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7685560透明半田マスク保護フィルム、その製造方法、及びその使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-21
(45)【発行日】2025-05-29
(54)【発明の名称】透明半田マスク保護フィルム、その製造方法、及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/36 20060101AFI20250522BHJP
   B32B 3/30 20060101ALI20250522BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20250522BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20250522BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20250522BHJP
【FI】
B32B27/36
B32B3/30
C09D183/04
C09D7/61
C09J7/38
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023139987
(22)【出願日】2023-08-30
(65)【公開番号】P2025009641
(43)【公開日】2025-01-20
【審査請求日】2023-08-30
(31)【優先権主張番号】112125433
(32)【優先日】2023-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】廖 ▲徳▼超
(72)【発明者】
【氏名】曹 俊哲
(72)【発明者】
【氏名】陳 政宏
【審査官】緒形 友美
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-544364(JP,A)
【文献】特開2004-351626(JP,A)
【文献】国際公開第2011/155582(WO,A1)
【文献】特表2014-532602(JP,A)
【文献】特開2003-064318(JP,A)
【文献】特表2017-531050(JP,A)
【文献】特開2006-028416(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第113999625(CN,A)
【文献】特開2002-169319(JP,A)
【文献】国際公開第2014/080918(WO,A1)
【文献】特開2009-277860(JP,A)
【文献】国際公開第2019/039264(WO,A1)
【文献】特開2020-004896(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0029976(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 - 43/00
C09D 1/00 - 10/00
C09D 101/00 - 201/10
C09J 7/00 - 7/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルベースフィルム層である第1のフィルム層と、
前記第1のフィルム層の一側の表面上に形成され、感圧性接着剤フィルム層である第2のフィルム層と、
前記第2のフィルム層における前記第1のフィルム層から遠ざかる一側の表面上に形成され、離型ベースフィルムと、前記離型ベースフィルム及び前記第2のフィルム層の間に設置される離型コーティングとを含み、前記第2のフィルム層における前記第1のフィルム層から遠ざかる表面と直接接合される、離型フィルム材と、
を備え、
前記離型ベースフィルムはポリエステル離型フィルムであり、前記離型コーティングは、シリコン樹脂材及び該シリコン樹脂材中に分散された複数の無機粒子を含み、前記複数の無機粒子により、前記離型コーティングにおける前記離型ベースフィルムから遠ざかる表面は凹凸不平の外観を示し、前記凹凸不平の外観は前記第2のフィルム層における該離型コーティングと接合した表面に転写可能であり、前記離型フィルム材が前記離型コーティングを通じて前記第2のフィルム層から分離した後、前記第2のフィルム層における前記第1のフィルム層から遠ざかる表面には凹凸微小構造が形成される、
ことを特徴とする、透明半田マスク保護フィルム。
【請求項2】
前記第1のフィルム層が5μmから20μmの第1の厚さを有し、前記第2のフィルム層が3μmから18μmの第2の厚さを有し、前記離型ベースフィルムが15μmから35μmの第3の厚さを有し、前記離型コーティングが0.1μmから1.0μmの第4の厚さを有する、請求項1に記載の透明半田マスク保護フィルム。
【請求項3】
複数の前記無機粒子が0.001μmから1.0μmの平均粒子径を有する、請求項2に記載の透明半田マスク保護フィルム。
【請求項4】
前記離型コーティングの前記第4の厚さと前記無機粒子の前記平均粒子径との比率が5から20である、請求項3に記載の透明半田マスク保護フィルム。
【請求項5】
複数の前記無機粒子が、前記離型コーティングにおける前記離型ベースフィルムから遠ざかる前記表面から少なくとも部分的に露出し、それによって、前記離型コーティングにおける前記離型ベースフィルムから遠ざかる前記表面が前記凹凸不平の外観を呈する、請求項4に記載の透明半田マスク保護フィルム。
【請求項6】
