(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-22
(45)【発行日】2025-05-30
(54)【発明の名称】半導体装置および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H10D 62/10 20250101AFI20250523BHJP
H10D 8/50 20250101ALI20250523BHJP
H10D 30/01 20250101ALI20250523BHJP
H10D 30/66 20250101ALI20250523BHJP
【FI】
H10D62/10 101M
H10D8/50 D
H10D30/01 301G
H10D30/01 301J
H10D30/66 101F
H10D30/66 103A
H10D30/66 103Z
H10D62/10 101G
(21)【出願番号】P 2022084896
(22)【出願日】2022-05-25
【審査請求日】2024-05-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】椿谷 貴史
(72)【発明者】
【氏名】田所 千広
【審査官】岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-102550(JP,A)
【文献】国際公開第2015/060441(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10D 62/10
H10D 8/50
H10D 30/66
H10D 30/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面と前記第1主面とは反対側の面である第2主面とを有し、電流が流れる有効領域と前記有効領域の外周側を囲むように形成された終端領域が規定された半導体基板と、
前記終端領域の前記第1主面に接して前記第1主面を覆うように設けられた酸化膜と、
絶縁性材料を含み、前記酸化膜の周縁部を除く部分を覆うように設けられた表面保護膜と、
前記表面保護膜に覆われた前記酸化膜の部分において、下方に凹む凹部または上方に突出する凸部の少なくとも一方と、を備え、
前記凹部の幅は上方に向かって小さくなる部分を有し、
前記凸部の幅は上方に向かって大きくなる部分を有する、半導体装置。
【請求項2】
前記凹部は、前記半導体基板の前記第1主面に設けられた内部空間が台形の断面形状を有する第1の凹部と、前記第1の凹部の表面に設けられかつ前記酸化膜からなる内部空間が台形の断面形状を有する第2の凹部により構成された、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記凹部は、前記半導体基板の前記第1主面に設けられた内部空間が矩形の断面形状を有する第1の凹部と、前記第1の凹部の表面に設けられかつ前記酸化膜からなる内部空間が矩形の断面形状を有する第2の凹部と、前記第2の凹部の表面に設けられかつ第1の密着膜からなる内部空間が台形の断面形状を有する第3の凹部により構成された、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1の密着膜は堆積酸化膜を含む、請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記凸部は、前記酸化膜と前記表面保護膜との間に設けられ、第2の密着膜からなる、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第2の密着膜は堆積酸化膜またはポリシリコン膜を含む、請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記凹部は、前記表面保護膜の上面視輪郭に対して平行に延伸する溝であり、
前記凸部は、前記表面保護膜の前記上面視輪郭に対して平行に延伸する畝である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記凹部および前記凸部は上面視にて碁盤目状に形成されている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記表面保護膜はポリイミドを含む、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記半導体基板は、炭化珪素、窒化ガリウム、またはダイヤモンドを含むワイドバンドギャップ半導体で構成された、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項11】
