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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-20
(45)【発行日】2025-05-28
(54)【発明の名称】真空ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04D 19/04 20060101AFI20250521BHJP
【FI】
F04D19/04 D
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022542170
(86)(22)【出願日】2021-01-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-07
(86)【国際出願番号】 GB2021050036
(87)【国際公開番号】W WO2021140330
(87)【国際公開日】2021-07-15
【審査請求日】2023-11-07
(31)【優先権主張番号】2000298.6
(32)【優先日】2020-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】507261364
【氏名又は名称】エドワーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100196221
【弁理士】
【氏名又は名称】上潟口 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】ショフィールド ナイジェル ポール
(72)【発明者】
【氏名】ダウズウェル スティーブン
【審査官】森 秀太
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-053752(JP,A)
【文献】特許第5559600(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2019/0249676(US,A1)
【文献】特開2006-077713(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータ内に回転可能に取り付けられたロータを備える、真空ポンプであって、
前記ロータは、入口から出口まで螺旋状経路に沿って配置された複数の角度付きブレードを備え、
前記ステータは、異なる軸方向位置で前記螺旋状経路と交差するように配置された複数の穿孔ディスクを形成する複数の穿孔要素を備え、前記穿孔は、前記螺旋状経路に沿って移動するガス分子が前記穿孔要素を通過するのを可能にし、
前記穿孔ディスクの各々は、前記穿孔ディスクの外周を形成する外側湾曲壁と、前記穿孔ディスクの内周の一部を形成する内側湾曲壁とを備え、前記内周は、内壁のない複数の隙間を備え、
前記穿孔ディスクの各々は、少なくとも2つの穿孔要素を備え、
前記複数の穿孔要素の各々の前記内側湾曲壁は、前記内側湾曲壁から前記外側湾曲壁に向かって延びる少なくとも1つの窪みを備え、前記少なくとも1つの窪みは、前記内周の前記複数の隙間のうちの少なくとも1つを構成する、真空ポンプ。
【請求項2】
前記内周は、少なくとも2つの隙間を含み、前記内周の前記2つの隙間は、前記穿孔ディスクを形成する隣接する穿孔要素の間にある、請求項1に記載の真空ポンプ。
【請求項3】
前記穿孔要素は、隣接する外側湾曲壁の間に実質的に隙間がないように取り付けられるように構成されている、請求項1に記載の真空ポンプ。
【請求項4】
前記穿孔要素は、前記穿孔要素の両端で前記内側湾曲壁と前記外側湾曲壁との間に延びる側壁をさらに備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の真空ポンプ。
【請求項5】
前記穿孔要素は、前記外側湾曲壁から前記内側湾曲壁まで延びる複数の隔壁をさらに備え、前記複数の隔壁の間に穿孔が形成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の真空ポンプ。
【請求項6】
前記窪みは、実質的に前記外側湾曲壁まで延びる、請求項1に記載の真空ポンプ。
【請求項7】
前記窪みを囲む壁の幅、並びに前記内側湾曲壁および前記外側湾曲壁の幅は、前記隔壁の幅より実質的に広い、請求項5に記載の真空ポンプ。
