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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-22
(45)【発行日】2025-05-30
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20250523BHJP
【FI】
H02M7/48 F
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022524805
(86)(22)【出願日】2020-05-21
(86)【国際出願番号】 JP2020020120
(87)【国際公開番号】W WO2021234910
(87)【国際公開日】2021-11-25
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川井 由宇
(72)【発明者】
【氏名】泉 喜久夫
【審査官】白井 孝治
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0225571(US,A1)
【文献】特開2008-015899(JP,A)
【文献】特開2011-078290(JP,A)
【文献】特開平05-083955(JP,A)
【文献】特開2001-025261(JP,A)
【文献】特開平06-098559(JP,A)
【文献】特開平05-284751(JP,A)
【文献】特開2009-201224(JP,A)
【文献】特開2006-014447(JP,A)
【文献】特開平09-140164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42~ 7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力変換装置であって、
直流の入力電圧を受けて電力変換を行なう少なくとも1つの回路を備え、
前記少なくとも1つの回路の各々は、
前記入力電圧を受けてインバータ電圧を生成するインバータと、
前記インバータ電圧を受けて出力電圧を出力するフィルタと、
前記出力電圧の直流成分を検出する検出部と、
交流電圧指令の大きさを表す第1のパラメータと、前記交流電圧指令の周期と同期した正弦波を表す第2のパラメータと、前記直流成分とを受けて、前記直流成分が目標値となるようにインバータ電圧指令を決定するフィードバック制御部と、
前記インバータ電圧指令を受けて前記インバータをパルス幅変調制御するPWM制御部とを含み、
前記目標値は、ゼロまたは前記検出部のオフセット誤差に応じた値であり、
前記フィードバック制御部は、
前記直流成分を補償するための補償量を演算し、
前記第1のパラメータをV*、前記正弦波を表す前記第2のパラメータをsinθ、前記補償量をαとするとき、
V*sinθ+α|sinθ|
前記インバータ電圧指令として生成する、電力変換装置。
【請求項2】
前記フィードバック制御部は、
前記第1のパラメータと前記正弦波とを乗算する第1乗算器と、
前記正弦波の絶対値を出力する絶対値回路と、
前記絶対値と前記補償量とを乗算する第2乗算器と、
前記第1乗算器の出力と前記第2乗算器の出力とを加算する加算器とを含み、
前記インバータ電圧指令は、前記加算器から出力される、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記フィードバック制御部は、
前記正弦波のうちゼロ以上を通過させる第1フィルタ部と、
前記正弦波のうちゼロ以下を通過させる第2フィルタ部と、
前記補償量を前記第1のパラメータで除算した値を1に加算する第1加算器と、
1から前記補償量を前記第1のパラメータで除算した値を減算する減算器と、
前記第1フィルタ部の出力と前記第1加算器の出力とを乗算する第1乗算器と、
前記第2フィルタ部の出力と前記減算器の出力とを乗算する第2乗算器と、
前記第1乗算器の出力と前記第2乗算器の出力とを加算する第2加算器と、
前記第1のパラメータと前記第2加算器の出力とを乗算する第3乗算器とを含み、
前記インバータ電圧指令は、前記第3乗算器から出力される、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記フィードバック制御部は、前記直流成分と前記目標値との偏差を用いたPI演算により前記補償量を算出する演算部をさらに含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの回路は、第1回路、第2回路および第3回路を含み、
前記第2回路および前記第3回路に含まれる前記フィードバック制御部が受ける前記正弦波の位相は、前記第1回路に含まれる前記フィードバック制御部が受ける前記正弦波の位相に対して、-2π/3および+2π/3だけそれぞれ異なる、請求項1から4のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの回路は、第1回路および第2回路を含み、
前記第2回路に含まれる前記フィードバック制御部が受ける前記正弦波の位相は、前記第1回路に含まれる前記フィードバック制御部が受ける前記正弦波の位相に対してπ/2だけ異なる、請求項1から4のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、直流電圧を交流電圧に変換するインバータを備えた電力変換装置が知られている。このような電力変換装置には様々な負荷が接続され、負荷条件に応じた直流成分が出力電圧に発生し得る。特開平6-098559号公報(特許文献1)には、このような直流成分を抑制するための回路が開示されている。特許文献1に開示の回路は、インバータ回路の交流出力のうちの直流成分を打ち消すように、インバータ回路のスイッチ素子を動作させるためのパルス信号を半周期毎に直流成分の大きさに応じて変化させるパルス信号変調部を備える。
