(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-22
(45)【発行日】2025-05-30
(54)【発明の名称】軸受状態検出装置と回転電機および軸受状態検出方法
(51)【国際特許分類】
H02K 5/173 20060101AFI20250523BHJP
【FI】
H02K5/173 Z
(21)【出願番号】P 2025514732
(86)(22)【出願日】2024-10-03
(86)【国際出願番号】 JP2024035431
【審査請求日】2025-03-11
(31)【優先権主張番号】P 2024110701
(32)【優先日】2024-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片桐 高大
(72)【発明者】
【氏名】北川 祐太朗
(72)【発明者】
【氏名】開田 健
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-039056(JP,A)
【文献】特許第6556354(JP,B2)
【文献】実開昭51-049401(JP,U)
【文献】特開2017-137894(JP,A)
【文献】特開2006-234846(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K5/00-5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状をなして内周面で回転電機の回転子のシャフトを支持する
磁化処理されていない軸受まわりの磁界および電界の少なくとも一方を測定するセンサ、および
前記センサからの信号に基づいて、前記軸受を流れる軸電流を検出する軸電流検出部、を備え、
前記センサは、前記軸受の軸方向における両端面のうち少なくともひとつの端面に対向して配置されていることを特徴とする軸受状態検出装置。
【請求項2】
前記センサは、前記軸受を径方向に流れる電流に起因する磁界および電界の少なくとも一方に対してセンサ素子が最大感度を有するように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の軸受状態検出装置。
【請求項3】
前記センサは、前記シャフトの外周面にも対向して配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の軸受状態検出装置。
【請求項4】
前記センサは、前記シャフトを軸方向に流れる電流に起因する磁界および電界の少なくとも一方に対して第二センサ素子が最大感度を有するように配置されていることを特徴とする請求項3に記載の軸受状態検出装置。
【請求項5】
前記センサは、前記回転子の回転角度を検出する機能を有していることを特徴とする請求項
1または2に記載の軸受状態検出装置。
【請求項6】
前記センサは、前記シャフトを支持する2つの軸受それぞれに対応して設けられ、
前記軸電流検出部が検出した前記2つの軸受それぞれの軸電流の向きに応じて前記軸電流の伝搬経路を判定する伝搬経路判別部、
を備えたことを特徴とする請求項
1または2に記載の軸受状態検出装置。
【請求項7】
前記軸受を保持する前記回転電機の筐体と前記シャフトとの間の電圧を測定する電圧センサを備え、
前記軸電流検出部は、前記センサからの信号と前記電圧センサからの信号に基づいて、前記軸受を流れる軸電流を検出することを特徴とする請求項
1または2に記載の軸受状態検出装置。
【請求項8】
前記回転子、
前記回転子の外周面に対して間隔をあけて同心配置された固定子、および
前記軸受と前記固定子を径方向の外側から保持するとともに、前記固定子と前記回転子を内部に収容する筐体、を備え、
請求項
1または2に記載の軸受状態検出装置を装備したことを特徴とする回転電機。
【請求項9】
前記軸受の前記センサが対向する端面は、内輪と外輪の間に充填された潤滑剤を保護するための導電体のシール板で覆われており、
前記シール板は、前記内輪と外輪のうちの一方と絶縁し、かつ前記センサの検知面と対向する領域が開口していることを特徴とする請求項8に記載の回転電機。
【請求項10】
磁界および電界の少なくとも一方を測定するセンサを、回転電機の回転子のシャフトを支持する
磁化処理されていない軸受の軸方向における両端面のうち少なくともひとつの端面に対向させて配置する工程、および
前記センサからの信号に基づいて、前記軸受を径方向に流れる軸電流を検出する工程、
を含むことを特徴とする軸受状態検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、軸受状態検出装置と回転電機および軸受状態検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インバータを用いた電力変換回路で駆動される回転電機においては、インバータに含まれる半導体素子のスイッチング動作に起因して軸受の電食が発生する。このような電食は軸受の摩耗、損傷を引き起こし、回転電機の信頼性を低下させる。