【請求項8】
前記少なくとも1つの窪みの前記壁は、回転時に、前記ロータの半径が、前記壁の半径方向内側部分の前に前記壁の半径方向外側部分と交差するように、角度が付けられている、請求項7に記載の真空ポンプ。
【請求項9】
回転時に前記ロータが最初に交差する前記穿孔要素の前記側壁は、前記ロータの半径が、前記壁の半径方向内側部分と交差する前に前記側壁の半径方向外側部分と交差するように、角度が付けられている、請求項4に記載の真空ポンプ。
【請求項10】
回転時に前記ロータが最後に交差する前記穿孔要素の前記側壁は、そこから延びる突出部を備え、前記突出部は、前記側壁を超えて円周方向に延びている、請求項4に記載の真空ポンプ。
【請求項11】
前記ステータは、各々が円筒形の内面を有するリングのスタックによって形成された円筒形の内面をさらに備え、前記複数の穿孔要素は、異なる軸方向位置で前記螺旋状経路と交差する複数の穿孔ディスクを形成するように、それぞれのリング上に取り付けられている、請求項1から10のいずれか一項に記載の真空ポンプ。
【請求項12】
前記穿孔要素は、アルミニウムで形成されている、請求項1から11のいずれか一項に記載の真空ポンプ。
【請求項13】
前記ロータは、ステンレス鋼で形成されている、請求項1から12のいずれか一項に記載の真空ポンプ。
【請求項14】
前記真空ポンプの入口の方に位置する前記穿孔要素は、50%を超える透過度を有し、前記真空ポンプの出口の方に位置する前記穿孔要素は、40%を超える透過度を有する、請求項1から13のいずれか一項に記載の真空ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、真空ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
真空ポンプは、特定の圧力範囲にわたって効果的に動作するように設計及び構成されている。すべての圧力範囲にわたって効果的に動作できるポンプはない。
【0003】
分子流領域の高真空ではターボ分子ポンプが効果的であり、粘性流領域の低真空ではルーツブロアポンプなどの粗引ポンプが効果的である。分子流及び粘性流の両方が発生する圧力の遷移流領域では、ドラッグポンプを使用することができる。
【0004】
従来のドラッグポンプのポンピング機構は、ポンプの圧縮比を最適化するためにロータをステータの近くで回転させる必要があり、これはステータ流路の深さを制限し、結果として、従来のドラッグポンプのポンピング能力は制限されている。
【0005】
ターボポンプでは、過熱せずに維持するには高すぎる圧力(通常0.05mbarより大きい)であるが、接続パイプのコンダクタンスにより、遠く離れて取り付けられたルーツブロアでは低すぎる圧力(通常0.2mbar未満)で半導体チャンバを動作させるという要求が強まっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
適切な能力を有し、従来、ドラグポンプでポンプ送給される圧力でのポンピングに効果的なポンプを提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様は、ステータ内に回転可能に取り付けられたロータを備える真空ポンプを提供し、上記ロータは、入口から出口まで螺旋状経路に沿って配置された複数の角度付きブレードを備え、上記ステータは、異なる軸方向位置で上記螺旋状経路と交差するように配置された複数の穿孔ディスクを形成する複数の穿孔要素を備え、上記穿孔は、上記螺旋状経路に沿って移動するガス分子が上記穿孔要素を通過するのを可能にし、上記穿孔ディスクの各々は、上記穿孔ディスクの外周を形成する外側湾曲壁と上記穿孔ディスクの内周の一部を形成する内側湾曲壁とを備え、上記内周は、内壁のない少なくとも1つの隙間を備える。
【0008】
従来のドラッグポンプは、使用する必要がある狭い通路により、比較的低い体積速度を有するという問題がある。米国公開第2005/0037137号に記載されたスコフィールド(Schofield)ドラッグポンプは、ドラッグ表面の1つにガスを通すことによってこの速度制限を緩和し、それによってはるかに高い能力の機械を設計することを可能にする。
【0009】