【0003】
電力系統から独立して電力系統を模擬した電圧を生成する電力変換装置には、負荷として系統連系装置が接続され得る。系統連系装置は、電力系統が消失した単独運転状態になった場合に人身および設備の安全性と系統復旧の観点から、系統連系規定(JEAC9701)によって規定される単独運転防止対策を行なう。単独運転防止対策は、単独運転検出機能と、単独運転検出機能により単独運転と判断された場合に保護リレーなどを介して系統連系装置を解列する機能とを含む。
【0004】
単独運転検出機能として、系統電圧の位相、歪み、周波数の変化を検出するなどの受動的方式の単独運転検出機能と、系統電圧の周波数変化から当該変化を助長させる能動的方式の単独運転検出機能とが存在する。能動的方式の単独運転検出機能は、計測対象の交流電圧の周波数変化から、変化を助長させるように無効電力を注入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平6-098559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電力変換装置に負荷と系統連系装置とが接続され、負荷条件に応じた直流成分が電力変換装置の出力電圧に発生し、周波数変化が生じると、系統連系装置の能動的方式の単独運転検出機能により、無効電力が注入され得る。周波数変化は、正半波期間と負半波期間とから求められるゼロクロス間隔の変動に対応している。無効電力が注入されると、電力変換装置の出力電圧の周波数変化が助長される。そのため、最終的に系統連系装置が単独運転検出により解列し、系統連系装置を利用できなくなる。特許文献1に開示の技術では、半周期毎に、直流成分の大きさに応じてパルス信号が変化する。そのため、電力変換装置の出力電圧に生じた、直流成分と周波数変化とを抑制するのに時間がかかる。特に、負荷の投入時または遮断時のように過渡的に直流成分が変動する場合には、直流成分と周波数変化とを早期に抑制できない。
【0007】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、出力電圧に生じた、直流成分と周波数変化とを早期に抑制することができる電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のある局面に係る電力変換装置は、直流の入力電圧を受けて電力変換を行なう少なくとも1つの回路を備える。少なくとも1つの回路の各々は、入力電圧を受けてインバータ電圧を生成するインバータと、インバータ電圧を受けて出力電圧を出力するフィルタと、出力電圧の直流成分を検出する検出部と、交流電圧指令と直流成分とを受けて、直流成分が目標値となるようにインバータ電圧指令を決定するフィードバック制御部と、インバータ電圧指令を受けてインバータをパルス幅変調制御するPWM制御部とを含む。目標値は、ゼロまたは検出部のオフセット誤差に応じた値である。フィードバック制御部は、直流成分を補償するための補償量を演算し、交流電圧指令の周期と同期した正弦波の絶対値と補償量との積が重畳された交流電圧指令をインバータ電圧指令として決定する。
【発明の効果】
【0009】
本開示のある局面に係る電力変換装置によれば、フィードバック制御部により、直流成分が常時検出され、直流成分がゼロまたはオフセット誤差に応じた値となるように、インバータへの電圧指令が決定される。これにより、フィルタからの出力電圧の直流成分を早期に抑制できる。さらに、交流電圧指令の周期と同期した正弦波の絶対値と補償量との積を交流電圧指令に重畳することによりインバータ電圧指令が決定されることにより、フィルタからの出力電圧の周波数変化が早期に抑制される。このように、出力電圧に生じた、直流成分と周波数変化とが早期に抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係る電力変換装置の構成を示す図である。
図2】実施の形態1に係る電力変換装置の動作例を示す図である。
図3】参考形態に係る電力変換装置の構成を示す図である。
図4】参考形態に係る電力変換装置の動作例を示す図である。
図5】系統連系装置による無効電力の注入力の決定方法の一例を示す図である。
図6】直流成分が過渡的に変動しているときの出力電圧の一例を示す図である。
図7】特許文献1に記載の技術を用いたときの、交流電圧指令に重畳される補正成分を模式的に示す図である。
図8】実施の形態1における、交流電圧指令に重畳される補正成分を模式的に示す図である。
図9】実施の形態2に係る電力変換装置の構成を示す図である。
図10】実施の形態3に係る電力変換装置の構成を示す図である。
図11】実施の形態4に係る電力変換装置の構成を示す図である。
図12】実施の形態5に係る電力変換装置の構成を示す図である。
図13】実施の形態6に係る電力変換装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下では、複数の実施の形態について説明するが、各実施の形態で説明された構成を適宜組み合わせることは出願当初から予定されている。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。さらに、明細書全文に表わされている構成要素の形態は、あくまでも例示であって、これらの記載に限定されるものではない。
【0012】
実施の形態1.
