前記上清が出産組織の溶出物である、ステップと;
(e)前記出産組織の前記溶出物を第2の
脱細胞化された出産組織の粒子と組み合わせて、前記注射用組成物を形成するステップ
であって、前記第2の脱細胞化された出産組織が胎盤膜を含むステップと
を含む、方法。
【請求項16】
第1の出産組織の溶出物と、第2の出産組織の粒子とを含む、注射用組成物であって、前記第1の出産組織が、第1の脱細胞化されていない臍帯及び第1の脱細胞化された胎盤膜を含み、前記第2の出産組織が、第2の脱細胞化されていない臍帯及び第2の脱細胞化された胎盤膜を含む、注射用組成物。
【請求項17】
前記第1の出産組織及び前記第2の出産組織が同じである、請求項
16に記載の注射用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
この出願は、2019年4月16日に出願された米国特許仮出願第62/834,687号、2019年11月7日に出願された同第62/932,055号、及び2020年2月26日に出願された同62/981,973号の利益を主張するものであり、これらの各内容はすべての目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
[発明の分野]
本発明は、出産組織由来の生成物、例えば、出産組織溶出物、出産組織粒子及び胎盤膜シート、並びにそれらの調製及び使用に関する。
【0003】
[発明の背景]
関節炎は、関節のうちの1箇所又は複数の炎症である。最も一般的なタイプの関節炎は、変形性関節症及び関節リウマチである。変形性関節症(OA)は、2,500万人を超える米国人、及び世界で2億4,000万人の人々が罹患している関節疾患である。OAの最も一般的な症状は、疼痛及び痛みと動作の制限であり、これは生活の質と患者の社会的活動及び経済的活動に多大な影響を与える。この一般的な関節疾患は、滑膜、半月板(膝)、関節周囲の靭帯、及び軟骨下骨を含む関節全体の構造的変化及び機能的変化を伴った、関節軟骨の進行性の悪化及び喪失を特徴とする。滑膜(synovial membrane)又は滑膜(synovium)の炎症は「滑膜炎」と呼ばれ、滑膜の肥厚及び/又は関節滲出液として現れる。OAで滑膜炎が存在すると、より強い痛み及び関節機能障害を伴う。さらに、滑膜炎は、ある特定の患者集団において、軟骨喪失の速度がより速くなることが予測され得る。
【0004】
現在のOAの処置には、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、関節内コルチコステロイド、関節内ヒアルロン酸(HA)、及び他の関節内処置、例えば、多血小板血漿(PRP)及び間葉系幹細胞注射などが含まれる。現在まで、これらの処置のいずれも、OAの進行を止める能力又は引き起こされた損傷を元に戻す能力を示していなかった。NSAID、コルチコステロイド、又はHA注射による処置は、短期間の、例えば数週間から数カ月間の症状の緩和により注力している。PRPは、血液よりも血小板濃度が高い血漿を得るために、患者自身の血液を使用する生物学的及び自家療法である。しかし、各患者の健康状態が様々であることに加えて、異なる臨床医によって使用されるPRP製剤プロトコルにも大きなばらつきがあり、時に矛盾した結果をもたらすことがある。同様のジレンマが自家間葉系幹細胞処置においても見られた。
【0005】
出産組織は、活性生体分子の良好な供給源を提供すると同時に、皮膚の再生を目的とした細胞外マトリックス足場を豊富に提供する。ヒト羊膜は、瘢痕形成及び周囲組織への接着を減らすための自然な外科的バリアとして機能することにより、修復された腱などの組織を包み込むために使用されてきた。身体部分の病的状態を処置するための、身体部分、例えば、関節又は組織への送達に適した出産組織由来の生成物が依然として必要とされている。
【0006】
[発明の概要]
本発明は、出産組織、例えば、臍帯及び羊膜嚢由来の胎盤膜の溶出物及び粒子を含む、出産組織由来の生成物と、羊膜嚢由来の胎盤膜のシート、並びに出産組織由来の生成物の調製及び使用を提供する。
【0007】
出産組織の溶出物を調製するための方法。溶出物を調製する方法は、出産組織の粒子を液体と混合して混合物を形成するステップと、混合物をインキュベートするステップと、混合物から上清を回収するステップとを含む。上清は、出産組織の溶出物である。出産組織の粒子の重量と液体の容積との比は、1:1~1:100の範囲である。混合物は、-5℃~15℃の温度で1~240時間、インキュベートされる。
【0008】
この溶出物の調製方法によれば、出産組織は、臍帯、羊膜嚢、胎盤プレート、及びそれらの組合せからなる群から選択され得る。一実施形態では、出産組織は臍帯であり得る。別の実施形態では、出産組織は、羊膜に由来する胎盤膜であり得る。胎盤膜は、羊膜、絨毛膜及び栄養芽層を含み得る。出産組織は、出産組織に由来しない酵素で処理されていなくてもよい。出産組織の平均表面積は、1~2,500cm2の範囲である。出産組織は、生細胞を含み得る。生細胞は、出産組織に由来するものであり得る。出産組織は、生細胞を含んでいなくてもよい。出産組織は、凍結保存されていてもよい。出産組織は、凍結乾燥又は凍結されていてもよい。出産組織は、出産組織に由来しない酵素で処理されていなくてもよい。
【0009】
溶出物の調製方法によれば、粒子は、10~2,000μmの範囲の平均粒子サイズを有し得る。粒子は、生細胞を含み得る。粒子は、生細胞を含んでいなくてもよい。粒子は、凍結保存されていてもよい。粒子は、凍結乾燥又は凍結されていてもよい。粒子は、出産組織に由来しない酵素で処理されていなくてもよい。
【0010】
溶出物の調製方法は、処理した出産組織を微粒子化して粒子を作製するステップをさらに含み得る。処理した出産組織は、微粒子化され得る。
【0011】
溶出物の調製方法によれば、処理した出産組織は、処理した臍帯であり得る。処理した臍帯は、臍帯動脈を含んでいなくてもよい。処理した臍帯は、臍帯静脈内皮細胞を含んでいなくてもよい。処理した臍帯は、凍結保存されていてもよい。処理した臍帯は、生細胞を含み得る。処理した臍帯は、生細胞を含んでいなくてもよい。処理した臍帯は、凍結乾燥又は凍結されていてもよい。
【0012】
溶出物の調製方法によれば、液体は、培養培地、馴化培地、等張液、低張液、及び水からなる群から選択することができる。液体は、培養培地であり得る。
【0013】
溶出物の調製方法によれば、混合ステップは、混合装置で実施することができる。溶出物の調製方法は、洗浄剤、界面活性剤、又はそれらの組合せを使用するステップを含んでいなくてもよい。
【0014】
溶出物の調製方法によれば、溶出物の剪断粘度は、0.5Hzで0.1~10Pa・sを有し得る。
【0015】
溶出物の調製方法によれば、溶出物は、出産組織に由来し得るヒアルロン酸(HA)を含み得る。溶出物の調製方法は、溶出物中のヒアルロン酸(HA)の濃度を調整するステップをさらに含み得る。溶出物は、出産組織に由来しないヒアルロン酸(HA)を含んでいなくてもよい。
【0016】
溶出物の調製方法によれば、溶出物は、出産組織に由来し得るサイトカインを含み得る。サイトカインは、出産組織に由来し得るインターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1RA)であり得る。溶出物の調製方法は、溶出物中のサイトカインの濃度を調整するステップをさらに含み得る。溶出物は、出産組織に由来しないサイトカインを含んでいなくてもよい。
【0017】
溶出物の調製方法によれば、溶出物は、出産組織に由来し得る増殖因子を含み得る。増殖因子は、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF又はFGF2)及びトランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-ベータ)からなる群から選択することができる。溶出物の調製方法は、溶出物中の増殖因子の濃度を調整するステップをさらに含み得る。溶出物は、出産組織に由来しない増殖因子を含んでいなくてもよい。
【0018】
溶出物の調製方法によれば、溶出物は、出産組織に由来し得るプロテアーゼ阻害剤を含み得る。溶出物は、出産組織に由来し得るプロテアーゼを含み得る。溶出物は、出産組織に由来しないプロテアーゼ阻害剤を含んでいなくてもよい。溶出物は、出産組織に由来しないプロテアーゼを含んでいなくてもよい。プロテアーゼは、トリプシン、セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、スレオニンプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、又はメタロプロテアーゼであり得る。プロテアーゼ阻害剤は、メタロプロテイナーゼの組織阻害剤(TIMP)であり得る。溶出物の調製方法は、溶出物中のプロテアーゼ阻害剤の濃度、例えば、TIMP濃度を調整するステップをさらに含み得る。
【0019】
溶出物の調製方法によれば、溶出物は、出産組織に由来し得る細胞外小胞を含み得る。細胞外小胞は、CD40+であり得る。溶出物は、出産組織に由来しない細胞外小胞を含んでいなくてもよい。
【0020】
溶出物の調製方法によれば、溶出物は、出産組織に由来し得るエクソソームを含み得る。エクソソームは、CD9+であり得る。溶出物は、出産組織に由来しないエクソソームを含んでいなくてもよい。
【0021】
溶出物の調製方法によれば、溶出物は、出産組織に由来し得る、5mg/ml未満の可溶化コラーゲンを含み得る。溶出物は、出産組織に由来し得る、5mg/ml未満の可溶化ラミニンを含み得る。
【0022】
溶出物の調製方法は、溶出物中の1つ又は複数の生物活性成分の濃度を調整するステップをさらに含み得る。1つ又は複数の生物活性成分は出産組織に由来していてもよく、ヒアルロン酸(HA)、サイトカイン、増殖因子、メタロプロテイナーゼの組織阻害剤(TIMP)、細胞外小胞及びエクソソームからなる群から選択され得る。
【0023】
溶出物の調製方法は、溶出物を凍結乾燥するステップをさらに含み得る。この方法は、溶出物を脱水するステップをさらに含み得る。
【0024】
溶出物の調製方法は、40℃未満の温度で溶出物を保存するステップをさらに含み得る。
【0025】
本発明のそれぞれの溶出物の調製方法に関して、本方法に従って調製された出産組織溶出物が提供される。
【0026】
それを必要とする患者の身体部分の病的状態を処置するための溶出物組成物が提供される。溶出物組成物は、有効量の第1の出産組織の溶出物と薬学的に許容できる担体とを含む。
【0027】
それを必要とする患者の身体部分の病的状態を処置するための粒子組成物が提供される。粒子組成物は、有効量の第1の出産組織の粒子物質と薬学的に許容できる担体とを含む。
【0028】
溶出物組成物又は粒子組成物は、注射用であり得る。
【0029】
溶出物組成物又は粒子組成物に関して、第1の出産組織は、臍帯、羊膜嚢、胎盤プレート、及びそれらの組合せからなる群から選択され得る。第1の出産組織は、臍帯であり得る。第1の出産組織は、本発明の溶出物の調製方法に従って調製することができる。
【0030】
溶出物組成物又は粒子組成物は、0.5Hzで0.1~500Pa・sの剪断粘度を有し得る。溶出物組成物又は粒子組成物は、第1の出産組織に由来し得る、1つ又は複数の生物活性成分、例えば、ヒアルロン酸(HA);インターロイキン1受容体拮抗薬(IL-1RA)であってもよい、サイトカイン;塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF又はFGF-2)及びトランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-ベータ)からなる群から選択され得る増殖因子;プロテアーゼ阻害剤;メタロプロテイナーゼの組織阻害剤(TIMP);CD40+であってもよい、細胞外小胞;CD9+であってもよい、エクソソーム;5mg/ml未満の可溶化コラーゲン;並びに/或いは5mg/ml未満の可溶化ラミニンを含み得る。
【0031】
溶出物組成物又は粒子組成物は、生細胞を含み得る。生細胞は、第1の出産組織に由来し得る。溶出物組成物又は粒子組成物は、生細胞を含んでいなくてもよい。溶出物組成物又は粒子組成物は、凍結乾燥されていてもよく、及び/又は40℃未満の温度で保存されていてもよい。
【0032】
溶出物組成物は、第2の出産組織の粒子をさらに含み得る。第2の出産組織は、臍帯、羊膜嚢、胎盤プレート、及びそれらの組合せからなる群から選択することができる。第2の出産組織は、臍帯であり得る。第2の出産組織は胎盤膜であってもよく、胎盤膜は羊膜、絨毛膜及び栄養芽層を含み得る。
【0033】
溶出組成物は、1つ又は複数の生物活性因子をさらに含み得る。1つ又は複数の生物活性因子は、第1の出産組織に由来し得る。1つ又は複数の生物活性因子は、HGF、IL-IRA、PTX-3、IL-8、G-CSF、MCP1、TIMP-1、TIMP-2、TIMP-3、TIMP-4、α2-マクログロブリン、bFGF、PIGF、EGF、TGF-ベータ1、TGF-ベータ2、TGF-ベータ3、PDGF-BB、VEGF-α、アンジオゲニン、PRG-4、HA、細胞外小胞及びエクソソームからなる群から選択され得る。
【0034】
第1の出産組織の溶出物は、1つ又は複数の生物活性因子を含み得る。1つ又は複数の生物活性因子は、第1の出産組織に由来し得る。1つ又は複数の生物活性因子は、HGF、IL-IRA、PTX-3、IL-8、G-CSF、MCP1、TIMP-1、TIMP-2、TIMP-3、TIMP-4、α2-マクログロブリン、bFGF、PIGF、EGF、TGF-ベータ1、TGF-ベータ2、TGF-ベータ3、PDGF-BB、VEGF-α、アンジオゲニン、PRG-4、及びHAからなる群から選択され得る。第1の出産組織の溶出物は、0.5ng/mLより高い濃度のIL1-RA;10ng/mLより高い濃度のTIMP-1;0.2mg/mLより高い濃度のHA;0.3ng/mLより高い濃度のTIMP-3;0.2ng/mLより高い濃度のPRG-4;4μg/mLより高い濃度のα2-マクログロブリン;30ng/mLより高い濃度のペントラキシン-3;及び/又は1ng/mLより高いTGF-ベータ3を含み得る。
【0035】
溶出物組成物は、二本鎖DNAをさらに含み得る。二本鎖DNAは、第1の出産組織に由来し得る。第1の組織の溶出物は、0.1ng/Lより高い濃度の二本鎖DNAを含み得る。
【0036】
溶出物組成物は、細胞外小胞をさらに含み得る。細胞外小胞は、第1の出産組織に由来し得る。第1の組織の溶出物は、1mL当たり10,000個より多くの細胞外小胞を含み得る。
【0037】
溶出物組成物は、エクソソームをさらに含み得る。エクソソームは、第1の出産組織に由来し得る。第1の組織の溶出物は、1mL当たり10,000個より多くのエクソソームを含み得る。第1の出産組織及び第2の出産組織は、同じドナーに由来し得る。第2の出産組織の粒子は、10~2,000μmの範囲の平均粒子サイズを有し得る。第2の出産組織の粒子は、生細胞を含み得る。第2の出産組織の粒子は、生細胞を含んでいなくてもよい。第2の出産組織の粒子は、凍結保存されていてもよい。第2の出産組織の粒子は、凍結乾燥されていてもよく、及び/又は40℃未満の温度で保存されていてもよい。第1の出産組織の溶出物は、凍結乾燥されていてもよく、及び/又は40℃未満の温度で保存されていてもよい。粒子は、脱水されていてもよい。
【0038】
粒子組成物において、第1の出産組織は胎盤膜であり得る。
【0039】
溶出物組成物又は粒子組成物において、第1又は第2の出産組織の胎盤膜は、細胞層、網状層、及び偽性基底膜(pseudo-basement membrane)を含み得る。胎盤膜は、羊膜をさらに含み得る。胎盤膜は、栄養芽層をさらに含み得る。胎盤膜は、羊膜及び栄養芽層をさらに含み得る。言い換えると、胎盤膜は無傷であり得る。胎盤膜は、50~800μmの厚さを有し得る。胎盤膜は、開窓を有し得る。胎盤膜は、90~99%の液体吸収を有し得る。胎盤膜は、対照の脱細胞化されていない胎盤膜のDNA含有量よりも少なくとも90%少ないDNA含有量を有し得る。胎盤膜の粒子は、脱細胞化されていてもよい。胎盤膜の粒子は、変性されていなくてもよい。胎盤膜の粒子は、生細胞を含み得る。胎盤膜の粒子は、生細胞を含んでいなくてもよい。胎盤膜の粒子は、凍結乾燥されていてもよく、及び/又は40℃未満の温度で保存されていてもよい。
【0040】
溶出物組成物又は粒子組成物は、グリセロールをさらに含み得る。
【0041】
溶出物組成物又は粒子組成物は、第1の出産組織、第2の出産組織、又は第1の出産組織及び第2の出産組織の組合せに由来しないヒアルロン酸(HA)をさらに含み得る。溶出物組成物又は粒子組成物は、グリセロールでなくてもよいアルコールを含まなくてもよい。
【0042】
溶出物組成物又は粒子組成物に関して、身体部分は関節又は組織であり得る。関節は、膝関節、肩関節、股関節、肘関節、手首関節、手指関節、足指関節、及び足首関節からなる群から選択することができる。関節は膝関節であり得る。組織は、腱、靭帯、滑液包、筋膜、軟骨、筋肉、結合組織、真皮、滑膜、及び腱靭帯付着部からなる群から選択することができる。
【0043】
溶出物組成物又は粒子組成物に関して、病的状態は、変形性関節症、関節リウマチ、滑液包炎、筋膜炎、腱炎、腱障害、滑膜炎、上顆炎、腱断裂、靭帯断裂、神経損傷、軟骨欠損、滑膜炎、筋膜炎痛、関節形成術、及び筋肉痛からなる群から選択され得る。病的状態は、変形性関節症、滑液包炎及び筋膜炎からなる群から選択され得る。病的状態は、炎症であり得る。溶出物組成物又は粒子組成物は、少なくとも3か月間、少なくとも50%の有効性を維持し得る。
【0044】
