IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本発條株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-22
(45)【発行日】2025-05-30
(54)【発明の名称】トーションバーユニット
(51)【国際特許分類】
   F16F 1/366 20060101AFI20250523BHJP
   F16B 5/02 20060101ALI20250523BHJP
   F16F 1/36 20060101ALI20250523BHJP
   B60G 11/18 20060101ALI20250523BHJP
【FI】
F16F1/366
F16B5/02 G
F16F1/36 K
B60G11/18
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2022060729
(22)【出願日】2022-03-31
(65)【公開番号】P2023151232
(43)【公開日】2023-10-16
【審査請求日】2024-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】飯野 信次
(72)【発明者】
【氏名】上津原 才司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 拓也
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】実公昭39-021707(JP,Y1)
【文献】特開2014-201147(JP,A)
【文献】実開平02-098230(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 1/366
F16B 5/02
F16F 1/36
B60G 11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化複合材からなり、第1方向に延在する筒形状のトーションバーと、
前記トーションバーの端部を保持する第1溝部を有する第1保持部材と、
前記第1溝部と向かい合う位置に前記トーションバーの前記端部を保持する第2溝部を有し、前記第1保持部材を重ね合わせることで、前記第1溝部と前記第2溝部とにより前記トーションバーの前記端部を挟んで保持する第2保持部材と、
前記端部において前記筒形状の中空部に挿入された芯棒と、を有する、トーションバーユニット。
【請求項2】
前記芯棒を前記筒形状の中空部に挿入する方向において、前記芯棒の先端部の角部は丸みを帯びた形状又はテーパー形状である、請求項に記載のトーションバーユニット。
【請求項3】
前記トーションバーの前記端部の形状は、多角筒形状である、請求項1に記載のトーションバーユニット。
【請求項4】
前記多角筒形状は、四角筒形状、六角筒形状、又は八角筒形状である、請求項に記載のトーションバーユニット。
【請求項5】
前記第2保持部材は、前記第2溝部の近傍に貫通孔を有し、
前記第1保持部材は、前記貫通孔と向かい合う位置にボルト穴を有し、
前記第1保持部材は、前記第2保持部材の前記貫通孔に挿入されたボルトによって、前記第2保持部材と固定される、請求項1に記載のトーションバーユニット。
【請求項6】
繊維強化複合材からなり、第1方向に延在する筒形状のトーションバーと、
前記トーションバーの端部を保持する第1溝部を有する第1保持部材と、
前記第1溝部と向かい合う位置に前記トーションバーの前記端部を保持する第2溝部を有し、前記第1保持部材を重ね合わせることで、前記第1溝部と前記第2溝部とにより前記トーションバーの前記端部を挟んで保持する第2保持部材と、を有し、
前記第2保持部材は、前記第2溝部の近傍に前記第1保持部材と対向する面から突出するインロー凸部と、前記インロー凸部を貫通する貫通孔と、を有し、
前記第1保持部材は、前記インロー凸部と係合するインロー凹部と、前記インロー凹部の底面に形成されて、前記貫通孔に対応する位置に設けられたボルト穴と、を有する、トーションバーユニット。
【請求項7】
繊維強化複合材からなり、第1方向に延在する筒形状のトーションバーと、
前記トーションバーの端部を保持する第1溝部を有する第1保持部材と、
前記第1溝部と向かい合う位置に前記トーションバーの前記端部を保持する第2溝部を有し、前記第1保持部材を重ね合わせることで、前記第1溝部と前記第2溝部とにより前記トーションバーの前記端部を挟んで保持する第2保持部材と、を有し、
前記第2保持部材は、前記第2溝部の近傍に前記第1保持部材と対向する面に設けられたインロー凹部と、前記インロー凹部を貫通する貫通孔と、を有し、
前記第1保持部材は、前記インロー凹部と係合するインロー凸部と、前記インロー凸部において、前記貫通孔に対応する位置に設けられたボルト穴と、を有する、トーションバーユニット。
【請求項8】
前記第1保持部材は、接着材により前記第2保持部材と固定される、請求項1に記載のトーションバーユニット。
