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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-21
(45)【発行日】2025-05-29
(54)【発明の名称】直線精度測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 9/00 20060101AFI20250522BHJP
   G01C 9/06 20060101ALI20250522BHJP
   G01C 15/00 20060101ALI20250522BHJP
【FI】
G01C9/00 B
G01C9/06 C
G01C15/00 104B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024015509
(22)【出願日】2024-02-05
【審査請求日】2024-02-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000207780
【氏名又は名称】大豊建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104776
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100119194
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 明夫
(72)【発明者】
【氏名】藤井 宣
【審査官】山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-157716(JP,U)
【文献】特開2020-148700(JP,A)
【文献】特開2000-008771(JP,A)
【文献】特開昭61-240114(JP,A)
【文献】特開2003-302219(JP,A)
【文献】実開平01-066014(JP,U)
【文献】特開2020-063982(JP,A)
【文献】特開2020-063600(JP,A)
【文献】特開平07-077423(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 9/00- 9/36
G01C15/00-15/14
G01B11/00-11/30
G01S 7/48- 7/51
G01S17/00-17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設された管状体の内周側を該管状体の軸芯に沿って移動可能に設けられ、その移動方向の後端面が識別面となる移動部材と、
前記移動部材が前記管状体の軸方向に沿って移動したときの前記識別面の画像を撮像する撮像手段と、
前記管状体の偏芯していない位置での前記撮像手段によって撮像された原点位置画像に対して、前記移動部材が前記管状体の開口端から移動した任意の距離における撮像画像の欠損状況及び撮像中心位置のずれの少なくとも一方に基づいて前記管状体の軸方向の偏芯状態を判別する判別手段と、
を備えることを特徴とする直線精度測定装置。
【請求項2】
前記移動部材は、所定の長さを有する円柱状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の直線精度測定装置。
【請求項3】
前記移動部材には、前記管状体の内周側を軸方向に沿って移動自在とする駆動機構が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の直線精度測定装置。
【請求項4】
前記識別面が発光面であって、該発光面が複数のLEDライトを有し、これらのLEDライトが前記発光面の中心位置から一定間隔で複数同心円状に発光されるとともに、前記中心位置から複数放射状に発光され、
前記判別手段は、前記撮像手段によって撮像された前記複数のLEDライトの複数の同心円及び複数の放射線の画像の欠損状況、及び前記原点位置画像前記任意の距離における撮像画像との重ね合わせの少なくとも一方に基づいて前記管状体の偏芯状態が判別可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の直線精度測定装置。
【請求項5】
前記識別面が反射面であって、前記管状体の開口端に前記反射面へ光線を照射して戻す再帰反射形態の光源が設置され、前記反射面がその中心位置から一定間隔で複数同心円状に反射されるとともに、前記中心位置から複数放射状に反射され、
