(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-20
(45)【発行日】2025-05-28
(54)【発明の名称】発電システムおよびドライブシステム
(51)【国際特許分類】
H02P 9/04 20060101AFI20250521BHJP
H02P 9/00 20060101ALI20250521BHJP
H02P 101/45 20150101ALN20250521BHJP
H02P 103/10 20150101ALN20250521BHJP
【FI】
H02P9/04 L
H02P9/00 C
H02P101:45
H02P103:10
(21)【出願番号】P 2022019954
(22)【出願日】2022-02-10
【審査請求日】2024-07-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】西濱 和雄
(72)【発明者】
【氏名】松尾 興祐
(72)【発明者】
【氏名】池上 ▲徳▼磨
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 聡彦
(72)【発明者】
【氏名】石田 誠司
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-024822(JP,A)
【文献】実開昭57-125200(JP,U)
【文献】特開平03-074200(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0083560(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102012202352(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 9/04
H02P 9/00
H02P 101/45
H02P 103/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源と、
前記動力源によって駆動されるかご形誘導発電機と、
前記かご形誘導発電機が発電した交流電流を直流電流に変換する整流器と、
前記かご形誘導発電機に励磁電流を供給する励磁インバータとを備えた発電システムにおいて、
前記かご形誘導発電機は、固定子と、前記固定子に固定された一次巻線と、前記動力源の回転軸に連結された回転子と、前記回転子に固定された二次導体とを有し、
前記一次巻線は、励磁巻線と
、主発電巻線及び補助発電巻線を含む複数の発電巻線とを有し、
前記励磁インバータは、前記励磁巻線に接続されており、
前記整流器は、前記複数の発電巻線
の主発電巻線及び補助発電巻線にそれぞれ接続された複数のダイオードブリッジで構成されている
ことを特徴とする発電システム。
【請求項2】
請求項1に記載の発電システムにおいて、
前記励磁巻線は、前記複数の発電巻線
の主発電巻線及び補助発電巻線よりも前記回転子寄り
の内周側に配置されている
ことを特徴とする発電システム。
【請求項3】
請求項1に記載の発電システムにおいて
、
前記整流器は、前記主発電巻線に接続された主整流器と、前記補助発電巻線に接続された補助整流器とを有し、
前記主発電巻線の発電電圧と前記補助発電巻線の発電電圧とが異なる
ことを特徴とする発電システム。
【請求項4】
請求項3に記載の発電システムと、
前記主整流器から出力される直流電力を交流電力に変換して走行モータに供給する走行インバータと、
前記補助整流器から出力される直流電力を交流電力に変換して補機に供給する補機インバータとを備えた
ことを特徴とするドライブシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、かご形誘導発電機を用いた発電システムおよびドライブシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
主発電巻線と補助発電巻線又は励磁巻線とを有する一次巻線を備えたかご形誘導発電機を用いた発電システムが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載されているかご形誘導発電機は、三相巻線(主発電巻線に相当)と、これとは別に励磁専用巻線(励磁巻線に相当)が設けられており、三相巻線はダイオードブリッジを介して電池と駆動用インバータに接続されると共に、励磁専用巻線は励磁用インバータを介して電池と駆動用インバータに接続されている。
【0004】
