(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-22
(45)【発行日】2025-05-30
(54)【発明の名称】半導体装置、電力変換装置および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/48 20060101AFI20250523BHJP
【FI】
H01L23/48 G
H01L23/48 K
H01L23/48 M
H01L23/48 P
H01L23/48 T
(21)【出願番号】P 2024507362
(86)(22)【出願日】2022-03-17
(86)【国際出願番号】 JP2022012383
(87)【国際公開番号】W WO2023175854
(87)【国際公開日】2023-09-21
【審査請求日】2024-02-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】吉松 直樹
(72)【発明者】
【氏名】境 紀和
(72)【発明者】
【氏名】河面 英夫
【審査官】齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-23183(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/50―21/52
H01L 23/28―23/31
H01L 23/495
H01L 23/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子が形成された半導体基板と、
前記半導体基板の表面上に形成された表面電極と、
前記表面電極上に形成され、前記表面電極の一部を露出する開口部を有する保護膜と、
前記保護膜の前記開口部に露出した前記表面電極上に形成されためっき電極と、
接合材を介して前記めっき電極に接続されたリードフレームと、
前記半導体基板、前記表面電極、前記保護膜、前記めっき電極、前記リードフレームを封止するモールド樹脂と、
を備え、
前記モールド樹脂は、前記接合材と前記保護膜と前記リードフレームとに接しており、
前記めっき電極は、前記開口部の縁の前記保護膜を覆わないように、前記開口部の内側に形成されており、
前記接合材
の一部は、
前記めっき電極の上からはみ出し、前記開口部の縁の前記保護膜を覆っており、
前記開口部の縁の前記保護膜が前記接合材で覆われた部分の幅は、前記リードフレームと前記めっき電極との間の前記接合材の厚みよりも大きい、
半導体装置。
【請求項2】
前記モールド樹脂で覆われた前記リードフレームの端面の位置は、前記めっき電極の端部の上からずれている、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記モールド樹脂で覆われた前記リードフレームの端面の位置と前記めっき電極の端部の位置とのずれ量は、前記リードフレームと前記めっき電極との間の前記接合材の厚みよりも大きい、
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記モールド樹脂で覆われた前記リードフレームの端面は、前記めっき電極上に位置している、
請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記モールド樹脂で覆われた前記リードフレームの端面は、前記めっき電極の外側に位置している、
請求項3に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記めっき電極と前記保護膜との境界部分の上の前記接合材の厚みは、前記リードフレームと前記めっき電極との間の前記接合材の厚みよりも大きい、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記保護膜はポリイミドで形成されている、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記接合材は銀の焼結体である
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記半導体基板は炭化珪素で形成されている、
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の半導体装置を有し、入力される電力を変換して出力する主変換回路と、
前記主変換回路を制御する制御信号を前記主変換回路に出力する制御回路と、
を備えた電力変換装置。
【請求項11】
半導体素子が形成された半導体基板の表面上に表面電極を形成する工程と、
前記表面電極上に保護膜を形成し、前記表面電極の一部を露出する開口部を前記保護膜に形成する工程と、
前記保護膜の前記開口部に露出した前記表面電極の表面をめっき処理することでめっき電極を形成する工程と、
前記めっき電極上および前記開口部の縁の前記保護膜上に銀を含む接合材を塗布する工程と、