本出願は、スコフィールドポンプの適応を可能にする。詳細には、ドラッグ面は、ロータの角度付きブレードによって提供される螺旋状経路と交差する穿孔ディスクとして提供される。この配置の課題の1つは、ガスが逆ポンピング方向へ過度に漏れるのを防ぐために、穿孔ディスクとロータとの間、実際には隣接するロータブレード列の間のクリアランスを比較的小さくする必要があることである。これにより、穿孔ディスクの厚さが制限され、穿孔ディスクが回転するロータと衝突することなく軸方向に変形できる量も制限される。変形が制限される薄いディスクを提供することは困難な場合があり、特にポンプ内ではその傾向が顕著であり、ポンプ内では、運転中に温度が上昇することになり、低圧環境であるため効果的な冷却を行うことは困難である。
【0010】
ポンプ内部の冷却は特に難しく、これはポンプ内に広がる穿孔ディスクの選択加熱を引き起こす可能性があり、内部が、ステータの外壁に取り付けられている外部より高いレベルで加熱される。そのことは、穿孔ディスク、詳細には穿孔ディスクの内壁の変形をもたらす可能性があり、必要なクリアランスが小さい場合、ロータとの衝突が起こり大惨事になる可能性がある。
【0011】
実施形態は、穿孔ディスクの内周湾曲壁に少なくとも1つの隙間を形成することによってこの問題に対処しており、運転時の加熱により内壁が膨張する場合に、内壁が周方向に隙間の中に膨張するための空間があり、これにより何らかの軸方向の膨張が回避されるか又は少なくとも軽減されるようになっている。
【0012】
いくつかの実施形態では、上記穿孔ディスクの各々は、少なくとも2つの穿孔要素を備え、上記内周は、少なくとも2つの隙間を含み、上記内周の上記2つの隙間は、上記穿孔ディスクを形成する隣接する穿孔要素の間にある。
【0013】
穿孔ディスクは、2つの穿孔要素で形成することで、ロータ軸の周り及び異なる段のロータ要素の間により容易に取り付けることができる。穿孔ディスクが複数の要素で形成される場合、内周の隙間は、隣接する要素の間に都合よく配置することができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、上記穿孔要素は、隣接する外側湾曲壁の間に実質的に隙間がないように取り付けられるように構成されている。
【0015】
穿孔要素の外周は、ステータの外側円筒壁に取り付けられ、一般に円筒壁とステータ要素の外側部分とは実質的に同じ温度となり実質的に同じ量だけ膨張することになるので、隙間に対する要求はなく、従って、隙間のない外周壁を形成することは、ロータが衝突する可能性のある表面の数を減らす上で好都合な場合がある。
【0016】
いくつかの実施形態では、上記穿孔要素は、上記穿孔要素の両端で上記内側湾曲壁と上記外側湾曲壁との間に延びる側壁をさらに備える。
【0017】
穿孔要素は、内壁、外壁及び側壁のフレームを備えることができ、これらの壁は、一般に、何らかの中間壁よりも厚く、前記ディスクの機械的強度の大部分を提供する。
【0018】
いくつかの実施形態では、上記穿孔要素は、上記外側湾曲壁から上記内側湾曲壁まで延びる複数の隔壁をさらに備え、上記複数の隔壁の間に穿孔が形成されている。
【0019】
内壁から外壁まで延びる隔壁が存在することができ、穿孔は、複数の隔壁の間に形成される。内壁と外壁との間に延在する隔壁を配置することは、2つの間の熱伝導を改善し、2つの要素の熱膨張の差を小さくするのを助ける。
【0020】
いくつかの実施形態では、補強壁が存在することができ、補強壁は、内壁と外壁との間の実質的に中間でこれらと平行に延在し、隔壁を連結して穿孔を分割する。
【0021】
いくつかの実施形態では、上記複数の穿孔要素の各々の上記内側湾曲壁は、上記内側湾曲壁から上記外側湾曲壁に向かって延びる少なくとも1つの窪みを備え、上記少なくとも1つの窪みは、上記内周の上記少なくとも1つの隙間のうちの1つを構成する。
【0022】
追加的及び/又は代替的に、少なくとも1つの隙間は、内側湾曲壁の窪みによって形成することができ、内側湾曲壁は、内周から外側湾曲壁の方へ湾曲する。いくつかの実施形態では、窪みは、実質的に外側湾曲壁まで、場合によっては要素の幅の20%以内まで延びる。
【0023】
いくつかの実施形態では、上記窪みを囲む壁の幅、並びに上記内側湾曲壁および上記外側湾曲壁の幅は、上記隔壁の幅より実質的に広い。
【0024】
