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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-21
(45)【発行日】2025-05-29
(54)【発明の名称】給湯器のガス分配ユニット及び給湯器
(51)【国際特許分類】
   F23K 5/00 20060101AFI20250522BHJP
【FI】
F23K5/00 301B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021148283
(22)【出願日】2021-09-13
(65)【公開番号】P2023041108
(43)【公開日】2023-03-24
【審査請求日】2024-06-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000112015
【氏名又は名称】株式会社パロマ
(74)【代理人】
【識別番号】100166017
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 和政
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 剛
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-085292(JP,A)
【文献】特開2015-143588(JP,A)
【文献】特開2017-116209(JP,A)
【文献】特開2003-065507(JP,A)
【文献】特開2018-194187(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23K 5/00
F23D 14/00-14/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスが流れるガス流路を備え、給湯器に用いられるガス分配ユニットであって、
前記ガス流路の外部から前記燃料ガスを導入する導入口と、複数のノズルと、を有する第1閉塞部材と、
前記第1閉塞部材に固定され且つ前記第1閉塞部材を一方側から覆う第2閉塞部材と、
前記第1閉塞部材と前記第2閉塞部材との間に配置される区画部材と、
を備え、
前記ガス流路は、前記第1閉塞部材の第1壁部と前記第2閉塞部材の第2壁部とを有し、前記第1壁部と前記第2壁部の間の内部空間を前記燃料ガスが流れる構成であり、
前記区画部材は、前記ガス流路内の前記内部空間を前記第1閉塞部材側において前記燃料ガスが流れる第1空間と前記第2閉塞部材側において前記燃料ガスが流れる第2空間とに区画し、且つ、前記第1空間と前記第2空間との間で前記燃料ガスを通す孔部を複数備え、
前記第1閉塞部材は、複数の前記導入口と、複数の第1溝部と、を有し、
各々の前記第1溝部に、1以上の前記導入口と、1以上の前記ノズルが設けられ、
各々の前記第1溝部において、前記導入口から前記ノズルへと前記燃料ガスが流れる個別流路が構成され、
前記第2閉塞部材は、複数の第2溝部を有し、
前記第2空間は、前記第2溝部内の空間を含み、
前記区画部材は、2以上の前記第1溝部の各内部にそれぞれ構成される前記第1空間を前記第2溝部内の前記第2空間と区画する各区画部を備え、
少なくともいずれかの前記第1溝部は、複数の前記ノズルが配置されるガス分配室と、前記ガス分配室の上流側に配置されるとともに前記ガス分配室にガスを排出する出口を有する誘導通路と、を備え、
いずれかの前記区画部には、複数の前記孔部の一部であり前記ガス分配室に配置される下流側孔部と、複数の前記孔部の一部であり前記下流側孔部よりも上流側に配置されるとともに前記第2空間を介して前記下流側孔部と連通する上流側孔部とが設けられ、
前記下流側孔部の開口領域が前記ガス分配室の空間に位置し、
前記誘導通路は、前記出口に向かって直線状に延びる2つの内壁部が対向して配置され、
前記区画部材において、2つの直線状の前記内壁部の間の壁部間領域及び当該壁部間領域を前記ガス分配室側に延長した延長領域から外れた領域のみに、前記誘導通路よりも下流側の全ての前記孔部が配置されており、
前記区画部は、前記延長領域において前記ガス分配室を塞ぐ
給湯器のガス分配ユニット。
【請求項2】
前記区画部材は、前記第1閉塞部材と前記第2閉塞部材との間に挟まれるパッキン部材であり、
前記パッキン部材は、前記第1閉塞部材と前記第2閉塞部材との間から前記内部空間の外側へ前記燃料ガスが漏れることを遮断する
請求項1に記載の給湯器のガス分配ユニット。
【請求項3】
前記第1閉塞部材は、自身の内部に前記第1空間を構成する前記第1溝部を有し、
前記第2閉塞部材は、前記パッキン部材に接触する接触部と、前記パッキン部材側とは反対側に膨出するとともに内部に前記第2溝部が形成された複数の膨出部と、
を有し、
各々の前記膨出部内の空間が前記第2空間であり、
各々の前記膨出部を囲む構成で、前記接触部と前記パッキン部材とが密着してなる遮断部が構成され、
前記遮断部は、前記燃料ガスが前記接触部と前記パッキン部材との間を通って前記膨出部内から前記膨出部外へ通過することを遮断する
請求項2に記載の給湯器のガス分配ユニット。
【請求項4】
複数の前記孔部は、前記導入口側に設けられる1以上の第1孔部と、前記ノズル側に設けられる第2孔部と、を有し、
前記第1孔部と前記第2孔部との間において前記第2空間が続いている
