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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-23
(45)【発行日】2025-06-02
(54)【発明の名称】判定装置、判定方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20250526BHJP
   A61B 6/50 20240101ALI20250526BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20250526BHJP
   G06T 7/62 20170101ALI20250526BHJP
【FI】
A61B6/03 560J
A61B6/50 500Z
A61B6/03 570Z
G06T7/00 612
G06T7/62
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021144117
(22)【出願日】2021-09-03
(65)【公開番号】P2023037398
(43)【公開日】2023-03-15
【審査請求日】2024-07-02
(73)【特許権者】
【識別番号】504224153
【氏名又は名称】国立大学法人 宮崎大学
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】内田 泰介
(72)【発明者】
【氏名】山口 秀樹
【審査官】竹村 美雪
(56)【参考文献】
【文献】DELIVANIS, Danae A. et al,Impact of hypercortisolism on skeletal muscle mass and adipose tissue mass in patients with adrenal adenomas,CLINICAL ENDOCRINOLOGY,2018年02月,Volume 88, Issue 2,pp.209-216,DOI: 10.1111/cen.13512
【文献】山田 穂高 他,著しい筋力低下を認めたACTH非依存性両側副腎皮質大結節性過形成(AIMAH)の一例,自治医科大学紀要,2012年,Vol.35,pp.101-105,https://mol.medicalonline.jp/library/journal/download?GoodsID=dt6jichi/2012/003500/016&name=0101-0105j
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/58
G06T 7/00-7/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の腰部CT画像を取得する画像取得部と、
前記腰部CT画像から腸腰筋面積と、内臓脂肪面積とを算出する面積算出部と、
算出された前記腸腰筋面積と前記内臓脂肪面積との比であるIVRを算出するIVR算出部と、
算出された前記IVRに基づいて前記被験者のクッシング症候群の可能性を判定する判定部と、
を備える判定装置。
【請求項2】
前記腰部CT画像とは、第三腰椎をスライス面とするCT画像である、請求項1に記載の判定装置。
【請求項3】
腸腰筋には、大腰筋が含まれ、
前記面積算出部は、大腰筋の面積を前記腸腰筋面積として算出する、請求項1又は請求項2に記載の判定装置。
【請求項4】
前記被験者の身長を特定する情報する身長情報取得部と、
算出された前記腸腰筋面積と、取得された前記身長を特定する情報とから、前記腸腰筋面積と前記身長との比であるPMIを算出するPMI算出部と、
をさらに備え、
前記判定部は、算出された前記IVRと、前記PMIとに基づいて前記被験者のクッシング症候群の可能性を判定する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の判定装置。
【請求項5】
前記被験者の性別を特定する情報を取得する性別情報取得部
をさらに備え、
前記判定部は、取得した前記被験者の性別を特定する前記情報に基づいてクッシング症候群の可能性を判定する閾値を取得し、取得した前記閾値と算出された前記IVRとに基づいて前記被験者のクッシング症候群の可能性を判定する、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の判定装置。
【請求項6】
前記被験者の年齢を特定する情報を取得する年齢情報取得部
をさらに備え、
前記判定部は、取得した前記被験者の年齢を特定する前記情報に基づいてクッシング症候群の可能性を判定する閾値を取得し、取得した前記閾値と算出された前記IVRとに基づいて前記被験者のクッシング症候群の可能性を判定する、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の判定装置。
【請求項7】
前記被験者の好酸球数及び好中球数を特定する情報を取得する白血球情報取得部と、
前記好酸球数及び好中球数を特定する情報からENRを算出するENR算出部と、
をさらに備え、
前記判定部は、算出された前記ENRと、前記IVRとに基づいて前記被験者のクッシング症候群の可能性を判定する、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の判定装置。
【請求項8】
コンピュータが実行する判定方法であって、
被験者の腰部CT画像を取得するステップと、
前記腰部CT画像から腸腰筋面積と、内臓脂肪面積とを算出するステップと、
算出された前記腸腰筋面積と前記内臓脂肪面積との比であるIVRを算出するステップと、
算出された前記IVRに基づいて前記被験者のクッシング症候群の可能性を判定するステップと
を有する判定方法。
【請求項9】
コンピュータに、
被験者の腰部CT画像を取得するステップと、
前記腰部CT画像から腸腰筋面積と、内臓脂肪面積とを算出するステップと、
算出された前記腸腰筋面積と前記内臓脂肪面積との比であるIVRを算出するステップと、
算出された前記IVRに基づいて前記被験者のクッシング症候群の可能性を判定するステップと
を実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、判定装置、判定方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
副腎皮質ホルモン(いわゆるステロイド)が体内に過剰となる病態はクッシング症候群と呼ばれる。副腎や下垂体の腫瘍から副腎皮質ホルモンが過剰に分泌される状態の他、自己免疫疾患等の治療に用いられるステロイド薬が過剰になった場合にもクッシング症候群と同様の病態を示す。
【0003】
クッシング症候群では、脂肪が増加し、筋肉が減少することが知られている。さらに、クッシング症候群では、脂肪の中でも内臓脂肪が増加しやすいことが知られている。
クッシング症候群と内臓脂肪量との関係に関して、コンピュータ断層撮影(CT: Computed tomography)でクッシング症候群(CS: Cushing’s syndrome)の腹部脂肪分布が検討されている。
検討結果によれば、内臓脂肪量と総脂肪量との比、内臓脂肪量と皮下脂肪量との比は、クッシング症候群と非機能性副腎腫瘍とで有意差がないことが知られている。総筋量(腹直筋、腹斜筋群、腸腰筋、腰方形筋、傍脊椎筋)はクッシング症候群で有意に少ないことが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
内臓脂肪量と皮下脂肪量との比がクッシング症候群で有意に上昇することが知られている(例えば、非特許文献2参照)。
また、クッシング症候群のCTでの補助診断法として、内臓脂肪面積と皮下脂肪面積との比が提唱されているが有用性については意見が分かれている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Danae A. Delivanis, Nicole M. Iniguez-Ariza, Muhammad H.Zeb,Michael R.Moynagh, Naoki Takahashi, Travis J. McKenzie, Melinda A. Thomas, Charalambos Gogos, William F Young, Irina Bancos, Venetsana Kyriazopoulou, “Impact of hypercortisolism on skeletal muscle mass and adipose tissue mass in patients with adrenal adenomas”, Clinical Endocrinology. 2018; 88:209-216.
