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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-21
(45)【発行日】2025-05-29
(54)【発明の名称】組織石灰化の治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/46 20060101AFI20250522BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20250522BHJP
   A61P 5/50 20060101ALI20250522BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20250522BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20250522BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20250522BHJP
   A61P 9/14 20060101ALI20250522BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20250522BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20250522BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20250522BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20250522BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250522BHJP
【FI】
A61K38/46
A61K47/68
A61P5/50
A61P7/00
A61P9/00
A61P9/10
A61P9/14
A61P13/12
A61P19/02
A61P19/08
A61P27/02
A61P43/00 111
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2017531728
(86)(22)【出願日】2015-12-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-01-11
(86)【国際出願番号】 US2015066646
(87)【国際公開番号】W WO2016100803
(87)【国際公開日】2016-06-23
【審査請求日】2018-12-13
【審判番号】
【審判請求日】2021-09-13
(31)【優先権主張番号】62/094,943
(32)【優先日】2014-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/249,781
(32)【優先日】2015-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520446159
【氏名又は名称】イノザイム ファーマ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】クイン,アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】シア,ネルソン
(72)【発明者】
【氏名】カーン,タイェバ
(72)【発明者】
【氏名】アスキュー,キム リネット
(72)【発明者】
【氏名】グラボウスキ,グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ジリアン
(72)【発明者】
【氏名】オニール,ダブリュ.チャールズ
【合議体】
【審判長】冨永 みどり
【審判官】岡山 太一郎
【審判官】松波 由美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-509851号公報(JP,A)
【文献】Dabisch-Ruthe, M. et al., Pyrophosphates as a major inhibitor of matrix calcification in Pseudoxanthoma elasticum, Journal of Dermatological Science, 2014年8月, Vol.75, No.2, p.109-120
【文献】Nitschke,Y. et al.,, Generalized Arterial Calcification of Infancy and Pseudoxanthoma Elasticum Can Be Caused by Mutation, The American Journal of Human Genetics, 2012年, Vol.90, p.25-39
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性線維性仮性黄色腫(PXE)を有する被検者における血管石灰化の軽減のための医薬組成物であって、
前記医薬組成物が単離組換えヒトsNPP1融合タンパク質を含み、前記単離組換えヒトsNPP1融合タンパク質がポリアスパラギン酸の標的化部分を欠き、
前記医薬組成物が前記被検者中においてピロホスフェート(PPi)レベルを増加させ、それによって血管石灰化を軽減することが可能であることを特徴とする医薬組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の医薬組成物において、前記被検者がヒト患者であることを特徴とする医薬組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の医薬組成物において、前記単離組換えヒトsNPP1融合タンパク質を0.10~50mg/kgの量で投与することを特徴とする医薬組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の医薬組成物において、前記量が0.5mg/kgであることを特徴とする医薬組成物。
【請求項5】
請求項3に記載の医薬組成物において、前記量が1mg/kgであることを特徴とする医薬組成物。
【請求項6】
請求項3に記載の医薬組成物において、前記量が5.0mg/kgであることを特徴とする医薬組成物。
【請求項7】
請求項3に記載の医薬組成物において、前記量が6.0mg/kgであることを特徴とする医薬組成物。
【請求項8】
請求項3に記載の医薬組成物において、前記量が10mg/kgであることを特徴とする医薬組成物。
【請求項9】
請求項3に記載の医薬組成物において、前記量が15mg/kgであることを特徴とする医薬組成物。
【請求項10】
請求項3に記載の医薬組成物において、前記量が20mg/kgであることを特徴とする医薬組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の医薬組成物において、1週に1回の投与用であることを特徴とする医薬組成物。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか1項に記載の医薬組成物において、2週に1回の投与用であることを特徴とする医薬組成物。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか1項に記載の医薬組成物において、1か月に1回の投与用であることを特徴とする医薬組成物。
【請求項14】
請求項1~10のいずれか1項に記載の医薬組成物において、静脈内、皮下、髄腔内または腹腔内投与用であることを特徴とする医薬組成物。
【請求項15】
請求項1~10のいずれか1項に記載の医薬組成物において、静脈内投与用であることを特徴とする医薬組成物。
【請求項16】
請求項1~10のいずれか1項に記載の医薬組成物において、皮下投与用であることを特徴とする医薬組成物。
【請求項17】
請求項1~10のいずれか1項に記載の医薬組成物において、前記被検者のPPiの血中レベルを正常化するのに十分である投与用であり、正常血漿PPiレベルが2.63μM±0.47μMであることを特徴とする医薬組成物。
【請求項18】
請求項1~10のいずれか1項に記載の医薬組成物において、前記被検者における患部組織の石灰化を防止するのに十分である投与用であることを特徴とする医薬組成物。
【請求項19】
請求項1に記載の医薬組成物において、前記融合タンパク質が、sNPP1-Fc融合タンパク質であり、免疫グロブリンのFc領域を含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項20】
請求項19に記載の医薬組成物において、前記sNPP1が、配列番号3、配列番号9、配列番号10、配列番号11または配列番号12であることを特徴とする医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願
本出願は、2014年12月19日に出願された米国仮出願第62/094,943号及び2015年11月2日に出願された米国仮出願第62/249,781号の利益を主張する。上記の出願の教示全体を参照により本明細書に援用する。
【0002】
電子提出された配列表の参照
本出願とともに出願されたASCIIテキストファイル(名称:081245-0208_ascii.txt;サイズ:88,556バイト;及び作成日:2015年12月15日)で電子提出された配列表の内容全体を参照により本明細書に援用する。
【0003】
血管石灰化は、非常に小さなヒドロキシアパタイト(HA)の分散結晶の形成によって、及び血管組織、例えば動脈などにおける大きな石灰化沈着物として特徴づけることができる。(Amann,K.Clin J Am Soc Nephrol 2008,3,1599-605)。細胞外ピロホスフェート(PPi)が、HA形成を阻害することによって血管石灰化の重要な内因性インヒビターとなる。(Lomashvili,K.A.et al.,J Am Soc Nephrol 2004,15,1392-1401;Fleisch,H.et al.,Nature 1966,212,901-903)。
【0004】
エクトヌクレオチドピロホスファターゼピロホスホリラーゼ(NPP1)は、ATPを切断して細胞外ピロホスフェート(PPi)を生成するエクトエンザイムである。ピロホスフェートはヒドロキシアパタイト形成の強力なインヒビターであり、正常な条件下では血管石灰化を阻害するように機能する。
【0005】
ヒトにおけるNPP1の欠損は、循環PPiレベルの減少をもたらし、動脈石灰化及び乳児全身性動脈石灰化(GACI)などの病態に関係があるとされている。(Rutsch,F.et al.,Am J Pathol 2001,158,543-554)。高ホスフェート食を与えた場合、NPP1欠損マウス(Enpp1-/-)もPPiレベルが減少し、NPP1欠損ヒトと同様の表現型を示す。(Harmey,D.et al.,Am J Pathol 2004,164,1199-1209)。血管石灰化は、慢性腎臓病(CKD)及び末期腎疾患(ESRD)被検者におけるよく認識された一般的な合併症でもあり、罹患率及び死亡率の増加に関連する。(Giachelli,C.J Am Soc Nephrol 2004,15,2959-64;Raggi,P.et al.,J Am Coll Cardiol 2002,39,695-701)。
【0006】
エクトヌクレオチドピロホスファターゼ/ホスホジエステラーゼ1(NPP1/ENPP1/PC-1)欠損は、II型膜貫通糖タンパク質であるNPP1の変異に起因する稀な疾患である。NPP1は、ヌクレオチド及びヌクレオチド糖のホスホジエステル結合ならびにヌクレオチド及びヌクレオチド糖のピロリン酸結合を含め、様々な基質を切断する。NPP1欠損は、特発性乳児動脈石灰化症(IIAC)、インスリン抵抗性、低リン血症性くる病、及び脊椎後縦靱帯骨化症と関連づけられている。
【0007】
IIACは、稀な常染色体劣性のほぼ確実に死に至る障害であり、筋性動脈の内弾性膜の石灰化及び内膜平滑筋細胞増殖に起因する狭窄を特徴とする。160症例を超えるIIACが世界中で報告されている。この疾患の症状はほとんどの場合、乳児期初期までに現れ、この疾患は、一般に虚血性心筋症、及び腎動脈狭窄症をはじめとする閉塞性動脈症の他の合併症のために生後6か月までに死に至る。
