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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-21
(45)【発行日】2025-05-29
(54)【発明の名称】情報処理方法及び情報処理システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20250522BHJP
【FI】
G08G1/00 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022545327
(86)(22)【出願日】2021-06-03
(86)【国際出願番号】 JP2021021255
(87)【国際公開番号】W WO2022044476
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2024-03-21
(31)【優先権主張番号】63/070,573
(32)【優先日】2020-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】P 2021073610
(32)【優先日】2021-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】514136668
【氏名又は名称】パナソニック インテレクチュアル プロパティ コーポレーション オブ アメリカ
【氏名又は名称原語表記】Panasonic Intellectual Property Corporation of America
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】河本 弘和
(72)【発明者】
【氏名】村本 衛一
(72)【発明者】
【氏名】東島 勝義
【審査官】上野 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-077222(JP,A)
【文献】山本 真之 Masayuki YAMAMOTO,価値の創造 都市部における自動運転ライドシェアのシミュレーション分析,DENSO TECHNICAL REVIEW 2019 Vol.24,日本,株式会社デンソー,2019年11月30日,第24巻,36~41頁
【文献】山碕 達己 Tatsuki Yamazaki,高密度空間における自動運転車群による旅客輸送サービスの最適化 Optimization of passenger transportation services by autonomous vehicles in high density environments,電気学会研究会資料 システム研究会 ST-19-054~058,日本,一般社団法人電気学会 The Institute of Electrical Engineers of Japan(IEEJ) ,2019年12月17日,5~10頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータにより実行される情報処理方法であって、
人又は配送物が載る移動体の動き及び人又は配送物の移動需要のシミュレーションを、第1変更前後の前記移動体の運行パラメタにしたがって実行して少なくとも2つの第1シミュレーション結果を取得し、
前記少なくとも2つの第1シミュレーション結果のそれぞれを前記移動体の運行における安全、コスト及び価値の少なくとも2つの指標で評価して第1評価結果を取得し、
前記少なくとも2つの第1シミュレーション結果のそれぞれに対応する前記運行パラメタと前記第1評価結果との組を用いて、前記運行パラメタが前記少なくとも2つの指標に対して与える第1影響度を算出し、
前記シミュレーションの結果を前記少なくとも2つの指標で評価して得られる評価結果を目標値に近づけるシミュレーション探索方針を取得し、
前記シミュレーション探索方針及び前記第1影響度に基づいて、前記運行パラメタの第2変更を行い、
前記シミュレーションを前記第2変更後の前記運行パラメタにしたがって実行して第2シミュレーション結果を取得し、
前記第2シミュレーション結果を前記少なくとも2つの指標で評価して第2評価結果を取得し、
前記第2評価結果を出力する
情報処理方法。
【請求項2】
前記第2変更は、前記シミュレーションの結果を前記少なくとも2つの指標で評価して得られる評価結果が前記シミュレーション探索方針に沿った評価結果となるように、前記第1影響度に基づいて前記運行パラメタを変更することを含む
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項3】
前記運行パラメタは、複数種類あり、
さらに、選択方針を取得し、
前記第2変更は、前記複数種類の運行パラメタのうち、前記選択方針に基づいて選択された運行パラメタを変更することを含む
請求項1又は2に記載の情報処理方法。
【請求項4】
前記少なくとも2つの指標での評価では、前記少なくとも2つの指標のそれぞれに重みが付与され、
前記重みは、前記シミュレーションの対象となる地域の情報に応じて設定される
請求項1~3のいずれか1項に記載の情報処理方法。
【請求項5】
さらに、
前記シミュレーションの結果を前記少なくとも2つの指標で評価して得られる評価結果に対して、前記シミュレーションにおける複数の処理のそれぞれが与える第2影響度を算出し、
前記シミュレーションにおける複数の処理のうち、前記第2影響度が閾値以下である処理を省く又は簡易化する
請求項1~4のいずれか1項に記載の情報処理方法。
【請求項6】
さらに、
前記第2評価結果が目標条件を満たすか否かを判定し、
前記第2評価結果が前記目標条件を満たす場合、前記第2変更後の前記運行パラメタを移動体運行システムに送信する
請求項1~5のいずれか1項に記載の情報処理方法。
【請求項7】
