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特許7685004五種混合ワクチン用の包装体及び医療装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-20
(45)【発行日】2025-05-28
(54)【発明の名称】五種混合ワクチン用の包装体及び医療装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/00 20060101AFI20250521BHJP
   A61M 5/28 20060101ALI20250521BHJP
【FI】
A61M5/00 518
A61M5/28 520
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023055157
(22)【出願日】2023-03-30
(65)【公開番号】P2024142817
(43)【公開日】2024-10-11
【審査請求日】2023-07-04
【審判番号】
【審判請求日】2024-02-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】318010328
【氏名又は名称】KMバイオロジクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(72)【発明者】
【氏名】坂本 博臣
(72)【発明者】
【氏名】中村 暁央
【合議体】
【審判長】平瀬 知明
【審判官】安井 寿儀
【審判官】立花 啓
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-162532(JP,A)
【文献】特開2009-50711(JP,A)
【文献】特開2019-213625(JP,A)
【文献】特開2007-302327(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/00
A61M 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジフテリア、百日せき、破傷風、急性灰白髄炎の四種混合ワクチンを含む薬液が収容されたプレフィルドシリンジ(13)とHibワクチンを含む凍結乾燥剤が収容されたバイアル瓶(14)とを包装する五種混合ワクチン用の包装体(10)であって、
前記包装体(10)は、
環状のフランジ(31)と前記環状のフランジ(31)に囲まれた凹部(33)とを有する収容体(11)と、
前記凹部(33)を覆う蓋体(12)とを有し、
前記収容体(11)と前記蓋体(12)は遮光性の材料からなり、
前記収容体(11)と前記蓋体(12)は、前記環状のフランジ(31)に沿って形成された環状接着部(58)によって接着されており、
前記凹部(33)は、前記プレフィルドシリンジ(13)を収容する第1の収容凹部(34)と、前記バイアル瓶(14)を収容する第2の収容凹部(35)とを有し、前記第1の収容凹部(34)と前記第2の収容凹部(35)は、前記プレフィルドシリンジ(13)と前記バイアル瓶(14)が、前記プレフィルドシリンジ(13)の中心軸(23)と前記バイアル瓶(14)の中心軸(24)を同軸又はほぼ同軸に整列させた状態で収容されるように構成されており、
前記フランジ(31)は、前記プレフィルドシリンジ(13)の中心軸(23)と前記バイアル瓶(14)の中心軸(24)が整列する長軸方向(x方向)に関して前記バイアル瓶(14)に隣接し且つ前記環状接着部(58)の外側に位置する端部フランジ部分(46)を有し、
前記蓋体(12)は前記端部フランジ部分(46)に対向する端部蓋体部分(54)を有し、前記端部蓋体部分(54)が前記端部フランジ部分(46)に接着されない開封先端部を形成し
前記蓋体(12)の前記凹部(33)に対向する裏面(56)には、注意事項等情報(57)が印刷されている、五種混合ワクチン用の包装体。
【請求項2】
前記端部フランジ部分(46)は、前記端部蓋体部分(54)との間に隙間ができるように、前記端部蓋体部分(54)から離れる方向に屈曲されて階段状屈曲部(47)が形成されている、請求項1に記載の五種混合ワクチン用の包装体。