隔壁の幅は、一般に、これらが機械的要素に機械的安定性を与え、その変形を抑制するフレームを提供するので、穿孔要素の内壁及び外壁、さらに側壁よりも実質的に小さい。内側の隔壁要素は、内側要素から外側要素まで延在し、これらの要素間に熱伝導経路を提供し、内側要素の冷却を助け、熱膨張及び可能性のある変形を低減する。
【0025】
いくつかの実施形態では、上記少なくとも1つの窪みの上記壁は、回転時に、上記ロータの半径が、上記壁の半径方向内側部分の前に上記壁の半径方向外側部分と交差するように、角度が付けられている。
【0026】
上述のように、このようなポンプの潜在的な問題は、ロータとステータとの間の衝突の可能性である。このことは、ロータ要素とステータ要素との間の低クリアランス要件と、ロータが軸方向に多少の不安定性を有する磁気浮上軸受に取り付けられる可能性があるという事実によって悪化する。ロータがその経路に広がる突出部と衝突するのを防ぐために、回転時にロータが壁の半径方向内側部分の前に壁の半径方向外側部分と交差するように、窪みに角度を付けることが有利な場合がある。従って、ロータの縁部は、外壁に沿って進むことになり、窪みに遭遇する前に隔壁のこの部分に遭遇することになるので、内壁の膨張に起因する軸方向の変形がある場合、ロータは、軸方向の移動が少ない外側部分に最初に遭遇し、壁に沿って進行しながら穿孔要素を軸方向に押すことになり、これは、その経路の中に変形する場合がある窪みの壁の一部との衝突を抑制するはずである。
【0027】
いくつかの実施形態では、回転時に上記ロータが最初に交差する上記穿孔要素の上記側壁は、上記ロータの半径が、上記壁の半径方向内側部分と交差する前に上記側壁の半径方向外側部分と交差するように、角度が付けられている。
【0028】
さらなる、おそらくより危険な潜在的衝突点は、穿孔要素の側壁である。従って、実施形態では、側壁は、ロータの残りの部分がその障壁の縁部の残りの部分に遭遇する前に、ロータブレードの前部が外周またはその近くで外側湾曲壁に遭遇することになるように、角度が付けられている。これは、障壁の縁部とロータとの衝突を抑制するはずである。
【0029】
この点で、外壁に最初に遭遇するロータが側壁に衝突する可能性がある隙間に会わないように、外壁がそれらの間に隙間を有さないことが好都合である。
【0030】
いくつかの実施形態では、回転時に上記ロータが最後に交差する上記穿孔要素の上記側壁は、そこから延びる突出部を備え、上記突出部は、上記側壁を超えて円周方向に延びている。
【0031】
穿孔ディスクを形成する異なる要素の間に、外面ではなく内面で隙間があるように、好都合には、外壁から延び、隣接する要素の外壁と会う突出部が存在することができる。
【0032】
いくつかの実施形態では、上記ステータは、各々が円筒形の内面を有するリングのスタックによって形成された円筒形の内面をさらに備え、上記複数の穿孔要素は、異なる軸方向位置で上記螺旋状経路と交差する複数の穿孔ディスクを形成するように、それぞれのリング上に取り付けられている。
【0033】
螺旋状流路は、ロータがこの表面内で回転する円筒面内とすることができる。円筒面は、リングのスタックで形成することができ、その間に、ステータの穿孔ディスクを異なる軸方向位置で取り付けることができる。従って、螺旋状経路は、ガスがポンプを通過する場合に、穿孔ディスクによって異なる軸方向位置で妨害される。ここで関係する軸は、ロータの回転軸である。
【0034】
いくつかの実施形態では、上記穿孔要素は、アルミニウムで形成されている。
【0035】
アルミニウムは高い熱伝導率を有し、そのため比較的軽く、機械的にかなり強いので、熱伝導率が重要である穿孔要素を形成するための好都合な材料となり得る。
【0036】
いくつかの実施形態では、上記ロータは、ステンレス鋼で形成されている、
【0037】
ステンレス鋼はアルミニウムよりも高い温度で動作することができ、ロータはステータよりも高い温度に上昇することができる。これは、好都合には、ポンプがより高い温度で動作することを可能にするだけでなく、半導体チャンバからの粒子の堆積が起こりにくい温度で動作することも可能にする。
【0038】
いくつかの実施形態では、上記真空ポンプの入口の方に位置する上記穿孔要素は、40%を超える透過度を有し、上記真空ポンプの出口の方に位置する上記穿孔要素は、30%を超える透過度を有する。
【0039】