【0003】
軸受の電食は、軸受を構成する剛体球と内輪・外輪との間で流れる放電電流である軸電流が原因であることが知られているが、軸電流は軸受から軸受を保持する筐体に伝搬するため、直接的な計測が難しい課題がある。それに対し、磁化した軸受に磁界センサを近接配置し、軸電流に起因する磁界の変化を検出することで、軸電流を間接的に計測する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、磁界センサと音響センサを組み合わせることで軸電流を高感度に検出する技術も開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011―39056号公報(段落0016~0024、
図1~
図5)
【文献】国際公開第2016/157347号(段落0024~0027、
図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、軸受を磁化するためには付加設備が必要になり、部品点数、およびコストが増加するほか、軸受付近に磁界センサを近接配置するだけでは、軸受から筐体に伝搬する軸電流については検出感度が低下する課題がある。また、音響センサを組み合わせる場合も、音響センサといった付加設備が必要になり、部品点数、およびコストが増加する。
【0006】
本開示は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、部品点数を増加させることなく、軸電流を高感度に検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の軸受状態検出装置は、円筒状をなして内周面で回転電機の回転子のシャフトを支持する磁化処理されていない軸受まわりの磁界および電界の少なくとも一方を測定するセンサ、および前記センサからの信号に基づいて、前記軸受を流れる軸電流を検出する軸電流検出部、を備え、前記センサは、前記軸受の軸方向における両端面のうち少なくともひとつの端面に対向して配置されていることを特徴とする。
【0008】
本開示の軸受状態検出方法は、磁界および電界の少なくとも一方を測定するセンサを、回転電機の回転子のシャフトを支持する磁化処理されていない軸受の軸方向における両端面のうち少なくともひとつの端面に対向させて配置する工程、および前記センサからの信号に基づいて、前記軸受を径方向に流れる軸電流を検出する工程、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本開示の軸受状態検出装置あるいは軸受状態検出方法によれば、軸受の軸方向端面にセンサを対向させたので、部品点数を増加することなく軸電流を高感度に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1にかかる軸受状態検出装置と軸受状態検出装置を装備した回転電機を、回転電機の軸を含む断面図とともに記載したブロック図である。
【
図2】
図2Aと
図2Bは、実施の形態1にかかる軸受状態検出装置あるいは軸受状態検出方法の検出対象である軸受のそれぞれ上面図と軸を含む断面図である。
【
図3】実施の形態1にかかる軸受状態検出装置の装備対象である回転電機の軸に垂直な断面図である。
【
図4】実施の形態1にかかる軸受状態検出装置の装備対象である回転電機とその駆動回路を示すブロック図である
【
図5】回転電機での軸電圧発生原理を示す等価回路図である。
【
図6】回転電機での軸電流経路の一例を示す軸を含む断面図である。
【
図7】回転電機に負荷を接続した際の軸電流経路の一例を示す軸を含む断面図である。
【
図8】実施の形態1にかかる軸受状態検出装置において、センサの配置例を示す軸を含む部分拡大断面図である。
【
図9】
図9Aと
図9Bそれぞれは、実施の形態1にかかる軸受状態検出装置の検出対象である軸受に導体のシール板が設けられた際の、軸受の上面図と、軸を含む部分断面図である。
【
図10】実施の形態1にかかる軸受状態検出装置において、センサの他の配置例を示す軸を含む部分拡大断面図である。
【
図11】実施の形態1にかかる軸受状態検出装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図12】実施の形態2にかかる軸受状態検出装置と軸受状態検出装置を装備した回転電機を、回転電機の軸を含む断面図とともに記載したブロック図である。
【
図13】実施の形態3にかかる軸受状態検出装置と軸受状態検出装置を装備した回転電機を、回転電機の軸を含む断面図とともに記載したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1~
図9は、実施の形態1にかかる軸受状態検出装置と軸受状態検出装置を装備した回転電機の構成、および軸受状態検出方法について説明するためのものであり、
図1は軸受状態検出装置と軸受状態検出装置を装備した回転電機を、回転電機の軸を含む断面図とともに記載したブロック図、
図2Aは検出対象である軸受の軸方向を上下方向とした場合の上面図、