【請求項3】
前記端部蓋体部分(54)は、前記長軸方向(x方向)に関して前記端部フランジ部分(46)の縁から外側に突出する突出部を有する、請求項1に記載の五種混合ワクチン用の包装体。
【請求項4】
ジフテリア、百日せき、破傷風、急性灰白髄炎の四種混合ワクチンを含む薬液が収容されたプレフィルドシリンジ(13)と、
Hibワクチンを含む凍結乾燥剤が収容されたバイアル瓶(14)と、
前記プレフィルドシリンジ(13)と前記バイアル瓶(14)とを包装する包装体(10)とを含む医療装置(100)であって、
前記包装体(10)は、
環状のフランジ(31)と前記環状のフランジ(31)に囲まれた凹部(33)とを有する収容体(11)と、
前記凹部(33)を覆う蓋体(12)とを有し、
前記収容体(11)と前記蓋体(12)は遮光性の材料からなり、
前記収容体(11)と前記蓋体(12)は、前記環状のフランジ(31)に沿って形成された環状接着部(58)によって接着されており、
前記凹部(33)は、前記プレフィルドシリンジ(13)を収容する第1の収容凹部(34)と、前記バイアル瓶(14)を収容する第2の収容凹部(35)とを有し、前記第1の収容凹部(34)と前記第2の収容凹部(35)は、前記プレフィルドシリンジ(13)と前記バイアル瓶(14)が、前記プレフィルドシリンジ(13)の中心軸(23)と前記バイアル瓶(14)の中心軸(24)を同軸又はほぼ同軸に整列させた状態で収容されるように構成されており、
前記フランジ(31)は、前記プレフィルドシリンジ(13)の中心軸(23)と前記バイアル瓶(14)の中心軸(24)が整列する長軸方向(x方向)に関して前記バイアル瓶(14)に隣接し且つ前記環状接着部(58)の外側に位置する端部フランジ部分(46)を有し、
前記蓋体(12)は前記端部フランジ部分(46)に対向する端部蓋体部分(54)を有し、前記端部蓋体部分(54)が前記端部フランジ部分(46)に接着されない開封先端部を形成している、医療装置(100)。
【請求項5】
請求項1~のいずれかに記載の包装体と、前記包装体の前記第1の収容凹部(34)に収容されたプレフィルドシリンジ(13)と、前記第2の収容凹部(35)に収容されたバイアル瓶(14)とを有し、前記プレフィルドシリンジ(13)にはジフテリア、百日せき、破傷風、急性灰白髄炎の四種混合ワクチンを含む液剤が収容され、前記バイアル瓶(14)にはHibワクチンを含む凍結乾燥製剤が収容されている、五種混合ワクチン用の医療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレフィルドシリンジとバイアル瓶とを包装する包装体、及びこの包装体にプレフィルドシリンジとバイアル瓶を包装した医療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
四種混合ワクチンは、ジフテリア、百日せき、破傷風、急性灰白髄炎(ポリオ)の4つの病原菌に対する混合ワクチン製剤で、予防接種法に基づいて接種される定期予防接種に用いられている。
【0003】
一方、近年、ジフテリア、百日せき、破傷風、急性灰白髄炎(ポリオ)を予防する四種混合ワクチンに、ヘモフィルスインフルエンザ菌b型(Hib)ワクチンを加えた五種混合ワクチンが提案され、その実用化に向けて様々な取り組みが行われている。
【0004】
五種混合ワクチンを提供する形態として、例えば、四種混合ワクチン(液剤)をプレフィルドシリンジに収容し、Hibの凍結乾燥製剤をバイアル瓶に収容し、プレフィルドシリンジに収容された液剤をバイアル瓶に注入して凍結乾燥製剤を溶解し混合し、その混合液をプレフィルドシリンジに抜き取って接種することが考えられる。
【0005】
このような接種形態を採用する場合、プレフィルドシリンジとバイアル瓶を別々に提供するのではなく、例えば、プレフィルドシリンジとバイアル瓶を一つの包装体に収容した状態で医療現場に提供することが好ましい。
【0006】