(電力変換装置の構成)
図1は、実施の形態1に係る電力変換装置の構成を示す図である。図1に示されるように、電力変換装置100は、インバータ2と、フィルタ3と、インバータ制御回路9とを備える。
【0013】
インバータ2は、直流電源1からの直流の入力電圧を受けて、交流の電圧(以下、「インバータ電圧」と称する。)Vinvを生成する。インバータ2は、フルブリッジインバータであり、半導体スイッチング素子2a~2dを含む。すなわち、インバータ2は、2つの上側アーム(半導体スイッチング素子2a,2c)と2つの下側アーム(半導体スイッチング素子2b,2d)とがそれぞれ直列接続された構成である2つのレグを並列接続した回路を含む。半導体スイッチング素子2a~2dのうち対角に位置する半導体スイッチング素子同士が同じタイミングで動作する。具体的には、左レグの上側アームである半導体スイッチング素子2aと、右レグの下側アームである半導体スイッチング素子2dが同じタイミングでスイッチング動作を行う。また、左レグの下側アームである半導体スイッチング素子2bとレグの上側アームである半導体スイッチング素子2cが、同じタイミングでスイッチング動作を行う。
【0014】
フィルタ3は、インバータ電圧Vinvを受けて交流の出力電圧Vcを出力する。図1に例示されるフィルタ3は、インダクタLとコンデンサCとを含むLCフィルタである。
【0015】
インバータ制御回路9は、インバータ2を制御する。図1に示されるように、インバータ制御回路9は、検出部4と、フィードバック制御部5と、PWM(Pulse Width Modulation)制御部6とを含む。
【0016】
検出部4は、出力電圧Vcの直流成分DCVcを検出する。例えば、検出部4は、コンデンサCの電圧を検出する電圧検出器4aと、ローパスフィルタ4bとによって構成される。検出部4は、出力電圧Vcの交流成分を平滑することにより、出力電圧Vcの直流成分DCVcを常時検出する。
【0017】
フィードバック制御部5は、交流電圧指令と検出部4によって検出された直流成分DCVcと目標値DCVc*とを受けて、直流成分DCVcが目標値DCVc*となるように、インバータ電圧指令Vinv*を決定する。
【0018】
交流電圧指令は、その振幅(最大値)V*と、その周期と同期した正弦波sinθとの積によって表され、出力電圧Vcの目標値に対応する。
【0019】
目標値DCVc*は、直流成分DCVcの目標値であり、検出部4におけるオフセット誤差に応じて設定される。オフセット誤差は、電圧検出器4aの入力端からローパスフィルタ4bの出力端までの経路における、部品の定数ばらつき、温度変化などの影響により生じる検出誤差である。オフセット誤差が無い場合、目標値DCVc*としてゼロが設定される。なお、オフセット誤差が無い場合には、オフセット誤差が無視できる程度に小さい場合も含まれる。オフセット誤差が有る場合、目標値DCVc*としてオフセット誤差に応じた値(図1に示す例ではオフセット誤差そのもの)が設定される。
【0020】
インバータ電圧指令Vinv*は、インバータ2から出力されるインバータ電圧Vinvの目標値に対応する。
【0021】
フィードバック制御部5は、直流成分DCVcを補償するための補償量を演算し、交流電圧指令の周期と同期した正弦波sinθの絶対値と補償量との積が重畳された交流電圧指令をインバータ電圧指令Vinv*として決定する。
【0022】
図1に示されるように、フィードバック制御部5は、減算器51と、演算部52と、乗算器53と、絶対値回路54と、乗算器55と、加算器56と含む。
【0023】
減算器51は、目標値DCVc*から直流成分DCVcを減算する。すなわち、減算器51は、目標値DCVc*と直流成分DCVcとの偏差を算出する。
【0024】
演算部52は、減算器51の出力を受けて、直流成分DCVcを補償するための補償量を演算する。演算部52は、例えば、目標値DCVc*と直流成分DCVcとの偏差を用いたPI(Proportional-Integral)演算により補償量を算出する。
【0025】
乗算器53は、交流電圧指令の振幅V*と、交流電圧指令の周期と同期した正弦波sinθとを乗算する。
【0026】
絶対値回路54は、交流電圧指令の周期と同期した正弦波sinθを受け、正弦波sinθの絶対値を出力する。
【0027】
乗算器55は、絶対値回路54から出力される正弦波sinθの絶対値と、演算部52から出力される補償量とを乗算する。
【0028】
加算器56は、乗算器53の出力と乗算器55の出力とを加算する。インバータ電圧指令Vinv*は、加算器56から出力される。乗算器53の出力は、交流電圧指令である。そのため、乗算器55の出力は、交流電圧指令に重畳される補正成分に対応する。加算器56は、交流電圧指令に乗算器55の出力(補正成分)を重畳することにより、インバータ電圧指令Vinv*を生成する。
【0029】
PWM制御部6は、インバータ電圧指令Vinv*を受けてインバータ2をパルス幅変調制御する。具体的には、PWM制御部6は、インバータ2に含まれる半導体スイッチング素子2a~2dの各々のオンオフを制御する。