前記シリコン樹脂材は、メチルシリコン樹脂、メチルフェニルシリコン樹脂、エチレンシリコン樹脂、メチルエチレンシリコン樹脂、アミノシリコン樹脂、エポキシ改質シリコン樹脂、及び上記材料の派生物からなる材料群から選ばれる少なくとも1つであり、前記無機粒子は、酸化シリコン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、カオリン、タルク、ガラス粉、及び上記材料の派生物からなる材料群から選ばれる少なくとも1つである、請求項1に記載の透明半田マスク保護フィルム。
【請求項7】
前記離型コーティングは、前記離型ベースフィルムに離型塗料を塗布し、前記離型塗料中の溶剤を乾燥させて形成され、前記離型塗料は、前記シリコン樹脂材、前記無機粒子、添加剤、及び前記溶剤を含み、前記シリコン樹脂材、前記無機粒子、及び前記添加剤は、前記離型塗料における固体成分であり、前記離型コーティングにおいて、前記シリコン樹脂材及び前記無機粒子の重量の合計が前記固体成分の少なくとも80%を占め、前記シリコン樹脂材と前記無機粒子との重量比率は0.3から1.1である、請求項1に記載の透明半田マスク保護フィルム。
【請求項8】
前記第2のフィルム層のガラス転移温度は-50℃から50℃である、請求項1に記載の透明半田マスク保護フィルム。
【請求項9】
第1のフィルム層と、前記第1のフィルム層の一側の表面上に形成された第2のフィルム層とを提供し、前記第1のフィルム層はポリエステルベースフィルム層であり、前記第2のフィルム層は感圧性接着剤フィルム層であり、
離型フィルム材を提供し、前記離型フィルム材は、離型ベースフィルムと、前記離型ベースフィルムの一側の表面に形成された離型コーティングを含み、前記離型コーティングは前記第2のフィルム層に対向しており、前記離型ベースフィルムは、ポリエステル離型フィルムであり、前記離型コーティングはシリコン樹脂コーティングであり、前記離型コーティングには、複数の無機粒子が分散しており、複数の前記無機粒子によって、前記離型コーティングにおける前記離型ベースフィルムから遠ざかる表面が凹凸不平の外観を呈し、
前記離型フィルム材の前記離型コーティングを、前記第2のフィルム層における前記第1のフィルム層から遠ざかる一側の表面に貼り合わせることで、透明半田マスク保護フィルムの製備を完成させ、
前記離型フィルム材が前記離型コーティングを通して前記第2のフィルム層と分離した後、前記第2のフィルム層における前記第1のフィルム層から遠ざかる前記表面に凹凸微小構造が形成される、
ことを特徴とする、透明半田マスク保護フィルムの製造方法。
【請求項10】
請求項1に記載の透明半田マスク保護フィルムを提供し、
前記離型フィルム材を前記離型コーティングを通じて前記第2のフィルム層と分離させ、前記第2のフィルム層における前記第1のフィルム層から遠ざかる前記表面に前記凹凸微小構造を形成し、
回線板及び前記回線板に形成された半田マスクを含む、回路キャリア板を提供し、
前記第2のフィルム層の表面における前記凹凸微小構造を前記半田マスクと密着させ、前記凹凸微小構造を前記半田マスクにおける前記回線板から遠ざかる一側の表面に転写し、前記第2のフィルム層の材料硬さは前記半田マスクより大きく、
前記第1のフィルム層及び前記第2のフィルム層を前記回路キャリア板の前記半田マスクから除去し、前記半田マスクにおける前記回線板から遠ざかる前記一側の表面に、転写された粗面を形成し、該粗面は、0.01~0.5ナノメートルの算術平均粗さ(Ra)を有する、
ことを特徴とする、透明半田マスク保護フィルムの使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は保護フィルムに関し、特に透明半田マスク保護フィルム、その製造方法及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
既存技術においては、積層回路(IC)のキャリア板上の回線配置の線幅が非常に細く、線間距離が非常に狭く、解像度が高いため、ICキャリア板が高周波数製品に使用される際、製品の信頼性に対する要求が非常に高く、封入プロセスの良否が製品価値に大きな影響を及ぼす。
【0003】
回路キャリア板上に形成された半田マスクと封止剤が接触し、半田マスクと封止剤間の密着性がICキャリア板の信頼性と品質に影響を及ぼす。
【0004】
半田マスクの表面の外観形状を調整することで、半田マスクと封止剤間の接着性を良好な密着性に保つことで、ICキャリア板の性能を確保することができる。しかし、半田マスクの表面形状はその加工過程で、主に曝露時に半田マスクの表面に貼り合わせられる透明半田マスク保護フィルムにより決まる。既存技術の透明半田マスク保護フィルムでは、半田マスクの表面の外観形状を精密に制御することができず、その結果、ICキャリア板の信頼性や品質が不十分(例えば密着性が不足したり、ブリスター問題が生じやすい)となる。
【0005】