それを必要とする患者の身体部分の病的状態を処置するための方法が提供される。処置方法は、患者の身体部分に有効量の本発明の組成物又は胎盤膜シートを投与するステップを含む。組成物は、身体部分に注射することができる。
【0045】
処置方法によれば、胎盤膜シートは、細胞層、網状層、及び偽性基底膜を含み得る。胎盤膜シートは、羊膜をさらに含み得る。胎盤膜シートは、栄養芽層をさらに含み得る。胎盤膜シートは、羊膜及び栄養芽層をさらに含み得る。言い換えると、胎盤膜は無傷の胎盤膜を含み得る。
【0046】
処置方法によれば、胎盤膜シートは、50~800μmの厚さを有し得る。胎盤膜シートは、開窓を有し得る。胎盤膜シートは、90~99%の液体吸収を有し得る。胎盤膜シートは、対照の脱細胞化されていない胎盤膜のDNA含有量よりも少なくとも90%少ないDNA含有量を有し得る。
【0047】
処置方法によれば、身体部分は患者の表面にない。身体部分は、関節又は組織であり得る。関節は、膝関節、肩関節、股関節、肘関節、手首関節、手指関節、足指関節、及び足首関節からなる群から選択することができる。例えば、関節は膝関節であり得る。組織は、腱、靭帯、滑液包、筋膜、軟骨、筋肉、結合組織、真皮、滑膜、及び腱靭帯付着部からなる群から選択することができる。組織は、関節を取り囲む軟組織であり得る。病的状態は、変形性関節症、関節リウマチ、滑液包炎、筋膜炎、腱炎、腱障害、滑膜炎、上顆炎、腱断裂、靭帯断裂、神経損傷、軟骨欠損、滑膜炎、筋膜炎痛、及び筋肉痛からなる群から選択され得る。病的状態は、変形性関節症、滑液包炎及び筋膜炎からなる群から選択され得る。病的状態は、炎症であり得る。病的状態は、変性組織欠損であり得る。
【0048】
身体部分に皮膚創傷を有する場合、処置方法は、胎盤膜シートを創傷に適用するステップをさらに含み得る。処置方法は、胎盤膜シートが創傷に適用された後に、多孔性軟組織足場を創傷に適用するステップをさらに含み得る。
【0049】
病的状態が関節の変形性関節症又は滑膜炎であり、関節が炎症を起こした滑膜組織を含む場合、処置方法は、炎症を起こした滑膜組織に組成物を注射するステップを含み得る。
【0050】
病的状態が関節の変形性関節症又は滑膜炎であり、炎症を起こした滑膜組織が関節から除去された後に関節に創傷を有する場合、処置方法は、胎盤膜シートを創傷に適用するステップを含み得る。患者は、開放関節手術(open join surgery)を受けていてもよい。患者は、関節鏡視下関節手術を受けていてもよい。
【0051】
処置方法は、身体部分の接着性を低下させるステップをさらに含み得る。
【0052】
処置方法は、身体部分の治癒を改善するステップをさらに含み得る。治癒は、腱から骨の治癒であり得る。
【0053】
処置方法は、身体部分へのインプラントの取り込み及び受け入れを改善するステップをさらに含む。インプラントは、同種移植片、異種移植片、シリコーンインプラント、金属インプラント、デバイスインプラント、乳房インプラント、ペースメーカーインプラント、マイクロチップインプラント、薬物送達デバイスインプラント、及び内部モニターインプラントからなる群から選択することができる。
【0054】
処置方法は、組織を胎盤膜シートで包むステップをさらに含み得る。組織は、神経、腱、靭帯、骨、筋肉、及びそれらの組合せからなる群から選択することができる。
【0055】
処置方法は、患者の胎盤膜シートを細胞で再細胞化するステップをさらに含み得る。
【0056】
処置方法は、胎盤膜シートで細胞を増殖させるステップをさらに含み得る。処置方法は、胎盤膜シートで細胞を遊走させるステップをさらに含み得る。処置方法は、細胞によって胎盤膜シートをリモデリングするステップをさらに含み得る。細胞は、滑膜細胞、マクロファージ、線維芽細胞、及びそれらの組合せからなる群から選択することができる。
【0057】
可溶性部分及び固体部分を含む組成物が提供される。可溶性部分は、第1の出産組織に由来する。固体部分は、第2の出産組織の粒子を含む。第1の出産組織は、臍帯、羊膜嚢、胎盤プレート、及びそれらの組合せからなる群から選択することができる。第1の出産組織は、臍帯であり得る。第1の出産組織は胎盤膜であり得、胎盤膜は羊膜、絨毛膜及び栄養芽層を含み得る。第2の出産組織は、臍帯、羊膜嚢、胎盤プレート、及びそれらの組合せからなる群から選択することができる。第2の出産組織は、臍帯であり得る。第2の出産組織は胎盤膜であってもよく、胎盤膜は羊膜、絨毛膜及び栄養芽層を含み得る。第1の出産組織及び第2の出産組織は、同じであってもよい。固体部分は、凍結乾燥形態及び/又は水和形態の可溶性部分によって被覆され得る。
【0058】
可溶性部分及び固体部分は、各々二本鎖DNAを含み得る。可溶性画分及び固体画分は、各々1つ又は複数の生物活性因子を含み得る。1つ又は複数の生物活性因子は、HGF、IL-IRA、PTX-3、IL-8、G-CSF、MCP1、TIMP-1、TIMP-2、TIMP-3、TIMP-4、α2-マクログロブリン、bFGF、PIGF、EGF、TGF-ベータ1、TGF-ベータ2、TGF-ベータ3、PDGF-BB、VEGF-α、アンジオゲニン、PRG-4、HA、細胞外小胞及びエクソソームからなる群から選択され得る。
【0059】
1つ又は複数の生物活性因子を、それを必要とする患者の身体部分に提供するための方法が提供される。この方法は、有効量の本発明による可溶性部分及び固体部分を含む組成物を、患者の身体部分に投与するステップを含む。この方法は、投与後1分以内に1つ又は複数の生物活性因子の5~50%を身体部分に放出させるステップをさらに含み得る。1つ又は複数の生物活性因子は、HGF、IL-IRA、PTX-3、IL-8、G-CSF、MCP1、TIMP-1、TIMP-2、TIMP-3、TIMP-4、α2-マクログロブリン、bFGF、PIGF、EGF、TGF-ベータ1、TGF-ベータ2、TGF-ベータ3、PDGF-BB、VEGF-α、アンジオゲニン、PRG-4、HA、細胞外小胞及びエクソソームからなる群から選択され得る。
【0060】
この方法は、投与後1分以内に、IL1-RA、HA、TIMP-1、TIMP-3、PRG-4、α2-マクログロブリン、PTX-3及び/又はTGF-ベータ3の5~50%を身体部分に放出させるステップをさらに含み得る。
【0061】
この方法は、投与後1分~1時間に、1つ又は複数の生物活性因子の5~50%を身体部分に放出させるステップをさらに含み得る。1つ又は複数の生物活性因子は、HGF、IL-IRA、PTX-3、IL-8、G-CSF、MCP1、TIMP-1、TIMP-2、TIMP-3、TIMP-4、α2-マクログロブリン、bFGF、PIGF、EGF、TGF-ベータ1、TGF-ベータ2、TGF-ベータ3、PDGF-BB、VEGF-α、アンジオゲニン、PRG-4、HA、細胞外小胞及びエクソソームからなる群から選択され得る。組成物が凍結乾燥される場合、この方法は、投与前に、組成物を緩衝液又は水で再水和するステップをさらに含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【
図1】解剖したヒト臍帯切片と、その臍帯切片から除去した2本の動脈を示す図である。
【
図2】それぞれ異なるドナーからの臍帯を用いて調製した、5つの臍帯馴化培地サンプルの剪断粘度を示す図である。すべてのサンプルは高歪み(>10%)で剪断減粘現象(shear thinning phenomenon)を示したことから、サンプルが液体のように振る舞い、より高い剪断で流動したことが示唆される。4つのサンプルは低剪断歪み(<10%)でプラトーを示し、低剪断でのニュートン的挙動(疑似塑性挙動)が示唆される。
【
図3A】3つの異なる細胞濃度、(A)6250細胞/cm
2、(B)12500細胞/cm
2、又は(C)25000細胞/cm
2でプレーティングし、5名のドナーからの臍帯を用いて調製した臍帯馴化培地で、24時間様々な濃度で培養したヒト滑膜細胞の代謝活性を示す図である。
【
図3B】3つの異なる細胞濃度、(A)6250細胞/cm
2、(B)12500細胞/cm
2、又は(C)25000細胞/cm
2でプレーティングし、5名のドナーからの臍帯を用いて調製した臍帯馴化培地で、24時間様々な濃度で培養したヒト滑膜細胞の代謝活性を示す図である。
【
図3C】3つの異なる細胞濃度、(A)6250細胞/cm
2、(B)12500細胞/cm
2、又は(C)25000細胞/cm
2でプレーティングし、5名のドナーからの臍帯を用いて調製した臍帯馴化培地で、24時間様々な濃度で培養したヒト滑膜細胞の代謝活性を示す図である。
【
図4A】3つの異なる濃度、(A)12500細胞/cm
2、(B)18750細胞/cm
2、又は(C)25000細胞/cm
2でプレーティングし、3名のドナーからの臍帯を用いて調製した臍帯馴化培地で、24時間様々な濃度で培養したヒト皮膚線維芽細胞の代謝活性を示す図である。
【
図4B】3つの異なる濃度、(A)12500細胞/cm
2、(B)18750細胞/cm
2、又は(C)25000細胞/cm
2でプレーティングし、3名のドナーからの臍帯を用いて調製した臍帯馴化培地で、24時間様々な濃度で培養したヒト皮膚線維芽細胞の代謝活性を示す図である。
【
図4C】3つの異なる濃度、(A)12500細胞/cm
2、(B)18750細胞/cm
2、又は(C)25000細胞/cm
2でプレーティングし、3名のドナーからの臍帯を用いて調製した臍帯馴化培地で、24時間様々な濃度で培養したヒト皮膚線維芽細胞の代謝活性を示す図である。
【
図5A】(A)25000細胞/cm
2でプレーティングしたRAW細胞と、(B)3名のドナーからの臍帯を用いて調製した臍帯馴化培地で、24時間様々な濃度で培養したRAW細胞の代謝活性を示す図である。
【
図5B】(A)25000細胞/cm
2でプレーティングしたRAW細胞と、(B)3名のドナーからの臍帯を用いて調製した臍帯馴化培地で、24時間様々な濃度で培養したRAW細胞の代謝活性を示す図である。
【
図6A】3名のドナーからの臍帯を用いて調製した臍帯馴化培地で培養したRAW264.7細胞によるTNF-アルファ分泌を示す図である。LPS溶液を、馴化培地処理の1日後(A)又は馴化培地処理の1日前(B)に添加した。両方とも、馴化培地処理によるTNF-アルファ分泌の用量依存的な減少を示した。
【
図6B】3名のドナーからの臍帯を用いて調製した臍帯馴化培地で培養したRAW264.7細胞によるTNF-アルファ分泌を示す図である。LPS溶液を、馴化培地処理の1日後(A)又は馴化培地処理の1日前(B)に添加した。両方とも、馴化培地処理によるTNF-アルファ分泌の用量依存的な減少を示した。
【
図7】-80℃で8日間凍結保存した、処理された臍帯切片から成長している細胞を示す図である。
【
図8】組織培養フラスコを使用して、1日後(左)及び3日後(右)に、凍結保存した、処理された臍帯から成長している細胞の増殖を示す図である。
【
図9A】間葉系幹細胞マーカーを使用して、凍結保存せずに処理された臍帯から成長している細胞のフローサイトメトリーを示す図であり、CD29、CD44、CD73、CD105及びCD166のマーカーでは陽性結果が明らかであり、CD14、CD31、CD34、CD45及びCD19のマーカーでは陰性結果が明らかである。
【
図9B】間葉系幹細胞マーカーを使用して、凍結保存せずに処理された臍帯から成長している細胞のフローサイトメトリーを示す図であり、CD29、CD44、CD73、CD105及びCD166のマーカーでは陽性結果が明らかであり、CD14、CD31、CD34、CD45及びCD19のマーカーでは陰性結果が明らかである。
【
図9C】間葉系幹細胞マーカーを使用して、凍結保存せずに処理された臍帯から成長している細胞のフローサイトメトリーを示す図であり、CD29、CD44、CD73、CD105及びCD166のマーカーでは陽性結果が明らかであり、CD14、CD31、CD34、CD45及びCD19のマーカーでは陰性結果が明らかである。
【
図9D】間葉系幹細胞マーカーを使用して、凍結保存せずに処理された臍帯から成長している細胞のフローサイトメトリーを示す図であり、CD29、CD44、CD73、CD105及びCD166のマーカーでは陽性結果が明らかであり、CD14、CD31、CD34、CD45及びCD19のマーカーでは陰性結果が明らかである。
【
図10A】間葉系幹細胞マーカーを使用して、凍結保存した臍帯から成長している細胞のフローサイトメトリーを示す図であり、CD29、CD44、CD73、CD105及びCD166のマーカーでは陽性結果が明らかであり、CD14、CD31、CD34、CD45、及びCD19のマーカーでは陰性結果が明らかである。これらの結果は、凍結保存が細胞表現型を変化させなかったことを示唆している。
【
図10B】間葉系幹細胞マーカーを使用して、凍結保存した臍帯から成長している細胞のフローサイトメトリーを示す図であり、CD29、CD44、CD73、CD105及びCD166のマーカーでは陽性結果が明らかであり、CD14、CD31、CD34、CD45、及びCD19のマーカーでは陰性結果が明らかである。これらの結果は、凍結保存が細胞表現型を変化させなかったことを示唆している。
【
図10C】間葉系幹細胞マーカーを使用して、凍結保存した臍帯から成長している細胞のフローサイトメトリーを示す図であり、CD29、CD44、CD73、CD105及びCD166のマーカーでは陽性結果が明らかであり、CD14、CD31、CD34、CD45、及びCD19のマーカーでは陰性結果が明らかである。これらの結果は、凍結保存が細胞表現型を変化させなかったことを示唆している。
【
図10D】間葉系幹細胞マーカーを使用して、凍結保存した臍帯から成長している細胞のフローサイトメトリーを示す図であり、CD29、CD44、CD73、CD105及びCD166のマーカーでは陽性結果が明らかであり、CD14、CD31、CD34、CD45、及びCD19のマーカーでは陰性結果が明らかである。これらの結果は、凍結保存が細胞表現型を変化させなかったことを示唆している。
【
図11】6mg/mlの臍帯馴化培地ヒドロゲルの形成を示す図である。
【
図12】注射用出産組織製剤の抗炎症効果を示す。3つのすべての注射用出産組織製剤は、LPSで刺激したRAW細胞からのTNF-アルファ分泌を効果的に減少させた。試験した両方の濃度の製剤1及び製剤3によって処理したRAW細胞では、製剤量対照群と比較した場合、95%を超えるTNF-アルファの減少が見られた。10mg/mL及び5mg/mlの製剤2では、製剤量対照群と比較した場合、それぞれ、92.5%及び86.9%の用量依存的なRAW細胞TNF-アルファの減少が生じた。
【
図13】初代ヒト滑膜細胞に対する注射用出産組織製剤の増殖効果を示す図である。3つのすべての製剤群では、培地対照群と比較した場合、それぞれ、212%、166%、及び197%のパーセンテージで初代ヒト滑膜細胞の増殖を効果的に誘導した。
【
図14】注射用出産組織製剤がMMP1酵素活性を阻害することを示す図である。3つのすべての注射用出産組織製剤は、MMP1酵素活性を効果的に阻害した。
【
図15A】代表的なドナーからの注射用出産組織製剤の剪断粘度測定を示す図である。(A)臍帯溶出物を含む製剤は、臍帯溶出物を含まない製剤と比較した場合、一貫して低剪断粘度を示した。臍帯溶出物は、注射用出産組織製剤の剪断粘度を低下させることができた。(B)臍帯馴化培地を含む製剤からの剪断粘度において、50%の剪断歪みで、臍帯馴化培地を含まない製剤と比較した場合、3名のドナーから平均38%の低下が観察された。
【
図15B】代表的なドナーからの注射用出産組織製剤の剪断粘度測定を示す図である。(A)臍帯溶出物を含む製剤は、臍帯溶出物を含まない製剤と比較した場合、一貫して低剪断粘度を示した。臍帯溶出物は、注射用出産組織製剤の剪断粘度を低下させることができた。(B)臍帯馴化培地を含む製剤からの剪断粘度において、50%の剪断歪みで、臍帯馴化培地を含まない製剤と比較した場合、3名のドナーから平均38%の低下が観察された。
【
図16】注射用出産組織製剤の結束性試験を示す図である。結果からは、40mg(乾燥)粒子/mL以上の濃度で、未希釈の臍帯溶出物が注射用PM粒子の結束性を高めることができることが明らかであった。
【
図17A】注射用出産組織製剤によるMMP1酵素活性阻害を示す図である。(A)注射用出産組織製剤は、MMP1酵素活性を阻害した。(B)臍帯溶出物を含む注射用出産組織製剤は、35分で臍帯溶出物を含まない注射用出産組織製剤よりも有意に優れた阻害効果を示した。
【
図17B】注射用出産組織製剤によるMMP1酵素活性阻害を示す図である。(A)注射用出産組織製剤は、MMP1酵素活性を阻害した。(B)臍帯溶出物を含む注射用出産組織製剤は、35分で臍帯溶出物を含まない注射用出産組織製剤よりも有意に優れた阻害効果を示した。
【
図18A】注射用出産組織製剤の経時的な生化学的因子放出アッセイを示す図である。臍帯溶出物を含む注射用出産組織製剤は、臍帯溶出物を含まない製剤と比較した場合、再水和の5分後及び60分後の両方で、より容易に入手可能な可溶性生化学的因子を含んでいた。1名の代表的なドナーからのデータを各分析物について示す。
【
図18B】注射用出産組織製剤の経時的な生化学的因子放出アッセイを示す図である。臍帯溶出物を含む注射用出産組織製剤は、臍帯溶出物を含まない製剤と比較した場合、再水和の5分後及び60分後の両方で、より容易に入手可能な可溶性生化学的因子を含んでいた。1名の代表的なドナーからのデータを各分析物について示す。
【
図19A】臍帯溶出物による組換えFGF-2保護を示す図である。凍結乾燥及び再構成した臍帯溶出物(A及びB)と凍結した臍帯溶出物(C及びD)の両方とも、市販の組換えFGF-2の熱分解に対する保護効果を示した。
【