前記接合材上にリードフレームを載せ、前記接合材の銀を無加圧状態で焼結させることで、前記リードフレームと前記めっき電極とを前記接合材を介して接続させる工程と、
モールド樹脂を用いて、前記半導体基板、前記表面電極、前記保護膜、前記めっき電極、前記リードフレームを封止する工程と、
を備え
、
前記めっき電極は、前記開口部の縁の前記保護膜を覆わないように、前記開口部の内側に形成され、
前記接合材は、一部が前記めっき電極の上からはみ出し、前記開口部の縁の前記保護膜を覆うように形成される、
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記接合材の銀を焼結させた後において、前記開口部の縁の前記保護膜が前記接合材で覆われた部分の幅は、前記リードフレームと前記めっき電極との間の前記接合材の厚みよりも大きい
請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記接合材の銀を焼結させた後において、前記モールド樹脂で覆われた前記リードフレームの端面の位置は、前記めっき電極の端部の上からずれている、
請求項11または請求項12に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記接合材の銀を焼結させた後において、前記モールド樹脂で覆われた前記リードフレームの端面の位置と前記めっき電極の端部の位置とのずれ量は、前記リードフレームと前記めっき電極との間の前記接合材の厚みよりも大きい、
請求項13に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記接合材の銀を焼結させた後において、前記モールド樹脂で覆われた前記リードフレームの端面は、前記めっき電極上に位置している、
請求項14に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記接合材の銀を焼結させた後において、前記モールド樹脂で覆われた前記リードフレームの端面は、前記めっき電極の外側に位置している、
請求項14に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項17】
前記接合材の銀を焼結させた後において、前記めっき電極と前記保護膜との境界部分の上の前記接合材の厚みは、前記リードフレームと前記めっき電極との間の前記接合材の厚みよりも大きい、
請求項11から請求項16のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項18】
前記接合材を塗布する工程は、前記接合材としてのナノ銀ペーストの印刷により行われる、
請求項11から請求項17のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項19】
前記接合材を塗布する工程は、前記接合材としてのナノ銀ペーストのディスペンスにより行われる、
請求項11から請求項17のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項20】
前記保護膜はポリイミドで形成されている、
請求項11から請求項19のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項21】
前記半導体基板は炭化珪素で形成されている、
請求項11から請求項20のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置、電力変換装置および半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体基板の表面上に形成された表面電極に金属製のリードフレームを接続させた構造を持つ半導体装置が知られている。例えば下記の特許文献1には、保護膜から露出した表面電極上にめっき電極を有し、接合材としてのはんだを介してめっき電極とリードフレームとを接続させた構成の半導体装置が開示されている。特許文献1において、めっき電極とリードフレームとの間を接続するはんだは、保護膜の傾斜した側面に接触する。また、上記の保護膜、めっき電極、はんだおよびリードフレームは、モールド樹脂によって封止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような構成を持つ半導体装置では、半導体素子のオン、オフに伴う発熱および冷却によって温度分布が生じると、各部材の線膨張係数の違いにより、各部材の境界に応力が発生する。特に、モールド樹脂および保護膜の膨張・収縮量と、めっき電極、接合材およびリードフレームの膨張・収縮量とが異なり、両者の間の境界に応力が繰り返し発生すると、剥離強度の低いめっき電極の端部が剥離して、半導体装置の破壊を招く原因となる。
【0005】