したがって、本発明者は、上記の欠点が改善可能であると感じ、科学的原理の適用を組み合わせて研究を深め、ついに、設計が合理的で上記の欠点を効果的に改善する本発明を提出するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする技術課題は、既存技術の不足を改善するために、ICキャリアボード用の透明半田マスク保護フィルム、その製造方法、及びその使用方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の技術問題を解決するため、本発明が採用する技術手段の1つは、透明半田マスク保護フィルムを提供することである。透明半田マスク保護フィルムは、第1のフィルム層、第2のフィルム層、離型フィルム材、及び離型コーティングを含む。前記第1のフィルム層はポリエステルベースフィルム層である。第2のフィルム層は、前記第1のフィルム層の一側の表面上に形成され、前記第2のフィルム層は感圧性接着剤フィルム層である。前記離型フィルム材は、前記第2のフィルム層が前記第1のフィルム層から遠ざかる一側の表面上に形成される。前記離型フィルム材は離型ベースフィルム及び離型コーティングを含む。前記離型コーティングは前記離型ベースフィルム及び前記第2のフィルム層の間に配置される。前記離型コーティングは、前記第2のフィルム層が前記第1のフィルム層から遠ざかる表面に直接に貼り合わされる。なかでも、前記離型ベースフィルムはポリエステル離型フィルムである。前記離型コーティングは、シリコン樹脂材及び前記シリコン樹脂材中に分散させた多数の無機粒子を含む。複数の前記無機粒子により、前記離型コーティングにおける前記離型ベースフィルムから遠ざかる表面が凹凸不平の外観を呈し、それは前記第2のフィルム層における前記離型コーティングと接着する表面に転写可能である。前記離型フィルム材が前記離型コーティングを介して前記第2のフィルム層から分離した後、前記第2のフィルム層における前記第1のフィルム層から遠ざかる表面に凹凸微小構造が形成される。
【0008】
好ましくは、前記第1のフィルム層は5μmから20μmの第1の厚さを有し、前記第2のフィルム層は3μmから18μmの第2の厚さを有し、前記離型ベースフィルムは15μmから35μmの第3の厚さを有し、そして前記離型コーティングは0.1μmから1.0μmの第4の厚さを有する。
【0009】
好ましくは、複数の前記無機粒子は0.001μmから1.0μmの平均粒子径を有する。
【0010】
好ましくは、前記離型コーティングの前記第4の厚さと前記無機粒子の前記平均粒子径との比率は5から20にある。
【0011】
好ましくは、複数の前記無機粒子は、前記離型コーティングにおける前記離型ベースフィルムから遠ざかる前記表面に至少部分的に露出し、これにより前記離型コーティングにおける前記離型ベースフィルムから遠ざかる前記表面が前記凹凸不平の外観を呈する。
【0012】
好ましくは、前記シリコン樹脂材は、メチルシリコン樹脂、メチルフェニルシリコン樹脂、エチレンシリコン樹脂、メチルエチレンシリコン樹脂、アミノシリコン樹脂、エポキシ改質シリコン樹脂、及び上記材料の派生物からなる群から選ばれる少なくとも1つである。前記無機粒子は例えばは、二酸化シリコン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、カオリン、タルク、ガラス粉、及び上記材料の派生物からなる群から選ばれる少なくとも1つである。
【0013】
好ましくは、前記離型コーティングは、離型コーティング材を前記離型ベースフィルムに塗布し、そして前記コーティング材の中の溶剤を乾燥させて形成するものである。前記離型コーティング材は、前記シリコン樹脂材、前記無機粒子、添加剤、及び前記溶剤を含む。前記シリコン樹脂材、前記無機粒子、及び前記添加剤は、前記離型コーティング材の中の固体成分である。前記離型コーティングにおいて、前記シリコン樹脂材及び前記無機粒子の重量の合計は、前記固体成分の中で少なくとも80%の重量を占める。ここで、前記シリコン樹脂材及び前記無機粒子の重量比率は0.3から1.1である。
【0014】
好ましくは、前記第2のフィルム層のガラス転移温度は-50℃から50℃である。
【0015】
述の技術的問題を解決するために、本発明が採用する別の技術的解決手段は、透明半田マスク保護フィルムの製造方法を提供することである。透明半田マスク保護フィルムの製造方法は以下のプロセスを行う。第1のフィルム層と、前記第1のフィルム層の一側の表面に形成される第2のフィルム層を提供する。ここで、前記第1のフィルム層はポリエステルベースフィルム層であり、前記第2のフィルム層は感圧性接着剤フィルム層である。離型フィルム材を提供する。該離型フィルム材は離型ベースフィルムと、前記離型ベースフィルムの一側の表面に形成される離型コーティングを含む。ここで、前記離型コーティングは前記第2のフィルム層に対向している。また、前記離型ベースフィルムはポリエステル離型フィルムであり、前記離型コーティングはシリコン樹脂コーティングであり、複数の無機粒子が分散している。前記複数の無機粒子により、前記離型コーティングにおける前記離型ベースフィルムから遠ざかる表面は凹凸不平の外観を呈する。前記離型フィルム材の前記離型コーティングを前記第2のフィルム層の前記第1のフィルム層から遠ざかる一側の表面に貼り合うことで、前記透明半田マスク保護フィルムの製造を完成させる。なかでも、前記離型フィルム材が前記離型コーティングを介して前記第2のフィルム層から分離した後、前記第2のフィルム層における前記第1のフィルム層から遠い表面には凹凸微小構造が形成される。
【0016】
上述の技術問題を解決するため、本発明が採用する別の技術的解決手段は、透明半田マスク保護フィルムの使用方法を提供する。透明半田マスク保護フィルムの使用方法は以下のように行う。前述のような透明半田マスク保護フィルムを提供する。前記離型フィルム材が前記離型コーティングを介して前記第2のフィルム層から分離することで、前記第2のフィルム層における前記第1のフィルム層から遠ざかる一側の表面に前記凹凸微小構造を形成する。回路キャリア板を提供する。回路キャリア板は回線板と回線板に形成された半田マスクを含む。前記第2のフィルム層の表面の前記凹凸微小構造を前記半田マスクに密接して貼り付け、これにより前記凹凸微小構造が前記回線板から遠ざかる一側の表面に転写される。前記第2のフィルム層の材料の硬度が前記半田マスクよりも高い。前記第1のフィルム層及び前記第2のフィルム層を前記回路キャリア板の前記半田マスクから除去し、これにより前記半田マスクにおける前記回線板から遠ざかる一側の表面に転写された粗面を形成する。粗面の算術平均粗さ(Ra)は0.01~0.5ナノメートルである。