請求項1に記載の半導体装置を製造する半導体装置の製造方法であって、
前記凹部は、第1の凹部と第2の凹部により構成され、
前記半導体装置の製造方法は、
(a)前記半導体基板の前記第1主面に設けられた内部空間が台形の断面形状を有する前記第1の凹部を形成する工程と、
(b)前記第1の凹部の表面に設けられかつ前記酸化膜からなる内部空間が台形の断面形状を有する前記第2の凹部を形成する工程と、
を備えた、半導体装置の製造方法。
【請求項12】
請求項1に記載の半導体装置を製造する半導体装置の製造方法であって、
前記凹部は、第1の凹部と第2の凹部と第3の凹部により構成され、
前記半導体装置の製造方法は、
(c)前記半導体基板の前記第1主面に設けられた内部空間が矩形の断面形状を有する前記第1の凹部を形成する工程と、
(d)前記第1の凹部の表面に設けられかつ前記酸化膜からなる内部空間が矩形の断面形状を有する前記第2の凹部を形成する工程と、
(e)前記第2の凹部の表面に設けられかつ第1の密着膜からなる内部空間が台形の断面形状を有する前記第3の凹部を形成する工程と、
を備えた、半導体装置の製造方法。
【請求項13】
請求項5に記載の半導体装置を製造する半導体装置の製造方法であって、
(f)前記半導体基板の前記第1主面側に前記第2の密着膜の1次パターンを形成する工程と、
(g)前記1次パターン上に前記第2の密着膜の2次パターンを形成することで、前記半導体基板の前記第1主面側に前記凸部を形成する工程と、
を備えた、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置および半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置において、半導体基板の上面に酸化膜が設けられ、その上にポリイミドが設けられている。しかし、酸化膜とポリイミドの密着性が弱いため、高湿下に晒され続けた場合、時間経過と共に終端領域のポリイミドと酸化膜の界面から水分が進展する。このため、最外周のガードリングとチャネルストッパとの間で電界集中が起こるという問題があった。
【0003】
これに対し、終端領域における半導体基板の上面に溝を設けることで終端領域を長くすることなく、耐湿性を向上させることができる半導体装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、終端領域に設けられた溝は長方形状であるため、上下方向の剥がれに関しては密着性が弱く、パワーサイクルのようにチップに熱応力がかかる場合、上下方向に剥がれが発生するという問題があった。
【0006】
そこで、本開示は、半導体装置において、耐湿性を向上させつつパワーサイクル耐量を向上させることが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る半導体装置は、第1主面と前記第1主面とは反対側の面である第2主面とを有し、電流が流れる有効領域と前記有効領域の外周側を囲むように形成された終端領域が規定された半導体基板と、前記終端領域の前記第1主面に接して前記第1主面を覆うように設けられた酸化膜と、絶縁性材料を含み、前記酸化膜の周縁部を除く部分を覆うように設けられた表面保護膜と、前記表面保護膜に覆われた前記酸化膜の部分において、下方に凹む凹部または上方に突出する凸部の少なくとも一方とを備え、前記凹部の幅は上方に向かって小さくなる部分を有し、前記凸部の幅は上方に向かって大きくなる部分を有するものである。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、表面保護膜と半導体基板の密着性が向上し、かつ、表面保護膜の外周端から内周側にある例えばガードリングまでの沿面距離が長くなるため、半導体装置の耐湿性が向上する。さらに、凹部または凸部により生じるアンカー効果によって、半導体装置における上下方向の密着性が改善されるため、半導体装置のパワーサイクル耐量が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る半導体装置の上面図である。