【0030】
電力変換装置100の入力端には直流電源1が接続される。電力変換装置100の出力端には、例えば、負荷7および系統連系装置8が接続される。電力変換装置100の出力端には、負荷7および系統連系装置8のうちのいずれか一方のみが接続されてもよい。負荷7の種類は特に限定されない。図1に例示される負荷7は、例えば、トランスと半波整流回路とを含む。なお、電力変換装置100に対して、負荷7(あるいは負荷7の一部)が着脱可能であってもよい。
【0031】
(動作例)
図2を参照して、電力変換装置100の動作例について説明する。図2は、実施の形態1に係る電力変換装置の動作例を示す図である。図2には、半波整流回路を含む負荷7の投入前後における、出力電圧Vc、出力電圧Vcの基本周期あたりの平均値Vcavg、インバータ2から出力される電流(以下、「インバータ電流IL」と称する。)、および、出力電圧Vcの正半波期間T1と負半波期間T2との差が示される。
【0032】
図2に示されるように、半波整流回路を含む負荷7の投入により、出力電圧Vcの正極性および負極性の一方の極性(図では負極性)において、インバータ電流ILがゼロとなる。出力電圧Vcの波形は、正負極性が対称である波形から電流の生じる片側極性(図では正極性)において、リアクトル電圧の低下分だけ低下する。片側極性の電圧の低下によって、出力電圧Vcの基本周期あたりの平均値Vcavgがゼロから低下する。平均値Vcavgは、出力電圧Vcの直流成分DCVcに対応している。なお、平均値Vcavgがゼロから低下するものの、負荷7の投入直後において、出力電圧Vcの正半波期間T1および負半波期間T2は、大きく変化しない。
【0033】
片側極性の電圧の低下により、出力電圧Vcの直流成分DCVcが発生する。直流成分DCVcが発生すると、直流成分DCVcを補償するための補償量が演算され、交流電圧指令の周期と同期した正弦波sinθの絶対値と補償量との積が重畳された交流電圧指令がインバータ電圧指令Vinv*として決定される。
【0034】
図2に示す例では、正極性の電圧が低下しているため、負の直流成分DCVcが発生する。そのため、目標値DCVc*としてゼロが設定されている場合、図1に示す減算器51から正の偏差が出力される。演算部52は、負の直流成分DCVcを補償するために、正の補償量を演算する。そして、フィードバック制御部5は、正弦波sinθの絶対値と正の補償量との積が重畳された交流電圧指令をインバータ電圧指令Vinv*として決定する。これにより、出力電圧Vcの直流成分DCVcがゼロに調整される。
【0035】
また、交流電圧指令の周期と同期した正弦波sinθの絶対値と補償量との積が重畳された交流電圧指令をインバータ電圧指令Vinv*として決定するため、フィードバック制御によるゼロクロス付近の電圧の変動が小さい。そのため、出力電圧Vcの正半波期間T1および負半波期間T2の変化を抑制できる。
【0036】
(参考形態との比較)
図3は、参考形態に係る電力変換装置の構成を示す図である。図3に示す電力変換装置900は、図1に示す電力変換装置100と比較して、インバータ制御回路9の代わりにインバータ制御回路909を備える。インバータ制御回路909は、図1に示すインバータ制御回路9と比較して、フィードバック制御部5の代わりにフィードバック制御部905を備える点で相違する。フィードバック制御部905は、図1に示すフィードバック制御部5と比較して、絶対値回路54と乗算器55とを含まず、かつ、加算器56の代わりに加算器956を含む点で相違する。
【0037】
加算器956は、乗算器53の出力と演算部52の出力(補償量)とを加算する。インバータ電圧指令Vinv*は、加算器956から出力される。すなわち、フィードバック制御部905は、補償量自体が重畳された交流電圧指令をインバータ電圧指令Vinv*として決定する。
【0038】
図4は、参考形態に係る電力変換装置の動作例を示す図である。図4には、図2と同様に、半波整流回路を含む負荷7の投入前後における、出力電圧Vc、出力電圧Vcの基本周期あたりの平均値Vcavg、インバータ電流IL、および、出力電圧Vcの正半波期間T1と負半波期間T2との差が示される。
【0039】
図4に示されるように、片側極性の電圧の低下によって、出力電圧Vcの基本周期あたりの平均値Vcavgがゼロから低下する。その結果、出力電圧Vcの直流成分DCVcが発生する。直流成分DCVcが発生すると、フィードバック制御部905は、直流成分DCVcを補償するための補償量を演算し、補償量が重畳された交流電圧指令をインバータ電圧指令Vinv*として決定する。これにより、出力電圧Vcの直流成分DCVcがゼロに調整される。すなわち、出力電圧Vcの基本周期あたりの平均値Vcavgがゼロに調整される。
【0040】
しかしながら、平均値Vcavgをゼロに調整する際に、出力電圧Vcに対して補償量自体が重畳されることにより、図4に示されるように、出力電圧Vcの正半波期間T1および負半波期間T2が大きく変化する。
【0041】