【発明の効果】
【0017】
本発明による有益な効果では、本発明により提供される透明半田マスク保護フィルムを通じて、離型コーティング及び感圧性接着剤フィルム層の材料設計により、回路キャリア板上の半田マスクの表面外観を効果的に制御することができるため、回路キャリア板の信頼性及び品質を大幅に向上させることができ、さらに半田マスクと封止剤との接着性を効果的に向上させ、ブリスター問題を効果的に防ぐことができる。
【0018】
本発明の特徴及び技術内容がより一層分かるように、以下本発明に関する詳細な説明と添付図面を参照する。しかし、提供される添付図面は参考と説明のために提供するものに過ぎず、本発明の特許請求を制限するためのものではない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施例の透明半田マスク保護フィルムの積層構造模式図である。
図2A】本発明の実施例の透明半田マスク保護フィルムの製造方法ステップS110の構成例である。
図2B】本発明の実施例の透明半田マスク保護フィルムの製造方法ステップS120の構成例である。
図3A】本発明の実施例の透明半田マスク保護フィルムの使用方法ステップS210の構成例である。
図3B】本発明の実施例の透明半田マスク保護フィルムの使用方法ステップS220の構成例である。
図3C】本発明の実施例の透明半田マスク保護フィルムの使用方法ステップS230の構成例である。
図3D】本発明の実施例の透明半田マスク保護フィルムの使用方法ステップS240の構成例である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下は、特定の具体的な実施例を通じて、本発明が公開する実施形態を説明する。本分野の技術者は、本明細書が公開する内容から、本発明の利点と効果を理解することができる。
【0021】
本発明は他の異なる具体的な実施例によって実行または適用することができ、本明細書中の各詳細は、異なる視点および適用に基づいて、本発明の概念を逸脱しない範囲で各種の変更と変更を行うことができる。
【0022】
また、本発明の図面は単なる簡易的な示意説明であり、実際のサイズに基づく描画ではないことを事前に声明する。以下の実施形態は本発明の関連技術内容を更に詳細に説明するが、公開する内容は本発明の保護範囲を限定するものではない。
【0023】
理解できるべきである、本文中で「第1の」、「第2の」、「第3の」等の用語を使用して各種の材料やパラメータを説明する可能性があるが、これらの材料やパラメータはこれらの用語による制約を受けるべきではない。これらの用語は主に、1つの材料と他の材料、または1つのパラメータと他のパラメータを区別するために使用される。
【0024】
また、本文中で使用される「或いは」の用語は、実際の状況に応じて、関連性のあるリストアップされた項目のいずれか1つまたは複数の組み合わせを含む可能性があると解釈するべきである。
【0025】
[透明半田マスク保護フィルム]
図1を参照されたい。本発明の実施例は、透明半田マスク保護フィルム100を提供する。前記透明半田マスク保護フィルム100は、例えば、積層回路(IC)キャリア板の製造工程における透明半田マスク保護フィルムとして使用することができる。
【0026】
例えば、半田マスクが回路キャリア板に塗布された後、透明半田マスク(solder mask)保護フィルムはさらに半田マスクの上に貼り付けることができる。半田マスクに貼り付けられた透明半田マスク保護フィルムは、剥がす必要がなく、直接露光作業を行うことができる。半田マスクが現像する前に透明半田マスク保護フィルムを取り除くことにより、製程の時間を大幅に短縮し、半田マスクの抗酸化を実現することができる。しかしながら、本発明の透明半田マスク保護フィルム100の使用方法はこれに限定されない。
【0027】
特筆すべきは、本発明の実施例が提供する透明半田マスク保護フィルムは、半田マスク表面の外観を効果的に調節することができ、回路キャリア板の信頼性及び品質を大幅に向上させることができる。
【0028】
前記透明半田マスク保護フィルム100は、上から下に向かって順に積層された第1のフィルム層1、第2のフィルム層2、及び離型フィルム材3を含む。
【0029】
前記第1のフィルム層1はポリエステルベースフィルム層である。より好ましい例では、前記第1のフィルム層1はポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate,PET)から形成されたポリエステルベースフィルム層である。
【0030】
前記第1のフィルム層1は第1の厚さT1を有し、その厚さは5μmから20μmで、好ましくは10μmから15μmである。例えば、前記第1のフィルム層1の第1の厚さT1は、10μm、12μm、又は14μmであることができるが、本発明はこれに限定されない。
【0031】