【0008】
NPP1タンパク質の欠損がIIACなどの重病に関係があるとされてきたにもかかわらず、現在では、この疾患ならびに異常な骨代謝によるカルシウム及びリンの高い全身負荷量;ホスフェートプロデューサーに対する循環及び局所産生インヒビターの低レベル;または腎排泄障害に起因する他の石灰化症の患者に利用可能な治療が存在しない。
【0009】
血管石灰化を防止する現在の治療選択肢は、有効性が限定的であり、望ましくない及び/または許容不可能な副作用を有する。例えば、有効性のためには非常に大量の外因性PPiが必要とされ、ヒドロキシアパタイト形成の他のインヒビターは骨の石灰化を阻害し、骨軟化症につながり得る。特に、外因性PPiの直接投与は尿毒症動物モデルにおいて石灰化を防止することが見出された。(O’Neil,W.C.et al.,Kidney Int 2011,79,512-517;Riser,B.L.et al.,Nephrol Dial Transp 2011,26,3349-3357)。しかし、このアプローチは、PPiの短い半減期のために高い投与量を必要とし、PPiが超生理学的血漿レベルとなり、局所刺激をもたらす。PPiの非加水分解性アナログであるビスホスホネートが、例えば動物モデルにおいて血管石灰化を治療するために用いられている。(Fleisch,H.et al.,Europ J Clin Invest 1970,1,12-18;Price,P.A.et al.,Arteriosclerosis Throm and Vas Bio 2001,21,817-824;Price,P.A.et al.,Kidney Int 2006,70,1577-1583;Lomashvili,K.A.et al.,Kidney Int 2009,75,617-625)。しかし、ビスホスホネートも骨形成を阻害する。ビスホスホネートはGACIの被検者において石灰化を遅延させることができるが、阻止することはできず(Rutsch,F.et al.,Circ Cardiovasc Genet 2008,1,133-140)、動物の場合のように、骨軟化症につながる。(Otero,J.E.,et al.,J Bone Miner Res 2013,28,419-430)。
【0010】
Braddock,D.et al.,(WO2014/126965A2)は、NPP1を投与することによって病的石灰化及び骨化を治療するための組成物及び方法を開示している。Quinn,A.et al.,(WO2012/125182A1)は、GACI、動脈石灰化、インスリン抵抗性、低リン血症性くる病、及び脊椎後縦靱帯骨化症を含む病態を治療するためのNPP1融合タンパク質を開示している。
【0011】
当分野における相当な研究にもかかわらず、好ましくは骨軟化症を引き起こすことなく血管石灰化を効果的に阻害する新規療法に対する必要性が引き続き存在する。IIAC、慢性腎臓病における血管石灰化(VCCKD)、弾性線維性仮性黄色腫(PXE)、インスリン抵抗性、低リン血症性くる病、及び脊椎後縦靱帯骨化症の治療のための有効かつ安全な医薬品も必要とされている。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、NPP1欠損またはカルシウム及び他のミネラルの沈着物の蓄積を特徴とする他の進行性障害の治療のための、N末端サイトゾルドメイン及び膜貫通ドメインを欠く単離組換えヒト可溶性NPP1ならびにその融合タンパク質の使用に関する。
【0013】
本発明のタンパク質は驚くべきことに、NPP1活性に欠損を有する、または骨、関節、心臓、血管、目、及び/または皮膚においてカルシウム沈着物の蓄積を示す被検者において、血中NPP1活性を回復させ、ピロホスフェートの正常レベルを回復するために用いることができる。
【0014】
より具体的には、本発明のNPP1タンパク質及びNPP1融合タンパク質は、NPP1欠損または限定はしないが特発性乳児動脈石灰化症(IIAC、乳児全身性動脈石灰化としても知られる)、慢性腎臓病における血管石灰化(VCCKD)、弾性線維性仮性黄色腫(PXE)、インスリン抵抗性、低リン血症性くる病、関節石灰化、心筋虚血、及び脊椎後縦靱帯骨化症を含めた低レベルのピロホスフェートに関連する他の疾患もしくは障害を有する被検者を治療するために用いることができる。動脈及び/または結合組織におけるカルシウム及び他のミネラルの沈着物の蓄積を特徴とする任意の進行性障害が本発明の範囲内である。
【0015】
いくつかの態様において、本発明は、必要としている被検者における組織石灰化、好ましくは血管石灰化の軽減方法に関する。この方法は、低血漿ピロホスフェート(PPi)または高無機ホスフェート(Pi)を有する被検者に、可溶性エクトヌクレオチドピロホスファターゼホスホジエステラーゼ(NPP1)を含む治療有効量の組成物を2回以上投与することを含む。投与1回分それぞれは被検者における血漿PPiの一時的な増加を達成するのに十分な量の可溶性NPP1を含有する。正常血漿PPiレベルの少なくとも約40%であるピークPPiレベル及び1回分の投与後約48時間以内のベースラインPPiレベルへの復帰によって特徴づけられる血漿PPiの一時的な増加。投与間の期間は少なくとも2日である。
【0016】
血漿PPiの一時的な増加は、少なくとも約4時間、好ましくは、少なくとも約6時間、少なくとも約8時間、少なくとも約10時間または少なくとも約12時間維持される。
【0017】
組織石灰化は血管石灰化、例えば静脈または動脈石灰化などとすることができ、石灰化は内膜性または中膜性とすることができる。
【0018】
治療を必要とする被検者は、NPP1欠損、慢性腎臓病(CKD)、末期腎疾患(ESRD)、乳児全身性動脈石灰化(GACI)、心血管障害、II型真性糖尿病、アテローム性動脈硬化症または弾性線維性仮性黄色腫(PXE)を有し得る。被検者が低血漿PPiを有する場合、被検者における血漿ピロホスフェート(PPi)の治療前レベルが正常血漿PPiレベルのものよりも少なくとも約40%低く、被検者はヒトである。被検者が高レベルのPiを有する場合、被検者におけるPiの治療前レベルは典型的には正常血漿Piレベルの少なくとも約110%である。
【0019】
1回分それぞれで投与するsNPP1の量は、約1.0mg/kg~約5.0mg/kgのNPP1または約1.0mg/kg~約10.0mg/kgのNPP1とすることができる。NPP1の投与間の期間は少なくとも2日であり、より長くすることもでき、例えば少なくとも3日、少なくとも1週、2週または1か月とすることができる。sNPP1は任意の好適な方法、例えば静脈内、皮下、または腹腔内などで投与することができる。
【0020】
好ましい態様において、NPP1融合タンパク質を投与する。好ましい融合タンパク質は、NPP1コンポーネント及び免疫グロブリンFc領域ならびに任意により標的化部分を含む。好ましい標的化部分はAsp10である。本明細書に開示の方法に従う投与のための特に好ましいNPP1融合タンパク質は、配列番号3、配列番号4、配列番号9、配列番号10、配列番号11または配列番号12のアミノ酸配列を有する。
【0021】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の発明を実施するための形態及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、野生型NPP1タンパク質のアミノ酸配列(配列番号1)である。サイトゾル領域及び膜貫通領域を下線で示す。N-グリコシル化が可能な部位を太字で示す。太字のアミノ酸モチーフ「PSCAKE」(配列番号17)はシステインリッチ領域を含む可溶性NPP1の開始部分である。
図2図2は、システインリッチ領域、触媒領域及びC末端領域を含有するsNPP1のアミノ酸配列(配列番号2)である。
図3図3は、sNPP1-Fc融合タンパク質のアミノ酸配列(配列番号3)である。
図4図4は、sNPP1-Fc-D10のアミノ酸配列(配列番号4)である。Fc配列を下線で示す。D10(配列番号18)標的化部分を太字で示す。
図5図5は、sNPP1-FcまたはsNPP1-Fc-D10の静脈内投与後(注入後1時間)及び皮下投与後(注入後4時間)の野生型マウスにおける血中ピロホスフェートレベルを示す。
図6図6は、sNPP1-Fc-D10で治療したEnpp1(-/-)マウスにおける大動脈石灰化の防止を示す。21日間にわたって1日おきに溶媒または6mg/kgのsNPP1-Fc-D10でEnpp1(-/-)マウスを皮下治療した。雄及び雌について大動脈カルシウムレベルを示す。
図7図7は、6mg/kgのsNPP1-Fc-D10で静脈内治療したEnpp1(-/-)マウスにおける血中PPi及び酵素活性レベルを示す。0、4、24、48、及び72時間の時点における血漿を収集してNPP1活性(破線)及びPPiレベル(実線)を分析した。野生型PPiレベルは2.18μMと測定された(データは図示せず)。上部から下部までの破線は野生型、ヘテロ接合型Enpp1(+/-)、及びホモ接合型Enpp1(-/-)asjマウスのPPiレベルを示す(Li et.al,2013)。sNPP1-FcのプロファイルはsNPP1-Fc-D10のものと類似していた。
図8図8は、溶媒処理マウスと比較した5mg/kgのsNPP1-Fcで治療したEnpp1asjホモ接合型雄マウスの生存率の増加を示す。野生型及びEnpp1asjマウスを出生時から高リン、低マグネシウム食条件に置いた。14日齢から1日おきに溶媒またはsNPP1-Fc(5mg/kg)を皮下投与した。カプランマイヤー生存曲線により、asjマウスの50%超は6週以前に死亡し、すべての動物は9週までに死亡したことが示された。これに対して、sNPP1-Fc治療動物の50%は7週を経過して生存し、9週の時点でも生存したままである。
図9図9A及び図9Bは、溶媒処理マウス(図9A)と比較した、5mg/kgのsNPP1-Fcで治療したEnpp1asj雄マウス(図9B)の体重増加率の増加を示す。野生型及びEnpp1asjマウスを出生時から高リン、低マグネシウム食条件に置いた。14日齢から1日おきに溶媒またはsNPP1-Fc(5mg/kg)を皮下注入した。野生型(実線)及びEnpp1asj(丸)マウスの体重増加率を2週齢から9週齢までプロットした。溶媒群(上パネル)では、9週の時点ですべてのEnpp1asj動物は死亡した(白丸)。これに対して、sNPP1-Fc治療群では、9週経過時に5匹のEnpp1asjマウスが生存しており(黒丸)、5匹が死亡していた(白丸)。
図10図10A~10Cは、野生型(図10A、上)、溶媒処理Enpp1asj図10B、中央)、sNPP1-Fc治療(5mg/Kg)Enpp1asj図10C、下)マウスの写真である。
図11図11は、溶媒処理野生型、溶媒処理Enpp1asj/asj、及びsNPP1-Fc治療(5mg/Kg)Enpp1as/asjマウスにおける線維芽細胞成長因子23のレベルを示す。
図12A図12は、可溶性NPP1化合物、融合パートナー及び融合タンパク質のアミノ酸配列である。図12Aは、配列番号1のアミノ酸107~925を含有する可溶性NPP1のアミノ酸配列(配列番号5)を示す。
図12B図12は、可溶性NPP1化合物、融合パートナー及び融合タンパク質のアミノ酸配列である。図12Bは、配列番号1のアミノ酸187~925を含有する可溶性NPP1のアミノ酸配列(配列番号6)を示す。
図12C図12は、可溶性NPP1化合物、融合パートナー及び融合タンパク質のアミノ酸配列である。図12Cは、ヒンジ領域を含むヒトIgG1のFc領域のアミノ酸配列(配列番号7)を示す。
図12D図12は、可溶性NPP1化合物、融合パートナー及び融合タンパク質のアミノ酸配列である。図12Dは、部分的ヒンジ領域を含むヒトIgG1のFcのアミノ酸配列(配列番号8)を示す。
図12E図12は、可溶性NPP1化合物、融合パートナー及び融合タンパク質のアミノ酸配列である。図12Eは、NPP1-Fc融合タンパク質のアミノ酸配列(配列番号9)を示す。NPP1コンポーネントは配列番号5を含有し、Fc配列はヒンジ領域を含む。
図12F図12は、可溶性NPP1化合物、融合パートナー及び融合タンパク質のアミノ酸配列である。図12Fは、NPP1-Fc融合タンパク質のアミノ酸配列(配列番号10)を示す。可溶性NPP1は配列番号5を含有し、Fc配列は部分的ヒンジ領域を含む。
