(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-22
(45)【発行日】2025-05-30
(54)【発明の名称】血漿カリクレイン阻害剤としての複素芳香族カルボキサミド誘導体
(51)【国際特許分類】
C07D 401/14 20060101AFI20250523BHJP
C07D 403/14 20060101ALI20250523BHJP
A61K 31/4439 20060101ALI20250523BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20250523BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20250523BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20250523BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20250523BHJP
A61P 7/10 20060101ALI20250523BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20250523BHJP
A61P 9/04 20060101ALI20250523BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20250523BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20250523BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250523BHJP
【FI】
C07D401/14 CSP
C07D403/14
A61K31/4439
A61K31/506
A61K45/00
A61P3/04
A61P3/10
A61P7/10
A61P9/10
A61P9/04
A61P9/12
A61P27/02
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2022548997
(86)(22)【出願日】2021-02-11
(86)【国際出願番号】 EP2021053284
(87)【国際公開番号】W WO2021160716
(87)【国際公開日】2021-08-19
【審査請求日】2024-01-17
(32)【優先日】2020-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503385923
【氏名又は名称】ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100156982
【氏名又は名称】秋澤 慈
(72)【発明者】
【氏名】エックハルト マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ジルー モード
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー カミラ
(72)【発明者】
【氏名】ワグナー ホルガー
(72)【発明者】
【氏名】ヴィーデンマイヤー ディーター
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-535963(JP,A)
【文献】国際公開第2018/192866(WO,A1)
【文献】特許第6828191(JP,B2)
【文献】特表2022-543494(JP,A)
【文献】特表2022-548696(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物
【化1】
(式中、
Rは、
【化2】
からなるR-G1群から選択され、
R
1は、HおよびFからなるR
1-G1群から選択され、
部分=A
1-CR=A
2-は、=N-CR=N-、=N-CR=CH-および=CH-CR=N-からなるA-G1群から選択され、
部分-L
1=L
2-は、-N=N-、-N=CH-および-CH=N-からなるL-G1群から選択される)
および/もしくはその互変異性体
またはその塩。
【請求項2】
Rが、
【化3】
からなるR-G2群から選択される、
請求項1に記載の化合物
および/もしくはその互変異性体
またはその塩。
【請求項3】
Rが、
【化4】
からなるR-G3群から選択される、
請求項1に記載の化合物
および/もしくはその互変異性体
またはその塩。
【請求項4】
Rが、
【化5】
からなるR-G4群から選択される、
請求項1に記載の化合物
および/もしくはその互変異性体
またはその塩。
【請求項5】
部分=A
1-CR=A
2-が、=N-CR=N-からなるA-G2群から選択される、
請求項1から4までのいずれか1項に記載の化合物
および/もしくはその互変異性体
またはその塩。
【請求項6】
部分=A
1-CR=A
2-が、=N-CR=CH-からなるA-G3群から選択される、
請求項1から4までのいずれか1項に記載の化合物
および/もしくはその互変異性体
またはその塩。
【請求項7】
部分=A
1-CR=A
2-が、=CH-CR=N-からなるA-G4群から選択される、
請求項1から4までのいずれか1項に記載の化合物
および/もしくはその互変異性体
またはその塩。
【請求項8】
式(I)の化合物が、
【化6】
からなる群から選択される、
請求項1から7までのいずれか1項に記載の化合物
および/もしくはその互変異性体
またはその塩。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項に記載の化合物および/またはその互変異性体の薬学的に許容される塩。
【請求項10】
1つもしくは複数の請求項1から9までのいずれか1項に記載の化合物および/またはその互変異性体、あるいは薬学的に許容されるその塩を含み、1種もしくは複数の不活性担体および/または希釈剤を一緒に含んでもよい、医薬組成物。
【請求項11】
眼疾患の処置のための、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
糖尿病性黄斑浮腫、加齢黄斑変性および/または脈絡膜血管新生の処置のための、請求項10に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血漿カリクレイン阻害剤である、新規の複素芳香族カルボキサミド誘導体および薬学的に許容されるその塩に関する。さらに、本発明は、前記化合物を含む医薬組成物および組合せ物、ならびに血漿カリクレインの阻害によって影響を受け得る疾患を処置する方法におけるそれらの使用に関する。特に、本発明の医薬組成物は、糖尿病合併症、眼疾患および浮腫関連疾患、特に、糖尿病性黄斑浮腫、加齢黄斑変性、脈絡膜血管新生、遺伝性血管浮腫、および卒中後の脳浮腫の予防および/または治療に好適である。
【背景技術】
【0002】
血漿カリクレイン(PKK)は、遊離チモーゲンとして、または活性化されて、他の基質の処理に加えて、キニーノゲンからキニンを遊離することができる活性PKKをもたらす高分子量キニーノゲンに結合しているヘテロ二量体複合体としてのどちらかで、血漿中に循環している不活性な血漿プレカリクレインとして、肝臓中の肝細胞により分泌されるトリプシン様セリンプロテアーゼである。キニンは、ブラジキニン受容体などのGタンパク質共役型受容体を介して作用する炎症の強力なメディエータである。
【0003】
PKKは、いくつかの炎症性障害において役割を果たすと考えられており、遺伝性血管浮腫(HAE)、網膜症または糖尿病性網膜症、増殖性および非増殖性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、臨床的に有意な黄斑浮腫(CSME)、嚢胞様黄斑浮腫(CME)、水晶体摘出後CME、冷凍療法により誘発されるCME、ブドウ膜炎により誘発されるCME、眼内炎、血管閉塞後のCME(例えば、網膜中心静脈閉塞症、網膜分枝静脈閉塞症または半側網膜静脈閉塞)、網膜浮腫、糖尿病性網膜症における白内障手術に関連する合併症、高血圧性網膜症、網膜外傷、萎縮型および滲出型加齢黄斑変性(AMD)、ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)、脈絡膜血管新生(CNV;例えば、非滲出性脈絡膜血管新生)、後部硝子体剥離(PVD)、例えば組織および/または器官移植に関連する、すべての種類の文脈における虚血再灌流傷害、手術誘発性脳損傷、局所脳虚血(focal cerebral ischemia)、全脳虚血、神経膠腫関連浮腫、脊髄損傷、疼痛、虚血、局所脳虚血(focal brain ischemia)、神経障害および認知障害、深部静脈血栓、卒中(卒中後の中枢神経系における浮腫を含む)、心筋梗塞、後天性血管浮腫、薬物関連浮腫(ACE阻害剤誘発性浮腫および組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)誘発性血管性浮腫を含む)、高地脳浮腫、細胞傷害性脳浮腫、浸透性脳浮腫、閉塞性水頭症、放射線照射誘発性浮腫、リンパ液浮腫、外傷性脳損傷、出血性脳卒中(例えば、脳卒中またはくも膜下脳卒中)、脳内出血、虚血性脳卒中の出血性変化、損傷または手術に関連する脳外傷、脳動脈瘤、動静脈奇形、手術中の血液喪失の低減(例えば、心肺バイパスまたは冠状動脈バイパス移植などの心臓胸部外科手術)、皮癬、炎症性成分による障害(多発性硬化症など)、てんかん、脳炎、アルツハイマー病、日中の過度の眠気、本態性高血圧、糖尿病または高脂血症に関連する血圧上昇、腎不全、慢性腎疾患、心不全、微量アルブミン尿症、アルブミン尿、タンパク尿、血管透過性の上昇に関連する障害(例えば、網膜血管透過性の上昇、脚部、足、足関節の血管透過性の上昇)、脳内出血、例えば血栓症、深部静脈血栓、線維素溶解処置後に起因する凝固などの血液凝固障害、狭心症、血管浮腫、敗血症、関節炎(例えば、関節リウマチ、骨関節炎、感染性関節炎)、ループス、痛風、乾癬、炎症性腸疾患(IBD、例えば、潰瘍性大腸炎(UC)およびクローン病(CD))、糖尿病、糖尿病合併症、メタボリックシンドロームに起因する合併症、感染症、星状細胞活性化関連疾患(例えば、アルツハイマー病または多発性硬化症)、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、クロイツフェルトヤコブ病、卒中、てんかんおよび外傷(例えば、脳外傷)、アレルギー性浮腫、例えば、慢性アレルギー性副鼻腔炎または通年性鼻炎における気道閉塞;急性喘息における気道閉塞;全身性エリテマトーデス(SLE)に関連する漿膜炎、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、コロナウイルス疾患2019(COVID-19)関連肺炎、線維性疾患、肝線維症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、腎損傷および他の疾患などの、障害との様々な関連性を有し得る。PKKはまた、血液透析の間の過敏反応および血栓症において重要な役割を果たすと考えられている。
【0004】
本発明の化合物のようなPKK阻害剤は、例えば、本明細書のこれ以前に言及した幅広い範囲の障害の処置に有用と考えられ、特に、糖尿病性網膜症および糖尿病性黄斑浮腫、または浮腫関連疾患に関連する網膜血管透過性を低下させるための処置としての利用性を有するはずである。
PKK阻害剤は、疾患における浮腫形成、例えば、虚血再灌流傷害、網膜症、または遺伝性血管浮腫、黄斑浮腫および脳浮腫などの浮腫関連疾患に関連する浮腫形成の処置において特に有用であるはずである。PKK阻害剤は、網膜症、例えば、糖尿病および/または高血圧に関連する網膜症の処置、ならびに黄斑浮腫、例えば糖尿病および/または高血圧に関連する黄斑浮腫の処置にとりわけ有用と考えられている。
そのすべてがPKKとの関連性を有する、脳出血、腎障害、心筋症および神経障害などの糖尿病の他の合併症もまた、PKK阻害剤に対する標的として考えることができる。
【0005】
治療的使用および/または予防的使用に好適なPKK阻害剤は、強力かつ高い選択性でPKKに結合するはずである。それらの阻害剤は、胃腸管から十分に吸収されて、代謝的に十分に安定であり、好都合な薬物動態特性を有すはずである。それらの阻害剤は、非毒性であるべきであり、副反応をほとんど示さないはずである。
低分子量PKK阻害剤は、当分野で公知であり、例えば、これらの化合物は、WO2009/097141、WO2013/111107、WO2013/111108、WO2014/188211、WO2017/072020、WO2017/072021およびWO2018/192866に開示されている。
【発明の概要】
【0006】
第1の態様では、本発明は、式(I)の化合物
【化1】
(式中、
Rは、
【0007】
【化2】
からなるR-G1群から選択され、
R
1は、HおよびFからなるR
1-G1群から選択され、
部分=A
1-CR=A
2-は、=N-CR=N-、=N-CR=CH-および=CH-CR=N-からなるA-G1群から選択され、
部分-L
1=L
2-は、-N=N-、-N=CH-および-CH=N-からなるL-G1群から選択される)
アイソフォーム、互変異性体、立体異性体、代謝産物、プロドラッグ、溶媒和物、水和物、共結晶およびそれらの塩、特に、薬学的に許容される共結晶およびその塩、またはそれらの組合せ物に関する。
第2の態様では、本発明は、本明細書のこれ以前または本明細書のこれ以降に定義されている1つもしくは複数の式(I)の化合物、および/またはそれらの互変異性体もしくは薬学的に許容されるその塩を含み、1種もしくは複数の不活性担体および/または希釈剤を一緒に含んでもよい医薬組成物に関する。
【0008】
第3の態様では、本発明は、本明細書のこれ以前または本明細書のこれ以降に定義されている1つもしくは複数の式(I)の化合物、および/またはそれらの互変異性体もしくは薬学的に許容されるその塩、ならびに1種または複数の追加の治療剤を含み、1種もしくは複数の不活性担体および/または希釈剤を一緒に含んでもよい医薬組成物に関する。
第4の態様では、本発明は、医薬として使用するための、本明細書のこれ以前または本明細書のこれ以降に定義されている式(I)の化合物、および/もしくはその互変異性体または薬学的に許容されるその塩に関する。
第5の態様では、本発明は、それを必要とする患者において、血漿カリクレインの阻害によって影響を受け得る疾患または状態を処置する、すなわち治療および/または予防するための方法であって、患者に本明細書のこれ以前または本明細書のこれ以降に定義されている1つもしくは複数の式(I)の化合物、および/もしくはそれらの互変異性体または薬学的に許容されるその塩を投与するステップを含む、方法に関する。
【0009】
さらに、本発明は、血漿カリクレインの阻害によって影響を受け得る疾患または状態を処置する、すなわち治療および/または予防するための医薬の製造における、本明細書のこれ以前または本明細書のこれ以降に定義されている1つもしくは複数の式(I)の化合物、および/もしくはそれらの互変異性体または薬学的に許容されるその塩の使用に関する。
さらに、本発明は、それを必要とする患者において、血漿カリクレインの阻害によって影響を受け得る疾患または状態を処置する、すなわち治療および/または予防する方法において使用するための、本明細書のこれ以前または本明細書のこれ以降に定義されている式(I)の化合物、および/もしくはその互変異性体または薬学的に許容されるその塩に関する。
本発明のさらなる態様は、上述および下記の説明ならびに例から直接、当業者に明白となろう。
【0010】
一般的な用語および定義
本明細書において具体的に定義されていない用語は、本開示および文脈に照らし合わせて、当業者によりこれらの用語に与えられていると思われる意味が与えられるべきである。しかし、本明細書に使用されている場合、反対に述べられていない限り、以下の用語が示された意味を有しており、以下の慣習に従う。
用語「本発明による化合物」、「式(I)の化合物」、「本発明の化合物」などは、本発明による式(I)の化合物(それらの互変異性体、立体異性体およびそれらの混合物、ならびにそれらの塩、特に、薬学的に許容されるそれらの塩、ならびにこのような化合物の溶媒和物、水和物および共結晶、特に薬学的に許容されるそれらの共結晶、このような互変異性体、立体異性体およびそれらの塩の溶媒和物、水和物および共結晶を含む)を意味する。
