(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-22
(45)【発行日】2025-05-30
(54)【発明の名称】阻害剤を用いたアルカリマンガンレドックスフロー電池
(51)【国際特許分類】
H01M 8/18 20060101AFI20250523BHJP
H01M 8/02 20160101ALI20250523BHJP
【FI】
H01M8/18
H01M8/02
(21)【出願番号】P 2023572034
(86)(22)【出願日】2022-05-16
(86)【国際出願番号】 US2022029415
(87)【国際公開番号】W WO2022245715
(87)【国際公開日】2022-11-24
【審査請求日】2023-11-29
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590005449
【氏名又は名称】アールティーエックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】RTX CORPORATION
【住所又は居所原語表記】1000 Wilson Boulevard,Arlington,VA 22209,U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100140361
【氏名又は名称】山口 幸二
(72)【発明者】
【氏名】ダヴェンポート,ティモシー
(72)【発明者】
【氏名】サライダリディス,ジェームズ ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ダーリング,ロバート メイソン
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/104237(WO,A1)
【文献】特開2020-021732(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102790233(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00- 8/0297
H01M 8/08- 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レドックスフロー電池であって、
レドックスフローセルと、
前記レドックスフローセルの外部の供給及び貯蔵システムであって、前記レドックスフローセルを通して循環させるための第1及び第2の電解質を含み、前記第1の電解質は、前記レドックスフローセル内で複数の可逆的酸化状態を有する電気化学的に活性なマンガン種を有する液体電解質であり、前記電気化学的に活性なマンガン種は、酸化マンガン固形物の沈殿を生じる反応を起こし得る、前記供給及び貯蔵システムと、
を備え、
前記第1の電解質は、自己放電反応を制限する阻害剤をさらに含み、前記阻害剤はオキソアニオン化合物を含
んでおり、
前記電気化学的に活性なマンガン種が、MnO
4
-
、及びMnO
4
2-
である、前記レドックスフロー電池。
【請求項2】
前記阻害剤が、リン酸塩(PO
4
3-)、硝酸塩(NO
3
-)、及び硫酸塩(SO
4
2-)からなる群、または前記電解質中で分解してリン酸塩、硝酸塩、もしくは硫酸塩の種、及びそれらの混合物を形成する任意の化合物から選択される、請求項1に記載のレドックスフロー電池。
【請求項3】
前記阻害剤が、リン酸塩、及びその混合物からなる群から選択される、請求項2に記載のレドックスフロー電池。
【請求項4】
前記阻害剤が、硝酸塩、及びその混合物からなる群から選択される、請求項2に記載のレドックスフロー電池。
【請求項5】
前記阻害剤が、硫酸塩、及びその混合物からなる群から選択される、請求項2に記載のレドックスフロー電池。
【請求項6】
前記阻害剤が、前記レドックスフロー電池の運転中に分解して溶液中にリン酸塩、硝酸塩、または硫酸塩の種を生成する化合物である、請求項2に記載のレドックスフロー電池。
【請求項7】
前記第1の電解質が、1モルのマンガンイオンあたり0.0001モル~0.1モルの阻害剤が存在する組成を有する、請求項2に記載のレドックスフロー電池。
【請求項8】
前記第1の電解質が、1モルのマンガン酸塩あたり0.001モル~0.01モルの阻害剤が存在する組成を有する、請求項7に記載のレドックスフロー電池。
【請求項9】
レドックスフロー電池用電解質であって、
溶媒及び支持塩を含む支持電解質と、
前記支持電解質中に溶解した電気化学的に活性なマンガン種であって、前記支持電解質中に複数の可逆的酸化状態を有する前記電気化学的に活性なマンガン種と、
前記支持電解質に溶解し、酸化マンガン固形物の沈殿を引き起こす電気化学的に活性なマンガン種の反応を制限する阻害剤であって、オキソアニオン化合物を含む前記阻害剤と、
を含
み、
前記電気化学的に活性なマンガン種が、MnO
4
-
、及びMnO
4
2-
である、前記レドックスフロー電池用電解質。
【請求項10】
前記阻害剤が、リン酸塩(PO
4
3-)、硝酸塩(NO
3
-)、及び硫酸塩(SO
4
2-)からなる群、または前記電解質中で分解してリン酸塩、硝酸塩、もしくは硫酸塩の種、及びそれらの混合物を生成する任意の化合物から選択される、請求項
9に記載の電解質。
【請求項11】
前記阻害剤が、リン酸塩、及びその混合物からなる群から選択される、請求項
10に記載の電解質。
【請求項12】
前記阻害剤が、硝酸塩、及びその混合物からなる群から選択される、請求項
10に記載の電解質。
【請求項13】