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の給湯器のガス分配ユニット。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のガス分配ユニットを有する給湯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、給湯器のガス分配ユニット及び給湯器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、給湯器の一例が開示される。この給湯器は、筐体内に、複数のバーナを左右方向に並設してなるバーナユニットを備えた燃焼装置と、燃焼装置の上部に配置される熱交換器とを備え、バーナユニットでの燃焼によって生じる燃焼排気により、熱交換器を通過する水を加熱して出湯させる。更に、燃焼装置の前面には、バーナユニットの各バーナへ燃料ガスを供給するためのマニホールド(ガス分配ユニット)が設けられている。このガス分配ユニットは、バーナに向けてノズルを突設させた本体と、本体の前側に取り付けられる蓋板と、本体と蓋板との間をシールするシール部材とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020―85292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される給湯器のガス分配ユニットは、本体を覆う構成で蓋体が重ねられて固定され、これらの間に燃料ガスが流れる内部空間が薄く構成される。この種のガス分配ユニットは、内部空間における導入口から各ノズルまでのガスの流れを適正化することが望まれるが、従来のガス分配ユニットは、ガスの流れを調整する上で、改善の余地があった。
【0005】
本開示は、給湯器のガス分配ユニットにおいて導入口から各ノズルまでの燃料ガスの流れの適正化を図りやすい技術を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一つである給湯器のガス分配ユニットは、
燃料ガスが流れるガス流路を備え、給湯器に用いられるガス分配ユニットであって、
前記ガス流路の外部から前記燃料ガスを導入する導入口と、複数のノズルと、を有する第1閉塞部材と、
前記第1閉塞部材に固定され且つ前記第1閉塞部材を一方側から覆う第2閉塞部材と、
前記第1閉塞部材と前記第2閉塞部材との間に配置される区画部材と、
を備え、
前記ガス流路は、前記第1閉塞部材の第1壁部と前記第2閉塞部材の第2壁部とを有し、前記第1壁部と前記第2壁部の間の内部空間を前記燃料ガスが流れる構成であり、
前記区画部材は、前記ガス流路内の前記内部空間を前記第1閉塞部材側において前記燃料ガスが流れる第1空間と前記第2閉塞部材側において前記燃料ガスが流れる第2空間とに区画し、且つ、前記第1空間と前記第2空間との間で前記燃料ガスを通す孔部を複数備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る技術は、給湯器のガス分配ユニットにおいて導入口から各ノズルまでの燃料ガスの流れの適正化を図りやすい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係る給湯器を例示する正面図である。
図2図2は、図1の給湯器において前面パネルを外した状態を例示する正面図である。
図3図3は、図2の構成からガス分配ユニットを外した構成を例示する正面図である。
図4図4は、図1の給湯器に用いられるガス分配ユニットにガス供給部が組み付けられた構成を例示する斜視図である。
図5図5は、ガス分配ユニットにガス供給部が組み付けられた構成を図4とは異なる方向から見た斜視図である。
図6図6は、図4の構成の分解斜視図である。
図7図7は、図4の構成を図6とは異なる方向から見た分解斜視図である。
図8図8は、図1の給湯器に用いられるガス分配ユニットを示す正面図である。
図9図9は、図8の構成から第2閉塞部材を取り外した構成を示す正面図である。
図10図10は、図8のガス分配ユニットの第1閉塞部材を示す正面図である。
図11図11は、突条におけるパッキン部材と密着する領域等を概念的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下では、本開示の実施形態が列記されて例示される。なお、以下で例示される〔1〕~〔7〕の特徴は、矛盾しない組み合わせでどのように組み合わされてもよい。
【0010】
〔1〕燃料ガスが流れるガス流路を備え、給湯器に用いられるガス分配ユニットであって、
前記ガス流路の外部から前記燃料ガスを導入する導入口と、複数のノズルと、を有する第1閉塞部材と、
前記第1閉塞部材に固定され且つ前記第1閉塞部材を一方側から覆う第2閉塞部材と、
前記第1閉塞部材と前記第2閉塞部材との間に配置される区画部材と、
を備え、
前記ガス流路は、前記第1閉塞部材の第1壁部と前記第2閉塞部材の第2壁部とを有し、前記第1壁部と前記第2壁部の間の内部空間を前記燃料ガスが流れる構成であり、
前記区画部材は、前記ガス流路内の前記内部空間を前記第1閉塞部材側において前記燃料ガスが流れる第1空間と前記第2閉塞部材側において前記燃料ガスが流れる第2空間とに区画し、且つ、前記第1空間と前記第2空間との間で前記燃料ガスを通す孔部を複数備える
給湯器のガス分配ユニット。
【0011】
〔1〕に記載のガス分配ユニットでは、区画部材が、ガス流路内の内部空間を「第1閉塞部材側において燃料ガスが流れる第1空間」と「第2閉塞部材側において燃料ガスが流れる第2空間」とに区画する。更に、区画部材は、第1空間と第2空間との間で燃料ガスを通す孔部を複数備える。このガス分配ユニットは、導入口から各ノズルまでの燃料ガスの流れを複数の空間によって調整することができるため、単一の空間では調整困難であった流れの調整が可能となり、燃料ガスの流れの適正化を図りやすい。