さらに、前記第1影響度を提示する
請求項1~6のいずれか1項に記載の情報処理方法。
【請求項8】
人又は配送物が載る移動体の動き及び人又は配送物の移動需要のシミュレーションを、第1変更前後の前記移動体の運行パラメタにしたがって実行して、少なくとも2つの第1シミュレーション結果を取得する第1シミュレーション結果取得部と、
前記少なくとも2つの第1シミュレーション結果のそれぞれを前記移動体の運行における安全、コスト及び価値の少なくとも2つの指標で評価して第1評価結果を取得する第1評価結果取得部と、
前記少なくとも2つの第1シミュレーション結果のそれぞれに対応する前記運行パラメタと前記第1評価結果との組を用いて、前記運行パラメタが前記少なくとも2つの指標に対して与える第1影響度を算出する算出部と、
前記シミュレーションの結果を前記少なくとも2つの指標で評価して得られる評価結果を目標値に近づけるシミュレーション探索方針を取得する方針取得部と、
前記シミュレーション探索方針及び前記第1影響度に基づいて、前記運行パラメタの第2変更を行い、前記シミュレーションを前記第2変更後の前記運行パラメタにしたがって実行して第2シミュレーション結果を取得する第2シミュレーション結果取得部と、
前記第2シミュレーション結果を前記少なくとも2つの指標で評価して第2評価結果を取得し、前記第2評価結果を出力する第2評価結果取得部と、を備える
情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モビリティサービスのシミュレーションを行うための情報処理方法及び情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CASE(Connected Autonomous Shared Electric)に代表されるような市場を取り巻く環境の変化に伴い、モビリティサービスに対する需要が拡大している。一方で、モビリティサービスを構成する要素(サービス因子)は多岐にわたり、モビリティサービスの最適化のためには、事前にモビリティサービスの設計及び評価を行う必要がある。モビリティサービスの導入及び改善を行う上で、モビリティサービスの設計及び評価にシミュレーションが活用されている(例えば非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】山本真之,外3名、“都市部における自動運転ライドシェアのシミュレーション分析”,[online],[令和3年4月13日検索],インターネット<URL:https://www.denso.com/jp/ja/-/media/global/business/innovation/review/24/24-doc-07-paper-02.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記非特許文献1では、サービス因子として車両の台数を網羅的に変更しながらシミュレーションを実行してモビリティサービスの評価を行っており、最適なモビリティサービスの探索において効率性が考慮されていない。また、交通系のシミュレーションでは、安全、コスト及び価値といった指標での評価が欠かせず、これらの指標とサービス因子とは互いに影響し合う。このため、モビリティサービスを最適化するために、上述したように網羅的にサービス因子を変更しながらシミュレーションを実行しており、シミュレーション時間が膨大となっている。
【0005】
そこで、本開示は、モビリティサービスの最適化を効率的に行うことができる情報処理方法などを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る情報処理方法は、コンピュータにより実行される情報処理方法であって、人又は配送物が載る移動体の動き及び人又は配送物の移動需要のシミュレーションを、第1変更前後の前記移動体の運行パラメタにしたがって実行して少なくとも2つの第1シミュレーション結果を取得し、前記少なくとも2つの第1シミュレーション結果のそれぞれを前記移動体の運行における安全、コスト及び価値の少なくとも2つの指標で評価して第1評価結果を取得し、前記少なくとも2つの第1シミュレーション結果のそれぞれに対応する前記運行パラメタと前記第1評価結果との組を用いて、前記運行パラメタが前記少なくとも2つの指標に対して与える第1影響度を算出し、前記シミュレーションの結果を前記少なくとも2つの指標で評価して得られる評価結果を目標値に近づけるシミュレーション探索方針を取得し、前記シミュレーション探索方針及び前記第1影響度に基づいて、前記運行パラメタの第2変更を行い、前記シミュレーションを前記第2変更後の前記運行パラメタにしたがって実行して第2シミュレーション結果を取得し、前記第2シミュレーション結果を前記少なくとも2つの指標で評価して第2評価結果を取得し、前記第2評価結果を出力する。
【0007】
なお、これらの包括的又は具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム又はコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様に係る情報処理方法などによれば、モビリティサービスの最適化を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施の形態に係る情報処理システムの一例を示す図である。
図2図2は、モビリティサービスの設計及び評価が行われる際の情報の流れの一例を示すシーケンス図である。
図3図3は、実施の形態に係る情報処理システムの動作の一例を示すフローチャートである。
図4A図4Aは、第1影響度の算出方法を説明するための図である。
図4B図4Bは、第1影響度の算出方法を説明するための図である。
図5図5は、運行パラメタごとの第1影響度の一例を示す図である。