【
図3】
図2に対応する領域の一例を示す部分上面図である。
【
図4】
図2に対応する領域の他の例を示す部分上面図である。
【
図7】実施の形態3において畝の形成方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施の形態1>
<半導体装置の構成>
実施の形態1について、図面を用いて以下に説明する。
図1は、実施の形態1に係る半導体装置の上面図である。
図2は、
図1のA-A線断面図である。
【0011】
図1と
図2に示すように、半導体装置は、有効領域2と終端領域7が規定された半導体基板1と、酸化膜4と、絶縁保護膜5と、表面保護膜としての有機絶縁膜6と、下方に凹む凹部としての溝8とを備えている。
【0012】
図1に示すように、半導体基板1の中央部には電流が流れる有効領域2が規定されている。有効領域2には、図示しないトランジスタまたはダイオードが設けられている。半導体基板1は、第1主面としての上面と、第1主面とは反対側の面である第2主面としての下面とを有している。半導体基板1の上面には、有効領域2の周りを囲むように複数(例えば3つ)のガードリング3が設けられている。
【0013】
図2に示すように、半導体基板1の上面には酸化膜4が設けられている。具体的には、酸化膜4は、終端領域7における半導体基板1の上面に接してその上面を覆うように設けられている。半導体基板1はシリコン基板であり、酸化膜4はシリコン酸化膜である。複数のガードリング3は、酸化膜4の上面の一部に選択的に設けられている。絶縁保護膜5は、ガードリング3を覆うように酸化膜4の上面の一部に選択的に設けられている。
【0014】
ウエハ状態の半導体基板1がダイシングされてチップ状に加工され、ダイシングされた部分が半導体基板1の外周端、すなわち、チップの終端となっている。有機絶縁膜6は、絶縁保護膜5を覆うように酸化膜4の上面の一部に選択的に設けられている。具体的には、有機絶縁膜6は、絶縁性材料を含み、酸化膜4の周縁部を除く部分を覆うように設けられている。有機絶縁膜6は例えばポリイミドである。最外周のガードリング3と半導体基板1の外周端との間の終端領域7において、有機絶縁膜6が酸化膜4に直接接している。有機絶縁膜6は半導体基板1の周縁部までは設けられていない。
【0015】
本実施の形態では、終端領域7における半導体基板1の上面には、少なくとも1つの溝8が設けられている。本実施の形態では、溝8が複数設けられている場合について説明する。溝8には有機絶縁膜6が埋め込まれており、溝8の幅は上方に向かって小さくなる部分を有している。溝8の幅とは、
図2における横方向の幅である。溝8は、半導体基板1の上面に設けられた内部空間が台形の断面形状を有する第1の凹部1aと、第1の凹部1aの表面に設けられかつ酸化膜4からなる内部空間が台形の断面形状を有する第2の凹部4aとで構成されている。
【0016】
次に、溝8の上面視形状について説明する。
図3は、
図2に対応する領域の一例を示す部分上面図である。
図4は、
図2に対応する領域の他の例を示す部分上面図である。
【0017】
図3に示すように、複数の溝8は、有機絶縁膜6の上面視輪郭の全周に対して平行に延伸している。すなわち、複数の溝8は、上面視にてチップの終端と平行となるように設けられており、ストライプ状に形成されている。
【0018】
または、
図4に示すように、複数の溝8は、有機絶縁膜6の全周に渡って上面視にてストライプ状ではなく碁盤目状に形成されていてもよい。
【0019】
<溝の形成方法>
次に、溝8の形成方法について説明する。まず、半導体基板1の上面上に酸化膜4を形成する。次に、酸化膜4の上面からトレンチエッチングすることで、第1の凹部1aを形成する。エッチング条件を調整することで、幅が上方に向かって小さくなる部分を有する第1の凹部1aが形成される。または、トレンチエッチングに代えて、ドリフト層に対する窒素のドーピング量を調整することで、幅が上方に向かって小さくなる部分を有する第1の凹部1aを形成することも可能である。
【0020】
次に、熱酸化を利用して第1の凹部1aの表面に酸化膜4を形成することで、第2の凹部4aを形成する。第2の凹部4aは、第1の凹部1aの形状に合わせて形成されるため、第2の凹部4aの幅についても上方に向かって小さくなる部分を有している。