本開示は以上のような課題を解決するためになされたものであり、半導体装置の各部位の線膨張係数の違いに起因する応力によるめっき電極の剥離を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る半導体装置は、半導体素子が形成された半導体基板と、前記半導体基板の表面上に形成された表面電極と、前記表面電極上に形成され、前記表面電極の一部を露出する開口部を有する保護膜と、前記保護膜の前記開口部に露出した前記表面電極上に形成されためっき電極と、接合材を介して前記めっき電極に接続されたリードフレームと、前記半導体基板、前記表面電極、前記保護膜、前記めっき電極、前記リードフレームを封止するモールド樹脂と、を備え、前記モールド樹脂は、前記接合材と前記保護膜と前記リードフレームとに接しており、前記めっき電極は、前記開口部の縁の前記保護膜を覆わないように、前記開口部の内側に形成されており、前記接合材の一部は、前記めっき電極の上からはみ出し、前記開口部の縁の前記保護膜を覆っており、前記開口部の縁の前記保護膜が前記接合材で覆われた部分の幅は、前記リードフレームと前記めっき電極との間の前記接合材の厚みよりも大きい。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、半導体装置の各部位の線膨張係数の違いに起因する応力によるめっき電極の剥離が防止される。
【0008】
本開示の目的、特徴、態様、および利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、より明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る半導体装置の主要部の構成を示す断面図である。
【
図2】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を説明するための図である。
【
図3】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を説明するための図である。
【
図4】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を説明するための図である。
【
図5】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を説明するための図である。
【
図6】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を説明するための図である。
【
図7】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を説明するための図である。
【
図8】実施の形態2に係る半導体装置の主要部の構成を示す断面図である。
【
図9】実施の形態3に係る半導体装置の主要部の構成を示す断面図である。
【
図10】実施の形態4係る電力変換装置を適用した電力変換システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1に係る半導体装置の主要部(具体的には、半導体素子とリードフレームとの接続部の近傍)の構成を示す断面図である。
図1のように、実施の形態1に係る半導体装置は、半導体素子が形成された半導体基板1と、半導体基板1の表面上に形成された表面電極2とを備えている。半導体基板1に形成される半導体素子としては、特に制約は無く、例えば、MOSFET、IGBT、ショットキーバリアダイオード、PN接合ダイオードなど、任意のものでよい。
【0011】
表面電極2の上には、表面電極2の一部を露出する開口部を有する保護膜3が形成されており、保護膜3の開口部に露出した表面電極2の上にめっき電極4が形成されている。本実施の形態では、保護膜3は、表面電極2の外縁部を覆うように形成され、表面電極2の中央部が保護膜3の開口部に露出している。よって、めっき電極4は表面電極2の中央部の上に形成されている。
【0012】
めっき電極4は、保護膜3の開口部に露出した表面電極2を、例えばニッケルなどでめっき処理することで形成される。保護膜3は、組み立て性および信頼性の観点から、例えばポリイミドのような、低弾性で化学的に安定し、耐熱性の高い樹脂材料であることが好ましい。
【0013】
めっき電極4は、接合材5を介してリードフレーム6に接続されている。リードフレーム6は、例えば銅、または銅合金などで形成される。また、半導体基板1、表面電極2、保護膜3、めっき電極4、リードフレーム6は、モールド樹脂7によって封止される。
【0014】
接合材5の一部は、めっき電極4の上からはみ出し、保護膜3の開口部の縁を覆っている。これにより、剥離強度の低いめっき電極4と保護膜3との境界部分が接合材5で覆われ、めっき電極4の剥離が防止される。
【0015】