図12G図12は、可溶性NPP1化合物、融合パートナー及び融合タンパク質のアミノ酸配列である。図12Gは、NPP1-Fc融合タンパク質のアミノ酸配列(配列番号11)を示す。可溶性NPP1は配列番号6を含有し、Fc配列はヒンジ領域を含む。
図12H図12は、可溶性NPP1化合物、融合パートナー及び融合タンパク質のアミノ酸配列である。図12Hは、NPP1-Fc融合タンパク質のアミノ酸配列(配列番号12)を示す。可溶性NPP1は配列番号6を含有し、Fc配列は部分的ヒンジ領域を含む。
図13図13は、インビトロ及びインビボでの組換えNPP1の活性を示す薄層クロマトグラムのオートラジオグラムである。図13Aは、130ug/mlのsNPP1-Fc-D10で1時間37℃でインキュベートした100nMのATP。図13は、インビトロ及びインビボでの組換えNPP1の活性を示す薄層クロマトグラムのオートラジオグラムである。図13Bは、野生型マウス(WT)、Enpp1-/-マウス及び組換えNPP1(6mg/kg)のIV注入の2時間後のEnpp1-/-マウス由来の血漿でインキュベートした100nMのATP。図13は、インビトロ及びインビボでの組換えNPP1の活性を示す薄層クロマトグラムのオートラジオグラムである。図13Cは、野生型マウス(WT)、Enpp1-/-マウス及び組換えNPP1(6mg/kg)のIV注入の2時間後のEnpp1-/-マウスの大動脈でインキュベートした100nMのATP。Pi:オルトホスフェート;ATP:アデノシン三リン酸;PPi:ピロホスフェート。
図14図14A及び14Bは、組換えNPP1(5mg/kg)の皮下注入後のEnpp1(-/-)マウスにおける血漿NPP1活性(図14A、上)及び血漿ピロホスフェート濃度(図14B、下)の時間経過を示すヒストグラムである。
図15図15は、組換えNPP1(5mg/kg)の皮下注入後の様々な時間におけるEnpp1(-/-)マウス(丸)及び野生型マウス(四角)の血漿NPP1活性と血漿ピロホスフェート(PPi)との間の関係を示す散布図である。
図16図16は、ヒト血液中のピロホスフェートの合成を示すヒストグラムである。図16Aは、ヘパリン添加血または同じ血液サンプルから得た血漿。図16Bは、HEPES緩衝生理食塩水に懸濁した、バフィーコートあり(全細胞)の、またはバフィーコートを除去した(赤血球)遠心分離血液細胞。図16Cは、HEPES緩衝生理食塩水に懸濁した単離白血球または血小板。サンプルは37℃で2時間組換えNPP1(145ug/ml)有りまたは無しでインキュベートした。
図17図17は、Enpp1(-/-)マウスにおける大動脈石灰化に対する組換えNPP1の効果を示すヒストグラムである。高ホスフェート食を与えたマウスに組換えNPP1を48時間ごとに皮下注入した(6mg/kg)。各バーは1匹の動物を表し、週齢をその下に示す。M:雄のペア;F:雌のペア。破線は野生型同腹仔の大動脈の平均カルシウム含有量を示す。
図18図18は、腎不全の尿毒症ラットにおける大動脈石灰化に対する組換えNPP1の効果を示すヒストグラムである。高アデニン食を与えた尿毒症ラットに、1週間に5回で21日間sNPP1-Fc-D10または対照を皮下注入した(5mg/kg)。各バーはおよそ4か月齢の1匹の動物を表す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
定義
別段の定義がない限り、本明細書において用いるすべての科学技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または等価な任意の方法及び材料を本発明の実施または試験に用いることができるが、好ましい方法及び材料を記載する。
【0024】
本明細書で測定可能な値、例えば量、持続時間などに言及する場合に用いる「約」は、明記した値からの±20%または±10%、より好ましくは±5%、さらに好ましくは±1%、より一層好ましくは±0.1%の変動を、こうした変動が本開示の方法を実施するのに適切である限りにおいて、包含することを意味する。
【0025】
用語「異常PPi:Pi比」は、そのタイプの被検者(例えばヒト)の正常PPi:Pi比よりも少なくとも10%または少なくとも20%高いまたは低い血清中Piに対する血漿中PPiの比をいう。異常PPi:Pi比は血漿PPiの正常よりも低いレベルまたは血清Piの正常よりも高いレベルのために生じ得る。PPi:Piの比は([PPi]/[Pi])1000として表され、ヒトの正常比は約1.75である。
【0026】
本明細書で用いる場合、NPP1タンパク質に関する用語「断片」は全長NPP1の部分配列のことをいう。タンパク質またはペプチドの「断片」は少なくとも約20アミノ酸長;例えば、少なくとも約50アミノ酸長;少なくとも約100アミノ酸長;少なくとも約200アミノ酸長;少なくとも約300アミノ酸長;または少なくとも約400アミノ酸長(及びこれらの間の任意の整数値)とすることができる。断片の大きさは、4アミノ酸残基~完全アミノ酸配列より1アミノ酸だけ少ない配列の範囲であってもよい。したがって、「配列番号1のアミノ酸配列の少なくとも一部を含む」タンパク質は全長NPP1及びその断片を包含する。
【0027】
本明細書で用いる場合、用語「高血清Pi」は、そのタイプの被検者(例えばヒト)におけるPiの正常レベルの少なくとも110%である被検者の血清中の無機ホスフェート(Pi)レベルのことをいう。好ましくは、そのタイプの被検者におけるPiの正常レベルの少なくとも約120%、少なくとも約150%、少なくとも約200%または少なくとも約300%である被検者の血清中のPiレベルである。ヒトの正常Piレベルは1.5±0.5mMと報告されている(Rutsch,F.et al.,Circ Cardiovasc Genet 1:133-140(2008).)。
【0028】
「単離」または「精製」可溶性NPP1タンパク質またはその生物活性断片もしくは融合タンパク質は、細胞物質またはNPP1タンパク質、生物活性断片もしくはNPP1融合タンパク質の由来となる細胞もしくは組織起源からの他のコンタミタンパク質を実質的に含まないか、または化学合成した場合には化学的前駆体もしくは他の化学物質を実質的に含まない。「細胞物質を実質的に含まない」という文言は、タンパク質を単離または組換え産生する細胞の細胞成分からタンパク質を分離するNPP1タンパク質、生物活性断片、またはNPP1融合タンパク質の調製を含む。一実施形態において、「細胞物質を実質的に含まない」という文言は、非NPP1タンパク質/断片/融合タンパク質(本明細書では「コンタミタンパク質」とも呼ぶ)を約30%(乾燥重量)以上有しない、より好ましくは非NPP1タンパク質/断片/融合タンパク質を約20%以上有しない、より一層好ましくは非NPP1タンパク質/断片/融合タンパク質を約10%以上有しない、最も好ましくは非NPP1タンパク質/断片/融合タンパク質を約5%以上有しないNPP1タンパク質、生物活性断片、またはNPP1融合タンパク質の調製を含む。NPP1タンパク質、融合タンパク質、またはその生物活性断片を組換え産生する場合、好ましくは培地も実質的に含まない、すなわち培地がタンパク質調製物の体積の約20%以上、より好ましくは約10%以上、最も好ましくは約5%以上を占めない。
【0029】
本明細書で用いる場合、用語「低血漿PPi」は、そのタイプの被検者(例えばヒト)におけるPPiの正常レベルの50%以下である被検者の血漿中のピロホスフェート(PPi)レベルのことをいう。好ましくは、そのタイプの被検者におけるPPiの正常レベルの約40%、約30%、約20%または約10%以下である被検者の血漿中PPiレベルである。ヒトの正常PPiレベルは2.63±0.47μMと報告されている。(O’Neill et al.,Nephrol Dial Transplant 2010,25,187-191)。ピロホスフェートは好適な公知の方法、例えばウリジンジホスホグルコース(UDPG)法などを用いて酵素学的に定量することができる。(Ryan,L.M.et al.,Arthritis Rheum 1979,22,886-91)。
【0030】
範囲:本開示を通して、本発明の様々な態様が範囲形式で提示され得る。範囲形式の記載は便宜上及び簡潔のためにすぎず、本発明の範囲の柔軟性のない限定として解釈されるべきではないことを理解すべきである。したがって、範囲の記載は具体的に開示したすべての可能な部分範囲及びその範囲内の個々の数値を有するものとみなすべきである。例えば、1~6という範囲の記載は、具体的に開示した部分範囲、例えば1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6など、ならびにこの範囲内の個々の数字、例えば1、2、2.7、3、4、5、5.3、及び6を有するとみなすべきである。このことは範囲の幅にかかわらず適用される。
【0031】
本明細書で用いる場合、用語「被検者」は哺乳類及び非哺乳類を包含する。哺乳類の例としては、ヒト、チンパンジー、類人猿、サル、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウサギ、イヌ、ネコ、ラット、マウス、モルモットなどが挙げられるが、これらに限定されない。非哺乳類の例としては、鳥類、魚類などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
本明細書で用いる場合、用語「治療有効量」は、その量を与えられていない対応する被検者と比べて、疾患、障害、もしくは副作用の治療、治癒、予防、もしくは寛解が向上することとなる、または疾患もしくは障害の進行速度が減少することとなる作用物質(例えばsNPP1タンパク質)の非毒性であるが十分な量のことをいう。この用語は正常な生理機能を強化するのに有効な量もその範囲内に含む。
【0033】
用語「治療」は、疾患もしくは障害を回復、治癒、緩和、軽減、改変、救済、寛解、予防、改善する、または疾患もしくは障害に影響を与える目的での、本発明のNPP1タンパク質、断片及び融合タンパク質の被検者への適用もしくは投与、またはNPP1関連疾患もしくは障害、もしくは低レベルの血中ピロホスフェートに関連する他の疾患もしくは障害、もしくはカルシウム及び他のミネラルの沈着物の蓄積(ミネラル化)を特徴とする他の進行性障害を有する被検者への、本発明のNPP1タンパク質、断片及び融合タンパク質の適用もしくは投与を含む。用語「治療」は、任意の客観的または主観的パラメータ、例えば軽快;寛解;症状の減少もしくは傷害、病変もしくは病態を被検者にとってより許容可能にすること;変性もしくは衰弱速度の減速;変性の最終点における衰弱の軽減;または被検者の身体的もしくは精神的健康状態の改善などを含む、傷害、病変または病態の治療または寛解における成功の任意の兆候のことをいう。治療は治療的または予防的であり得る。症状の治療または寛解は、身体検査の結果をはじめとする客観的または主観的パラメータに基づくことができる。
【0034】
治療方法
本発明は、NPP1関連疾患及び障害の治療のための、N末端部分を欠く(すなわちサイトゾルドメイン及び膜貫通ドメインを欠く)単離組換えヒト可溶性NPP1(「sNPP1」)及びその融合タンパク質の使用に関する。本発明のタンパク質は驚くべきことに、インビボでのNPP1活性を増加させ、被検者における血中ピロホスフェート(PPi)の正常レベルを増加または回復させるために用いることができる。本発明のタンパク質は、関節、腎臓、心臓(例えば大動脈)、動脈、血管、または脊椎後縦靱帯におけるカルシウムの沈着物の蓄積を防止するために用いることもできる。
【0035】
被検者は、低レベルのピロホスフェートを示すNPP1活性の欠損(NPP1欠損)を有する、低レベルのピロホスフェートに関連する疾患もしくは障害を患っている、または弾性線維におけるカルシウム及び他のミネラルの沈着物の蓄積(ミネラル化)を特徴とする進行性障害を患っているヒト患者とすることができる。ミネラル化は心臓、動脈、血管、腎臓、脊椎靭帯、皮膚、目、及び消化管で生じ得る。
【0036】
より具体的には、本発明のNPP1タンパク質及びNPP1融合タンパク質は、限定はしないが特発性乳児動脈石灰化症(IIAC)、インスリン抵抗性、低リン血症性くる病、及び脊椎後縦靱帯骨化症、または慢性腎臓病における血管石灰化(VCCKD)、心筋虚血、関節石灰化、網膜色素線条、及び弾性線維性仮性黄色腫(PXE)などの他の疾患を含めた、NPP1関連疾患または障害を有する被検者を治療するために用いることができる。