前記判別手段は、前記撮像手段によって撮像された前記複数の前記反射面の複数の同心円及び複数の放射線の画像の欠損状況、及び前記原点位置画像と前記任意の距離における撮像画像との重ね合わせの少なくとも一方に基づいて前記管状体の偏芯状態が判別可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の直線精度測定装置。
【請求項6】
前記撮像手段がピントを自動で合わせるとともに、前記撮像画像の大きさを調整可能な自動焦点機能を有するカメラであることを特徴とする請求項1に記載の直線精度測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば削孔された円筒形のケーシングの直線精度を測定するための直線精度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建設工事において、土中へ鉛直方向、水平方向、もしくは任意の方向にボーリングマシン等で削孔を行うと、ボーリングマシンの据付精度の問題や、回転方向に螺旋状に偏移したりすることで、計画線形通りに削孔されないことがある。このように計画線からのずれが生じると、品質上の問題を起こすことがあるため、削孔後及び削孔中の少なくとも一方の直線精度を測定することが重要な管理項目となっている。従来から確立された測定方法としては、連続傾斜計を利用する方法等があるが、この方法は傾斜計を挿入する等の測定手間が複雑で時間を要するとともに、費用も多く掛かってしまうため、なかなか普及してこないのが現状である。
【0003】
また、従来、この種の直線精度測定装置には、例えば特許文献1に記載された技術がある。この装置は、鋼管の上部に設けられたレーザー鉛直器と、鋼管の外形と略同じ大きさで形成されたガイド材と、このガイド材に設けられ、レーザー鉛直器から照射されるレーザー光を受光するターゲットと、このターゲットに照射されたレーザー光の到達位置を撮影するための撮像装置と、この撮像装置により撮影した映像を表示するための表示装置と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5332943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された直線精度測定装置は、ダイヤフラム上に設置された受光板を撮像装置で撮影し、その映像を上記表示装置に表示してレーザー光の照射されたスポット位置が点マーカからどの向きへどれだけずれているかを読み取ることから、構造が複雑化し、ずれ幅を識別し難く、また鋼管を横方向に配置したものには適用できず、汎用性に欠けるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであり、構造を簡素化し、管状体の直線精度を容易に判別可能で、汎&#12132;性の高い直線精度測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の請求項1に記載の発明は、地中に埋設された管状体の内周側を該管状体の軸芯に沿って移動可能に設けられ、その移動方向の後端面が識別面となる移動部材と、前記移動部材が前記管状体の軸方向に沿って移動したときの前記識別面の画像を撮像する撮像手段と、前記管状体の偏芯していない位置での前記撮像手段によって撮像された原点位置画像に対して、前記移動部材が前記管状体の開口端から移動した任意の距離における撮像画像の欠損状況及び撮像中心位置のずれの少なくとも一方に基づいて前記管状体の軸方向の偏芯状態を判別する判別手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記移動部材は、所定の長さを有する円柱状に形成されていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記移動部材には、前記管状体の内周側を軸方向に沿って移動自在とする駆動機構が設けられていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記識別面が発光面であって、該発光面が複数のLEDライトを有し、これらのLEDライトが前記発光面の中心位置から一定間隔で複数同心円状に発光されるとともに、前記中心位置から複数放射状に発光され、前記判別手段は、前記撮像手段によって撮像された前記複数のLEDライトの複数の同心円及び複数の放射線の画像の欠損状況、及び前記原点位置画像前記任意の距離における撮像画像との重ね合わせの少なくとも一方に基づいて前記管状体の偏芯状態が判別可能に構成されていることを特徴とする。