前記第2のフィルム層2は、前記第1のフィルム層1の一側の表面に形成されている。前記第2のフィルム層2は感圧性接着剤フィルム層(または光学粘着剤フィルム層とも呼ばれる)である。前記第2のフィルム層2は、好ましくはOCA感圧性接着剤(optical clear adhesive)から形成された感圧性接着剤フィルム層である。本発明の一実施形態では、前記OCA感圧性接着剤は、例えば、アクリル感圧性接着剤(またはアクリル酸エステル感圧性接着剤とも呼ばれる)であることができる。
【0032】
前記第2のフィルム層2は第2の厚さT2を有し、その厚さは3μmから18μmで、好ましくは8μmから13μmであり、8μm又は10μmであることができるが、これに限定されない。
【0033】
前記離型フィルム材3は、前記第2のフィルム層2における前記第1のフィルム層1から遠ざかる一側の表面に形成されている。前記離型フィルム材3は、離型ベースフィルム31と、該離型ベースフィルム31の一側の表面に形成された離型コーティング32とを含む。前記離型コーティング32は、前記離型ベースフィルム31と前記第2のフィルム層2との間に配置され、かつ、前記離型コーティング32は、前記第1のフィルム層1から遠ざかる前記第2のフィルム層2の一側の表面に直接貼り合わせられる。
【0034】
前記離型ベースフィルム31は、ポリエステル離型フィルムである。より好ましくは、前記離型ベースフィルム31は、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、PET)から形成されるポリエステル離型フィルムである。
【0035】
前記離型ベースフィルム31は、第3の厚さT3を有し、これは15μmから35μmであり、また好ましくは20μmから30μmである。例えば、前記離型ベースフィルム31の第3の厚さT3は、21μm、25μm、29μmなどであることが可能であるが、本発明はこれに限定されない。
【0036】
さらに、前記離型コーティング32は、より好ましくは、離型ベースフィルム31の前記一側の表面に湿式塗布方式により形成される。
【0037】
前記離型コーティング32はシリコン樹脂コーティングであり、複数の無機粒子321がこれに分散している。具体的には、前記離型コーティング32はシリコン樹脂材と、シリコン樹脂材に分散する複数の無機粒子321を含む。
【0038】
複数の前記無機粒子321は、離型コーティング32における離型ベースフィルム31から遠ざかる表面が凹凸不平の外観を示すよう配置され、かつ、前記凹凸不平の外観は離型コーティング32が貼り付ける第2のフィルム層2の表面へ転写可能である。前記離型フィルム材3が離型コーティング32を介して第2のフィルム層2から分離する後(図3A参照)、前記第2のフィルム層2における第1のフィルム層1から遠ざかる表面に、転写された凹凸微小構造21が形成される(図3B参照)。
【0039】
本発明の一実施形態において、複数の前記無機粒子321は、少なくとも部分的に離型コーティング32における離型ベースフィルム31から遠ざかる表面に露出しており、これにより離型コーティング32における離型ベースフィルム31から遠ざかる表面が前記凹凸不平の外観を示すこととなる。
【0040】
前記離型コーティング32は、第4の厚さT4を有しており、第4の厚さT4は0.1μmから1.0μmで、好ましくは0.3μmから0.8μmであり、例えば0.3μmまたは0.5μmであることが可能であるが、これに限定されない。
【0041】
また、複数の前記無機粒子321は、平均粒子径Dを有しており、平均粒子径Dは0.001μmから1.0μmで、好ましくは0.03μmから0.1μmで、特に好ましくは0.03μmから0.07μmであり、例えば0.03μm、0.04μm、または0.05μmであることが可能であるが、これに限定されない。
【0042】
特に説明すべきは、本発明の実施例における無機粒子321の平均粒子径Dは、D50によって定義される。つまり、複数の前記無機粒子の累積微粒子分布パーセンテージが50%に達する時の粒径を示す。D50の物理的意義は、粒径がこの平均粒子径数値より大きい粒子が50%、この平均粒子径数値より小さい粒子も50%を占めることである。
【0043】
特に注目すべき点として、本発明のいくつかの実施形態において、前記離型コーティング32の第4の厚さT4と無機粒子321の平均粒子径Dとの比率は、好ましくは5から20、特に好ましくは8から18となる。例えば、その比率は10、12.5、または16.6である場合があるが、本発明はこれに限定されない。
【0044】
材料種類に関しては、前記シリコン樹脂材(silicone)は例えばポリシロキサン(polysiloxane)である可能性がある。より具体的には、前記シリコン樹脂材は、前記シリコン樹脂材は、メチルシリコン樹脂、メチルフェニルシリコン樹脂、エチレンシリコン樹脂、メチルエチレンシリコン樹脂、アミノシリコン樹脂、エポキシ改質シリコン樹脂、及び上記材料の派生物からなる群から選ばれる少なくとも1つである。
【0045】
本発明の一実施例において、前記シリコン樹脂材は例えばポリジメチルシロキサン(polydimethylsiloxane,PDMS)であるが、本発明はこれに限定されない。
【0046】
また、前記無機粒子は例えば、二酸化シリコン(SiO2)、炭酸カルシウム(CaCO3)、リン酸カルシウム(Ca3(PO4)2)、硫酸バリウム(BaSO4)、カオリナイト(Al2Si2O5(OH)4)、タルク(Mg3Si4O10(OH)2)、ガラス粉、及び上記材料の派生物からなる群から選ばれる少なくとも1つであることが可能である。本発明の一実施例において、前記無機粒子は例えば二酸化シリコンであるが、本発明はこれに限定されない。
【0047】
