(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-21
(45)【発行日】2025-05-29
(54)【発明の名称】凍結粉砕装置
(51)【国際特許分類】
B02C 18/10 20060101AFI20250522BHJP
B02C 19/18 20060101ALI20250522BHJP
【FI】
B02C18/10 ZAB
B02C19/18 A
(21)【出願番号】P 2021212026
(22)【出願日】2021-12-27
【審査請求日】2024-07-24
(73)【特許権者】
【識別番号】520284665
【氏名又は名称】オルイー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085257
【氏名又は名称】小山 有
(72)【発明者】
【氏名】小林 博幸
(72)【発明者】
【氏名】木村 礼
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 弘次
(72)【発明者】
【氏名】塚原 好夫
(72)【発明者】
【氏名】村山 麻子
(72)【発明者】
【氏名】小堀 友輔
【審査官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第211079131(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2018/0209877(US,A1)
【文献】特開昭64-007959(JP,A)
【文献】登録実用新案第3152450(JP,U)
【文献】特開2003-153611(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 18/10
B02C 19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体窒素を用いる凍結粉砕機であって、この凍結粉砕機はプラスチック
片の粉砕対象物と液体窒素を入れたカップをセットする粉砕機本体と、カップの上面開口を塞ぐ蓋体とカップ内の粉砕対象物を回転によって粉砕する粉砕刃を備えた上半体とからなり、この上半体はレバー操作によってガイドに沿って上下動可能とされ且つ上方位置に待機すべく弾発部材にて上方に付勢されていることを特徴とする凍結粉砕機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体窒素を用いてプラスチック片などを凍結して粉砕する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックを再利用するには、プラスチック片を細かく粉砕し、溶融成形することになるが、プラスチック片を粉砕する手段の1つとして凍結粉砕が利用されている。
【0003】
特許文献1には、液体窒素ではなくドライアイスを用いて理化学分析分野や食品分野における分析用試料を粉砕する凍結粉砕機が開示されている。この凍結粉砕機は対向する2枚の金属板にて間が真空となった二重構造のボックス状容器を形成し、このボックス状容器内に回転する粉砕刃を設けるとともに、ガス抜き穴を備えた蓋体でボックス状容器の上面開口を覆う構造となっている。
【0004】
特許文献2には、液体窒素を用いて生薬を粉砕する装置が記載されている。この粉砕装置は生薬搬送部に沿って複数の液体窒素噴霧部を設け、搬送中に生薬を凍結し、この凍結した生薬を搬送部の下流側にある粉砕装置で粉砕するようにしている。
【0005】
非特許文献1に示される凍結粉砕機は現在市販されている液体窒素を用いる凍結粉砕機である。
この凍結粉砕機は、
図6に示すように、装置本体とこの装置本体に対し横軸を介して回動可能とされた上半体とならなり、装置本体にはプラスチック片と液体窒素を入れるカップがセットされ、上半体にはカップの蓋と、粉砕刃が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-097384号公報
【文献】特開2004-130308号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】https://www.monotaro.com/g/04181889/?t.q=%E5%87%8D%E7%B5%90%E7%B2%89%E7%A0%95%E6%A9%9F
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1にあっては、ボックス状容器内に食品などの試料とドライアイスを入れた後に、容器開口を蓋体で閉じて粉砕刃を回転させるのであるが、粉砕刃が容器内に配置されているため、ドライアイス程度であれば問題はないが、凍結媒体として液体窒素を用いた場合には容器と刃の回転部分との境界部が凍結するため液体窒素に用いることはできない。
【0009】
特許文献2に開示される凍結粉砕装置は、凍結対象が生薬であるため、段階的な凍結を行う必要があり、そのため搬送路を設け、この搬送路に沿って複数の液体窒素噴霧部を設けている。このため、装置全体が大型化し、プラスチック片を効率よく粉砕する装置としては採用できない。
【0010】
非特許文献1に開示される凍結粉砕機は、液体窒素を用いてプラスチック片を凍結粉砕する装置で小型化されている。この凍結粉砕機で効率よくプラスチック片を粉砕するには、プラスチック片を収納するカップの内周に接触しない範囲で粉砕刃の長さを長くする必要がある。