【文献】A G Rockall, S A Sohaib, D Evans, G Kaltsas, A M Isidori, J P Monson, G M Besser, A B Grossman and R H Reznek, “Computed tomography assessment of fat distribution in male and female patients with Cushing’s syndrome”, European Journal of Endocrinology (2003) 149 561-567
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
クッシング症候群の診断のためには、血液、尿中の副腎皮質ホルモン過剰を示す必要がある。ただし、副腎皮質ホルモンはストレス下で容易に上昇するため、偽陽性が多く存在する。クッシング症候群の確定診断には入院安静下での負荷試験が必要であり、コスト面、患者負担の面からも敷居が高い。さらにホルモン検査は外注検査の場合には結果が分かるまでに一週間程度の期間を要する場合がある。
【0006】
本発明の目的は、腹部の画像データに基づいて、クッシング症候群の可能性を判定できる判定装置、判定方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態は、被験者の腰部CT画像を取得する画像取得部と、前記腰部CT画像から腸腰筋面積と、内臓脂肪面積とを算出する面積算出部と、算出された前記腸腰筋面積と前記内臓脂肪面積との比であるIVRを算出するIVR算出部と、算出された前記IVRに基づいて前記被験者のクッシング症候群の可能性を判定する判定部と、を備える判定装置である。
本発明の一実施形態は、前述の判定装置において、前記腰部CT画像とは、第三腰椎をスライス面とするCT画像である。
本発明の一実施形態は、前述の判定装置において、腸腰筋には、大腰筋が含まれ、前記面積算出部は、大腰筋の面積を前記腸腰筋面積として算出する。
本発明の一実施形態は、前述の判定装置において、前記被験者の身長を取得する身長情報取得部と、算出された前記腸腰筋面積と、取得された前記身長とから、前記腸腰筋面積と前記身長との比であるPMIを算出するPMI算出部と、をさらに備え、前記判定部は、算出された前記IVRと、前記PMIとに基づいて前記被験者のクッシング症候群の可能性を判定する。
本発明の一実施形態は、前述の判定装置において、前記被験者の性別を特定する情報を取得する性別情報取得部をさらに備え、前記判定部は、取得した前記被験者の性別を特定する前記情報に基づいてクッシング症候群の可能性を判定する閾値を取得し、取得した前記閾値に基づいて、算出された前記IVRに基づいて前記被験者のクッシング症候群の可能性を判定する。
本発明の一実施形態は、前述の判定装置において、前記被験者の年齢を特定する情報を取得する年齢情報取得部をさらに備え、前記判定部は、取得した前記被験者の年齢を特定する前記情報に基づいてクッシング症候群の可能性を判定する閾値を取得し、取得した前記閾値に基づいて、算出された前記IVRに基づいて前記被験者のクッシング症候群の可能性を判定する。
本発明の一実施形態は、前述の判定装置において、前記被験者の好酸球数及び好中球数を特定する情報を取得する白血球情報取得部と、前記好酸球数及び好中球数を特定する情報からENRを算出するENR算出部と、をさらに備え、前記判定部は、算出された前記ENRと、前記IVRとに基づいて前記被験者のクッシング症候群の可能性を判定する。
【0008】
本発明の一実施形態は、コンピュータが実行する判定方法であって、被験者の腰部CT画像を取得するステップと、前記腰部CT画像から腸腰筋面積と、内臓脂肪面積とを算出するステップと、算出された前記腸腰筋面積と前記内臓脂肪面積との比であるIVRを算出するステップと、算出された前記IVRに基づいて前記被験者のクッシング症候群の可能性を判定するステップとを有する判定方法である。
【0009】
本発明の一実施形態は、コンピュータに、被験者の腰部CT画像を取得するステップと、前記腰部CT画像から腸腰筋面積と、内臓脂肪面積とを算出するステップと、算出された前記腸腰筋面積と前記内臓脂肪面積との比であるIVRを算出するステップと、算出された前記IVRに基づいて前記被験者のクッシング症候群の可能性を判定するステップとを実行させる、プログラムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態によれば、腹部の画像データに基づいて、クッシング症候群の可能性を判定できる判定装置、判定方法及びプログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る判定装置の一例を示す図である。
図2】本実施形態に係る判定装置に入力される画像データの一例を示す図である。
図3】本実施形態に係る判定装置の動作の一例を示す図である。
図4A】受信者操作特性の例1を示す図である。
図4B】受信者操作特性の例2を示す図である。
図5】実施形態の変形例1に係る判定装置の一例を示す図である。
図6】実施形態の変形例1に係る判定装置の動作の一例を示す図である。
図7】実施形態の変形例2に係る判定装置の一例を示す図である。
図8】実施形態の変形例2に係る判定装置の動作の一例を示す図である。
図9】実施形態の変形例3に係る判定装置の一例を示す図である。
図10】実施形態の変形例3に係る判定装置の動作の一例を示す図である。
図11】実施形態の変形例4に係る判定装置の一例を示す図である。
図12】実施形態の変形例4に係る判定装置の動作の一例を示す図である。
図13】受信者操作特性の例3を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態に係る判定装置、判定方法及びプログラムを、図面を参照しつつ説明する。以下で説明する実施形態は一例に過ぎず、本発明が適用される実施形態は、以下の実施形態に限られない。
なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有するものは同一符号を用い、繰り返しの説明は省略する。
また、本願でいう「XXに基づく」とは、「少なくともXXに基づく」ことを意味し、XXに加えて別の要素に基づく場合も含む。また、「XXに基づく」とは、XXを直接に用いる場合に限定されず、XXに対して演算や加工が行われたものに基づく場合も含む。「XX」は、任意の要素(例えば、任意の情報)である。
【0013】
(実施形態)
(判定装置)
以下、本発明の実施形態に係る判定装置を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る判定装置の一例を示す図である。
実施形態に係る判定装置100は、被験者のクッシング症候群の可能性を判定する。判定装置100は、パーソナルコンピュータ、サーバ、スマートフォン、タブレットコンピュータ又は産業用コンピュータ等の装置によって実現される。判定装置100は、例えば、入力部102と、画像取得部104と、面積算出部106と、IVR算出部108と、判定部110と、出力部112と、記憶部114とを備える。