透過度とは、所定の流路と交差する穿孔要素の総面積に対するガス流路と交差する穿孔要素の穿孔の総面積の比である。
【0040】
従来のドラッグポンプの圧力範囲でポンプ送給することができるが、高い透過度も有するポンプを提供すると、ポンプは、低い圧力では比較的高いポンピング速度で効果的にポンプ送給できるが、高い圧力ではポンプの透過度により、ルーツブロア及び一次ポンプ結合体などの他のポンプで補助することで効果的にポンプ送給することができる。真空ポンプの透過度は、特に高い圧力において圧縮を低減するが、このことは、このような圧力で、バッキングポンプが遠く離れた位置から接続された場合でも、バッキングポンプとチャンバとの間の何らかのポンプの透過度が流れを過度に妨げるほど高くないという条件下で、効果的にポンプ送給できるので許容可能である。
【0041】
ガスがポンプを通って流れる際に、ガスは圧縮され、この圧縮は、開口又は透過面積を出口に向かって減らすことができることを意味する。
【0042】
いくつかの実施形態において、上記真空ポンプの入口の方に位置する上記穿孔要素は、50%を超える透過度を有し、上記真空ポンプの出口の方に位置する上記穿孔要素は、40%を超える透過度を有する。
【0043】
さらなる特定及び好ましい態様は、添付の独立請求項及び従属請求項に記載されている。従属請求項の特徴は、適宜、独立請求項の特徴と組み合わせることができ、また、請求項に明示的に規定されている以外の組み合わせで組み合わせることができる。
【0044】
装置の特徴が、ある機能を提供するために動作可能であると説明される場合、これは、その機能を提供する、又はその機能を提供するように適合又は構成される装置の特徴を含むことを理解されたい。
【0045】
本発明の実施形態は、添付の図面を参照してさらに説明されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】一実施形態による穿孔ステータ要素を示す。
図2】一実施形態による半導体チャンバ及び半導体チャンバを排気するためのポンプセットを示す。
図3】一実施形態によるポンプの真空ポンプを示す。
図4】一実施形態による真空ポンプのロータを示す
【発明を実施するための形態】
【0047】
実施形態を詳細に説明する前に、最初に、以下に概要を説明する。
【0048】
実施形態は、螺旋経路に沿って配置された複数の角度付きブレードを備えるロータを有する適応型スコフィールドポンプを提供する。ステータは、異なる軸方向位置で螺旋経路と交差するように配置され、ガスが入口から出口への途中で通過する複数の穿孔ディスクを備える。ポンプは、1mbarから5X10-2mbarの圧力領域でのポンピングに適しており、600l/s程度のポンピング能力を提供する。実施形態では、ロータは磁気浮上軸受に取り付けられており、これにより、ポンプは、特に、地階に配置することができるルーツブロワー及び一次ポンプ結合体によって補助される場合に、クリーンルームに配置して半導体処理チャンバを排気するのに適するものになる。
【0049】
しかしながら、穿孔ステータ要素にガスを通すことは、穿孔要素とロータとの間の軸方向の低クリアランスに起因して、それ自身の課題を提起する。実施形態は、内周に空間を設けるようにステータを設計することで、これらの課題を解決しようとするものであり、外側部分に対する内側部分の相対的な膨張は、概して空間の中で吸収され、膨張が要素の軸方向の移動を引き起こし、結果的にロータとステータとの衝突を引き起こす可能性を低減することができるようになっている。
【0050】
図1は、穿孔ステータディスクの一部を形成する穿孔要素14を示す。この実施形態では、穿孔ステータディスクは、2つのセクションで形成されており、これらは2つの要素14を備え、これらは一緒に接合されて(傾斜した側壁から突出部を有する側壁)、完全なディスクを形成する。穿孔ステータディスクは、30%以上の透過度を有し、各要素14は、内周壁18、外周壁16、および穿孔要素14に機械的安定性を提供するフレームを形成する側壁17を備える。
【0051】
この実施形態では、内壁18と外壁16との間に延在し半径方向に延びる隔壁36があり、その間に穿孔38が形成されている。これらの半径方向に延びる隔壁は、ディスクの中央部分を形成する内壁から外側部分を形成する外壁に熱を伝達し、それによってディスクの中央リングの熱上昇を制限する。