特許文献2に記載されているかご形誘導発電機は、電機子巻線(補助発電巻線と励磁巻線の両方の機能に相当)と、これとは別に界磁巻線(主発電巻線に相当)が設けられており、電機子巻線はインバータ(メイン整流器)を介してバッテリとインバータ装置(ハイブリッド励磁形同期モータ駆動用)に接続されると共に、界磁巻線は界磁電源用整流器とチョッパ装置を介してハイブリッド励磁形同期モータの界磁巻線に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平8-79908号公報
【文献】特開平9-219905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、かご形誘導発電機の励磁専用巻線が励磁用インバータを介して電池と駆動用インバータに接続されている。しかしながら、励磁用インバータは、電池から励磁専用巻線に励磁電流を供給してかご形誘導電動機を励磁できるのみであり、励磁専用巻線から励磁用インバータを介して電池や駆動用インバータに電力を供給することはできない。したがって、かご形誘導発電機は三相巻線で発電した電力をダイオードブリッジを介して電池や駆動用インバータに供給できるのみとなり、発電できる電圧の種類が1種類に留まるという課題がある。
【0007】
特許文献2では、かご形誘導発電機の電機子巻線はインバータ(メイン整流器)を介してバッテリとインバータ装置(ハイブリッド励磁形同期モータ駆動用)に接続され、界磁巻線は界磁電源用整流器を介してチョッパ装置に接続されており、異なる2種類の電圧で発電できる。しかしながら、インバータ(メイン整流器)は、電機子巻線で発電した電力をバッテリとインバータ装置(ハイブリッド励磁形同期モータ駆動用)に供給でき、かつバッテリから電機子巻線に励磁電流を供給してかご形誘導発電機を励磁できるように双方向ともにゲート信号を有する3層以上のpn接合が必要となる構造のスイッチング素子(例えばサイリスタ)を用いる必要があるため高価になるという課題がある。また、インバータ(メイン整流器)を安価な整流器(ダイオードブリッジ)に置き換えてしまうと、かご形誘導発電機を励磁できなくなり、かご形誘導発電機の界磁巻線と電機子巻線のどちらからも発電することができなくなるという新たな課題が生じる。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、かご形誘導発電機を用い、安価な構成で複数種類の電圧を発電することを可能とした発電システムおよびドライブシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、動力源と、前記動力源によって駆動されるかご形誘導発電機と、前記かご形誘導発電機が発電した交流電流を直流電流に変換する整流器と、前記かご形誘導発電機に励磁電流を供給する励磁インバータとを備えた発電システムにおいて、前記かご形誘導発電機は、固定子と、前記固定子に固定された一次巻線と、前記動力源の回転軸に連結された回転子と、前記回転子に固定された二次導体とを有し、前記一次巻線は、励磁巻線と複数の発電巻線とを有し、前記励磁インバータは、前記励磁巻線に接続されており、前記整流器は、前記複数の発電巻線にそれぞれ接続された複数のダイオードブリッジで構成されているものとする。
【0010】
以上のように構成した本発明によれば、かご形誘導発電機の一次巻線が励磁巻線とは別に複数の発電巻線を有することにより、複数種類の電圧を発電することが可能となる。また、複数の発電巻線に接続される整流器をダイオードブリッジで構成することにより、発電システムを安価な構成とすることが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る発電システムよれば、かご形誘導発電機を用い、安価な構成で複数種類の電圧を発電することが可能となる
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】電気駆動式ダンプトラックの外観を模式的に示す側面図である。
【
図2】電気駆動式ダンプトラックに搭載されるドライブシステムの構成図である。
【
図3】ご形誘導発電機の構造の一例を示す部分断面図である。
【
図4】かご形誘導発電機の励磁回路の説明図である。
【
図5】発電巻線に対する励磁巻線の漏れ磁束の磁束量と磁路の説明図である。
【
図6】発電巻線に対する励磁巻線の主磁束の磁束量と磁路の説明図である。
【
図7】回転子バーに対する励磁巻線の漏れ磁束の磁束量と磁路の説明図である。
【
図8】回転子バーに対する励磁巻線の主磁束の磁束量と磁路の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図中、同等の要素には同一の符号を付し、重複した説明は適宜省略する。