【0012】
〔2〕前記第1閉塞部材は、複数の前記導入口と、複数の第1溝部と、を有し、各々の前記第1溝部に、1以上の前記導入口と、1以上の前記ノズルが設けられ、各々の前記第1溝部において、前記導入口から前記ノズルへと前記燃料ガスが流れる個別流路が構成され、前記第2閉塞部材は、複数の第2溝部を有し、前記第2空間は、前記第2溝部内の空間を含み、前記区画部材は、2以上の前記第1溝部の各内部にそれぞれ構成される前記第1空間を前記第2溝部内の前記第2空間と区画する各区画部を備え、各々の前記区画部には、下流側の前記孔部と、下流側の前記孔部よりも上流側に配置されるとともに前記第2空間を介して下流側の前記孔部と連通する上流側の前記孔部とが設けられる〔1〕に記載の給湯器のガス分配ユニット。
【0013】
〔2〕に記載のガス分配ユニットは、第1閉塞部材に設けられる複数の第1溝部の各々において、導入口からノズルへと燃料ガスが流れるように個別流路が構成される。従って、第1溝部毎に、ノズルへの個別流路を構成することができる。更に、上記のガス分配ユニットは、各第1溝部内の各第1空間を第2溝部内の第2空間と区画するように各区画部が設けられ、各区画部には、下流側の孔部と、第2空間を介して上記下流側の孔部と連通する上流側の孔部とが設けられる。つまり、このガス分配ユニットは、各々の第1溝部からバイパスさせる構成で下流側の孔部から上流側の孔部に向かって燃料ガスを導く経路を確保することができ、各第1溝部の流れをバイパス経路の流れによって個別に調整することができる。
【0014】
〔3〕少なくともいずれかの前記第1溝部は、複数の前記ノズルが配置されるガス分配室と、前記ガス分配室の上流側に配置されるとともに前記ガス分配室にガスを排出する出口を有する誘導通路と、を備え、
前記誘導通路は、前記出口に向かって直線状に延びる2つの内壁部が対向して配置され、
前記区画部において、2つの直線状の前記内壁部の間の壁部間領域及び当該壁部間領域を前記ガス分配室側に延長した延長領域から外れた領域に、下流側の前記孔部の過半部分又は全部が配置されている〔2〕に記載の給湯器のガス分配ユニット。
【0015】
〔3〕に記載のガス分配ユニットは、2つの直線状の内壁部間を通って出口からガス分配室に送り込まれる燃料ガスは、「壁部間領域を出口側に延長した延長領域」付近に供給されやすく、延長領域から外れた領域には供給されにくい。このような構成のものでは、対策を講じないと、ガス分配室において延長領域から外れた領域のガス濃度が低くなる懸念があるが、〔3〕のガス分配ユニットは、延長領域から外れた領域に、下流側の孔部の過半部分又は全部が配置されているため、バイパス経路を通った燃料ガスが「延長領域から外れた領域」に供給されやすい。よって、このガス分配ユニットは、誘導通路の構成に起因してガス分配室でガス濃度が偏ってしまうことを抑制しやすい。
【0016】
〔4〕前記区画部材は、前記第1閉塞部材と前記第2閉塞部材との間に挟まれるパッキン部材であり、前記パッキン部材は、前記第1閉塞部材と前記第2閉塞部材との間から前記内部空間の外側へ前記燃料ガスが漏れることを遮断する〔1〕から〔3〕のいずれか一つに記載のガス分配ユニット。
【0017】
〔4〕に記載のガス分配ユニットは、パッキン部材を区画部材として兼用することができるため、第1閉塞部材と第2閉塞部材との間の密封性を高める効果と、燃料ガスの流れの適正化を図る効果とを、部品点数を抑えて簡易に実現することができる。
【0018】
〔5〕前記第1閉塞部材は、自身の内部に前記第1空間を構成する複数の第1溝部を有し、前記第2閉塞部材は、前記パッキン部材に接触する接触部と、前記パッキン部材側とは反対側に膨出するとともに内部に第2溝部が形成された複数の膨出部と、を有し、各々の前記膨出部内の空間が前記第2空間であり、各々の前記膨出部を囲む構成で、前記接触部と前記パッキン部材とが密着してなる遮断部が構成され、前記遮断部は、前記燃料ガスが前記接触部と前記パッキン部材との間を通って前記膨出部内から前記膨出部外へ通過することを遮断する〔4〕に記載のガス分配ユニット。
【0019】
〔5〕に記載のガス分配ユニットは、膨出部の存在により、第2空間をより広く確保することができ、遮断部の存在により、各膨出部において他の膨出部の影響を抑えた流れを生じさせやすい。
【0020】
〔6〕複数の前記孔部は、前記導入口側に設けられる1以上の第1孔部と、前記ノズル側に設けられる第2孔部と、を有し、前記第1孔部と前記第2孔部との間において前記第2空間が続いている〔1〕から〔5〕のいずれか一項に記載のガス分配ユニット。
【0021】
〔6〕に記載のガス分配ユニットは、第1空間を流れる燃料ガスを第1孔部を介して第2空間側に分流させ、流れ込む燃料ガスの少なくとも一部を第2孔部から第1空間側に戻すようにバイパスさせる流れを生じさせることができる。
【0022】
〔7〕〔1〕から〔6〕のいずれか一項に記載のガス分配ユニットを有する給湯器。
【0023】
〔7〕に記載の給湯器は、上記のガス分配ユニットと同様の効果を生じさせることができ、自身に設けられたガス分配ユニットにおいて導入口から各ノズルまでの燃料ガスの流れの適正化を図りやすい。
【0024】
<第1実施形態>
以下の説明は、第1実施形態に係る給湯器1に関する。
1.給湯器1の全体構成
図1は、第1実施形態に係る給湯器1を例示する正面図である。図2は、給湯器1の筐体2から前面カバー2A等を外した構成を簡略的に例示する正面図である。図3は、図2の構成から、ガス分配ユニット10等を外した構成を簡略的に例示する正面図である。