【0021】
<効果>
以上のように、実施の形態1に係る半導体装置は、上面と上面とは反対側の面である下面とを有し、電流が流れる有効領域2と有効領域2の外周側を囲むように形成された終端領域7が規定された半導体基板1と、終端領域7の上面に接して上面を覆うように設けられた酸化膜4と、絶縁性材料を含み、酸化膜4の周縁部を除く部分を覆うように設けられた有機絶縁膜6と、有機絶縁膜6に覆われた酸化膜4の部分において、下方に凹む凹部としての溝8とを備え、溝8の幅は上方に向かって小さくなる部分を有している。また、有機絶縁膜6はポリイミドを含んでいる。
【0022】
水分は有機絶縁膜6の外周端から浸入し溝8に沿って進展するため、水分が最外周のガードリング3に達するまでの沿面距離が長くなる。また、溝8は有機絶縁膜6で埋め込まれており、有機絶縁膜6と酸化膜4の密着性が向上することで、有機絶縁膜6と半導体基板1の密着性が向上する。有機絶縁膜6の外周端からの水分の進展を抑制することができるため、半導体装置の耐湿性が向上する。
【0023】
さらに、溝8の幅は上方に向かって小さくなる部分を有しているため、溝8により生じるアンカー効果によって、半導体装置における上下方向の密着性が改善されるため、半導体装置のパワーサイクル耐量が向上する。
【0024】
また、終端領域7を短くすることができるため、チップサイズが小さくなり、半導体装置の製造コストを低減することができる。
【0025】
また、溝8は、半導体基板1の上面に設けられた内部空間が台形の断面形状を有する第1の凹部1aと、第1の凹部1aの表面に設けられかつ酸化膜4からなる内部空間が台形の断面形状を有する第2の凹部4aにより構成されている。また、実施の形態1に係る半導体装置の製造方法では、溝8は、第1の凹部1aと第2の凹部4aにより構成され、半導体装置の製造方法は、半導体基板1の上面に設けられた内部空間が台形の断面形状を有する第1の凹部1aを形成する工程(a)と、第1の凹部1aの表面に設けられかつ酸化膜4からなる内部空間が台形の断面形状を有する第2の凹部4aを形成する工程(b)とを備えている。
【0026】
したがって、既存の工程であるトレンチエッチング工程において、第1の凹部1aを形成することができるため、既存の工程に、第1の凹部1aの表面に第2の凹部4aを形成する工程(b)を追加するだけで溝8を形成することが可能となる。これにより、半導体装置における耐湿性およびパワーサイクル耐量の向上を容易に実現できる。
【0027】
また、凹部は、有機絶縁膜6の上面視輪郭に対して平行に延伸する溝8である。したがって、有機絶縁膜6の外周端から浸入した水分は半導体基板1の中央に向かって進展するため、水分の進展方向に対して直交する方向、すなわち、有機絶縁膜6の上面視輪郭に対して平行方向に延伸する溝8を設けることで、有機絶縁膜6の外周端から有効領域2までの沿面距離を長くすることができる。
【0028】
また、溝8は上面視にて碁盤目状に形成されているため、終端領域7における有機絶縁膜6と半導体基板1との密着面積が増加することから、有機絶縁膜6と半導体基板1との密着性がさらに向上する。
【0029】
<実施の形態2>
次に、実施の形態2に係る半導体装置について説明する。
図5は、実施の形態2の
図2相当図である。なお、実施の形態2において、実施の形態1で説明したものと同一の構成要素については同一符号を付して説明は省略する。
【0030】
<半導体装置の構成>
図5に示すように、実施の形態2では、溝8の内部および溝8の周辺にある酸化膜4は、第1の密着膜としての密着膜9により覆われている。密着膜9は堆積酸化膜である。溝8は、第1の凹部1aと、第2の凹部4aと、第3の凹部9aとで構成されている。第1の凹部1aは、半導体基板1の上面に設けられ、内部空間が矩形の断面形状を有している。第2の凹部4aは、第1の凹部1aの表面に設けられかつ酸化膜4からなる内部空間が矩形の断面形状を有している。第3の凹部9aは、第2の凹部4aの表面に設けられかつ密着膜9からなる内部空間が台形の断面形状を有している。具体的には、第3の凹部9aの幅は上方に向かって小さくなる部分を有している。第3の凹部9aの幅とは、
図5における横方向の幅である。
【0031】
<溝の形成方法>