【請求項9】
前記第1溝部は、前記第1方向に沿って伸びており、
前記第1溝部に第3溝部が設けられ、
前記第2溝部は、前記第1方向に沿って伸びており、
前記第2溝部に第4溝部が設けられる、請求項に記載のトーションバーユニット。
【請求項10】
前記第1保持部材及び前記第2保持部材は、溶接により固定される、請求項1に記載のトーションバーユニット。
【請求項11】
前記端部の太さは、前記トーションバーにおける前記端部以外の部分の太さよりも太い、請求項1に記載のトーションバーユニット。
【請求項12】
前記第1保持部材は、サスペンションアーム、アンカーアーム、又はトルクアームと一体形成される、請求項1に記載のトーションバーユニット。
【請求項13】
前記端部において前記筒形状の中空部に挿入された芯棒をさらに有する、請求項6又は7に記載のトーションバーユニット。
【請求項14】
前記芯棒を前記筒形状の中空部に挿入する方向において、前記芯棒の先端部の角部は丸みを帯びた形状又はテーパー形状である、請求項13に記載のトーションバーユニット。
【請求項15】
前記トーションバーの前記端部の形状は、多角筒形状である、請求項6又は7に記載のトーションバーユニット。
【請求項16】
前記多角筒形状は、四角筒形状、六角筒形状、又は八角筒形状である、請求項15に記載のトーションバーユニット。
【請求項17】
前記第1保持部材は、前記第2保持部材の前記貫通孔に挿入されたボルトによって、前記第2保持部材と固定される、請求項6又は7に記載のトーションバーユニット。
【請求項18】
前記第1保持部材は、接着材により前記第2保持部材と固定される、請求項6又は7に記載のトーションバーユニット。
【請求項19】
前記第1溝部は、前記第1方向に沿って伸びており、
前記第1溝部に第3溝部が設けられ、
前記第2溝部は、前記第1方向に沿って伸びており、
前記第2溝部に第4溝部が設けられる、請求項18に記載のトーションバーユニット。
【請求項20】
前記端部の太さは、前記トーションバーにおける前記端部以外の部分の太さよりも太い、請求項6又は7に記載のトーションバーユニット。
【請求項21】
前記第1保持部材は、サスペンションアーム、アンカーアーム、又はトルクアームと一体形成される、請求項6又は7に記載のトーションバーユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、トーションバーユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用サスペンションとして、トーションバー式サスペンションが用いられている。トーションバー式サスペンションは、車輪を支持すると共に車体に対して回転可能に連結されたアーム機構と、アーム機構と車体との間に連結され、アーム機構の揺動に応じて捩れ変形するトーションバースプリング(以下、トーションバーと略称する)とを備えている。
【0003】
トーションバーをアーム機構に連結する場合、トーションバーの端部において、切削等により形成されたセレーションを、アーム機構の一部品であるトルクアームに形成された穴に嵌め込むことで、回転方向を固定していた。
【0004】
また、鋼製のトーションバーは、長くて重いという欠点があるが、繊維強化合成樹脂(以下、FRPともいう)を用いることで、トーションバーの軽量化を図ることが望まれている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開昭58-104439号公報
【文献】実開昭58-104440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、FRPを用いたトーションバーは、繊維の存在による難加工性、また繊維の切断による強度低下の懸念から端部にセレーションを形成することが困難である。また、FRPは、素材そのもののばらつきが原因で、圧入に対応できるほどの形状精度を出すことが困難である。したがって、FRPを用いたトーションバーを形成する場合、端部の形状に合わせて、トルクアームを個々に加工する必要がある。
【0007】
本発明の一実施形態は、FRPを用いたトーションバーの端部においてFRPを加工することなく、トーションバーを確実に固定することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係るトーションバーユニットは、繊維強化複合材からなり、第1方向に延在する筒形状のトーションバーと、トーションバーの端部を保持する第1溝部を有する第1保持部材と、第1溝部と向かい合う位置にトーションバーの端部を保持する第2溝部を有し、第1保持部材を重ね合わせることで、第1溝部と第2溝部とによりトーションバーの端部を挟んで保持する第2保持部材と、を有する。
【0009】
上記構成において、端部において筒形状の中空部に挿入された芯棒をさらに有する。
【0010】