前記阻害剤が、硫酸塩、及びその混合物からなる群から選択される、請求項
10に記載の電解質。
【請求項14】
前記阻害剤が、電解質中で分解して溶液中にリン酸塩、硝酸塩または硫酸塩の種を生成する化合物である、請求項
10に記載の電解質。
【請求項15】
マンガン酸塩1モル当たり0.0001モル~0.1モルの阻害剤が存在する組成を有する、請求項
10に記載の電解質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本開示は、2021年5月21日に出願された米国特許出願第17/326,518号に対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
レドックスフロー電池またはレドックスフローセルとしても知られるフロー電池は、電気エネルギーを化学エネルギーに変換するように設計されており、化学エネルギーは貯蔵され、後に、需要がある時に放出することができる。一例として、フロー電池を、風力発電システム等の再生可能エネルギーシステムと共に使用して、消費者の需要を超えるエネルギーを貯蔵し、後に、より大きな需要が存在するときにそのエネルギーを放出することができる。
【0003】
典型的なフロー電池は、電解質層によって分離された負極及び正極を有するレドックスフローセルを含み、これは、イオン交換膜等のセパレータを備えてよい。酸化還元対の間の可逆的な酸化還元反応を駆動するために、負極には負の流体電解質(アノード液と称されることもある)が供給され、正極には正の流体電解質(カソード液と称されることもある)が供給される。充電時、供給された電気エネルギーは、一方の電解質において還元反応を引き起こし、他方の電解質において酸化反応を引き起こす。セパレータは、電解質が自由にかつ急速に混合するのを防止するが、選択されたイオンが通過して酸化還元反応を完了することを可能にする。放電時、液体電解質に含まれる化学エネルギーが逆反応で放出され、電気エネルギーを電極から取り出すことができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の例によるレドックスフロー電池は、レドックスフローセルと、レドックスフローセルの外部の供給及び貯蔵システムとを含む。供給及び貯蔵システムは、レドックスフローセルを循環するための第1及び第2の電解質を含む。第1の電解質は、レドックスフローセルにおける複数の可逆的な酸化状態を有する電気化学的に活性なマンガン種を有する液体電解質である。電気化学的に活性なマンガン種は、酸化マンガン固形物の沈殿を生じる反応を起こす可能性がある。第1の電解質は、自己放電反応を制限する阻害剤をさらに含み、阻害剤はオキソアニオン化合物を含む。
【0005】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態では、阻害剤は、リン酸塩(PO4
3-)、硝酸塩(NO3
-)、及び硫酸塩(SO4
2-)からなる群、または電解質中で分解してリン酸塩、硝酸塩、もしくは硫酸塩の種、及びそれらの混合物を形成する任意の化合物から選択される。
【0006】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態において、阻害剤は、リン酸塩、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0007】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態において、阻害剤は、硝酸塩、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0008】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態において、阻害剤は、硫酸塩、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0009】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態において、阻害剤は、レドックスフロー電池の運転中に分解して溶液中にリン酸塩、硝酸塩、または硫酸塩の種を生成する化合物である。
【0010】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態では、第1の電解質は、マンガンイオン1モルあたり0.0001モル~0.1モルの阻害剤が存在する組成を有する。
【0011】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態では、第1の電解質は、マンガン酸塩1モルあたり0.001モル~0.01モルの阻害剤が存在する組成を有する。
【0012】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態では、電気化学的に活性なマンガン種は、MnO4
-、及びMnO4
2-である。
【0013】
本開示の例によるレドックスフロー電池用電解質は、溶媒と支持塩とを含む支持電解質と、支持電解質中に溶解した電気化学的に活性なマンガン種とを含む。電気化学的に活性なマンガン種は、支持電解質中に複数の可逆的な酸化状態を有する。阻害剤は、支持電解質に溶解し、酸化マンガン固形物の沈殿を引き起こす電気化学的に活性なマンガン種の反応を制限する。阻害剤は、オキソアニオン化合物を含む。
【0014】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態では、阻害剤は、リン酸塩(PO4
3-)、硝酸塩(NO3
-)、及び硫酸塩(SO4