また、本発明の請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記識別面が反射面であって、前記管状体の開口端に前記反射面へ光線を照射して戻す再帰反射形態の光源が設置され、前記反射面がその中心位置から一定間隔で複数同心円状に反射されるとともに、前記中心位置から複数放射状に反射され、前記判別手段は、前記撮像手段によって撮像された前記複数の前記反射面の複数の同心円及び複数の放射線の画像の欠損状況、及び前記原点位置画像と前記任意の距離における撮像画像との重ね合わせの少なくとも一方に基づいて前記管状体の偏芯状態が判別可能に構成されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記撮像手段がピントを自動で合わせるとともに、前記撮像画像の大きさを調整可能な自動焦点機能を有するカメラであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1に記載の発明によれば、管状体の偏芯していない位置での撮像手段によって撮像された原点位置画像に対して、移動部材が管状体の開口端から移動した任意の距離における撮像画像の欠損状況、及び撮像中心位置のずれの少なくとも一方に基づいて判別手段によって管状体の軸方向の偏芯状態を判別するように構成されているので、構造を簡素化し、管状体の直線精度を容易に判別可能で、汎用性を高めることが可能となる。
【0013】
また、本発明の請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、移動部材は、所定の長さを有する円柱状に形成されているので、移動部材を常に管状体の軸芯に沿って安定して移動させることができる。
【0014】
また、本発明の請求項3に記載の発明によれば、請求項1に記載の効果に加え、移動部材に管状体の内周側を軸方向に沿って移動自在とする駆動機構が設けられているので、管状体が水平方向や上り勾配に配設された場合でも、移動部材を管状体の内周側を軸方向に沿って移動させることができる。その結果、汎用性を一段と高めることが可能となる。
【0015】
また、本発明の請求項4に記載の発明によれば、請求項1に記載の効果に加え、識別面が発光面であって、この発光面が複数のLEDライトを有し、これらのLEDライトが発光面の中心位置から一定間隔で複数同心円状に発光されるとともに、中心位置から複数放射状に発光され、判別手段は、撮像手段によって撮像された複数のLEDの複数の同心円及び複数の放射線の画像の欠損状況、及び原点位置画像任意の距離における撮像画像との重ね合わせの少なくとも一方に基づいて管状体の偏芯状態が判別可能に構成されているので、直線方向に対して管状体の軸芯が如何なる方向にどの程度ずれているかを容易に判別することが可能となる。
また、本発明の請求項5に記載の発明によれば、請求項1に記載の効果に加え、識別面が反射面であって、管状体の開口端に反射面へ光線を照射して戻す再帰反射形態の光源が設置され、反射面がその中心位置から一定間隔で複数同心円状に反射されるとともに、中心位置から複数放射状に反射され、判別手段は、撮像手段によって撮像された複数の反射面の複数の同心円及び複数の放射線の画像の欠損状況、及び原点位置画像と任意の距離における撮像画像との重ね合わせの少なくとも一方に基づいて管状体の偏芯状態が判別可能に構成されているので、直線方向に対して管状体の軸芯が如何なる方向にどの程度ずれているかを容易に判別することが可能となる。
【0016】
また、本発明の請求項に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、撮像手段がピントを自動で合わせるとともに、前記撮像画像の大きさを調整可能な自動焦点機能を有するカメラであることから、管状体の直線精度を一段と識別し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施の形態に係る直線精度測定装置を示す概略斜視図である。
図2図1の直線精度測定装置の移動部材の視準板に設けられたLEDライトの配置模様の一例を示す平面図である。
図3】(A),(B)は、図2の移動部材の視準板において撮像中心位置Оが影になっていない場合と、撮像中心位置Оが影になっている場合での判別例を示す説明図である。
図4】本発明の第1実施の形態に係る直線精度測定装置の制御系を示すブロック図である。
図5図1の直線精度測定装置による測定手順を示す概略斜視図である。