出力電圧Vcの正半波期間T1および負半波期間T2が大きく変化すると、系統連系装置8の検出する周波数変化に大きな変動を与える。その結果、系統連系装置8は、能動的方式の単独運転検出機能によって、無効電力を注入する。
【0042】
図5は、系統連系装置による無効電力の注入力の決定方法の一例を示す図である。図5には、系統連系装置8によって検出される周波数変化量dFと、無効電力注入力Q*との関係を示すグラフが示される。周波数変化量dFは、系統連系装置8における交流接続端の電圧の正半波期間T1と負半波期間T2とに基づいて検出される。系統連系装置8は、図5に示されるグラフに従って、検出された周波数変化量dFに応じた無効電力注入力Q*を決定する。
【0043】
図5に示されるように、系統連系装置8は、周波数変化量dFが-dF0~dF0の範囲内においてゲインG1に従って無効電力注入力Q*を決定し、当該範囲外においてゲインG2に従って無効電力注入力Q*を決定する。dF0は、予め定められる閾値である。
【0044】
注入される無効電力が大きいほど無効電力に起因する電流経路インピーダンスの電圧が大きく変動するため、周波数変化量dFが増加する。周波数変化量dFの増加は、最終的に単独運転検出による系統連系装置8の解列に繋がる。図5に示されるように、一般的に、ゲインG1は、ゲインG2より小さく設定される。そのため、電力変換装置は、周波数変化量dFを-dF0~dF0の範囲内から変動しないように抑制することが期待される。
【0045】
図3に示す電力変換装置900の構成では、図4に示されるように、出力電圧Vcの正半波期間T1および負半波期間T2が大きく変化する。そのため、能動的方式の単独運転検出機能による無効電力の注入に起因する系統連系装置8の解列を抑制できない。
【0046】
これに対し、図1に示す電力変換装置100の構成では、図2に示されるように、出力電圧Vcの正半波期間T1および負半波期間T2の変動が抑制される。そのため、能動的方式の単独運転検出機能による無効電力の注入に起因する系統連系装置8の解列を抑制できる。
【0047】
(出力電圧の直流成分が過渡的に変動している場合における特許文献1との比較)
次に、図6図8を参照して、負荷7の投入直後において出力電圧Vcの直流成分DCVcが過渡的に変動している場合における動作例について説明する。
【0048】
図6は、直流成分DCVcが過渡的に変動しているときの出力電圧Vcの一例を示す図である。図7は、特許文献1に記載の技術を用いたときの、交流電圧指令に重畳される補正成分を模式的に示す図である。図8は、実施の形態1における、交流電圧指令に重畳される補正成分を模式的に示す図である。図7および図8には、図6に示す出力電圧Vcに対して生成される補正成分が示される。なお、図8に示す補正成分は、図1に示す乗算器55の出力である。
【0049】
図6に示されるように、直流成分DCVcは、負荷7が投入された時点t0ではゼロであるが、単調に増加している。
【0050】
特許文献1に記載の技術では、半周期毎に直流成分の大きさに応じて、インバータ回路のスイッチ素子を動作させるためのパルス信号が変化する。従って、図7に示されるように、時点t0では直流成分DCVcがゼロであるために、時点t0を起点とする半周期では、交流電圧指令に重畳される補正成分はゼロである。その結果、当該半周期において、直流成分DCVcがゼロとなるように、インバータが調整されない。
【0051】
時点t0から半周期経過した時点t1において、直流成分DCVcに応じたパルス信号が生成される。そのため、時点t1を起点とする半周期では、時点t1における直流成分DCVcをゼロにするための補正成分が交流電圧指令に重畳される。しかしながら、図6に示されるように、時点t1以降も直流成分DCVcは徐々に増加している。そのため、時点t1を起点とする半周期において、直流成分DCVcは、時点t1の直後ではゼロ付近まで一旦調整されるものの、その後徐々に増加する。
【0052】
図7に示されるように、出力電圧Vcの直流成分DCVcが過渡的に変動している場合、特許文献1に記載の技術では、直流成分DCVcを早期にゼロに調整できない。直流成分DCVcがゼロに調整されないため、正半波期間および負半波期間も変化し得る。そのため、能動的方式の単独運転検出機能による無効電力の注入に起因する系統連系装置8の解列を十分に抑制できない。
【0053】
実施の形態1に係る電力変換装置100では、フィードバック制御部5により、直流成分DCVcが常時検出され、直流成分DCVcが目標値DCVc*となるように、インバータ電圧指令Vinv*が決定される。これにより、図8に示されるように、直流成分DCVcが早期に抑制される。
【0054】
さらに、交流電圧指令の周期と同期した正弦波sinθと補償量との積(補正成分)が交流電圧指令に重畳されるため、ゼロクロス付近の電圧の変動が小さい。そのため、出力電圧Vcの正半波期間T1および負半波期間T2の変化が抑制される。その結果、能動的方式の単独運転検出機能による無効電力の注入に起因する系統連系装置8の解列を抑制できる。
【0055】
実施の形態2.