【0014】
入力部102は入力デバイスを備える。入力部102には、画像データが入力される。
画像取得部104は、入力部102に入力された画像データを取得する。画像データの一例は、被験者の腰部のコンピュータ断層撮影(CT: Computed Tomography)画像のデータである。
図2は、本実施形態に係る判定装置に入力される画像データの一例を示す図である。図2は、腰部CT画像の一例として、健常者における第三腰椎の高さをスライス面とするCT画像を示す。
腰部CT画像において「V-fat」で示される部分は内臓脂肪であり、その面積を内蔵脂肪面積と呼ぶ。腰部CT画像において「S-fat」で示される部分は皮下脂肪であり、その面積を皮下脂肪面積と呼ぶ。腰部CT画像において「Ip-M」で示される部分は腸腰筋であり、その面積を腸腰筋面積と呼ぶ。腰部CT画像において「Ps-M」で示される部分は傍脊柱筋であり、その面積を傍脊柱筋面積と呼ぶ。
【0015】
内臓脂肪は、胃、腸などの臓器のまわりにつく脂肪である。内臓脂肪面積は身体の断面積に占める脂肪の面積である。ここでは、内臓脂肪面積は第三腰椎の高さをスライス面とするCT画像に占める脂肪の面積である。
皮下脂肪は、下腹部・腰まわり・おしりなどの皮下につく脂肪である。皮下脂肪面積は身体の断面積に占める皮下脂肪の面積である。ここでは、皮下脂肪面積は第三腰椎の高さをスライス面とするCT画像に占める皮下脂肪の面積である。
腸腰筋面積は、腸骨筋と大腰筋との二つが関連している筋肉である。腸腰筋面積は身体の断面積に占める腸腰筋の面積である。ここでは、腸腰筋面積は第三腰椎の高さをスライス面とするCT画像に占める大腰筋の面積である。
クッシング症候群では、脂肪が増加し、筋肉が減少することが知られている。つまり、クッシング症候群では、内臓脂肪面積と皮下脂肪面積とが増加し、腸腰筋面積が減少する。さらに脂肪の中でも内臓脂肪が増加しやすいことが知られている。つまり、内臓脂肪面積が増加する。図1に戻り説明を続ける。
【0016】
面積算出部106は、画像取得部104が取得した画像データを取得する。面積算出部106は、取得した画像データに基づいて、腸腰筋面積と、内臓脂肪面積とを算出する。例えば、面積算出部106は、腸腰筋の部分のピクセル数を計数し、ピクセル数の計数結果に基づいて腸腰筋面積を算出してもよい。具体的には、面積算出部106は、腸腰筋の部分のピクセル数の計数結果を腸腰筋面積としてもよい。
例えば、面積算出部106は、内臓脂肪の部分のピクセル数を計数し、ピクセル数の計数結果に基づいて内臓脂肪面積を算出してもよい。具体的には、面積算出部106は、内臓脂肪の部分のピクセル数の計数結果を内臓脂肪面積としてもよい。
IVR算出部108は、面積算出部106が算出した腸腰筋面積と内臓脂肪面積とを取得し、取得した腸腰筋面積と内臓脂肪面積とに基づいて、IVRを算出する。具体的には、IVR算出部108は、腸腰筋面積と内臓脂肪面積との比(腸腰筋面積/内臓脂肪面積)を算出することによってIVRを算出する。
【0017】
判定部110は、IVR算出部108が算出したIVRを取得し、取得したIVRに基づいて被験者のクッシング症候群の可能性を判定する。具体的には、判定部110は、IVRがPMI閾値未満であるか否かを判定する。判定部110は、IVRがIVR判定閾値未満である場合にクッシング症候群の可能性が高いと判定し、IVRがIVR判定閾値以上である場合にクッシング症候群の可能性が低いと判定する。IVR判定閾値は、予め設定される。IVR判定閾値の一例は、3.5以上5未満である。
出力部112は、判定部110からクッシング症候群の可能性の判定結果を取得する。出力部112は、取得したクッシング症候群の可能性の判定結果を表示部(図示なし)に表示させてもよいし、音声で出力してもよい。
記憶部114は、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などにより実現される。記憶部114には、判定プログラム(アプリケーション)などのプログラムが記憶される。
【0018】
画像取得部104と、面積算出部106と、IVR算出部108と、判定部110と、出力部112との全部または一部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサが記憶部114に格納されたプログラムを実行することにより実現される機能部(以下、ソフトウェア機能部と称する)である。
なお、画像取得部104と、面積算出部106と、IVR算出部108と、判定部110と、出力部112との全部または一部は、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)などのハードウェアにより実現されてもよく、ソフトウェア機能部とハードウェアとの組み合わせによって実現されてもよい。
【0019】
(判定装置の動作)
図3は、本実施形態に係る判定装置の動作の一例を示す図である。
(ステップS1-1)
判定装置100において、入力部102には、被験者の画像データが入力される。画像取得部104は、入力部102に入力された被験者の画像データを取得する。
(ステップS2-1)
判定装置100において、面積算出部106は、画像取得部104が取得した被験者の画像データを取得する。面積算出部106は、取得した被験者の画像データに基づいて、腸腰筋面積と、内臓脂肪面積とを算出する。
【0020】
(ステップS3-1)
判定装置100において、IVR算出部108は、面積算出部106が算出した腸腰筋面積を特定する情報と内臓脂肪面積を特定する情報とを取得し、取得した腸腰筋面積を特定する情報と内臓脂肪面積を特定する情報とに基づいて、IVRを算出する。
(ステップS4-1)
判定装置100において、判定部110は、IVR算出部108が算出したIVRを取得し、取得したIVRに基づいて被験者のクッシング症候群の可能性を判定する。
(ステップS5-1)
判定装置100において、出力部112は、判定部110からクッシング症候群の可能性の判定結果を取得する。出力部112は、取得したクッシング症候群の可能性の判定結果を表示部(図示なし)に表示させてもよいし、音声で出力してもよい。
【0021】
本実施形態に係る判定装置100によれば、判定装置100は、被験者の腰部CT画像を取得する画像取得部104と、腰部CT画像から腸腰筋面積と、内臓脂肪面積とを算出する面積算出部106と、算出された腸腰筋面積と内臓脂肪面積との比であるIVRを算出するIVR算出部108と、算出されたIVRに基づいて被験者のクッシング症候群の可能性を判定する判定部110とを備える。
このように構成することによって、判定装置100は、IVRを算出し、算出したIVRに基づいて被験者のクッシング症候群の可能性を判定できる。このため、被験者は、入院安静下での負荷試験を行うことなく、短時間でクッシング症候群の可能性を知ることができる。