図19B】臍帯溶出物による組換えFGF-2保護を示す図である。凍結乾燥及び再構成した臍帯溶出物(A及びB)と凍結した臍帯溶出物(C及びD)の両方とも、市販の組換えFGF-2の熱分解に対する保護効果を示した。
【
図19C】臍帯溶出物による組換えFGF-2保護を示す図である。凍結乾燥及び再構成した臍帯溶出物(A及びB)と凍結した臍帯溶出物(C及びD)の両方とも、市販の組換えFGF-2の熱分解に対する保護効果を示した。
【
図19D】臍帯溶出物による組換えFGF-2保護を示す図である。凍結乾燥及び再構成した臍帯溶出物(A及びB)と凍結した臍帯溶出物(C及びD)の両方とも、市販の組換えFGF-2の熱分解に対する保護効果を示した。
【0063】
[発明の詳細な説明]
本発明は、出産組織由来の生成物、例えば、出産組織溶出物、出産組織粒子及び胎盤膜シート、並びにそれらの調製及び使用に関する。本発明は、臍帯溶出物とも呼ばれる、出産組織粒子、例えば臍帯粒子をインキュベートするために使用された培養培地の粘性上清が、予期しない抗炎症効果、プロテアーゼ阻害効果、結束性増強効果、及び生化学的因子の有効期間延長効果を示すという驚くべき発見に基づいている。本発明者らはまた、臍帯溶出物、並びに、臍帯及び/又は特に無傷の羊膜、絨毛膜及び栄養芽層を有する胎盤膜の粒子を含む注射用組成物を発見した。注射用組成物中の溶出物は、出産組織の粒子の周囲に十分な濃度の可溶性生物活性因子(例えば、生化学的因子)を提供し、水和及び/又は液体環境への適用の直後に機能するようになった。本発明は、HA処置と生体分子処置の利点を組み合わせることによって、より標準化された治療を提供し、一方、生体活性成分の量は各患者のニーズに合わせてより良好に調整することができる。さらに、本発明は、炎症を起こした滑膜を再構築し、滑膜炎を処置するための生物活性分子のより持続可能な放出を提供する新しい処置を提供するが、現在のところその利用可能な処置は、炎症を起こした滑膜を除去する滑膜切除のみである。
【0064】
本明細書で使用される用語「出産組織」とは、羊膜嚢、臍帯、胎盤プレート、又はそれらの組合せを意味する。本明細書で使用される「出産組織由来の生成物」とは、出産組織の溶出物、粒子若しくはシート、又はそれらの組合せを意味する。
【0065】
本明細書で使用される用語「羊膜嚢」とは、胚及び後には胎児が成長する羊水を保持する、薄くても丈夫な胎盤膜を意味する。羊膜嚢は、内層(すなわち、羊膜層)及び外層(すなわち、絨毛膜層)を含む。羊膜層は、いくつかの副層、例えば、上皮、基底膜、緻密層、線維芽細胞層、及び海綿層(内側から外側へ)を含む。同様に、絨毛膜層は、いくつかの副層、例えば、細胞層、網状層、偽性基底膜、及び栄養芽層(内側から外側へ)を含む。絨毛膜には、細胞層、網状層、及び偽性基底膜が含まれる。羊膜層及び絨毛膜層は、細胞並びに細胞分子及び細胞外分子(例えば、増殖因子、酵素、及び細胞外マトリックス分子)をそれぞれ含む。羊膜嚢はドナーから得ることができる。ドナーは、哺乳動物、例えば、ヒト、ウシ、ブタ、マスス、ヒツジ、ウマ、イヌ、ヤギ及びネコ、好ましくはヒトであり得る。
【0066】
本明細書で使用される用語「胎盤膜」とは、羊膜嚢に由来する組織を意味し、羊膜層(羊膜としても知られている)、細胞層を含む絨毛膜層、網状層、偽性基底膜、及び栄養芽層が含まれる。
【0067】
用語「無傷の胎盤膜」及び「無傷の羊膜/絨毛膜層」は、本明細書では互換的に使用され、無傷の胎盤膜から羊膜、細胞層、網状層、偽性基底膜及び栄養芽層のうちのいずれか1つ又は複数を除去(例えば、分離及び単離)していない羊膜嚢からの、細胞層、網状層、偽性基底膜及び栄養芽層を含む、羊膜層及び絨毛膜層を有する組織を意味する。
【0068】
いくつかの実施形態では、出産組織は、羊膜、細胞層、網状層、偽性基底膜及び栄養芽層を含む、無傷の胎盤膜であり得る。他の実施形態では、出産組織は、無傷の胎盤膜から羊膜、細胞層、網状層、偽性基底膜及び栄養芽層のうちの1つ又は複数が除去された後に得られる胎盤膜であり得る。本発明による胎盤膜は、羊膜及び栄養芽層が無傷の胎盤膜から除去された後の細胞層、網状層、及び偽性基底膜を含み得る。
【0069】
本発明による胎盤膜は、栄養芽層が無傷の胎盤膜から除去された後の羊膜、細胞層、網状層、及び偽性基底膜を含み得る。
【0070】
本発明による胎盤膜は、羊膜が無傷の胎盤膜から除去された後の細胞層、網状層、偽性基底膜、及び栄養芽層を含み得る。
【0071】
本明細書で使用される場合の用語「粒子」とは、出産組織の小片を意味する。粒子は、0.1~10,000、0.1~5,000、0.1~2,000、0.1~1,000、0.1~500、0.1~100、0.1~10、0.1~1、0.5~10,000、0.5~5,000、0.5~2,000、0.5~1,000、0.5~500、0.5~100、0.5~10、0.5~1、1~10,000、1~5,000、1~2,000、1~1,000、1~500、1~100、1~10、5~10,000、5~5,000、5~2,000、5~1,000、5~500、5~100、5~10、10~10,000、10~5,000、10~2,000、10~1,000、10~500、10~100、50~10,000、50~5,000、50~2,000、50~1,000、50~500、50~100、100~10,000、100~5,000、100~2,000、100~1,000、又は100~500μmの範囲の平均粒子サイズを有し得る。例えば、粒子は、10~2,000μmの範囲の平均粒子サイズを有し得る。
【0072】
本明細書で使用される用語「凍結保存した」又は「凍結保存している」とは、出産組織又は出産組織に由来する生成物を水の凝固点より下の温度に冷却することによって、出産組織又は出産組織に由来する生成物、例えば、溶出物、粒子又は出産組織のシートを凍結保存培地で保存することを意味する。
【0073】
本明細書で使用される用語「微粒化する」又は「微粒化している」とは、出産組織の一部を粒子に切断することを意味する。組織は、例えば、研削、粉砕、細断、微粉砕、又は破砕することによって、機械的に微粒化することができる。
【0074】
本明細書で使用される用語「可溶化された細胞外マトリックス成分」とは、溶液中の細胞外マトリックスタンパク質を意味する。細胞外マトリックスタンパク質は、コラーゲン、ヒアルロナン/ヒアルロン酸、ラミニン、及び/又はフィブロネクチン、並びにそれらの組合せからなる群から選択することができる。
【0075】
本明細書で使用される用語「注射用組成物」とは、注射によって対象、例えば患者の身体部分に送達するのに適した組成物を意味する。注射用組成物は、注射器又は他の送達デバイスに連結された針、カニューレ、又はカテーテルを介して送達され得る。注射用組成物は、1~2000ミクロンの範囲の粒子サイズを有し得る。組成物は、10~30ゲージの針を通して注射することができる。
【0076】
用語「有効量」とは、明示した目標(例えば、身体部分の病的状態の処置、身体部分の接着性の低減、身体部分の治癒の改善、身体部分へのインプラントの取り込みの改善)を達成するために必要とされる出産組織、出産組織由来の生成物又はそれらの組成物の量を意味する。出産組織、出産組織由来の生成物又はそれらの組成物の有効量は、明示した目標及び組成物の物理的特性に応じて変わり得る。
【0077】
用語「可溶化された」及び「可溶性」とは、本明細書では互換的に使用され、溶媒、特に水に溶解される生物活性成分、生物活性因子又は生化学的因子を意味する。得られた溶液は、相又は層の分離はなく均質である。沈澱は肉眼では観察されない。
【0078】
本明細書で使用される用語「身体部分の接着性」とは、身体部分の表面に物体が接着する可能性のことを意味する。身体部分の接着性の低減は、身体部分の表面への望ましくない物体の接着を防ぐ。
【0079】
本明細書で使用される用語「身体部分の治癒」とは、身体部分の病的状態を軽減又は緩和する方法を意味する。身体部分の治癒は、例えば、病的状態に関連することが知られている1つ又は複数のバイオマーカーの発現の増加又は減少によって証明することができる。例えば、バイオマーカーは、腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-アルファ)、インターロイキン1a、又は炎症に関連するインターロイキン1bであってもよく、滑膜細胞活性に関連するラブリシン/プロテオグリカン4であってもよい。
【0080】
本明細書で使用される用語「インプラントの身体部分への取り込み」とは、インプラントを全身部分の一部として含めることにより証明されるか、又は身体は、例えばインプラントの周囲に厚い封入を生成することにより拒絶されない場合のインプラントの身体部分への統合を意味する。
【0081】
本明細書で使用される用語「病的状態」とは、疾患に関連するか否かにかかわらず、身体部分の状態を意味する。病的状態は、病的骨折、病的組織、又は病的プロセスに関連し得る。病的状態の例には、変形性関節症、関節リウマチ、滑液包炎、筋膜炎、腱炎、腱障害、滑膜炎、上顆炎、腱断裂、靭帯破裂、神経損傷、軟骨欠損、滑膜炎、筋膜炎痛及び筋肉痛が含まれる。
【0082】
本明細書で使用される用語「in vivoで持続可能な」とは、例えば、所定の期間にわたって、身体部分又は関節の病的状態を処置するための有効性を維持する組成物の能力を意味する。本発明の組成物は、少なくとも0.5、1、2、3、4、5若しくは6か月、又は1~2、1~3若しくは1~6か月であってよい所定の期間、少なくとも10、20、30、40、50、60、70又は80%の有効性を維持することができる。
【0083】
本明細書で使用される用語「脱細胞化」又は「脱細胞化する」とは、出産組織又は出産組織由来の生成物から細胞を除去することを意味する。本明細書で使用される用語「再細胞化」とは、脱細胞化された出産組織又は出産組織由来の生成物に細胞を添加することを意味する。
【0084】
本明細書で使用される用語「胎盤膜シートをリモデリングする」又は「胎盤膜シートのリモデリング」とは、胎盤膜シートの構造的な再編成、改変、又は再生を含む、胎盤膜シートの構造的な変化を意味する。本明細書で使用される用語「再編成」とは、マトリックス成分の配向、密度、又は比率の再配置を意味する。本明細書で使用される用語「改変」とは、変化を意味する。本明細書で使用される用語「再生」とは、古い成分を新しい成分で置き換えることを意味する。胎盤膜シートのリモデリングは、胎盤膜シートにおける細胞成長、例えば、胎盤膜シートからの細胞の伸長、又は胎盤膜シートにおける細胞の遊走によって証明することができる。
【0085】
本明細書で使用される用語「レシピエント細胞」とは、出産組織由来の生成物、例えば胎盤膜シートなどを受け取る対象、例えば患者の細胞を意味する。レシピエント細胞は、胎盤膜に付着し、胎盤膜に成長し、及び/又は胎盤膜内を遊走し得る。レシピエント細胞の例には、線維芽細胞、内皮細胞、幹細胞、ケラチノサイト、マクロファージ、滑膜細胞、軟骨細胞、腱細胞、筋芽細胞、筋細胞、前駆細胞、及び上皮細胞が含まれる。
【0086】
本明細書で使用される用語「液体吸収」とは、出産組織又は出産組織由来の生成物による液体の取り込みを意味する。吸収された液体は、生体分子及び/又は化学化合物を含み得る。
【0087】
本明細書で使用される用語「多孔性軟組織足場」又は「多孔性スポンジ様構造」とは、多孔性、弾性、可撓性、繊維性、及び弾力性である三次元構造を意味する。さらに、好ましい「多孔性スポンジ様構造」は、一緒になって保持されるか、又は実質的に無傷のままであるという意味において、実質的にコヒーレントである(coherent)(又は結束性である(cohesive))。本明細書で使用される場合、用語「コヒーレントな」又は「結束性の」とは、物質の構造の要素が(分解又は分離されることなく一緒になって保持されるという意味で)実質的に無傷のままで維持されているという特性を意味する。例えば、結束性である又はコヒーレントな注射用出産組織製剤は、一緒になって保持され、液体への注射後に形状を維持する。乾燥状態においては、本発明の多孔性スポンジ様足場は、流体を素早く吸収することができる。湿潤状態においては、本発明の多孔性スポンジ様足場は、多孔性、結束性、及び/又は完全性を維持することができる。湿潤多孔性スポンジ様構造は、ある特定の引張応力に抵抗し、圧縮から解放された後に跳ね返って流体を再吸収することができる。
【0088】
本発明は、出産組織の溶出物を調製する方法を提供する。調製方法は、出産組織の粒子を液体と混合して混合物を形成するステップと、混合物をインキュベートするステップと、混合物から上清を回収するステップを含む。上清は出産組織の溶出物であり、出産組織溶出物又は馴化培地とも呼ばれる。同じ出産組織又は異なる出産組織の断片を使用することができる。
【0089】
出産組織は、臍帯、羊膜嚢、胎盤プレート、及びそれらの組合せであり得る。一実施形態では、出産組織は臍帯であり得る。別の実施形態では、出産組織は、羊膜に由来する胎盤膜であり得る。胎盤膜は、細胞層、網状層、及び偽性基底膜を含み得る。胎盤膜は、羊膜、細胞層、網状層、及び偽性基底膜を含み得る。胎盤膜は、細胞層、網状層、偽性基底膜、及び栄養芽層を含み得る。胎盤膜は、羊膜、細胞層、網状層、偽性基底膜、及び栄養芽層を含み得る。
【0090】
出産組織は、酵素で処理されていなくてもよい。酵素は、消化酵素、例えば、オキシドレダクターゼ、トランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼ、及び/又はリガーゼ、特にコラゲナーゼ、プロテアーゼ、ペプシン、又はヒアルロニダーゼであり得る。酵素は、出産組織に由来しなくてもよい。言い換えると、酵素は出産組織に対して外因性である。
【0091】
出産組織粒子とも呼ばれる出産組織の粒子は、生細胞を含み得る。出産組織粒子は、生細胞を含んでいなくてもよい。出産組織粒子は、凍結保存されていてもよい。出産組織粒子は、凍結乾燥又は凍結されていてもよい。出産組織粒子は、酵素で処理されていなくてもよい。酵素は消化酵素、例えば、オキシドレダクターゼ、トランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼ、及び/又はリガーゼ、特にコラゲナーゼ、プロテアーゼ、ペプシン、又はヒアルロニダーゼであり得る。酵素は、出産組織に由来しなくてもよい。言い換えると、酵素は出産組織に対して外因性である。
【0092】
この方法は、処理された出産組織を微粒化して出産組織粒子を作製するステップをさらに含み得る。処理された出産組織は、臍帯、羊膜嚢、胎盤プレート、及びそれらの組合せからなる群から選択することができる。一実施形態では、出産組織は臍帯であり、処理された出産組織は処理された臍帯である。処理された臍帯は、臍帯動脈を含んでいなくてもよい。処理された臍帯は、臍帯静脈内皮細胞を含んでいなくてもよい。処理された臍帯は、生細胞を含み得る。処理された臍帯は、生細胞を含んでいなくてもよい。処理された臍帯は、凍結保存されていてもよい。処理された臍帯は、凍結乾燥されていてもよい。別の実施形態では、出産組織は胎盤膜であり、処理された出産組織は処理された胎盤膜である。処理された胎盤膜は、脱細胞化又は凍結保存されていてもよい。処理された胎盤膜は、凍結乾燥されていてもよい。処理された胎盤膜は、生細胞を含み得る。処理された胎盤膜は、生細胞を含んでいなくてもよい。
【0093】
出産組織粒子又は出産組織の溶出物を調製するために液体と混合した処理された出産組織粒子のサイズは、0.1~10,000、0.1~5,000、0.1~2,000、0.1~1,000、0.1~500、0.1~100、0.1~10、0.1~1、0.5~10,000、0.5~5,000、0.5~2,000、0.5~1,000、0.5~500、0.5~100、0.5~10、0.5~1、1~10,000、1~5,000、1~2,000、1~1,000、1~500、1~100、1~10、5~10,000、5~5,000、5~2,000、5~1,000、5~500、5~100、5~10、10~10,000、10~5,000、10~2,000、10~1,000、10~500、10~100、50~10,000、50~5,000、50~2,000、50~1,000、50~500、50~100、100~10,000、100~5,000、100~2,000、100~1,000、又は100~500μmの範囲の平均粒子サイズを有し得る。例えば、出産組織粒子又は処理された出産組織粒子は、10~2,000μmの範囲の平均粒子サイズを有し得る。
【0094】
出産組織片又は出産組織の溶出物を調製するために液体と混合した処理された出産組織片のサイズは、0.2×0.2~50×50、0.2×0.2~30×30、0.2×0.2~15×15、0.2×0.2~10×10、0.2×0.2~5×5、0.2×0.2~l×l、0.2×0.2~0.5×0.5、0.5×0.5~50×50、0.5×0.5~30×30、0.5×0.5~15×15、0.5×0.5~10×10、0.5×0.5~5×5、0.5×0.5~l×l、1×1~50×50、1×1~30×30、1×1~15×15、1×1~10×10、l×l~5×5、2×2~50×50、2×2~30×30、2×2~15×15、2×2~10×10、2×2~5×5、5×5~50×50、5×5~30×30、5×5~15×15、5×5~10×10、10×10~50×50、10×10~30×30、10×10~15×15、15×15~50×50、15×15~30×30又は30×30~50×50cm2の範囲の平均表面積を有し得る。例えば、出産組織片又は処理された出産組織片は、1~2500cm2の範囲の平均表面積を有し得る。
【0095】