開口部の縁の保護膜3が接合材5で覆われる部分の幅は、リードフレーム6の下の接合材5の厚み、すなわちリードフレーム6とめっき電極4の間の接合材5の厚みよりも大きいことが好ましい。つまり、
図1に示すように、リードフレーム6とめっき電極4の間の接合材5の厚みをa、開口部の縁の保護膜3が接合材5で覆われた部分の幅をbとすると、b>aの関係が成り立つことが好ましい。
【0016】
さらに、モールド樹脂7で覆われたリードフレーム6の端面は、めっき電極4の端部の上、すなわちめっき電極4と保護膜3との境界部分の上からずれた位置にある。実施の形態1では、モールド樹脂7で覆われたリードフレーム6の端面を、めっき電極4の上に配置している。これにより、リードフレーム6とモールド樹脂7との境界部分に生じた応力が、剥離強度の低いめっき電極4の端部に加わることが抑制され、めっき電極4の剥離がさらに抑制される。
【0017】
モールド樹脂7で覆われたリードフレーム6の端面の位置とめっき電極4の端部の位置とのずれ量は、リードフレーム6とめっき電極4の間の接合材5の厚みよりも大きいことが好ましい。つまり、
図1に示すように、モールド樹脂7で覆われたリードフレーム6の端面の位置とめっき電極4の端部の位置とのずれ量をcとすると、c>aの関係が成り立つことが好ましい。
【0018】
接合材5は、めっき電極4だけでなく樹脂製の保護膜3にも塗布され、リードフレーム6を接合した後にも保護膜3を覆う必要がある。そのため、接合材5は、はんだのような濡れを伴う材料ではなく、例えば銀の焼結体である焼結銀や導電性接着剤のような、塗布された位置でそのまま硬化する材料であることが好ましい。
【0019】
また、焼結銀からなる接合材5は、ナノ銀のペーストを塗布して焼結することで形成できる。ナノ銀を焼結させる方法には、圧力を加えながら加熱する加圧焼結と、圧力を加えずに加熱する無加圧焼結とがあるが、本実施の形態では、接合材5の上にリードフレーム6が存在しない部分があること、および、接合材5を多孔質化して低弾性にすることを考慮して、無加圧焼結が好ましい。
【0020】
半導体装置内で発生する応力を小さく抑えるために、半導体装置の設計においては、隣接する部材の材料として線膨張係数が互いに近いものが選択されるのが一般的である。例えば、モールド樹脂7の線膨張係数とリードフレーム6の線膨張係数とを近くすることで、冷熱サイクルのような環境温度変化に伴うモールド樹脂7とリードフレーム6との膨張量および収縮量の差を小さくできる。
【0021】
しかし、半導体素子がオン状態のとき、半導体素子で発生する熱の大半は半導体基板1の下面側へ放熱されるが、熱伝導率の高い金属材料で形成されるめっき電極4、接合材5およびリードフレーム6の温度は、熱伝導率の低い樹脂材料で形成される保護膜3およびモールド樹脂7の温度に比べて高くなる。また、半導体素子がオフ状態のときは、半導体基板1は下面側から冷却されるため、めっき電極4、接合材5およびリードフレーム6の温度は、保護膜3およびモールド樹脂7に比べて低くなる。このように、半導体装置の動作時には温度分布(つまり、部材間の温度差)が生じるため、各部材の線膨張係数を近づけても、それらの膨張量および収縮量を揃えることは困難である。
【0022】
そこで、本実施の形態では、剥離強度の低いめっき電極4と保護膜3との境界部分を接合材5で覆い、さらに、その上にモールド樹脂7とリードフレーム6との境界(つまり、モールド樹脂7で覆われたリードフレーム6の端面)を配置しないことで、半導体装置の動作時の温度分布に起因してめっき電極4の端部に加わる応力を低減させている。それにより、めっき電極4の剥離が防止され、半導体装置の信頼性向上に寄与できる。特に、半導体基板1が炭化珪素(SiC)で形成された半導体装置は、動作温度範囲が広いため、部材間の膨張量および収縮量の差が顕著となるので、上記の効果は非常に有効である。
【0023】
以下、
図2~
図7の工程図を参照しつつ、実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を説明する。なお、
図2~
図7のうち、
図2~
図4はウエハ工程、
図5~
図7はアセンブリ工程となる。また、
図2~
図7は、
図1と同様に半導体基板1とリードフレーム6との接続部の近傍を示している。以下では、その部分に関係する工程を説明し、それ以外の工程(例えば、ダイシング工程、ダイボンド工程、ワイヤボンド工程など)の説明は省略する。
【0024】
まず、半導体素子が形成された半導体基板1を用意し、
図2のように、半導体基板1の表面上に表面電極2を形成する。次に、表面電極2上に保護膜3を形成し、
図3のように、表面電極2の一部を露出する開口部を保護膜3に形成する。続いて、保護膜3の開口部に露出した表面電極2の表面をめっき処理することで、
図4のように、めっき電極4を形成する。
【0025】
その後、
図5のように、めっき電極4上および開口部の縁の保護膜3上に銀を含む接合材5を塗布する。接合材5を塗布は、例えば、接合材5としてのナノ銀ペーストを、保護膜3およびめっき電極4上に印刷することによって行うことができる。