図2Bは軸を含む
図2AのB-B線による断面図である。
【0012】
また、
図3は軸受状態検出装置の装備対象である回転電機の軸に垂直な
図1のA-A線による断面図、
図4は軸受状態検出装置の装備対象である回転電機と回転電機の駆動回路を示すブロック図、
図5は回転電機での軸電圧発生原理を示す等価回路図である。
【0013】
図6は回転電機での軸電流経路の一例を示す軸を含む
図1に対応する断面図、
図7は回転電機であるモータに負荷を接続した際の軸電流経路の一例を示す軸を含む断面図である。また、
図8は軸受状態検出装置において、軸受に対するセンサの配置例を示す軸を含む
図6および
図7の一部を拡大した部分拡大断面図、
図9Aは、軸受に導体のシール板が設けられた際の好ましい形態を示す上面図、
図9Bは
図9AのC-C線に対応する軸を含む模式的な断面図である。
図9Aと
図9Bは、軸受に導体のシール板が設けられた際の、それぞれシール板の好ましい2つの形態を示す
図2Bに対応する模式的な断面図である。また、
図10はセンサの他の配置例を示す軸を含む
図8に対応する部分拡大断面図である。
【0014】
実施の形態1にかかる軸受状態検出装置200は、
図1に示すように、回転電機100の回転子10を回転自在に支持する軸受20Aに流れる軸電流を検出するものである。ここで、軸受状態検出装置200の詳細な説明の前に、検出対象である軸受20(2つの軸受20A、20Bを区別しない場合、軸受20と称する。)の構造について説明する。
【0015】
軸受20は
図2A、
図2Bに示すように内輪21、転動体である複数の剛体球22、および外輪23を有し、複数の剛体球22は内輪21と外輪23との間に装填される。軸受20は円筒形状であり、外周面20fo、内周面20fi、軸方向(軸Xrに沿った方向)の両端に一対の端面20feを有し、内周面20fiは回転電機100のシャフト12に密着固定され、軸Xrを中心に複数の剛体球22が転動する。また、内輪21と外輪23との間に充填された図示しない潤滑油とともに、複数の剛体球22が転がることにより、摩擦が少ない状態で転動する。
【0016】
このとき、内輪21と剛体球22の間、および剛体球22と外輪23の間には絶縁体である潤滑油による油膜が形成される。なお、本実施の形態では剛体球22をボールとした転がり軸受としているがこの限りではなく、円筒ころ、針状ころなど他の転動体を用いてもよい。また、滑り軸受など転がり軸受以外の軸受を用いてもよい。
【0017】
上述した軸受20の構成を前提として、回転電機である回転電機100、および軸受状態検出装置200の構成について、
図1に
図3を加えて説明する。
図1および
図3に描画する回転電機100は、いわゆるブラシレスモータの構成をとる。回転電機100は、筐体40と、固定子30と、固定子30の径方向内側に配置された回転子10と、筐体40に固定され、回転子10を回転自在に支持する軸受20A、20Bを有する。
【0018】
軸受20それぞれの端面20feのうち、筐体40の内側を向く方を内端面20fei、外側を向く方を外端面20fexと称する。軸受状態検出装置200は軸受20の端面20feに対向させるセンサ50と、伝達部200wを介してセンサ50からの信号を受信し、軸電流の有無を検出する軸電流検出部70とを有するが、詳細の前に、回転電機100の説明を行う。
【0019】
固定子30は、固定子鉄心31と、固定子巻線32とで構成される。固定子鉄心31は、円環状のコアバック部31bと、コアバック部31bの内周面側から径方向の内側に向けて延びたティース部31tと、ティース部31tの先端から周方向に突出する鍔部31gとを備える。径方向とは、軸Xrを原点とし軸Xrに垂直で放射状に向かう方向を指し、周方向とは軸Xrを原点とする同心円の円周に沿った方向を指している。
【0020】
固定子鉄心31は、例えば、電磁鋼板の薄板を軸方向に積層して、一体化することで得られる。固定子巻線32はティース部31tに巻回され、隣接するティース部31t間に形成されたスロット部31sに収納される。固定子巻線32のうち、固定子鉄心31の最外層から軸方向に突出した部位をコイルエンド部と称する。固定子巻線32の巻回方式としては、固定子巻線32が各々のティース部31tに巻回される集中巻と呼ばれる巻回方式と、複数のティース部31tにまたがって巻回される分布巻と呼ばれる巻回方式がある。いずれの巻回方式であっても、後述する軸電流を高感度に検出するとの効果は同様に得られる。
【0021】
筐体40はハウジング41と、ブラケット42A、42Bとで構成される。ハウジング41は円筒形状を有しており、ハウジング41の内周面と固定子鉄心31のコアバック部31bの外周面とが向き合う形で、互いに一体に固定される。ハウジング41と固定子鉄心31のコアバック部31bとは、電気的に導通している。
【0022】
ハウジング41の両端、すなわち負荷接続側と負荷非接続側の各開口部にはそれぞれブラケット42A、42Bがボルト等で締結される。またブラケット42A、42Bはそれぞれ軸受20A、20Bの外輪23の外周面に固定されている。これら一体化したハウジング41、ブラケット42A、42Bは、回転電機100の筐体40として、その内部に回転子10と、軸受20と、固定子30を収容する。