液体は、出産組織の生物学的活性を保存するのに適した任意の液体であり得る。例えば、液体は、培養培地、馴化培地、等張液(例えば、生理食塩水及び乳酸リンゲル液)、低張液又は水であり得る。一実施形態では、液体は培養培地である。
【0096】
調製方法の混合ステップは、混合装置、例えば、シェーカー、ミキサー、又はロッカーで実施することができる。混合ステップは、混合物が1~5000rpm、1~4000rpm、1~3000rpm、1~2000rpm、1~1000rpm、1~500rpm、10~500rpm、又は50~500rpmの速度で混合されるような条件下で実施される。
【0097】
出産組織粒子又は処理された出産組織粒子の重量と、混合ステップで使用される液体の容積との比は、1000:1~1:1000、1000:1~1:500、1000:1~1:200、1000:1~1:100、1000:1~1:50、1000:1~1:10、1000:1~1:1、500:1~1:1000、500:1~1:500、500:1~1:200、500:1~1:100、500:1~1:50、500:1~1:10、500:1~1:1、200:1~1:1000、200:1~1:500、200:1~1:200、200:1~1:100、200:1~1:50、200:1~1:10、200:1~1:1、100:1~1:1000、100:1~1:500、100:1~1:200、100:1~1:100、100:1~1:50、100:1~1:10、100:1~1:1、50:1~1:1000、50:1~1:500、50:1~1:200、50:1~1:100、50:1~1:50、50:1~1:10、50:1~1:1、10:1~1:1000、10:1~1:500、10:1~1:200、10:1~1:100、10:1~1:50、10:1~1:10、10:1~1:10、10:1~1:1、1:1~1:1000、1:1~1:500、1:1~1:200、1:1~1:100、1:1~1:50、又は1:1~1:10の範囲であり得る。
【0098】
出産組織片又は処理された出産組織片の総表面積と、混合ステップで使用される液体の容積との比は、1000:1~1:1000、1000:1~1:500、1000:1~1:200、1000:1~1:100、1000:1~1:50、1000:1~1:10、1000:1~1:1、500:1~1:1000、500:1~1:500、500:1~1:200、500:1~1:100、500:1~1:50、500:1~1:10、500:1~1:1、200:1~1:1000、200:1~1:500、200:1~1:200、200:1~1:100、200:1~1:50、200:1~1:10、200:1~1:1、100:1~1:1000、100:1~1:500、100:1~1:200、100:1~1:100、100:1~1:50、100:1~1:10、100:1~1:1、50:1~1:1000、50:1~1:500、50:1~1:200、50:1~1:100、50:1~1:50、50:1~1:10、50:1~1:1、10:1~1:1000、10:1~1:500、10:1~1:200、10:1~1:100、10:1~1:50、10:1~1:10、10:1~1:10、10:1~1:1、1:1~1:1000、1:1~1:500、1:1~1:200、1:1~1:100、1:1~1:50、又は1:1~1:10の範囲であり得る。
【0099】
混合物は、ある所定の期間、1~40、1~37、1~30、1~25、1~20、1~15、1~10、1~4、-10~0、又は-5~0℃の温度でインキュベートされ得る。期間は、0.5~960、1~960、1~840、1~720、1~600、1~480、1~360、1~240、1~180、1~120、1~60、又は1~30時間であり得る。
【0100】
出産組織溶出物は粘性を有し得る。出産組織溶出物は、1~5Hzで、0.1~500、1~100、1~50、0.1~10、5~45、又は15~45Pa・sの剪断粘度を有し得る。一実施形態では、出産組織溶出物の剪断粘度は、2.5Hzで5~45Pa・sであり得るか、又は0.5Hzで0.1~10Pa・sであり得る。出産組織溶出物は、0.5~1Hzでは、10%を超える歪みで0.01~0.2、0.01~0.15、0.01~0.1、又は0.05~0.8Pa・sの剪断粘度と、10%未満の歪みで0.05~10、0.05~5、0.05~2、0.05~1、又は0.1~1Pa・sの剪断粘度とを有し得る。出産組織溶出物は、チューブを逆さまにした後でも出産組織溶出物がチューブ内で流動できないような粘性があり得る。
【0101】
出産組織溶出物は二本鎖DNAを含み得る。出産組織溶出物は、1~3000、30~3000、50~3000、50~2000、又は100~2000ng DNA/mL溶出物の二本鎖DNAを有し得る。
【0102】
出産組織溶出物は、様々な可溶化された生物活性成分を含み得る。可溶化された生物活性成分は、ヒアルロン酸(HA)、サイトカイン、増殖因子、プロテアーゼ阻害剤、例えば、メタロプロテイナーゼの組織阻害剤(TIMP)、及び/又はケモカインを含み得る。調製方法は、溶出物中の生物活性成分の濃度を所望するレベルに調整するステップをさらに含み得る。
【0103】
出産組織溶出物は、ヒアルロン酸(HA)を含み得る。出産組織溶出物中のHAの濃度は、0.01~100、0.05~50、0.1~20、0.5~10mg、1~10、又は1~5mg/mLであり得る。出産組織溶出物は、出産組織に由来しないHAを含んでいなくてもよい。調製方法は、溶出物中のHA濃度を調整するステップをさらに含み得る。HAは、5~10,000kDa、5~8,000kDa、5~6,000kDa、又は8~6,000kDaの様々な分子量を含有し得る。HA濃度は、例えば、4.5~5.5mg/mL又は9~11mg/mLで望ましいレベルに調整することができる。
【0104】
出産組織溶出物は、1つ又は複数のサイトカインを含み得る。サイトカインは、インターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1RA)、IL-4、IL-6、IL-8、IL-10、IL-11、及び/又はIL-13であり得る。出産組織溶出物中のIL-1RAの濃度は、10~2000、50~1000、50~500、又は10~500ng/mLであり得る。出産組織溶出物は、出産組織に由来しないサイトカインを含んでいなくてもよい。調製方法は、溶出物中のサイトカインの濃度を調整するステップをさらに含み得る。サイトカイン濃度は、例えば、250~350ng/mLで望ましいレベルに調整することができる。出産組織溶出物は、相当な量のIL-1を含んでいなくてもよい。IL-1ベータの濃度は、10、50、100、又は200pg/mLを超えていなくてもよい。
【0105】
出産組織溶出物は、1つ又は複数の生物活性因子(例えば生化学的因子)を含み得る。生物活性因子は、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF若しくはFGF-2)、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-ベータ)、血小板由来増殖因子-AA(PDGF-AA)、血小板由来増殖因子-BB(PDGF-BB)、トランスフォーミング増殖因子アルファ(TGF-アルファ)、肝細胞増殖因子(HGF)、胎盤増殖因子(PIGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、増殖分化因子(GDF)、インスリン様増殖因子(IGF)、インスリン様増殖因子結合タンパク質(IGFBP)、上皮増殖因子(EGF)、間質細胞由来因子-1(SDF-1)、アンジオゲニン、ペントラキシン(PTX)、及び/又は顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)であり得る。出産組織溶出物中のbFGFの濃度は、1~10,000ng/mLであり得る。出産組織溶出物は、出産組織に由来しない増殖因子を含んでいなくてもよい。調製方法は、溶出物中の増殖因子の濃度を調整するステップをさらに含み得る。増殖因子濃度は、例えば90~110ng/mLで望ましいレベルに調整することができる。
【0106】
出産組織溶出物はプロテアーゼ阻害剤を含み得る。出産組織溶出物は、プロテアーゼを含み得る。出産組織溶出物は、出産組織に由来しないプロテアーゼ阻害剤を含んでいなくてもよい。出産組織溶出物は、出産組織に由来しないプロテアーゼを含んでいなくてもよい。プロテアーゼは、トリプシン、セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、スレオニンプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、又はメタロプロテアーゼであり得る。プロテアーゼ阻害剤は、メタロプロテイナーゼの組織阻害剤(TIMP)及び/又はアルファ-2-マクログロブリン(A2M)であり得る。TIMPは、TIMP-1、TIMP-2、TIMP-3、又はTIMP-4のものであり得る。出産組織溶出物中のTIMP-1の濃度は、0.1~100、0.5~100、1~100、1~50、1~30、1~20、又は1~10μg/mLであり得る。調製方法は、溶出物中のTIMPの濃度を調整するステップをさらに含み得る。TIMP濃度は、望ましいレベルに調整することができ、例えば、TIMP-1濃度を2.5~3.5μg/mL又は4.5~5.5μg/mLに調整することができる。出産組織溶出物中のA2M濃度は、0.1~1000、1~1000、1~500、1~100、又は10~100μg/mLであり得る。
【0107】
出産組織溶出物は細胞外小胞を含み得る。出産組織溶出物は、出産組織に由来しない細胞外小胞を含んでいなくてもよい。細胞外小胞は、バイオマーカー、例えばCD40+で陽性となり得る。出産組織溶出物中の細胞外小胞の数は、1mL当たり10,000~100,000,000、10,000~50,000,000、10,000~20,000,000、1,000,000~100,000,000、1,000,000~50,000,000、又は1,000,000~20,000,000個であり得る。調製方法は、溶出物中の細胞外小胞の数を調整するステップをさらに含み得る。細胞外小胞は、例えば、1mL当たり10,000,000~50,000,000個又は1mL当たり50,000,000~100,000,000個で望ましいレベルに調整することができる。
【0108】
出産組織溶出物はエクソソームを含み得る。出産組織溶出物は、出産組織に由来しないエクソソームを含んでいなくてもよい。エクソソームは、バイオマーカー、例えばCD9+で陽性となり得る。出産組織溶出物中のエクソソームの数は、1mL当たり10,000~100,000,000、10,000~50,000,000、10,000~20,000,000、1,000,000~100,000,000、1,000,000~50,000,000、又は1,000,000~20,000,000個であり得る。調製方法は、溶出物中のエクソソームの数を調整するステップをさらに含み得る。エクソソームは、例えば、1mL当たり10,000,000~50,000,000個、又は1mL当たり50,000,000~100,000,000個で望ましいレベルに調整することができる。
【0109】
出産組織溶出物は、相当な量(例えば、90、95、97、99又は99.9wt%又はmg/mlを超える)の可溶化された細胞外マトリックス成分を含んでいなくてもよい。細胞外マトリックス成分は、コラーゲン、ラミニン、及び/又はフィブロネクチン、並びにそれらの組合せからなる群から選択され得る。可溶化された細胞外マトリックスタンパク質は、出産組織溶出物の0.01、0.05、0.1、0.5、1、2、3、4、又は5wt%又はmg/ml未満を構成し得る。
【0110】
出産組織溶出物は、相当な量(例えば、90、95、97、99又は99.9wt%又はmg/mlを超える)の可溶化されたコラーゲンを含んでいなくてもよい。可溶化されたコラーゲンは、出産組織溶出物の0.01、0.05、0.1、0.5、1、2、3、4、又は5wt%未満を構成し得る。出産組織溶出物は、0.01、0.05、0.1、0.5、1、2、3、4、又は5mg/ml未満のコラーゲンを含み得る。
【0111】
出産組織溶出物は、相当な量(例えば、90、95、97、99又は99.9wt%又はmg/mlを超える)の可溶化されたラミニンを含んでいなくてもよい。可溶化されたラミニンは、出産組織溶出物の5、3、又は1wt%又はmg/ml未満を構成し得る。出産組織溶出物は、0.01、0.05、0.1、0.5、1、2、3又は5mg/ml未満のラミニンを含み得る。
【0112】
溶出物が存在する場合の生物活性因子は、溶出物が存在しない場合の同じ生物活性因子よりも、異なる温度でより長い有効期間を有し得る。溶出物は、常温での生物活性因子の有効期間を1分~48時間に延ばし得る。溶出物は、生物活性因子の有効期間を少なくとも10、100、500、又は1,000倍に延ばし得る。溶出物は、常温で24時間、20%~100%、30%~100%、30%~80%、40%~80%、又は50%~100%の検出可能な生物活性因子を維持することができる。溶出物は、常温で2日間、20%~100%、30%~100%、30%~80%、40%~80%、又は50%~100%の検出可能な生物活性因子を維持することができる。溶出物は、37℃で24時間、20%~100%、30%~100%、30%~80%、40%~80%、又は50%~100%の検出可能な生物活性因子を維持することができる。溶出物は、37℃で2日間、20%~100%、30%~100%、30%~80%、40%~80%、又は50%~100%の検出可能な生物活性因子を維持することができる。
【0113】
調製方法は、例えば、凍結乾燥(freeze drying)としても知られている凍結乾燥(lyophilizing)によって溶出物を脱水するステップをさらに含み得る。脱水時に1つ又は複数の薬剤を添加して、液体で再水和又は再懸濁した場合に脱水した溶出物の溶解性を改善することができる。調製方法は、溶出物を保存するステップをさらに含み得る。溶出物は、50、40、30、25、20、15、10、4又は-20℃未満の温度で、又は1~50、1~40、1~30、1~25、1~20、1~15、1~10、1~4、又は4~20℃の範囲で保存することができる。
【0114】
それぞれの調製方法では、出産組織溶出物が提供される。例えば、本発明の任意の調製方法に従って調製された臍帯溶出物が提供される。出産組織溶出物、例えば臍帯溶出物を含む組成物もまた提供される。
【0115】
それを必要とする患者の身体部分の病的状態を処置するための組成物が提供される。組成物は、有効量の出産組織の溶出物と薬学的に許容できる担体とを含む。組成物は注射することができる。出産組織は、臍帯、羊膜嚢、胎盤プレート、及びそれらの組合せであり得る。一実施形態では、出産組織は臍帯である。別の実施形態では、出産組織は胎盤膜である。胎盤膜は、細胞層、網状層、及び偽性基底膜を含み得る。胎盤膜は、羊膜、細胞層、網状層、及び偽性基底膜を含み得る。胎盤膜は、細胞層、網状層、偽性基底膜、及び栄養芽層を含み得る。胎盤膜は、羊膜、細胞層、網状層、偽性基底膜、及び栄養芽層を含み得る。
【0116】
出産組織溶出物は、本発明の調製方法に従って調製することができる。
【0117】
組成物は、粘性であり得る。組成物はヒドロゲルであり得る。組成物は、1~5Hzで、0.05~1000、0.05~500、0.05~250、0.1~500、0.1~10、1~100、1~50、5~45又は15~45Pa・sの剪断粘度を有し得る。例えば、組成物の剪断粘度は、2.5Hzで5~45Pa・sであり得るか、又は0.5Hzで0.1~10Pa・sであり得る。出産組織溶出物は、0.5~1Hzでは、10%を超える歪みで0.05~500、0.05~250、0.01~0.2、0.01~0.15、又は0.01~0.1Pa・sの剪断粘度と、10%未満の歪みで0.05~1000、0.05~500、0.05~250、0.05~10、0.05~5、0.05~2、0.05~1、又は0.1~1Pa・sの剪断粘度とを有し得る。
【0118】
組成物は、-5℃~-80℃、-10℃~-80℃、-10℃~-60℃、-10℃~-50℃、-10℃~-40℃、又は-10℃~-30℃の凝固点を有し得る。
【0119】
出産組織溶出物は、例えば、出産組織内の細胞由来の二本鎖DNAを含み得る。出産組織溶出物中の二本鎖DNAの濃度は、1~3000、30~3000、50~3000、50~2000、又は100~2000ng/mLである。
【0120】
組成物は、様々な生物活性成分を含み得る。生物活性成分は、ヒアルロン酸(HA)、プロテオグリカン、サイトカイン、増殖因子、プロテアーゼ阻害剤、例えば、メタロプロテイナーゼの組織阻害剤(TIMP)、細胞外小胞、エクソソーム及び/又はケモカインを含み得る。以下に列挙した濃度は、任意のタイプの液体で水和された水和形態又は脱水組成物に関するものである。
【0121】
組成物は、例えば、0.01~100、0.05~50、0.1~20、0.5~10mg、1~10、又は1~5mg/mLのヒアルロン酸(HA)を含み得る。HAは、5~10,000kDa、5~8,000kDa、5~6,000kDa、又は8~6,000kDaの様々な分子量を含有し得る。HA濃度は、例えば、4.5~5.5mg/mL又は9~11mg/mLで望ましいレベルに調整することができる。HA濃度は、4.5~5.5mg/mL又は9~11mg/mLであり得る。組成物中のHA濃度は、少なくとも0.3、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9又は1mg/mLであり得る。