【0014】
図1は、本実施形態に係るドライブシステムが搭載される車両の一例である電気駆動式ダンプトラックの外観を模式的に示す側面図である。
図1において、電気駆動式ダンプトラック500は、前後方向に延在して支持構造体を形成する車体フレーム501と、車体フレーム501の上部に前後方向に延在するように配置され、その後端下部をピン結合部502を介して車体フレーム501に傾動可能に設けられた荷台(ベッセル)503と、車体フレーム501の下方前側左右に設けられた一対の従動輪504L,504Rと、車体の下方後側左右に設けられた一対の駆動輪505L,505Rと、車体フレーム501の上方前側に設けられた運転席506と、車体フレーム501上に配置された動力源としてのエンジン1と、エンジン1により駆動されるかご形誘導発電機2と、かご形誘導発電機2から出力される電力を用いて車輪(駆動輪505L,505R)を駆動する走行モータ5とを備えている。なお、
図1においては、左右一対の従動輪504L,504Rおよび左右一対の駆動輪505L,505Rのうちの一方のみを図示し、他方については図中に括弧書きで符号のみを示して図示を省略する。
【0015】
図2は、本実施形態に係るドライブシステムの構成図である。
図2において、ドライブシステム507は、動力源であるエンジン1と、主発電巻線と補助発電巻線と励磁巻線とを有する一次巻線を有するかご形誘導発電機2と、主整流器3と、走行インバータ4と、回生放電抵抗器6と、補助整流器7と、補機インバータ8と、励磁インバータ10と、始動用バッテリ11とを備えている。ドライブシステム507のうち、エンジン1、かご形誘導発電機2、主整流器3、補助整流器7、および励磁インバータ10は、発電システム508を構成している。
【0016】
かご形誘導発電機2の一次巻線は主発電巻線と補助発電巻線とを有するため、主発電機と補助発電機とを別体で備えた場合(特許文献3)よりもドライブシステムの構成が簡素化されて安価となる。また、かご形誘導発電機2はスリップリングやブラシが不要であるため、特許文献3のようにスリップリングやブラシを備えた発電機よりも安価になる。さらに、ブラシは消耗品であるため、ブラシの交換費用も不要となり、メンテナンスコストが削減される。
【0017】
エンジン1はかご形誘導発電機2を回転させる。かご形誘導発電機2の主発電巻線は、主整流器3を介して走行インバータ4に接続されている。走行インバータ4は走行モータ5に接続されている。回生放電抵抗器6は走行モータ5が発電しているときに主整流器3と走行インバータ4に接続される。かご形誘導発電機2の補助発電巻線は、補助整流器7を介して補機インバータ8に接続されている。補機インバータ8は補機9に接続されている。かご形誘導発電機2の励磁巻線は、励磁インバータ10に接続されている。始動用バッテリ11は、かご形誘導発電機2が始動しているときに励磁インバータ10に接続される。主整流器3、補助整流器7、励磁インバータ10の直流側にはコンデンサが接続される。
【0018】
かご形誘導発電機2の一次巻線は、3巻線化の効果によって、励磁巻線とは別に複数の発電巻線を有することが可能となり、励磁巻線に励磁インバータ10を接続することで、かご形誘導発電機の励磁が可能となる。それによって、かご形誘導発電機の主発電巻線および補助発電巻線はそれぞれ異なる電圧で発電することができ、主発電巻線で発電した電力を主整流器3を介して走行インバータ4に供給し、補助発電巻線で発電した電力を補助整流器7を介して補機インバータ8に供給することができる。さらに、励磁インバータ10は、始動用バッテリ11から励磁巻線に励磁電流を供給してかご形誘導発電機を励磁するのみで良く、始動用バッテリ11に電力を供給する必要はないため、ゲート信号を有する3層以上のpn接合が必要となる構造のスイッチング素子(例えばサイリスタ)は、単一方向のみに構成すれば良くなり、励磁インバータ10は安価になる。始動用バッテリ11への充電は別途用意する装置によって実施される。また、始動用バッテリ11は、充電されたものを交換する方式でも良く、また、始動後はトラックから取り外しておいても良い。さらには、別途用意する装置を始動用バッテリ11を介さず直接励磁インバータ10に接続して始動しても良い。
【0019】
主整流器3は、かご形誘導発電機2の主発電巻線から発電される三相交流を直流に変換するものであり、三相全波整流機能のみを有するダイオードブリッジで構成される。すなわち、ゲート信号を有する3層以上のpn接合が必要となる構造のスイッチング素子(例えばサイリスタ)は不要であり、ゲート信号のないpn接合が2層のみの構造となるダイオードで主整流器3を安価に構成できる。