【0023】
回転子10は、回転子鉄心11と、回転子鉄心11の外周に近い側に埋め込まれた複数の永久磁石13と、回転子鉄心11の径方向の中心を貫く空孔に固着されたシャフト12とを有する。回転子鉄心11は、例えば、電磁鋼板の薄板を軸方向に積層して、一体形成することで得られる。シャフト12は、その負荷接続側(
図1左側)と負荷非接続側(
図2右側)のそれぞれが軸受20A、20Bの内輪21(内周面20fi)に固定され、軸受20A、20Bの外周面20foが筐体40に固定されることで、筐体40に対して、回転自在に支持される。
【0024】
つぎに、回転電機100を駆動する駆動回路500の構成について
図4を用いて説明する。駆動回路500は、電源部501、電力変換回路502、それらを繋ぐ配線503、および電力変換回路502と回転電機100とを繋ぐ配線504とで構成している。電源部501は、ブラシレスモータである回転電機100を駆動するのに必要な電力を供給する直流電源である。直流電源として、例えばリチウムイオンバッテリ、ニッケル水素電池、鉛蓄電池等の二次電池を用いることができる。
【0025】
電力変換回路502は、半導体スイッチング素子とそれを駆動する回路によって構成される。スイッチング素子は、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)等を用いることができる。電力変換回路502内では、コンバータ回路が構成され、電源部501から配線503を介して供給される直流電圧を所望の電圧に昇圧または降圧した直流電力に調整する。
【0026】
所望の電圧に調整された直流電力は、コンバータ回路とは別に構成されたインバータ回路に用いられる半導体スイッチング素子のオン時間とオフ時間の比を調整することによって、回転電機100の駆動に必要な3相交流電流が作られる。この3相交流電流が配線504を介して回転電機100に供給される。すなわち、電力変換回路502はいわゆるコンバータ回路とインバータ回路、またはそのいずれかとして機能する。また、半導体スイッチング素子のスイッチング動作によって発生した高周波ノイズを電源部501側に漏洩させないために、電力変換回路502には必要に応じてインダクタおよびキャパシタで構成したノイズフィルタが設けられる。
【0027】
なお、本実施の形態では、電源部501に直流電源を用いた構成を示したが、電源部501は、直流電源である必要はなく、交流電源を用いてもよい。この場合、電力変換回路502には、交流電圧を入力とし、異なる電圧の直流電圧に変換する整流回路をコンバータ回路に代えて備えるようにすればよい。
【0028】
ここで、電力変換回路502によって駆動される回転電機100において、軸電圧V2が発生する原理について、
図5の等価回路を用いて説明する。なお、ここでの軸電圧V2とは、筐体40の電位を基準として測定されたシャフト12の電圧として定義する。
図5において、G点は筐体40の電位を表し、N点は固定子巻線32の中性点Nの電位を表し、S点はシャフト12の電位を表す。N点とG点との間の電位差となる電圧V1は、回転電機100の中性点Nの電圧を表し、S点とG点との間の電位差を回転電機100の軸電圧V2と表す。また、C1は固定子巻線32と回転子10との間の浮遊容量を表し、C2は回転子10と筐体40との間の浮遊容量を表している。
【0029】
回転電機100を駆動するために、電力変換回路502に含まれる半導体スイッチング素子群はPWM(Pulse Width Modulation)制御に基づきキャリア周波数fcでスイッチング動作を行う。このとき中性点Nの電圧V1の大きさもキャリア周波数fcの周期で階段状に時間変動する。筐体40と固定子巻線32との間に発生した中性点Nの電圧V1の変動が、回転電機100の内部に分布する浮遊容量C1と浮遊容量によって分圧されることで、シャフト12には筐体40に対して有限の電位差、すなわち軸電圧V2が誘起される。
【0030】
浮遊容量Cの周波数fにおけるインピーダンスZは式(1)のように表すことができる。
Z(C)=1/(2πfC) ・・・(1)
したがって、筐体40とシャフト12との間に生じる軸電圧V2は式(2)で表すことができる。
V2={Z(C2)/(Z(C1)+Z(C2))}×V1
={C1/(C1+C2)}×V1 ・・・(2)
【0031】
つぎに、電力変換回路502によって駆動される回転電機100において、軸電流が発生する原理と、その伝搬経路の一例について
図6を用いて説明する。軸電圧V2が軸受20の絶縁破壊電圧を超えた場合、あるいは軸受20の低速回転、あるいは異物の混入により外輪23と内輪21に対して剛体球22が接触するといった絶縁破壊が起こると、回転電機100、軸受20の浮遊容量に充電された電荷が放電し、軸電流I1が流れる。
【0032】