【0052】
窪み37は、ディスクの内側リングを形成する内壁18に設けられ、これらは、内側リングがその中に膨張するための空間を提供し、それによって、膨張が、ロータとステータとの間の衝突を引き起こす可能性のある、関連する軸方向移動を伴うリングの曲がりが生じる可能性が低下する。
【0053】
穿孔要素14は、一方の側壁17が、側壁を越えて円周方向に延びる突出部33を備えるように構成され、この突出部は、2つの穿孔要素がディスクを形成するために一緒に取り付けられる場合に、その半径方向内側部分の間に隙間があるようにさせる。また、この隙間は、内壁の周方向の膨張のための空間を提供し、それによって、内壁が加熱時に曲がり、温度上昇に起因して膨張する際に軸方向に移動する可能性が低下する。
【0054】
また、穿孔要素は、側壁17及び窪み37が接近するロータから傾斜するように構成されているので、ロータは、半径方向外側で要素14と窪み37の壁との間の接合部と交差することになる。これは、これらの隙間で内側リングの何らかの軸方向の移動があったとしても、ロータは、窪みの側壁または要素14の半径方向外側部分に最初に遭遇し、これに沿って摺動し、何らかの軸方向の移動を押し込み、穿孔要素14が損傷するような、最悪の衝突の機会を減少させることになることを意味する。
【0055】
図2は、クリーンルームまたは半導体製造工場70内に配置された半導体チャンバ5を示し、一実施形態によるスコフィールド真空ポンプ10が半導体チャンバに取り付けられている。真空ポンプ10は、磁気浮上軸受を有しているので、クリーンルーム70内に取り付けることができ、比較的短い導管12によって真空チャンバ5に取り付けることができる。
【0056】
真空ポンプ10及び半導体処理チャンバ5から遠く離れて、ルーツブロア及び一次ポンプで構成されるバッキングポンプ結合体90がある。これらはクリーンルーム70から遠く離れた地階80に配置されている。このため、バッキングポンプ90とスコフィールドポンプ10との間の導管92は比較的長く、これは特に低い圧力におけるバッキングポンプ90の有効性に影響を与える。
【0057】
半導体処理チャンバ5の近くに取り付けられた比較的高いポンピング能力を有するスコフィールドポンプ10と、有効なポンピング範囲の高い圧力で有効にポンプ送給できるバッキングポンプ90との組み合わせは、従来のドラッグポンプの圧力範囲で有効にポンプ送給するがポンピング能力が高いポンプセットを提供する。
【0058】
スコフィールド真空ポンプ10は、図3に概略的に示されている。真空ポンプ10は、一緒に取り付けられ、そこを通ってガスが入口26から排気口28へ流れる穿孔ディスクを形成する複数の穿孔ステータ要素14(図1に示す)を備える。穿孔ディスクは、円筒形リング40上の異なる軸方向位置に取り付けられ、ロータ35のブレード30の列の間に延びており、そのブレード30は、入口26から出口28までの螺旋状経路を形成する。螺旋状ロータ35は、シャフト42に取り付けられ、作動時に回転する。シャフト42は、磁気浮上軸受45に取り付けられている。
【0059】
図4は、真空ポンプ10のロータ35の図であり、ロータブレード30によって形成される螺旋状経路を示す。ロータ35の回転は、ブレードが接触するガス分子に運動量を与え、穿孔要素14を通して出口18の方へ送る。ステータディスクの非穿孔部分との衝突は、ガス分子を減速させ、ドラッグポンプの抗力(drag)をもたらし、分子の軌道を出口に向かって引っ張る。
【0060】
本発明の例示的な実施形態は、添付図面を参照して本明細書に詳細に開示されているが、本発明は正確な実施形態に限定されず、添付の請求項及びその均等物によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく当業者によって種々の変更及び修正をそこにもたらすことができることを理解されたい。
【符号の説明】
【0061】
5 真空チャンバ
10 真空ポンプ
12,92 導管
14 穿孔要素
16 外壁
17 側壁
18 内壁
26 入口
28 出口
30 ロータブレード
33 突出部
35 ロータ
36 隔壁
37 窪み
38 穿孔
40 リング
42 シャフト
45 軸受
70 クリーンルーム
80 地階
90 バッキングポンプセット
図1
図2
図3
図4