【0022】
ここで、IVRに基づいて被験者のクッシング症候群の可能性を判定する効果について説明する。
図4Aは、受信者操作特性の例1を示す図である。図4Aにおいて(A)はIVRの受信者操作特性(Receiver Operating Characteristic: ROC)の一例であり、(B)はPMIの受信者操作特定の一例である。
PMIは、腸腰筋指数であり、腸腰筋を身長の二乗で除算することによって算出される。つまり、PMIは、式(1)によって算出される。
腰筋指数=腸腰筋/身長^2 (1)
腰筋指数は、サルコペニアの指標に使用されている。
【0023】
図4Aの(A)と(B)とにおいて横軸は特異度(specificity)であり、縦軸は敏感度(sensitivity)である。特異度は陰性者を正しく陰性と判断する率であり、敏感度は陽性者を正しく陽性として捕捉する率である。検査が有効ならば、この曲線は45度の線から左上に離れる。離れれば離れるほど、検査として有効である。
図4Aの(A)と(B)とにおいて、縦軸が0.0から1.0の間のROC曲線の下にある領域の面積(AUC(Area Under Curve))を算出した。(A)のAUCは0.930であり、(B)のAUCは0.848である。
【0024】
図4Bは、受信者操作特性の例2を示す図である。図4Bにおいて(C)はV-fat/S-fat ratioの受信者操作特性の一例であり、(D)はIp-M/Ps-M ratioの受信者操作特定の一例である。
V-fat/S-fat ratioは、内臓脂肪面積と皮下脂肪面積との比である。V-fat/S-fat ratioは、クッシング症候群の診断補助として報告されている。
Ip-M/Ps-M ratioは、腸腰筋面積と傍脊柱筋面積との比である。傍脊柱筋は、脊柱起立筋と多裂筋で構成され、腰椎の保護と安定性に寄与する筋肉である。
【0025】
図4Bの(C)と(D)とにおいて横軸は特異度(specificity)であり、縦軸は敏感度(sensitivity)である。検査が有効ならば、この曲線は45度の線から左上に離れる。離れれば離れるほど、検査として有効である。
図4Bの(C)と(D)とにおいて、縦軸が0.0から1.0の間のROC曲線の下にある領域の面積(AUC)を算出した。(C)のAUCは0.760であり、(D)のAUCは0.749である。
図4Aの(A)と(B)と、図4Bの(C)と(D)とによれば、IVRのROCのAUCが、PMIのROCのAUCとV-fat/S-fat ratioのROCのAUCとIp-M/Ps-M ratioのROCのAUCと比較して最も大きいことが分かる。このため、IVRが、クッシング症候群の可能性を判定するために有効であることが分かる。
【0026】
また、判定装置100において、腰部CT画像とは、第三腰椎をスライス面とするCT画像である。
このように構成することによって、判定装置100は、第三腰椎をスライス面とする腰部CT画像から腸腰筋面積と内臓脂肪面積とを算出し、算出した腸腰筋面積と内臓脂肪面積との比であるIVRを算出できる。このため、第三腰椎をスライス面とする腰部CT画像以外を使用した場合と比較して、算出されたIVRに基づいて被験者のクッシング症候群の可能性を判定する精度を向上できる。
【0027】
また、判定装置100において、腸腰筋には、大腰筋が含まれ、面積算出部106は、大腰筋の面積を腸腰筋面積として算出する。
このように構成することによって、判定装置100は、第三腰椎をスライス面とする腰部CT画像から大腰筋の面積と内臓脂肪面積とを算出し、算出した大腰筋の面積と内臓脂肪面積との比であるIVRを算出できる。このため、大腰筋の面積以外を使用した場合と比較して、算出されたIVRに基づいて被験者のクッシング症候群の可能性を判定する精度を向上できる。
【0028】
(実施形態の変形例1)
図5は、実施形態の変形例1に係る判定装置の一例を示す図である。
実施形態の変形例に係る判定装置100aは、実施形態に係る判定装置100において、IVRに加えて、PMIに基づいて被験者のクッシング症候群の可能性を判定する。
判定装置100aは、パーソナルコンピュータ、サーバ、スマートフォン、タブレットコンピュータ又は産業用コンピュータ等の装置によって実現される。判定装置100aは、例えば、入力部102と、画像取得部104と、身長情報取得部105aと、面積算出部106と、PMI算出部107aと、IVR算出部108と、判定部110aと、出力部112と、記憶部114とを備える。
【0029】
入力部102は入力デバイスを備える。入力部102には、画像データに加え、被験者の身長を特定する情報が入力される。
身長情報取得部105aは、入力部102に入力された被験者の身長を特定する情報を取得する。
PMI算出部107aは、面積算出部106が算出した腸腰筋面積を特定する情報を取得し、身長情報取得部105aから身長を特定する情報を取得する。PMI算出部107aは、取得した腸腰筋面積を特定する情報と身長を特定する情報とに基づいて、PMIを算出する。具体的には、PMI算出部107aは、腸腰筋面積と身長の二乗との比(腸腰筋面積/(身長)^2)を算出することによってPMIを算出する。
【0030】
判定部110aは、PMI算出部107aが算出したPMIを取得し、IVR算出部108が算出したIVRを取得する。判定部110aは、取得したPMIとIVRとに基づいて被験者のクッシング症候群の可能性を判定する。
具体的には、判定部110aは、PMIがPMI閾値未満であるか否かを判定し、IVRがIVR閾値未満であるか否かを判定する。判定部110aは、PMIがPMI閾値未満であり且つIVRがIVR閾値未満である場合にクッシング症候群の可能性が高いと判定する。判定部110aは、PMIがPMI閾値未満であり且つIVRがIVR閾値以上である場合、又はPMIがPMI閾値以上であり且つIVRがIVR閾値未満である場合にクッシング症候群の可能性が中程度と判定する。判定部110aは、PMIがPMI閾値以上であり且つIVRがIVR閾値以上である場合にクッシング症候群の可能性が低いと判定する。PMI判定閾値は、予め設定される。PMI判定閾値の一例は0.05以上2未満である。IVR判定閾値は、予め設定される。IVR判定閾値の一例は3.5以上5未満である。
【0031】
身長情報取得部105aと、PMI算出部107aと、判定部110aとの全部または一部は、例えば、CPUなどのプロセッサが記憶部114に格納されたプログラムを実行することにより実現される機能部(以下、ソフトウェア機能部と称する)である。
なお、身長情報取得部105aと、PMI算出部107aと、判定部110aとの全部または一部は、LSI、ASIC、またはFPGAなどのハードウェアにより実現されてもよく、ソフトウェア機能部とハードウェアとの組み合わせによって実現されてもよい。
【0032】
(判定装置の動作)
図6は、実施形態の変形例1に係る判定装置の動作の一例を示す図である。
(ステップS1-2)