【0025】
図2のように、給湯器1は、筐体2、燃焼装置3、熱交換器4,排気部5、ファン7などを備える。筐体2は、金属材料によって構成される箱状のケースであり、前方が開放した箱体をなす筐体本体2Bと、筐体本体2Bに対して着脱される前面カバー2Aとを備える。前面カバー2Aは、筐体本体2Bを前側から閉塞する。筐体2は、燃焼装置3、熱交換器4,排気部5、ファン7などの各部品を収容する。燃焼装置3は、筐体2の内部において中央付近に配置される。熱交換器4は、筐体2の内部において燃焼装置3の上方に配置される。排気部5は、筐体2の内部において熱交換器4の上方に配置される。ガス分配ユニット10は、燃焼装置3と前面カバー2Aとの間に配置される。ファン7は、筐体2の内部において燃焼装置3の下側に配置される。
【0026】
燃焼装置3は、インナーケース120、バーナユニット(図示省略)、内板123(図3)などを備える。インナーケース120は、筐体2内に収まる角箱状のケースである。インナーケース120内には、扁平状の濃淡バーナであるバーナユニットを左右方向に並設してなるバーナユニット群が設けられる。各濃淡バーナ(図示省略)は、前方に開口して燃料ガス及び一次空気が導入される図示しない淡側導入口と濃側導入口とを上下に有し、上端に、中央の淡炎孔及びその左右両側の濃炎孔からなる炎孔部を備えている。
【0027】
図3に示される内板123は、例えば、側面視L字状の形状をなしている。内板123の前面部(前板部)には、各濃淡バーナの淡側導入口と濃側導入口とにそれぞれ対応して、上下に長い長孔状の孔部(長円状のバーリング孔)である下側の淡ガス供給孔125と、円形状の孔部(円形状のバーリング孔)である上側の濃ガス供給孔126とが設けられている。例えば、1つの濃淡バーナの淡側導入口及び濃側導入口に対応して一対の淡ガス供給孔125及び濃ガス供給孔126が設けられ、内板123の前面部(前板部)には、淡ガス供給孔125及び濃ガス供給孔126の対が、左右方向に並設されている。具体的には、複数の淡ガス供給孔125が所定間隔で左右方向に並び、複数の濃ガス供給孔126が所定間隔で左右方向に並んでいる。インナーケース120の前面上部には、点火用の放電電極、炎検出用のフレームロッドなどが設けられている。
【0028】
熱交換器4は、自身の外殻を構成する金属製のケーシングと、このケーシングの内部に収容される伝熱管とを備える。熱交換器4は、燃焼装置3からの燃焼排気を導入して内部を通過させ、この燃焼排気と伝熱管内を流れる水との間で熱交換を行う。熱交換器4内を通過した燃焼排気は排気部5に排出される。
【0029】
排気部5は、排気筒110を備える。排気部5は、熱交換器4から排出された燃焼排気を上方に導き、排気筒110を介して給湯器1の外部へ排出するように機能する。
【0030】
ファン7は、燃焼用空気を供給するファンである。ファン7は、モータや羽根などを有する駆動部と、燃焼用空気を供給する供給口とを備え、この供給口から燃焼装置3に向けて燃焼用空気を送り込む。ファン7の供給口は、燃焼装置3の下端部付近に固定される。
【0031】
筐体2の下側には、外部のガス管が接続されるガス入口91と、水道管が接続される水入口92と、湯出口93とが設けられている。ガス入口91は、給湯器1の外部に設けられるガス管からガスが導入される導入口である。ガス入口91に導入されたガスは、元弁や比例弁等を備えたガス供給部114を介してガス分配ユニット10に供給される。水入口92は、給湯器1の外部に設けられる水道管から水が導入される導入口である。水入口92に導入された水は、給水管115を介して熱交換器4の伝熱管に供給される。湯出口93は、湯を給湯器1の外部に導出する出湯口である。熱交換器4の伝熱管から導出された湯は、伝熱管の下流端に接続された出湯管116を介して湯出口93から排出される。
【0032】
2.ガス分配ユニット10
図2図3に示されるガス分配ユニット10は、燃料ガスを分流させて燃焼装置3に供給する流路である。ガス分配ユニット10は、インナーケース120の前面に設けられた開口を塞ぐ構成で、インナーケース120の前面部下側に組み付けられている。図4図7のように、ガス分配ユニット10は、板状の第1閉塞部材11と板状の第2閉塞部材12とシート状の区画部材13とを備える。第1閉塞部材11と第2閉塞部材12は、前後に重なり、第1閉塞部材11と第2閉塞部材12との間に区画部材13が挟まって介在する構成で、第1閉塞部材11、第2閉塞部材12、区画部材13が前後に重なって配置される。ガス分配ユニット10は、全体的に扁平状である。ガス分配ユニット10の内部には、燃料ガスが流れるガス流路18が設けられる。第1閉塞部材11の後面部の下端側にガス供給部114が設けられている。ガス流路18は、第1閉塞部材11における第2閉塞部材12側の第1壁部11Aと、第2閉塞部材12における第1閉塞部材11側の第2壁部11Bとを有し、第1壁部11Aと第2壁部11Bの間の内部空間を燃料ガスが流れる構成である。
【0033】
第1閉塞部材11は、ガス分配ユニット10において後方側を閉塞する部材である。第1閉塞部材11は、金属材料(例えば、アルミダイカスト)によって構成され、板状をなしている(図6図7参照)。第1閉塞部材11は、左右横長の上板部21と、上板部21の左右方向一方側(図10において右側)から下側に張り出す下板部22とを有する。上板部21及び下板部22の外周側(具体的には、第2閉塞部材12によって覆われる領域の外側)には、インナーケース120へのネジ止め用の孔部23,23・・が形成されている(図4参照)。上板部21の左右方向他方側(図10において左側)には、前方へ突出する2つの凸部25,25と、前方へ突出しつつ曲がった形状の2つの爪部27,27とが交互に配置されてなるハーネス保持部が形成されている(図4参照)。