次に、溝8の形成方法について説明する。まず、半導体基板1の上面上に酸化膜4を形成する。次に、酸化膜4の上面からトレンチエッチングすることで、内部空間が矩形の断面形状を有する第1の凹部1aを形成する。または、トレンチエッチングに代えて、ドリフト層に対する窒素のドーピング量を調整することで、第1の凹部1aを形成することも可能である。
【0032】
次に、熱酸化を利用して第1の凹部1aの表面に酸化膜4を形成することで、内部空間が矩形の断面形状を有する第2の凹部4aを形成する。次に、CVD法により酸化膜4の表面に堆積酸化膜を堆積されて密着膜9を形成することで、第2の凹部4aの表面に内部空間が台形の断面形状を有する第3の凹部9aを形成する。
【0033】
<効果>
以上のように、実施の形態2に係る半導体装置では、実施の形態1の場合と同様に、溝8の幅は上方に向かって小さくなる部分を有しているため、耐湿性を向上させつつパワーサイクル耐量を向上させることができる。
【0034】
また、溝8は、半導体基板1の上面に設けられた内部空間が矩形の断面形状を有する第1の凹部1aと、第1の凹部1aの表面に設けられかつ酸化膜4からなる内部空間が矩形の断面形状を有する第2の凹部4aと、第2の凹部4aの表面に設けられかつ密着膜9からなる内部空間が台形の断面形状を有する第3の凹部9aにより構成されている。密着膜9は堆積酸化膜を含んでいる。また、実施の形態2に係る半導体装置の製造方法では、溝8は、第1の凹部1aと第2の凹部4aと第3の凹部9aにより構成され、半導体装置の製造方法は、半導体基板1の上面に設けられた内部空間が矩形の断面形状を有する第1の凹部1aを形成する工程(c)と、第1の凹部1aの表面に設けられかつ酸化膜4からなる内部空間が矩形の断面形状を有する第2の凹部4aを形成する工程(d)と、第2の凹部4aの表面に設けられかつ密着膜9からなる内部空間が台形の断面形状を有する第3の凹部9aを形成する工程(e)とを備えている。
【0035】
堆積酸化膜は層間膜として一般的に半導体装置に用いられ、また堆積酸化膜形成工程は一般的に半導体装置の製造工程に採用されている。実施の形態2では、トレンチエッチング後に堆積酸化膜を形成することで、既存の工程を流用して容易にアンカー効果が得られる溝8を形成することが可能となる。
【0036】
<実施の形態3>
次に、実施の形態3に係る半導体装置について説明する。
図6は、実施の形態3の
図2相当図である。
図7(a)~(c)は、実施の形態3において畝10の形成方法を示す断面図である。なお、実施の形態3において、実施の形態1,2で説明したものと同一の構成要素については同一符号を付して説明は省略する。
【0037】
<半導体装置の構成>
図6に示すように、実施の形態3では、半導体基板1の終端領域7における酸化膜4と有機絶縁膜6との間には、少なくとも1つの畝10が設けられている。本実施の形態では、畝10が複数(例えば2つ)設けられている場合について説明する。ここで、畝10は上方に突出する凸部に相当する。畝10は、酸化膜4と有機絶縁膜6との間に設けられており、堆積酸化膜またはポリシリコン膜を含む第2の密着膜からなる。畝10を構成する第2の密着膜と有機絶縁膜6との密着性は、有機絶縁膜6と酸化膜4との密着性よりも高くなっている。畝10の幅は上方に向かって大きくなる部分を有している。畝10の幅とは、
図6における横方向の幅である。
【0038】
また図示しないが、複数の畝10は、有機絶縁膜6の上面視輪郭の全周に対して平行に延伸している。すなわち、複数の畝10は、上面視にてチップの終端と平行となるように設けられており、ストライプ状に形成されている。または、複数の畝10は、有機絶縁膜6の全周に渡って上面視にてストライプ状ではなく碁盤目状に形成されていてもよい。
【0039】
<畝の形成方法>
次に、畝10の形成方法について、
図7(a)~(c)を用いて説明する。半導体基板1の上面に設けられた酸化膜4上に畝10の形状となる第2の密着膜の1次パターン10aを形成する。1次パターン10aは堆積酸化膜からなる。次に、1次パターン10aの下面を除く部分に、2次パターンとしての堆積酸化膜10b(
図7(a)参照)またはポリシリコン膜10c(
図7(b)参照)を形成する。その際、成膜条件を調整することにより、1次パターンの側面に成膜される堆積酸化膜10bまたはポリシリコン膜10cが下部よりも上部が厚くなるように形成される。その結果、