図9は、実施の形態2に係る電力変換装置の構成を示す図である。図9に示す電力変換装置200は、図1に示す電力変換装置100と比較して、インバータ制御回路9の代わりにインバータ制御回路209を備える点で相違する。インバータ制御回路209は、図1に示すインバータ制御回路9と比較して、フィードバック制御部5の代わりにフィードバック制御部205を備える点で相違する。
【0056】
フィードバック制御部205は、フィードバック制御部5と同様に、直流成分DCVcを補償するための補償量を演算し、交流電圧指令の周期と同期した正弦波sinθの絶対値と補償量との積が重畳された交流電圧指令をインバータ電圧指令Vinv*として決定する。
【0057】
フィードバック制御部205は、減算器51と、演算部52と、除算器251と、加算器252と、減算器253と、フィルタ254,255と、乗算器256,257と、加算器258と、乗算器259とを含む。
【0058】
除算器251は、演算部52から出力された補償量を交流電圧指令の振幅V*で除算する。
【0059】
加算器252は、除算器251の出力(すなわち、補償量を交流電圧指令の振幅V*で除算した値)を1に加算する。すなわち、加算器252から(1+補償量/V*)が出力される。減算器253は、1から除算器251の出力を減算する。すなわち、減算器253から(1-補償量/V*)が出力される。
【0060】
フィルタ254は、交流電圧指令の周期と同期した正弦波sinθのうちゼロ以上を通過させる。フィルタ255は、交流電圧指令の周期と同期した正弦波sinθのうちゼロ以下を通過させる。
【0061】
乗算器256は、加算器252の出力とフィルタ254の出力とを乗算する。すなわち、乗算器256は、正弦波sinθのうちゼロ以上の部分(正極性の部分)と(1+補償量/V*)との積を出力する。
【0062】
乗算器257は、減算器253の出力とフィルタ255の出力とを乗算する。すなわち、乗算器256は、正弦波sinθのうちゼロ以下の部分(負極性の部分)と(1-補償量/V*)との積を出力する。
【0063】
加算器258は、乗算器256の出力と乗算器257の出力とを加算する。正弦波sinθが正である場合、フィルタ255の出力がゼロとなるため、乗算器257の出力もゼロとなる。そのため、加算器258の出力は、乗算器256の出力と一致する。すなわち、sinθと(1+補償量/V*)との積が出力される。一方、正弦波sinθが負である場合、フィルタ254の出力がゼロとなるため、乗算器256の出力もゼロとなる。そのため、加算器258の出力は、乗算器257の出力と一致する。すなわち、sinθと(1-補償量/V*)との積が出力される。
【0064】
乗算器259は、交流電圧指令の振幅V*と加算器258の出力とを乗算する。インバータ電圧指令Vinv*は、乗算器259から出力される。
【0065】
正弦波sinθが正である場合、加算器258からsinθと(1+補償量/V*)との積が出力される。そのため、乗算器259からは、sinθと補償量との積を交流電圧指令(つまりV*とsinθとの積)に重畳した指令がインバータ電圧指令Vinv*として出力される。sinθが正であるため、sinθは、sinθの絶対値と等しい。そのため、乗算器259からは、sinθの絶対値と補償量との積を交流電圧指令に重畳した指令がインバータ電圧指令Vinv*として出力される。
【0066】
一方、正弦波sinθが負である場合、加算器258からsinθと(1-補償量/V*)との積が出力される。そのため、乗算器259からは、sinθの絶対値と補償量との積を交流電圧指令(つまりV*とsinθとの積)に重畳した指令がインバータ電圧指令Vinv*として出力される。
【0067】
このように、実施の形態2に係るフィードバック制御部205も、実施の形態1と同様に、交流電圧指令の周期と同期した正弦波sinθの絶対値と補償量との積が重畳された交流電圧指令をインバータ電圧指令Vinv*として決定する。その結果、実施の形態1と同様の効果を奏する。
【0068】
なお、上記の説明では、演算部52と除算器251とを別体とした。しかしながら、演算部52は、除算器251による除算を含めた演算を行ない、上記の補償量/V*を出力してもよい。この場合、除算器251は省略される。
【0069】
実施の形態3.
図10は、実施の形態3に係る電力変換装置の構成を示す図である。図10に示す電力変換装置300は、図1に示す電力変換装置100と比較して、コンデンサCp,Cnを備え、かつ、インバータ2の代わりにインバータ302を備える点で相違する。
【0070】
コンデンサCp,Cnは、直流電源1に接続される入力端の間に直列に接続され、入力電圧を分圧する。コンデンサCpの一端は、直流電源1に接続される入力端のうち正側の端子に接続される。コンデンサCnの一端は、直流電源1に接続される入力端のうち負側の端子に接続される。コンデンサCp,Cnの他端同士が接続される。
【0071】
インバータ302は、ハーフブリッジインバータであり、半導体スイッチング素子2e,2fが直列接続された1つのレグを含む。半導体スイッチング素子2e,2fは、交互にオンオフ制御される。これにより、コンデンサCpとコンデンサCnとの接続点と、半導体スイッチング素子2eと半導体スイッチング素子2fとの接続点との間に交流のインバータ電圧Vinvが生成される。
【0072】
実施の形態3に係る電力変換装置300においても、フィードバック制御部5は、交流電圧指令の周期と同期した正弦波sinθの絶対値と補償量との積が重畳された交流電圧指令をインバータ電圧指令Vinv*として決定する。これにより、実施の形態1と同様の効果を奏する。
【0073】
実施の形態4.