2-)からなる群、または電解質中で分解してリン酸塩、硝酸塩、もしくは硫酸塩の種、及びそれらの混合物を形成する任意の化合物から選択される。
【0015】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態において、阻害剤は、リン酸塩、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0016】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態において、阻害剤は、硝酸塩、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0017】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態において、阻害剤は、硫酸塩、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0018】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態において、阻害剤は、電解質内で分解して溶液中にリン酸塩、硝酸塩、または硫酸塩の種を生成する化合物である。
【0019】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態は、マンガン酸塩1モルあたり0.0001モル~0.1モルの阻害剤が存在する組成を含む。
【0020】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態では、電気化学的に活性なマンガン種は、MnO4
-、及びMnO4
2-である。
【0021】
本開示の様々な特徴及び利点は、以下の詳細な説明から当業者に明らかになるであろう。詳細な説明に添付された図面は、以下のように簡単に説明することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、電気エネルギーを選択的に貯蔵及び放電するための例示のレドックスフロー電池20の一部を模式的に示す。一例として、フロー電池20は、再生可能エネルギーシステムにおいて生成された電気エネルギーを化学エネルギーに変換するために使用することができ、この化学エネルギーは、後に、より大きな需要が生じる時点まで貯蔵され、その時点で、フロー電池20を使用して、化学エネルギーを再び電気エネルギーに変換することができる。フロー電池20は、例えば電力網に電気エネルギーを供給することができる。
【0024】
フロー電池20は、電気化学的に活性な種28を有する追加の第2の電解質26に対して酸化還元対として機能する電気化学的に活性な種24を有する第1の電解質22を含む。少なくとも第1の電解質22は液体であるが、第2の電解質26も液体であるのが最も一般的である。電解質22/26は、第1の容器32及び第2の容器34を含む供給/貯蔵システム30に含まれている。
【0025】
例えば、電気化学的に活性な種24は、マンガンオキシアニオン、すなわち、それぞれ、+6及び+7の酸化状態を有するMnO4
-及びMnO4
2-をベースにしている。オキシアニオン中のマンガンは、選択された液体溶液中で、すなわち塩基性塩水溶液を含むが、これに限定されない支持電解質中で、複数の可逆的な酸化状態を有する。第2の電解質26の電気化学的に活性な種28は、特に限定されない。例えば、電気化学的に活性な種28は、バナジウム、鉄、クロム、亜鉛、モリブデン、硫黄、セリウム、鉛、スズ、チタン、ゲルマニウム、及びこれらの組み合わせ、臭素、塩素、及びこれらの組み合わせ等のハロゲン、または、キノン類、もしくはキノキサリンもしくはピラジン等の窒素含有有機物、もしくはフェノチアジン等の硫黄含有有機物など、電気化学的に可逆的な反応を起こす基を含む有機分子から選択される。
【0026】
一例として、マンガン/硫黄系の半電池反応を以下に示す。これらの反応は、他の系の反応と同様に周知であるので、これ以上は論じない。
正極:2NaMnO4+2Na++2e-←→2Na2MnO4 E0=0.551vs.SHE
負極:2Na2S2←→Na2S4+2Na++2e- E0=-0.45vs.SHE
電解質22、26は、ポンプ35によって各供給ライン38を通ってフロー電池20の少なくとも1つのレドックスフローセル36に循環され、セル36から戻りライン40を通って容器32,34に戻される。当然ながら、必要であれば、付加的なポンプ35、ならびに流れを制御するためにフロー電池20の構成要素の入口/出口に弁(図示せず)も使用することができる。流れ回路のループ内のスタックとして、複数のセル36を備えることができる。
【0027】
セル(複数可)36はそれぞれ、第1の電極42と、第1の電極42から離間している第2の電極44と、第1の電極42と第2の電極44との間に配置された電解質セパレータ層46とを有する。例えば、電極42、44は、カーボン紙またはフェルトのような多孔質カーボン構造体である。概して、セル(複数可)36は、電解質22、26を流れ場チャネルを通って電極42、44に送るためのバイポーラプレート、マニホールドなどを含み得る。しかしながら、その他の構成を使用することができるのは当然である。例えば、セル(複数可)36は代替的に、フロースルー運転のために構成することができ、この場合、流れ場チャネルを使用することなく流体電解質22,26が電極42、44内に直接ポンピングされる。
【0028】