【0037】
可溶性NPP1タンパク質、断片、及びそのNPP1融合タンパク質は、被検者における多種多様な病態を治療するために用いることができる。例えば、哺乳類、例えばヒト患者などの被検者における、1つ以上の石灰化構造物を減少及び/または除去することによって、及び/または石灰化構造物の形成を防止することによって改善することのできる病態の治療が本発明の範囲内である。
【0038】
特に有用な一実施形態において、治療される病態は全身性動脈石灰化症(特発性乳児動脈石灰化症及び乳児動脈中膜石灰化症としても知られる)である。
【0039】
他の実施形態において、弾性線維性仮性黄色腫、慢性腎臓病における血管石灰化、インスリン抵抗性、低リン血症性くる病、または脊椎後縦靱帯骨化症などの病態も本明細書に記載の方法を用いて治療することができる。
【0040】
一般に、被検者に投与される融合タンパク質の投与量は、公知の要因、例えば年齢、レシピエントの健康状態及び体重、併用療法の種類、治療の頻度などに応じて変化することになる。通常は、有効成分(すなわち融合タンパク質)の投与量は体重1kg当たり約0.0001~約50mgとすることができる。正確な投与量、投与の頻度及び治療の期間は、治療用タンパク質の投与の技術分野における熟練医師が決定することができる。
【0041】
本発明の好ましい実施形態は、治療有効量の単離可溶性NPP1タンパク質(sNPP1)、生物活性断片、またはNPP1融合タンパク質を被検者に投与するステップを含む、NPP1関連疾患または他の石灰化症の治療方法に関する。本明細書で定義するように、タンパク質の治療有効量(すなわち有効投与量)は約0.001~50mg/kg体重の範囲である。当業者であれば、特定の要因が被検者を効果的に治療するのに必要な投与量に影響し得ることを理解するであろうが、この要因としては、限定はしないが疾患の重症度、治療歴、被検者の全身健康状態及び/または年齢、ならびに他の発症している疾患が挙げられる。さらに、治療有効量のタンパク質による被検者の治療は単一の治療を含むことができ、好ましくは一連の治療を含むことができる。治療に用いられるタンパク質の有効投与量は特定の治療の経過とともに増加または減少し得ることも理解されるであろう。
【0042】
本明細書で定義するように、タンパク質またはポリペプチドの治療有効量(すなわち有効投与量)は、約0.001~50mg/kg体重、好ましくは約0.01~25mg/kg体重、より好ましくは約0.1~20mg/kg体重、さらに好ましくは約1~10mg/kg、2~9mg/kg、3~8mg/kg、4~7mg/kg、または5~6mg/kg体重の範囲である。当業者であれば、特定の要因が被検者を効果的に治療するのに必要な投与量に影響し得ることを理解するであろうが、この要因としては、限定はしないが疾患もしくは障害の重症度、治療歴、被検者の全身健康状態及び/または年齢、ならびに他の発症している疾患が挙げられる。さらに、治療有効量のタンパク質、ポリペプチド、または抗体による被検者の治療は単一の治療を含むことができ、好ましくは一連の治療を含むことができる。
【0043】
好ましい例では、約0.1~20mg/kg体重の範囲で、1週に1回、1週に2回、約10日に1回、約12日に1回、約14日に1回、約17日に1回、約20日に1回、約25日に1回、または約30日に1回である。治療に用いられる可溶性sNPP1タンパク質、その生物活性断片または融合タンパク質の有効投与量は、特定の治療の経過とともに増加または減少し得ることも理解されるであろう。
【0044】
本発明は、5日ごとに1回~30日ごとに1回で医学分野の熟練実施者によって決定される期間、患者に投与されるsNPP1、その生物活性断片または融合タンパク質の治療有効投与量を規定する。一実施形態において、その期間は患者の残りの寿命の間となるであろう。一実施形態において、投与頻度は5日ごとに1回~25日ごとに1回である。一実施形態において、投与頻度は5日ごとに1回~21日ごとに1回である。別の実施形態では、投与頻度は7日ごとに1回~14日ごとに1回である。sNPP1、その生物活性断片または融合タンパク質は、5日ごとに1回、6日ごとに1回、7日ごとに1回、8日ごとに1回、9日ごとに1回、10日ごとに1回、11日ごとに1回、12日ごとに1回、13日ごとに1回、または14日ごとに1回投与することができる。いくつかの実施形態において、sNPP1、その生物活性断片または融合タンパク質を約1週に1回投与する。他の実施形態において、sNPP1、その生物活性断片または融合タンパク質を約2週に1回投与する。一実施形態において、投与頻度は約30日に1回である。
【0045】
一実施形態において、患者は2歳未満である。いくつかの実施形態において、約0.1mg、約0.2mg、約0.3mg、約0.4mg、約0.5mg、約1mg、約2mg、約3mg、約5mg、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、または約45mgのsNPP1、生物活性断片または融合タンパク質をNPP1欠損または他の石灰化症の患者に投与する。いくつかの実施形態において、約0.5~約30mg、約0.5~約20mg、約0.5~約10mg、または約0.5~約5mgを患者に投与する。
【0046】
一実施形態において、約1mg/kgのsNPP1、生物活性断片または融合タンパク質を1週に1回患者に投与する。一実施形態において、約2mg/kgのsNPP1、生物活性断片または融合タンパク質を1週に1回患者に投与する。一実施形態において、約3mg/kgのsNPP1、生物活性断片または融合タンパク質を1週に1回患者に投与する。一実施形態において、約4mg/kgのsNPP1、生物活性断片または融合タンパク質を1週に1回患者に投与する。一実施形態において、約5mg/kgのsNPP1、生物活性断片または融合タンパク質を1週に1回患者に投与する。一実施形態において、約6mg/kgのsNPP1、生物活性断片または融合タンパク質を1週に1回患者に投与する。一実施形態において、約7mg/kgのsNPP1、生物活性断片または融合タンパク質を1週に1回患者に投与する。一実施形態において、約8mg/kgのsNPP1、生物活性断片または融合タンパク質を1週に1回患者に投与する。一実施形態において、約9mg/kgのsNPP1、生物活性断片または融合タンパク質を1週に1回患者に投与する。一実施形態において、約10mg/kgのsNPP1、生物活性断片または融合タンパク質を1週に1回患者に投与する。
【0047】
いくつかの実施形態において、治療前の患者の血中PPiレベルは、正常なヒト個体において観察されるPPiの正常レベルの約1%、約2%、約3%、約5%、約10%、約15%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、または約80%である。一実施形態において、治療前の患者のPPiレベルは、正常なヒト個体において観察されるPPiの正常レベルの約50%以下である。一実施形態において、治療前の患者のPPiレベルは、正常なヒト個体において観察されるPPiの正常レベルの約40%以下である。いくつかの実施形態において、治療前の患者のPPiレベルは、正常なヒト個体において観察されるPPiの正常レベルの約30%以下である。いくつかの実施形態において、治療前の患者のPPiレベルは、正常なヒト個体において観察されるPPiの正常レベルの約30%以下である。いくつかの実施形態において、治療前の患者のPPiレベルは、正常なヒト個体において観察されるPPiの正常レベルの約20%以下である。いくつかの実施形態において、治療前の患者のPPiレベルは、正常なヒト個体において観察されるPPiの正常レベルの約10%以下である。いくつかの実施形態において、治療前の患者のPPiレベルは、正常なヒト個体において観察されるPPiの正常レベルの約5%以下である。いくつかの実施形態において、患者は治療前に測定可能なPPiを示さない。
【0048】
sNPP1、生物活性断片または融合タンパク質は、例えば、皮下注入、筋肉内注入、及び静脈内(IV)点滴または注入によって投与することができる。
【0049】
一実施形態において、sNPP1、生物活性断片または融合タンパク質を任意の有用な方法でIV点滴によって静脈内投与する。一例では、sNPP1、生物活性断片または融合タンパク質は末梢ラインを介した静脈内点滴によって投与することができる。別の例では、sNPP1、生物活性断片または融合タンパク質は末梢挿入型中心静脈カテーテルを介した静脈内点滴によって投与することができる。
【0050】
別の実施形態では、sNPP1、生物活性断片または融合タンパク質をIV注入によって静脈内投与する。
【0051】
別の実施形態では、sNPP1、生物活性断片または融合タンパク質は腹腔内注入によって投与することができる。
【0052】
別の実施形態では、sNPP1、生物活性断片または融合タンパク質は皮下注入によって投与することができる。
【0053】
別の実施形態では、sNPP1、生物活性断片または融合タンパク質は筋肉内注入によって投与することができる。
【0054】
さらに別の実施形態では、sNPP1、生物活性断片または融合タンパク質を治療用タンパク質の医薬品として許容可能なカプセルによって投与する。例えば、カプセルは腸溶性コーティングゼラチンカプセルとすることができる。
【0055】
一実施形態において、本方法は本発明の可溶性NPP1タンパク質またはNPP1融合タンパク質を単独で、または他の作用物質(複数可)と併せて投与することを含む。一実施形態において、本方法は、NPP1欠損または他の関連疾患もしくは障害を有する被検者におけるNPP1発現または活性の減少または異常を補償する治療法として、本発明のNPP1タンパク質またはNPP1融合タンパク質を投与することを含む。
【0056】
一実施形態において、単離sNPP1タンパク質、断片、及び融合タンパク質は、作用物質の前、後もしくは同時に投与することができるか、または他の公知の治療法と共投与することができる。本発明の単離sNPP1タンパク質、断片、及び融合タンパク質と他の治療薬との共投与は、治療効果の増加が得られる異なる機序によって作用する2つの作用物質をもたらし得る。こうした共投与は薬物に対する耐性の発生による問題を解決することができる。
【0057】
特定の態様において、本開示は、必要とする被検者における血管石灰化を軽減する方法に関する。この方法は、低血漿PPiレベル(インヒビターもしくは組織石灰化)または高血清Piレベルを有する動物にNPP1の可溶性形態を投与して、動物における血漿PPiを一時的に増加させることができ、血漿PPiの一時的な増加が動物における血管石灰化を阻害することができるという驚くべき発見に基づく。血漿PPiの増加は一時的なので、骨石灰化を阻害または骨軟化症を誘発することなく、望ましくないまたは病的な組織石灰化、例えば血管石灰化などを阻害するように治療法を調整することができる。
【0058】
概して、本開示は、被検者に可溶性NPP1(sNPP1)を2回以上投与することによって、必要とする被検者における組織石灰化(例えば血管石灰化)を軽減する方法に関する。投与1回分それぞれは、被検者における血漿PPiの一時的な増加を達成するのに十分であり、好ましくは1回分の投与後約48時間以内にベースラインPPiレベルに復帰する量の可溶性NPP1を含む。各投与間の期間は一般に少なくとも2日である。
【0059】
必要としている被検者は任意の年齢及び性別とすることができ、好ましくは低血漿PPiまたは高血清Pi(例えば異常PPi:Pi比となる)を有する。低血漿PPiは例えば先天性NPP1欠損、例えば活性NPP1の発現の減少または酵素活性の減少につながるNPP1をコードする遺伝子の変異(NPP1欠損及び常染色体劣性低リン血症性くる病に関連)、ならびにMRP6タンパク質の不在または非機能につながるMRP6をコードする遺伝子の変異(弾性線維性仮性黄色腫に関連)などに起因し得る。低血漿PPiまたは高血清Piは、慢性腎臓病、末期腎疾患/不全、真性糖尿病及び他の病態の患者においても頻繁に見られる。したがって、治療を必要とする被検者は、慢性腎臓病(CKD)、末期腎疾患(ESRD)、乳児全身性動脈石灰化(GACI)、II型真性糖尿病、常染色体劣性低リン血症性くる病、心血管障害、アテローム性動脈硬化症及び/または弾性線維性仮性黄色腫(PXE)を有し得る。被検者は一般にヒトであるが、任意の他の好適な哺乳類または非哺乳類とすることもできる。