上記構成において、芯棒を筒形状の中空部に挿入する方向において、芯棒の先端部の角部は丸みを帯びた形状又はテーパー形状である。
【0011】
上記構成において、トーションバーの端部の形状は、多角筒形状である。
【0012】
上記構成において、多角筒形状は、四角筒形状、六角筒形状、又は八角筒形状である。
【0013】
上記構成において、第2保持部材は、第2溝部の近傍に貫通孔を有し、第1保持部材は、貫通孔と向かい合う位置にボルト穴を有し、第1保持部材は、第2保持部材の貫通孔に挿入されたボルトによって、第2保持部材と固定される。
【0014】
上記構成において、第2保持部材は、第2溝部の近傍に第1保持部材と対向する面から突出するインロー凸部と、インロー凸部を貫通する貫通孔と、を有し、第1保持部材は、インロー凸部と係合するインロー凹部と、インロー凹部の底面に形成されて、貫通孔に対応する位置に設けられたボルト穴と、を有する。
【0015】
上記構成において、第2保持部材は、第2溝部の近傍に第1保持部材と対向する面に設けられたインロー凹部と、インロー凹部を貫通する貫通孔と、を有し、第1保持部材は、インロー凹部と係合するインロー凸部と、インロー凸部において、貫通孔に対応する位置に設けられたボルト穴と、を有する。
【0016】
上記構成において、第1保持部材は、接着材により第2保持部材と固定される。
【0017】
上記構成において、第1溝部は、第1方向に沿って伸びており、第1溝部に第3溝部が設けられ、第2溝部は、第1方向に沿って伸びており、第2溝部に第4溝部が設けられる。
【0018】
上記構成において、第1保持部材及び第2保持部材は、溶接により固定される。
【0019】
上記構成において、端部の太さは、トーションバーにおける端部以外の部分の太さよりも太い。
【0020】
第1保持部材は、サスペンションアーム、アンカーアーム、又はトルクアームと一体形成される。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一実施形態によれば、FRPを用いたトーションバーの端部においてFRPを加工することなく、トーションバーを確実に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係るトーションバーユニットの概要図である。
図2A】トーションバーの全体図である。
図2B】トーションバーの端部の拡大図である。
図3A】トーションバーの端部の拡大図である。
図3B】トーションバーの端部の拡大図である。
図4A】トーションバーの端部の断面図である。
図4B】トーションバーの端部の断面図である。
図5】2つの保持部材の正面図である。
図6】2つの保持部材及びトーションバーの端部の正面図である。
図7】保持部材の第1面を示す図である。
図8】保持部材の第1面を示す図である。
図9】トーションバーの端部の拡大図である。
図10】トーションバーの端部の拡大図である。
図11A】保持部材の第1面を示す図である。
図11B】保持部材の第1面を示す図である。
図12】トルクアームと一体に形成されたトーションバーユニットの概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の各実施形態について、図面を参照しつつ説明する。但し、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な形態で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0024】
図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本発明の各実施形態において、既出の図面に関して説明したものと同様の機能を備えた要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略することがある。
【0025】
本明細書等において、同一または類似する複数の構成を総じて表記する際には、同一の符号または同一の符号に大文字のアルファベットを添えて表記する場合がある。一つの構成のうちの複数の部分をそれぞれ区別して表記する際には、同一の符号を用い、さらにハイフンと自然数を用いる場合がある。
【0026】
本明細書等において、各構成に付記される「第1」、「第2」、または「第3」などの文字は、各構成を区別するために用いられる便宜的な標識であり、特段の説明がない限り、それ以上の意味を有さない。
【0027】
(第1実施形態)
本実施形態では、本発明の一実施形態に係るトーションバーユニット100について、図1図12を参照して説明する。
【0028】
図1は、本発明の一実施形態に係るトーションバーユニット100の概要図である。図2Aは、トーションバー110の全体図であり、図2Bは、トーションバー110の端部112の拡大図である。トーションバーユニット100は、トーションバー110と、トーションバー110を保持する保持部材121及び保持部材122と、を有する。トーションバーユニット100は、トーションバー110の端部112の一方を保持部材121及び122によって固定し、端部112の他方をトルクアーム等に取り付けることにより、ばね機構を発現させる。