図7(b)に示すように、幅が上方に向かって大きくなるような断面形状を有する畝10が形成される。
【0040】
また、ポリシリコン膜10cを形成した場合は、
図7(c)に示すように、レジスト後に反応性イオンエッチングすることで、畝10の上面および酸化膜4の上面に形成されたポリシリコン膜10cを除去してもよい。
【0041】
<効果>
以上のように、実施の形態3に係る半導体装置は、実施の形態1の場合に対し溝8に代えて、有機絶縁膜6に覆われた酸化膜4の部分において、上方に突出する凸部としての畝10を備え、畝10の幅は上方に向かって大きくなる部分を有している。したがって、耐湿性を向上させつつパワーサイクル耐量を向上させることができる。
【0042】
また、畝10は、酸化膜4と有機絶縁膜6との間に設けられ、第2の密着膜からなる。また、第2の密着膜は堆積酸化膜またはポリシリコン膜を含んでいる。畝10を構成する第2の密着膜と有機絶縁膜6との密着性は、有機絶縁膜6と酸化膜4との密着性よりも高いため、実施の形態1の場合よりも耐湿性とパワーサイクル耐量を向上させることが可能となる。
【0043】
また、凸部は、有機絶縁膜6の上面視輪郭に対して平行に延伸する畝10である。したがって、有機絶縁膜6の外周端から浸入した水分は半導体基板1の中央に向かって進展するため、水分の進展方向に対して直交する方向、すなわち、有機絶縁膜6の上面視輪郭に対して平行方向に延伸する畝10を設けることで、有機絶縁膜6の外周端から有効領域2までの沿面距離を長くすることができる。
【0044】
また、畝10は上面視にて碁盤目状に形成されているため、終端領域7における有機絶縁膜6と半導体基板1との密着面積が増加することから、有機絶縁膜6と半導体基板1との密着性がさらに向上する。
【0045】
<実施の形態4>
次に、実施の形態4に係る半導体装置について説明する。
図8は、実施の形態4の
図2相当図である。なお、実施の形態4において、実施の形態1~3で説明したものと同一の構成要素については同一符号を付して説明は省略する。
【0046】
<半導体装置の構成>
図8に示すように、実施の形態4では、実施の形態1と実施の形態3とを組み合わせた構成となっている。半導体基板1における終端領域7の上面には、少なくとも1つの溝8が設けられている。また、半導体基板1の終端領域7における酸化膜4と有機絶縁膜6との間には、少なくとも1つの畝10が設けられている。
【0047】
<溝および畝の形成方法>
溝8の形成については実施の形態1の場合と同様の方法で行い、畝10の形成については実施の形態3の場合と同様の方法で行うため、ここでは説明を省略する。
【0048】
<効果>
以上のように実施の形態4に係る半導体装置は、有機絶縁膜6に覆われた酸化膜4の部分において、下方に凹む凹部としての溝8および上方に突出する凸部としての畝10を備え、溝8の幅は上方に向かって小さくなる部分を有し、畝10の幅は上方に向かって大きくなる部分を有している。
【0049】
これにより、水分の進展する界面が凹凸状になり、終端領域7の長さを長くすることなく、水分が最外周のガードリング3に達するまでの沿面距離を実施の形態1の場合よりもさらに長くすることができる。また、有機絶縁膜6と酸化膜4との密着面積が増加するため、実施の形態1の場合よりも耐湿性をさらに向上させることができる。
【0050】
<実施の形態1~4の変形例>
実施の形態1~4では、半導体基板1が珪素により構成されていると説明したが、半導体基板1は、珪素により構成されたものに限らず、珪素に比べてバンドギャップが大きいワイドバンドギャップ半導体により構成されたものであってもよい。ワイドバンドギャップ半導体は、例えば、炭化珪素、窒化ガリウム系材料、またはダイヤモンドを含むものである。ワイドバンドギャップ半導体は界面の電界強度が高く設計されていることから、ワイドバンドギャップ半導体により構成された半導体基板1を備える半導体装置に対して実施の形態1~4の構成を採用することで、これらから得られる効果がより顕著となり特に有効である。
【0051】
なお、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
【0052】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0053】
(付記1)