しかし、従来、四種混合ワクチンは、プレフィルドシリンジにすべてのワクチンが収容された状態で長年提供されている(特許文献1を参照)。そのため、四種混合ワクチンの利用に慣れているユーザは、プレフィルドシリンジに五種混合ワクチンがまとめて収容されていると勘違いし、プレフィルドシリンジに収容されたワクチンだけを接種してしまう、という事態が生じかねない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第4907217号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、プレフィルドシリンジに収容された四種混合ワクチンとバイアル瓶に収容されたHib凍結乾燥製剤とを確実に混合したうえで、五種混合ワクチンが適正に調製されるように仕向ける工夫がなされた包装体及び医療装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態に係る五種混合ワクチン用の包装体は、
ジフテリア、百日せき、破傷風、急性灰白髄炎の四種混合ワクチンを含む薬液が収容されたプレフィルドシリンジ(13)とHibワクチンを含む凍結乾燥剤が収容されたバイアル瓶(14)とを包装する五種混合ワクチン用の包装体(10)であって、
前記包装体(10)は、
環状のフランジ(31)と前記環状のフランジ(31)に囲まれた凹部(33)とを有する収容体(11)と、
前記凹部(33)を覆う蓋体(12)とを有し、
前記収容体(11)と前記蓋体(12)は遮光性の材料からなり、
前記収容体(11)と前記蓋体(12)は、前記環状のフランジ(31)に沿って形成された環状接着部(58)によって接着されており、
前記凹部(33)は、前記プレフィルドシリンジ(13)を収容する第1の収容凹部(34)と、前記バイアル瓶(14)を収容する第2の収容凹部(35)とを有し、前記第1の収容凹部(34)と前記第2の収容凹部(35)は、前記プレフィルドシリンジ(13)と前記バイアル瓶(14)が、前記プレフィルドシリンジ(13)の中心軸(23)と前記バイアル瓶(14)の中心軸(24)を同軸又はほぼ同軸に整列させた状態で収容されるように構成されており、
前記フランジ(31)は、前記プレフィルドシリンジ(13)の中心軸(23)と前記バイアル瓶(14)の中心軸(24)が整列する長軸方向(x方向)に関して前記バイアル瓶(14)に隣接し且つ前記環状接着部(58)の外側に位置する端部フランジ部分(46)を有し、
前記蓋体(12)は前記端部フランジ部分(46)に対向する端部蓋体部分(54)を有し、前記端部蓋体部分(54)が前記端部フランジ部分(46)に接着されない開封先端部を形成している。
【発明の効果】
【0010】
このように構成された五種混合ワクチン用の包装体(10)によれば、ユーザは、蓋体(12)の端部蓋体部分(54)を持って蓋体(12)を収容体(11)から剥がしていく。すると、まず収容体(11)に収容されているバイアル瓶(14)が目に入る。そのため、ユーザはバイアル瓶(14)の存在を知ることになる。その後、さらに蓋体(12)を剥がしていくと、プレフィルドシリンジ(13)が目に入る。これにより、ユーザは、包装体(10)を含む医療装置(100)が、プレフィルドシリンジ(13)に収容されている薬をバイアル瓶(14)に収容されている薬に混ぜて所望の注射液を得るものである、と認識する。したがって、ユーザは、誤って、プレフィルドシリンジ(13)に収容されている四種混合ワクチンを含む薬液だけを患者に投与することがない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る医療装置及び包装体の外観を示す斜視図。
図2図1の医療装置の収容体と蓋体に分離して示す平面図。
図3図1に示す医療装置の構成を分離して示す分解斜視図。
図4図2,3に示す収容体の平面図。
図5図2,3に示す蓋体の裏面(下面)を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る包装体及び医療装置の一つの実施形態を説明する。
【0013】
[全体構成]
図1は実施形態に係る医療装置100の外観を示す。図示するように、医療装置100は包装体10を有する。包装体10は、後に説明するプレフィルドシリンジとバイアル瓶を収容する収容体(容器本体)11と、収容体11と共にプレフィルドシリンジとバイアル瓶を包装する蓋体(容器蓋)12を有する。
【0014】
収容体11と蓋体12は、プレフィルドシリンジとバイアル瓶に収容されている薬剤を保護するために、遮光性を有する材料で作られている。