しかしながら、粉砕刃を備えた上半体を装置本体に対し、横軸を中心に回動可能とし、上半体を回動させて蓋体を閉じカップ内に粉砕刃が入る構造とすると、多数回使用している間に摩耗などによって回転に若干の遊びが生じてしまい、この若干の遊びによって粉砕刃の先端がカップ内周面に接触する不利がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の問題を解消するため本発明に係る凍結粉砕機は、プラスチック片などの粉砕対象物と液体窒素を入れたカップをセットする粉砕機本体と、前記カップの上面開口を塞ぐ蓋体とカップ内の粉砕対象物を回転によって粉砕する粉砕刃を備えた上半体とからなり、上半体はレバー操作によってガイドに沿って上下動可能とされ且つ上方位置に待機すべくスプリングなどの弾発部材にて上方に付勢されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る凍結粉砕機は、小型で設置しやすく更に装置正面に出ているレバー操作のみで粉砕刃を備えた上半体を昇降できるため使用しやすい。
【0013】
また、上半体はガイドロッドに沿って上下動するため、回動によって開閉する構造の従来の凍結粉砕機と比較して、長年使用しても上半体に設けた粉砕刃とカップとの位置ずれが発生することがなく、粉砕刃が回転中にカップ内面に接触することがない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る凍結粉砕機の操作レバーを上げた状態の正面図
【
図2】本発明に係る凍結粉砕機の操作レバーを下げた状態の正面図
【
図3】筐体を外して内部が見える状態で操作レバーを上げた状態の側面図
【
図4】筐体を外して内部が見える状態で操作レバーを下げた状態の側面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明の好適な実施例を添付図面に基づいて説明する。
図1、
図2に示すように、凍結粉砕機は全体がボックス状をなし、正面パネルの一側には操作盤1が嵌め込まれている。この操作盤1にはタイマー操作摘み2、モータ回転時に点灯するLED表示灯3、粉砕機のメインスイッチ(過電流保護のブレーカスイッチ)4、メインスイッチ4がオンの時に点灯する緑色LED表示灯5が設けられている。
【0016】
また、正面パネルの下部には開口6が形成され、この開口6を介して装填部材7が出し入れ可能とされている。この装填部材7には把持部8が設けられるとともに液体窒素とプラスチック片を入れるカップ9を正確に位置決めするための凹部が形成されている。
【0017】
開口6の左右には上下方向のスリット10、10が形成され、これらスリット10、10から突出するリンク片11、11間に後述する上半体を昇降させるレバー12が取付けられている。
【0018】
図3~
図5に示すように、正面パネル裏側のベースプレート13には、前記装填部材7の収納部14が設けられ、この収納部14を囲むように4本のガイドロッド15…が立設されている。
【0019】
ガイドロッド15…には凍結粉砕機の上半体が昇降動可能に支持されている。この上半体は所定位置にセットされたカップ9の上面開口を塞ぐプレート状蓋体16とこのプレート状蓋体16の上に台17を介して設置されたモータ収納部18からなり、モータ収納部18内にはモータの他に減速ギヤなども収納されている。
【0020】
モータ収納部18の下端からはモータ軸19が突出し、このモータ軸19にはカップリング20を介して粉砕刃21が取付けられている。粉砕刃21は蓋体16よりも下方に位置し、上半体が下降し蓋体16がカップ9上面を密閉した時点でカップ9内に位置する。
【0021】
前記ベースプレート13上には支持プレート22、22が固定され、これら支持プレート22、22の上端に前記リンク片11、11の基端が回動自在に支持されている。リンク片11にはカム孔23が形成され、このカム孔23に前記プレート状蓋体16の側面に設けたピン24が係合している。
【0022】
また、前記ガイドロッド15…の上端部は環状プレート25に固着され、4本のガイドロッド15…の位置がずれないようにされている。そして環状プレート25と前記プレート状蓋体16の間にはスプリング26を掛け渡し、平常時はスプリング26の弾発力でプレート状蓋体16を含めた上半体が上方に位置する構成になっている。
【0023】
背面図において、モータ収納部18にはモータ電源ケーブル27がつながり、前記収納部14には安全スイッチの電源ケーブル28がつながり、粉砕刃が下方位置にあるときはオンで粉砕刃が上方位置にあるときは自動的にオフとなるようにしている。
【0024】
以上において、装填部材7とカップ9を凍結粉砕機外に取り出し、カップ9内にプラスチック片などを入れ、更にカップ9内に液体窒素を注いで凍結させる。次いで、プラスチック片と液体窒素が入ったカップ9を装填部材7とともに開口6から収納部14内に入れ、メインスイッチ4をオンとするとともに、レバー12を押し下げる。
【0025】
レバー12を押し下げるとレバー12の回動がカム機構を介して上下動に変換されて上半体に伝わり、プレート状蓋体16とモータ収納部18が下降し、モータの軸にカップリングを介して取り付けられている粉砕刃21がカップ9内に位置し同時にカップ9上面開口は閉じられ、内部の凍結したプラスチック片は粉砕刃21の回転によって粉砕される。
【0026】
タイマーで所定時間粉砕した後、レバー12を上げてカップ9から粉砕刃21を上方に移動すると、自動的に電源はオフとなり、この状態でカップ9を取り出す。
【符号の説明】
【0027】
1…操作盤、2…タイマー操作摘み、3…モータ回転時に点灯するLED表示灯、4…粉砕機のメインスイッチ、5…メインスイッチがオンの時に点灯する緑色LED表示灯、6…開口、7…装填部材、8…把持部、9…カップ、10…スリット、11…リンク片、12…レバー、13…ベースプレート、14…収納部、15…ガイドロッド、16…プレート状蓋体、17…台、18…モータ収納部、19…モータ軸、20…カップリング、21…粉砕刃、22…支持プレート、23…カム孔、24…ピン、25…環状プレート、26…スプリング、27…モータ電源ケーブル、28…安全スイッチの電源ケーブル。