図6図6は、シミュレーション結果を安全、コスト及び価値の指標で評価した評価結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の一態様に係る情報処理方法は、コンピュータにより実行される情報処理方法であって、人又は配送物が載る移動体の動き及び人又は配送物の移動需要のシミュレーションを、第1変更前後の前記移動体の運行パラメタにしたがって実行して少なくとも2つの第1シミュレーション結果を取得し、前記少なくとも2つの第1シミュレーション結果のそれぞれを前記移動体の運行における安全、コスト及び価値の少なくとも2つの指標で評価して第1評価結果を取得し、前記少なくとも2つの第1シミュレーション結果のそれぞれに対応する前記運行パラメタと前記第1評価結果との組を用いて、前記運行パラメタが前記少なくとも2つの指標に対して与える第1影響度を算出し、前記シミュレーションの結果を前記少なくとも2つの指標で評価して得られる評価結果を目標値に近づけるシミュレーション探索方針を取得し、前記シミュレーション探索方針及び前記第1影響度に基づいて、前記運行パラメタの第2変更を行い、前記シミュレーションを前記第2変更後の前記運行パラメタにしたがって実行して第2シミュレーション結果を取得し、前記第2シミュレーション結果を前記少なくとも2つの指標で評価して第2評価結果を取得し、前記第2評価結果を出力する。
【0011】
これによれば、モビリティサービスを構成するサービス因子である運行パラメタが安全、コスト及び価値の少なくとも2つの指標に対して与える第1影響度が算出されるため、第1影響度に基づいて最適な運行パラメタ(すなわちシミュレーション探索方針に沿った運行パラメタ)を効率的に探索することができる。よって、モビリティサービスの最適化を効率的に行うことができる。例えば、モビリティサービスの導入時における設計の効率化及び、モビリティサービスの導入後における改善に向けた評価の効率化が可能となる。
【0012】
例えば、前記第2変更は、前記シミュレーションの結果を前記少なくとも2つの指標で評価して得られる評価結果が前記シミュレーション探索方針に沿った評価結果となるように、前記第1影響度に基づいて前記運行パラメタを変更することを含んでいてもよい。
【0013】
これによれば、運行パラメタの第2変更によって第2評価結果を目標値に近づけやすくなる。
【0014】
例えば、前記運行パラメタは、複数種類あってもよく、さらに、選択方針を取得してもよく、前記第2変更は、前記複数種類の運行パラメタのうち、前記選択方針に基づいて選択された運行パラメタを変更することを含んでいてもよい。
【0015】
これによれば、複数種類の運行パラメタの中から、選択方針に沿った運行パラメタを選択することができる。
【0016】
例えば、前記少なくとも2つの指標での評価では、前記少なくとも2つの指標のそれぞれに重みが付与されてもよく、前記重みは、前記シミュレーションの対象となる地域の情報に応じて設定されてもよい。
【0017】
例えば、シミュレーションの対象となる地域によって、重要視される指標が異なってくる。そこで、少なくとも2つの指標のそれぞれに地域の情報に応じた重みが付与されることで、地域ごとに特定の指標を重要視したモビリティサービスを提供することができる。
【0018】
例えば、さらに、前記シミュレーションの結果を前記少なくとも2つの指標で評価して得られる評価結果に対して、前記シミュレーションにおける複数の処理のそれぞれが与える第2影響度を算出してもよく、前記シミュレーションにおける複数の処理のうち、前記第2影響度が閾値以下である処理を省く又は簡易化してもよい。
【0019】
これによれば、シミュレーションを実行する際の計算処理負荷を低減することができる。
【0020】
例えば、さらに、前記第2評価結果が目標条件を満たすか否かを判定してもよく、前記第2評価結果が前記目標条件を満たす場合、前記第2変更後の前記運行パラメタを移動体運行システムに送信してもよい。
【0021】
これによれば、最適な運行パラメタを移動体運行システムに反映することができる。
【0022】
例えば、さらに、前記第1影響度を提示してもよい。
【0023】
これによれば、サービスの設計者などが第1影響度を確認することができる。
【0024】
本開示の一態様に係る情報処理システムは、人又は配送物が載る移動体の動き及び人又は配送物の移動需要のシミュレーションを、第1変更前後の前記移動体の運行パラメタにしたがって実行して、少なくとも2つの第1シミュレーション結果を取得する第1シミュレーション結果取得部と、前記少なくとも2つの第1シミュレーション結果のそれぞれを前記移動体の運行における安全、コスト及び価値の少なくとも2つの指標で評価して第1評価結果を取得する第1評価結果取得部と、前記少なくとも2つの第1シミュレーション結果のそれぞれに対応する前記運行パラメタと前記第1評価結果との組を用いて、前記運行パラメタが前記少なくとも2つの指標に対して与える第1影響度を算出する算出部と、前記シミュレーションの結果を前記少なくとも2つの指標で評価して得られる評価結果を目標値に近づけるシミュレーション探索方針を取得する方針取得部と、前記シミュレーション探索方針及び前記第1影響度に基づいて、前記運行パラメタの第2変更を行い、前記シミュレーションを前記第2変更後の前記運行パラメタにしたがって実行して第2シミュレーション結果を取得する第2シミュレーション結果取得部と、前記第2シミュレーション結果を前記少なくとも2つの指標で評価して第2評価結果を取得し、前記第2評価結果を出力する第2評価結果取得部と、を備える。
【0025】
これによれば、モビリティサービスの最適化を効率的に行うことができる情報処理システムを提供することができる。
【0026】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0027】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。