【0015】
好ましくは、収容体11は、プレフィルドシリンジとバイアル瓶を収容するための一定の形を有する空間を形成するために、熱可塑性樹脂を含むプラスチックシートを真空成型して作られたいわゆるブリスター包装体である。
【0016】
蓋体12は、プラスチックシート、アルミシート、紙シートのいずれであってもよい。後に説明するように、収容体11に対して蓋体12を熱接着する場合は、収容体11に接する蓋体12の裏面に、熱可塑性のフィルム層を有することが好ましい。
【0017】
図2に示すように、収容体11には、プレフィルドシリンジ13とバイアル瓶14が収容される。プレフィルドシリンジ13は、ジフテリア、百日せき、破傷風、急性灰白髄炎(ポリオ)の四種混合ワクチンが収容され、バイアル瓶14にはHibワクチンが収容される。実施形態において、四種混合ワクチンは液剤で、Hibワクチンは凍結乾燥製剤である。
【0018】
図3を参照すると、プレフィルドシリンジ13は、一般的な注射器と同様に、液剤を収容するためのシリンジバレル(外筒)15と、シリンジバレル15の遠位端(筒先)に装着された注射針16と、注射針16を覆う保護キャップ17と、シリンジバレル15の近位端開口から該シリンジバレル15の内部に進退可能に挿入されたプランジャ19を有する。図示するように、プランジャ19は、該プランジャ19の遠位端(ガスケット(図示せず))をシリンジバレル15の近位端近くまで後退して、シリンジバレル15の中に一定量の四種混合ワクチンの液剤が収容されており、プランジャ19の近位端にある指当面20に力を加えると、シリンジバレル15の中に収容された液剤が注射針16から押し出されるようになっている。
【0019】
バイアル瓶14は、Hibワクチンの凍結乾燥製剤を収容する透明容器21と、透明容器21の口部を封止するキャップ22を有する。
【0020】
[収容体]
図2~4を参照すると、収容体11は、図示する「x方向」、「y方向」、「z方向」にそれぞれ大きさを有し、特にx方向を長軸方向とする細長い三次元の立方体構造の容器である。
【0021】
収容体11は、細長い四角形又は略四角形の環状フランジ31と、環状フランジ31の内側に該環状フランジ31に囲まれた凹部33を一体に備えている。凹部33は、プレフィルドシリンジ13を収容する第1の収容凹部34と、バイアル瓶14を収容する第2の収容凹部35を有する。図示するように、プレフィルドシリンジ13の中心軸23とバイアル瓶14の中心軸24を同軸又はほぼ同軸に位置させた状態で収容するように、凹部33には複数の凹凸が形成されている。
【0022】
実施形態では、第1の収容凹部34は、プレフィルドシリンジ13が、第2の収容凹部35から離れた第1の収容凹部34の左側領域にプレフィルドシリンジ遠位端(保護キャップ17の遠位端)を位置させ、また第2の収容凹部35に近い第1の収容凹部34の右側領域にプレフィルドシリンジ近位端(プランジャ指当面20)を位置させ、プレフィルドシリンジ13の中心軸23をx軸方向に向けた状態で収容されるように、第1の収容凹部34の各部の大きさと形状が決められている。
【0023】
特に好ましい実施形態では、第1の収容凹部34の左側領域には、保護キャップ17の外径と同じ又はそれよりわずかに小さな横幅(y方向幅)を有する位置決め用の略U形状又は溝状凹部36が形成され、該溝状凹部36に保護キャップ17を嵌めることによってプレフィルドシリンジ13が位置決めされるようになっている。第1の収容凹部34の右側領域には、シリンジバレル15から突出したプランジャ19を支持する凸部37が形成されている。溝状凹部36と凸部37の間には、第1の収容凹部34の側壁38を内側に突出させて、第1の収容凹部34に収容されたシリンジバレル15のフィンガグリップ(遠位側フランジ)18の遠位側と近位側において、内側に突出する2対の対向する凸部39が形成され、これら2対の対向する凸部39の間にある側壁部分40の間隔(y方向の間隔)が、フィンガグリップ18の大きさ(y方向の大きさ)にほぼ同じにしている。以上の構成により、第1の収容凹部34に収容されたプレフィルドシリンジ13は、該プレフィルドシリンジ13の中心軸23をx方向に向けた状態で、第1の収容凹部34に安定して収容できる。