【0029】
図2Aに示すように、トーションバー110は、繊維強化複合材からなり、第1方向に延在する筒形状を有している。繊維強化複合材料として、例えば、炭素繊維強化プラスチック、ガラス繊維強化プラスチック、又は、アラミド繊維強化プラスチック等の繊維強化プラスチックを用いる。繊維として、CNF(セルロールナノファイバー)、バサルト繊維、又はフラックス繊維などの天然由来の繊維を用いてもよい。繊維強化複合材料のマトリックス樹脂として、エポキシ、ポリウレタン、不飽和ポリエステルが挙げられる。エポキシの圧縮強度は103MPa~173MPa、ポリウレタンの圧縮強度は138MPa、及び不飽和ポリエステルは89MPa~207MPaである。
【0030】
トーションバー110は、本体部111と、端部112と、を有している。ここで、トーションバー110の本体部111とは、端部112以外の部分をいう。図2Bに示すように、トーションバー110において、端部112の筒形状は、本体部111の筒形状とは異なっている。本体部111の形状が円筒形状であるのに対して、端部112の形状は多角筒形状である。トーションバー110において、本体部111及び端部112に亘って、円柱状の空間(中空部113ともいう)が設けられている。つまり、端部112の多角筒形状の内径(円柱の直径)は、本体部111の円筒形状の内径(円柱の直径)と実質的に同一である。本明細書等において、トーションバー110が伸びる方向を、第1方向D1と呼ぶ。トーションバー110は、例えば、シートワインディング製法、又はフィラメントワインディング製法により形成されている。トーションバー110は、成形用の芯棒にシートやフィラメント状の素材を巻き付けて、端部112のみ金型等で圧縮することで、多角筒形状を成形する。端部112は金型等で圧縮されるため、本体部111の太さと比べて細くなる。
【0031】
トーションバー110の端部112は、保持部材121と保持部材122とによって挟んで保持される部分である。そのため、トーションバー110の端部112は、圧縮強度が高いことが好ましい。繊維強化複合材料のマトリックス樹脂として、先に挙げた材料は圧縮強度が高い材料であるため好適である。
【0032】
端部112における圧縮強度を高めるために、トーションバー110の端部112における筒形状の中空部113には、芯棒130が設けられていてもよい。芯棒130の材質として、例えば、鉄、鋼、アルミニウム等の金属、合金、又は硬質な樹脂が挙げれられる。芯棒130の圧縮強度は、マトリックス樹脂の圧縮強度よりも高いことが好ましい。芯棒の材質として、マトリックス樹脂の圧縮強度よりも高い材質を適宜選択すればよい。図2Bにおいて、芯棒130を中実材であるとして図示しているが、本発明の一実施形態はこれに限定されず、芯棒130は、中空材であってもよい。
【0033】
図3A及び図3Bは、トーションバー110の端部112の拡大図である。芯棒130を筒形状の中空部113に挿入する方向(第1方向D1)において、芯棒130の先端部131aの角部131bは、面取り加工が施されていてもよい。面取りは、R面取り又はC面取りが好ましい。C面取りとは、ピン角を45度の角度で平面に面取る方法である。R面取りとは、角を丸くする面取り方法である。図3Aに示すように、芯棒130先端部131aの角部131bがテーパー形状(C面取り)であることが好ましい。または、図3Bに示すように、芯棒130は、先端部131aの角部131bが丸みを帯びた形状(R面取り)であることが好ましい。芯棒130の先端部131aの角部131bがテーパー形状又は丸みを帯びた形状であることにより、芯棒130を中空部113に挿入する際に、中空部113に挿入しやすくなる。または、芯棒130を中空部113に挿入する際に、トーションバー110の中空部113が損傷することを抑制することができる。
【0034】
トーションバー110の端部112の形状は、多角筒形状である。言い換えると、トーションバー110が伸びる第1方向D1と垂直な第2方向D2に沿う端部112における断面形状は多角形である。多角筒形状の各角部は、面取り加工が施されていてもよい。面取りは、R面取り又はC面取りが好ましい。本実施形態において、端部112の形状は四角筒形状であり、四角筒形状の各角部は面取り加工が施されている場合について説明するが、本発明の一実施形態はこれに限定されない。例えば、端部112の形状は、三角筒形状、五角筒形状、六角筒形状、七角筒形状、八角筒形状などであってもよい。トーションバー110の端部112の形成のしやすさを考慮すると、トーションバー110の形状は、四角筒形状、六角筒形状、八角筒形状であることが好ましい。また、多角筒形状の各角部は、第1方向D1に沿って面取り加工が施されていなくてもよい。
【0035】