【0028】
(実施の形態)
以下、実施の形態に係る情報処理システム及び情報処理方法について説明する。
【0029】
図1は、実施の形態に係る情報処理システム1の一例を示す図である。
【0030】
情報処理システム1は、移動体のモビリティサービスのシミュレーションを行うためのシステムである。シミュレーションは、人又は配送物が載る移動体の動き及び人又は配送物の移動需要のシミュレーションである。なお、上記動き及び移動需要のシミュレーションは、移動体と物体との衝突回避(衝突判定)のシミュレーションを含んでいてもよい。移動体は、例えば車両であるが、車両以外の移動体(例えば、ロボット、航空機又は船舶など)であってもよい。情報処理システム1は、情報処理方法を実行するコンピュータの一例である。情報処理システム1を構成する構成要素は、1つの筐体内に設けられてもよいし、分散して配置されてもよい。情報処理システム1を構成する構成要素が分散して配置される場合、複数のコンピュータにより情報処理方法が実行されてもよい。情報処理システム1は、例えばサーバによって実現される。
【0031】
情報処理システム1は、設定部11、第1シミュレーション結果取得部12、第1評価結果取得部13、算出部14、方針取得部15、第2シミュレーション結果取得部16、粗視化部17、第2評価結果取得部18、提示部19及び送信部20を備える。情報処理システム1は、プロセッサ、通信インタフェース及びメモリなどを含むコンピュータである。メモリは、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)などであり、プロセッサにより実行されるプログラムを記憶することができる。設定部11、第1シミュレーション結果取得部12、第1評価結果取得部13、算出部14、方針取得部15、第2シミュレーション結果取得部16、粗視化部17、第2評価結果取得部18、提示部19及び送信部20は、メモリに格納されたプログラムを実行するプロセッサ及び通信インタフェースなどによって実現される。
【0032】
設定部11は、情報処理システム1が行うシミュレーションのパラメタの設定を行う。例えば、設定部11は、モビリティサービスが行われる環境の設定、設定された環境において発生する需要の設定、サービスを構成する要素(サービス因子)である移動体の運行パラメタの設定、サービスを評価する指標である移動体の運行における指標の設定、及び、指標に付与される重みの設定などを行う。設定部11の詳細については後述する。
【0033】
第1シミュレーション結果取得部12は、人又は配送物が載る移動体の動き及び人又は配送物の移動需要のシミュレーションを、第1変更前後の移動体の運行パラメタにしたがって実行して、少なくとも2つの第1シミュレーション結果を取得する。第1シミュレーション結果取得部12の詳細については後述する。
【0034】
第1評価結果取得部13は、少なくとも2つの第1シミュレーション結果のそれぞれを移動体の運行における安全、コスト及び価値の少なくとも2つの指標で評価して第1評価結果を取得する。第1評価結果取得部13の詳細については後述する。
【0035】
算出部14は、少なくとも2つの第1シミュレーション結果のそれぞれに対応する運行パラメタと第1評価結果との組を用いて、運行パラメタが少なくとも2つの指標に対して与える第1影響度を算出する。算出部14の詳細については後述する。
【0036】
方針取得部15は、シミュレーションの結果を少なくとも2つの指標で評価して得られる評価結果を目標値に近づけるシミュレーション探索方針を取得する。また、方針取得部15は、選択方針を取得してもよい。方針取得部15の詳細については後述する。
【0037】
第2シミュレーション結果取得部16は、シミュレーション探索方針及び第1影響度に基づいて、運行パラメタの第2変更を行い、シミュレーションを第2変更後の運行パラメタにしたがって実行して第2シミュレーション結果を取得する。第2シミュレーション結果取得部16の詳細については後述する。
【0038】
粗視化部17は、シミュレーションの結果を少なくとも2つの指標で評価して得られる評価結果に対して、シミュレーションにおける複数の処理のそれぞれが与える第2影響度を算出し、シミュレーションにおける複数の処理のうち、第2影響度が閾値以下である処理を省く又は簡易化する。粗視化部17の詳細については後述する。
【0039】
第2評価結果取得部18は、第2シミュレーション結果を少なくとも2つの指標で評価して第2評価結果を取得し、第2評価結果を出力する。第2評価結果取得部18は、例えば、取得した第2評価結果を送信部20に出力する。第2評価結果取得部18の詳細については後述する。
【0040】
提示部19は、第1影響度を提示する。例えば、提示部19は、ディスプレイなどに第1影響度を提示する。これにより、サービスの設計者などが第1影響度を確認することができる。
【0041】
送信部20は、第2評価結果が目標条件を満たすか否かを判定し、第2評価結果が目標条件を満たす場合、第2変更後の運行パラメタを移動体運行システムに送信する。なお、送信部20は、サービスの設計者の端末などに第2評価結果を送信してもよい。送信部20の詳細については後述する。
【0042】
次に、モビリティサービスの設計及び評価が行われる際の情報の流れについて図2を用いて説明する。
【0043】
図2は、モビリティサービスの設計及び評価が行われる際の情報の流れの一例を示すシーケンス図である。図2では、サービスを設計・評価する人、情報処理システム1、及び移動体運行システム間の情報の流れを示している。
【0044】
図2に示されるように、ステップS1からステップS5までの事前処理が行われる。
【0045】
まず、事前処理として、情報処理システム1が行うシミュレーションのパラメタの設定がサービスの設計者などによって行われる。具体的には、サービスの設計者などが各種パラメタを入力することで、情報処理システム1の設定部11は、パラメタの設定を行う。