【0060】
組織石灰化は進行性プロセスであり、先天性NPP1欠損を持って生まれた個体は数年間は組織の石灰化を示さない場合がある。治療を可能な限り早期に開始することによって、そのような被検者において石灰化を軽減及び/または最小限にすることができる可能性がある。生殖細胞変異に起因しない低血漿PPiレベルまたは高血清Piレベルを有する(例えば異常血漿PPi:Pi比を有する)被検者において、治療を実施可能な限り早く(すなわち病態、例えば慢性腎臓病(CKD)または末期腎疾患(ESRD)などの診断の直後に)開始するべきである。ある実施形態において、治療される被検者は、1か月~24か月齢、1歳未満、2歳未満、3歳未満、4歳未満、または5歳未満とすることができる。
【0061】
被検者に投与するsNPP1の各投与1回分は血漿PPiの一時的な増加を達成するのに十分な量のsNPP1を含有する。好ましくは、一時的な増加は、正常血漿PPiレベルの少なくとも約40%、正常血漿PPiレベルの少なくとも約50%、正常血漿PPiレベルの少なくとも約60%、正常血漿PPiレベルの少なくとも約70%、正常血漿PPiレベルの少なくとも約80%、正常血漿PPiレベルの約40%~100%、正常血漿PPiレベルの約50%~100%、正常血漿PPiレベルの約60%~100%、正常血漿PPiレベルの約70%~100%、正常血漿PPiレベルの約80%~100%、または正常血漿PPiレベルの約100%~200%であるピークPPiレベルによって特徴づけられる。
【0062】
好ましくは、sNPP1の投与後の血漿PPiの一時的な増加は、少なくとも約4時間、少なくとも約6時間、少なくとも約8時間、少なくとも約10時間または少なくとも約12時間維持される。さらに、血漿PPiの一時的な増加は、1回分の投与後約48時間以内、1回分の投与後約3日以内、または1回分の投与後約4日以内に被検者のベースラインPPiレベルに復帰することが好ましい。
【0063】
治療前の被検者の低血漿PPiは、正常な被検者(例えばヒト)で観察されるPPiの正常レベルの約50%以下、好ましくは40%以下である。いくつかの態様において、治療前の被検者のPPiレベルはPPiの正常レベルの約30%以下である。他の態様では、治療前の被検者のPPiレベルはPPiの正常レベルの約20%以下である。いくつかの他の態様では、治療前の被検者のPPiレベルは正常レベルの約10%以下である。いくつかの態様において、被検者は治療前に測定可能なPPiを有しない場合がある。
【0064】
治療前の被検者の高血清Piは、正常な被検者(例えばヒト)で観察されるPiの正常レベルの約110%以上、好ましくは125%以上である。いくつかの態様において、治療前の被検者のPiレベルはPPiの正常レベルの約150%以上である。他の態様では、治療前の被検者のPiレベルはPPiの正常レベルの約200%以上である。いくつかの他の態様では、治療前の被検者のPiレベルは正常レベルの約300%以上である。いかなる特定の理論にも縛られることを望むものではないが、血清PPiの一時的な増加を誘発することによって高血漿Piレベルを補償し、一時的に正常またはほぼ正常PPi:Pi比を回復させ、それによって血清Piの正常よりも高いレベルによって促進される組織石灰化を阻害することができると考えられる。
【0065】
血漿PPiの一時的な増加を達成するのに十分なsNPP1の量は、通常の技能を有する臨床医であれば、例えば血漿PPiの一時的な増加をもたらすと予想される投与量を投与して一時的な増加が生じるかどうか判定し、その後、投与量に適切な調整を加えることによって容易に決定することができる。投与する量は、用いられる特定のsNPP1、年齢、被検者の健康状態及び体重、被検者の薬物に対する感受性、ならびに他の関連する要因を含めた複数の従来の要因に影響されることになるであろう。典型的には、1回分それぞれで投与されるsNPP1の量は体重1kg当たり約0.001~約50mgであり、1mg/kg~5mg/kg、1mg/kg~10mg/kg、1mg/kg~20mg/kg、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、11mg/kg、12mg/kg、13mg/kg、14mg/kg、15mg/kg、16mg/kg、17mg/kg、18mg/kg、19mg/kg、または20mg/kgが好ましい。正確な投与量、投与の頻度及び治療の期間は、治療用タンパク質の投与の技術分野における熟練医師が決定することができる。
【0066】
いくつかの好ましい実施形態において、各投与量は、体重1Kg当たり約1.0mg~約5.0mgのsNPP1、体重1Kg当たり約1.0mg~約10.0mgのsNPP1または体重1Kg当たり約1.0mg~約20.0mgのsNPP1を含有する。
【0067】
投与間の期間は、被検者の血清PPiレベルのベースラインレベルへの復帰を可能とするように選択され、少なくとも2日(48時間)であるが、所望または指示によりこれより長くすることができる。例えば、投与間の期間は、3日、4日、5日、6日、1週、10日、12日、2週、3週または約1か月とすることができる。
【0068】
一般に、低血漿PPi、高血清Pi、またはNPP1欠損の診断後、実施可能な限り早く本明細書に記載の方法に従う治療を開始することが望ましい。先天性NPP1欠損を持って生まれた被検者は、数年間は組織の石灰化を示さない場合がある。治療を可能な限り早期に開始することによって、そのような被検者において石灰化を軽減及び/または最小限にすることができる可能性がある。生殖細胞変異に起因しない低血漿PPiレベルまたは高血清Piを有する被検者において、病態、例えば慢性腎臓病(CKD)または末期腎疾患(ESRD)などの診断後、実施可能な限り早く治療を開始するべきである。
【0069】
本方法は、Piに対するPPiの比が異常であるものを含めた、低血漿PPiまたは高血清Piを有する被検者における組織石灰化(例えば血管石灰化)を軽減する有効な方法を提供する。組織石灰化は好ましくは血管石灰化であり、動脈石灰化であることが好ましいが、静脈石灰化とすることもできる。血管石灰化は内膜性または中膜性とすることができる。本明細書に記載の方法に従って治療される被検者は、NPP1欠損、特発性乳児動脈石灰化症及び乳児動脈中膜石灰化症としても知られる全身性動脈石灰化症(GACI)を有し得る。治療される被検者は、心血管障害、例えば冠動脈疾患及び/またはアテローム性動脈硬化症なども有し得る。治療される被検者は、慢性腎臓病(CKD)または末期腎疾患(ESRD)を有し得る。治療される被検者は、真性糖尿病(例えばII型糖尿病)を有し得る。治療される被検者は、弾性線維性仮性黄色腫(PXE)を有し得る。
【0070】
sNPP1は、任意の好適な方法または投与経路、例えば腸管外、経口または吸入などによって投与することができる。腸管外投与、例えば静脈内注入もしくは点滴、皮下注入、腹腔内注入、または筋肉内注入などが好ましい。
【0071】
必要に応じて、sNPP1を1種以上の併用治療薬とともに投与することができる。併用療法のためには、被検者において個々の薬理活性が実質的に重複するように、sNPP1及び1種以上の別の治療薬を投与する。したがって、sNPP1の投与の前、同時または後に任意の併用治療薬を投与することができる。併用療法は、治療効果の増加が得られる異なる機序によって作用する2つの作用物質をもたらし得る。
【0072】
血清PPiの一時的な増加を引き起こすことに加えて、本明細書に記載の方法に従ってsNPP1を投与することによって、被検者における特定のタンパク質のレベルを変化させることができると考えられる。例えば、いかなる特定の理論にも縛られることを望むものではないが、本明細書に記載の方法に従ってsNPP1を投与することによって、被検者におけるオステオポンチン、オステオプロテゲリン及び線維芽細胞成長因子23(FGF-23)のレベルを減少させることができると考えられる。それゆえに、治療法を監視して投与を調整するために、血漿PPi及び血清Piレベルに加えて、これらのタンパク質のレベルを用いることもできる。
【0073】
sNPP1
本発明は、NPP1の生物活性NPP1ドメインを含む可溶性NPP1(すなわち、ピロホスファターゼ及び/またはホスホジエステラーゼ活性のための自然発生NPP1の少なくとも1つの細胞外触媒ドメインを含有するNPP1コンポーネント)を利用する。本発明の可溶性NPP1タンパク質は少なくとも、ピロホスファターゼ及び/またはホスホジエステラーゼ活性を発揮するのに不可欠なNPP1ドメインを含む。
【0074】
一実施形態において、可溶性NPP1、その断片、及び融合タンパク質は、機能的ホモ二量体またはモノマーを形成することができる。好ましい実施形態において、ピロホスファターゼ活性及びインビボでのピロホスフェートレベルを増加させる能力について、可溶性NPP1タンパク質またはそのNPP1融合タンパク質をアッセイすることができる。
【0075】
本発明の好ましい可溶性NPP1タンパク質及びNPP1融合タンパク質はインビボ(例えばヒト)で酵素的に活性である。一実施形態において、可溶性タンパク質は、以下の配列に対する少なくとも60、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
(配列番号2)
【0076】
可溶性NPP1の任意の望ましい酵素活性形態を本明細書に記載の方法において用いることができる。酵素活性sNPP1は好適な酵素アッセイにおいてPPiレベルを増加させることができ、ピロホスファターゼ活性、ホスホジエステラーゼ活性、またはピロホスファターゼ及びホスホジエステラーゼ活性についてアッセイすることができる。典型的には、sNPP1は少なくとも、自然発生膜貫通NPP1のN末端サイトゾルドメイン及び膜貫通ドメインを欠くNPP1コンポーネントを含有する。好ましい態様において、NPP1コンポーネントは、自然発生ヒトNPP1のシステインリッチ領域(配列番号1のアミノ酸99~204)及び触媒領域(配列番号1のアミノ酸205~591)を含有する。典型的には、NPP1コンポーネントはC末端領域(配列番号1のアミノ酸592~925)も含み、配列番号2のアミノ酸配列を有する。しかし、C末端領域は必要に応じて切断することができる。したがって、好ましいNPP1コンポーネントは、ヒトNPP1のシステインリッチ領域及び触媒領域(配列番号1のアミノ酸99~591)またはヒトNPP1のシステインリッチ領域、触媒領域及びC末端領域(配列番号2)を含む。他の好ましいNPP1コンポーネントはシステインリッチドメインの一部のみを含有し、配列番号1のアミノ酸107~925または配列番号1のアミノ酸187~925の配列を有する。
【0077】
NPP1のシステインリッチ領域(すなわち配列番号1のアミノ酸99~204)はsNPP1の二量体化を容易にすることができる。sNPP1は、融合タンパク質を含めて、機能的ホモ二量体のモノマーの形態とすることができる。
【0078】
NPP1コンポーネントのアミノ酸配列は、自然発生NPP1配列のバリアントとすることができるが、ただし、NPP1コンポーネントが酵素的に活性である場合に限る。NPP1バリアントは酵素的に活性であり、ヒトNPP1の対応する部分(例えばシステインリッチ領域、触媒領域、C末端領域、システインリッチ領域と触媒領域、システインリッチ領域と触媒領域とC末端領域の長さに及ぶ)に対する少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%のアミノ酸配列同一性を有する。好ましいNPP1バリアントは、(i)配列番号1の残基205~591のアミノ酸配列、(ii)配列番号1の残基99~591のアミノ酸配列、(iii)配列番号1の残基99~925のアミノ酸配列、(iv)配列番号1の残基107~925のアミノ酸配列、または(v)配列番号1の残基187~925のアミノ酸配列に対する少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%のアミノ酸配列同一性を有する。アミノ酸変異の好適な位置はNPP1構造研究及びNPP1における疾患関連変異の解析から公知である。例えば、以下のアミノ酸の置換がNPP1酵素活性を減少させる特定の疾患関連変異において発生し、これらの位置におけるアミノ酸の変異は避けるべきである:Ser216、Gly242、Pro250、Gly266、Pro305、Arg349、Tyr371、Arg456、Tyr471、His500、Ser504、Tyr513、Asp538、Tyr570、Lys579、Gly586、Tyr659、Glu668、Cys726、Arg774、His777、Asn792、Asp804、Arg821、Arg888、及びTyr901。(例えば、Jansen,S.et al.,Structure 20:1948-1959(2012)を参照)。