同様に、特に具体的に示さない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲全体を通じて、所与の化学式または名称は、互変異性体、ならびにすべての立体異性体、光学異性体および幾何異性体(例えば、鏡像異性体、ジアステレオマー、E/Z異性体など)、ならびにそれらのラセミ体、ならびに個々の鏡像異性体の異なる割合の混合物、ジアステレオマー混合物、またはこのような異性体および鏡像異性体が存在する上述の形態のいずれかの混合物、ならびに塩(薬学的に許容されるその塩を含む)、ならびにその溶媒和物(例えば、遊離化合物の溶媒和物、または本化合物の塩の溶媒和物を含めた、水和物など)、およびその共結晶(薬学的に許容されるその共結晶、および遊離化合物またはその塩の共結晶を含む)を包含するものとする。
【0011】
「薬学的に許容される」という語句は、過度の毒性、刺激、アレルギー反応もしくは他の問題、または合併症なしに、ヒトおよび動物の組織に接触して使用するのに好適な、妥当な医療的判断の範囲内で、妥当な利益/リスク比に見合う化合物、物質、組成物および/または剤形を指すために本明細書において使用される。
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される塩」は、その酸塩または塩基塩を作製することにより親化合物が修飾された、開示化合物の誘導体を指す。薬学的に許容される塩の例には、以下に限定されないが、アミンなどの塩基性残基の無機酸塩または有機酸塩;カルボン酸などの酸性残基のアルカリ塩または有機塩などが含まれる。
例えば、このような塩には、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、ゲンチジン酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、4-メチル-ベンゼンスルホン酸、リン酸、サリチル酸、コハク酸、硫酸および酒石酸由来の塩が含まれる。
本発明の薬学的に許容される塩は、従来的な化学方法により、塩基性部分または酸性部分を含有する、親化合物から合成することができる。一般に、このような塩は、これらの化合物の遊離酸または遊離塩基の形態のものを、水中、あるいはエーテル、EtOAc、EtOH、イソプロパノールもしくはMeCN、またはそれらの混合物のような有機希釈剤中で、十分な量の適切な塩基または酸と反応させることにより調製することができる。
例えば、本発明の化合物を精製または単離するために有用な上記のもの以外の酸の塩(例えば、トリフルオロ酢酸塩)もまた、本発明の一部を構成する。
【0012】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される共結晶」とは、開示化合物の誘導体であって、1つまたは複数のコフォーマーの助けによりその共結晶を作製することにより、その親化合物が修飾されている、誘導体を指す。同様に、開示化合物の溶媒和物および/または塩の共結晶も包含される。
例えば、コフォーマーは、カルボン酸などの水素結合供与体、ならびにアミンおよびアミドなどの水素結合受容体を含む。
本発明の薬学的に許容される共結晶は、固体状態の磨砕、溶融押出成形および溶融結晶化などの固体をベースとする方法、ならびに溶液結晶化、溶媒蒸発法、冷却結晶化、超臨界流体支援結晶化、超音波支援結晶化、噴霧乾燥、液体支援磨砕および遊星ミル粉砕などの液体をベースとする方法を含めた、当業者に公知の方法によって親化合物から合成することができる。
本発明の化合物が、化学名の形態で、および何らかの相違がある場合の式として図示されている場合では、式が優先するものとする。
【0013】
以下に定義されている基、ラジカルまたは部分において、炭素原子の数は、多くの場合、その基の前に明記されており、例えば、C
1-6-アルキルとは、1~6個の炭素原子を有するアルキル基またはラジカルを意味する。
アスタリスクは、定義されているコア分子に結合している結合を示すために、部分式中に使用され得る。部分式中の、1つより多い結合点、すなわち1つより多いアスタリスクがある場合、これらのアスタリスクは、コア分子の結合部分の括弧内の表示によってさらに明記され得る。
置換基の原子の命名は、コア、または置換基が結合している基に最も近い原子から開始する。
例えば、用語「3-カルボキシプロピル基」は、以下の置換基を表す:
【化3】
(式中、カルボキシル基は、プロピル基の第3の炭素原子に結合している)。用語「1-メチルプロピル-」、「2,2-ジメチルプロピル-」または「シクロプロピルメチル-」基は、以下の基を表す:
【化4】
【0014】
用語「C1-n-アルキル」(nは、1~nの整数である)は、単独で、または別のラジカルとの組合せのどちらかで、1~n個のC原子を有する、飽和の分岐または線状の非環式炭化水素ラジカルを意味する。例えば、用語C1-5-アルキルは、ラジカルH3C-、H3C-CH2-、H3C-CH2-CH2-、H3C-CH(CH3)-、H3C-CH2-CH2-CH2-、H3C-CH2-CH(CH3)-、H3C-CH(CH3)-CH2-、H3C-C(CH3)2-、H3C-CH2-CH2-CH2-CH2-、H3C-CH2-CH2-CH(CH3)-、H3C-CH2-CH(CH3)-CH2-、H3C-CH(CH3)-CH2-CH2-、H3C-CH2-C(CH3)2-、H3C-C(CH3)2-CH2-、H3C-CH(CH3)-CH(CH3)-およびH3C-CH2-CH(CH2CH3)-を包含する。
用語「処置」および「処置すること」は、本明細書で使用する場合、治療的、すなわち治癒的および/または緩和的処置、ならびに予防的処置、すなわち防止処置の両方を包含する。
治療的処置とは、発現形態、急性形態または慢性形態の前記状態の1つまたは複数を既に発症している患者の処置を指す。治療的処置は、特定の徴候の症状を軽減するための対症処置、または徴候の状態を逆行させるもしくは部分的に逆行させる、または疾患の進行を停止させるもしくは減速させるための原因処置とすることができる。
【0015】
予防的処置(「予防」)とは、前記状態の1つまたは複数を発症するリスクのある患者を、前記リスクを低減するために、疾患の臨床的発生前に処置することを指す。
用語「処置」および「処置すること」は、症状もしくは合併症の発生を予防または遅延させるため、および疾患、状態もしくは障害の発症を予防または遅延させるため、および/あるいは疾患、状態もしくは障害をなくすまたは制御するため、ならびに疾患、状態もしくは障害に関連する症状または合併症を軽減するために、1つまたは複数の活性化合物を投与することを含む。
本発明が、処置を必要とする患者を指す場合、本発明は、哺乳動物、特にヒトにおける処置に主に関する。
用語「治療有効量」は、(i)特定の疾患もしくは状態を処置するまたは予防する、(ii)特定の疾患もしくは状態の1つまたは複数の症状を弱化する、改善するまたはなくす、あるいは(iii)本明細書に記載されている特定の疾患もしくは状態の1つまたは複数の症状の発生を予防するまたは遅延させる、本発明の化合物の量を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、有効な血漿カリクレイン(PKK)阻害剤である新規の複素芳香族カルボキサミド誘導体であって、以下に限定されないが、糖尿病合併症、眼疾患および浮腫関連疾患、特に、糖尿病性黄斑浮腫、加齢黄斑変性、脈絡膜血管新生、遺伝性血管浮腫および卒中後の脳浮腫を含む、PKK阻害により影響を受け得る、疾患および/または状態の処置のための医薬として、上記のカルボキサミド誘導体を使用するのに好適な薬理学的特性および薬物動態特性を有するカルボキサミド誘導体を開示している。
本発明の化合物は、有効性の増大、高い代謝および/または化学安定性、高い選択性、安全性および耐容性、溶解度の増大、透過性の増大、所望の血漿タンパク質結合、生体利用率の向上、薬物動態プロファイルの改善、および安定な塩を形成する可能性などのいくつかの利点を実現することができる。
【0017】
本発明の化合物
本発明の第1の態様では、式(I)の化合物
【化5】
(式中、R、R
1、A
1、A
2、L
1およびL
2は、本明細書のこれ以前または本明細書のこれ以降に定義されている)は、PKKの強力な阻害剤であり、選択性、安全性および耐容性、代謝および/または化学安定性、薬物動態特徴および物理化学的特徴、溶解度、透過性、血漿タンパク質結合、生体利用率、ならびに/または安定な塩を形成する可能性の点で、好都合な特性を示すことが見いだされている。特に、上記の化合物は、ヒトPKKに対する高い有効性と、例えば、ヒト組織カリクレイン1(TK1)などの様々なセリンプロテアーゼに対する顕著な選択性との有利な組合せ、および生理的に関連するpH値において有利な膜透過性を実現する。さらに、変異原性の可能性が低いこと、およびシトクロムP450(CYP)3A4が機構に基づいて阻害する傾向が低いことなどの有利な安全性特徴が示される。
【0018】
したがって、本明細書のこれ以前または本明細書のこれ以降に定義されている式(I)の化合物、または薬学的に許容されるその塩は、PKK阻害により影響を受け得る疾患および/または状態の処置に有用となることが予期される。
したがって、本発明の一態様によれは、式(I)の化合物
【化6】
(式中、R、R
1、A
1、A
2、L
1およびL
2は、本明細書のこれ以前または本明細書のこれ以降に定義されている)、ならびにそのアイソフォーム、互変異性体、立体異性体、代謝産物、プロドラッグ、溶媒和物、水和物、共結晶および塩、特に、薬学的に許容されるその共結晶および塩が提供される。
特に明記しない限り、基、残基および置換基、特に、R、R
1、A
1、A
2、L
1およびL
2は、本明細書のこれ以前および本明細書のこれ以降に定義されている。式(I)の置換基R、R
1、A
1、A
2、L
1およびL
2の好ましい意味は、本発明の実施形態として、本明細書のこれ以降に示されている。これらの定義および実施形態のいずれも、互いに組み合わされてもよい。
【0019】
R:
一実施形態によれば、Rは、
【化7】
からなるR-G1群から選択される。
別の実施形態によれば、Rは、
【化8】
からなるR-G2群から選択される。
【0020】
別の実施形態によれば、Rは、
【化9】
からなるR-G3群から選択される。
別の実施形態によれば、Rは、
【化10】
からなるR-G4群から選択される。
【0021】
R1:
一実施形態によれば、R1は、HおよびFからなるR1-G1群から選択される。
別の実施形態によれば、R1は、HからなるR1-G2群から選択される。
別の実施形態によれば、R1は、FからなるR1-G3群から選択される。
A1、A2:
一実施形態によれば、部分=A1-CR=A2-は、=N-CR=N-、=N-CR=CH-および=CH-CR=N-からなるA-G1群から選択される。
別の実施形態によれば、部分=A1-CR=A2-は、=N-CR=N-からなるA-G2群から選択される。
別の実施形態によれば、部分=A1-CR=A2-は、=N-CR=CH-からなるA-G3群から選択される。
別の実施形態によれば、部分=A1-CR=A2-は、=CH-CR=N-からなるA-G4群から選択される。
部分=A1-CR=A2-の上記の定義に関すると、3つのサブユニットの順序は、その部分の配置を表し、すなわち、例えば、A-G3群では、A1は、Nであり、A2は、CHである。
【0022】
L1、L2:
一実施形態によれば、-L1=L2-は、-N=N-、-N=CH-および-CH=N-からなるL-G1群から選択される。
別の実施形態によれば、-L1=L2-は、-N=N-からなるL-G2群から選択される。
別の実施形態によれば、-L1=L2-は、-N=CH-からなるL-G3群から選択される。
別の実施形態によれば、-L1=L2-は、-CH=N-からなるL-G4群から選択される。
部分-L1=L2-の上記の定義に関すると、2つのサブユニットの順序は、その部分の配置を表し、すなわち、例えば、L-G3群では、L1は、Nであり、L2は、CHである。
【0023】
さらに好ましい式(I)の化合物の下位の実施形態は、以下の表1中の実施形態(I-a)~(I-u)として説明され、この場合、上記の置換基の定義が使用される。例えば、列Rおよび行(I-a)中のエントリー-G1は、実施形態(I-a)において、置換基Rが、R-G1と表されている定義から選択されることを意味する。同じことが、一般式に組み込まれている他の可変基に同様に該当する。
【0024】
【0025】
特に好ましい化合物(それらの互変異性体、その塩、または任意のそれらの溶媒和物、水和物を含む)は、
【化11】
である。
【0026】
調製
本発明による化合物およびそれらの中間体は、当業者に公知の合成方法を使用して、および例えば、"Comprehensive Organic Transformations", 2nd Edition, Richard C. Larock, John Wiley & Sons, 2010、および"March's Advanced Organic Chemistry", 7th Edition, Michael B. Smith, John Wiley & Sons, 2013に記載されている方法を使用する有機合成の文献に記載されている合成方法を使用して得ることができる。好ましくは、本化合物は、特に、実験項に記載されている、本明細書のこれ以降に一層完全に説明されている調製方法と同様にして得られる。一部の場合、反応スキームを実施する際に採用される順序は、様々となり得る。当業者に公知であるが、本明細書において詳細に記載されていないこれらの反応の変形も使用されてもよい。本発明による化合物を調製するための一般方法は、以下のスキームを検討すると、当業者に明白となろう。出発化合物は市販されているか、または文献もしくは本明細書において記載されている方法によって調製することができ、または類似もしくは同様の方法で調製することができる。反応を実施する前に、出発化合物中の対応する官能基を、従来的な保護基を使用して保護してもよい。これらの保護基は、当業者に精通されている方法、ならびに例えば"Protecting Groups", 3rd Edition, Philip J. Kocienski, Thieme, 2005および"Protective Groups in Organic Synthesis", 4th Edition, Peter G. M. Wuts, Theodora W. Greene, John Wiley & Sons, 2006において文献に記載されている方法を使用して、反応順序内で好適な段階で、再度、開裂させてもよい。
【0027】
スキーム1:
【化12】
PG = H、またはCH
2OCH
2CH
2SiMe
3などの保護基
【0028】
スキーム1:式(I’)の化合物は、好適な溶媒(例えば、DCM、THF、1,4-ジオキサン、DMF、N,N-ジメチルアセトアミドおよび1-メチル-2-ピロリジノン)中、好適なカップリング剤(例えば、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム-ヘキサフルオロホスフェート(HATU)、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)、(ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)、カルボジイミド試薬など)および塩基(例えば、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピル-エチルアミン、ピリジンなど)の存在下、式(II)の好適な酸(Li+、Na+、K+などの好適な金属陽イオンを有する遊離酸またはカルボキシレートのどちらかとして)と、好適な式(III)のアミン(遊離アミン、または塩酸塩、臭化水素酸塩などの塩のどちらかとして)とを反応させて、アミド結合を形成することにより調製することができる。スキーム1におけるR、R1、A1、A2、L1およびL2は、本明細書のこれ以前に定義されている意味を有する。代替的に、カルボン酸は、カルボン酸塩化物(例えば、DCM中でオキサリルクロリドまたは塩化チオニルを使用する)に変換されて、このまま、適切な塩基(例えば、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピル-エチルアミン、ピリジンなど)の存在下で、アミン(III)とカップリングされる。アミン(III)が、ピラゾール環(PGは、Hではない)上の保護基と共に使用される場合、この基は、有機化学の文献において報告されている標準的手順を適用することにより、この後に開裂除去される。2-トリメチルシリルエチルオキシメチルおよびtert-ブチルエステルが、DCM、1,4-ジオキサン、イソプロパノールまたはEtOAcなどの溶媒中、酸性条件下で、例えば、TFAまたは塩酸を用いて好ましくは開裂される。2-トリメチルシリルエチルオキシメチルもまた、THFなどの適切な溶媒中、フッ化物源(例えば、nBu4NF)を使用することにより除去され得る。フェニル環上にメトキシなどの電子供与性基を有するベンジルオキシメチル基はまた、酸化的条件下(例えば、硝酸セリウムアンモニウム(CAN)または2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノキノン(DDQ)を用いる)、または酸性条件下(例えば、TFAまたは塩酸を用いる)で開裂することができる。