本実施形態では、トーションバー110の端部112の太さは、本体部111の太さよりも細い場合について説明する。ここで、端部112の太さとは、端部112における断面形状の内接円の直径をいう。また、本体部111の太さとは、本体部111の断面形状が円形であるため、円の直径をいう。
【0036】
次に、トーションバー110の端部112に挿入する芯棒130の長さについて、図4A及び図4Bを参照して説明する。
【0037】
図4Aは、芯棒130の長さL2が、端部112の長さL1よりも短い場合について図示している。図4Bは、芯棒130の長さL2が、端部112の長さL1よりも長い場合について図示している。図示したように、芯棒130の第1方向における長さL2は、端部112の第1方向D1の長さL1に対して長くても、短くても、同じであってもよい。必要な特性に応じて、適宜設定すればよい。
【0038】
図5は、保持部材121及び保持部材122の正面図である。保持部材121は、トーションバー110の端部112を第3方向D3から保持するように溝部1212を有している。保持部材122は、溝部1212と向かい合う位置に、トーションバー110の端部112を第3方向D3から保持する溝部1222を有する。また、溝部1212及び溝部1222の各々は、第1方向D1に沿って伸びている。保持部材121において、溝部1212が形成される面を第1面1211と呼ぶ。また、保持部材122において、溝部1222が形成される面を第1面1221と呼ぶ。保持部材121、122の材質として、例えば、鉄、鋼、アルミニウム等の金属、合金、又は硬質な樹脂が挙げられるが、特に限定されない。
【0039】
保持部材121と保持部材122とを重ね合わせると、溝部1212と溝部1222とを対向させることで、トーションバー110の端部112の形状に対応する形状となる。本実施形態では、端部112の外形は四角柱であるため、溝部1212と溝部1222とを対向させることで四角柱の形状が形成される。例えば、端部112の外形が六角柱の場合は、溝部1212と溝部1222とによって形成される形状は、六角柱となる。なお、端部112の外形と、溝部1212と溝部1222とを対向させて形成される形状とは異なっていてもよい。端部112の外形が六角柱の場合であっても、溝部1212と溝部1222とによって形成される形状は、六角柱の6辺のうち4辺のみを保持するひし形であってもよい。端部112を、保持部材121の溝部1212と、保持部材122の溝部1222とにより、トーションバー110の端部112を挟んで保持することができる。
【0040】
図1において、端部112における断面形状が四角形であり、四角形の対角線の1つの軸の方向は、第2方向D2と略一致している。このような形状とすることで、溝部1212と溝部1222を形成する際に、高い加工精度が要求されない。本実施形態では、四角形の対角線の1つの軸の方向が第2方向D2と略一致する場合について説明するが、本発明の一実施形態はこれに限定されない。端部112における断面形状が四角形の場合、四角形の対称線の1つの軸の方向が、第2方向D2と略一致するように、溝部1212及び溝部1222が形成されていてもよい。
【0041】
図5に示すように、溝部1212は、内壁1212a、1212bと、内壁1212aと内壁1212bとによって挟まれた稜1212cと、を有する。同様に、溝部1222も、内壁1222a、内壁1222bと、内壁1222aと内壁1222bとによって挟まれた稜1222cと、を有する。稜1212c、1222cは、丸みを帯びていてもよい。
【0042】
図1に示すように、保持部材122は、溝部1222の近傍に貫通孔1223を有する。保持部材121は、溝部1212の近傍に、貫通孔1223と向かい合う位置にボルト穴(図1では図示しない)を有する。図1においては、溝部1222の近傍に貫通孔1223が4箇所に設けられる。また、溝部1212の近傍にボルト穴が4箇所に設けられる。4箇所の貫通孔1223の位置は、4か所のボルト穴の位置と向かい合う。端部112を保持部材121と保持部材122とにより挟み込んだ後、ボルトが貫通孔1223及びボルト穴に挿入される。これにより、保持部材121と保持部材122とを強固に固定することができる。保持部材122に設けられる貫通孔は4箇所に限定されず、保持部材122の大きさと、溝部1222の大きさに合わせて適宜設定すればよい。また、保持部材121に設けられるボルト穴は、貫通孔が設けられる位置に応じて適宜設定すればよい。
【0043】
図6は、トーションバー110の端部112を挟んだ状態の保持部材121及び保持部材122の正面図である。図6に示すように、保持部材121と保持部材122との間には、間隔L3が設けられていることが好ましい。間隔L3は、締め代ともいう。保持部材121と保持部材122との間に締め代を設けることにより、保持部材121と保持部材122とをボルトにより固定する際に、端部112を強固に固定することができる。
【0044】