【0026】
そして、接合材5上にリードフレーム6を載せて加熱することで、
図6のように、リードフレーム6とめっき電極4とを接合材5を介して接続させる。上述したように、接合材5としてナノ銀ペーストを用いる場合、接合材5の銀を無加圧状態で焼結させることが好ましい。また、接合材5の銀を焼結させた後の状態において、上述したb>aおよびc>aの関係が成り立つことが好ましい。
【0027】
最後に、
図7のように、モールド樹脂7を用いて、半導体基板1、表面電極2、保護膜3、めっき電極4、リードフレーム6を封止することで、
図1に示した半導体装置の構成が得られる。
【0028】
<実施の形態2>
図8は、実施の形態2に係る半導体装置の主要部の構成を示す断面図である。
図8では、実施の形態1(
図1)で説明したものと同一または対応する要素にはそれと同一符号を付している。そのため、ここではそれらの詳細な説明は省略し、実施の形態1との相違点を説明する。
【0029】
実施の形態2では、モールド樹脂7で覆われたリードフレーム6の端面が、めっき電極4の外側に配置されている。それ以外の構成は、実施の形態1と同様である。
【0030】
図8の構成においても、モールド樹脂7で覆われたリードフレーム6の端面が、めっき電極4の端部(すなわち、めっき電極4と保護膜3との境界部分)の上からずれた位置になるため、リードフレーム6とモールド樹脂7との境界部分に生じた応力が、剥離強度の低いめっき電極4の端部に加わることが抑制され、めっき電極4の剥離が抑制される。
【0031】
モールド樹脂7で覆われたリードフレーム6の端面の位置とめっき電極4の端部の位置とのずれ量は、リードフレーム6とめっき電極4の間の接合材5の厚みよりも大きいことが好ましい。つまり、
図8に示すように、モールド樹脂7で覆われたリードフレーム6の端面の位置とめっき電極4の端部の位置とのずれ量をdとすると、d>aの関係が成り立つことが好ましい。
【0032】
<実施の形態3>
図9は、実施の形態3に係る半導体装置の主要部の構成を示す断面図である。
図9においても、実施の形態1(
図1)で説明したものと同一または対応する要素にはそれと同一符号を付している。そのため、ここではそれらの詳細な説明は省略し、実施の形態1との相違点を説明する。
【0033】
実施の形態3では、めっき電極4と保護膜3との境界部分の上の接合材5の厚みが、リードフレーム6の下(すなわち、リードフレーム6とめっき電極4との間)の接合材5の厚みよりも大きくなっている。つまり、
図9に示すように、リードフレーム6とめっき電極4の間の接合材5の厚みをa、めっき電極4と保護膜3との境界部分の上の接合材5の厚みをeとすると、e>aの関係が成り立つ。これにより、剥離強度の低いめっき電極4の端部を直近で覆う材料が均一となり、半導体装置の動作時の温度分布による膨張量および収縮量の差を小さくできるため、めっき電極4の剥離が抑制される。
【0034】
接合材5の厚みの部分的に制御するために、接合材5の塗布をディスペンス(つまり、ディスペンサーを用いた塗布)で行うとよい。接合材5の印刷による塗布は、接合材5を広範囲に効率よく塗布できるが、塗布された接合材5の厚みは一定となる。
【0035】
<実施の形態4>
本実施の形態は、上述した実施の形態1~3にかかる半導体装置を電力変換装置に適用したものである。実施の形態1~3にかかる半導体装置の適用は特定の電力変換装置に限定されるものではないが、以下、実施の形態4として、三相のインバータに実施の形態1~3にかかる半導体装置を適用した場合について説明する。
【0036】
図10は、本実施の形態にかかる電力変換装置を適用した電力変換システムの構成を示すブロック図である。
【0037】
図10に示す電力変換システムは、電源100、電力変換装置200、負荷300から構成される。電源100は、直流電源であり、電力変換装置200に直流電力を供給する。電源100は種々のもので構成することが可能であり、例えば、直流系統、太陽電池、蓄電池で構成することができるし、交流系統に接続された整流回路やAC/DCコンバータで構成することとしてもよい。また、電源100を、直流系統から出力される直流電力を所定の電力に変換するDC/DCコンバータによって構成することとしてもよい。
【0038】
電力変換装置200は、電源100と負荷300の間に接続された三相のインバータであり、電源100から供給された直流電力を交流電力に変換し、負荷300に交流電力を供給する。電力変換装置200は、
図10に示すように、直流電力を交流電力に変換して出力する主変換回路201と、主変換回路201を制御する制御信号を主変換回路201に出力する制御回路203とを備えている。
【0039】