【0034】
図10のように、第1閉塞部材11は、ガス流路18の外部から燃料ガスを導入する複数の導入口36と、ガス分配ユニット10の外部に燃料ガスを放出するための複数のノズル34と、複数の第1溝部41とを有する部材である。各々の第1溝部41内には、導入口36と複数のノズル34が設けられ、各々の第1溝部41において、導入口36からノズル34へと燃料ガスが流れる個別流路42が構成される。
【0035】
図10のように、第1閉塞部材11の前面部において各孔部23によって囲まれる内側領域には、第1供給部31、第2供給部32、第3供給部33を有するガス供給部30が形成されている。ガス供給部30は、リブ状に構成された突条40によって複数の領域(第1供給部31、第2供給部32、第3供給部33を有するガス供給部30)に区切られている。突条40の突出側の端面(前端面)は、区画部材13に密着し、突条40と区画部材13との間から燃料ガスが漏れないようになっている。なお、図11には、第1閉塞部材11において、区画部材13に密着する部分がハッチング領域として示される。ガス供給部30において上側の領域は、内板123に設けられた各濃淡バーナの淡ガス供給孔125(図3)と濃ガス供給孔126(図3)との形成領域と前後方向にオーバーラップする領域を有し、このオーバーラップする領域に複数のノズル34が設けられている。複数のノズル34は、上下一組のノズル34,34が、1つの濃淡バーナの淡ガス供給孔125及び濃ガス供給孔126に対応して対をなして設けられ、このような上下一組のノズル34,34の対が、インナーケース120に収容された複数の濃淡バーナの数に合わせて左右方向に複数並設されている。一組のノズル34,34が左右方向の並んだノズル群は、第1供給部31、第2供給部32、第3供給部33に跨って配置されている。第1供給部31を構成する第1溝部41は、第1溝部41Aとも称される。第2供給部32を構成する第1溝部41は、第1溝部41Bとも称される。第3供給部33を構成する第1溝部41は、第1溝部41Cとも称される。
【0036】
第1供給部31は、第1溝部41Aを備えるとともにガス供給部30における左右方向一方側(図10において第2供給部32より右側)に配置される供給部であり、第1供給部31、第2供給部32、第3供給部33の中でノズル34,34の組が最も多い供給部である。第2供給部32は、第1溝部41Bを備えるとともにガス供給部30において左右方向中央側に配置される供給部である。第3供給部33は、第1溝部41Cを備えるとともにガス供給部30において左右方向他方側(図10において、第2供給部32より左側)に配置される供給部である。
【0037】
第1供給部31を構成する第1溝部41Aには導入口36Aが設けられ、第1溝部41Aにおいて、導入口36Aから第1溝部41A内に設けられた複数のノズル34へと燃料ガスが流れるように個別流路42Aが構成される。同様に、第2供給部32を構成する第1溝部41Bには導入口36Bが設けられ、第1溝部41Bにおいて、導入口36Bから第1溝部41B内に設けられた複数のノズル34へと燃料ガスが流れるように個別流路42Bが構成される。同様に、第3供給部33を構成する第1溝部41Cには導入口36Cが設けられ、第1溝部41Cにおいて、導入口36Cから第1溝部41C内に設けられた複数のノズル34へと燃料ガスが流れるように個別流路42Cが構成される。導入口36A,36B,36Cは、ガス供給部114(図4図5)に設けられた電磁弁によって開閉される。
【0038】
第2閉塞部材12は、第1閉塞部材11に固定され且つ第1閉塞部材11を一方側から覆う部材である。第2閉塞部材12は、金属材料によって構成された金属加工品(例えば、プレス成型品)であり、板状をなしている(図6図7参照)。第2閉塞部材12は、蓋部として機能する。第2閉塞部材12は、複数の第2溝部62を有する。具体的には、第2閉塞部材12は、パッキン部材80に接触する平板状の接触部72と、パッキン部材80側とは反対側に膨出する複数の膨出部74A,74Cと、を有する。複数の膨出部74A,74Cの各々の内部に第2溝部62がそれぞれ設けられている。複数の膨出部74A,74Cの内部の空間が第2空間10Zである。複数の膨出部74A,74Cの各々を囲む構成で、接触部72とパッキン部材80とが密着してなる遮断部16が構成される。遮断部16は、燃料ガスが接触部72とパッキン部材80との間を通って膨出部(74A,74C)内から膨出部(74A,74C)外へ通過することを遮断するように機能する部分である。膨出部74Aを囲む構成で、接触部72とパッキン部材80とが密着してなる遮断部16が構成される。同様に、膨出部74Cを囲む構成で、接触部72とパッキン部材80とが密着してなる遮断部16が構成される。
【0039】
図6図7に示される区画部材13は、第1閉塞部材11と第2閉塞部材12との間に配置される部材であり、ガス分配ユニット10の内部空間10Aを仕切るように区画する部材である。区画部材13は、例えば、コルクやゴム等の柔軟性を有する材料によって可撓性を有するシート状又は板状に構成される。区画部材13は、第1閉塞部材11と第2閉塞部材12との間に挟まれるパッキン部材80を有する。図6図7の例では、区画部材13は、パッキン部材80のみによって構成されるが、パッキン部材80以外に何らかの部材が付加されていてもよい。パッキン部材80は、第1閉塞部材11と第2閉塞部材12との間から内部空間10Aの外側へ燃料ガスが漏れることを遮断するように密封する機能を有する。