図6図1の直線精度測定装置が適用されるケーシングパイプの偏芯状態を示す正面図である。
図7図1の直線精度測定装置を用いて深度(1)~(5)までのケーシングパイプの偏芯状態及びそれらの深度の画像を示す説明図である。
図8図1の直線精度測定装置を用いて深度(6)~(10)までのケーシングパイプの偏芯状態及びそれらの深度の画像を示す説明図である。
図9図1の直線精度測定装置を用いて深度(11)~(15)までのケーシングパイプの偏芯状態及びそれらの深度の画像を示す説明図である。
図10】本発明の第2実施の形態に係る直線精度測定装置を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の各実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
[第1実施の形態]
図1は、本発明の第1実施の形態に係る直線精度測定装置を示す概略斜視図である。図2は、図1の直線精度測定装置の移動部材の視準板に設けられたLEDライトの配置模様の一例を示す平面図である。図3(A),(B)は、図2の移動部材の視準板において撮像中心位置Оが影になっていない場合と、撮像中心位置Оが影になっている場合での判別例を示す説明図である。図4は、本発明の第1実施の形態に係る直線精度測定装置の制御系を示すブロック図である。
【0020】
なお、本実施の形態では、高圧噴射撹拌工法におけるケーシング削孔時の直線精度を測定する例について説明する。また、本発明は、高圧噴射撹拌工法におけるケーシング削孔時の直線精度を測定する例に限らず、管状体の軸方向に対する湾曲状態や傾斜状態を測定する場合であれば、上記管状体が鉛直方向、斜め方向、又は水平方向の如何なる方向に埋設された場合でも適用可能である。
【0021】
図1に示すように、直線精度測定装置1は、地中2に鉛直方向に埋設された管状体としての円筒状のケーシングパイプ3の内周側をケーシングパイプ3の軸芯Cに沿って移動可能に設けられた移動部材10と、この移動部材10がケーシングパイプ3の軸方向に沿って移動したときの移動部材10の後端面の画像を撮像する撮像手段としてのカメラ21を有する測定装置20と、を備えている。
【0022】
本実施の形態のケーシングパイプ3には、例えば直径が150mmのものが用いられている。また、以下の実施の形態では、カメラ21によって移動部材10の後端面の静止画像を撮像する例について説明するが、ビデオカメラによって動画像を撮像するようにしてもよい。
【0023】
移動部材10は、所定の長さ(例えば、10cm程度の厚さ)を有する円柱状に形成され、ケーシングパイプ3の内径に沿って移動可能とするため、その外径がケーシングパイプ3の内径よりも若干小径に形成されている。なお、移動部材10は、その外周面の周方向に一定間隔をおいてローラーやベアリング等の転動部材を配置すれば、ケーシングパイプ3内を円滑に移動することが可能となる。
【0024】
移動部材10には、その移動方向(進行方向)の後端面を識別面とする視準板11が設けられている。この視準板11には、多数のLEDライトが設けられ、これらのLEDライトは、図2に示すように視準板11の中心位置Oから一定間隔で多数同心円状に配設されて多数の同心円11aが発光するとともに、中心位置Oから多数放射状に配設されて多数の放射線11bが発光するように形成されている。多数のLEDライトから形成された同心円11a及び放射線11bの模様は、所定の照度を有することで、ケーシングパイプ3の開口端(管口部)3aから判別可能となっている。なお、視準板11の模様を反射素材で描き、開口端(管口部)3aから光を照射させて識別させるようにしてもよい。
【0025】
測定装置20は、有底円筒状に形成され、その外径がケーシングパイプ3の開口端3aの外径の長さと略同一に設定されている。測定装置20は、内部空間22に巻取り繰出し部材23が設置されている。この巻取り繰出し部材23は、吊下げ紐24が巻回され、所定の長さを繰出し可能であるとともに、所定の長さを巻取り可能に構成されている。この吊下げ紐24の先端部には、移動部材10が吊り下げられいる。したがって、本実施の形態では、ケーシングパイプ3が地中2に鉛直方向に埋設されていることから、移動部材10は、巻取り繰出し部材23から吊下げ紐24を繰り出すことにより、ケーシングパイプ3内の任意の測定位置(測定深度)へと移動される。
【0026】