電解質セパレータ層46は、イオン交換膜、微孔質ポリマ膜、または流体電解質22,26の自由かつ迅速な混合を防止するが、電極42,44を電気的に分離しながら選択されたイオンを通過させて酸化還元反応を完了させることができる材料、例えば炭化ケイ素(SiC)の電気絶縁性微孔質マトリックスであってよいが、これらに限定されない。これに関して、電解質22/26の流れ回路は、充電、放電、及び停止状態などの通常運転中、互いに絶縁される。
【0029】
電解質22、26は、電気エネルギーを化学エネルギーに変換するかまたは逆反応で化学エネルギーを放電される電気エネルギーに変換するために、アクティブな充電/放電モードの間にセル(複数可)36に送られ、セル36を通して循環する。電気エネルギーは、電極42、44に電気的に結合された電気回路48を介してセル(複数可)36へ伝達及びセル36から伝達される。
【0030】
また、フロー電池20は、アクティブな充電/放電モードから、電解質22、26のいずれもセル36を通って循環しない完全停止モードへ移行させることもできる。例えば、完全停止モードでは、電解質22、26は、セル36から空にされるか、またはセル36に残されているが、循環させられない。これに関して、フロー電池20は、アクティブな充電/放電モードからの停止、及び非アクティブな停止状態からの起動を含む、フロー電池20の運転を制御するように構成されたマイクロプロセッサ、ソフトウェアまたはその両方など、ハードウェアを有するコントローラも含み得る。
【0031】
約14以上のpHなどの高pHレベルでは、電解質22中のマンガン種、特に+6及び+7の酸化状態をマンガンが有するマンガン種は、酸化マンガン固形物の沈殿を引き起こす反応を起こしやすい。いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、+6及び+7の酸化状態のマンガンは、以下に示す自己放電、不均化、及び/または分解反応に関与して、MnO2の固体沈殿物を生成するという仮説が立てられる。酸化マンガン沈殿物は電解質に低い溶解度を有し、したがって反応は、電気化学的に活性な過マンガン酸塩またはマンガン酸塩の電解質からの除去機構として効果的に働く。さらに、わずか数日の間に沈殿が発生する可能性があるため、沈殿によるマンガンの効果的な除去は、耐久性の低下を表し、ひいてはマンガン電解質を魅力的にする他の性能及びコスト上の利点を実現することの障害となる。
【0032】
過マンガン酸塩/マンガン酸塩反応:
自己放電:4NaMnO4+4NaOH←→4Na2MnO4+2H2O+O2(g)
不均化:3Na2MnO4+2H2O←→MnO2(s)+2NaMnO4+4NaOH
分解:2Na2MnO4+2H2O←→MnO2(s)+O2(g)+4NaOH
これに関して、+6及び+7の酸化状態のマンガンのこのような反応を制限し、それによってフロー電池20の耐久性を高めるために、電解質22は阻害剤50を含む。阻害剤50は、反応を阻害し、したがって+6及び+7の酸化状態のマンガンからの酸化マンガン沈殿物の形成を妨げる。ここでも、特定の理論に縛られることを望むものではないが、これらのマンガンイオンが反応してMnxOy
zのクラスタ化した酸化マンガン錯体を形成し、次に、これらのクラスタが2つの機構の一方または両方によるマンガン酸塩のさらなる反応を触媒すると考えられる。一方の機構は、クラスタによる酸素発生の触媒作用であると考えられ、他方の機構は、クラスタの成長とそれに伴う不均化反応及び分解反応の駆動であると考えられる。これらの概念の下で、阻害剤50は、クラスタに強く結合する役割を果たし、それによって、酸素発生及び/またはクラスタ成長のための触媒反応部位を遮断する。
【0033】
阻害剤50は、オキソアニオン化合物を含む。オキシアニオンとも呼ばれるオキソアニオンは、一般式AxOz-
y(式中、Aは、化学元素であり、Oは、酸素原子である)を有するイオンである。例えば、阻害剤50は、リン酸塩(PO4
3-)、硝酸塩(NO3
-)、及び硫酸塩(SO4
2-)からなる群、または電解質中で分解してリン酸塩、硝酸塩、もしくは硫酸塩の種、及びそれらの混合物を形成する任意の化合物から選択される。
【0034】
一般に、電解質22は、マンガン酸塩1モル当たり阻害剤50が0.0001モル~0.1モル存在する組成を有する。この範囲の下限の量は、相対的により低い阻害効果のために使用することができ、一方、この範囲の上限の量は、相対的により高い阻害効果のために使用することができる。さらなる例では、マンガン1モルあたり0.001モル~0.01モルの阻害剤が存在する。
【0035】
さらなる例として、電解質22は、以下の組成を有する。
溶媒66重量%及び支持塩9重量%を含む支持電解質75重量%、
支持電解質中に溶解した電気化学的に活性なマンガン種25重量%、及び
支持電解質に溶解した1重量%未満の阻害剤50。
【0036】
上記の量で使用するための阻害剤50のさらなる非限定的な例を、以下の表に示す。
【0037】
【0038】
特徴の組み合わせが図示の例に示されているが、本開示の種々の実施形態の利益を実現するために、それらのすべてを組み合わせる必要はない。換言すれば、本開示の実施形態に従って設計されたシステムは、図面のうちの任意の1つに示された特徴の全て、または図面に模式的に示された部分の全てを必ずしも含むわけではない。さらに、1つの例示の実施形態の選択された特徴を、他の例示の実施形態の選択された特徴と組み合わせることができる。
【0039】
前述の説明は、制限的ではなく例示的なものである。必ずしも本開示の本質から逸脱するものではない、開示された例に対する変形及び修正が、当業者に明らかとなり得る。したがって、本開示に与えられる法的保護の範囲は、以下の特許請求の範囲を検討することによってのみ決定することができる。