【0046】
サービスの設計者などは、モビリティサービスが行われる環境の設定を行う(ステップS1)。モビリティサービスが行われる環境の設定は、シミュレータに読み込まれる地図データ又は道路データなどの設定である。
【0047】
サービスの設計者などは、設定された環境において発生する需要の設定を行う(ステップS2)。設定された環境において発生する需要の設定は、人の輸送又は配送物の配送の要求の設定である。例えば既存実績データが入力されることで設定が行われる。なお、需要の設定は、輸送・配送の統計情報が入力されて、当該情報に基づいてランダムに設定されてもよい。
【0048】
サービスの設計者などは、サービス因子(言い換えると運行パラメタ)の設定を行う(ステップS3)。運行パラメタの設定は、移動経路、ステーションの配置、移動速度、運行時間帯、乗車定員、センサ性能、ブレーキ性能、加速性能、システムの二重化実装度、遠隔監視、遠隔制御といった運行パラメタの設定である。
【0049】
サービスの設計者などは、サービス評価項目(言い換えるとサービスを評価する指標)の設定を行う(ステップS4)。指標の設定は、移動体の運行における安全(Riskとも記載する)、コスト(Cost)及び価値(Value)の少なくとも2つの指標の設定である。安全の指標は、例えば、移動体の人との接近による事故リスクの指標であり、コストの指標は、例えば、移動体の価格及び燃料費などのコストの指標であり、価値の指標は、例えば、1日の輸送量・配送量などの価値の指標である。
【0050】
サービスの設計者などは、サービス評価軸(言い換えると指標)に対する重みの設定を行う(ステップS5)、重みは、シミュレーションの対象となる地域の情報に応じて設定される。例えば、地域の情報が、子供世帯が多いことを示す場合、安全の重みが大きくされる。また、例えば、地域の情報が、モビリティサービスの需要が多いと想定される住宅密集地を示す場合、価値の重みが大きくされる。なお、重みは、予算などに応じて設定されてもよく、例えば、予算が厳しい状況ではコストの重みが大きくされてもよい。
【0051】
次に、情報処理システム1は、これらの設定が適用されたシミュレーションを、ステップS6からステップS9を繰り返しながら行う。
【0052】
情報処理システム1は、安全、コスト及び価値の指標に対するサービス因子の感度の分析を行い(ステップS6)、サービスの評価に用いられるサービス因子の案を選定し(ステップS7)、評価環境の粗視化を行い(ステップS8)、サービスの評価を行う(ステップS9)。これらの処理の具体例については後述する。
【0053】
そして、情報処理システム1は、サービスの評価の結果、最適なサービス因子を決定し、決定したサービス因子を移動体運行システムに送信する(ステップS10)。移動体運行システムは、モビリティサービスを提供するシステムであり、決定されたサービス因子にしたがって移動体の運行を伴うモビリティサービスを提供する。
【0054】
次に、情報処理システム1の動作の詳細について図3を用いて説明する。
【0055】
図3は、実施の形態に係る情報処理システム1の動作の一例を示すフローチャートである。なお、情報処理システム1は、実施の形態に係る情報処理方法を実行するコンピュータの一例であるため、図3は、実施の形態に係る情報処理方法の一例を示すフローチャートでもある。
【0056】
まず、設定部11は、情報処理システム1が行うシミュレーションのパラメタの設定を行う(ステップS11)。例えば、設定部11は、モビリティサービスが行われる環境として、子供世帯の多い特定の地域を設定してもよく、当該地域での既存実績データなどから当該環境において発生する需要を設定する。また、例えば、設定部11は、運行パラメタとして複数種類の運行パラメタを設定してもよく、具体的には、設定部11は、運行パラメタとして、運行本数、運行時間帯及び運行速度といった種類の運行パラメタを設定してもよい。また、例えば、設定部11は、移動体の運行における指標として、安全、コスト及び価値の指標を設定してもよい。また、例えば、設定部11は、モビリティサービスが行われる環境が、子供世帯が多い地域となっているため、安全の指標の重みを大きくしてもよい。
【0057】
次に、第1シミュレーション結果取得部12は、移動体の動き及び人又は配送物の移動需要のシミュレーションを、第1変更前後の移動体の運行パラメタにしたがって実行して少なくとも2つの第1シミュレーション結果を取得する(ステップS12)。例えば、ここでは、サービスの設計者などによって、任意の値に設定された運行パラメタ(例えば、それぞれ任意の値に設定された運行本数、運行時間帯及び運行速度)にしたがってシミュレーションが実行されて第1シミュレーション結果が取得され、第1変更が行われた運行パラメタにしたがってシミュレーションが実行されて再度第1シミュレーション結果が取得される。第1シミュレーション結果は、運行パラメタが任意の値に設定されたときの移動体の動き及び人又は配送物の移動需要のシミュレーションの結果である。第1変更は、任意の値への変更(大まかな変更、言い換えると特定の方針に基づかない変更)である。なお、さらに第1変更が行われた運行パラメタにしたがってシミュレーションが実行されてもよく、3つ以上の第1シミュレーション結果が取得されてもよい。
【0058】
次に、第1評価結果取得部13は、少なくとも2つの第1シミュレーション結果のそれぞれを移動体の運行における安全、コスト及び価値の少なくとも2つの指標で評価して第1評価結果を取得する(ステップS13)。例えば、ここでは少なくとも2つの第1シミュレーション結果のそれぞれを移動体の運行における安全、コスト及び価値の3つの指標で評価して第1評価結果が取得される。第1評価結果として、3つの指標それぞれに対する評価値が算出される。