【0024】
実施形態では、第2の収容凹部35は、バイアル瓶14が、第1の収容凹部34に近い第2の収容凹部35の左側領域にバイアル瓶上部(キャップ22)を位置させ、また第1の収容凹部34から離れた右側領域にバイアル瓶底部25を位置させ、バイアル瓶14の中心軸24をx軸方向に向けた状態で収容されるように、第2の収容凹部35の各部の大きさと形状が決められている。
【0025】
特に好ましい実施形態では、第2の収容凹部35の中央領域には、バイアル瓶本体の外径と同じ又はそれよりも僅かに小さな幅(y方向幅)を有する位置決め用の略U形状の溝状凹部41が形成され、該溝状凹部41にバイアル瓶14が位置決めされるようになっている。溝状凹部14の底面の高さは、第2の収容凹部35に収容されたバイアル瓶14の中心軸24が、第1の収容凹部34に収容されたプレフィルドシリンジ13の中心軸23と同軸上に整列するように、決められている。
【0026】
好ましい実施形態では、第1の収容凹部34と第2の収容凹部35との間には、第1の収容凹部34と第2の収容凹部35を隔てる壁42が形成されている。壁42の上端は、y方向の横断面が略U形状又は略C形状を有する溝43になっている。溝43の大きさと形状は、第1の収容凹部34と第2の収容凹部35との間に指(例えば人差し指)を入れ、その指をバイアル瓶14の天面に当てた状態でバイアル瓶14を起こして、第2の収容凹部35から取り出せるように決められている。
【0027】
好ましい実施形態では、収容体11の環状フランジ31の一部であって、バイアル瓶14の底面に隣接する長手方向一端部には、第2の収容凹部35の端壁45から所定距離をあけた箇所を階段状に曲げて階段状屈曲部47を形成して、環状フランジ31の他の部分よりも僅かに低い、端部フランジ部分(舌部)46が形成されている。
【0028】
[蓋体]
蓋体12は、図1に示すように、収容体11のフランジ31の輪郭とほぼ同じ輪郭を有する。
【0029】
蓋体12の表面50又は上面には、種々の情報が印刷されている。この情報には、五種混合ワクチンの有効成分等に関する情報51が含まれる。その他の情報として、蓋体12の表面50には、医療用医薬品GS1データバー53が印刷されたシール52が貼り付けられる。GS1データバー53は、2019年12月公示の「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」の改正で、医療法医薬品は電子化された添付文書での閲覧が基本になったことを受けて、従来製品の包装体に収容されていた添付文書に代えて、医薬品医療機器総合機構(PMDA)のホームページに掲載された医薬品の使用及び取り扱い上の必要な注意等の事項(「注意事項等情報」)にアクセスするための情報である。
【0030】
その他、蓋体12の長手方向(x方向)一端側であって、収容体11に接着された状態で、収容体11の端部フランジ部分46に対向する端部蓋体部分54には、そこが開封先端部(開封開始位置)であることを示す情報55が印刷されている。例えば、その情報は「開」の文字を含む。
【0031】
蓋体12の裏面56(図5参照)又は下面(収容体11に接着された状態で凹部33に臨む面)は、熱可塑性のフィルム層を有する。
【0032】
図5に示すように、蓋体12の裏面56又は下面には、別の注意事項等情報57が印刷されている。この注意事項等情報57は、例えば、医療装置100の使用方法に関する情報(具体的には、「混ぜて使用して下さい」等)である。
【0033】
[製造]
以上の構成を有する医療装置100は、収容体11の第1の収容凹部34と第2の収容凹部35にそれぞれ、液剤の四種混合ワクチンを収容したプレフィルドシリンジ13と、凍結乾燥製剤のHibワクチンを収容したバイアル瓶14を収容し、収容体11の上端環状フランジ31の上に蓋体12を載せ、環状フランジ31の内側縁に沿って環状に、収容体11と蓋体12を連続的又は断続的に加熱し熱接着して環状接着部58を形成する。このとき、上述のように、環状フランジ31の端部フランジ部分46とそれに対向する端部蓋体部分54は環状接着部58の外側にあり、接着されることがない。
【0034】
[使用]