【0122】
組成物は、1つ又は複数のサイトカインを含み得る。サイトカインは、インターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1RA)、IL-4、IL-6、IL-10、IL-11、及び/又はIL-13であり得る。組成物中のIL-1RAの濃度は、10~2000、50~1000、50~500、又は10~500ng/mLであり得る。IL-1RA濃度は、例えば、250~350ng/mLで望ましいレベルに調整することができる。組成物は、相当な量のIL-1を含んでいなくてもよい。IL-1ベータの濃度は、10、50、100、又は200pg/mLを超えていなくてもよい。
【0123】
組成物は、1つ又は複数の生物活性因子を含み得る。生物活性因子は、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF若しくはFGF-2)、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-ベータ)、血小板由来増殖因子-AA(PDGF-AA)、血小板由来増殖因子-BB(PDGF-BB)、トランスフォーミング増殖因子アルファ(TGF-アルファ)、肝細胞増殖因子(HGF)、胎盤増殖因子(PIGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、増殖分化因子(GDF)、インスリン様増殖因子(IGF)、インスリン様増殖因子結合タンパク質(IGFBP)、表皮増殖因子(EGF)、アンジオゲニン、ペントラキシン(PTX)、間質細胞由来因子-1(SDF-1)、及び/又は顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)であり得る。組成物中のTGF-ベータ3の濃度は、1~100、1~50、2~40、2~30、又は2~20ng/mLであり得る。組成物中のTGF-ベータ3濃度は、少なくとも0.5、1、2、2.5、3、3.5、4、4.5、又は5ng/mLであり得る。PTX-3濃度は、1~500、10~500、20~400、20~300、又は20~200ng/mLであり得る。組成物中のPTX-3濃度は、少なくとも10、20、30、40、又は50ng/mLであり得る。HGF濃度は、0.1~100、0.1~80、0.1~50、0.1~30、0.1~20、0.1~10、又は0.2~20ng/mLであり得る。組成物中のHGF濃度は、少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4、又は0.5ng/mLであり得る。
【0124】
組成物はプロテアーゼ阻害剤を含み得る。プロテアーゼ阻害剤は、メタロプロテイナーゼの組織阻害剤(TIMP)及びアルファ-2マクログロブリン(A2M)であり得る。TIMPは、TIMP-1、TIMP-2、TIMP-3、又はTIMP-4のものであり得る。組成物中のTIMP-1の濃度は、1~10,000、1~1000、10~1000、10~500、40~400、50~500、又は40~300ng/mLであり得る。組成物中のTIMP1濃度は、少なくとも10、30、60、80、100、200、300、400、500、600、800、又は1000ng/mLであり得る。TIMP2濃度は、1~1000、5~1000、10~500、10~400、20~400、20~200、20~300、30~200、又は30~500ng/mLであり得る。組成物中のTIMP2濃度は、少なくとも20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、又は300ng/mLであり得る。TIMP3濃度は、0.1~100、0.2~50、0.5~50、0.5~40、1~100、1~50、1~30、又は0.5~10ng/mLであり得る。組成物中のTIMP3濃度は、少なくとも0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、又は1ng/mLであり得る。A2M濃度は、1~1000、1~800、3~500、5~500、3~300、3~200、又は3~100μg/mLであり得る。組成物中のA2M濃度は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10μg/mLであり得る。
【0125】
組成物は細胞外小胞を含み得る。細胞外小胞は、CD40+であり得る。組成物中の細胞外小胞の数は、10,000~100,000,000、10,000~50,000,000、10,000~20,000,000、1,000,000~100,000,000、1,000,000~50,000,000、又は1,000,000~20,000,000個であり得る。調製方法は、組成物中の細胞外小胞の数を調整するステップをさらに含み得る。細胞外小胞は、例えば、1mL当たり10,000,000~50,000,000個、又は1mL当たり50,000,000~100,000,000個で望ましいレベルに調整することができる。
【0126】
組成物は、エクソソームを含み得る。エクソソームは、CD9+であり得る。組成物中のエクソソームの数は、1mL当たり10,000~100,000,000、10,000~50,000,000、10,000~20,000,000、1,000,000~100,000,000、1,000,000~50,000,000、又は1,000,000~20,000,000個であり得る。調製方法は、組成物中のエクソソームの数を調整するステップをさらに含み得る。エクソソームは、例えば、1mL当たり10,000,000~50,000,000個又は1mL当たり50,000,000~100,000,000個で望ましいレベルに調整することができる。
【0127】
組成物は、相当な量(例えば、90、95、97、99又は99.9wt%又はmg/mlを超える)の可溶化された細胞外マトリックス成分を含んでいなくてもよい。細胞外マトリックス成分は、コラーゲン、ラミニン、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン、脂質、及び/又はフィブロネクチン、並びにそれらの組合せからなる群から選択することができる。可溶化されたプロテオグリカン4(ルブリシン)は、0.1~500、0.5~400、0.5~300、0.5~200、1~200、1~100、又は10~100ng/mLであり得る。可溶化された細胞外マトリックス成分は、組成物の0.01、0.05、0.1、0.5、1、2、3、4、又は5wt%又はmg/ml未満を構成し得る。可溶化されたコラーゲンは、組成物の0.01、0.05、0.1、0.5、1、2、3、4、又は5wt%又はmg/ml未満を構成し得る。可溶化されたラミニンは、出産組織溶出物の0.01、0.05、0.1、0.5、1、2、3、4、又は5wt%又はmg/ml未満を構成し得る。組成物は生細胞を含み得る。組成物は生細胞を含んでいなくてもよい。組成物は、1個の生細胞を含んでいなくてもよい。
【0128】
組成物は、凍結保存されていてもよい。組成物は、水の凝固点より下で凍結されていてもよい。組成物は、凍結乾燥され得る。
【0129】
溶出物が存在する場合の生物活性因子は、溶出物が存在しない場合の同じ生物活性因子よりも異なる温度でより長い有効期間を有し得る。溶出物は、常温での生物活性因子の有効期間を1分~48時間延ばし得る。溶出物は、生物活性因子の有効期間を少なくとも10、100、500、又は1,000倍に延ばし得る。溶出物は、常温で24時間、20%~100%、30%~100%、30%~80%、40%~80%、又は50%~100%の検出可能な生物活性因子を維持することができる。溶出物は、常温で2日間、20%~100%、30%~100%、30%~80%、40%~80%、又は50%~100%の検出可能な生物活性因子を維持することができる。溶出物は、37℃で24時間、20%~100%、30%~100%、30%~80%、40%~80%、又は50%~100%の検出可能な生物活性因子を維持することができる。溶出物は、37℃で2日間、20%~100%、30%~100%、30%~80%、40%~80%、又は50%~100%の検出可能な生物活性因子を維持することができる。
【0130】
組成物は、臍帯粒子をさらに含み得る。臍帯粒子は、0.1~10,000、0.1~5,000、0.1~2,000、0.1~1,000、0.1~500、0.1~100、0.1~10、0.1~1、0.5~10,000、0.5~5,000、0.5~2,000、0.5~1,000、0.5~500、0.5~100、0.5~10、0.5~1、1~10,000、1~5,000、1~2,000、1~1,000、1~500、1~100、1~10、5~10,000、5~5,000、5~2,000、5~1,000、5~500、5~100、5~10、10~10,000、10~5,000、10~2,000、10~1,000、10~500、10~100、50~10,000、50~5,000、50~2,000、50~1,000、50~500、50~100、100~10,000、100~5,000、100~2,000、100~1,000又は100~500μmの範囲の平均粒子サイズを有し得る。例えば、臍帯粒子は、10~2,000μmの範囲の平均粒子サイズを有し得る。臍帯粒子は、生細胞を含み得る。臍帯粒子は、生細胞を含んでいなくてもよい。臍帯粒子は、凍結保存されていてもよい。臍帯粒子は、凍結されていてもよい。臍帯粒子は、凍結乾燥されていてもよい。臍帯粒子は、脱細胞化されていてもよい。或いは、臍帯粒子は、脱細胞化されていなくてもよい。
【0131】
組成物は、胎盤膜粒子とも呼ばれる胎盤膜の粒子をさらに含み得る。胎盤膜は、細胞層、網状層、及び偽性基底膜を含み得る。胎盤膜は、羊膜、細胞層、網状層、及び偽性基底膜を含み得る。胎盤膜は、細胞層、網状層、偽性基底膜、及び栄養芽層を含み得る。胎盤膜は、羊膜、細胞層、網状層、偽性基底膜、及び栄養芽層を含み得る。胎盤膜粒子は、0.1~10,000、0.1~5,000、0.1~2,000、0.1~1,000、0.1~500、0.1~100、0.1~10、0.1~1、0.5~10,000、0.5~5,000、0.5~2,000、0.5~1,000、0.5~500、0.5~100、0.5~10、0.5~1、1~10,000、1~5,000、1~2,000、1~1,000、1~500、1~100、1~10、5~10,000、5~5,000、5~2,000、5~1,000、5~500、5~100、5~10、10~10,000、10~5,000、10~2,000、10~1,000、10~500、10~100、50~10,000、50~5,000、50~2,000、50~1,000、50~500、50~100、100~10,000、100~5,000、100~2,000、100~1,000又は100~500μmの範囲の平均粒子サイズを有し得る。例えば、胎盤膜粒子は、10~2,000μmの範囲の平均粒子サイズを有し得る。胎盤膜粒子は、生細胞を含み得る。胎盤膜粒子は、生細胞を含んでいなくてもよい。胎盤膜粒子は、凍結保存されていてもよい。胎盤膜粒子は、凍結されていてもよい。胎盤膜粒子は、凍結乾燥されていてもよい。胎盤膜粒子は脱細胞化されていてもよい。或いは、胎盤膜粒子は、脱細胞化されていなくてもよい。胎盤膜粒子は、変性されていてもよい。
【0132】
組成物は、胎盤膜の粒子及び臍帯の粒子をさらに含むことができ、胎盤膜粒子と臍帯粒子との比は、湿重量又は乾燥重量で10:1、8:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:8、又は1:10であり得る。胎盤膜粒子及び/又は臍帯粒子(固体部分)は、凍結乾燥形態及び/又は水和形態の溶出物(可溶性部分)中の生物活性因子によって被覆され得る。
【0133】
第1の出産組織の溶出物及び第2の出産組織の粒子を含む様々な組成物を調製することができる。第1及び第2の出産組織は、同じであってもよいか、又は異なっていてもよい。第1及び第2のそれぞれの出産組織は、1つ又は複数の出産組織タイプからなり得る。出産組織タイプの例には、臍帯、羊膜嚢、胎盤プレート、又はそれらの組合せが含まれる。
【0134】
溶出物は、第1の出産組織から調製される。第1の出産組織の粒子を液体と混合して混合物を形成することができ、次いでこれをインキュベートした後、上清が混合物から回収される。第1の出産組織は、臍帯、羊膜嚢、胎盤プレート、又はそれらの組合せであり得る。胎盤膜は、羊膜、絨毛膜、栄養芽層、又はそれらの組合せを含み得る。これらの膜層は、分離されていてもよいか、又は分離されていなくてもよく、好ましくは分離されていなくてもよい。第1の出産組織粒子の重量と液体の容積の比は、1:1~1:100の範囲であり得る。インキュベーションは、1~240時間、例えば、-5℃~15℃の温度で実施することができる。
【0135】
粒子は、第2の出産組織から調製される。第2の出産組織は、臍帯、羊膜嚢、胎盤プレート、又はそれらの組合せであり得る。胎盤膜は、羊膜、絨毛膜、栄養芽層、又はそれらの組合せを含み得る。これらの膜層は、分離されていてもよいか、又は分離されていなくてもよく、好ましくは分離されていなくてもよい。第2の出産組織は、脱細胞化されていてもよいか、又は脱細胞化されていなくてもよい。例えば、粒子は、脱細胞化されていない臍帯組織、又は羊膜、絨毛膜及び栄養芽層を含む脱細胞化された胎盤膜から調製することができる。
【0136】
第1の出産組織の溶出物と第2の出産組織の粒子とを混合して、組成物を調製することができる。組成物では、溶出物及び粒子は、溶出物容積(ミリリットル)と粒子乾燥重量(グラム)の比を1000:1~1:1、500:1~1:1、100:1~1:1、80:1~1:1、40:1~1:1、30:1~1:1、20:1~1:1、10:1~1:1、5:1~1:1、4:1~1:1、3:1~1:1、又は2:1~1:1の範囲で有し得る。組成物では、溶出物及び粒子は、溶出物容積(ミリリットル)と粒子湿重量(グラム)の比を100:1~1:10、50:1~1:10、20:1~1:10、10:1~1:10、5:1~1:10、4:1~1:10、3:1~1:10、2:1~1:10、1:1~1:10、1:2~1:10、1:3~1:10、又は1:5~1:10の範囲で有し得る。溶出物に乾燥粒子を含む組成物は、1~80%、1~60%、1~50%、1~40%、1~30%、1~20%、又は1~10%(100ミリリットル当たりのグラム)の濃度であり得る。
【0137】
組成物は、第1の出産組織の溶出物と第2の出産組織の粒子との様々な組合せを含み得る。溶出物は、脱細胞化されていないか、又は脱細胞化された1)臍帯、2)胎盤プレート、又は3)羊膜、絨毛膜、及び栄養芽層を含む胎盤膜のうちの1つ又は複数の出産組織から調製することができ、一方、粒子は、脱細胞化されていないか、又は脱細胞化された1)臍帯、2)胎盤プレート、3)羊膜、絨毛膜及び栄養芽層を含む胎盤膜のうちの1つ又は複数から調整することができる。例示的な組成物には、次のものが含まれる:
(1)臍帯の溶出物及び脱細胞化されていない臍帯の粒子;
(2)臍帯の溶出物及び脱細胞化された臍帯の粒子;
(3)臍帯の溶出物、並びに分離されていない、羊膜、絨毛膜及び栄養芽層を含む、脱細胞化されていない胎盤膜の粒子;
(4)臍帯の溶出物、並びに分離されていない、羊膜、絨毛膜及び栄養芽層を含む、脱細胞化されている胎盤膜の粒子;
(5)臍帯の溶出物、並びに脱細胞化されていない臍帯と、分離されていない、羊水膜、絨毛膜及び栄養芽層を含む、脱細胞化されていない胎盤膜の粒子;
(6)臍帯の溶出物、並びに脱細胞化されていない臍帯と、分離されていない、羊膜、絨毛膜及び栄養芽層を含む、脱細胞化されている胎盤膜の粒子;
(7)臍帯の溶出物、並びに脱細胞化された臍帯と、分離されていない、羊膜、絨毛膜及び栄養芽層を含む、脱細胞化されていない胎盤膜の粒子;
(8)臍帯の溶出物、並びに脱細胞化された臍帯と、分離されていない、羊膜、絨毛膜、及び栄養芽層を含む、脱細胞化された胎盤膜の粒子;
(9)分離されていない、羊膜、絨毛膜及び栄養芽層を含む胎盤膜の溶出物、並びに脱細胞化されていない臍帯の粒子;
(10)分離されていない、羊膜、絨毛膜及び栄養芽層を含む、胎盤膜の溶出物、並びに脱細胞化された臍帯の粒子;
(11)分離されていない、羊膜、絨毛膜及び栄養芽層を含む、胎盤膜の溶出物、並びに分離されていない、羊膜、絨毛膜及び栄養芽層を含む、脱細胞化されていない胎盤プレートの粒子;
(12)分離されていない、羊膜、絨毛膜及び栄養芽層を含む、胎盤膜の溶出物、並びに分離されていない、羊膜、絨毛膜及び栄養芽層を含む、脱細胞化された胎盤プレートの粒子;
(13)分離されていない、羊膜、絨毛膜及び栄養芽層を含む、胎盤膜の溶出物、並びに脱細胞化されていない臍帯と、分離されていない、羊膜、絨毛膜及び栄養芽層を含む、脱細胞化されていない胎盤プレートの粒子;
(14)分離されていない、羊膜、絨毛膜及び栄養芽層を含む、胎盤膜の溶出物、並びに脱細胞化されていない臍帯と、分離されていない、羊膜、絨毛膜及び栄養芽層を含む、脱細胞化された胎盤プレートの粒子;
(15)分離されていない、羊膜、絨毛膜及び栄養芽層を含む、胎盤膜の溶出物、並びに脱細胞化された臍帯と、分離されていない、羊膜、絨毛膜及び栄養芽層を含む、脱細胞化されていない胎盤プレートの粒子;又は、
(16)分離されていない、羊膜、絨毛膜及び栄養芽層を含む、胎盤膜の溶出物、並びに脱細胞化された臍帯と、分離されていない、羊膜、絨毛膜及び栄養芽層を含む、脱細胞化された胎盤プレートの粒子。
【0138】