前記無機粒子321の材料硬度は、シリコン樹脂材の材料硬度より大きい。そして、第2のフィルム層2(感圧性接着剤フィルム層)の材料硬度よりも大きいである。
【0048】
したがって、複数の前記無機粒子321が離型コーティング32の表面に形成した凹凸不平の外観は、第2のフィルム層2(感圧性接着剤フィルム層)における第1のフィルム層1(ポリエステルベースフィルム層)から遠ざかる表面に転印できる。
【0049】
前述した通り、前記離型コーティング32は、離型ベースフィルム31の一側の表面に湿式塗布方法により形成されるのが好ましい。本実施例では、前記離型コーティング32は、離型ベースフィルム31に離型塗料を塗布し、離型塗料中の溶剤を乾燥させることにより形成される。つまり、前記離型塗料は流動状態を呈し、溶剤が乾燥した後に前記離型コーティング32を形成する。
【0050】
具体的には、前記離型塗料は、前記シリコン樹脂材、前記無機粒子、添加剤、及び溶剤を含む。
【0051】
含有量の範囲においては、前記離型塗料の総重量を100重量部とした場合、前記シリコン樹脂材の使用量は1重量部から15重量部で、好ましくは3重量部から8重量部で、特に好ましくは4.5重量部から6.5重量部である。前記無機粒子の使用量は1重量部から15重量部で、好ましくは5重量部から11重量部で、特に好ましくは7重量部から9重量部である。
【0052】
前記添加剤の使用量は0.5重量部から5重量部であり、好ましくは1重量部から5重量部、さらに好ましくは1重量部から3重量部である。また、前記溶剤の使用量は65重量部から97.5重量部であり、好ましくは75重量部から95重量部、さらに好ましくは80重量部から90重量部である。
【0053】
ここで、前記シリコン樹脂材、無機粒子、添加剤は、離型塗料中の固形成分であり、前記溶剤は離型塗料中の液体成分である。前記離型塗料が乾燥した後、溶剤の大部分が除去され、上記の固形成分が主に残されて前記離型コーティング32を形成する。
【0054】
別の観点から見ると、前記離型コーティング32中で、前記シリコン樹脂材及び無機粒子の重量の合計は、すべての固形成分中で少なくとも80%の重量を占め、好ましくは少なくとも88%を占める。
【0055】
また、前記シリコン樹脂材と無機粒子との重量比率は例えば0.3から1.1の範囲にあり、好ましくは0.4から1.0の範囲にあり、さらに好ましくは0.5から0.95の範囲にある。
【0056】
さらに、前記シリコン樹脂材及び無機粒子の材料の種類は既に述べた通りで、ここでは詳述しない。前記添加剤は例えば、金属触媒であり得る、例えば、ビスマス触媒、プラチナ触媒またはスズ触媒である。または、前記添加剤は変性されたシリカンであり得る。前記溶剤は、例えば、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン及びイソプロピルアルコールからなる材料群から選ばれる少なくとも1つであることが可能である。
【0057】
特筆すべきは、前記第2のフィルム層2(感圧性接着剤フィルム層)は、アクリル樹脂によって形成される。前記第2のフィルム層2は、離型コーティング32と完全に密着する。前記第2のフィルム層2の硬軟度は、その表面の転写される外観の形状や様子に直接影響する。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態では、前記第2のフィルム層2(感圧性接着剤フィルム層)のガラス転移温度(glass transition temperature,Tg)は、-50℃から50℃であり、好ましくは-5℃から20℃であり、特に好ましくは0℃から10℃である。これにより、前記第2のフィルム層2は、適切な硬軟度を有することができ、より良い転写効果を実現することができる。
【0059】
また、特筆すべきは、本発明の実施例の透明半田マスク保護フィルム100の中で、後続のIC回路キャリア板上の半田マスクの外観に最も大きな影響を与える要素は、シリコン樹脂離型コーティング及び感圧性接着剤フィルム層である。ここで、無機粒子の平均粒子径、添加量、コーティングの厚さと平均粒子径の比率、及び感圧性接着剤フィルム層の硬軟度は、上述の半田マスクの外観に影響を与える主要な要素である。
【0060】
本発明は、透明半田マスク保護フィルム100を通じてIC回路キャリア板上の半田マスクの表面の外観を調整し、その半田マスクと封止剤の間の接着性を確保してICキャリア板の性能を保証する。半田マスクの表面形状は主に透明半田マスク保護フィルム100によって決定される。
【0061】
また、本発明では、湿式塗布工法によってシリコン樹脂離型コーティングの外観を制御し、さらにシリコン樹脂離型コーティングを感圧性接着剤フィルム層と密着させることで、感圧性接着剤フィルム層が転写したパターンも一貫性を持つことができる。
【0062】
上述の構成に基づき、本発明の実施例が提供する透明半田マスク保護フィルムは、半田マスクの表面の外観の形状や様子を効果的に調整することができるため、回路キャリア板の信頼性と品質を高め、半田マスクとパッケージング接着剤の間の接着性を向上させ、またブリスター問題を効果的に回避することができる。
【0063】
[透明半田マスク保護フィルムの製造方法]
以上は本発明の実施例の透明半田マスク保護フィルムの構造特性および材料特性の説明であり、以下では、本発明の実施例の透明半田マスク保護フィルムの製造方法について説明する。
【0064】