【0029】
スキーム2:
【化13】
R
5 = C
1-4-アルキル、ベンジル
【0030】
スキーム2:スキーム2中のR、R1、A1、A2、L1およびL2が、本明細書のこれ以前に定義されている意味を有する式(II)の酸は、R5の性質に応じて、加水分解または水素化分解により、対応するエステル(IV)から好ましくは調製される。エチルエステルまたはメチルエステルなどの低級アルキル基のエステルは、周囲温度または高温で、水および好適な水混和性溶媒(例えば、THF、MeOH、EtOH、1,4-ジオキサンまたはこれらの混合物)の混合物中、NaOH、LiOHまたはKOHなどの水酸化物塩で加水分解することによって好ましくは開裂される。酸は、金属陽イオンとの塩として、または遊離酸としてのどちらかで単離することができる。tert-ブチルエステルは、好適な溶媒(例えば、DCM、1,4-ジオキサン、MeOH、EtOH、THF、水またはこれらの混合物)中、酸(例えば、塩酸またはTFA)により処理することによって好ましくは開裂される。ベンジルエステルは、水素雰囲気下(好ましくは1~5bar)、好適な溶媒(例えば、EtOH、MeOH、THF、DCMまたはEtOAc)中、好適な触媒(例えば、炭素担持パラジウム)により水素化分解することにより好ましくは開裂される。
【0031】
スキーム3
【化14】
R
5 = C
1-4-アルキルまたはベンジル
【0032】
スキーム3:化合物(IV)のいくつかは、Mitsunobu反応の条件(例えば、THF、1,4-ジオキサン、トルエンなどの溶媒中、トリフェニルホスフィンまたはトリ-n-ブチルホスフィンを、例えば、ジエチルアゾジカルボキシレート(DEAD)、ジイソプロピルアゾジカルボキシレート(DIAD)またはジ-tert-ブチルアゾジカルボキシレート(DBAD)と組み合わせる)を使用する、アルコール(V)とエステル(VI)との反応によって調製することができる。スキーム3中のR、R1、A1、A2、L1およびL2は、本明細書のこれ以前に定義されている意味を有する。アルコール(V)は、複素芳香族環上に所望の残基R、または代わりに後でRを導入するための脱離基を有することができる。代替的に、化合物(IV)のいくつかは、適切な溶媒(例えば、MeCN)中、高温(20~120℃)で、ルイス酸またはブレンステッド酸(例えば、4-トルエンスルホン酸)の存在下で、アルコール(V)とエステル(VI)とを反応させることにより得ることができる。
【0033】
スキーム4
【化15】
R
5 = C
1-4-アルキルまたはベンジル
Hal = Cl、Br、I、OSO
2CH
3などの脱離基
【0034】
スキーム4:化合物(IV)のいくつかはまた、好適な溶媒(例えば、THF、DMF)中、好適な塩基(例えば、水素化ナトリウム、炭酸セシウム、炭酸カリウムまたはトリエチルアミン)の存在下で、ヘテロアリールメチル位にあるCl、Brまたはメシルオキシ(メタンスルホニルオキシ)などの脱離基を有する化合物(VII)をエステル(VI)と反応させることにより調製することもできる。スキーム4中のR、R1、A1、A2、L1およびL2は、本明細書のこれ以前に定義されている意味を有する。化合物(VII)は、複素芳香族環上に所望の残基R、または代わりに後でRを導入するための置換可能な基を有することができる。
【0035】
スキーム5
【化16】
R
5 = C
1-4-アルキルまたはベンジル
Hal = OH、Cl、Br、I、OSO
2CH
3などの脱離基
【0036】
スキーム5:スキーム5中のR、R1、A1およびA2が、本明細書のこれ以前に定義されている意味を有する式(IV’)のいくつかのエステルは、DMFまたは別の好適な溶媒中、式(VII)の対応するハロゲン化アルキル(臭化物または塩化物)またはスルホン酸エステル(例えば、メシル酸エステル)をアジ化ナトリウムで処理することによって調製されて、式(VIII)の中間体を得ることができ、この中間体は、次に、銅を媒介とする条件下で、好適なプロピオル酸エステルと反応(例えば、水/tert-ブタノール中、硫酸銅触媒およびアスコルビン酸ナトリウムを用いるプロピオル酸エチルまたはプロピオル酸tert-ブチル)させると、化合物(IV’)が得られる。代替的に、アジド(VIII)は、好適な溶媒(例えば、THFまたはDMF)中、DBUなどの好適な塩基の存在下で、ジフェニルホスホリルアジドで処理することによって、式(V)のアルコール(またはHalがOHである場合、(VII))から得ることができる。化合物(VII)は、複素芳香族環上に所望の残基R、または代わりに後でRを導入するための脱離基を有することができる。
【0037】
スキーム6
【化17】
R
2 = CHF
2、CF
3、またはCl、Br、I、HCCH
2、CHO、CN、COOR
5など、後にCHF
2および/もしくはCF
3を導入することを可能にする基
R
6=COOR
5、CHO、CH
2OH、
【化18】
R
5=C
1-4-アルキルまたはベンジル;LG=F、Cl、Br、I、S(O)
0,1,2などの脱離基
【0038】
スキーム6:式(XV)の中間体は、複素芳香族環上の求核置換反応、または遷移金属触媒カップリング反応のどちらかにより、芳香族化合物(XIII)およびアミン(XIV)から調製することができる。スキーム6中のA1、A2およびRは、本明細書のこれ以前に定義されている意味を有する。(XIII)中の複素芳香族環上の脱離基の、化合物(XIV)中のNによる求核置換は、周囲温度または高温で、好適な溶媒(例えば、THF、1,4-ジオキサン、DMF、DMSO)中、好適な塩基(例えば、水素化ナトリウム、炭酸セシウム、炭酸カリウム、N,N-ジイソプロピル-エチルアミン)の存在下で行うことができる。遷移金属を触媒とするカップリング反応は、化合物(XIII)の塩化物、臭化物またはヨウ化物を用い、塩基の存在下、および適切な溶媒中で、好適な銅塩もしくはパラジウム塩、またはそれらの錯体(追加の配位子と組み合わせてもよい)を使用し、Ullmannカップリング反応またはBuchwald/Hartwigカップリング反応と称される、有機化学の文献に報告されている手順と同様に好ましくは行われる。
【0039】
【0040】
スキーム7:式(XII)の中間体は、適切なジフルオロメチルもしくはトリフルオロメチル求核剤またはそれらの前駆体との遷移金属を触媒とするカップリング反応により、化合物(XIII’)から入手することができる。スキーム7中のR、R1、A1、A2、L1およびL2は、本明細書のこれ以前に定義されている意味を有する。適切な溶媒(例えば、NMPまたはDMF)中、周囲温度または高温、すなわち20~150℃において、銅塩(例えば、CuI)および塩基(例えば、CsFまたはKF)と組み合わせた、個々の求核剤前駆体としてのジフルオロメチルトリメチルシランまたはトリフルオロメチルトリメチルシランにより、式(XII)の化合物を得ることができる。F3CCu(phen)(phen=フェナントロリン)におけるような触媒を既に組み込む予め形成した求核剤を使用すると、報告されている条件下(例えば、DMF中、80~100℃;例えば、Org. Lett. 2014, 16, 1744-1747を参照されたい)で化合物(XII)を同様に得ることができる。
【0041】
化合物(XI)はまた、3工程の合成順序により、ハライド(XIII’)から得ることもできる。したがって、ハライド(XIII’)を、適切なビニル求核剤、例えば、塩化ビニル亜鉛またはビニルボロン酸もしくはビニルボロン酸エステル、およびいわゆるNegishiカップリング反応(例えば、THF中、30~60℃で、Pd(PPh3)4を用いる)またはSuzukiカップリング反応(例えば、1,4-ジオキサンまたはDMF中、60~110℃において、Na2CO3および水の存在下、PdCl2(dppf)を用いる)に関して報告されている条件を使用してビニル化し、化合物(IX)を形成する。次に、化合物(IX)をC=C開裂条件(例えば、DCM中、-70℃でのオゾン分解と、その後のPPh3もしくはMe2Sによる還元的なクエンチ、または周囲温度における、アセトン、tert-ブタノールおよび水中でのOsO4によるジヒドロキシル化と、その後の周囲温度における、水、tert-ブタノールおよびアセトン中での、得られた中間体のNaIO4によるグリコール開裂)に供する。その後の、適切な溶媒(例えば、DCMまたはトルエン)中、周囲温度から高温での、任意に触媒量のメタノールまたはフッ化物塩の存在下、適切なデオキソフッ素化剤(例えば、DAST(Et2NSF3)、Deoxofluor((MeOCH2CH2)2NSF3)またはXtalFluor-E([Et2NSF2]BF4))を使用する、アルデヒド(X)のデオキソフッ素化により、この経路が完結する。
【0042】
スキーム8
【化20】
PG = CH
2OCH
2CH
2SiMe
3などの保護基
【0043】
スキーム8:式(III.1)および(III’.1)の鏡像異性体として純粋なアミンは、スキーム8に図示されている通り、それぞれ、ケトン(XVI)および(XVI’)から調製することができる。式(XVI)のケトンは、有機化学の文献(例えば、J. Am. Chem. Soc. 1995, 117, 7562-3; Org. Lett. 2010, 12, 1756-9; Org. Proc. Res. Dev. 2006, 10, 949-958; Tetrahedron: Asymmetry 2003, 14, 2659-2681; Tetrahedron Lett. 2014, 55, 3635-40;およびこれらに引用されている参照文献)に報告されている様々な条件下でエナンチオ選択的に還元されて、式(XVII)または(XVII’)の鏡像異性体として純粋なまたは鏡像異性体に富むアルコール(図示せず)が得られ、この化合物は、ケトン(XVI’)から誘導される。次に、このアルコールは、Mitsunobu反応またはMitsunobu型反応(好適な溶媒(例えば、THF、1,4-ジオキサン、EtOAc、ベンゼン、トルエンなど)中、例えば、トリフェニルホスフィンまたはトリ-n-ブチルホスフィンを、ジメチルアゾジカルボキシレートまたはジエチルアゾジカルボキシレートまたはジイソプロピルアゾジカルボキシレート、ジ-(4-クロロベンジル)アゾジカルボキシレート、ジベンジルジアゾジカルボキシレート、DBAD、アゾジカルボン酸ビス-(ジメチルアミド)、アゾジカルボン酸ジピペリジドまたはアゾジカルボン酸ジモルホリドと組み合わせて使用する)で、フタルイミドまたは(tert-Bu-OCO)2NHなどの分子を含有する、十分に酸性であるN-Hと反応させて、立体中心の立体配置の反転したN-残基の導入をもたらすことができる(→(XVIII))。代替的に、ホスホリルアジド(例えば、ジフェニルホスホリルアジド)は、隣接する炭素原子の立体配置の反転下で、(XVII)中のOHをアジドで置き換えるために使用することができる。アミノ基は、好適な溶媒(例えば、EtOH、MeOH、MeCN、THF、ジオキサン、DMSO、N,N-ジメチルアセトアミド、水またはこれらの混合物)中、必要な場合、加熱しながら、例えば、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、メチルアミン、n-ブチルアミンまたはエタノールアミンで処理することによって、フタルイミド基から遊離させて、式(III.1)の化合物を得ることができる。tert-Bu-O-COは、酸性条件下(例えば、TFAまたは塩酸を使用する)で好ましくは除去されて、アミン(III.1)が得られる。アジドは、遷移金属(例えば、炭素担持Pd、Raney-Ni、PtO2など)またはホスフィン(例えば、トリフェニルホスフィン)の存在下、例えば水素によりアミン(III.1)へと還元することができる。
【0044】
代替的に、化合物(III.1)は、周囲温度または高温で、溶媒(例えば、THF、DCM、トルエンまたは無溶媒)中、チタンアルコレート(例えば、Ti(OEt)4またはTi(OiPr)4)の存在下で、鏡像体として純粋なtert-ブタンスルフィンアミドを使用する3工程合成順序により、ケトン(XVI)から得られて、鏡像体として純粋な対応するtert-ブチルスルフィニル化イミンが生成し、このイミンを、適切な溶媒(例えば、使用する水素化物源に応じて、THF、トルエン、MeOHなど)中、水素化物(例えば、水素化ホウ素リチウムまたは水素化ホウ素ナトリウム、L-selectride、水素化ジイソブチルアルミニウムなど)を使用し、ジアステレオ選択的に還元して対応するtert-ブチルスルフィニル化アミンにすることができる。tert-ブチルスルフィニル基は、周囲温度または高温で、好適な溶媒(例えば、トルエン、DCM、ジオキサン、アルコール、水など)中、酸(例えば、TFAまたは塩酸)を使用して、開裂除去することができる。
【0045】
スキーム9
【化21】
PG = CH
2OCH
2CH
2SiMe
3などの保護基
【0046】
スキーム9:化合物(XVI)は、5つまたは6つの反応工程からなる順序で、報告されているエステル(XIX)(または対応する高級アルキルエステル、例えば、エチル、プロピル、イソプロピルまたはtert-ブチルエステル)から得ることができる。化合物(XIX)は、有機化学の文献に報告されている幅広い範囲の保護基により、そのN原子のうちの1つ上で誘導体化され得る。例えば、化合物(XIX)は、適切な溶媒(例えば、使用する塩基の性質に応じて、ベンゼン、トルエン、DCM、THF、ジオキサン、EtOAc、ACN、DMF、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリジノンなど)中、塩基(例えば、水素化ナトリウムなどの水素化物、水酸化ナトリウムなどの水酸化物、炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムなどの炭酸塩、リチウムメトキシドまたはカリウムtert-ブチレートなどのアルコレート、トリエチルアミン、Hunig塩基、DABCO、DBNまたはDBUなどの有機アミン、P2Etホスファゼンなどのホスファゼン、リチウムジイソプロピルアミドまたはリチウムヘキサメチルジシラジドなどのアミド)で処理し、適切な保護基(例えば、保護基として、2-トリメチルシリルエチルオキシメチルを導入するための、塩化2-トリメチルシリルエチルオキシメチル)の求電子剤(塩化物、臭化物、ヨウ素、アルキルスルホニルオキシまたはアリールスルホニルオキシ、アルキルオキシ、アシルオキシなどの脱離基を有する保護基)との同時反応または後続反応により化合物(XX)へと変換することができる。化合物(XX)は、適切な溶媒(例えば、DCM、ジクロロエタン、ジオキサン、MeCN、DMFなど)中、対応するハロゲン(例えば、Clの場合、N-クロロスクシンイミド、Brの場合、N-ブロモスクシンイミドまたはBr2、Iの場合、N-ヨードスクシンイミド、I2またはIClであり、銀塩または酸などの添加剤の存在下でもよい)の適切な求電子源を使用して、塩素化、臭素化またはヨウ素化することができる。例えば、ヨウ素は、MeCN中、N-ヨードスクシンイミドおよびTFAを使用して導入されて、化合物(XXI)を与えることができる。次に、化合物(XXII)は、アクロレインジアルキルアセタール(例えば、アクロレインジメチルアセタール)またはアクリル酸エステル(例えば、アクリル酸メチルエステル)のどちらかとのHeckカップリング反応(有機化学の文献、例えば、Catalysts 2017, 7, 267、およびこの中に引用されている参照文献に幅広く包含されている)を含む1工程または2工程合成経路を使用して、対応するハライド(例えば、ヨウ化物(XXI))から調製することができる。後者のアクリル酸エステルのカップリングパートナーの使用は、適切な溶媒(例えば、DCM、ジオキサン、THF、EtOAc、MeOHなどのアルコール、水など)中、遷移金属触媒(例えば、炭素担持パラジウムなどのPd、Raney-NiなどのNi、酸化白金などのPt、炭素担持ロジウムなどのRhなど)の存在下で、水素を用いて行われ得る、形成されたオレフィン結合を還元する追加の工程を必要とする。ケトエステル(XXIII)は、低温から高温(使用する塩基および溶媒に応じて、-78℃~100℃)で、適切な溶媒(例えば、使用する塩基に応じて、ベンゼン、トルエン、ジオキサン、THF、アルコールなど)中、塩基(例えば、水素化ナトリウムなどの水素化物、リチウムメトキシドまたはカリウムtert-ブチレートなどのアルコレート、DBUなどの有機アミン、P2Etホスファゼンなどのホスファゼン、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムヘキサメチルジシラジド、ナトリウムヘキサメチルジシラジドまたはカリウムヘキサメチルジシラジドなどのアミドなど)により化合物(XXII)を処理すると生成することができる。化合物(XXIII)中のエステル基の加水分解と、その後の脱カルボキシル化は、0~140℃で、溶媒(例えば、ジオキサン、THF、MeCN、DMF、N,N-ジメチルアセトアミド、DMSO、アルコール、水など、またはこれらの混合物)(塩基(例えば、水酸化ナトリウム)、ヨウ化リチウムもしくは塩化リチウムなどのハロゲン化塩、または酸(例えば、塩酸)の存在下でもよい)中で、この化合物を撹拌することにより達成されて、ケトン(XVI)を得ることができる。全体の順序は、ケトン(XVI’)を得る、異性体として保護されている化合物(XX’)に同様に適用することができ、保護基の使用に必ずしも依存せず、したがって、保護基なし(PG=H)で行うことができる。