従来、FRPを用いたトーションバーは、繊維の存在による難加工性、また繊維の切断による強度低下の懸念から端部にセレーションを形成することが困難である。FRPは、素材そのもののばらつきが原因により、圧入に対応できるほどの形状精度を出すことが困難である。したがって、FRPを用いたトーションバーを形成する場合、端部の形状に合わせて、トルクアームを個々に加工する必要がある。
【0045】
本発明の一実施形態に係るトーションバーユニット100は、トーションバー110の端部112の形状を多角筒形状とし、端部112の多角筒形状に対応する溝部1212、1222が形成された保持部材121と保持部材122とによって挟んで保持されている。保持部材121と保持部材122を用いてトーションバー110の端部112を固定することができるため、FRPを用いたトーションバー110において、トーションバー110の成型後に端部112を加工する必要がない。端部112の形状に合わせてトルクアームを個々に加工する必要もないため、製造コストを削減することができる。また、トーションバー110の端部112を保持部材121及び保持部材122をボルトによって固定する構造であるため、トーションバー110の端部112を確実に固定することができる。また、トーションバー110の交換を容易に行うことができる。
【0046】
(変形例1)
本実施形態では、保持部材122に設けられた貫通孔1223と、保持部材121に設けられたボルト穴とが、互いに向かい合う場合について説明したが、本発明の一実施形態はこれに限定されない。保持部材121と保持部材122とをインロー構造によって係合してもよい。
【0047】
図7は、保持部材122の第1面1221を示す図である。図8は、保持部材121の第1面1211を示す図である。図7に示すように、溝部1222の近傍には、4箇所に貫通孔1223a~1223dが形成されている。貫通孔1223a~1223dは、溝部1222に沿って並んでいる。貫通孔1223a、1223bの周縁部には、第1面1221から突出したインロー凸部1225a、1225bが設けられている。換言すると、インロー凸部1225a、1225bを貫通するように、貫通孔1223a、1223bが設けられている。
【0048】
図8に示すように、溝部1212の近傍には、4箇所に貫通孔1223a~1223dに対応するボルト穴1214a~1214dが形成されている。ボルト穴1214a~1214dは、溝部1212に沿って並んでいる。ボルト穴1214a、1214bの周縁部には、インロー凸部1225a、1225bと係合するインロー凹部1215a、1215bが設けられている。換言すると、インロー凹部1215a、1215bの底面に、ボルト穴1214a、1214bが設けられている。保持部材121と保持部材122とを向かい合わせた際に、第1面1221から突出したインロー凸部1225a、1225bが第1面1211に設けられたインロー凹部1215a、1215bに嵌め込まれる。これにより、保持部材121と保持部材122との位置決めを容易にすることができる。この状態で、貫通孔1223a~貫通孔1223dのそれぞれにボルトを挿入して固定する。これにより、保持部材121と保持部材122とを強固に固定することができる。
【0049】
図7では、インロー凸部1225a、1225bは、第1方向D1及び第2方向D2の双方で隣接しないように設けられている。図8では、インロー凹部1215a、1215bは、第1方向D1及び第2方向D2の双方で隣接しないように設けられている。これにより、保持部材121と保持部材122との位置決め精度が向上する。また、保持部材121と保持部材122との相対的なずれに対する剛性が向上する。
【0050】
図7においては、インロー凸部1225a、1225bは、第1方向D1及び第2方向D2の双方で隣接しないように設ける場合について説明したが、本発明の一実施形態はこれに限定されない。インロー凸部は、貫通孔の全てに設けられていてもよい。また、複数のインロー凸部は、第1方向D1又は第2方向D2で隣接していてもよい。
【0051】
また、図8において、インロー凹部1215a、1215bは、第1方向D1及び第2方向D2の双方で隣接しないように設ける場合について説明したが、本発明の一実施形態はこれに限定されない。保持部材122の貫通孔の全てにインロー凸部が設けられていれば、インロー凹部もボルト穴の全てに設けられていてもよい。このように、インロー凸部及びインロー凹部の数は、保持部材121の大きさと、溝部1212の大きさに合わせて適宜設定すればよい。
【0052】
図7に、保持部材122にインロー凸部1225a、1225bが設けられ、図8に、保持部材121にインロー凹部1215a、1215bが設けられる例について示したが、本発明の一実施形態はこれに限定されない。保持部材121にインロー凹部1215a、1215bが設けられる位置に代えてインロー凸部が設けられ、保持部材122にインロー凸部1225a、1225b設けられる位置に代えてインロー凹部が設けられる構造であってもよい。この場合、保持部材122は、溝部1222の近傍に保持部材121と対向する面に設けられたインロー凹部と、インロー凹部を貫通する貫通孔1223と、を有し、保持部材121は、インロー凹部と係合するインロー凸部と、インロー凸部において、貫通孔1223に対応する位置に設けられたボルト穴と、を有していてもよい。