上記の実施の形態1~3に係る電力変換装置は、単相交流電力を供給する。これに対し、実施の形態4に係る電力変換装置は、三相4線式を用いて三相交流電力を供給する。
【0074】
図11は、実施の形態4に係る電力変換装置の構成を示す図である。図11に示す電力変換装置400には、例えば三相4線式の構成を有する系統連系装置408が接続される。
【0075】
図11に示されるように、電力変換装置400は、コンデンサCp,Cnと、3つのインバータ412,422,432と、3つのフィルタ413,423,433と、3つのインバータ制御回路419,429,439とを備える。
【0076】
インバータ412、フィルタ413およびインバータ制御回路419は、直流電源1からの入力電圧を受けて電力変換を行ない、U相の交流電力を供給する回路を構成する。インバータ422、フィルタ423およびインバータ制御回路429は、直流電源1からの入力電圧を受けて電力変換を行ない、V相の交流電力を供給する回路を構成する。インバータ432、フィルタ433およびインバータ制御回路439は、直流電源1からの入力電圧を受けて電力変換を行ない、W相の交流電力を供給する回路を構成する。
【0077】
コンデンサCp,Cnは、実施の形態3と同様に、直流電源1に接続される入力端の間に直列に接続され、入力電圧を分圧する。コンデンサCpとコンデンサCnとの接続点には中性線が接続される。
【0078】
インバータ412,422,432の各々は、実施の形態3のインバータ302と同様の構成を有し、ハーフブリッジインバータである。
【0079】
フィルタ413,423,433は、実施の形態1のフィルタ3と同様の構成を有し、それぞれインダクタLu,Lv,LwとコンデンサCu,Cv,Cwとを含むLCフィルタである。
【0080】
インバータ制御回路419,429,439の各々は、実施の形態1のインバータ制御回路9と同様の構成を有する。すなわち、インバータ制御回路419,429,439の各々は、検出部4とフィードバック制御部5とPWM制御部6とを含む。ただし、インバータ制御回路419,429,439に含まれるフィードバック制御部5には、互いに2π/3だけ位相のずれた交流電圧指令が入力される。すなわち、インバータ制御回路429,439のフィードバック制御部5が受ける交流電圧指令の位相は、インバータ制御回路419のフィードバック制御部5が受ける交流電圧指令の位相に対して、-2π/3および+2π/3だけそれぞれ異なる。具体的には、インバータ制御回路419,429,439のフィードバック制御部5が受ける交流電圧指令の周期と同期する正弦波は、sinθ,sin(θ-2π/3),sin(θ+2π/3)でそれぞれ表される。
【0081】
さらに、インバータ制御回路419,429,439の各々において、検出部4のオフセット誤差に応じた目標値DCVc*が減算器51に入力される。
【0082】
実施の形態4に係る電力変換装置400においても、各相に対応するフィードバック制御部5は、交流電圧指令の周期と同期した正弦波の絶対値と補償量との積が重畳された交流電圧指令をインバータ電圧指令Vinv*として決定する。これにより、実施の形態1と同様の効果を奏する。
【0083】
実施の形態4に係る電力変換装置400は、三相交流電力を供給する。したがって、電力変換装置400は、多相の交流出力に対応する構成において、正半波期間および負半波期間を大きく変化させることなく、負荷7に応じて発生する直流成分DCVcを抑制できる。そのため、自立運転時において、能動的方式の単独運転機能を備える系統連系装置を停止させることなく有効に活用できる。
【0084】
なお、図11において、負荷7は、コンデンサCuと並列する経路に設置されている。しかしながら、負荷7は、コンデンサCv、コンデンサCw、コンデンサCuとコンデンサCvの直列端、コンデンサCvとコンデンサCwの直列端、および、コンデンサCuとコンデンサCwの直列端のいずれの経路に設置されてもよい。さらに、負荷7は、単相構成に限定されず、三相3線負荷構成および三相4線負荷構成のいずれかを取ってもよい。系統連系装置408は、三相3線式の構成を取ってもよい。
【0085】
実施の形態5.