軸電流I1は中性点電圧V1の変動に起因して発生しており、固定子巻線32から、回転子10、軸受20A、20B、筐体40の経路で伝搬し、筐体電位(G点)と同電位となる回転電機100の外部へ流れ込む。回転電機100の浮遊容量は無数に存在するため、軸電流の経路は、軸電流I1で示したもの以外にも複数存在するが、軸電流が発生する際は軸受20の絶縁破壊を伴うため、いずれの経路であっても、軸電流は複数の軸受20の少なくとも一方を伝搬経路に含む。
【0033】
なお、本実施の形態では、中性点Nの電圧V1の変動に起因して発生する軸電流I1の伝搬経路の一例を示したがこの限りではない。例えば、摩擦帯電による軸受20の絶縁破壊に起因する軸電流、磁束分布の非対称性に起因する軸電圧V2に起因する軸電流、といった他の現象に起因して発生する軸電流に対しても軸受状態検出装置200は有効である。また、本実施の形態では、軸電流I1が筐体電位と同電位の回転電機100の外部へ流れ込む伝搬経路の一例を示したがこの限りではない。例えば後述する
図10に示すような回転電機100の内部を循環する伝搬経路となる場合においても、軸受状態検出装置200は有効である。
【0034】
電力変換回路502によって駆動される回転電機100において、軸電流I1の伝搬経路の更なる一例について
図7を用いて説明する。負荷装置900は、
図1で説明した回転電機100の負荷として駆動され、負荷装置接続部400を介して接続されている。負荷装置900は、シャフト912と、軸受920と、筐体940を構成要素の一部に含む。
【0035】
筐体940はハウジング941、ブラケット942Aを構成要素の一部に含む。軸受920は、外周面がブラケット942Aに固定され、内周面がシャフト912に固定される。回転電機100のシャフト12と負荷装置900のシャフト912は、負荷装置接続部400を介して電気的・機械的に接続されている。このような構成において、
図6で説明した中性点Nの電圧V1の変動に起因して発生する軸電流は、回転電機100の軸受20を伝搬する軸電流I1と、負荷装置900の軸受920を伝搬する軸電流I2に分流する。
【0036】
つぎに、センサ50と軸電流検出部70の構成について、
図7を用いて説明する。センサ50は軸受20Aの外端面20fexと対向する位置に配置され、軸受20Aを流れる軸電流I1に起因して発生する磁界の変化を測定する磁界センサである。軸電流検出部70は、センサ50で測定された信号を軸電流検出部70へ伝達する伝達部200wを介して接続される。なお本実施の形態では、伝達部200wを電気ケーブル、光ファイバのような有線の形式で描画しているがこの限りではなく、無線での信号伝達手段を含めてもよい。
【0037】
軸電流検出部70はセンサ50で測定された信号から軸電流(軸受状態)を検出する。軸受状態の一例として、軸電流の発生タイミングの検知、軸電流値の算出、軸電流の発生回数と頻度、電流値の情報に基づく軸受の状態監視、あるいは異常診断などの機能等が挙げられる。本実施の形態では軸電流検出部70の機能の一例を示したが、本開示の技術範囲は軸電流検出部70の機能によって制限されない。
【0038】
つづいて、センサ50の配置について
図8を用いて説明する。センサ50は軸受20Aを径方向に伝搬する軸電流I1に起因して発生する磁束φ1を検出する。センサ50は軸受20Aの外端面20fexと対向する位置に配置されるため、磁束φ1の効率的な検出が可能である。また、磁束φ1の検出感度向上の観点から、センサ50は軸受20Aの外端面20fexに近接し、軸受20Aの径方向に流れる電流に対する磁界に最大感度を有するように配置されることが望ましい。
【0039】
ここで、端面20feは、軸受20の剛体球22および潤滑剤を保護・密封するために、金属プレートのような導体の、あるいはゴムシールをはじめとする非導体のシール板で覆われている場合がある。磁束φ1の検出感度向上の観点から、軸受20のセンサ50と対向する端面20feとの間には、導体が介在しないようにすることが望ましい。
【0040】
また、端面20feに金属プレートのシール板25が設けられる場合、
図9A、
図9Bに示すように、シール板25が軸受20の内輪21、外輪23の少なくとも一方と非接触となる、つまり内輪21と外輪23間を短絡しないように構成する。図では内輪21とシール板25との間に隙間Spを設けた例を示すが、内輪21とシール板25との間に絶縁材を介在させるようにしてもよい。そして、上述したセンサ50と端面20feとの間に導体を介在させない構成として、センサ50の検知エリア50dと端面20feとの間が開口するように開口部25aを設ければよい。なお、シール板25が非導体の場合は、開口部25aを設けた場合と同様の効果を奏する。
【0041】
先に述べたとおり、軸電流の伝搬経路は複数存在するが、いずれの経路とも複数の軸受20A、20Bの少なくとも一方を伝搬経路に含む。センサ50は軸受20の端面20feに対向する位置に配置されるため、軸電流が有する複数の伝搬経路のうちのいずれに対しても効率的な検出が可能である。
【0042】