【0040】
図6図7のように、区画部材13は、ガス流路18内の内部空間10A(図8)を第1閉塞部材11側において燃料ガスが流れる第1空間10Y(図6)と第2閉塞部材12側において燃料ガスが流れる第2空間10Z(図7)とに区画する。
【0041】
図6図7図9のように、区画部材13は、第1空間10Yと第2空間10Zとの間で燃料ガスを通す孔部82を複数備える。複数の孔部82は、導入口36側に設けられる1以上の第1孔部(孔部82A,82M)と、ノズル34側に設けられる第2孔部(孔部82B,82C,82N,82L)と、を有する。図8のように、第1孔部である孔部82Aと第2孔部である孔部82B,82Cとの間において第2空間10Z(具体的には、膨出部74A内の第2空間10Z)が続いている。また、第1孔部である孔部82Mと第2孔部である孔部82N,82Lとの間において第2空間10Z(具体的には、膨出部74C内の第2空間10Z)が続いている。区画部材13は、第1溝部41A,41Cの各内部にそれぞれ構成される第1空間10Yを第2溝部62A,62C内に構成される第2空間10Zと区画するように区画部13A,13Cを備える。区画部13Aは、第1溝部41Aの内部に構成される第1空間10Yを第2溝部62A内(膨出部74A内)に構成される第2空間10Zと区画する。区画部13Cは、第1溝部41Cの内部に構成される第1空間10Yを第2溝部62C内(膨出部74C内)に構成される第2空間10Zと区画する。区画部13A,13Cの各々には、孔部82が複数ずつ設けられる。
【0042】
このように構成された給湯器1は、湯出口93の配管に接続される給湯栓を開栓して器具内に通水させると、これを検知したコントローラがガス供給部114のガス流路を開いてガス分配ユニット10へ燃料ガスを供給させると共に、ファン7を作動させて燃焼用空気を供給させる。よって、ガス分配ユニット10のノズル34から供給される燃料ガスは、内板123の各淡ガス供給孔125及び濃ガス供給孔126から一次空気と共に各淡側導入口及び濃側導入口を介してインナーケース120内の各濃淡バーナに供給される。そして、コントローラにより放電電極が連続放電すると、各濃淡バーナの炎孔部から噴出する混合気が燃焼する。各濃淡バーナでの燃焼で生じた燃焼排気は、給水管115から熱交換器4の伝熱管を通過する水と熱交換され、設定温度の湯となって出湯管116から出湯される。コントローラは、必要な燃焼量に合わせてガス供給部114の電磁弁を作動させてガス入口91を開閉制御することで、バーナユニットでの濃淡バーナの燃焼本数を三段階に制御する。
【0043】
図8に示されるガス分配ユニット10において、図10図11に示される第1供給部31から燃料ガスを供給する場合、電磁弁の開放によって導入口36Aから第1溝部41A内にガスが導入される。第1溝部41Aの周囲の突条40は、図9に示される区画部材13(具体的には区画部13A)と密着するため、第1溝部41Aと区画部材13との間からはガスは漏れない。図10のように、第1溝部41Aは、幅の狭い溝である誘導通路(誘導溝)51Aと、幅の広い溝であるガス分配室(分配溝)51Bとを備えている。ガス分配室51Bは、複数のノズル34が配置される溝である。誘導通路51Aは、ガス分配室51Bの上流側且つ下方側に配置されるとともにガス分配室51Bにガスを排出する出口57Cを有する溝である。図11に示される矢印F1のように誘導通路51Aを流れた燃料ガスは、ガス分配室51Bにおいて左右方向片側(図11では、左右方向一方側である右側の領域AR1付近)に多く流れ込むようになっている。出口57Cは、ガス分配室51Bにおける下側(具体的には、複数のノズル34よりも下側であって、ガス分配室51Bにおける上下方向中心位置よりも下側)に位置する。より具体的には、出口57Cは、ガス分配室51Bにおける下側の端部且つ左右方向一方側(図10図11では、右側)の端部に設けられている。このように、誘導通路51Aは、出口57Cからガス分配室51Bの左右方向片側(図11では、左右方向一方側である右側)の空間に向けて燃料ガスを流すように構成されている。
【0044】
これだけでは、上記左右方向において上記片側とは反対側(左右方向他方側である左側)の領域(例えば、領域AR2付近)への燃料ガスの供給が相対的に抑えられる懸念がある。しかし、図8図11の構成では、図8図9に示される孔部82Aを介して第2空間10Z(具体的には膨出部74Aの内部の空間:図7参照)に流れ込んだ燃料ガスが、この空間を流れて、ガス分配室51Bにおける左右方向他方側の位置に設けられた孔部82C(図9)から第1空間10Y(具体的には第1溝部41A内の領域AR2付近:図11参照)に供給される。孔部82Cは、ガス分配室51Bにおける左右方向他方側(具体的には、ガス分配室51Bの左右方向中心よりも他方側)の部分と対向するように設けられ、孔部82Cの開口領域は、ガス分配室51Bにおける左右方向他方側の空間に位置する。第2空間10Zから孔部82Cを介してガス分配室51Bに流れ込む燃料ガスは、孔部82Cからガス分配室51Bにおける左右方向他方側(図11では、左側)の空間に向かうように流れ込む。よって、図11に示される矢印F1のような流れでは供給されにくい領域AR2に対して燃料ガスを良好に供給することができ、より均一に分散させることができる。
【0045】