【0053】
(変形例2)
本実施形態では、トーションバー110の端部112の形状が、四角筒形状である場合について説明したが、本発明の一実施形態はこれに限定されない。例えば、図9に示すように、端部112の形状が八角筒形状であってもよい。
【0054】
端部112の形状が八角筒形状の場合は、溝部1212と溝部1222とが向かい合うことによって形成される形状は、八角柱となる。また、端部112の外形が八角柱の場合であっても、溝部1212と溝部1222とによって形成される形状は、八角柱の8辺のうち4辺のみを保持するひし形であってもよい。また、端部112の断面形状は八角形の場合、八角形の対角線の1つの軸の方向は、第2方向D2と略一致している。このような形状とすることで、溝部1212と溝部1222を形成する際に、高い加工精度が要求されないため好ましい。また、八角筒形状の形状は、四角筒形状及び六角筒形状よりも円筒形状に近づくため、ねじりによって生じる応力が均一化される。
【0055】
なお、本実施形態では、多角形の対角線の1つの軸の方向は、第2方向D2と略一致する場合について説明したが、本発明の一実施形態はこれに限定されない。多角形の対称線の1つの軸が、第2方向D2と一致するように、溝部1212及び溝部1222が形成されていてもよい。
【0056】
(変形例3)
本実施形態では、トーションバー110の端部112の太さは、本体部111の太さよりも細い場合について説明したが、本発明の一実施形態はこれに限定されない。端部112の太さが、本体部111の太さよりも太くてもよい。
【0057】
図10は、トーションバー110の端部112の拡大図である。例えば、端部112における断面形状の内接円の直径は、トーションバー110の本体部111の断面形状の直径に対して大きくてもよい。この場合、保持部材121と保持部材122とで挟んで保持する際に、端部112の圧縮強度を向上させることができる。また、端部112における断面形状の内接円の直径が、トーションバー110の本体部111の断面形状の直径に対して大きい場合は、本体部111と端部112との境界において応力集中しない形状とすればよい。例えば、端部112と本体部111との境界において、断面形状の内接円の直径が連続的に変化するような形状とすればよい。トーションバー110の形成時に、端部112においてシートやフィラメント状の素材を本体部111よりも巻き増しすることで、端部112の太さを本体部111の太さよりも太くすることができる。
【0058】
図10においては、端部112の形状が四角筒形状の場合について説明したが、端部112の形状が他の多角筒形状であっても、四角筒形状の場合と同様である。
【0059】
(変形例4)
本実施形態では、保持部材121と保持部材122とをボルトによって固定する方法について説明したが、本発明の一実施形態はこれに限定されない。保持部材121と保持部材122とを接着材によって固定してもよい。この場合、保持部材121と保持部材122とでトーションバー110の端部112を挟んだ状態で、保持部材121と保持部材122との間に間隔(締め代)は設けられない。
【0060】
図11Aは、保持部材121の第1面1211を示す図である。図11Aに示すように、保持部材121の溝部1212には、溝部1216が設けられている。溝部1216は、溝部1212が伸びる方向と交差する方向に沿って伸びている。なお、図示しないが、保持部材122にも、溝部1222が伸びる方向と交差する方向に溝部が伸びている。保持部材122に設けられた溝部は、溝部1216と対向していてもよい。
【0061】
保持部材121と保持部材122とを接着材で固定する場合、保持部材121の第1面1211及び溝部1212と、保持部材122の第1面1221及び溝部1222に接着材を塗布する。その後、端部112を間に挟んで、第1面1211と第1面1221とを接着すると共に、溝部1212と溝部1222と端部112を接着する。このとき、溝部1216と、保持部材122に設けられた溝部に、接着材が入り込む。これにより、接着材がはみ出してしまうことを抑制することができる。
【0062】
図11Bは、保持部材121の第1面1211を示す図である。図11Bに示すように、溝部1218は、溝部1212が伸びる方向と平行な方向に沿って伸びている。溝部1219は、溝部1222が伸びる方向と平行な方向に沿って伸びている。溝部1218が設けられる位置は、図5に示す稜1212cに対応する。溝部1219が設けられる位置は、図5に示す稜1222cに対応する。溝部1218、1219により、接着材がはみ出てしまうことを抑制することができる。
【0063】