なお、本実施の形態ではセンサ50を磁界センサとしているがこの限りではなく、軸電流に起因して発生する電界の変化を測定する電界センサとしてもよく、センサ50では、軸電流に起因する磁界・電界の少なくとも一方を測定すればよい。また、本実施の形態ではセンサ50を軸受20の外端面20fexと対向する位置に配置しているがこの限りではなく、内端面20feiと対向配置させたり、外端面20fexと内端面20feiそれぞれに対して対向配置させたりしてもよい。さらに本実施の形態では、センサ50を負荷接続側の軸受20Aに対して配置しているがこの限りではなく、負荷非接続側の軸受20Bに対して配置したり、複数の軸受20に対して配置したりしてもよい。
【0043】
また、センサ50は、ある方向の磁束を検知するセンサ素子だけではなく、ある方向に対して例えば45°のように傾きを有する方向の磁束を検知する別のセンサ素子を備えるようにしてもよい。とくに、ある方向に対して直交する磁束を検知する別のセンサを備えた場合、
図7と
図8に示すように、一のセンサ素子の検知エリアが設けられた面を軸受20の端面20feと対向するとともに、他のセンサ素子の検知エリアが設けられた面をシャフト12の外周面に対向するように配置してもよい。このような構成とすることで、センサ50は軸受20を径方向に伝搬する軸電流に起因して発生する磁束φ1に加え、シャフト12を軸方向に伝搬する軸電流に起因して発生する磁束φ2も検出することができ、検出感度をさらに向上することができる。
【0044】
その際、磁束φ2の検出感度向上の観点から、センサ50はシャフト12の外周面に近接して配置され、シャフト12を軸方向に流れる電流に対する磁界に他のセンサ素子が最大感度を有するように配置されることが望ましい。つまり、センサ50は軸受20を径方向に流れる電流に対する磁界と、シャフト12の軸方向に流れる電流に対する磁界の双方に最大感度を有するように配置されることで、検出感度の更なる向上が可能である。
【0045】
なお、本実施の形態では磁束φ2を発生させる軸電流の一例として、シャフト12を流れる軸電流のうち、負荷装置900の筐体940へ伝搬する軸電流I2に対してセンサ50を配置したがこの限りではない。例えば、
図10に示すように回転電機100の筐体40へ伝搬する軸電流I1に対してセンサ50を配置してもよい。
【0046】
前述のとおり、センサ50は軸電流を測定することで軸受状態を検出する機能を有するが、その他の信号を検出する機能を有していてもよい。一例として、レゾルバ、エンコーダといった磁気式の回転角センサが挙げられる。一般的に、回転角センサは負荷非接続側の軸受20に近接して配置される。このように、センサ50が回転電機100の回転角検出機能を備えることでセンサ部品の削減が可能となる。
【0047】
つまり、センサ50を軸電流の発生個所である軸受20の端面20feに対向する位置に配置することで、部品点数を増加することなく軸電流の検出感度が向上し、軸受状態をより高精度に検出することができる。
【0048】
なお、軸電流検出部70のように演算を実行する部分は、
図11に示すように、プロセッサ701と記憶装置702を備えた一つのハードウェア700によって構成することが考えられる。記憶装置702は、図示していないが、ランダムアクセスメモリ等の揮発性記憶装置と、フラッシュメモリ等の不揮発性の補助記憶装置とを具備する。また、フラッシュメモリの代わりにハードディスクの補助記憶装置を具備してもよい。プロセッサ701は、記憶装置702から入力されたプログラムを実行する。この場合、補助記憶装置から揮発性記憶装置を介してプロセッサ701にプログラムが入力される。また、プロセッサ701は、演算結果等のデータを記憶装置702の揮発性記憶装置に出力してもよいし、揮発性記憶装置を介して補助記憶装置にデータを保存してもよい。
【0049】
実施の形態2.
上記実施の形態1においては、ひとつの回転電機に対してひとつの軸受状態検出装置を装備した例について説明した。本実施の形態2では、ひとつの回転電機に対して2つの軸受状態検出装置を装備した例について説明する。
図12は実施の形態2にかかる軸受状態検出装置の構成について説明するための
図1に対応するブロック図である。なお、実施の形態2においても、軸受を含む回転電機、駆動回路等の構成と動作については実施の形態1と同様であり、同様部分の説明を省略するとともに、実施の形態1の
図2Aから
図5を援用する。
【0050】
実施の形態2にかかる軸受状態検出装置200Tは、
図12に示すように、軸受20Aの軸電流を検出する第一軸受状態検出装置200Aに加え、軸受20Bの軸電流を検出する第二軸受状態検出装置200B、および伝搬経路判別部60を備えたものである。第一軸受状態検出装置200Aも、第二軸受状態検出装置200Bも、それぞれ実施の形態1の軸受状態検出装置200として説明したものと同じ構成であるが、第一軸受状態検出装置200Aを構成するものは、符号の末尾に「A」を、第二軸受状態検出装置200Bを構成するものは、符号の末尾に「B」を付加して区別している。
【0051】