判定装置100aにおいて、入力部102には、被験者の画像データと、被験者の身長を特定する情報とが入力される。画像取得部104は、入力部102に入力された画像データを取得する。
(ステップS2-2)
判定装置100aにおいて、身長情報取得部105aは、入力部102に入力された被験者の身長を特定する情報を取得する。
(ステップS3-2)
判定装置100aにおいて、面積算出部106は、面積算出部106が取得した被験者の画像データを取得する。面積算出部106は、取得した画像データに基づいて、腸腰筋面積と、内臓脂肪面積とを算出する。
【0033】
(ステップS4-2)
判定装置100aにおいて、IVR算出部108は、面積算出部106が算出した腸腰筋面積と内臓脂肪面積とを取得し、取得した腸腰筋面積と内臓脂肪面積とに基づいて、IVRを算出する。
(ステップS5-2)
判定装置100aにおいて、PMI算出部107aは、面積算出部106が算出した腸腰筋面積を特定する情報を取得し、身長情報取得部105aから被験者の身長を特定する情報を取得する。PMI算出部107aは、取得した腸腰筋面積を特定する情報と被験者の身長を特定する情報とに基づいて、PMIを算出する。
(ステップS6-2)
判定装置100aにおいて、判定部110aは、PMI算出部107aが算出したPMIを取得し、IVR算出部108が算出したIVRを取得する。判定部110aは、取得したPMIとIVRとに基づいて被験者のクッシング症候群の可能性を判定する。
(ステップS7-2)
判定装置100aにおいて、出力部112は、判定部110aからクッシング症候群の可能性の判定結果を取得する。出力部112は、取得したクッシング症候群の可能性の判定結果を表示部(図示なし)に表示させてもよいし、音声で出力してもよい。
図6に示すフローチャートにおいて、ステップS1-2からS3-2の処理の順序を、S1-2、S3-2、S2-2としてもよいし、S2-2、S1-2、S3-2としてもよい。また、ステップS4-2からS5-2の処理の順序を、S5-2、S4-2としてもよい。
【0034】
実施形態の変形例1によれば、前述した判定装置100において、被験者の身長を特定する情報する身長情報取得部105aと、算出された腸腰筋面積と、取得された身長とから、腸腰筋面積と身長との比であるPMIを算出するPMI算出部107aとをさらに備える。判定部110aは、算出されたIVRと、PMIとに基づいて被験者のクッシング症候群の可能性を判定する。
このように構成することによって、判定装置100aは、IVRに加え、PMIを算出し、算出したIVRに加えPMIに基づいて被験者のクッシング症候群の可能性を判定できる。このため、被験者は、入院安静下での負荷試験を行うことなく、短時間でクッシング症候群の可能性を知ることができる。さらに、IVRに基づいて被験者のクッシング症候群の可能性を判定した場合と比較して、クッシング症候群の可能性の判定精度を向上できる。
【0035】
(実施形態の変形例2)
図7は、実施形態の変形例2に係る判定装置の一例を示す図である。
実施形態の変形例2に係る判定装置100bは、実施形態に係る判定装置100において、被験者の性別を特定する情報を取得し、取得した被験者の性別を特定する情報に基づいてクッシング症候群の可能性を判定するためのIVR閾値を取得する。判定装置100bは、取得したIVR閾値と算出したIVRとに基づいて被験者のクッシング症候群の可能性を判定する。
判定装置100bは、パーソナルコンピュータ、サーバ、スマートフォン、タブレットコンピュータ又は産業用コンピュータ等の装置によって実現される。判定装置100bは、例えば、入力部102と、画像取得部104と、面積算出部106と、IVR算出部108と、性別情報取得部109bと、判定部110bと、出力部112と、記憶部114とを備える。
【0036】
入力部102は入力デバイスを備える。入力部102には、画像データに加え、被験者の性別を特定する情報が入力される。
性別情報取得部109bは、入力部102に入力された被験者の性別を特定する情報を取得する。
判定部110bは、IVR算出部108が算出したIVRを取得し、性別情報取得部109bが取得した被験者の性別を特定する情報を取得する。判定部110bは、取得したIVRと被験者の性別を特定する情報とに基づいて被験者のクッシング症候群の可能性を判定する。
具体的には、判定部110bは、被験者の性別を特定する情報とIVR閾値とを関連付けて記憶している。例えば、被験者の性別が男である場合のIVR閾値よりも被験者の性別が女である場合のIVR閾値の方が高い値である。判定部110bは、取得した被験者の性別を特定する情報に関連付けられているIVR閾値を取得する。
【0037】
判定部110bは、IVRがIVR閾値未満であるか否かを判定する。判定部110bは、IVRがIVR判定閾値未満である場合にクッシング症候群の可能性が高いと判定し、IVRがIVR判定閾値以上である場合にクッシング症候群の可能性が低いと判定する。
性別情報取得部109bと、判定部110bとの全部または一部は、例えば、CPUなどのプロセッサが記憶部114に格納されたプログラムを実行することにより実現される機能部(以下、ソフトウェア機能部と称する)である。
なお、性別情報取得部109bと、判定部110bとの全部または一部は、LSI、ASIC、またはFPGAなどのハードウェアにより実現されてもよく、ソフトウェア機能部とハードウェアとの組み合わせによって実現されてもよい。
【0038】
(判定装置の動作)
図8は、実施形態の変形例2に係る判定装置の動作の一例を示す図である。
(ステップS1-3)
判定装置100bにおいて、入力部102には、被験者の画像データと、被験者の性別を特定する情報とが入力される。画像取得部104は、入力部102に入力された画像データを取得する。
(ステップS2-3)
判定装置100bにおいて、性別情報取得部109bは、入力部102に入力された被験者の性別を特定する情報を取得する。
(ステップS3-3)
判定装置100bにおいて、面積算出部106は、面積算出部106が取得した被験者の画像データを取得する。面積算出部106は、取得した被験者の画像データに基づいて、腸腰筋面積と、内臓脂肪面積とを算出する。
【0039】
(ステップS4-3)
判定装置100bにおいて、IVR算出部108は、面積算出部106が算出した腸腰筋面積と内臓脂肪面積とを取得し、取得した腸腰筋面積と内臓脂肪面積とに基づいて、IVRを算出する。
(ステップS5-3)
判定装置100bにおいて、判定部110bは、IVR算出部108が算出したIVRを取得し、性別情報取得部109bが取得した被験者の性別を特定する情報を取得する。判定部110bは、取得した被験者の性別を特定する情報に関連付けられているIVR閾値を取得する。
(ステップS6-3)
判定装置100bにおいて、判定部110bは、取得したIVRとIVR閾値とに基づいて被験者のクッシング症候群の可能性を判定する。
(ステップS7-3)