この医療装置100を用いて五種混合ワクチンを接種する場合、蓋体12の端部蓋体部分54をもって、そこから反対側の長手方向端部に向けて、蓋体12を収容体11から剥がす。このとき、端部蓋体部分54は対向する端部フランジ部分46との間に隙間を有するため、端部蓋体部分54の縁に指を当てることによって、容易に端部蓋体部分54を掴むことができる。
【0035】
また、蓋体12の表面50には、端部蓋体部分54が開封先端部(開封開始位置)であることを示す情報55が印刷されているため、また、端部蓋体部分54に対向する端部フランジ部分46には階段状屈曲部47が形成されているため、ユーザ(例えば、医療従事者)はそこが開封先端部であることを容易に認識できる。
【0036】
蓋体12を剥がしていくと、まず収容体11に収容されているバイアル瓶14が目に入る。そのため、ユーザはバイアル瓶14の存在を知ることになる。仮に、開封先端側にプレフィルドシリンジを配置し、開封後端側にバイアル瓶を配置した場合、ユーザは、従来の四種混合ワクチン用の医療装置のように、プレフィルドシリンジにすべてのワクチンが収容されていると思い込み、蓋体を全部剥がすことなく、プレフィルドシリンジが表れた状態(バイアル瓶が表れていない状態)でプレフィルドだけを収容体から取り出して、プレフィルドシリンジに収容されたワクチンだけを接種する可能性がある。これに対し、実施形態の医療装置100では、バイアル瓶14に近い側から蓋体12が開封されてバイアル瓶の存在がユーザに認識されるため、プレフィルドシリンジに収容されたワクチンだけが接種されることはない。
【0037】
また、蓋体12の裏面には、プレフィルドシリンジ13の薬(例えば、液剤)とバイアル瓶14の薬(例えば、凍結乾燥製剤)の混合を促す情報等が印刷されているので、プレフィルドシリンジ13の薬のみが接種される可能性が無くなる。
【0038】
収容体11から取り出されたプレフィルドシリンジ13は、保護キャップ17が外され、注射針16をバイアル瓶14のキャップ22の中央付近に刺し、例えば、シリンジバレル15のフィンガグリップ18に人差し指と中指を当てた状態でプランジャ19の指当面20を親指で押して、四種混合ワクチンをバイアル瓶14に注入する。その後、バイアル瓶14をプレフィルドシリンジ13と一緒に振って、Hibワクチンを溶解し混合して五種混合ワクチンを調製する。最後に、調製された五種混合ワクチンをプレフィルドシリンジ13に吸引し、患者に接種する。
【0039】
上述の構成を有する包装体10及び医療装置100によれば、プレフィルドシリンジ13とバイアル瓶14がそれらの中心軸23,24を整列した状態で配置される。そのため、包装体10は全体として細長い箱型になるが、長いプレフィルドシリンジと嵩の低いバイアル瓶を並列に配置すると、包装体に無駄なスペースが生じ、そのために包装体が大きくなり、輸送コストが高くなる。これに対し、実施形態の包装体は、無駄なスペースがなくなり、輸送コストが低くなるという利点がある。
【0040】
[他の実施形態]
上述した実施形態では、プレフィルドシリンジ13は注射針16を含むが、包装体10の中に収容されるプレフィルドシリンジは注射針を備えていなくてもよい。
【0041】
上述した実施形態では、収容体11の環状フランジ31の端部フランジ部分46に階段状の段部を形成し、端部フランジ部分46と端部蓋体部分54との間に隙間を形成することで、開封先端部(端部蓋体部分54)を容易に把持できるようにしたが、例えば、端部蓋体部分54を端部フランジ31の外側に突出させて、その突出部をユーザが把持するようにしてもよい。
【0042】
上述の実施形態では、蓋体12は収容体11に熱接着したが、接着剤を使って両者を接着してもよい。この場合、蓋体12は、熱可塑性フィルムの無い金属フィルム、紙であってもよい。
【符号の説明】
【0043】
100:医療装置
10:包装体
11:収容体(容器本体)
12:蓋体(容器蓋)
13:プレフィルドシリンジ
14:バイアル瓶
23:プレフィルドシリンジの中心軸
24:バイアル瓶の中心軸
31:環状フランジ
33:凹部
34:第1の収容凹部
35:第2の収容凹部
46:端部フランジ部分
53:GS1データバー
54:端部蓋体部分
57:注意事項等情報
58:環状接着部
図1
図2
図3
図4
図5