【0020】
補助整流器7は、かご形誘導発電機2の補助発電巻線から発電される三相交流を直流に変換するものであり、三相全波整流機能のみを有するダイオードブリッジで構成される。すなわち、ゲート信号を有する3層以上のpn接合が必要となる構造のスイッチング素子(例えばサイリスタ)は不要であり、ゲート信号のないpn接合が2層のみの構造となるダイオードで補助整流器7を安価に構成できる。
【0021】
図3は、かご形誘導発電機2の構造の一例を示す部分断面図である。かご形誘導発電機2は固定子21と回転子22とを備えている。固定子21は固定子鉄心211を有し、固定子鉄心211に形成された固定子スロット212には一次巻線213が設置されている。一次巻線213は励磁巻線2133と発電巻線2134とを有し、発電巻線2134は主発電巻線2131と補助発電巻線2132とを有する。回転子22は、エンジン1に連結されたシャフト224と、シャフト224に固定された回転子鉄心221とを有する。回転子鉄心221に形成された回転子スロット222には回転子バー2231が設置されている。回転子バー2231の端部はエンドリング2232で短絡されている。二次導体223は回転子バー2231とエンドリング2232とを有する。固定子21と回転子22との間にはギャップ23が設けられている。
【0022】
励磁インバータ10は、電力容量が小さくなると安価になる。そこで、励磁に必要な電力容量を小さくするためのかご形誘導発電機2の構成について
図4を用いて説明する。
【0023】
図4は、かご形誘導発電機2の励磁回路の説明図である。励磁巻線2133の電圧をV1e、誘導起電圧をEm、励磁電流をIm、励磁巻線2133の抵抗をR1e、励磁巻線2133の漏れリアクタンスをX1e、励磁リアクタンスをXmとしている。かご形誘導発電機2の励磁に必要な容量は、3×V1e×Imであるため、励磁巻線2133の電圧V1eや励磁電流Imを小さくすれば、励磁に必要な容量が低減されて、励磁インバータ10が安価になる。
【0024】
励磁巻線2133の電圧V1eは、虚数単位をjとするとき、複素数で表すと次式となる。
【0025】
【0026】
励磁巻線2133の電圧V1eを小さくする方法として、誘導起電圧Em、抵抗R1e、漏れリアクタンスX1e、励磁電流Imのいずれかを小さくすることが考えられる。誘導起電圧Emを小さくするには励磁電流Imを制御により小さくすればよい。しかし、誘導起電圧Emが小さくなると磁束量が減り発電電流が大きくなるため、発電巻線の断面積を大きくすることで発電機が大きくなり、ダイオードブリッジの容量も大きくなる。したがって、誘導起電圧Emまたは励磁電流Imを小さくすることは望ましくない。また、励磁巻線2133の抵抗R1eは漏れリアクタンスX1eに対して桁違いに小さいため、抵抗R1eを小さくすることにより得られる効果は小さい。したがって、励磁巻線2133の電圧V1eを小さくするためには、励磁巻線2133の漏れリアクタンスX1eを小さくすることが望ましい。
【0027】
一方、励磁電流Imは、励磁リアクタンスXmに反比例する。したがって、励磁巻線2133の漏れリアクタンスX1eを小さくするために、例えば励磁巻線2133の巻数を小さくしてしまうと、同時に励磁リアクタンスXmも小さくなってしまい、励磁電流Imが増加して、かご形誘導発電機2の励磁に必要な容量(3×V1e×Im)が増加してしまう。したがって、単純な設計変更ではなく、励磁リアクタンスXmを小さくすることなく、漏れリアクタンスX1eを小さくする発想が必要となる。
【0028】
図5は、発電巻線2134に対する励磁巻線2133の漏れ磁束の磁束量と磁路の説明図である。
図5(a)は、発電巻線2134よりも外周側に励磁巻線2133を配置した場合であり、
図5(b)は、発電巻線2134よりも内周側に励磁巻線2133を配置した場合である。
【0029】
本実施形態においては、
図5(b)のように、発電巻線2134よりも内周側に励磁巻線2133を配置する。
図5(b)のように、発電巻線2134よりも内周側に励磁巻線2133を配置したとき、発電巻線2134に対する励磁巻線の漏れ磁束は、磁気抵抗の大きなギャップ23を通る。それに対して、
図5(a)のように、発電巻線2134よりも外周側に励磁巻線2133を配置したとき、発電巻線2134に対する励磁巻線2133の漏れ磁束は、ギャップ23を通らない。したがって、磁気抵抗の大きなギャップ23を通る
図5(b)の方が、漏れ磁束の磁束量が小さくなる。漏れ磁束の磁束量は、漏れリアクタンスX1eに比例するため、