判定装置100bにおいて、出力部112は、判定部110bからクッシング症候群の可能性の判定結果を取得する。出力部112は、取得したクッシング症候群の可能性の判定結果を表示部(図示なし)に表示させてもよいし、音声で出力してもよい。
図8に示すフローチャートにおいて、ステップS1-3からS3-3の処理の順序を、S1-3、S3-3、S2-3としてもよいし、S2-3、S1-3、S3-3としてもよい。また、ステップS4-3からS5-3の処理の順序を、S5-3、S4-3としてもよい。
【0040】
前述した実施形態の変形例2では、実施形態に係る判定装置100において、被験者の性別を特定する情報を取得し、取得した被験者の性別を特定する情報に基づいてクッシング症候群の可能性を判定するためのIVR閾値を取得し、取得したIVR閾値と算出したIVRとに基づいて被験者のクッシング症候群の可能性を判定する場合について説明したが、この例に限られない。
例えば、実施形態の変形例1に係る判定装置100aにおいて、被験者の性別を特定する情報を取得し、取得した被験者の性別を特定する情報に基づいてクッシング症候群の可能性を判定するためのIVR閾値を取得し、取得したIVR閾値と算出したIVRとに基づいて被験者のクッシング症候群の可能性を判定するようにしてもよい。実施形態の変形例1に係る判定装置100aにおいて、被験者の性別を特定する情報を取得し、取得した被験者の性別を特定する情報に基づいてクッシング症候群の可能性を判定するためのPMI閾値を取得し、取得したPMI閾値と算出したPMIとに基づいて被験者のクッシング症候群の可能性を判定するようにしてもよい。
【0041】
実施形態の変形例2によれば、前述した判定装置100において、被験者の性別を特定する情報を取得する性別情報取得部109bをさらに備える。判定部110bは、取得した被験者の性別を特定する情報に基づいてクッシング症候群の可能性を判定する閾値を取得し、取得した閾値と算出されたIVRとに基づいて被験者のクッシング症候群の可能性を判定する。
このように構成することによって、判定装置100bは、被験者の性別を特定する情報を取得し、取得した被験者の性別を特定する情報に基づいてクッシング症候群の可能性を判定する閾値を取得できる。判定装置100bは、取得した閾値に基づいて、算出したIVRに基づいて被験者のクッシング症候群の可能性を判定できる。このため、被験者は、入院安静下での負荷試験を行うことなく、短時間でクッシング症候群の可能性を知ることができる。さらに、被験者の性別を特定する情報に基づかない閾値に基づいて被験者のクッシング症候群の可能性を判定した場合と比較して、クッシング症候群の可能性の判定精度を向上できる。
【0042】
(実施形態の変形例3)
図9は、実施形態の変形例3に係る判定装置の一例を示す図である。
実施形態の変形例3に係る判定装置100cは、実施形態に係る判定装置100において、被験者の年齢を特定する情報を取得し、取得した被験者の年齢を特定する情報に基づいてクッシング症候群の可能性を判定するIVR閾値を取得する。判定装置100cは、取得したIVR閾値と算出したIVRに基づいて被験者のクッシング症候群の可能性を判定する。
判定装置100cは、パーソナルコンピュータ、サーバ、スマートフォン、タブレットコンピュータ又は産業用コンピュータ等の装置によって実現される。判定装置100cは、例えば、入力部102と、画像取得部104と、面積算出部106と、IVR算出部108と、年齢情報取得部109cと、判定部110cと、出力部112と、記憶部114とを備える。
【0043】
入力部102は入力デバイスを備える。入力部102には、被験者の画像データに加え、被験者の年齢を特定する情報が入力される。
年齢情報取得部109cは、入力部102に入力された被験者の年齢を特定する情報を取得する。
判定部110cは、IVR算出部108が算出したIVRを取得し、年齢情報取得部109cが取得した被験者の年齢を特定する情報を取得する。判定部110cは、取得したIVRと被験者の年齢を特定する情報とに基づいて被験者のクッシング症候群の可能性を判定する。具体的には、判定部110cは、被験者の年齢を特定する情報とIVR閾値とを関連付けて記憶している。例えば、被験者の年齢が低年齢から高年齢になるにしたがってIVR閾値は高い値から低い値になる。判定部110cは、取得した被験者の年齢を特定する情報に関連付けられているIVR閾値を取得する。
【0044】
判定部110cは、IVRがIVR閾値未満であるか否かを判定する。判定部110cは、IVRがIVR判定閾値未満である場合にクッシング症候群の可能性が高いと判定し、IVRがIVR判定閾値以上である場合にクッシング症候群の可能性が低いと判定する。
年齢情報取得部109cと、判定部110cとの全部または一部は、例えば、CPUなどのプロセッサが記憶部114に格納されたプログラムを実行することにより実現される機能部(以下、ソフトウェア機能部と称する)である。
なお、年齢情報取得部109cと、判定部110cとの全部または一部は、LSI、ASIC、またはFPGAなどのハードウェアにより実現されてもよく、ソフトウェア機能部とハードウェアとの組み合わせによって実現されてもよい。
【0045】
(判定装置の動作)
図10は、実施形態の変形例2に係る判定装置の動作の一例を示す図である。
(ステップS1-4)
判定装置100cにおいて、入力部102には、被験者の画像データと、被験者の年齢を特定する情報とが入力される。画像取得部104は、入力部102に入力された被験者の画像データを取得する。
(ステップS2-4)
判定装置100cにおいて、年齢情報取得部109cは、入力部102に入力された被験者の年齢を特定する情報を取得する。
(ステップS3-4)
判定装置100cにおいて、面積算出部106は、面積算出部106が取得した画像データを取得する。面積算出部106は、取得した画像データに基づいて、腸腰筋面積と、内臓脂肪面積とを算出する。
【0046】
(ステップS4-4)
判定装置100cにおいて、IVR算出部108は、面積算出部106が算出した腸腰筋面積と内臓脂肪面積とを取得し、取得した腸腰筋面積と内臓脂肪面積とに基づいて、IVRを算出する。
(ステップS5-4)
判定装置100cにおいて、判定部110cは、IVR算出部108が算出したIVRを取得し、年齢情報取得部109cが取得した被験者の年齢を特定する情報を取得する。判定部110cは、取得した被験者の年齢を特定する情報に関連付けられているIVR閾値を取得する。
(ステップS6-4)
判定装置100cにおいて、判定部110cは、取得したIVRとIVR閾値とに基づいて被験者のクッシング症候群の可能性を判定する。
(ステップS7-4)
判定装置100cにおいて、出力部112は、判定部110cからクッシング症候群の可能性の判定結果を取得する。出力部112は、取得したクッシング症候群の可能性の判定結果を表示部(図示なし)に表示させてもよいし、音声で出力してもよい。
図10に示すフローチャートにおいて、ステップS1-4からS3-4の処理の順序を、S1-4、S3-4、S2-4としてもよいし、S2-4、S1-4、S3-4としてもよい。また、ステップS4-4からS5-4の処理の順序を、S5-4、S4-4としてもよい。