図2A及び図2Bを参照されたい。本発明の実施例は透明半田マスク保護フィルムの製造方法も提供し、それはステップS110及びステップS120を含む。説明する必要があるのは、本実施例に記載された各ステップの順序と実際の操作方法は必要に応じて調整でき、本実施例に限定されないということである。さらに、本発明の実施例における透明半田マスク保護フィルムは前記製造方法を通じて完成できるが、これに限定されない。
【0065】
図2Aに示されているように、前記ステップS110は、第1のフィルム層1と、前記第1のフィルム層1の一側の表面(例:下表面)に形成された第2のフィルム層2とを提供することを含む。前記第1のフィルム層1はポリエステルベースフィルム層であり、前記第2のフィルム層2は感圧性接着剤フィルム層である。
【0066】
前記ステップS110はまた、離型フィルム材3を提供することを含み、前記離型フィルム材3は離型ベースフィルム31と、離型ベースフィルム31の一側の表面(例:上表面)上に形成された離型コーティング32とを含む。前記離型コーティング32は第2のフィルム層2(感圧性接着剤フィルム層)に対向している。
【0067】
前記離型ベースフィルム31はポリエステル離型フィルムである。前記離型コーティング32は、離型ベースフィルム31の前記側表面に湿式塗布工法により形成される。前記離型コーティング32はシリコン樹脂コーティングであり、複数の無機粒子321がその中に分散されている。なかでも、複数の前記無機粒子321は、離型コーティング32における離型ベースフィルム31から遠ざかる表面が凹凸不平の外観を呈するように配置される。
【0068】
図2Bに示すように、前記ステップS120は、前記離型フィルム材3の離型コーティング32(シリコン樹脂コーティング)と第2のフィルム層2(感圧性接着剤フィルム層)における第1のフィルム層1(ポリエステルベースフィルム層)から遠ざかる一側の表面と張り合わせることを含み、これにより透明半田マスク保護フィルムの製造が完成し、そして、前記離型コーティング32の表面における凹凸不平の外観が第2のフィルム層2と離型コーティング32の接合面に転写される。
【0069】
前記離型コーティング32と第2のフィルム層2が分離した後(図3A参照)、第2のフィルム層2における第1のフィルム層1から遠ざかる表面に、転写された凹凸微小構造21が形成される(図3B参照)。
【0070】
[透明半田マスク保護フィルムの使用方法]
図3Aから図3Dを参照されたい。本発明の実施例は透明半田マスク保護フィルムの使用方法も提供し、それはステップS210からステップS240までを含む。説明する必要があるのは、本実施例に記載された各ステップの順序と実際の操作方法は必要に応じて調整でき、本実施例に限定されないということである。さらに、本発明の実施例である透明半田マスク保護フィルムは前記使用方法を通じて使用できるが、これに限定されない。
【0071】
図3Aに示すように、前記ステップS210は以下のプロセスを含む。上記透明半田マスク保護フィルム100を提供し、透明半田マスク保護フィルム100は上から下へ順に積み重ねられた前記第1のフィルム層1(ポリエステルベースフィルム層)、第2のフィルム層2(感圧性接着剤フィルム層)、及び離型フィルム材3(ポリエステル離型フィルム31及び離型コーティング32を含む)を含む。そして、離型フィルム材3を離型コーティング32を通じて第2のフィルム層2から分離させ、これにより前記第2のフィルム層2における第1のフィルム層1から遠ざかる表面には、転写された凹凸微小構造21が形成される。
【0072】
図3Bに示すように、前記ステップS220は以下のプロセスを含む。回路キャリア板Bを提供し、回路キャリア板Bは回線板B1及び回線板B1の一側の表面(例:上表面)上に形成された半田マスクB2を含む。そして、第2のフィルム層2の表面の凹凸微小構造21を半田マスクB2に対向するように置く。前記回線板B1は例えば銅層(copper layer)回線板であり、そして前記半田マスクB2は例えば塗布によって回線板B1の前記一側の表面に形成することができる。
【0073】
図3Cに示すように、前記ステップS230は以下のプロセスを含む。第2のフィルム層2の表面の凹凸微小構造21を半田マスクB2に密接に接合させることにより、前記凹凸微小構造21を半田マスクB2における回線板B1から遠ざかる一側の表面に転写する。前記第2のフィルム層の材料の硬さは半田マスクよりも高い。前記ステップS230はまた、第1のフィルム層1(ポリエステルベースフィルム層)及び第2のフィルム層2(感圧性接着剤フィルム層)を取り除くことなく、半田マスクB2に対して露光処理を行うことを含む。
【0074】
図3Dに示すように、前記ステップS240は、前記露光処理を完了した後、前記第1のフィルム層1及び第2のフィルム層2を回路キャリア板Bの半田マスクB2から取り除くことを含む。これにより、半田マスクB2における回線板B1から遠ざかる一側の表面に、転写により形成された粗面Raが得られ、その算術平均粗さ(Ra)が0.01~0.5ナノメートルで、好ましくは0.05~0.1ナノメートルである。
【0075】
[実験データおよび試験結果]
以下、実施例1から3および比較例1から2を参照して、本発明の内容を詳細に説明する。ただし、以下の実施例は本発明を理解するためのものであり、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されない。ここで、実施例1から3は本発明の技術効果を裏付ける組み合わせであり、比較例1から2は技術効果が劣る組み合わせである。
【0076】