【0047】
上記の通り、式(I)の化合物は、塩、特に医薬品使用のため薬学的に許容される塩に変換することができる。本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される塩」は、その酸塩または塩基塩を作製することにより親化合物が修飾された、開示化合物の誘導体を指す。
本発明による化合物は、以下の例に記載されている方法を使用して、有利なことに、やはり得ることができ、以下の例は、文献から当業者に公知の方法を用いて、この目的のためにやはり組み合わせることができる。
したがって、本発明の別の態様によれば、式(I)の化合物の合成の方法が提供される。
本発明の別の態様によれば、式(I)の化合物の合成中間体が提供される。
【0048】
薬理学的活性
本発明の化合物の活性は、以下のアッセイを使用して実証することができる。
生物学的方法
式(I)の化合物が、血漿カリクレイン(PKK)、第XIIa因子(FXIIa)、第XIa因子(FXIa)、第Xa因子(FXa)、第IIa因子(アルファ-トロンビン;FIIa)、プラスミン、トリプシン、組織カリクレイン1(TK1)、第VIIa因子(FVIIa)、または組織因子、リン脂質およびCaCl2と複合体を形成したFVIIa(FVIIa/TF/PL/CaCl2)を阻害する能力は、1%(v/v)DMSOの存在下での、アッセイ用緩衝液(100mM Tris、150mM NaCL、HClによりpH7.8に調節し、かつ0.1%(w/v)BSAおよび0.05%(v/v)Tween20を含有する)中で、以下の生化学的アッセイを使用して決定する。
【0049】
エンドポイントアッセイを使用する、PKKの阻害評価
ヒトPKK(0.01U/mL;Enzyme Research Laboratories)またはラットPKK(0.625nM;自家で生成した)を、アッセイ用緩衝液中で、0.10μMの蛍光性基質H-Pro-Phe-Arg-AMC(I1295、Bachem製)、および様々な濃度の試験化合物を用いて、室温で1時間、インキュベートする。続いて、PPACK II(Calbiochem)をストップ溶液として加えて最終濃度を1μMにし、355nmの励起波長設定および460nmの発光波長設定で、Envision Reader(PerkinElmer)を使用して蛍光を測定する。
【0050】
本発明による化合物のIC
50値は、以下の表に示されている。化合物の番号は、実験項目中の例の番号に対応する。
【表2】
【0051】
カリオン活性化ヒトPPPにおけるPKKの阻害評価
クエン酸Na(Na-Citrat)により抗凝固させたヒト全血から得た血小板乏血漿(PPP)を、アッセイ用緩衝液中、25、75、250または750μg/mLのいずれかのカオリンと一緒にした様々な濃度の試験化合物と共に、37℃で20分間、インキュベートし、こうして、使用した各カオリン用量の場合の濃度応答を試験化合物に対して得る。この後、上記の混合物に、0,25mMの蛍光性基質H-Pro-Phe-Arg-AMC(I1295、Bachem製)を加え、350nmの励起波長および450nmの発光波長となる上記の設定で、Spectramax M5(Molecular Devices)を使用して、12分間、2分おきのカイネティック間隔で測定を行う。GraphPad prism7.0にあてはめた、4x/y-プロット(x=logM、化合物;y=デルタrfu/分)からpIC50およびpIC90値を得る(式:log(アゴニスト)対応答、すなわち、Find ECanything;試験化合物に対して得られた4つの濃度応答曲線(それぞれは、異なるカオリン用量を使用して得た)を、グローバルフィッティング手順を使用してあてはめ、共通のpIC50またはpIC90値を得る)。
【0052】
本発明による化合物のIC
90値は、以下の表に示されている。化合物の番号は、実験項目中の例の番号に対応する。
【表3】
【0053】
PKKの阻害(Ki)評価
ヒトPKK(1.78nMまたは0.025U/mL;Enzyme Research Laboratories)を、アッセイ用緩衝液中で、0.25mMの蛍光性基質H-Pro-Phe-Arg-AMC(I1295、Bachem製)、および様々な濃度の試験化合物を用いて、24℃でインキュベートする。測定は、350nmの励起波長および450nmの発光波長となる上記の設定で、Spectramax M5(Molecular Devices)を使用して、16分間、2分おきのカイネティック間隔で行う。
FXIIaの阻害(Ki)評価
ヒトFXIIa(47.5nMまたは1.1U/mL;Enzyme Research Laboratories)を、アッセイ用緩衝液中、0.5mMの発色性基質S2302(Chromogenix)および様々な濃度の試験化合物と共に24℃でインキュベートする。測定は、Spectramax M5(Molecular Devices)を使用して、16分間、2分おきのカイネティック間隔で行い、405nmにおける光学吸光度を測定する。
【0054】
FXIaの阻害(Ki)の評価
ヒトFXIa(0.5nMまたは0,016U/mL;Enzyme Research Laboratories)は、アッセイ用緩衝液中、0.25mMの蛍光性基質Boc-Glu(OBzl)-Ala-Arg-AMC・HCl(I1575、Bachem製)および様々な濃度の試験化合物と共に24℃でインキュベートする。測定は、350nmの励起波長および450nmの発光波長となる上記の設定で、Spectramax M5(Molecular Devices)を使用して、16分間、2分おきのカイネティック間隔で行う。
FXaの阻害(Ki)評価
ヒトFXa(0.86nMまたは0.01U/mL;Enzyme Research Laboratories)は、アッセイ用緩衝液中、0.5mMの発色性基質S2765(Chromogenix)および様々な濃度の試験化合物と共に24℃でインキュベートする。測定は、Spectramax M5(Molecular Devices)を使用して、16分間、2分おきのカイネティック間隔で行い、405nmにおける光学吸光度を測定する。
【0055】
FIIaの阻害(Ki)の評価
ヒトFIIa(44.6nMまたは5U/mL;Enzyme Research Laboratories)は、アッセイ用緩衝液中、0.5mMの発色性基質S2238(Chromogenix)および様々な濃度の試験化合物と共に24℃でインキュベートする。測定は、Spectramax M5(Molecular Devices)を使用して、16分間、2分おきのカイネティック間隔で行い、405nmにおける光学吸光度を測定する。
プラスミンの阻害(Ki)の評価
ヒトプラスミン(64.1nMまたは0.0275U/mL;Enzyme Research Laboratories)は、アッセイ用緩衝液中、0.3mMの発色性基質S2251(Chromogenix)および様々な濃度の試験化合物と共に24℃でインキュベートする。測定は、Spectramax M5(Molecular Devices)を使用して、16分間、2分おきのカイネティック間隔で行い、405nmにおける光学吸光度を測定する。
【0056】
トリプシンの阻害(K
i)の評価
ヒトトリプシン(4.54nMまたは250U/mL;Calbiochem)は、アッセイ用緩衝液中、0.5mMの発色性基質S2222(Chromogenix)および様々な濃度の試験化合物と共に24℃でインキュベートする。測定は、Spectramax M5(Molecular Devices)を使用して、16分間、2分おきのカイネティック間隔で行い、405nmにおける光学吸光度を測定する。
TK1の阻害(K
i)の評価
アッセイの前に、ヒトTK1(R&D Systems)を、1:10,000の比で、ヒトトリプシン(Calbiochem)と共に37℃で15分間、インキュベートすることにより活性化させる。TK1阻害活性をアッセイするため、活性化したTK1(31.25nMまたは1U/mL)を、アッセイ用緩衝液中、0.1mMの蛍光性基質H-Pro-Phe-Arg-AMC(I1295、Bachem製)および様々な濃度の試験化合物と共に、24℃でインキュベートする。測定は、350nmの励起波長および450nmの発光波長となる上記の設定で、Spectramax M5(Molecular Devices)を使用して、16分間、2分おきのカイネティック間隔で行う。
本発明による化合物のK
i値は、以下の表に示されている。化合物の番号は、実験項中の例の番号に対応する。
【表4】
【0057】
FVIIaの阻害(Ki)の評価
ヒトFVIIa(0.86nMまたは0.01U/mL;Enzyme Research Laboratories)を、アッセイ用緩衝液中、1.5mMの発色性Pefachrome(登録商標)FVIIa(Loxo)および様々な濃度の試験化合物と共に24℃でインキュベートする。測定は、Spectramax M5(Molecular Devices)を使用して、16分間、2分おきのカイネティック間隔で行い、405nmにおける光学吸光度を測定する。
FVIIa/TF/PL/CaCl2の阻害(Ki)の評価
ヒトFVIIa(300nMまたは585U/mL;Enzyme Research Laboratories)を、アッセイ用緩衝液中で、10mM CaCl2
*2H2Oおよび13.3%(v/v)Dade(登録商標)Innovin(登録商標)(Siemens;OQUMI94E0002(5534)、これは、組換えヒト組織因子合成リン脂質(トロンボプラスチン)を含有する)と一緒に、1.5mMの発色性Pefachrome(登録商標)FVIIa(Loxo)および様々な濃度の試験化合物と共に24℃でインキュベートする。測定は、Spectramax M5(Molecular Devices)を使用して、16分間、2分おきのカイネティック間隔で行い、405nmにおける光学吸光度を測定する。
【0058】
pIC
50およびpK
i値の算出
アッセイの開始後の2~12分の時間間隔の場合の平均V
max値(それぞれ、発色性基質を使用するアッセイの場合、デルタOD/分、または蛍光発生基質を使用するアッセイの場合、デルタRFU/分のどちらかとして表す)を、評価した阻害剤化合物のモル濃度での濃度のLogに対してプロットする。次に、pIC
50値を、GraphPad Prism(バージョン6;GraphPad Software,Inc.)を使用して、4パラメトリックフィッティグ手順を使用してあてはめる。以下の式を使用して、使用した基質のK
M値のそれぞれに対してIC
50値を補正することにより、個々のK
i値を得た(使用した基質の得られたK
M値に関しては、表Aを参照されたい):
【数1】
(式中、IC
50は、モル濃度であり、K
M値は、mMである)。
【0059】
【0060】
透過性の評価
Caco-2細胞(1~2x105個細胞/1cm2の面積)をフィルターインサート(Costar transwellポリカーボネートまたはPET製フィルター、0.4μmの細孔サイズ)上に播種し、10~25日間、培養(DMEM)する。
化合物は、適切な溶媒(DMSOのような、1~20mMの保存溶液)に溶解した。保存溶液は、0.25% BSAを含有するHTP-4緩衝液(128.13mM NaCl、5.36mM KCl、1mM MgSO4、1.8mM CaCl2、4.17mM NaHCO3、1.19mM Na2HPO4x7H2O、0.41mM NaH2PO4xH2O、15mM HEPES、20mMグルコース、pH7.2)で希釈し、輸送用溶液(0.1~300μMの化合物、最終DMSO<=0.5%)を調製する。輸送用溶液(TL)は、A-BまたはB-Aの透過性をそれぞれ測定するために(2回のフィルター反復数)、頂端側ドナーまたは基底側ドナーに適用する。レシーバー側は、0.25%BSAを補給したHTP-4緩衝液を含有する。HPLC-MS/MSまたはシンチレーション計数による濃度測定を行うため、実験の開始時および終了時に、および最大で2時間の様々な時間で、ドナーから、やはりまたレシーバー側から試料を採取する。サンプリングしたレシーバーの体積分を、新しいレシーバー溶液と交換する。
【0061】
ヒトまたはラット肝臓ミクロソームにおける代謝安定性の評価
試験化合物の代謝分解を、プールしたヒトの肝臓ミクロソーム(HLM)またはラットの肝臓ミクロソーム(RLM)と共に37℃でアッセイする。時間点あたり60μlとなる最終インキュベートの体積分は、室温において、pH7.6のTRIS緩衝液(0.1M)、塩化マグネシウム(5mM)、ミクロソームタンパク質(HLM:1mg/mL、RLM:0.5mg/mL)および1μMの最終濃度の試験化合物を含有する。
37℃での短時間の事前インキュベート期間の後に、還元型ベータ-ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH、1mM)を添加することによりこの反応を開始し、様々な時間点後、一定分量を溶媒に移すことにより終了させる。さらに、NADPHに無関係の分解を、NADPHを含まないインキュベートでモニタリングし、最後の時間点で終了させる。クエンチ後のインキュベートは、遠心分離(10000g、5分間)によってペレットにする。親化合物の量について、上澄み液の一定分量をLC-MS/MSによってアッセイする。半減期(t1/2 INVITRO)は、濃度-時間プロファイルの半対数プロットの傾きによって決定する。
【0062】
ヒトまたはラット肝細胞における代謝安定性の評価
試験化合物の代謝分解を肝細胞懸濁液中でアッセイする。ヒトまたはラット肝細胞を、凍結保存から回収した後、5%もしくは50%のヒトまたはラット血清を含有する、3.5μgのグルカゴン/500ml、2.5mgのインスリン/500mlおよび3.75mg/500mlのヒドロコルチゾンを補給した、ダルベッコ改変イーグル培地中、または血清の非存在下でインキュベートする。
細胞培養インキュベーター中での30分の事前インキュベート(37℃、10%CO2)後、試験化合物溶液を肝細胞懸濁液にスパイクし、最終細胞密度1.0*106細胞/ml、最終試験化合物濃度1μMおよび最終DMSO濃度0.05%を得る。
細胞を6時間、インキュベートし(インキュベーター、水平型シェーカー)、試料を0、0.5、1、2、4および6時間後にインキュベートから取り出す。試料をアセトニトリルでクエンチし、遠心分離によりペレットにする。上澄み液を96ディープウェルプレートに移し、HPLC-MS/MSによって、親化合物の減少を分析するために調製する。
【0063】
CLintは、以下の通り算出する:
CLint=用量/AUC=(C0/CD)/(AUD+clast/k)×1000/60
C0:インキュベートにおける初期濃度[μM]、CD:生存細胞の細胞密度[10e6個細胞/mL]、AUD:データ下面積[μMx時]、clast:最後のデータ点の濃度[μM]、k:親の減少に対する回帰直線の傾き[h-1]。
算出したインビトロでの肝固有クリアランスは、インビボでの固有の肝クリアランスまでスケールアップし、肝臓モデル(十分に撹拌されたモデル)の使用によって、インビボでの肝血中クリアランス(CL)の予測に使用することができる。
【0064】
血漿中タンパク質結合の評価