巻取り繰出し部材23には、図4に示す測長機構30が設けられており、この測長機構30は、吊下げ紐24の繰出し長さを測定することで、移動部材10の測定位置(測定深度)を測定することができる。この測定深度の測定データが判別手段としての制御部31に出力され、この測定データが制御部31を経て表示部32に出力するとともに、記憶部33に逐次記憶される。これにより、吊下げ紐24の繰出し長さがデジタル表示される。その結果、ケーシングパイプ3内の軸方向における移動部材10の測定位置(測定深度)を作業者が目視にて判別することができる。
【0027】
制御部31は、CPU(Central Processing Unit)からなり、記憶部33は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)からなり、このROMは、電源を切断しても記憶内容を保持する必要のあるデータやプログラムを記憶する。上記RAMは、データを一時的に格納する。上記CPUは、上記ROMにインストールされているプログラムを実行することで各機能を実現する。記憶部33には、ROM以外に例えば、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、ハードディスク等のコンピュータ読み取り可能な電子媒体を含む。なお、上記データは、上記ROMに記憶することなく、別途設けたデータベースに記憶するようにしてもよい。
【0028】
また、測定装置20は、その中心位置に上記カメラ21が配設され、このカメラ21の撮影する方向は、ケーシングパイプ3内の軸方向の画像が撮影される。測定装置20は、ケーシングパイプ3の開口端3aに仮セットした後で、計画削孔方向に対して鉛直方向に据付固定し、合わせてトランシット(水準器と望遠鏡を組み合わせて水平角、鉛直角を測定する測量用機器)等で平面座標を測定する。
【0029】
本実施の形態で使用するカメラ21は、視準板11との距離に応じて、ピントを自動で合わせられるオートフォーカス機能を備えているものを基本構成とするものの、作業者が手動にてピントやズームを合わせるようにしてもよい。また、カメラ21は、レンズ25表面に十字状の直交する線が付され、カメラ21によって撮影した画像の平面方向(水平方向、垂直方向)の座標を判別することができるように構成されている。
【0030】
測長機構30で測定された移動部材10の測定位置(測定深度)と、その位置でカメラ21によって撮影した画像データは、その都度制御部31を経て記憶部33に記憶される。具体的には、測長機構30で測定された視準板11の深度データ、例えば1mの深さの視準板11がどの方向にどれだけずれて欠損したかを示す画像データと、視準板11の次の深度、例えば2mの深さの視準板11がどの方向にどれだけずれて欠損したたかの画像データのように深さ1m毎の視準板11の画像データを逐次制御部31を経て記憶部33に記憶しておき、これらの視準板11の深度データと撮像画像の欠損状況を示す画像データが制御部31に出力されることで、ケーシングパイプ3の軸方向の計画深度までの画像を表示部32に表示することができる。なお、図3(A)に示すように、撮像中心位置Oがケーシングパイプ3に掛からない程度の少ない偏芯量であれば、撮像中心位置Oを重ね合わせることで、各深度における偏芯量を識別することも可能である。
これにより、地中2に埋設されて外側が直接目視することができないケーシングパイプ3の軸方向に対する湾曲状態や傾斜状態を作業者が容易に判別することが可能となる。
【0031】
次に、本実施の形態の直線精度測定装置を用いてケーシングパイプ3の直線精度の測定作業を図5に示す手順に沿って行う例について説明する。本実施の形態では、高圧噴射撹拌工法におけるケーシング削孔時のケーシングパイプ3の直線精度を測定する例について説明する。図5は、図1の直線精度測定装置による測定手順を示す概略斜視図である。
【0032】
図5(1)~(2)に示すように、ケーシングパイプ3内に削孔用のインナーロッド4を設置してケーシングパイプ3とインナーロッド4を用いて地上から計画深度まで削孔を行う。次いで、その計画深度まで削孔した段階で、図5(3)に示すようにケーシングパイプ3からインナーロッド4を切り離して引き抜いた後、直線精度の測定作業を以下の手順で行う。この場合、削孔途中の段階でケーシングパイプ3の直線精度の測定作業を行ってもよい。
【0033】
この直線精度の測定作業は、まず、図5(4),(5)に示すように、ケーシングパイプ3の内径よりも若干径の小さな視準板11をケーシングパイプ3の内部に移動部材10とともにセットし、視準板11に吊下げ紐24を繋げて、ケーシングパイプ3の開口端3aから任意の測定位置(測定深度)へと吊り下げていく。
【0034】