図5(b)の方が
図5(a)よりも漏れリアクタンスX1eが小さくなる。その結果、
図5(b)のように、発電巻線2134よりも内周側に励磁巻線2133を配置すると、励磁巻線2133の電圧V1eが小さくなる。
【0030】
図6は、発電巻線2134に対する励磁巻線2133の主磁束の磁束量と磁路の説明図である。
図6(a)は、発電巻線2134よりも外周側に励磁巻線2133を配置した場合であり、
図6(b)は、発電巻線2134よりも内周側に励磁巻線2133を配置した場合である。
【0031】
本実施形態においては、
図6(b)のように、発電巻線2134よりも内周側に励磁巻線2133を配置する。
図6(b)のように、発電巻線2134よりも内周側に励磁巻線2133を配置したときと、
図6(a)のように、発電巻線2134よりも外周側に励磁巻線2133を配置したときとで、主磁束の通り道は同じである。したがって、主磁束の磁束量は、両者で同じになる。主磁束の磁束量は、励磁リアクタンスXmに比例するため、
図6(b)と
図6(a)で励磁リアクタンスXmは同じ大きさになる。その結果、
図6(b)と
図6(a)で励磁電流Imは同じ大きさとなる。
【0032】
図5及び
図6から、発電巻線2134よりも内周側に励磁巻線2133を配置すると、外周側に配置する場合に対して、励磁電流Imは同じ大きさのままで、励磁巻線2133の電圧V1eを小さくすることができる。その結果、かご形誘導発電機2の励磁に必要な容量(3×V1e×Im)が小さくなるため、励磁インバータ10を安価にすることができる。
【0033】
主発電巻線2131の断面積は、補助発電巻線2132よりも大きくする。主発電巻線側に要求される発電容量は補助発電巻線側よりも大きいため、主発電巻線2131の断面積を補助発電巻線2132よりも大きくすることで、固定子スロット212の断面積を有効活用できるようになり、発電で生じる損失による巻線の温度上昇が、主発電巻線2131と補助発電巻線2132とで平滑化し、温度上昇の最大値が抑制され、かご形誘導発電機2が安価になる。
【0034】
主発電巻線2131の断面積は、励磁巻線2133よりも大きくする。主発電巻線側に要求される発電容量は、励磁巻線側よりも大きいため、主発電巻線2131の断面積を励磁巻線2133よりも大きくすることで、固定子スロット212の断面積を有効活用できるようになり、発電や励磁で生じる損失による巻線の温度上昇が、主発電巻線2131と励磁巻線2133で平滑化し、温度上昇の最大値が抑制され、かご形誘導発電機2が安価になる。
【0035】
励磁に必要な電力容量を小さくするためのかご形誘導発電機2の構成について
図7を用いて説明する。
図7は、回転子バー33に対する励磁巻線2133の漏れ磁束の磁束量と磁路の説明図である。
図7(a)は、固定子スロット212の外周側に励磁巻線2133を配置した場合であり、
図7(b)は、固定子スロット212の内周側に励磁巻線2133を配置した場合である。
【0036】
本実施形態においては、
図7(b)のように、固定子スロット212の内周側に励磁巻線2133を配置する。
図7(b)のように、固定子スロット212の内周側に励磁巻線2133を配置したとき、回転子バー2231に対する励磁巻線2133の漏れ磁束は、励磁巻線2133が回転子バー2231の近くに配置されているため、固定子スロット212で漏れる磁束の量が小さい。それに対して、
図7(a)のように、固定子スロット212の外周側に励磁巻線2133を配置したとき、回転子バー2231に対する励磁巻線2133の漏れ磁束は、励磁巻線2133が回転子バー2231から遠くに配置されているため、固定子スロット212で漏れる磁束の量が大きい。したがって、励磁巻線2133が回転子バー2231の近くに配置される
図7(b)の方が、漏れ磁束の磁束量が小さくなる。漏れ磁束の磁束量は、漏れリアクタンスX1eに比例するため、
図7(b)の方が
図7(a)よりも漏れリアクタンスX1eが小さくなる。その結果、
図7(b)のように、固定子スロット212の内周側に励磁巻線2133を配置すると、励磁巻線2133の電圧V1eが小さくなる。
【0037】
図8は、回転子バー2231に対する励磁巻線2133の主磁束の磁束量と磁路の説明図である。
図8(a)は、固定子スロット212の外周側に励磁巻線2133を配置した場合であり、
図8(b)は、固定子スロット212の内周側に励磁巻線2133を配置した場合である。
【0038】
本実施形態においては、
図8(b)のように、固定子スロット212の内周側に励磁巻線2133を配置する。
図8(b)のように、固定子スロット212の内周側に励磁巻線2133を配置したときと、