この平衡透析(ED)技法を使用して、Dianormテフロン透析用セル(マイクロ0.2)を適用する血漿中タンパク質への試験化合物のインビトロ結合率の概数を求める。透析セルはそれぞれ、ドナーチャンバーおよびアクセプタチャンバーからなり、5kDaの分子量のカットオフを有する超薄層半透性膜によって仕切る。各試験化合物の保存溶液は、1mMのDMSO中で調製し、段階的に希釈して、1μMの最終試験濃度を得る。その後の透析溶液を血漿中(抗血液凝固剤としてNaEDTAを補給)で調製し、血漿中の200μLとなる一定分量の試験化合物の透析溶液をドナー(血漿)チャンバーに分注する。200μLとなる一定分量の透析緩衝液(100mMのリン酸カリウム、pH7.4)を緩衝液(アクセプタ)チャンバーに分注する。平衡を確立するため、インキュベートを37℃で、回転下で2時間行う。
透析期間の終了時に、それぞれドナーチャンバーおよびアクセプタチャンバーから得た一定分量を反応管に移し、内部標準溶液でスパイクし、HPLC-MS/MS分析のために処理する。一定分量の試料における分析対象の濃度を、HPLC-MS/MSによって、外部較正曲線に対して定量する。
結合率は、以下の式を用いて算出する:
結合%=(血漿中濃度-緩衝液濃度/血漿中濃度)X100
【0065】
溶解度の評価
試験化合物の水への溶解度は、緩衝液に溶解した量とACN/水(1/1)溶液中での量を比較することにより求める。10mM DMSO保存溶液から始め、一定分量をアセトニトリル/水(1/1)または緩衝液でそれぞれ希釈する。24時間振とうした後、この溶液をろ過し、LC-UVによって分析する。緩衝液に溶解した量を、ACN溶液中の量と比較する。
溶解度は、通常、2.5%のDMSO濃度で、0.001~0.125mg/mLと測定されるであろう。化合物が90%を超えて緩衝液に溶解する場合、この値は、「>」と記す。
げっ歯類における薬物動態特徴の評価
試験化合物を、給餌ラットに静脈内に、または絶食ラットに経口のどちらかで投与する。試験化合物の施用後のいくつかの時間点で血液試料を採取し、抗凝固して遠心分離にかける。
分析対象物の濃度、すなわち投与した化合物および/または代謝産物は、血漿試料で定量する。
PKパラメータは、ノンコンパートメント方法を使用して算出する。AUCおよびCmaxを、1μmol/kgの用量に正規化する。
【0066】
シトクロムP450アイソエンザイムを触媒とする反応の阻害評価
シトクロムP450アイソエンザイムを触媒とする反応の、試験化合物による阻害は、ヒト肝臓ミクロソームを用いて37℃でアッセイする。アッセイはすべて、384ウェルプレートにおいて、ロボットシステムで行う。試験化合物は、アコースティック液体分注法(Labyte ECHO(登録商標)システムを使用)によって、DMSO保存溶液からインキュベート用プレートに直接、スポットする。最終インキュベート体積は、二連で、TRIS緩衝液(0.1M)、MgCl2(5mM)、ヒト肝臓ミクロソーム、特定のシトクロムP450アイソエンザイム-基質および5種の様々な濃度での試験化合物を含有するか、または化合物は(高対照)含まない(例えば、最高濃度50μMとし、その後に1:4で段階希釈する)。短時間の事前インキュベート期間の後に、反応を補因子(NADPH、1mM)と共に開始し、このインキュベート物を8℃まで冷却し、続いて1体積分のアセトニトリルを添加することによって停止する。内部標準溶液、通常は、形成した代謝産物の安定な同位体、をインキュベート物のクエンチ後に添加する。分析対象のピーク面積(=形成された代謝産物)および内部標準は、LC-MS/MSによって求める。これらのインキュベート物中の内部標準に対する分析対象の得られたピーク面積の比を、試験化合物を含有しない対照活性と比較する。各アッセイの実施範囲内で、ポジティブ対照阻害剤のIC50を求める。IC50の実験値は、以下の式による最小二乗回帰によって算出する:
【0067】
%対照活性=(100%の対照活性/(1+(I/IC50)S)))-b
(ここで、
I=阻害剤濃度
S=傾き係数
B=バックグラウンド活性)
反応の阻害が、試験化合物の最低濃度において、既に>50%である場合、IC50は、「<試験した最低濃度」(通常<0.2μM)と割り当てる。反応の阻害が、試験化合物の最高濃度において、依然として<50%である場合、IC50は、「>試験した最高濃度」(通常>50μM)と割り当てる。
【0068】
シトクロムP450 3A4を触媒とするミダゾラムのターンオーバーの機構に基づく阻害(MBI)の評価
CYP3A4に対する機構に基づく阻害は、基質としてミダゾラム(15uM)を含むヒト肝臓ミクロソーム(0.02mg/ml)でアッセイする。
試験化合物を、0分間、10分間または30分間、5uMおよび25uMの濃度において、NADPHの存在下、ヒト肝臓ミクロソーム(0.2mg/ml)と共に37℃で事前インキュベートする。事前インキュベート後、インキュベート物を1:10に希釈し、基質のミダゾラムを主要インキュベート(15分間)のために加える。主要インキュベート物をアセトニトリルでクエンチし、ヒドロキシ-ミダゾラムの形成をLC/MS-MSによって定量する。
1mgのタンパク質あたりpmol/分のターンオーバー率を算出し、10分間および30分間の事前インキュベート時間の後の活性を、個々の化合物/濃度の0分の事前インキュベートの活性と比較する(%CTRL=個々の化合物/濃度の0分時の対照の%)。さらに、競合的阻害効果をはっきりさせるため、ターンオーバー率を、化合物を添加しない基質反応のターンオーバー率に対して表す(%TR=化合物を含まない%ターンオーバー率)。
【0069】
処置方法
本発明の別の態様では、式(I)の化合物または薬学的に許容されるその塩は、治療および/または予防において使用する、すなわち医薬として使用するのに好適な特性を有する。特に、式(I)の化合物または薬学的に許容されるその塩、およびこれらを含有する医薬組成物は、患者において、血漿カリクレインの阻害によって影響を受け得る、例えば望ましくないPKK活性によって媒介される、もしくはPKKの阻害が有益となる疾患または状態の処置、すなわち治療および/または予防(prevention)(予防(prophylaxis))に有用となり得る。
【0070】
PKKの阻害によって影響を受け得る、例えば望ましくないPKK活性によって媒介される、またはPKKの阻害が有益となる疾患および状態は、例えば、発明の背景の項目に言及したもの、特に、糖尿病合併症、糖尿病性網膜症、増殖性および非増殖性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、臨床的に有意な黄斑浮腫(CSME)、嚢胞様黄斑浮腫(CME)、水晶体摘出後のCME、冷凍療法により誘発されるCME、ブドウ膜炎により誘発されるCME、眼内炎、血管閉塞後CME(例えば、網膜中心静脈閉塞症、網膜分枝静脈閉塞症または半側網膜静脈閉塞)、網膜浮腫、糖尿病性網膜症における白内障手術に関連する合併症、高血圧性網膜症、網膜外傷、萎縮型および滲出型加齢黄斑変性(AMD)、ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)、脈絡膜血管新生(CNV;例えば、非滲出性脈絡膜血管新生)、遺伝性血管浮腫(HAE)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、卒中後の出血および浮腫、例えば、卒中後の脳浮腫、血管性認知症、アルツハイマー病、線維性疾患、大腸炎、関節炎および腎損傷である。
したがって、本発明の化合物および医薬組成物は、糖尿病性網膜症、増殖性および非増殖性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、網膜静脈閉塞症、加齢黄斑変性(AMD)、ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)および脈絡膜血管新生(CNV;例えば、非滲出性脈絡膜血管新生)を含めた、眼疾患に特に好適である。
【0071】
さらに、本発明による化合物および医薬組成物は、遺伝性血管浮腫(HAE)および卒中後の脳浮腫などの浮腫の処置に特に好適である。
特に、本発明による化合物および医薬組成物は、糖尿病性網膜症、増殖性および非増殖性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、加齢黄斑変性(AMD)、ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)、脈絡膜血管新生(CNV)、遺伝性血管浮腫(HAE)、および卒中後の脳浮腫の処置に好適である。
本発明による化合物および医薬組成物は、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、滲出型加齢黄斑変性(AMD)、非滲出性脈絡膜血管新生(CNV)、遺伝性血管浮腫(HAE)、および卒中後の脳浮腫の処置に最も特に好適である。
【0072】
例えば、本発明による化合物および医薬組成物は、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、滲出型加齢黄斑変性(AMD)、遺伝性血管浮腫(HAE)および卒中後の脳浮腫の予防、ならびに非滲出性脈絡膜血管新生(neCNV)から滲出性脈絡膜血管新生(eCNV)への転化の予防に特に好適である。
1日あたりに施用可能な式(I)の化合物の用量範囲は、通常、体重1kgあたり0.01~10mgである。
実際の治療有効量または治療投与量は、当然ながら、患者の年齢および体重、投与経路および疾患の重症度などの、当業者により公知の因子に依存するであろう。いずれの場合でも、本化合物または組成物は、患者の特有の状態に基づいて治療有効量を送達することが可能な投与量および方法で投与されるであろう。
本化合物および組成物は、本発明による1種または複数の追加の治療剤との任意の組合せ物を含め、経口、硝子体内、経皮、吸入、非経口または舌下での経路により投与され得る。可能な投与方法のうち、経口投与または硝子体内投与が好ましい。硝子体内注入の場合、好ましい用量は、片目あたり5mgを超えるべきではない。
【0073】
処置される患者は、好ましくは哺乳動物であり、最も好ましくはヒト患者である。
したがって、別の態様によれば、本発明は、医薬として使用するための、式(I)の化合物およびその互変異性体(薬学的に許容されるその塩を含む)を提供する。
別の態様では、本発明は、それを必要とする患者における、望ましくない血漿カリクレイン活性によって媒介される、もしくは血漿カリクレインの阻害が有益となる疾患または状態を処置する方法を提供する。
同様に、本発明は、それを必要とする患者における、望ましくない血漿カリクレイン活性によって媒介される、もしくは血漿カリクレインの阻害が有益となる疾患または状態を処置する方法に使用するための、式(I)の化合物および/もしくはその互変異性体または薬学的に許容されるその塩を提供する。
同様に、本発明は、それを必要とする患者における、望ましくない血漿カリクレイン活性によって媒介される、もしくは血漿カリクレインの阻害が有益となる疾患または状態を処置する方法に使用する医薬の製造における、式(I)の化合物および/もしくはその互変異性体または薬学的に許容されるその塩の使用を提供する。
【0074】
同様に、本発明は、それを必要とする患者における、望ましくない血漿カリクレイン活性によって媒介される、もしくは血漿カリクレインの阻害が有益となる疾患または状態を処置する方法における、式(I)の化合物および/もしくはその互変異性体または薬学的に許容されるその塩の使用を提供する。
一実施形態によれば、処置する方法は、患者に1つまたは複数の式(I)の化合物、および/もしくはその互変異性体または薬学的に許容されるその塩を投与するステップ、好ましくは患者に治療有効量の1つまたは複数の式(I)の化合物、および/もしくはその互変異性体または薬学的に許容されるその塩を投与するステップを含む。
別の実施形態によれば、処置する方法は、患者に本発明による医薬組成物を投与するステップを含む。
一実施形態によれば、望ましくない血漿カリクレイン活性によって媒介される、もしくは血漿カリクレインの阻害が有益となる疾患または状態は、糖尿病性網膜症、増殖性および非増殖性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、加齢黄斑変性(AMD)、ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)および脈絡膜血管新生(CNV)などの眼適応症から選択される。
【0075】
別の実施形態によれば、望ましくない血漿カリクレイン活性によって媒介される、もしくは血漿カリクレインの阻害が有益となる疾患または状態は、遺伝性血管浮腫(HAE)、および卒中後の脳浮腫などの浮腫関連疾患から選択される。
別の実施形態によれば、望ましくない血漿カリクレイン活性によって媒介される、もしくは血漿カリクレインの阻害が有益となる疾患または状態は、糖尿病性網膜症および糖尿病性黄斑浮腫に関連する網膜血管透過性などの糖尿病合併症から選択される。
一実施形態によれば、患者はヒト患者である。
【0076】
医薬組成物
本発明の別の態様では、本発明の化合物または薬学的に許容されるその塩は、医薬組成物中の活性成分として使用されてもよいことが記載されている。
本発明の化合物を投与するための好適な調製物であって、1種または複数のさらなる治療剤と組み合わせてもよい調製物は、当業者に明白であり、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、坐剤、ロゼンジ剤、トローチ剤、溶液剤、シロップ剤、エリキシル剤、サシェ剤、注射剤、吸入剤および散剤などを含む。経口用製剤、特に、例えば錠剤またはカプセル剤などの固体形態が好ましい。硝子体内注入の場合、溶液剤が好ましい。薬学的活性化合物の含有量は、全体として、組成物の0.1~90質量%、例えば1~70質量%の範囲にあるのが有利である。
【0077】
好適な錠剤は、式(I)による1つまたは複数の化合物を、例えば、公知の賦形剤、例えば不活性希釈剤、担体、崩壊剤、アジュバント、界面活性剤、結合剤および/または滑沢剤と、例えば混合することによって得ることができる。錠剤はまた、いくつかの層からなっていてもよい。所望の調製物に好適な具体的な賦形剤、担体および/または希釈剤は、専門家の知識に基づくと、当業者に精通されていよう。好ましいものは、所望の、投与の特定の製剤および方法に好適なものである。本発明による調製物または製剤は、本発明による少なくとも1つの式(I)の化合物またはこのような化合物の薬学的に許容される塩と、1種もしくは複数の賦形剤、担体および/または希釈剤とを例えば混合することによる、または一緒にすることによるなどの、当業者に精通されている、それ自体が公知の方法を使用して調製することができる。
したがって、本発明の別の態様によれば、1つまたは複数の式(I)の化合物および/もしくはそれらの互変異性体、または薬学的に許容されるその塩を含み、1種もしくは複数の不活性担体および/または希釈剤を一緒に含んでもよい医薬組成物が提供される。
【0078】
同様に、それを必要とする患者における、望ましくない血漿カリクレイン活性によって媒介される、もしくは血漿カリクレインの阻害が有益となる疾患または状態を処置する方法に使用するための、1つもしくは複数の上記の化合物または薬学的に許容されるその塩を含み、1種もしくは複数の不活性担体および/または希釈剤を一緒に含んでもよい医薬組成物が提供される。
特に、本発明は、糖尿病性網膜症、増殖性および非増殖性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、加齢黄斑変性(AMD)、ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)および脈絡膜血管新生(CNV)などの眼適応症、ならびに遺伝性血管浮腫(HAE)および卒中後の脳浮腫などの浮腫関連疾患を処置する方法に使用するための、本発明による医薬組成物を提供する。
さらに、本発明は、患者、好ましくはヒトにおける、望ましくない血漿カリクレイン活性によって媒介される疾患または状態を処置するための、本発明による医薬組成物の使用に関する。
同様に、本発明は、患者、好ましくはヒトにおける、血漿カリクレインの阻害が有益となる疾患または状態を処置するための、本発明による医薬組成物の使用に関する。
別の実施形態によれば、1つまたは複数の式(I)の化合物および/もしくはそれらの互変異性体、または薬学的に許容されるその塩、ならびに1種または複数の追加の治療剤を含み、1種もしくは複数の不活性担体および/または希釈剤を一緒に含んでもよい医薬組成物が提供される。
好ましくは、この組成物は、1つの式(I)の化合物および/もしくはその互変異性体、または薬学的に許容されるその塩、ならびに1種または複数の追加の治療剤を含む。