このとき、視準板11は、ケーシングパイプ3の法線(軸線)方向に対して鉛直方向に位置する形状(本実施の形態では、所定の長さを有する円柱状)の移動部材10の後端面に設けられているため、視準板11の平面がケーシングパイプ3の開口端3aの平面位置が常に対向するようになっている。また、視準板11の平面部には、上記のように自ら発光するLEDライトが幾何学状の模様に配置されており、ケーシングパイプ3の開口端3aからその模様が判別することができるように構成されている。なお、視準板11は、開口端3aから判別可能な照度があれば、LEDライト以外の発光体や反射素材と光源を組み合わせたものでも代替することができる。
【0035】
次いで、図5(4)に示すように、測定装置20をケーシングパイプ3の開口端3aにセットする。測定装置20は、ケーシングパイプ3の内径と同一形状の外径の中有底円筒状に形成され、その軸芯位置にレンズ25が配置されるようにカメラ21がセットされている。これにより、カメラ21の撮影方向は、ケーシングパイプ3の軸方向になる。
【0036】
このとき、測定装置20をケーシングパイプ3の開口端3aに仮セットした後で、上述したように計画削孔方向と鉛直(計画削孔方向が鉛直であれば水平)に測定装置20を据付固定し、合わせてトランシット等で平面座標を測定する。
【0037】
次に、視準板11がケーシングパイプ3内において任意の深度に達した時点で、測定装置20に備え付けのカメラ21でその任意位置における視準板11の同心円11a及び放射線11bの模様を撮影する。ケーシングパイプ3内における測定深度の撮影間隔は、例えば1m毎に行い、計画深度まで繰り返す。
【0038】
このとき、ケーシングパイプ3が直線的(計画線通り)に削孔設置されている場合は、カメラ21によって撮影された模様の画像に欠け(欠損部分)が発生せずに最後まで満ちた真円形状で撮像され撮像中心位置Oのずれも発生しない。その反面、ケーシングパイプ3に曲がり(直線的な偏芯を含む)部分が形成されていれば、カメラ21によって撮影された模様の画像に欠損部分や撮像中心位置Oのずれが発生する。
【0039】
このようにして制御部31では、幾何学模様の画像の満ち欠けや撮像中心位置Oの変位量のデータと、その測定深度のデータを入力し、これらのデータに基づいて、ケーシングパイプ3の任意位置での偏芯量を判別することができる。すなわち、制御部31では、測定装置20を基軸とした直線に対するケーシングパイプ3の任意深度における偏芯量、つまり如何なる方向にどの程度ずれているかを求めることができる。なお、図3(B)に示すように、撮像中心位置Oがケーシングパイプ3に掛かる場合においても、視準板11の同心円11a及び放射線11bのように撮像中心位置O以外の箇所で前記偏芯量を識別することも可能である。
【0040】
次に、カメラ21によって撮影された模様の画像の満ち欠けや撮像中心位置Oのずれに基づいて、ケーシングパイプ3の任意位置での偏芯量を図6図9を用いて具体的に説明する。
【0041】
図6は、図1の直線精度測定装置が適用されるケーシングパイプの偏芯状態を示す正面図である。図7は、図1の直線精度測定装置を用いて深度(1)~(5)までのケーシングパイプの偏芯状態及びそれらの深度の画像を示す説明図である。図8は、図1の直線精度測定装置を用いて深度(6)~(10)までのケーシングパイプの偏芯状態及びそれらの深度の画像を示す説明図である。図9は、図1の直線精度測定装置を用いて深度(11)~(15)までのケーシングパイプの偏芯状態及びそれらの深度の画像を示す説明図である。
【0042】
なお、図7図9は、原点位置(HP)から移動部材10を所定の深度に移動させたときの原点位置(HP)画像と視準板11の測定深度位置の模様の画像との位置関係を示す概略モデル図である。また、測定位置が深くなるに従って、カメラ21で撮影される画像の大きさが小さくなるものの、図7図9では、撮影画像の欠損状態を判別し易くするためカメラ21にはオートフォーカス機能を持たせて撮影画像が小さくならないように調整するとともに、表示部32に表示する。上記原点位置(HP)画像とは、ケーシングパイプ3が全く偏芯していない位置でのカメラ21によって撮像される視準板11の画像である。
【0043】
さらに、図6では、ケーシングパイプ3内における測定深度の1m毎の間隔で撮影を行い、計画深度15mまで繰り返す例を示している。また、図7図9における(1)~(15)は、深度1mから計画深度15mまで1m毎のケーシングパイプ3の偏芯状態及びそれらの深度の画像を示している。
【0044】