図8(a)のように、固定子スロット212の外周側に励磁巻線2133を配置したときとで、主磁束の通り道は同じである。したがって、主磁束の磁束量は、両者で同じになる。主磁束の磁束量は、励磁リアクタンスXmに比例するため、
図8(b)と
図8(a)で励磁リアクタンスXmは同じ大きさになる。その結果、
図8(b)と
図8(a)で励磁電流Imは同じ大きさとなる。
【0039】
図7及び
図8から、固定子スロット212の内周側に励磁巻線2133を配置すると、外周側に配置する場合に対して、励磁電流Imは同じ大きさのままで、励磁巻線2133の電圧V1eを小さくすることができ、かご形誘導発電機2の励磁に必要な容量(3×V1e×Im)が小さくなり、励磁インバータ10を安価にすることができる。
【0040】
(まとめ)
本実施形態では、動力源1と、動力源1によって駆動されるかご形誘導発電機2と、かご形誘導発電機2が発電した交流電流を直流電流に変換する整流器3,7と、かご形誘導発電機2に励磁電流を供給する励磁インバータ10とを備えた発電システム508において、かご形誘導発電機2は、固定子21と、固定子21に固定された一次巻線213と、動力源1の回転軸に連結された回転子22と、回転子22に固定された二次導体223とを有し、一次巻線213は、励磁巻線2133と複数の発電巻線2131,2132とを有し、励磁インバータ10は、励磁巻線2133に接続されており、整流器3,7は、複数の発電巻線2131,2132にそれぞれ接続された複数のダイオードブリッジで構成されている。
【0041】
以上のように構成された本実施形態によれば、かご形誘導発電機2の一次巻線213が励磁巻線とは別に複数の発電巻線2131,2132を有することにより、複数種類の電圧を発電することが可能となる。また、複数の発電巻線2131,2132に接続される整流器3,7をダイオードブリッジで構成することにより、発電システム508を安価な構成とすることが可能となる。
【0042】
また、本実施形態における励磁巻線2133は、複数の発電巻線2131,2132よりも回転子22寄りに配置されている。これにより、励磁電流Imは同じ大きさのままで、励磁巻線2133の電圧V1eを小さくすることができる。その結果、かご形誘導発電機2の励磁に必要な容量(3×V1e×Im)が小さくなるため、励磁インバータ10を安価にすることが可能となる。
【0043】
また、本実施形態において、複数の発電巻線2131,2132は、主発電巻線2131と補助発電巻線2132とを有し、整流器3,7は、主発電巻線2131に接続された主整流器3と、補助発電巻線2132に接続された補助整流器7とを有し、主発電巻線2131の発電電圧と補助発電巻線2132の発電電圧とが異なる。これにより、主発電巻線2131と補助発電巻線2132とで異なる電圧を発電することが可能となる。
【0044】
また、本実施形態におけるドライブシステム507は、発電システム508に加えて、主整流器3から出力される直流電力を交流電力に変換して走行モータ5に供給する走行インバータ4と、補助整流器7から出力される直流電力を交流電力に変換して補機9に供給する補機インバータ8とを備える。これにより、走行インバータ4と補機インバータ8とにそれぞれ異なる電圧を供給することが可能となる。
【0045】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。本実施形態では、かご形誘導発電機2の動力源をエンジン1で構成したが、本発明は風力発電にも適用可能であり、その場合の動力源は風車で構成される。また、上記した実施形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0046】
1…エンジン(動力源)、2…かご形誘導発電機、3…主整流器、4…走行インバータ、5…走行モータ、6…回生放電抵抗器、7…補助整流器、8…補機インバータ、9…補機、10…励磁インバータ、11…始動用バッテリ、21…固定子、22…回転子、23…ギャップ、33…回転子バー、211…固定子鉄心、212…固定子スロット、213…一次巻線、221…回転子鉄心、222…回転子スロット、223…二次導体、224…シャフト、500…電気駆動式ダンプトラック、501…車体フレーム、502…ピン結合部、503…荷台、504L,504R…従動輪、505L,505R…駆動輪、506…運転席、507…ドライブシステム、508…発電システム、2131…主発電巻線、2132…補助発電巻線、2133…励磁巻線、2134…発電巻線、2231…回転子バー、2232…エンドリング。