【0059】
次に、算出部14は、少なくとも2つの第1シミュレーション結果のそれぞれに対応する運行パラメタと第1評価結果との組を用いて、運行パラメタが少なくとも2つの指標に対して与える第1影響度を算出する(ステップS14)。ここで、第1影響度の算出方法について、図4A及び図4Bを用いて説明し、運行パラメタごとの第1影響度の例について図5を用いて説明する。
【0060】
図4A及び図4Bは、第1影響度の算出方法を説明するための図である。
【0061】
図4Aでは、入力としてx回目のシミュレーションにおける運行パラメタAの値を5、x+1回目のシミュレーションにおける運行パラメタAの値を10としたときに、出力として得られる安全、コスト及び価値の指標それぞれでの評価の結果が示されている。例えば入力(運行パラメタの値)を変数とする数式によって、出力(評価結果)を算出することができる。例えば、ある運行パラメタ(例えば運行パラメタA)の変更による影響を確認するために、当該運行パラメタが変更される際に、他の運行パラメタ(例えば運行パラメタC及び運行パラメタE)は変更されなくてもよい。
【0062】
図4Bでは、各運行パラメタがコストの指標に対して与える第1影響度(Cost寄与率)が示されている。
【0063】
A(x)は第1変更前の運行パラメタAの値であり、A(x+1)は第1変更後の運行パラメタAの値である。出力のうちコストでの評価結果(評価値)に着目すると、Cost(x)はx回目の第1シミュレーション結果をコストの指標で評価した第1評価結果であり、Cost(x+1)はx+1回目の第1シミュレーション結果をコストの指標で評価した第1評価結果である。算出部14は、x回目の第1シミュレーション結果に対応する運行パラメタであるA(x)と第1評価結果であるCost(x)との組、及び、x+1回目の第1シミュレーション結果に対応する運行パラメタであるA(x+1)と第1評価結果であるCost(x+1)との組を用いて、運行パラメタAがコストの指標に対して与える第1影響度を算出する。例えば、運行パラメタAを5から10に変更(第1変更)したときのコストの指標での第1評価結果が100から120へ20%変化しているため、算出部14は、図4Bに示されるように、運行パラメタAがコストの指標に対して与える第1影響度(Cost寄与率)を20%と算出する。
【0064】
同じように、算出部14は、x回目の第1シミュレーション結果に対応する運行パラメタであるA(x)と第1評価結果であるRisk(x)との組、及び、x+1回目の第1シミュレーション結果に対応する運行パラメタであるA(x+1)と第1評価結果であるRisk(x+1)との組を用いて、運行パラメタAが安全の指標に対して与える第1影響度を算出する。同じように、算出部14は、x回目の第1シミュレーション結果に対応する運行パラメタであるA(x)と第1評価結果であるValue(x)との組、及び、x+1回目の第1シミュレーション結果に対応する運行パラメタであるA(x+1)と第1評価結果であるValue(x+1)との組を用いて、運行パラメタAが価値の指標に対して与える第1影響度を算出する。運行パラメタC及び運行パラメタEについても同じように第1影響度を算出することができる。
【0065】
例えば、第1影響度を算出する際の各運行パラメタの変更量はそれぞれ同程度(例えばA(x)=5からA(x+1)=10への変更量と同程度)とされるが、各運行パラメタの変化量の設定方法は特に限定されない。運行パラメタの種類によっては変更量を比較することが難しい場合があるためである。
【0066】
図5は、運行パラメタごとの第1影響度の一例を示す図である。
【0067】
図5に示されるように、運行本数、運行時間帯及び運行速度といった運行パラメタがコスト、安全及び価値の指標に対して与える第1影響度が算出される。例えば、運行本数はコスト及び価値に影響を与え、運行時間帯は、安全にはあまり影響を与えず、運行速度は、安全及び価値に影響を与えることが示されている。
【0068】
図3での説明に戻り、方針取得部15は、シミュレーションの結果を少なくとも2つの指標で評価して得られる評価結果を目標値に近づけるシミュレーション探索方針を取得する(ステップS15)。シミュレーション探索方針は、例えば、安全性を高め、コストを下げ、価値を上げるといった方針である。シミュレーション探索方針は、例えば、サービスの設計者などによって設定される。
【0069】
次に、第2シミュレーション結果取得部16は、シミュレーション探索方針及び第1影響度に基づいて、運行パラメタの第2変更を行う(ステップS16)。例えば、第2変更は、少なくとも2つの指標で評価して得られる評価結果がシミュレーション探索方針に沿った評価結果となるように、第1影響度に基づいて運行パラメタを変更することを含む。シミュレーション探索方針が、安全性を高め、コストを下げ、価値を上げるという方針の場合、第2シミュレーション結果取得部16は、評価結果が、安全性が高く、コストが低く、価値が高い評価結果となるように、運行パラメタを変更する。また、ある指標に対する第1影響度が大きい運行パラメタは、運行パラメタの変更量に対して当該指標での評価結果が大きく変わり得る。また、ある指標に対する第1影響度が小さい運行パラメタは、運行パラメタの変更量に対して当該指標での評価結果が変わりにくい。したがって、第1影響度を考慮して運行パラメタを変更することで、評価結果をシミュレーション探索方針に沿った評価結果にしやすくなる。
【0070】
また、例えば、運行パラメタは、運行本数、運行時間帯及び運行速度のように複数種類あり、方針取得部15は、選択方針を取得し、第2変更は、複数種類の運行パラメタのうち、選択方針に基づいて選択された運行パラメタを変更することを含んでいてもよい。例えば、安全性を重視する選択方針が取得された場合、図5の例では運行パラメタとして運行速度が最も安全に対する影響度が大きいため、運行速度が変更される。また、例えば、コストを重視する選択方針が取得された場合、図5の例では運行パラメタとして運行本数が最もコストに対する影響度が大きいため、運行本数が変更される。