組成物は、アリコートされ、包装され得る。組成物は、凍結乾燥、凍結保存、又は凍結させることができる。組成物は、例えば、ガンマ線照射、電子ビーム、エチレンオキシド(EO)、又は臨界CO2によって滅菌され得る。
【0139】
胎盤膜の溶出物及び粒子並びに臍帯の粒子を含む組成物は、粘性であり得る。組成物はヒドロゲルであり得る。組成物は、1~5Hzで0.05~1000、0.05~500、0.05~250、0.1~500、1~100、1~50、5~45又は15~45Pa・sの剪断粘度を有し得る。例えば、組成物の剪断粘度は、2.5Hzで5~45Pa・s又は0.5Hzで0.1~500Pa・sであり得る。出産組織溶出物は、0.5~1Hzでは、10%を超える歪みで0.05~500、0.05~250、0.01~0.2、0.01~0.15、又は0.01~0.1Pa・sの剪断断粘度と、10%未満の歪みで0.05~1000、0.05~500、0.05~250、0.05~10、0.05~5、0.05~2、0.05~1、又は0.1~1Pa・sの剪断粘度とを有し得る。
【0140】
組成物は、-5℃~-80℃、-10℃~-80℃、-10℃~-60℃、-10℃~-50℃、-10℃~-40℃、又は-10℃~-30℃の凝固点を有し得る。
【0141】
組成物は、1~10,000、50~5000、20~2000、10~1000ng/mg乾燥組織重量、1~1000、1~500、20~200、10~100ng/mg湿潤組織重量の二本鎖DNAを含み得る。
【0142】
組成物は、様々な生物活性成分を含み得る。生物活性成分には、ヒアルロン酸(HA)、プロテオグリカン、サイトカイン、増殖因子、プロテアーゼ阻害剤、例えば、メタロプロテイナーゼの組織阻害剤(TIMP)、細胞外小胞、エクソソーム及び/又はケモカインが含まれ得る。以下に列挙されている濃度は、任意のタイプの液体で水和された水和形態又は脱水組成物のものである。
【0143】
組成物は、例えば、0.01~100、0.05~50、0.1~20、0.5~10mg、1~10、又は1~5mg/mLのヒアルロン酸(HA)を含み得る。HAは、5~10,000kDa、5~8,000kDa、5~6,000kDa、又は8~6,000kDaの様々な分子量を含み得る。HA濃度は、例えば、4.5~5.5mg/mL又は9~11mg/mLで望ましいレベルに調整することができる。HA濃度は、4.5~5.5mg/mL又は9~11mg/Lであり得る。組成物中のHA濃度は、少なくとも0.5、1、1.5、2、2.5、又は3mg/mLであり得る。
【0144】
組成物は、1つ又は複数のサイトカインを含み得る。サイトカインは、インターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1RA)、IL-4、IL-6、IL-10、IL-11、及び/又はIL-13であり得る。組成物中のIL-1RAの濃度は、10~2000、50~1000、50~500、又は10~500ng/mLであり得る。サイトカイン濃度は、250~350ng/mLであり得る。組成物は、相当な量のIL-1を含んでいなくてもよい。IL-1ベータの濃度は、10pg/mg乾燥組織重量を超えていなくてもよい。IL-1ベータの濃度は、10、50、100、又は200pg/mLを超えていなくてもよい。
【0145】
組成物は、1つ又は複数の生物活性因子を含み得る。生物活性因子は、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF又はFGF-2)、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-ベータ)、血小板由来増殖因子-AA(PDGF-AA)、血小板由来増殖因子-BB(PDGF-BB)、トランスフォーミング増殖因子アルファ(TGF-アルファ)、肝細胞増殖因子(HGF)、胎盤増殖因子(PIGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、増殖分化因子(GDF)、インスリン様増殖因子(IGF)、インスリン様増殖因子結合タンパク質(IGFBP)、表皮増殖因子(EGF)、アンジオゲニン、ペントラキシン(PTX)、間質細胞由来因子-1(SDF-1)、及び/又は顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)であり得る。組成物中のTGF-ベータ3の濃度は、1~100、1~50、2~40、2~30、又は2~20ng/mLであり得る。組成物中のTGF-ベータ3濃度は、少なくとも0.5、1、2、2.5、3、3.5、4、4.5、又は5ng/mLであり得る。PTX-3濃度は、1~500、10~500、20~400、20~300、又は20~200ng/mLであり得る。組成物中のPTX-3濃度は、少なくとも10、20、30、40、又は50ng/mLであり得る。HGF濃度は1~1000、1~800、1~500、1~300、10~200、10~400、又は20~400ng/mLであり得る。組成物中のHGF濃度は、少なくとも1、2、3、4、又は5ng/mLであり得る。
【0146】
組成物は、プロテアーゼ阻害剤を含み得る。プロテアーゼ阻害剤は、メタロプロテイナーゼの組織阻害剤(TIMP)及びアルファ-2マクログロブリン(A2M)であり得る。TIMPは、TIMP-1、TIMP-2、TIMP-3、又はTIMP-4のものであり得る。組成物中のTIMP-1の濃度は、1~10,000、1~1000、10~1000、10~500、40~400、50~500、又は40~300ng/mLであり得る。組成物中のTIMP1濃度は、少なくとも10、30、60、80、100、200、300、400、500、600、800、又は1000ng/mLであり得る。TIMP2濃度は、1~10,000、5~10,000、10~5000、10~4000、20~4000、20~2000、30~3000、40~2000、40~1000、又は40~1000ng/mLであり得る。組成物中のTIMP2濃度は、少なくとも20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、又は1000ng/mLであり得る。TIMP3濃度は、0.1~100、0.5~100、0.5~50、0.5~40、1~100、1~50、1~30、又は1~10ng/mLであり得る。組成物中のTIMP3濃度は、少なくとも0.5、1、2、3、4、5、6、8、9、又は10ng/mLであり得る。A2M濃度は、1~1000、1~800、3~500、5~500、3~300、3~200、又は3~100μg/mLであり得る。組成物中のA2M濃度は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10μg/mLであり得る。
【0147】
組成物は、相当な量(例えば、90、95、97、99又は99.9wt%又はmg/mlを超える)の可溶性細胞外マトリックス成分を含んでいなくてもよい。細胞外マトリックス成分は、コラーゲン、ラミニン、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン、脂質、及び/又はフィブロネクチン、並びにそれらの組合せからなる群から選択され得る。可溶化されたプロテオグリカン4(ルブリシン)は、0.1~500、0.5~400、0.5~300、0.5~200、1~200、1~100、又は10~100ng/mLであり得る。可溶化された細胞外マトリックス成分は、組成物の0.01、0.05、0.1、0.5、1、2、3、4、若しくは5wt%又はmg/ml未満を構成し得る。可溶化されたコラーゲンは、組成物の0.01、0.05、0.1、0.5、1、2、3、4、若しくは5wt%又はmg/ml未満を構成し得る。可溶化されたラミニンは、出産組織溶出物の0.01、0.05、0.1、0.5、1、2、3、4、若しくは5wt%又はmg/ml未満を構成し得る。組成物は、生細胞を含み得る。組成物は、生細胞を含んでいなくてもよい。
【0148】
組成物は、凍結保存されていてもよい。組成物は、水の凝固点より下で凍結されていてもよい。組成物は、凍結乾燥され得る。
【0149】
溶出物組成物が存在する場合の生物活性因子は、溶出物が存在しない場合の同じ生物活性因子よりも異なる温度でより長い有効期間を有し得る。溶出物は、常温での生物活性因子の有効期間を1分~48時間延ばし得る。溶出物は、生物活性因子の有効期間を少なくとも10、100、500、又は1,000倍に延ばし得る。溶出物は、常温で24時間、20%~100%、30%~100%、30%~80%、40%~80%、又は50%~100%の検出可能な生物活性因子を維持することができる。溶出物は、常温で2日間、20%~100%、30%~100%、30%~80%、40%~80%、又は50%~100%の検出可能な生物活性因子を維持することができる。溶出物は、37℃24時間、20%~100%、30%~100%、30%~80%、40%~80%、又は50%~100%の検出可能な生物活性因子を維持することができる。溶出物は、37℃で2日間、20%~100%、30%~100%、30%~80%、40%~80%、又は50%~100%の検出可能な生物活性因子を維持することができる。
【0150】
溶出物並びに胎盤膜粒子及び/又は臍帯粒子を含む組成物の生物活性因子の機能は、5分間の適用後に、溶出物を含まない胎盤膜粒子及び/又は臍帯粒子の組成物よりも10~200%、10~150%、10~100%、又は50~100%高くなり得る。溶出物を含む組成物中の生物活性因子の機能は、15分間の適用後に、溶出物を含まない組成物よりも10~200%、10~150%、10~100%、又は50~100%高くなり得る。溶出物を含む組成物中の生物活性因子の機能は、30分間の適用後に、溶出物を含まない組成物よりも10~200%、10~150%、10~100%、又は50~100%高くなり得る。溶出物を含む組成物中の生物活性因子の機能は、60分間の適用後に、溶出物を含まない組成物よりも10~200%、10~150%、10~100%、又は50~100%高くなり得る。
【0151】
酵素処理をしない場合、例えばプロテアーゼ消化をしない場合、溶出物及び粒子を含む組成物中の生物活性因子の検出可能な量は、1分間の水和後、5分間の水和後、又は10分間の水和後に、溶出物を含まない粒子の組成物よりも10~200%、10~150%、10~100%、又は50~100%高くなり得る。適用部位における生物活性因子の検出可能な濃度は、1分間、5分間又は15分間の適用後に、溶出物を含まない組成物よりも、溶出物を含む組成物について10~200%、10~150%、10~100%又は50~100%高くなり得る。
【0152】
本発明の組成物に関して、身体部分は関節又は組織であり得る。関節は、膝関節、肩関節、股関節、肘関節、手首関節、手指関節、足指関節、及び足首関節からなる群から選択することができる。関節は膝関節であり得る。組織は、腱、靭帯、滑液包、筋膜、軟骨、筋肉、結合組織、真皮、滑膜、及び腱靭帯付着部からなる群から選択することができる。組織は、変形性関節症、関節リウマチ、滑液包炎、筋膜炎、腱炎、腱障害、滑膜炎、上顆炎、腱断裂、靭帯断裂、神経損傷、軟骨欠損、滑膜炎、筋膜炎痛及び筋肉痛からなる群から選択され得る。病的状態は、変形性関節症、滑液包炎又は筋膜炎であり得る。一実施形態では、病的状態は炎症である。
【0153】
組成物は、in vivoで持続可能であり得る。組成物は、ある期間、少なくとも10、20、30、40、50、60、70又は80%の有効性を維持し得る。期間は、少なくとも0.5、1、2、3、4、5、若しくは6か月、又は1~2、1~3、若しくは1~6か月である。
【0154】
それを必要とする患者の身体部分の病的状態を処置するための方法が提供される。処置方法は、患者の身体部分に有効量の本発明の組成物又は胎盤膜シートを投与するステップを含む。組成物は、身体部分に注射することができる。
【0155】
処置方法によれば、胎盤膜シートは、細胞層、網状層、及び偽性基底膜を含み得る。胎盤膜シートは、羊膜、細胞層、網状層、及び偽性基底膜を含み得る。胎盤膜シートは、細胞層、網状層、偽性基底膜及び栄養芽層を含み得る。胎盤膜シートは、羊膜、細胞層、網状層、偽性基底膜、及び栄養芽層を含み得る。胎盤膜シートの厚さは、50~800μmであり得る。胎盤膜シートは、開窓を有する。胎盤膜シートは、90~99%の液体吸収を有し得る。胎盤膜シートは、脱細胞化されていてもよい。胎盤膜シートは、対照の脱細胞化されていない胎盤膜のDNA含有量よりも少なくとも90%少ないDNA含有量を有し得る。対照の脱細胞化されていない胎盤膜は、胎盤膜シートの胎盤膜が脱細胞化されていてもよいが、対照の脱細胞化されていない胎盤膜は脱細胞化されていないということを除き、胎盤膜シートの胎盤膜と同じ構造を有する。胎盤膜シートは、変性されていなくてもよい。
【0156】
処置方法によれば、身体部分は患者の表面になくてもよい。身体部分は、関節又は組織であり得る。関節は、膝関節、肩関節、股関節、肘関節、手首関節、手指関節、足指関節、足首関節からなる群から選択することができる。関節は、膝関節であり得る。組織は、腱、靭帯、滑液包、筋膜、軟骨、筋肉、結合組織、真皮、滑膜、及び腱靭帯付着部からなる群から選択することができる。組織は、関節を取り囲む軟組織である。
【0157】
処置方法によれば、病状は、変形性関節症、関節リウマチ、滑液包炎、筋膜炎、腱炎、腱障害、滑膜炎、上顆炎、腱断裂、靭帯断裂、神経損傷、軟骨欠損、滑膜炎、筋膜炎痛、関節形成術、及び筋肉痛からなる群から選択され得る。病的状態は、変形性関節症、滑液包炎及び筋膜炎からなる群から選択され得る。病的状態は、炎症であり得る。病的状態は、変性組織欠損であり得る。一実施形態では、患者に注射する前に、本発明の組成物は、患者から又はドナーから調整されたPRP又は細胞と混合することができる。別の実施形態では、胎盤膜シートを患者に適用する前に、本発明の胎盤膜シートは、患者から又はドナーから調製されたPRP又は細胞で水和することができる。
【0158】
身体部分に皮膚の創傷を有する場合、処置方法は、胎盤膜シートを創傷に適用するステップをさらに含み得る。処置方法は、胎盤膜シートが創傷に適用された後に、多孔性軟組織足場又は多孔性スポンジ様構造を創傷に適用するステップをさらに含み得る。
【0159】
病的状態が関節の変形性関節症又は滑膜炎であり、関節が炎症を起こした滑膜組織を含む場合、処置方法は、炎症を起こした滑膜組織に本発明の組成物を注射するステップをさらに含み得る。患者は、開放関節手術を受けていてもよい。患者は、関節鏡視下関節手術を受けていてもよい。一実施形態では、患者は、炎症を起こした滑膜組織が除去された後、関節の創傷部位への本発明の注射を受けることができる。
【0160】
病的状態が関節の変形性関節症又は滑膜炎であり、炎症を起こした滑膜組織が関節から除去された後に関節が創傷を有する場合、処置方法は、例えば、縫合、接着、又はステープリングによって、胎盤膜シートを創傷に適用するステップをさらに含み得る。患者は、開放関節手術を受けていてもよい。患者は、関節鏡視下関節手術を受けていてもよい。
【0161】
処置方法は、身体部分の接着性を低下させるステップをさらに含み得る。有効量の本発明の組成物又は胎盤膜シートを身体部分に適用することができる。身体部分の接着性は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%又は50%低下し得る。
【0162】
処置方法は、身体部分の治癒を改善するステップをさらに含み得る。治癒は、腱から骨の治癒であり得る。有効量の本発明の組成物又は胎盤膜シートを身体部分に適用することができる。身体部分の治癒は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、又は50%改善され得る。
【0163】
処置方法は、身体部分へのインプラントの取り込みを改善するステップをさらに含み得る。有効量の本発明の組成物又は胎盤膜シートを、インプラント及び/又は身体部分に適用することができる。インプラントは、同種移植片、異種移植片、シリコーンインプラント、金属インプラント、デバイスインプラント、乳房インプラント、ペースメーカーインプラント、マイクロチップインプラント、薬物送達デバイスインプラント、及び内部モニターインプラントからなる群から選択することができる。インプラントは、胎盤膜を含み得る。胎盤膜は、細胞層、網状層、及び偽性基底膜を含み得る。胎盤膜は、羊膜、細胞層、網状層、及び偽性基底膜を含み得る。胎盤膜は、細胞層、網状層、偽性基底膜、及び栄養芽層を含み得る。胎盤膜は、羊膜、細胞層、網状層、偽性基底膜、及び栄養芽層を含み得る。胎盤膜は、脱細胞化されていてもよい。胎盤膜は、変性されていなくてもよい。インプラントの身体部分への取り込みは、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、又は50%改善され得る。
【0164】
処置方法は、組織を胎盤膜シートで包むステップをさらに含み得る。組織は、神経、腱、靭帯、骨、筋肉、及びそれらの組合せからなる群から選択することができる。
【0165】
処置方法は、患者の胎盤膜シートを細胞で再細胞化するステップをさらに含み得る。細胞はレシピエント細胞であり得る。細胞は、線維芽細胞、内皮細胞、幹細胞、ケラチノサイト、マクロファージ、滑膜細胞、軟骨細胞、腱細胞、筋芽細胞、筋細胞、前駆細胞、及び上皮細胞からなる群から選択することができる。例えば、細胞は、滑膜細胞、線維芽細胞又はそれらの組合せであり得る。
【0166】