【0079】
一実施形態において、可溶性NPP1タンパク質は、融合パートナーに組換え融合または化学結合(例えば共有結合、イオン結合、疎水結合及びファンデルワールス力)させた融合タンパク質とすることができる。別の実施形態では、融合タンパク質は配列番号3または配列番号4に対する少なくとも70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%配列同一性を有する。
【0080】
2つのアミノ酸配列の一致率を求めるためには、配列を最適比較目的でアラインメントする(例えば最適アラインメントのために第1及び第2アミノ酸または核酸配列の一方または両方にギャップを挿入することができ、比較する上で非相同配列を無視することができる)。好ましい実施形態において、比較目的でアラインメントさせる参照配列の長さは、参照配列(例えば配列番号2のsNPP1アミノ酸配列;配列番号1のアミノ酸107~925または配列番号1のアミノ酸187~925)の長さの少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%、またさらにより好ましくは少なくとも70%、80%、または90%である。そして、対応するアミノ酸位のアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第1配列におけるある位置に、第2配列の対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドがある場合、分子はその位置において同一である(本明細書で用いる場合、アミノ酸がアミノ酸または核酸「相同性」に相当する)。2つの配列間の一致率は、それらの配列によって共有される同一な位置の数の関数であり、2つの配列の最適アラインメントのために挿入する必要のあるギャップの数、及び各ギャップの長さを考慮に入れている。
【0081】
配列の比較及び2つの配列間の一致率の決定は、数学的アルゴリズムを用いて行うことができる。好ましい実施形態において、2つのアミノ酸配列間の一致率は、GCGソフトウェアパッケージ(www.gcg.comで入手可能)中のGAPプログラムに組み込まれているNeedleman及びWunsch(J Mol Biol 1970,48,444-453)アルゴリズムを用いて、Blosum62行列またはPAM250行列のいずれか、ならびに16、14、12、10、8、6、または4のギャップの重み及び1、2、3、4、5、または6の長さの重みを用いて決定する。別の実施形態では、2つのアミノ酸間の一致率は、ALIGNプログラム(バージョン2.0または2.0U)に組み込まれているE.Meyers及びW.Millerのアルゴリズム(CABIOS,1989,4,11-17)を用いて、PAM120重み残基表、12のギャップ長ペナルティ、及び4のギャップペナルティを用いて決定する。
【0082】
sNPP1は、本明細書に記載のNPP1コンポーネントからなるか、またはそれから本質的になる。あるいは、sNPP1は、NPP1コンポーネント及び融合パートナーと呼ばれる1つ以上の他のポリペプチドを、任意によりそれぞれの場合に好適なリンカーを介して含有する融合タンパク質の形態、またはNPP1コンポーネントと別の分子(例えばPEG)との間の結合体の形態とすることができる。sNPP1が融合タンパク質の形態である場合、各融合パートナーはNPP1コンポーネントのC末端に位置することが好ましい。いかなる特定の理論にも縛られることを望むものではないが、システインリッチ領域及び触媒領域を含有するNPP1コンポーネント、ならびにNPP1コンポーネントのC末端に位置する1つ以上の融合タンパク質を含有する融合タンパク質は、十分なレベルで発現することができ、治療用タンパク質として用いるのに十分安定しているので、他の構成のNPP1融合タンパク質よりも好ましいと考えられる。
【0083】
任意の好適な融合パートナーを融合タンパク質中に含めることができる。有利には、特定の利点、例えば凝集及び免疫原性の減少、溶解性の増加、発現及び/または安定性の向上、ならびに薬物動態及び/または薬力学的性能の向上などをもたらすことのできる複数の融合パートナーが当該技術分野において公知である。例えば、Strohl,W.R.BioDrugs 29:215-239(2015)を参照。例えば、アルブミン、アルブミン断片またはアルブミンバリアント(例えばヒト血清アルブミン及びその断片またはバリアント)を融合タンパク質に組み込むことができ、こうした融合タンパク質は容易に精製することができ、安定しており、向上した血漿半減期を有することが公知である。sNPP1融合タンパク質に用いることのできる好適なアルブミン、アルブミン断片またはアルブミンバリアントは、例えばWO2005/077042A2及びWO03/076567A2に開示されており、それぞれの全内容を参照により本明細書に援用する。ヒトトランスフェリンへの融合も半減期を向上させることが公知である。例えば、Kim BJ et al.,J Pharmacol Expr Ther 334(3):682-692(2010);及びWO2000/020746を参照。アルブミンまたはトランスフェリンに結合するペプチド、例えば抗体または抗体断片なども用いることができる。例えば、EP0486525B1、US6,267,964B1、WO04/001064A2、WO02/076489A1、WO01/45746、WO2006/004603、及びWO2008/028977を参照。同様に、免疫グロブリンFc融合タンパク質が公知である。例えば、Czajkowsky DM et al.,EMBO Mol Med 4(10):1015-1028(2012)、米国特許第7,902,151号;及び米国特許第7,858,297号を参照されたいが、これらの教示全体を参照により本明細書に援用する。融合タンパク質はCTP配列も含むことができる(Fares et al.,Endocrinol 2010,151,4410-4417;Fares et al.,Proc Natl Acad Sci 1992,89,4304-4308;及びFuruhashi et al.,Mol Endocrinol 1995,9,54-63も参照)。融合パートナーは免疫グロブリンのFc(例えばFcまたはヒトIgG1)であることが好ましい。FcはヒトIgG1のCH1、CH2及びCH3、ならびに必要であれば任意によりヒトIgG1ヒンジ領域(EPKSCDKTHTCPPCP(配列番号13))またはヒトIgG1ヒンジ領域の一部(例えばDKTHTCPPCP(配列番号14)もしくはPKSCDKTHTCPPCP(配列番号15))を含むことができる。いくつかの融合タンパク質において、FcはヒトIgG1のCH2及びCH3、または必要であればヒトIgG2もしくはヒトIgG4のFcを含むことができる。
【0084】
好ましくは、sNPP1融合タンパク質はNPP1コンポーネント及び融合タンパク質の半減期を増加させるペプチド、最も好ましくは免疫グロブリンのFc(例えばFcまたはヒトIgG1)を含む。本明細書で用いる場合、「融合タンパク質の半減期を増加させるタンパク質」は、可溶性NPP1または生物活性断片に融合させた場合、可溶性NPP1ポリペプチド単独またはNPP1生物活性断片単独の半減期と比べて、可溶性NPP1ポリペプチドまたは生物活性断片の半減期を増加させるタンパク質のことをいう。
【0085】
一実施形態において、NPP1融合タンパク質の半減期は、NPP1ポリペプチドまたは生物活性断片単独の半減期と比べて50%増加している。別の実施形態では、NPP1融合タンパク質の半減期は、NPP1ポリペプチドまたは生物活性断片単独の半減期と比べて60%増加している。別の実施形態では、NPP1融合タンパク質の半減期は、NPP1ポリペプチドまたは生物活性断片単独の半減期と比べて70%増加している。別の実施形態では、NPP1融合タンパク質の半減期は、NPP1ポリペプチドまたは生物活性断片単独の半減期と比べて80%増加している。別の実施形態では、NPP1融合タンパク質の半減期は、NPP1ポリペプチドまたは生物活性断片単独の半減期と比べて90%増加している。
【0086】
別の実施形態では、NPP1融合タンパク質の半減期は、NPP1ポリペプチドまたは生物活性断片単独の半減期と比べて2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、または10倍増加している。タンパク質または融合タンパク質の半減期を求める方法は当該技術分野において公知である。例えば、Zhou et al.,Determining Protein Half-Lives,Methods in Molecular Biology 2004,284,67-77にタンパク質の半減期の試験方法が多数開示されている。必要に応じて、半減期を延長するポリマーまたは他の好適な化合物に融合タンパク質を結合させることができ、例えばポリエチレングリコール(PEG)などをNPP1融合タンパク質に結合させることができる。
【0087】
一実施形態において、融合タンパク質の半減期を増加させるペプチドはCTP配列である(Fares et al.,2010,Endocrinol.,151(9):4410-4417;Fares et al.,1992,Proc.Natl.Acad.Sci,89(10):4304-4308;及びFuruhashi et al.,1995,Molec.Endocrinol.,9(1):54-63も参照)。
【0088】
別の実施形態では、融合タンパク質の半減期を増加させるペプチドはIgのFcドメインである。
【0089】
融合パートナーは、融合タンパク質を所望の臨床的または生物学的に重要な部位(例えば石灰化の部位)に標的化するためにも選択され得る。例えば、骨に対して高い親和性を有するペプチドが米国特許第7,323,542号に記載されており、その教示全体を参照により本明細書に援用する。石灰化部位へのタンパク質標的化を増加させることのできるペプチドは、連続した一連の少なくとも約4個の酸性アミノ酸、例えばグルタミン酸またはアスパラギン酸を含有することができる。典型的には、融合タンパク質を石灰化部位に標的化するペプチドは、4~20個の連続した酸性アミノ酸、例えば4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個のグルタミン酸またはアスパラギン酸から選択される連続アミノ酸を含むことになるであろう。ペプチドは、グルタミン酸残基のみ、アスパラギン酸残基のみからなることができるか、またはグルタミン酸残基及びアスパラギン酸残基の混合物とすることができる。石灰化の部位に標的化するための特に好ましい部分はAsp10(配列番号18)である。
【0090】
一実施形態において、本発明のNPP1融合タンパク質は、NPP1ポリペプチド及び石灰化部位へのタンパク質標的化を増加させる部分、例えば連続した一連の酸性アミノ酸、例えばグルタミン酸またはアスパラギン酸などを含む。
【0091】
融合タンパク質に用いるのに好適なペプチドリンカーが公知であり、典型的には柔軟で長い構造を取り入れ、NPP1コンポーネントまたは融合パートナーの機能を妨げない。ペプチドリンカー配列はGly、His、Asn及びSer残基を任意の組合せで含有し得る。有用なペプチドリンカーとしては、限定はしないがポリGly、ポリHis、ポリAsn、またはポリSerが挙げられる。他のほぼ中性のアミノ酸、例えばThr及びAlaなどをリンカー配列中に用いることもできる。リンカーとして有用に利用することのできるアミノ酸配列としては、Maratea et al.,Gene 1985,40,39-46;Murphy et al.,Proc Natl Acad Sci USA 1986,83,8258-8262;米国特許第4,935,233号及び米国特許第4,751,180号に開示されているものが挙げられる。他の好適なリンカーは自然発生タンパク質から得ることができ、例えば免疫グロブリンのヒンジ領域などである。好ましい合成リンカーは(GlySer)であり、ここでnは1、2、3、4、5、6、7、8、9または10である(配列番号19)。nは3または4であることが好ましい。例えば、いくつかの実施形態において、リンカーは(GlySer)(配列番号16)であり、融合タンパク質はアミノ酸配列GlyGlyGlyGlySerGlyGlyGlyGlySerGlyGlyGlyGlySer(配列番号16)のリンカーを含む。典型的には、リンカーは1~約50アミノ酸残基長、または1~約25アミノ酸長である。多くの場合、リンカーは約8~約20アミノ酸長である。