保持部材121と保持部材122とをボルトによって固定する場合であっても、接着材によって端部112を固定してもよい。図7及び図8に示すように、保持部材121と保持部材122とによりインロー構造を構成する場合であっても、保持部材121と保持部材122とを接着材によって接着してもよい。例えば、図8に示す保持部材121において、溝部1212が伸びる方向と交差する方向に伸びる溝部を設けてもよいし、溝部1212が伸びる方向と平行な方向に伸びる溝部を設けてもよい。図7に示す保持部材122において、溝部1222が伸びる方向と交差する方向に伸びる溝部を設けてもよいし、溝部1222が伸びる方向と平行な方向に伸びる溝部を設けてもよい。保持部材121と保持部材122とをボルトによって固定するとともに、接着材を用いることにより、保持部材121と保持部材122とを強固に固定することができる。
【0064】
図11A及び図11Bでは、溝部1212と交差する溝部1216は、1カ所に設けられる場合について示すが、複数箇所に設けられていてもよい。同様に、保持部材122に設けられる溝部1222と交差する溝部は、複数箇所に設けられていてもよい。
【0065】
また、保持部材121と保持部材122とを溶接によって固定することで、トーションバー110の端部112が固定されてもよい。この場合、保持部材121と保持部材122とでトーションバー110の端部112を挟んだ状態で、保持部材121と保持部材122との間に間隔(締め代)があってもよい。保持部材121と保持部材122との間に端部112を挟んだ状態で荷重をかけながら溶接することが好ましい。また、保持部材121に設けられる貫通孔、保持部材122に設けられるボルト穴を省略できる。保持部材121と保持部材122とを溶接によって固定することで、保持部材121と保持部材122とにより、端部112を強固に固定することができる。
【0066】
(変形例5)
本実施形態では、トーションバーユニット100を、トルクアームに取り付ける場合について説明したが、本発明の一実施形態はこれに限定されない。例えば、保持部材121、122の一方が、車体、アームなどと一体に形成されていてもよい。また、サスペンションアーム、アンカーアーム、又はトルクアームなどと一体に形成されてもよい。
【0067】
図12は、トーションバーユニット200の概要図である。図12に示すように、トーションバー110の一方の端部112は、保持部材121Aと保持部材122Aとによって挟んで保持されている。保持部材121Aは、サスペンションアームとして機能する。保持部材122Aは、ボルト(図示しない)によって保持部材121Aに固定されている。保持部材121Aと保持部材122Aとにより端部112を挟んで保持する機構は、図1図11Bにおける保持部材121及び保持部材122の説明を参照すればよい。
【0068】
トーションバー110の他方の端部112は、保持部材141と保持部材142とによって挟んで保持されている。保持部材141及び保持部材142は、車体側に設けられる。保持部材142は、ボルト(図示しない)によって保持部材141に固定されている。保持部材141と保持部材142とにより端部112を挟んで保持する機構は、図1図11Bにおける保持部材121及び保持部材122の説明を参照すればよい。保持部材141は、車高調整用ボルト151と連結されている。車高調整用ボルト151は、固定部152によって車体に連結されている。図12に示すように、保持部材121、122の少なくとも一方、及び保持部材141、142の少なくとも一方が、他の部品と一体形成されることにより、部品点数を減らすことができる。
【0069】
本発明の実施形態として上述したトーションバーユニット100、200などは、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。また、各実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0070】
また、上述した各実施形態によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、または、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと理解される。
【符号の説明】
【0071】
100、200:トーションバーユニット、110:トーションバー、111:本体部、112:端部、113:中空部、121、122:保持部材、130:芯棒、131a:先端部、131b:角部、141、142:保持部材、151:車高調整用ボルト、152:固定部、1211:第1面、1212:溝部、1212a、1212b:内壁、1212c:稜、1214a~1214d:ボルト穴、1215a、1215b:インロー凹部、1216:溝部、1221:第1面、1222:溝部、1222a、1222b:内壁、1222c:稜、1223:貫通孔、1223a~1223d:貫通孔、1225a、1225b:インロー凸部
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12