処置方法は、胎盤膜シート内で細胞を増殖させるステップをさらに含み得る。細胞はレシピエント細胞であり得る。細胞は、線維芽細胞、内皮細胞、幹細胞、ケラチノサイト、マクロファージ、滑膜細胞、軟骨細胞、腱細胞、筋芽細胞、筋細胞、前駆細胞、及び上皮細胞からなる群から選択することができる。例えば、細胞は、滑膜細胞、線維芽細胞、又はそれらの組合せであり得る。
【0167】
処置方法は、胎盤膜シートで細胞を遊走させるステップをさらに含み得る。細胞はレシピエント細胞であり得る。細胞は、線維芽細胞、内皮細胞、幹細胞、ケラチノサイト、マクロファージ、滑膜細胞、軟骨細胞、腱細胞、筋芽細胞、筋細胞、前駆細胞、及び上皮細胞からなる群から選択することができる。例えば、細胞は、滑膜細胞、線維芽細胞、又はそれらの組合せであり得る。
【0168】
処置方法は、胎盤膜シートを細胞でリモデリングするステップをさらに含み得る。細胞はレシピエント細胞であり得る。細胞は、線維芽細胞、内皮細胞、幹細胞、ケラチノサイト、マクロファージ、滑膜細胞、軟骨細胞、腱細胞、筋芽細胞、筋細胞、前駆細胞、及び上皮細胞からなる群から選択することができる。例えば、細胞は、滑膜細胞、線維芽細胞、又はそれらの組合せであり得る。
【実施例】
【0169】
実施例1.臍帯の解剖及び調製
研究の同意が得られたヒトの胎盤及び羊膜を帝王切開後に得て、無菌状態で処理施設に移した。
【0170】
胎盤に付着した臍帯を臍帯-胎盤接合部で切断し、氷冷した生理食塩水ですすいだ。臍帯を生理食塩水中で切片(長さ5~6cm)にさらに切断し、臍帯に沿って緩く結合している血塊を除去した。臍帯切片を解剖用のプラスチック製ペトリ皿に移した。臍帯切片の長さに沿ってメスで縦方向に切り込みを入れ、臍帯動脈を露出させた。次いで、動脈を鉗子とはさみで周囲組織から切除した(
図1)。臍帯静脈を切り開いて管腔側を露出させ、内皮細胞を臍帯静脈から刃で掻き出した。処理した臍帯は、さらなる処理まで氷冷DMEM培地に移した。
【0171】
実施例2.臍帯の凍結保存
実施例1で処理した臍帯切片をDMEM培地から50mLのコニカルチューブに移した。十分な量の凍結保存培地を、臍帯切片が完全に浸漬されるようにチューブに加えた。
【0172】
実施例1からのいくつかの臍帯切片を小片(約0.5cm)に切り、50mLのコニカルチューブに移し、-80℃で保存した。臍帯切片の小片を凍結保存するため、十分な量の凍結保存培地を、臍帯片が完全に浸漬するようにチューブに加えた。
【0173】
次いで、チューブを発泡スチロールの箱に置き、凍結及び短期保存用の-80℃の冷凍庫に移した。-80℃の冷凍庫で少なくとも24時間後、チューブ内の一部の凍結保存された臍帯を、長期保存用の液体窒素に移した。
【0174】
実施例3.凍結保存なしの臍帯粒子の調製
実施例2から作製された小片(約0.5cm)の臍帯を微粒化に使用した。cryomill(Retsch社)又は粉砕機を使用して、凍結した臍帯の小片を微粒化した。凍結した臍帯片を粉砕ボール入りの粉砕ジャーに移し、次いでジャーを密封した。粉砕ジャーは、粉砕プロセスの前に、液体窒素により予冷した。粉砕ジャーを液体窒素で冷却し続けながら、凍結した臍帯片を30Hzで15分間粉砕した。その結果、臍帯小片は、臍帯粒子に微粒化された。
【0175】
臍帯粒子を粉砕ジャーから滅菌50mLコニカルチューブに移し、臍帯粒子の重量を記録した。次いで、臍帯粒子をアリコートし、-80℃で保存するか、又は凍結乾燥した。
【0176】
実施例4.凍結保存した臍帯粒子の調製
実施例2から作製された小片(約0.5cm)の凍結保存した臍帯を微粒化に使用する。cryomill(Retsch社)又は粉砕機を使用して、凍結して凍結保存した臍帯小片を微粒化する。粉砕ボール入りの粉砕ジャーに凍結した臍帯片を移し、次いでジャーを密封した。粉砕ジャーは、粉砕プロセス前に、液体窒素により予冷する。粉砕ジャーを液体窒素で冷却し続けながら、凍結した臍帯片を30Hzで15分間粉砕する。その結果、臍帯は、凍結保存された臍帯粒子に微粒化される。
【0177】
実施例5.臍帯馴化培地の調製
1%の抗生物質を含むDMEM培地を、50mLのコニカルチューブに入れた臍帯粒子1グラム当たり2mLの培地で臍帯粒子に添加し、培地-臍帯粒子の懸濁液を形成させ、これを十分に混合し、ロッカーに4℃で24~40時間攪拌しながら置いた。
【0178】
インキュベーションの終了時に、培地-臍帯の懸濁液を3,000rpmで25分間遠心分離した。上清を回収した。チューブの底のペレットを3,000rpmでさらに25分間遠心分離し、得られた上清を回収した。
【0179】
2回の遠心分離実施で回収した上清を臍帯馴化培地として合わせ、アリコートし、-80℃で保存するか、又は凍結乾燥して常温で保存した。臍帯馴化培地は、単独で、又は他の組織と組み合わせて、注射用処方として使用され得る。臍帯馴化培地はまた、微粒化臍帯馴化培地又は微粒化臍帯溶出物とも呼ばれる。
【0180】
遠心分離後のチューブの底のペレットの臍帯粒子もまた回収され、アリコートされ、-80℃で保存されるか、又は凍結乾燥された。
【0181】
実施例6.臍帯馴化培地の剪断粘度測定
実施例5のように調製した臍帯馴化培地の粘度は、Kinexus lab+レオメーターによって測定した。臍帯馴化培地(150ul)を40mmの粗面プレートの中央に加えた。別の40mmの粗面プレートを、2つのプレートの間に0.12mmの隙間が維持される位置に降ろした。目視確認により、隙間が臍帯馴化培地で完全に満たされていることを確認した。一連の増加トルクを臍帯馴化培地に加えた。次いで、臍帯馴化培地の剪断粘度を歪みに対してプロットした(
図2)。
【0182】
実施例7.細胞の代謝活性に対する臍帯馴化培地の効果
実施例5と同様に調製した臍帯馴化培地が異なる細胞型、RAW 264.7、ヒト皮膚線維芽細胞、ヒト滑膜細胞の細胞代謝活性に及ぼす効果を、アラマーブルー(Biorad社、BUF012B)色素を使用して評価した。異なる細胞密度及び異なる比率で希釈した臍帯馴化培地を調べた。
【0183】
適切な細胞培養培地中の細胞を、異なる密度(6250、12500、18750、又は25000細胞/cm2)で培養プレートに播種し、1日インキュベートした。翌日、臍帯馴化培地のアリコートを解凍し、10,000rpmで10分間さらに遠心分離してデブリを除去した後、異なる比率(1:5、1:10、1:20、1:30、1:50v/v)で細胞に適した細胞培養培地を希釈し、培養プレートの細胞の培養培地を交換するために使用した。細胞を臍帯馴化培地と24時間インキュベートした。
【0184】
処理の終了時に、アラマーブルー色素を細胞に適した培地で最終濃度10%(v/v)に希釈した。アラマーブルー含有培地を使用して、培養プレートの臍帯馴化培地を置き換えた。次いで、処理した細胞をアラマーブルー含有培地で4~4.5時間インキュベートした。
【0185】
次に、アラマーブルー含有培地を回収し、黒色透明底の96ウェルプレートに移し、蛍光マイクロプレートリーダーで読み取り、ヒト滑膜細胞(
図3)、ヒト皮膚線維芽細胞(
図4)及びRAW264.7(
図5)について、ブランクアラマーブルー試薬で正規化した細胞代謝活性を決定した。結果から、1:10に希釈した臍帯馴化培地が、12500細胞/cm
2及び25000細胞/cm
2の滑膜細胞において、それぞれ16%及び21%の代謝増加を誘発したことが明らかであった。1:10に希釈した臍帯馴化培地もまた、12500細胞/cm
2、18750細胞/cm
2、及び25000細胞/cm
2の皮膚線維芽細胞において、それぞれ16%、24%、及び20%の代謝増加を誘発した。1:5に希釈した臍帯馴化培地は、25000細胞/cm
2のRAW細胞において、15%の代謝低下を誘発した。
【0186】
実施例8.臍帯馴化培地の抗炎症効果
実施例5と同様に調製した臍帯馴化培地の、マウスマクロファージ細胞株であるRAW264.7細胞によるTNF-アルファ分泌の阻害に対する抗炎症効果を検討した。TNF-アルファELISAキット(ThermoFisher社、BMS607-2INST)を使用して、異なる比率で希釈した臍帯馴化培地で処理した後のRAW264.7細胞からのTNF-アルファ分泌レベルを測定した。
【0187】
方法1:細胞を培養プレートに入れた適切な培養培地に播種し、臍帯馴化培地で処理する前に1日インキュベートした。翌日、臍帯馴化培地のアリコートを解凍し、10,000rpmで10分間遠心分離してデブリを除去した後、細胞に適した培養培地で異なる比率(1:5、1:10、1:20、1:30、及び1:50)に希釈し、培養プレートの培養培地の交換に使用した。細胞を、異なる比率で希釈した臍帯馴化培地で24時間インキュベートした。
【0188】
次いで、リポ多糖(LPS、Sigma社、5293-2mL)を最終濃度1μg/mLで培養プレートに添加し、細胞によるTNF-アルファ分泌を刺激した。
【0189】
LPS刺激から24時間後に培養プレートの上清を回収し、TNF-アルファELISAアッセイまで保存するために-80℃で凍結させた。TNF-アルファ分泌の測定は、TNF-アルファELISAキットの説明書に従って行った。
図6Aに示したように、臍帯馴化培地は、用量依存的にRAW細胞によるTNF-アルファ分泌を効果的に阻害した。
【0190】
方法2:in vivoでの炎症反応を模倣するため、RAW264.7細胞を培養プレートに入れた適切な培養培地に播種し、1日インキュベートし、翌日、最終濃度lug/mlのLPSで刺激した。LPS刺激の24時間後に培養プレートのLPS含有培地を、最終濃度1ug/mlのLPS溶液と組み合わせた異なる比率で希釈した臍帯馴化培地と交換した。細胞をさらに24時間培養し、培養プレートからの細胞培養上清を回収し、TNF-アルファELISAアッセイまで保存するために-80℃で凍結させた。TNF-アルファ分泌の測定は、TNF-アルファELISAキットの説明書に従って行った。
図6Bに示したように、臍帯馴化培地は、用量依存的にRAW細胞のTNF-アルファ分泌を18%~35%効果的に阻害した。
【0191】
実施例9.凍結保存した臍帯の再生及び生存率の評価
実施例2で調製した凍結保存した臍帯を-80℃の冷凍庫から取り出し、攪拌しながら37℃の水浴中で解凍した。まず解凍した臍帯を、100mLのDMEM培地を入れた175mLのファルコンチューブに移し、1,000rpmで5分間、室温にて遠心分離した。次いで、得られた上清をデカントし、さらに100mLの新鮮なDMEM培地を175mLのファルコンチューブに加えた。次いで、臍帯を室温でさらに5分間、1,000rpmで遠心分離した。
【0192】
臍帯細胞の成長:2回目の遠心分離の終わった時点で、Whartonゼリー側を下にして臍帯を培養ペトリ皿に入れ、37℃のインキュベーターで1時間付着させた。次いで、臍帯細胞培養培地(1%ペニシリン/ストレプトマイシン、15%ウシ胎児血清、1%GlutaMAX(商標)を含有するDMEM)をペトリ皿に加えた。臍帯培養培地を2~3日ごとに交換し、凍結保存した臍帯を再生させた。付着した臍帯組織からの豊富な臍帯細胞のin vitro成長が10日目~14日目の間に観察された。凍結保存した臍帯からの臍帯細胞の成長を
図7に示す。成長細胞を0.05%のトリプシン/EDTA(GIBCO社、25300-062)によってペトリ皿から剥離し、新たな培養フラスコに再播種してさらに増殖させた(
図8)。新鮮な臍帯と再生された凍結保存した臍帯の両方からの成長細胞を、凍結保存とフローサイトメトリー分析のために増殖させた。
【0193】
酵素消化及び細胞の分離:2回目の遠心分離の終わりに、臍帯を細片に刻み、37℃のハンクス平衡塩類緩衝液(GIBCO社、14025-076)に溶解した2mg/mLコラゲナーゼ(GIBCO社、17-100-017)及び1mg/mLのヒアルロニダーゼ(Sigma社、H3506)と、ロッカー上で穏やかに攪拌(75~85rpm)しながら4~5時間インキュベートした。組織の消化の終わりに、組織/細胞懸濁液を40μmの細胞濾過器(Falcon社、352340)で濾過した。濾過した各組織/細胞懸濁液に、同量の10%ウシ胎児血清(FBS)を含有する培養培地を添加し、1,000rpmで5分間遠心分離した。上清をデカントし、細胞ペレットを10%FBS含有培地に再懸濁し、1,000rpmでさらに5分間遠心分離した。上清をデカントし、細胞ペレットを臍帯細胞培養培地に再懸濁し、細胞増殖用の組織培養プレートにプレーティングした。
【0194】
実施例10.新鮮な臍帯及び凍結保存した臍帯から増殖させた細胞のフローサイトメトリー
実施例9から調製した増殖細胞をフローサイトメトリーに使用し、細胞集団の表面マーカー(CD29、CD44、CD73、CD105、CD166、CD14、CD31、CD34、CD45、及びCD19)発現について特性決定した。
【0195】
細胞を0.05%トリプシン/EDTAで培養フラスコから剥離し、10%FBS含有培地で中和した。得られた細胞懸濁液を1,000rpmで5分間遠心分離した。上清をデカントし、細胞ペレットを新しいDMEMに再懸濁した。細胞懸濁液の少量のアリコートを細胞計数用に採取し、残りの細胞懸濁液を1,000rpmでさらに5分間遠心分離した。次に、細胞ペレットをフローサイトメトリー緩衝液(Invitrogen社、04-4222-57)に再懸濁し、1,000rpmで5分間遠心分離した。細胞ペレットをフローサイトメトリー緩衝液に250,000細胞/mL緩衝液以上の密度で再懸濁した。
【0196】
200μL細胞懸濁液のアリコートを、96ウェルプレートの対応するウェルにピペットで移し、フローサイトメトリー抗体を1:200希釈でそれぞれのウェルに加えた。細胞を抗体と1時間4℃でインキュベートし、光から保護した。抗体インキュベーションの終わりに、追加の100μLフローサイトメトリー緩衝液をそれぞれのウェルに加え、96ウェルプレートを1,500rpmで3分間遠心分離した。上清をそれぞれのウェルからデカントし、さらに300μLのフローサイトメトリー緩衝液をそれぞれのウェルに加えて細胞をすすいだ。プレートを1,500rpmでさらに3分間遠心分離した。上清をデカントし、細胞生存率色素を添加した200μLフローサイトメトリー緩衝液にそれぞれのウェルの細胞を再懸濁し、フローサイトメトリー分析用の1.5mLエッペンドルフチューブに移した。各抗体に対する適切なアイソタイプの対照も実施した。少なくとも10,000件のイベントを各分析について収集した。新鮮な臍帯からの成長細胞のマーカー発現を
図9に示した。凍結保存した臍帯から成長した再生細胞の結果を
図10に示した。データから、両方の細胞集団が同様の表面マーカー発現プロファイルを有することが明らかであった。
【0197】
実施例11.胎盤膜粒子の調製
研究同意を得たヒト胎盤及び羊膜を帝王切開後に採取し、無菌状態で処理施設に移した。
【0198】
羊膜層及び絨毛膜層の両方を持つ胎盤膜を含む羊膜嚢を胎盤スカートの周囲で切断し、生理食塩水などの等張液又は乳酸リンゲルで少なくとも3回すすぎ、緩く結合している血液を除去した。羊膜層と絨毛膜層の両方が接触しているすすいだ胎盤膜を、羊膜上皮層を上にして滅菌済みのボードに置いた。異なるサイズと形状のメッシュフレームを胎盤膜の上に置いた。胎盤膜は、一致するフレームのサイズ及び形状に合わせて様々なサイズ及び形状にカットした。胎盤膜片を等張食塩水で3回、1回につき5分間攪拌しながらすすいだ後、常温で攪拌しながら2~5時間脱細胞化した。脱細胞化した胎盤膜を等張液又は水ですすいだ後、凍結乾燥又は-80℃での保存を行った。
【0199】
凍結乾燥した脱細胞化胎盤膜:凍結乾燥した胎盤膜をRetch Mill(ZM200)で微粒化し、胎盤膜粒子とも呼ばれる微粒化胎盤膜を生成した。胎盤膜粒子を回収し、タップ篩で異なるサイズ範囲に篩分け、秤量した。胎盤膜粒子をアリコートし、さらなる調製及び様々な特性評価のために常温で保存した。
【0200】
凍結した脱細胞化胎盤膜:凍結した脱細胞化胎盤膜を小片(約0.5cm)に切った。cryomill(Retsch社)又は粉砕機を使用して、凍結した脱細胞化胎盤膜小片を微粒化した。凍結した脱細胞化胎盤膜片を、粉砕ボールを入れた粉砕ジャーに移し、次いでこのジャーを密封した。粉砕ジャーは、粉砕プロセスの前に液体窒素により予冷した。粉砕ジャーを液体窒素で継続的に冷却しながら、凍結した脱細胞化胎盤膜片を30Hzで15分間粉砕した。得られた凍結粒子を粉砕ジャーから滅菌50mLコニカルチューブに移し、解凍し、3,000rpmで5分間遠心分離してチューブの底の胎盤膜粒子を回収した。次いで、胎盤膜粒子をアリコートし、-80℃で保存するか、又は凍結乾燥した。
【0201】
実施例12.臍帯馴化培地ヒドロゲル
実施例5からの10mg乾燥重量の凍結乾燥した臍帯粒子を、室温で48時間攪拌しながら、0.01N HCl(1mL)中の1mgペプシンで処理した。ペプシン処理した後、臍帯粒子消化物を-80℃の冷凍庫での長期保存のためにアリコートするか、又は臍帯馴化培地ヒドロゲルを調製するために利用した。
【0202】
臍帯粒子消化物(10mg/ml)を、まず消化物の10分の1量の0.1N NaOHと消化物の9分の1量の10×PBSで中和した。次いで、中和したプレゲル溶液を所望の最終濃度に臍帯馴化培地で希釈し、ヒドロゲル形成のために37℃で30~45分置いた。
図11は、6mg/mlの臍帯馴化培地ヒドロゲルを示す。
【0203】
実施例13.出産組織注射用組成物の調製
様々な出産組織の注射用混合物を、実施例5及び/又は実施例12の臍帯馴化培地と、(1)実施例11の胎盤膜粒子、(2)実施例3の臍帯粒子、(3)実施例4の凍結保存した臍帯粒子、或いは(4)実施例3の臍帯粒子又は実施例4の凍結保存した臍帯粒子と組み合わせた、実施例5の臍帯ペレットを用いて調製した。
【0204】