図6及び図7に示すように、深度(1)~(3)までは、ケーシングパイプ3の曲がり(偏芯)が発生していないので、その深度の画像は、原点位置(HP)画像である真円の画像となる。深度(3)~(4)までは、ケーシングパイプ3が軸芯Cに対して右方向に48mm偏芯しているので、原点位置(HP)画像に対して右側が欠けた画像になる。深度(4)~(5)までは、軸芯Cに対して右方向に77mm偏芯し、さらに図7に示す深度(5)~(6)までは、軸芯Cに対して右方向に87mm偏芯し、原点位置(HP)画像に対して右側が次第に欠けた画像になる。なお、図8及び図9において、RPで示す円は、軸芯Cに対して最も右方向に偏芯したときの画像の位置を示している。同様に、LP示す円は、軸芯Cに対して最も左方向に偏芯したときの画像の位置を示している。
【0045】
深度(6)~(7)までは、軸芯Cに対して右方向に77mm偏芯し、すなわち深度(6)から左方向に10mm軸芯C方向に戻り、原点位置(HP)画像に対して右側の欠けが少なく左側が少し欠けた画像になる。深度(7)~(8)までは、軸芯Cに対して右方向に48mm偏芯し、すなわち深度(6)から左方向に39mm戻り、軸芯Cに対して右側の欠けがさらに少なくなり、左側の欠けがさらに大きい画像になる。深度(8)~(9)までは、中心位置に戻り、その深度の画像は、左側が欠けた画像となる。
【0046】
深度(9)~(10)までは、軸芯Cに対して左方向に54mm偏芯し、その深度の画像は、さらに左側が欠けた画像となる。深度(10)~(11)までは、軸芯Cに対して左方向に86mm偏芯し、軸芯Cからは86mmとなり、その深度の画像は、さらに左側が欠けた画像となる。深度(11)~(12)までは、軸芯Cに対して左方向に97mm偏芯し、軸芯Cからは97mmとなり、その深度の画像は、さらに左側が欠けた画像となる。
【0047】
深度(12)~(13)までは、軸芯Cに対して左方向に86mm偏芯し、すなわち右方向に97-86=11mm戻り、その深度の画像は、さらに左側の欠けが減り右側が少し欠けた画像となる。深度(13)~(14)までは、軸芯Cに対して左方向に54mm偏芯し、その深度の画像は、さらに左側の欠けがさらに戻り右側の欠けが大きくなった画像となる。そして、深度(14)~(15)までは、中心位置に戻り、その深度の画像は、左側及び右側が大幅に欠けた(RPとLPを重ね合わせた同一部分)画像となる。
【0048】
このようにして同心円11a及び放射線11bの模様の画像の満ち欠けに基づいて、ケーシングパイプ3の任意位置での偏芯する方向及び偏芯量を測定することが可能となる。
【0049】
そして、本実施の形態のように規則性を有する模様による測定を繰り返していけば、将来的に撮影画像からの推定値とケーシングパイプ3の実測変位との対比結果をAI(人工知能)の教師データに利用することで、AIによる推定方法に移行することができ、より簡易的な模様での推定が可能となる。
【0050】
このように本実施の形態によれば、カメラ21によって撮像された移動部材10のケーシングパイプ3の開口端3aからの距離での撮像画像の欠損状況及び撮像中心位置Oからのずれの少なくとも一方に基づいて制御部31によってケーシングパイプ3の軸方向の偏芯状態を判別するように構成したので、構造を簡素化し、ケーシングパイプ3の直線精度を容易に判別可能で、汎用性を高めることが可能となる。
【0051】
また、本実施の形態によれば、移動部材10は、所定の長さを有する円柱状に形成されているので、移動部材10を常にケーシングパイプ3の軸芯Cに沿って安定して移動させることができる。
【0052】
また、本実施の形態によれば、視準板11が複数のLEDライトを有し、これらのLEDライトが視準板11の撮影中心位置26から一定間隔で複数同心円状に配設されるとともに、撮影中心位置26から複数放射状に配設され、カメラ21によって撮像された複数のLEDライトの複数の同心円11a及び複数の放射線11bの画像の欠損状況、及び管口部における撮像画像と各深度における撮像画像との重ね合わせの少なくとも一方に基づいてケーシングパイプ3の偏芯状態が判別可能に構成されているので、直線方向に対してケーシングパイプ3の軸芯Cが如何なる方向にどの程度ずれているかを容易に判別することが可能となる。
【0053】
また、本実施の形態によれば、カメラ21が自動焦点機能を有するカメラであって、このカメラ21のレンズ25に直交する十字線が付されているので、カメラ21によって撮像した画像の水平方向、垂直方向の位置を容易に識別することができ、ケーシングパイプ3の直線精度を一段と識別し易くなる。
【0054】