【0071】
次に、第2シミュレーション結果取得部16は、シミュレーションを第2変更後の運行パラメタにしたがって実行して第2シミュレーション結果を取得する(ステップS17)。第2シミュレーション結果は、第2変更後の運行パラメタを用いて実行された、移動体の動き及び人又は配送物の移動需要のシミュレーションの結果である。
【0072】
なお、粗視化部17は、シミュレーションの結果を少なくとも2つの指標で評価して得られる評価結果に対して、シミュレーションにおける複数の処理のそれぞれが与える第2影響度を算出し、シミュレーションにおける複数の処理のうち、第2影響度が閾値以下である処理を省く又は簡易化してもよい。人又は配送物が載る移動体の動き及び人又は配送物の移動需要のシミュレーションには様々な処理が含まれており、これらの処理には、安全、コスト及び価値に影響しにくい(すなわち第2影響度が閾値以下の)処理も含まれている。このため、安全、コスト及び価値に影響しにくい処理を省いたり、簡易化したりすることで、計算処理負荷を低減することができる。シミュレーションにおける処理の簡易化とは、例えば、シミュレーション上での人や障害物などの要素を少なくすることなどである。なお、粗視化が行われるシミュレーションは、第1シミュレーション結果に対応するシミュレーションであってもよいし、第2シミュレーション結果に対応するシミュレーションであってもよい。
【0073】
次に、第2評価結果取得部18は、第2シミュレーション結果を少なくとも2つの指標で評価して第2評価結果を取得し、出力する(ステップS18)。例えば、ここでは、第2シミュレーション結果を移動体の運行における安全、コスト及び価値の3つの指標で評価して第2評価結果が取得される。第2評価結果として、3つの指標それぞれに対する評価値が算出される。第2評価結果取得部18は、取得した第2評価結果を送信部20に出力する。
【0074】
次に、送信部20は、第2評価結果が目標条件を満たすか否かを判定する(ステップS19)。第2評価結果が目標条件を満たさない場合(ステップS19でNo)、再度ステップS16からの処理が行われる。ここで、第2評価結果が目標条件を満たすまでの流れを、図6を用いて説明する。
【0075】
図6は、シミュレーション結果を安全、コスト及び価値の指標で評価した評価結果の一例を示す図である。図6には、安全(Risk)、コスト(Cost)及び価値(Value)をそれぞれ軸とする3次元グラフが示されている。
【0076】
図6に示される「セット1の出力」は、例えば、任意の値に設定された運行パラメタにしたがってシミュレーションが実行されて得られた第1シミュレーション結果を、移動体の運行における安全、コスト及び価値の指標で評価して得られた第1評価結果である。安全の指標で評価して得られる評価値、コストの指標で評価して得られる評価値及び価値の指標で評価して得られる評価値が評価結果として3次元グラフ上にプロットされている。図6に示される「セット2の出力」は、例えば、「セット1の出力」でのシミュレーションにおいて設定された運行パラメタに対して第1変更が行われた運行パラメタにしたがってシミュレーションが実行されて得られた第1シミュレーション結果を、移動体の運行における安全、コスト及び価値の指標で評価して得られた第1評価結果である。「セット1の出力」から「セット2の出力」への変化の度合いから、各運行パラメタが安全、コスト及び価値の指標に対して与える第1影響度を算出することができる。図6に示される「セット3の出力」は、例えば、「セット2の出力」でのシミュレーションにおいて設定された運行パラメタに対して第2変更が行われた運行パラメタにしたがってシミュレーションが実行されて得られた第2シミュレーション結果を、移動体の運行における安全、コスト及び価値の指標で評価して得られた第2評価結果である。
【0077】
第2評価結果に対する目標条件は、例えば、安全の指標で評価して得られる評価値が規定の範囲内であり、かつ、コストの指標で評価して得られる評価値が規定の範囲内であり、かつ、価値の指標で評価して得られる評価値が規定の範囲内であるという条件である。例えば、第2評価結果が目標条件を満たすまでステップS16からステップS18までの処理が繰り返し行われる。図6に示される「セット3の出力」以降の点は、ステップS16からステップS18までの処理が行われるごとに得られた第2評価結果である。前回の運行パラメタに対して第2変更が行われてシミュレーションが行われるごとに、第2評価結果も変化していき、第2評価結果が目標条件を満たすまで、ステップS16からステップS18までの処理が繰り返し行われる。
【0078】
なお、指標に重みが付与されている場合には、各評価結果は付与された重みに応じた値となる。つまり、大きな重みが付与された指標の評価結果(評価値)については、運行パラメタの変更量が大きく反映され、小さな重みが付与された指標の評価結果(評価値)については、運行パラメタの変更量があまり反映されない。したがって、付与される重みの大きさを調整することで、特定の指標を重要視した評価結果を得ることができる。
【0079】
第2評価結果が目標条件を満たす場合(ステップS19でYes)、送信部20は、第2変更後の運行パラメタ(具体的には第2評価結果が目標条件を満たしたときのシミュレーションに用いられた運行パラメタ)を移動体運行システムに送信する(ステップS20)。これにより、最適と判定されたモビリティサービスの運行パラメタが実システムのパラメタにリアルタイムに反映される。例えば、翌日営業日から、配車サービスにおける走行経路を最適な経路に変更したり、営業時間帯を最適な時間帯に変更したりすることができる。
【0080】