第1主面と前記第1主面とは反対側の面である第2主面とを有し、電流が流れる有効領域と前記有効領域の外周側を囲むように形成された終端領域が規定された半導体基板と、
前記終端領域の前記第1主面に接して前記第1主面を覆うように設けられた酸化膜と、
絶縁性材料を含み、前記酸化膜の周縁部を除く部分を覆うように設けられた表面保護膜と、
前記表面保護膜に覆われた前記酸化膜の部分において、下方に凹む凹部または上方に突出する凸部の少なくとも一方と、を備え、
前記凹部の幅は上方に向かって小さくなる部分を有し、
前記凸部の幅は上方に向かって大きくなる部分を有する、半導体装置。
【0054】
(付記2)
前記凹部は、前記半導体基板の前記第1主面に設けられた内部空間が台形の断面形状を有する第1の凹部と、前記第1の凹部の表面に設けられかつ前記酸化膜からなる内部空間が台形の断面形状を有する第2の凹部により構成された、付記1に記載の半導体装置。
【0055】
(付記3)
前記凹部は、前記半導体基板の前記第1主面に設けられた内部空間が矩形の断面形状を有する第1の凹部と、前記第1の凹部の表面に設けられかつ前記酸化膜からなる内部空間が矩形の断面形状を有する第2の凹部と、前記第2の凹部の表面に設けられかつ第1の密着膜からなる内部空間が台形の断面形状を有する第3の凹部により構成された、付記1に記載の半導体装置。
【0056】
(付記4)
前記第1の密着膜は堆積酸化膜を含む、付記3に記載の半導体装置。
【0057】
(付記5)
前記凸部は、前記酸化膜と前記表面保護膜との間に設けられ、第2の密着膜からなる、付記1に記載の半導体装置。
【0058】
(付記6)
前記第2の密着膜は堆積酸化膜またはポリシリコン膜を含む、付記5に記載の半導体装置。
【0059】
(付記7)
前記凹部は、前記表面保護膜の上面視輪郭に対して平行に延伸する溝であり、
前記凸部は、前記表面保護膜の前記上面視輪郭に対して平行に延伸する畝である、付記1から付記6のいずれか1つに記載の半導体装置。
【0060】
(付記8)
前記凹部および前記凸部は上面視にて碁盤目状に形成されている、付記1から付記6のいずれか1つに記載の半導体装置。
【0061】
(付記9)
前記表面保護膜はポリイミドを含む、付記1から付記8のいずれか1つに記載の半導体装置。
【0062】
(付記10)
前記半導体基板は、炭化珪素、窒化ガリウム、またはダイヤモンドを含むワイドバンドギャップ半導体で構成された、付記1から付記9のいずれか1つに記載の半導体装置。
【0063】
(付記11)
付記1に記載の半導体装置を製造する半導体装置の製造方法であって、
前記凹部は、第1の凹部と第2の凹部により構成され、
前記半導体装置の製造方法は、
(a)前記半導体基板の前記第1主面に設けられた内部空間が台形の断面形状を有する前記第1の凹部を形成する工程と、
(b)前記第1の凹部の表面に設けられかつ前記酸化膜からなる内部空間が台形の断面形状を有する前記第2の凹部を形成する工程と、
を備えた、半導体装置の製造方法。
【0064】
(付記12)
付記1に記載の半導体装置を製造する半導体装置の製造方法であって、
前記凹部は、第1の凹部と第2の凹部と第3の凹部により構成され、
前記半導体装置の製造方法は、
(c)前記半導体基板の前記第1主面に設けられた内部空間が矩形の断面形状を有する前記第1の凹部を形成する工程と、
(d)前記第1の凹部の表面に設けられかつ前記酸化膜からなる内部空間が矩形の断面形状を有する前記第2の凹部を形成する工程と、
(e)前記第2の凹部の表面に設けられかつ第1の密着膜からなる内部空間が台形の断面形状を有する前記第3の凹部を形成する工程と、
を備えた、半導体装置の製造方法。
【0065】
(付記13)
付記5に記載の半導体装置を製造する半導体装置の製造方法であって、
(f)前記半導体基板の前記第1主面側に前記第2の密着膜の1次パターンを形成する工程と、
(g)前記1次パターン上に前記第2の密着膜の2次パターンを形成することで、前記半導体基板の前記第1主面側に前記凸部を形成する工程と、
を備えた、半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0066】
1 半導体基板、1a 第1の凹部、2 有効領域、4 酸化膜、4a 第2の凹部、6 有機絶縁膜、7 終端領域、8 溝、9 密着膜、9a 第3の凹部、10 畝。