【0079】
併用療法
本発明の化合物は、1つまたは複数の、好ましくは1つの追加の治療剤とさらに組み合わされてもよい。
一実施形態によれば、追加の治療剤は、例えば、糖尿病、肥満、糖尿病合併症、高血圧、高脂血症などの代謝性疾患もしくは状態に特に関連する本明細書のこれ以前に記載されている疾患もしくは状態の処置に有用な治療剤、あるいは眼疾患の処置に有用な治療剤の群から選択される。
そのような組合せに好適な追加の治療剤は、特に、言及されている適応症の1つに関する、1つもしくは複数の活性物質の治療作用を例えば増強する、および/または1つもしくは複数の活性物質の投与量の低減を可能にするものを含む。
したがって、本発明の化合物は、抗糖尿病剤、過体重および/または肥満の処置のための薬剤、高血圧、心不全および/またはアテローム性動脈硬化の処置のための薬剤、ならびに眼疾患の処置のための薬剤からなる群から選択される、1種または複数の追加の治療剤と組み合わせることができる。
【0080】
抗糖尿病剤は、例えば、メトホルミン、スルホニルウレア、ナテグリニド、レパグリニド、チアゾリジンジオン、PPAR-(アルファ、ガンマまたはアルファ/ガンマ)アゴニストまたはモジュレーター、アルファ-グルコシダーゼ阻害剤、DPPIV阻害剤、SGLT2阻害剤、インスリンおよびインスリンアナログ、GLP-1およびGLP-1アナログまたはアミリンおよびアミリンアナログ、cycloset、11β-HSD阻害剤である。他の適切な組合せパートナーは、例えば、グルコース-6-ホスファターゼまたはフルクトース-1,6-ビスホスファターゼ、グリコーゲンホスホリラーゼ、グルカゴン受容体アンタゴニスト、およびホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼの阻害剤、グリコーゲンシンターゼキナーゼもしくはピルビン酸デヒドロキナーゼ、アルファ2-アンタゴニスト、CCR-2アンタゴニストまたはグルコキナーゼアクチベータなどの、肝臓における調節解除されたグルコース生成に影響を及ぼす物質である、タンパク質チロシンホスファターゼ1の阻害剤である。例えば、HMG-CoA-レダクターゼ阻害剤、フィブラート、ニコチン酸およびその誘導体、PPAR-(アルファ、ガンマまたはアルファ/ガンマ)アゴニストまたはモジュレーター、PPAR-デルタアゴニスト、ACAT阻害剤、または回腸の胆汁酸輸送体の阻害剤などの胆汁酸結合性物質などのコレステロール吸収阻害剤、MTP阻害剤、またはCETP阻害剤もしくはABC1制御因子などのHDL上昇性化合物などの1つまたは複数の脂質低下剤が、組合せパートナーとしてやはり好適である。
【0081】
過体重および/または肥満を処置するための治療剤は、例えば、カンナビノイド1受容体のアンタゴニスト、MCH-1受容体アンタゴニスト、MC4受容体アゴニスト、NPY5またはNPY2アンタゴニスト、β3-アゴニスト、レプチンまたはレプチン模倣体、5HT2c受容体のアゴニストである。
高血圧、慢性心不全および/またはアテローム性動脈硬化の処置のための治療剤は、例えば、A-IIアンタゴニストまたはACE阻害剤、ECE阻害剤、利尿剤、β-遮断剤、Ca-アンタゴニスト、中枢作用性抗高血圧剤(centrally acting antihypertensive)、アルファ-2-アドレナリン受容体のアンタゴニスト、中性エンドペプチダーゼの阻害剤、血小板凝集阻害剤であり、その他またはその組合せ物が好適である。アンジオテンシンII受容体アンタゴニストは、ヒドロクロロチアジドなどの利尿剤と多くの場合で組み合わされる、高血圧、および糖尿病の合併症の処置または予防に使用されるのが好ましい。
【0082】
眼疾患の処置のための治療剤は、例えば、硝子体内に投与されるコルチコステロイド、硝子体内に投与される抗VEGF治療、抗Ang2阻害剤、デュアル抗VEGF/抗Ang2阻害剤、抗PDGF、デュアル抗VEGF/抗PDGF、VAP-1(AOC3)阻害剤、補体阻害剤(例えば、補体因子3、5、BおよびD阻害剤)、ブラジキニン受容体1アンタゴニスト、CCR-2アンタゴニストを含むことができる。
眼疾患のための追加の処置は、レーザー凝固治療法を含むことができる。
好ましくは、本発明の化合物、および/または本発明の化合物を、1種または複数の追加の治療剤と組み合わせて含んでもよい医薬組成物は、運動および/または食事と一緒に投与される。
上記の組合せパートナーの投与量は、通常、推奨される最低用量の1/5から、通常、推奨される用量の1/1までであるのが通常である。
追加の治療剤と組み合わせた、本発明による化合物の使用は、同時に、または時間差を設けて行うことができる。
【0083】
本発明による化合物、および1種または複数の追加の治療剤はどちらも、1つの製剤、例えば、錠剤もしくはカプセル剤で一緒に存在してもよく、または2つの同一もしくは異なる製剤で、例えば、いわゆるキットオブパートとして個別に存在してもよい。
したがって、別の態様によれば、本発明は、本発明による1つまたは複数の化合物、および本明細書のこれ以前および本明細書のこれ以降に記載されている1種または複数の追加の治療剤を含み、1種もしくは複数の不活性担体および/または希釈剤を一緒に含んでもよい、医薬組成物に関する。
別の態様によれば、本発明は、それを必要とする患者における、望ましくない血漿カリクレイン活性によって媒介される、もしくは血漿カリクレインの阻害が有益となる疾患または状態を処置する方法であって、患者に、1つまたは複数の式(I)の化合物、および/もしくはその互変異性体または薬学的に許容されるその塩を、本明細書のこれ以前および本明細書のこれ以降に記載されている1種または複数の追加の治療剤と組み合わせて投与するステップ、
好ましくは、患者に、治療有効量の1つまたは複数の式(I)の化合物、および/もしくはその互変異性体または薬学的に許容されるその塩を、治療有効量の本明細書のこれ以前および本明細書のこれ以降に記載されている1種または複数の追加の治療剤と組み合わせて投与するステップを含む、方法を提供する。
【0084】
同様に、本発明は、それを必要とする患者における、望ましくない血漿カリクレイン活性によって媒介される、もしくは血漿カリクレインの阻害が有益となる疾患または状態を処置する方法に使用するための、本明細書のこれ以前または本明細書のこれ以降に記載されている1種または複数の追加の治療剤と組み合わせた、式(I)の化合物および/もしくはその互変異性体または薬学的に許容されるその塩を提供する。
同様に、本発明は、それを必要とする患者における、望ましくない血漿カリクレイン活性によって媒介される、もしくは血漿カリクレインの阻害が有益となる疾患または状態を処置する方法に使用する医薬の製造における、本明細書のこれ以前または本明細書のこれ以降に記載されている1種または複数の追加の治療剤と組み合わせた、式(I)の化合物および/もしくはその互変異性体または薬学的に許容されるその塩の使用を提供する。
同様に、本発明は、それを必要とする患者における、望ましくない血漿カリクレイン活性によって媒介される、もしくは血漿カリクレインの阻害が有益となる疾患または状態を処置する方法における、本明細書のこれ以前または本明細書のこれ以降に記載されている1種または複数の追加の治療剤と組み合わせた、式(I)の化合物および/もしくはその互変異性体または薬学的に許容されるその塩の使用を提供する。
【0085】
一実施形態によれば、処置の方法は、患者に、1つまたは複数の式(I)の化合物、および/もしくはその互変異性体または薬学的に許容されるその塩を、本明細書のこれ以前および本明細書のこれ以降に記載されている1種または複数の追加の治療剤と組み合わせて投与するステップ、
好ましくは、患者に、治療有効量の1つまたは複数の式(I)の化合物、および/もしくはその互変異性体または薬学的に許容されるその塩を、治療有効量の本明細書のこれ以前および本明細書のこれ以降に記載されている1種または複数の追加の治療剤と組み合わせて投与するステップを含む。
別の実施形態によれば、処置の方法は、患者に、本発明による1つまたは複数の化合物、および本明細書のこれ以前および本明細書のこれ以降に記載されている1種または複数の追加の治療剤を含み、1種もしくは複数の不活性担体および/または希釈剤を一緒に含んでもよい、医薬組成物を投与するステップを含む。
一実施形態によれば、1種または複数の追加の治療剤は、抗糖尿病剤、過体重および/または肥満の処置のための薬剤、高血圧、心不全および/またはアテローム性動脈硬化の処置のための薬剤、ならびに眼疾患の処置のための薬剤から、特に上で具体的に言及されているそのような薬剤から選択される。
【0086】
一実施形態によれば、望ましくない血漿カリクレイン活性によって媒介される、もしくは血漿カリクレインの阻害が有益となる疾患または状態は、糖尿病性網膜症、増殖性および非増殖性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、加齢黄斑変性(AMD)、ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)および脈絡膜血管新生(CNV)などの眼適応症から、遺伝性血管浮腫(HAE)および卒中後の脳浮腫などの浮腫関連疾患から、または糖尿病性網膜症および糖尿病性黄斑浮腫に関連する網膜血管透過性などの糖尿病合併症から選択される。
一実施形態によれば、患者はヒト患者である。
本発明の他の特徴および利点は、例として、本発明の原理を例示している、以下の一層詳細な例から明白となろう。
【実施例】
【0087】
例および実験データ
以下の例は、本発明の例示目的に過ぎず、本発明の範囲を決して限定することを意図するものではない。
略称
Ac アセチル
ACN アセトニトリル
AMC 7-アミノ-4-メチルクマリン
Boc tert-ブチルオキシカルボニル
BSA ウシ血清アルブミン
Bzl ベンジル
d 日数
DABCO 1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン
DAD ダイオードアレイ検出器
DBAD ジ-tert-ブチルアゾジカルボキシレート
DBU 1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン
DBN 1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン
DCM ジクロロメタン
DIPEA N,N-ジイソプロピルエチルアミン
DMEM ダルベッコ改変イーグル培地
DMF N,N-ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
EDTA エチレンジアミン四酢酸塩
ESI エレクトロスプレーイオン化(MS)
EtOAc 酢酸エチル
EtOH エタノール
h 時間
HATU O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム-ヘキサフルオロホスフェート
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
HPLC-MS 連結高速液体クロマトグラフィー-質量分析法
LC 液体クロマトグラフィー
LC-MS 連結液体クロマトグラフィー-質量分析法
LG 脱離基
M モル濃度(mol/L)
MeOH メタノール
min 分
MS 質量分析法
NADPH ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸
NMP N-メチル-2-ピロリドン
NMR 核磁気共鳴
PET ポリエチレンテレフタレート
PyBop (ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート
Rf 遅延係数
RFU 相対蛍光単位
RP 逆相
rt 室温
tR 保持時間(HPLC/LC)
TBTU O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
UV 紫外線
【0088】
用語「周囲温度」および「室温」は、互換的に使用され、約20℃、例えば、15~25℃の温度を表す。
概して、調製された化合物について、1H-NMRおよび/または質量スペクトルを得た。
別段の指定がない限り、キラル中心を含有する化合物は、図示されている立体化学を有する。立体化学の帰属は、公知の立体化学のキラルな出発原料の使用によって、公知の立体化学の立体選択的合成によって、または生物活性によってのいずれかで行われている。
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
中間体の合成:
本発明による化合物に至るプロセスに使用される、出発原料および中間体は、市販されているか、またはそれらは、以下に記載されている方法(または、それらに類似するまたは同様の方法)によって、もしくは文献から、例えばそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれているWO2017/072020、WO2017/072021およびWO2018/192866から当業者に既に公知の方法によって調製することができる。
【0093】
中間体1
(6R)-3-メチル-2H,4H,5H,6H-シクロペンタ[c]ピラゾール-6-アミン;セミ-(2S,3S)-2,3-ビス(4-メチルベンゾイルオキシ)ブタン二酸塩
【化22】
【0094】
工程1:エチル4-(3-エトキシ-3-オキソプロピル)-5-メチル-1H-ピラゾール-3-カルボキシレート
アルゴン雰囲気下、DMF(900mL)中のエチル4-ヨード-5-メチル-1H-ピラゾール-3-カルボキシレート(220g)、3,3-ジエトキシプロパ-1-エン(112g)、酢酸パラジウム(II)(Pd(OAc)2、35.3g)、塩化テトラブチルアンモニウム(240g)およびDIPEA(203g)からなる混合物を、110℃で2時間、および120℃で1時間、撹拌する。約67℃まで冷却した後、EtOAc(1.5L)を加える。この混合物を室温まで冷却してセライト上でろ過し、フィルターケーキをEtOAc(2x)で洗浄する。合わせたろ液を半飽和NaCl水溶液(3x)および水(4x)で洗浄する。乾燥(MgSO4)後、この混合物を真空で濃縮すると、粗生成物が得られ、これを次の工程にそのまま使用する。質量スペクトル(ESI+):m/z=255[M+H]+。
【0095】
工程2:エチル3-メチル-6-オキソ-2H,4H,5H,6H-シクロペンタ[c]ピラゾール-5-カルボキシレート
アルゴン雰囲気下、エチル4-(3-エトキシ-3-オキソプロピル)-5-メチル-1H-ピラゾール-3-カルボキシレート(191g)のTHF(500mL)溶液を41~64℃の間で、NaN(Si(CH3)3)2の溶液(THF中の2M、1.3L)に加える。この混合物を60℃で15分間、および室温で1時間、撹拌する。次に、この混合物を水性HCl(6N、851mL)、氷(1kg)および2-メチル-テトラヒドロフラン(2.5L)からなる混合物に注ぎ入れる。10分間、撹拌した後、相を分離する。有機相を真空で濃縮すると粗生成物が得られ、これを次の工程にそのまま使用する。
質量スペクトル(ESI+):m/z=209[M+H]+。
【0096】
工程3:3-メチル-2H,4H,5H,6H-シクロペンタ[c]ピラゾール-6-オン
1,4-ジオキサン(1.5L)および水(110mL)中のエチル3-メチル-6-オキソ-2H,4H,5H,6H-シクロペンタ[c]ピラゾール-5-カルボキシレート(363g)からなる混合物を22時間、90℃まで加熱する。この混合物を真空で濃縮すると粗生成物が得られ、これを次の工程にそのまま使用する。質量スペクトル(ESI+):m/z=137[M+H]+。
【0097】
工程4:N-[3-メチル-2H,4H,5H,6H-シクロペンタ[c]ピラゾール-6-イリデン]ヒドロキシルアミン;塩酸塩
EtOH(800mL)中の3-メチル-2H,4H,5H,6H-シクロペンタ[c]ピラゾール-6-オン(294g)の溶液を65℃まで加熱し、ヒドロキシルアミン塩酸塩(52.5g)で処理する。この混合物を60℃で2時間、および室温で12時間、撹拌する。この沈殿物を採集し、EtOHおよびtert-ブチル-メチル-エーテルで洗浄する。粗生成物を真空で乾燥し、次の工程にそのまま使用する。質量スペクトル(ESI+):m/z=152[M+H]+。
【0098】
工程5:(6R)-3-メチル-2H,4H,5H,6H-シクロペンタ[c]ピラゾール-6-アミン;セミ-(2S,3S)-2,3-ビス(4-メチルベンゾイルオキシ)-ブタン二酸塩