【0092】
好ましいNPP1融合タンパク質は、N末端からC末端までNPP1コンポーネント、任意によりリンカー、免疫グロブリンのFc領域(例えば任意によりヒンジまたはその一部を含むヒトIgG1 Fc)、任意により第2リンカー、及び任意により標的化部分を含む。したがって、Fc領域及び任意による標的化部分が存在する場合、それぞれNPP1コンポーネントに対してC末端側に位置する。NPP1コンポーネントは好ましくはNPP1のシステインリッチ領域及び触媒ドメインを含み、N末端サイトゾルドメイン及び膜貫通ドメインを欠き、任意によりC末端領域を含有する。
【0093】
好ましい融合タンパク質は、N末端からC末端まで、ヒトNPP1のシステインリッチドメイン、触媒ドメイン及びC末端領域を含むNPP1コンポーネント;ならびにヒト免疫グロブリンのヒンジを含むFc領域を含む。Fc領域はヒトIgG1に由来することが好ましい。特定の実施形態において、融合タンパク質は、配列番号3に対する少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。このタイプの好ましい融合タンパク質は配列番号3のアミノ酸配列を有する。
【0094】
別の好ましい融合タンパク質は、N末端からC末端まで、ヒトNPP1のシステインリッチドメイン、触媒ドメイン及びC末端領域を含むNPP1コンポーネント;リンカー(例えば(GlySer)(配列番号16));ならびにヒト免疫グロブリンのヒンジを含むFc領域を含む。Fc領域はヒトIgG1に由来することが好ましい。
【0095】
別の好ましい融合タンパク質は、N末端からC末端まで、ヒトNPP1のシステインリッチドメイン、触媒ドメイン及びC末端領域を含むNPP1コンポーネント;ヒト免疫グロブリンのヒンジまたはその一部を含むFc領域;ならびに融合タンパク質を石灰化の部位に標的化する部分を含む。Fc領域はヒトIgG1に由来することが好ましい。融合タンパク質を石灰化の部位に標的化する部分はAsp10(配列番号18)であることが好ましい。Fc領域はヒトIgG1に由来し、融合タンパク質を石灰化の部位に標的化する部分はAsp10(配列番号18)であることがより好ましい。特定の実施形態において、融合タンパク質は、配列番号4に対する少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。このタイプの好ましい融合タンパク質は配列番号4のアミノ酸配列を有する。
【0096】
別の好ましい融合タンパク質は、N末端からC末端まで、ヒトNPP1のシステインリッチドメイン、触媒ドメイン及びC末端領域を含むNPP1コンポーネント;リンカー(例えば(GlySer)(配列番号16));ヒト免疫グロブリンのヒンジまたはその一部を含むFc領域;ならびに融合タンパク質を石灰化の部位に標的化する部分を含む。Fc領域はヒトIgG1に由来することが好ましい。融合タンパク質を石灰化の部位に標的化する部分はAsp10(配列番号18)であることが好ましい。Fc領域はヒトIgG1に由来し、融合タンパク質を石灰化の部位に標的化する部分はAsp10(配列番号18)であることがより好ましい。
【0097】
別の好ましい融合タンパク質は、N末端からC末端まで、ヒトNPP1のシステインリッチドメインの一部、触媒ドメイン及びC末端領域を含むNPP1コンポーネント;任意によりリンカー(例えば(GlySer)(配列番号16));ヒト免疫グロブリンのヒンジまたはその一部を含むFc領域を含む。Fc領域はヒトIgG1に由来することが好ましい。特定の実施形態において、融合タンパク質は、配列番号9、配列番号10、配列番号11、または配列番号12に対する少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。このタイプの好ましい融合タンパク質は配列番号9、配列番号10、配列番号11または配列番号12のアミノ酸配列を有する。
【0098】
特に好ましい態様において、配列番号3の融合タンパク質を本明細書に記載の方法に従って投与する。他の好ましい態様において、配列番号4の融合タンパク質を本明細書に記載の方法に従って投与する。他の好ましい態様において、配列番号9の融合タンパク質を本明細書に記載の方法に従って投与する。他の好ましい態様において、配列番号10の融合タンパク質を本明細書に記載の方法に従って投与する。他の好ましい態様において、配列番号11の融合タンパク質を本明細書に記載の方法に従って投与する。他の好ましい態様において、配列番号12の融合タンパク質を本明細書に記載の方法に従って投与する。
【0099】
本発明の融合タンパク質は、当該技術分野において公知の組換え技術または化学的結合を含めた標準的な方法を用いて調製することができる。本発明の核酸及びタンパク質を単離及び特徴づけるのに有用な技術が当業者には公知であり、過度な実験をすることなく使用するための好適な手順を選択するために、標準的な分子生物学及び生化学のマニュアルを参照することができる。例えば、Sambrook et al.,1989,“Molecular Cloning:A Laboratory Manual”,2nd ed.,Cold Spring Harborを参照されたいが、その内容全体を参照により本明細書に援用する。
【0100】
単離組換えヒトsNPP1、その断片及び融合タンパク質は任意の有用なタンパク質発現系で産生することができ、これには限定はしないが、細胞培養(例えばCHO細胞、COS細胞、HEK203)、細菌、例えばEscherichia coli(E.coli)など、ならびに限定はしないが哺乳類ならびに鳥類(例えばニワトリ、ウズラ、アヒル及びシチメンチョウ)を含めた遺伝子導入動物が挙げられる。発現のために、sNPP1をコードするコンストラクトは、sNPP1の配列を有するフレーム中に好適なシグナル配列(例えばヒトIg重鎖、NPP2、NPP4、NPP7または例えばヒト血清アルブミン由来)を含み、好適な発現制御要素と作用可能に連結している。
【0101】
sNPP1は、その融合タンパク質及び生理学的に許容可能な塩形態を含め、典型的には本明細書に記載の方法に従う投与のための医薬組成物に製剤化される。医薬組成物は、典型的には医薬品として許容可能な担体または賦形剤を含む。複合分子を含めたそのような担体を含む組成物は、公知の従来の方法(例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences,14th ed.,Mack Publishing Co.,Easton,PAを参照)によって製剤化するが、その教示全体を参照により本明細書に援用する。担体は希釈剤を含み得る。一実施形態において、医薬品担体は液体とすることができ、融合タンパク質は溶液の形態であり得る。医薬品担体はワックス、脂肪、またはアルコールとすることができる。別の実施形態では、医薬品として許容可能な担体は、粉末、凍結乾燥粉末、または錠剤の形態の固体であり得る。一実施形態において、担体はリポソームまたはマイクロカプセルを含み得る。医薬組成物は、希釈剤で再構成して注入するための滅菌凍結乾燥粉末の形態とすることができる。希釈剤は注射用水、注射用静菌水、または滅菌生理食塩水とすることができる。凍結乾燥粉末は、融合タンパク質の溶液を凍結乾燥させて乾燥形態のタンパク質を得ることによって製造することができる。当該技術分野において公知のように、凍結乾燥タンパク質は一般にタンパク質の溶液よりも安定性が高く、長い有効期間を有する。
【実施例
【0102】
以下の実施例によって本発明をさらに例証する。実施例は例示目的にすぎず、いかなる形でも本発明を限定する意図はなく、またそのように解釈すべきではない。
【0103】
方法
動物:
6週齢の野生型雄C57Bl/6Jマウスを用いた。これらのマウスの平均体重は21~22gの範囲であった。皮下(SC)または静脈内(IV)注入によって5mg/kgの濃度でsNPP1-Fc[1.04mg/ml]またはsNPP1-Fc-D10[1.03mg/ml]をマウスに投与した。表1
【0104】
NPP1を欠く2つの異なる系統のマウスを用いた。Enpp1-/-マウスは、Lomashvili,K.A.et al.,Kidney Int 2014,85,1351-1356に以前から記載されていた。動脈石灰化を加速させるために、従来から記載されているように中性pHとなる比でNaHPO及びNaHPOの混合物を用いて1.5%のリン酸塩(最終リン含有率:2%)を食餌に追加した。(O’Neill,W.C.et al.,Kidney Int 2011,79,512-517)。
【0105】
慢性腎臓病(CKD)モデル:野生型スプレイグドーリーラットをCKDモデル研究に用いた。0.25~0.75%のアデニン及び高レベルのリン(通常食の0.4%に対して0.75~0.9%のリン)を含有する食餌をラットに与えた。過剰な食餌性アデニンは通常のアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼサルベージ経路を飽和させ、代わりに2,8-ジヒドロキシアデニンへと代謝され、これが低溶解性ゆえに尿細管で沈殿して結晶を形成する。こうした結晶は尿細管の傷害、炎症、閉塞、及び腎臓の線維症を引き起こし、ヒトCKDと一致する表現型につながる。結果として生じる腎損傷及び腎不全はホスフェート排泄障害につながり、その結果、異常に高い血清Piレベル及びミネラル代謝障害、例えば軟組織の全身性石灰化などとなる。食餌中の高レベルのリンは動脈石灰化を加速させる。高アデニン食のラットは尿毒症、高リン血症、続発性副甲状腺機能亢進症、腎性骨異栄養症、及び血管石灰化を発症する。
【0106】
血漿調製:
血液を心臓穿刺によって採取し、直ちに混合した(9:1体積:体積の血液対110mMクエン酸溶液)。血清採取は血小板からの過剰なピロホスフェート(PPi)の放出をもたらし、凝固のEDTA阻害はアッセイに干渉し得る。クエン酸添加血のチューブを数分間ニューテーションさせ、その後2,000×gで10~15分間遠心した。最上層の血漿を収集し(100~300μl)、およそ200μlを10kDaセントリコンに加えた。その後、これらのチューブを12,000×gで10分間遠心して血漿を除タンパクした。遠心後、フロースルー液を新しいチューブ中に収集した。血漿及び除タンパクサンプルを分析まで-20℃で凍結させた。
【0107】
蛍光PPiアッセイ:
このアッセイではPPi濃度に比例して依存する蛍光強度を有する蛍光発生PPiセンサーを用いる。10kDa濾過サンプル(4μl)を46μlのアッセイバッファーに加えた。PPiセンサー原液(200×)をアッセイバッファーで希釈し、この50μlをサンプルに加えた。室温での20分間のインキュベーション後、黒無地96ウェルプレートで蛍光(Ex/Em=316/456nm)を読み取った。
【0108】
アッセイ:
NPP1活性を従来から記載されているように測定した。(Villa-Bellosta,R.et al.,Am J Physiol Heart Circ Physiol 2011,301,H61-H68)。簡潔に述べると、37℃で10分間、200nMのATP及び1.5uCi[32P]ATP/mlを含有する20倍量の生理的緩衝液に血漿を加えた。その後、ポリエチレンイミンセルロース上での薄層クロマトグラフィーによって反応物を分離し、生成されたPPiの量をオートラジオグラムのデンシトメトリーによって測定した。30kDカットオフフィルターを通して新たに濾過した血漿、ならびにUDPグルコースピロホスホリラーゼによるPPi及びUDPグルコースのUTP及びグルコース-1-リン酸への変換に基づく酵素アッセイを用いて、従来から記載されているように血漿PPiを測定した(Lomashvili,K.A.et al.,Kidney Int 2014,85,1351-1356)。すべての使用した水はヒドロキシアパタイトで前処理してコンタミPPiを除去した。従来から記載されているように、乾燥大動脈のHCl酸抽出物における熱量測定によって大動脈カルシウムを測定した。(Lomashvili,K.A.et al.,Kidney Int 2014,85,1351-1356)。カルシウム含有量を乾燥重量に正規化し、正常マウス大動脈のカルシウム含有量を引いた後で石灰化におけるわずかな減少を求めた。