具体的には、図10のように、誘導通路51Aは、ガス分配室51Bに向かって直線状に延びる2つの内壁部57A,57Bが対向して配置される。図9のように、区画部13Aにおいて、2つの直線状の内壁部57A,57Bの間の壁部間領域及び当該壁部間領域をガス分配室51B側に延長した延長領域から外れた領域には、下流側の孔部82Cの全部が配置されている。直線状の内壁部57A,57Bの間を流れる燃料ガスは、出口57Cからガス分配室51Bにおける右側の領域に向かうように排出される。なお、ここでは、区画部13Aのうちのガス分配室51Bを塞ぐ領域において、内壁部57A,57Bの各壁面をそれぞれを延長した延長面L1,L2の間の領域が上記延長領域であり、出口57Cから排出される燃料ガスはこの延長領域付近に集まりやすくなっている。
【0046】
同様に、図10図11に示される第3供給部33から燃料ガスを供給する場合、電磁弁の開放によって導入口36Cから第1溝部41C内にガスが導入される。第1溝部41Cの周囲の突条40は、図9に示される区画部材13(具体的には区画部13C)と密着するため、第1溝部41Cと区画部材13との間からはガスは漏れない。図11のように、第1溝部41Cは、幅の狭い溝である誘導通路(誘導溝)53Aと、幅の広い溝であるガス分配室(分配溝)53Bとを備えている。ガス分配室53Bは、複数のノズル34が配置される溝である。誘導通路53Aは、ガス分配室53Bの上流側且つ下方側に配置されるとともにガス分配室53Bにガスを排出する出口59C(図10)を有する溝である。図11の矢印F2のように誘導通路53Aを流れた燃料ガスは、ガス分配室53Bにおいて左右方向他方側の領域(図11の例では、左側の領域AR3)に多く流れ込むようになっている。具体的には、出口59Cに続く2つの直線状の内壁部59A,59Bはいずれも、出口59Cに近づくほど上位置且つ左右方向他方側(図10図11では、左側)の位置となっており、2つの内壁部59A,59Bによって構成される流路も、出口59Cに近づくほど上位置且つ左右方向他方側(図10図11では、左側)の位置となっている。そして、誘導通路53Aは、出口59C側に近づくにつれて左右方向他方側(図10図11では、左側)に位置する経路となっている。出口59Cは、ガス分配室53Bにおける下側(具体的には、複数のノズル34よりも下側であって、ガス分配室53Bにおける上下方向中心位置よりも下側)に位置する。より具体的には、出口59Cは、ガス分配室53Bにおける下側の端部且つ左右方向一方側(図10図11では、右側)の端部に設けられている。このように、誘導通路53Aは、出口59Cからガス分配室53Bの左右方向他方側(図11では、左側)の空間に向けて燃料ガスを流すように構成されている。
【0047】
誘導通路53Aの構成だけでは、ガス分配室53Bにおける左右方向一方側(図11では、右側)の領域(具体的には、ガス分配室53B内の空間のうちの左右方向一方側の空間であり、例えば領域AR4付近)への燃料ガスの供給が相対的に抑制される懸念がある。しかし、図8図11の構成では、孔部82Mを介して第2空間10Z(具体的には膨出部74Cの内部の空間)に流れ込んだ燃料ガスが、この空間を流れて、ガス分配室53Bにおける左右方向一方側の位置に設けられた孔部82L(図9)から第1空間10Y(具体的には第1溝部41C内の領域AR4付近)に供給される。孔部82Lは、ガス分配室53Bにおける左右方向一方側(具体的には、ガス分配室53Bの左右方向中心よりも一方側)の部分と対向するように設けられ、孔部82Lの開口領域は、ガス分配室53Bにおける左右方向一方側の空間に位置する。第2空間10Zから孔部82Lを介してガス分配室53Bに流れ込む燃料ガスは、孔部82Lからガス分配室53Bにおける左右方向一方側(図11では、右側)の空間に向かうように流れ込む。よって、矢印F2のような流れでは供給されにくい領域AR4に対して燃料ガスを良好に供給することができ、より均一に分散させることができる。
【0048】
具体的には、図10のように、誘導通路53Aは、ガス分配室53B側に向かって直線状に延びる2つの内壁部57A,57Bが対向して配置される。図9のように、区画部13Cにおいて、2つの直線状の内壁部59A,59Bの間の壁部間領域及び当該壁部間領域をガス分配室53B側に延長した延長領域から外れた領域には、下流側の孔部82Lの全部が配置されている。直線状の内壁部59A,59Bの間を流れる燃料ガスは、出口59Cからガス分配室53Bにおける左側の領域に向かうように排出される。なお、ここでは、区画部13Cのうちのガス分配室53Bを塞ぐ領域において、内壁部59A,59Bの各壁面をそれぞれを延長した延長面L4,L3の間の領域が上記延長領域であり、出口59Cから排出される燃料ガスはこの延長領域付近に集まりやすくなっている。
【0049】
図10図11に示される第2供給部32から燃料ガスを供給する場合、電磁弁の開放によって導入口36Bから第1溝部41B内にガスが導入される。図8図11の例では、第2閉塞部材12において第1溝部41Bを覆う位置には膨出部が設けられていない。従って、第1溝部41Bに供給された燃料ガスは、ほとんど第2空間10Zに入り込まずに幅の狭い誘導通路(誘導溝)52A,52Bを通って幅の広いガス分配室(分配溝)52Cに流れ込む。この構成だけでは流れの停滞を招く懸念があるが、区画部材13には、孔部82E,82F,82G,82H,82Jが設けられているため、誘導通路52A,52Bの溝サイズが拡張され、流れの円滑化が図られる。図10図11の構成では、ガス分配室52Cに設けられるノズル34の数が、ガス分配室51B,53Bに設けられるノズル34の数よりも少なくなっており、燃料ガスをガス分配室52Cに供給する供給速度は、燃料ガスをガス分配室51B,53Bに供給する供給速度よりも抑えることができるようになっている。従って、図8のような構成(第2閉塞部材12において第1溝部41Bを覆う位置に膨出部が設けられない構成)によって図10に示されるガス分配室52Cに流れ込む燃料ガスの流量が相対的に抑えられても、相対的に数の少ないノズル34から適度に排出できる流量で供給されれば支障はない。