N-[3-メチル-2H,4H,5H,6H-シクロペンタ[c]ピラゾール-6-イリデン]ヒドロキシルアミン;塩酸塩(85g)をMeOH(2.2L)に懸濁し、(1R)-1-フェニルエタン-1-アミン(165g)で処理して、40℃で30分間、撹拌する。20%の炭素担持Pd(OH)2(18g)を加え、この混合物を水素雰囲気下(21bar)、65℃で8時間、および100℃で12時間、撹拌する。この混合物を室温まで冷却してセライト上でろ過し、真空で濃縮する。残留物をイソプロパノール(1.4L)および水(70mL)に溶解し、60℃まで加熱して、K2CO3(94g)で処理する。この混合物を60℃で10分間、55℃で50分間、撹拌し、ろ過する。フィルターケーキをイソプロパノールで洗浄する。合わせたろ液を真空で濃縮する。残留物をイソプロパノール(100mL)に溶解して60℃まで加熱し、イソプロパノール(700mL)および水(40mL)中の(2S,3S)-2,3-ビス(4-メチルベンゾイルオキシ)ブタン二酸(79g)の溶液で処理する。この混合物を35℃まで加熱してろ過する。このろ液を30分間、撹拌し、1時間、60℃まで加熱し、次に室温で12時間、撹拌する。この沈殿物をろ過により採集し、イソプロパノールおよびtert-ブチル-メチル-エーテルで洗浄する。粗生成物を真空で乾燥し、次の工程にそのまま使用する。質量スペクトル(ESI+):m/z=138[M+H]+。
【0099】
中間体2
6-{5-アザスピロ[2.3]ヘキサン-5-イル}-2-クロロピリジン-3-カルボアルデヒド
【化23】
アルゴン雰囲気下、DMF(40mL)中の2,6-ジクロロピリジン-3-カルボアルデヒド(10g)、5-アザスピロ[2.3]ヘキサントリフルオロアセテート(16g)およびDIPEA(40mL)からなる混合物を12時間、40℃まで加熱する。この混合物を冷却して濃縮し、水とDCMとの間に分配して、相を分離する。有機相をブラインで洗浄し、乾燥(MgSO
4)して濃縮し、残留物をシリカゲル上でクロマトグラフィー(石油エーテル/EtOAc90:10→70:30)にかけると、表題化合物が得られる。LC(方法2):t
R=1.03分;質量スペクトル(ESI+):m/z=223[M+H]
+。
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
中間体3
(6-{5-アザスピロ[2.3]ヘキサン-5-イル}-2-クロロピリジン-3-イル)メタノール
【化24】
THF(300mL)および水(3mL)中の6-{5-アザスピロ[2.3]ヘキサン-5-イル}-2-クロロピリジン-3-カルボアルデヒド(12g)からなる氷冷混合物に、NaBH
4(2.1g)を小分けにして加える。この混合物を0℃で20分間、および室温で30分間、撹拌する。次に、この混合物を500gの氷および飽和NH
4Cl水溶液(500mL)からなる混合物に注ぎ入れる。水相をDCMにより2回、抽出する。合わせた有機相を乾燥(MgSO
4)し、真空で濃縮すると、表題化合物が得られる。LC(方法2):t
R=0.84分;質量スペクトル(ESI+):m/z=225[M+H]
+。
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
中間体4
エチル1-[(6-{5-アザスピロ[2.3]ヘキサン-5-イル}-2-クロロピリジン-3-イル)メチル]-1H-ピラゾール-4-カルボキシレート
【化25】
ACN(80mL)中の(6-{5-アザスピロ[2.3]ヘキサン-5-イル}-2-クロロピリジン-3-イル)メタノール(5.6g)、エチル1H-ピラゾール-4-カルボキシレート(3.6g)およびp-トルエンスルホン酸(2.6g)からなる混合物を2時間、60℃まで加熱する。室温まで冷却した後、この混合物を飽和NaHCO
3水溶液とEtOAcとの間に分配する。水相をEtOAcにより抽出し、合わせた有機相を乾燥(MgSO
4)して濃縮する。残留物をシリカゲル上でクロマトグラフィー(石油エーテル/EtOAc100:0→50:50)にかけると、表題化合物が得られる。
LC(方法2):t
R=1.05分;質量スペクトル(ESI+):m/z=347[M+H]
+。
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
中間体5
エチル1-[(6-{5-アザスピロ[2.3]ヘキサン-5-イル}-2-エテニルピリジン-3-イル)メチル]-1H-ピラゾール-4-カルボキシレート
【化26】
マイクロ波用バイアル中で、エチル1-[(6-{5-アザスピロ[2.3]ヘキサン-5-イル}-2-クロロピリジン-3-イル)メチル]-1H-ピラゾール-4-カルボキシレート(1.2g)、ビニルトリフルオロホウ酸カリウム(535mg)、K
2CO
3(920mg)およびTHF(25mL)からなる混合物に10分間、アルゴンをパージする。1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンパラジウム(II)ジクロリド(Pd(dppf)Cl
2、120mg)を加え、バイアルを密封して、この混合物を12時間、80℃まで加熱する。この混合物を室温まで冷却した後、EtOAcで希釈する。この混合物を水およびブラインにより逐次、洗浄する。この混合物を乾燥(MgSO
4)後、真空で濃縮し、残留物をシリカゲル上でクロマトグラフィー(石油エーテル/EtOAc60:40→40:60)にかけると、表題化合物が得られる。
LC(方法2):t
R=0.78分;質量スペクトル(ESI+):m/z=339[M+H]
+。
【0112】
【0113】
【0114】
中間体6
エチル1-[(6-{5-アザスピロ[2.3]ヘキサン-5-イル}-2-ホルミルピリジン-3-イル)メチル]-1H-ピラゾール-4-カルボキシレート
【化27】
1,4-ジオキサン(20mL)および水(2mL)中のエチル1-[(6-{5-アザスピロ[2.3]ヘキサン-5-イル}-2-エテニルピリジン-3-イル)メチル]-1H-ピラゾール-4-カルボキシレート(760mg)の混合物にOsO
4(水中の4%、285μL)を加える。この混合物を30分間、撹拌し、NaIO
4(1.5g)で処理して、室温で2時間、撹拌する。この混合物をEtOAcにより希釈し、水、水中の10%Na
2S
2O
3およびブラインにより逐次、洗浄する。この混合物を、乾燥(MgSO
4)後、真空で濃縮し、残留物をシリカゲル上でクロマトグラフィー(石油エーテル/EtOAc80:20→50:50)にかけると、表題化合物が得られる。
LC(方法2):t
R=0.93分;質量スペクトル(ESI+):m/z=341[M+H]
+。
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
中間体7
エチル1-[(6-{5-アザスピロ[2.3]ヘキサン-5-イル}-2-(ジフルオロメチル)ピリジン-3-イル)メチル]-1H-ピラゾール-4-カルボキシレート
【化28】
マイクロ波用バイアル中で、エチル1-[(6-{5-アザスピロ[2.3]ヘキサン-5-イル}-2-ホルミルピリジン-3-イル)メチル]-1H-ピラゾール-4-カルボキシレート(584mg)をDCM(7mL)に溶解する。三フッ化ジエチルアミノ硫黄(DAST、700μL)を加え、バイアルを密封して、この混合物を12時間、50℃まで加熱する。この混合物を室温まで冷却した後、ガス放出が停止するまで、1N水性NaHCO
3により注意深く処理する。次に、この混合物を飽和NaHCO
3水溶液とDCMとの間に分配する。相を分離して、水相をDCMにより抽出する。合わせた有機相をブラインで洗浄し、乾燥(MgSO
4)して濃縮する。残留物をシリカゲル上でクロマトグラフィー(石油エーテル/EtOAc99:1→50:50)にかけると、表題化合物が得られる。LC(方法2):t
R=1.09分;質量スペクトル(ESI+):m/z=363[M+H]
+。
【0119】
【0120】
【0121】
中間体8
1-[(6-{5-アザスピロ[2.3]ヘキサン-5-イル}-2-(ジフルオロメチル)ピリジン-3-イル)メチル]-1H-ピラゾール-4-カルボン酸
【化29】
エチル1-[(6-{5-アザスピロ[2.3]ヘキサン-5-イル}-2-(ジフルオロメチル)ピリジン-3-イル)メチル]-1H-ピラゾール-4-カルボキシレート(148mg)、EtOH(3mL)およびNaOH(4M水溶液、400μL)からなる混合物を室温で48時間、撹拌する。水性HCl(4M、400μL)を加え、この混合物を逆相(ACN、水)のHPLCにより精製すると、表題化合物が得られる。
LC(方法2):t
R=0.93分;質量スペクトル(ESI+):m/z=335[M+H]
+。
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
中間体9
エチル2-クロロ-4-[(1E)-2-フェニルエテニル]ピリミジン-5-カルボキシレート
【化30】
マイクロ波用バイアル中、エチル2,4-ジクロロピリミジン-5-カルボキシレート(2.5g)、カリウムtrans-ベータ-スチリルトリフルオロボレート(2.5g)、Na
2CO
3(2M水溶液、12.5mL)および1,4-ジオキサン(50mL)からなる混合物に10分間、アルゴンをパージする。ビス(ジ-tert-ブチル(4-ジメチルアミノフェニル)ホスフィン)ジクロロパラジウム(II)(Pd(amphos)
2Cl
2、300mg)を加え、バイアルを密封して、この混合物を2時間、50℃まで加熱する。この混合物を室温まで冷却した後、EtOAcと水との間に分配する。有機相をブラインで洗浄して乾燥(MgSO
4)し、濃縮する。残留物をシリカゲル上でクロマトグラフィー(石油エーテル/EtOAc80:20→60:40)にかけると、表題化合物が得られる。
LC(方法2):t
R=1.21分;質量スペクトル(ESI+):m/z=289[M+H]
+。
【0126】
中間体10
エチル2-{3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン-3-イル}-4-[(1E)-2-フェニルエテニル]ピリミジン-5-カルボキシレート
【化31】
アルゴン雰囲気下、THF(30mL)中のエチル2-クロロ-4-[(1E)-2-フェニルエテニル]ピリミジン-5-カルボキシレート(2.56g)、3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン塩酸塩(1.3g)およびKHCO
3(2.3g)からなる混合物を室温で12時間、撹拌する。この混合物を飽和NH
4Cl水溶液とEtOAcとの間に分配し、これらの相を分離する。有機相をブラインで洗浄する。有機相を乾燥(MgSO
4)して濃縮し、残留物をシリカゲル上でクロマトグラフィー(石油エーテル/EtOAc80:20→60:40)にかけると、表題化合物が得られる。
LC(方法2):t
R=1.27分;質量スペクトル(ESI+):m/z=336[M+H]
+。
【0127】
【0128】
【0129】
中間体11
(2-{3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン-3-イル}-4-[(1E)-2-フェニルエテニル]ピリミジン-5-イル)メタノール
【化32】
アルゴン雰囲気下、THF(40mL)中のエチル2-{3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン-3-イル}-4-[(1E)-2-フェニルエテニル]ピリミジン-5-カルボキシレート(1.96g)からなる混合物を、ジイソブチルアルミニウムヒドリド(DIBAH、THF中の1M、25mL)により滴下して処理する。この混合物を室温で2時間、撹拌し、0℃まで冷却して4M水性HCl(15mL)により滴下して処理する。次に、この混合物を5分間、撹拌し、4M水性NaOH(15mL)を加える。この混合物をブラインとDCMとの間に分配して、相を分離する。有機相を乾燥(MgSO
4)して濃縮し、残留物をシリカゲル上でクロマトグラフィー(DCM/MeOH 98:2→90:10)にかけると、表題化合物が得られる。
LC(方法2):t
R=0.84分;質量スペクトル(ESI+):m/z=294[M+H]
+。
【0130】
中間体12
エチル1-[(2-{3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン-3-イル}-4-[(1E)-2-フェニルエテニル]ピリミジン-5-イル)メチル]-1H-ピラゾール-4-カルボキシレート
【化33】
アルゴン雰囲気下、トルエン(20mL)中の(2-{3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン-3-イル}-4-[(1E)-2-フェニルエテニル]ピリミジン-5-イル)メタノール(1.89g)からなる混合物にSOCl
2(5mL)を加える。この混合物を3時間、60℃まで加熱し、室温まで冷却して真空で濃縮する。残留物をDCM(20mL)に溶解し、DCM(20mL)中のエチル1H-ピラゾール-4-カルボキシレート(950mg)およびDIPEA(2.2mL)からなる混合物に滴下して加える。この混合物を室温で12時間、撹拌した後、水とDCMとの間に分配する。有機相をブラインで洗浄し、乾燥(MgSO
4)して濃縮し、残留物をシリカゲル上でクロマトグラフィー(石油エーテル/EtOAc50:50→0:100)にかけると、表題化合物が得られる。
LC(方法2):t
R=1.06分;質量スペクトル(ESI+):m/z=416[M+H]
+。
【0131】
中間体13
エチル1-[(6-{3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン-3-イル}-2-(ジフルオロメチル)ピリジン-3-イル)メチル]-1H-1,2,3-トリアゾール-4-カルボキシレート
【化34】
撹拌子、エチル1-[(6-{3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン-3-イル}-2-ブロモピリジン-3-イル)メチル]-1H-1,2,3-トリアゾール-4-カルボキシレート(300mg)およびNMP(4mL)を投入したマイクロ波用バイアルに5分間、Arを勢いよく流す。CsF(349mg)、CuF(146mg)およびジフルオロメチル-トリメチルシラン(522μL)を逐次、加え、バイアルを密封して、この混合物を120℃で1.5時間、撹拌する。この混合物を室温まで冷却した後、水とEtOAcとの間に分配する。この混合物をセライト上でろ過し、相を分離して、水相をEtOAcにより抽出する。合わせた有機相を乾燥(MgSO
4)し、濃縮する。この残留物を逆相(ACN、水)のHPLCにより精製すると、表題化合物が得られる。
LC(方法2):t
R=1.08分;質量スペクトル(ESI+):m/z=364[M+H]
+。
【0132】
中間体14
エチル1-[(6-{5-アザスピロ[2.3]ヘキサン-5-イル}-2-エテニルピリジン-3-イル)メチル]-1H-イミダゾール-4-カルボキシレート
【化35】
撹拌子、エチル1-[(6-{5-アザスピロ[2.3]ヘキサン-5-イル}-2-クロロピリジン-3-イル)メチル]-1H-イミダゾール-4-カルボキシレート(2.6g)、ビニルボロン酸ピナコールエステル(1.4mL)、Na
2CO
3(1M水溶液、18.6mL)および1,4-ジオキサン(40mL)を投入したマイクロ波用バイアルに5分間、アルゴンを勢いよく流す。1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンパラジウム(II)ジクロリド(Pd(dppf)Cl
2、304mg)を加え、バイアルを密封して、この混合物を100℃で6時間、撹拌する。この混合物を室温まで冷却した後、水とEtOAcとの間に分配する。水相をEtOAcにより2回、抽出する。合わせた有機相をブラインで洗浄し、乾燥(MgSO
4)して濃縮する。残留物をシリカゲル上でクロマトグラフィー(石油エーテル/EtOAc50:50→0:100)にかけると、表題化合物が得られる。
LC(方法1):t
R=1.01分;質量スペクトル(ESI+):m/z=339[M+H]
+。
【0133】
【0134】
【0135】
【0136】
中間体15
(6-{3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン-3-イル}-4-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)メタノール
【化36】
THF(15mL)中のメチル6-{3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン-3-イル}-4-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-カルボキシレート(1.1g)からなる混合物を-50℃まで冷却し、LiAlH