方法1:実施例5で調製した臍帯馴化培地をそのまま使用するか、又は適切な溶液、例えば、水、生理食塩水、DMEM、若しくはDPBSで異なる比率(1:2、1:5、1:10、1:20、1:30、1:40、又は1:50、v/v)に希釈して使用した。異なる量の未希釈臍帯馴化培地又は希釈臍帯馴化培地を、実施例11で調製した胎盤膜粒子に移し、異なる体積対乾燥重量比を生成した。胎盤膜粒子をピペッティング、ボルテックス、及び反転により完全に溶液と混合させた。得られた出産組織混合物は、再度アリコートし、遠心分離して包装し、凍結乾燥することができる。
【0205】
方法2:実施例5で調製した臍帯馴化培地をそのまま使用するか、又は適切な溶液、例えば、水、生理食塩水、DMEM、若しくはDPBSで異なる比率(1:2、1:5、1:10、1:20、1:30、1:40、又は1:50、v/v)に希釈して使用した。異なる量の未希釈臍帯馴化培地又は希釈臍帯馴化培地を、実施例3で調製した胎盤膜粒子に移した。粒子をピペッティング、ボルテックス、及び反転により完全に溶液と混合させた。得られた出産組織混合物は、再度アリコートし、遠心分離して包装し、凍結乾燥することができる。
【0206】
方法3:実施例5で調製した臍帯馴化培地をそのまま使用するか、又は適切な溶液、例えば、水、生理食塩水、DMEM、若しくはDPBSで異なる比率(1:2、1:5、1:10、1:20、1:30、1:40、又は1:50、v/v)に希釈して使用した。異なる量の未希釈臍帯馴化培地又は希釈臍帯馴化培地を、実施例5で調製した胎盤膜粒子に移した。粒子をピペッティング、ボルテックス、及び反転により完全に溶液と混合させた。得られた出産組織混合物は、再度アリコートし、遠心分離して包装し、凍結乾燥することができる。
【0207】
方法4:実施例4の凍結保存した粒子を37℃で解凍し、適切な溶液、例えば、水、生理食塩水、DMEM、又はDPBSと混合し、遠心分離して凍結保存培地を洗い流す。次いで、粒子は、実施例5で調製した臍帯馴化培地とそのまま混合するか、又は適切な溶液、例えば、水、生理食塩水、DMEM、若しくはDPBSで異なる比率(1:2、1:5、1:10、1:20、1:30、1:40、又は1:50、v/v)に希釈して混合する。混合物は、損傷した身体分体に注射することができる。
【0208】
方法5:実施例5で調製した臍帯馴化培地をそのまま使用するか、又は適切な溶液、例えば、水、生理食塩水、DMEM、若しくはDPBSで異なる比率(1:2、1:5、1:10、1:20、1:30、1:40、又は1:50、v/v)に希釈して使用した。異なる量の未希釈臍帯馴化培地又は希釈臍帯馴化培地を、実施例11で調製した胎盤膜粒子アリコート及び実施例3で調製した臍帯粒子に移した。粒子をピペッティング、ボルテックス、及び反転により完全に溶液と混合させた。得られた出産組織混合物は、再度アリコートし、遠心分離して包装し、凍結乾燥することができる。
【0209】
方法6:実施例4の凍結保存した粒子を37℃で解凍し、次いで適切な溶液、例えば、水、生理食塩水、DMEM、又はDPBSと混合し、遠心分離して凍結保存培地を洗い流す。次いで、粒子は、未希釈か、又は適切な溶液、例えば、水、生理食塩水、DMEM、若しくはDPBSで異なる比率(1:2、1:5、1:10、1:20、1:30、1:40、又は1:50、v/v)に希釈した実施例5で調製した臍帯馴化培地、及び実施例11で調製した胎盤膜粒子アリコートと混合する。混合物は、損傷した身体部分に注射することができる。
【0210】
実施例14.出産組織注射用組成物の特性決定
実施例13で調製した出産組織注射用組成物を特性決定する。
【0211】
注射可能性評価:実施例3の臍帯粒子、実施例4の凍結保存した臍帯粒子、実施例5の臍帯馴化培地、実施例5の臍帯ペレット、実施例11の胎盤膜粒子、実施例12の臍帯馴化培地ヒドロゲル、又は実施例13の注射用混合物を用いて調製した注射用製剤を、異なるゲージの針を備えた注射器を使用して試験した。
【0212】
成分評価:実施例5の臍帯馴化培地を、そのヒアルロン酸及びサイトカインの含有量について定量化した。臍帯馴化培地中のヒアルロン酸は、ヒアルロン酸ELISAキット(Hyaluronan Quantikine ELISAキット、R&D systems社)によって定量化した。臍帯馴化培地は、1%抗生物質又は定量化用のELISAキットアッセイ希釈液を含むDMEMで1:200,000の比率で希釈した。ヒアルロン酸含有量は製造業者のプロトコルに従って定量化し、4名のドナーからの平均ヒアルロン酸量は1.68±0.28mg/mL溶出であった。臍帯馴化培地中のIL-1RA(インターロイキン-1受容体アンタゴニスト)及びTIMP1(メタロプロテイナーゼ1の組織阻害剤)の量は、IL-1RA Simplexキット(EPX01A-12080-901、Thermofisher Scientific社)、TIMP1 Simplexキット(EPX01A-12018-901、Thermofisher Scientific社)、及びヒトベーシックキット(EPX010-10420-901、Thermofisher Scientific社)を使用して、Luminex 200(R&D systems社)で定量化した。臍帯馴化培地は、1%抗生物質を含むDMEMで、IL-1RAの定量には1:20に、TIMP1の定量には1:426にそれぞれ希釈した。IL-1RA及びTIMP1は製造業者のプロトコルに従って定量化し、4名のドナーからのIL-1RA及びTIMP1の平均量は、それぞれ、312+153ng/mL溶出物及び4+1.9μg/mL溶出物であった。
【0213】
胎盤膜粒子、臍帯粒子、及び臍帯馴化培地を含む様々な注射用製剤をプロテアーゼ(コラゲナーゼI型)及びヒアルロニダーゼで抽出した。様々な増殖因子、サイトカイン、及び他の高分子の量を、成分評価のためにELISA又はマルチプレックスアッセイを使用して測定した。3~9名のドナーからの3種の異なる製剤、製剤1(実施例5の臍帯馴化培地+実施例5の臍帯ペレット+実施例11の胎盤膜)、製剤2(実施例5の臍帯馴化培地)及び製剤3(臍帯例5の臍帯馴化培地+実施例3の臍帯粒子+実施例11の胎盤膜)。データを表1にまとめている。
【0214】
活性評価:異なる注射用混合物又は製剤を様々な細胞培養培地に加えた。細胞増殖活性、MMP1阻害、及び抗炎症活性を試験した。
【0215】
抗炎症効果:
マウスマクロファージ細胞株であるRAW264.7細胞によるTNF-アルファ分泌の阻害に対する注射用出産組織製剤の抗炎症効果を検討した。3名のドナーからの3種の異なる製剤、製剤1(実施例5の臍帯馴化培地+実施例5の臍帯ペレット+実施例11の胎盤膜)、製剤2(実施例5の臍帯馴化培地)及び製剤3(実施例5の臍帯馴化培地+実施例3の臍帯粒子+実施例11の胎盤膜)を調製した。
【0216】
TNF-アルファELISAキット(ThermoFisher社、BMS607-2INST)を使用して、注射用出産組織製剤で処理した後のRAW264.7細胞からのTNF-アルファ分泌レベルを決定した。
【0217】
細胞を培養プレートの適切な培養培地に播種し、注射用出産組織製剤で処理する前に1日インキュベートした。翌日、注射用出産組織製剤のアリコートを、細胞に適した培養培地で2つの異なる濃度10mg/mL及び5mg/mLに調製し、培養プレートの培養培地の交換に使用した。細胞を注射用出産組織製剤の存在下で24時間インキュベートした。次いで、リポ多糖(LPS、Sigma社、5293-2mL)を培養プレートに最終濃度1μg/mLで添加し、細胞によるTNF-アルファ分泌を刺激した。
【0218】
LPS刺激の24時間後、培養プレートからの上清を回収し、TNF-アルファELISAアッセイまで保存するために-80℃で凍結した。TNF-アルファ分泌の測定は、TNF-アルファELISAキットの説明書に従って実施した。
図12に示したように、注射用出産組織製剤は、用量依存的にRAW細胞によるTNF-アルファ分泌を効果的に阻害した。3つのすべての注射用出産組織製剤は、LPSで刺激したRAW細胞からのTNF-アルファ分泌を効果的に減少させた。99%を超えるTNF-アルファの減少が、製剤1及び製剤3により処理したRAW細胞で、製剤量対照群と比較した場合に試験した両方の濃度で確認された。10mg/mL及び5mg/mLの製剤2では、製剤量対照群と比較した場合、用量依存的なRAW細胞TNF-アルファをそれぞれ92.5%及び86.9%減少させた。
【0219】
増殖効果:
初代ヒト滑膜細胞に対する注射用出産組織製剤の増殖効果を検討した。3名のドナーから3種の異なる製剤、製剤1(実施例5の臍帯馴化培地+実施例5の臍帯ペレット+実施例11の胎盤膜)、製剤2(実施例5の臍帯馴化培地)及び製剤3(実施例5の臍帯ペレット)を調製した。
【0220】
細胞をインサート培養プレートの底部ウェルに入れた適切な培養培地に播種し、注射用出産組織製剤による処理前に1日インキュベートした。翌日、注射用出産組織製剤のアリコートを細胞に適した培養培地で調製し、インサートに加えて最終濃度を約2.2mg/mLにした。細胞を注射用出産組織製剤の存在下で4日間インキュベートした。4日目に、適切な細胞培養培地中の10%アラマーブルー試薬を使用して細胞の代謝活性を測定し、群間の相対的な細胞数の表示として蛍光測定値を使用した。データからは、3種のすべての製剤群が、培地対照群と比較した場合、初代ヒト滑膜細胞の増殖を効果的に誘導したことが明らかであった(
図13)。
【0221】
MMP1阻害効果:
3名のドナーから、3種の注射用出産組織製剤、製剤1(実施例5の臍帯溶出物+実施例5の臍帯ペレット+実施例11の胎盤膜)、製剤2(実施例11の胎盤膜)、製剤3(実施例3の臍帯粒子)を調製した。製剤をMMP1酵素(50ng/mL)と37℃で2時間プレインキュベートした。次いで、注射用出産組織製剤-MMP1酵素懸濁液を10,000RPMで1分間遠心分離した。上清を回収し、96ウェルプレートに添加し、MMP1酵素基質と混合した。動的吸光度測定を実施し、より高いO.D.値がより高いMMP1酵素活性に対応する。結果からは、試験した3種のすべての注射用出産組織製剤がMMP1酵素活性を阻害したことが明らかであった(
図14)。
【0222】
実施例15.臍帯馴化培地含有又は非含有の注射用出産組織製剤の剪断粘度測定
2種の注射用出産組織製剤を、実施例5と同様に調製した臍帯粒子ペレットと、実施例11と同様に調製した脱細胞化した胎盤膜粒子とを、実施例5と同様に調製した臍帯馴化培地を添加して、又は添加せずに混合することによって調製した。注射用出産組織製剤の剪断粘度は、Kinexus lab+レオメーターによって測定した。注射用出産組織製剤(150ul)を40mmの粗いプレートの中央に加えた。別の40mmの粗面プレートを、2つのプレートの間に0.12mmの隙間が維持される位置に降ろした。目視確認により、隙間が注射用出産組織製剤で完全に満たされていることを確認した。一連の増加トルクを加えた。次いで、注射用出産組織製剤の剪断粘度を剪断歪みに対してプロットした(
図15A)。臍帯馴化培地を含む製剤は、臍帯馴化培地を含まない製剤と比較した場合、一貫して低い剪断粘度を示した。50%の剪断歪みで臍帯馴化培地を含まない製剤と比較した場合、臍帯馴化培地を含む製剤からの剪断粘度において、3名のドナーからの平均38%の減少が観察された(
図15B)。結果からは、臍帯馴化培地が注射用出産組織製剤の剪断粘度を低下させることができることが明らかであった。
【0223】
実施例16.臍帯馴化培地含有又は非含有の注射用出産組織製剤の結束性試験
実施例11と同様に調製した凍結乾燥胎盤膜(PM)粒子を、1名のドナーからの実施例5で調製した臍帯馴化培地、又は3つの異なる濃度、50mg(乾燥)粒子/mL、40mg(乾燥)粒子/mL及び30mg(乾燥)粒子/mLの1%抗生物質を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)のいずれかに再懸濁させた。次いで、再懸濁した50ul注射用PM粒子を、24ウェルプレートの500ul滅菌生理食塩水にp-200ulピペットを使用して加えた。プレートを37℃でインキュベートし、注射用PM製剤の写真を、インキュベーションの10分後、60分後、及び24時間後に得た。結果からは、40mg(乾燥)粒子/mL以上の濃度で、臍帯馴化培地が注射用PM粒子の結束性を増強することができることが明らかであった(
図16)。
【0224】
実施例17.臍帯馴化培地含有又は非含有の注射用出産組織製剤によるMMP1酵素活性阻害
4名のドナーからの2種の注射用出産組織製剤は、実施例3と同様に調製した臍帯粒子と、実施例11と同様に調製した脱細胞化した胎盤膜粒子とを、実施例5と同様に調製した臍帯馴化培地を添加して、又は添加せずに混合することによって調製した。製剤をMMP1酵素(50ng/mL)と37℃で5分間プレインキュベートした。次いで、注射用出産組織製剤-MMP1酵素懸濁液を10,000RPMで5分間遠心分離した。上清を回収し、96ウェルプレートに添加し、MMP1酵素基質と混合した。動的吸光度測定を実施し、より高いO.D.値がより高いMMP1酵素活性に対応している。結果からは、注射用出産組織製剤はMMP1酵素活性を阻害したが、臍帯馴化培地を含む製剤では、25分~120分で、馴化培地を含まない製剤よりもMMP1活性を阻害したことが明らかであった(
図17A)。さらに、35分で、臍帯馴化培地を含む注射用出産組織製剤は、臍帯馴化培地を含まない注射用出産組織製剤よりも、統計的に有意に良好な阻害効果を立証した(
図17B)。
【0225】
実施例18.臍帯馴化培地含有又は非含有の注射用出産組織製剤の生化学的因子経時的放出アッセイ
2~3名のドナーからの2種の注射用出産組織製剤は、実施例3と同様に調製した臍帯粒子と、実施例11と同様に調製した脱細胞化した胎盤膜粒子とを、実施例5と同様に調製した臍帯調整培地を添加して、又は添加せずに混合することによって調製した。製剤を滅菌生理食塩水で50mg(乾燥)粒子/mLの濃度で再水和し、常温で十分に混合した。常温で5分又は60分後、アリコートを様々な水和製剤から取得した。次いで、アリコートを12,000RPMで2分間遠心分離した。上清を回収し、分析物の濃度をさらに定量するまで-80℃で保存した。結果からは、臍帯馴化培地を含む注射用出産組織製剤が、臍帯馴化培地を含まない製剤と比較した場合、再水和の5分後及び60分後の両方で、より容易に入手可能な可溶性の抗炎症因子及びプロテアーゼ阻害剤を含んでいたことが明らかであった(
図18)。臍帯馴化培地を含まない製剤と比較した場合、臍帯馴化培地を含む製剤における各生化学的因子の増加のパーセンテージを、複数のドナー間の増加のパーセンテージの範囲として報告し、表2にまとめている。
【0226】
実施例19.臍帯馴化培地による熱分解に対する組換え線維芽細胞増殖因子2(FGF-2)保護
(1)凍結乾燥した臍帯馴化培地
1名のドナーから実施例5と同様に調製した凍結乾燥した臍帯馴化培地を、1%抗生物質を含むDMEMで再構成した。市販の組換えFGF-2を、再構成した臍帯馴化培地(馴化培地+FGF-2)又は1%抗生物質を含むDMEM(DMEM+FGF-2)に、組換えFGF-2の最終濃度400ng/mLで添加した。同じドナーからの臍帯馴化培地(馴化培地)と1%抗生物質を含むDMEM(DMEM)とをそれぞれベースライン対照として使用した。4つの群を十分に混合し、37℃でインキュベートした。新鮮なサンプル(凍結なし)をインキュベーションの1時間後、24時間後及び46時間後に得た。市販のFGF-2 ELISAキットを使用して、各時点での各群からのFGF-2濃度を測定した。馴化培地+FGF-2群及びDMEM+FGF-2群における保存された組換えFGF-2の濃度は、各時点での対応するベースライン対照群のFGF-2濃度から各群のFGF-2濃度を差し引くことによって得た。データは、各時点での組換えFGF-2濃度(
図19A)及び1時間での組換えFGF-2濃度と比較した場合の46時間での残存する組換えFGF-2濃度のパーセンテージ(
図19B)として示した。結果からは、再構成された臍帯馴化培地が、熱分解に対する組換えFGF-2の保護効果を示したことが明らかであった。
【0227】
(2)凍結した臍帯馴化培地
1名のドナーから実施例5と同様に調製した凍結した臍帯馴化培地を解凍し、実験に使用した。市販の組換えFGF-2を臍帯馴化培地(馴化培地+FGF-2)又は1%抗生物質を含むDMEM(DMEM+FGF-2)に、組換えFGF-2の最終濃度400ng/mLで添加した。同じドナーからの臍帯馴化培地(馴化培地)及び1%抗生物質を含むDMEM(DMEM)をそれぞれベースライン対照として使用した。4つの群を十分に混合し、37℃でインキュベートした。サンプルを、インキュベーションの3時間後、24時間後、及び46時間後に得た。市販のFGF-2 ELISAキットを使用して、各時点での各群からのFGF-2濃度を測定した。馴化培地+FGF-2群及びDMEM+FGF-2群における保存された組換えFGF-2の濃度は、各時点での対応するベースライン対照群のFGF-2濃度から各群のFGF-2濃度を差し引くことによって得た。データは、各時点での組換えFGF-2濃度(
図19C)及び3時間での組換えFGF-2濃度と比較した場合の46時間での残存する組換えFGF-2濃度のパーセンテージ(
図19D)として示した。結果からは、凍結した臍帯馴化培地が、熱分解に対する組換えFGF-2の保護効果を示したことが明らかであった。
【0228】
本明細書で引用されているすべての文書、書籍、マニュアル、論文、特許、公開特許出願、ガイド、要約書、及び/又は他の参考文献は、参照によりそれらの全体が組み込まれる。本発明の他の実施形態は、本明細書に開示されている本発明の明細書及び実施の検討から当業者には明らかであろう。本明細書及び実施例は例示としてのみ考慮されることが意図されており、本発明の真の範囲及び趣旨は、以下の特許請求の範囲によって示されている。
【0229】