【0047】
前述した実施形態の変形例3に係る判定装置100cでは、実施形態に係る判定装置100において、被験者の年齢を特定する情報を取得し、取得した被験者の年齢を特定する情報に基づいてクッシング症候群の可能性を判定するIVR閾値を取得し、取得したIVR閾値と算出したIVRに基づいて被験者のクッシング症候群の可能性を判定する場合について説明したがこの例に限られない。
例えば、実施形態の変形例1に係る判定装置100aにおいて、被験者の年齢を特定する情報を取得し、取得した被験者の年齢を特定する情報に基づいてクッシング症候群の可能性を判定するIVR閾値を取得し、取得したIVR閾値と算出したIVRに基づいて被験者のクッシング症候群の可能性を判定してもよい。実施形態の変形例1に係る判定装置100aにおいて、被験者の年齢を特定する情報を取得し、取得した被験者の年齢を特定する情報に基づいてクッシング症候群の可能性を判定するためのPMI閾値を取得し、取得したPMI閾値と算出したPMIとに基づいて被験者のクッシング症候群の可能性を判定するようにしてもよい。
また、実施形態の変形例2に係る判定装置100bにおいて、被験者の年齢を特定する情報を取得し、取得した被験者の年齢を特定する情報に基づいてクッシング症候群の可能性を判定するIVR閾値を取得し、取得したIVR閾値と算出したIVRに基づいて被験者のクッシング症候群の可能性を判定してもよい。実施形態の変形例2に係る判定装置100bにおいて、被験者の性別及び年齢を特定する情報を取得し、取得した被験者の性別及び年齢を特定する情報に基づいてクッシング症候群の可能性を判定するIVR閾値を取得し、取得したIVR閾値と算出したIVRに基づいて被験者のクッシング症候群の可能性を判定してもよい。
【0048】
実施形態の変形例3によれば、前述した判定装置100において、被験者の年齢を特定する情報を取得する年齢情報取得部109cをさらに備える。判定部110cは、取得した被験者の年齢を特定する情報に基づいてクッシング症候群の可能性を判定する閾値を取得し、取得した閾値に基づいて、算出されたIVRに基づいて被験者のクッシング症候群の可能性を判定する。
このように構成することによって、判定装置100cは、被験者の年齢を特定する情報を取得し、取得した被験者の年齢を特定する情報に基づいてクッシング症候群の可能性を判定する閾値を取得できる。判定装置100cは、取得した閾値に基づいて、算出したIVRに基づいて被験者のクッシング症候群の可能性を判定できる。このため、被験者は、入院安静下での負荷試験を行うことなく、短時間でクッシング症候群の可能性を知ることができる。さらに、被験者の年齢を特定する情報に基づかない閾値に基づいて被験者のクッシング症候群の可能性を判定した場合と比較して、クッシング症候群の可能性の判定精度を向上できる。
【0049】
(実施形態の変形例4)
図11は、実施形態の変形例4に係る判定装置の一例を示す図である。
実施形態の変形例4に係る判定装置100dは、実施形態に係る判定装置100において、IVRに加えて、ENR(Eosinophil/Neutrophil ratio)に基づいて被験者のクッシング症候群の可能性を判定する。
判定装置100dは、パーソナルコンピュータ、サーバ、スマートフォン、タブレットコンピュータ又は産業用コンピュータ等の装置によって実現される。判定装置100dは、例えば、入力部102と、白血球情報取得部103dと、画像取得部104と、面積算出部106と、ENR算出部107dと、IVR算出部108と、判定部110dと、出力部112と、記憶部114とを備える。
【0050】
入力部102は入力デバイスを備える。入力部102には、画像データに加え、白血球情報が入力される。ここで、白血球情報には、好酸球数を特定する情報と好中球数を特定する情報とが含まれる。
白血球情報取得部103dは、入力部102に入力された白血球情報を取得する。
ENR算出部107dは、白血球情報取得部103dが取得した白血球情報を取得し、取得した白血球情報に含まれる好酸球数を特定する情報と好中球数を特定する情報とに基づいて、ENRを算出する。具体的には、ENR算出部107dは、好酸球数を好中球数で除算することによってENRを算出する。
【0051】
判定部110dは、ENR算出部107dが算出したENRを取得し、IVR算出部108が算出したIVRを取得する。判定部110dは、取得したENRとIVRとに基づいて被験者のクッシング症候群の可能性を判定する。
具体的には、判定部110dは、ENRがENR閾値未満であるか否かを判定し、IVRがIVR閾値未満であるか否かを判定する。判定部110dは、ENRがENR閾値未満であり且つIVRがIVR閾値未満である場合にクッシング症候群の可能性が高いと判定する。判定部110dは、ENRがENR閾値未満であり且つIVRがIVR閾値以上である場合、又はENRがENR閾値以上であり且つIVRがIVR閾値未満である場合にクッシング症候群の可能性が中程度と判定する。判定部110dは、ENRがENR閾値以上であり且つIVRがIVR閾値以上である場合にクッシング症候群の可能性が低いと判定する。ENR判定閾値は予め設定される。ENR判定閾値の一例は0.005以上0.02未満である。IVR判定閾値は予め設定される。IVR判定閾値の一例は3.5以上5未満である。
白血球情報取得部103dと、ENR算出部107dと、判定部110dとの全部または一部は、例えば、CPUなどのプロセッサが記憶部114に格納されたプログラムを実行することにより実現される機能部(以下、ソフトウェア機能部と称する)である。
なお、白血球情報取得部103dと、ENR算出部107dと、判定部110dとの全部または一部は、LSI、ASIC、またはFPGAなどのハードウェアにより実現されてもよく、ソフトウェア機能部とハードウェアとの組み合わせによって実現されてもよい。
【0052】
(判定装置の動作)
図12は、実施形態の変形例4に係る判定装置の動作の一例を示す図である。
(ステップS1-5)
判定装置100dにおいて、入力部102には、被験者の画像データと、被験者の白血球情報とが入力される。画像取得部104は、入力部102に入力された被験者の画像データを取得する。
(ステップS2-5)
判定装置100dにおいて、白血球情報取得部103dは、入力部102に入力された被験者の白血球情報を取得する。
(ステップS3-5)
判定装置100dにおいて、面積算出部106は、面積算出部106が取得した画像データを取得する。面積算出部106は、取得した画像データに基づいて、腸腰筋面積と、内臓脂肪面積とを算出する。
【0053】
(ステップS4-5)
判定装置100dにおいて、IVR算出部108は、面積算出部106が算出した腸腰筋面積を特定する情報と内臓脂肪面積を特定する情報とを取得し、取得した腸腰筋面積を特定する情報と内臓脂肪面積を特定する情報とに基づいて、IVRを算出する。
(ステップS5-5)