【0109】
血液細胞分画:
白血球及び血小板を調製するために、新たに採取したヘパリン添加ヒト血液を250gで15分間室温にて遠心分離した。血漿を除去し、2200gで12分間遠心分離して血小板を得た。最初の遠心分離からのペレットを通常生理食塩水に再懸濁して元の血液量とし、4倍量の溶解バッファー(155mmol/L塩化アンモニウム;10mmol/L炭酸水素ナトリウム;0.1mmol/L EDTA、pH7.4)を5~10分間氷上で加えた。これを遠心分離及び上清除去の後で繰り返し、最後の遠心分離後に精製白血球を得た。
【0110】
統計解析:
連続変数を平均値±標準誤差として表し、差異をスチューデントのt検定によって判定する。大動脈カルシウム含有量は対数変換してから解析した。
【0111】
実施例I
【0112】
背景:sNPP1のバリアントを投与した野生型マウスのPPiレベルが上昇するかどうか判定するために実験を行った。これについて、単一の静脈内注入治療では1時間の時点を選択し、単一の皮下注入治療では4時間の時点を選択した。abcam PPi蛍光アッセイによってPPiレベルを定量測定した。
【0113】
結果:1分間の読取り(合計9回の読取り)の生データを平均し、正常血漿(WT)に対する%に変換した。表2
表2
【0114】
図5に示すように、野生型マウスにおけるsNPP1タンパク質バリアント(5mg/kg)の静脈内または皮下注入は、正常血漿レベルを超えるPPi濃度の増加を示す。図5は、sNPP1-FcまたはsNPP1-Fc-D10の静脈内投与後(注入後1時間)及び皮下投与後(注入後4時間)の野生型マウスにおける血中ピロホスフェートレベルを示す。
【0115】
実施例II
21日間にわたって1日おきに溶媒または6mg/kgのsNPP1-Fc-D10でEnpp1(-/-)ノックアウトマウスを皮下治療した。雄及び雌について大動脈カルシウムレベルを示す。図6は、sNPP1-Fc-D10で治療したEnpp1(-/-)マウスにおける大動脈石灰化の有効な防止を示す。
【0116】
実施例III
Enpp1(-/-)ノックアウトマウスを6mg/kgのsNPP1-Fc-D10で静脈内治療して、血中PPi及び酵素活性レベルを測定した。図7に示すように、0、4、24、48、及び72時間の時点における血漿を収集してNPP1活性(破線)及びPPiレベル(実線)を分析した。野生型PPiレベルは2.18μMと測定された(データは図示せず)。上部から下部までの破線は野生型、ヘテロ接合型Enpp1(+/-)、及びホモ接合型Enpp1(-/-)マウスのPPiレベルを示す(Li et.al,2013)。sNPP1-FcのプロファイルはsNPP1-Fc-D10のものと類似していた。
【0117】
実施例IV
野生型及びEnpp1asjマウスを出生時から高リン、低マグネシウム食条件に置いた。14日齢から1日おきに溶媒またはsNPP1-Fc(5mg/kg)を皮下投与した。カプランマイヤー生存曲線により、asjマウスの50%超は6週以前に死亡し、すべての動物は9週までに死亡したことが示された。これに対して、sNPP1-Fc治療動物の50%は7週を経過して生存し、9週の時点でも生存したままである。図8は、溶媒処理マウスと比較した5mg/kgのsNPP1-Fcで治療したEnpp1asjホモ接合型雄マウスの生存率の増加を示す。
【0118】
実施例V
野生型及びEnpp1asjマウスを出生時から高リン、低マグネシウム食条件に置き、14日齢から1日おきに溶媒またはsNPP1-Fc(5mg/kg)で皮下治療して成長速度を求めた。図9A及び図9Bに示すように、野生型(実線)及びEnpp1asj(丸)マウスの体重増加率を2週齢から9週齢までプロットした。図9A及び図9Bは、溶媒処理マウスと比較した、5mg/kgのsNPP1-Fcで治療したEnpp1asj雄マウスの体重増加率の増加を示す。溶媒群(上パネル)では、9週の時点ですべてのEnpp1asj動物は死亡した(白丸)。これに対して、sNPP1-Fc治療群では、9週経過時に5匹のEnpp1asjマウスが生存しており(黒丸)、5匹が死亡していた(白丸)。図10A~10Cは、野生型(図10A、上)、溶媒処理Enpp1asj図10B、中央)、sNPP1-Fc治療(5mg/Kg)Enpp1asj図10C、下)マウスの写真を示す。
【0119】
実施例VI
野生型及びEnpp1asj雄マウスにおいて、ホスフェート代謝に対するバイオマーカーであるFGF-23(線維芽細胞成長因子23)を測定した。野生型及びEnpp1asjマウスを出生時から高リン、低マグネシウム食(TD.00442、Harlan)条件に置いた。18日齢から1日おきに溶媒またはsNPP1-Fc-D10(5mg/kg)を皮下投与した。すべての血清を投与の24時間後に収集し、マウスFGF-23 ELISAキット(株式会社カイノス、東京、日本)を用いて分析した。Enpp1+/+-溶媒(黒実線)、Enpp1asj/asj-溶媒(黒点線)、及びEnpp1asj/asj-sNPP1-Fc-D10(灰実線)マウスにおいて、ベースライン(0日目)、治療の開始前及び治療の経過中にFGF-23レベルを測定した。
【0120】
疾患進行の経過中(9日目[27日齢]までに)、Enpp1asj/asjマウスにおいてFGF-23レベルは上昇した。しかし、5mg/kgのsNPP1-Fc-D10で治療したEnpp1asj/asjマウスは、治療の17日目までに溶媒処理群と比較してFGF-23レベルの減少を示した。は一元配置ANOVAまたはスチューデントのt検定によるp<0.05である。図11は、溶媒処理Enpp1asj(中央)、sNPP1-Fc(5mg/Kg)治療Enpp1asj(下)マウスにおける線維芽細胞成長因子のレベルを示す。
【0121】
実施例VII インビトロ及びインビボ活性
【0122】
図13Aに示すように、組換えsNPP1-Fc-D10はインビトロでATPをPPiに完全に加水分解し、PPiのオルトホスフェートへの加水分解はなかった。
【0123】
血漿中の酵素活性を図13Bに示す。野生型マウスの血漿において相当な活性が見られ、3分の1をわずかに超えるATPが10分間のうちにPPiに変換されたが、これは7.6±1.0nmol/h/mlの活性に相当する。残りはヌクレオチドトリホスファターゼによってオルトホスフェートに変換された。Enpp1-/-マウス由来の血漿はNPP1を本質的に欠いており、少量のPPiは[32P]ATPにコンタミしたPPiを表していた。NPP1(5mg/kg)の静脈内注入の2時間後において、活性は10.3±0.3nmol/h/mlまで顕著に増加し、これに伴い0.07±0.02から1.00±0.14uMまで血漿PPiが増加したが、比較となる野生型マウスにおけるレベルは2.39±0.37uMである。
【0124】
図13Cに示すように、野生型またはEnpp1-/-マウスいずれに由来する大動脈においてもNPP1活性は検出できず、NPP1の注入後も増加しなかった。組換えNPP1の投与後の肝臓においても活性は検出されなかった。
【0125】
Enpp1-/-マウスへの5mg/kgの皮下注入後における血漿NPP1活性及びPPi濃度の時間経過を図14に示す。NPP1活性及びPPi濃度は注入後12時間でピークに達し、野生型同腹仔におけるものに対してそれぞれ195%及び41%のレベルとなった。これらのレベルは急速に減少し、24時間後には実質的に検出不可能であった。
【0126】
図15に示すように、sNPP1-Fc-D10(5mg/kg)の皮下注入では血漿PPiレベルと血漿NPP1活性との間の相関関係が示される。血漿PPiの血漿NPP1との相関関係はPPiが循環において生成されたことを示唆していた。新鮮なヒト血液を組換えNPP1とともにインキュベートしてから血漿中のPPiを測定することによってこのことを調べた。マウスからは限られた量の血液しか得られないためヒト血液を用いた。マウスにおける注入後に得られたものと同様のレベルが得られるように、血液に加えるNPP1の量を計算した。
【0127】
図16Aは、組換えNPP1の投与は、2時間全血に加えた場合に血漿PPiを増加させたが、血漿のみに加えた場合には増加させなかったことを示し、細胞要件を示唆している。他の細胞に対する赤血球の役割を調べるために、血液を遠心分離して、バフィーコートを残した場合、または残さない場合それぞれで血漿を除去した。その後、HEPES緩衝生理食塩水を加えて元のヘマトクリット値に戻した。図16Bに示すように、生成はバフィーコートを残した場合のみ生じたため、赤血球ではなく白血球または血小板の必要性を示唆していた。図16Cに示すように、HEPES緩衝生理食塩水中での単離白血球または血小板のインキュベーションでは両方とも、放出されたかまたは生成されたいずれかのPPiが示されたが、外因性NPP1に反応した合成は白血球のみで生じた。
【0128】
実施例VIII 治療モデル
【0129】
A.NPP1欠損
図17に示すように、加齢Enpp1-/-マウスを高ホスフェート食条件に置き、1日おきに溶媒またはsNPP1-Fc-D10(6mg/kg)で皮下治療して、組換えNPP1の動脈石灰化に対する効果を判定した。同量の溶媒のみを与えた同性及びほぼ同齢のマウスと治療した各マウスをペアにした。18日後において、平均大動脈カルシウム含有量は、溶媒処理マウスで61±30nmol/mgであり、組換えNPP1で治療したマウスでは8.8±1.0nmol/mgであった(p=0.016)。野生型同腹仔における含有量は6.3±3.4nmol/mgであった(n=16)。対照大動脈8つのうち6つ(80±37nmol/mg)において、及び治療大動脈では1つのみ(15nmol/mg)で含有量が高かった(野生型同腹仔よりも2標準偏差高い)。対照大動脈において石灰化が存在したペアのうち、これは91±2%の石灰化の減少を表していた。
【0130】
長期間にわたる複数回の注入後にNPP1の蓄積があるかどうか確認するために、血漿NPP1活性及びPPiを屠殺時(注入の24時間後)に測定したが、両方とも検出不可能であった。別の一群のEnpp1-/-マウスにおいて、大動脈NPP1活性は、組換えNPP1を1日おきに3回注入した後で検出不可能であった。
【0131】
B.慢性腎臓病
この実施例は、尿毒症ラットモデルの慢性腎臓病(CKD)の治療におけるsNPP1-Fc-D10の有効性を開示する。腎不全を有する尿毒症ラットにおける動脈石灰化に対する組換えNPP1の効果を判定するために、尿毒症ラットに高アデニン食を与え、図18に示すように対照またはsNPP1-Fc-D10(5mg/kg)を1週間に5回皮下注入した。治療の21日後において、平均大動脈カルシウム含有量は、対照処理ラットで25.7±4.9nmol/mgであり、組換えNPP1で治療したラットでは7.0±1.0nmol/mg(p=0.0068)であった。正常大動脈カルシウム含有量は5nmol/mgであった。
【0132】
実施例VII及びVIIIは、sNPP1の活性、ならびにエクトヌクレオチドピロホスフェートピロホスホリラーゼ欠損及び慢性腎臓病のモデルにおけるsNPP1の使用の有効性を実証している。これらの実施例は、PPiの一時的な増加が血管石灰化及びNPP1欠損の有効な治療に十分であることを示す。
均等物
本発明を特にその例示的実施形態に関して提示及び記載したが、添付の特許請求の範囲に包含される本発明の範囲から逸脱することなく、形態及び詳細の様々な変更が可能であることを当業者であれば理解するであろう。
図1
図2
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図6
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図12A
図12B
図12C
図12D
図12E
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図12G
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【配列表】
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