第二軸受状態検出装置200Bは、軸受20Bの外端面20fexに対向配置したセンサ50Bとセンサ50Bからの出力された信号に基づいて、軸電流を検出する軸電流検出部70Bを有している。このような構造でも、実施の形態1に示す軸受状態検出装置200と同様の効果を得ることができる。センサ50Bは軸受20Bの外端面20fexと対向する位置に配置され、軸受20Bを流れる軸電流に起因して発生する磁界を測定する磁界センサである。
【0052】
そして、軸電流検出部70Aからの出力と軸電流検出部70Bからの出力に基づき、軸電流の伝搬経路を判別する伝搬経路判別部60を備えている。つまり、第一軸受状態検出装置200Aと第二軸受状態検出装置200Bと伝搬経路判別部60とで一つの軸受状態検出装置200Tを構築している。なお、本実施の形態2では軸電流検出部70Aと軸電流検出部70を分割して表現しているが、この限りではなく、伝搬経路判別部を含む複数の演算処理を行う部分の少なくとも一部の機能が統合されていてもよい。
【0053】
ここで、
図6で説明した軸電流I1と、
図12に示す軸電流I3とでは、電流の伝搬経路が異なる。
図6に示す負荷接続側の軸受20Aと負荷非接続側の軸受20Bに流れる軸電流は、ともに内輪21側から外輪23側に流れる。すなわち、負荷接続側の軸受20Aと負荷非接続側の軸受20Bは同時に絶縁破壊が起きている。このとき、軸受20A側に設けたセンサ50Aと、軸受20B側に設けたセンサ50Bの検出信号の符号は同符号となる。
【0054】
これに対して、
図12に示す負荷接続側の軸受20Aと負荷非接続側の軸受20Bに流れる軸電流は互いに逆向きに流れる。このような軸電流の伝搬経路は、例えば異物などの影響により、負荷接続側の軸受20Aと負荷非接続側の軸受20Bのどちらか一方で絶縁破壊が起きている場合に発生する。
【0055】
一例として、負荷接続側の軸受20Aで絶縁破壊が起きた場合を考えると、軸電流I3はシャフト12、負荷接続側の軸受20A、筐体40、負荷非接続側の軸受20Bとを結んだ経路で伝搬する。このとき、軸受20A側に設けたセンサ50Bと、軸受20B側に設けたセンサ50Bの検出信号の符号は異符号となる。このように、回転電機100がシャフト12を支持する複数の軸受20A、20Bにそれぞれセンサ50A、50Bを備えているので、複数のセンサ50それぞれの検出信号の処理結果から、伝搬経路判別部60は、軸電流の伝搬経路を判別することができる。
【0056】
さらに、実施の形態2の軸受状態検出装置200Tは、複数の軸受20A、20Bにそれぞれセンサ50A、センサ50Bを備えているので、複数の軸受20の状態監視と異常診断が可能となる。また、実施の形態2の軸受状態検出装置200Tは、実施の形態1の軸受状態検出装置200と同様に、部品点数を増加することなく軸電流の検出感度を向上し、軸受状態をより高精度に検出することができる。
【0057】
実施の形態3.
上記実施の形態1、2においては、軸電流に伴う磁界または電界を検知するセンサからの信号に基づいて軸受状態を検出する例について説明した。本実施の形態3では、さらに軸電圧の信号を加えて、軸受状態を検出する例について説明する。
図13は実施の形態3にかかる軸受状態検出装置の構成について説明するための
図1に対応するブロック図である。なお、実施の形態3においても、軸受を含む回転電機、駆動回路等の構成と動作については実施の形態1と同様であり、同様部分の説明を省略するとともに、実施の形態1の
図2Aから
図5を援用する。
【0058】
実施の形態3にかかる軸受状態検出装置200は、
図13に示すように、
図1の軸受状態検出装置200に対し、軸電圧V2を測定する電圧センサ80を備え、軸電流検出部70は、センサ50と電圧センサ80の信号に基づいて、軸電流を検出するようにした。
【0059】
電圧センサ80は、シャフト12と筐体40間の電圧、つまり回転電機100の軸電圧V2を測定する。このような構造でも、実施の形態1および実施の形態2に示す軸受状態検出装置200と同様の効果を得ることができる。電圧センサ80のシャフト12への接続箇所は、ブラシ、あるいは導電性マイクロファイバーといった、シャフト12のような回転体から検出信号を伝達するための部材が用いられる。
【0060】
このように、軸受20における内輪21と外輪23の間の電圧を検出する電圧センサ80で測定された信号を軸電流検出部70へ伝達するようにしている。そのため、軸電流だけでなく、軸電圧V2を測定することができ、軸電流と軸電圧V2をともに計測して相関関係を導き出し、導き出した相関関係を用いて、より高精度な複数軸受の状態監視、および異常診断が可能となる。導き出した相関関係のデータは、軸電流検出部70に設けた図示しないデータベースに保存するようにしてもよい。また、実施の形態3の軸受状態検出装置200は、実施の形態1および実施の形態2の軸受状態検出装置200と同様に、部品点数を増加することなく軸電流の検出感度を向上し、軸受状態をより高精度に検出することができる。
【0061】