図12は、実施の形態5に係る電力変換装置の構成を示す図である。実施の形態5に係る電力変換装置500は、実施の形態4の電力変換装置400の変形例であり、V相設置型の構成を有する。図12に示す電力変換装置500には、例えば三相3線式の構成を有する系統連系装置508が接続される。
【0086】
図12に示されるように、電力変換装置500は、コンデンサCp,Cnと、2つのインバータ512,522と、2つのフィルタ513,523と、2つのインバータ制御回路519,529とを備える。
【0087】
コンデンサCp,Cnは、実施の形態3と同様に、直流電源1に接続される入力端の間に直列に接続され、入力電圧を分圧する。コンデンサCpとコンデンサCnとの接続点にはV相線が接続される。
【0088】
インバータ512、フィルタ513およびインバータ制御回路519は、直流電源1からの入力電圧を受けて電力変換を行ない、U相の交流電力を供給する回路を構成する。インバータ522、フィルタ523およびインバータ制御回路529は、直流電源1からの入力電圧を受けて電力変換を行ない、W相の交流電力を供給する回路を構成する。
【0089】
インバータ512,522の各々は、実施の形態3のインバータ302と同様の構成を有し、ハーフブリッジインバータである。
【0090】
フィルタ513,523は、実施の形態1のフィルタ3と同様の構成を有し、それぞれインダクタLuv,LwvとコンデンサCuv,Cwvとを含むLCフィルタである。
【0091】
インバータ制御回路519,529の各々は、実施の形態1のインバータ制御回路9と同様の構成を有する。すなわち、インバータ制御回路519,529の各々は、検出部4とフィードバック制御部5とPWM制御部6とを含む。ただし、インバータ制御回路529に含まれるフィードバック制御部5が受ける交流電圧指令の位相は、インバータ制御回路519に含まれるフィードバック制御部5が受ける交流電圧指令の位相に対してπ/2だけ異なる。すなわち、インバータ制御回路519,529のフィードバック制御部5に入力される交流電圧指令の周期と同期する正弦波は、sinθ,sin(θ+π/2)でそれぞれ表される。
【0092】
さらに、インバータ制御回路519,529の各々において、検出部4のオフセット誤差に応じた目標値DCVc*が減算器51に入力される。
【0093】
実施の形態5に係る電力変換装置500においても、各相に対応するフィードバック制御部5は、交流電圧指令の周期と同期した正弦波の絶対値と補償量との積が重畳された交流電圧指令をインバータ電圧指令Vinv*として決定する。これにより、実施の形態4と同様の効果を奏する。
【0094】
なお、図12において、負荷7は、コンデンサCuvと並列する経路に設置されている。しかしながら、負荷7は、コンデンサCwv、および、コンデンサCuvとコンデンサCwvの直列端のいずれの経路に設置されてもよい。さらに、負荷7は、単相構成に限定されず、三相3線負荷構成を取ってもよい。
【0095】
実施の形態6.
図13は、実施の形態6に係る電力変換装置の構成を示す図である。実施の形態6に係る電力変換装置600は、実施の形態4の電力変換装置400の変形例であり、三相3線式の3相交流電力を供給する。図13に示す電力変換装置600には、例えば三相3線式の構成を有する系統連系装置508が接続される。
【0096】
図13に示されるように、電力変換装置600は、図11に示す電力変換装置400と比較して、コンデンサCp,Cnと中性線とを省略した点で相違する。
【0097】
実施の形態6に係る電力変換装置600においても、各相に対応するフィードバック制御部5は、交流電圧指令の周期と同期した正弦波の絶対値と補償量との積が重畳された交流電圧指令をインバータ電圧指令Vinv*として決定する。これにより、実施の形態4と同様の効果を奏する。
【0098】
なお、図13において、負荷7は、コンデンサCuとコンデンサCwとの直列端に並列する経路に設置されている。しかしながら、負荷7は、コンデンサCvとコンデンサCwとの直列端、および、コンデンサCuとコンデンサCvとの直列端のいずれの経路に設置されてもよい。さらに、負荷7は、単相構成に限定されず、三相3線負荷構成を取ってもよい。
【0099】
なお、実施の形態3に係る電力変換装置300は、フィードバック制御部5の代わりに実施の形態2に係るフィードバック制御部205を備えてもよい。また、実施の形態4から6に係る電力変換装置において、インバータ制御回路419,429,439,519,529は、実施の形態2に係るインバータ制御回路209と同様の構成を備えてもよい。
【0100】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0101】
1 直流電源、2,302,412,422,432,512,522 インバータ、2a~2f 半導体スイッチング素子、3,254,255,413,423,433,513,523 フィルタ、4 検出部、4a 電圧検出器、4b ローパスフィルタ、5,205,905 フィードバック制御部、6 PWM制御部、7 負荷、8,408,508 系統連系装置、9,209,419,429,439,519,529,909 インバータ制御回路、51,253 減算器、52 演算部、53,55,256,257,259 乗算器、54 絶対値回路、56,252,258,956 加算器、100,200,300,400,500,600,900 電力変換装置、251 除算器、C,Cn,Cp,Cu,Cuv,Cv,Cw,Cwv コンデンサ、L,Lu,Luv,Lv,Lw,Lwv インダクタ。
図1
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図4
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図6
図7
図8
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図10
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図13