判定装置100dにおいて、ENR算出部107dは、白血球情報取得部103dが取得した白血球情報を取得し、取得した白血球情報に含まれる好酸球数を特定する情報と好中球数を特定する情報とに基づいて、ENRを算出する。
(ステップS6-5)
判定装置100dにおいて、判定部110dは、ENR算出部107dが算出したENRを取得し、IVR算出部108が算出したIVRを取得する。判定部110dは、取得したENRとIVRとに基づいて被験者のクッシング症候群の可能性を判定する。
(ステップS7-5)
判定装置100dにおいて、出力部112は、判定部110dからクッシング症候群の可能性の判定結果を取得する。出力部112は、取得したクッシング症候群の可能性の判定結果を表示部(図示なし)に表示させてもよいし、音声で出力してもよい。
図12に示すフローチャートにおいて、ステップS1-5からS3-5の処理の順序を、S1-5、S3-5、S2-5としてもよいし、S2-5、S1-5、S3-5としてもよい。また、ステップS4-5からS5-5の処理の順序を、S5-5、S4-5としてもよい。
【0054】
前述した実施形態の変形例4に係る判定装置100dでは、実施形態に係る判定装置100において、IVRに加えて、ENRに基づいて被験者のクッシング症候群の可能性を判定する場合について説明したがこの例に限られない。
例えば、実施形態の変形例1に係る判定装置100aにおいて、IVRとPMIとに加えて、ENRに基づいて被験者のクッシング症候群の可能性を判定してもよい。また、実施形態の変形例1に係る判定装置100aにおいて、被験者の性別を特定する情報を取得し、取得した被験者の性別を特定する情報に基づいてクッシング症候群の可能性を判定するためのENR閾値を取得し、取得したENR閾値と算出したENRとに基づいて被験者のクッシング症候群の可能性を判定するようにしてもよい。
例えば、実施形態の変形例2に係る判定装置100bにおいて、IVRに加えて、ENRに基づいて被験者のクッシング症候群の可能性を判定してもよい。実施形態の変形例2に係る判定装置100bにおいて、被験者の性別を特定する情報を取得し、取得した被験者の性別を特定する情報に基づいてクッシング症候群の可能性を判定するEVR閾値を取得し、取得したENR閾値と算出したENRに基づいて被験者のクッシング症候群の可能性を判定してもよい。
例えば、実施形態の変形例3に係る判定装置100cにおいて、被験者の年齢を特定する情報を取得し、取得した被験者の年齢を特定する情報に基づいてクッシング症候群の可能性を判定するEVR閾値を取得し、取得したENR閾値と算出したENRに基づいて被験者のクッシング症候群の可能性を判定してもよい。実施形態の変形例3に係る判定装置100bにおいて、被験者の性別及び年齢を特定する情報を取得し、取得した被験者の性別及び年齢を特定する情報に基づいてクッシング症候群の可能性を判定するENR閾値を取得し、取得したENR閾値と算出したENRに基づいて被験者のクッシング症候群の可能性を判定してもよい。
【0055】
実施形態の変形例4によれば、前述した判定装置100において、被験者の好酸球数及び好中球数を特定する情報を取得する白血球情報取得部103dと、好酸球数及び好中球数を特定する情報からENRを算出するENR算出部107dと、をさらに備える。判定部110dは、算出されたENRと、IVRとに基づいて被験者のクッシング症候群の可能性を判定する。
このように構成することによって、判定装置100dは、IVRに加え、ENRを算出し、算出したIVRに加えENRに基づいて被験者のクッシング症候群の可能性を判定できる。このため、被験者は、入院安静下での負荷試験を行うことなく、短時間でクッシング症候群の可能性を知ることができる。さらに、IVRに基づいて被験者のクッシング症候群の可能性を判定した場合と比較して、クッシング症候群の可能性の判定精度を向上できる。
【0056】
ここで、ENRに基づいて被験者のクッシング症候群の可能性を判定する効果について説明する。
図13は、受信者操作特性の例3を示す図である。
ENRは、好酸球数と好中球数との比であり、好酸球数を好中球数で除算することによって算出される。クッシング症候群では好酸球が低下し、好中球が増加することが知られている。
図13において横軸は特異度(specificity)であり、縦軸は敏感度(sensitivity)である。特異度は陰性者を正しく陰性と判断する率であり、敏感度は陽性者を正しく陽性として捕捉する率である。検査が有効ならば、この曲線は45度の線から左上に離れる。離れれば離れるほど、検査として有効である。
0.0から1.0の間のROC曲線の下にある領域の面積(AUC)は、0.879である。
図13によればENRのROCのAUCが、前述したPMIのROCのAUCとV-fat/S-fat ratioのROCのAUCとIp-M/Ps-M ratioのROCのAUCと比較して最も大きいことが分かる。このため、ENRが、クッシング症候群の可能性を判定するために有効であることが分かる。
【0057】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組合わせを行うことができる。これら実施形態及びその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれると同時に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
例えば、実施形態と実施形態の変形例1と実施形態の変形例2と実施形態の変形例3と実施形態の変形例4とが組み合わされてもよい。
なお、前述の判定装置100、判定装置100a、判定装置100b、判定装置100c、判定装置100dは内部にコンピュータを有している。そして、前述した各装置の各処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどをいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしてもよい。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。
さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0058】
100、100a、100b、100c、100d…判定装置、 102…入力部、 103d…白血球情報取得部、 104…画像取得部、 105a…身長情報取得部、 106…面積算出部、 107a…PMI算出部、 107d…ENR算出部、 108…IVR算出部、 109b…性別情報取得部、 109c…年齢情報取得部、 110、110a、110b、110c、110d…判定部、 112…出力部
図1
図2
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図4A
図4B
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図13