【0050】
3.効果の例
ガス分配ユニット10では、区画部材13が、ガス流路18内の内部空間10Aを「第1閉塞部材11側において燃料ガスが流れる第1空間10Y」と「第2閉塞部材12側において燃料ガスが流れる第2空間10Z」とに区画する。更に、区画部材13は、第1空間10Yと第2空間10Zとの間で燃料ガスを通す孔部82を複数備える。このガス分配ユニット10は、導入口36から各ノズル34までの燃料ガスの流れを複数の空間によって調整することができるため、単一の空間では調整困難であった流れの調整が可能となり、燃料ガスの流れの適正化を図りやすい。
【0051】
ガス分配ユニット10は、第1閉塞部材11に設けられる複数の第1溝部41A,41Cの各々において、導入口36A,36Cから複数のノズル34へと燃料ガスが流れるように個別流路42A,42Cがそれぞれ構成される。従って、第1溝部毎に、各導入口からノズル34への個別の流路を構成することができる。更に、ガス分配ユニット10は、各々の第1溝部41A,41Cからバイパスさせる構成で下流側の孔部から上流側の孔部に向かって燃料ガスを導く経路を確保することができ、第1溝部41A,41Cの各々の流れをバイパス経路の流れによって個別に調整することができる。
【0052】
ガス分配ユニット10は、2つの直線状の内壁部間を通って出口からガス分配室に送り込まれる燃料ガスは、「壁部間領域を出口側に延長した延長領域」付近に供給されやすく、延長領域から外れた領域には供給されにくい。このような構成のものでは、対策を講じないと、ガス分配室において延長領域から外れた領域のガス濃度が低くなる懸念があるが、ガス分配ユニット10は、延長領域から外れた領域に、下流側の孔部の過半部分又は全部が配置されているため、バイパス経路を通った燃料ガスが「延長領域から外れた領域」に供給されやすい。よって、このガス分配ユニット10は、誘導通路の構成に起因してガス分配室でガス濃度が偏ってしまうことを抑制しやすい。
【0053】
ガス分配ユニット10は、パッキン部材を区画部材13として兼用することができるため、第1閉塞部材11と第2閉塞部材12との間の密封性を高める効果と、燃料ガスの流れの適正化を図る効果とを、部品点数を抑えて簡易に実現することができる。
【0054】
ガス分配ユニット10は、膨出部74A,74Cの存在により、第2空間10Z(図7)をより広く確保することができ、遮断部16の存在により、膨出部74A,74Cの各々において他の膨出部の影響を抑えた流れを生じさせやすい。
【0055】
ガス分配ユニット10は、第1空間10Yを流れる燃料ガスを、第1孔部を介して第2空間10Z側に分流させ、流れ込む燃料ガスの少なくとも一部を第2孔部から第1空間10Y側に戻すようにバイパスさせる流れを生じさせることができる。例えば、第1溝部41A内の第1空間10Yを流れる燃料ガスを、孔部82A(第1孔部)を介して第2空間10Z側に分流させ、流れ込む燃料ガスの少なくとも一部を孔部82C(第2孔部)から第1空間10Y側に戻すようにバイパスさせる流れを生じさせることができる。
【0056】
<他の実施形態>
本発明は、上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述又は後述の実施形態の特徴は、矛盾しない範囲であらゆる組み合わせが可能である。また、上述又は後述の実施形態のいずれの特徴も、必須のものとして明示されていなければ省略することもできる。さらに、上述された実施形態は、次のように変更されてもよい。
【0057】
上記実施形態では、第1溝部41が3つ設けられていたが、2つであってもよく、4以上であってもよい。
【0058】
上記実施形態では、第1溝部41A,41Cに対応する位置に膨出部が設けられていたが、第1溝部41Bに対応する位置に膨出部が設けられていてもよい。
【0059】
上記実施形態では、第2溝部62内の空間が第2空間10Zであったが、この例に限定されない。第2空間は、第2溝部内の空間を少なくとも含んでいればよく、第2溝部内の空間以外の空間が含まれていてもよい。
【0060】
なお、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示された範囲内又は特許請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0061】
1 :給湯器
10 :ガス分配ユニット
10A :内部空間
10Y :第1空間
10Z :第2空間
11 :第1閉塞部材
11A :第1壁部
12 :第2閉塞部材
12A :第2壁部
13 :区画部材
13A :区画部
13C :区画部
16 :遮断部
18 :ガス流路
34 :ノズル
36 :導入口
41 :第1溝部
42 :個別流路
62 :第2溝部
72 :接触部
74A :膨出部
74C :膨出部
80 :パッキン部材
82 :孔部
82A :孔部(第1孔部)
82B :孔部(第2孔部)
82C :孔部(第2孔部)
82L :孔部(第2孔部)
82M :孔部(第1孔部)
82N :孔部(第2孔部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11