なお、ステップS16からステップS18までの処理を繰り返し行っても、第2評価結果が目標条件を満たさない場合がある。そこで、ステップS16からステップS18までの処理を繰り返し行う回数の上限が決められていてもよい。繰り返し行う回数が上限となった場合には、ステップS16からステップS18までの処理を繰り返し行って得られた第2評価結果のうち、最も目標条件に近い第2評価結果に対応する運行パラメタが移動体運行システムに送信されてもよい。
【0081】
以上説明したように、モビリティサービスを構成するサービス因子である運行パラメタが安全、コスト及び価値の少なくとも2つの指標に対して与える第1影響度が算出されるため、第1影響度に基づいて最適な運行パラメタ(すなわちシミュレーション探索方針に沿った運行パラメタ)を効率的に探索することができる。よって、モビリティサービスの最適化を効率的に行うことができる。
【0082】
(その他の実施の形態)
以上、本開示の一つ又は複数の態様に係る情報処理方法及び情報処理システム1について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、これらの実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を各実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本開示の一つ又は複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
【0083】
例えば、上記実施の形態では、方針取得部15が選択方針を取得する例について説明したが、方針取得部15は、選択方針を取得しなくてもよい。すなわち、第2変更は、複数種類の運行パラメタのうち、選択方針に基づいて選択された運行パラメタを変更することを含んでいてなくてもよい。
【0084】
例えば、上記実施の形態では、少なくとも2つの指標での評価では、少なくとも2つの指標のそれぞれに重みが付与される例について説明したが、少なくとも2つの指標のそれぞれに重みが付与されなくてもよい。
【0085】
例えば、上記実施の形態では、情報処理システム1が粗視化部17を備える例について説明したが、情報処理システム1は、粗視化部17を備えていなくてもよい。すなわち、シミュレーションの結果を少なくとも2つの指標で評価して得られる評価結果に対して、シミュレーションにおける複数の処理のそれぞれが与える第2影響度を算出しなくてもよく、シミュレーションにおける複数の処理のうち、第2影響度が閾値以下である処理を省く又は簡易化しなくてもよい。
【0086】
例えば、上記実施の形態では、情報処理システム1が提示部19を備える例について説明したが、情報処理システム1は、提示部19を備えていなくてもよい。すなわち、第1影響度を提示しなくてもよい。
【0087】
例えば、上記実施の形態では、情報処理システム1が送信部20を備える例について説明したが、情報処理システム1は、送信部20を備えていなくてもよい。すなわち、第2評価結果が目標条件を満たすか否かを判定しなくてもよく、第2評価結果が目標条件を満たす場合、第2変更後の運行パラメタを移動体運行システムに送信しなくてもよい。
【0088】
例えば、本開示は、情報処理方法に含まれるステップを、プロセッサに実行させるためのプログラムとして実現できる。さらに、本開示は、そのプログラムを記録したCD-ROM等である非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体として実現できる。
【0089】
例えば、本開示が、プログラム(ソフトウェア)で実現される場合には、コンピュータのCPU、メモリ及び入出力回路等のハードウェア資源を利用してプログラムが実行されることによって、各ステップが実行される。つまり、CPUがデータをメモリ又は入出力回路等から取得して演算したり、演算結果をメモリ又は入出力回路等に出力したりすることによって、各ステップが実行される。
【0090】
なお、上記実施の形態において、情報処理システム1に含まれる各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPU又はプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスク又は半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0091】
上記実施の形態に係る情報処理システム1の機能の一部又は全ては典型的には集積回路であるLSIとして実現される。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部又は全てを含むように1チップ化されてもよい。また、集積回路化はLSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後にプログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、又はLSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
【0092】
さらに、本開示の主旨を逸脱しない限り、本開示の各実施の形態に対して当業者が思いつく範囲内の変更を施した各種変形例も本開示に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本開示は、モビリティサービスの提供を行うシステムに適用できる。
【符号の説明】
【0094】
1 情報処理システム
11 設定部
12 第1シミュレーション結果取得部
13 第1評価結果取得部
14 算出部
15 方針取得部
16 第2シミュレーション結果取得部
17 粗視化部
18 第2評価結果取得部
19 提示部
20 送信部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6