負荷300は、電力変換装置200から供給された交流電力によって駆動される三相の電動機である。なお、負荷300は特定の用途に限られるものではなく、各種電気機器に搭載された電動機であり、例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車、鉄道車両、エレベーター、もしくは、空調機器向けの電動機として用いられる。
【0040】
以下、電力変換装置200の詳細を説明する。主変換回路201は、スイッチング素子と還流ダイオードを備えており(図示せず)、スイッチング素子がスイッチングすることによって、電源100から供給される直流電力を交流電力に変換し、負荷300に供給する。主変換回路201の具体的な回路構成は種々のものがあるが、本実施の形態にかかる主変換回路201は2レベルの三相フルブリッジ回路であり、6つのスイッチング素子とそれぞれのスイッチング素子に逆並列された6つの還流ダイオードから構成することができる。主変換回路201の各スイッチング素子や各還流ダイオードは、上述した実施の形態1~3のいずれかに相当する半導体モジュール202によって構成する。6つのスイッチング素子は2つのスイッチング素子ごとに直列接続され上下アームを構成し、各上下アームはフルブリッジ回路の各相(U相、V相、W相)を構成する。そして、各上下アームの出力端子、すなわち主変換回路201の3つの出力端子は、負荷300に接続される。
【0041】
また、主変換回路201は、各スイッチング素子を駆動する駆動回路(図示なし)を備えているが、駆動回路は半導体モジュール202に内蔵されていてもよいし、半導体モジュール202とは別に駆動回路を備える構成であってもよい。駆動回路は、主変換回路201のスイッチング素子を駆動する駆動信号を生成し、主変換回路201のスイッチング素子の制御電極に供給する。具体的には、後述する制御回路203からの制御信号に従い、スイッチング素子をオン状態にする駆動信号とスイッチング素子をオフ状態にする駆動信号とを各スイッチング素子の制御電極に出力する。スイッチング素子をオン状態に維持する場合、駆動信号はスイッチング素子の閾値電圧以上の電圧信号(オン信号)であり、スイッチング素子をオフ状態に維持する場合、駆動信号はスイッチング素子の閾値電圧以下の電圧信号(オフ信号)となる。
【0042】
制御回路203は、負荷300に所望の電力が供給されるよう主変換回路201のスイッチング素子を制御する。具体的には、負荷300に供給すべき電力に基づいて主変換回路201の各スイッチング素子がオン状態となるべき時間(オン時間)を算出する。例えば、出力すべき電圧に応じてスイッチング素子のオン時間を変調するPWM制御によって主変換回路201を制御することができる。そして、各時点においてオン状態となるべきスイッチング素子にはオン信号を、オフ状態となるべきスイッチング素子にはオフ信号が出力されるよう、主変換回路201が備える駆動回路に制御指令(制御信号)を出力する。駆動回路は、この制御信号に従い、各スイッチング素子の制御電極にオン信号又はオフ信号を駆動信号として出力する。
【0043】
本実施の形態に係る電力変換装置では、主変換回路201のスイッチング素子と還流ダイオードとして実施の形態1~3にかかる半導体モジュールを適用するため、信頼性向上を実現することができる。
【0044】
本実施の形態では、2レベルの三相インバータに実施の形態1~3にかかる半導体装置を適用する例を説明したが、実施の形態1~3にかかる半導体装置の適用は、これに限られるものではなく、種々の電力変換装置に適用することができる。本実施の形態では、2レベルの電力変換装置としたが3レベルやマルチレベルの電力変換装置であっても構わないし、単相負荷に電力を供給する場合には単相のインバータに実施の形態1~3にかかる半導体装置を適用しても構わない。また、直流負荷等に電力を供給する場合にはDC/DCコンバータやAC/DCコンバータに実施の形態1~3にかかる半導体装置を適用することも可能である。
【0045】
また、実施の形態1~3にかかる半導体装置を適用した電力変換装置は、上述した負荷が電動機の場合に限定されるものではなく、例えば、放電加工機やレーザー加工機、又は誘導加熱調理器や非接触給電システムの電源装置として用いることもでき、さらには太陽光発電システムや蓄電システム等のパワーコンディショナーとして用いることも可能である。
【0046】
なお、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【0047】
上記した説明は、すべての態様において、例示であって、例示されていない無数の変形例が想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0048】
1 半導体基板、2 表面電極、3 保護膜、4 めっき電極、5 接合材、6 リードフレーム、7 モールド樹脂、100 電源、200 電力変換装置、201 主変換回路、202 半導体モジュール、203 制御回路、300 負荷。