なお、本開示は、様々な例示的な実施の形態および実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、および機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。したがって、例示されていない無数の変形例が、この明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【0062】
以上のように、本開示の軸受状態検出装置200によれば、円筒状をなして内周面20fiで回転電機100の回転子10のシャフト12を支持する軸受20まわりの磁界および電界の少なくとも一方を測定するセンサ50、およびセンサ50からの信号に基づいて、軸受20を流れる軸電流を検出する軸電流検出部70、を備え、センサ50は、軸受20の軸方向における両端面のうち少なくともひとつの端面20feに対向して配置されているようにした。これにより、部品点数を増加させることなく、回転電機100における軸電流を高感度に検出することができる。
【0063】
センサ50は、軸受20を径方向に流れる電流に起因する磁界および電界の少なくとも一方に対してセンサ素子が最大感度を有するように配置されているようにすれば、より確実に軸電流を検出することができる。
【0064】
センサ50は、シャフト12の外周面にも対向して配置されているようにすれば、シャフト12を軸方向に流れる電流も検出することができる。
【0065】
その際、センサ50は、シャフト12を軸方向に流れる電流に起因する磁界および電界の少なくとも一方に対して(径方向に流れる電流に起因する磁界および電界の少なくとも一方に対して最大感度となる上述したセンサ素子とは検出対象が直交する関係となる)第二センサ素子が最大感度を有するように配置されているようにすれば、シャフト12を軸方向に流れる電流をより確実に検出することができる。
【0066】
またセンサ50は、回転子10の回転角度を検出する機能を有しているようにすれば、部品点数を削減できる。
【0067】
センサ50A、センサ50Bは、シャフト12を支持する2つの軸受20A、20Bそれぞれに対応して設けられ、軸電流検出部70A、軸電流検出部70Bが検出した2つの軸受20それぞれの軸電流の向きに応じて軸電流の伝搬経路を判定する伝搬経路判別部60、を備えるようにすれば、軸受20の状態監視と異常診断が容易になる。
【0068】
軸受20を保持する回転電機100の筐体40とシャフト12との間の電圧(軸電圧V2)を測定する電圧センサ80を備え、軸電流検出部70は、センサ50からの信号と電圧センサ80からの信号に基づいて、軸受20を流れる軸電流を検出するようにすれば、軸電流と軸電圧V2の相関をとることで、より高精度に軸受20の状態監視と異常診断ができる。その際、上述した相関関係を用いて軸電流を検出することが望ましい。
【0069】
また、本開示の回転電機100によれば、回転子10、回転子10の外周面に対して間隔をあけて同心配置された固定子30、および軸受20と固定子30を径方向の外側から保持するとともに、固定子30と回転子10を内部に収容する筐体40、を備え、上述した軸受状態検出装置200を装備すれば、軸受20の状態を容易に診断可能となり、信頼性が高くなる。
【0070】
また、軸受20のセンサ50が対向する端面20feは、内輪21と外輪23の間に充填された潤滑剤を保護するための導電体のシール板25で覆われており、シール板25は、内輪21と外輪23のうちの一方と絶縁し、かつセンサ50の検知面と対向する領域が開口していれば、磁束の検出感度が向上する。
【0071】
以上のように、本開示の軸受状態検出方法によれば、磁界および電界の少なくとも一方を測定するセンサ50を、回転電機100の回転子10のシャフト12を支持する軸受20の軸方向における両端面のうち少なくともひとつの端面20feに対向させて配置する工程、およびセンサ50からの信号に基づいて、軸受20を径方向に流れる軸電流を検出する工程、を含むようにした。これにより、部品点数を増加させることなく、回転電機100における軸電流を高感度に検出することができる。
【符号の説明】
【0072】
10:回転子、 100:回転電機、 12:シャフト、 20:軸受、 200,200T:軸受状態検出装置、 20fe:端面、 25:シール板、 30:固定子、 40:筐体、 50:センサ、 60:伝搬経路判別部、 70:軸電流検出部、 80:電圧センサ、 500:駆動回路、 501:電源部、 502:電力変換回路、 900:負荷装置、 912:シャフト、 I1,I2,I3:軸電流、 V2:軸電圧、 Xr:軸、 φ1,φ2:磁束。
【要約】
本開示の軸受状態検出装置(200)は、円筒状をなして内周面で回転電機(100)の回転子(10)のシャフト(12)を支持する軸受(20)まわりの磁界および電界の少なくとも一方を測定するセンサ(50)、およびセンサ(50)からの信号に基づいて、軸受(20)を流れる軸電流を検出する軸電流検出部(70)、を備え、センサ(50)は、軸受(20)の軸方向における両端面のうち少なくともひとつの端面(20fe)に対向して配置されているようにした。