なお、本実施の形態では、移動部材10に視準板11を設け、その視準板11にLEDライトを視準板11の中心位置Oから一定間隔で複数同心円状に発光させるとともに、撮像中心位置Oから複数放射状に発光させるようにしたが、視準板11に限らず移動部材の移動方向の後端面に反射式の模様、具体的には上記実施の形態と同様に、撮像中心位置Oから一定間隔で複数同心円状に反射するとともに、撮像中心位置Oから複数放射状に反射する反射面を設けることにより、開口端3aに図示しない光源を設置し、この光源から光を照射させてその反射した画像を判別するようにしてもよい。この反射形態には、光源から照射された光線の大部分を再び光源に戻す再帰反射が用いられる。
【0055】
このように構成することにより、直線方向に対してケーシングパイプ3の軸芯Cが如何なる方向にどの程度ずれているかを容易に判別することができる。
【0056】
[第2実施の形態]
図10は、本発明の第2実施の形態に係る直線精度測定装置を示す概略斜視図である。なお、前記第1実施の形態と同一又は対応する部分には、同一の符号を用いて異なる構成及び作用について説明する。
【0057】
本実施の形態に係る直線精度測定装置1Aは、ケーシングパイプ3内において移動部材10Aが自由落下することができない水平状態に設置されている。図10に示すように、移動部材10Aには、駆動機構40が搭載され、この駆動機構40を駆動することによって走行輪41が回転駆動し、ケーシングパイプ3内の前後方向に移動可能に構成されている。駆動機構40は、無線の送受信によって駆動又は停止が可能となるように操縦される。ここで、駆動機構40は、移動部材10と別体に設けて移動部材10にワイヤ等の紐状体で繋げるように構成し、駆動機構40を駆動することで、移動部材10を牽引するようにしてもよい。また、移動部材10Aを移動させる手段としては、開口端3aの反対側にも開口端3bが形成されて軸方向に貫通しているケーシングパイプ3であれば、開口端3b側から牽引するように移動部材10Aを操作するようにしてもよい。
【0058】
なお、本実施の形態では、ケーシングパイプ3が水平状態に限らず、上り勾配に設置されている場合でも適用可能である。
【0059】
このように本実施の形態によれば、移動部材10Aには、ケーシングパイプ3の内周側を軸方向に沿って移動自在とする駆動機構40が設けられているので、ケーシングパイプ3が水平方向や上り勾配に配設された場合でも、移動部材10Aをケーシングパイプ3の内周側を軸方向に沿って移動させることができる。その結果、汎用性を一段と高めることが可能となる。
【0060】
[発明の他の実施形態]
本発明の一実施の形態を説明したが、本実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。本実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。本実施の形態は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0061】
上記第1実施の形態では、ケーシングパイプ3が軸方向に対して左右方向に偏芯した例について説明したが、これに限らず上下左右如何なる方向にどの程度偏芯したかを測定することが可能となる。
【符号の説明】
【0062】
1 直線精度測定装置
2 地中
3 ケーシングパイプ(管状体)
3a 開口端(管口部)
3b 開口端(管口部)
4 インナーロッド
10 移動部材
11 視準板
11a 同心円
11b 放射線
20 測定装置
21 カメラ(撮像手段)
22 内部空間
23 巻取り繰出し部材
24 吊下げ紐
25 レンズ
30 測長機構
31 制御部(判別手段)
32 表示部
33 記憶部
40 駆動機構
41 走行輪
C 軸芯
O 撮像中心位置
【要約】
【課題】構造を簡素化し、管状体の直線精度を容易に判別可能で、汎&#12132;性の高い直線精度測定装置を提供する。
【解決手段】直線精度測定装置1は、管状体であるケーシングパイプ3の内周側をケーシングパイプ3の軸芯Cに沿って移動可能に設けられ、その移動方向の後端面が識別面である視準板11となる移動部材10と、移動部材10がケーシングパイプ3の軸方向に沿って移動したときの視準板11の画像を撮像する撮像手段としてのカメラ21と、移動部材10のケーシングパイプ3の開口端からの距離での撮像画像の欠損状況及び撮像中心位置のずれの少なくとも一方に基づいてケーシングパイプ3の軸方向の偏芯状態を判別する判別手段としての制御部と、を備えている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10