4(THF中の1M溶液、3.5mL)により滴下して処理する。この混合物を3時間、-25℃で撹拌し、次に、水中の10%NH
4Clにより注意深く処理する。次に、この混合物を水とEtOAcとの間に分配し、セライト上でろ過する。これらの相を分離して、水相をEtOAcにより抽出する。合わせた有機相を乾燥(MgSO
4)し、真空で濃縮すると、粗生成物が得られ、これを次の工程に直接、使用する。LC(方法1):t
R=0.93分;質量スペクトル(ESI+):m/z=259[M+H]
+。
【0137】
中間体16
1-[(6-{3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン-3-イル}-2-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)メチル]-N-[(6R)-3-メチル-2-{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}-2H,4H,5H,6H-シクロペンタ[c]ピラゾール-6-イル]-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド
【化37】
DMF(2mL)中の1-[(6-{3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン-3-イル}-2-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)メチル]-1H-ピラゾール-4-カルボン酸、リチウム塩(30mg)、DIPEA(90μL)およびO-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム-ヘキサフルオロホスフェート(hexafluorophosphat)(HATU、50mg)からなる混合物を5分間、撹拌する。(6R)-3-メチル-2-{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}-2H,4H,5H,6H-シクロペンタ[c]ピラゾール-6-アミン(30mg)を加え、この混合物を1時間、撹拌する。この混合物をEtOAcにより希釈し、水およびブラインで洗浄して乾燥(MgSO
4)し、真空で濃縮し、残留物をシリカゲル上でクロマトグラフィー(DCM/MeOH98:2→90:10)にかけると、表題化合物が得られる。
LC(方法2):t
R=1.25分;質量スペクトル(ESI
+):m/z=602[M+H]
+。
【0138】
中間体17
(6R)-3-メチル-2-{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}-2H,4H,5H,6H-シクロペンタ[c]ピラゾール-6-アミン
【化38】
【0139】
工程1:メチル5-メチル-1H-ピラゾール-3-カルボキシレート
5-メチル-1H-ピラゾール-3-カルボン酸(45g)のMeOH(450mL)溶液に、塩化チオニル(58mL)を滴下して加える。添加後、この混合物を室温で16時間撹拌する。この混合物を真空で濃縮する。この残留物をEtOAcに溶解し、飽和NaHCO3水溶液およびブラインにより逐次、洗浄する。乾燥(MgSO4)後、この混合物を真空で濃縮すると、表題化合物が得られる。
LC(方法1):tR=0.64分;質量スペクトル(ESI+):m/z=141[M+H]+。
【0140】
工程2:メチル5-メチル-1-{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}-1H-ピラゾール-3-カルボキシレート
水素化ナトリウム(鉱物油中60%、16.8g)をDMF(470mL)に小分けにして加える。この混合物を10分間撹拌し、0℃まで冷却し、メチル5-メチル-1H-ピラゾール-3-カルボキシレート(46.9g)のDMF(470mL)溶液を滴下して処理する。20分間撹拌した後、[2-(クロロメトキシ)エチル]トリメチルシラン(SEM-Cl、77.7mL)を滴下して加える。この混合物を2時間撹拌し、EtOAcで希釈して、水およびブラインにより逐次、洗浄する。乾燥(MgSO4)後、この混合物を真空で濃縮し、残留物を石油エーテル/EtOAc2:1により、シリカゲル上でクロマトグラフィーにかける。溶媒を真空で蒸発させると、表題化合物が得られ、これを直接、次の工程に使用する。
【0141】
工程3:メチル4-ヨード-5-メチル-1-{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}-1H-ピラゾール-3-カルボキシレート
メチル5-メチル-1-{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}-1H-ピラゾール-3-カルボキシレート(94.4g)のACN(1.4L)溶液に、TFA(2.7mL)およびN-ヨードスクシンイミド(94.2g)を加える。この混合物を48時間撹拌し、EtOAcで希釈して、水、飽和Na2S2O3水溶液およびブラインにより逐次、洗浄する。乾燥(MgSO4)後、この混合物を真空で濃縮し、残留物を石油エーテル/EtOAc2:1により、シリカゲル上でクロマトグラフィーにかける。溶媒を真空で蒸発させると、表題化合物が得られ、これは、およそ15%の位置異性体であるメチル4-ヨード-3-メチル-1-{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}-1H-ピラゾール-5-カルボキシレートを含有する。
LC(方法1):tR=1.17分;質量スペクトル(ESI+):m/z=397[M+H]+。
【0142】
工程4:メチル4-[(1E)-3-メトキシ-3-オキソプロパ-1-エン-1-イル]-5-メチル-1-{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}-1H-ピラゾール-3-カルボキシレート
メチル4-ヨード-5-メチル-1-{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}-1H-ピラゾール-3-カルボキシレート(44g)、メチルアクリレート(15mL)およびN-メチルジシクロヘキシルアミン(methyldicyclohexylamin)(35mL)を、ジメチルアセトアミド(430mL)および水(110mL)に溶解する。この混合物をアルゴンにより10分間パージする。ジクロロビス(トリ-o-トリルホスフィン)パラジウム(II)(PdCl2[P(o-Tol)3]2、2.6g)を加え、この混合物を85℃で2時間、撹拌する。次に、この混合物をEtOAcで希釈し、1MH3PO4水溶液およびブラインにより逐次、洗浄する。乾燥(MgSO4)後、この混合物を真空で濃縮し、残留物を、シリカゲル上でクロマトグラフィー(石油エーテル/EtOAc 95:5→50:50)にかけると、表題化合物が得られる。
LC(方法1):tR=1.13分;質量スペクトル(ESI+):m/z=355[M+H]+。
【0143】
工程5:メチル4-(3-メトキシ-3-オキソプロピル)-5-メチル-1-{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}-1H-ピラゾール-3-カルボキシレート
EtOAc(580mL)中のメチル4-[(1E)-3-メトキシ-3-オキソプロパ-1-エン-1-イル]-5-メチル-1-{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}-1H-ピラゾール-3-カルボキシレート(38.6g)および10%炭素担持パラジウム(5.8g)からなる混合物を、水素雰囲気下(3bar)、室温で3時間振とうする。この混合物をろ過して、ろ液を濃縮すると、表題化合物が得られる。
LC(方法1):tR=1.10分;質量スペクトル(ESI+):m/z=357[M+H]+。
【0144】
工程6:メチル3-メチル-6-オキソ-2-{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}-2H,4H,5H,6H-シクロペンタ[c]ピラゾール-5-カルボキシレート
メチル4-(3-メトキシ-3-オキソプロピル)-5-メチル-1-{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}-1H-ピラゾール-3-カルボキシレート(37.8g)のTHF溶液を0℃に冷却し、NaN(Si(CH3)3)2(THF中の40%;105mL)で処理し、15分間撹拌する。この混合物を氷冷下、および激しい撹拌下で、1MH3PO4水溶液に注ぎ入れる。有機相を分離して、ブラインで洗浄し、乾燥(MgSO4)する。溶媒を真空で蒸発させると、表題化合物が得られる。
LC(方法1):tR=1.06分;質量スペクトル(ESI+):m/z=325[M+H]+。
【0145】
工程7:3-メチル-2-{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}-2H,4H,5H,6H-シクロペンタ[c]ピラゾール-6-オン
1,4-ジオキサン(350mL)および水(9mL)中のメチル3-メチル-6-オキソ-2-{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}-2H,4H,5H,6H-シクロペンタ[c]ピラゾール-5-カルボキシレート(34.9g)の溶液を還流下で、12時間加熱する。溶媒を真空で蒸発させて、残留物を、シリカゲル上でクロマトグラフィー(石油エーテル/EtOAc 80:20→40:60)にかけると、表題化合物が得られる。LC(方法1):tR=1.05分;質量スペクトル(ESI+):m/z=267[M+H]+。
【0146】
工程8:(6S)-3-メチル-2-{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}-2H,4H,5H,6H-シクロペンタ[c]ピラゾール-6-オール
トリエチルアミン(27mL)のDCM(260mL)溶液に、0℃でギ酸(11mL)を加える。混合物を室温まで温めて、3-メチル-2-{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}-2H,4H,5H,6H-シクロペンタ[c]ピラゾール-6-オン(26g)を加える。10分間、アルゴンをパージした後、[N-[(1S,2S)-2-(アミノ-κN)-1,2-ジフェニルエチル]-4-メチルベンゼンスルホンアミダト-κN]クロロ-[(1,2,3,4,5,6-η)-1,3,5-トリメチルベンゼン]-ルテニウム(RuCl[(S,S)-TsDPEN](メシチレン);0.5g)を加え、この混合物を室温で48時間、撹拌する。次に、この混合物を激しい撹拌下で、1M NaHCO3水溶液で処理する。相を分離して、水相をDCMにより抽出する。合わせた有機相を水およびブラインで洗浄する。乾燥(MgSO4)後、溶媒を真空で蒸発させて、残留物をシリカゲル上でクロマトグラフィー(DCM/MeOH 98:2→90:10)にかけると、84%の鏡像異性体過剰率(ee)を有する表題化合物が得られる。
LC(方法1):tR=0.99分;質量スペクトル(ESI+):m/z=269[M+H]+。
【0147】
工程9:(6R)-6-アジド-3-メチル-2-{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}-2H,4H,5H,6H-シクロペンタ[c]ピラゾール
アルゴン雰囲気下、(6S)-3-メチル-2-{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}-2H,4H,5H,6H-シクロペンタ[c]ピラゾール-6-オール(25.5g)のトルエン(250mL)溶液に、DBU(16mL)を加える。この混合物を0℃まで冷却し、ジフェニルホスホリルアジド(22mL)を1時間かけて滴下して加える。室温まで温めながら、この混合物を12時間、撹拌する。次に、MeOH(25mL)を加え、この混合物を1時間撹拌する。この混合物を水により2回洗浄し、乾燥(MgSO4)して、真空で濃縮する。残留物をAl2O3(DCM)でクロマトグラフィーにかけると、表題化合物が得られる。
LC(方法1):tR=1.15分;質量スペクトル(ESI+):m/z=294[M+H]+。
【0148】
工程10:(6R)-3-メチル-2-{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}-2H,4H,5H,6H-シクロペンタ[c]ピラゾール-6-アミン
EtOH(200mL)中の(6R)-6-アジド-3-メチル-2-{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}-2H,4H,5H,6H-シクロペンタ[c]ピラゾール(19.7g)および10%炭素担持パラジウム(3g)からなる混合物を、水素雰囲気下(3bar)、室温で12時間振とうする。この混合物をろ過して、ろ液を濃縮すると、表題化合物が得られる。
LC(方法1):tR=0.80分;質量スペクトル(ESI+):m/z=268[M+H]+。
【0149】
合成の例:
(例1)
1-[(6-{5-アザスピロ[2.3]ヘキサン-5-イル}-2-(ジフルオロメチル)ピリジン-3-イル)メチル]-N-[(6R)-3-メチル-2H,4H,5H,6H-シクロペンタ[c]ピラゾール-6-イル]-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド
【化39】
DMF(2mL)中の1-[(6-{5-アザスピロ[2.3]ヘキサン-5-イル}-2-(ジフルオロメチル)ピリジン-3-イル)メチル]-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(110mg)、DIPEA(280μL)およびO-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム-ヘキサフルオロホスフェート(HATU、130mg)からなる混合物を20分間、撹拌する。(6R)-3-メチル-2H,4H,5H,6H-シクロペンタ[c]ピラゾール-6-アミン;セミ-(2S,3S)-2,3-ビス(4-メチルベンゾイルオキシ)ブタン二酸(130mg)を加え、この混合物を1時間、撹拌する。この混合物を逆相(ACN、水)のHPLCにより精製すると、表題化合物が得られる。
LC(方法1):t
R=0.97分;質量スペクトル(ESI
+):m/z=454[M+H]
+。
【0150】
【0151】
【0152】
(実施例13)
1-[(6-{3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン-3-イル}-2-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)メチル]-N-[(6R)-3-メチル-2H,4H,5H,6H-シクロペンタ[c]ピラゾール-6-イル]-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド
【0153】
【化40】
DCM(2mL)中の1-[(6-{3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン-3-イル}-2-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)メチル]-N-[(6R)-3-メチル-2-{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}-2H,4H,5H,6H-シクロペンタ[c]ピラゾール-6-イル]-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド(45mg)およびトリフルオロ酢酸(1mL)からなる混合物を室温で12時間、撹拌する。この混合物を真空で濃縮し、MeOH(2mL)に溶解して、NH
3のMeOH(7M、5mL)溶液で処理する。この混合物をマイクロ波用バイアルに移送する。バイアルを密閉し、この混合物を12時間、80℃まで加熱する。この混合物を室温まで冷却した後、真空で濃縮し、逆相(ACN、水)のHPLCにより精製すると、表題化合物が得られる。
LC(方法3):t
R=1.25分;質量スペクトル(ESI
+):m/z=602[M+H]
+。