実施例1:下記の表1の条件に従って透明半田マスク保護フィルムを作成した。透明半田マスク保護フィルムには、順に積み重ねられた第1のフィルム層(PETベースフィルム層)、第2のフィルム層(OCA接着剤フィルム層)、離型フィルム材(シリコン樹脂コーティングおよびPET離型ベースフィルム)が含まれていた。各層の厚さの条件は表1に示す通りであった。第2のフィルム層のOCAガラス転移温度は0℃であった。シリコン樹脂離型コーティングは、湿式塗布工法により離型コーティングをPET離型ベースフィルム上に塗布したものであった。離型塗料の配合は表1に示す通りであり、これには、6.5重量部のシリコン樹脂(ポリジメチルシロキサン)、7重量部の無機粒子(二酸化シリコン)、1.5重量部の添加剤(フルオロ改質シロキサン)、及び85重量部の溶剤(トルエン/アセトン、体積比1:1)が含まれていた。ここで、無機粒子の粒子径は0.03μmであった。シリコン樹脂/無機粒子の重量比は6.5/7.0=0.93であった。塗層厚さ/無機粒子粒径の寸法比は0.5/0.03=16.6であった。
【0077】
その後、離型コーティングの溶剤成分を除去し、前記シリコン樹脂離型コーティングを形成した。前記シリコン樹脂離型コーティングは、第2のフィルム層(OCA接着剤フィルム層)に直接貼り合わせられた。次に、透明半田マスク保護フィルムの離型フィルム材をシリコン樹脂離型コーティングを介して第2のフィルム層(OCA接着剤フィルム層)と分離することにより、第2のフィルム層(OCA接着剤フィルム層)に凹凸微小構造を形成するようにした。次に、上述の実施例に基づく使用方法に従い、回路キャリア板の半田マスクの表面に凹凸微小構造が転写された粗面を形成した。最後に、半田マスクの物性を検査した。これには、半田マスクの表面光沢度(GU)、半田マスクの表面の粗さ(ナノメートル)、半田マスクの表面に粒子感があるかどうかが含まれた。
【0078】
実施例2~3および比較例1~2の製造方法は実施例1と同じで、異なるのはOCAガラスの転移温度、シリコン樹脂離型コーティングの厚さ、および/またはシリコン樹脂コーティングの配合であった。詳細なパラメータの差異は表1に示されており、ここでは述べない。
【0079】
【表1】
【0080】
前記半田マスクの表面光沢度(GU)の測定方法は、ASTM D523標準分析方法に従い、光沢度計(メーカー:BYK、モデル:mirco-TRI-gloss)を用いて60度の光沢度を測定し、75mm*150mmの測定面積で3組の読数を記録し、その平均値を取る。結果は表1に記録され、単位は光沢度(Gloss Unit、GU)である。
【0081】
前記半田マスクの表面粗度(ナノメートル)の測定方法は、表面粗度計を使用し、JIS-B-0601(2001)標準分析方法に従い、半田マスクの表面の算術平均粗度(Ra)を求める。
【0082】
表1の測定結果に基づき、実施例1~3の半田マスクの表面光沢度は少なくとも75GU以上で、具体的には78~82GUの間にあることがわかる。また、実施例1~3の半田マスクの表面粗度(Ra)は0.05~0.1ナノメートルであり、具体的には0.07~0.09ナノメートルであり、適切な数値範囲の表面粗度を有している。すなわち、実施例1~3の透明半田マスク保護フィルムは、半田マスクの表面の外観の形状や様子を効果的に調整することができ、回路キャリア板の信頼性及び品質を効果的に向上させ、後続の封止製程中の封止剤との接着性を効果的に向上させることができ、さらに、ブリスター問題を効果的に回避することができる。
【0083】
比較例1は、より薄いシリコン樹脂コーティング(厚さは僅か0.1μm)を使用し、そしてコーティングの厚さ/無機粒子の平均粒子径の比率は3.33で、理想的な数値範囲(5~20)より小さい。
【0084】
比較例2は、より大きい無機粒子(粒子径は0.12μm)を使用し、そしてコーティングの厚さ/無機粒子の平均粒子径の比率は4.16で、理想的な数値範囲(5~20)より小さい。
【0085】
比較例1~2の半田マスクの表面の光沢度は全て75GUより小さく、具体的には70GUである。また、比較例1~2の半田マスクの表面の粗さは0.05~0.1ナノメートルの範囲より大きく、具体的には0.12~0.15ナノメートルである。比較例1~2の半田マスクの表面物性の試験結果は多少劣る、そのため、後続の封止工程において、信頼性や品質に一部問題が生じる可能性がある。
【0086】
[実施例による有益な効果]
本発明の有益な効果は、本発明が提供する透明半田マスク保護フィルムが半田マスク表面の凹凸不平の外観を効果的に調整できることであり、そのため回路キャリア板の信頼性及び品質を向上させることができ、半田マスクと封止剤間の接着性を効果的に向上させ、ブリスター問題を効果的に避けることができる。
【0087】
以上に開示される内容は本発明の好ましい実施可能な実施例に過ぎず、これにより本発明の特許請求を制限するものではないので、本発明の明細書及び添付図面の内容に基づき為された等価の技術変形は、全て本発明の特許請求に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0088】
100:透明半田マスク保護フィルム
1:第1のフィルム層
2:第2のフィルム層
21:凹凸微小構造
3:離型フィルム材
31:離型ベースフィルム
32:離型コーティング
321:無機粒子
B:回路キャリア板
B1:回路板
B2:半田マスク
Ra:粗面
T1:第1の厚さ
T2:第2の厚さ
T3:第3の厚さ
T4:第4の厚さ
D:平均粒子径
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D